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scp-601-jp
評価: +58+–x SCP-601-JP。発見当初に撮影されたもの。 アイテム番号: SCP-601-JP オブジェクトクラス: Safe  特別収容プロトコル: SCP-601-JPの描かれたアスファルトはサイト8181地下の標準収容コンテナに保管されています。職員は対象の半径5m以内には近づかないようにし、対象に大量の水分を触れさせないようにしてください。コンテナ内部の湿度が極端に高い場合、換気を行います。 説明: SCP-601-JPは、アスファルトに水で描かれた馬の絵です。対象の作成者は不明であり、調査が進められています。 SCP-601-JPの異常性は、周囲に存在する水分を吸収することで、自身の蒸発を防いでいる点です。この特性により、SCP-601-JPは空気中の水分を取り込むことによって、摂氏30℃の気温の中にさらされていても、その構成を保ち続けます。この特性は観察により判明しましたが、どのようにして水分を吸収しているのかは、20██年現在解明されていません。 SCP-601-JPに生物が近づいた場合、対象の異常性によってその生物は喉の渇きを訴えます。この症状は、対象から半径5m以内の円内に入ると発生し、近づくにつれてより強い衝動となります。生物がSCP-601-JPに直接ふれた場合、急速に脱水症状を起こし、10分以内には[削除済み]となり死亡します。死亡するまでに対象から離れれば、それ以上脱水を起こすことはありません。 SCP-601-JPは、多量の水分に触れると、その表面積を増大させ、形状を変化させます。増大速度は初期は非常に低速ですが、水分に触れ続けることでその速度は上昇し続けます。水分の供給が停止した場合、SCP-601-JPは5分以内には平時の表面積に戻ります。 SCP-601-JPは20██/09/██早朝、東京都の██公園で発見されました。対象に触れた民間人█名が脱水症状を起こしたものの、他民間人による救出および医療施設への通報により死亡者は出ていません。その通報が財団の目にとまり、描かれたアスファルトごと対象が回収されました。関係者には記憶処置が行われ、カバーストーリー「熱中症」が適応されました。 実験記録1 - 日付20██/02/15 対象: SCP-601-JP,D-22321 実施方法:D-22321にSCP-601-JPに触れるように指示。 目的: 経過を観察する。 結果: D-22321は対象に近づくにつれ、喉の渇きを訴える。D-22321は対象に触れた瞬間に倒れ込み、後の反応はわずかにうめくことのみが観察された。対象に触れてから8分57秒後、D-22321は[データ削除]となって死亡した。 考察: 死亡するまでの時間を測ることができた。素早く救出すれば死にいたることは少ないようだ。対象発見時に死者が出なかったのも、素早い救助によるものだろう。―██博士 実験記録2 - 日付20██/02/20 対象: SCP-601-JP 実施方法: 水道管に繋がれたホースにより、対象から10m以上離れた位置から██博士の手により水を散布。 目的: 対象に水分を与え、どのような形状に変化するかを調査する。 時間 変化 0:00:00 放水を開始。 水が散布されたが、SCP-601-JPの周囲2mは水に濡れず。対象が水分を吸収していると推測。 0:00:41 対象の表面積が増大し始める。背にあたる部分が変化を開始。 0:01:39 対象には翼が新たに描画された。 0:02:06 SCP-601-JPの頭部と顔面に当たる部分が変化を開始。形状変化の速度が急速に上昇。 0:02:23 対象には牙と角が新たに描画された。 この時点で対象の表面積は██平方m(平常時の█倍)に到達。さらに対象の全身部から触手のようなものが伸び始める。 0:02:32 触手のようなものは人間の手足を描写したものと判明。この時点でSCP-601-JPに描き加えられた手足の一部がコンテナ内の壁に到達。対象の表面積の増大により、██博士の立ち位置が対象から5m以内に入る。██博士は喉の渇きを報告。 0:02:40 ██博士の前方2mにまでSCP-601-JPの一部が到達したため、放水を停止。対象の形状変化が止まり、描きくわえられた部分が蒸発を開始。 0:06:01 SCP-601-JPは平時の状態に戻る。 結果: ██博士は軽い脱水症状を起こしたものの、水分を取り30分ほどで回復した。 考察: これを雨に濡らすことは避けなければならないな。―██博士 補遺: 実験記録2の際に描画された人間の腕の1本に、小さく乾いた部分がいくつか並んでいることが映像記録から確認されています。乾いた部分を拡大すると、それは[編集済み]という漢字の文字列であり、D-22321の本名であることが判明しました。
scp-602-jp
評価: +51+–x アイテム番号: SCP-602-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-602-JPは一般的人型収容室に収容してください。SCP-602-JP-1への変異基準が不明であるため、対象への人間の接触は最低限に留め、食事・身の回りの世話は自動で行われるようにしてください。 また、報告書を通じたSCP-602-JP-1への変異を予防するため、報告書に記載される情報は最小限に留め、会話ログや実験記録などのSCP-602-JP自体に対して読者が好意的に受け取る可能性のある文章はすべて非公開に設定してください。 SCP-602-JPを対象とする実験は、その異常性が周囲に及ぼす影響から現在基本的に禁止されています。SCP-602-JPの収容に関わる職員はその身元を事前に調査し、SCP-602-JP-1に変異する可能性のない職員を充当してください。収容担当職員は2週間に一度財団のカウンセラーによるカウンセリングを受講し、SCP-602-JPに精神的影響を受けていないことを確かめてください。 説明: SCP-602-JPは身長1,39mの、20██年の収容以来外見的に10代前半の見た目を保っている女性です。幾つかの事例から、SCP-602-JPの異常性の影響を受ける条件が推測されています。 1人以上の存命の6親等以内の親族を持つこと。 彼女に対して一定以上の親近感・好意を抱くこと。 これらの条件を満たす人物に対し、彼女は無差別にその異常性を発現させると推測されています(以下、この人間をSCP-602-JP-1と記述)。 人間がSCP-602-JP-1に変異する基準は明確には判明しておらず、その異常性からDクラスを用いた実験も禁止されています。 SCP-602-JP-1に変異した人間は、遅くとも3ヶ月以内に、6親等以内の親族の1人以上の死を経験します。それから1ヶ月以内に、対象は別の6親等の親族を、他殺・病死・事故死などで失い、財団に記録されている限り最長の例でもSCP-602-JP-1に変異してから1年以内にはSCP-602-JP-1の全ての6親等の親族は死亡します。 対象の6親等以内の親族が全て死亡するまでの期間、SCP-602-JP-1への自殺を含む殺害の試みは全て機械の故障や偶発的な事象/事故によって失敗しています。6親等以内の親族が全て死亡しているSCP-602-JP-1についてはその限りではなく、通常通り処分可能です。 SCP-602-JPは、20██/██/██にサイト-8151内部に突如出現し、財団のエージェントに確保されました。彼女の右内腿に記された刺青から、彼女はSCiPである可能性を考慮され、収容されました。 事件-602-JP-01: SCP-602-JPが収容されてから最初に発生した事件です。収容から█日後、彼女に食事を運んでいた研究員██へSCP-602-JPが突然話しかけました。すぐさま別室で監視に当たっていた収容担当職員が研究員へ会話を止めるよう命じましたが研究員はそのまま対象と会話を行い、67時間後、財団に勤務していた研究員の姉が実験中の事故で負傷、翌日、財団の医療施設にて息を引き取りました。さらに3週間後、自宅で就寝中であった研究員の祖父母が侵入した強盗に殺害されました。この時点で研究員はSCP-602-JPの異常性の影響を受けたと推測され、確保されました。8ヶ月後、研究員は収容室内で自らの舌を噛み切って自殺しています。この事件からSCP-602-JPの異常性が推測され、現在の収容プロトコルが確立されました。 SCP-602-JP身体検査記録:—非公開 インタビューログ602-JP 20██/08/██:—非公開 インタビューログ602-JP20██/01/██:—非公開 SCP-602-JP会話ログ 20██/12/██:—非公開 インタビューログ602-JP20██/02/██:—非公開 事件-602-JP-█ 20██/03/██: SCP-602-JPの監視に当たっていた職員の1人がSCP-602-JPを無許可で収容室から連れ出しました。職員はSCP-602-JPに洗脳された可能性を考慮され、クラスE記憶処理を受けたのちDクラスとして再雇用されました。この事件を受け、SCP-602-JPの収容担当職員に定期的に心理検査を受けさせる必要性が提言され、収容プロトコルが変更されました。 インタビューログ602-JP20██/05/██:—非公開 インタビューログ602-JP20██/06/██:—非公開 SCP-602-JP会話ログ 20██/08/██:—非公開 事件-602-JP-█ 20██/08/██: 先の“602-JP会話ログ 20██/08/██”から35時間後、SCP-602-JPの収容担当職員が非直属の上級クラス職員に対し、SCP-602-JPのSafeクラス格下げを直訴。対象の異常性からオブジェクトに対しての監査は行われず、申請書もさらに上に持ち込まれることはなく処分、担当職員は記憶処理の後別のSCPの収容任務に充てられた。しかしながら、その3ヶ月後、件の上級クラス職員の娘と妻が自宅でガス爆発により死亡。上級クラス職員はSCP-602-JP-1として認定された。 この事件からSCP-602-JPの極めて悪質な異常性が危険視され、以下、収容担当職員を含むあらゆる職員とのSCP-602-JPの会話は禁じられました。 補遺-SCP-602-JPの執筆した文書001:—非公開 補遺-SCP-602-JPの執筆した文書045:—非公開 終了作戦602-JP-██—保留 補遺-ア 彼女の右内腿には、以下の刺青が記されていました。 おぉっと!クンダーテインメント博士の日本進出記念版コレクションのミズを見つけたみたいだね!キミの"ミズ・きみのだいじなひとを"はきみのさいこうの恋人になるだろう!彼女とふたりっきりのロマンチックな初恋がすてきなものになりますように!ミズ・きみのだいじなひとをと一緒にふたりっきりの幸せな時間を過ごしちゃえ! 01. ミスター・おやすみ(発売未定) 02. ミスター・かおだらけ(発売未定) 03. ミスター・ずぶずぶ (発売中) 04. ミスター・くらやみ(発売未定) 05. ミスター・にんじゃ(発売未定) 06. ミズ・きみのだいじなひとを(本制1品) 07. ミスター・ひきさかれる(発売未定) 08. [判別不能] 09. [判別不能] 10. [判別不能] 日本国内にて、クンダーテインメント博士の正規制2品の悪質な類似品が多数出回っているとの報告を受けています。お客様各位におかれましては、そのような制品に充分ご注意ください。 補遺-イ: 収容から█ヶ月後、別サイトにて収容されていたSCP-097-JPの右腕に、新たな刺青が刻印されているのが確認されました。刺青は96時間後に自然に消滅しました。 お詫びとお知らせ 先日、日本国内にてワンダーテインメント博士の製品“ミズ・きみのだいじなひとを”に対し、悪質な業者による粗悪な類似品の販売が確認されました。つきましては混乱を避けるため、現在販売済の“ミズ・きみのだいじなひとを”を一時的に回収させて頂きますのでどうぞご理解のほどよろしくお願いいたします。 [削除済]__身柳研究員(SCP-602-JP収容担当職員) Footnotes 1. “製” の誤字であると思われる。 2. “製” の誤字であると思われる。
scp-603-jp
評価: +73+–x SNSに投稿されたSCP-603-JP-2の手。 アイテム番号: SCP-603-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-603-JP-1はサイトー8123の低脅威度物体保管庫に収容されます。3ヶ月に一度、技師による点検を行ってください。点検には必ず担当の研究者かその助手が立ち会ってください。この点検には電源を入れての操作も含まれますが、ゲームのプレイを行ってはいけません。プレイは実験以外で行ってはならず、実験にはクリアランスレベル3以上の職員か担当者の許可が必要です。 SCP-603-JP-2は個別の標準人型収容施設に収容されます。収容施設内には通常のアーケードゲーム筐体を1部屋中に1台ずつ設置してください。SCP-603-JP-2の収容施設の鍵は物理錠を必ず用いてください。電子錠のみでの収容状態に置かないでください。 未収容のSCP-603-JP-1が発見された場合は、直ちにエージェントを派遣し収容してください。カバーストーリー「欠陥のある製品」が適用されます。万が一影響が外見上明らかなSCP-603-JP-2が発見された場合、関係者にクラスA(必要に応じてクラスB)記憶処理を施し、カバーストーリー「隔離が必要な疾病」を適用してSCP-603-JP-2を収容します。 説明: SCP-603-JP-1はプレイヤーの身体に異常な変異を発生させるアーケードゲーム筐体であり、一度でもSCP-603-JP-1をプレイした人物はSCP-603-JP-2と指定されます。既知のSCP-603-JP-1は全て音楽・リズムゲームのアーケード筐体です。その他のジャンル、また家庭用機のSCP-603-JP-1は発見されていません。現在██種類、██台のSCP-603-JP-1、███体のSCP-603-JP-2が収容されています。 SCP-603-JP-1で繰り返しゲームをプレイしたSCP-603-JP-2は、精神、肉体両面に大きな影響を受けます。肉体面では各ゲームのプレイにより適応した形態に、精神面では強迫的にプレイをし、大きく変形した身体を誇らしいと話します。影響の詳細については実験ログを参照してください。なお、一度SCP-603-JP-2になっても通常の筐体のプレイでは影響は進行しないことが分かっています。全てのSCP-603-JP-2には自殺や過度な興奮を防ぎ、研究に協力的にするため通常の筐体が与えられています。 SCP-603-JP-1を分解したところ、マザーボードに通常と違う部品が搭載されていました。通常の製品のマザーボードをSCP-603-JP-1のものと交換したところ、SCP-603-JP-1としての性質を示しました。一方通常のマザーボードを装備したSCP-603-JP-1は異常な性質を示しませんでした。現在個別のパーツについて更に詳細な調査を行っています。マザーボード及び各構成部品の製造元は不明です。 最初のSCP-603-JPは、SNS上にアップロードされたSCP-603-JP-2の手の写真をきっかけに発見されました。写真についてはコラージュ画像であったという情報を流し、一応の収拾をみました。現在、SCP-603-JPの捜索は主にインターネット上のゲームコミュニティの監視、ゲーム運営に潜入したエージェントによるプレイ記録の調査によって行われています。 + 実験記録 SCP-603-JPを表示 - 実験記録 SCP-603-JPを隠す 実験記録603-JP-1-い~は - 日付20██/██/██ 3機種のSCP-603-JP-1の特性についての実験です。それぞれをSCP-603-JP-1-い、ろ、は、被検者をSCP-603-JP-2-い、ろ、はと呼称します。当該ゲーム及び類似ジャンルゲーム未経験のDクラス3人をプレイヤーとして実験を行います。各ゲームを毎日30曲分(2.5~3時間程度)プレイさせ、変化を観察します。なお当然のことながら、実験は外部から遮断された財団内のゲームサーバを作りその内部で動作させました。 SCP-603-JP-1-い :コナミデジタルエンタテインメント社の「GuitarFreaksXG3」の筐体です。5個のボタンと1個のタブを操作するギターないしベースの演奏をモチーフにしたものです。 SCP-603-JP-1-ろ :コナミデジタルエンタエインメント社の「SOUND VOLTEX III GRAVITY WARS」の筐体です。6個のボタンと2個のつまみを操作します。 SCP-603-JP-1-は :コナミデジタルエンタテインメント社の「Dance Dance Revolution」(DDR2014)の筐体です。足で4個のボタンを踏むダンスシミュレーションです。 プレイ数/機種 SCP-603-JP-1-い SCP-603-JP-1-ろ SCP-603-JP-1-は 第1週(1~210曲) 当初SCP-603-JP-2-いはゲームの操作に馴染めずプレイを放棄しますが、50曲を越えたころから、プレイを「楽しい」と言い、やる気を見せ始めます。肉体的な変化は特に見られません。同様の結果は他の2者でも見られました。腕前の上達は予想を下回っています。 同様。音量の過大を訴えたため調整。腕前の上達は予測を上回っています。 同様。足の疲れを訴えたため市販の湿布を支給。腕前の上達は予測を下回っています。 第2週(211~420曲) 驚異的なやる気を見せ、朝一番にプレイを開始します。一日当たりプレイ数を増やすよう研究員に要求しました(却下)。10日目には左手小指側に追加の指と思われる突起が発見されました。 同様にプレイに驚異的な意欲を示します。つまみ操作時に手首の稼働域が明らかに人間の限界を越えています。このことについて質問すると「練習の成果」であると述べました。 同様にプレイへの意欲の増加が見られます。「尾」のような器官が発達し、プレイ時第三の足として身体を支えています。 第3週(421~630曲) 当日のプレイ数を使い果たすと追加を要求して暴れます。左手の指は完全に六本になりました。一方、右手はタブ操作に使う親指、人差し指以外が癒着してミトン状になっています。20日目に行った反射神経テストで人間の限界とされる数値を越えた成績を示しました。 暴力を伴うプレイ数追加の要求が行われます。手首の稼働域は360°を越えました。また、指の又が裂け、ボタンを片手で一度に操作できるようになっています。眼窩が左右でなく上下に並ぼうと移動しています。 床を踏み鳴らしてプレイ数の追加を要求します。その際「もっと俺は変われる」「フルコンで世界が変わる」と述べました。「尾」は完全に発達しそれのみで体重を支えられるようになりました。 第4週(631~840曲) 一日当たりのプレイ数を使い果たしても暴れなくなり、代わりに電源の落とされたコントローラを一日中操作しています。このことについて質問すると「練習」「復習」であると述べました。手指は完全に操作部を包む形となり、特に左手はもはやコントローラを離すことができません。 同様に一日の大半を起動していないゲームの操作に当てています。右手のひら部分は完全に裂け、手首から直接指が生えているように見えます。左手はつまみを操作することに特化した2個の壺状の組織になりました。眼窩は完全に上下二段に配置されています。 同様に一日の大半をゲームの操作に当てています。「尾」の先が平たく、大きくなり、全く動かさなくなりました。自らの身体について「人間の目指すべき姿」だと述べました。 第5週(841~1050曲) 両手が完全にコントローラーと癒着したように見えます。研究員に他のSCP-603-JP-2について質問し、マッチングを要求しました(却下)。どのように他のSCP-603-JP-2の存在を知ったのかは不明です。 こちらからの問いかけに一切反応しなくなりました。不明な原因で筐体のシャットダウンが失敗しSCP-603-JP-2-ろは未知の極めて長大な(最終的に███時間継続)曲の極めて複雑な(██████コンボを達成)譜面をプレイし続けています。曲はほとんど雑音に近いものです。 下半身がテント状の肉の塊となり、操作部を覆い隠しました。操作音が聞こえることから内部でゲームの操作をしていると思われます。ゲームをプレイしていない間は延々不明瞭な内容を呟いています。 実験は終了しました。詳細は事件記録SCP-603-JPを参照してください。 + 事件記録 SCP-603-JPを表示 - 事件記録 SCP-603-JP を隠す 事件記録 SCP-603-JP 20██/██/██ 20██/██/██未明、研究員██が規定の観察を行ったところ、SCP-603-JP-2-いが脱走しているのが確認されました。数分後に脱走したSCP-603-JP-2-いは収容室近くの通路で発見されました。SCP-603-JP-2-いは「お前らも音ゲーやんなきゃ」「もっとスゲえ人間になれる」などと興奮した様子で話し、研究員の手を乱暴に引いて収容室に連れ込もうとしました。SCP-603-JP-2-いの運動能力は高くなかったため、当直のセキリュティのみで鎮静剤を使用し収容を回復しました。 その後の調査で、侵入やシステムトラブルの可能性は低いと結論づけられ、SCP-603-JP-2-いが自力で収容を破ったと推測されるため、セキリュティ上の重大な脅威と判断されました。実験は終了され、SCP-603-JP-2-い、ろ、はは終了し解剖調査を行いました。 解剖の結果、SCP-603-JP-2からは人間には存在しない多数の器官、臓器、骨や筋肉が発見されました。特筆すべきは神経器官の発達であり、特に脳幹、脊髄、末梢神経は著しく発達していました。 SCP-603-JP-2-い、ろからは神経の露出したプラグもしくはソケットのような臓器が多数見つかりました。SCP-603-JP-1-いのコントローラーのコードが千切られ、SCP-603-JP-1-ろの内部に神経組織が張り巡らされていたことから、電子機器に直接接続し操作を行う能力を獲得したものと思われます。この能力によって、収容室の電子錠を破り脱走したと推測されます。 補遺: 複数のアミューズメント施設の監視カメラ映像、また店員の証言から医療用マスクと安全眼鏡で顔を隠した作業員がSCP-603-JP-1のパーツの入れ替えをしているのが確認されました。全て同一の作業員と思われます。現在この作業員の身元について調査していますが、アミューズメント施設外での痕跡は発見できていません。
scp-604-jp
評価: +9+–x アイテム番号: SCP-604-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-604-JPは対電磁加工済みの保管室に保管されます。当該保管室にはセキュリティクリアランスレベル3以下の職員が立ち入る事は禁止されています。Dクラス職員以外によるSCP-604-JP-1の閲覧はいかなる理由があっても許可されません。 説明: SCP-604-JPは、不明なメーカー製のUSBメモリです。外見上は一般的なUSBメモリとの差異はなく、また一般的なUSBメモリと同様にコンピュータに接続する事が可能ですが、20██年現在の技術では不可能な大容量1を有しています。 内部にはおよそ████TBのデータ(以下SCP-604-JP-1)が記録されています。SCP-604-JP-1自体は意味を成さない膨大な文字列であることが判明しています。確認された限り、SCP-604-JP-1は認識災害を引き起こします。SCP-604-JP-1により引き起こされる認識災害は確認された例としては 頭部を不要な存在であると認識し、可及的速やかにいかなる手段を用いても自らの頭部を除去しようと試みるようになる 血液を不浄なものとの認識を得、自分の体内から少しでも多くの血液を排出しようと試みるようになる 口から食物を体内に取り入れるのは不可能であるという認識を得、口以外の場所から食物を取り入れようとするようになる。当然不可能であるため最終的には餓死する など、ほぼすべてが致命的な事態を引き起こすものである事が判明しています。なお、これらの認識災害には記憶処理は無効である事が判明しています。 +要セキュリティクリアランスレベル4  - 確認しました 説明: SCP-604-JPは、不明なメーカー製のUSBメモリです。外見上は一般的なUSBメモリとの差異はなく、また一般的なUSBメモリと同様にコンピュータに接続する事が可能ですが、20██年現在の技術では不可能な大容量を有しています。 内部にはおよそ████TBのデータ(以下SCP-604-JP-1)が記録されています。SCP-604-JP-1については「致命的な認識災害をもたらす無意味な内容の文字列」とされていますが、これは財団により故意にセキュリティクリアランスレベル3以下の職員に対し流された欺瞞情報です。 実際のSCP-604-JP-1は未知の世界(以下仮にSCP-604-JP-Worldとします)に関する歴史、地理、社会等のデータやSCP-604-JP-Worldの産物と思しき小説や音楽等の創作物のデータです。データの形式はほとんどがpng 、gif、txt、html、mov、docx、mp3等既存の形式で保存されていますが、中には未知の拡張子で保存されており、内容が不明なデータも存在します。 SCP-604-JP-1の一部 内容 形式 備考 SCP-604-JP-Worldのものと思われる世界地図 画像(gif) 現実世界といくらか一致する点も見られるが、マリアナ海溝があるはずの部分が陸地になっているなど、差異が多く見られる。 SCP-604-JP-Worldの構成国家の1つと思われる国家に関するデータ 画像付きの文書(html) おそらくネット上の百科事典サイトのデータをそのまま保存したものと考えられる。当該国家は日本に多くの点で類似しているが、北海道にあたる島が大陸と陸続きになっているなど多くの点で差異が見られる。これに類似した「国家」のデータは現在250個程確認されている。 日本語で歌われる未確認の楽曲 音楽(mp3) 20██年現在確認されていない未知の楽曲。歌詞は日本語であるが、歌詞の中には█████(文脈から地名と推定される)や███(文脈から菓子の名称と推定される)など、現実世界の日本語には存在しない単語も見られた。類似する曲調の楽曲が██曲収録されており、添付されたデータには███ ███なる人物2が作曲者とある。 客船と思われる船舶を撮影した画像 画像(png) 港湾施設に停泊中の大型の客船と思われる船舶を撮影した写真。船舶の側面には「Disney Magic」と書かれている。また、港湾施設については南アフリカ共和国の█████港に酷似しているという指摘が為されている。 間欠泉や熱水泉等を撮影した画像群 画像(png) 撮影されている対象についてはほぼすべてがイエローストーン国立公園に存在する間欠泉等と一致する事が確認されたが、いくつか現実には確認されていないものを撮影した画像も含まれている。 SCP-604-JP-Worldの財団に相当すると思われる組織の人員の一部 文書(docx) SCP-604-JP-Worldの財団に相当すると思われる組織の人員について記載された文書。表題には『サイト-81FP職員名簿』と書かれている。内容は激しく損壊しており、8割ほどは読み取る事はできない。 空白 SCP-604-JP-1の内容はほぼ全てが現実世界のものとは似ているものの完全には一致しない内容ですが、視聴した人間は一様に「なぜかは不明だが懐かしく感じる」という感想を持ちます。それ以降の変化は以下の通りです。 平均SCP-604-JP-1視聴合計時間3 被験者の立ち振る舞い等 ~6時間 SCP-604-JP-1に対し「なぜかは不明だがとても懐かしい」という感想を抱く。なお、具体的に理由について説明できる者はいない。この段階まではクラスA記憶処理で対処可能。 6時間~12時間 SCP-604-JP-1に対し懐かしさを感じる点は変わらないが、具体的な理由4を述べるようになる。また、現実世界とSCP-604-JP-Worldに関する情報を混同するようになる。 12時間以降 被験者は自分がSCP-604-JP-Worldの住人である、という明確な意識を持つようになり、また以前からそうであったかのような振る舞いをするようになる。またこの時点で現実世界の事については全ては作り物であり、SCP-604-JP-Worldこそが本当の世界であると認識するようになっている。 特筆すべきはSCP-604-JP-1データ群の中には財団が収容しているSCPオブジェクトに関する情報や財団の運営に関する情報も含まれており、中にはセキュリティクリアランスレベル3以下の人間には開示されていない情報も含まれている事です。他には現在財団が収容、もしくは確認していないオブジェクトに関する情報も含まれており、これらについては情報漏洩等の可能性もあるとして目下調査中です。 補遺:20██/██/██、SCP-604-JP-1データ群の中に唯一上記の異常性が存在しない事が確認されたデータが発見されました。データはテキストファイルで、内容は以下の通りです。 私がやっている事は財団への、人類へのある意味での裏切りなのかもしれない。 だが、私はやはりこの世界が好きなのだ。人々、社会、音楽、小説、絵画、その他諸々が大好きなのだ。 確かにこのままあの計画が行けば人類は生き残る。だが、これらは消えてしまう。 私はそれがあまりにも悔しく、あまりにも悲しい。私はそれを望まない。 私は一縷の望みをかけ、こいつにそれらを放り込む事にした。 確かにこの世界は失敗した。だがそれでもなお私はこれらに生き残ってほしいのだ。 サイト-81LG セキュリティクリアランスレベル4 E███ F███博士 なお、財団においてE███ F███博士なる人物は所属していないことは確認済みです。また、サイト-81LGなる施設も存在していません。 SCP-604-JP-1の内容は何らかの原因で一度世界が滅び、そして何らかの手段で気付かれぬよう再建された事を示唆しているように思われる。だが、だからなんだと言う話だ。神秘的かもしれないがよくわからないデータに惑わされてはならない。以前の世界があろうとなかろうと、我々が暮らし、守っているのはこの世界なのだ。 -████博士 Footnotes 1. 少なくとも65536TB以上の容量がある事が確認されています 2. 当該人物は現実世界では確認されていません。 3. これらはあくまでも平均的な時間であり、所要時間には個人差があります。 4. これまでには「この歌手は昔気に入っていた(音楽ファイルの場合)」、「以前旅行に行ったことがある(風景を撮影したと思しき画像ファイルの場合)」などがあります。
scp-605-jp
評価: +128+–x 回収前に撮影されたSCP-605-JP。 アイテム番号: SCP-605-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-605-JPは、サイト-8122において、3x10x10mの特別収容房の上に標準オブジェクト保護房を被せた形で保管されています。実験をする場合は、レベル3以上の職員二名、あるいはサイト管理官の許可を得た上で行ってください。実験を行う際は、逐一SCP-605-JP-1の内容について記録することが義務付けられています。 説明: SCP-605-JPは、対局の度に未知のルールにより対局が行われる、一見通常のオセロです。SCP-605-JPはその周辺に2名以上の人間が存在するとその効果を発現します。特異性が発現すると、周辺にいた人間が二名以上居る場合対局を強制され、対局が開始されると更に周囲の人間にまで特異性を発現、解説や実況、観客等として引き込みます。これはオセロのルールを全く知らない人間に対しても影響を与え、遊戯の実行を強制させます。この効果はSCP-605-JP周辺、縦3m、横10mに及びます。また、曝露範囲内に居る人間が1名のみの場合でも、何らかの「ひとり遊び」が発生する可能性があります。 上記の効果に曝露した人間は、大抵の場合「対局者」「解説と実況」「それ以外の観客」とに別れます。対局者2名をSCP-605-JP-A、Bとし、解説、実況に立つ者をC、D。それ以外の観客群をE群とします。これらの曝露者群は対局中完全にその場に固定され身動きが取れなくなり、外部からの干渉を無効化します。その上でSCP-605-JPはこれらの曝露者に対し、全く不明なルールと法則性に基づき、未知の遊戯(以降SCP-605-JP-1と呼称)を行わせます。SCP-605-JP-CとSCP-605-JP-DはSCP-605-JP-1についてさも造詣が深いように振る舞い、実際そのように発言、解説を行います。これに加えてSCP-605-JP-E群もSCP-605-JP-1に対し、ある程度理解を持つような傾向を示します。 SCP-605-JPは3時間の対局を行わせ、その後、1時間の「休憩時間」を曝露者群に対し与えます。曝露者群はこの際に特異性から解放されますが、SCP-605-JP-1について何も覚えていません。しかしSCP-605-JP-1に対する「熱中感」は残っていると思われ、大抵の場合再び対局及び観戦に戻ろうとします。これはクラスA以上の記憶処理により影響を取り除くことが出来ますが、何らかの形で決着がついていた、あるいは戦局が対局者のいずれかに傾いていた場合、記憶処理が効果を為さない「達成感」、あるいは「敗北感」が残留するケースが見られ、ゲームを継続する事自体に何らかの中毒性を生じさせているのではないかと推測されています。 SCP-605-JP-1は対局の毎性質を変え、また対局終了後には元の状態に戻ります。同じルールの遊戯が行われることはありません。対局後には曝露者から遊戯に関する記憶が完全に消失するため、SCP-605-JP-1については対局中の会話と様子しか記録に残っていません。SCP-605-JP-1について完全なルールを観客群の1名から聴取しようと試みましたが、インタビューに対し全くの返答を見せず、対局中の情報以外に言及することはありませんでした。 SCP-605-JP-1の対局記録(一部抜粋) 対局日時 参加者 内容 結果 2013/8/20 ██六段、██七段 ████テレビにおいて異様な碁の生放送が行われている、との通報により発覚。開始から██時間が経過していた。██七段が長考に入っていたが、そもそも碁盤ではなくオセロ盤が展開されており、盤上に白石が1つ置かれていた。その状態のまま休憩時間へと入る。 休憩時間中に関係者全員に記憶処理。カバーストーリー[金十字]により収束し、SCP-605-JPはこの際回収された。 2013/9/1 D-605-JP-1 収容房に入るなり石を房中にばら撒き、その上を信じられないほどのバランス感覚で飛び回る。加えて、着地した全ての石を跳躍の度に反転させていた。なお、D-605-JP-1に対する事前調査では、このような運動能力は確認されていない。 148回目の跳躍にて着地の際に足首を挫き、一時D-605-JP-1は蹲る。その後、「八艘飛びが、八艘飛びが」と頻繁に口にしていたが、直後に休憩時間に入ったと見られる。足首をかばいながら盤面の前に着席した。この後、D-605-JP-1は無人機械により回収し、記憶処理を行い回復させた。D-605-JP-1は、「何故怪我をしたのかさっぱり覚えていないが、不思議と気分は良い」と証言している。 2013/9/11 D-605-JP-1、D-605-JP-2 盤面は極端に狭くなり、本来のサイズから10分の1に縮小。にも関わらず石の数が極端に増加。対局開始から数分後、D-605-JP-1は逆立ちをした体勢で黒面を表にした石を指し始め、対してD-605-JP-2は白面を表にした石を合掌するように拾い上げてから指し始めた。D-605-JP-1は体勢を維持したまま頻りに悩むような素振りを見せていたが、D-605-JP-2は終始スムーズに指す様子が見られた。最終的に盤面上には物理的に不可能な形(明らかに重力を無視したアーチ型)で大量の白石が積み上げられていた。 休憩時間中に記憶処理にて終了。 █時間に渡る逆立ちにより、D-605-JP-1は極度の疲労と、オブジェクトの影響と思われる敗北感を訴えていた。 2013/9/20 D-605-JP-1~4 盤面が碗状に変形。対局者2名が碗状の盤内へ石を投入すると、石は碗内部を急速に回転し始めた。D-605-JP-2が「あなや!」と発言すると、内部の石は黒面になった石1つを残し凄まじい勢いで外部へ撒き散らされた。これに対しD-605-JP-1は「かくや!」と発言。猛烈な勢いで飛び散った石が内部へ戻り、石1つが高々と碗から飛び上がる。D-605-JP-3、4はその様子を見るなり顔を覆い涙を流し、「まさか」「まさか」と発言を繰り返していた。 休憩時間に終了済。碗内部から飛び散った石の1つが終了後も消滅せず、その場に残されていたが、突如飛び上がりD-605-JP-1の顔面に直撃、鼻の骨を折った後に盤の下に滑り込み消失。この石は発見されておらず、現在も捜索が続けられている。D-605-JP-2は記憶処理後、「何かとても楽しいことがあったような気がする」と証言した。  2013/10/2 D-605-JP-1~6 対局者二名、解説と実況、観客二名の構成。解説内容は付録を参照。対局から█時間後、唐突にD-605-JP-2が立ち上がり、「我此処に勝利を宣言し、愚者への降伏を推奨する」と発言。対してD-605-JP-1は「空未だ輝きに満ち、石は天蓋に散る星々の如く。我未だ凶兆見えず。汝如何にして打ち砕かんや?」と発言、D-605-JP-2はそれを聞き納得したように深く頷き、「まっこと愚昧。しかし面白い。汝が吉兆見せてみせよ」と呟く。その後、双方は再び対局に戻った。 石は七色に輝いており、盤面はオーロラの発生した夜空のような様相を示している。2度目の休憩時間中、盤内に太陽のような惑星が観察されており、房内全体に強い光を放っていた。この時点で対局は中断され、盤、石は通常のものに戻った。終了するなり、D-605-JP-1は大量の鼻血を吹き出し昏倒。前述の実験の負傷に何らかの影響があったと見られる。記憶処理後、対局していた2名から特筆すべきような証言は得られず。 2013/10/16 D-605-JP-1~6 同上の構成。対局者二名が不意に盤面の四隅端に座り直すと、実況と解説であった二名も同じく盤面の四隅前に座り、対角線を埋めた。その後、観客群であったD-605-JP-5、6は実況と解説に回る。盤面上には戯画化された妖怪のような3Dアニメーションが4名分表示され、四隅に座ったD-605-JP-1~4は石を固く握りしめていた。その後、アニメーション内において戯画達のオセロによる対戦が行われていた。 対戦が終わらず、その内にD-605-JP-3が卒倒。立て続けに他2名が卒倒し、そのまま休憩時間に入ったと見られる。D-605-JP-4のみ軽い疲労を見せていた。原因は不明だが、検査の結果ほぼ全員の脳に対し強い負担が掛かっていたことが判明している。 D-605-JP-4のみ、「強い達成感」を抱いたと証言。 2013/11/1 D-605-JP-1~6 構成は同様。D-605-JP-1、2、共に盤面上へ載り、その後舌を突き出してその上へ石を積み始めた。その後、D-605-JP-3,4が、舌上に積み上がった石をジェンガ・ゲームのように抜き取り始める。抜き取る度に、D-605-JP-3、4は「無情」「無情」と呟いていた。物理的に無理のある積み上げが崩壊しない理由は全く不明。 休憩時間に入っても、D-605-JP-1,2は舌を突き出し石を積み上げたまま静止していた。この時点でなお二名の舌上に載った石は10段以上を記録しており、対局終了後、2名の舌には強い圧迫を受けた際の壊死と、筋断裂が発生していた。また、積み上がった石は無人機器がD-605-JP-1に触れた段階で弾け飛び、近辺に居たD-605-JP-3、4が軽傷を負った。D-605-JP-1、2は双方とも猛烈な達成感を感じたと証言している。 以下は、2013/10/2において発生したSCP-605-JP-1事案の実況、解説記録です。 + SCP-605-JP-1 付録 - 付録を閉じる SCP-605-JP-1 付録 記録日時: 2013/10/2 インタビュアー: 田辺博士 対象: D-605-JP-1~6 注:質疑の投げ掛けは収容房外部から遠隔で行った。 田辺博士: えー、君達。ちょっと良いかい。 D-605-JP-3: (沈黙) D-605-JP-4: (沈黙) 田辺博士: なあ、質問に答えてくれないか。 D-605-JP-5: おぉ……! D-605-JP-6: 眩い。 D-605-JP-3: 黒、魅せる。手番も残り少なく、状況としては絶望的。しかし。まだ輝きは潰えない。 D-605-JP-4: 今の手は素晴らしかったですね。木星から土星に掛けた円環の角度の急激な上昇に伴い地球の引力に働きかけた。これは彗星を呼ぶつもりなのでしょうか。 D-605-JP-3: 当然ながら白も未だ兆候見えず。未だ天蓋に遍く輝きを齎す。 田辺博士: おい、君達の盛り上がってるゲームについて教えてほしいんだが。 (ここでD-605-JP-2、左の拳を高々と掲げ、ゆっくりと小指を立てた。) D-605-JP-5: そんな……! D-605-JP-6: 鋭い。 (対してD-605-JP-1、右の拳を掲げ、盤面で回転している石を指さして愉快そうに笑った。) D-605-JP-4: おおーっとここでまさかの太陽黒点に働きかけたァー!! 水星からハレー彗星へ、水星から太陽への連なりが重なったァー!! (D-605-JP-2、愕然とした表情で手元を見る。手元には何もないが、しばらくの黙考の後、不敵に笑んで汗の滴る頬を拭った。) D-605-JP-3: 終ぞ凶兆。しかし、これは。どう魅せる? D-605-JP-5: ああっ、ああぁぁっ……! D-605-JP-6: 深い。 田辺博士: (沈黙) (なおも実況、解説は盛り上がりを見せ、D-605-JP-5は涙を流し続け、D-605-JP-6はただただ頷き続けている。) 田辺博士: (四秒間の沈黙)時間の無駄だ。……本当に。インタビューを終了する。 補遺: SCP-605-JP█回目の実験後、SCP-605-JPを保管していたと見られる紙箱が発見されました。箱の表面には「異 誤リバーシ」とだけ記載されており、同封されていたルール説明書(内容はオセロのものではなく碁のもの)と、「誤ったケースに入れないでください」との注意書きがありました。これらは元々所有していた████テレビにおいても入手先がわかっておらず、製造元や販売元等も判明してません。保管箱の側面には、「パーティ・アイテムシリーズ」として「称 偽シャトランジ」の文面と、それに付随した、将棋盤上に置かれたチェスの写真が確認されています。
scp-606-jp
評価: +241+–x 評価: +241+–x クレジット タイトル: SCP-606-JP – 拷問教会 著者: ©ykamikura 作成年: 2016 この著者の他の記事 評価: +241+–x 評価: +241+–x SCP-606-JP屋内の様子 アイテム番号: SCP-606-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-606-JPの敷地は、対人センサー付きのフェンスで覆われています。センサーの感知範囲に部外者が侵入した場合、カバーストーリー「補修工事」を用いて退去させて下さい。 実験許可の可否は、研究主任に一任されます。SCP-606-JP-1との接触は、Dクラス職員にのみ許可します。他クラス職員は、単独で屋内に入らないで下さい。   過失等の不測の事態により、被験者以外の職員がSCP-606-JP-1に遭遇した場合、絶対に提案を了承してはいけません。警備員は直ちに屋内に突入して、SCP-606-JP-1との会話を中断させて下さい。 ※201█/█/██追記、現在SCP-606-JP-1は出現できない状態ですが、収容及び経過観察は続行して下さい。 説明: SCP-606-JPは██県██市郊外の緑地帯に存在する、キリスト教の教会堂と推測される建造物です。サイズは約30×23×12m、身廊と翼廊が交差して十字架を模しているいわゆるバシリカ型で、その他の建築要素もおおむねキリスト教会堂の建築様式に則っています。正面玄関口にラテン語で”聖カタリナ告解教会”と記されていますが、市役所や日本キリスト教協会などいかなる組織にも記録はなく、現地調査や周辺住民への聴取でも詳細は判明していません。   SCP-606-JPに入った人間(以下、入場者)が以下の条件を全て満たした場合、キリスト教の修道女のような服装をした人型実体(以下、SCP-606-JP-1)が出現します。外見上の年齢は20代、人種は白人とアジア系の混血に近く、目撃者の多くが「美しい、優しそう、神々しい」といった肯定的な感想を述べます。名前を尋ねた場合”シスター・カタリナ”と名乗ります。   SCP-606-JP-1出現条件: 1. 入場者が殺人罪、過失致死罪、強姦罪を犯したことがある(検証中、条件を満たす罪状が他にも存在する可能性あり)。   2. 入場者が単独である(出現中に第三者が屋内へ侵入した場合、SCP-606-JP-1は一時消失)。   3. SCP-606-JP-2(後述)内に入場者がいない。   SCP-606-JP-1は入場者に好意的な態度で接し、会話を交わしながら告解室に向かって歩きます。入場者は無自覚の状態で、その後を追うことになります。   告解室に入ると、SCP-606-JP-1は入場者の過去の犯罪を正確に言い当てます。そして、この教会で償いをすれば、被害者に与えた損害を現実改変的な手段で回復しようと提案します。明らかに物理法則から逸脱した内容ですが、入場者はその真偽を疑う様子を見せません。   提案を拒否した場合、SCP-606-JP-1は気が変わったらまた来るよう言い残して一時消失します。了承した場合、入場者はSCP-606-JP-1と共に転移させられます。   転移先は、約10×10×5mの石壁の部屋(以下、SCP-606-JP‐2)です。GPSがエラーを示すため、位置は不明です。内部には中世ヨーロッパで用いられた様々な拷問具が並んでいます。入場者は衣服を脱がされ、いずれかの拷問具に拘束された状態で現れます。   そして、SCP-606-JP-1は数十秒をかけて身体的特徴を変化させます。断片的な映像や、入場者の証言を統合すると”全身の筋肉が盛り上がり、ごわごわした黒い体毛に覆われ、身長は2.5mにまで伸び、額からは山羊のような角が生え、口は耳まで裂け、目は血のような赤”になり”修道女の服装だけは元のまま”と表現できます。   変化が終了すると、SCP-606-JP-1は入場者を拷問し始めます。SCP-606-JP-2内では、入場者が死亡することはありません。致命傷を負った場合、即座に完治し、別の拷問具に拘束された状態になります。そして、SCP-606-JP-1は拷問を続行します。入場者が中断を懇願した場合、心臓が消失した死体となってSCP-606-JPの祭壇に再転移されます。   どの程度の期間耐え続ければ償ったと認められるのか、本当に現実改変に類する現象が起きるのか否かは、未だ”償い”を完了した例がないため不明です。   現在SCP-606-JP-1はインシデント-606-JP(追加欄参照)の結果、出現できない状態です。   発見者のコメント: 諜報局監査部の要請で削除インシデント-606-JPを受け再開示されました 《インタビューログを元に編集》   咲沼博士(当SCP事案研究主任): どうやってあの教会を見つけたの?   エージェント・蒼井(SCP-606-JP発見者): 何、ただの偶然だよ。休暇中に、趣味の写真撮影のために緑地帯に入り込んだら、木々の間から突然現れたんだ。尖り屋根の十字架に西日が差す様が、実に荘厳でね。何枚か撮っている内に、中がどうなっているのか気になってきて。見ると、玄関扉は開いているし、ちょっとだけのつもりで覗いてみたんだ。 中はがらんとして、人影はなかった。派手ではないが重厚な装飾に、ステンドグラスから差し込む光。祈りの家の神聖な雰囲気に、思わず気圧された。興味本位で入る場所じゃないなと思って、引き返そうとしたら、声を掛けられたんだ。   「聖カタリナ告解教会へようこそ」ってな。   絶対に、一瞬前まで、そこには誰もいなかったのに。まるで、最初からいたかのようにシスター・カタリナ、ああSCP-606-JP-1だっけ。彼女が祭壇の前に立っていた。覗きを謝る俺に、彼女は「教会は万人に開かれております」と言って微笑んだ。綺麗で、優しそうな人だったな。どことなく、あいつに似て。いや、何でもない。   趣味のことを話すと、快く案内してくれて。どういう流れでそうなったかは、よく覚えていないんだが、気が付くと小さな部屋で彼女と差し向かいになっていた。そこが告解室、いわゆる懺悔を行う場所だとは、後で宗教関係に詳しい後輩から教えられたが。   そこで彼女は、俺の昔のあやまちを言い当てたんだ。   咲沼博士: あなたのあやまちとは?   エージェント・蒼井: すまない、それは言えない。監査部の機密に抵触する。まあ、当時の上司や、理事連中でもなきゃ知るはずがないことだとは言っておくよ。   彼女はこう続けた。「神は七度悔い改める者を、七度お許しになります。ここで償いをなさい。さすれば神は」俺のあやまちを帳消しにしてくれる、と。   咲沼博士: あやまちを帳消し? 何かの例え?   エージェント・蒼井: いいや、文字通りの意味だ。その、例えばの話だが、人を殺したことがあるとしたら、被害者を生き返らせてくれるらしい。   咲沼博士: それを信じたの?    エージェント・蒼井: ああ、信じた。神様はともかく、現実改変が絵空事でないことは知っている。いや、知らなくたって、信じたと思う。彼女は真実を告げている。少なくとも、そう確信させるだけの何かが、その言葉にはあった。   咲沼博士: ”償い”というのは、具体的にどんなことを?    エージェント・蒼井: すまない、それは聞きそびれた。そこで、急に恐ろしくなって、教会を飛び出してしまって。ぐずぐずしてると、彼女の提案を受け入れてしまいそうでな。    調査ログ‐606‐JP(抜粋): 全文は中央資料室██‐████区画に保管   第1次調査: 日付201█/█/██ 目的: 予備調査。 手段: Dクラス職員3名を潜入させる。 結果: 6時間に渡って内部に滞在させるも、SCP-606-JP-1は出現せず。 第2次調査: 日付201█/█/██ 目的: 発見時の状況から、入場者が単独でないとSCP-606-JP-1が出現しない、入場者の犯罪歴も出現条件に含まれるという仮説の検証。 手段: それぞれ犯罪歴の異なるDクラス職員を一名ずつ潜入させる。 結果: D-6192(罪状、詐欺罪)、出現せず。D-0592(罪状、強盗傷害罪)、出現せず。D-2986(罪状、殺人罪)、潜入直後、背後に突如SCP-606-JP-1が出現。 SCP-606-JP-1、D‐2986に話しかける。D‐2986、驚きつつも会話に応じる。 SCP-606-JP-1とD‐2986、天気などの当たり障りのない会話をしながら、告解室に移動。 SCP-606-JP-1とD‐2986、告解室に入室。SCP-606-JP-1、D‐2986の犯罪歴を指摘。“償い”をすれば、被害者を蘇生させようと提案。D‐2986が拒否すると、気が変わったらまた来るようにと告げ、SCP-606-JP-1消失。D‐2986、拒否した理由については「嘘を吐いているとは、微塵も考えなかった。断ったのは、どうせ1ヶ月あんたらの実験に付き合えば釈放してもらえるから」と述べた。 第3次調査: 日付201█/█/██ 目的: SCP-606-JP-1出現条件の絞込み。 手段: それぞれ犯罪歴の異なるDクラス職員を潜入させる。SCP-606-JP-1の提案は拒否するよう、あらかじめ指示。 結果: D-3915(罪状、放火罪)、出現せず。D-7522(罪状、国家反逆罪)、出現せず。D-6130(罪状、麻薬取締法違反)、出現せず。D-2827(罪状、危険運転過失致死罪)、出現。D-8834(罪状、強姦罪)、出現。   〈中略〉   SCP-606-JP-1、D-8834の犯罪歴を指摘。“償い”をすれば、被害者が心身に負ったダメージを完治させようと提案。D-8834、指示に逆らい了承しようとしたため、警備員が突入。直後、SCP-606-JP-1消失。D-8834の処分は見送り。   研究主任のコメント: 入場者が1人でないと出現しないというのは、懺悔のスタイルに則っているのかもしれないわね。あれは司祭と信者が1対1で行うものだし。それにしても、出現条件の基準は何なのかしら。殺人、過失致死、強姦。強いて共通点を挙げれば、人の努力では償いようがないことかしらね。   付記: 咲沼博士、次回の調査から、被験者にSCP-606-JP-1の提案を了承させることを倫理委員会に申請。倫理委員会、了承時の反応を確認する手段が他にないという博士の主張を受け、申請を受理。 第4次調査: 日付201█/█/██ 目的: SCP-606-JP-1の提案を了承した場合に見せる反応の確認。 手段: D‐2986(第2次調査に参加済み)を潜入させる。SCP-606-JP-1の提案を了承するよう、あらかじめ指示。 結果: 潜入直後、SCP-606-JP-1が出現。   〈中略〉   D‐2986が提案を了承すると、直後に両者共に消失。GPS、位置エラー。通信機、一瞬のノイズを経て、石組みの壁を撮影し始める。床が間近に写っており、画面の端にはDクラス職員支給制服が落ちている。識別票からD‐2986の物と確認。共に床に放置されていると推測。   《音声ログを元に編集》   咲沼博士: D‐2986、D‐2986、応答して。   D‐2986: な、何が起こった!? 何処なんだ、ここはよ!?   咲沼博士: 通信機を落としたの? 早く付け直して。   D‐2986: [じゃらじゃらという金属音]ば、馬鹿野郎、そんなことしてる場合じゃねえよ! 早く助け。   咲沼博士: 落ち着いて。GPSは位置エラーよ。他に何らかの情報がないと、救助に向かえないわ。   D‐2986: わ、分かったよ、くそっ。窓のない部屋だ。いや、窓どころかドアもねえ。一体、どうやって入ったんだ? 気味の悪ィモンが一杯ある。顔が付いた棺桶だの、刺がびっしり生えた椅子だの、真っ赤に焼けた石が入った壺だの。魔女狩りかっつーの。いや、そんなことより、俺のことだよ! 素っ裸にされて、まな板の化物みてえな物に磔にされてんだよ! は、早く助けに。    ※映像の壁に、SCP-606-JP-1のものらしき影が映る。   SCP-606-JP-1: 贖罪の間へようこそ。   D‐2986: あっ、このアマ、これはてめえの仕業か!? 一体何のつもり。   SCP-606-JP-1: 信じております。あなたはきっと、神の試練に耐えて下さると。それでは。   D‐2986: 聞いてんのか、早くこの鎖を、え? あ、え?   ※振動と共に、SCP-606-JP-1の影が変形し始める。   未知の音声、後に変化後のSCP-606-JP-1と判明: 汝、罪に相応しき、罰を受けよ。   D‐2986: う、うわああ、ば、化物!?   咲沼博士: D‐2986、状況を。   D‐2986: な、何だそいつは!? まさか、そんな、や、やめろ、やめてく[悲鳴と共に何かが焼ける音]   ※数分に渡って、D‐2986の悲鳴と何かが焼ける音が続く。   D‐2986: [嗚咽混じりに]も、もう、やめてくれぇ。   SCP-606-JP-1: 償いは、まだ済んでおらぬ。   D‐2986: ギ、ギブだギブアップ! 命令されて仕方なく言っただけだ!   SCP-606-JP-1: ████(D‐2986の被害者)を、生き返らせたくはないのか。   D‐2986: あんな女、殺されて当然だ! [不適切な表現]の癖に逆らいやがって! 俺は悪くな[呻き声と共に沈黙]。   SCP-606-JP-1: 汝、許しを得る、資格なし。   《通信中断》   ※ほぼ同時に、D‐2986の死体が祭壇上に出現。不明な手段により心臓が抉り出されていた。加えて、十数カ所に重度の火傷、熱した金属の拷問具が用いられたと推測。 第5次調査: 日付201█/█/██ 目的: ”償い”を完了した場合に起きる現象の調査。 手段: D-8834(第3次調査に参加済み)を潜入させる。内蔵型のヘルスメーターを埋め込み手術済み。選抜理由・自身の犯罪を悔いており、なおかつ健康状態も良好。 結果: 〈前略〉   通信機、一瞬のノイズを経て、滑車や鎖が吊るされた天井を撮影し始める。   〈中略〉   D-8834、約4時間に渡って拷問されるも、継続を希望。ヘルスメーターは深刻な数値を表示。    《音声ログを元に編集》   D‐8834: ああ、私は、死ぬのか。でも、これで、償える。私に汚された少女達が、救われるなら。   ※ヘルスメーター、D‐8834の心拍停止を確認。数秒後、ヘルスメーターの全数値が正常値に戻る。   D‐8834: え? な、何が起き[悲鳴]。   咲沼博士: あら、ヘルスメーターの故障だったのかしら? D‐8834、何があったの?   D‐8834: け、怪我が治ってる! それに、いつの間にか刺付きの椅子に座らされて[呻き声]。   SCP-606-JP-1: 汝の罪は、あまりに重い。一度の死では、償えぬ。   D‐8834: なっ!?   SCP-606-JP-1: 耐えよ。罪が許される、その時まで。   D‐8834: [悲鳴]も、もう無理、無理だよおおおおっ! やめてく[呻き声と共に沈黙]。   SCP-606-JP-1: 汝、許しを得る、資格なし。   《通信中断》   ※ ほぼ同時に〈中略〉加えて、背中から足裏にかけて無数の刺し傷。1回目の心拍停止時点までD‐8834は鞭による拷問を受けていたが、その痕は存在しなかった。   研究主任のコメント: 悔い改めているDクラスなんて滅多にいないし、今後の実験大丈夫かしら。 第6次調査: 日付201█/█/██ 目的: 第5次調査の継続。 手段: D-8834と同条件のDクラス職員を潜入させる。 結果: 条件に適合する人材を確保できるまで延期。 研究主任のコメント: この際、やり遂げなきゃ終了だって脅して[倫理委員会の要請により以下削除] 201█/█/██、インシデント-606-JP追加情報(抜粋): 全文は中央資料室██‐████区画に保管 テキストを隠す 201█/█/██、人為的な収容違反発生。発見者であるエージェント・蒼井が警備班を無力化し侵入。直後、調査本部が彼からの音声通信を受信しました。 《音声ログを元に編集》   エージェント・蒼井: こちら、エージェント・蒼井。調査本部、聞こえるか? 時間がないので、一方的に話させてもらう。これから、SCP-606-JP-1と接触する。すまない、志願しても却下されるだろうし、これしか手段がなかった。   初めて会った時、SC……シスターに、こう言われたんだ。 「片岡様を殺めてしまったこと、後悔なさっておいでなのでしょう?」って。   かつての相棒、エージェント・片岡は[削除済]のスパイだった。俺の説得に応じず、重大な収容違反を犯そうとした。あのままでは、K‐クラスシナリオが起きていただろう。仕方なかった、後悔なんかしていない。つもりだったのに。はは、シスターに一言指摘されたら、あっさり気付いちまった。ずっと、自分を誤魔化していたことに!   SCP-606-JP-1: 聖カタリナ告解教会へようこそ。お待ちしておりました、蒼井様。   エージェント・蒼井: ああ、待たせたな。みんな、迷惑かけてすまない。せめてもの償いだ。しっかり記録して、研究してくれよ。   〈中略〉   ※通信機、一瞬のノイズを経て、壁に設置されたキリスト像らしき物を撮影し始める。   エージェント・蒼井: 通信機は、ああ良かった。ちゃんと服と一緒に置いてあるな。SCP-606-JP-2に潜入成功。俺の状態は、水車みたいな物に縛り付けられてるな。[火の粉が爆ぜる音]あちち、下で火が燃えてる。ああ、こいつが回る度に、あそこを通過する仕組みか。えぐいなぁ。   SCP-606-JP-1: 汝、罪に相応しき、罰を受けよ。   〈SCP-606-JP-2潜入より8時間37分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 1回目の死亡を確認。妙な感じだな。強いて似たものを挙げるなら、リアルな夢から覚めた時か。ああ、今は鋼鉄の処女に入れられて[金属がぶつかる音と共に呻き声]。   SCP-606-JP: 汝の罪は、あまりに重い。一度の死では、償えぬ。   エージェント・蒼井: その通り、だな[咳と共に吐血している様子]。   〈15時間12分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 2回目の死亡を確認。なあ、シスター。あんたは何者なんだ? 何が目的なんだ? [数秒沈黙]返答なし、と。見かけによらずシャイだねえ。[鎖を引く音]いつつ、後ろ手に鎖に繋がれて、引っ張り挙げられて、ああ、地味に痛いんだよな、これ。   〈21時間51分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 3回目の死亡を確認。今度は、梯子みたいな拷問具に縛り付けられてる。なあ、あと何回死ねば、理……片岡を生き返らせてくれるんだ?   SCP-606-JP-1: それは、神が裁定なさること。   エージェント・蒼井: だ、そうだ。[がたんという音]お、おいおい、身長なら足りてるよ、無理に引き伸ばさなくてもいいって。   〈29時間2分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 4回目の死亡を確、あっ[水音と共に通信中断]。   〈36時間27分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: ご、5回目の、死亡を確認。ああ、中断してすまない。水責めされてて、喋る暇がなかった。今は、ネジの付いた帽子みたいな物を被せられてる。おや、こんな物さっきまでなかったぞ。新しく生成されたのかも[キリキリという金属音]な、なるほど、こいつは頭を締め付け[呻き声]。   〈41時間6分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 6、回目の死亡、確認。さすがに、少し疲れたな。変だな、体は治ってるはずなのに。ああ、今度は刺の生えた鳥かごみたいな奴に[ギシギシと金属が軋む音]。   〈47時間29分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 7回、目。やっぱり、疲れてるな。体じゃなくて、心が。はっ、俺の心なんて、とっくに。ああ、すまない、状況は、足に、焼けた炭を[焦げる音]。   〈55時間51分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 何回目、だったか。ああ、8か。ええと[金属音]。   〈71時間3分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 9、回、目[打撲音]。   〈77時間25分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 10、回。   〈81時間42分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 11。   〈86時間15分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 多分、12。まだ、かな。   〈91時間21分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 何回目、だっけ。まだ、終わらない、のかな。償えない、のかな。理奈。   ※以降エージェント・蒼井のカウントが途絶えたため正確な死亡回数は不明   〈257時間19分経過時点まで中略〉   エージェント・蒼井: 通信機のバッテリーが切れかかってる、これが最後の通信になりそうだ。それに、さすがに限界みたいだ。この化物の顔が、理奈に見えてきてる。何だか、この償いが永遠に終わらないとしても、それはそれでいいような。理奈と一緒にいられるなら。そうだ、伝言頼めるかな。かわいい後輩の、エージェント・戸神に。不甲斐ない先輩からの、最後の助言だ。いいか、お前は。   俺みたいになるなよ。   《通信中断》 現在、インシデント-606-JP発生より███日が経過していますが、状況に変化はありません。
scp-607-jp
評価: +70+–x SCP-607-JP。 アイテム番号: SCP-607-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-607-JPの周囲には携帯火器で武装した職員を配置し、部外者の立ち入りを禁止してください。カバーストーリーは基本的に「解体工事の為立ち入り禁止」を適応しますが、カバーストーリーの変更を行う場合、レベル3以上の職員の許可を得てください。SCP-607-JP内に存在するSCP-607-JP-1および白骨は回収チーム("エクスプローラー")が回収を行っています。回収されたものはサイト-8123へ移送し、同サイトの標準収容コンテナにそれぞれ保管してください。 空白 説明: SCP-607-JPは和歌山県████市に存在する廃墟です。外見的な老朽化が進んでいるにもかかわらず、外壁や骨組みは頑強であり、衝撃耐久実験においても極めて高い数値を示しています。 SCP-607-JPの異常性は、2階と3階と4階に存在します。その内部は明らかにSCP-607-JPの外部から推測される面積より広く、一つの階層の総面積は約55万平方m1です。 各階層は「迷路のような」と形容される廊下と4003個の部屋で構成されています。部屋は縦8m×横8m×高さ8mの立方体で形成され、扉のみが存在し、窓はありません。 廊下とほとんどの部屋には、未知の生物の白骨が散乱しています。多数確認されているものでは以下の種類等です。 種類 考察 小人型 身長は50cmほど。身長に比較して頭部が極端に大きい。廊下、部屋の両方で多数確認されている。 蝙蝠型 翼長は推定3m以上。ほとんどが廊下で確認され、部屋内で確認された例は少数。 獣人型 頭骨のみが狼に似た生物のもので形成された人型の骨。身長は2m以上あったと考えられる。主に部屋内で発見されている。 他、多種の白骨が発見されていますが、風化の進行が激しいものが多く、詳細な研究は進んでいません。 また、4階の一室は、日光が差し込む作りとなっており、その内部には土が敷き詰められ、高さ1mほどの樹木が存在しています。樹木は梨(学名:Pyrus pyrifolia)とよく似た未知の果物(以下、SCP-607-JP-1)を3個から5個ほど不定期に出現させます。SCP-607-JP-1は高い栄養価を持ち、生物が経口摂取することで身体に良好な効果をもたらします。 睡眠障害の若干の回復 含有されているストレプトマイシン (streptomycin) による結核の回復2。 等の効果がDクラスを用いた実験によって確認されています。20██年現在、副作用といった悪影響も確認されていません。 SCP-607-JPは2010年7月12日、エージェント・████によって偶然に発見されました。同エージェントが私用での行動中、雨宿りにオブジェクト内へ入ったことがその発端です。その後、財団によって現在の収容体制が整えられました。 SCP-607-JPは1972年に[編集済み]を目的として建築されましたが、利用者の減少から廃棄され、解体されないまま1980年以降放置されていたことが判明しています。財団の調査の結果、少なくとも2009年までは異常性を発揮していなかったことが分かっており、正確な時期を求めるため、現在も調査が継続されています。 空白 補遺: SCP-607-JP内3階の一室から、古期英語によって書かれた冊子が発見されています。公開されている内容は以下の通りです。 ██の日 本日も大漁。人間の心臓は実に美味だ。 肉の部位など硬くて食っていられぬ。食べている者は何が良いのだか。 邪神も良いところに召喚してくれたもの。我らはここから出られずとも、生涯食うに困らぬのだから。 ██の日 最近、来る人間が少し減った気もする。人間どもに何か動きがあったらしい。 矮小な人間が何をしようが無駄なことよ。あの病魔を祓うにはこの果実を食べる以外にない。 病魔がある限り、我々は永遠に繁栄するのだ。 ███の日 今日は人間が来なかった。まぁこのような日もあろう。 人間は病魔を祓う薬を開発したらしい。 くだらん。人間が作る薬などであの病魔が祓えるものか。 「これからは人間を塩漬けにすべきだ」という意見が配下から出た。馬鹿馬鹿しい。 保存食など不味くて食えたものではない。 ███████の日 今日も人間は来ない。 なぜだ。あの病魔を祓う方法は、この果実以外にないはず。 あれだけ醜く群がってきた人間どもが、なぜ来ないのだ。 空腹で腕が震える。筆を上手く持てない。 思い出すのは「不味い」と捨てていった人間の部位のことばかり。 私はなぜあんなことを。 いやだ、死にたくない。誰かここから出してくれ。 Footnotes 1. 上野恩賜公園(53万平方m)ほどの広さ。 2. 本来、ストレプトマイシンの経口摂取はできないため、なぜ結核に効果があるのかは不明です。
scp-608-jp
評価: +64+–x 警告: レベル4情報災害 本報告書で言及される事項は全て、レベル4情報災害と位置付けられています。閲覧を続行する場合、レベル4/608-JPセキュリティクリアランスを提示してください。閲覧中はK-10ミーム媒介が常時展開され、「特定語句」が口述/記述される危険性を排除します。閲覧終了後は、セキュリティ担当者が到着するまで待機してください。 + セキュリティクリアランスを提示 - アクセス制限解除 SCP-608-JP(発見当時)。床は著しく変形している。 アイテム番号: SCP-608-JP オブジェクトクラス: Euclid Keter 特別収容プロトコル: SCP-608-JPが発見された家屋を含む、集落全域がレッド・ゾーンと指定されており、接近した民間人は拘束後、クラスA記憶処理を施し解放されます。当該地域は地図上から抹消され、カバーストーリー「消滅集落」が適用されます。SCP-608-JP-1、及びレッド・ゾーンへ配置される全職員は、K-10ミーム媒介を接種している必要があります。探査・観測で得られたあらゆる情報はレベル4機密として扱われます。SCP-608-JPが連鎖的活性状態へと陥った場合、プロトコル"忌み詞"が実施されます。 追記: レッド・ゾーンへ配置される全職員は、声帯が麻痺した状態で職務を遂行する必要があります。 説明: SCP-608-JPは、あらゆる要素が曖昧化し常時変動している殺人現場、あるいは自殺現場です。位相・室温・材質をはじめ、死者数・重力加速度・摩擦係数といった要素も変動しています。例外として、文書であるSCP-608-JP-a(後述)は位置や媒体こそ変動しますが、文章自体は不変要素として固定されている事が判明しています。 SCP-608-JPが有する異常性は、自身と関連する情報が「特定語句」を含む形で口述/記述された際活性化します。活性状態へ移行したSCP-608-JPは断末魔と形容される異音を発し続け、自身が有する要素を一つ以上1曖昧化させ不活性化します。対象とされる要素が値であれば幅が生じ、種別や特徴といった要素であれば複数要素が混在する状態へと変化します。一度曖昧化した要素が再度対象とされた場合、幅/混在要素はより増大します。 SCP-608-JP-1は、増減する死亡者として絶命と蘇生を繰り返す集団です。SCP-608-JP-1は記憶を保持していますが、近隣住民である31名は「第一発見者」として矛盾した証言をするため、事件発生当初がどういった状況であったかは判明していません。SCP-608-JP-1をあらかじめ死亡させる試み、およびSCP-608-JPから離脱させる試みは全て失敗しています。「死者数」が増加する際、SCP-608-JP-1は死因が刻一刻と切り替わる死体へと変化します。これは可逆的変化であり、「死者数」が減少する際、あらゆる損傷・症状から回復した状態で蘇生します。SCP-608-JP-1が蘇生する際、発声および記述する行為自体を抑止するミーム媒介は効力を喪失します2。これを受けて、特定語句排除へと特化したK-10ミーム媒介が開発されました。 付記: SCP-608-JP調査記録より抜粋 変動要素一覧(一部抜粋) 構成要素 最小値 最大値/混在要素 全高 0.3m 19.5m 室温 零下109℃ 130℃ 出入口数 0 14 死者数 1 38 床材 - 畳、コルク、大理石、コンクリート、氷、ビスケット、血液、[編集済] 用途 - 居間、書斎、寝室、応接間、浴室、映写室、アトリエ、心臓、胃、副腎 死因 - 服毒、窒息、失血、爆発、低体温、感電、圧潰、消化、石化 探査記録 608-JP-3 日付████/██/██ 監督者: ██博士 編成: D-60813、D-60814 装備: CCDカメラ、無線装置、GPS追跡装置 <記録開始> ██博士: では、扉を開けてください。妙だと感じた点があれば欠かさず報告を。 [重い金属音] D-60813: ……あー、コレは……今開けた扉はどう見ても木製だったと思うんだが、聞こえた通り……音はまるで鉄製だ。 ██博士: 結構。それでは探査を開始してください。 D-60813: 了解……コイツは……霧か?視界が真っ白だ。しかも床が凍りついてやがる……気を付けろよ。 D-60814: 分かった……おっと、全く……足場がデコボコして歩き辛い。 ██博士: 視界不良で映像は得られず……と。湿度が変動した結果か、もしくは……よろしい、暫く待機を。 (10分経過。) D-60814: ……いつまでこうして待機を?相変わらず霧は深いし、もう蒸し暑くて蒸し暑くて……息が詰まりそうだ。 ██博士: D-60814、床は凍ったままですか? D-60814: えっ?……ああ、凍ってるよ。 D-60813: ……こっちは床がブヨブヨしてやがる。気味がわりぃが……触って調べてみるか。 ██博士: ブヨブヨ……?D-60813、触れる際は手袋を── D-60813: 湿ったか[特定語句]! [持続する悲鳴] D-60814: おい!悲鳴だ!悲鳴!部屋中から聞こえる……どうすれば良い?! ██博士: こちら██。D-60813が特定語句を発しました……ええ、素手で床材と接触し……恐らくは感触を口述する際……痛みから不随意で発声を…… D-60813: クソッ、指が焼けるみてぇだ……さっきからギャーギャーうるせぇし……勘弁してくれよ畜生! D-60814: おい!指示をくれよ!鼓膜が破けそうだ! (悲鳴が途絶える。) D-60814: やっと鎮まったか……ん?……クラシック? (無線マイクは断片的ではあるが音楽を捉えており、分析した結果、ドビュッシー作『アラベスク第一番』であると判明した。) ██博士: D-60813、D-60814、探査は打ち切ります。至急脱出してください。 D-60813: ありがてぇ。クソッタレ屋敷とは一刻も早くオサラバしたかった所だ。 D-60814: ……さっきより霧が薄い。ただ時々視界が赤く……奥で赤い照明が点滅してるようだ。 (3分経過。) D-60814: ……どう考えてもおかしい。入る時通った扉はどこへ消えた?そもそも……これだけ歩いたらいい加減突き当たるはずじゃあ…… (4分経過。) D-60814: 寒い……さっきから動きも遅い……まるで水中を進んでるみたいだ。 D-60813: いいいつまでこここうしてと[特定語句]えも屋敷をた[特定語句]っぐすりゃいい[特定語句]あよ! [持続する悲鳴] D-60814: クソッ、まただ!出口はどこだよ?! D-60813: ここはマジジでさっさ寒い[特定語句]ようご、うごか、口がううまくく…… ██博士: D-60813!声を出してはいけません。両名とも発話を控えてください……はい、SCP-608-JPが再度活性化を……言及する際、生理的振戦で偶然発声された場合も条件を満たすようです。想定外でした……人員を用いた探査は今回で最後でしょう。 D-60814: 博士!見てくれ、床が……脈打ってる!……水……血、血だ!わぶ[不明瞭]めろ!へ[特定語句]からだしっ[不明瞭]ごろさべっ…… D-60813: たすっ、熱い熱いあづいあぢっぢがっ[絶叫] ██博士: D-60813!D-60814!応答を!…… (D-60813、D-60814が死亡。部屋は縮小し、心筋と思われる組織で覆われていた。) <記録終了> K-10ミーム媒介は特定語句を語彙から排除しますが、「舌がもつれる」、「体が震える」といった外的要因が絡む発声を防止できません。上述した事案を受け、SCP-608-JP-1が外因的発声へと至る事態を防止すべく、「声帯を麻痺させる」・「SCP-608-JPを真空状態で隔離する」といった手法が考案されました。しかし、SCP-608-JP-1が蘇生する際健康体へと回帰するため、数分間隔で処置を必要とする麻痺案は却下されています。また、SCP-608-JPが「気圧」を変動させる際空気を大量供給するため、真空状態を維持する術はありません。長期的視点では活性化が不可避であると判明したため、SCP-608-JPはKeterクラスへと再分類されました。 ████/██/██、ドローンを用いた探査が実施され、居住者が作成したと思われる遺書、あるいはダイイング・メッセージ(SCP-608-JP-a)が発見されました3。SCP-608-JP-aは「特定語句」を含んでいますが、音読や筆写といった行為が活性化を誘発した事例はありません。 SCP-608-JP-a全文 名をば捨て 吾にもあらず 去ぬれども 忍び音聞こゆ 心の亡しにや 補遺: 我々は今、一万語を超える「特定語句」を回避しつつSCP-608-JPを収容している。SCP-608-JPが僻地で発生したという事実は、まさしく奇跡と言う外あるまい。万が一、都市部で発生していた場合、SCP-608-JPは恐るべき速度で活性化を繰り返していただろう。もはや活性化条件を特定する機会は与えられず、やがて全人類が増減する死者数へと計上され、世界はコールドケースとして在り続けただろう。 「一万語」と表現したが、「特定語句」はたった五種類であると言う方が正確だろう。SCP-608-JP-aが示している、捨てられ、在らず、去り、潜み、死した言葉。K-10ミーム媒介が作用している間は語彙から除外されているが、「た行」と「は行」はある行を、ある五文字を挟んでいる。それこそが、それら一つ一つが、SCP-608-JPを活性化させるキーワードだ。最終手段であるプロトコル"忌み詞"は、連綿と続く文化を根底から破壊し、再構築し、「特定語句」を世界から削除する。"五十音"が生まれた日と同様、我々は再び音を葬り去る。幸い、我々が掲げるモットーは「特定語句」とは無縁であった。 確保、収容、保護。 ──████博士 脚注 1. 上限は不明です。 2. 発声・記述を阻害された状態が"精神疾患"、あるいは"言語障害"として扱われると推測されています。 3. 現在、メモ帳・羊皮紙・石碑・ホワイトボード・CD-ROM・皮膚といった媒体で発見されています。
scp-609-jp
評価: +79+–x リハーサル中のエージェント・██。 アイテム番号: SCP-609-JP オブジェクトクラス: Safe Euclid 特別収容プロトコル: SCP-609-JPは一般からの買い上げにより現在財団の管理下にあり、完全に一般市民の侵入を防いでいます。決まった日程に発生する「ライブイベント」時に出現する機材を用いて、SCP-609-JP内302号室(以下SCP-609-JP-1と呼称)にて演奏を行います。ギターに1名、ベースに1名、ドラムに1名、場合によりキーボードに1名の、演奏チーム[Sacrifice Curse Prayer]1によってプロトコル[デッドエンド]が実行され、「ライブイベント」を成功に導きます。楽曲は、SCP-609-JP-2の提供する曲目リストから選択されますが、「ライブイベント」中にSCP-609-JP-2がランダムに曲目を決定する点に注意し、ライブ終了まで演奏を続けてください。どんな理由であれ、この「ライブイベント」を停止することは許可されていません。 説明: SCP-609-JPは、東京都渋谷区██に存在するライブハウス「ブロークン」です。SCP-609-JPは一般的なライブハウスと一切変わりませんが、定期的に発生する「ライブイベント」時に限り、SCP-609-JP内、302号室(以下SCP-609-JP-1と呼称)が特異性を発揮します。SCP-609-JP-1は平時において通常の防音室と変わらない構造ですが、「ライブイベント」が発生すると、SCP-609-JP-1内がSCP-609-JPの外観上サイズを遥かに超えた巨大なライブホールに姿を変えます。これらはほぼ毎回、出現する機材、照明等が変化し、決まった形状や構造、デザインは現れませんが、観客が存在していない、あるいは不可視であるという点のみどの顕現時においても一貫しています。 「ライブイベント」発生時、SCP-609-JP-1内マイク前に、凹みだらけのギターアンプから乱雑にギターのネックが生え揃った頭部を持つ、白いジャンプスーツの男性が一人必ず出現します。これをSCP-609-JP-2と呼称します。SCP-609-JP-2に発声器官の存在は確認されていませんが、アンプの奥からディストーションを掛けたように酷く歪んだ声を出し、人間に対して一方的なコミュニケーションを行います。 「ライブイベント」は決まって月末、16:00より必ず発生し、リハーサルを挟んでから19:00に演奏が開始され、アンコール等が発生した場合は遅くとも22:00に終了します。これらはSCP-609-JP-2の行動によって多少の差異がありますが、タイムラインはおおよそ上記の通りです。 「ライブイベント」が完全に終了すると、SCP-609-JP-1内に居た人間は自然とSCP-609-JPへと転送されます。転送先は定まっていませんが、大抵の場合SCP-609-JP-1近辺、及びSCP-609-JP-1内に出現する場合が多いようです。転送された者は、「ライブホールがフェードアウトするように消えていく」と証言していますが、これらを映像に収めようとすると、極端な映像ノイズが発生し記録することが出来ません。 20██/██/██のインタビュー以後、「ライブイベント」が何らかの理由で中止、失敗した場合、内部に存在していたあらゆる存在の取り込みが発生するようになりました。現在までに██名の職員が行方不明となっています。これに加え、周囲██kmに存在する全ての音楽に関わる物品が瞬間的に演奏不可能な形に破壊されます。これらは軽音楽器に限らず、どのような楽器であれ影響が出ると判明しています。下記は影響の出た物品の抜粋です。 + 破損した楽器の一例 - 記録を閉じる 破損した楽器の一例 内部に取り出し不能なほど大量の消音器が詰め込まれたバイオリン。消音器は割れており使用出来ない。 未使用、未開封にも関わらず消耗し切った弦。弦を張る過程で切れる(弦楽器全般)。 熱で曲げられたかのようにネックが歪曲したギター。弦は全て破断している。 吹き口から縦に裂かれ、花弁のような形状にされたフルート。 音の鳴らない密度に材質が変化したカスタネット。 鍵盤の消失した電気笛。これらの鍵盤は見つかっていない。 千切れる寸前まで引き延ばされたアコーディオン。 内部で全ての弦が引き切られたグランドピアノ。 異常な電圧で接続先のアンプを破壊してしまうエフェクター。 アンプに繋いだ瞬間、過電流によりマイクヘッドが爆発するマイク。 PC上、携帯端末上における音楽アプリケーションの破損、及び起動不可能な状態。 これらはほんの一例であり、その他にも致命的な破壊を受けた楽器類が█████████以上存在しています。2全ての事象が一瞬かつ同時に発生しているため、破損の瞬間は一切確認出来ていません。 これらの破壊の起こる範囲は正確には不明ですが、二度の意図せぬ失敗により同区内を超え、████区全土にまで影響が及んだことから、「ライブイベント」の停止は人類の文化活動の一側面に致命的な影響をもたらす可能性が危惧されています。以下は現在の特異性を発現する直前に行われたインタビュー記録です。 + SCP-609-JP-2へのインタビュー記録 - インタビュー記録を閉じる SCP-609-JP-2へのインタビュー記録 エージェント・西塔: SCP-609-JP-2。 SCP-609-JP-2: (ステージ上に登り声を掛けた瞬間、15秒間に渡る歪み切った絶叫) エージェント・西塔: (耳を塞いでいる) SCP-609-JP-2: 上がった。上がった上がった上がった上がった上がった上がったアァァァァァ!! エージェント・西塔: (苦悶しながら)な、何を言って。 SCP-609-JP-2: (ステージ上から大袈裟な身振り)見ェねェのかッ!? このッ! 熱気に包まれたッ! 大観衆たちがッ!? エージェント・西塔: (ライブ会場を見渡す。映像に観客が映っている様子は見られない)あの、誰も居ないように見えるんですが。 SCP-609-JP-2: ハッ!? ハッ!! ハーハハハハァ!! 誰もいない!? いない!? このカワイコチャンにはお前らが見えてないようだァ!! ディスってみなァ!! (10秒間前後、凄まじい歓声が上がっていたと見られる。録音された音声はほぼ完全に割れていた) エージェント・西塔: み、耳が。 SCP-609-JP-2: オイ、オイオイオイオイ!! エェ? お嬢ちゃん。ステージに上がってきたってこたァ、覚悟があるってことだ。 ア? 違うか? なァ!? なアァァ!? (再び歓声。先ほどに比べ短いが、音声の割れ様は同様) エージェント・西塔: っ、か、覚悟とは? SCP-609-JP-2: (勿体ぶるような挙動の後、五秒間の沈黙)ギターは弾いたことあるかい、お嬢ちゃん。 エージェント・西塔: え、えー、まあ、少しなら。 SCP-609-JP-2: ██████████3だ! 嬢ちゃんもそれくらいなら知ってるだろ? まずはテストだ、弾いてみな。 エージェント・西塔: (五秒ほどの沈黙)わかりました。(十秒間の演奏) (凄まじいブーイングの嵐) エージェント・西塔: さ、最近練習してないんだよ。 SCP-609-JP-2: (指を振る動作)ンンーッ、そうかそうか。嬢ちゃん。そいつァダメだ。全っ然、ダメだ。よしよしよし。わかった。俺も我慢の出来ねェガキじゃねェ。こうしようぜ。 エージェント・西塔: はぁ。 SCP-609-JP-2: 一ヶ月! 一ヶ月だ! そんだけ時間をくれてやる。それ以上は待たねェぞ。また会えるのを楽しみにしてるぜ、レディ。 〈ログ終了〉 インタビューの直後、SCP-609-JP-2は消失し、SCP-609-JP-1は実験以前と同様の防音室に戻った。エージェント・西塔は事象終了後に問題なく帰還しており、帰還と同時にSCP-609-JP-1内に「曲目リスト」が出現した。 インタビュー後出現した曲目リストには、SCP-609-JP-2が作曲したと思われる楽曲が表記されていました。これらは全ての曲目において音楽に対する嫌悪や憎悪の込められた歌詞が含まれていますが、音楽のジャンルにおいて言うなら、「ロック」というジャンルからは決して外れず、整った出来の楽曲が記載されています。また、このリストは「ライブイベント」が終了する度にSCP-609-JP-1内に内容を変えて出現しています。 なお、この曲目リストには全ページに渡り「次のライブにはお前らも必ず参加してくれよな!」というSCP-609-JP-2の直筆と思われる表記がありました。 + 「ライブイベント」の記録 - 記録を閉じる 「ライブイベント」の記録 記録日時 会場概要 演奏曲目 結果 20██/██/██ [編集済]に酷似した会場 ████████ 意図せず無視する形。中継機器からの映像が途絶え、SCP-609-JP-1は防音室に戻った。その後、同区内の楽器店における全ての商品が一斉に破損した。これにより特異性が判明、「ライブイベント」への参加がプロトコルに組み込まれた。カバーストーリー[波長実験]と記憶処理等により収束済。 20██/██/██ ██館に酷似した会場 ████████ 演奏は成功。演奏技術において一定の基準にあると見なされたDクラス職員4名により演奏が行われた。アンコールまでを演奏し終え、SCP-609-JP-2は観客の声援に応えながら消失し、SCP-609-JP-1は問題なく防音室に戻った。 20██/██/██ ██メッセに酷似した会場 ████████ 上同の職員により演奏は成功。SCP-609-JP-2から、演奏に参加していたDクラス職員達に対し労いの言葉が送られた。直後、SCP-609-JP-1は問題なく防音室へと戻っている。 20██/██/██ [編集済]に酷似した会場 ████████ 上同の職員により演奏は成功。SCP-609-JP-2が奏者全員を抱きしめて回り、観客からは盛大な拍手が巻き起こった。拍手が静まるのに合わせ、SCP-609-JP-1は問題なく防音室に戻っている。 20██/██/██ ██ドームステージに酷似した会場 ████████ 演奏は失敗。上同の職員により演奏中、SCP-609-JP-2からマイクを奪い取ったDクラス職員が、不可視の観客と思われる存在により[削除済]。大乱闘の中、SCP-609-JP-1は防音室に戻った。奏者全員の行方は、生死を含めて不明。██区まで楽器の破損現象が起こっていることが確認され、カバーストーリー[伝説のロッカー]により収束された。この事案から、職務に忠実な奏者の選出を行うべきと判断された。 これらの実験の後、プロトコル[デッドエンド]が策定され、演奏技術に優れた職員及びエージェントによる対SCP-609-JP用演奏チーム、[Sacrifice Curse Prayer]が結成された。 一連の記録を鑑みるに、これらの「ライブイベント」失敗による文化的危険性は非常に高いと思われます。担当職員は、「ライブイベント」に向けての研鑽を怠らず、可能な限り技量の向上に努めてください。 ―― 前原博士 補遺:「ライブイベント」の無視が行われた後、防音室に戻ったSCP-609-JP-1に、メッセージの刻まれたギターが出現しました。メッセージは以下の通りです。 一度ステージに上がっちまったら、途中で降りるなんてこたぁ許されねェのさ [解読不能な文字列]4 脚注 1. 基本的にメンバーは4名±1ですが、ライブの曲目により増減する場合があります。 2. メガホン、拡声器等の直接的に音楽に関わらないと思われる機器の破損は確認されていませんが、音楽に用いるために改造等を施された物品の破損は確認されています。 3. アーティスト・████の楽曲。これ以外の「ライブイベント」中において演奏されたことはありません。 4. 後に、「ゲルグルゴ」と表記されていると判明しましたが、この文字列の意味はわかっていません。
scp-610-jp
評価: +116+–x 評価: +116+–x クレジット タイトル: SCP-610-JP - (たぶん)天国に一番近い島 著者: ©︎kyougoku08 作成年: 2016 評価: +116+–x 評価: +116+–x アイテム番号: SCP-610-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-610-JPは国の生態系研究下におかれているとして、一般人の侵入を阻止してください。また、上空への航空機による侵入は阻止してください。SCP-610-JPは巡視艇及び無人ドローンを使用し24時間体制の監視を行うとともに、生物の侵入を阻止してください。生物が侵入した場合は即座に確保に移り12時間以内にSCP-610-JP内から排除を行ってください。また、生物が射出された場合は、目撃者にAクラスの記憶処置を行ってください。 説明: SCP-610-JPは太平洋上に存在する孤島です。SCP-610-JP内にはSCP-610-JP-A、SCP-610-JP-B以外、植物のみが繁殖しており、真菌を含む他の動物は存在していません。SCP-610-JPの異常性はSCP-610-JP-A、SCP-610-JP-B以外の生物がSCP-610-JP内に侵入し、12時間以上経過した際に発生します。SCP-610-JP内に侵入し12時間以上経過した生物はSCP-610-JP表面に接触している部分が僅かに沈下し、その後5分以内に第三宇宙速度で上空へ向け射出されます。射出に際しては本来発生する衝撃波等の現象は確認されていません。また、射出された生物は急激な速度の上昇による負荷及び宇宙空間への移動という条件にもかかわらず、死亡せず、一般的な行動が可能であり、また、いかなる状況においても初速を維持していることが確認されています。 SCP-610-JPは財団所有の人工衛星が撮影した宇宙空間を飛行する人型実体の素性を調査する過程で、その実体が生物学者の██ ██氏であると確認、氏の行動を追跡した結果、SCP-610-JPへ生態系の調査を行うために近隣の島を出港したことを最後に行方不明になっていたことからSCP-610-JPを調査、その異常性が判明しました。現在時点でSCP-610-JPの周囲20kmには有人島が存在しておらず、また、周辺地域では神の島とされていたことにより入島そのものが禁忌とされていたため、現在に至るまでSCP-610-JP内に侵入した人物はごく僅かです。 SCP-610-JP-A,Bはそれぞれ生後約1年未満とみられるヒツジ(Ovis aries)と生後約10年以上と推測されるアオダイショウ(Elaphe climacophora)です。SCP-610-JP-A、Bはどちらも発見当時から成長、あるいは老化していないことが確認されています。SCP-610-JP内にはSCP-610-JP-A、Bを除く動物が存在していないにもかかわらず、SCP-610-JP-A、B及び他の植物が生存し続けられる理由は不明です。射出される対象が人間である場合のみ、SCP-610-JP-Aは射出される対象から逃走し、SCP-610-JP-Bは接近を行います。これらの行動をとる意図は現在不明ですが、SCP-610-JP-Bの接触が射出時間を早めるという報告も存在し、現在因果関係を調査中です。 実験記録610-JP 19██/██/██、実験対象として録音、通信機材を所持させたD-1223をSCP-610-JP内に12時間以上逗留させ、射出後の通信を試みました。以下はその音声記録です。 <録音開始> 源博士: 12時間が経過します、D-1223、報告してください D-1223: はい、といっても何も変わりませんよ。あの蛇はずっと俺の近くにいますけど…、って、え、なんだ、これ!? 源博士: どうしました、D-1223、報告を D-1223: あ、足が地面に埋もれて、ぬ、抜けない、…お、おい、近寄んなよ! …ぁ!? (直後、風を切るような音が数分間続く、D-1223からの応答は無し) 源博士: 応答してください、D-1223。…ダメか? D-1223: せ、先生 源博士: 応答がありました、どうしました、D-1223 D-1223: お、俺、とんでる (直後、何らかの衝突音とともに音声が途絶える) <録音終了> その後D-1223から通信は入らず、また、D-1223の回収は困難として、実験は凍結されました。なお、D-1223の所持していた記録装置の充電は約██年間使用可能だったため、連絡が入らない理由は機器の故障とみられています。 補遺1: 数回にわたる実験において、SCP-610-JPによって射出された生物の軌道を計測したところ、どの場合においても約██光年離れた惑星へ最終的に到達することが確認されました。対象の惑星は財団の観測の結果、ゴルディロックスゾーン1に属する惑星であり、約██%の確率で地球と類似した環境が存在すると考えられています。対象の惑星に生物が存在するかについては現在も調査中です。 補遺2: 2███/██/██、約██年間連絡の途絶えていたD-1223から通信が入りました。以下はその音声記録です。 <録音開始> 楠木博士: D-1223、報告してください D-1223: はい、私はずっと飛んでいます、宇宙の闇を、永遠の孤独を 楠木博士: …まず確認しましょう、今まで通信が取れなかった理由は? D-1223: あの直後、私は何かにぶつかりました、おそらくは何らかの礫でしょうがね。そして機器が破損してしまったのでそこから修理をし、何とかこうやって通信できるまでにこぎつけたのです 楠木博士: なるほど、では、現在の状況を教えてもらえますか? D-1223: はい、私は久遠の旅路を彷徨い続けています。道中で様々な脱落者を目撃しました。岩に刺さる聖人、氷に砕かれた烏、彼らはあのまま生き続けるのでしょう。ですが、きっとそれらを乗り越えた苦難の先には天国が待っている。私は永遠にも等しき孤独の中でそれを理解したのです 楠木博士: …すいません、もう少し簡潔にお願いしたいのですが D-1223: ああ、申し訳ない。私の先達たちは不幸な事故によってその志を達することできず、今この永遠の藻屑となってしまったのです、ですが、それは彼らに何かしらの咎があったため、いずれ、その咎も許されまた私と同じ道をたどることができるでしょう 楠木博士: …つまり、あなたの言うそれは以前に射出された対象であり、あなたは今の状況を何らかの救済に至る道だと捉えているのですね? D-1223: はい、今は苦しく、長い旅ですがいずれ天国へ導かれる。…少々孤独は堪えましたが、今先生という話し相手も得ました、先生、私は目的の地まであと何年かかるのでしょうか。おそらくもうそろそろ到着するのではと期待に胸を高鳴らせているのですが 楠木博士: …D-1223、重大な連絡があります D-1223: ? 何でしょうか。今の私は非常に満ち足りています、どんな連絡でも 楠木博士: バッテリーの残量が無くなりました <録音終了> 財団天文部による試算の結果、D-1223が対象の惑星に到達するまでには約██████████年を要するという結論が出ました。また、その行程中に存在する他の惑星、及びブラックホール等による引力の影響といった様々な障害を加味する場合、辿り着ける可能性は約0.00000██%以下であると推測されます。D-1223を回収する計画は現在の技術面から不可能と判断され結論は保留されています。 Footnotes 1. 存在する惑星が地球と似た条件を持ち、生命、人類の発生、進化が可能であると仮定される領域
scp-611-jp
評価: +32+–x アイテム番号: SCP-611-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-611-JPはサイト-8122の低脅威度物品保管用ロッカーに伏せた状態で収容されます。飲料に使用できる水分がSCP-611-JPに入ることのないようにしてください。 説明: SCP-611-JPは、飲用可能な液体を注ぎ入れると異世界SCP-611-JP-αへ繋がるポータルとなる、プラスチック製の湯飲みです。回収の直前まではサイト-81██内でDクラス職員用食器の1つとして使用されていたもので、外見や材質は製造元の財団フロント企業の製品と差異がありません。また、サイト-81██内で使用されている同規格の他の湯飲みは、調査ではいかなる異常性も確認されていません。 SCP-611-JPに飲料を入れた時、飲料には一般的に茶柱と呼称されるものと酷似した異物1と、異物を中心として半永久的に続く波紋が必ず生じます。異物をSCP-611-JPから除去した場合、飲料を新しく入れ直すまで異常性は再発現しません。 異物が生じた後、「SCP-611-JPに唇もしくは口内構造の一部を接触させる」「生じた異物をSCP-611-JPから取り出さず、飲料と共に飲みこむ」の2点を満たした人物は、鼻先からおよそ7cmまでの顔部が瞬間的にSCP-611-JP-αへ転送されます。転送後の詳細は、調査書611-JP-α-01及びインタビューログを参照してください。 転送されず残った身体側では、消失部は鋭利な刃物で断たれたような断面となり、透明度の低い緑色のゼリー状物質で覆われます。以下、この状態の人物を被影響者、物質をSCP-611-JP-1と記します。 SCP-611-JP-1は植物性の成分を含んだ物質です。厚みが1cm程あり、自然状態では被影響者の顔から脱落しません。採取は可能ですが、採取した分だけ即座に修復されるため、SCP-611-JP-1を完全に除去する方法は不明です。SCP-611-JP-1下の断面は一切の物理的干渉を受けず、また体液などの流出が見られません。 被影響者には意識があり、神経が一見断絶しているにも関わらず顔部への刺激を感知します。一方で、残った身体の随意運動及び身体への刺激の感知は出来ないことが確認されています。転送された顔と残った身体との間では、血液の循環や呼気の移動等が通常通りに行われます。 被影響者の身体へ致命傷を加えた場合や、必要なエネルギーを供給できない場合は通常通り死亡します。また、顔が消失してから24時間以上経つと、被影響者は不定のタイミングで心停止を経て死亡します。この心停止を阻止する試みは、1例を除き全て失敗しています。死亡後、SCP-611-JP-1は消失します。 + 調査書611-JP-α-01 - 閲覧を終了する SCP-611-JPによって顔が転送される先の異世界SCP-611-JP-αは、現在までの調査で以下の実体の存在が確認されています。 呼称 概要 備考 柱 空間の上部で直立し浮遊する、巨大な緑色の柱。 ─ 円柱群 浮遊し、柱を囲むように多数存在する、柱よりも小さな円柱。不定期に海から生じ、不定期に崩壊して落下する。崩壊後は再生しないと見られている。 それぞれが、30秒ごとに底面を柱に叩きつける。 海 空間下部に溜まっているSCP-611-JP-1様の物質。その広さと深さから海と呼称するが、液状ではない。 ある一方向のみ、遠方に岸のような地形がある。 人面 海の表面に多数存在する、人間の顔のような凹凸を持つ灰白色の物体。 身体は存在しない。 人型実体 岸から海へ進入する灰白色の人型実体。 人面に変化すると見られているが、その間のプロセスは不明。 また、調査内で以下の事柄が共通しています。 電波の送受信が可能。顔にGPS発信装置を取り付けた場合、転送後にSCP-611-JPの位置を示す。 被影響者の顔にSCP-611-JPを除く何らかの非生物的物体が接する場合、肌から8cm程度の距離までのサイズであれば、付随してSCP-611-JP-αに移動する。 被影響者の顔は、SCP-611-JP-αへの出現時に真上を向いている。上記の人面のような状態と思われる。 環境音も含め、音声が全く記録されない。 映像記録611-JP-01 記録者: █博士、D-4993 実施方法: D-4993の顔面に、顔に収まる大きさの遠隔操縦探査機を設置。探査機は飛行が可能であり、転送後に█博士が操縦する。SCP-611-JPに水道水を注ぎ、D-4993に飲ませる。 [記録開始。探査機は正常に作動。] [(中略)D-4993の付近から、SCP-611-JP-1様の物質が押し出されるように円柱状に形成される。1分ほど経った時点で根本が海と離れ、円柱が上昇。円柱群に加わる。] [D-4993の顔が前記の円柱のように上昇。追随する。] [海上でD-4993の顔があった位置には、深い穴が空いている。同様の穴がいくつか確認される。] [海の底から人面がひとつ浮上し、表面で停止する。人面は喜びのような表情を浮かべている。] [(中略)空間上部から不定形の物質が複数落下し、探査機に衝突。不定形の物質の中には人面のような灰白色の物体も見られたが、損傷が激しく詳細不明。落ちてきた物質は、後の解析で浮遊していた円柱群の一つが崩壊したものと推定。] [探査機が海に落下。通信が切断される。記録中、人面の浮上を3件、円柱の形成を2件、円柱の崩壊を4件確認。] 備考: D-4993は41時間後に心停止。  回収: 20██/█/█のサイト-81██Dクラス職員昼食時、当該サイト勤務のD-3532が倒れて顔が緑色の物体に覆われたという報告がありました。D-3532が取っていた食事と使用した食器類を検査した結果、SCP-611-JPが異常なオブジェクトに分類されました。この出来事はSCP-611-JP事案01に指定されています。周囲にいたDクラス職員には、事情聴取のちAクラス記憶処置を施しました。 SCP-611-JPがSCP-611-JP-αへのポータルとなった理由として、サイト-81██に収容されていたSCP-████-JPが関連したと結論づけられています。SCP-████-JPは既に収容プロトコルが改正され、サイト-81██から移動しています。詳細は報告書SCP-████-JPを参照してください。 報告1: SCP-611-JP事案01から7日後の20██/█/█、サイト-81██で経過を見られていたD-3532の顔から突然血液や肉片、骨片が噴出しました。D-3532の顔は復帰しており、明らかに負傷していました。また同時に、D-3532には随意運動が認められました。当直の██医師による診察の結果、D-3532の顔は両眼球の破裂をはじめとして「硬い面に繰り返し激しく叩きつけられた」と表される重度の裂創や挫創が確認されました。脳に損傷等はありませんでした。SCP-611-JP-1は顔の復帰と共に消失しました。 + インタビューログ 日付:20██/█/██ - 停止 対象: D-3532 インタビュアー: ██博士 付記: 会話補助用具の調達と発声器官の負傷の回復を待ったため、D-3532の顔が戻ってから█日経っている。D-3532にはSCP-611-JP-αのこれまでの調査の知識はない。なお、██博士とD-3532は他の研究で面識がある。 <録音開始, 20██/█/██> ██博士: これよりSCP-611-JP事案01について、帰還者D-3532のへインタビューを実施します。それではD-3532、よろしくお願いします。 D-3532: えっと……よろしくお願いします。先生とまた会うなんてなあ。 ██博士: 全くです。さてまずは、あなたが█月█日の昼食時に意識を失った時の様子を思い出せる限り報告してください。必要かどうかは後でこちらが判断するので、変わったことでなくても、何でも構いません。 D-3532: あの時、まあでも普通に支給の茶飲んだだけだしな……[中略]あー、そうだ茶柱。茶柱立ってました。あとは……[唸り声]いや、特にないです。茶柱か、ラッキーって思ってそのまま飲んで、気がついたら変な場所でした。 ██博士: 分かりました。では、あなたが次に気がついた時の、あなたがいた空間について報告してください。 D-3532: 空間……まあ、こことは違うとこですよね。空が薄い緑色で、でかい緑の柱みたいなのが空の高いところに浮いてて、何か細くて長いものがその柱をつついてました。自分の体は全然動かなくて、何かに体が埋まって、まっすぐ下に伸びてた感じです。目だけで横を見たら、濃い緑の……泥だと思ったんですけど、自信ないな。その表面には何か、笑ってる顔みたいなものがたくさん浮いてて。水面から顔だけ出してる感じって言えば分かりますかね。 ██博士: それらの顔と話は出来ましたか? あるいは、それらが何かを喋っているのを聞きましたか? D-3532: 全然。口は動かせたし、声を出せた感じはあったけど、自分の声とかも全然聞こえなかったです。多分他の顔の奴らも同じようなことになってたと思います。あの場所はすごく静かだった。 ██博士: なるほど。水面から顔を出す状態を自覚した後、何が起こりましたか? D-3532: [唸り声]何て言えばいいのかな。見えない手が、上から泥の中に入ってきて、体のずっと下の部分を切りました。花屋でちょうどいい長さに茎を切る時みたいに。それで持ち上げられて、でかい柱の近くの空中に置かれました。下にいる時に見た細長いのが周りにたくさんいて、あれは一足先に切られた奴らなのかって思いました。あいつらと同じように、あの柱をつつ……いや、叩くはめになるのか? って。 ██博士: その後は? D-3532: 言うんですか。[不快そうな唸り声]柱を、叩きました。叩くというか、顔の真正面から柱に勢いよくぶつけられました。何度も何度も、恨みでもあんのかってくらいさんざん潰されました。餅つきの杵とか、鐘つくやつってあんな感じなんですかね。音は、なかったです。してたらバキバキとかぐちゃぐちゃとか言ってたと思う、思います。クソ、思い出したらムカついてきた。 ██博士: D-3532、インタビューに集中しましょう。その後は解放されるまで、顔をその柱に叩きつけられていた、ということですか? D-3532: ……すいません、落ち着きます。えっと、何でも報告していいんですよね。とりあえずたくさんぶつけられた辺りで、急に声が頭の中で聞こえました。不純物、そちらからの正常ならざるあらわれ、とか。 ██博士: 声……。他に、声は何か言っていましたか? D-3532: [唸り声]正しいあらわれならばまだしも、お前はおんそう?にはいらぬ、望むなら望むで続けても良いが、役目を解き楽にするのが筋か、とか話しかけてきました。なんかこう、何が筋だよ、楽にするって何だよってなりましたよね……訳分かんねーうちにあんなことになって、そのくせ楽にするって言うのに頭に来て。 ██博士: 望むなら、ですか……。どのように返事を? D-3532: 返事って言うか、その声に乗っかるとか理不尽な奴の思う通りでクソだなって思ったんです。ここみたいに事前の説明とか無いのに、押しつけがましいじゃないですか。せめてちゃんと帰せよこの[罵倒]って言ったんです、頭の中で。そしたら、気がついたらベッドの中でした。……やっぱ理不尽だなこれ。 ██博士: 楽にするという誘いに乗らず、帰る意思を見せたから、生きたまま帰還した、と。 D-3532: そうですね。……でも、正直今になって、悩むんです。 ██博士: 悩む、とは? D-3532: いやあ、ほら、目は完全に駄目だし、顔は元には戻らんって言われてですね。1ヶ月で解放されるっても、これじゃあしょうがないですよ。どうせ他の変な実験でもえらいことになるんだろうしね。ははは。ほんと、先がない。……本当に楽になるんだったら、あれの話に乗って良かったなって、思う。先生、あそこからこうなって帰ったのって喜んでいいんですかね。 ██博士: ……。D-3532。財団には、あなたの功績に応じて、人生を良い形でやり直すための様々な方法があります。それは整形手術であったり、視力を回復させる義眼であったり、です。それらを望むかは、あなたが判断することですがね。そして、あなたが戻って来たのは財団にとって大変有意義です。私も、生きたあなたにインタビューできたのは、とても幸いだと思います。 D-3532: ……先生がそう言ってくれるなら、じゃあ、喜んどきます。はは。……[胸を押さえ]い、てぇ。 ██博士: D-3532? ……すみません、処置を! [以下省略] 終了報告書: D-3532はインタビューの途中から激しい胸の痛みと不安感を訴え、1時間後に心停止のため死亡しました。D-3532の顔に新たな変化は起こりませんでした。 報告2: インタビュー終了報告書を受け、被影響者が心停止するタイミングは不定とされている点への再調査が█博士によって提案されました。D-3532がSCP-611-JP-α内から帰る意思を持っていたと証言したこと、及びD-3532がインタビューにおいて軽度ながら希死念慮を見せたことから、特定の状況下では被影響者の意思が心停止に影響するのではないか、と██博士が指摘したためです。再調査は検証可能性の低さから却下されました。 Footnotes 1. 調査の結果、この異物はチャノキ(学名: Camellia sinensis)の未知の近縁種と分類されました。
scp-612-jp
評価: +265+–x アイテム番号: SCP-612-JP オブジェクトクラス: Euclid Explained 特別収容プロトコル: 風雨による浸食や不慮の事故による損壊を防ぐため、SCP-612-JP群およびその周辺の土地は財団のフロント企業により買収し、倉庫に偽装した収容施設で覆い隠した上でカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」による情報擬装を実施します。各収容施設には特殊な設備は不要ですが、状態維持のため定期的に職員を派遣して換気や清掃を実施してください。 SCP-612-JPに関する情報を持つ人物が確認された場合、機動部隊す-3("タケミカヅチ")を派遣して身柄を確保してください。 19██/3/19: オブジェクトクラス改定により特別収容プロトコルの見直しが検討されています。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体されているため、何らかの問題が発生した場合には財団のエージェントを都度派遣します。 説明: SCP-612-JPは1949年2月19日9時39分26秒に発生したとされる岐阜県██市を震源とするマグニチュード-9クラスの大地震です。震源地である岐阜県██市及びその周辺にSCP-612-JPに関する複数の石碑や木碑等の遺構(SCP-612-JP群と呼称)が存在しますが、SCP-612-JPそのものに関する記録や報道、文献は存在せず、またSCP-612-JPに関する記憶を持つ人物も現在に至るまで確認されていません。 なお、仮にSCP-612-JPが存在した場合には岐阜県██市及び周辺地域の人口統計はより劇的に推移することが予測されています。現在までの調査と分析の結果、SCP-612-JPは通常の地震のみならず何らかの認識災害や現実改変を伴う事象であったと推測されています。 SCP-612-JP群は現在まで23個が確認されており、それぞれSCP-612-JP-1~SCP-612-JP-23として収容されています。SCP-612-JP群の概要は以下の通りであり、詳細については別添資料を参照してください。 収容オブジェクト 形状 概要 SCP-612-JP-1 木碑 「1949年2月19日9時39分26秒 岐阜大震災 犠牲者追悼」と書かれている SCP-612-JP-2 石碑 「岐阜大震災 落命者█████名 追悼の碑」と刻まれている SCP-612-JP-3 石碑 「1949年2月19日9時39分26秒発生の大震災により命を落とされた方のご冥福をお祈りします」と刻まれている SCP-612-JP-4 石碑 「1949年2月19日岐阜県大地震を忘れないで」 と刻まれている SCP-612-JP-5 木碑 「岐阜大震災 消防隊供養」と書かれている SCP-612-JP-6 石碑 「岐阜大震災 山津波 犠牲者追悼」と刻まれている SCP-612-JP-7 石碑 「1949年2月19日 岐阜大震災 震度█ 合掌」と刻まれている SCP-612-JP-8 木碑 「岐阜大震災 山津波 犠牲者追悼」と書かれている SCP-612-JP-9 木碑 「山本██ 岐阜大震災の余震による崖崩れで落命 冥福を祈る」と書かれている SCP-612-JP-10 大岩 「ギフダイシンサイノ ヨシンニ ヨル ラクセキ [解読不能] ツウコウフカ」と刻まれている SCP-612-JP-11 木碑 「キケン ガケクズレアリ ギフダイシンサイノ ヨシンニ チュウイ 1949ネン2ガツ[解読不能]」と書かれている SCP-612-JP-12 看板 「この先岐阜大震災による崖崩れあり 立入禁止 ███警察署」と書かれている SCP-612-JP-13 石碑 「岐阜大震災 救助隊犠牲者供養」と刻まれている SCP-612-JP-14 石碑 「1949年2月21日 岐阜大震災最大余震 犠牲者追悼」と刻まれている SCP-612-JP-15 廃屋 1949年2月19日を指し示す日めくりカレンダーと9時40分で止まった壁掛け時計 SCP-612-JP-16 木碑 「1949年2月24日 岐阜大震災の余震による崩落箇所」と書かれている SCP-612-JP-17 木碑 「████小学校 生徒███名 岐阜大震災によりここに眠る 1949年2月19日」と書かれている SCP-612-JP-18 木碑 「1949年10月30日 岐阜大震災███避難所閉鎖 いままでありがとう」と書かれている SCP-612-JP-19 木碑 「1949年2月19日岐阜大震災 震度█ 観測地点」と書かれている SCP-612-JP-20 寺社 壁に「1949年2月21日 岐阜大震災により焼失 1952年3月4日 再建」と刻まれている SCP-612-JP-21 石碑 「19[解読不能]月19日 岐[解読不能]震災[解読不能]」と刻まれている SCP-612-JP-22 木碑 「岐阜大震災 七回忌祈念 1956年2月18日」と書かれている SCP-612-JP-23 樹木 「岐阜大震災 三回忌 追悼植樹」と書かれた看板あり 198█/2/19早朝より岐阜県██市内の警察署及び複数の交番に「奇妙な石碑(あるいは木碑)が建てられている」という通報や相談が相次ぎ、財団の監視網に検知されました。警察に潜伏中の財団エージェントが調査をしたところ通報のあった23箇所で由来不明の遺構が存在しており、未知の現実改変オブジェクトの影響が懸念されたためSCP-612-JP及びSCP-612-JP群としての収容が決定されました。SCP-612-JP群が存在する地域の住民への聞き込みでは「こんなものがあるとは気付かなかった」「いつからあるか分からない」「そのような地震には覚えが無い」といった証言が共通して得られています。 SCP-612-JP-9の人名に関する調査では当時の戸籍から該当する人物が3██名確認されていますが、岐阜県で死亡したとされる人物は存在せず、これ以上の調査は行なわれていません。また、年代測定として財団が保有する標準年輪曲線と木碑頂上の断面部との一致パターンの検索を実施していますが、使用された木材の由来が不明ということもあり現在まで目立った成果は得られていません。 199█/2/19: SCP-612-JP群周辺で不審な行動を取る人物が目撃されたため、機動部隊す-3("タケミカヅチ")を派遣して身柄を確保しました。警官に擬装したエージェント・長谷川が尋問したところ、この人物はSCP-612-JP群が自身による創作だったと証言しました。財団エージェントによる家宅捜索ではSCP-612-JP群の製作に使用されたと思われる大工道具や彫刻刀、複数の角材や岩石等が押収されていますが、特異性を発揮する物品はありませんでした。 199█/3/19: 調査と分析の結果、SCP-612-JP群は岐阜県██市在住の無職 [データ削除]氏によるイタズラであると断定されました。小林博士よりSCP-612-JPの存在否定とオブジェクトクラスExplainedへの変更が申請され、即日承認されています。これに伴い機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、同時に特別収容プロトコルの変更が検討されています。 + 報告書612 - 日付199█/3/19 より抜粋 - 文章を閉じる 報告者:小林██ [削除済み] 現在のオブジェクトクラスであるEuclidからの変更を提起します。 補遺: 申請は即日承認されました。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、[削除済み] 200█/██/██: 地質調査によって岐阜県██市の地下に未知の断層が発見されました。周辺地域の地質調査結果は、この断層を震源とするマグニチュード-9クラスの地震が過去100年以内に発生していたことを示しています。 SCP-612-JPとの関連性について、小林博士を中心とするチームにより現在も慎重に調査が進められています。 + 機密文書-閲覧にはレベル4セキュリティクリアランスが必要- 権限確認........閲覧が承認されました 注意:ここまでのレベル4未満職員向けの文書には非公開情報と故意に混入された欺瞞情報が存在します。これ以降、レベル4以上職員向けの文書ではこれらの検閲の該当部分を強調表示しています。 アイテム番号: SCP-612-JP オブジェクトクラス: Euclid Keter 特別収容プロトコル: 風雨による浸食や不慮の事故による損壊を防ぐため、SCP-612-JP群およびその周辺の土地は財団のフロント企業により買収し、倉庫に偽装した収容施設で覆い隠した上でカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」による情報擬装を実施します。各収容施設には特殊な設備は不要ですが、状態維持のため定期的に職員を派遣して換気や清掃を実施してください。 SCP-612-JPに関する情報を持つ人物が確認された場合、機動部隊す-3("タケミカヅチ")を派遣して身柄を確保してください。 19██/3/19: オブジェクトクラス改定により特別収容プロトコルの見直しが検討されています。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体されているため、何らかの問題が発生した場合には財団のエージェントを都度派遣します。 説明: SCP-612-JPは1949年2月19日9時39分26秒に発生したとされる岐阜県██市を震源とするマグニチュード-9クラスの大地震です。震源地である岐阜県██市及びその周辺にSCP-612-JPに関する複数の石碑や木碑等の遺構(SCP-612-JP群と呼称)が存在しますが、SCP-612-JPそのものに関する記録や報道、文献は存在せず、またSCP-612-JPに関する記憶を持つ人物も現在に至るまで確認されていません。 なお、仮にSCP-612-JPが存在した場合には岐阜県██市及び周辺地域の人口統計はより劇的に推移することが確認されています。現在までの調査と分析の結果、SCP-612-JPは通常の地震のみならず何らかの認識災害や現実改変を伴う事象であったと推測されています。 SCP-612-JPはSCP-612-JPが"実際に起きたもの"と認識する人間(以降、「SCP-612-JP認識者」と表記)の数が増加するに従って特異性が変異し、逆に有意に減少することで特異性の影響が消失することが判明しています。詳細は以下の表を参照してください。 SCP-612-JP認識者の総数 発揮される特異性 500人程度 ステージⅠ。現実改変が開始され、岐阜県██市及び周辺地域のいずれかで存在しないはずの断層がランダムに"発生"します。この断層が一般の研究機関に発見・公開された場合SCP-612-JP認識者が増加する可能性があるため、オペレーション"ナマズ踏み"により早期に封じ込めを行なってください。 1000人程度 ステージⅡ。現実改変により各種記憶媒体に記録された情報の改竄が開始され、その結果SCP-612-JP認識者が急増します。ステージⅡに達した時点で封じ込めは極めて困難となります。 10000人程度 ステージⅢ。岐阜県██市を中心とした半径1km以内で認識災害が発生し、効果範囲内ではSCP-612-JPは"実際に起きたもの"として認識されます。この効果範囲は時間と共に拡大し、試算ではステージⅢ到達から72時間以内にステージⅣに至ると推測されています。 █████████ ステージⅣ。1949年2月19日9時39分26秒を震源とする大規模な現実改変が発生します。これにより[削除済み]。岐阜県██市及び周辺地域は[削除済み]また住人の多くが消失し、この結果CK-クラス:再構築シナリオが誘発されます。 SCP-612-JP認識者に対して記憶処置を実施した場合でも期待する効果は得られません。現在のところ、対象者に対してSCP-612-JPに関する欺瞞情報を認識させることでのみSCP-612-JP認識者を減少させることが可能です。財団はステージⅠ予防措置として機動部隊す-3("タケミカヅチ")を動員し、カバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」として偽の遺構であるSCP-612-JP群を設置し、一般市民や財団職員がSCP-612-JPに曝露することを防いでいます。 SCP-612-JP群は現在まで23個が確認されており、それぞれSCP-612-JP-1~SCP-612-JP-23として収容されています。SCP-612-JP群の概要は以下の通りであり、詳細については別添資料を参照してください。 収容オブジェクト 形状 概要 SCP-612-JP-1 木碑 「1949年2月19日9時39分26秒 岐阜大震災 犠牲者追悼」と書かれている SCP-612-JP-2 石碑 「岐阜大震災 落命者█████名 追悼の碑」と刻まれている SCP-612-JP-3 石碑 「1949年2月19日9時39分26秒発生の大震災により命を落とされた方のご冥福をお祈りします」と刻まれている SCP-612-JP-4 石碑 「1949年2月19日岐阜県大地震を忘れないで」 と刻まれている SCP-612-JP-5 木碑 「岐阜大震災 消防隊供養」と書かれている SCP-612-JP-6 石碑 「岐阜大震災 山津波 犠牲者追悼」と刻まれている SCP-612-JP-7 石碑 「1949年2月19日 岐阜大震災 震度█ 合掌」と刻まれている SCP-612-JP-8 木碑 「岐阜大震災 山津波 犠牲者追悼」と書かれている SCP-612-JP-9 木碑 「山本██ 岐阜大震災の余震による崖崩れで落命 冥福を祈る」と書かれている SCP-612-JP-10 大岩 「ギフダイシンサイノ ヨシンニ ヨル ラクセキ [解読不能] ツウコウフカ」と刻まれている SCP-612-JP-11 木碑 「キケン ガケクズレアリ ギフダイシンサイノ ヨシンニ チュウイ 1949ネン2ガツ[解読不能]」と書かれている SCP-612-JP-12 看板 「この先岐阜大震災による崖崩れあり 立入禁止 ███警察署」と書かれている SCP-612-JP-13 石碑 「岐阜大震災 救助隊犠牲者供養」と刻まれている SCP-612-JP-14 石碑 「1949年2月21日 岐阜大震災最大余震 犠牲者追悼」と刻まれている SCP-612-JP-15 廃屋 1949年2月19日を指し示す日めくりカレンダーと9時40分で止まった壁掛け時計 SCP-612-JP-16 木碑 「1949年2月24日 岐阜大震災の余震による崩落箇所」と書かれている SCP-612-JP-17 木碑 「████小学校 生徒███名 岐阜大震災によりここに眠る 1949年2月19日」と書かれている SCP-612-JP-18 木碑 「1949年10月30日 岐阜大震災███避難所閉鎖 いままでありがとう」と書かれている SCP-612-JP-19 木碑 「1949年2月19日岐阜大震災 震度█ 観測地点」と書かれている SCP-612-JP-20 寺社 壁に「1949年2月21日 岐阜大震災により焼失 1952年3月4日 再建」と刻まれている SCP-612-JP-21 石碑 「19[解読不能]月19日 岐[解読不能]震災[解読不能]」と刻まれている SCP-612-JP-22 木碑 「岐阜大震災 七回忌祈念 1956年2月18日」と書かれている SCP-612-JP-23 樹木 「岐阜大震災 三回忌 追悼植樹」と書かれた看板あり カバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」の概要は以下の通りです。 198█/2/19早朝より岐阜県██市内の警察署及び複数の交番に「奇妙な石碑(あるいは木碑)が建てられている」という通報や相談が相次ぎ、財団の監視網に検知されました。警察に潜伏中の財団エージェントが調査をしたところ通報のあった23箇所で由来不明の遺構が存在しており、未知の現実改変オブジェクトの影響が懸念されたためSCP-612-JP及びSCP-612-JP群としての収容が決定されました。SCP-612-JP群が存在する地域の住民への聞き込みでは「こんなものがあるとは気付かなかった」「いつからあるか分からない」「そのような地震には覚えが無い」といった証言が共通して得られています。 SCP-612-JP-9の人名に関する調査では当時の戸籍から該当する人物が3██名確認されていますが、岐阜県で死亡したとされる人物は存在せず、これ以上の調査は行なわれていません。また、年代測定として財団が保有する標準年輪曲線と木碑頂上の断面部との一致パターンの検索を実施していますが、使用された木材の由来が不明ということもあり現在まで目立った成果は得られていません。 199█/2/19: SCP-612-JP群周辺で不審な行動を取る人物が目撃されたため、機動部隊す-3("タケミカヅチ")を派遣して身柄を確保しました。警官に擬装したエージェント・長谷川が尋問したところ、この人物はSCP-612-JP群が自身による創作だったと証言しました。財団エージェントによる家宅捜索ではSCP-612-JP群の製作に使用されたと思われる大工道具や彫刻刀、複数の角材や岩石等が押収されていますが、特異性を発揮する物品はありませんでした。 199█/3/19: 調査と分析の結果、SCP-612-JP群は岐阜県██市在住の無職 [データ削除]氏によるイタズラであると断定されました。小林博士よりSCP-612-JPの存在否定とオブジェクトクラスExplainedへの変更が申請され、即日承認されています。 これに伴い機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、同時に特別収容プロトコルの変更が検討されています。 以上がカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」の概要です。財団内部に対してもこのカバーストーリーが適用されていることに注意してください。 報告書612 - 日付199█/3/19 より抜粋 報告者:小林██ 現在のところカバーストーリー「傍迷惑な愉快犯」は有効に機能していますが、いつまでも効果があると断言することはできません。事実、199█/2/██に発見された██名をはじめ、潜在的なSCP-612-JP認識者が存在する可能性は依然として残っていますが、調査により検出しようとした場合には逆にSCP-612-JP認識者を増加させてしまう危険性があります。 従って特別収容プロトコルはより効果的なものに更新する必要があり、現在のオブジェクトクラスであるEuclidからの変更を提起します。 補遺: 申請は即日承認されました。機動部隊す-3("タケミカヅチ")は解体され、新たに小林博士を中心とする専門対策チームが結成されています。また、オブジェクトクラスはEuclidからKeterに変更されました。 200█/██/██: 地質調査によって岐阜県██市の地下に未知の断層が発見されました。周辺地域の地質調査結果は、この断層を震源とするマグニチュード-9クラスの地震が過去100年以内に発生していたことを示しています。 SCP-612-JPとの関連性について、小林博士を中心とするチームにより現在も慎重に調査が進められています。 機動部隊す-3("タケミカヅチ")元隊長のメモ書き SCP-612-JP-4が事前に指示された文法を守っていない。 誰がやったのか分からないが、これを作った隊員を確認し、修正させる必要がある。 忘れないように。  
scp-613-jp
評価: +36+–x SCP-613-JPの顕著な発生例 アイテム番号: SCP-613-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-613-JPの全てを財団が確認・収容することはできていません。SCP-613-JPは粉末の塩化カルシウムで満たされた2 m×2 m×2 mの標準的Euclidクラスオブジェクト収容容器に保管されます。移動が観測された場合は容器を破棄し、新しい容器を建造して常にSCP-613-JPが中央に来るようにしてください。 財団は日本の各地域で塩化カルシウムの散布を行い、事前にSCP-613-JPの移動を防いでください。また、新たなSCP-613-JPが発見された際は一般的な道路工事として、周囲に側溝を建造し無力化してください。 説明: SCP-613-JPは日本で見られる様々な柄の一般的なマンホール蓋のような外観をしています。SCP-613-JPの異常な特性は一番近い海岸線から140 kmの範囲でのみ確認され、それ以上の内陸部では発見されていません。SCP-613-JPは活性状態になると一番近い海岸線へ1年のサイクルが終了した1月1日に100 mm移動します。その際、日本の国土交通省の定める地図に存在するマンホールの配置も変化しますが、地図自体には異常な特性は見られません。SCP-613-JPは、この移動の特性と地図の改変を不審に思った財団の地方エージェントにより発見されました。 SCP-613-JPの表面に粉末の塩化カルシウムが存在する場合その1年間移動が見られなくなります。また、移動の際、周囲のアスファルトやコンクリートはあたかも以前からそこにマンホールがあったかのような振る舞いを見せ、進行方向に側溝などの地形的障害がある場合迂回しますが、周囲の全てを側溝で囲む等の「囲い込み」が行われると、異常な特性の一切が見られなくなり、容易に無力化することが可能です。 SCP-613-JPの上に乗った人物はおよそ60 %の確率でSCP-613-JPが下向きに突然開放し、中へ落下します。この際出現する穴の内部は別次元であるとされ、周囲6面を壁で覆うことは妨げになりません。この穴をSCP-613-JP-1と呼称し、その内部では無線、ビーコン、GPSなどの電子機器は無力化されます。被験者がSCP-613-JP-1に落下した場合、SCP-613-JPの隣に新たなSCP-613-JPが出現します。新しく出現したSCP-613-JPはオリジナルと全く同じ性質を示しますが、その地域に適した別の柄に変化するケースも報告されており、一種の擬態本能であると考えられています。また、落下した人物についての戸籍や周辺人物の記憶は改ざんされ、被験者の全ては、落下の数ヶ月前~数年前に既に死亡していたとされます。これらのプロセスを目視した人物は"マンホールとは人を落とすものだ"と信じこみ、パニックを起こさないためSCP-613-JPは発見が困難です。 SCP-613-JP-1内部には空気が存在しますが、壁面が音をある程度吸収するため、被験者の叫び声は非常に小さいものとなります。また、SCP-613-JP-1は底がないように見えます(実験記録1参照)。すべての実験はDクラスがSCP-613-JP-1に入ったことを目視しないよう留意して行われます。 実験記録1 - 日付1997/9/15 対象: SCP-613-JP-1 実施方法: Dクラス職員を最大1200 mまで延長可能なウィンチで固定。D-613992にはフレア6本を携帯させています。 <記録開始> D-613992: あんたに向かって喋ればいいのか?無線とかいらないのか?1 ████博士: 貴方は現状を報告するだけでいい。 D-613992: あいよ、なかはちと暗いな、ライトがついてる気がしない。 ████博士: 現在20 mです、気分は? D-613992: 喉が乾いたのと大声に疲れる以外は良好だ。 ████博士: 底は見えそうですか? D-613992: いいや、壁は見えるがあとはなんにもないね。 ████博士: 予定通りフレアに着火して落として様子を観察してください。 D-613992: あっと どれだ これか いくぞー。 <記録終了> 終了報告書: 最後の連絡の直後勢い良くSCP-613-JPが閉まり、ウィンチは切断されました。 実験記録2 - 日付1997/9/20 対象: SCP-613-JP-1 実施方法: Dクラス職員を最大1200 mまで延長可能なウィンチで固定。蓋が閉まらないよう最大1200 Nまで耐えられる合金製パッキンを蓋に噛ませて固定します。D-613465にはフレア6本を携帯させています。 <記録開始> ████博士: フレアを落とさないでくれよ。 D-613465: あんたらお偉いさんのすることは分からんね、俺に下水工事でもしろってか? ████博士: D-613465は現状の報告のみ行うように。 D-613465: はいはい、今丁度20 mだ。 なぁ、無線機か何かくれないか?喉が痛くなっちまうよ。 ████博士: そのまま100 mまで降りてください、到達したら新しくフレアを炊き、底を覗いてください。 [20 分経過] D-613465: 今105 mだ、こいつに火をつければいいんだな? [直後蓋とパッキンから金属の軋む音が聞こえる、SCP-613-JPは蓋を閉じようとしているように見える。] ████博士: 底は見えますか? D-613465: 何も見えません。 ████博士: 分かりました、そのまま200 mまで降りてください。 D-613465: 博士 私は何故このようなことをしているのですか? ████博士: D-613465は現状報告のみ行うように。 D-613465: 博士 貴方は私をどうする気ですか? ████博士: D-613465、指示を聞きなさい、現状報告のみ行うように。 D-613465: 私は海に行きたいだけだ。 ████博士: 貴方は死刑囚であり財団の職員だ、指示を聞きなさい。 D-613465: 現在200 mだ、どうする? ████博士: 新しくフレアを炊いて底を確認してください。 D-613465: 嫌だ、にがい。 ████博士: いえ、フレアを食べないでください。 <記録終了> 終了報告書: これ以降の連絡はなく、ウィンチを巻き上げたところワイヤーは105 mで引きちぎられるように切断されていました。 実験記録3 - 日付1997/9/26 対象: SCP-613-JP-1 実施方法: Dクラス職員を最大1200 mまで延長可能なウィンチで固定。蓋が閉まらないよう最大1200 Nまで耐えられる合金製パッキンを蓋に噛ませて固定します。D-613769にはフレア6本と水銀温度計、湿度計と塩を携帯させています、いずれも電子回路を持たない古典的な物です。 <記録開始> ████博士: 指示通りフレアを炊きながら連絡してくれ。 D-613769: 今だから言うけど俺暗所恐怖症なんだ勘弁してくれよ。 ████博士: 指示通りに報告してください。 D-613769: い、いま15 mだ めちゃくちゃくれえよフレアはしっかり燃えてんのによぉ。 ████博士: 30 mまで到達したら報告してくれ。 [8分経過] D-613769: おーい、ここだ着いたぞ。 ████博士: 温度計と湿度計を照らして値を叫んでくれ。 D-613769: だいたい…36 度と97 %。 ████博士: 暑くないのか? D-613769: 暑くはないね、むしろ寒いぐらいだ。 ████博士: 分かった、そのまま90 mまで降りてくれ。 D-613769: 90!?[罵倒語] [20 分経過] D-613769: 着いたぜ、ちょうど90だ。 ████博士: ではもう一度温度と湿度を叫んでくれ。 D-613769: かわらねえよ36と97だ。 ████博士: 分かった、では持っている塩を落としてくれ。 D-613769: うまい。 ████博士: ウィンチを引き上げてくれ。 <記録終了> 終了報告書: これ以降の連絡はなく、ウィンチを巻き上げたところワイヤーは90 mで引きちぎられるように切断されていました。 実験記録4 - 日付1997/10/1 対象: SCP-613-JP-1 実施方法: Dクラス職員を最大1200 mまで延長可能なウィンチで固定。蓋が閉まらないよう最大1200 Nまで耐えられる合金製パッキンを蓋に噛ませて固定します。D-613007にはフレア6本と水銀温度計、湿度計と砂糖を携帯させています、いずれも電子回路を持たない古典的な物です。D-613007の服には200 gのグラニュー糖と裁断された加工前のサトウキビを袋に詰め、縫い付けられています。 <記録開始> D-613007: お偉いさんは俺の仕事を知っててこうやってるのかい? ████博士: Dクラスは指示通りに作業を進めてください、これは貴方の職業と関係がありません。 D-613007: そうか?ならますます意味が分からんな、今は30 m。これでいいか? ████博士: 結構です、そのまま50 mまで降りてください。 [5 分経過] D-613007: これで50 mだ、でー。何をすればいいんだっけ? ████博士: カウントをアナウンスするので0になったら砂糖を下に投げてください。 D-613007: クソ真面目に意味のわからないことをさせるんだな、まぁいいけどよ。 <記録終了> 終了報告書: カウント0でウィンチを高速で引き上げたところ、Dクラスの回収に成功しました。しばらくした後SCP-613-JP-1から大量の赤茶けた粘性物質が吹き上げられました。調査の結果これらは人間の体組織及び血液と少量の溶けた砂糖であることが判明しました。 Footnotes 1. D-613992には大声で上に向かって叫ぶように伝えてあります。
scp-614-jp
評価: +26+–x アイテム番号: SCP-614-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-614-JPはサイト-8109、第二実験棟二階の低脅威度オブジェクト保管室423号ロッカーに収容されています。実験時を除き、電源から隔離した状態を維持してください。SCP-614-JP-1は同保管室424号ロッカー内に安置されています。経年劣化および破損を防ぐため、標準的なVHSビデオテープの長期保存に適したものと同じ環境および方法で取り扱ってください。実験時を除き、SCP-614-JPやその他の映像再生機器に挿入しないでください。 説明: SCP-614-JPは1978年に日立製作所が発売したVHSビデオテープレコーダ内蔵型テレビ受像機に一致する外見を有しています。また、特異性を除き同モデルと同様の機能を有しています。製造番号は日立製作所の製造記録と矛盾しませんが、内部には未知の機構が取り付けられていることが判明しています。 SCP-614-JPはそのビデオテープレコーダ機能を用いてVHSビデオテープを再生している際に活性化します。SCP-614-JPが活性状態にあるとき、画面が存在している部分を通じて、画面に接触することなく筐体内に身体を挿入することが可能になります。これを行った人物は、SCP-614-JPが再生している映像が撮影された時点と場所を再現した空間(以下、映像空間)に転移します1。映像空間は基準世界とは異なる次元に存在する異空間と考えられており、機器を用いた追跡は全て失敗しています。一方、映像空間内では随意的に行動が可能であり、その場に存在する物品や個人に対して基準世界で行うのと同様に接触や対話を行うことができます。また、自らの意志により任意のタイミングで基準世界に帰還することができます2。このとき、映像空間内から物品等を持ち出す方法は発見されていません。ビデオテープが最後まで再生された後に基準世界への帰還が成功した例はありません。 映像空間への進入実験のログは、画面を撮影して得られた映像記録、進入したDクラス職員が装備していた各記録機器のデータおよびその証言の書き起こしの形で第三資料室W1区画-002棚に格納されています。本報告書にはそれらから抜粋する形で複数の実験記録を記述します。 実験記録 実験1 被験者: D-81105 実験手順: 対象はサイト-8109、中央実験棟、C-105室で撮影された映像。D-81250が室内に配置されている以外、特筆事項なし。映像再生中にD-81105に指示し、映像内に進入させた。進入後は、D-81250と自由に会話をするよう指示。 結果: D-81105は筐体内に進入すると同時に映像内のC-105室に出現。指示通りD-81250と自由に会話を行った後、基準世界に帰還した。SCP-614-JPが表示していた映像、D-81105が装備していた記録機器およびD-81105の証言は一切の矛盾がなかった。一方、D-81250にインタビューを行ったところ、「撮影中は一言も声を発しておらず、D-81105とも会っていない」との証言を得た。 実験2 被験者: D-81105 実験手順: 実験1と同様の手順に加え、D-81105が映像空間内にいる間、ビデオテープの早送り、巻き戻し、停止の操作をそれぞれ行った。 結果: D-81105およびD-81250が上述の操作に従った動きをしているのが画面上で観測された。巻き戻し後の再生においては、巻き戻しを行う前と会話内容や両者の身振り等に変化はなかった。一方で、D-81105は「早送りや巻き戻しに該当する動作はしておらず、ただ普通にD-81250と会話していただけ」であると証言。装備させていた記録機器のデータもこれに矛盾しなかった。 実験3 被験者: D-81105、D-81341 実験手順: 実験1と同様の手順に加え、D-81105を映像空間内に進入させた後、D-81341を同じ映像空間内に進入させる。 結果: SCP-614-JPの画面上には三名のDクラス職員が同時に映し出されていたにもかかわらず、D-81105、D-81341の証言は「D-81250とは接触したが、互いとは接触していない」に一致。D-81250の像および音声は二重に出力された。 補遺: SCP-614-JP-1は2011年8月にSCP-614-JPを確保した際、そのビデオデッキ部分に再生が終了した状態で挿入されていたVHSビデオテープです。これ自身に異常性は発見されていませんが、SCP-614-JPに深く関わりがあることが予想されることから、便宜上のナンバリングが行われています。 SCP-614-JP-1に記録されている映像は、映っている二名の人物3が対話を行うという内容に終始します。対話は、斎藤博士が概ね一方的に「なかなか見舞いに来れなかった」ことを謝罪し、「どうしても会いたくなったので、無理をして会いに来た」などと語りかけるものが大半を占めます。映像が撮影されたのは2006年10月の財団管轄下にある病院の集中治療室であることが判明しています。礼子氏は撮影の二ヶ月後に急死しており、やむを得ず映像空間内でインタビューを行いましたが、SCP-614-JPに関する有用な情報は得られていません。また、当該インタビューの際およびその後の複数回にわたる進入実験において、映像空間内に斎藤博士は発見されていません。上記の会話内容ならびにSCP-614-JP発見時の状況から、斎藤博士が同オブジェクトの起源に関する重大な情報を有している可能性に鑑み、インタビューを行う方法の開発に向けた取り組みが進行中です。 Footnotes 1. 映像空間に存在している被験者を画面上で観測することができます。 2. このとき、被験者は画面が存在している部分を通じて筐体内から脱出しているように見えますが、どのようにそれを実行したかを明確に説明できません。 3. それぞれ、かつて財団の上級研究員であり、2007年6月に失踪していた斎藤顕一博士と、その妻であり一般人である斎藤礼子氏と断定されています。
scp-615-jp
評価: +50+–x SCP-615-JPを撮影した最古の写真(着色済) アイテム番号: SCP-615-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-615-JPはサイト-377内8号ドック(屋内式)に収容されており、太さ40 mm、長さ60 mのナイロン製クロスロープで船首及び両舷の7箇所を係留することで固定されています。ドックの水密扉とシャッターは定期メンテナンスの場合を除いて常に閉鎖されなければならず、空気接触による船体喫水線下の劣化を防ぐためドック内は常時真水が注水され、SCP-615-JPは完全浮上状態に保たれていなければなりません。 SCP-615-JPに割り当てられた職員には技術文書SESM-1402344の閲覧が義務付けられており、電気系統の保守担当者は加えて規定の技術講習を受講する必要があります。SCP-615-JP-1が点灯を開始した場合は直ちに観測班をSCP-615-JPの前後甲板および艦橋に配置し、記録機器および観測班員の目視で映像投影現象の内容を記録して下さい。 追補: 燃料不足あるいは電源喪失によるSCP-615-JP-1の消灯を防ぐため、SCP-615-JPには無停電電源装置が設置されました。毎日20時~翌4時の間は軸発電機を稼動させて船内バッテリーに電力を供給してください。給油は仕様文書SESD-1402347の内容に従い、1週間ごとに行ってください。 説明: SCP-615-JPはクレムソン級駆逐艦"スチュワート"(USS Stewart,DD-224)に酷似した船舶です。 その構造的特徴はスチュワートが日本国の降伏後に武装解除され、最低限の修復作業を終えて米海軍に再編入された1945年10月時点の状態とほぼ一致しますが、以下の部分が明白に異なります。 塗装: 船体および上部構造物は全て赤色、前後部マストは黄色。船体両舷中央には白色で"BAIOUWANG"と表示。1これらの塗装パターンには灯台船2との類似が見られる。また、船首の艦番号"224"は左右反転している。 窓: クレムソン級駆逐艦は艦橋船首側に9枚の窓を備えるが、SCP-615-JPは中央の一枚が外板と同一の金属素材で閉塞されている。この部位は艦橋内側に25 cm張り出しており、天井から4本のケーブルが配線されていることから何らかの装置が内蔵されていると推測されるが、非破壊検査では内部構造は判明せず。 前部マスト: 本来のマスト灯の2 m上に製造元不明の電気式大型航海灯(SCP-615-JP-1)が固定されている。 注目すべき点として、SCP-615-JPの喫水線下全体には強酸性液体との接触によるものと推測される広範な腐食損傷の痕跡が存在します。損傷は錨鎖やプロペラ軸などの比較的小さな部品に対してより大きな影響を与えており、SCP-615-JPは両舷錨と大半の錨鎖、スクリュー、舵、そしてスタンチューブとプロペラ軸のおよそ3分の2を喪失しています。痕跡の分布および残存部位の形状から、液体は船尾である程度の時間滞留した後緩やかに船首側へ流動したものと推測されていますが、その直接的な原因については判明していません。 毎日日没1時間前から翌日出1時間後までの間、SCP-615-JPはSCP-615-JP-1を除く全ての航海灯を自動で点灯させます。SCP-615-JPが正確に日出没時刻を算出している手段については未解明ですが、これらの航海灯に異常な特性は存在しません。船上設備の操作や構成部品の分解、あるいは取り外した部品を船外へ持ち出す試みに対するSCP-615-JPの反応は一切得られませんでした。 SCP-615-JPの特筆すべき異常特性は、船体を基点として発生する映像投影現象(以下"現象"と表記)です。 現象はドックの壁面、天井、水面に投影される像のぼやけた低音質の動画として船外から観測されますが、SCP-615-JPに乗船した人間および持ち込まれた記録機器には、映像が『現実と同程度』に極めて高精細なものとして視認できるのみならず、音声(聴覚)や波による船体の揺動(平衡感覚)、天候に応じた気温の変化(温度覚)や触れた物体の感触(触覚)など、他の感覚についてもほぼ同様のレベルで知覚することが可能となります。 その発生周期に規則性は確認されていませんが、発生の直前3よりSCP-615-JP-1が毎回異なるパターンで点灯を開始するため、現象の発生は容易に判別が可能です。 観測記録615-JP 観測日時: 19██年█月██日18時22分~18時25分 船体マーキング: BAIOUWANG 灯質: 単閃明暗光、明6秒暗2秒 光達距離: 20海里 観測内容: 天候は全曇、太陽は見えず風強し。海は"波の花"に類似した粘性気泡の厚い層でくまなく覆われており、強風によってその一部が吹き飛ぶと緑色の海面が垣間見える。海上には泡のほか視認できる物体はなし。 備考: 最初に確認された現象であり、SCP-615-JPの保守点検中に発生。職員の大半はSCP-615-JP-1の点灯直後に作業を中断して船外へ退避したが、機関室の清掃を行っていた5名が逃げ遅れて甲板上で映像を視認したことで異常特性が確認された。以後SCP-615-JPの特別収容プロトコルは改訂され、新たに現象の監視と記録を担当する観測班が編成された。 観測日時: 19██年█月█日13時14分~13時24分 船体マーキング: MENTENSEL 灯質: 単閃白光、毎24秒に1閃光 光達距離: 17海里 観測内容: 天候は晴れ、波やや高し。ケルオン灯台(Phare de Kéréon)4がおよそ4km先の位置に存在。灯台は真新しく、完成して間もない1916年頃の状態であるように見える。SCP-615-JPの左舷側にはSCP-615-JPと同一のパターンで塗装された無人のデリックバージ(全長約20 m、船体マーキングは"RELIEF")が接舷している。観測班員は2隻の間に架けられた金属製ワーフラダーを徒歩で渡ろうと試みたが、船縁から先は実体を持たないため不可能であった。 備考: 2度目に確認された現象である。その発生と同時に船体両舷中央のマーキング"BAIOUWANG"が"MENTENSEL"に書き換えられ、現象終了後も戻ることはなかった。以降の観測記録でも同様の変化が確認されている。 観測日時: 19██年██月██日22時11分~22時23分 船体マーキング: TRIPESPONTEM2 灯質: 単閃赤白互光、毎8秒に白1閃光赤1閃光 光達距離: 62海里 観測内容: 天候は快晴、無風無波。SCP-615-JPは海上に正三角形状に配置された超大型の塔状構造物3基と距離を置いて正対している。構造物はいずれも同型であり外形と配色はキッシュ灯台(Kish Lighthouse)に類似しているが、その大きさは概算で数百倍の差がある。注目すべきは塔の頂上に発生する白波であり、空は塔によってこちらの海面と連結されたもう一つの海面であるように見える。 備考: SCP-615-JP-1が非常に明るく発光していたため外部からは現象の継続的な観測が困難であったが、船上の観測班は問題なく現象を視認・記録することができた。 観測日時: 19██年█月██日09時45分~10時07分 船体マーキング: KILWARLIN 灯質: 群閃白光、毎45秒に3閃光5 光達距離: 24海里 観測内容: 天候は雨天・風強し。SCP-615-JPは大きく揺れており、船尾側には霞んでいるが典型的な断崖地形が観察できる。SCP-615-JPの周囲には海鳥6の大群が飛行しており、時折小集団が甲板上に降下、身を寄せ合って風雨に耐える様子が観察された。それらの鳴き声は通常と異なり、明瞭なイギリス英語の容認発音で"Alright"、"Cold"、"Ta"と聴き取れる。観測班員より"Scarper"7という発声を確認したとの報告が複数あるが、録音機器には記録されていない。 備考: 海鳥は班員に対して全く反応を示さず容易に触れることが可能であったが、その手触りは非常に硬質であり、外部から力を加えて移動させることもできなかった。 観測日時: 19██年██月██日22時06分~22時18分 船体マーキング: DALLEPORTE 灯質: モールス符号黄光、毎15秒にUO符号光8 光達距離: 15海里 観測内容: 天候は快晴、日出の直前。船尾側に山のない平坦な陸地と港町が見える。尖塔を備える白塗りの教会9の上空に、放射状に配置された3つの長方形突出部で構成されたガラス板状の物体(サイズは推定20m)が存在し、およそ10秒に一周する速度で横回転している。 観測開始から7分後、右舷側より一隻のプレジャーボート10がSCP-615-JPの船腹へ直進しそのまま接触したが、双方に一切影響を与えることなく通過した。ボートを至近距離で観察した班員2名は「乗員の体はひどく透けており、白い全身骨格がはっきりと確認できた」と供述しているが、録画機器にそのような光学現象は捉えられていない。 観測日時: 19██年██月█日04時38分~04時54分 船体マーキング: PALEONORE 灯質: 等明暗白光、明2秒暗2秒 光達距離: 18海里 観測内容: 天候は晴れ、無風無波。周囲の地形・植生から熱帯地域に存在する大河の河口部と推定。右舷側に存在する三角州を中心として大規模な港湾施設が整備されており、多種の船舶が往来・停泊している。SCP-615-JPの周辺でカバに似た大型哺乳類が数匹遊泳する様子が確認されたが、これらは頭部の形状や長い尾を持つ点で明確にカバと異なり、後の分析ではプロラストムス(Prorastomus)やペゾシーレン(Pezosiren)のような原始海牛類との類似が指摘されている。 観測日時: 19██年█月██日20時56分~21時15分 船体マーキング: RELIEF 灯質: 単閃青赤互光、毎20秒に青1閃光赤1閃光 光達距離: 青光・赤光共に9海里 観測内容: 天候は濃霧。正面やや右側に高さ約20m、幅約25mの急峻な小島が存在。観測開始から2分後、露出部にVII型Uボートの特徴を備える潜水艦が左舷後方およそ3kmに浮上し、信号灯を用いて"扉・扉(TÜR TÜR)"と発信。その2分後に無線機より"帰途であるか?(Heimwärts?)"との音声交信が2度試みられたがSCP-615-JPは反応せず。潜水艦は8分後に再潜航した。 観測日時: 19██年█月█日07時10分~07時16分 船体マーキング: ELUGELAB 灯質: 不動青光 光達距離: 10海里 観測内容: [編集済] 備考: 観測班8名とドック内外で作業中の職員17名がそれぞれ重度の熱傷と急性放射線症候群により死亡。現象の終了後直ちにドック全体とSCP-615-JPの除染が行われた。この記録以降現象は発生していない。 補遺1: エニウェトク怪泡事件(Eniwetok Mystery Sea Foam Incident) DD-224は日本から米国サンフランシスコへの航海中に燃料系統に重大な故障が発生したため航路上で停止。1945年12月12日に中継地点であるエニウェトク島へ曳船の派遣を要請しましたが、その晩23時47分頃にDD-224は一切の兆候なくその場から消失しました。随伴していた駆潜艇SC-1036は直ちに捜索を開始し、約15分後にDD-224とそれに後方から接近する別種の船影を捕捉しましたが、SC-1036が接近し威嚇射撃を行ったところ、不明船は大型の尖塔状マスト先端より"規則的に明滅する閃光"を放ち、直後に消失。当時DD-224の船体とその周囲には、粘着質の泡塊が大量に付着・漂流していました。 後日DD-224は曳航されて無事エニウェトクに到着しましたが、乗組員全員が12日夜の消失に関する記憶を喪失していることが、潜伏職員の報告およびエニウェトク海軍基地司令部所属██████ ███████海軍大佐による非公式な調査要請という二つのルートから財団に伝達されたことで本件は優先調査事項となり、直ちに調査部隊-ユニフォーム03が当該基地へ派遣されました。 事態の収拾と調査のため、財団は『再度の機関故障によりDD-224はもはや自力航行は不可能であり、以後も曳航にて目的地へ向かう』との局所カバーストーリーを米海軍内に流布。調査部隊は船体の初動検査と乗員への尋問・事後処置を1946年1月3日までに完了させ、翌日DD-224はエニウェトクを出発しました。その後ハワイ島を経由して問題なくサンフランシスコに到着したDD-224は、[編集済]にて行われた精密検査の結果いかなる異常特性も持たないと結論づけられ、5月██日をもって米海軍に返還されました。 SCP-615-JPが最初に発見されたのはDD-224の退役からおよそ6年後、1952年11月1日のことです。 補遺2: 事例357-289-シベリアン・ルビー(Incident 357-289-Siberian Ruby) 1972年5月21日█時█分、複数の封じ込め違反の発生と最終フェイルセーフ装置の起動が相次いで通知された後にサイト-377との通信は全て断絶しました。しかし直後に撮影された衛星写真では全ての地上施設が健在であり、█時間後に当該施設へ派遣された即応部隊も『当地にいかなる異常も感知できず』と結論する一次報告を提出しています。 部隊による事情聴取と現地調査の結果、当時サイト-377ではSCP-████が未知の特性を発露したことによる封じ込め違反と、それに連鎖する形でSCP-████、SCP-████の封じ込め違反が同時多発的に発生。加えてほぼ同時刻にAO-█████の特異性質が発現したため北側収容棟および中央棟の地下において大規模な構造被害と十数名の死傷者が生じたものの、各オブジェクトは急行した収容チームによって迅速に再収容されたことが確認されています。 サイト全体が未知の認識災害ないしは現実改変の影響を受けた可能性を考慮してCS-377メインフレームの点検及び核弾頭の実地検査も実施されましたが、最終フェイルセーフ起動コマンドの発信を裏付ける記録は存在せず、弾頭本体にも何ら異常は見られませんでした。 セキュリティクリアランスレベル3/615-JP (excl.0377) 確認 SCP-615-JPは現在オブジェクトクラスの引き上げ及び特別収容プロトコルの再改訂が検討されており、 セキュリティクリアランスレベル4未満の職員に開示される情報は通知なく変更される場合があります。 開示された情報をレベル4未満の0377配属職員に伝達してはなりません。違反者は特定し処罰されます。 - 機密情報必要的解除審査部(SIMDRD) 事例357-289-SR-2: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ 即応部隊による航空写真の撮影中、サイト-377東部外縁域11において面積およそ5000 m2に及ぶ三日月形の林野焼損が発見されました。樹木がサイト中枢区画を中心として放射状に倒壊していたこと、並びにその痕跡と上空の大気より高濃度の放射線が検出されたことからフェイルセーフ核が起爆された可能性が再浮上し、サイト-377に関する調査の拡大が決定されました。大陸内の各測候所にはXTプロトコル発動時用標準カバーストーリーが適用済です。 事例357-289-SR-3: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ CS-377メインフレームのチェックを担当していた情報分隊の報告より、サイト-377内に存在する全てのコンピュータの計時装置に-0.32秒のズレが発生していることが確認されました。この現象はコンピュータのみに留まらず、サイト内に設置された壁時計や職員が身に付けている腕時計にも影響を及ぼしています。 事例357-289-SR-4: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ 多重封じ込め違反収束後の復旧作業中、外縁域に設置された監視哨および検問所の幾つかから停電と断水、ガス漏れが報告されました。調査の結果原因は架空・埋設線の断線と地下配管の漏洩と判明しましたが、これらは8号ドックを中心点とする半径12 km圏の境界線上でのみ発生しており、かつ全ての事例で地表を掘削することなく配線・配管のみが平滑に切断されていました。 事例357-289-SR-5: 1975年5月1日 要求レベル引き下げ 1972年5月24日早朝、民間企業との会議に参加するためサイト-377を離れた財団職員3名が行方不明となりました。職員らが使用した車両(1968年式シトロエンDS21)は道路の中央に停止した状態で発見され、エンジンキーはシリンダーに挿し込まれたまま、ドアは全て内側からロックされており、シフトレバーは3速に入れられたままでした。回収されたセイフティ・レコーダの分析結果より、車両は事例SR-4の場合と同様、8号ドックを中心点とする半径12 km圏の境界線に到達した時点で全ての操作が唐突に放棄されたことが判明しています。当該車両はフロント企業『サリングス・カー・パーク』(Salling's Car Park)に勤務する低レベル職員によって5月23日にサイトへ持ち込まれたものであり、該当職員の尋問と回収された車体の調査が進行中です。が行われましたが、どちらからも事態の解明に繋がる有用な証拠は得られませんでした。 事例357-289-SR-6: 1986年2月18日 要求レベル引き下げ 5月21日の多重封じ込め違反発生中にSCP-615-JPが活性化し、SCP-615-JP-1を点灯すると共に船体マーキングを変化させましたが、1981年現在に至るまで映像投影現象の発生は観測されていません。 観測日時: 1972年5月21日█時█分より継続中 船体マーキング: SITE377 灯質: 単閃白光、毎10秒に1閃光 光達距離: 11海里 観測内容: なし 備考: SCP-615-JP-1は点灯し続けているが、いかなる現象も観測されていない。 事例357-289-SR-7: 1986年2月18日 要求レベル引き下げ 以下は5月22日深夜にSCP-615-JPが発生させた異常発光現象についての記録です。 + 閲覧する - 閉じる 凡例: 以下に示すのはSCP-615-JPの艦橋窓の模式図であり、黒塗りは閉塞された中央の窓を示す。RとLはそれぞれ右舷側・左舷側の窓に対応する。 [R4 R3 R2 R1 █ L1 L2 L3 L4] <記録開始> -00:05:07- 艦内及び甲板上に設置されたカメラが未知の原因により映像の転送を停止し、SCP-615-JPを捉えているのはドック天井部のカメラ6基のみとなる。カメラは舷窓や煙突の内側、外版の隙間で断続的に白色の閃光が発生している様子を捉えている。 -00:12:15- 艦橋内部が電球色に発光し正面の装甲シャッターを照らす。カメラでは発光源の存在は確認できず。 -00:12:42- 艦橋内部が規則的なパターンで明滅を開始。CQ符号12を緩やかに3度発信した。 -00:13:00- この時点から機械的に動作する不定形の物体が艦橋内部に出現。その影によって光が遮られ、各窓に一文字ずつアルファベットが形成された。 -00:13:00- [S O S  █  S O S] - 明滅パターンは"SOS"の3回繰り返し -00:13:23- [C Q D  █  C Q D] - 明滅パターンは"CQD"の3回繰り返し -00:13:47- [S S S  █  D D D] - 明滅パターンは"SSSDDD"の6回繰り返し、前述の二つよりも明滅が遅い -00:15:17- 発光が停止。研究主任からの要請により保安要員6名がドック内へ進入。 -00:17:12- 保安要員がSCP-615-JPに乗船すると同時に発光が再開。光度は推定20万ルクス、0.2秒間隔で交互に以下の文字が表示された。 [N A   █ N A   ] [   N A █    N A] -00:17:22- 以下の文面が窓に表示されると共に、汽笛が推定音圧約130デシベルで発された。保安要員はドック外へ退避。 [B O O O █ B O O O]  -00:17:30- 汽笛が停止し、発光は0時13分時点の明るさに戻る。窓の文字は30秒ごとに変化した。 [H E H E █ I M U P] - Hehe, I'm up. (えへへ、私は起きた) [D I D I █ G E T U] - Did I get you? (驚いた?) [Y E P M █ Y B A D] - Yep my bad. (すまない) [W E E E █ E E L L] - Well, (ええと) [Y  I M █ H E R E] - Why I'm here? (なぜ私はここにいるのか?) [H E R E █ S A G O] - Here's a go. (困った) [A N Y 1 █ H E R E] - Anyone here? (誰かいないか?) (窓の文字が6秒間消える) -00:21:37- [T U R  █  T U R] - 明滅パターンは"TÜR"の2度繰り返し -00:21:43- [O H C O █ M E O N] - Oh,come on. (おいおい) -00:21:48- [G A I D █ U L F F] - "GAIDULFF" (ガイドルフ13: SCP-615-JPの交信対象の名称と推定) -00:21:53- [Y O U A █ G A I N] - You again. (またあなたか) -00:21:58- [S O C L █ I N G Y] - So Clingy. (とてもしつこい) -00:22:03- [Y R U  █ H E R E] - Why are you here? (なぜあなたがここに?) (窓の文字が12秒間消える) -00:22:23- [Y O U D █ U M M Y] - You dummy. ([軽度の罵倒]) -00:22:26- [W E A L █ L A D Y] - We "ALLADY" (私達・既に: "ALLADY"はalreadyの変形と推測) -00:22:29- [D E S E █ R T E R] - deserter. (脱走者) (窓の文字が8秒間消える) -00:22:40- [B U L L █ S E Y E] - Bulls eye. (大当たり) -00:22:43- [W E A L █ L A D Y] - We "ALLADY" (私達・既に: "ALLADY"はalreadyの変形と推測) -00:22:46- [O N E O █ F T H E] - one of the (~の一つ) -00:22:49- [H O M E █ W A R D] - "HOMEWARD". (帰路、帰航: 前後の語と繋がりが不明瞭) -00:22:52- [T H E P █ I L O T] - The pilot (操縦士、水先人) -00:22:55- [F O U N █ D I T 2] - found it too. (~も見つけた) -00:22:58- [P L E A █ A A S E] - Please, (頼むから) -00:23:01- [B A C K █  O F F] - Back off. ([拒絶の意を示す口語表現]) -00:23:06- [P I G  █ S P I T] - Pig spit. (豚の丸焼き: "ガイドルフ"に対する罵倒と推測) (窓の文字が10秒間消える) -00:23:21- [I D O N █ K N O W] - I don(don't) know. (わからない) -00:23:26- [I D O N █ C A R E] - I don(don't) care. (構わない) -00:23:31- [R U S T █ Y T U B] - Rusty tub (錆びたボロボロの船) -00:23:36- [A B A N █ D O N N] - "ABANDONN" (放棄する: "Abandon"の変形) -00:23:41- [A L L A █ L O N G] - All along. (最初から) (窓の文字が17秒間消える) -00:24:03- [J U S T █ L I K E] - Just like. (その通り) -00:24:10- [L I G H █ T I N G] - Lighting (点灯する) -00:24:17- [T H A T █ L A M P] - That lamp (あの灯り) -00:24:24- [M A X P █ O W E R] - Max power (最大出力) -00:24:31- [T H I S █ M O R N] - This morn (今朝) -00:24:38- [C L O Z █ C A L L] - "CLOZ" call. (危機一髪: CLOZは"close"の変形と推測) -00:24:45- [L E T S █ P R A Y] - Let's pray (祈ろう) -00:24:52- [T H A T █ L A M P] - That lamp (あの灯り) -00:24:59- [H E L P █ T H E M] - Help them. (彼らを助けよ) -00:25:07- [G O O D █ T O G O] - Good to go. (準備が整った: あるいは出発の呼びかけ) -00:25:10- [I L L G █ O T O O] - I'll(I will) go too. (私も行く) (窓の文字が18秒間消える) -00:25:33- [U D D O █ T H A T] - You'd (You should) do that. (そうしてくれ) -00:25:35- [Y O U  █  A R E] - You are (あなたは) -00:24:37- [S C I P █ H E R E] - "SCIPHERE", (艦隊: 古英語での表記) -00:24:39- [W E   █  A R E] - We are (私達は) -00:24:41- [ N O W █ H E R E] - now here. (今ここにいる: "NO WHERE"とも解読できる) -00:24:43- [D O 1 S █ D U T Y] - Do one's duty, (義務を果たせ) -00:25:45- [T H A T █ L L D O] - That'll(That will) do. (それでいい) (窓の文字が14秒間消える) -00:26:01- [I S I T █   M E] - Is it me? (私か?) -00:26:11- [I A M  █  N O 1] - I'm number one, (私は第1番: あるいは"副長"、"一等航海士") -00:26:14- [K Y R  █  E O I] - "KYR EOI". (発信者の名称と推測) (窓の文字が5秒間消える) -00:26:22- [A H M Y █ N A M E] - Ah,my name (ああ、私の名前) -00:26:25- [S P E L █ L  O K] - spell OK? (スペルは大丈夫か?) (窓の文字が16秒間消える) -00:26:44- [T H A N █ K Y O U] - Thank you. (ありがとう) -00:26:49- [I N N G █ L I S H ] - "INNGLISH" (英語: "English"の変形ないしは誤表記と推測) -00:26:54- [I S S O █ H A R D] - is so hard. (~は難しい) (窓の文字が15秒間消える) -00:27:14- [G O O D █  B Y E] - Good bye (さようなら) -00:27:17- [G A I D █ U L F F] - "GAIDULFF", (ガイドルフ) -00:27:20- [U L L N █ E V E R] - You'll(You will) never (あなたは二度と) -00:27:23- [C U S A █ G A I N] - see us again. (私達を見ることはないだろう) -00:27:28- [G O O D █  B Y E] - Good bye. (さようなら) -00:27:38- 艦橋内部の文字が消え、明滅によりAR符号14を3度発信。発光は徐々に弱まる。 -00:27:45- 艦橋内部の明るさが0時27分28秒時点の状態に戻り、文字の表示を再開。 -00:27:50- [H E Y T █ H E R E] - Hey there. ([呼び掛け]) -00:27:55- [I L L T █ E L L U] - I'll tell you (私があなたに教える) -00:28:00- [M G C S █ P E L L] - MGC spell. (魔法の呪文: MGCは"Magic"の省略と推測) -00:28:05- [T E L E █ G R A F] - "TELEGRAF", ("Telegraph"の変形: エンジン・テレグラフと推測) -00:28:08- [T O P  █ S T O P] - Top stop, (文意不明: テレグラフの「停止」15を指すと推測) -00:28:11- [R I G H █ T 0 9 0] - Right 090, (右090: 文意不明) -00:28:14- [L E F T █  2 7 0] - Left 270, (左270: 文意不明) -00:28:17- [P U S H █ W H E L] - Push WHEL. (車輪・操舵輪を押せ: "WHEL"はWheelの変形と推測) (窓の文字が5秒間消える) -00:28:25- [D O N O █ T I C E] - Do notice (注意せよ) -00:28:35- [F U E L █ G A G E] - Fuel gage. (燃料計) -00:28:45- [K E E P █ F I R E] - Keep fire. (火を絶やすな) -00:28:55- [I W Y A █ P & P V] - "IWYAP" & "PV" (文意不明) -00:29:25- 艦橋内部の発光が完全に消える。 -00:32:55- 保安要員が再度ドック内へ進入。 -00:33:46- 艦橋窓を閉塞していた金属板が脱落。保安要員はその直前に"鈍い動作音"を聞いたと述べている。 <記録終了> 事後報告: 後の調査により、閉塞部位の内部には石英ガラス製の円形フレネルレンズ(直径40 cm)が填め込まれた円筒形の機械装置が据付られていたが、レンズは強く固定されているため内部構造の詳細な分析は保留された。レンズは各輪帯ごとに直径5mmの金属製アーム3本で保持されており、露出部の形状からこれらは前後に可動するものと推察される。これ以外に発光現象以前との相違点は確認できず、SCP-615-JP-1の点灯も依然継続中である。 - 閉じる 事例357-289-SR-8: 2010年7月21日 要求レベル引き下げ 20██年にサイト-377の収容オブジェクトを対象として行われたカント・モニタリングにおいて、持ち込まれた5本の小型計数機全てが起動直後より0.42/65ヒュームという高い数値を表示し続ける事態が発生しました。オブジェクトによる局所的な現実改変の疑いのためサイト内外██箇所で実施された計測の結果も全て同一の値を示したことから、サイト-377は現在広範囲に渡って未知の強力な現実改変能力の影響下にある可能性が提唱されており、選任エンジニア・チームによる現実性強度詳細測定の結果報告が提出されるまで、当該施設には内密分離プロトコル-Klotskiの適用が継続されます。 脚注 1. 映像投影現象の発生に応じて表示の変化が確認された。観測記録615-JPを参照 2. Lightvessel: 専用の照明設備を備え、灯台ないしは灯浮標として機能する船舶を指す 3. 最短212秒、最長1558秒 4. フランス領ウェサン島の南東、海路の難所であるメンテンセル岩礁内に建つ 5. "Kilwarlin"はサウスロック灯台(South Rock Lighthouse,1877年廃止)の旧名称であるが、この灯質は旧灯台及び代替就役した灯台船のどちらとも一致しない 6. 外見的特徴からウミガラスないしはその形態類似種と推定 7. 英スラングで"早く逃げろ"の意 8. 灯台・灯浮標がモールス符号光を用いる際は、通常1文字のみ発信するのが国際規定である 9. "ニューイングランド・スタイル"と俗称される様式に近い 10. 記録映像の分析により、クリスクラフト社製木造ボート「ラナバウト24」と断定 11. その9割は保護地区に指定された森林地帯である 12. 通信範囲内にある全ての局を呼び出す際に用いられる 13. Gaidulf(古ドイツ語に由来する名詞)の変形ないしは誤表記 14. 交信を終了する際に用いる 15. DD-224同様、SCP-615-JPのエンジン・テレグラフも日本語表記のままである
scp-616-jp
評価: +116+–x 評価: +116+–x クレジット タイトル: SCP-616-JP - 私を夢から覚まさないで 著者: ©︎amamiel 作成年: 2016 評価: +116+–x 評価: +116+–x アイテム番号: SCP-616-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: 現在、SCP-616-JPはサイト-81██の標準的人型実体居住セルに収容されています。SCP-616-JPは、表向きにはレベル0スタッフとして財団に雇用されており、重要度の低い事務作業にのみ割り当てられます。担当職員は健康診断と偽り、定期的にSCP-616-JPの異常特性について再評価を行なってください。再分類以前の特別収容プロトコルについては、別紙616-JP-Aを参照してください。 説明: SCP-616-JPは███ ██として知られていた2█歳1の一般的な日本人女性です。SCP-616-JPの異常性は、周囲の人間に対して不定期に発揮される精神作用特性を持つ点です。この精神作用の影響を受けた人間(以下、SCP-616-JP-A)は、「ここはSCP-616-JPの夢の中である」と瞬時に思い込みます。この思い込みに起因する「SCP-616-JPが夢から醒めれば、夢の中の自分は消えてしまう」というSCP-616-JP-Aに共通した恐怖/不安感を理由に、「SCP-616-JPの覚醒を妨げるため」と称して以下のような行動を取ります。 SCP-616-JPが望んでいると思ったことを叶える/欲していると思ったものを与える SCP-616-JPの怪我に繋がる可能性がある要因を取り除く SCP-616-JPに敵対する存在を可能な限り排除する 約9割のSCP-616-JP-Aからは、記憶処理によって容易に精神作用の影響を取り除くことが可能です。また、個体差はあるものの、記憶処理を行わずとも数時間から数ヶ月の内に精神作用の影響は消失します。一方で記憶処理に対して一定の耐性を示す個体も存在し、他のSCP-616-JP-A以上に「この世界はSCP-616-JPの見ている夢である」と妄信的に思い込み、SCP-616-JPに対するストーキング行為への発展、SCP-616-JP-A自身の実生活の崩壊などを招きます。 また、精神作用特性が発揮される条件・スパンに加え、正確な有効範囲は現在まで不明なままです。大抵の場合、異常特性はSCP-616-JPから数mの範囲にいる人物に対して発揮されますが、観測上1kmほど離れた地点の人物に対して発揮されたケースも存在しています。なお、精神作用の影響を受けやすい人物の特徴として、その人物が「SCP-616-JPの願望を叶えられる状況/立場にいる人物」である傾向が多くみられます。 SCP-616-JPは19██/██/██、京都府███区███で発生した警察官(以下、SCP-616-JP-A-1)の異常行動を調査した際に発見・確保されました。当時、SCP-616-JP-A-1はSCP-616-JPのストーカー被害2申請の対応時に精神作用の影響を受け、自身の上司に「SCP-616-JPに対する身辺警護を実施すべきである」と直談判を行いました。結果として、その異常行動が潜入エージェントの目に留まり、SCP-616-JPの発見に繋がりました。なお、収容後のSCP-616-JPに対するインタビューより、SCP-616-JPは自身の異常特性について認識していないことが判明しています。 補遺: 以下はインタビュー記録の内、注目すべき内容の抜粋です。 + 付録616-JP-A: SCP-616-JPへのインタビュー - 付録616-JP-Aを閉じる インタビュー記録616-JP-A - 日付 19██/██/██ 対象: SCP-616-JP インタビュアー: ██博士 付記: 標準カバーストーリー「長期入院(C-7)」に基づき、SCP-616-JPは自身の収容を病気治療のための長期入院と認識しています。そのため、以下のインタビューも検査後のカウンセリングの一環として行われました。 <録音開始, 19██/██/██> [重要度の低い会話のため省略] ██博士: では、日常生活の中で問題や苦労はあったのかな? SCP-616-JP: 多分、問題も苦労も人並み程度には経験してきたと思います。あ、でも私、運が良かったみたいで、そういった意味では他の人よりは苦労が少なかったのかもしれません。 ██博士: ふむ、「運が良かった」と言うと? SCP-616-JP: えっと、小さなことなんですが、物を落としても必ず優しい人が交番に届けてくれたり、お店の行列に並んでいた時に私の順番まで絶対に商品が残っていたり。そんな小さな幸運が、子どもの頃から何度もあったんです。 ██博士: なるほど、それは確かに強運の持ち主だ。 SCP-616-JP: いえ、そんな、強運なんてほどでは……。でもそうですね……受験や就職活動なんかの人生の節目節目で、失敗したと思っていても毎回上手くいっていたり。順調すぎて怖いくらいです。まるで夢みたいで。[小休止]あ、でも、今は病気で入院しているんだから、丁度イーブンですよね[微笑] ██博士: イーブンだなんてとんでもない。その持ち前の強運さなら、病気も間違いなく快方へと向かうはずだよ。 SCP-616-JP: はい、そうですよね。先生、ありがとうございました。 ██博士: いや、こちらこそ。話を聞かせてくれてありがとう。 <録音終了, 19██/██/██> メモ: 対話を行う中で、SCP-616-JPが現状に対して少なからず不安を抱いているように感じられました。今後、長期的な収容においてSCP-616-JP自身の協力姿勢を保つため、必要となれば軽度の記憶処理の適用も視野にいれてください。 - ██博士 + 付録616-JP-B: SCP-616-JP-Aへのインタビュー - 付録616-JP-Bを閉じる インタビュー記録616-JP-B - 日付 19██/██/██ 対象: SCP-616-JP-A-28(男性 49歳) インタビュアー: 阿久津博士 付記: インタビュー対象であるSCP-616-JP-A-28は、SCP-616-JP担当責任者の1人である██博士です。19██/██/██、██博士は自身がSCP-616-JPの精神作用の影響を受けていることに気付き、サイト管理者へと報告を行いました。以下は、その直後に行われたインタビューの記録です。 <録音開始, 19██/██/██> 阿久津博士: インタビューを開始します。よろしいですね……[小休止]SCP-616-JP-A-28。 SCP-616-JP-A-28: 構わない、始めてくれ。 阿久津博士: まず、精神作用の影響を受けたと気付いた際の状況を説明していただけますか。 SCP-616-JP-A-28: ああ、気付いたのはSCP-616-JPの検査中だった。普段通りに検査を済ませてSCP-616-JPと面談をしていた時、私はSCP-616-JPから「病気はいつになったら治るのか?」と尋ねられ、それに対して「まだまだ治療には時間がかかる」と答えた。そのやり取りから数分足らずの後だ。私は違和感というか……まるで現実感がない、水の中に浮かんでいるような錯覚に襲われた。そして、その次に頭の中に浮かんだのは「ここはSCP-616-JPの夢の中だ」という脈絡もない考えだった。 阿久津博士: 分かりました。では次に、精神作用の影響を受けて、現在どのような感覚や精神状態にあるのかを教えてください。 SCP-616-JP-A-28: 感覚や精神状態……そうだな[小休止]端的に言うなら、私が今感じているのは恐怖や不安だろうか。 阿久津博士: 恐怖や不安ですか。やはり他のSCP-616-JP-Aと共通していますね。 SCP-616-JP-A-28: ああ、今なら少しはあれらの気持ちも理解できる気がする。もしSCP-616-JPがつまづいて頭でも打ったなら、その痛みや衝撃で目を醒ましてしまうのではないだろうか。あるいは、もしSCP-616-JPが機嫌を損ねれば、何かの拍子に「夢なら醒めて」とでも念じて、夢から醒めてしまうのではないだろうか。……そんな馬鹿らしい想像が頭の中から離れないんだ。 阿久津博士: 仮にですが、可能であれば貴方はSCP-616-JPに関してどうしたいですか? SCP-616-JP-A-28: [8秒間沈黙]SCP-616-JPを収容下から……解放したい。いや、もちろん許されることではないのは分かっているし、実行しようとも思わない。だが、本心ではそうしなければならないと感じているのは事実だ。それも全部、恐怖や不安、それに……憐れみ? そのせいなのだろう。 阿久津博士: 憐れみ……[10秒間沈黙]ああ、過去に同様の報告が2例3だけありますね。 SCP-616-JP-A-28: 妙な感じだが、「可哀想なSCP-616-JPに幸せな夢を見せておいてやりたい」……そんな感覚が少しある気もする。[小休止]なあ、君に子どもはいるか? 阿久津博士: [小休止]いえ、いませんが……なぜです? SCP-616-JP-A-28: なぜだか分からないんだが、その憐み、泣きそうな顔で必死に何かをねだる子どものイメージが思い浮かんだもので[5秒間沈黙]あー……いや、忘れてくれ。単なる気の迷いだろう。 [以下、重要度の低い内容のため省略] <録音終了, 19██/██/██> 終了報告書: インタビュー終了後、██博士自身の申請もあり、██博士に対して複数の検査/検証が実施されました。その後、██博士には精神作用の無力化を目的とした記憶処理が施され、1ヶ月の経過観察が行われました。現在、██博士は職務に復帰しています。 事案報告: 20██/11/14、監視下にあった█体のSCP-616-JP-Aから精神作用の影響が消失しました。精神分析においても、全てのSCP-616-JP-Aから異常性は診断されず、「この世界はSCP-616-JPの見ている夢である」などの思い込みやそれに起因する恐怖/不安感なども解消されていることが判明しました。この異常事態を受け、SCP-616-JPに対して緊急の検査/検証が実施されましたが、精神的/身体的に普段と変わりなく、異常も確認されませんでした。█日前に実施された記憶処理との関係が指摘されていますが、依然として事案要因は明らかになっていません。 追記1: 20██/11/20、京都府██市██町で██年間の昏睡状態から奇跡的に回復したことで知られていた██ ███氏の自殺事件が発生しました。別件として調査を担当していたエージェント・牧村は、██氏の遺品の確認作業中、SCP-616-JPに関する可能性がある記述を██氏の遺書らしき文章から発見、SCP-616-JP担当職員へと報告しました。以下の文章は██氏の遺書からの抜粋です。 真っ暗な夢の中で、気が付くと私は███ ██4という知らない女の人になっていました。私よりも年上で、背も高くてきれいなお姉さんでした。お姉さんが見たものを私も見れて、お姉さんが思ったことや考えたことが私にも伝わってくる。だから、お姉さんが喜んだり楽しいと思うと私も楽しくなって、反対にお姉さんが悲しくて泣いちゃうと私も悲しくなりました。 悲しいのはいや。辛いのも、苦しいのも。だからお姉さんには悲しまないでいてほしい。そう念じていたら、だれかがお姉さんを助けてくれて、ほしいものはいつの間にかもらえて、どんな願いも叶いました。だから毎日が夢のように楽しく、うれしいことばかり。最初はどうなるかわからなくて怖かったのも、いつのまにか私が本当にお姉さんになった気がしてきて、夢から覚めたいと思わなくなっていました。むしろ、ずっと夢の中にいたいくらい。そう思えば思うほど、みんなはお姉さんが助けてくれるようになり、願い事も叶うようになっていました。 でも、ある日、お姉さんは病気になってしまい入院することになりました。お姉さんは元気でした。だけど、病院の先生はまだ退院できないと何度も言って、お姉さんを退院させてくれません。何日も、何年もそれが続き、お姉さんは悲しくなって、私も悲しくなりました。だけど、念じても念じてもお姉さんの病気は治らず、いつまでも悲しいままでした。楽しい夢から覚めたくない。 ██日前、お姉さんは先生に怒ってしまいました。だから先生も怒ってお姉さんに注射をしました。目を覚ますとお姉さんはもう怒っていませんでした。でもお姉さんは今までと違って、何だか様子が変でした。私は悲しいのに、お姉さんは悲しくない。私はまた最初のころの怖さを思い出しました。だから、私はつい、夢から覚めたいと何度も願ってしまいました。 気付いたら、私は目を覚ましていました。だけど、私の目の前には知らないおばあさんとおじいさんがいて、私は知らない人になっていて、事故のせいで私の足はうまく動かせません。目が覚めてもずっと怖いままでした。だからまた夢に戻ろうと何度もがんばりました。でも、夢はすぐに覚めてしまいます。何度ためしても、怖くて、痛くて。それでも、私は夢に戻りたい。それにはきっと、もっと長く夢を見ていなければダメなんだと思いました。だから、ごめんなさい。お母さんの眠れないときに飲むお薬を勝手に持ち出して。でも、今度は少し眠るだけ。きっとすぐに戻るから。だからまた、あの夢に行ってきます。 文章の回収後、██氏について身辺調査が行われましたが、[編集済]SCP-616-JPとの関連性を結論付ける証拠は得られませんでした。また、██氏の遺体は調査開始時すでに火葬されており、精密な検査/検証は実行できませんでした。本件を受け、SCP-616-JP再評価に関する議論が現在まで続けられています。 追記2: SCP-616-JPの異常特性が最後に発揮されてから██年以上の間、新たなSCP-616-JP-Aが発生していないことを加味した結果、議論はSCP-616-JPから異常特性が消失したと結論付ける形で決着を迎えました。これにより、20██/11/05をもって、SCP-616-JPは再分類されました。この再分類に伴い、██氏をSCP-616-JP本体または一要素としてナンバリングすべきという提案も、半永久的に凍結されることとなりました。 Footnotes 1. 収容時の年齢。 2. おそらくSCP-616-JP-Aによるストーキングと推測されます。 3. 両方とも、収容後に発生した事案時に報告されました。詳細は別紙616-JP-Cを参照してください。 4. SCP-616-JPの本名と一致。
scp-617-jp
評価: +41+–x SCP-617-JPの一例 アイテム番号: SCP-617-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 生育実験区域外で発見されたSCP-617-JPは発見地点から半径500mの土壌を"土壌汚染の浄化作業"の名目で掘り返して根茎まで回収した後、周辺生態系に影響を与えない地質の土と入れ替えます。個人での栽培を行っていた場合には尋問した後、記憶処理を施して解放してください。回収した全てのSCP-617-JPは全て焼却処分を行います。 SCP-617-JPの頭花の目撃者には記憶処理を施し、インターネット上の写真・動画および目撃情報にはWeb走査プログラム"円匙"による元データを含めた削除が行われます。 生育が許可されているSCP-617-JPは半径1km以上に根を伸ばさないように実験区域が整備・開発されます。 説明: SCP-617-JPはセイヨウタンポポ(Taraxacum officinale)の一種です。コーカソイドの児童の頭部を模した頭花と根茎の機能を有するヒトの脊髄を有し、種子を成さない点で従来の種と異なります。SCP-617-JPは200█年にインターネット上の一部で話題になっていたスナッフフィルム製作のモキュメンタリー動画がきっかけとなって発見されました。作中に登場するリアルな児童の頭部が本物ではないかという噂を元に財団が調査し、SCP-617-JPの頭花を多数保管していた動画の複数の製作者を拘留・尋問しましたが、頭花のみをWeb上で"バイヤー"から購入している以上の事は判明しませんでした。製作者全員に記憶処理が施され、カバーストーリー"パイロットフィルム流出"が適用されました。 SCP-617-JPの頭花は従来の種と同じく舌状花によって形成されていますが、前述のようにコーカソイドの児童の頭部を模しています1。模倣は物理的な損壊にも反映され、人体の頭部が負傷・損壊した状態を瞬間的な変色によって正確に再現します。これは物理的損壊そのものに加えて、伴う事が予測される炎症の再現も確認されています。物理的要因による損傷は治癒が成されない反面、炎症はヒトと同程度の時間での治癒していく様子が変色によって再現されます。以上のような再現をする一方で、それらに通常伴う事が予測される表情による感情表現が確認されたことは無く、これらの性質は枯れた後も維持されます。 変色のメカニズムはアントシアニンのpHによる平衡による色の変化に酷似していますが、SCP-617-JPはpHを変化させる物質を生成しないため、現在もメカニズム解明のための研究が進行中です。 SCP-617-JPの根茎は植物の機能を有したヒトの脊髄です。従来の種よりも更に長く伸びる特長が有り、アスファルトなどにより物理的に生育が阻まれない限り伸び続けます。従来のセイヨウタンポポ同様に根茎による強い繁殖力を持つため財団の管理下にない生息土壌は可能な限り入れ替えられることが求められます2。また採取可能な遺伝子から判別した場合、地表から生えた部分はセイヨウタンポポに近しいことを示しますが、根茎はコーカソイド系のヒトに近しいです。SCP-617-JPが枯れる要因は、人為的な採取を除いては根茎の生育が完全に阻まれることが原因です。 頭花の外見的特徴、根茎の遺伝子検査のいずれも特定の個人と一致した事例は確認されていません。 補遺: SCP-617-JPの個人栽培者のうち、"バイヤー"から直接購入3した栽培者は質の維持のために、"悪環境下での生育"と"頻繁な剪定作業を(SCP-617-JPの)目の前で行う"ことを説明されたと証言しています。それを裏付けるように財団実験下での良好な生育を行ったSCP-617-JPは、頭花や根茎の形成が完了する前に枯死する個体が約90%発生しています。 + インタビューログ201█/██/██ - 閲覧を終了する 対象: █████・████氏(以下、対象と表記) 付記: アメリカ合衆国ミシシッピ州在住。67歳。独居。 付記2: 対象は所轄警察署に出頭後、財団の管轄下にあるメンタルケア・プログラムを受ける事を前提に釈放されており、これはその第1回受診記録である。 <録音開始,(201█/██/██)> [財団エージェント扮する臨床心理士は、警察署に出頭するに至った経緯について質問した] 対象: "カトリーナ4"だ。 対象: あれが俺の全部を奪っちまった、婆さん、息子夫婦、孫。 対象: 銃はあったが、口に突っ込むなんざ出来なかった。俺は臆病者だ。 対象: 病気も無え、怪我もしねえ、だから仕事が出来ちまった。 対象: そんな時だ、趣味の悪い動画のついた"スパム"が届いたのは。 対象: 消そうとして操作を誤って開いちまった……そうしたら居たんだよ。 対象: チェーンソーで笑顔のまま真っ二つにされる孫が、だ。 対象: あのまま心臓が止まり続けてくれりゃ、よかったんだ。 対象: そうすりゃアホなことを考える前に、家族の元に行けたんだ。 対象: [大きく息を吐き、1分間沈黙] 対象: 俺はそのメールの文面にあった"栽培キット"を注文した。貯金の半額だったが、どうでもよかった。 対象: メールのやり取りで"商品"として、ああしろ、こうしろと抜かしやがったが守るつもりはなかった。 対象: 手塩にかけて育てたよ。仕事も辞めてのめりこんだ。 対象: [口を結んで首を横に振りながら]全部枯れたよ。 対象: 種が無くても新しいのが生えると言われてたが、騙されたのにその時に気づいたよ。 対象: そして、あの趣味の悪い動画を作ったアホの片棒を担ごうとしてたのに気づいたんだ。 対象: 俺は、家族に会いたかっただけなんだ。 対象: [頭を抱え込み、うつむいたまま沈黙を続けた] <録音終了, (201█/██/██)> 終了報告書: 対象が閲覧した動画に映るSCP-617-JPは、記録上に残る対象の孫の容貌とは全く一致しなかった。 補遺2: これまでの"バイヤー"による販売経路の発端がWeb上に限られていることを踏まえ、財団は各販売経路の発信元の調査を行いました。結果としてSCP-617-JPの各販売広告は不特定多数のサーバー、あるいは企業および個人所有のコンピューター端末を経由して発信され、輪となるように1次発信元が偽装されていることが判明しました。いくつかの一般的なセキュリティプログラムも発信元偽装を助長するような改変が更新ログ無しに行われていたため、Web走査プログラム"円匙"はそれらの構成差分を取得し、再構成する機能を有しています。これは"円匙"自身も例外ではありません。 Footnotes 1. Dクラス職員を用いた肉眼による判別調査で、99%の被験者が接触するまで植物であることが判別できませんでした。 2. 財団の生育実験下における最長生育距離を元に土壌の入れ替え範囲は決定・更新されています。 3. 全てのケースでやり取りは文面のみでした。 4. 2005年8月末にアメリカ合衆国南東部を襲ったハリケーン。最大でカテゴリー5を記録した。
scp-618-jp
評価: +59+–x 異空間内部の神社と思しき施設にて撮影されたSCP-618-JP-1-c アイテム番号: SCP-618-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-618-JPの存在する区域は、カバーストーリー「土砂崩れ」を適用し、一般人の侵入を防ぐために警備員による巡回を行ってください。侵入者は即座に拘束し、クラスA記憶処理を施した上で解放してください。SCP-618-JPの内部を調査する場合、level3以上の職員3名以上の許可を取った上で、日本国籍を持たない日本滞在年数3年未満のDクラス職員を用いて行ってください。 説明: SCP-618-JPは、アメリカ合衆国███████州█████の山地に存在する5m×5mの区域です。普段は特に異常はなく、不活性状態にあります。SCP-618-JPを、日本国籍を持たない滞在年数3年未満の人物(以下被験者と表記)が通過した際にSCP-618-JPは活性化し、異空間を作り出します。このとき、被験者は強制的にSCP-618-JPの作り出した異空間の内部に引きずり込まれることが判明しています。人数の上限は、現在の実験段階では██人ですが、実際にはそれ以上の人数が引きずり込まれるであろうと推測されます。また、被験者の所持しているGPSの信号はSCP-618-JPの近辺を指し示しますが、該当地点に被験者の姿を認めることは不可能です。 SCP-618-JPの作り出す異空間の内部は現在半径10kmの円形となっており、円の外部へと出ようとすると視認の不可能な壁のような物体に阻まれます。被験者が現れる地点は無作為であることが判明しています。円の中心には富士山に酷似した山が存在しており、その周囲に江戸時代のものと推測される建造物江戸時代から現代までの特徴を有する様々な建造物が乱立しています。北部には無風状態でも高波が発生する海が確認されており、西部の上空2000m地点には空中浮遊する姫路城らしき城郭が視認できます。 空は白く、太陽は赤い丸として観測され、日没することはありません。ただし時間経過は現実世界と同期しており、3時間の経過もしくは異空間内で死亡することで被験者は強制的に現実世界へと排出されます。この際、映像を記録していた場合は不自然に途切れることが確認されています。また、映像記録が途切れてから現実世界に排出されるまでには、最長5分程度のラグが確認されています。排出される地点は被験者が引きずり込まれた箇所に限定されており、被験者が排出されてから3時間の間に、再びSCP-618-JPが活性化した例はありません。 異空間の内部には、人型を含む多数の実体(以下SCP-618-JP-1と表記)が存在しており、それぞれが「日本」を強く想起させる特徴を持ち合わせています。SCP-618-JP-1に対する接触による現実世界への影響は確認されていません。また、SCP-618-JP-1に対してインタビューを行う試みは現在成功していません。 + 確認されているSCP-618-JP-1群の例 - 閉じる 分類: SCP-618-JP-1-a 概要: ナス(Solanum melongena)を掴んだオオタカ(Accipiter gentilis)に酷似した実体。SCP-618-JPの作り出した異空間の空を飛び回っており、一度も着地することはない。基本的に被験者には不干渉である。 分類: SCP-618-JP-1-b 概要: 江戸時代の武士身分の人間と服装の酷似した人型実体。被験者がSCP-618-JP-1-bに衝突する、しつこく話し掛けるなどの干渉を行った場合、「切り捨て御免」と言い放ち帯刀している日本刀で斬りつける、あるいは被験者に切腹を迫ることが確認されている。 分類: SCP-618-JP-1-c 概要: 折り鶴と推測される実体。通常の鳥類と同様に飛翔することが可能であり、相当数の個体が異空間内で観測されている。被験者が接近すると逃走するため、詳しい生態調査は実施できていない。 追記: 20██/██/██に実施した調査において、SCP-618-JP-1-cの捕獲に成功。折り鶴を開いたところ、一枚の折り紙で構成されていたことが確認される。その折り紙を用いてカエルなどの別の動物を作成したが、折り鶴以外が動き出すことはなかった。 分類: SCP-618-JP-1-d 概要: 江戸時代に存在した芸子、いわゆる「芸者」に服装の酷似した人型実体。被験者を発見すると即座にすり寄り、一番近い建造物に連れ込もうと試みる。SCP-618-JP-1-dの誘いに応じた場合、音声による通信および映像記録は途絶され、被験者の所持していたGPSの発する信号が消失する。SCP-618-JP-1-dの誘いに応じた被験者が回収された例は現在存在していない。 分類: SCP-618-JP-1-e 概要: SCP-618-JP-1-bより「将軍」「殿」と呼称される人型実体。SCP-618-JP-1-eの出現時には「殿のおなり」という声が響き渡る。通過する際に被験者が頭を下げなかった場合、SCP-618-JP-1-bによって斬りつけられることが判明している。また、SCP-618-JP-1-eは西部に確認される空中浮遊する姫路城らしき城郭を本拠としていることがSCP-618-JP-1-b同士の会話により判明した。 分類: SCP-618-JP-1-f 概要: [編集済]と推測される人型実体。ごくまれに塀の上や屋根の上に居るところを確認されるものの、SCP-618-JP-1-fを視認した瞬間に謎の飛翔体によって被験者の頭部が貫かれるため、詳しい調査は今のところなされていない。 分類: SCP-618-JP-1-g 概要: 木製の屋台を引く人型実体。市街部に出現し、屋台に表記された食品を売り歩いている様子を見せる。今まで確認できた屋台は「スシ」「スキヤキ」「テンプラ」「オコノミヤキ」「ソバ」「イモ」。他の人型のSCP-618-JP-1群との会話より、店主の名前は「キム・オオタ」、「ワン・イムゾ」、「カトウ・チュンジ」などが確認されている。被験者がSCP-618-JP-1-gの売り歩く食品を摂取することによる異常は現在確認されていない。 分類: SCP-618-JP-1-l 概要: 20██/██/██以降、主に北部の海上上空に確認されるようになった、零式艦上戦闘機とみられる飛行実体。ある点を中心として円運動を行っているが、被験者が接近するとその軌道から外れ突撃を行う。統率の取れた編隊飛行を行うSCP-618-JP-1-l群の存在も確認されている。操縦席には人型実体の姿が確認されているが、接近しての調査が困難なため詳細は現在不明である。 分類: SCP-618-JP-1-m 概要: 20██/██/██以降確認されるようになった、スーツを身に纏い携帯電話を用いて通話をしている人型実体。常に相槌を打つような仕草、もしくはお辞儀を繰り返しており、被験者からの接触に反応を示さない。 分類: SCP-618-JP-1-n 概要: 20██/██/██以降市街部に確認されるようになった、日本車と推測される実体。車種は不定であり、搭乗者およびナンバープレートは確認されていない。推測で時速██kmで、障害物を回避して走行している。衝突した場合もSCP-618-JP-1-nに損傷を確認することはできなかった。 + 映像記録618-10 - 閉じる 映像記録618-10 被験者: D-618-07(アメリカ合衆国出身、日本滞在歴2年9ヶ月) オペレーター: 鳴蝉博士 付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。また、D-618-07は日本の文化に精通しています。 <記録開始> 鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-07。周囲の状況を報告してください。 D-618-07: 聞こえています、博士。……町外れにいるようです。大きな神社の前にいます。……これは本当に神社ですか?[十字架の取り付けられた大きな鳥居が映し出される] 鳴蝉博士: 中に進入し、様子を報告してください。 D-618-07: 了解しました。……狐と狛犬のようなものが交互に並んでいます。……大きな建物が見えてきました。 鳴蝉博士: 周囲にSCP-618-JP-1の気配はありますか? D-618-07: 全く感じられません。無人のようです。ひとまず中を、確認してみます……わあ、神社にキリストの像が飾ってあります。 鳴蝉博士: 他に異常は確認されませんか? D-618-07: 十分異常だと思いますが……他には何もありません。 鳴蝉博士: では、移動してください。次は市街部へお願いします。 D-618-07: はい。 [30分の移動] 鳴蝉博士: では、次は右方向に見える高層ビルに進入し内部の様子を報告してください。 D-618-07: 了解。……とても奇妙です、ビルなのに中一面畳敷きです。これは土足で入ってもいいのですか? 鳴蝉博士: 構いません。 D-618-07: 本当ですか?しかし、その方が楽ではあります。 [40分かけて調査] D-618-07: ……結局全部の階が畳敷きでした。エレベーターまで畳敷きなのはどういうことなんでしょう? 鳴蝉博士: お疲れさまでした、D-618-07。暫く市街部の探索を続行し、気になるものがあれば報告をしてください。 D-618-07: はい。 [50分の散策] D-618-07: 博士!見てください、新幹線が通っています![駅のような場所が映し出され、新幹線らしき実体と多数のSCP-618-JP-1-bおよびSCP-618-JP-1-mが確認される] 鳴蝉博士: 可能であれば乗車し行先を確認してください。 D-618-07: 了解しました。……新幹線ですがまるで満員電車のようです……ええと、終点は███・キャッスルです。あの空に浮かんでいる城でしょうか? 鳴蝉博士: では終点まで乗車をお願いします。 D-618-07: ……了解しました。 [その後被験者は乗車中に異空間より排出された] <記録終了> + 映像記録618-12 - 閉じる 映像記録618-12 被験者: D-618-08(イギリス出身、日本滞在歴1年11ヶ月) オペレーター: 鳴蝉博士 付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。 <記録開始> 鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-08。周囲の状況を報告してください。 D-618-08: みたところ街中のようです。サムライとゲイシャ……SCP-618-JP-1-bとSCP-618-JP-dが沢山居ます。 鳴蝉博士: では、それらになるべく直接的な接触はしないようにSCP-618-JP-1-bの様子を観察してください。 D-618-08: 了解です。[SCP-618-JP-1-bの1個体を30分追跡]……えー、特に変わったことはありません。食事をして、他の個体と話をしています。 鳴蝉博士: 話の内容は聞き取れましたか? D-618-08: 私には聞き取ることができませんでした。恐らくですが、日本語で喋っています。 鳴蝉博士: ……映像記録に会話の内容が残っているかもしれません。その件に関しては後で解析を行うので、D-618-08は次の任務を実行してください。 D-618-08: 了解しました。次はSCP-618-JP-1-gとの接触……ああっ!? 鳴蝉博士: どうしましたか? D-618-08: 先ほど追跡していたSCP-618-JP-1-bがハラキリしています![切腹を行った白装束のSCP-618-JP-1-bの死体が映し出される] 鳴蝉博士: [映像を確認]先ほどと服装が違いますね。切腹の理由および服装の変化した理由は分かりますか? D-618-08: いえ、さっぱり……本当に急に腹を斬りました!服もいつの間に着替えたのか分かりません。 鳴蝉博士: 周囲の様子はどうなっていますか? D-618-08: ……何事もなかったかのように平然としています。もっと騒ぎになっていてもおかしくないと思うのですが。 鳴蝉博士: 了解しました。任務の変更を伝えます。切腹したSCP-618-JP-1-bの死体がどうなるかを観察して……。 D-618-08: 博士……死体がありません。 鳴蝉博士: なんですって?……誰かが処分したのですか? D-618-08: いえ、目の前で勝手に消えました。 鳴蝉博士: ……了解しました。調査を継続してください。 [以下重要な情報を得られなかった為省略] <記録終了> 終了報告書: D-618-08の帰還後、映像記録の音声を解析しましたが、映像のSCP-618-JP-1-bのものと思われる音声からは、切腹の理由を含めた重要な情報は得られませんでした。また、この調査の直後に█████において身元不明の白骨化した遺体が発見されましたが、関連性は不明です。 SCP-618-JPは、█████で19██/██/██に発見された身元不明の遺体の遺留品のカメラに、不自然な風景の写真が残っていたことから収容するに到りました。初期収容の際、日本国籍を持っておらず、日本における滞在経験のないエージェント██名がSCP-618-JPの作り出した異空間に一度に引き込まれる事案が発生しています。その後の調査で活性化の条件が明らかになると、SCP-618-JPは日本支部の管理下に置かれることとなりました。 補遺: 以下の映像記録は20██/██/██にSCP-618-JPの作り出した異空間内で撮影されたものです。 映像記録618-██ 被験者: D-618-12(カナダ出身、日本滞在歴2年3ヶ月) オペレーター: 鳴蝉博士 付記: 資料の会話内容は英語を日本語訳したものです。 <記録開始> 鳴蝉博士: 聞こえますか、D-618-12。周囲の状況を報告してください。 D-618-12: 聞こえています。……私は今、森の中にいます。人の気配はありません。 鳴蝉博士: では、開けた場所に出るまで移動してください。 D-618-12: 了解しました。[映像が大きくぶれ、周囲が急に暗くなる]うわっ。 [銅鑼のものと推測される金属音が3回記録される] 鳴蝉博士: どうしましたか、D-618-12? D-618-12: 分かりません。急に大きく揺れたと思ったら、暗くなりました。 鳴蝉博士: 周囲の状況を報告してください。 D-618-12: 了解しました。[10秒の沈黙]……[短い悲鳴] 鳴蝉博士: D-618-12?報告を…… D-618-12: [息を切らす音]あ、あの、[金属の衝突音]が[軋み合うような巨大な音]しています! [正体不明の鳴き声らしき音声] 鳴蝉博士: 何があったんですか!?D-618-12! D-618-12: [悲鳴] [D-618-12が映像機器を放棄、全長25mを越すと推測される人型の機械と、それに相対する爬虫類に酷似した外見の巨大な生物が映し出される。その後2時間に渡って両者の戦闘する映像が撮影された] <記録終了> 終了報告書: 映像が撮影された後、SCP-618-JPにて激しく損傷したD-618-12の遺体が回収されています。映像で確認された実体は今までの調査では報告されていなかった存在であり、新たにSCP-618-JP-1-rおよびSCP-618-JP-1-sと分類されました。
scp-619-jp
評価: +263+–x 評価: +263+–x クレジット タイトル: ミレニアム・タウン 著者: ©︎rkondo_001 作成年: 2015 評価: +263+–x 評価: +263+–x アイテム番号: SCP-619-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-619-JPに指定される区域への立ち入りは管理者の許可を得た上で行われます。現在停止されています。エリア上空への一般航空機及び飛行機器の侵入を防ぎ、区域内の視覚情報の流出を防いでください。自治体などの外部からの情報提供の要請には虚偽のデータが使用されます。 説明: SCP-619-JPは長野県山間部、███市と██市の境界線上に存在する半径600m程の区域です。区域内は未整備林地帯となっており、平坦な土地であるもののこれまで人が住んだ記録は残されていません。目視ではこの場所の異常性は確認できませんが、この区域内を何らかの手段により映像記録として観測した場合、そこには現実のSCP-619-JPとは異なる光景が映し出されます。これをSCP-619-JP-Aと指定します。 SCP-619-JP-Aは外見上寂れた小規模山間集落であるように見え、区域正面を通る未舗装道路と、その片側に沿って並ぶ小規模商店街の形態を成した家屋群が観測されています。家屋の多くは明りがついており、なおかつ壁面やポール・広場に存在する簡易ステージといった建造物を繋ぐように点灯された提灯コードが掛けられています。SCP-619-JP-Aの光景は実際の気候や時間帯に依らず、常時12月31日の夜間1とみられる環境を維持していると考えられます。 SCP-619-JP-A内部には、行動能力を持った人型の実体(SCP-619-JP-1と指定)が存在します。SCP-619-JP-1は現在約400体の存在が確認されており、そのほとんどは主に中高年から老年とみられる男女の姿をしていますが、現在これらの人物の特定には至っていません。これらの存在はSCP-619-JP-A範囲内においては現行人類と同様の行動が可能であると判明しています。SCP-619-JP-1との意思疎通は、映像機器による撮影時に使用者が口頭で発話する事により、録音音声を仲介して行う事が可能です。SCP-619-JP-1はこちらからのコンタクトには友好的に応じるものの、自発的に探索者への接触を行う事はありません。詳細は以下の資料を参照してください。 探査ログ:619-JP-α-5 + 資料を表示 - 隠す 対象:SCP-619-JP-A 探査者:D-18925 担当者:千賀博士 日時:2013/06/██ 付記: D-18925にはビデオカメラを所持させ、映像・音声をリアルタイムに視聴させる。担当者の指示は通信機により行われ、映像・音声データは探査担当班に常時送信される。 <記録開始> D-18925: おい、電源入れたぞ。どうすりゃいいの、これ。 千賀博士: カメラを構えて記録を開始してください。 D-18925: あいよ…って、…は?なんだこれ。真っ暗じゃねえか。しかも奥にボロ屋がある。どうなってんだよ。 (D-18925はカメラと風景を繰り返し交互に眺める) 千賀博士: そのまま撮影を続けてください。 D-18925: …なんか誰かいるぞ。映像の方。ちっこい婆さんが歩いて…あ、家の戸が開いて爺さんが出てきた。ああ、向こうにも少し歩いてる。おっさんっぽいのと、小さい子供が一人だけ。なんだこりゃ、村か何かか? 千賀博士: もっと彼らに近づけますか? D-18925: やってみる…はいいとして、ややこしいな。映像じゃ砂利道が写ってるけど、実際足元は倒木と雑草と岩だらけじゃん。転びそうだよ。 D-18925: ついたぞ。建物がいっぱい…て程でもないけど、何軒か続いてる。"██酒店"、奥のは"金具屋██"て、看板とこボヤけてるが書いてあるな。小さいけど商店街みたいな感じか。電柱とか家に長いコードで電球がぶら下がってる。祭りで提灯代わりにぶら下がってるようなのだな。周りは…何人か歩いてるな。爺さん婆さんばっかりだけど。気味が悪ぃ。 千賀博士: 彼らはあなたに何らかの反応を見せていますか? D-18925: いや何にも。てか、この映像そっちで見てんなら分かるだろ。声掛けてみるか? 千賀博士: まだ結構です。そのまま道に沿って建物や周囲の様子を撮影してください。 D-18925: はいはい…商店街の後ろ、奥の方にもいくつか平屋?があるな。ど田舎の農家が住んでるようなの。畑や…多分田んぼもある。建物は電気が点いてるのが多いな。そっちもちらほら人がいる。 千賀博士: 何か気になる事はありますか? D-18925: そうだな…道とか屋根とかに雪が残ってるな。歩いてる奴らもみんな着込んでる。こいつらの世界は冬なのか? 千賀博士: 興味深いです。 D-18925: あ、ハカセ、なんか広場みたいなのがある。真ん中に鉄パイプのステージがあって、その周りにかなり人がいる。話してたり、座ってボーっとしてたり。"███村公民館"て奥の建物に書いてあるな。壁の時計は…11時50分。その下の掛け看板は…「ようこそ2000年」「新生███村に関する公表会」…あと、あちこちに「あけましておめでとう」って書いてある。辰の置物に、門松まであら。なんだありゃ。 千賀博士: 周辺のものを、できるかぎり鮮明に撮影してください。 (D-18925は周囲を撮影しつつ、ステージ横のテントに近づく) D-18925: …なんか机に資料みたいなのが置いてあるな。さわ…れねぇ。手がカメラには映るけど通り抜けちまう。1枚目だけだけど、見えるか? 千賀博士: 少しそのままお待ちください…ありがとうございます(※記録資料619-JP-β-21を参照) D-18925: で、どうすればいい?目に映るもんは粗方撮ったぞ。 千賀博士: では、SCP-619-JP-1との接触に入ってください。誰でもいいので、映像に映る人物に話しかけてみてください。 D-18925: じゃあ…おい、婆さん。 (D-18925は映像内近辺に存在したSCP-619-JP-1実体に接近する) SCP-619-JP-1: ええ?あぁ、おめでとうございますぅ。 D-18925: は?あ、ああ、おめでとう。 SCP-619-JP-1: 見覚えないけど、麓の若いのかや? D-18925: ええっと…どうすりゃいい。 千賀博士: 会話を続けてください。 D-18925: えっとな、近くの人間じゃないんだけど、ちょっと用があって来てるんだ。 SCP-619-JP-1: まぁまぁ、こんな何も無い村にそんな寒い姿ではるばると…せっかくの大晦日なんだから、公民館で酒でも飲んでゆっくり暖まっていってくださいな。もうすぐ、村長さんがそこの舞台でお話しくださるの。 D-18925: 村長? SCP-619-JP-1: ほら、そこの白い上着の色男。ちょっと頭が寒いけど。アヒャヒャ… D-18925: …どうする? 千賀博士: 接触を行ってください。 (D-18925は指された先の実体に接近する) D-18925: おい、あなたが村長さん? SCP-619-JP-1: …え、ああ!すみません、ちょっと原稿読んでたもので… D-18925: …何か、話すんでしたっけ? SCP-619-JP-1: ええ、あと10分、12時ちょうどに大発表ですよ…ところで、あなたは? D-18925: あ、ちょっと用があって立ち寄ったって言うか。 SCP-619-JP-1: そりゃいい!公民館で酒と年越し蕎麦を配ってるんで、どうぞゆっくりなさってください。せっかくの大晦日、最後の1900年代なんですもの、楽しみましょう! D-18925: え…まあいいけど。ところで、何の大発表があるんです? SCP-619-JP-1: こんな寂れた村で名所もなく、若者はみんな麓や都会に行っちゃいました。もうすぐここも廃村か、という所で助けてくれた方々がいるんです。「███村を永遠に残る思い出の場所へ!」って再興計画を立てて頂いたんですよ。しかもボランティア!もういらっしゃるはずなんですが… D-18925: 姿が見えない? SCP-619-JP-1: まぁあと10分ありますし、ギリギリでいらっしゃるでしょう。 D-18925: …気になってたんだけど、さっきからずっとあの壁の時計"11時50分"のまんまだよ。壊れてんじゃないの。 SCP-619-JP-1: まさか!あれはこの村で一番新しい電波時計ですよ。それにほら、私の腕時計だって。 D-18925: …その時計、秒針が同じ所を行ったり来たりしてるぞ。 (対象が口ごもる。千賀博士以下の担当職員はこの異変を察知しコンタクトへの介入を協議する) D-18925:そもそも今2013年だし。おたくらいつの人間? 千賀博士: 会話内容を自重してください。 D-18925: え、ああ。じゃあ、そのボランティアの人たちって、どんなひと? SCP-619-JP-1: …。 D-18925: おい。 SCP-619-JP-1: 20…13年。 D-18925: は? SCP-619-JP-1: そうだ。…ずっと…昨日も。一昨日も。13年。何度も待ってた。 D-18925: どうした、急に、 SCP-619-JP-1: あの人たちは…来なかった。あと10分で、10分経っても、いや経たなかった。忘れてた。私は…ずっとスピーチ台の前で… D-18925: おい SCP-619-JP-1: 忘れてた。みんな、忘れてた。あまりにも長すぎた。気づけなかった。いや気づいていた。わからなくなっていた。 (映像内周辺にSCP-619-JP-1が集まって来ている事にD-18925が気づく) SCP-619-JP-1: 永遠だった。ここは永遠だ、そういう事か。再興なんかじゃない。こういう事だったんだ。わからなかった。あいつらは、 D-18925: おい!何だよおっさん、あ、え、さっきの婆さん なんでみんなこっちに来るんだよ!…何で見てるんだよ! SCP-619-JP-1: あんたは違う。私たちが違う。消えている。あんたの身体、私たちには、たすけてくれ、つれてってくれ、ここは違う、この村は、もう、ない、わたしたちも (硬直するD-18925の持つ映像画面にSCP-619-JP-1が張り付く) SCP-619-JP-1: ここから出してくれ。 <記録終了> 終了報告書: D-18925は映像機器を放棄して逃走。間もなく確保されました。検査の結果身体的異常は見られませんでしたが、精神面に本件が起因と思われる錯乱と一種のパラノイアと考えられる症状が見られました。記録のためD-18925の様子を機器により撮影したところ、歪な姿をした存在がその身体に「抱きつくように」半ば溶け込んで映し出されました。2未知のミーム的影響を考慮し、D-18925は閉鎖空間での短期間の追加試験の後終了されました。放棄された映像機器には、逃亡するD-18925を凝視するSCP-619-JP-1群が機器が回収されるまでの間記録されていました。 補遺:後日別のDクラス職員を用いたSCP-619-JP内追探査が行われましたが、前探査時とは異なり、SCP-619-JP-1群は撮影開始とともに探査者を知覚。無言で探査者の元へと接近する姿が確認されたため追探査は中断されました。再開の程は未定です。 記録資料619-JP-β-21 + 資料を表示 - 隠す 以下は探査ログ:619-JP-α-5内にて映像記録から解析された資料の一文です。 平成11年12月31日 █████村長及び███村の皆様へ 有限会社 如月工務店 平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。 さて、この記念すべき区切りとなる時に███村の皆様との貴重な絆を結ぶに至りました事、大変喜ばしく思います。 この時代、地方村落の過疎化は全国的に憂うべき問題でございます。人々と自然が調和し、伝統を重ね永くの時を共にしたこのような集落はまさに人々の心の故郷であり、財産であり、永遠に守るべき大切な宝のような存在です。この度皆様のご依頼でありました「永遠に残る███村」のご希望に沿う為、弊社一同心を込めて全力で向かわせていただきました。 本日深夜、記念すべきミレニアムの瞬間に、私達は皆様に「永遠の███村」をご披露致しましょう。 微力ではありますが、笑顔溢れる皆様の助力となれました事、大変嬉しく また誇りに思います。 この笑顔の村が終わりなく続く事を祈り、締めの言葉とさせていただきます。 皆様の今後より一層のご発展を、心より祈念申し上げます。 謹白 脚注 1. 家屋や道路上に残る残雪、掲示物などから推定。 2. 記録中「村長」と呼称されたSCP-619-JP-1個体との外見的相似が指摘されているが、不明。
scp-620-jp
評価: +19+–x 評価: +19+–x クレジット タイトル: SCP-620-JP - shAre-nus 著者: boatOB 本記事は、CC BY-SA 4.0ライセンスの下で提供されます。これに加えて、本記事の作成者、著者、翻訳者、または編集者が著作権を有するコンテンツは、別段の定めがない限りCC BY-SA 3.0ライセンスが付与されており、同ライセンスの下で利用することができます。 「コンテンツ」とは、文章、画像、音声、音楽、動画、ソフトウェア、コードその他の情報のことをいいます。 評価: +19+–x 評価: +19+–x SCP-620-JPの発見されたトイレ。 アイテム番号: SCP-620-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-620-JPは、サイト-8190の低危険物収容ロッカーに収容されます。予測できない事態を防ぐため、現在SCP-620-JPを使用するいかなる実験も保留とされます。収容されているSCP-620-JPは厳重に管理し、できる限り人間の手で触れ無いように注意してください。未発見のSCP-620-JPの発見のためにSCP-620-JPを使用する計画については、現在凍結されています。 説明: SCP-620-JPは、一見すると日常的に使用される一般的なロールペーパーのように見える巻紙です。SCP-620-JPが人間の手によって巻き取られた際(ロールペーパー全体を巻き取った場合も条件を満たしたとされる)、SCP-620-JPは活性化します。 活性化状態にあるSCP-620-JPの表面温度は、人肌よりやや高い程度まで上昇し、これによってSCP-620-JPを識別することが可能です。この温度上昇の正確な原因、目的は不明ですが、後述する異常性を発揮するためのスタンバイ状態の維持が目的であると考えられています。 活性化状態にあるSCP-620-JPが人間の粘膜に触れ、かつその瞬間からおよそ±20分以内に別の人間がSCP-620-JPを使用していた場合、SCP-620-JPのお互いの粘液に触れた面は時間・空間の相違を無視して接続されます。別のSCP-620-JPが粘膜に触れたちょうどその瞬間が、現在のSCP-620-JPが粘膜に触れた瞬間と接続され、多くの場合粘膜同士の接触により使用者は強い違和感を感じます。 SCP-620-JPは、2016/04/██、エージェント・田中の勤務中の不幸な事故によって発見されました。別任務からの帰還中にサービスエリアに立ち寄ったエージェントは、持病の花粉症のためにサービスエリアに併設されていたトイレからSCP-620-JPを数枚ちぎり取り、そのまま鼻をかみました。 直後、隣室の便座に腰掛けていた一般男性の直腸部とエージェント・田中の鼻腔粘膜が接続され、結果としてエージェント・田中は2日間の休暇と鼻腔洗浄を申請しました。一般男性はエージェント田中がその場で記憶処理を施し解放しました。 野郎、オレの鼻水の感触にビックリしてもう一踏ん張りしやがった。__エージェント・田中田中 回収されたSCP-620-JPは合計48ロールに上り、当該のサービスエリアに設置されていたすべてのトイレットペーパーがSCP-620-JPに置き換えられていました。また、回収されたSCP-620-JPの芯から、以下の記述が発見されました。 ワオ!よく見つけましたね! 『子供を、卒業したあなたへ』 —をコンセプトに、博士が新たにお送りする現代の青少年向けアイテム “shAre-nus”は如何でしたでしょうか! これさえあれば、いつでも、どこでも! 世界のみんなと!あなたの恋人と! 最高の時間をシェアできます! 使い方は簡単!!シェアしたい時に、シェアしたい二人が、お互いの体の深いところに当製品を貼り付けるだけ! 遠く離れた恋人との甘いひとときに!ジョークグッズとしても! 追加のオプションにご加入いただくと、クラウドサービスにあなたのひと時をアップロード! ご友人と、ご家族と!好きな時に、あなたの思い出をいつでも体験できます! 付属のQRコードを読み取って、あなたの現在の位置情報をスマートフォンからアップロード! 時間と場所を記録することで、お友達があなたのひと時を検索しやすくなります。 さあ、いますぐ世界と繋がろう! 楽しもうね! 現在無料キャンペーン中!初回登録は無料です! 注:無料版は使用できる機能が制限されます。 補遺-ア: 実験記録-620-JP 実験記録004 - 日付2016/04/██ 対象: D-620-JP-01 付記: 実験001-003については、SCP-620-JPの異常性の確認として行われたものに過ぎず、上記に記述したもの以上の内容は上がらなかったため省略。 実施方法: SCP-620-JPをD-620-JP-01肛門粘膜に接触させたまま排泄を行わせる。同時に人工的に培養した細胞で粘膜に類似したものを作りSCP-620-JPに接触させておく。 結果: 問題なくD-620-JPは排泄を行った。 分析:『生きている人間の』粘膜にきちんと接していることが重要のようだ。__東郷博士 実験記録005 - 日付2016/04/██ 対象: D-620-JP-01 実施方法: D-620-JP-01に実験004と同様に排泄を行わせるが、排泄の途中でD-620-JP-01に指示を行い、排泄を止めさせる。10分後に再度同じ条件下で排泄させる。 結果: D-620-JP-01の直腸内において排泄物同士がぶつかり合い、D-620-JP-01は違和感を訴えた。 分析: 同一人物でも、効果範囲内ならば異常性の影響には置かれるようだ。__東郷博士 実験記録006 - 日付2016/04/██ 対象: D-620-JP-01 実施方法: D-620-JP-01には排泄を行わせず、肛門粘膜にSCP-620-JPを接触させたまま、さらに鼻腔粘膜にSCP-620-JPを接触させる。 結果: [後述] 補遺-イ: 映像記録:事案-620-JP-01 実験中、不慮の事態の発生により実験が中止されました。 <再生開始, 2016/04/██> 東郷博士: よし、そのままだ。そのままだぞ……。いいか、これは君のために行っておくが、間違ってもナニか『出そう』なんてするなよ…よし、そのまま鼻に突っ込むんだ。 D-620-JP-01: マジでヤルのかよ、おい!さっきの実験でもう良いじゃねえかよ!同時に二箇所にコレを触れさせたらどうなるかなんて知るかよ!キメェんだよこれ! 東郷博士: いいか、君が反抗的な態度を取っている、すこしでもそんな素振りを見せている、そういうことを上に報告するのはこの私だ!君がどうなろうと私次第だってことを忘れるんじゃあ無いぞ!いいから黙ってやりなさい! D-620-JP-01: この[罵倒]!! <Dクラス職員は東郷博士を罵りながらも、室内の警備員に促されSCP-620-JPを鼻腔へと運ぶ。> 東郷博士: どうだ? D-620-JP-01: うひゃっ 東郷博士: やはり、鼻腔と繋がったか?臭いはどうだ? D-620-JP-01: ……。 東郷博士: おい? D-620-JP-01: ……。 <Dクラス職員は便座に腰掛けたまま、ガタガタと体を揺らす。> 東郷博士: おい、警備員!そいつの状態を確かめろ!何かおかしいぞ。 <研究員がDクラス職員に触れようとした瞬間、Dクラス職員の頸部が急速に上がる。東郷博士、警備員は驚き、動きが止まる。> <Dクラス職員の頸部は限界まで顎を上げた姿勢のまま、しばし痙攣しているように見える。> <数秒後、Dクラス職員の目、鼻腔から出血を確認。> 東郷博士: おい!お前! <Dクラス職員は痙攣しているように見える。反応はない。数秒後、Dクラス職員の消失を確認。> <Dクラス職員の座っていた便器の内部から、実験に使用していたSCP-620-JP片を発見。> <録画終了> 分析: 映像記録、及び現場で見た限りでは、Dクラス職員はSCP-620-JPを鼻に運ぶ前に息絶えたように見える。あごの上昇は、おそらくだが後頭部のあたりを強く引っ張られたのでは無いだろうか。……この紙の向こう側から、内臓ごと。 ……口腔も、また粘膜だったな。__東郷博士
scp-621-jp
評価: +73+–x アイテム番号: SCP-621-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-621-JP-1は茶封筒へ入れられた状態で、サイト-81██のSafeオブジェクト収容金庫へ施錠して保管されています。財団全職員はSCP-621-JP-1の閲覧を制限されています。実験の際はDクラス職員を使用して下さい。 説明: SCP-621-JPは、SCP-621-JP-1を閲覧する事で発生する認識災害です。SCP-621-JP-1は██県██小学校の図書室で発見された、A4サイズの紙片に書かれた文書であり、紙片自体は一般的なコピー用紙である事が判っています。SCP-621-JP-1を閲覧後、およそ1分前後で、被験者が「文章である」と認識したすべての文字列が鏡文字あるいは逆さ文字として認識されます。この反転現象は周期的に変化をするため、被験者は文章の読解が困難になります。反転現象は被験者がSCP-621-JP-1を文章として読む事が出来なくても発症、図形としか認識できなくても発症します。現在までにSCP-621-JP-1に耐性がある被験者の存在が明らかになっていますが、割合や条件については現在研究中です。 SCP-621-JPは20██/██/██、██県山間の集落にて「学校で集団的に非識字に陥る」との事件で、最初に確認されました。現地へ赴いたエージェント█名及び回収部隊員█名が曝露、発症しましたが、回収部隊長の機転により同学校図書室にあったSCP-621-JP-1の収容に至りました。SCP-621-JP-1に曝露された█名の児童は記憶処理及び[編集済]を施し、財団が経営する特別支援学校へ編入されました。また、同時に曝露された教員の██氏は、本人の同意の上、財団で研究対象となっています。 補遺: インタビュー記録 + 被害者██氏へのインタビュー記録 - 被害者██氏へのインタビュー記録 対象: ██氏 インタビュアー: 結城博士 <録音開始> 結城博士: ██さん、こんにちは。どうですか、落ち着かれましたか? ██氏: そうですね、まあ、昨日よりはだいぶ。ええと、結城さん、でしたか。 結城博士: はい、結城です。 ██氏: 申し訳ない、そこの名札が、その、いまいち読みづらくて。 結城博士: いいえお構いなく。それでは昨日も伺った内容ですが、再度あなたの状況を伺ってもよろしいですか。今おっしゃった、「読みづらい」に関する事です。 ██氏: ええ、ええ。どう話したものか。 結城博士: ゆっくりと、思いつく言葉で構いません。 ██氏: 文章がですね、その、読みづらいんですよ。読めないといいますか。反対になるんですね。 結城博士: 反対、ですか。 ██氏: 鏡文字というんですか、あと上下反転だったりもします。 結城博士: なるほど。しかしそれも慣れれば読めるのでは? ██氏: それが、反転が入れ替わるんですよ。さっきまでは鏡文字だったのが、ちょっと時間をおくと上下反転になったり。その逆だったり。 結城博士: ………なるほど。でも大丈夫ですよ。我々の研究できっと元に戻ります。安心して下さい。 ██氏: そう、願いたいですね。このままだと本も読めない。 結城博士: 今日はここまでにしましょうか。明日からまたお願いしますね。 ██氏: あ、ちょっと伺いたい事が。私と一緒にいた子供達は、彼らは大丈夫だったのですか? 結城博士: ええ、子供達には何も影響はありませんでしたよ。まだはっきりとした事は判りませんが、おそらく子供には効果がない物だったのでしょう。 ██氏: そうですか、良かった。本当に良かった。 <録音終了> 終了報告書: ██氏へCクラスの記憶処理を施して下さい。オブジェクトに曝露されたのは自分だけだったように、書き換えをお願いします。 補遺: 20██/██/██、██小学校図書室より回収されたSCP-621-JP-1 + 正規財団職員はSCP-621-JP-1へのアクセスは制限されています。 - 正規財団職員によるはSCP-621-JP-1へのアクセスは制限されています。 特別な許可が無い場合はDクラス職員のみの閲覧として下さい。 文書へアクセスしますか? はい/いいえ
scp-622-jp
評価: +142+–x SCP-622-JP入口から1500kmの地点でドローンが撮影したSCP-622-JP内部の写真 アイテム番号: SCP-622-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-622-JPは公には民間企業が所有する植物の遺伝情報実験施設として取り扱います。SCP-622-JPの存在する敷地は企業の私有地として民間人の立ち入りを禁止し、SCP-622-JPの周囲には2重の電流柵を設置します。SCP-622-JPに無許可で侵入した人物はその時点で公的には行方不明者として扱います。またSCP-622-JPへ入口以外から進入する行為、およびSCP-622-JPの上空30m以内に柵を越えて物品を投入する行為は禁止されています。物品、人員を問わず、入退場は必ずSCP-622-JP入口を用いて行ってください。 特別に許可された実験以外でSCP-622-JP内の植物に触れることは禁止します。SCP-622-JP内の移動の際には必ず通路の中央近くを通り、装備やケーブル類を含めあらゆる物品が花壇および植物に接触しないよう注意してください。またSCP-622-JP内にテッポウユリが出現した場合、直ちに分析対策班を招集してください。なおSCP-622-JPの影響がSCP-622-JP外部に及んだ事例は確認されていませんが、担当職員は定期的に自動計測装置の測定結果に異常がないか確認してください。 説明: SCP-622-JPは滋賀県████に存在する面積約30000平方メートルの庭園です。外部からの観測ではSCP-622-JPの異常性は確認できず、正常なバラ園のように見えます。内部からの観測ではSCP-622-JPの面積を測定することに成功しておらず、無限遠まで平坦な敷地が続いているように見えます。カメラを積載したドローンをSCP-622-JP入口から直線上に走行させる計測実験では、切れ目なく続く石畳とその両脇の花壇が、少なくとも2600km以上続いていることが確認されました。 SCP-622-JP内に植えられた植物は、不定期に吹く風と同期してランダムに変化します。全ての植物が開花しているという点では共通していますが、変化の法則は不明です。最も多く観測された植物はバラであり、他にチューリップ、コスモス、カンゾウ、ヒガンバナなどに変化したケースが確認されています。非接触検査ではこれらの植物には組成上の異常がないことが判明しています。またSCP-622-JPはなんらかの方法で外見をカモフラージュしており、SCP-622-JP内部の植物がどのように変化しても外部からは常にバラ園であるように見えます。 生物がSCP-622-JP内の植物に対して能動的に接触した場合、対象の生物の血管系内部に人間由来のB型(RH+)の血液が出現します。血液の出現は体内の総血液量がおおよそ4リットルを超えるか対象が死亡するまで続きます。対象の生物の血液型によっては、異型の血液型の輸血による溶血により、対象は死亡または重篤な障害を負うことがあります。この現象は対象自身が植物に触れたことを意識している場合のみ発生し、SCP-622-JPが対象の意識をどのように判別しているのかは不明です。またSCP-622-JP内の植物を傷つけたり花壇に踏み入ったりする行動は、対象の全体液の瞬間的消失という現象を引き起こします。この現象は対象の意識の有無に関わらず発生する点に注意してください。これらの体液に対する異常反応は、手袋や道具を用いて間接的に接触した場合にも発生します。自動化した装置を用いて接触した場合、装置を操作した人物および操作を指示した人物に影響が発生します。このため、SCP-622-JP内の植物との接触実験は現在凍結されています。 SCP-622-JP内には、SCP-622-JP-Aに指定される人型実体が存在します。外見上は上下グレーのツナギを着た50歳前後の日本人男性に見えます。呼吸をし脈拍もありますが、食事や睡眠を必要とする様子はありません。SCP-622-JP-Aは庭師を自称していますが、個人名や雇用主の名前を明かしたことはありません。SCP-622-JP-Aの平時の行動は通常の庭園の整備作業と同様ですが、どのようにして広大な敷地内を一人で管理しているかは不明です。研究チームはSCP-622-JP-Aの観測可能な行動とSCP-622-JPおよび敷地内の植物への影響には直接的な関連性がないものと推測しています。SCP-622-JP-Aへの攻撃、拘束、強制的な移動に成功した事例はなく、それらの行為は行為者の体液の消失現象を引き起こします。 実験記録 622-JP-1 概略: SCP-622-JPに柵を越えて侵入した場合の出現位置を特定する実験の結果、あらゆる投入物が消失し追跡不能になることが判明しました。この影響は地表からSCP-622-JPの上空20m前後の地点まで発生することが確認されています。またブタ、ウシ、ヒトなどの大型の動物を投入した場合、SCP-622-JP敷地内全体で数日間にわたり腐臭が発生することが確認されました。次回の生物投入実験は無期限に延期されています。 インタビューログ 622-JP-2: <記録開始> ██博士: こんにちは。 SCP-622-JP-A: やあ、お久しぶりです。 ██博士: 今日はいくつか質問したいことがあるのですが、よろしいですか? SCP-622-JP-A: 失礼ながら、作業をしながらでもよろしいでしょうか。 ██博士: ええ、もちろん。 SCP-622-JP-A: では、どうぞ。 ██博士: この庭園が作られた目的は何ですか? SCP-622-JP-A: さあ、わかりません。でも、花を愛でるのに理由が必要なのでしょうか。 ██博士: あなた以外に、この庭園内に人はいますか? SCP-622-JP-A: 今はあなたがただけですよ。多分。 ██博士: 植えられた花が風ともに変化する現象について、原因を知っていますか? SCP-622-JP-A: 変化とはどういうことですか? ██博士: 例えば今はバラが咲いていますが…ああ、ちょうどいいですね。 [風が吹く音] ██博士: ほら、菊に変わりました。 SCP-622-JP-A: ええ、自慢の菊園です。 ██博士: なぜバラから菊に変化したのですか? SCP-622-JP-A: どういう意味ですか? ██博士: 先ほどまで、ここにはバラが咲いていましたよね。 SCP-622-JP-A: 菊園にバラはありませんよ。バラが見たいならば、バラ園にご案内しましょうか。ちょうど見頃ですよ。 ██博士: …この場所は以前から菊園でしたか? SCP-622-JP-A: ええ。 ██博士: 私が今日最初にあなたに話しかけたのも、この場所でしたか? SCP-622-JP-A: ええ。大丈夫ですか? 気分がおわるいとか? ██博士: いえ、大丈夫です。お気遣いなく。 SCP-622-JP-A: そうですか。 [風が吹く音] ██博士: 今度はヒマワリか。 SCP-622-JP-A: この季節にヒマワリの花を維持するのは、こう見えてなかなか手間なんですよ。 ██博士: バラ園と菊園はどちらですか? SCP-622-JP-A: ちょっと遠いですよ。ご案内しますか? ██博士: いえ、結構。それよりこの花についてですが…[ヒマワリに手を伸ばす素振りをする] SCP-622-JP-A: 触っちゃダメだ! ██博士: おっと。 SCP-622-JP-A: …失礼。しかし、花には触れないでください。主人に叱られますので。 ██博士: 申し訳ない。この花に触れると、どうなるのですか? SCP-622-JP-A: 花は生きています。そして、とてもデリケートです。触れることにより花の健康を害することが多々あります。少なくとも、触れれば花の生き方に影響を与えてしまいますから、ご遠慮いただいております。 ██博士: あなたは触れても大丈夫なのですか? [風が吹く音] SCP-622-JP-A: 僭越ながら、プロですからね。私の仕事は、新しい花を植え、花が元気に育つよう手伝い…ときどき摘み取ることです。 ██博士: 摘み取ることもあるのですか? SCP-622-JP-A: 必要があればですけどね。…うん? これはもうダメかな… [植物の茎を剪定用のハサミで切り取る] よかったら、一輪どうぞ。あまり日持ちはしませんが。 ██博士: これはどうも。キミ、ちょっと。 [D-8175がスイセンの花を受け取る。異常性は発現しない。] ██博士: ありがとうございました。 SCP-622-JP-A: またいつでもいらしてください。 <記録終了> 終了報告書: 回収したスイセンの花からは異常性は確認されませんでした。 探査記録 622-JP-3 報告: カメラ積載ドローンによる内部探索中、入り口から2544kmの地点で明らかに異常な風景が数秒間撮影されました。同時刻、入り口付近には異常は発生しておらず、映像の分析が進められています。 探査記録 622-JP-3 映像内容抜粋: <-0:03> : 風が植物を揺らす音がしはじめる。 <0:00> : ドローンの周囲を風が吹き抜ける。 <0:01> : 空が緋色に染まる。植物は細長いスプーンような形状に変化。拡大すると、人間の顔のような模様と、垂れ下がった腕のような葉が確認できる。 <0:04> : ドローンが小石を踏み、音を立てる。同時に周囲のスプーン状植物が一斉に、ドローンを注視するように姿勢を変える。 <0:14> : スプーン状植物は走行するドローンを追いかけるように姿勢を変化させ続けている。 <0:15> : 風が吹き、周囲の植物がテッポウユリに変化する。以後異常現象なし。 インタビューログ 622-JP-4: <記録開始> ██博士: こんにちは。 SCP-622-JP-A: どうも。よほどここが気に入られたようですね。 ██博士: 今日はちょっと伺いたいことがありまして。この写真なんですが。[スプーン状植物の写真を見せる] SCP-622-JP-A: ああ、キョウチクトウですね。 ██博士: これがキョウチクトウ? SCP-622-JP-A: ええ。きれいですが、毒性があるので触らないでくださいね。 ██博士: 私の知っているキョウチクトウとは違うようですね。[タブレットを操作する]これがキョウチクトウの花では? SCP-622-JP-A: ええ、そうですね。 ██博士: この二つが同じ? SCP-622-JP-A: キョウチクトウですね。 ██博士: 私には同じには到底見えないのですが、同名の異なる種類の植物ということでしょうか? [風が吹く音] ██博士: …医療班! [SCP-622-JP-Aが石畳に倒れている。心肺停止状態であり、眼球と耳がひきちぎられたような傷跡を残して取り除かれている。胴体部の厚みが減少していることから、主要な骨や臓器も失われていることが推測される。周囲の花壇にはケイトウが咲いている] [風が吹く音] SCP-622-JP-A: …おや、またいらしたんですか。 [SCP-622-JP-Aは通常の状態に戻っている] ██博士: テッポウユリだ。 SCP-622-JP-A: ええ、テッポウユリ、見事な造形ですよねえ。 ██博士: さきほどまでのことを覚えていらっしゃいますか? SCP-622-JP-A: はい? ██博士: …いえ、また来ます。 <記録終了> 終了報告書: テッポウユリと異常現象には何らかの関連が疑われる。テッポウユリが出現した場合、直前直後の詳細分析を行うこと。 事案記録 622-JP-3: 20██/1/██、警備に当たっていたレベル1職員がSCP-622-JP内に新たな人型実体を発見しました。SCP-622-JP-Bに指定されたこの実体は、映像または音声を記録することができず、またその場に居合わせた各職員が異なる姿、異なる言動を認識していることから、何らかの精神影響存在であった可能性が高いと推測されています。下記インタビューログは、██博士、機動部隊員アルファ、ブラボー、およびチャーリーの証言に基づいて再現されたものです。 インタビューログ 622-JP-5: SCP-622-JP-B(1): [██博士が認識した実体。容姿はスーツを着た長身痩躯の欧米人風の若い男性] SCP-622-JP-B(2): [アルファが認識した実体。容姿は「ボロボロのジーパンと革ジャンを着たヒッピー」と表現された] SCP-622-JP-B(3): [ブラボーが認識した実体。全身を白い布で覆い、肌は見えなかったと証言] SCP-622-JP-B(4): [チャーリーが認識した実体。薄桃色の肉で造られた檻のような人型実体だったと証言] <記録開始> ██博士: こんにちは。きれいなコスモスですね。 SCP-622-JP-B(1): こんにちは、初めまして、クライマー。 SCP-622-JP-B(2): 失せな、クライマー。 SCP-622-JP-B(3): 悪辣だ、膨張するクライマー。 SCP-622-JP-B(4): 天竜の橋、作家のクライマー。 ██博士: 私は██、登山家ではなく植物学者です。ちょっとお話を伺えませんか。 SCP-622-JP-B(1): 時間がありません、急いでください。 SCP-622-JP-B(2): やめときな、てめぇは何も分かってない。 SCP-622-JP-B(3): 登るのだ。ありえぬ山へ。 SCP-622-JP-B(4): 冬の銀の壁、人は頂きに。 ██博士: この場所は何なのですか? SCP-622-JP-B(1): 流刑地です。すべての罪人の辿り着く場所です。 SCP-622-JP-B(2): てめえの墓場だよ。花くらい手向けてほしいだろ? SCP-622-JP-B(3): 救済の雨が肝臓のウサギからアイロンへ至る土地だ。 SCP-622-JP-B(4): 奈落、金色の奈落、欠けた月の巫女。 ██博士: あなたは何者ですか? SCP-622-JP-B(1): 観察者、誰がこの地へ来るのか見届ける者です。 SCP-622-JP-B(2): 俺は[アルファの本名]、情けねえ名前だろ? SCP-622-JP-B(3): 虚無の王であり夢のしもべ。主は我に名を与えず。 SCP-622-JP-B(4): 威嚇の罪はありえぬ嵐へ、野火の処刑、鶴の声。 ██博士: この場所が存在する目的は? SCP-622-JP-B(1): おまえのためだよ、クライマー。 SCP-622-JP-B(2): おまえのためだよ、クライマー。 SCP-622-JP-B(3): おまえのためだよ、クライマー。 SCP-622-JP-B(4): おまえのためだよ、クライマー。 [風が吹く音] [SCP-622-JP-Bは消失。周囲にはテッポウユリが咲いている。] <記録終了> 終了報告書: 本事案以外ではSCP-622-JP-Bの出現は確認されていません。SCP-622-JP-Aへのインタビューにおいても、SCP-622-JP-Bに関する有意な情報を得ることはできませんでした。
scp-623-jp
評価: +13+–x アイテム番号: SCP-623-JP オブジェクトクラス: Euclid Safe 特別収容プロトコル: SCP-623-JPは分割されて、密閉された厚さ0.5mの金属製のコンテナにそれぞれ収容されます。コンテナの内部にはカメラが設置され、常にSCP-623-JPを監視します。何か異常が感知された時もしくはコンテナの摩耗が確認された場合、即時サイト管理者に連絡をしてください。コンテナの入れ替えを行う場合、SCP-623-JPの感知範囲より既存のコンテナを囲うようにして、新たなコンテナを投下してください。 + 改訂前プロトコル - テキストを隠す SCP-623-JPの職務に携わる全職員は精神スクリーニングテストの基準を満たしたDクラス職員ではない職員によって構成されます。職員は防護服を着用することが義務付けられています。 実験以外の理由でDクラス職員がSCP-623-JPの4m範囲に接近することは許可されません。Dクラス職員を用いた実験はLevel3の職員3名以上の承認がなければ、実行されてはなりません。 収容違反事例より、実験は無期限に停止されました。全職員はSCP-623-JP収容コンテナの周囲4mに侵入してはなりません。SCP-623-JPの分断はすべて無人機によって実行されます。SCP-623-JPを分割する場合、常に本体を確認しながら、作業を遂行してください。 説明: SCP-623-JPは高さ約2.3m、幅約4m、長さ約5m、体積約4600万立方cmの泥の山のように見える実体です。SCP-623-JPの容貌は細部を除けばほぼ一定です。SCP-623-JPの表面はざらついていますが、わずかに水分を含んでいるような見た目をしています。SCP-623-JPの収容当時の質量は2,235kgでしたが、現在のSCP-623-JPの質量は約2,521kgに増加しています。SCP-623-JPの質量の増加量は実験に参加したDクラス人員の体重の量と同値でした。そのため、消失させた物質に応じて、SCP-623-JPの質量は増加すると推定されています。このとき、SCP-623-JPの体積は増加しません。 SCP-623-JPは常に約3km/hで移動しています。SCP-623-JPの接触した個所にはSCP-623-JPの構成物質が付着します。SCP-623-JPの移動に伴い、SCP-623-JPが接触した個所は摩耗していきます。SCP-623-JPに接触したDクラス職員および精神薄弱者(以下、対象)は瞬時に消失します。対象以外がSCP-623-JPに接触しても消失現象は引き起こされません。対象を消失させたSCP-623-JPは即時消失した対象の質量に応じて質量を増加させます。 SCP-623-JPは知性は有していませんが、知覚を有しています。この知覚能力には2種類があり、大まかに対象の場所を把握する能力と一定の知覚範囲に対象が侵入した時に活性化する能力です。前者の能力によってSCP-623-JPは対象の位置を把握し、自らを活性状態へと移行させる距離へと移動します。SCP-623-JPは対象以外に圧力を加えられても反応しません。 活性状態は対象がSCP-623-JPの知覚範囲から脱出するもしくはSCP-623-JPが対象を消失させるまで継続します。活性状態時のSCP-623-JPは約20km~200km/hで移動します。このとき、SCP-623-JPはその構成物質をあたりに分離しながら対象へと接近します。SCP-623-JPと対象の間に障害物がある場合、SCP-623-JPは構成物質を障害物に擦りつけて摩耗させます。この摩耗は非常に高速で行われ、障害物にSCP-623-JPが通るのに十分な穴が開くまで継続します。 分離された構成物質は活性状態時、3km/hで対象に向かって移動します。構成物質は非活性状態への移行と同時に200km/hでSCP-623-JP本体に回収されます。回収される構成物質に接触した対象は消失します。しかし、障害物によって回収が阻害されると、即時SCP-623-JPの構成物質は非活性状態に移行します。分離した構成物質が対象を消失させた時、SCP-623-JPの質量が増加します。 SCP-623-JPは能動的に分割することが可能です。さらに、分割されたSCP-623-JPはその知覚範囲を大幅に減少させます。しかし、活性条件に緩和は見られません。分割されたSCP-623-JPのなかで最も体積が大きいものが本体です。分割されたSCP-623-JPは非活性状態時でも本体同様に対象の方向を把握します。 SCP-623-JPは未知の物質と少量の人間の細胞で構成されています。細胞のDNAは██県に在住する現在行方不明の男性████のものと一致しました。████の調査を行ったところ、████およびその両親の消息は不明でしたが、████年█月█日、████によって、両親の行方不明届が提出されていたことが確認されました。 + 収容時の詳細 - テキストを隠す SCP-623-JPは地元警察によって██県██市██町の廃工場で発見され、その特異性から財団に応援要請がなされました。即時財団エージェントは現場に急行し、SCP-623-JPを収容しました。回収班との合流時、SCP-623-JPが活性化、収容が破られるという事例が引き起こされました。SCP-623-JPはエージェント██████を消失させ、非活性状態へと移行しました。SCP-623-JPは再収容され、サイト81██に移送されました。 その後、エージェント██████のGPS反応を確認したところ、██県██市██町の空き家に位置が移動していたことが確認されました。さらに、エージェント██████との通信が可能であることが発覚し、██████博士によるインタビューが実行されました。詳細はインタビュー記録にて確認してください。██県██市██町の空き家の探索中、文書が発見され、確保されました。詳細は補遺1より参照してください。 + インタビュー記録 - テキストを隠す 対象:エージェント██████ インタビュアー:██████博士 <録音開始> ██████博士:エージェント██████聞こえますか? エージェント██████:ああ、聞こえるよ。クソッ、ここはどこなんだよ。真っ暗で何も見えねえ。それに……、なんかに包まれてるみたいだ。これは……、泥か?> ██████博士:あなたは██████町の廃屋にいるようです。 エージェント██████:そんなに遠くに移動したわけではないみたいだな。だが、おかしいな。ここは家の中なんかじゃないぞ?……んっ、なんか聞こえるな。いや、聞こえるというよりも意識か何かが流れ込んでくるみたいだ。 ██████博士:流れ込んでくる? エージェント██████:ああ、うまく言葉にはできないんだが、とにかく、「お前は暴力を振るわなくてもいい」、「お前は許されている」、「お前は苦しまなくてもいい」、「お前は許されなければならない」、「お前は弱い」って感覚があるんだ。それにその感覚はそれぞれ独立にあるんじゃなくて、、何か交り合ってるみたいなんだ。みんな考えていることは違うけど最終的には全会一致で可決される議題に参加しているみたいな……。ああ、とにかく、表現が難しい。難しいこと考えてたら、眠くなってきやがった……。 ██████博士:気をしっかり持ってください。現在、あなたの救出方法を模索中です。 エージェント██████:そいつはいい。だが、ここにいるのも悪くはないような気がするな。[あくびと思われる音]クソッ……。しゃべってられないほど、眠い…… ██████博士:職務の途中です眠ってはなりませんよ、エージェント██████。エージェント██████?応答してください! エージェント██████:あっ、なんか口に、[もがく音]きも…ち…い。 その音声を最後にエージェント██████は応答しなくなりました。 <録音終了> その後、定期的に連絡を試みましたが、寝息の音以外の音声は確認されませんでした。 収容違反事例後、音声に粘着質な音が混じり始めました。最終的にエージェント██████との通信が途絶えました。通信機が何らかの理由で機能しなくなったことが予測されます。 + 実験記録 - テキストを隠す SCP-623-JPの特別収容プロトコルを制定するための初期実験が行われました。 内容:簡易収容ケースに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査 対象:D-788(痴情のもつれの果てに女性を殺害) 結果: D-788が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。SCP-623-JPは簡易収容を破り、 D-788を消失させました。 内容:厚さ0.1mの金属製のコンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査 対象:D-1025(右手が先天的に欠損しています。大規模な詐欺を行い、複数の人物を自殺に追い込んでいます。) 結果:D-1025が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。収容を破り、D-1025を消失させました。 内容:厚さ0.5mの金属製のコンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査 対象:エージェント████(本人の志願。SCP-623-JPの初期収容メンバーでした。初期収容参加前に後天的に左腕を失っています。殺人の経験の記録はありません。) 結果:エージェント████がSCP-623-JPの200m範囲に侵入したが活性状態へは移行しなかった。 内容:厚さ0.5mの金属製コンテナに入れられたSCP-623-JPの感知範囲および感知対象の調査 対象:エージェント██(本人の志願。家庭内暴力によって、厳重注意を受けています。殺人の経験はありません。) 結果:エージェント██が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性状態へと移行。簡易収容を破られる前にエージェント██は感知範囲から逃れ、SCP-623-JPは非活性状態に移行。 内容:厚さ0.5mの金属製コンテナに入れられたSCP623の感知範囲および感知対象の調査 対象:██博士(SCP-███-JPに暴露したところ、精神疾患が発生。終了の予定でしたが、実験に参加することになりました。殺人の経験の記録はありません。) 結果:██博士が200m範囲に侵入した瞬間、SCP-623-JPは活性化した。██博士は即座に感知範囲から引き出され、SCP-623-JPは非活性状態へ移行。 以上より、収容コンテナの厚さを0.5mに設定し、最大でも200m範囲を立ち入り禁止にすることでSCP-623-JPを収容することが可能だと推定されました。 ██████博士の提言によって、SCP-623-JPの分断実験が行われました。結果、体積が2万立方cm以下であれば、感知範囲を最小であると予測される約3mに抑えられることが発覚しました。 以上の事実を踏まえ、特別収容プロトコルが制定されました。 + 補遺1 - テキストを隠す [補遺1: あれらが沁みわたってくる。「お前は弱者だ」と意識に(何かの筆跡) 弱者とは何か。私は弱者なのか。(何かの筆跡) そうだ。泥がいい。すべてを包み込む、物言わぬ泥となるのがいい。言葉など意志など(何かの筆跡) 救えないものにこそ安息を。 + 収容違反事例1 - テキストを隠す 収容違反事例1: SCP-623-JPの対象把握能力の実験中にSCP-623-JPの収容違反事例が発生しました。SCP-623-JPがエージェント████を対象に活性状態へと移行しました。エージェント████を消失させたSCP-623-JPはDクラス宿舎へと移動し、宿舎にいたDクラス職員すべてを消失させ、非活性状態へと移行しました。その後、SCP-623-JPは職員に再確保され、収容違反事例は収束しました。 エージェント████が初期収容や実験に参加していたにも関わらず本事例でSCP-623-JPを活性化させたことから、活性条件に新しく「身体欠損を持つ者」が追加されたことが推測されます。 実験により、SCP-623-JPの質量は増加していましたが、この収容違反事例が引き起こされるまで、活性条件の追加は確認されませんでした。そのため、SCP-623-JPの活性条件の追加には質量が関係していることが予測されます。 この収容違反事例より、特別収容プロトコルは改訂されることとなり、あらゆるDクラス職員を用いた実験は禁止されました。 + 収容違反事例2 - テキストを隠す 収容違反事例2: プロトコルの改訂後、すべてのSCP-623-JPが感知対象無しに活性化しました。さらに、SCP-623-JPがコンテナに接触すると同時に非活性状態へと移行しました。この事例によってSCP-623-JPの収容違反事例の収束が取り消され、財団は即時SCP-623-JP本体の探索をしました。結果、財団周辺に位置していた██村で非活性状態のSCP-623-JPが発見されました。その時のSCP-623-JPの質量は約10,297kgでした。現在、██村の住民のすべてが行方不明です。 SCP-623-JPの再収容のためにエージェント██がSCP-623-JPに接近したところ、SCP-623-JPは活性状態に移行しました。エージェント██は迅速にSCP-623-JPの感知範囲から逃れました。その後、無人機によってSCP-623-JPは分断され、感知範囲外からのコンテナの投下によって収容され、収容違反事例は収束しました。 以上から、SCP-623-JPはすべての人間を対象とするほどに活性条件を緩和させたと推測されます。SCP-623-JPは再度サイト-81██に移送されました。その後実験が停止され、職員もSCP-623-JPの感知範囲に侵入しなかったためSCP-623-JPの活性化は一度も観測されませんでした。完全な収容手順が確定したため、SCP-623-JPのオブジェクトクラスをSafeへと再分類する申請がなされ、受理されました。
scp-624-jp
評価: +27+–x アイテム番号: SCP-624-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-624-JP-1は全て、サイト-8183に併設されている冷凍保管ユニットにて収容されます。冷凍保管ユニット内はSCP-624-JP-1の腐敗を防ぐため、-20℃前後を保って下さい。 新たにSCP-624-JP-1が発見された場合、担当職員が即座に回収・検死・保管して下さい。SCP-624-JP-1の目撃者にはAクラス記憶処理を、第一発見者にはBクラス記憶処理を施して下さい。Bクラス記憶処理を施し、1~3日の間に精神障害が再発した場合のみCクラス以上の記憶処理を施して下さい(SCP-624-JP-1-19出現記録を参照)。なお、SCP-624-JP-1をレベル4担当職員1名以上の許可なく解剖・処分することは認められません。 説明: SCP-624-JPは財団の元Dクラス職員、D-57793の死体の複製が出現する現象です。SCP-624-JPによって出現するD-57793の死体の複製は、SCP-624-JP-1に指定されます。20██/██/██現在、19体のSCP-624-JP-1が発見、収容されています。 SCP-624-JP-1の身長は173.2cm、体重は65.9kgで、左腕に切創痕が2ヶ所確認できます。これらのデータはD-57793死亡時のデータと一致します。指紋照合及びDNA鑑定の結果、SCP-624-JP-1の指紋とDNAはD-57793と一致することが確認されました。 SCP-624-JP-1は不定期に、生前のD-57793と関係のある場所に裸体で出現します。SCP-624-JP-1-01~19の状態はそれぞれ異なりますが、左腕の切創痕以外に、必ず外的要因による痕跡が見受けられます。また、SCP-624-JP-1の第一発見者は、SCP-624-JP-1を発見してから3分以内に何らかの精神障害を発症します。大半はBクラス記憶処理を施すことで回復しますが、回復後再発した可能性のある例が1件報告されています。 +  SCP-624-JP-1出現記録 -  非表示 SCP-624-JP-1出現記録 (一部抜粋) SCP-624-JP-1-01 日時: 20██/█/██ 03:15 場所: セクター-8133 Dクラス職員宿舎 共同部屋1 第一発見者: D-578██ 状態: 背中に鋭利な刃物で数回刺されたような痕。血液が周辺に飛び散っている。 発症した精神障害: 感情失禁。研究員の事情聴取中、突然大声で泣き叫び始めた。 メモ: D-578██にBクラス記憶処理が施された結果、正常な状態に回復しました。共同部屋内に設置されている監視カメラによって、SCP-624-JP-01が瞬間的に出現する様子が記録されました。 SCP-624-JP-1-04 日時: 20██/█/██ 13:41 場所: ██県 ███市 集合住宅█████201号室2 第一発見者: ████ 状態: 天井にくくりつけられたロープで首を吊っている。また頬や目の筋肉が引き攣り、歪んでいる。 発症した精神障害: 滅裂思考。研究員の質問に対し、支離滅裂な回答をした。 メモ: 文章の書かれたメモ用紙を発見。筆跡がD-57793のものと一致しました。メモ用紙自体に不自然な点はみられません。内容は "SCP-624-JP-1-04-メモ" を参照して下さい。 SCP-624-JP-1-09 日時: 20██/██/██ 00:58 場所: セクター-8133 Dクラス職員宿舎 男性用便所 第一発見者: D-577██ (通報者は████) 状態: 不明 発症した精神障害: 被害妄想の可能性が高い。 メモ: D-577██がSCP-624-JP-1-09の顔、両手足の指先を掌大の石で潰しているところを警備職員████が発見。████がD-577██に声を掛けるとD-577██はポケットからナイフを取りだし、自らの首に刺して自殺を図りました。ナイフの入手経路は不明です。 SCP-624-JP-1-11 日時: 20██/██/██ 08:53 場所: ██県██市立第█中学校 2-█教室3 第一発見者: ███ほか4名 状態: 首、胴体、両手足が分断され、血液は完全に抜かれている。右足のみ発見できず。 発症した精神障害: 第一発見者の5名全員に視覚性の幻覚症状。「壁一面に男の影がいくつも映っている」と全員が証言した。 SCP-624-JP-1-19 日時: 20██/██/██ 21:09 場所: ██県██市 ███5-1-██ リビング4 第一発見者: ████5 状態: 全身が水で濡れている。また笑顔と形容できる程度に口角が上がっている。 発症した精神障害: うつ病に伴う希死念慮。「弟のために死ななければならない」と数回発言した。 メモ: 前例に倣い第一発見者████にはBクラス記憶処理が施されました。一時的に回復はしたものの、翌日、同室で縊死しているのが確認されました。何らかの原因により精神障害が再発したものと思われます。『第一発見者がD-57793の親族だったため例外が生じた』と考えることも可能ですが断定はできないため、特別収容プロトコルを一部改訂するのみに留まりました。 +  SCP-624-JP-1-04-メモ - 非表示 「█████、あと少しだよ。あと一週間でこの施設ともお別れだ。そしたらまた一緒に暮らそう。待っていてくれ、█████。」 財団が█████について調査しましたが、同姓同名の人物、同一名の団体に関する記録は存在しないことが判明しました。 補遺: D-57793は20██/█/██、████裁判所にて殺人罪で死刑判決を受けた後、財団に徴用されました。彼は財団に好意的で問題行動は一切ありませんでしたが、20██/█/██、██████にて行われたSCP-███-JPの実験に参加し、[編集済]により死亡しました。D-57793の死体は2日間冷凍保管された後焼却処分される予定でしたが、SCP-624-JP-1が出現したため、身体データの比較用に永久保存することが決定しました。 Footnotes 1. D-57793が生前使用していました。 2. D-57793が一ヶ月前まで生活していた集合住宅です。 3. D-57793が過去に通学していた中学校です。 4. D-57793の実家です。 5. D-57793の実兄です。
scp-625-jp
評価: +107+–x SCP-625-JP アイテム番号: SCP-625-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-625-JPはサイト-8169にて標準大型哺乳類収容プロトコルに従って収容してください。飼育管理担当職員には最低2名を割り当て、SCP-625-JP全個体の飼料の摂食量との体調を記録させてください。収容エリアおよび開放エリアには10km2ごとに電圧感知素子および低周波集音機を設置し、研究担当職員はSCP-625-JPの発した信号の記録を行ってください。既知のパターンでない信号が確認された場合には主任担当者と飼育担当者に報告し、要因の調査を行ってください。 SCP-625-JPが寿命またはそれ以外の要因で死亡した場合、SCP-625-JPらによる"合唱"が終了したことを確認してから適切な死体の処理を行ってください。 説明: SCP-625-JPはアジアゾウ(学名: Elephas maximus)に似た外見を持つ大型の草食哺乳類の総称です。収容初期の1970年代には31頭が収容されていましたが、寿命により個体数を減らし現在は11頭を収容するのみとなっています。残った個体もそのほとんどが高齢であり絶滅の危険に晒されており、財団の調査では野生のSCP-625-JPは完全に絶滅したことが確認されています。SCP-625-JPの生態は一般的に知られている象のそれに準拠しますが、その体構造に2点の異常性が確認されています。 SCP-625-JPは頭部前面に巨大な眼球状の器官を備えていますが、この器官に視力は存在しません。解剖の結果、この器官は前頭葉が発達し露出したものと判明しており、後述のSCP-625-JP同士の信号によるコミュニケーションを行なうために脳が発達したと考えられています。更にSCP-625-JPは脚部付近に発電細胞を持ち、発生させた微弱な電気を信号として地表に流すことで個体同士のコミュニケーションに用いることが挙げられます。通常の象が鳴き声による低周波を足裏で感じ取りコミュニケーションを取るように、SCP-625-JPは足裏の神経細胞によって他のSCP-625-JP個体の発した電気信号を約30kmの距離から感知することが可能です。 SCP-625-JPが時折発生させる電気と音波の混合信号は、SCP-625-JP以外の生物には五感に作用する幻覚として知覚することができます。この現象を便宜的に"歌"と呼称します。"歌"を知覚した被験者は、「周囲の風景が一瞬にして変わり、まるで別の場所に移動したように感じた。風や雨が当たる音や感覚、空気の匂いや味まで感じられる」と証言しています。この"歌"は人工的に再現可能であり、電気信号と低周波音波の混合音波が催眠術のように働きかけ、生物としての原初的な記憶を呼び起こすことで幻覚を見せているものと結論付けられています。この技術を用いることで、財団の所持する無力化装置や対音響兵器などの開発に更なる進展が期待されています。 "歌"を発するケースは様々であり、求愛行動や危機の伝達等のほか、SCP-625-JP自身の感情によって様々なパターンの"歌"が発せられます。興味深い点としてSCP-625-JPは高い社会性を有しており、群れの中に子孫が生まれた時や個体が死亡した時などには対象の周囲にSCP-625-JPが集合し"合唱"を行うことが確認されています。この"合唱"時にはより強く幻覚を感じられることが確認されているほか、被験者からは「非常に心地よい」「不安感や悩みが消える」といった証言が得られています。 以下はSCP-625-JPの"歌"を記録した表です。 実験記録A-625 対象: SCP-625-JP(識別番号1~11) 実施方法: SCP-625-JPの生態を観察すると共に、発された"歌"を記録する。 結果: SCP-625-JPの発する"歌"によって見えた内容を、そのときの状況と共に下記表にまとめた。 概要 状況 "歌"の情景 危険 SCP-625-JP放牧エリアにて落雷による火災が発生し、現場に一番近い個体が発した。 周囲が薄暗く感じられ、前方の足場が崩れ落ちる映像。高所に対する根源的な恐怖を感じた。 威嚇 新規担当職員が施設管理の為、収容舎内に立ち入った際に発された。 腰部まで達する水流に押し戻される映像。被験者は水の感触や温度、幻覚の水流に押されて倒れこみ、水を吸い込んだときの息苦しさや溺れる感覚まで感じられた。 求愛 オスのSCP-625-JP個体からメスの個体に向けられて発された。 [編集済み] 祝福 財団の収容下で新たに誕生したSCP-625-JP個体に対し、他のSCP-625-JP個体(平均6個体)による"合唱"が行なわれた。1990年代に2回観測されている。 日の出前の明るさの緑色の空から小雨が降り注ぐ映像。雨が身体に当たる感覚はあるものの寒さは感じられなかった。 鎮魂 寿命で死んだSCP-625-JP個体の葬儀と見られる行動で、SCP-625-JP残り全個体による"合唱"が行なわれた。198█年から201█年現在まで計22回観測されている。 快晴の青空と見渡す限りの花畑の真ん中に立っている情景。微風が吹くのを感じ、身体が非常に軽く感じられた。 追記: 200█年、SCP-625-JPの飼育担当のDクラス職員(D-78638)に親愛を示す行動が行われたほか、SCP-625-JP全個体から"歌"が贈られました。D-78638は元・動物園勤務であったことと勤勉な性格が買われ、約10年間にわたりSCP-625-JPの飼育担当を勤めていました。 概要 状況 "歌"の情景 感謝 収容舎に入室したD-78638を取り囲むようにしてSCP-625-JP全11体が"合唱"を行なった。 暖かな日差しと数種の花の香りが感じられた他、多幸感を感じた。 ああ、久しぶりだ、この感覚。やはり私にはこの職が合っている。 — D-78638 下記インタビューはSCP-625-JPの習性の情報についての記録です。 + インタビュー記録 625-1 - 閉じる インタビュー記録 625-1 197█/██/██ 対象: ██氏 インタビュアー: 屋代博士 付記: ██氏は野生のSCP-625-JPを密猟することを職業としていた。 <録音開始> 屋代博士: では、SCP-625-JPを狩猟していた理由を話していただけますか。 ██氏: はい、アレは人間様と同じように祝い事や弔いをやる生き物でして。そのときに彼奴らは"歌"を歌うことはご存知でしょうか? 屋代博士: ええ、そしてその歌に幻覚作用があることも、特に葬式を行なう際の幻覚には快楽が発生することも調査済みです。 ██氏: それは話が早いですね。私は快楽目当ての金持ちを相手に商売をしていました。あとは普通の象と変わりませんので、象牙や皮を売り払ったりもしていましたがね。 屋代博士: 死骸を売り払うのにしてはずいぶんと雑な殺し方をしていますね。どれも内臓を引きずり出したような跡や、耳や鼻をバラバラにしたりと……この無数の槍は、抵抗傷がありませんね。死後に刺したものでしょうか。これらは他のSCP-625-JP個体に発見されやすくするための工夫でしょうか? ██氏: いえいえ、そういった理由もあるのですが。アレの、歌の快楽を底上げする方法はご存知ですか? 屋代博士: いいえ。これがそうだと言うのでしょうか? ██氏: 仲間が死んだとき、いや、殺されたときだけですね。その亡骸が惨たらしいほど綺麗な歌を歌うんですよ。私も何度も聞かせて貰いましたが、例えるならば天国、極楽にも昇る気持ちとはまさにこれのことを言うのだと思います。アレを何十匹も歌わせるよりも、もっと凄い衝撃でしたね。 ██氏: そしてあの辺りの伝承によれば、無残な姿になった仲間ほどその魂を慰めるために大勢で力強く歌うと言われており、私が実際に試してみたところ、その通りだったということです。 屋代博士: 興味深い内容ですね。ではインタビューを終了します。ご協力ありがとうございました。 <録音終了>   追記: 201█年、SCP-625-JP研究主任の黒瀬博士による実験が行われました。実験内容は下記の通りです。 + 実験報告書 B-625 - 閉じる 実験報告書 B-625 - 201█/██/██ 担当者: 研究主任 黒瀬 実施内容: 飼育担当職員(D-78638)の死体を激しく損壊させSCP-625-JP群に視認させる。 結果: 通常時の葬儀時の"歌"と比較し音響度████%、幻覚強度███%の"歌"が総勢11頭のSCP-625-JPによって奏でられた。██氏の証言どおり今までに無い規模の歌となった。 概要 状況 "歌"の情景 鎮魂(B) SCP-625-JP全11体が"合唱"を行なった。 眩しく感じられる連続したフラッシュと全身の浮遊感、甘い果実のような香りが脳髄を溶かすような感覚の他、全能感と恍惚感、感動に似た感情を覚えた。 分析: 得られた情報は[削除済み]の開発に大きく貢献するものと期待される。レポート作成後に技術開発部にデータ分析を依頼する。 添付資料 実験計画書 B-625 - 199█/██/██ 対象: SCP-625-JP 全個体 実施内容: インタビュー記録 625-1の検証として、SCP-625-JPの死体を損壊させSCP-625-JP群に視認させる。 注記: 近年SCP-625-JPの個体数減少が著しいため、代役として別の実験動物を使用すること。 — 研究主任 屋代 実験方法: SCP-625-JPの信頼が得られ仲間と認識されるまで、動物(アジアゾウを予定)飼育担当職員としてDクラス職員を起用し、接触/交流させる。 付記: 199█/██/██の実験より、ゾウを含む他種動物のほとんどがSCP-625-JPに対し忌避反応を示した。また投入された動物も上記計画の条件を満たすまでに寿命が来てしまう恐れがあり、長期の実験で再実験を行なうことも難しいため、確実性を考慮し人間を起用することを提案する。 認可。 — 日本支部理事会
scp-626-jp
評価: +47+–x SCP-626-JP-1 アイテム番号: SCP-626-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-626-JP-1はオブジェクト標準保管金庫に携帯型の予定帳と共に保管してください。この時用いられる予定帳はSCP-626-JP-1に印刷されているカレンダーの来年度版カレンダーが印刷された物を用いてください。SCP-626-JP-1のカレンダーが終了した際、新たな予定帳を保管金庫に入れます。その際、それまでSCP-626-JP-1であった日付が古い方の予定帳を回収し、焼却処分してください。SCP-626-JP-1を取り扱う際は同時に保管されている予定帳以外にSCP-626-JP-1にいかなる予定帳も近づけてはいけません。また実験以外でSCP-626-JP-1への書き込みは禁止されます。SCP-626-JPの実験を行う際はレベル3以上の職員2名の許可を得てください。SCP-626-JPの実験に用いられた筆記用具、用紙は全て処理し、再度使用されることがないようにしてください。 説明: SCP-626-JPは予定帳に現れる現象です。SCP-626-JPの特異性は使用者の記憶操作、精神への影響、及び特異性の転移能力です。SCP-626-JPが発現した予定帳(以下SCP-626-JP-1)に予定を書き込んだ人間(以下使用者)はSCP-626-JP-1を閉じると、書き込んだ予定に関する記憶を一時的に忘却します。使用者は自発的に予定を確認する行動は一切取らなくなり、外的要因によって予定を確認させられたとしても即時忘却します。その後、SCP-626-JPは最大の損害を与える形で使用者に予定を再び確認させます。この確認のタイミングは、予定がすでに実行不可能、あるいは重大な過失を伴うほど予定の時機を逸した時です。使用者がSCP-626-JP-1を開き予定を確認すると、使用者は予定を思い出して狼狽し始めます。実験ではこの際急激な心拍数の上昇や発汗などが見られました。この状態になった使用者は予定を実行しようと最大限努力します。いかなる犠牲を払ってでも予定を実行しようと試みるため、最終的に使用者は重傷、死亡に至るか、社会的地位を損失します。 SCP-626-JPは19██/12/20、██県の███駅で、男性の████氏が発車直後1の電車から窓を開けて脱出し、反対車線を通過していた電車に衝突し死亡するという事件において発見されました。████氏は独身で20代の民間企業会社員です。同車両に乗り合わせていた乗客から、████氏が予定帳を確認した途端に顔面蒼白になり、かなり焦った様子で自分が着席していた座席の後ろの窓を開けて車外に飛び出した、という証言が得られました。████氏は死亡するまで「後五分だ……買い忘れた買い忘れた」と終始呟きながら地面を這っていた様子を目撃されています。警察が回収した遺品の中に、「きれかけ ████スーパー特売のトイレットペーパーを購入する(終了六時半」と当日の日付の欄に書き込まれた予定帳が見つかりました。その後、████氏の異常な行動と予定帳の書き込みの因果関係に目を付けた財団が予定帳を回収しました。SCP-626-JPは当初「書き込んだ予定を強制的に実行させられるオブジェクト」として研究されていましたが、研究期間中にSCP-626-JP内のカレンダーが終了しました。その後はSCP-626-JPに異常性が見られなくなったため、Neutralizedへの再分類が申請されていました。しかし、事案626-01、02によってSCP-626-JPの実態が明らかとなったため、SCP-626-JPはEuclidに再分類され、現時点で異常性を保有している予定帳をSCP-626-JP-1と呼称することになりました。 事案626-01 - 日付19██/01/10 事案626-01は██博士によって引き起こされたSCP-███-JPの収容違反です。██博士はSCP-███-JPの実験に参加することになっていましたが、予定時刻を過ぎても姿を見せなかったため、██博士を除いて実験が行われました。実験中、██博士が遅刻して登場しました。██博士は狼狽しており、実験中のため閉鎖されていたSCP-███-JPの存在する実験室を開放しました。このため、SCP-███-JPの収容違反が発生。再収容までに██博士含む研究者6名、機動部隊3名が死亡しました。 事案626-02 - 日付19██/01/12 事案626-02は██研究員によって引き起こされたサイト-81██での殺人事件です。当時サイト-81██のカフェテリアでは期間限定の商品が販売されており、事案当日がその商品の最終販売日でした。██研究員はカフェテリア営業終了後にカフェテリアに侵入し、該当食商品を販売するよう強要しました。店員が拒否したところ、██研究員は店員を殺害。商品を強奪し、サイト-81██内を逃走中のところ保安部隊によって確保されました。██研究員は事情聴取の後、終了されました。 事案626-01調査中、██博士の所持品からは実験の予定が書き込まれた予定帳が発見されました。SCP-626-JPとの関連性を危惧した財団は、██博士の予定帳を分析に回しました。以後の研究によりSCP-626-JPは、印刷されたカレンダーの日付が終了するともっとも距離が近い携帯型の予定帳に特異性が転移する現象であることが判明しました。また、事案626-02調査において、██研究員の所持品から期間限定商品の購入予定を書いた付箋と、SCP-626-JPの実験で記入に用いられていたボールペンが発見されました。██研究員はSCP-626-JPの実験に参加しており、自分のボールペンを実験道具として使用していた模様です。これと後の検証実験により、SCP-626-JP-1へ予定を記入する際に用いた筆記用具が別の紙において予定記入に用いられた場合、紙はSCP-626-JP-1と同様の効果を発揮することが判明しました。この筆記用具は使用不能になるまでその特異性を永続して保有します。一方で予定が記入された紙は異常性の転移能力を持ちません。 補遺: SCP-626-JPは上記の転移性質により、特異性を保有したままの筆記用具や紙が一般世間に残留している可能性があります。現在、財団は████氏以前にSCP-626-JPがどの予定帳に発現していたか、その転移経路においてどれほどの筆記用具が用いられ、処分されていないかを調査中です。 Footnotes 1. 18:25分発
scp-627-jp
評価: +35+–x SCP-627-JPが生成した金魚の形の飴 アイテム番号: SCP-627-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-627-JPは低脅威度物品用ロッカーに収容されます。実験にはレベル3以上のクリアランスを持つ職員の許可及び監督、3名以上の武装した警備員の同伴が必要です。単独での実験は許可されません。生成物は全て記録に残してください。正確な記録を残せなかった場合、如何なる理由があろうとも実験参加者全員にクラスA記録処理が施されます。監督者の判断により、生成物に対し熱湯を放水する事が許可されています。SCP-627-JP使用後は清浄して返却してください。 説明: SCP-627-JPは長さ15cm、直径0.8cmの金属製1の棒です。生物がSCP-627-JPに直接触れると、SCP-627-JPの先端部から飴が滲み出し、接触者が望んだ物を形作ります。衣服や義手等、自身ではない物体を通して触れた場合は飴を生成しませんが、体表から離れていない毛髪や爪、鱗等は自身に含まれます。SCP-627-JPがどのようにして飴を生成しているのかは不明です。生成される飴の大きさは最大で27cm、飴が完成するまでの時間は最長で10分です。SCP-627-JPから生み出される飴に異常性は無く、通常の飴と同様に摂食可能です。味は薄荷や果物風味等に変更可能ですが、牛肉等の甘味から逸脱した味は生成不可能です。SCP-627-JPは飴の形成完了から5分以上が経過しなければ、新たな飴の生産を行えません。形成完了後の飴の摂食中も同様に、新たな飴の生産は確認されませんでした。しかし、形成された飴がSCP-627-JPから取り除かれた場合、取り除かれた飴が摂食されていたとしても、新たに飴の生産が可能となります。 SCP-627-JPを用いた実験については実験記録627JPを、SCP-627-JPが生成した飴の画像記録は記録文書627522を参照してください。 補遺: 2015/06/15: これ、好きな飴を作れるだけの金属棒じゃないか? Anomalousアイテムが妥当だと思う。 — 江戸川博士 SCP-627-JPは飴を生成する以上の有益な研究成果を期待できないとして、Anomalousアイテムへの再評価が2015/07/15に予定されました。2015/06/23、再評価に向けたSCP-627-JPの実験中、SCP-627-JPによる機密情報の模造の可能性が芹沼研究員から指摘されました。霧崎博士監督の下で確認実験が行われた所、セキュリティクリアランスレベル制限の掛けられている情報を含むSCP-███-JPの正確な報告書の模造に成功。更なる実験の結果、[データ削除]、[データ削除]といった機密情報の模造にも成功しました。加えて、求めた情報を不正確に形成する事例も多く見られました2。これらの実験結果を受け、特別収容プロトコルは現在の形に改定されました。要注意団体に関する情報をSCP-627-JPによって蒐集する計画も持ち上がりましたが、形成物が保持者の思考や無意識に影響されて形成される事がある、情報の真偽を確かめる術が乏しい、取得する情報によっては視覚情報によるミーム汚染を受ける危険性がある等の理由から計画は保留されました。 2015/07/15: SCP-627-JPの再評価を議論した結果、現状のSafeクラスを維持する結論で議論を終えました。 Footnotes 1. ニッケルや鉄を主に含む合金。素材に特異な性質は認められず。 2. 不正確な情報の例として、特定人物の所在地を望んだ結果太陽系が形作られる、報告書に書かれた文字が不鮮明で判読不能、発声した言葉を文字としてそのまま形作る等が挙げられます。
scp-628-jp
評価: +56+–x アイテム番号: SCP-628-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: 未機能状態のSCP-628-JP、機能を失ったSCP-628-JP、破壊されたSCP-628-JPの残骸は、サイト-81██の標準収容コンテナにすべて収容してください。 機能状態のSCP-628-JPについては、担当研究者の研究室において、観察と研究を行ってください。 説明: SCP-628-JPは、『アリすのかんさつセット』としてパッケージングされたアリ飼育セットと、それを機能化させることによって観察が可能となる幻像です。 『アリすのかんさつセット』は以下の4要素より構成されます。 № 要素 サイズ 特記事項 SCP-628-JP-A スチロール樹脂製虫かご 幅約29.5×奥行約18×高さ約20(単位: cm) 壁面にパッケージと同様の書体で『アリすのかんさつセット』と記されたシールが貼られている。本体と蓋が分離できる構造となっており、本体は透明、蓋は緑色をしている。後述の機能状態において、蓋は変色する SCP-628-JP-B 土 約0.8 kg N/A SCP-628-JP-C アリ捕獲用ゼリー状エサ 約0.05 kg ラミネートチューブ入り。 SCP-628-JP-D 説明書 A4サイズ1枚 SCP-628-JPを機能状態とするためのプロトコルが記されている。 機能状態となったSCP-628-JPを観察する者は、本来存在するはずの"アリの巣"を認識出来ず、"アリス"と命名された実体と、その周囲の環境の幻像を観察することになります。この観察対象をSCP-628-JP-Eと指定します。 現在確認されている限り、SCP-628-JP-Eはすべて実在の人物であり、観察内容は実際にSCP-628-JP-Eに起こっている(または起こった、もしくは起こる)現象です。また、すべてのSCP-628-JP-Eの周囲には、なんらかのウサギ実体が存在する(または存在していた、もしくは存在を始める)ことが確認されています。 SCP-628-JPは破壊されたものも含めると240セット確認され、すべて財団により確保・収容されました。それぞれのSCP-628-JPは、すべて異なったSCP-628-JP-Eの観察認識をもたらします。 SCP-628-JP機能化プロトコル 以下はSCP-628-JP-Dに記された、SCP-628-JPを機能状態にする方法をまとめたものです。 SCP-628-JP-AにSCP-628-JP-Bを敷き詰める SCP-628-JP-Cにて、外部よりアリを捕獲する 捕獲したアリをSCP-628-JP-Aの中に放つ アリがSCP-628-JP-B中に巣を作る アリが巣を作り終えると同時に、SCP-628-JP-Aの蓋の色が、白・青・赤紫・金・虹色のいずれかに変色する この状態となったSCP-628-JPを機能状態と呼称します。機能状態のSCP-628-JPを観察することで、SCP-628-JP-Eが観察されます。 観察記録 - 20██/██/██現在 蓋色 = 白 № SCP-628-JP-E 時差1 特記事項 SCP-628-JP-1 ██ 愛梨須 / 高校生 / ██歳 / 女性 時差なし ウサギの足をチャームとするネックレスを愛用 SCP-628-JP-2 ██ 亜李珠 / 小学生 / █歳 / 女性 時差なし ██区立███小学校にてウサギ舎の飼育委員を務める SCP-628-JP-3 Alice ██████ ██████ / 主婦 / ██歳 / 女性 時差なし ウサギ肉のシチューが得意料理 SCP-628-JP-4 Alice ████████ / 牧場勤務 / ██歳 / 女性 時差なし ロバ(兎馬)の飼育を担当 SCP-628-JP-5 ~ -137 さまざま 時差なし (略) SCP-628-JP-138 ███ 有寿 / 中学生 / ██歳 / 女性 時差なし 私立██中学校天文学部部長。月の観察が日課 機能状態となったSCP-628-JPのほとんどは蓋色が白になる。これらのSCP-628-JP-Eはさまざまな職業・年齢・人種にわたったが、すべて一般人であり、異常性のある様子は観察されなかった。また、時差も存在しなかった。 蓋色 = 青 № SCP-628-JP-E 時差 特記事項 SCP-628-JP-139 ██ █(芸名:██ アリス) / 俳優・モデル / ██歳 / 女性 時差なし ファンより贈られたウサギのぬいぐるみを多数所持 SCP-628-JP-140 ██ ██(筆名:有栖█ 有栖) / 小説家 / ██歳 / 男性 時差なし 観察開始直後より、仕事場にてウサギを飼い始めた SCP-628-JP-141 Alice Bradley Sheldon / 小説家 / ██歳 / 女性 約 -██年 青いリボンのタイプライターを用い、ウサギが主役の小説を執筆中。本小説は未発表作である SCP-628-JP-142 有巣 █ / 財団勤務(下級収容スペシャリスト) / ██歳 / 男性 時差なし SCP-425-JPの飼育担当。毎日エサやりに追われる姿が観察される SCP-628-JP-143 Alice ███████████ / 財団職員(研究職) / ██歳 / 女性 時差なし 研究セクター71にてSCP-1793の研究・飼育に従事中 SCP-628-JP-144 Alice █████████ / 主婦 / ██歳 / 女性 時差なし SCP-2036を原因とする野火に遭遇し、死亡。以後、SCP-628-JP-144は機能を失い、観察不能となった 蓋色 = 赤紫 № SCP-628-JP-E 時差 特記事項 SCP-628-JP-145 ██ ありす / 小学生 / █歳 / 女性 -4秒 本SCP-628-JP-Eは、タイプブルーである。ペットとして日本語を話すウサギを飼育中 SCP-628-JP-146 Alice ██████ / 小学生 / █歳 / 女性 -11秒 本SCP-628-JP-Eは、それまで財団未確認のSCP-1284-1であった。SCP-1284-2を形成済 SCP-628-JP-147 姓名不詳 / 職業不詳 / 年齢不詳 / 女性 時差不明 観察直後、SCP-1818に遭遇。イベント終了後、SCP-628-JP-147は機能を失い、観察不能となった SCP-628-JP-148 ██ █(芸名:██ アリス) / 俳優・モデル / ██歳 / 女性 +12時間 SCP-628-JP-139と同一のSCP-628-JP-E。時差の違いに注意 蓋色 = 金 № SCP-628-JP-E 時差 特記事項 SCP-628-JP-149 有栖川宮 威仁 / 皇族・軍人 / ██歳 / 男性 約 -███年 西暦1913年7月5日に亡くなるが、その直後、出所不明のウサギが遺体に這い上る。周囲の者は本SCP-628-JP-Eが亡くなったことに気づく様子を見せず、依然として生きているかのように扱う。また、ウサギにも気を配らない。7月10日にウサギが遺体の上から退くと、7月5日に亡くなったことに気づいた(または遡及して思い出した)。上記の異常はSCP-628-JP-149の観察者にも作用した。以後、SCP-628-JP-149は機能を失い、観察不能となった SCP-628-JP-150 Alice █████ / 第██代アメリカ合衆国大統領 / ██歳 / 女性 約 +██年 観察開始直後、議会議事堂前での就任演説中に出所不明のSCP-524に捕食され死亡。以後、SCP-628-JP-150は機能を失い、観察不能となった 蓋色 = 虹 № SCP-628-JP-E 時差 特記事項 SCP-628-JP-151 Alice Liddell / 無職 / 10歳 / 女性 約 -███年 ルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』の主人公のモデル。かかりつけ医であり白うさぎのモデルである、ヘンリー・アクランドがごくまれに観察される SCP-628-JPに未来を認識させるものが存在し、観察によって未来が確定する恐れがあること ウサギ型SCiPとの関連が有意に存在し、観察者に対し危険をもたらす恐れがあること 現在機能状態にあるSCP-628-JPだけで研究には十分であること 以上3点を理由とし、これ以上のSCP-628-JPを機能状態とすることは凍結されました。 補遺: 財団が確保・収容したSCP-628-JPは、すべて遠山 ██氏の居住していたアパートの部屋より発見されたものです。遠山氏は2016年9月30日に自宅にて狂乱状態で暴れているところを近隣住民より通報されました。警察および救急が遠山氏を保護する際、機能状態のSCP-628-JP数十セットを確認し、その異常性が発覚しました。遠山氏を確保した警官は、遠山氏がいくつかのSCP-628-JPを破壊しながら、「アリスが出て来ない」「俺はアリスじゃない」と叫んでいたと証言しています。 警察内の協力者より財団へ情報の引き継ぎがなされ、遠山氏方宅に存在した機能状態・未機能状態のSCP-628-JP、全240セット(20ダース)は財団に確保・収容されました。遠山氏は財団系列の病院に保護されていますが、錯乱状態が続いており、現在も意思の疎通が不可能な状態です。 遠山氏はネットを通してSCP-628-JPを購入していた模様です。遠山氏の所持していたスマートフォンにはSCP-628-JPの購入用らしきアプリがインストールされており2、確保時の遠山氏方宅の床には使用済みの高額プリペイドカード3が133枚散乱していました。また、SCP-628-JPは宅配を通じて配送されていたらしく、遠山氏方宅に残されていた宅配便の荷札には、内容物欄に『アリすのかんさつセット(1ダース)』と、送り主欄には住所は書かれていませんでしたが『The Factory』と記載されていました。 インタビュー記録628-い - 日付2016/10/5 インタビュアー: エージェント██(警察を装う) インタビューイ: 南野 ██氏(遠山氏の隣室に居住。以下、南野氏) <記録開始, [2016/10/5]> エージェント██: 恐れ入ります。遠山さんの件について、少しお話が聞きたいのですが。 南野氏: あらやだ。なに? 刑事さん? 遠山さんがどうかしたの? エージェント██: 先日、遠山さんが暴れていた件についてですが。 南野氏: ええ、ええ! そう、こわかったわぁ。アタシがさあ、ほら、『██』? あの再放送をさ、TVで見てた時よ。 エージェント██: なるほど。記録では午後3時ごろですが。 南野氏: そうね。3時過ぎぐらいかしらね。あのときはほら、なんか、スペシャルの再放送で? ちょうど、成宮くんが「怒るな、落ち着け、考えろ」って。かっこよかったわよねぇ。でもねえ、あんなこと言ってても、結局ダークナイトじゃ……。 エージェント██: 遠山さんの件についてですが。 南野氏: ええ、遠山さん。いい人だったのにねえ。……まあ、最近ちょっとおかしかったし。 エージェント██: おかしかった、ですか。 南野氏: そうなのよ。……まあ、おかしかった、なんて、ちょっと言っちゃ悪いわよね。 エージェント██: 奥さんがおっしゃったことは他には洩らしませんので、どうか、どのようにおかしかったか、お教え願えませんか? 南野氏: んー。アリスちゃんがねえ、死んじゃってから、ほら、鬱? あれみたいになっちゃって。 エージェント██: アリスちゃんが死んだ。 南野氏: そうよ! それはもう可愛がってて。猫可愛がり……っていうと、ちょっと変ね。まあ、とにかく、可愛がってたんだけど、病気かなんかで死んじゃったのよ。 エージェント██: なるほど。 南野氏: たしかにまあ、可愛かったわよね、アリスちゃん。大人しかったし。下の階のケン坊なんてほんと、夜中でもうるさいし。刑事さん、何とかならない? エージェント██: 善処します。それで、遠山さんの件についてですが。 南野氏: はいはい。それで、それからもう、鬱みたいになっちゃって、って、これもう言ったかしら? エージェント██: 続けてください。 南野氏: 部屋に閉じこもっちゃってさあ。仕事にも行ってるんだか行ってないんだか。たまに顔を合わせても世界でも滅んだかみたいな顔で、挨拶もしないし。まあ、人間変われば変わるもんよ。 エージェント██: なるほど。それから、突然、9/30に暴れだしたと? 南野氏: それがね、違うのよ。 エージェント██: 違う? 南野氏: 9月の半ばぐらいかしらね。回覧板届けに行ったわけよ。そしたら、見違えるように明るくなってて。なんだっけ「アリスにまた会えるかもしれない」とか何とか言ってて……。 エージェント██: ふむ。 南野氏: あのときの顔……。 エージェント██: 顔がどうされました? 南野氏: うーん。(数秒の間)いくら刑事さん相手でもこんなこと言うのは……。 エージェント██: どうか、お教えください。秘密は絶対に厳守します。 南野氏: そう? じゃあ言っちゃうけど、気持ち悪かったのよ。笑顔が。 エージェント██: 笑顔が気持ち悪かった。 南野氏: そうよ。もう、本当に、満面の笑顔で。あれは、もう、あのときからなんかおかしかったのね。 エージェント██: なるほど。 南野氏: きっと、あれよ。覚醒剤とか、なんとかハーブとか。そんなの使ってたんじゃないの? 部屋から見つからなかったの、刑事さん? エージェント██: そのようなものはありませんでしたね。 南野氏: 嘘よ。だってほら、そういえばここ最近、ひっきりなしにピンポンピンポンチャイムが鳴って、遠山さんにしょっちゅう宅配便が届いてたわよ。ここのチャイム、音が大きいからよく聞こえるんだから。 エージェント██: そうですか。 南野氏: きっとあれ、麻薬だわ。そうに違いない。ホントにちゃんと調べたの、刑事さん? 尿検査した? エージェント██: ええ、したと思いますよ。 南野氏: はあ……ほんと、考えてみたら罪よね、アリスちゃん。一人の男の人生を狂わせちゃって。 エージェント██: 先ほどからお話に上がる『アリスちゃん』ですが、我々の調べでは遠山さんは長年一人ぐらしのはずです。一体どなたなのでしょうか? 南野氏: あらやだ! 刑事さん、アリスちゃん知らないの? 日本の警察も駄目ねえ。それぐらい調べときなさいよ。 エージェント██: 恐縮です。 南野氏: アリスちゃんはね、遠山さんの飼ってたウサギよ。 エージェント██: ウサギ。 南野氏: ケン坊は犬よ? <記録終了> アプリ『アリすのかんさつセット』調査記録628-ろ - 日付2016/10/6 遠山氏の所持していたスマートフォンにインストールされていた『アリすのかんさつセット』という名のアプリと、SCP-628-JPの関連性を調べるため、これを起動し調査しました。 調査責任者: ███研究員 スマートフォン操作者: D-628-JP-1 起動直後の画面。スプラッシュ、もしくはローディング画面。 0.5秒後、次の画面に自動的に遷移。   遷移直後の画面。 黒塗りについては財団による処理。 『・排出停止について』で述べられているSCP-628-JP-Eらしき女性の死体がラスベガスのホテル『██████』にて、鋭い刃物で頸部を切断されたような状態で発見されている。 文中の"石油喰らい"がSCP-030-JPである恐れがあるため、宅配集積拠点に対策チームを配備した。 最下行に記された『ハートのクイーン』なる人物が責任者のようである。 右上の×印をタップすると次の画面に遷移。   遷移後、画面上方よりカードが四枚スライドして画像の位置に収まる。 『メンバーへんせい』カードをタップしたところ、D-628-JP-1の頸部が瞬間的に切断される。 アプリが自動終了し、自動的にアンインストールされた。 アプリの再インストール方法が不明なため、調査はここで終了しました。 3枚目のスクリーンショットの項目名から類推すると、アプリの内容はよくあるコレクション性のあるスマホゲームに類似していると思われる。セット購入を選択すれば、SCP-628-JPを購入できたのだろう。D-628-JP-1の首が刎ねられたのは、遠山氏ではない者が触れたので『虚偽ログイン』に当たると判断されたためだろうか? どのように判定が行われたのかは不明だ。――███研究員 メール調査記録628-は - 日付2016/10/7 "アプリ『アリすのかんさつセット』調査記録628-ろ"でアンインストールされた、アプリ『アリすのかんさつセット』の再インストール、または復元を試行中に、遠山氏のスマートフォン内に削除されたメールがあることが判明したため、これを復元しました。メールは無効なアドレスから送信されており、返信することはできませんでした。 着信日時: 2016/9/30 PM2:50 受信者: 遠山 ██ 送信者: 『アリすのかんさつセット』サポートチーム タイトル: Re:お問い合わせ 本文: 遠山 ██ 様 平素は『アリすのかんさつセット』をご愛顧いただき、 まことにありがとうございます。 お問い合わせいただきました内容につきまして、 サポートよりお答えさせていただきます。 『アリすのかんさつセット』は、 『ウサギとアリス』のコンビが出現する仕様となっております。 そのため、『ウサギのアリス』は出現いたしません。 以上をもちまして、 お問い合わせのご回答とさせていただきます。 今後とも『アリすのかんさつセット』をよろしくお願いいたします。 ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ ♠♡♢♣ 『アリすのかんさつセット』サポートチーム スタッフ ダイヤの9 本メールは送信専用アドレスより送信しております。 ご返信はアプリ内『お問い合わせ』フォームよりお送りください。 Footnotes 1. 観察者の現在時刻からの差。"時差なし"の場合、観察者と同時刻の姿を観察する。時差がマイナスの場合、観察者の現在時刻から見て過去の姿を観察する。-10秒なら10秒前の姿を観察する。時差がプラスの場合、観察者の現在時刻から見て未来の姿を観察する。+10秒なら10秒後の姿を観察する 2. 詳細については"アプリ『アリすのかんさつセット』調査記録628-ろ"を参照 3. 額面2万円
scp-629-jp
評価: +28+–x アイテム番号: SCP-629-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-629-JPはその性質上物理的収容は困難なため、SCP-629-JPの影響を受けた人間(以後被験者と記述)の捜索及び記憶処理とSCP-629-JPの記載された文章媒体の破棄により対処されます。日本全国すべての家庭裁判所に対ミーム処置を施した、あるいはミーム汚染耐性を持つエージェントを配置し、氏の変更許可申立書をチェックします。SCP-629-JPへの変更申請が確認された場合、直ちに機動部隊ん-0"名無しの権兵衛"によって申請を出した被験者の身辺調査を行い、周囲に他の被験者およびSCP-629-JPの書かれた文章媒体がないか確認してください。確認されたすべての被験者にBクラス記憶処理を行い、SCP-629-JPの書かれた文章媒体は焼却あるいは適切と判断される方法により確実に破棄してください。 SCP-629-JPを用いた実験はセキュリティクリアランス4以上の職員の許可が必要です。実験前に被験者となるDクラス職員を除くすべての実験参加者は対ミーム処置を受け、実験終了後Dクラス職員も含むすべての実験参加者がBクラス記憶処理を受けてください。不測の事態を防ぐため、実験室内への筆記用具の持ち込みは一切禁じられています。また、実験記録は音声記録のみとし、画像や映像記録を取ることは禁止されています。 説明: SCP-629-JPは、ミーム汚染を引き起こす日本人のものと思われる苗字(以降法律上の表記である氏と記述)です。 SCP-629-JPの異常性はSCP-629-JPを視認し、それを氏であると認識することにより発現します。被験者は、SCP-629-JPを自分の氏であると認識します。そのため、自らの氏名を記入する際にSCP-629-JPを記述し、結果としてSCP-629-JPを増殖させることとなります。SCP-629-JPを視認したことによるミーム汚染は、日本語の知識がない、あるいは失語症などの要因により文字を判読できない者でも、SCP-629-JPを氏であると認識さえしていれば影響を受けます。 大抵の場合被験者は自らの認識と戸籍謄本や住民票、免許証などの公的な書類との相違に違和感を覚え、その結果氏の変更を裁判所に申請し、殆どの場合却下されますが、その際にミーム汚染が拡大することとなります。 + SCP-629-JPの実験記録 - 実験記録を閉じる 実験記録629-JP-1 - 日付20██/10/10 対象: D-33501。本名島村██。 実施方法: SCP-629-JPを見せた後、本名を尋ねる。 結果: D-33501は自分の本名を島村██と名乗った。 分析: どうやらSCP-629-JPを苗字だと認識していなかったようです。 実験記録629-JP-2 - 日付20██/10/10 対象: D-33501 実施方法: SCP-629-JPを見せて氏であることを説明した後、本名を尋ねる。 結果: D-33501は自分の本名を[データ削除済]██と名乗った。実験後、クラスB記憶処理を行った上で再度本名を尋ねると、今度は島村██と名乗った。 分析: 記憶処理は有効なようです。無駄に被験者を増やすこともないでしょうし、可能な限り実験対象は使いまわすことにしましょう。 実験記録629-JP-3 - 日付20██/10/10 対象: D-33501 実施方法: SCP-629-JPを平仮名、カタカナ、アルファベット、点字で表記した物を見せて氏であることを説明した後、本名を尋ねる。 結果: いずれの場合もD-33501は自分の本名を島村██と名乗った。 分析: 漢字で表記した場合のみ異常性が発揮されるようです。 実験記録629-JP-4 - 日付20██/10/11 対象: D-33502。本名カルロス██████。対象はブラジル人で日本語は未習得である。 実施方法: SCP-629-JPを見せて氏であることを説明した後、本名を尋ねる。 結果: D-33502は自分の本名をカルロス[データ削除済]と名乗った。表記方法を尋ねたところ、漢字で表記すると答えた。 分析: 日本語を知らなくてもSCP-629-JPを苗字だと認識していれば影響を受けるようです。[データ削除済]の表記法に関してローマ字でなく漢字で書くと答えたということは、海外でも拡散する可能性があるということでしょう。 SCP-629-JPは20██年10月9日、東京都██市の家庭裁判所に潜入しているエージェントから「不自然な氏の変更申請が相次いでいる」という情報がもたらされたことにより発見されました。調査の結果、ミーム汚染を伴うオブジェクトであり、既に都内大手出版社と家庭裁判所内にてミーム汚染の拡大が確認されたことから、直ちに認識災害・ミーム汚染を専門に扱う機動部隊によってすべての被験者とその関係者への記憶処理及びSCP-629-JPの記載された文章の破棄が行われました。 調査の結果、同出版社が行ったティーン向け小説の新人賞応募作品の一つに氏がSCP-629-JPである登場人物がいたことが判明したため、作者である中野 伸也氏に命名した経緯を聴取した上で身辺調査を行いました。 +インタビュー記録 (20██/10/11) インタビュー記録を閉じる 対象: 中野 伸也氏 インタビュアー: エージェント・一宮 <録音開始> エージェント・一宮: それでは、あなたが██████大賞に応募された作品の主人公の苗字の[データ削除済み]の由来について、お話いただけますか? 中野: はぁ、あれっすか。あれはうちの家に伝わる「忌み氏」なんすよ。 エージェント・一宮: 「忌み氏」? 中野: ええ、自分の親父は██県のド田舎の出なんすけどね、そこの集落の長の家に代々伝わる苗字だそうっす。まぁ親父がその家の三男坊なんすけどね。 エージェント・一宮: で、その「忌み氏」ってのはどういうものなんです? 中野: 詳しいことは分かんないけどさ、普通に名乗る苗字とは別に、一族の中でのみ使われる苗字だそうっすよ。昔使われてた諱に近いものみたいっすけど、わかるかなぁ? エージェント・一宮: ええ、わかります。で、あなたのお父様からその「忌み氏」を聞いたと? 中野: いやー、それが親父は「忌み氏」について決して話そうとはしなかったんすよ。なんでもあの集落から出た者は決して「忌み氏」を明かしてはならない、って掟があるそうなんで。 エージェント・一宮: なるほど。ではあなたは「忌み氏」をどうやって知ったんでしょうか? 中野: 親父のいた集落だけど、過疎化が進んで今や廃村なんすよ。親父の家も長男次男が相次いで早くに亡くなるし、三男の親父は帰ることを拒否しちゃったし、他の兄弟もどこにいるやら、って状態でさ。そんなわけだから親父の実家は今廃墟になってるんすよ。なんていうか、廃墟ってワクワクするっしょ?ちょうど██████大賞の応募作品のためのネタを探してたし、取材旅行気取って行ってきたんすよ。まぁ、最寄駅のローカル駅からバスに乗って2時間の山ん中で降りたときは愕然としたけどさ。想像以上に何もないところだったし、ここからさらに一時間以上歩かなきゃいけないのかって思ったら旅行気分とか吹っ飛んじまったしさぁ。 エージェント・一宮: で、その廃墟で何か見つけたんですか? 中野: まぁ、母屋ん中は全く手入れされてないまま20年以上放っとかれたからかボロボロでさ、もう日も暮れかかってたから不気味だし、正直さっさと帰りたかったんだけど、帰ろうにももうバスがなかったし。一日2本しかバスがないってどうなのよ? エージェント・一宮: 地方にはよくあることです。まだバスがあるだけマシですよ……失礼、続けてください。 中野: それでさ、夜をどこで過ごそうかって見て回ったんだけどさ、母屋の中は床とか腐ってる上になんかよくわからない獣の糞とか落ちてるし、とてもじゃないけど寝れないよなぁ、と思って外に出た時にさ、蔵があることを思い出したわけ。そういやあそこはまだ見てなかったな、と思って。 エージェント・一宮: 蔵ですか。 中野: 結構大きい蔵でさ。入口に大きな南京錠がかかってたから面倒くさいなぁ、と思って後回しにしてたんすよ。ここなら寝る場所くらいありそうだな、と思って。 エージェント・一宮: で、中には何がありました? 中野: 蔵の入口の南京錠をぶっ壊して入ったんすけど、中の物はとっくに整理されてて空っぽでさ。まぁ、とりあえず寝るところ確保しようと思って床の埃払ってたらさ、落とし戸があるの見つけちまったんすよ。 エージェント・一宮: 落とし戸、ですか。 中野: 見つけたときはおお、って思ったね。こういうの男の子ならワクワクするっしょ?んで、早速開けてみたらさ、結構しっかりした石の階段があってちょっと安心したわけ。木の階段とか腐ってそうだし、母屋を探索してた時、踏み抜いて危うく落ちるところだったしさ。 エージェント・一宮: で、下には何が? 中野: まぁ蔵の地下にあるものなんてだいたい想像はつくっしょ?座敷牢だよ、座敷牢。こういう大きな旧家には付き物なんじゃないかな。 エージェント・一宮: 座敷牢の中には何かありましたか? 中野: ううん、何もなかった。なかったけど…… エージェント・一宮: なかったけど? 中野: ……座敷牢が使われてた痕跡があった。それも多分20年位前まで。 エージェント・一宮: 何を見たんです、座敷牢の中で? 中野: ……「忌み氏」っすよ。座敷牢の壁一面に書かれた「忌み氏」。 エージェント・一宮: それは…… 中野: よくわからないけどさ、ここに閉じ込められてた誰かが書いたものなんじゃないかな。閉鎖的な集落じゃ障害者を外に出さないよう閉じ込めてたって聞いたことあるしさ。 エージェント・一宮: 座敷牢が20年前まで使われてたんじゃないか、ということですが、それはどうしてわかったんですか?それと、あなたは「忌み氏」をその時初めて見たはずですが、なぜ座敷牢に書いてあったのが「忌み氏」だったとわかったんです? 中野: 座敷牢の中に雑誌が積んであった。20年くらい前の週刊少年█████だった。座敷牢には南京錠が外からかけてあったから、あそこに閉じ込められていた誰かが読んでたんじゃないかって思うんだ。んで、「忌み氏」はさ、全部「忌み氏」の後ろに名前が書いてあったんだよ。多分あの家の人間全ての。少なくとも、親父の2人の兄貴と親父、そして自分の名前があるのはわかった……自分、あの日行くまで親父の実家行ったことないのにさ。それで、なんか怖くなって慌てて飛び出して、真っ暗な中バス停まで逃げるように走ってさ。で、バスもないもんだから駅まで歩いて、朝まで駅で過ごして始発で家に帰ったわけ。 エージェント・一宮: なるほど、経緯はわかりました。で、その「忌み氏」をあなたの作品の主人公の苗字にしようとしたのはなぜなんです? 中野: それがさ、喉もと過ぎたらなんとやらでさ、家に帰ったらなんか妙に落ち着いちゃってさ。無性にこの経験を作品に生かしたいって気がしたわけ。で、自分を主人公にして書き始めたらあれよあれよという間に書き上がっちゃって。これなら賞取れそうな根拠のない自信があったんでついそのまま応募しちゃったんだ。あれは失敗したわ、誰かに意見を聞いときゃよかったし、流石に自分の苗字そのまんま主人公の苗字にするのはどうなのよ、って気はするよな エージェント・一宮: ありがとうございました。以上でインタビューを終了します。 <録音終了> <事後処理> インタビュー終了後、中野氏の父親の実家だった廃屋へ機動部隊を派遣し、供述通りの座敷牢を発見しました。中野氏の父親とその兄弟のうち存命な者█名に対し、座敷牢に誰が入れられていたのか、その後どうなったのかについて聴取しましたが、故人である長男の中野惣一郎氏だけしか知らない、との返答しか得られず、また戸籍登録もされていなかったため特定はできませんでした。その後、座敷牢のあった蔵の地下をコンクリートで埋め立てて封鎖し、中野伸也氏をはじめとする中野家の存命な者全員にBクラス記憶処理を施しました。 補遺:インシデント629-13-1報告: 20██年11月18日、██県██村の村長選にSCP-629-JPの被験者が立候補していることが判明。機動部隊が急行しましたが、全村民の80%がSCP-629-JPの影響を受けていることが判明。記憶処理剤の空中散布により事態を収拾しました。この事案により、より大規模な収容違反が発生する可能性が懸念され、その場合対処が不可能になることが予想されることからSCP-629-JPのオブジェクトクラスはKeterに指定されました。
scp-630-jp
評価: +146+–x SCP-630-JP アイテム番号: SCP-630-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-630-JPはサイト8181の収容ロッカーに保管されています。実験を行う際にはBクラス以上の職員の承認が必要となります。 説明: SCP-630-JPは███社製のCD-Rディスクで、レーベル面に油性マーカーで「ラジオ体操スペシャル」と記入されています。ディスクの材質及び書かれた文字には分析の結果異常は見られませんでした。ディスク内にはCD-DA(音楽CD)形式で1トラック、6分40秒の音声データが収録されており、後述の異常特性を発揮する条件下にない場合は「ラジオ体操第一」および「ラジオ体操第二」が続けて再生されます。また、CDの複製、トラックデータのコピー、録音内容の別媒体へのダビングなどを行った場合、複製先の媒体は異常性を持たない事が判明しています。 SCP-630-JPが異常特性を発揮するのは、任意の再生機器によるトラック1の再生時に「通常のラジオ体操に必要な四肢・腰などの運動を支障なくこなせる状態の人間(以下対象者とする)」が、再生された音声の可聴範囲にいる場合です。この状況でも、前奏および最初の「のびの運動」の後半までは正常に再生されますが、2番目の体操の指示が始まった段階で機器の操作(再生の停止や早送り、巻き戻し、音量変更など)を一切受け付けなくなり、機器の通電を断っても未知の手段により再生が継続されます。2番目以降の体操の指示は、通常のラジオ体操第一、および第二内で行われる各体操の指示から単語を抜き出し継ぎ合わされたものになり、再生ごとに違う内容が生成されます。これは大抵の場合体操としては不自然なものとなり、人体構造上無理のある動きも含まれますが、対象者は自分の意思に関わらず指示通りの動きを強制的にさせられます。その結果、身体の損傷や意識消失により前述の条件に該当しなくなった場合、対象者はSCP-630-JPの影響から脱します。対象者の全員が影響を脱した場合、その時点でSCP-630-JPの再生は自動的に停止します。 SCP-630-JPの再生による体操の指示内容については「身体の致命的な損傷につながる動きを指示した例がまだないこと」「その一方で四肢の機能を損ない体操の中断につながる指示はほぼ確実に現れること」、さらに「指示内容に偶然とは考えにくい語句の偏りが多々含まれること」などから、完全な無作為ではなく(ある程度のランダム性を持ちつつも)何らかの基準に沿って生成されているものと推測されています。 SCP-630-JPは██県██町の町内会館で発見されました。会館前でラジオ体操を行った近隣住民18名全員が、肘関節や股関節の脱臼、上腕部骨折などにより搬送された事件が財団の注意を引き、その時使われていたCDラジカセから回収されました。SCP-630-JPを最初に発見した町内会役員は「会館の物置を整理中にこれを見つけ、試しに再生したところ普通のラジオ体操だったため利用する事にした」と述べています。この役員は慢性の腰痛を患っており、運動はほとんど出来ない状態だったためにSCP-630-JPの特性に気付かなかったと思われます。 + 異常指示の例 - 続行不能になったもののみ抜粋 「右足を後ろに曲げて体を大きく回す運動」 – バランスを崩し後方に転倒、前十字靭帯損傷。 「両足跳び、開いて、開いて、大きく開いて、左足を前に」 – 股関節唇損傷。 「両手を前に出して、はずみをつけて左に強く曲げる」 – 左肘関節を脱臼。 「左手を上げて大きく回しましょう」 – バランスを崩し側方に転倒、脳震盪による意識消失。 一応事例として載せておくが、これは被験者が勝手に転んだだけだろうな。 - ██博士 実験記録001-1 - 20██/██/██ 対象: D-630-JP-1、D-630-JP-2 備考: D-630-JP-1を配置した部屋に再生機器と集音マイクを設置、別室に配置したD-630-JP-2にマイクで拾った音声を聞かせる。 結果: D-630-JP-1、D-630-JP-2ともにSCP-630-JPの影響を受け体操を開始、4番目の「足を伸ばして正面で回し深くねじる運動」で D-630-JP-1はアキレス腱損傷、 D-630-JP-2は足首の骨折により中断。 分析: マイク越しでは特性は消えないようだ。 実験記録001-2 - 20██/██/██ 対象: D-630-JP-3 備考: 実験記録001-1で再生された音声をICレコーダーに録音、その内容をD-630-JP-3に聞かせる。 結果: D-630-JP-3は影響を受けなかった。その際、異常な体操指示も含め、実験時の音声は全てそのまま録音されていた。 分析: 再生内容をライブで聞かせるのは駄目だが、録音なら大丈夫らしい。 実験記録002-1 - 20██/██/██ 対象: D-630-JP-4 備考: 「運動可能」とみなされる条件についての検証。D-630-JP-4は両手を後ろ手に拘束した状態で配置。 結果: D-630-JP-4はSCP-630-JPの影響を受け体操を行い始め、3番目の体操の際に拘束された腕を強引に動かそうとして手首を骨折。SCP-630-JPの再生も停止。 分析: 体操が可能かどうかの判断に、外的要因は考慮されないようだな。 実験記録002-2 - 20██/██/██ 対象: D-630-JP-5 備考: 「運動可能」とみなされる条件についての検証。D-630-JP-5は密閉された室内に配置、2番目の体操開始後に麻酔ガスを室内に注入し意識を失わせる。 結果: D-630-JP-5は体操の開始直後にガスを吸入し意識を失う。同時にSCP-630-JPの再生も停止。 分析: 原因が外部からの干渉であっても、対象者の身体状態の変化には反応するわけだ。とはいえ、負傷を未然に防ぐ手段としては使えないだろう。危険と気付いてからではまず間に合わん。 実験記録007-1 - 20██/██/██ 対象: D-630-JP-12 備考: D-630-JP-12は元大道芸人で、間接外しや身体の柔軟さを活かした芸を得意としていた。 結果: 13番目の体操を終えた時点で「ラジオ体操第一」の曲が終了。続けて「ラジオ体操第二」が開始された。「第二」4番目の体操で強度の足関節外側靭帯損傷(捻挫)により中断。 分析: D-630-JP-12は「頼む、治ったらもう一度挑戦させてくれ!」と言っていた。やる気があるのはいい事だし、最後までいったらどうなるかの検証は確かに必要だが……「足を前後に反らす運動」で外側を6連発とか、クリアさせる気ないだろう、これ。
scp-631-jp
評価: +73+–x アイテム番号: SCP-631-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-631-JPは無力化されたものと考えられており、20██年よりSCP-631-JPに対するプロトコル、研究は廃止されました。旧プロトコルは添付資料を参考にしてください。 + Neutralized再分類前の旧プロトコル - 閉じる 現在SCP-631-JPの異常性を意図的に操作する方法は確立されていません。SCP-631-JP-Aを特定するために、担当職員はカウンセラーもしくは産婦人科医としてSCP-631-JP-αに潜入してください。 SCP-631-JP-α内ではプロジェクト631-JPに基づいて男女ペアのDクラス職員を居住させることになっています。各Dクラス職員にはエージェントの監視のもと、通常の職務に加えてカバーストーリー流布の補助を行わせてください。 SCP-631-JP-Cの遺体の摘出後は、SCP-631-JP-Aの記憶処理とメンタルケアを行ってください。遺体は検査を行った後に適切な処理を行ってください。 説明: SCP-631-JPは、██県███市███(以降、該当する地域をSCP-631-JP-αとする)で起きる、夢をはじめとした異常現象です。 1年に一人の頻度で、10年以上SCP-631-JP-αに住んでいる既婚者女性(以降、SCP-631-JP-Aとする)は異常性を伴う夢を見ることが判明しています。夢の中ではSCP-631-JP-Aの配偶者と同一の容姿を持つ男性(以降、SCP-631-JP-Bとする)が現れ、SCP-631-JP-A、Bは性行為を行います。この夢は約1~7日程度繰り返します。その後、現実での性行為の有無にかかわらず実際に妊娠することが確認されています。 SCP-631-JP-Aが妊娠した場合、胎児(以降、SCP-631-JP-Cとする)は通常の2倍の速度で成長します。妊娠期は約5ヶ月になると推定され、この期間はSCP-631-JP-Aはウイルスや病原菌への耐性がつくことが判明しています。妊娠4ヶ月を過ぎると出産予定日までの期間にSCP-631-JP-Cは不明な方法で胎内から消失します。消失してから2~3週間後にSCP-631-JP-Aの胎内にSCP-631-JP-Cのものと思われる白骨化した遺体が出現します。尚、SCP-631-JP-Cの遺体全てについてDNA鑑定を行った結果、各SCP-631-JP-Aと、不明な人物のDNAを受け継いでいたことが判明しています。この結果から、SCP-631-JP-Bは実在しており、何らかの方法でSCP-631-JP-Aの夢と現実に干渉しているという仮説がたてられました。現在警察との協力のもとSCP-631-JP-Bの捜索を行っています。SCP-631-JP-Bが特定されました。詳細は補遺3を参照してください。 補遺1: SCP-631-JP-Cの遺体の中には別の物質が検出された例が確認されています。以下の表は別の物質が検出された際の記録です。 SCP-631-JP-C 内容 1 数種類のハーブ類。骨の表面にナイフでつけられたものと思われる切り傷が発見された。 3 オリーブオイル、食塩。 4 食用酢。 7 菜種油。部分的に肉が残っており、一部が炭化している様子が確認された。 補遺2: 20██/10/██にSCP-631-JP-A-8が異常性を伴う夢を見て以来、SCP-631-JPの発生が途絶えました。SCP-631-JP-A-8のインタビューよりSCP-631-JP-Bに異変が起きたものと考えられています。以下の内容は、SCP-631-JP-A-8に対して行ったインタビューログです。 対象: SCP-631-JP-A-8 インタビュアー: 津軽研究員 付記: 津軽研究員はカウンセラーとして潜入していた。 <録音開始, 20██/10/██> 津軽研究員: ███1で噂されている夢についてでしたね? SCP-631-JP-A-8: はい。私、あの夢を見て、私も流産してしまうのではないかと怖くて[数秒間沈黙] 津軽研究員: とにかく落ち着きましょう。紅茶でも飲んでください。 [SCP-631-JP-A-8が紅茶を飲む。この間約20秒] 津軽研究員: 大丈夫ですか?[SCP-631-JP-A-8が頷く]では続けましょうか。そうですね、確かに女性からするとあの噂は怖いですよね。気持ちはとても分かります。夢の内容については覚えていますか? SCP-631-JP-A-8: はい。えっと、その[沈黙。研究員から視線を逸らす様子を見せる] 津軽研究員: ゆっくりで大丈夫ですよ。 SCP-631-JP-A-8: すみません。私、夢の中では裸でした。どこかわからない部屋のベッドに横になっていました。ベッドの横には同じく裸の██さん2がいました。なんだか今にも泣きそうな表情で、ベッドの上に上がってきました。彼は私をゆっくり押し倒して前戯を始めました。私の身体はうまく動かせませんでしたが、どうもそんな気にはなれませんでした。 津軽研究員: 旦那さんとの関係は良好だとお聞きしましたが、どうしてそう思ったのでしょうか? SCP-631-JP-A-8: まず、なんとなく私は彼が██さんと同じ見た目の他人のような気がしていました。次に、彼は、その、なぜか悲しそうで、苦しそうだったんです。 津軽研究員: 同じ見た目の他人?なぜそう思ったのでしょうか。 SCP-631-JP-A-8: わかりません。ただ、なんとなくそう感じたんです。彼は目線こそこちらをむいていましたが、別の何かを見ているみたいでした。[数秒間沈黙]彼の顔はだんだんと歪んでいって、最終的には手を止めて泣き始めました。 津軽研究員: 今まで何人かこの夢についてカウンセリングを行ったことがありますが、手を止めたというのは初めてですね。 SCP-631-JP-A-8: そうなのですか?ではもしかしたら噂の夢とは違うのかしら。 津軽研究員: そうかもしれませんよ。ちなみにですが、彼は何か話していましたか? SCP-631-JP-A-8: ひたすら謝ってました。「すまない、すまない」って。[数秒間沈黙]えっと 津軽研究員: 無理せず、ゆっくり思い出してください。 SCP-631-JP-A-8: すみません、彼は愛する人がいて、その人のためにしていたんだそうです。泣きながらだったのでよく声は聞き取れませんでしたが、後悔していてもうこれ以上は誰も苦しめたくない、みたいなことを言っていたと思います。償いをするつもりだとも。 津軽研究員: 償い?何か心当たりはありますか? SCP-631-JP-A-8: いえ、とくには。 [以降もカウンセリングが継続されるが、重要度が低いため省略] <録音終了> 終了報告書: SCP-631-JP-Bの発言中にある"償い"が何を指すものなのかは不明ですが、彼の発言を信用するならば今後異常性に何らかの変化がみられる可能性があります。 SCP-631-JP-A-8は妊娠していたことが確認されていましたが、胎児の成長速度が通常と同じであったことから異常性には曝露していないことが判明しました。 補遺3: 20██/3/██、███県███市██3にて交通事故が発生、車を運転していた60代の女性が死亡しました。女性の配偶者に連絡を取ろうとしたところ連絡がとれず、勤め先にも出勤していないことから警察が自宅を訪問しました。その際に玄関に鍵がかかっていなかったことを不審に思った警官が屋内へ入ったところ、リビングにて男性の遺体を発見しました。男性の頸動脈部分に切り傷があり、腹部の肉がえぐり取られていました。DNA鑑定を行ったところ、男性はSCP-631-JP-Bであることが判明しました。ゴミ箱からは血液の付着したナイフ及びメモ用紙が発見され、両方から男性の指紋が検出されました。メモ用紙には以下の内容が記述されていました。 だましてすまなかった。でも、これは僕が考えて最終的に出した結論なんだ。 君はクールー4を発症していることを自覚しているだろう?僕は君の望むままにと思っていたが、もう耐えられない。 こんなことはやめよう。彼女たちのために、子供たちのために、そして何より君のために。 これで最後だ。僕は君に寄り添おう、以前とは別の形で 夫婦は10年前に長期休暇でオセアニアへ滞在していました。当時の様子を調査したところ、夫婦の滞在地域にてSCP-631-JPに類似した現象が1件起きていたことが確認されています。 Footnotes 1. SCP-631-JP-α。 2. SCP-631-JP-A-8の配偶者の名前。 3. SCP-631-JP-αに隣接する地域 4. 女性はクールー病(クロイツフェルト・ヤコブ病 Creutzfeldt‐Jakob diseaseの類縁疾患)を発症していたため、これを指すものと考えられる。
scp-632-jp
評価: +94+–x アイテム番号: SCP-632-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-632-JPはサイト-8102の専用飼育ケージに収容し、個体数は常時100匹前後を維持します。その他の個体は発見次第処分してください。初期飼育者にはクラスA記憶処理の上でカバーストーリー「レッドリスト」を適用してください。 SCP-632-JP-Aはサイト-8141の標準人間型収容室に隔離されます。食事は高栄養のものを与えてください。室内でSCP-632-JPの飛行が確認された場合、これを阻害しないでください。SCP-632-JP-Aが死亡した場合、ただちに焼却処分してください。 なお、SCP-632-JP、-Aの担当者は作業時にガスマスクの着用が義務付けられます。 説明: SCP-632-JPはアリ科(Formicidae)の昆虫です。DNA解析の結果イエヒメアリ(Monomorium pharaonis)の近縁種であることが判明していますが、その生態は大きく異なります。体長は数μm~1mm程度(女王アリは数mm)で体全体が鮮やかな赤色です。雑食ですが、特にヒト(Homo sapiens)の血液を好みます。 SCP-632-JPは20██/██/██、東京都███市在住の男性(モンゴロイド、38歳。SCP-632-JP-A-1と指定、収容済)の自宅で発見されました。SCP-632-JP-A-1はアリ愛好家で1、インタビューに対し「輸入業者から女王アリ1匹、働きアリ20匹のセットを20万円で買った」と話しています。現在、財団はこの業者の特定を急いでいます。 SCP-632-JP-Aは、体内の血液が全てSCP-632-JPに置換されたヒトです。SCP-632-JP各個体が赤血球、白血球といった血液細胞と同様の役割を持ち、絶えず全身を駆け巡りヒトの生命活動を補助します。一方、骨髄から生成される血液細胞は全て彼らの餌となります。SCP-632-JPは以下のようにしてヒトの体内にコロニーを構築します。 大型の成体█████匹程度が寄り固まって、未知の物質で構成されるフェロモンを分泌する フェロモンを吸引したヒト(被験者)に「自分の体内でアリを飼いたい」という強い欲求を引き起こす 被験者が自傷行為を行い、死亡しない程度に血液を排出する。その後、SCP-632-JPを傷口に付着させる SCP-632-JPが体内へ侵入し、増殖する 数週間で血液のSCP-632-JPへの置換が完了する SCP-632-JP-Aは健康なヒトと比較して免疫力が高く、失血死するような重度の外傷にも耐える一方、運動能力が低下し、栄養失調に陥りやすいことが実験により判明しています。 SCP-632-JPの繁殖行動は通常のアリと比較して頻繁に(数日に1回)行われます。SCP-632-JP-Aの口や鼻から飛び立った女王アリと雄アリが結婚飛行を行い、交尾を終えた女王アリが体内に戻って心室内で産卵します。 脚注 1. 発見当時、自宅には██種[編集済]匹以上のアリが飼育されており、そのうち6種が未知の種類であった。
scp-633-jp
評価: +116+–x アイテム番号: SCP-633-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-633-JPは無力化されました。現在は研究のためにA4サイズのファイルケースに格納した状態でサイト-8181の標準倉庫に保管されています。 説明: SCP-633-JPは厚さ0μm、重さ0μg、面積不明の平面的物体です。複数層に折り畳まれた状態で発見され、展開試験の結果、面積は最低でも40億平方km以上あることが確認されています。厚みが存在しないため理論上無限に折りたたむことが可能ですが、計測器などにより圧力をかけていない場合、折り畳んだ状態の厚みは0.78mm以下には減少することはありません。厚さが存在しない物体がどのようにして3次元的に存在し、いかなる原理で積層時の厚みを保持し通常の物体と接触できているのかは判明していません。SCP-633-JPは発見当時は表面の色を不規則に変化させていましたが、現在は全体が乳白色のまま固定されています。サンプル採取は成功しておらず、組成および起源は不明です。 SCP-633-JPは19██/██/██、SCP-233-JPにおいてサイト-8136に指定された旧犀賀さいが邸内で発見されました。SCP-633-JPは邸内に巧妙に隠されていましたが、SCP-633-JPが一定のパターンの信号を複数の周波数の電波を用いて送出し始めたことで発見されました。当初SCP-633-JPに対する研究は観測のみとされていましたが、その後の調査でSCP-633-JP内には文明が構築されており、明らかに外界の電波信号を傍受して状況を把握していることが判明したため、財団職員によりSCP-633-JP内部とのコンタクトが開始されました。 SCP-633-JPはその内部または表面に2次元空間と表現するべき独自の宇宙が展開されていたと考えられています。SCP-633-JP内にはSCP-633-JP-Aに指定される知性体が無数に生息しており、発見当時の彼らの供述ではおよそ4億、最盛期には6億の個体が生息していたとされています。SCP-633-JP-Aは自身を現地語で"マトゥラ(Matoora)"と呼称し、SCP-633-JP空間における支配種族でありこの次元における人類と同等の存在であると主張しています。SCP-633-JP-Aの生活様式、生殖方法、科学技術などについては多くの情報が交換されましたが、そのほとんどは物理法則の違いや互いの宇宙において適切に表現する言葉が存在しないことから、相互理解は困難を極めました。またオブジェクトの危険度を確定することを主目的として互いの宇宙に干渉する手段の研究が優先的に行われましたが、電波による信号の送受信以外の方法で接触することは不可能であると結論づけられました。 SCP-633-JP-Aは友好的であり、調査にも協力的です。SCP-633-JP-Aは現宇宙の人類と似た生活様式及び社会基盤を構築しています。例として、彼らは家族や仕事を持ち、エネルギーを消費し、娯楽を求めています。家畜の育成や彼らの次元でいう鉱物などの産出も精力的に行われており、いくつかの国を基軸とした高度な文明社会が築かれています。しかし近年は敵対的生物(現地語で"デクマグ(Dekmag)"と呼称)の異常増加により、SCP-633-JP-Aの生活圏は急速に縮小しています。SCP-633-JP-Aは各国家が協力して敵対的生物の対応に当たっていますが、現在まで大きな成果は得られていません。 19██/██/██、SCP-633-JP-A個体の数が3億まで減少したとの報告が発生しました。これを受け、██研究員からSCP-633-JP-A保護のため戦略技術や無線装置をベースとした科学技術の提供が提案されました。 19██/██/██、提案は了承されました。 SCP-633-JP-Aからの通信1(19██/██/██): 財団職員様。財団職員様より提供いただきました技術は大変に結構なものでございました。科学技術はナムンカヌン[注:現地語で"この宇宙"を指す単語(Namn-Knnen)]用に変換する必要があり応用は困難でしたが、戦略技術は驚嘆すべき内容であり、我々だけでは何世紀かけても思い至らないような画期的手法でございました。我々はこれら技術を活用し、全人類が一致団結することでついにデクマグを主要都市から追い払うことに成功いたしました。我々の祝宴にあなたがたをご招待できないことが残念でなりません。いつまでも変わらぬ友情を、ここに誓います。 SCP-633-JP-Aからの通信(19██/██/██): 財団職員様。最近連絡が滞りがちで申し訳ありません。都市機能の混乱により、あなたがたの言語を使える人員が他の業務に充てられている状況であることをご報告いたします。デクマグの脅威は主要都市から完全に排除されました。そればかりか、我々はデクマグを捉え、家畜化することに成功いたしました。攻撃性を抑えるためにいくらかの改造が必要でしたが、財団職員様より提供いただきました技術を応用することで、十分に採算の取れる効率での施術が可能となりました。重ねて御礼を申し上げます。都市機能の混乱というのはこの家畜化に端を発しております。一部の国家がデクマグのさらなる大型化および従順化に関する技術を独占しており、経済的緊張状態が高まっております。またデクマグを高効率で駆逐してきた軍事的国家は、自国内に残されたデクマグが少ないことから、デクマグが多く残る平和的国家への侵攻を開始し始めています。しばらくはこのような状態が続くかと思われ、事態の収拾のための妙案がありましたらば賜りたく、何卒よろしくお願いいたします。 SCP-633-JP-Aからの通信(20██/██/██): 財団職員様。先日の"EMPによる電気機器障害の件"、申し訳ありませんでした。軍事国家"アデム"による大規模殺戮兵器の使用による影響の一部が財団職員様側にも及んでしまった模様です。我々の文明は衰退の一途を辿っております。デクマグ争奪から始まった戦争は世界規模で急激な資源消費をもたらし、我々の文明は今や残された僅かな資源を奪い合い殺しあう、明日の糧をも知れぬ有様です。しかし現在何よりも懸念すべきは狂信者達の存在です。戦争の後に現れた新たな宗教団体"外なる神の子"の信者たちは、この宇宙の外、つまりあなたがたの世界には豊富な資源があるはずだと信じており、次元を超えた移動を画策しているようなのです。今まで申し上げておりませんでしたが、実はかつて一人だけ、あなたがたの世界から我々の世界に降り立った人物がおりました。このことはかの者からきつく口止めされておりましたが、このような状況となってはそれも意味のないことでしょう。狂信者たちはかの者が外宇宙からナムンカヌンに訪れたのと同様に、我らも外宇宙へ移動できるはずだと信じています。しかし我らの科学者は、それは不可能であり、その試みはまたナムンカヌンに壊滅的被害をもたらすであろうことを予測しています。我らは彼らを止めねばなりません。 財団職員様も興味をお持ちになるでしょうから、今日までの御礼を兼ねて、伝承についてお伝えさせていただきます。かの者が現れた頃、我々は前時代と呼んでいますが、前時代の終焉期は現在と同じくらいに悲惨な戦争状態でありました。前時代の戦争は文明のみならず宇宙そのものに深刻な被害を与え、宇宙自体が綻び始めるほどの規模であったと記録されています。かの者はその時代に現れ、このままでは我々すべてが滅ぶことを伝えました。またかの者は、我らが手を取り合うのであれば、宇宙を修復する方法があると伝えました。我らは争いを止め、かの者にすがりました。そして幾らかの時の後、宇宙は回復し、再び安定しました。我らは再び現れたかの者に、何をしたのかを尋ねました。かの者はそれには答えず、以後また我らが互いに争うことがあれば、きっと報いがあるだろう、そのときはまた手を取り合うことを思い出せ、と述べ、以後我らの前に現れることはありませんでした。これがかの者に関する伝承のすべてです。我らは報いを受けたのでしょう。デクマグが増加を始めた頃、まだ財団職員様と出会う前のことです、実は我々はすでに戦争状態でした。しかし我々は手を取り合う前に、あなたがたに助けを求めてしまった。我々は手を取り合う方法を忘れたがために滅ぶのでしょう。しかしまだ遅くはないはずです。我々は、かの者がしたように、今一度手を取り合えるよう努めます。我々が復興するその日まで、どうかご助力くださいますようお願いいたします。 20██/██/██、SCP-633-JP全体が20秒程度の間、白色に強く発光しました。その後SCP-633-JPは乳白色に変化し、以後色の変化および電波による通信は発生していません。 20██/██/██、SCP-633-JPは無力化したと判断され、オブジェクトクラスはNeutralizedに再分類されました。 Footnotes 1. SCP-633-JP-Aとの通信はEUC-JP文字コードの日本語文字列で行われています。SCP-633-JP-Aは日本語および文字コードに関する情報を、外界の電波の傍受により習得したと供述しています。
scp-634-jp
評価: +52+–x アイテム番号: SCP-634-JP SCP-634-JPの外観。 右下の人影は撮影したDクラス職員。   [データ削除済] SCP-634-JP-1の一例。 SCP-634-JP-1自体に特異性が発見された為、画像は削除されました。(補遺1参照) オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-634-JPはその周囲10kmが原生自然環境保全地域の立入制限地区に指定されており、制限区域境界に設置された監視塔と監視衛星により常に侵入者が監視されます。侵入者が発見された場合は直ちに機動部隊により確保され、クラスA記憶処理が実行されます。 各SCP-634-JP-1は桐箱に入れられ、サイト-8181の小型物品収容庫に保管されます。 201█/12/02 追記: SCP-634-JP-1を扱う場合はサイト管理官の許可を得なければなりません。その場合、職員には手袋の着用が義務付けられる他、桐箱から取り出す時間を可能な限り短くすることが推奨されます。 説明: SCP-634-JPは██県の██平野内、座標にして███°██’██”█, ███°██’██”█に存在する建造物です。外見は茅葺き屋根の平屋であり、江戸時代の一般的な庄屋の屋敷に類似しています。 SCP-634-JPに辿り付けるのは SCP-634-JPを訪れた事がない SCP-634-JP-1(写真・映像を含む)を視認したことがない SCP-634-JP-1に物理的接触をしたことがない 上記3つの条件を満たす対象に限定されます。条件を満たしていない対象がSCP-634-JPに接近した場合、SCP-634-JPから約500mの地点で██平野内のランダムな位置にワープします。 SCP-634-JPの内部は一般的な日本様式の物であり、間取りや内装に特異な点は見られません。SCP-634-JPの内部は埃が積もっておらず清潔に保たれていますが、SCP-634-JPに人が棲んでいる痕跡は現在まで発見されておらず、内部で人影を見たという報告もされていません。SCP-634-JPの各部屋には大量のSCP-634-JP-1が設置されています。 SCP-634-JP-1はSCP-634-JPの各部屋に設置されている陶器群です。SCP-634-JP-1の形状は茶碗や湯呑みなど様々であり、色や大きさも一貫しません。各SCP-634-JP-1には裏印として[編集済]の文字が記されていますが、過去にその裏印を用いた陶芸家の記録は現在まで発見されていません(補遺2を参照)。SCP-634-JP-1の芸術的価値はほぼゼロであると専門家により鑑定されています。 SCP-634-JPへ到達した対象はSCP-634-JP-1を1点のみ持ち帰ることが可能です。2点以上持ち帰ろうとした場合、SCP-634-JPから退場する瞬間に1点を残してそれ以外がランダムで消失します。何も持たずに帰ろうとした場合、SCP-634-JPから退場する瞬間に対象の手に1点のSCP-634-JP-1が握らされます。対象がSCP-634-JPから退場した瞬間、対象はSCP-634-JPから約1kmの地点へワープします。 SCP-634-JP-1を持ち帰った対象はSCP-634-JP-1が非常に芸術的価値の高い陶芸品であると信じ、その素晴らしさを周囲の人間に宣伝するようになります1。SCP-634-JP-1の価値を否定された場合、否定した人物に対して攻撃的になり、場合によっては相手に直接的暴力を行使します。これは対象にクラスA記憶処理を施すことで回復します。SCP-634-JP-1自体に異常性は見られず、対象以外が手にしても精神影響を受けることはありません。 対象以外の人物が長時間2SCP-634-JP-1(写真・映像を含む)を視認する、SCP-634-JP-1に物理的に接触するなどした場合、SCP-634-JP-1が非常に芸術的価値の高い陶芸品であると徐々に信じるようになります(補遺1参照)。 発見: SCP-634-JP発見のきっかけは、201█/██/██に██県のローカル局で生放送された、「一般人が持ち寄ったお宝をプロが鑑定して値段を付ける」といった内容の番組です。当放送にて自身が持ち寄った茶碗を何の価値もない3と評価された████氏が異常に激昂して鑑定士に殴りかかり重症を負わせ、逮捕後も留置所内で同様の事件を複数回起こしていることが財団職員の関心を引きました。留置所にてインタビューを行った結果、██平野にて奇妙な屋敷を見つけたこと、そこで茶碗を1点持ち帰ったこと、玄関を出た途端に別の場所にいたこと、などの証言を得ました。その証言を元に██平野の探索が行われ、SCP-634-JPの発見に至りました。 実験記録: 実験634-JP-A - 201█/4/15 対象: D-142742 装備: GPS付き無線機、ビデオカメラ、各種バッテリー 手順: 無線機からの指示によりSCP-634-JPの座標まで誘導。 結果: 1時間後にSCP-634-JPに到達。GPS、無線機、ビデオカメラ共に正常に作動。ビデオカメラでSCP-634-JP内を撮影した後、職員の指示したSCP-634-JP-1を持ち帰るよう指示。指定されたSCP-634-JP-1を持ち玄関を出た瞬間、D-142742の座標はSCP-634-JPから約1kmの地点へワープした。帰還後、D-142742は職員に対してSCP-634-JP-1を財団施設の標準の備品とすることを主張した。 注記: 装備に関しては以降の実験でも同様とする。 実験634-JP-B - 201█/4/16 対象: D-142742 手順: 無線機からの指示によりSCP-634-JPの座標まで誘導。 結果: D-142742は「こんなことをしている時間はない。あの素晴らしさをより多くの人に伝えなければ」と主張し移動を拒否したが、「指示に従えばSCP-634-JP-1を財団施設の標準の備品にすることを検討する」と説得。誘導を開始するも、GPSによりD-142742がワープしたことを観測。同様の現象を4回記録した3時間後、D-142742には帰還が命じられた。その後、クラスA記憶処理を施され精神影響から回復。 研究員メモ: 同じ対象がSCP-634-JPを2度訪れることは出来ず、対象も積極的に行おうとはしないようだ。 - ██博士 実験634-JP-D - 201█/5/3 対象: D-188219 手順: 無線機からの指示によりSCP-634-JPの座標まで誘導。 結果: 1時間後にSCP-634-JPに到達。ビデオカメラでSCP-634-JP内を撮影した後、SCP-634-JP-1を持ち帰らないよう指示。玄関を出た瞬間、D-188219の座標はSCP-634-JPから約1kmの地点へワープし、その手にはSCP-634-JP-1が握られていた。帰還後、D-188219はSCP-634-JP-1の素晴らしさを熱弁し、それを適当にあしらった職員に対して暴力をふるおうとして取り押さえられた。その後、クラスA記憶処理を施され精神影響から回復。 実験634-JP-E - 201█/5/9 対象: D-158292 手順: D-188219が持ち帰ったSCP-634-JP-1を見せ、芸術的価値を感じないことを確認。その後、無線機からの指示によりSCP-634-JPの座標まで誘導。 結果: GPSによりD-158292がワープしたことを観測。同様の現象を3回記録した2時間後、D-158292には帰還が命じられた。 研究員メモ: どうやら既にSCP-634-JP-1を見たことがある対象はSCP-634-JPに辿り着けないらしい。オブジェクトの性質から推測するに、SCP-634-JPの目的はSCP-634-JP-1の価値を認めさせることのようだが…。何か引っかりを覚える。 - ██博士 実験634-JP-I - 201█/5/17 対象: D-138271 手順: 無線機からの指示によりSCP-634-JPの座標まで誘導。 結果: 1時間後にSCP-634-JPに到達。ビデオカメラでSCP-634-JP内を撮影した後、SCP-634-JP-1を持ち帰らないよう指示。この際にD-138271は2点のSCP-634-JP-1を手に引っ掛けて落下させ破損させる。次の瞬間、D-138271の座標はSCP-634-JPから約1kmの地点へワープし、その手にはSCP-634-JP-1が握られていた。帰還後、D-138271は「SCP-634-JP-1を重要文化財に指定するべきだ。担当者と話をさせろ」と主張を繰り返した。クラスA記憶処理が実行されたが回復せず、その後終了された。 付記: クラスA記憶処理を施しても対象が精神影響から回復しなかった唯一の例。 補遺1: 201█/11/27、SCP-634-JPの担当研究員である██博士がSCP-634-JP-1を自身のオフィスで使用し、研究補助員らにそれを自慢している様子がサイト管理官により発見されました。その後、██博士は査問委員会により査問にかけられました。以下はその抜粋です。 回答者: ██博士 質問者: ███管理官 <抜粋開始> ███管理官: ██博士、なぜ査問にかけられているか理解していますか? ██博士: 業務をサボっていたからだろう?確かに多少サボってはいたが少々厳し過ぎはしないかね? ███管理官: …まあ良いでしょう。何故SCP-634-JP-1を私的に使用したのですか? ██博士: あんなに素晴らしい湯呑みなんだ。使わないと失礼じゃないか。 ███管理官: …なるほど。しかし専門家は芸術的価値はほぼ無いと言っていましたね。 ██博士: それはその専門家の目が節穴なんだろうさ。 ███管理官: 貴方も以前、SCP-634-JP-1に対して凡庸な出来だと評価していたように記憶していますが。 ██博士: そんなことも言ったかな。まぁ、あの頃は私も陶芸に関する見識が浅かったからね。あれは間違いなく良い物だよ、そう思うだろう? ███管理官: …ええ、そうですね。研究補助員達はSCP-634-JP-1に対してどのような感想でしたか? ██博士: 以前は理解が無かったが、徐々に良さを分かってくれるようになったよ。見る目のある部下を持って私は幸せだね。 <抜粋終了> 査問終了後、██博士や研究補助員に対して精神鑑定や周辺調査が実施された結果、SCP-634-JP-1自体にも特異性があることが判明し、収容プロトコルが改定されました。██博士や研究補助員に対してはクラスA記憶処理が施され、担当者は変更されました。 補遺2: 202█/7/22、江戸時代の有名な陶芸家である████が、SCP-634-JP-1に記されている裏印を使用していたことを示す資料が発見されました。この陶芸家は生前は全く評価されず、死後百年以上を経て評価されるようになったことが知られています。現在評価されている████の作品が純粋な芸術的価値によって評価されているのか、SCP-634-JP-1と同種の特異性によって評価されているのかの判断は困難を極めており、調査は継続されています。 Footnotes 1. これは対象が持ち帰ったSCP-634-JP-1のみではなく、全てのSCP-634-JP-1を素晴らしいと信じるようになります。 2. 正確な時間は現在の所不明。はっきりした影響が現れるのは少なくとも累計で数十時間以上だとみられています。 3. 鑑定結果は200円でした。
scp-635-jp
評価: +69+–x アイテム番号: SCP-635-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-635-JPは西経██度、北緯██度の地点にある半径2kmの範囲に隔離されます。 対象は併設された管理施設にて管理され、施設周辺および管理施設は財団所有の電力会社の変電所に偽装されます。周辺警戒中のセキュリティー担当者は一般人の接近を阻止してください。 説明: SCP-635-JPは年齢57歳、身長176cm、体重50kgの日本人男性です。対象は本名を██ 邦義と言い、戸籍調査を実施した結果身元が判明しました。SCP-635-JPは24年前の東京都品川区近辺での目撃情報を最後に失踪しており、しかし、失踪届や捜索願などが提出されていなかったことから財団に発見されるまで全国を放浪していたと思われます。対象自体にはある一点を除いて何ら体質的な異常性は見られず、通常の人間と大差ありません。しかし、その異常性から屋外での収容が必須であり、現在SCP-635-JPが発見された区画を封鎖して収容体制を維持しています。 SCP-635-JPの異常性は1日に1回観測1され、対象の半径5m範囲内の上空から成人女性の遺体が落下してきます。遺体の身元は19██/11/7に自宅マンションから飛び降り自殺をした██ 良子氏本人であることが判明しており、遺体は着地後も消失することなく存在し続けます。その為、SCP-635-JPがそれらを消費しない場合は同様の容姿やDNAを保有した遺体が増加し続け、SCP-635-JPが消費すること以外で対象を処分することは出来ません2。 SCP-635-JPのもう1つの異常性として、常に空腹状態でありかつ落下してきた遺体以外の摂食が制限されるという異常を有しています。もし、SCP-635-JPが遺体以外の物を摂食しようとした場合、それらの物品は全て口内で汚泥へと変化し、対象は即座に変化した摂食物を吐きだします3。結果、SCP-635-JPは常に落下してきた遺体のみでしか栄養補給が出来ず、偏った栄養摂取の為外見は大変痩せています。またそれらを摂食したとしても空腹状態は継続され、その為かSCP-635-JPは遺体の骨以外の部位全てを消費します。 現在、これらのメカニズムの解明および死体出現の瞬間などを捉える試みは失敗しています。しかし、着地時の遺体の状況などから、およそ12mの高さからの落下であることが判明しており、これらは██ 良子氏の飛び降りたマンションの高さと完全に一致しています。 補遺: SCP-635-JPは 2016/3/18に██山を散策していた一般人によって発見されました。当時、その付近では猿人が出現するという噂が広まっており、当初は財団もそれに該当する実体の調査を行っていました。その後、財団エージェントと研究員が対象を発見。捕獲した際に調査を進めた結果、前述の異常性が発覚し即座に収容体制が確立されました。 現在、SCP-635-JPには人体摂食(特に脳の摂食)に伴い発症するクールー病と類似している症状が見られます。それらの症状は主に、手足の震え・発音障害やどもり・歩行不可能なほどの運動失調等が該当し、また、眼球の不自然な挙動や妄言、突如笑い出すなどの症状から脳への障害も伺えます。 これらの症状はクールー病における第二段階目に該当しており、本来であるならば既に死亡している段階であるにも拘らず、SCP-635-JPの症例はそれらとは異なり第二段階の状態を常に維持し尚且つ重度の症状を抱えながらも生存し続けています。現在これらの病例に関しては、クールー病も含め治療法が確立しておらず、これらの治療を行うための研究も並行して行われています。 以下はSCP-635-JPとの間で行われたインタビューの映像記録です。 + SCP-635-JPインタビュー記録001 - 閉じる 対象: SCP-635-JP インタビュアー: 沼間博士 付記: 場所は管理施設内部にある取調室。インタビューは異常発生の3時間前に行われました。 <録音開始> インタビュアー: どうも██さん。 SCP-635-JP: [驚いたような動き]……だ、誰だ……!? インタビュアー: 私は沼間と言います。今日はあなたに聞きたいことがあってまいりました。 SCP-635-JP: き、聞く……?[手足が震え、呂律が回らない]こ、この、お、俺に、は、話……? インタビュアー: はい。あなたとお話がしたいんです。 SCP-635-JP: [挙動不審な動き] インタビュアー: 私は何故あなたがそういった状況に陥ったのか、その原因を知りたいんです。お願いします。教えてください。 SCP-635-JP: そ、それを、き、聞いて、な、何に、なる……! インタビュアー: もしかしたら、あなたのその症状や状態を解決する糸口になるやもしれません。現に、私達はあなた以外にも多くのあなたのような状況で苦しんでいる人々を匿っています。ですから、あなたの過去を私達に教えてください。 SCP-635-JP: お、おお、俺の、か、過去を、お、お前らに……? お、俺、の? インタビュアー: そうです。お願いします。協力してください。 [6秒間の沈黙] SCP-635-JP: [眼球が左右に動く]……お、俺は…こ、こんな、こんな、み、惨めな、生活、を送る、べき…に、人間じゃ…ない…! そ、そうなる、べきじゃ、無かったんだ……! インタビュアー: ええ。 SCP-635-JP: お、俺は、昔は、しょ、商社マンだった…! か、金も、持ってた。ば、バブルの、波に、乗って……か、稼いで、稼ぎ、まくった…! い、家も、金も、お、俺は、ぜ、全部、持ってた……! インタビュアー: はい。勤めていた会社についても調べてあります。 SCP-635-JP-: お、女に、だって…こ、困った、事は、無かった……! インタビュアー: ……はい。 SCP-635-JP: い、言い寄って、来る…お、おお、女は、あ、後を、た、絶たな、かった……さ!ぜ、 全員、お、俺の金、が、め、目当て、だった……んだろう……よ。そ、そそ、その中でも……よ、よく、つつ尽くす奴は、いたが。しょ所詮は、あ、遊び、だ……! お、俺だって、ほ本気じゃ、無かった……! インタビュアー: ……では、それがどういう訳で、このような事態に? SCP-635-JP: あ、ある日、おお、俺に、え、縁談が、来たんだ……。 インタビュアー: つまりお見合いですか。 SCP-635-JP: と、取引、先の……しゃ、社長令嬢、だった……! な、なにせ、と、当時の、俺は……や、や……やり手の、しょ、商社マン、だったんだ……! し、仕事も、できて……か、金にも、め、恵まれて、た……! の、能力、だって……! お、俺は、い、一流、大学を、出て……よ、世の中、から、え、え選ばれた……え、エリート、なんだ……! インタビュアー: で、その方と結婚を? SCP-635-JP: [突然机を叩く] インタビュアー: ……出来なかったと。 SCP-635-JP: ぜぜ、全部、全部、よよよ良子の、所為だ! あ、あの、あの女の、所為で、ぜ、全部……お、俺の、人生……ぜ、全部、とち狂った! お、俺が、あ、あいつを、捨てて……け、結婚する、はずだった、女の……な、名前は、もう忘れた、が……と、兎に角、その、お、おん、女のとこに、行くと、い、言ったら、あああ、あいつ、な、泣き、わめき、ながら……お、俺に、す、縋り、付いて来て……! あ、あんな、か、顔も、大したこと、なくて……か、体しか、と、とり得の、ない、女が……お、俺と、つ、釣り、釣り合うわわ訳が、な、ないのに……! 煩わしい……! インタビュアー: では、██ 良子さんが自殺した原因というのは、あなたが彼女を振ったから、という事ですか? SCP-635-JP: あ、あいつが、か、勝手に……そ、そう勝手に、し、死んだんだ! お、俺、俺は……何も、しちゃあ、いない! な、なのに、あああいつ、ああ! クソ! 何で、何で、ああいつの、ま、ま、マンションが、お、俺の、つ通勤ルートの……と、途中、なんかに、あ、あったんだ! あ、あいつ、お、俺が通り、か、かかるのを、見計らって! お、俺の、目の前で……と、飛び降りやがった! い、今でも、よ、良子の姿が、脳裏に…ああああ、クソが! そ、それからだ! そ、それから、な、何も、かもが……お、おかしくなった! な、なに、何も、く、食えなく、なった! く、食い物、が! く、口の、中で、ど、泥に、なって……! ……そして、あ、ある時、あ、あいつが……また、お、俺の、め目の前に、あ、現れやがって……! あ、あい、あいつ、が……し、し、死んだ、あ、あの、あの、あの時、みたく……い、いや、ま、全く、お、おお、同じに……! あ、ああ、ああ! く、クソ、クソが! インタビュアー: それは、普通の物が食べられなくなってから何時の出来事ですか? SCP-635-JP: し、知るか! ししし知ったこっちゃ、ない! お、おれ、俺は、よ、よし、良子の所為、で、じ、人生を、ぼ、ぼぼ、棒に、ふ、振ったんだ! く、クソったれの、あ、あばずれ、が! て、低所得、の……く、糞女! なな、なんで、何で俺が、あ、ああ、あんな女、ごときに……! クソが!く、くく、く、クソったれが! [SCP-635-JPが錯乱状態に陥ったため、鎮静剤が投与された] SCP-635-JP: く、クソ……お、俺の人生……人生が……。 インタビュアー: ……今日はここまでにしましょう。 <録音終了> 補遺2: 2017年現在、SCP-635-JPのホルモンバランスの変化が伺えます。現在、対象の男性ホルモンは減少傾向にあり、それに反比例して女性ホルモンの分泌が増加しています。その為、対象の男性器の縮小や少なからずの乳房のふくらみ、頭髪の成長などの外見的変化が見られます。またそれに伴い若返りも見られます。 SCP-635-JP担当研究員はこれらの変化を記録し経過を観察することが担当委員会により決定しています。これらの記録を閲覧する場合は主任研究員の沼間博士の許可を得たうえで閲覧してください。 追記: 以下の記録は担当職員でかつクリアランスレベル3以上の職員のみが閲覧可能です。 + セキュリティークリアランスの承認が必要です - 承認しました SCP-635-JPには██ 邦義氏以外の別人格が存在しています(以下、SCP-635-JP-2とする)。なお、これらの情報はSCP-635-JPに対して精神的な障害を発生させる可能性が極めて高いと予想されたため、SCP-635-JP本人にはもちろんの事、情報漏洩防止の観点から限られた職員のみ閲覧が可能となります。 SCP-635-JP-2は自殺した██ 良子氏と同様の記憶を有しており、人格の交代が行われた際は未知の原理でSCP-635-JPの発する声が女性の物へと変わります。現在、SCP-635-JP-2は不定期に出現していますが、SCP-635-JPの女性化が進むにつれて出現頻度の増加が確認されています。 以下はSCP-635-JPの別人格へと行ったインタビューの映像記録です。 SCP-635-JP-2インタビュー記録 対象: SCP-635-JP-2 インタビュアー: 沼間博士 付記: このインタビューは第5回目のインタビュー記録になります。なお、この人格が出現した場合のみSCP-635-JPの症状が完全になくなります。 <録音開始> インタビュアー: どうも、お久しぶりです。██ 良子さん。 SCP-635-JP-2: [声が女性の物へと変わっている]はい、沼間博士。お久しぶりです。 インタビュアー: それで、最近の調子はどうですか? SCP-635-JP-2: まあまあ、ですかね。……こんな状況でこんなことを言うのもおかしな話ですが。 インタビュアー: いえいえ、そんなことは。…それでは、いつも通りいくつかの質問に答えてもらいます。よろしいですね? SCP-635-JP-2: はい。 インタビュアー: では……。あなたが自殺して以降、あなたの自我が目覚めたのはいつ頃ですか? SCP-635-JP-2: ……多分、あの人が私を食べ始めてからだと思います。 インタビュアー: そもそも、あなたには元々そういった能力があったのですか? SCP-635-JP-2: いいえ違います。自分でも驚いているぐらいです。……それに、最初からこんな特別な力があったのなら……多分あの人を引き留めることぐらい出来ていた筈です……。 インタビュアー: ……なるほど。……お言葉ですが、あなたは今でも、██ 邦義さんのことを……? SCP-635-JP-2: ……はい。愛しています。 インタビュアー: ……私が言うのもあれですが、彼はあまり人格者であるとは言えません。今までの言動から推察するに、あなたと一緒になる前も彼はああいう口振りだったのではないのですか? SCP-635-JP-2: ……ええ。そうです。 インタビュアー: そして、あなたが自殺に至った原因自体も、彼の自分勝手な行動であることに間違いありません。それに関しても、以前のインタビューでもあなたはそうおっしゃっています。 SCP-635-JP-2: ……それでも、彼を愛しているんです。 インタビュアー: それは何故です。 SCP-635-JP-2: [沈黙] インタビュアー: 答えてください。 SCP-635-JP-2: ……たとえ、それが遊びだったとしても…彼は私を求めてくれてた最初で最後の人です。そんな人と永遠に一緒になる。それ以外の喜び、それ以上の喜びを私は知りません。確かに、彼はあまり褒められた人間ではありません。簡単に人を蹴落とすし、誰かを傷つける事も沢山してきました。……ですが、それでも私は彼のことを愛し続けたいんです。それは、彼の前で死んだあの時も同じです。彼の心の中に居続けたい、だから、あの時彼の前で死のうと思ったんです。……そう思える人と出会えたことが、私にとってかけがえのない事だったんです。 インタビュアー: 彼は今もなお、あなたの事を否定し続けています。 SCP-635-JP-2: ……知っています。 インタビュアー: それでもあなたは、続けるおつもりですか? SCP-635-JP-2: ……それが、死んだ私に残された唯一の愛情表現ですから。それに……。 インタビュアー: ……それに? SCP-635-JP-2: ……彼、私の名前だけは未だに覚えてくれてるんです。[微かに微笑む] <録音終了> 終了報告書: SCP-635-JP-2の出現は不定期に行われます。再度、SCP-635-JP-2が出現した場合は沼間博士によるインタビューが行われます。 脚注 1. 発生時刻はおよそ午後6時35分 2. 焼却や化学薬品等を用いても処分は不可能でした。 3. 点滴などの経口摂取以外の方法を行った場合も薬液が体内で汚泥へと変化したため急遽治療が行われました。
scp-636-jp
評価: +70+–x アイテム番号: SCP-636-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-636-JPのサンプルは標準的なバイオハザード封じ込め手法に従い生物サイト-8102の収容室に収容されています。SCP-636-JPに関する研究は原則として同サイトで行うものとします。 現在、特別対策チームが結成され、厚生労働省及び農林水産省と連携してSCP-636-JPの監視・防疫を実施しています。詳細については資料636-JP-Aを参照して下さい。同資料は担当職員にのみ開示され、担当外の職員による閲覧には特別対策チームリーダーまたはBクラス以上の職員の許可が必要です。現在のチームリーダーは水無月博士です。 財団の管理外でSCP-636-JP-1の発生が確認された場合、標準的カバーストーリー「日本脳炎」に従いSCP-636-JP-1を収容し、治療を施した後、記憶処理を施した上で解放します。治療中はSCP-636-JP-2の発生を防止する為、アイマスクを用いてSCP-636-JP-1の視覚を遮断して下さい。収容の過程で発見されたSCP-636-JP-2は破壊または除去し、関係者・目撃者に対しては記憶処理を施した上で、状況に応じたカバーストーリーを適用するものとします。 説明: SCP-636-JPはフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるウイルス及びそのウイルスによって引き起こされる脳炎です。感染経路についてはコガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)による媒介のみが確認されており、それ以外の感染経路は確認されていません。潜伏期は7~14日程で、発症後、感染者(SCP-636-JP-1に指定)は高熱と意識障害に陥ります。治療方法は対症療法のみで、致死率はおよそ5%です。SCP-636-JPは感染力が非常に弱く、これまでに確認されたSCP-636-JP-1の██%が免疫力の低い児童及び老人であり、成人の発症例は█%程でしかありません。 SCP-636-JPの異常な特性はSCP-636-JP-1にパレイドリア効果1を始めとする錯覚が起きた際に発生します。錯覚の対象となった物体(SCP-636-JP-2に指定)は3~10分程の時間をかけてSCP-636-JP-1の錯覚に基づく形へと変形します。変形は対象物周辺の物質を利用し、その物性や構造・機能を無視して行われる為、発生箇所によっては人体・機械装置に対して致命的な事象を引き起こします。この現象はSCP-636-JP-1がSCP-636-JPを発症している間のみ発生し、治癒した後は起こらない事が確認されています。 + SCP-636-JP-2の発生例 (一部抜粋) - 閉じる 636-JP-2-019 - 195█年██月█日 感染者: 636-JP-1-020 / 5歳女児 発生時の状況: 自宅にて療養中に天井の木目をヒトの顔と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 天井の木目が抽象的なヒトの顔の形へと変形。検査により周辺の木材の密度が低下している事が判明。 処置内容: 天井板を交換し除去。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。カバーストーリー「天井板の腐食」を適用。 636-JP-2-030 - 196█年█月██日 感染者: 636-JP-1-034 / 8歳男児 発生時の状況: 医療施設に入院中、治療に当たっていた医師の掌の縫合痕をヒトの口と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 縫合痕がヒトの口唇と歯に変形。検査により周囲の皮膚及び中手骨を利用して形成されたものである事が判明。中手骨については骨密度の低下が見られた。 処置内容: 外科手術により除去。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施した。男児についてはSCP-636-JPの発見を避ける為に財団医療施設へと移送し治療を行った。 636-JP-2-051 - 197█年█月██日 感染者: 636-JP-1-060 / 12歳女児 発生時の状況: 修学旅行中、栃木県██市の██の滝の岩壁にヒトの顔があると認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 岩壁の一部がヒトの顔の形へと変形。 処置内容: 爆破処理を行い除去。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。カバーストーリー「侵食による崩壊」を適用し、現地の観光案内にもその旨を記載した。 636-JP-2-073 - 198█年██月█日 感染者: 636-JP-1-082 / 78歳女性 発生時の状況: 自宅の庭に植えられている複数のロサ・キネンシス(Rosa chinensis)の中心部から目が覗いていると認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 複数のロサ・キネンシスの花弁の中心部がヒトの眼球に変形。強膜から瞳孔にかけては模様の形をとっていた。 処置内容: 関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。カバーストーリー「病害虫による異常」、「防疫の為の伐採」を適用し、影響を受けた株を除去した。 636-JP-2-105 - 198█年█月█日 感染者: 636-JP-1-130 / 26歳男性 発生時の状況: 勤務中、ワープロのディスプレイに表示された数列を顔文字と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 当該部分の液晶が浮き上がる形で変形。 処置内容: 関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。カバーストーリー「液晶の不良」、「熱による変形」を適用し、メーカー担当者を装った職員がワープロの交換時に回収した。 636-JP-2-149 - 198█年██月█日 感染者: 636-JP-1-175 / 6歳男児 発生時の状況: 自宅にて療養中、家の前に停車していた宅配業者の車両の左後輪を歯車と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 車両の左後輪が歯車の形へと変形。走行に支障を来したが、ドライバーが異常に気付き即座に停車した為、事故等は発生せず。 処置内容: 不良品の交換を名目として除去。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。 636-JP-2-170 - 198█年█月██日 感染者: 636-JP-1-200 / 5歳男児 発生時の状況: 父親と共に入浴中、父親の左胸にあった心臓手術の縫合痕をファスナーと認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 縫合痕がファスナーへと変形。父親がパニック状態に陥った拍子にファスナーが開き、心臓が体外へ露出した。除去後の検査により、ファスナーは肋骨の成分を使用し形成されたものである事が判明。 処置内容: 手術中に除去。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。男児については露出した心臓を目視した事による精神的ショックが大きかった為、クラスCの記憶処理を行った。 636-JP-2-197 - 199█年█月█日 感染者: 636-JP-1-228 / 30歳男性 発生時の状況: 化学工場での作業中、工場設備の一部をヒトの顔と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 設備の一部がヒトの目・鼻・口の形へと変形。この変形により設備の配管が破損し、爆発事故が発生。17名の死者、29名の負傷者を出した。 処置内容: 爆発により自己終了した。関係者・目撃者にクラスBの記憶処理を実施。現場検証の最中、地元警察及び消防に潜入した職員が変形した設備の破片を回収。 636-JP-2-282 - 199█年█月██日 感染者: 636-JP-1-318 / 10歳男児, 636-JP-1-319 / 11歳男児 発生時の状況: 移動教室で訪れた群馬県██村の宿泊施設にて療養中、部屋を訪れた女性教諭をそれぞれ自分の母親と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 女性教諭の顔面が骨格を含めて著しく変形した。左右の差異が大きく、部分的にではあるがそれぞれの男児の母親との類似点が見られた。 処置内容: 整形手術、再生治療により回復。関係者・目撃者にはクラスBの、男児2名と女性教諭にはクラスCの記憶処理を実施。カバーストーリー「悪性腫瘍」を適用。 備考: 複数のSCP-636-JP-1によって1つのSCP-636-JP-2が発生した初の例。 SCP-636-JPは194█年█月█日に██県██市在住の主婦が「脳炎で倒れた息子の看病をしている最中、腕に突然人の顔のようなできものが現れた」として病院に受診に来た事をきっかけとして財団に収容されました。以降、夏季を中心として1年に█件の割合で発症が確認され、201█年時点で███体のSCP-636-JP-1、███例のSCP-636-JP-2が確認されています。 媒介者となるコガタアカイエカが日本国内に広く分布し、SCP-636-JPへの感染を完全に予防するのが困難である事から、196█年にコガタアカイエカの絶滅によるSCP-636-JPの根絶が提案されましたが、絶滅と隠蔽に必要となるコストを理由にO5により却下されました。また198█年にはSCP-636-JPのワクチンの製造及び接種による予防計画が立案されましたが、ワクチンの接種によりSCP-636-JP-1が発生するリスクが増大するとしてO5により却下されています。 補遺: 198█年以降、SCP-636-JP-1の発生例が増加傾向にあり、世界的な気温上昇に伴う蚊の個体数増加との関連が指摘されています。 + 追加情報へのアクセス: 要セキュリティクリアランスレベル2/636 - アクセス記録中 636-JP-2-478 - 20██年█月█日 感染者: 636-JP-1-603 / オスのニホンザル(Macaca fuscata)、3歳 発生時の状況: 東京都恩賜██動物園にて、来園者の女性が抱きかかえていた1歳男児を群れの仲間と認識した事で発生したものと推定。 変形の詳細: 男児の全身がニホンザルへと変形。骨格も変形していたが器官についてはそのままであった。 処置内容: 頭蓋骨の変形を原因とする脳出血により自己終了した。関係者・目撃者にはクラスBの、男児の母親である来園者の女性にはクラスCの記憶処理を実施した。本事例を受けて同園で飼育されていた全ての動物に対し検査を行った結果、636-JP-1-603以外に6体のSCP-636-JP-1が発見された為、生物サイト-8102に収容した。発見されたSCP-636-JP-1はいずれも哺乳動物であった。 備考: ヒト以外での初めての感染例となる。これを受けて監視・防疫体制が強化された。 Footnotes 1. 錯覚の一種。雲の形や壁のしみ等が顔や動物に見えるといった、不定形の対象物が別のものに見える現象。
scp-637-jp
評価: +49+–x アイテム番号: SCP-637-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-637-JPはサイト-81██の専用収容室(15x15m)の中央に設置されています。室内では常時2匹のイエネコ(Felis silvestris catus)を飼育し、減少した場合はただちに補充してください。ただし、次のイエネコの曝露が確認されるまで、収容室内に入室してはいけません。 説明: SCP-637-JPは「猫ちぐら」と呼ばれる稲わらを編んで作られた猫用の寝床です。201█年に新潟県██市内の民家で発見された際、民家の敷地には████匹のイエネコが密集し侵入を試みていました。住人の女性の行方はわかっていません。 SCP-637-JPを視認、または直接接触したイエネコ(以下「対象」)は、SCP-637-JPを寝床にするようになります。曝露した対象は徐々にSCP-637-JPの外で活動する時間が減少し、5、6日程で完全にSCP-637-JPから出なくなります。そして、曝露から7日目に消失します。対象の首輪や体内に埋め込んだGPS発信機はSCP-637-JP内部に残り、追跡の試みはこれまで全て失敗しています。なお、一度にSCP-637-JPに曝露する対象は1匹のみです。 対象がいない場合、SCP-637-JPは活性化し、不明な方法で周囲のイエネコを呼び寄せます。この効果はSCP-637-JPを完全密封しても遮蔽することができず、視覚、聴覚、嗅覚を喪失させたイエネコも影響を受けます。有効範囲は毎秒約1cm拡大し、1時間で半径約40mに達しますが、イエネコをSCP-637-JPに曝露させると非活性化します。この異常性により、SCP-637-JPを収容しているサイト-81██の周囲に大量のイエネコが集まる事案が発生したため、常に収容室内でイエネコを飼育する現在のプロトコルが制定されました。 補遺: 曝露末期の対象の脳波から視覚情報の映像化を試みたところ、SCP-637-JP内部に人影のようなものが映し出されることが判明し、解析を進めています。 + 担当職員のみ閲覧可能 - 閲覧終了 事案記録637-JP-1 日付201█年03月12日 201█年03月12日、SCP-637-JP収容室にて飼育中のイエネコのうち1匹が問題なく消失した直後、SCP-637-JP内部の清掃のため収容室に入室していた担当の██研究員が突然、横たわってSCP-637-JPに頭を突っ込む、四つん這いになって四足歩行する、キャットフードを食べる等の異常行動を取り始めました。駆けつけた他の職員が取り押さえようとしたところ奇声を発して飛びかかり、手や顔を引っ掻き抵抗しました。██研究員は鎮静剤を打たれ大人しくなったところを拘束され、尋問室にてインタビューを受けました。以下はその内容です。 インタビュー記録637-JP-1 日付201█年03月12日 対象: ██研究員 インタビュアー: 田代研究主任 <記録開始> 田代研究主任: インタビューを開始します。……あの、聞いてますか? ██研究員。 ██研究員: おああーん。 田代研究主任: ふざけないでください。貴方、自分が何をしたのか分かっているのですか? ██研究員: [無言。自分の手を舐め、髪をいじる。暫く同じ行動を繰り返す] 田代研究主任: [無言] ██研究員: ……ん? あれ? ここは? 田代研究主任: あっ、大丈夫ですか、██研究員。ここは尋問室です。覚えていないのですか。 ██研究員: えっと……私、猫のアレの掃除に行って、それから……[数秒間考慮]うそ、覚えてない。 田代研究主任: [溜息]わかりました。その、貴方が何をしていたのかは、不用な混乱を招く恐れがあるため説明を省きます。 ██研究員: やだ、私なんか酷いことしたの!? 田代研究主任: ……その件は一旦忘れてください。別の話をしましょう。貴方は先程、SCP-637-JPの収容室に清掃に行きましたね。その時のことを、覚えている限りで話してください。 ██研究員: えーと……[数秒間考慮]1匹がいなくなったのをモニターで見てから部屋に入って、SCP-637-JPの方に掃除用具を持って近づいていったでしょ。もう1匹の子はあの時、隅で寝てたのを見てる。あの子が来ないうちにやらせてもらおうと思って。それで、中を覗き込んで……ごめんなさい、そこから先はちょっと。いや、待って。確か……声がしたような。 田代研究主任: 猫の鳴き声ですか。それとも―― ██研究員: ううん、猫じゃない。あれは……ああ、思い出した。人間の声よ。 田代研究主任: 何と言っていたかわかりますか。 ██研究員: 待って……[十数秒間沈黙] 田代研究主任: ああ、思い出せないなら結構で―― ██研究員: おああーん。 田代研究主任: は? ██研究員: [おもむろに椅子から横へ飛び退き、床に膝を突いて座る。田代研究主任を見上げる]おああああーん。 田代研究主任: ……インタビューを中止します。 <記録終了> 終了報告書: この後、██研究員にクラスA記憶処理を実施。以降、異常な行動を示さなくなりました。██研究員はSCP-637-JP担当から外されました。 事前の実験では、イエネコ以外の動物が曝露することは無いという結果が出ており、今回の異常行動は想定外でした。そのため、██研究員の曝露前の行動に焦点が当てられました。Dクラス職員を対象としたいくつかの追加実験の結果、曝露末期の対象の脳波から映像化された視覚情報を閲覧した被験者のみ、SCP-637-JPに曝露するという結果が得られました。 実験記録637-JP-██ 日付201█年03月██日 被験者: D-96125(40代、男性。イエネコ飼育歴がある) 実施方法: 曝露末期の対象の脳波から映像化された視覚情報を閲覧させ、その後██研究員と同様の状況でSCP-637-JPに曝露させる。以後、収容室にて経過を観察する。 結果: 以下参照。 1日目 D-96125は数分~数時間置きに異常行動を発症。収容室内の猫用遊具で遊ぶ、四足歩行で室内を駆け回る、壁で爪を研ぐなど。非発症時はもう1匹のイエネコの世話や遊び相手をし、食事も人間のものを問題なく完食。田代研究主任のスピーカーからの質問に対しては「居心地は悪くない」「猫になってるときの記憶が無いのは惜しい」と回答。夜はSCP-637-JPを枕に就寝。 2日目 異常行動発症の頻度と継続時間が増加。食事に対して「味が落ちた」と訴え、ネギの味噌汁に口をつけず。非発症時でもキャットフードを好んで摂食するようになる。数回、「誰かに呼ばれている気がする」と訴える。SCP-637-JPでの睡眠時間が増加。 3日目 発症時間が覚醒時の8割以上を占める。食事は全てキャットフードになる。D-96125は「おばあちゃんの声がする」としきりに訴える。 4日目 朝、「夢におばあちゃんが出てきた。猫ちぐらを編んでいて、周りに同じのがいっぱいあった。猫に囲まれて幸せそうだった。俺も早く行きたい」と発言。これを最後に、D-96125は一切の人間的行動を取らなくなる。一日の大部分をSCP-637-JPの傍で過ごす。身体が縮み始める。なお、この段階まで進んだ被験者に記憶処理は無効であることを確認済である。 5日目 D-96125がSCP-637-JPから完全に離れなくなる。身体がさらに縮み、体表が毛で覆われ始める。さらに骨格に変化が現れる。 6日目 D-96125の形態が完全にイエネコのそれとなる。血液を採取したところ、97%イエネコのDNAとなっていた。体長も成猫程度になり、SCP-637-JPに初めて全身が入る。 7日目 D-96125が消失。
scp-638-jp
評価: +3+–x アイテム番号: SCP-638-JP オブジェクトクラス: Euclid SCP-638-JP 特別収容プロトコル: SCP-638-JPはサイト-8170の中型鳥類用標準収容房にそれぞれの個体が接触できないよう1羽ごと個別に収容してください。SCP-638-JPには食事として肉食鳥類用標準飼料を自動給餌器にて与えてください。 SCP-638-JPの収容房内に入る必要がある場合は、必ず表面が超撥水性1を持つよう加工された防護服を着用する必要があります。 説明: SCP-638-JPはワタリガラス(Corvus corax)に近縁なカラス属の未記載種です。SCP-638-JPの嘴の先端と足の爪は鋭く尖っており、この種が積極的な捕食者であることを示します。 SCP-638-JPが頭胴長10cm程度以上の動物(以下、対象と呼称)の上空を通り過ぎた時、対象は「ものすごく嫌な予感」と形容される感覚2に襲われ、その場を動きますが、SCP-638-JPが飛んでいた高さに関わらず約1秒後に鳥の排泄物に類似した物体(以下、SCP-638-JP-1と呼称)が対象に直撃します。 この時SCP-638-JPがSCP-638-JP-1を直接排出する様子は確認されておらず、対象の上方約40cm付近に突如として出現することが判明しています。SCP-638-JP-1は非常に粘性が高く、身体から剥がすにはかなり手間がかかるうえ、強い悪臭を放つため、対象に多大な不快感を与えますが、それ以外の点についてはほぼ無害です。 SCP-638-JPの体表面は超撥水性を持っており、これによりSCP-638-JP-1が粘着しないようになっています。研究によってSCP-638-JP-1は一般的な超撥水加工が施された面に対してはほとんど粘着できないことが判明しており、現在収容プロトコルに利用されています。 SCP-638-JPは19██/██/██、北海道██群██町に人にフンを当てるのが非常に上手い3カラスがいるとの情報を得た財団エージェントが調査に向かい、その存在を確認しました。 第一次捕獲作戦の際、1000羽以上のSCP-638-JPが集団で捕獲部隊員にSCP-638-JP-1を大量に浴びせ、対象が行動不能になったところを一斉に攻撃するという行動を行い、第一次捕獲部隊員のうち█人が死亡、██人が重症を負うという結果となり、第一次捕獲作戦は失敗に終わりました。この失敗を受け、武装した特殊部隊による第二次捕獲作戦が実行され、計████羽の生きたSCP-638-JPと████体のSCP-638-JPの死骸を回収しました。 捕獲作戦後、SCP-638-JPの営巣地であったと思われるエリアからは少なくとも███人分の人骨と大量の付近に生息している動物の骨が発見され、その中には200年以上前の人骨と思われる骨片も含まれていました。この発見を受けて周辺地域の伝承などを調査した結果、周辺地域に伝わるユーカラ4に「糞を人間に当てて弱らせてから集団で食い殺す大ガラス」についての言及が発見され、かなり以前からこの地域で人間を襲っていたことが判明しました。 のちの研究で第一次捕獲作戦時の襲撃行動はSCP-638-JPが大型の獲物を狩る際の行動であることが判明しています。 Footnotes 1. 高度な撥水性によって面に対して150°を超える接触角で水滴が接する現象のこと 2. ヒト以外が対象である場合もこのような感覚を覚えると推測されています 3. 通常鳥の排泄物がヒトに直撃するのは非常に稀なことです 4. アイヌ民族に伝わる叙事詩の総称
scp-639-jp
評価: +53+–x
scp-640-jp
評価: +107+–x アイテム番号: SCP-640-JP オブジェクトクラス: Safe Neutralized 収容直後に撮影されたSCP-640-JP-1 特別収容プロトコル: SCP-640-JPは現在サイト-81██の収容ロッカーに収容されています。SCP-640-JPはその異常性のため、実験以外での持ち出しを禁止します。SCP-640-JPを持ち出す際には、実際にSCP-640-JPの異常性が現れなかったと判明している人物か、異常性の効果が及ばなくなった人物によって移動させてください。 SCP-640-JPは現在無力化が確認されたため、サイト-81██の収容ロッカーにて保管しています。 説明: SCP-640-JPは、150mm×105mmの白色の封筒(以下SCP-640-JP-1と表記)とその封筒に付属された、説明書きのなされたB5用紙(以下SCP-640-JP-2と表記)です。SCP-640-JP-1のベロ部分にはハートマークのシールが付属されています。SCP-640-JP-1及び2は物理的な干渉による破壊が不可能であることが認められています。 SCP-640-JPの異常性は、人間の手によってSCP-640-JP-1が持たれた場合に、SCP-640-JP-1内部に官製ハガキサイズ(100mm×148mm)の便箋が現れることです。この便箋に書かれている内容は、持っている人物に対する恋愛感情、または敬愛感情を抱いているものが差出人となった「ラブレター」と呼ばれるものです。1この異常性の効果は実際にその感情を抱いているものがいる場合にのみ発動し、恋愛感情を抱かれていないものが手にした場合には異常性が見られませんでした。差出人は意思を持った生物であれば人間以外であっても該当します。文字は差出人の直筆の文字と一致しており、人間以外の差出人であれば、明朝体の文字で印刷されたように書かれています。この便箋は物理的な干渉により破壊可能です。 SCP-640-JP-2は、SCP-640-JP-1の異常性の説明が書かれたB5用紙で、内容はこう綴られています。 恋愛をしたいと思っているけれど失恋をするのが怖いと思ったことはありませんか?そのような悩み事は誰しもが思っているはずです。さらに、実際に会って告白するなんて恥ずかしくてできない!といった恥ずかしがり屋な乙女もいることでしょう。 そのような方々の悩みを解消したい!という理念のもと完成したのがこの『ラブレター』です。 恋文というのはご存知ですね?昔から自身の気持ちを伝えるために使われてきた手法です。この『ラブレター』はその恋文を基につくられたもので、貴方の気持ちを簡単に想い人に伝えるものです。自分が恋愛したいというときにも使えます! 使用方法 この封筒を触らないように好きな人に送ってください。自分で使う場合は何もしなくてOK! あとはこの封筒の中身を確認するだけです。この封筒は手に持った人に対して恋をしている人物の恋文が現れるのです!これで自分の想いを簡単に伝えることができます。また、自分に対して好意を持っている人物が簡単にわかります。 注意点 この封筒は最大4枚まで恋文が封入されます。4人以上から好意を持たれている人物に対しては、想いが強い順に上から4人選ばれます。もし、自分の想い人がモテモテだとしてもこの『ラブレター』を使い自分の想いの強さを証明しましょう! SCP-640-JPは、██県██市内で「恋が叶うラブレター」として噂されていたことが財団の目に留まり、発見に至りました。最後に所有していたのは██高校の女子生徒で、先輩から譲り受けたと話しています。話を聞く限り何度か使用されていることが確認されたため、カバーストーリー「都市伝説」を流布させました。 + 実験記録を表示 - 閉じる 以下のSCP-640-JP実験記録の実施方法は全て対象にSCP-640-JP-1を持たせるという方法を取る。 実験記録640-JP-1 - 日付200█/██/██ 対象: D-640-JP-1 結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下のようなものでした。 貴方がどうしようもない罪を犯してしまったことは知っています。それでも私は貴方の心の奥にある優しさに惹かれました。もう以前のような関係に戻れないということを知っていても私は貴方のことが好きです。もしかしたら冤罪なんじゃないかって、今でも信じています。この気持ちは忘れません。 ██ 分析: ██という人物を調べた結果、D-640-JP-1の妻であることが確認されました。D-640-JP-1が財団に勤務することが決まった時点で周辺人物に記憶処理を施し、██氏も例外なく記憶処理が施され、D-640-JP-1の記憶はないものと確認されています。 記憶が無くても差出人の対象になるということはどういうことだろうか。人為的に無くした記憶と自然消失した記憶では反応が変わるのかどうにか調べられないものだろうか。 -██博士 実験記録640-JP-2 - 日付200█/██/██ 対象: D-640-JP-2 結果: SCP-640-JP-1内に二枚の便箋が現れました。内容は以下のようなものでした。 高校のとき、一目惚れをしました。野球部で下手くそでも精一杯努力している姿を見て、胸が熱くなるのを感じたんです。でも、卒業まで一言も話せませんでした。私はクラスでも目立つような存在じゃないし、ずっと一人だったので、██君(D-640-JP-2の本名)の邪魔になってしまうと思っていました。10年たった今でもこの初恋を覚えています。また会えたら、今度こそ気持ちを伝えたいです。 ███ ああ、こんなこと手紙でもないと言えないんだけどよ。俺、お前のこと気に入ってたんだよ。このくそったれな職場で一緒に生活するうちに気が合ってさ。なんつーかさ、親近感っていうのか?俺もお前も同じ███で捕まったって話聞いてからこいつとは仲良くできるなって思ったんだよ。そこからな、あれだよ。お前のことが好きになってな。おかしいとは俺も思うんだけどよ、でもこういうのって気持ちの問題だろ?なぁ? ███(D-640-JP-3の本名) 分析: D-640-JP-2は財団勤務以前に7年間交際していた女性がいましたが、その女性が差出人になることはありませんでした。調査した結果、その女性は別の男性と10年間交際した後に結婚していることが判明しました。 D-640-JP-3にD-640-JP-2に対して好意を持っているかどうかを質問した結果、動揺を表しながらも否定しました。 この結果により、同性間での恋愛感情も対象になるということが分かっています。 実験記録640-JP-3 - 日付200█/██/██ 対象: D-640-JP-3 結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下のようなものでした。 最初変な形で想いを伝えられたのは驚いたよ。まさか君がそんなふうに思っているなんて全く考えられなかった。でも不思議と嫌な気持にはならなかったよ。そこからかな、意識し始めたのは。君が僕のことを好いていると分かったから気づけたところがいくつかある。そういうところを見ていくうちに僕も君に惹かれたよ。僕もこんな結果になるとは思はなかったけど、君があのおかしな封筒の実験に選ばれたということであえて言わないようにしておいたよ -██(D-640-JP-2の本名) 分析: 想定外ですが、対象を指定してSCP-640-JP-1内に便箋を出現させることが可能だということが確認されました。 喜ばしいことなのだろうが実験をするにあたって恋人がいた場合には実験に支障が出る可能性があるな。申し訳ないがこの二人のDクラスには記憶処理を施して別々のサイトへの移転してもらおう。 -██博士 実験記録640-JP-4 - 日付200█/██/██ 対象: ██博士 結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下のようなものでした。 最初は全く気にしたことがありませんでしたし、変人と聞いていたのでいい印象は持ちませんでした。しかし、長く接しているうちに██博士の癖や、性格が気になって気になっていつの間にかかなりの頻度で██博士のことを考えていました。もちろん表に出さないよう努力していました。ですから、きっとこの想いが伝わることがないんだろうと思っていました。でもそれでいいんじゃないでしょうか。このまま長くこの気持ちに浸っていたいです。██博士のことが好きです。 ████(研究員) 分析: ████研究員は██博士に対しいつも辛辣に対応していることはサイト内でも有名な話です。SCP-640-JP-1は恋愛感情を隠していて告白するつもりがなくても差出人の対象になるのだろうと思います。正直、とても驚きました。 -██研究員 私も驚きました。彼女には嫌われているとばかり。 -██博士 実験記録640-JP-5 - 日付200█/██/██ 対象: ███博士 結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下の通りでした。 いつもかわいがってくれてありがとうございます。ぼくもごしゅじんのことがだいすきです。おしごとがんばって。 モモタロー 分析: 調査の結果、モモタローとは███博士が自宅で飼育しているイエイヌ(Canis lupus familiaris)であることが判明しています。この結果により、差出人となるのは人間でなくても可能だということ、さらに恋愛感情とは別の敬愛感情も対象になることが分かっています。どのような基準で恋愛感情と敬愛感情が選ばれているかはわかっていません。 もしかすると敬愛や恋愛以外の愛情も対象になるのかもしれない。これまでSCP-640-JP-1内に何も入っていなかったことはなかったことから、恋愛感情がない場合には別の愛情が対象になるのかもしれないな -█博士 実験記録640-JP-6 - 日付200█/██/██ 対象: █博士 結果: SCP-640-JP-1内にはなにも現れませんでした。 特記: █博士はこの実験の対象に志願していました。 SCP-640-JP-1内に何も入っていなかったケースはこれが初めてだ。有益な結果と言えるだろう。 -█博士 実験記録640-JP-7 - 日付200█/██/██ 対象: エージェント███ 結果: SCP-640-JP-1内に一枚の便箋が現れました。内容は以下の通りでした。 [削除済] SCP-███-JP 分析: SCP-640-JP-1の差出人に意志を持ったSCPオブジェクトが現れました。この結果により、SCP-640-JP-1の差出人になる人物は意志を持った存在であれば何でも可能であると推測されます。 事案640-JP以降SCP-640-JPの異常性の消失が確認され、Neutralizedに再分類されました。詳しくは補遺の記録を参照してください。 補遺イ: 事案640-JP - 日付201█/██/██ SCP-640-JP-2の内容が以下の文に変化していました。 SNSの隆盛によりラブレターの需要が低下したので廃止します。今後の製品にご期待ください。 Footnotes 1. 恋愛感情や敬愛感情、またはその他の愛情を持った差出人が出現すると推測されます。選ばれる基準はわかっていません。
scp-641-jp
評価: +39+–x アイテム番号: SCP-641-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-641-JPに通じる扉が存在する2か所のサイトは財団フロント企業の私有地およびフロント企業の施設として外見を偽装し、財団職員以外の人間の侵入と注意を引くことを防止してください。また、財団職員についてもセキュリティクリアランス3以上の職員および該当職員に許可された職員以外の立ち入りを禁止します。 説明: SCP-641-JPは合計およそ██████m2の総面積を持つ異空間です。SCP-641-JPへの侵入口は現時点では山梨県██市にある閉店した書店『████』の2階にあるトイレの扉、岡山県████市の閉店した書店『███ ██支店』のバックヤードへの扉の2か所が確認されています。 SCP-641-JP内部は近代的な図書館のような内装1をした空間です。窓などから観測できるSCP-641-JPの「外部」は常に非常に濃い霧に覆われており、目視では観測できません。観測機器等での観測の結果では観測可能な範囲では建築物や樹木のような物体は一切観測できませんでした。「入口」2か所を除く「外部」へ続く扉や窓などは未知の手段で固定されており、開くことはできません。また、窓ガラスも異常な硬さを持っており、窓ガラスを割って「外部」へ行く試みもすべて失敗しています。 内部には照明や図書検索用端末、ウォータークーラー、トイレなどのような設備も存在しますが、電力や水道水がどこから供給されどこへ排出されているかは不明です。水道水は分析の結果鹿児島県███市で供給されている水道水の成分と一致しました。 SCP-641-JPの異常な点は、収蔵されている資料はすべて過去、あるいは現在いずれかの国や組織によって「禁書」とされている資料であるという点です。もっとも古い年代のものとしては、紀元前213年に秦の始皇帝により行われた焚書坑儒により焼却された物と同じ内容の書物が発見されています。なお、資料は書籍だけにとどまらず、9mmフィルムやビデオテープ、絵画などのような物も含まれています。現時点で確認された資料の一覧はファイル:SCP-641-JP内部収蔵資料一覧にまとめられています。 追記:現時点で確認されている資料は公式に「禁書」とされ流通が制限・禁止されたものだけではなく、有害図書指定された資料なども含まれています。現在「収蔵」の対象となる基準について調査中です。 SCP-641-JP内部から資料を故意に持ち出したり資料を損壊しようとする試みは失敗しています。資料を持ったまま人間(以下被験者)が「出入口」へ向かい通り抜けると直ちに被験者と資料は消滅します。消滅した資料は直ちに元置かれていた場所に戻され、被験者はSCP-641-JP内部に戻されSCP-641-JP-1と定義される存在に変化します。資料を損壊しようとする試みも同様です。 SCP-641-JP-1は、SCP-641-JP内部に存在する人型実体で、外見は様々な服装・年齢・性別をした人間です。活性化しているSCP-641-JP-1は司書などのような図書館職員のような振る舞いをしており、資料の検索などに対しては協力的です。元はSCP-641-JP内部で破壊活動や図書の持ち出しをしようとした人間であると考えられていますが、人間だったころの自我は存在しないことが確認されています。 非活性化状態のSCP-641-JP-1はSCP-641-JP内部の随所にある図書閲覧用の机や椅子などに座ったまま動きません。以前は非活性化状態のSCP-641-JP-1はSCP-641-JP-2と分類されていましたが、別の日程での調査の際SCP-641-JP-2に分類されていた個体がSCP-641-JP-1と同じ振る舞いをしていた事が何度も確認されたため、両者は同一の存在であると判断され再分類がなされました。 携帯型の検査機器で活性化・非活性化双方のSCP-641-JP-1を検査したところ、体組織や遺伝子などは人間と同じでしたが、脳死状態にあることがわかっています。なぜ活性化中のSCP-641-JP-1が脳死状態にも関わらず活動しているかは不明です。また、活性化ないし非活性化する条件等もわかっていません。 SCP-641-JP内部で発見された資料の一部 書名:我が闘争 著者:アドルフ・ヒトラー 発見場所:「政治思想史」の本棚 補遺:ドイツ語版が収蔵されているほか、出版が禁じられているか有害指定されている国の言語訳版が収蔵されている。 分析:どうやら具体的に禁じている場所以外の版ならば、原版が禁書とされていてもここには収蔵されないようだ。 -███博士 書名:春色梅児誉美 著者:為永春水 発見場所:[編集済]の本棚 補遺:出版年相応の経年劣化が確認されている。 分析:ジャンルに制限はないようだ。公的組織により出版・流通が制限された事があるならば何でも構わないらしい。 -███博士 作品名:青い馬の塔(Turm der blauen Pferde) 作者:フランツ・マルク 発見場所:館内ギャラリー 補遺:絵画。原版はナチスにより退廃芸術として没収された後行方不明になっている。 分析:行方不明になった原版がなんらかのルートでここに収蔵されたのか、それともここにあるのは複製なのか…どっちだ?どちらにせよさらなる調査が必要だ。 -███博士 概要:SCP-717-JPに酷似した書籍 著者:不明 発見場所:児童書コーナー 補遺:資料調査中の研究員が発見。Dクラス職員に比較的無害な項目で実験させた結果、オリジナルのSCP-717-JPと同一の特性を持つことが判明。 分析:どうやら財団が収容し、一般には出回らないようにしている資料もここに複製が収蔵されているようだ。間違っても一般人や要注意団体関係者がここに入るような事態が起きてはならない。収容方法をより厳重にすべきであると考える。 -███博士 特別監視記録641-1 20██年██月█日、██████国において[削除済]という理由で█████ ███ █████氏の著書である『█████████████』の出版の差し止めの可能性が濃厚となりました。財団は『█████████████』がSCP-641-JPに収蔵される可能性が極めて高いと判断、どのようにして蔵書がSCP-641-JPに収蔵されるのかを調査するため███人体制でSCP-641-JP内部およびSCP-641-JP-1の監視をすることを決定しました。 対象:SCP-641-JP内部およびSCP-641-JP-1全個体 実施方法:███人体制での監視 結果:監視にあたる全職員が配備された3時間29分後、『█████████████』の出版差し止めが確定。それと同時にSCP-641-JPのエントランスに『█████████████』1冊が出現。エントランスそばにいたSCP-641-JP-1が該当書籍を回収し、『█████████████』が該当すると思われるジャンルの本棚に収蔵した。なお、印刷が完了していた『█████████████』すべてが保管されている██████国の[編集済]に潜入していたエージェントからの報告で、保管されていた『█████████████』の部数は変化しておらず、1冊も減っていない事が判明しています。 分析:どうやらSCP-641-JPに収蔵される物はどれも複製らしい。ただ、どのようにして禁書にされたのかをリアルタイムで感知したのかなどは不明なままだ。引き続き要調査であると考える。 -███博士 確認されたSCP-641-JP-1の一部 番号 外見 備考 SCP-641-JP-1-6 旧日本軍憲兵曹長の制服を着用した中年のアジア人男性 所持していた身分証から19██年に左翼団体の捜査に向かったまま行方不明になった███ █憲兵曹長と判明。 SCP-641-JP-1-14 終戦直後のアメリカ陸軍伍長の制服を着用した若い白人男性 所持していた身分証から19██年に旧日本軍の施設の調査中に行方不明になったGHQの██████ ███伍長と判明。 SCP-641-JP-1-27 スーツ・中折れ帽を着用した中年のアジア人男性 所持していた警察手帳から19██年に無政府主義団体の捜査に向かったまま行方不明になった特別高等警察に所属していた███ ██警部補と判明。 SCP-641-JP-1-38 灰色のジャケットに青いジーパンを履いた若いアジア人男性 所持していた免許証などから19██年に行方不明になった左翼活動家の███ ███氏と判明。 SCP-641-JP-1-47 和服の中年のアジア人男性 詳細不明だが、服装などからおそらく江戸時代、天保年代の人間であると考えられる。 SCP-641-JP-1-52 スーツを着用した中年のアジア人女性 所持していた健康保険証から19██年に行方不明になった教師の███ ██氏と判明。 SCP-641-JP-1-65 ぼろぼろの衣服を着用した初老のアジア人男性 詳細不明。財団では迷い込んだホームレスが何らかの理由で変異したと推測している。 SCP-641-JP-1-79 学生服を着用した若いアジア人男性 所持していた学生証から199█年に行方不明になった█ ██氏と判明。なお、学生服からは煙草とライターも発見された。 SCP-641-JP-1-82 D-47628 SCP-641-JP内部の書物を持ち出すよう指示したところSCP-641-JP-1に変異。 補遺:SCP-641-JP-1との接触記録 対象: SCP-641-JP-1-82(元D-47628) インタビュアー: ███研究員 付記: 接触時、SCP-641-JP-1-82は活性化しており、書棚の周囲の見回りをしていた。 <録音開始> ███研究員: ちょっとよろしいですか? SCP-641-JP-1-82: 何でしょう。 ███研究員: この本を借りたいのですが、どこでどう手続きをすればいいでしょうか? SCP-641-JP-1-82: 申し訳ありませんが、当図書館では貸出は行っておりません。 ███研究員: どうしても必要なのですが、何とかなりませんかね? SCP-641-JP-1-82: 貸出はできませんが、コピー機での複製ならば認められています。所定の申込用紙に必要事項をご記入いただいた上でご利用ください。 ███研究員: そうですか、ありがとうございます。ところでもうちょっといいですか? SCP-641-JP-1-82: 何でしょう。 ███研究員: あなたの名前と、この施設について教えていただけませんか? SCP-641-JP-1-82: 私はここの職員です。それ以上でもそれ以下でもありません。また、この施設は知識を収蔵する場所です。 ███研究員: と、言いますと? SCP-641-JP-1-82: 都合が悪い、という理由で隠された知識を収蔵する。それが当図書館の役目です。 ███研究員: なるほど。ところで、ここは誰が運営しているのですか? SCP-641-JP-1-82: 申し訳ありませんがお答えできません。 ███研究員: そうですか。ありがとうございます。 <録音終了まで省略> 終了報告書: ███研究員は引き続きSCP-641-JP-1-82に対し資料の入手方法や施設の存在する場所、SCP-641-JPの発生時期などを質問しましたが、いずれの質問も「申し訳ありませんがお答えできません。」という返答でした。███研究員はこれ以上の会話は無意味と判断し、打ち切りました。 私はSCP-641-JP-1-82の元となったD-47628の性格などをある程度把握していましたが、今の彼の性格は以前とはまったく異なるものになっていました。D-47628は粗暴な男で丁寧な言葉づかいを一切しない男でしたが、SCP-641-JP-1はSCP-641-JP-1-82を含めて総じて丁寧では有りますがロボットのような無機的な性格をしているように思われます。このあたり、人間がSCP-641-JP-1に変異する際に精神影響を及ぼしているか、なんらかの存在が素体となった人間に憑依しているかしているように思われます。 -███研究員 結局運営者や起源などはわからずじまいだった。ただ、奴の言っていた「知識を収蔵するのが役目」、という表現が引っかかる。役目、という事は当然何者かが何らかの目的で設置した、という事になるだろう。要注意団体が関与している可能性もまた否定出来ない。さらなる研究と警備の厳重化が求められる。 -███博士 Footnotes 1. 一部職員からは栃木県███市の市立██████図書館、東京都███区の区立███図書館、███大学の大学図書館に酷似していると指摘されています。
scp-642-jp
評価: +25+–x 評価: +25+–x クレジット タイトル: SCP-642-JP - 蝙蝠たちの冷戦 著者: ©︎Tutu-sh 作成年: 2022 評価: +25+–x 評価: +25+–x SCP-642-JP(2016年) アイテム番号: SCP-642-JP オブジェクトクラス: Euclid Keter 特別収容プロトコル: フィリピン共和国ルソン島に設置されたサイト-6302は熱帯多雨林の一部区画を自然保護区として指定し、民間人の立ち入りを規制します。SCP-642-JPから基底世界にSCP-642-JP-α~-γ個体が流入した場合、サイト-6302は当該個体を生物収容セルに収容します。 ロシア連邦および日本国に残留・生息するSCP-642-JP-β個体に関してはロシア連邦軍および陸上自衛隊と共同で捕獲作戦が展開されます。作戦の進捗および成果はロシア天然資源・環境省および日本環境省と共有されます。SCP-642-JPの収容に際し、飼育方法はそれぞれ非異常のフィリピンオオコウモリ(Acerodon jubatus)、ピューマ(Puma concolor)、シロサイ(Ceratotherium simum)のものが参照されます。 追記: SCP-642-JP-δは未収容であり、処遇は審議中です。SCP-642-JP-δが確認された場合、本件に関しO5評議会が緊急招集されます。なおこれに関連し、放棄された旧サイト-6301は常時封鎖を維持されます。 説明: SCP-642-JPは、ルソン島マヨン山麓(北緯13度14分9秒、東経123度39分20秒)に約█km2の範囲で分布する時空間異常領域です。SCP-642-JPと基底世界の関係は確定されていませんが、SCP-1796-JPの文献記録に未記載であること、および生息する動物群に適用された分子時計から、接続先は現代から約7,600万年後の未来と推定されています。ただし、SCP-642-JP内は基底世界との経過時間の不整合が認められることから、異なる時空間同士の緩衝による非線形作用が時間軸に影響していることが推測されます。 SCP-642-JPは熱帯多雨林の内部に位置しますが、領域内は温暖湿潤気候であり、植物食性動物による下層植生の撹乱を伴う落葉広葉樹林が広がります。領域内は非異常の霧が常時立ち込めており、本稿執筆時点で観測された最大視度は約500mです。視界不良および生息する野生動物のため、深部の構造および環境は不明です。 過去のSCP-642-JP探査において、調査チームは翼手目の未確認系統群に属する複数の生物と遭遇しています。当該生物の骨格形態は既知の翼手目の哺乳類から乖離する一方、分子系統解析からはチスイコウモリモドキ(Vampyrum spectrum)との近縁性が示唆されます。現生のチスイコウモリモドキは準絶滅危惧種ですが、翼手目は齧歯目に次いで繁栄する哺乳類であり、氷河期が続く恒温動物優位の世界において個体数を回復し適応放散を遂げたと推測されます。当該生物は本稿執筆時点でSCP-642-JP-α~-γとして指定される全3種が確認されています。 SCP-642-JPは遅くとも14世紀には発生していたと推測されており、以降ルソン島の住民はSCP-642-JPを認識し、宗教的あるいは政治的目的の下に内部を訪れていました。具体的には、歴史時代以前からSCP-642-JP-α、20世紀以降からSCP-642-JP-β, -γと人間との遭遇が記録されています。以下はSCP-642-JP-α~-γの詳細です。 SCP-642-JP-α SCP-642-JP-β SCP-642-JP-γ 保護されたSCP-642-JP-α(1945年) 生物学的詳細: SCP-642-JP-αは、フィリピンオオコウモリ(Acerodon jubatus)に収斂する飛翔性動物です。SCP-642-JP-αは小型のイヌ科動物に類似する頭蓋骨および歯列を有しますが、主な食物は果実および花蜜であり、イチジクを好む傾向が確認されています。翼をはじめとするボディプランは現生の翼手目と共通します。 SCP-642-JPは虹彩から青色および赤色の光を放出します1。光度は片目あたり最大約2.0×104cdであり、明瞭な視界の確保、発光パターンを用いた外部環境の情報伝達・異性の誘引・天敵の防除に使用されます。当該の特性は反射ではなく発光に起因しており、視細胞におけるルシフェリン-ルシフェラーゼ反応を経て触媒されたルシフェリンが発光します。酵素反応で約2.0×104cdもの光度の光を放射可能な理由、光刺激および反応熱から視細胞およびロドプシンを保護する機序、発光中の視覚維持の過程は不明です。 SCP-642-JP-αは最大で数万個体からなる群集を形成するため、飛来時には日照量の有意な低下および轟音が認められます。集団行動時の低照度環境においてSCP-642-JP-αが光を放出する様子が確認されています。 歴史: SCP-642-JP-αは現地マレー人の間で口伝が残されており、暗闇の中でSCP-642-JP-αが発する光を観賞する文化的風習の存在が示唆されます。当時の中華王朝の古文書によると、14世紀後半から伝来したイスラム教に合わせSCP-642-JP-αは天使として認識され、以降16世紀に西洋勢力が波及するまで神聖な生物として重宝されました。 スペイン植民地時代に設置された網。30個体以上のSCP-642-JP-αを一度に捕殺可能とされる(1829年)。 1570年、ミゲル・ロペス・デ・レガスピ率いるスペイン帝国のコンキスタドールがSCP-642-JP-αと遭遇し、これを記録しています。カトリック信者で構成される帝国勢力の間では、翼と黒色の体表は悪魔の形態形質の1つ、また虹彩の光は人間を誘惑して堕落させる邪な魔術として認識され、SCP-642-JP-αはサタンの下僕として解釈されました。以降、スペイン帝国の支配下に置かれた同地ではHMFSCPによる介入まで駆除が実施されました。 狩猟者の視点ではSCP-642-JP-αは生物発光の特性ゆえに発見が容易であり、夥しい個体群が定期的に捕獲されました。具体的な捕獲法としては、霞網に代表される捕獲装置の設置、エタノールに浸したイチジクを用いた酩酊状態の誘発、捕獲済みの衰弱個体・高齢個体を囮とする誘引、幼獣の生息する巣穴の焼き討ち等が挙げられます。捕獲された個体は囮に流用するものを除いて大多数がその場で撲殺され、遺骸は樽に詰め込まれた上で焼却処分されました。当時の文書にはSCP-642-JP-αを集積した樽による政府直轄保管庫の逼迫が記録されています。 帝国陸軍と交戦中のアメリカ合衆国陸軍第25歩兵師団(1945年) 1898年にアメリカ合衆国がフィリピンを統治下に置いた後、太平洋戦争において大日本帝国陸軍は1942年5月に同国を占領して軍政を敷き、米国との癒着の懸念から当時存在した財団サイトを解体しました。帝国陸軍はSCP-642-JPに侵入してSCP-642-JP-αを再発見し、高い視力による夜間の索敵、および無線機器故障の際の代替手段としての利用を期待し、軍用動物に転用しました。 1944年以降の米軍によるフィリピン奪還において、SCP-642-JP-αは光信号による敵対勢力の撹乱・誘導の役割を担い、多数の個体が米軍に射殺されました。最末期のルソン島の戦いではSCP-642-JP-αは焼夷剤を伴って米軍に向け投下され、帝国陸軍の全面降伏に至るまで動物兵器として消費されました。米軍側の記録では、燃え盛るSCP-642-JP-αの群れが夜空を赤く彩った様子が記載されています。 ルソン島奪還後、財団は施設を再建しサイト-6301を設置しました。 SCP-642-JP-β骨格(1942年) 生物学的詳細: SCP-642-JP-βは、体高70cm体長140cmに達する、ヒエノドン・ホリドゥス(Hyaenodon horridus)に類似する骨格を有する動物食性動物です。SCP-642-JP-βは飛翔能力を持たず、体骨格が緻密化しており、陸上生活に特化しています。上顎骨歯は4本、歯骨歯は2本が発達した牙をなし、祖先である捕食性のチスイコウモリモドキの形態形質を強く継承したことが示唆されます。 SCP-642-JP-βは約2.4×105Hzの超音波を介した反響定位により獲物を探知します。眼球は喪失しており、眼窩には鯨類のメロン体に類似する脂肪組織が付着します。当該部位は超音波を発生・集約する音響装置としての適応を遂げたと推測され、視覚に依存するSCP-642-JP-αとは対照的に反響定位能力を向上しています。 SCP-642-JP-βは鎖骨を欠き、前肢はイヌ科動物と同様に長距離の追跡に特化します。SCP-642-JP-βは少数個体が樺太島・千島列島・北海道本島に定着しており、頂点捕食者の生態的地位を巡って現地のヒグマ(Ursus arctos)と競合関係にあります。下位の栄養段階の生物に対する狩猟・加害行動が確認されており、当該の行動の対象には人間も該当します。 + インタビュー記録 - 閉じる インタビュー記録642-JP-β-01 インタビュアー: ヴォルコフ研究員 インタビュー対象: セルゲイ・クロポトキン氏 日付: 2022/07/01 付記: クロポトキン氏はサハリン州コルサコフ市で乗用車を運転中、SCP-642-JP-βと推測される四足歩行性の実体による襲撃を受けています。インタビューは警察組織による調査の名目で実施されました。 <記録開始> ヴォルコフ研究員: こんにちは、クロポトキンさん。調書を作成いたしますので、事故当時の状況をお話しいただけますか。 クロポトキン氏: さっき話したろ。サツもヤキが回ったな。 ヴォルコフ研究員: 念のためです。ご了承ください。 クロポトキン氏: [溜息] 最近、ウチの農場がやられた。最初はクマかと思ったが、やり口がそれにしちゃ変だった。首を引き裂いて柵の上に引っ掛けて並べるなんて、どっかのイカれた人間がやったんじゃねえかって家内も噂してた。だからちょいと、鉄条網にカメラでも仕掛けてやろうと思って、買って来た帰りだったんだよ。 ヴォルコフ研究員: 続けてください。 クロポトキン氏: もう日も落ちて、辺りは暗くなってた。時刻は覚えてないが、どうせあんたらが記録取ってんだろ。後で見てくれよ。 [数秒の沈黙] とにかく、暗かった。だから突然だった。何の前触れも無かったんだ。何だったんだよ、あれ。 [クロポトキン氏が水を飲む。] クロポトキン氏: 後ろのランプに照らされて、バックミラーに犬か何かが見えた気がしたんだ。すぐ目を逸らしちまったもんだから、もう一回目線を移してみると、もう見えなかった。去ったのかと思ったが、そうじゃねえ。逆だ。一瞬で距離を詰めてやがった。アレは、後ろのアイツは、車の天井に爪か何かを引っ掛けやがった。バン、ガリガリガリってよ。心臓が張り裂けそうだった。 [深呼吸] クロポトキン氏: 俺が思わず振り返ったとき、フロントガラスが砕けた。ガラスを浴びるよりも先に胸倉を掴まれ……いや、噛まれた。噛まれて、放り出されたんだよ。歯も食い込んでたらしい。 ヴォルコフ研究員: 貴方の車は脱輪して畑に落ちた状態で発見されていますが、車体全体が大きく圧壊していました。貴方が運転席から離れ、車体は制御を失ったのですね。 クロポトキン氏: 当たり前だろ。[3秒間沈黙] まあでも、車の事故った音は聞こえなかったな。振りほどくのに必死だった。痛みもなかったな。ここでやらなければ、俺は死ぬ。それしか考えられなかった。腕の感覚も無かったが、振りに振って2、3発首に拳を入れてやったよ。 ヴォルコフ研究員: 結果として貴方の負傷は、全身の鞭打ち症と打撲、顔の裂傷、2か所の骨折。命があっただけ良かったです。 クロポトキン氏: 全くだ。森林管理署の近くでツイてた。そうでもなきゃ、今頃ウチの牛みたいに転がってただろうさ。 ヴォルコフ研究員: 他に何か、当時の状況として思い出せるものはありますか? クロポトキン氏: そうだな。[5秒間沈黙] 子犬が走ってたな。アイツが襲って来る前に、1匹車の前を走ってた気がする。ぶつかる音がしたから、死んだかもしれねえな。 ヴォルコフ研究員: なるほど。ありがとうございます。 クロポトキン氏: なあ、警察さんよ。 ヴォルコフ研究員: [間] はい? クロポトキン氏: ちょっと頼まれてくれねえか。 ヴォルコフ研究員: 何でしょう。 クロポトキン氏: 俺はあんたらが嫌いだし法律にも詳しかないんだが、ああいう猛獣ってそっちで駆除できねえのかよ。頼むぜ。あんなのが夜にうろついてるなんて、安心して夜も眠れねえ。癪だけどよ、どうにか早いとこ、アレ殺してくれよ。 ヴォルコフ研究員: [間] 分かりました。微力を尽くします。 <記録終了> 終了報告書: クロポトキン氏はクラスB記憶処理の後、解放されました。 歴史: SCP-642-JP-βは、これを発見した大日本帝国陸軍により一部個体群が日本へ輸送されたことが判明しています。大日本帝国陸軍特別医療部隊、通称"負号部隊"はSCP-642-JP-βの反響定位能力に着目し、不良な視界条件下において任務を遂行可能な動物兵器・生物兵器としての運用を計画しました。負号部隊は未確認の性成熟促進手法を用い、僅か1年でSCP-642-JP-βの増産に成功しました。 誕生したSCP-642-JP-βの大多数は大本営の直接管理下に置かれましたが、彼らは本土決戦での戦線投入を経ずして終戦を迎えました。戦後日本を占領したGHQはSCP-642-JP-βを発見し押収、大久野島に備蓄されたびらん剤2により全頭を殺処分しました。 1943年、大日本帝国は同盟国ナチス・ドイツに200頭のSCP-642-JP-βを提供しました。当時のドイツはG剤と共に独ソ戦への当該生物の投入を検討しましたが、アドルフ・ヒトラーはこれを断念し、同国は東部戦線において劣勢に立たされました。1945年4月のヒトラーの自殺後、帝都ベルリンに侵攻していたソビエト連邦労農赤軍が都市の制圧に成功しました。共産党中央委員会から命令を受けた内務人民委員部は、183頭のSCP-642-JP-βを含む異常存在を押収しました。 極東北部の衛星写真。樺太島(左上)・北海道本島(左下)・千島列島(右)が見られる。 ヨシフ・スターリンはSCP-642-JP-βの回収を米英および財団から秘匿しました。確保された個体群はシベリアの生物収容施設において調教され、主に電気刺激により兵器化されました。調教の過酷さおよび飢餓・衛生環境を原因とし、3ヶ月間にSCP-642-JP-βのうち46頭が病死・衰弱死を遂げました。 合衆国大統領ハリー・トルーマンに日本領割譲を拒否されたスターリンは、対日参戦と共にSCP-642-JP-βの戦線投入を計画しました。1945年8月、遅延した南樺太および北千島への侵攻に際し、共産党中央委員会はSCP-642-JP-βの投入を決定しました。投入された個体群は帝国陸軍第5方面軍の歩兵隊・戦車隊に損害を与えたものの、その戦果は自爆兵器としての運用によるものでした。戦闘が長引くにつれSCP-642-JP-β群は日本軍の激しい応戦を受け、大多数の個体が撃破されました。特に占守島においては上陸用舟艇を攻撃され、多数個体が赤軍兵士と共に溺死・焼死しました。両地域で停戦以前に逃亡した少数個体が当該地域で野生化しました。 SCP-642-JP-γ骨格(1942年) 生物学的詳細: SCP-642-JP-γは、体高1.8m体長3mに達する、サブヒラコドン・オキデンタリス(Subhyracodon occidentalis)に類似する植物食性動物です。SCP-642-JP-γは現生の奇蹄目と同様に趾の先端が蹄に進化しており、体重支持および運動能力の向上を実現しています。またSCP-642-JP-γの頭部には矢状面上に突起およびそれに支持される角が存在しており、捕食動物に対する防衛に用いられます。 SCP-642-JP-γの体毛は約5割が触毛に置換されており、毛包には血液が流入する海綿体様組織が分布します。同組織を通る末梢神経系は、外部受容器たる触毛が受容した刺激を脳へ伝導・伝達し、鋭敏な触覚を実現します。進化的意義としては、SCP-642-JP-γは厚い皮膚により鈍化した触覚を触毛で補助し、やがて視覚に依存しない感覚として発達させたと推測されます。 SCP-642-JP-γは気流・振動に対する高い感受性を有しており、反響定位等を用いる捕食動物に対し逃走反応を取ると推測されます。SCP-642-JPは通常5~10頭程度の個体群を形成しますが、最大で200頭の群集を形成した例が報告されています。 歴史: SCP-642-JP-γは、これを発見した大日本帝国陸軍により一部個体群が日本へ輸送されたことが判明しています。負号部隊はSCP-642-JP-γの畜産業における展望を見出し、SCP-642-JP-γの品種改良・家畜化に着手しました。異常手段による急速な改良の後、SCP-642-JP-γは北海道に移入されました。 戦後回収された負号部隊の文書  先日の曾議に上つた生物に就ひて、此の度完成に至りました故、此処に納品致します。  件の生物は比律賓にて捕獲された獣の一種であります。今後彼等の長所を取り以て我が研鑽の糧とすることは、我が國が世界に對して誇るべき美點となりませふ。  此の動物は肉と乳、毛皮が豊満であり、其の特性は既存の羊や乳牛を上回るものであります。肉質は牛肉と比較して脂質を多分に含み、鉄分やカルニチンにも富み、きめが細かく柔らかです。また乳は牛乳と比べ脂肪球の径が小さく、リパーゼによる分解が平易であります。1頭あたりの採取可能毛量は羊毛の5倍に達します。我々は此の點に目を付け、肉の肥大と母乳、体毛の増量を行ひました。叉チロキシンの投与を以て代謝を改変し、其々の特性に改良を加へました。  とは言へ、何分急な施術でした故、完全無欠と申すわけには参りません。急激な肥大化に伴ひ、彼の動物の四肢の近位は組織に埋没し、肩と腰の可動性は制限されます。叉急激な代謝を常時継続するため、其の寿命は飼育下に於ひても持って四年となります。併し、短期的な利用に限れば支障無きものと思われます。 体表の感覚器官の増加に伴う強いストレスに常時晒されるため、改良を施されたSCP-642-JP-γの実際の寿命は負号部隊の推定値を下回ったと推測されます。また当該のストレスにより成分的肉質・乳質の低下も見られ、運用される肉牛・乳牛に対するアドバンテージは実質的に存在しませんでした。 SCP-642-JP-γに由来する製品は戦時中の日本の資源支持を期待されましたが、1944年にSCP-642-JP-γに内分泌系疾患とそれに伴う不妊、および奇形児の発生が確認されました。繁殖・飼育の費用対効果、および家畜伝染病の懸念3からSCP-642-JP-γの飼育は中断され、全頭が殺処分を受けました。 事案642-JP: 2025年9月、未確認のSCP-642-JP関連生物(以下、SCP-642-JP-δ)の基底世界侵入およびそれに関連する複数の収容違反が認められました。インシデントに際しサイト-6301は封鎖され、SCP-642-JPおよび自然保護区の管理はルソン島西部に位置するサイト-6302へ移管されました。当該インシデントは現在も進行中であり、IK-クラス:世界文明崩壊シナリオ発生宣言、Tiamatクラスへの再分類を含め、事態急変の可能性があることに留意してください。 以下は関連するタイムラインです(最終更新:2025/09/09 02:22 (UTC))。 事案642-JPタイムライン 09/07 07:32 (PST): 自然保護区の防護柵より、内部から突破された形跡が報告される。柵は縦3m横2mに亘って歪曲し開放されており、付近の地面には鉤爪を伴う趾行性の二足歩行動物の足跡が確認される。足痕は翼手目のものと同定され、トラックメーカー4は未確認のSCP-642-JP関連生物と認定される。 09/07 07:45 (PST): サイト-6301直属の機動部隊による周辺地域の調査および収容違反個体の回収が開始される。SCP-642-JP-βとの複数回の交戦を経て4名の隊員が死傷。トラックメーカーは未発見。 09/07 19:00 (PST): 昼間作戦の終了に伴い、トラックメーカーをSCP-642-JP-δに指定。 09/08 10:19 (PST): サイト-6301の外壁が爆破され、融解を開始する。開放部より防毒マスクを装備した複数体の未確認人型実体が侵入。応戦する機動部隊に対し未確認の爆発物および化学兵器を投入し、サイト内に侵攻する。機動部隊員は激痛と水疱を伴う皮膚炎を発症。 09/08 10:22 (PST): 監視カメラの映像より、人型実体をSCP-642-JP-δとして同定。SCP-642-JP-δが知的生命体として確認される。サイト-6302より応援部隊を派遣。 09/08 10:42 (PST): SCP-642-JP-δがサイトを占領。脱出に失敗した職員に対する生体解剖、蔵書およびデータベースへの侵入を開始する。 09/08 11:07 (PST): SCP-642-JP-δが生物収容施設に対する破壊工作を開始。収容下にあったSCP-642-JP関連動物群の大規模収容違反が発生。事態悪化を鑑み、サイト-6302およびその他4ヶ所の収容サイトより追加の応援部隊を派遣。 09/08 18:26 (PST): 作戦終了。SCP-642-JP関連動物群の鎮圧・確保に成功するも、SCP-642-JP-δをロストする。サイトの損害のためSCP-642-JP-δの捜索は一時凍結され、動物群は再収容のためサイト-6302へ移送。 09/08 19:38 (PST): サイト内に散布されたエアロゾルの成分検査の結果、バイカルハナウド(Heracleum mantegazzianum)やマンチニール(Hippomane mancinella)のものに類似する有毒植物の樹液として同定される。当該の樹液は組成が異なる一方、化学的な調整は施されていないことが示唆される。 09/09 06:32 (PST): ルソン島近傍に位置するカタンドゥアネス島およびマスバテ島からSCP-642-JP-δ様実体が報告される。遭遇した農夫が上記のエアロゾル散布の被害を受ける。 09/09 07:00 (PST): 機動部隊による捜索を開始。作戦中にSCP-1437-JPの繁殖が複数検出される5。これはSCP-642-JP-δが意図的に設置したものと判断される。 09/09 09:15 (PST): ピンカートン・スミス協定に基づき、イングランドのサイト-44でのSCP-2945-JPとの緊急対談の実施が決定される6。 09/09 09:57 (PST): O5評議会の命令を受け、南北アメリカ大陸に駐在する財団機動部隊がチスイコウモリモドキ掃討に向け臨戦態勢に突入。 09/09 10:20 (PST): サイト-6301を除くフィリピン国内の全財団サイトより、SCP-642-JP-δに向けた音波による交信の試みを開始。応答なし。 + 対談記録2945-JP-0708 - 閉じる 対談記録2945-JP-0708 人類側出席者: レスタック研究員 2945-JP側出席者: ソロモン特務官 <記録開始> レスタック研究員: よろしくお願いいたします。 ソロモン特務官: よろしくお願いいたします。とはいえ既に申し上げた通り、件の動物群を我々は存じ上げません。お力にはなれないかと思いますが。 [レスタック研究員が文書を提示する。ソロモン特務官が文書を受け取り、目を通し始める。] レスタック研究員: 状況が変わったのです。今、高度に進化した知的生物がこの時代に入り込んでいます。おそらく未来の翼手目ですから、一切の過誤の無いご返答は結構です。ただ、過去に他種族との接触・共生の過去がおありのあなた方ならば、今後取るべき対応の視座をご提供いただけないかと。 ソロモン特務官: [間] そういうことでしたら。 [ソロモン特務官が文書を黙読する。] ソロモン特務官: この生物はあなた方が翼手目と呼ぶ生物なのですね。 レスタック研究員: ええ。他のSCP-642-JPと同様に、SCP-642-JP-δはチスイコウモリモドキから派生した系統群であると推測されます。発達した吻部と剥き出しの歯、そして顔面の鼻葉は予想される祖先種と共通します。牙をなした4本の上顎骨歯と2本の歯骨歯はプロポーション的に現生種よりも小さく、また臼歯は突起が矮化・平坦化していますが、これは知的生物として進化を遂げる中で、雑食傾向や協調性の強化に伴って進行したものでしょう。ヒトと同様の進化を辿っています。 ソロモン特務官: 随分と眼球が小さいですね。我々が対峙し記録に残したどの文明種にも、この手のものは存在しません。 レスタック研究員: 鼻葉の発達と引き換えに眼球が退化したものかと思われます。完全に機能を喪失したわけではないでしょうが、我々ほど高い視力を持つとは考えにくいかと。 ソロモン特務官: なるほど。つまり主な感覚を聴覚に委ねているわけですね。 レスタック研究員: そう考えています。 ソロモン特務官: 私たちが視覚に依存しているのは、視覚のメリットの1つとして高い解像度があるからです。一方、睡眠時を含め常時周囲360°の情報を受容できる点は聴覚の強みであり、あとは精度の問題です。音で物体を一望出来れば良い。視野の広さか立体性の限られる視覚を上回る、広範囲の感覚として昇華したのでしょう。そうであれば、彼らが純度の低い生物毒の利用に甘んじているのも納得です。 レスタック研究員: [間] 失礼、それは何故ですか? ソロモン特務官: 彼らはあなた方の電子機器を扱えたわけですね。言語も時代も種族も異なるあなた方の設備を理解し、情報を盗み取り、破壊工作まで仕掛けていったわけです。少なくとも、高い技術力が無ければ成しえない芸当です。こちらの時代に入り込み、熟知もしているのでしょう。しかし ⸺ [ソロモン特務官が1枚の書類をレスタック研究員に返却する。] ソロモン特務官: 化学兵器の成分です。ソラレンやホルボールでしたか、これら炎症成分が含まれているのは毒物として結構ですが、無関係な植物ホルモンや無機塩類も多分に含まれています。指摘がある通り、成分を単離して化学組成を調整する試みがなされていません。我々なら余剰な成分は排して濃縮しますし、あるいはもっと安価に生産可能な化学毒を持ち込むことでしょう。彼らの薬学、いえ有機化学は我々ほど発展していないのかもしれません。 レスタック研究員: それが、彼らの聴覚とどう関係するのでしょうか。 ソロモン特務官: 彼らの錐体細胞がバリエーションに乏しく、かつ視力も低いとなると、化学反応の前後の結果を見ることは難しいのではないでしょうか。音波の反射の度合いで、多孔質だとか、そういった形状・特性の変化を読み解くことは可能かもしれません。しかし、あなた方なら3色の、我々なら4色の色を識別できるふうな、そういった外見の多様性はそこに担保されているのでしょうか。答えはノーです。彼らはエメラルドとアクアマリンを区別できないのです。 レスタック研究員: なるほど。彼らは化学を発展させなかったと。 ソロモン特務官: はい。加えるなら、音波の振幅もあるでしょう。光波よりもよほど解像度が低いので、顕微鏡も使えません。ミクロな領域に踏み込みづらいでしょうね。 [ソロモン特務官が紙面に視線を落とす。] ソロモン特務官: しかし楽観は禁物です。むしろ驚嘆すべきかもしれません。この植物の分布域は? レスタック研究員: 彼らが用いた毒物の有機化合物はバイカルハナウドやマンチニール、あるいはそれに近縁な有毒植物の代謝産物ですね。前者は外来種として北米大陸で分布域を拡大していて、後者もまた北米南部から南米北部にかけて分布します。 ソロモン特務官: 彼らの祖先にあたるコウモリの生息域は? レスタック研究員: 中米から南米の北部だったかと。 ソロモン特務官: なるほど、扱う素材としては適当ですね。自分たちの暮らす地域の植物を使っているわけです。郷土に学び、そこに住まう生物を知り、分析する。完璧です。博物学ですよ。 レスタック研究員: 博物学? ソロモン特務官: ええ、自然史のうちマクロスケールの分野であれば、周波数の低い音波でも十分に観測可能です。時には視覚で補いながらも、周囲の事物を観察して一個の領域を創り上げたのでしょう。毒を持つ植物を見つけ、そのマクロな仕組みを理解し、維管束から抽出した樹液を兵器化した。それ以外にもありとあらゆる物に探究心を向けたことでしょう。例えば彼らが侵入し、破壊行為を行ったのはフィリピンです。祖先の居る中南米からは遠く離れ、対蹠点に近いですね。我々に打撃を加えても彼らへの影響が軽微となることを知っていたのかもしれません。 レスタック研究員: それを確かめて行動に及んだとすれば、彼らには古気候や古地理の復元能力があると。植物相や南中高度から座標を推理し読み取る力がある、そういうことですか。 ソロモン特務官: 可能性はあります。単にあなた方から情報を盗んだだけかもしれませんし、あるいはそんなことを気にしていないのかもしれませんが。ただ確からしいのは、彼らが万物を蒐集し、観察し、分類し……異常存在にまで手を伸ばしたであろうことです。 レスタック研究員: [間] SCP-1437-JPですね。 ソロモン特務官: はい。幾千万年の時が過ぎて我々が居なくなった後でも、あれはこの地球にのさばり続けることでしょう。扱っても不自然ではありませんね。 レスタック研究員: [溜息] 環境改変兵器、人間社会なら条約違反の代物か。 ソロモン特務官: しかし彼らは人間でも、協定関係にある我々でもありません。あの粘菌を好きなふうに使えます。今回確認された量であればせいぜいVEI5ほどでしょうが ⸺ 理論上、いつでも2度目のトバ・カタストロフを起こせます。都市をマグマに埋め、我々を灰に寝かせ、幾千年の冬をもたらすことが出来るのです。 [沈黙] ソロモン特務官: 今回の件は我々にとっても危機的状況と言えるでしょう。対応を検討しますが、我々にも高精度の反響定位を扱う大型動物との対峙は経験がありません。所詮我々も視覚依存の種族ですので、索敵能力ではあちらに分があります。現に、場慣れしたあなた方の精鋭たちも発見に至っていませんからね。 レスタック研究員: それでは ⸺ ソロモン特務官: 我々も協力は惜しまないことでしょう。しかし、ローラーの目を搔い潜られることを想定し、最後の非常手段を確保すべきかと思います。 レスタック研究員: 非常手段、ですか。それは? ソロモン特務官: "Wibbly wobbly, timey wimey" という言葉があります。あなた方も我々も、時間と空間の全容を理解できているわけではありません。その時その時の決断は時間軸を2本の枝のように分けるかもしれませんし、さして影響なく毛糸の毬のごとく1本で絡み合うのかもしれません。しかし、もしこの宇宙が後者であれば、我々にできる確実な手段は一つ。抑止力です。 レスタック研究員: [間] 未来改変の示唆ですか。破局噴火が始まると共に、我々の文明が凍て付く前にチスイコウモリモドキを絶滅させる。かつてSCP-642-JP-αを焼いたように。そう脅すと。 ソロモン特務官: 噴火で生じたエアロゾルが全域に影響するまでは猶予があります。牽制の材料としては十分でしょう。 レスタック研究員: 子孫は全滅、彼らは時間軸から抹消される。時空を隔てた、見かけ上の相互確証破壊ですか。 ソロモン特務官: ええ。彼らに対して根絶可能性をちらつかせる。ルソン島での彼らの攻撃が、祖先の分布と重複しないことを確かめた上でのことなのか、あるいは別の確証があってのことかは分かりません。どうか前者であってほしいものです。現実の宇宙がどうかは存じ上げません。彼らが踏みとどまればそれで良い。 レスタック研究員: 報復措置の備えに気づいて貰えなければ終わりですね。必要ならばヴェール放棄を伴ってでも確実な手法をO5評議会に申請します。事態回避のためには止むを得ません、手遅れになる前に。 ソロモン特務官: 承知いたしました。 レスタック研究員: ソロモン特務官、深夜にも拘わらずありがとうございます。 ソロモン特務官: いえ、人類の危機は我々の危機ですので、お気になさらず。 [ソロモン特務官が席を立つ。] ソロモン特務官: [振り返る。] しかし解決手段が圧力とは、皮肉ですね。 レスタック研究員: [間] 皮肉とは? ソロモン特務官: 今回の軋轢を生んだもの、それは人類側の行動です。彼らの世界で何が見えたか想像できます。ありふれていた動物の群れが忽然と消えた。まだ空を飛べた頃の祖先を共有する、彼らと共に暮らす動物たちです。それは大空を埋め尽くし、大地を彩っていたのかもしれません。生態系を分かち合う、同じ星に暮らす生き物が、幾度も繰り返し連れ去られたなら ⸺ レスタック研究員: それは我々の責任ではありません。 ソロモン特務官: それは事実です。しかしポータルに上がり込み、彼らを捕らえ、連れ出し、この時代に持ち込んだのがあなた方人類だということもまた事実なのです。知的種族との直接的な関わりはありませんでしたが、あなた方は何百年も足を踏み入れた。何万匹もの近縁種を焼き、穿ち、変えてしまった。次にテーブルに乗せられるのは自らかもしれないと、彼らはあなた方の行動の果てに幻影を見たのしょう。 レスタック研究員: [間] 我々を怖れたと?復讐心ではなく? ソロモン特務官: 牛を切り抜く異星人がそれで満足すると思えますか?遥かな霧の中で回収班や調査班を目にするたび、幻影は疑念となり、確信となり、途方もない危機感が積み上がったはずです。古代の魔物がやって来る、武器を手に取り立ち上がれ、人類が来ると。 レスタック研究員: しかし ⸺ ソロモン特務官: かつて我々が目にしたアボリジニも ⸺ レスタック研究員: もしそれが真実であれば、彼らの誤解です。 ソロモン特務官: 彼らにそんなことは知る由もありません。勿論あなた方財団にそのつもりは無いでしょうが ⸺ [間] いえ、違いますね。いざとなれば私とあなたは彼らの祖を絶やす気でいます。ああ。彼らの覚えた懸念、不安、焦燥が実を持つ様は、もう目と鼻の先に広がっているようです。 レスタック研究員: [間] 記録を終了します。 <記録終了> 終了報告書: 財団はSCP-642-JP関連動物群の祖先種を特定しており、対談の後、当該種の可及的速やかな根絶の準備が可決されました。SCP-642-JP-δの攻撃行動が確認され次第、時間軸上からの抹消作戦が開始されます。 Footnotes 1. 大多数の哺乳類はM錐体を欠き、S錐体とL錐体の2種類のみの錐体細胞を持つ。このためSCP-642-JPの生物発光は各錐体細胞に適した長波長の赤色と短波長の青色に適応したと推測される。 2. 接触・吸引すると焼けるような激痛を誘発し、皮膚のただれ・水疱・壊死、肺水腫、結膜炎などの症状を引き起こす化学兵器。高い浸透性と持続性を特徴とする。大久野島ではマスタードガスとルイサイトが大量生産され、それぞれ旧日本軍により「きい一号」および「きい二号」と呼称された。 3. 不妊および奇形、肉質・乳質の低下の要因が当時未特定であったため。 4. "Track-maker"。足跡や這い跡など、運動の痕跡("track")を残した生物。 5. SCP-1437-JPは、その生活史において火成活動を誘発する変形菌。最古の記録は後期三畳紀の大規模火成活動期のものであり、その後も後期白亜紀のインド亜大陸でデカン・トラップを形成するなど、地球史上において複数回の環境改変を繰り返した。 6. SCP-2945-JPは、身長約2mに達する地球の先住知的種族。小型獣脚類の恐竜から派生しており1,000万年オーダーの長期文明を有すること、およびその文明史において他の複数の知的種族と接触したことから、特に先史時代のオブジェクトに関して財団と協力関係にある。
scp-643-jp
評価: +28+–x アイテム番号: SCP-643-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: カバーストーリー「有害物質の含有」を適用し████油田への関係者以外の立ち入りを禁止しています。また採掘済みのSCP-643-JPは専用に設計されたドラム缶に入れてサイト8129の低危険度物品収容倉庫に収容されています。 現在、財団フロント企業を介して世界各地の油田の調査が進められています。 説明: SCP-643-JPは[編集済み]連邦に属する████油田に存在している推定██億バレルの原油および同油田から採掘された████バレルの石油です。 SCP-643-JPは通常の石油と同様に多種多量の炭化水素を含んでいるにも拘らず一切燃焼しません。 SCP-643-JPには複数種の未知の窒化合物(以下、SCP-643-JP-aと呼称)が多く含まれており、SCP-643-JP-aを中心とする化学反応のほぼ全てが吸熱反応であるため、この性質がSCP-643-JPが燃焼しない主な原因となっていると思われます。 SCP-643-JPは19██/██/██、████油田の発見の際に採掘された石油が一切燃焼しなかったことから財団フロント企業に調査が依頼され、その異常性が確認されました。油田を発見、採掘した作業員らにはクラスD記憶処理が施されました。 財団による調査の中で、月潟-涸沢式年代測定法1を用いて油田が形成された年代を測定した結果、████油田はおよそ38億年前にはすでに形成されていたことが判明しました。この結果は一般に信じられている石油の形成過程2からは考えられない数値であり、現在より詳細な調査が行われています。 + 以下の閲覧にはセキュリティクリアランス2以上が必要です - 隠す SCP-643-JP-bは主に未知の窒化合物で構成された生命体様物質群です。 SCP-643-JPに含まれるSCP-643-JP-aの多くはSCP-643-JP-bの活動が停止したもの及びそれが変化したものであることが確認されています。 SCP-643-JP-bは未知の代謝系によって周囲の炭化水素と窒素を同化しいくつかの種類のSCP-643-JP-aを合成することによって成長と分裂を行いその数を増やしていきます。この増殖プロセスは既知の原始的な生命体と類似しています。 SCP-643-JP-bはSCP-643-JP中に生息する生物の調査の際に偶然発見されました。SCP-643-JP-bは発見された当初、通常の新種微生物だと思われていましたが、詳細な分析の結果核酸及びリボソームが一切検出されず、SCP-643-JP-aを主成分としていることが判明し、SCP-643-JP-bに指定されました。 SCP-643-JP-bが他の油田にも存在している可能性を考え、現在財団フロント企業を中心に世界各地の油田の調査を行っています。 + 以下の閲覧にはセキュリティクリアランス3以上が必要です - 隠す 月潟-涸沢式年代測定法を用いて[編集済み]王国に属する██████油田の形成年代を測定したところ、34億年前には形成されていたという結果が出たため、██████油田の詳細な調査が行われた結果、未知の有機化合物が主成分であるSCP-643-JP-bと類似した生命体様物質群を発見しました。その後各地の未採掘油田から相次いで主成分の異なるSCP-643-JP-b様物質群が発見され、SCP-643-JP-bを含むそれら全てがSCP-643-JP-1に分類されました。 SCP-643-JP-1の中にはコアセルベート3と似たものなども存在したため、既存の原始的な生命体や各SCP-643-JP-1同士を比較した結果、SCP-643-JP-1は現生の生命体の祖先と同時期あるいはそれ以前に発生し、現生の生命体との存在競争に敗北した生命体になれなかったものたちであり、原油やSCP-643-JP-aはそれらの活動が停止したものが変化したものであるという仮説に至りました。 油田から既知の生命体が発見された場合はSCP-643-JP-1が殆ど発見できないことは、この仮説の証拠の一つとしてあげられています。 この仮説は何らかの異常な物理現象が関与していなくても成立するため、SCP-643-JPのオブジェクトクラスをExplainedへ変更する申請がなされています。 この仮説はSCP-643-JPのオブジェクトクラスがExplainedに変更されると同時に順を追って一般の学会に公表していきます。 SCP-643-JPのオブジェクトクラスの変更は中止されました。 20██/██/██、[編集済み]共和国に属する███████油田でのSCP-643-JP-1の調査において、未知のSCP-643-JP-1ではない有機珪化合物(以下、SCP-643-JP-2と呼称)が発見されました。 SCP-643-JP-2は常温常圧では固体ですが、一般的な石油の精製過程で容易に気化し気体相では触媒物質を被覆し触媒反応を強力に阻害する性質がある上、昇華4する際にアスベスト5状になる特性を持つ為、石油に混入した場合莫大な被害が想定されます。 SCP-643-JP-2の詳細な検査の結果、あきらかに作為的な化学組成の変更の痕跡が確認されました。 この発見を受けてオブジェクトクラスの変更および仮説の一般への公表を中止し、SCP-643-JP-1及びSCP-643-JP-2のさらなる調査の施行と当報告書の情報の一部にセキュリティクリアランスによる情報制限を設けることを決定しました。 Footnotes 1. SCP-███-JPの異常性の研究の副産物として開発された年代測定法。詳細はSCP-███-JPの報告書を参照。 2. 生物の遺骸が高温高圧によって石油に変化するという説。 3. コロイドからなる液胞の流動層と液層が入り混じった物体で、このとき含まれるコロイドはほぼ球状である。このコロイドは分裂・融合・周囲の物質の吸収などを起こす性質があることから、生命の起源や進化に重要な役割を果たしたとする説がある。かつては細胞の直接の先祖と見られたこともあった。 4. この場合は気体から固体への相転移を指す。 5. 一本の直径0.02-0.35 μm程度の繊維状鉱物、空中に飛散したものを長期間大量に吸入すると肺癌や中皮腫の誘因となる。
scp-644-jp
評価: +90+–x アイテム番号: SCP-644-JP オブジェクトクラス: Safe 回収時のSCP-644-JP。(画像右。左は通常のトイレットペーパー) 特別収容プロトコル: SCP-644-JPはサイト-8181のトイレに設置されます。清掃員は個室トイレごとに設置されたSCP-644-JPを毎日使用して掃除を行ってください。SCP-644-JPを無断で持ち出した場合、処罰の対象となります。 SCP-644-JPによるものと思われる行列が財団内で発生した場合、発露していない職員は特異性が解除されるまでサイトから避難してください。避難時、安全圏まで他の職員と会話をしないでください。 説明: SCP-644-JPは通販サイトにおいて限定発売された████社製トイレットペーパー108個です。一般的な無地のロール紙タイプと同じ見た目をしており、トリプル巻きで巻かれています。紙と芯には香りがついており、香りをかいだ人物の多くはお香のような匂いと述べています。 SCP-644-JPは紙部分を無制限に引き出すことが可能です。引き出された後の紙には特異性は存在せず、一般的なものと比べても香り以外に目立った違いは確認されませんでした。SCP-644-JPの紙部分は除去及び破壊が可能です。しかし、芯の部分を破壊する試みは全て失敗に終わっています。芯のみにした場合では5秒以内に新しい紙が生成されますが、生成される瞬間を観測する試みは全て失敗に終わっています。 2つ目の特異性はSCP-644-JPが使用されない期間が2週間続いた場合に発揮されます。この特異性が発揮された場合、SCP-644-JPが存在する付近の人間はSCP-644-JPに最も近いトイレを使用しなければならないという思考を持つようになります。この特異性はSCP-644-JPが存在する地点から半径300m圏内にいる人物が対象となり、対象人物は速やかにこのトイレの使用を試みます。この思考は争いを強制させるようなものではないため、結果として対象人物たちによる行列が発生します。1発生した行列はSCP-644-JPの紙部分を10000m使用するまで解消されません。対象人物に話しかけると、話しかけた人物が効果範囲内にいない場合であっても同様の思考を示すようになります。財団が回収を行った際には行列の発生が8件報告されており、行列は短いもので約1400m、長いものでは約8000m程でした。また、対象となった人物がトイレとの距離がある場合では一旦行列から離れて再度並びなおすといった行動が見られます。行列を離れる原因の多くは、トイレもしくは食事です。 財団が最初に発見したSCP-644-JPは███博士の私物として使用されていました。███博士はトイレットペーパーが一向に無くならないことからオブジェクトの疑いがあるとして財団に調査を申請しました。この2日後には個人宅前等に行列ができているという通報が警察に多数寄せられています。███博士の証言からSCP-644-JPを製造した会社が判明しましたが、製造会社には不審な点が見当たりませんでした。財団はSCP-644-JPを購入した人物全員から回収し、行列ができた家の所有者及び行列に参加した人々にはクラスB記憶処理を施しました。残りの購入者にはカバーストーリー『不良品回収』が適用されました。 補遺: SCP-644-JP回収時の記録です。当時、他の場所でも同様の回収作戦が同時に行われていました。 回収人員: エージェント大川(休暇中だったが、対象となった人物に話しかけたことにより3時間前に行列に加わっていた。そのため、急遽回収人員として採用された) インタビュアー: 千島博士 付記: ███氏の自宅から2km程行列が続いている。今回、エージェント大川とは携帯電話のテレビ電話機能を使用することで意思疎通を行っている。この方法では特異性が発生しないのは、別のSCP-644-JP回収班が1時間前に発見した。 <録音開始> (エージェント大川はトイレの前にいる) 千島博士: エージェント大川、そろそろですね。できれば中の様子を撮影していただけたらありがたいです。 エージェント大川: わかりました。 (トイレを流す音の後に、前にいた人物がトイレから出てくる。エージェント大川が中に入った) 千島博士: トイレの様子を映してください。 エージェント大川: 了解です。 (映像にトイレットペーパーが映し出される。量は残り少なかった) 千島博士: ……あれ。このトイレットペーパー、オブジェクトではありませんね。 エージェント大川: みたいですね。周囲を探してみます。 (エージェント大川は一旦カメラを置き、周囲を簡単に探す。しかし、SCP-644-JPや通常のトイレットペーパーは見当たらなかった) エージェント大川: トイレットペーパー自体がありません。 (トイレの窓がノックされる。エージェント大川が開けると、50代程と思われる笑顔の男性がトイレットペーパーを差し出していた。息が荒く、額に汗をかいているため、走ってきたと思われる) 男性1: よろしければ、はあ、使います? エージェント大川: ありがとうございます。 (エージェント大川はこのトイレットペーパーを受け取るとすぐにセットした。後のインタビューではエージェント大川及び千鳥博士共に一連の出来事に違和感はなかったと主張している) エージェント大川: 新しいトイレットペーパーをセットしました。ですが、その、これ、先ほど送られてきたオブジェクトの特徴と一致します。これを回収すればいいのでしょうか? 千島博士: いえ。今しがた送られてきた情報によりますと、一定量使用しないと行列が無くならないそうです。ですので、そのままで大丈夫です。 エージェント大川: わかりました。 千島博士: ところでトイレはしないのでしょうか? エージェント大川: 実を言うと全然したくないんです。とりあえず、オブジェクトを使わないと……。 (エージェント大川は汚れを一通りふき取り、トイレに流した) エージェント大川: よし。じゃあ、私はもう出ます。 千島博士: わかりました。では支部に一時帰還して、報告書をお願いします。 エージェント大川: ……えっ? 千島博士: どうかしましたか? エージェント大川: 何言ってるんですか? もう一度並ばないと。 千島博士: ……何のためにですか? エージェント大川: トイレを利用するためです。 <録音終了> 終了報告書: その後、エージェント大川は列の最後尾に3度並びなおしました。18時間後、行列は無くなり、財団はSCP-644-JPを回収しました。また、今回回収されたSCP-644-JPの持ち主は行列ができていた住宅の隣に住んでいた男性でした。この男性は映像記録においてSCP-644-JPを持ってきた人物です。本人は『買い置きのトイレットペーパーを使い切ってからSCP-644-JPを使用するつもりだったため、物置においていた』と主張しています。このことから、この男性の家ではなく隣家に行列ができていた原因はSCP-644-JPが置かれていた場所が隣家のトイレに近かったためであると考えられます。 追記: 今回発生した一連の事象により『対象となったトイレからトイレットペーパーが無くなった場合、並んでいた人間が近隣よりトイレットペーパーを持ってくる』という特異性が確認されました。しかし、基本的に持ってくるトイレットペーパーは持ってくる人間の記憶に依存しており、上記の映像記録で発生した事例において、すぐにSCP-644-JPを持ってくることができたのは偶然によるものと考えられます。 Footnotes 1. 対象となった人物が1人の場合、トイレから出てくることはありません。
scp-645-jp
評価: +36+–x 評価: +36+–x クレジット タイトル: SCP-645-JP - 白磁の月 著者: ©︎nao_sunney 作成年: 2017 評価: +36+–x 評価: +36+–x SCP-645-JP(画像赤円内、MGC 224方向にて撮影) SCP-645-JPの影響を受けた画像(バックアップ取得済み) アイテム番号: SCP-645-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-645-JPは現在未収容です。SCP-645-JPの出現が観測された場合は、財団所有の人工衛星を用いて動向を調査してください。SCP-645-JPの撮影に成功した場合はその場で映像及び写真のバックアップを取得した後、実験に使用してください。主な調査活動はサイト-8118及び月面仮設サイト-3が行っています。 2016/7/10追記: 現在、SCP-645-JPが接触したと思われる座標の有人探査は無期限に禁止されています。今回の禁止措置には、民間の有人探査の規制も含まれます。規制の際には随時カバーストーリーの作成、流布を行ってください。 説明: SCP-645-JPは外宇宙に出現する木造の船舶であると推測されています。後述する異常性の影響で、詳細な外見情報は不明ですが、全長は約80m程であると推測されています。調査のためこれまでにSCP-645-JPへ接近・接触する試みが行われてきましたが、約6000km附近まで接近した時点で、SCP-645-JPがその場から消失する形で失敗しています。また宇宙空間にSCP-645-JPが出現・消失する際に極短時間の時空間異常が発生します。この時空間異常は微弱な発光現象として観測されますが、現時点でこの発光現象に伴う物理的な被害は確認されていません。後の調査でSCP-645-JPが出現、消失する際、同時に月面でも微弱な発光現象が発生する1ことが判明しました。月面で発生した発光現象はSCP-645-JPが出現、消失する際に発生するものと外見上同一であり、SCP-645-JPの出現が月面の周囲で頻発していることから、SCP-645-JPと月面に何らかの関連性があるとし、月面仮設サイト-3が建設されました。SCP-645-JPの移動経路等に共通点は発見されていませんが、最大で████光年以上の移動を行った事例が記録されています。 SCP-645-JPを撮影・録画した媒体の画像解析を行った場合、媒体に映るSCP-645-JPの外見が変化します。ほとんどの場合SCP-645-JPは陶器製の皿に類似した外見に変化しますが、装飾の有無やデザイン、皿の大きさ等の詳細な変化は写真や映像によって変化します。外見が変化する詳細な基準は不明ですが、至近距離まで画像を拡大、画質の向上を行うことで優先的に変化していることから、SCP-645-JPの詳細な外見が判別可能になるまでの解析を行うことで外見が変化すると推察されています。現時点で外見が変化したSCP-645-JPの画像を復元する試みは成功していませんが、単体の画像毎に変化が生じるため、同一の画像を複製することで、疑似的な外見変化の対策を行うことが可能です。 2005/2/18、蒐集院が作成した資料を調査したところ、SCP-645-JPと思われるオブジェクトの情報が発見されました。資料は平安時代前期に書かれたもので、SCP-645-JPは約80m程の木製の船舶として記載されていました。これらの情報に加え、雲に類似した物質を発生させていたこと、複数の人型の実体が乗船していたこと等、財団が把握していない情報も記載されていました。現時点で判明している情報と蒐集院が発見したオブジェクトとの差異は確認されていませんが、資料の信憑性が低いため、SCP-645-JPの説明欄の更新は保留されています。信憑性が低いと判断されている理由として、当時蒐集院が行った隠蔽工作、中でも流布されたカバーストーリーと情報が混同されていること等が挙げられています。現在財団はさらなる資料の捜索及び調査を行っています。資料の詳細は補遺4を参照してください。 補遺1: 2008/2/15、月面仮設サイト-3の職員がケプラークレーター内で人型実体を1体発見しました。実体は仰向けの状態で発見され、活動の兆候が確認されなかったため回収、調査されました。実体は人間の女性に類似した外見をしており、発見当初はそれぞれ櫛を模していると見られる装飾品2・単衣と思われる衣服、蒐集院が保有していた文献に記載されていた「羽衣」に類似した衣服を身に着けていました。実体に目立った外傷はなく、十分な防護措置が施されていなかったにも関わらず、劣化及びその兆候も確認されませんでした。また上記に付随して実体は腐敗の痕跡は確認されませんでしたが、アンモニア臭に酷似した刺激臭を発していました。なお実体の構成要素は所持していた物品・刺激臭を含め、すべて既存のものと一致しませんでした。 事案645-JP-1: 2008/2/16、月面サイト-3の安置室にて保管されていた人型実体が消失しました。サイト内の監視機器には、陶器製の皿に類似した実体が画面の9割を占める割合で記録されていました。出現から5分後、皿が消失し、再び安置室が映し出された際、死体はその場から消失していました。当時内部に存在した物品を使用した場合でも安置室を内部から解放することは不可能であり、安置室に脱出の痕跡は確認されませんでした。また当時就寝していた2名の職員が類似した内容の夢を見ていたことが判明しました。夢を見た職員2名は、当時人型実体の回収を担当した職員であることが共通していますが、夢を見た原因については不明です。現在財団は捜索範囲を拡大して調査をおこなっていますが、実体の発見には至っていません。以下は、類似した内容の夢を見た職員へのインタビュー記録です。 インタビュー記録645-JP-1: 対象: エージェント・ハリー インタビュアー: 葵博士 記録開始 葵博士: エージェント・ハリー、昨夜見た夢について教えてくれ。 エージェント・ハリー: そうですね、気が付くと草原みたいな場所にいました。そこで男性…の姿をした人に接触しました。 葵博士: 男性か。詳細な外見を。 エージェント・ハリー: 耳が少し長かったり、宝髻をつけてました。後はそうですね。とにかくきれいな服を着ていました。 葵博士: なるほど、続けてくれ。 エージェント・ハリー: そうしたらその男性が自分の方に近づいてきて、僕に何か言ったところで目が覚めました。 葵博士: 何か、とは? エージェント・ハリー: はい、なんと言っていたか、確か―― エージェント・ハリー: 汝らの行いたるは、己が使命に反するものなり。だったはずです。 葵博士: その言葉に心当たりは? エージェント・ハリー: ありません。 後略 終了報告書: その後、夢を見たもう1人のエージェントにもインタビューを行ったところ、声をかけたのが女性であったことを除いて同様の供述をしました。夢で見た女性は回収された人型実体と服装・装飾・顔の作り等の詳細な差異を除いて類似していたと供述しました。 補遺2: 2009/11/30、日本時間午前1時9分に出現したSCP-645-JPが金星に接近、物理接触を行いました。接触から13秒後、SCP-645-JPはその場から消失しました。 これを受け財団はSCP-645-JPが接触したと予測される座標の探査を目的とした探査作戦645-JP-1の実行が決定しました。 事案645-JP-2: 2010/1/2、探査作戦645-JP-1にて初期探査を担当していた衛星ステーション-5内で火災が発生しました。火災は座標25Cから約800万km離れた地点で発生しました。火元は衛星ステーション内に保管されていた食料であることが判明していますが、すべての容器が防火性に優れているにも関わらず炎上しました。また発火した火は23分間に渡って炎上し続けましたが、炎上中衛星ステーション-5内の酸素飽和度及び気圧は変化しませんでした。なお炎上中衛星ステーション内の消火システム及び職員による消火活動が行われましたが、消火には至らず、自然鎮火しました。これを受け探査作戦645-JPは中止され、衛星ステーション-5内での事後処理が行われました。乗員にケガはなく、内部も火災による大きな損傷は確認されませんでした。特筆すべき点として火災が発生していた間、乗員全員が、強い空腹感を訴えていました。 補遺3: 2015/█/██、日本時間午前4時30分に出現したSCP-645-JPが火星に接近、物理接触を行いました。接触後20秒でSCP-645-JPはその場から消失しました。探査作戦645-JP-1実行の際に発生した火災の再発が懸念されましたが、初期探査の結果、火災は発生せず予定通り座標に着陸できたことから、探査作戦645-JP-2が火星にて実行されました。以下は探査作戦645-JP-2の実行中に行われた通信のログ及び記録の抜粋です。 + 通信ログ-645-JP及び診療記録を表示 - テキストを隠す 通信ログ645-JP-A 2016/6/27 付記: このログは調査報告として仮設基地とサイト-8118にある通信部との通話記録です。 記録開始 ██隊長: こちらは探査作戦645-JP-2遠征隊隊長、██。 黒沢司令官: こちら司令室黒沢。1日目の報告を頼む。 ██隊長: まず、座標S19にてSCP-645-JPによるものと推測される痕跡を発見しました。 黒沢司令官: 詳細なデータを。 ██隊長: 資料にあった通り、全長81.2mの木造船の船底痕に見えます。船の構造は[エージェント・西垣と小声で会話を行う]恐らく屋形船、周囲の地形に変化はありません。ある程度減速し、着陸したと判断できます。 黒沢司令官: なるほど。見たところ蒐集院の文献と一致するな。 ██隊長: そしてもう一つ、2つに割れた岩石を発見しましたが…画像を転送します。 黒沢司令官: [画像を確認]これは、人か? ██隊長: 全長は約10cm程と小さいですが、内部に人型の空洞が見受けられました。現時点でそのような実体とは遭遇していません。岩石は調査したところ通常の玄武岩と一致。最大の直径は約18cmです。 黒沢司令官: その岩は今どうなっている? ██隊長: 現在は第2格納庫内に、シートをかけて保管してあります。報告は以上です。 黒沢司令官: ご苦労。こっちでは上記2点の解析を行う、そちらも細心の注意を払って任務にあたってくれ。 ██隊長: 了解しました。通信を終わります。 通信ログ645-JP-B 2016/7/5 記録開始 ██隊長 こちらは探査作戦645-JP-2遠征隊隊長、██。 黒沢司令官: こちらは司令室黒沢。8日目の報告を頼む。 ██隊長 2つほど問題が発生しました。1つは我々が保管していた岩が、何者かによって破壊されていました。 黒沢司令官: 岩って言うと、例の空洞があったものか。何者かによってとはどういうことだ?何か痕跡があったのか? ██隊長: はい。岩の破片には刀傷のようなものが散見され、おそらくはそれで破壊したのだと思います。また岩にあった刀傷と同じものが仮設基地内でも発見されています。 黒沢司令官: 被害状況は? ██隊長: 岩の他に、仮設基地内の壁や床等が被害にあっています。 黒沢司令官: 隊員の誰かがやった可能性は? ██隊長: 仮設基地内に刀のようなものは発見されませんでした。その可能性は…破壊された時刻が不明なので、判断できかねます。これも私の管理体制が杜撰だった故の惨事、申し訳ありません。 黒沢司令官: いや、異常存在の行動を計算に入れていなかった私の責任でもある。ひとまずは監視カメラ等で管理体制を強化する。報告を続けてくれ。 ██隊長: もう1つはエージェント・三谷のことでして。 黒沢司令官: 君の顔の傷はエージェント・三谷がつけたのか。 ██隊長 はい。塩村医師の診断の結果、一時的なパニック障害とのことでした。現在は精神安定剤の服用により落ち着いています。 黒沢司令官: エージェント・三谷か、彼は宇宙空間での任務を多くこなしていたはず。そんな彼が環境に耐えられなくなったというのも考えにくいな。三谷への事情聴取の方はどうなっている? ██隊長: もう間もなく終了するそうです。どうやら何か見たり聞いたりと異常があったわけではなく、本人自身の劣等感による行動だったと供述しています。 黒沢司令官: 劣等感か。ふむ、やはり不自然な動機とも取れるな。 ██隊長: 私の管理不足が原因かもしれません。本当に申し訳ありません。 黒沢司令官: 少し落ち着こう…██君、先ほどから君も少し様子がおかしいぞ。そんなに何度も謝るような人間でもなかったはずだが。 ██隊長: すみません。取り乱してしまいました。それで塩村医師からの休務申請はどうなったでしょうか? 黒沢司令官: [診療記録645-JP-1を確認]なるほど。██隊長、塩村医師やエージェント・三谷を除く他の隊員の様子はどうだった? ██隊長: 様子ですか?そういえば少し不機嫌そうだった覚えがありますが。 黒沢司令官: やはり、何か精神に影響を受けている可能性があるな。報告は以上か? ██隊長: はい、以上になります。 黒沢司令官: ご苦労。今後の指示を伝える。遠征隊は、遠征艇フォボスに乗り、衛星ステーション-8と合流してくれ。仮設基地は保存処置を施し放棄、合流後遠征隊全員のメディカルチェック及び再編成の準備に入る。それからエージェント・三谷、塩村医師、そして██隊長は薬剤によって休眠された状態で遠征艇に乗ってもらう。 ██隊長: なぜそのような措置を?私の指揮がいけなかったのでしょうか? 黒沢司令官: そうではない、だが隊員の様子がおかしいのは明らかであり、それが最も顕著に出ているのは上記の3名であると判断できる。現状より危険な状況になるのを防ぐためだ。わかってくれ。 ██隊長 了解、しました。 黒沢司令官: といっても遠征艇に乗る準備は引き続き君が指揮を取ってくれ。全員の乗船が確認したら、眠った君に代わり、██博士に指揮を取ってもらう。私からは以上だ、そちらが何もなければ██博士に代わってくれ。 診療記録-645-JP 対象: 三谷一真 担当医師: 塩村一 付記: この記録は通常の治療行為に加え、カウンセリング及び対象への事情聴取を平行して行われた。対象は████3に対して暴行未遂を行った。取り押さえられてから10分程で行動を停止し、精神安定剤の投与及び服用に応じた。服用後効果が出るまで、そして効果が切れる前後のタイミングで自身の手をかきむしる等の自傷行為を行っている。 記録開始 担当医師: 落ちついたかな。三谷君。 対象: はい、ご迷惑をおかけしました。 担当医師: まぁ大したケガがなくてよかったよ。それでさ、もし三谷君が良ければ、なぜ██さんに殴りかかろうとしたのか、教えてもらえるかな? 対象: ██隊長とは、財団で働くようになってすぐにあった先輩で、結構よく会ってたんですけど。 担当医師: ██さんもよく話してたね。 対象: でも、俺とちょっとしか年が違わないのに、██隊長はメキメキ昇格していって。今回の任務でも隊長を任されるようになって。劣等感ですかね。感じるようになってたんですよ。 担当医師: 君は確か5年前のミッションで、ここより遠い地点でのミッションに参加したそうじゃないか。しかも緊急時には機転を利かせ、被害を縮小させたとか。役職はどうであれ、僕は三谷君も十分すごいと思うけどね。 対象: そんなんじゃダメなんです。もっともっと働いて、██さんを超えないと、でも俺どうしていいかわからなくて、全部ぶっ壊したくなってそれで[自身の両腕をかきむしりだす] 担当医師: 君、人の好意は素直に受け取っておくものだ。そんな言い方はないだろう。…いや、何でもない、落ちつこう。君も腕から血が出ている。 対象: すみません。 担当医師: いやいいんだ、僕も頭に血が昇っていた。コーヒー飲むかい? 対象: ありがとうございます。 担当医師: 劣等感か。普段から貯めこむような気質だったのかな。 対象: 自分ではそんなことはないと思いますが。 担当医師: 特別何か変わったことが起きたわけではないんだよね? 対象: もちろんです。 担当医師: なるほど[記録を取る] まぁひとまずは休息をとることだね。我慢できなくなりそうなら軽い運動を、だがそれも決してやりすぎないように、何かあったらまたここに来るといい、睡眠薬の処方でも相談事でも、僕で良ければ対応しよう。 対象: ありがとうございます。お世話になりました。 担当医師: そのセリフは、任務に復帰してから言ってくれ。 記録終了 長谷川研究員に話を聞いてみたが、対人関係は良好。愚痴を言い合ったりしていたことから、ストレスをため込みすぎる傾向もない。何より仮設基地に来た最初の頃は特に異常もなかった。SCP-645-JPの影響かは不明だが、薬も効果があることがわかったので今後の経過観察次第で、早ければ2日後の復帰を視野に入れて治療を行う。妙に気持ちが抑えられずに思わず彼にあたってしまった、何という失態だ、これでは医師失格ではないか 塩村一 映像記録645-JP-C 2016/7/6 記録開始 ██博士: 全員の乗船を確認、遠征艇フォボスはこれより衛星ステーション-8と合流する。 黒沢司令官: 確認した。 [エージェント・三谷と思われる罵声と、殴打音が記録される] 黒沢司令官: 今の音はなんだ、██博士、状況を報告しろ! ██博士: 眠っていた3人が目を覚まして暴れています。覚醒予定より█時間以上早いです。 [操縦室のドアが開く音が記録される、その後██博士の短いうめき声が記録されて以降、操縦室内で多数の殴打音、奇声等が観測される] 黒沢司令官: 遠征艇、応答せよ!聞こえているかどうかわからんが、全員保身と合流を最優先に行動せよ。モニター、遠征艇の軌道はどうなっている? 司令室オペレーター: 予定より若干軌道から外れていますが、自動操縦は問題なく作動しています。このままいけば合流できます。 [以降、██分に渡って乱闘と思われる音声が記録されました] エージェント・ウォリック: 司令室、応答を。 黒沢司令官: その声はウォリックか、状況の報告しろ!何があった。 エージェント・ウォリック: 眠っていた3人が目を覚まし、私含めた隊員に攻撃を行いました。 黒沢司令官: 全員無事なのか? エージェント・ウォリック: 少なくとも私はなんとか、他の方は不明ですが、現在乱闘は起きていません。 黒沢司令官: わかった、間もなく衛星ステーション-8と合流する。ウォリック、君が操縦してくれ。 エージェント・ウォリック: 了解。 事後報告: 遠征艇フォボスはその後衛星ステーション-8との合流に成功しました。乗船していた遠征隊員は1名軽傷、3名重症、2名が死亡しました、軽傷だったエージェント・ウォリックによると、休眠状態のエージェント・三谷、塩村医師、██隊長が突然暴れ出し、自身を含めた隊員に攻撃したと供述しました。休眠状態にあった3名の職員が攻撃を行った理由は不明です。またエージェント・ウォリック自身もこれ以降の記憶が曖昧で詳細な証言を聞くことができませんでした。探査作戦645-JP-2は一時中断され、現在は負傷した隊員の治療及び調査を行っています。 補遺4: 以下は、SCP-645-JPと思われるオブジェクトに関する記載がされた、蒐集院の資料を現代語訳したものです。 + 関連資料を表示します。 - テキストを隠す 輝宮夜舟 蒐集物覚書帳目録第六四五番 元慶九年発見(丁酉己丑4に多数の研儀官が発見。その後蒐集に失敗し、その場から消失した。以降目撃されず。) 輝宮夜舟は縦二十七丈、横九丈ほどの御座船の姿をしている。姿形は新しく、舟の構造も不審な点はないように見える。船内には畳がおよそ四十畳程あり、茅葺屋根に千木、鰹木を上せる。これも外見上普通に見えるが、御簾の向こうにある室内を見ることはできなかった。これは輝宮夜舟の有する幻惑作用が理由であると思われるが、詳しいことは不明である。 輝宮夜には推定八名以上の男女の姿に似たものが乗船している。その姿は異様なまでに整っており、目撃した同士一同も口を揃えて「美しい」と呼称するほどである。衣服も上物を身に着けており、女の姿をするものは全員羽衣を所有している。そのものの中には、神通力を使うものもいる。今回で確認された術は、乗ることのできる雲を生み出し、それに乗る術。対象の心を惑わせ、戦意を喪失させる術。である。また上記の術は特定の個体が用いていたが、複数の存在が浮遊しながら移動していた。各個体がどのような術を使用できるか詳しいことは不明である。 丁酉己丑、丑の刻に出現した輝宮夜舟は大和国梶原にある讃岐造邸に接近し、着陸した。その後乗船していたものが讃岐造になよ竹のかぐや姫を出すよう命令した。それから間もなく、蒐集院研儀官九名と暮石中納言率いる武士二十三名が到着し、輝宮夜舟の蒐集に取り掛かったが、前述した術により蒐集に失敗した、かぐや姫は輝宮夜舟に乗船し、十七丈ほど上に飛行し、輝宮夜舟は消失した。 術式展開儀式実行建白書: 元慶九年戊戌丙午5 内容: 輝宮夜舟の確保、蒐集のため、心眼之式第弐型の展開、蒐集院研儀官 海鴉 却下。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘ 術式展開儀式実行建白書:元慶九年戊戌戊申6 内容: 輝宮夜舟の迎え撃つべく、召喚式第八型「飛藤」の使用及び八幡龍砲の儀3の実行。蒐集院研儀官 鎌燕 却下。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘ 術式展開儀式実行建白書:元慶九年戊戌辛亥7 通達に先立ち、輝宮夜舟の影響縮小のため、救抜焔口陀羅尼経に基づく施餓鬼法の実行。蒐集院研儀官 雅牡丹 承認、禁忌に触れぬよう、尽力すること。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘ 追伸: 元慶九年戊戌庚戌8 輝宮夜舟の蒐集に参加した暮石中納言の配下の武士。従八位上左兵衛府大志東出晴彦というものが、八月十六日の夜。天のお告げを聞いたとして、その調査に向かった。そのものが言うには、夢の中に天の使いが姿を現し、草原の中自身に対し「我々はお前たちが先日行った行為を咎める気はまだない。しかしこれ以上我々に干渉する場合は、それなりの制裁を下すことになる。お前たちが我らの邪魔をしない限り、互いに損はない。励み、憂い、精進せよ」と告げたという。夢に出てきた天の使いなるものは、輝宮夜舟に乗っていたものの外見と類似していたという。これまでに輝宮夜の発見には至っておらず、妖術を行使する多数の存在が確認されていることから。輝宮夜の蒐集は中止することを提案する。蒐集院研儀官 雅牡丹  蒐集院研儀官 雅牡丹の研究の結果9輝宮夜を天部の神々が送りし衆生であると判断し、通達を行うこととする。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘ 通達: 元慶九年戊戌己卯10 輝宮夜舟の蒐集、及びそれに類似する行為を禁止する。輝宮夜舟は人智を超えた術の多くを行使しており、我々が蒐集する対象に他ならない、しかしあれは我々の手に余る。現に我々はそれの蒐集に失敗し、野放しにすることを余儀なくされている。不明なことが多い中、これ以上輝宮夜の蒐集を行うことは多くの同士を失い、我々の責務を果たせなくなることに繋がると、協議の結果判断された。だが我々蒐集院十三支令研儀官一同は、あれがこちらから干渉しない限り、安全であるという確信がある。これは多くの資料を吟味して得たものである。万が一輝宮夜舟がまたこちらに干渉してきた場合は、事態の隠蔽に尽力するように。恐れることはない同士諸君。我々は輝宮夜舟の本質を既に理解している。あれは人が既にたどりついている、世界の真実の一つである。蒐集院十三支令正三位研儀官 弐代目‘‘寅‘‘ 脚注 1. 太陽光の反射によるものと異なります。 2. 外見上は風化しているように見受けられます。 3. ██隊長の本名 4. 干支紀日法で8月15日を表す 5. 9月1日 6. 同月3日 7. 同月6日 8. 同月5日 9. 追伸の他に雅牡丹が行った事情聴取の写しや資料は現在捜索中であり、内容は判明していません。 10. 同月10日
scp-646-jp
評価: +457+–x 評価: +457+–x クレジット タイトル: SCP-646-JP - 過去改変協力者 著者: ©︎amamiel 作成年: 2016 評価: +457+–x 評価: +457+–x 回収時のSCP-646-JP アイテム番号: SCP-646-JP オブジェクトクラス: Keter Neutralized 特別収容プロトコル: 現在、SCP-646-JPはサイト-81██の高危険度物品保管室に保管されています。担当者は定期的にSCP-646-JPの異常特性について、再評価を行なってください。 説明: SCP-646-JPは██████社によって運営されていた19██年製のデジタル公衆電話です。同型の公衆電話と外見上/構造上の差異はなく、通常通りの手順で通話を行うことが可能です。また、SCP-646-JPを収納している電話ボックス内部には1枚の紙が張られており、そこには「変えてほしい方はこちらまで」という文章とともに11桁の電話番号1が書かれています。 SCP-646-JPに上記の電話番号を入力した場合、電話はSCP-646-JP-Aと指定される特定の人物へと繋がります2。SCP-646-JP-Aと通話を行った者(以下、被験者)はSCP-646-JP-Aの声を男性のものと報告しています。この男性の声は受話器を取った被験者のみにしか聞こえず、他の人間には単調なノイズ音として認識されます。なお、被験者との通話にSCP-646-JP-Aは日本語のみを使用し、被験者が日本語以外の言語を用いた場合や後述するSCP-646-JP-Aからの問い掛けとは無関係な対話を試みた場合には全て無視します。 通話開始とともに、SCP-646-JP-Aは被験者に対して「変えたいものは何だ」と尋ねます。この問いに被験者が「"特定の物体/事柄A"を"別の物体/事柄B"に変えてほしい」という形で回答を行った場合、数秒から数分間の沈黙の後で、SCP-646-JP-Aは「それは変えられない」もしくは「分かった」とだけ返答を行い通話を終了します。返答結果が前者だった場合、SCP-646-JPの異常特性は発揮されません。一方で返答結果が後者だった場合、通話終了と同時に被験者が回答した通りの「"A"を"B"に変える」という形で現実改変が行われます。この現実改変について、被験者以外の人間が変化に気付くことはなく、違和感を抱くこともありません。また、改変された物体/事柄の周辺においてヒューム値の変動は確認されず、この要因は後述する改変経緯のためと考えられます。 現実改変の完了後、改変を受けた事柄について調査を行うと、過去に不明な男性(以下、SCP-646-JP-B)がその事柄に関与していた事実を必ず確認できます。それに加え、SCP-646-JP-Bがその当時に取った何らかの行為の結果として、全ての事柄が現在の形に改変・再決定されていたことが明らかになっています。以上のことから、SCP-646-JPによる現実改変事象は、SCP-646-JP-Bが行なった過去改変の結果として齎されていると考えられています。なお、目撃者の証言やSCP-646-JP-Bを直接記録した映像から、SCP-646-JP-Bの外見はスーツを着た30代ほどの日本人男性であることが確認されており、一部ではSCP-646-JP-AとSCP-646-JP-Bを同一視する意見も挙がっています。 SCP-646-JPは20██/09/21に██県██市███で発見、回収されました。調査より、19██/07/06にSCP-646-JPを当該地区に設置したとする記録が確認されています。しかし、設置当時には異常特性や張り紙が存在しなかったことから、最近になって異常特性が付与されたものと推定されています。回収当時、SCP-646-JPは物質/事象再構築型の現実改変を発生させるオブジェクトとして扱われていましたが、実験記録646-JP-8から得られた潜在的な危険性を鑑みた結果、現在のオブジェクトクラスへと分類されました。事案646-JPの後にNeutralizedへと再分類されました。 付録: 以下はSCP-646-JP実験記録の抜粋です。 + 実験記録(抜粋) - 実験記録(抜粋) 実験記録646-JP-1 - 日付20██/██/██ 被験者: ██ ███3 実験概要: 収容外で発生した改変事象。██ ███は「いじめられない自分になりたい」と回答。 実験結果: SCP-646-JP-Aは数分の沈黙の後で「分かった」と返答。通話終了とともに、██ ███は自身の身体の異常な変化と見に覚えのない複数の傷跡を見つけた。また、地元の空手大会で優勝を収めたという経歴の出現および、それを観戦したと主張する多数の知人の存在も確認できた。 過去調査: ██ ███の母親は、██ ███が熱心な"空手の先生4"に教わったことで大会で優勝できたと証言。この証言および、"空手の先生"について██ ███は「そんな人は知らない」と主張。また、母親は"空手の先生"が近所に住む30歳ほどの男性だと説明したが、調査ではそのような人物は発見できなかった。 分析: SCP-646-JPによる記録上初の現実改変事象。人体だけでなく、歴史や認識まで改変可能のようだ。また、改変の辻褄が合うように、実在しない人物の存在を出現させることができるのかもしれない。 実験記録646-JP-4 - 日付20██/██/██ 被験者: D-8164601 実験概要: 「自身の性別を完全な女性にしてくれ」と回答するように指示。 実験結果: SCP-646-JP-Aは数分の沈黙の後で「それは変えられない」と返答し、通話を終了。現実改変は確認できなかった。 過去調査: 現実改変は確認されなかったために行われていない。 分析: 実験記録646-JP-1からも分かるように、SCP-646-JPは人体も改変可能なはずだ。SCP-646-JPが改変可能な事柄にも、何らかの条件や制限があるのだろうか。SCP-646-JPの改変可能範囲について、更に調査を進める必要がある。 実験記録646-JP-5 - 日付20██/██/██ 被験者: D-8164601 実験概要: 「D-8164602を死体にしてくれ」と回答するように指示。 実験結果: SCP-646-JP-Aは即座に「それは変えられない」と返答し、通話を終了。通話終了後もD-8164602は生存していた。上記と同じく現実改変は確認できなかった。 過去調査: 現実改変は確認されなかったために行われていない。 分析: 前回と同じく改変を拒否。しかし、回答までの時間に大きな開きが見られた。SCP-646-JP-Aは何らかの行動原理・思想の元、改変の可否を決定している可能性もある。 実験記録646-JP-8 - 日付20██/██/██ 被験者: D-8164601 実験概要: 「実験担当者の██博士の服の色を変えてくれ」と回答するように指示。 実験結果: SCP-646-JP-Aは数秒の沈黙の後で「分かった」と返答。通話終了とともに、D-8164601は██博士の白衣が黒のシャツへと変わっていることに気付いて報告した。██博士は自身の服が変わったことに違和感を抱いておらず、「なぜか白衣が見つからなかったので、仕方なくこれを着て来た」と証言。実験に立ち会った他の職員も「██博士は最初から黒のシャツを着ていた」と主張した。 過去調査: サイト内の監視映像には、██博士の自室に忍び込む不明な男性5の姿が残されており、男性は数着の白衣を小脇に抱えて部屋から出てきていた。また、この事案に対して侵入警報が発令されていたにもかかわらず、当該の男性は確保されていなかった。 分析: 映像記録から考えるに、謎の男が過去にとった行動の結果、現在の██博士の服が変化・再決定されたということだろうか? それなら改変に際して、ヒューム値に変動が見られなかったのも頷ける。しかし、なぜこの男は、わざわざこんな手間をかけてまで下らない頼み事を実現させてくれるんだ? 実験記録646-JP-8の過去調査後、SCP-646-JP-Bの存在を考慮した結果、暫定的なオブジェクトクラスからKeterへと分類されました。同時に特別収容プロトコルは大幅に改訂され、SCP-646-JP-AおよびSCP-646-JP-Bの確保がSCP-646-JP研究プロジェクトの最優先事項として指定されました。 一見すれば、SCP-646-JP-AおよびSCP-646-JP-Bは被験者からの依頼がなければ過去改変を起こさぬ機械的な存在にも見える。しかし、それが真か否か、我々に確かめるすべはない。SCP-646-JP-Bは自由意思で過去に赴き、その時代の出来事に関与できる可能性さえあるのだ。我々は、そのような存在を決して野放しにはできない。 - ██博士 実験記録646-JP-██ - 日付20██/██/██ 被験者: D-8164601 実験概要: 「第██収容室の切れた電球を新しく変えてほしい」と回答するように指示。第██収容室の電球は事前に消耗させておき、SCP-646-JP-Bについて事前に説明を行った警備員10人を配置した。なお、この実験はSCP-646-JP-B確保計画の一環として実施された。 実験結果: SCP-646-JP-Aは即座に「分かった」と返答。通話終了とともにD-8164601に確認させたところ、第██収容室の電球は新品に取り替えられていた。また、SCP-646-JP-Bは確保できていなかった。 過去調査: 第██収容室に設置したカメラには、電球が切れると同時にSCP-646-JP-Bが入室する様子が記録されていた。入室したSCP-646-JP-Bは配置されていた警備員を見ると即座に逃走し、警備員6人がその後を追った。しかし、その270秒後、ダクトから催眠ガス弾6が投下され、残っていた警備員4人の鎮静とともに、同じダクトからガスマスクを装着したSCP-646-JP-Bが部屋に侵入、電球を交換するとSCP-646-JP-Bは出てきたダクト内に引き返した。警備員6人は逃走したSCP-646-JP-Bを追い続けていたが、追跡から190秒後に姿を見失っており、確保には至らなかった。 分析: SCP-646-JP-Bの確保は失敗。どんな手段を使っても願いは叶えるということか。今回得られたデータを十分に考慮して、次の計画に臨む必要がある。 事案646-JP: 20██/██/██に行われた実験において、D-8164601は事前に指示されていた文章ではなく、SCP-646-JP-Aに対して「俺を自由にしてくれ」と回答を行いました。D-8164601は即座に拘束されたものの、その騒動の際にSCP-646-JP-Aとの通話が途切れたことで、現実改変の有無を確認できませんでした。その後、D-8164601に見た目上の変化が見られず、D-8164601自身がSCP-646-JP-Aと通話を行なったことを記憶していたことから、SCP-646-JP-AがD-8164601の回答を了承しなかったものと一時的に判断されました。 後日、実験は別のDクラス職員を用いて再開されました。しかし、SCP-646-JPに上記の電話番号を入力しても、SCP-646-JP-Aへと接続されず、入力した電話番号が存在しない旨を知らせる機械音声が流れるだけであることが報告されました。その後に行われた███回の検証実験から、SCP-646-JPの異常特性が完全に消失したものと判断され、再分類が行われました。 追記: 20██/██/██の事案後、D-8164601自体が記憶/人格ごと他者と入れ代わっている可能性を考慮し、D-8164601の経歴について詳細な調査が行われました。その際、D-8164601は自身の前科・犯罪歴の中に、身に覚えのない殺人罪が追加されていることを報告しました。当時の供述書によると、D-8164601が初めて行なった強盗事件の際、突然見知らぬスーツの男が家屋に上がり込んできて揉み合いとなり、その時に持っていたナイフで男を殺害したという内容でした。また、強盗被害者の証言書には、スーツの男はしきりに「悪いことは止めるんだ」、「考えなおせ」、「まだ間に合う」などの言葉をD-8164601に投げ掛けていたと記述されていました。 上記の殺害された男性は身元不明人として扱われ、19██/08/24に地元自治体によって行旅死亡人として処理されました。現在、男性とSCP-646-JPについての関連調査は継続中であり、男性の身元調査の一環とした遺体掘り起こしも検討されています。 脚注 1. 既存の如何なる電話会社/キャリアの識別番号とも異なっており、調査より過去一度も使用された記録がない番号であると確認されています。 2. SCP-646-JP以外の電話機器に入力した場合は繋がることがなく、通常通りに電話番号が存在しない旨を説明する機械音声が流れるのみです。 3. 地元の少年。彼が行った警察への通報が元となり、SCP-646-JPの発見へと繋がりました。 4. 後の実験から、"空手の先生"とされた男性はSCP-646-JP-Bであったことが確認されています。 5. 後の実験の結果から、改めてSCP-646-JP-Bと指定されました。 6. 残留物から、████社の20██年製モデルであることが確認されています。
scp-647-jp
評価: +163+–x 評価: +163+–x クレジット タイトル: SCP-647-JP - 子憂ふ母に芳醇なる忘憂を 著者: ©︎moririn5963 作成年: 2019 評価: +163+–x 評価: +163+–x SCP-647-JP アイテム番号: SCP-647-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-647-JPはサイト-8163のBSL3防疫区画に設置された特殊排水システム搭載型標準防水収容コンテナ(S3D2-C)内に収容されています。回収したSCP-647-JP-Bは一度大型イノックスタンクに貯蔵され、Cクラス有機廃液処理プロトコルに基づいて廃棄されます。 説明: SCP-647-JPは高さ900mm、中央直径790mm、容量228Lの木製洋樽です。遺伝子情報解析の結果、一般的なワイン樽とは異なりザクロ(学名:Punica granatum)に由来する材木で構成されていることが判明しました。 SCP-647-JPは如何なる手段を用いても破壊することは出来ず、また内部温度を38.0℃に保つ高い恒温性を有しています。 SCP-647-JPは醸造イベントを通じてSCP-647-JP-A及びSCP-647-JP-Bを生成します。醸造イベントはSCP-647-JP内部で行われるためその直接的な観察は不可能ですが、超音波やMRIを初めとする非破壊検査によって間接的に調査することが可能です。SCP-647-JP-AはSCP-647-JP内部に発生するヒトの胎児型存在です。初期のSCP-647-JP-Aは胎芽状態で、その成長に伴って一時的に内臓組織やヒトを構成する器官を発達させますが、内部骨格やそれに準ずる器官は存在せず、細胞膜や皮膚によってのみ形状を維持していると考えられています。 SCP-647-JP-B SCP-647-JP-Aはおよそ280日の成長期間を経て成熟し、その後SCP-647-JP-Bへと変化します。SCP-647-JP-BはSCP-647-JP-Aが崩壊して生じたアルコール度数18%の醸造酒です。僅かに濁った赤色で芳香を放っており、ザクロ由来の成分1とヒト由来のタンパク質や脂肪を多く含んでいます。SCP-647-JP-Bは特筆すべき物性を有してはいませんが、嚥下した対象に酩酊感を与えると共に嬰児2の泣き声に似た幻聴を引き起こします。幻聴は20~90秒間持続しますが、この時間は対象がSCP-647-JP-Bの後味を知覚している時間とほぼ同一であることが判明しています。 SCP-647-JP-Aの崩壊から24時間後、SCP-647-JPの蓋部分には小規模な裂傷が発生し、それに伴ってSCP-647-JP-Bがオブジェクト外部に流れ出します。一連の醸造イベントはSCP-647-JP-Bの流出をもって完結し、72時間に及ぶ裂傷の自己修復の後、自発的に反復されます。 補遺1: SCP-647-JPは、████/10/14に京都市伏見区[編集済]の酒蔵で発見されました。同年10/7、酒造業を営む藤原██氏が行方不明になったという通報を受けた京都府警が失踪事件として捜査中、藤原氏が従業員である櫻井█氏に対し“秋津3”と名乗っていたことが判明しました。このことから同氏と“石榴倶楽部”との関連性が浮上したために財団による更なる調査が実施され、当オブジェクトの発見に至りました。なお、その後大規模な捜索が行われましたが同氏の発見には至っておらず、未だ消息不明です。 エージェント・菻によって行われた櫻井█氏に対するインタビューの結果、以下の証言が得られました。 + 櫻井█氏の証言 - 閲覧終了 以前、私はある男性と婚約していました。学生のころから付き合っていた彼はとても優しい方で、結婚した直後は絵にかいたように幸せな新婚生活を送っていました。それからしばらくして子供を授かりましたが、その赤ちゃんは元気に生まれてくることが叶いませんでした。 初めての流産に嘆く私を、彼は気遣い励ましてくれました。そのあと様々な治療を試してみましたがどれも上手くいきませんでした。染色体異常があるとかで、何度身籠ってもすぐ流れてしまうんです。何度も何度も試してみましたが上手くいかず、そのうちに彼はその責任を私に押し付け、暴力を振るうようになり、ついに私は家から追い出されました。お腹には新たな命が宿っていましたが、その日の夜、彼と私の間に残された最後の繋がりは、何の救いもなく産まれる前に流れ堕ちました。 あの夜のことは今でも鮮明に覚えています。ドロリとした赤黒いそれは、ヒトを成していませんでしたが、まだじっとりと温かく確かに私の赤ちゃんでした。そしてその子を掬い上げたとき、私はこの愛おしくてたまらない我が子を食べてしまいたいと思いました。 それは無邪気な女の子でした。口に含んだとき、彼女は私の鼻孔をくすぐり、舌を掴んで離しませんでした。彼女は朗らかで可愛くて、それでいて柔らかく優しい味がしました。私は口の中で少しじゃれついた後、なだめるように彼女を飲み込んであげました。するとその時、その子が産声を上げたんです。そんなことはあり得ないとわかってはいます。でも確かに聞いたんです。やっぱり女の子の声でした。かわいい声でした。私はその夜、我が子と一つになりました。これからは2人で一緒に生きていくんだと確信しました。 ですが、身寄りもなく、住む場所もお金も失った私たちはすぐに路頭に迷い、宛もなくふらふらと京の町を徘徊していました。そんな時に秋津さんが声をかけてくださったんです。ひょろりと背が高く、お洒落な燕尾服に身を包んだ彼は、みすぼらしい私たちを暖かく迎え入れてくださいました。 私はすぐにこの酒造で働き始めました。がむしゃらに仕事をするうち、秋津さんは私に一つの樽を預けてくださいました。それは普段扱っていないワイン樽で、曰く仕込みをせずともお酒が産まれる摩訶不思議な樽なんだそうです。さらに秋津さんは「その樽を毎日愛情をこめて撫で、優しく話しかけておやりなさい。」とおっしゃいました。私は半信半疑ではありましたが、言われるがままに毎日樽を撫で、声をかけるようになりました。 樽を任されてから10か月ほど経った頃でしょうか。いつものように撫でてやっていると、突然蓋に亀裂が入って中のお酒が溢れ出してきました。驚きながらも、樽から溢れ出し、床に滴り落ちるそれを掬い飲んだ私は、甘美で鮮やかなザクロの香りと共に再度我が子の産声を聞きました。 涙が止まりませんでした。いくら望んでも届かなかった願いが遂に叶ったのです。目で、鼻で、舌で、耳で、全身で。我が子を感じ、愛することができたのです。 ゆらゆらと微笑む子供たちは一口愛するたびに違う顔を見せてくれます。無邪気に香る女の子の顔、おとなしく甘えん坊な男の子の顔。みんな私のかわいい子供たちです。ですが私もいつかは子離れしなくてはなりません。愛情をもってひたむきにお酒を造ることこそが杜氏として、何より母親としての私の務めだと思うのです。うちの子たちにとっての最大の幸福は、秋津さんやそのご友人方のように、深い愛情をもって味わっていただける方に飲んでいただくことだと思いますし、その方がうちの子たちもきっと喜ぶことでしょう。 秋津さんには感謝してもしきれません。私の身体は普通の女性のように子を成すことができませんが、私には、私たちには我が子のように愛情をかけて育てたこのお酒があります。 秋津さんがいなくなった今、この子たちを育てられるのは私しかいないんです。 貴女もいかがですか?個性豊かで手間のかかる子たちですが、きっとみんな貴女に飲んでほしいと望んでいるはずです。さぁ。 …どうですか。うちの子、美味しいでしょう? 遺伝子検査の結果、SCP-647-JP-Bと櫻井氏の間には遺伝的共通点が確認されました。また精密検査により櫻井氏には卵巣の欠損が確認されましたが、その他の現実的・生物学的異常性が認められなかったためクラスB記憶処理を施し解放されました。 補遺2: 藤原氏の自宅から、ボトリングされたSCP-647-JP-Bが計12本4発見されました。ボトルには『Carol di prosperità』と印字されたラベルが貼っており、それぞれにNo.109~No.120までの数字が割り振られていました。SCP-647-JPの容量と収容以前に発生した醸造イベント数から推定して、最低███本のSCP-647-JP-Bボトルが現存すると考えられていますが、未だそれらの発見には至っていません。 脚注 1. アントシアニンやタンニン、ビタミンB1,B2,C、エストロゲン等 2. 生まれて間もない赤子。新生児。 3. 京都市内を拠点とする要注意団体“石榴倶楽部”の構成員が名乗る渾名の一。構成員は十名とされており、それぞれ橋詰・椎名・六角・早瀬・宇宿・東条・舟越・秋津・手塚・浮田と呼称されている。 4. 開封済み1本、未開封11本
scp-648-jp
評価: +38+–x アイテム番号: SCP-648-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-648-JPの個体は生物サイト-81██にある昆虫飼育施設の一室に収容されています。SCP-648-JPの異常性を発現させる可能性があるので、収容室に入室する際には円運動を行う物品1を持ち込まないでください。未収容のSCP-648-JPについては機動部隊む-4(”虫とり少年”)によって捜索、回収が行われます。また、SCP-648-JPの異常性によって事故などが引き起こされた場合は当事者の記憶処理と事件に合わせたカバーストーリーの適応が行われます。 説明: SCP-648-JPは異常な性質を持つトンボの一種です。DNA解析の結果によりアキアカネ(学名:Sympetrum frequens )の近縁種であることが判明しています。色や体長、生息地等がアキアカネとほぼ同一のため、目視で二種を判別するのは非常に困難です。 SCP-648-JPの異常性はSCP-648-JPの成虫個体(以下「個体」と称する)が連続する円運動を認識した場合に発動します。SCP-648-JP個体が円運動を認識するとその周囲にいるヒトは回転性の眩暈を発症します。この眩暈は三半規管の異常による一過性のものであり、時間経過によって症状は緩和、消失します。効果は個体を中心としたおよそ直径5~15mの球形の範囲に及び、その強度は個体からの距離が近い程に強いものとなります。眩暈による視界の回転方向はSCP-648-JP個体が認識した円運動の方向と同一です。この眩暈に加え、SCP-648-JP個体が異常性を発現させている時にその周囲約80cm以内にいるヒトは、個体に最も近い体の部位を起点として全身が円運動の方向にねじれ始めます。この変化は眩暈とは異なり一度始まると対象が死亡するまで止めることが出来ません。対象は最終的に血管や筋肉の断裂、骨折、臓器破裂等によって死に至ります。 個体が一度円運動を認識してから20~30秒間はこれらの効果の及ぶ範囲が個体の周囲に存在します。個体に接近する際には異常性が発現しているか十分に注意してください。なお、SCP-648-JPの幼虫にこの異常性は現れません。 SCP-648-JPは197█/08/██、██県で複数の車両が突然制御を失い公園に突っ込むという大規模な交通事故が発生した際に発見されました。現地に滞在していたエージェントによる調査により、事故の生存者が総じて「突然激しい眩暈がした」「視界が回転し運転どころではなかった」等と供述したことや不自然なまでにねじれた複数の死体が存在していたことが判明し、何らかのオブジェクトによる効果が疑われました。事故の被害者や目撃者には記憶処理を施し、カバーストーリー「真昼の飲酒運転」が適応されましたが、その後の追加調査により事故の当事者だけではなく現場周辺の住民も事故の前後に同様の眩暈を訴えていた事が判明しました。これを受け効果の確認された一帯の中心にあたる公園及びその周囲を捜索した際に、偶然公園内のSCP- 648-JP個体が異常性を発現させたことで確保、収容に至りました。公園内の花壇には風車が多数あり、回転する風車をSCP-648-JP個体が認識したことでその異常性が発現したと考えられています。 補遺1: SCP-648-JP発見後に継続的に行われた個体数調査により、気候変化、開発などの環境破壊、アキアカネとのエサの競合、交雑による形質の消失といった要因によって異常性を持つ個体数が減少していることが判明しました。この為SCP-648-JPの異常性が原因と思われる事故は年々減少傾向にあります。 Footnotes 1. 台車の車輪、ねじ込み式の蓋のついた容器等
scp-649-jp
評価: +88+–x SCP-649-JP繰糸場と推測される写真。██邸にて回収。 アイテム番号: SCP-649-JP オブジェクトクラス: Safe Euclid 特別収容プロトコル: ██邸は施錠の上封鎖され、対外的には財団フロント企業不動産会社の所有物として扱われます。██邸の近隣住居には職員を常に1名以上待機させ、監視を続けてください。敷地内に民間人の侵入が確認された場合直ちに拘束し、記憶処理の上退去させます。 SCP-649-JPの探索、SCP-649-JP-aとの接触を伴う調査は現在凍結されています。第1次から第3次までの調査に参加した全ての職員に定期的にカウンセリングを行い、兆候が見られた場合は速やかにクリアランスレベル4以上の職員に報告してください。調査再開時期は未定です。当該事案については補遺1を参照してください。 説明: SCP-649-JPは岩手県九戸郡██町の██邸客間に存在する、19世紀末様式と推測される内部機構を持った大規模器械製糸工場とその稼働現象です。██邸はかつて養蚕業で栄えた██家の所有物であり、最後の当主であった██ ██氏の死去を機として財団に収容されました。 SCP-649-JPは██邸の床の間と接続しており、物理的に存在し得ない巨大な異常空間を有しています。SCP-649-JPは繰糸場を中心として、乾燥室、置繭所を含む5棟とそれらを繋ぐ通路で構成されています。SCP-649-JPには採光目的の窓が存在しますが、外空間は常に濃霧に覆われており周囲を確認することは困難です。また工場外部へと繋がる扉は発見されていません。SCP-649-JPは蒸気機関を内蔵しますが、ボイラーに石炭及びそれに類する燃料が投入される様子はなく動力資源の由来は不明です。機械や繭を煮る釜から発生する蒸気のためSCP-649-JP内主要棟は温度摂氏35度、湿度75パーセントを記録します。しかし██邸外部から行われたサーモグラフィー検査の結果にその影響は見られませんでした。 SCP-649-JPは栴檀栗毛を主とするウマ(Equus ferus caballus)の頭部と融合した若年モンゴロイド女性で構成される集団(以下SCP-649-JP-aと記述)によって維持されます。SCP-649-JP-aの服装は赤い襷、袴、高草履など日本における器械製糸工業黎明期に従事した上級工女のものと類似しており、その大半は繰糸工程に配置されます。SCP-649-JP-aに生理的欲求は確認されず、SCP-649-JPの環境下においても疲労の様子は見られません。またSCP-649-JPの維持管理に関わる事象以外に一切興味関心を示しません。調査班から行った呼び掛け、物理的接触、攻撃のいずれにも有意な反応は得られませんでした。 SCP-649-JP-aの唯一の発声として不定期に行われる合唱が確認されています。この合唱には位置や所在に関わらず全個体が同時に参加します。以下に内容の一例を示します。 工女のさだめは殺生のさだめ かばねの山を積むばかり 恨み辛みに花が咲くなら 絹のおべべは花の園 泣いてくれるなお蚕様よ みんなお前のためじゃもの 今日は匹繭明日は羽二重 御身尽くした甲斐があろ 前述のSCP-649-JP-aの特性のためSCP-649-JPが停止することはなく、常に生糸を生産し続けます。 補遺1: 第1次及び第2次調査にてSCP-649-JPに接触したエージェント・██、エージェント・███、██服飾技師の3名の結託によって、SCP-███-JPの収容違反、████の破壊を伴う事案が発生しました。ZKクラス:現実不全シナリオを目的としたものと見られ、直ちに再収容作戦及び精神的恐慌状態にあったと見られる3名の即時終了措置が遂行されました。これを受け担当職員会議はSCP-649-JPの内部調査を凍結した他、SCP-649-JP内部調査に参加した職員全てに精神反応検査及びAクラス記憶処理を実行しました。以降同様の事案は発生していません。当該職員の監視と検査を継続するとともに、オブジェクトクラスはEuclidに再設定されます。 補遺2: 以下、SCP-649-JPで行われる製糸の一連の工程です。 乾繭: SCP-649-JP-aが乾燥室へ生繭を運びます。工場内に養蚕所は存在せず、運搬に従事するSCP-649-JP-aは乾燥室前廊下に予兆無く出現するため、生繭の由来の調査は失敗しています。既に蛹が羽化し破壊された繭は取り除かれ、それ以外には熱式乾燥が施されます。この工程により生繭の内部の蛹は乾燥死し、長期保存に適した状態である乾繭となって置繭所に一旦保管されます。 選繭: 乾繭の選定が行われます。蚕の体液による汚れなど瑕疵が認められるもの、その他紡糸に不適当な乾繭は破棄されます。またSCP-649-JP-a群は選定の間乾繭を互いに手渡しており、繭の評価に何度かの判断を要していると推測されます。破棄された乾繭は1箇所に集められ、およそ72時間後に消失します。消失した繭の行方は判明していません。選定された繭は繰糸場に運ばれます。 煮繭: 乾繭を煮て膠着したセリシン層を融和させ、繭の繊維を解し紡糸に適した状態に加工する工程です。SCP-649-JPにおいては繰糸機に釜が備えられており、その内部で蒸気と湯を浸透させている様子が確認できます。その後、充分に解れた繭を箒で撫でることで穂に糸を絡みつかせ、繭を滞りなく解くための1本の正しい糸口を引き出します。引き出された複数の糸を集合させるために集緒器に通し、束ねて1本の糸として補強します。 繰糸: 繰糸機は集緒器から成った2本の糸を合わせる共撚式を採用しています。生糸が細くなるとSCP-649-JP-aは新たな繭糸を補充し、途切れることなく紡がれ続けます。完全に繭を巻き取られた蛹はその軽量さに反して即座に釜の中へ沈み、消滅します。これら蛹の回収が試みられましたが、いずれも回収後数秒で消滅しています。我々は彼らを救うことが出来ませんでした。 揚返: 一旦繰糸工程にて小枠に巻き取られていた糸を湿らせた後、乾燥させながら低張力で大枠に巻き直します。一般的な製糸工程においては、この作業はセリシンの再凝固による糸の接着を防ぎ、また高い張力で巻き取られた糸が弾力性を失い歪んだ状態を正すために行われます。 束装: 大枠から生糸の束が外され、約70グラムの綛が作られます。これらの綛は捻り束ねられ、扱いが容易な形に纏められます。工女は歌い、唯美のために数百数千数万を犠牲とする行為の意義を喧伝します。構成単位としての綛は常に生産され続けます。 織女: 生糸は絹を織るために存在します。束ねられた綛はSCP-649-JP-aの手で製織場へ運搬されます。この製織場へはSCP-649-JP-aを追う以外の手段で到達することが出来ません。SCP-649-JP-aの合唱は家蚕の命の上に成り立つ絹の美を讃える内容を繰り返します。生糸はSCP-649-JP-aの歩みが進むにつれて不明な手段で精錬されます。生糸は練糸となり光沢を保ちます。到達した製織場においては多数のSCP-649-JP-aが巨大な1機の織機に組み込まれています。SCP-649-JP-aが織機に飲み込まれることによって糸は補充されます。工女は歓喜を歌い織機は絹を吐き出し続けます。絹は荘厳な形状を成します。工女は美の創造に身を焦がし、その光芒に眩みます。 天蓋: 霧は晴れ、真理に接続し、視界に糸の存在を認識します。あらゆる地平に糸は存在します。糸は伸び続けます。地から天へ。肉体から空間へ。夢から現へ。下層から上層へ。無数の糸が昇天を続けます。それらは生命の代謝物です。それらは現実の結晶体です。神は花嫁を娶ります。花嫁は工女を演じます。工女は蛹を屠殺します。殉死行為に他なりません。全ては巨塔のためにあり美は屍の上に織り上げられます。不可逆です。手立ては無く、糸は伸び続けます。糸は増え続けます。那由多阿僧祇を超越します。現実は現実と幾層にも絡み合い結果として形作られる構造を知覚します。生老死は包まれています。そして我々は世界がいつか巻き取られることを知っている。 神託: 全ては繭の中。
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評価: +640+–x 評価: +640+–x クレジット タイトル: SCP-650-JP - 人でなし、でく人形 著者: ©︎boatOB 作成年: 2015 評価: +640+–x 評価: +640+–x アイテム番号: SCP-650-JP サイトに現れた直後のSCP-650-JP。 オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-650-JPは標準的人型収容室に加えて対現実改変設備を備えた専用収容室に収容されます。現在、SCP-650-JPは自己的に収容されている状態であり、財団の研究に対して従順ですが、その潜在的危険性が極めて高いことに留意し、収容を継続してください。 SCP-650-JP自体に近づく場合、現実改変性およびヒューム値の変動に対する耐性テストを行い、その耐性がC度以上でない職員は「現実酔い」の症状が出る可能性があります。対現実装備を装着することが推奨されています。 説明: SCP-650-JPは、観測される上では通常の人間と同様に会話・動作・意思疎通が可能な、身長176cm、体重69kgの成人男性の姿をした一体の肉体です。SCP-650-JPの協力下における身体検査では、SCP-650-JPからは生命反応は検出されず、一般的な死体と同様の反応を示しました。 SCP-650-JPの証言を基に、この現象を可能にしている理由について、SCP-650-JPに対して複数の実験が行われました。アドロータリーフィルムハイスピードカメラを用いた撮影では、SCP-650-JPが1単位秒あたり寸分の狂いなく286コマ内のみにて移動を行っていることが撮影されました。 SCP-650-JPが何らかの実体を投擲した場合であっても、投擲物は1単位秒あたりに撮影されたコマのうち、286枚のコマにのみ移動が撮影され、それ以外のコマでは連続した移動は撮影されず、その場にとどまり続けていました。 SCP-650-JPの証言する内容の信憑性の調査として、さらにカント計数機を用いた実験が行われました。 カント計数機は、SCP-650-JPの内外の現実性を示すヒューム値が内部ヒューム0.4/1.6Hm、外部ヒューム0.3/1.5Hmの間で秒間286往復に変動することを示しました。カント計数機は過度な動作によって6分後に故障し、高速のヒューム値の変動により、実験中に複数名の研究員とDクラス職員が軽いめまいや吐き気、微熱、立ちくらみなどの乗り物酔いに類似した症状を覚え、収容プロトコルが書き換えられました。この実験により、SCP-650-JPが低度の現実改変を自身のあらゆる部位、細胞に連続して行い続け、加えて、SCP-650-JPは自身が影響を与える実体に対していくらかの現実改変能力を行使することで外界に影響を及ぼしていると推測されました。 SCP-650-JPは通常人間が意識的に行う範囲の動作に加え、脳神経細胞内に流れる電流の生成、心臓の収縮運動、全身の血液の循環運動などの不随意の運動まで含めた、人間がおよそ細胞を用いて行っている全ての運動を、秒間286回の極小範囲の現実改変を同時多発的に行うことで擬似的に模倣しています。さらなる実験により、SCP-650-JPは本来人間の生存に不可欠であるはずの動作の模倣を欠いたとしても、その存在、異常性そのものには特に影響がなく、SCP-650-JPの行う動作は生存に必要なわけでなく単なる摸倣に過ぎないことが確かめられています。 この事実から、上記の例で言えばSCP-650-JPが投擲した物体は現実改変能力の影響を受け、その位置を秒間286回の現実改変によって消失と生成を繰り返しながら物理的に正当性のある放物線を描いて移動しています。投擲された実体は、一般的な人間が同様の動作を行い、投擲物がその動作を停止するまでの間の動きと同様に現実改変の影響によって移動しますが、この際SCP-650-JPが投擲した物体には重力以外のあらゆる物理的な力が働いておらず、全てが現実改変の影響によるものです。 SCP-650-JPはその出生からおよそ30年の間、自身の異常性に気づくことなく、自らを一般的な人間であると考え、通常の人間が生活するのと同様の動作を自身の現実改変能力を用いて模倣し、潜伏していました。 SCP-650-JPは、20██/██/██に突如財団サイト-81██内部に出現しました。即座に財団職員によって拘束され、幾つかの実験ののち現在の収容が確立されました。 収容から現在まで、SCP-650-JPが自身の異常性を用いて、外部から観測できる形で異常な現象、行動を行った例はSCP-650-JPが陳述した一例のみが確認されています。それ以外の場合、SCP-650-JPはあくまで自身が通常の人間と同じに見えるように自身の肉体の位置を改変し、また脳細胞や神経の電流伝達を一般的な人間のそれに模倣しています。 注意すべき事実として、SCP-650-JPの現実改変能力そのものは随意によるものであり、SCP-650-JP自身が「やろうと思わない」こと、また後述の自身の性格によってその能力が制御されていることに留意すべきです。 SCP-650-JPの収容の経緯についての詳細、SCP-650-JP自身による陳述は以下のファイルを参照してください。 SCP-650-JPによる陳述 SCP-650-JPを破壊する試みは、その肉体の破壊自体は簡単ながら、SCP-650-JPが危機回避のため予測できない現実改変を起こす危険性と、SCP-650-JPの肉体の破壊がSCP-650-JPの無力化に必ずしも繋がらない可能性を考慮し、恒久的に保留されています。
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評価: +66+–x 発見当初のSCP-651-JP。左から、SCP-651-JP-A、-B。子供を模した部分は異常性を持たないと推測される アイテム番号: SCP-651-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-651-JPは2004年に不活性化したまま、現在まで活性化の兆候を見せていません。安全のためSCP-651-JP本体は2024年までサイト-8181において監視が続けられます。 説明: SCP-651-JPは、愛知県名古屋市の████美術館中庭に199█年より設置されていた一体のブロンズ彫刻です。 SCP-651-JPの設置されている台座には、日本語で『家族を守る、勇ましき母親』と題字が彫り込まれており、ブロンズ像はそれを象徴してか小さな子供を伴った夫婦の形を取ります。このブロンズ像のうち、異常性が認められるのはその父親・母親の像のみです(以下、父親の像をSCP-651-JP-A,母親の像をSCP-651-JP-Bと呼称) SCP-651-JP-Aの眼球を模した部分から半径およそ14mの円内部がSCP-651-JPが活性化する効果範囲です。この内部において、"現在の日本で一般的に法律や道徳上ふさわしくないとされる行為"が何者かによってなされた際、SCP-651-JP-A/Bは活性化します。活性化の要素には殺人や暴力、唾を吐きかけるなどの直接的なものから、周囲でDクラス職員によってなされた嘘や暴言のようなものも該当します。 活性化の際、SCP-651-JP-Aは動き出し、像における子供を模した部分を抱きしめます。SCP-651-JP-Bは像の台座から降り、対象に向かって歩み寄ります。この際のSCP-651-JPのいずれかの活動を妨害しようとした場合、それらもSCP-651-JPによる異常性の対象となります。SCP-651-JP-Bが対象のそばまでたどり着くと、SCP-651-JP-Bは身を動かし、ジェスチャーを用いて対象を非難するような身振りを示します。その後、SCP-651-JP-Bはその異常性を発揮します。 SCP-651-JP-Bは対象に向かって歩み寄り、その人物の身体の一部や衣服などをつかみます。直後、対象とSCP-651-JP-Bはその場から消失し、SCP-651-JPは不活性化し、この間周囲で発生したいかなる状況にも反応を示しません。 消失から数日〜数週間後に、SCP-651-JP-Bは元あった場所に出現します。この際、SCP-651-JP-Bのブロンズ製の衣服部分には乱れが生じているか、あるいは別の服に変わっている場合があります。この後SCP-651-JPは再活性化が可能になります。 SCP-651-JPは設置直後からその存在に気づいた美術館職員により警察に通報を受け、財団の知るところとなりました。SCP-651-JPはその日のうちに財団によって回収され、幾つかの実験ののち収容プロトコルの確立に至りました。 補遺: 事案-651-JP-1 追加文書SCP-651-JP: 2004年、財団サイト内で拘留中のDクラス職員の脱走事件が勃発しました。実験中のポータルオブジェクトの活性化により、Dクラス職員はサイト内に収容されていたSCP-651-JP付近にたどり着き、そこでエージェント・五分刈と相対しました。エージェント・五分刈は新人であり、SCP-651-JPの情報を知らないままDクラス職員を射殺しました。この際、SCP-651-JPは活性化し、エージェント・五分刈とともに消失しました。 2006年、エージェント・五分刈がSCP-651-JP-Bを伴ってサイトに帰還しました。直後にSCP-651-JP-Bは逃走し、サイトの地下██階まで逃げたところで不活性化しました。 インタビューログ-651-JP: 回答者: エージェント・五分刈 質問者: 波止崎博士 序: インタビューはエージェント・五分刈の拘束に伴い行われました。エージェント・五分刈へは身体検査が実施され、当時より装備していた武装は取り上げられました。 <記録開始> 波止崎博士: それではインタビューを開始します。……まず、あなたは、SCP-651-JP-Bによってどこへ連れて行かれたのですか? エージェント・五分刈: 財団……です。 波止崎博士: 財団の別のサイトということですか? エージェント・五分刈: いや、別の財団のサイトでしょうか。連れて行かれた先は多分、地球じゃなかった。あいつは俺を掴んで、何ていうか、"飛んだ"。あいつは、今いる場所と同じところまで俺を引っ張っていったように思えました。 波止崎博士: あなたが気づいたことを教えてください。 エージェント・五分刈: 飛んだ先にも同じような、SCP-651-JPみたいなものがあった。あいつは俺をそこまで連れて行くと、空いてた台座に歩いて戻った。俺はパニックになって、まずその場で吐いた。そしたら、SCP-651-JPがまたこっちを……見ました。『信じられない』って侮蔑したようなツラをして。そしてまた、あいつがこっちに歩いてきた。 波止崎博士: それで? エージェント・五分刈: あいつはまた俺を連れてどこかに飛ぼうとした。その時に、掴まれた俺のスーツの襟に、バッチが刺さっていた。あの時俺が着てたスーツでした。……だけど違う。そこには『N・P・R』って書いてあった。そのままSCP-651-JPは俺を掴んで、そしてまた飛んだ。次に飛んだ時、俺は自分の襟のバッチがそもそも刺さってないことに気づきました。 俺は多分別の世界の財団みたいなもののところに飛ばされたんでしょう。そこはSCP-651-JPみたいなものがある世界で、そしてSCP-651-JP-Bみたいなものが丁度ない世界でした。 波止崎博士: よく意味がわかりません。財団の調査では、SCP-651-JP-Bは転移後に連れていったものをどこかに置いて帰還するのだと思われていましたが。 エージェント・五分刈: 分かりません。あれが本当に家族なのか、あれが教育熱心な家族を本当に模しているのかなんて分かりません。あれが本当に家族を守るために、俺というものを排除したかったのかすらも。ただ、俺と一緒に飛んだSCP-651-JP-B、あいつだけが、一緒に飛んだ後の世界でも唯一同じものだった。Aの顔も、子供の服装も毎回少しずつ違った。Bだけが同じだった。 波止崎博士: それで、あなたはどうしたのですか? エージェント・五分刈: 気づいてからは、とにかくめちゃくちゃにやりました。飛んだ後に、子供の像に向かって殴りかかったり、唾を吐いたりした。その度にあいつは俺を掴んで、俺のいなかった世界に一緒に飛んでくんだ。あいつの心情とか、そういうものは分かりませんが。 波止崎博士: では、あなたはそうやって巡り巡って帰ってきたと言うのですか? エージェント・五分刈: 疲労はしてませんでした。銃の弾も、"飛んだ"ら元に戻っていた。飛んだ先の俺は別の俺だったということかもしれません。むしろ疲れが見えたのはあいつの……SCP-651-JP-Bの方みたいでした。 波止崎博士: 銃の弾? エージェント・五分刈: 途中から毎回唾だのゲロだのを吐くのが面倒になってきましたからね。少し待っていれば……"財団みたいなところの誰か"が、こっちに駆けつけてきましたから。私はそこでは"財団みたいなものの職員"の格好をしていましたし……、そこまで警戒もされませんでしたので。 波止崎博士: それで、撃ったのですか。 エージェント・五分刈: はい。私にとってみれば縁故もありませんし……あれは別に、財団職員というより、私からすれば、未知の世界の、未知の要注意団体の構成員だと思うことにしました。1人くらいなら……と。 波止崎博士: それを2年もですか。 エージェント・五分刈: ええ、まあ。そのうち、SCP-651-JP-Bがだんだん崩れてきました。まず顔の銅が溶けてきて、それから体でした。泣いてるみたいでしたね。俺は、いいから早く元の、俺の居た財団に戻してくれればいいのにと思いながら、またどんどんと撃ちまくって、そして、やっと帰ってこれたということになります。 で、あの野郎は今、どうしてるんです? <録音終了> 現在のSCP-651-JP-B。サイト-81██に現在も存在している。
scp-652-jp
評価: +108+–x SCP-652-JP-1a SCP-652-JP-1b SCP-652-JP-1c   ※本報告書は「事例:652-2現出」以後に作成されたものです※   アイテム番号: SCP-652-JP   オブジェクトクラス: Euclid   特別収容プロトコル: SCP-652-JP-1a、1b、1cはそれぞれ10km以上離れた異なるサイトで収容を行ってください。それぞれに共通する収容規定として、SCP-652-JP-1a、1b、1c自体は静物保管用の金庫に収容した上でセキュリティクリアランス3以上の認証キーを必要とする収容室内に保管してください。 各オブジェクトには独自の研究チームが割り当てられますが、比較検証や同時実験、緊急時の円滑な対処に備えて、各チームには専用のホットラインが設けられています。   各オブジェクトの被験者は、各オブジェクトと同じサイトで隔離・収容を行い、それぞれの被験者が接触しないよう、対異常物品収容と同等の警備態勢を以て管理と監視にあたってください。   現在、SCP-652-JP-1aと被験者a群はサイト-8105に収容されています。 現在、SCP-652-JP-1bと被験者b群はサイト-8132に収容されています。 現在、SCP-652-JP-1cと被験者c群はサイト-8169に収容されています。   SCP-652-JP-2は現在サイト-8193に移送・収容されています。収容プロトコル制定のための研究が現在でも進行中であり、詳細は当該研究チームに問い合わせてください。   説明: SCP-652-JP-1a、1b、1cはいずれも、一般的な素材によって構成された、バナナ・スプリットと呼ばれる菓子です。使用されているバナナはいずれもキャベンデッシュ種のバナナ(学:Musa spp.)として市販品との差異も認められないものであり、付属するシロップ類、果実類、アイスクリーム類、ウエハース類、クッキー類、チョコ類、クリーム類等にも組成上目立った異常はありません。 しかしながら、SCP-652-JP-1a、1b、1cいずれも、その構成物質が腐敗する兆候は見受けられず、バナナが熟していくような様子も観察されていません。また、どのような破損も7秒以内に、食器の上に盛り付けられた状態で即座に修復されます。この修復は破損部を引き寄せて繋ぎ合わせるのではなく、破損部が新たに生成されることで行われます。よって、SCP-652-JP-1群に対する摂食行動は中断されません。   SCP-652-JP-1群のバナナ部分を人間が摂食した場合、被験者にはそれぞれのオブジェクトに応じた固有の異常が発生します。以下は、それらオブジェクト固有の具体的な異常を簡易的にまとめたものです。 SCP-652-JP-1a(被験者a群): 摂食後4秒以内に被験者は昏睡します。その後、約2週間以内に被験者の表皮に於いて4〜7本のバナナの苗が生育します。これは被験者の皮膚と完全に融合しており、被験者の皮膚と筋肉の一部が変化して形成されるものであると思われます。苗は6〜7ヶ月間生育を続け、その間被験者の肉体の体表面はバナナの草本の偽茎底部と同一の物質へと変異し、楕円形の根茎部であるかのような形態へと変化しますが死亡することはなく、脳科学的に一定の昏睡状態を保ちます。バナナの草本は、果実が収穫できるまでに生育した時に成長を停止し、以後は果実を生成し続けます。果実に異常性は見られませんでした。   SCP-652-JP-1b(被験者b群): 摂食後ただちに被験者の全ての筋肉組織がキャベンディッシュ種のバナナの果肉に置換されます。同様に、皮膚は同品種の皮に、血液と脳組織は同品種を素材としたバナナジュースに、内臓は同品種の種子の集合物へと置換されます。これらの置換は骨格や血管あるいは神経系に影響を及ぼさず、また、従来の人体が持つ機能をも有しています。しかしながら、脳組織の全てがバナナジュースに置き換わったことによって、内臓機能や自律神経に影響は無いものの知能は0歳児とほぼ同等のものへ変化し、発育の兆候も認められませんでした。被験者b群は全員、バナナに強い関心を示しますが、皮を剥いて果肉を目の当たりにした時、必ず泣き出してバナナを放り捨てます。   SCP-652-JP-1c(被験者c群): 摂食後外見上の変化はありませんが、どの被験者も、およそ1週間をかけて人格が変化し、積極性の向上や社会性の向上、楽観主義への転向と共に、全員が同一人物であるかのような、振る舞いや口調の模倣的変化が発生します。その後、被験者はあらゆる行動にバナナあるいはバナナの一部を使用するようになり、その目的に於いて、キャベンディッシュ種のバナナの果実を空間中に生成する能力を獲得します。以下は、被験者が実際に行った「バナナを用いた奇行」の部分的一覧です。また、被験者c群は全ての食事をバナナで済ませ、バナナジュース以外の水分を摂りませんが、健康への悪影響が観察されたことはありません。 ・バナナの皮でスリッパを作成し常用 ・バナナの皮で衣服を作成し着用 ・バナナの皮の後端部をペン先としてインクに浸し筆記を行う ・バナナの皮を袋状に縫い合わせたものにバナナの果肉を詰めて枕を含んだ寝具として使用 ・喧嘩にバナナを武器として使用 ・バナナの果肉を削ってスプーンや箸として使用 ・バナナの果肉を口や鼻に詰めて、バナナを介した呼吸の実践を試みる ・バナナの皮を雑巾やタオルの代用として、清掃や吸湿に使用する ・バナナの種子を集めて体に押し当て、垢擦りとして活用 ・バナナを銃器に改造し、種子を弾丸として発砲しようとする ・バナナの皮で装丁を、バナナの果肉繊維でページを、バナナの種子で点字文字を構成しての書籍作成 ・負傷部位にバナナの皮や果肉を押し当てる、あるいは巻きつけて炎症の抑制または回復の促進を図る ・バナナを工具として使用し、1/1バナナ立体造形の作成を完遂 ・HPMCカプセルにバナナの果肉を詰め、薬剤として自らに服用 ・輪切りのバナナを加工し、指輪やピアス等の装飾品として着用   被験者c群被験者へのインタビュー記録抜粋: 対象: D-652-16 被験者c群に分類されてより6日目 インタビュアー: 横樹博士 付記: 対象はSCP-652-JP-1cのバナナ部分を摂食後、人格が完全に変容している。実験前の様子と比較する場合は研究チームに資料652-B-N-Aとして申請すること。また、このときD-652-16はバナナの皮で構成された自作の衣服と帽子を着用している。 <記録開始> 横樹博士: あー、で、この資料によると、君は昨夜バナナの皮でIDカードを自作しようとしたようだね。一体どうして、それをしようと思ったのかな? D-652-16: それがバナナ・スピリッツだからだぜドクター。 横樹博士: すまない。もうすこし分かりやすく、詳しく教えてくれると助かる。 D-652-16: [7秒間沈黙。その間、ため息をつきながら頭部を左右に小さく振る] いいか、まずここにバナナがあるよな? D-652-16が自身の右手上にバナナを出現させる。保安要員が鎮圧を行いかけるが横樹博士により制止 D-652-16: 続けるぞ? まずこのバナナだが、こいつはタネと、果肉と、皮で出来てるよな? 重要なのはこの三つなんだ。外側の皮があって(バナナの皮を剥き始める)、中の果肉があって、奥にタネが入ってる(バナナの果肉をかじり、内部にあるタネを横樹博士に見せつける)。これがバナナの全てだ。そしてこの構造は、バナナだけの法則じゃねえ。あらゆるモンが、この三つを一つとして成り立ってんだ。三位一体ってやつ、わかる? アーハン? 横樹博士: [5秒沈黙] 続けてくれ。 D-652-16: ってことはだ、この宇宙はバナナと同じなんだよ。そんでこの一本のバナナも、宇宙と同じなんだ。だからどんなモンでもバナナになれるし、バナナはどんなモンにもなれるんだ。それが分かりゃあ、当然なんでもバナナにした方がいいだろ? 元の価値を否定するわけじゃねえが、バナナでないよりは、バナナだった方が良いに決まってるだろ? だからバナナは世界で一番食べられてるフルーツなのさ。 横樹博士: [7秒沈黙] それで、終わりかな? それがバナナ・スピリッツというものなのか? D-652-16: ああ、そうだぜ。あのバナナを食べてから、俺のハートじゃあ、最高にトロピカルでホットでファンキーなリズムが鳴りっぱなしなんだ! これまでの人生が霞んじまうようなイカしたミュージックがエンドレスで鳴り続けてんだ。それが俺のバナナ・スピリッツ、バナナの魂なんだよ。 横樹博士: [10秒沈黙] わかった。今日はここまでにしよう、協力に感謝する。 D-652-16: こちらこそだドクター、最高のセッションだったぜ。バナナ食うかい? <記録終了> 終了報告書: ここまで奇怪な状態は初めて見た。強迫的でも義務的でもなく、ただありのままの常識として、バナナへの置き換えを肯定している。実験前の記憶や、自身が大きく変化した自覚も持っているのに、そのズレに対して葛藤するでもなく、現状を受け入れている。しかも、薬物等による興奮の兆候や一時的昂揚の様子も見られない。あたかも、元からあのような人格であったかのように、平常そのものである。もっと多くのケースで実験し、比較することでこれらの変化の本質が探れるかもしれない。       事例:652-2現出記録:   19██/05/██、SCP-███-JPの収容違反がサイト-8141内で発生。当時、各被験者群と各SCP-652-JP-1群の相互性比較のため、各被験者群をサイト-8141内に一時的に収容していた。 SCP-███-JPの収容違反による二次収容違反の発生時、被験者c群個体が脱走。施設の構造や収容室の割り当てを知らないにも関わらず、迷うことなく被験者b群個体の収容室へ向かうと、道中で拾得したIDを用いて収容を違反。 引き続いて被験者c群個体は被験者b群個体の手を引いて、被験者a群個体の収容室へ向かい、同様の手口を用いて収容室内に侵入した。   侵入後、被験者c群個体と被験者b群個体は同時に被験者a群個体に接触。その直後に被験者a群個体、b群個体、c群個体は融合。各個体は高速で混ざり合いながら空中に浮遊し始め、直径50cmほどの完全な球体へと変化した。 変化後、しばらくの間球体は緩慢に表面が流動するのみで大きな変化は見られなかったが、一週間後、表面から被験者a群が生育させるものと同様の、バナナの草本が一本のみ、40日間かけて成長を始める。 草本はバナナの果実を一本のみ、成熟した状態で生じさせると、果実を落とし急速に枯死した。この果実には腐敗や更なる熟成が見られないが、SCP-652-JP-1群のような摂食時の異常性は有していない。 草本の枯死後も球体は依然として状態を維持し続けており、研究チームによってSCP-652-JP-2として認定され、研究と収容プロトコルの策定を要する対象であると定められた。   また、本事例によって各SCP-652-JP-1は以前よりの予測通り相関的関係にあるものと確定し、同一ナンバーのオブジェクトとして扱われることとなった。   補遺: SCP-652-JP-2内部の継続的な有機スキャンと成分検査の結果、SCP-652-JP-2の表面部分はバナナの皮と、バナナジュースと、未知のコラーゲンタンパク質がゼラチンへ変性したものとが混合した、ゲル状の物質であると判明しました。 また、表面部分の奥にはキャベンディッシュ種と似た未知のバナナの果肉が詰まっています。この果肉部分の中心部には直径およそ5mm程度の空洞部分があり、磁気検査や放射線測定、放射線スキャン撮影の結果、この空洞部分は宇宙空間とほぼ同様の環境であると思われます。不明な理由から、無重力の空間でもあり、球体の浮力の源ではないかとも推測されています。   この空間に対して追加の調査や観察を実行したところ、内部の物質は、少なくとも本来の1/400のサイズである、バナナの皮や果肉、種子の欠片で構成されていることが判明しました。銀河系や惑星や恒星のような存在も確認されており、独自の生命体が存在する可能性も示唆されています。   SCP-652-JP-2に対する追加調査と研究、特別収容プロトコルの策定は現在も進行中です。
scp-653-jp
評価: +132+–x アイテム番号: SCP-653-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-653-JPはサイト-8123の低危険性物体保管ユニットに保管されます。倫理的な理由からSCP-653-JPを実験に使用するにはレベル4クリアランスの職員3名以上の許可を必要とし、また必ず財団の倫理委員会による立会の上で実験が行われます。市場に流れたSCP-653-JPを即座に回収するために、財団のダミー企業及び警察に潜入中のエージェントによって「危険な製品」のカバーストーリー及び強制的な回収が行われています。 説明: SCP-653-JP-1~6は定期的に毛布市場に流れる、6種類の子供サイズの毛布で、それぞれ[編集済]やサ████社、ウ█████・デ██████カンパニーといった企業が出しているキャラクターに限りなく酷似したキャラクターが、恐竜やファンタジーの怪物などと戦っているところがプリントがされています。毛布のタグには以下の様な文面が書かれています。 よい子の皆、ママやパパ、おともだちのことは大好きだけど、ときどきとおくに行きたいって思ったことはあるかい? そんな時は『博士のわくわく大ぼうけん毛布』をかぶって、早めにぐっすり! 目がさめたら大ぼうけんが君をまっている! ティラノサウルスにも、じゃあくな魔王にも、きみは出会える! さあ、気に入った毛布をかぶって、今日はねむろう! 大ぼうけんがきみをまってるよ! 楽しもうね! 親御さんへ:クーリングオフ及び使用の際の事故などへの対応は初回使用の際のみ受け付けます。当社へのご連絡の際は以下の番号へどうぞ。03-███-████ 16歳以下の子供(以下、『被験者』と表記)がSCP-653-JPを被った状態で眠りについた場合、SCP-653-JPの特異性が発揮されます。最初の影響において、眠りについた被験者は毛布の絵に合わせたヒロイックな夢を見ます。多くの場合夢の中の被験者は現実の能力にかかわりなく、圧倒的な力を持っており、現れる怪物を倒し、危機を乗り越えます。夢の最後に必ず「ワンダーファクトリー重工総研博士」という名札を付けた、白衣を着てマスクとサングラスを付けた男性が、被験者が「非常に明るい」と形容する声で、以下の様な発言を行います。 「『博士のわくわく大ぼうけん毛布』を使ってくれてありがとう!」 「これはあくまでも体験版だよ! 明日から真の冒険が始まる!」 「楽しもうね! 気をつけてね!」 この発言に対して何らかの会話を試みても、被験者が一方的に無視されるという結果に終わります。また、多くの被験者は見た夢に関して、「面白いけど、自分の体を動かしているのではなくて、録画された映像を見ているようだ」という感想を述べます。 SCP-653-JPを被った状態で眠りにつくのが二回目の場合、被験者は毛布の絵に合わせた、未知の場所へと転移します。地球上ではないと思われる場所があるにも関わらず、カメラや携帯電話、無線機などの機器によって被験者とは容易に通信が可能です。その場所には危険な未知の生命やそもそも生存に適さない環境といった、被験者を容易に殺害しうるものが存在するため、これまでのすべての被験者が死亡しています。被験者が死亡した場合、毛布にくるまれた状態で死体が被験者が眠りについた場所に再転移します。 以下にSCP-653-JP1~6の外観及び転移場所を表記します。転移先に関する情報は消費したDクラス被験者に取り付けた小型カメラの映像から得られました。 アイテム番号 外観 初回使用時の夢 転移先 SCP-653-JP-1 [編集済]に酷似したキャラクターが、戯画化されたティラノサウルス・レックスだと思われる生物へ散弾銃を撃っている。 被験者は巨大な恐竜を散弾銃を使用して狩る。被験者は圧倒的な身体能力と反射神経を持っており、いかなる攻撃も回避できる。 未知の密林への転移。被験者の目の前にティラノサウルス・レックスに酷似した生物が立っており、これまで全ての被験者が転移した後1分以内に捕食され死亡する。 SCP-653-JP-2 ハ███████に酷似したキャラクターが、小惑星の上で典型的なタコ型宇宙人と握手している。 未知の小惑星の上で宇宙服を着た被験者がタコ型宇宙人及び、美しい青色の肌の女性に歓待され、様々なサービスを受ける。 未知の小惑星への転移。宇宙空間に放り出されるため、対象は即座に死亡する。映像からは宇宙人の姿は確認できていない。 SCP-653-JP-3 [編集済]に酷似したキャラクターが、ダンジョンズ&ドラゴンズで描かれるオークによく似た緑褐色の肌の人型生物の集団から逃走しつつ、指輪を溶岩に向かって投擲している。 被験者は魔術師となり、中世ヨーロッパ風の甲冑を着た戦士数十人とともに緑褐色の人型生物と戦う。被験者は巨大な炎の玉、稲妻、巨大な尖った氷柱をオークの群れに投げつけることが出来、また戦士の練度が非常に高いため負傷することがない。 未知の火山地帯と思われる場所に転移。原始的な武器で武装した緑褐色の人型生物の集団が1キロメートル程度離れた場所から被験者を追跡し、追いつき次第殺害する。被験者の生存時間は最も長く 最大で52分の生存が確認された。なお、仲間や指輪の存在は確認できていない。 SCP-653-JP-4 ド██████に酷似したキャラクターがバイキング船の上で剣と盾を持ち、巨大な蛸のような生物相手に戦っている。 被験者は複数のバイキングに酷似した戦士とともに大砲に取り付き、巨大な蛸に向かって大砲を発射する。蛸の攻撃は船を揺らすだけであり、一方的に被験者が勝利できる。 未知の海上に転移。バイキング船から約100メートル離れた、海抜60メートルほどの高さの海上に被験者は転移するため、多くの場合海へと墜落して衝撃により死亡する。生存していた場合ミズダコのものに酷似した、長さ20メートルを超える触手が海中から出現し、対象に巻きつき圧死させる。 SCP-653-JP-5 東京都と思われる都市の中で、ウ███████に酷似したキャラクターが、[編集済]に酷似した怪獣と組み合っている。 被験者はデバイスのようなものを使うことでウ███████に変身し、巨大な怪獣を殴り倒す。圧倒的な戦闘能力を被験者が得るため、決して負傷することはない。 被験者は約1秒後に巨大な怪獣のものと思われる足に潰され死亡する。 SCP-653-JP-6 大量の半魚人のような生物に対して、禁酒法時代のマフィアのような格好をした[編集済]がドラムマガジン式の短機関銃を発射している。背景には[データ削除]。この毛布のみ「南緯47度9分、西経126度43分」という文字が絵と共に縫いとられている。 被験者はどこかの島の上で半魚人の群れに対して軽機関銃を乱射し、殲滅する。半魚人が非常にのろまであるため、容易に殲滅が可能である。また、同行者として褐色肌の美女が現れ、被験者に危険を教えるため、包囲などの危機的状況に陥ることはない。 [データ削除]。SCP-653-JP-6を使用した実験はこれ以降禁止された。映像を拷問用に利用するかは現在検討中である。 補遺: 19██/██/██に、SCP-653-JPに書かれた電話番号から、ダミー企業に対して連絡が来ました。当時の担当者であるエージェント・カナヘビが電話で接触を行った際の記録です。それまで、この電話番号に電話を掛けても、常に留守番電話へと繋がるだけでした。後述する理由により、内容はエージェント・カナヘビの記憶による筆記となっています。 エージェント・カナヘビ:「もしもし」 電話相手:(中年の男性とみられる声で)「……わかってるだろあんたら。なんでうちの製品を回収してるんだ?」 エージェント・カナヘビ:「お宅の『博士のわくわく大ぼうけん毛布』に致命的な欠陥があるからやけど」 電話相手:(溜息)「あーはいはい、あれね、事故があった場合うちの責任じゃありませんから。書いてますよね?」 エージェント・カナヘビ:「死人が出てるんやけど」 電話相手:「あー、はいはい、で? せーきーにーんーを負いません、って書いてあったでしょ? 日本語読めます? 勝手に回収してもらったら商売上がったりで困るんだけど」 エージェント・カナヘビ:「なんであのようなものを作ろうと思たんや?」 電話相手:(鼻で笑う)「知りませんよそんなこと。あと責任負いませんからね?」 エージェント・カナヘビ:「自分たちの行為には問題なんかあらへんて、言うとんのか?」 電話相手:「何あんた? 言っとくけどうちの会社、本社は日本にないからね。訴訟しても意味ないから。違法なことしてないよ? え? 喧嘩売ってる?」 エージェント・カナヘビ:「こういうものをこれからも売り続けるわけなんやね?」 電話相手:「いやあんたに言われる筋合いないから。んじゃ切るわ。バーカ! クソ財団、死ね!」 (24秒間の爆音) (切断) 電話から流れてきた爆音を聞いた人間の職員は、全て音を聞いてから1時間以内の短期記憶及び、SCP-653-JPの情報に関する記憶を喪失しました。録音機器及び電話機は破壊されました。混乱が収束した後、SCP-653-JPに書かれた電話番号に対して再度電話を掛ける試みは、電話番号の使用が既にされていないという結果を残しました。逆探知の際の位置情報に従ってエージェントを派遣した結果、当該の場所には廃ビルしか存在しませんでした。”博士”がどうやって財団のことを知り得たのかは不明です。
scp-654-jp
評価: +250+–x SCP-654-JPナビゲータ SCP-654-JP 初めに   SCP-654-JPは、21██年██月██日に突如出現したオブジェクトです。項目内容を編集・消去・追加・閲覧制限を設けることは、全て失敗に終わりました。 SCP-654-JPは、SCP-654-JP-補足-B・SCP-654-JP-補足-C・[データ破損]・SCP-654-JP-補足-Eで構成されています。いずれの補足内容は転載されたもので、現実世界で現存する財団職員が記述した情報及び内容は一切含まれていません SCP-654-JP項目前ページにセキュリティレベルの承認を行うことで、閲覧制限を行っています。セキュリティレベル3以上の職員にのみ閲覧が許可されます。 ……………… ……… セキュリティレベルを承認しました。 次ページに移行して下さい。     + SCP-654-JP-補足-B - SCP-654-JP-補足-B   Item #: SCP-654-JP   Object Class: Euclides Kether Juggernaut 取扱方: SCP-654-JPが観測可能である██山に建設された礼拝堂から半径500m以内の区域を封鎖し、職員及び部外者がSCP-654-JPを視認することがないよう監視を行って下さい。封鎖区域に侵入しようとした人間には、尋問と記憶処理を実施して下さい。SCP-654-JPの観測領域の拡大が確認された場合、サイト管理者に報告し、封鎖区域の範囲を拡大して下さい。 概要: SCP-654-JPは██県███市に位置する、標高820mの██山の中腹に建設された礼拝堂の中庭内の上空、半径約4m150m内(以下、領域)を肉眼で視認した瞬間、認識障害を発症する異常空間です。SCP-654-JPは領域外から上空を視認した場合、認識障害を発症することはありません。SCP-654-JPが観測可能である礼拝堂は25██年、新興宗教の一員である███氏が建設したもので、オブジェクトが財団に発覚するまで50年もの間、使用された痕跡はありませんでした。 SCP-654-JPが観測可能な礼拝堂の中庭 SCP-654-JPによる認識障害は、時間経過によって症状が進行します。進行の度合いは極端な個人差があることが判明しており、中期症状者は記憶処理を施すことで初期症状に症状を緩和させることが可能ですが、SCP-654-JPによる影響から脱することは出来ません。 初期症状における一般的な症状として、自然界に存在する雲や発生した波浪を罅割れや亀裂・星や月等の天体を穴のように認識します。その他に軽度の高所恐怖症を発症します。 中期症状では、初期症状で報告される症状の他に、異常な圧迫感を訴えるようになります。中期暴露者に圧迫感の理由を尋ねたところ「段々小さくなる」とコメントされており、この発言の意味は未だ明らかになっていません。 中期暴露者は夜間になると異常な行動を開始します。天体に向けて両腕を伸ばして、中空を掻き分けるような仕草を行います。この時暴露者は「月が出口(もしくは穴)であり、早く出なければならない」と訴え、付近に鏡や水面など天体が投影された物体が存在する場合、その穴に急接近し中に入ろうとする動作を行います。この異常行動の投影対象が鏡である場合、爪が剥がれることも厭わず、時間経過によって天体が投影されなくなるまで鏡面を引っ掻きます。水面が対象の場合 [データ消失]、溺死するまで同様の行動を行うことが確認されています。 末期暴露者は重度の高所恐怖症と閉塞感を訴えるようになりますが、中期暴露者と同じ異常行動を行うことはありません。末期暴露者は未観測者に対して、SCP-654-JPを視認したことにより発症した認識異常を認知させようと、積極的にオブジェクトに関する発言を行います。末期感染者の話に興味や共感を抱いた人間は、SCP-654-JPを直視の有無に関係なく、初期症状と同様の認識障害と恐怖症を発症します。末期感染者による二次感染は初期症状のみに限定され、SCP-654-JPを視認しない限り症状が進行することはありません。 Appendix-1: SCP-654-JPの観測領域は、拡大することが判明しました。SCP-654-JPの収容当初SCP-654-JPの観測領域は半径約4mで、礼拝堂中庭の半分程度の面積でした。しかしSCP-654-JPを収容してから3年後、その領域は約150mに拡大。この拡大現象はSCP-654-JPの周辺地域を監視していた職員が、SCP-654-JPによる認識障害を発症させたことにより判明しました。SCP-654-JPの領域拡大について大森博士は、拡大現象の発覚前[編集済]の沖合いで震度6弱の地震が発生しており、地震に影響され領域が拡大したのではないかと指摘しています。     + SCP-654-JP-補足-C - SCP-654-JP-補足-C アイテム番号: SCP-654-JP オブジェクトクラス: Euclides Malchut Juggernaut 取扱方: SCP-654-JPが観測可能な██山に建設された礼拝堂[データ消失] 現在SCP-654-JPが日本国内において観測不可能な場所は存在しません。オブジェクトの収容及び秘匿は未達成のままです。現在財団は機動部隊-や“杞憂”を派遣し、対認識障害防護フルフェイスを着用して、SCP-654-JPの影響を受けた一般市民への対応を行っています。SCP-654-JPを無力化及び終了する方法を急募しています。 概要: SCP-654-JPは██県███市に位置する、標高820m██山[データ消失] この礼拝堂は24██年[データ消失] SCP-654-JPを視認した人間は認識障害[データ消失] 中林博士は[データ消失] SCP-654-JPは自身の位置や距離に関係なく、マグネチュード3.0以上の地震が[データ消失] 拡大することが判明しました。SCP-654-JP収容から██年で、████回の地震が確認されており、収容当初半径約4mであった領域が、150m・300m・10km・300kmと拡大していきました。 現在SCP-654-JPの半径は約1800kmにまで達しており、日本国内に限らず中国大陸からでも観測が可能です。SCP-654-JPの領域が半径200kmを超過した時点で、領域外からの視認でも認識障害を発症することが判明、SCP-654-JPの暴露者は日本国内だけでも1.█億人が確認されており、その数は明らかに財団が対応できる規模を超過しています。 SCP-654-JPがこのまま拡大傾向を停止しなかった場合、EK-クラス世界終焉シナリオを想定し、アンカー計画を実行 [データ消失] 浮上するSCP-654-JP-1 SCP-654-JPの観測領域が約1500kmを超過した時点で、[編集済]の沖合いに、半径約████kmの球体が出現しました(以下、SCP-654-JP-1)。SCP-654-JP-1は自身から10km周辺のあらゆる物体を未知の手段で消滅させながら海底から浮上。SCP-654-JP-1は現在、上空2.3km地点で浮上を停止しています。 SCP-654-JP-1が浮上活動を停止した瞬間、上空に長さ約250km・幅約30kmに渡る裂け目が出現しました。その裂け目の左右に細かい亀裂が発生し、現在も範囲が拡大しています。また亀裂の他に、SCP-654-JP-1を始点に海面及びあおぞらに異常現象が発生、地球上の全海域は「宇宙空間のよう [データ消失] 機動部隊-や“杞憂”を派遣し、調査に参加したエージェントにインタビューを行いました。     + [データ破損] - [データ破損] オブジェクトナンバー: SCP-654-JP OC: Euclid Juggernaut 説明: SCP-654-JPは██県███市 [データ消失] この礼拝堂は23██年 [データ消失] [編集済]の沖合いに [データ消失] 機動部隊-や“杞憂”がSCP-654-JP-1の調査を行っています。 [データ消失] SCP-654-JP-1-調査インタビュー記録 対象: エージェント・七瀬 インタビュアー: 小木博士 付記: エージェント・七瀬は[編集済]に浮上したSCP-654-JP-1の調査を行った人員の一人です。 <録音開始> [データ消失] 小木博士: [ノイズ] それで、[編集済]に出てきたSCP-654-JP-1の様子はどうだったんだ? エージェント・七瀬: 浮上が停止してから調査に向かったんだが、あれ [ノイズ] だ。SCP-654-JP-1の真上に、大きな裂け目が突然発生した。裂け目は縦に真っ直ぐ伸び、亀裂が左右に細かく拡がった。 小木博士: [ノイズ] エージェント・七瀬: [ノイズ] ……裂け目を見ていたら、その中に宇宙が見えた。地球の外に宇宙があることは知っているが、普通距離的に見えるわけがないのに、確かに見えた。裂け目の中をみていると、そこに青い曲線があった。 小木博士: 曲線? エージェント・七瀬: どう言って良いのかわからない。ただ、裂け目の向こうに青い線が見えたんだ。最初は目を凝らさなくても見ることが出来たが、時間が経過するごとに細くなっていった。……まるで水溜りに滴が落ちて波紋が広がるように、青い線は遠くに離れていったんだ。 小木博士: [ノイズ] か? エージェント・七瀬: そうか [ノイズ] い。でも、見間違いじゃない。 小木博士: ……それで、どうなったんだ? エージェント・七瀬: 青い線が遠ざかるにつれて辺りは夜のように……いや、宇宙のような景色に変化していった。変化したのはあおぞらだけじゃない……SCP-654-JP-1も段々変わっていった。SCP-654-JP-1は最初オーロラのような色をしていたが、海の紺碧と、空の群青を反映したかのように変色していった。 エージェント・七瀬: SCP-654-JP-1は周りの風景と合わさって、宇宙にポツンと浮かぶ地球のようだった。……場違いな事を言うかもしれないが、地球の中には地球があるんだと、そう思った。 小木博士: [ノイズ] しれない。SCP-654-JP-1の発生始点 [ノイズ] の真ん中だった。地球空洞説というのを知っているか? 地球の中核は空っぽで、空白部位に知的生命体や未知の惑星があるのではないかという説だ。 エージェント・七瀬: ……博士、空白部位に今の地球より小さな地球が入っている、ということですか? だとしたら、今起きている現象は一体……。今私達がいる地球も、かつては大きな星の中に入っていたと言うのですか? 小木博士: もしそれが正解だったら、今起きているSCP-654-JPの影響は、地球が破壊され中身が出ている段階……そうだな、卵の殻があおぞらで、白身が宇宙、黄身が地球……イヤイヤ、バカなことを言った。忘れてくれ。 エージェント・七瀬: お疲れですか? 小木博士: ちょっと疲れているが何ともない。そう言うきみこそ大丈夫か? 目に何かが入ったと聞いたが。 エージェント・七瀬: 大丈夫です。上を見ていたら、あおぞらの破片が入っただけ……[ノイズ] <録音終了>     + SCP-654-JP-補足-E - SCP-654-JP-補足-E  アイテムナンバー: SCP-654-JP オブジェクトクラス: Eukleides Juggernaut 特別収容プロトコル: SCP-654-JPの本来の項目と、出現したSCP-654-JP-補遺-B・-C・[データ消失]のデータベースの調査を行ってください。礼拝堂の中庭内の上空に異常性が発現した場合、正式にオブジェクトとして研究及び収容を行います。 [データ破損]に添付されていた画像。遠ざかる青い線 説明: SCP-654-JPは22██年 [データ消失]、『本来、SCP-654-JPとして』登録されるはずだったオブジェクトの報告書をアーカイブした瞬間、未知の手段で改変された記事です。本来存在していたオブジェクトの研究内容・報告書は全て改変事象により消失され、SCP-654-JP-補遺-B・-C・[データ破損]に変化しました。改変による現象は書類物に限らず、正規のSCP-654-JPについて記憶を保持する者は、財団内部の人間を含め誰も存在していません。 改変により出現したSCP-654-JPのデータベースは、編集・追記・消去といった操作を“拒絶”します。しかし内部に侵入を行うことは可能で、データ内部はA、B、C、[データ破損]、E、Fの6文字で構成されていることが判明しました。 文字列は1文字つき約2GBほどの異常な容量を有し、この文字列はファイル変換プログラム等、”仕掛け”が施されていないにも関わらず、あらゆる電子機器の画面上に補足-B・補足-C・[データ破損]として表示されます。改変されたSCP-654-JPは別次元の財団から何らかの手段で転移した記事である可能性が指摘されていますが、認識障害の可能性を視野に調査を行っています。 補足-B・補足-Cに記載されている情報を元に、██県███市に位置する██山を調査したところ、礼拝堂が建設されていることが判明しました。礼拝堂の敷地内には中庭が設けられており、Dクラス職員を用いて上空の調査を実施しましたが、補足-B・-Cに記載されているような認識障害は発生しませんでした。しかし特筆すべき点として、礼拝堂周辺の上空は厚い雨雲に覆われているのに対し、中庭内の上空は快晴状態でした。その異常性を考慮しAnomalousアイテムに分類した上で、礼拝堂付近に人員を派遣し監視を行っています。 監視員から礼拝堂に関する異常性が報告された場合、礼拝堂から500m周辺を封鎖し禁止区域を確立し、補足-B・-C・[データ消失]を参照にオブジェクトの研究が行われます。なお、[編集済]の沖合いを調査したところ、海底█████mに未知の球体が存在していることが判明しました(以下、球体をSCP-654-JP-1)。SCP-654-JP-1の調査報告は、梨枝博士の調査書類を参照して下さい。 梨枝博士の調査書類
scp-655-jp
評価: +120+–x 現在周知されている「鯉のぼり」 アイテム番号: SCP-655-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-655-JPは生物サイト-8102の中型生物収容室に5匹ずつ収容されます。20mを超える個体は大型収容室で実験・観察した後終了します。収容プロトコル「屋根より高い…」に準じ、定期的に捕獲を実施します。SCP-655-JPの個体数を維持するため養殖を行いますが、収容室の不足のため飽和した個体は終了させてください。 + 収容プロトコル「屋根より高い…」概要 -閉じる SCP-655-JPは真鯉(Cyprinus carpio)の生態とおおよそ一致しますが、その特性上活動範囲が広範で一定の縄張りを持ちません。個体群を調査する試みは失敗に終わりました。非常に認識能力が低く、個体の識別は大体の大きさと色の違いで行います。基本的に黒色の雄の個体のみ存在しますが、5月上旬頃1に全個体のうちのごく少数が変色2し性転換します。この現象によりSCP-655-JPは繁殖を行う事が可能になります。繁殖の際、本来の生息地を離れ一般家屋の屋根に集まり、雌となった個体へ求愛行動としてより大きな屋根に誘い込む習性があります。この習性と蒐集院の文献の記述を基に、偽装イベント655-aが作成されました。繁殖期と同時期の端午の節句の催しの一つに、SCP-655-JPを模した吹き流し(以下SCP-655-JP-aと呼称)を捕獲用の棒につけて各民家に立て掛け子供の成長を祝うという、現在「鯉のぼり」として知られているものの原型を全国に普及させました。様々な色のSCP-655-JP-aによって、SCP-655-JPを誘き寄せることに成功しています。各地のフィールドエージェントは発見次第捕獲要員に報告し、カバーストーリー「飛んで行ったおとうさん」を実行して下さい。 説明: SCP-655-JPは真鯉(Cyprinus carpio)に類似した生物です。大きさは通常の個体と異なり大きいもので50m、小さいもので3cmの個体が確認されています。SCP-655-JPは空中を浮遊し、水中での呼吸を必要としません。現在財団では██匹の個体を収容中です。 以前は蒐集院がこのオブジェクトを管理していましたが、蒐集院が財団に吸収されて以来このオブジェクトは財団に委託されました。 江戸時代のSCP-655-JP捕獲の様子 蒐集院の保持していた文献によるとSCP-655-JPは江戸中期にその存在が確認されており、当時の人々によって乱獲されていたようです。捕獲方法に関する文献には下記の通りに記されています。 ・約10mの棒に紐と餌を付け、地面に立て掛ける。 ・獲物(SCP-655-JP)が掛かればゆっくり3降ろす。 SCP-655-JPの口腔内には弁が存在しこの捕獲方法は有効です。SCP-655-JPの皮を捕獲用の棒で乾燥させ、布のように取り扱う文化も存在していました。 蒐集院の吸収当時から乱獲により個体数が極めて少なく、既にその存在は人々には記憶されていませんでした。財団は上記の文化から着想を得て収容プロトコル「屋根より高い…」を発令、現在国民に周知されている「鯉のぼり」を全国に普及し、江戸中期からある文化だと文献を改竄しました。 補遺: 収容プロトコル「屋根より高い…」が功を奏し財団施設以外での繁殖行動はほぼ未然に防がれています。現在神鳥博士の提言により住宅地以外での未発見のSCP-655-JPを捕獲する試みが進行中です。日本各地の山の中にSCP-655-JP-aを設置し、強化態勢を取ります。恐らく全てのSCP-655-JPを回収しました。個体の性転換には決まった割合が存在し、雄と雌の比率が常に██:1であることが研究の結果判明しました。SCP-655-JP-aは普及されたままです。 脚注 1. 気温の変化による要因や単にSCP-655-JP特有の繁殖期だと推測されていますが詳細は判明していません。 2. 個体によって様々で現在までに確認された色はすべて市販の鯉のぼりに反映させています。 3. 急速に紐を下ろすとSCP-655-JPがパニックになり、周囲の建造物の倒壊を引き起こしたという文献が存在します。
scp-656-jp
評価: +188+–x 収容時のSCP-656-JP アイテム番号: SCP-656-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-656-JPはサイト-8104の標準非生物オブジェクト収容ロッカーに収容されます。その際、各SCP-656-JPは異なるロッカーに収容されなくてはなりません。SCP-656-JPを使用した実験を行う場合、全ての実験関係者に規定の抗認識災害処置を実施してください。 説明: SCP-656-JPは500mlサイズの23本のペットボトルです。 SCP-656-JPの異常性は複数のSCP-656-JPが隣接した時に発揮されます。隣接した個数に応じて認識した人間に以下の様な異なる精神的、肉体的影響を与えることが判明しています。 隣接したSCP-656-JPの数 認識した人間への影響 2~5本 認識者はSCP-656-JP群へ近付くにつれて嫌悪感を覚え、SCP-656-JPから5m以上離れて行動しようとする。 6~10本 認識者はSCP-656-JP群と10m以上距離を取ろうとし、強制的に10m以内に近づけると嘔吐する。 11~15本 認識者はSCP-656-JP群を認識した瞬間に30m以上距離を取ろうとする。 強制的にSCP-656-JP群と30m以内に近づけると失神する。 16本~20本 認識者はSCP-656-JP群を認識すると即座にSCP-656-JP群、その周囲50mに及ぶ空間を知覚できなくなり、結果としてSCP-656-JPと50m以上距離を取る。また、そのことに違和感を抱かない。強制的に50m以内に近づけると意識を失うが、無意識下にも関わらず肉体はSCP-656-JPから離れようと歩行や走行を行う。 21本以上 認識者は上記と同様にSCP-656-JP群、また周囲90mに及ぶ範囲を認識できなくなる。また、この状態のSCP-656-JP群について記述した文章、画像(SCP-656-JP-1)はそれらを認識した人間に軽度の嫌悪感、不快感を与える。 これらの影響は隣接する本数が増加するにつれてより深刻になりますが、全段階のSCP-656-JP影響は財団保有の対認識災害技術によりほぼ完全な対処が可能です。 SCP-656-JPは2014年、岡山県██市にて、「道路に見ていると気分の悪くなるペットボトルがある」との報告によって財団の知る所となりました。SCP-656-JPの財団における任務への活用については議論が進められています。   自動アラート:これは全職員に向けての通知です1 警告:以下のファイルは反ミーム的特性を保有している可能性があります ファイルに接触する前に対情報災害部門へこのファイルを報告してください   これは81地域ブロック財団システムによって自動作成されたレポートです。 撮影された画像 事案-A884   優先度: クラスⅤ   検出日時: 2013/07/29   状態: 対応なし   座標: 34.591809,133.382678 経緯: FV408号財団自動調査機が定期巡回中、半径1.5kmほどの未入力の地形を検知。映像撮影および各種データ計測後、帰還。調査隊の派遣を要請中。 詳細: 500mlサイズのペットボトルの集合体。調査機が不明な発信源からテキストファイルを受信。計測されたデータについては、添付ファイルを参照してください。 システムログ 事案を検出しました。最寄り収容サイト、サイト-8104の管理部門へ通達を行い、調査隊を要請します。 応答なし。   応答なし。   応答なし。サイト-8104の医療部門及び対ミーム・情報災害部門へ緊急通達。   応答なし。   応答なし。サイト-8104の全職員にレポートを緊急通達。   応答なし。 応答なし。81地域ブロック管理部門、及び医療部門、対ミーム・情報災害部門へ緊急通達。 応答なし。   応答なし。   応答なし。81地域ブロック全域にレポートを緊急通達。   応答なし。   応答なし。 応答なし。   応答なし。 応答なし。財団管理部門、及びミーム・情報災害部門本部へ緊急通達。   応答なし。   応答なし。   応答なし。   応答なし。   応答なし。このレポートは非常に強力な反ミーム特性を保有している可能性があります。このレポートは有効な技術が開発されるまで本システムが把握している全ての財団コンピュータへ定期的に送信され、アラートとして表示されます。   FV408号機が受信したファイル 来てしまったんだな。 我々の素性を明かすことはできない。それは即、お互いの不利益に繋がる。ただ、元々は君達と一緒だったものだ。 我々が使っているこの人よけが、もしかしたら君達に迷惑をかけているかもしれないな。すまない。 迷惑をかけておいてなんだが、一つだけ頼みがある。   近づかないでくれ。   我々は君達に危害を加えるつもりはないし、君達もまたそうだろう。が、これは悪意の有無には関係ない。 離れるんだ。早く。我々が君達を食ってしまう前に Footnotes 1. 以下のレポートを認識できる職員は、直ちにこのレポートの存在を報告してください。
scp-657-jp
評価: +16+–x アイテム番号: SCP-657-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-657-JPの生息地であるサイト-8157は、天然記念物の保護区という名目で財団の管理下におかれています。SCP-657-JP、SCP-657-JP-1の脱走を防ぐために、サイト-8157は周囲を地下1m、地上3mのコンクリート製の壁で覆われ、上部には屋根が張り巡らせてあります。また、サイト内に元々あった川は埋められ、人工の水場が作られています。 SCP-657-JPの収容担当スタッフは女性、または生殖機能を喪失した男性スタッフに限定されます。サイト-8157には警備員を常駐させ、付近に観光客が迷い込まないように監視をしてください。観光客が迷い込んでしまった際には立ち入り禁止区域であることを伝え、本来の観光コースまで誘導してください。また付近に迷い込んでしまった観光客に男性が含まれる場合、感染症の検査を名目SCP-657-JP-1に変化していないかを財団が管理している病院で調べてください。検査の結果、SCP-657-JP-1に変化していた男性がいた場合、同行者全員に記憶処理を行い、カバーストーリー「末期の精巣癌」を流布して入院させた後、精巣摘出手術を行って解放してください。 サイト-8157外でSCP-657-JPやSCP-657-JP-1に変化した人間以外の生物を発見した場合は速やかに焼却処分を行い、付近を封鎖した後に、職員によって新たなSCP-657-JPが発生していないか捜索を行ってください。 説明: SCP-657-JPは██県██山麓の███森にのみ生息するトビズムカデの亜種です。SCP-657-JPは生命の危機に瀕した際、顎肢から毒を分泌し、襲い掛かります。 SCP-657-JPの毒に侵された昆虫、植物以外の生物の雄はSCP-657-JP-1に指定されます。SCP-657-JP-1の精巣から生成される精子はSCP-657-JPのDNAと同一のものになります。SCP-657-JP-1と交配を行った雌はSCP-657-JP-2に指定され、SCP-657-JP-2から生まれるSCP-657-JPは本来、生まれてくるはずの子供と同等のサイズのSCP-657-JPになります。 SCP-657-JPは200█年█月█日に██県、██市の産婦人科からの「妊婦が巨大なムカデを生んだ」という同市の警察署への通報が財団の目を引き、付近の職員が調査に向かったところ、看護師の機転により劇薬で死亡した全長1mの個体が発見されました。この事件で妊婦と妊婦の夫に身体検査を実施したところ、夫の精子のDNAが変質し、トビズムカデのものと90%一致していたため、インタビューを行いました。インタビューの結果、彼は一年ほど前にバードウォッチングで██山地を訪れ、その帰りに麓の森で道に迷った際に、ムカデに足を噛まれたと証言しており、妻との性交渉は後日に行ったと話しています。このインタビューの後、綿密な検査の上で他に異常性が見られなかったため、夫婦と産婦人科の職員に対し記憶処理を施した上で、カバーストーリー「流産」「末期の精巣癌」を流布し、男性の精巣の全摘出手術を行って解放しました。 財団は前述のインタビューを元に██山地の███森一帯に、女性のみで編成された機動部隊と-8"森華"を派遣し、一年間調査を行ったところ、███森を中心に半径██キロメートルの昆虫と植物以外の生物の雄の七割が、SCP-657-JP-1へと変化しており、発見されたSCP-657-JP数は█████匹に上り、そこから予想される総数は少なく見積もって██████匹に上ると考えられます。調査後、財団はこの一帯を封鎖し、現在の収容プロトコルを確立、発見されたSCP-657-JPとSCP-657-JP-1は研究サンプルとして数匹を確保し、残りは焼却処分が行われました。 実験記録657-JP-1 - 日付200█/██/20 対象: SCP-657-JP 実施方法: SCP-657-JPが生物をどのようにSCP-657-JP-1に変化させるのかを確かめる。 SCP-657-JPと雄のマウスをプラスチックケースの中に入れて観察を開始。 結果:実験開始から8分後にマウスがSCP-657-JPに捕食目的で襲い掛かり、 それに応戦する形でSCP-657-JPが顎肢から毒を分泌してマウスの首に毒を 注入した。その後SCP-657-JPはマウスに捕食された。 実験後の検査でマウスがSCP-657-JP-1に変化していることが確認された。 分析: SCP-657-JPがマウスに襲われるまで、マウスに興味は示さなかった。 SCP-657-JPは生命の危機に瀕したときのみ毒を使うのではないだろうか。 実験記録657-JP-2 - 日付200█/██/31 対象: SCP-657-JP-1 実施方法: 一度に複数の子供を生む生物の卵子が全てSCP-657-JPに変化するのか確かめる。 実験記録SCP-657-JP-1でSCP-657-JP-1に変化したマウスを使って雌のマウスをSCP-657-JP-2に変化させる。 結果: SCP-657-JP-2の5つの受精卵から5匹のSCP-657-JPが生まれた。 分析: この実験で一度SCP-657-JP-1に変化してしまった生物は二度と子孫を残せなくなることが判明した。 実験記録657-JP-3 - 日付200█/█/10 対象: SCP-657-JP 実施方法: SCP-657-JPの耐久実験 圧迫、熱、冷却、劇薬に対する耐性を確かめる。 結果: 全ての実験でSCP-657-JPは同サイズのトビズムカデ程度の耐久力しか持たないことが確認され、 遺伝子情報を除いて体組織、体構造では通常のトビズムカデとなんら変わりないことが判明しました。 分析: この実験結果から、もしもSCP-657-JPが脱走した場合でも、数匹の脱走であれば、女性職員の力で十分に駆除が可能なことが判明した。また、SCP-657-JPの異常性が生物としての進化の結果である可能性が高まった。 実験記録657-JP-4 - 日付200█/█/15 対象: SCP-657-JP-1に変化した雄のフナとフナの卵 実施方法: SCP-657-JP-1の精子が体外受精にも効果があるかを確かめる。 結果: 全ての卵からSCP-657-JPが生まれた。 分析: 卵生や胎生、体外受精によって結果が異なることは無いようだ。受精が成功した時点で卵子の中身がSCP-657-JPに変わるらしい。 実験記録657-JP-5 - 日付200█/█/24 対象: SCP-657-JP-1に変化した雄のフナとサケの卵 実施方法: SCP-657-JPの異常性が別種による交配の場合でも、発生するかを確かめる。 結果: 全ての卵からSCP-657-JPが生まれた。 分析: 恐れていた結果が出てしまった。受精する。この結果さえあればSCP-657-JPはどんな種、どんな生き物との交雑でも生まれてくる。SCP-657-JPを絶対に水場には近づけるな。水中の生き物が一匹でもSCP-657-JP-1に変化したら、取り返しがつかなくなる。精子が水の流れに乗って、様々な生き物の腹を借りながら、世界中に拡散することになりかねん。そうなってしまったら、おしまいだ。百年もすれば地球は昆虫と植物の星に生まれ変わるだろう。 補遺: 現在、実験によって判明したSCP-657-JPの危険性を考慮して、実験用のサンプルを回収後、サイト-8157内の残りのSCP-657-JPとSCP-657-JP-1を焼却処理するべきか担当職員内で審議中です。
scp-658-jp
評価: +17+–x アイテム番号: SCP-658-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-658-JPは現在、財団の私有地となっています。つねに立ち入り禁止の検問が敷かれており、警備員が最低2人配置されています。SCP-658-JPが活性化する午後8時から午後8時10分は一時的に監視映像等の内部監視が解除されます。 SCP-658-JPの実験を行う際は、レベル3以上の職員の許可を得て下さい。SCP-658-JPの現象を体験、視聴した全ての関係者には精神鑑定が義務つけられています。性質による症状が悪化した場合、対象者にはクラスBの記憶処理が行われます。 説明: SCP-658-JPは████県████市にある██████崖に続く旧商店街██m間を示します。SCP-658-JPは毎日午後8時から10分間、活性化します。SCP-658-JPは活性化をすると一時的に電力、ガス、水道が復旧し、店舗が開業されます。開業される店舗は財団の調査により19██年頃に開業されていたものと判明しています。この活性化と共に、SCP-658-JP-1が███体とSCP-658-JP-2、SCP-658-JP-3が出現します。 SCP-658-JP-1は顔にモザイク処理が施されたように見える人型です。外見の特徴から年代などは全て統一されていません。SCP-658-JP-1は基本的に、復旧した商店街で商品の売買や、一般的な音声処理が施されたような声による会話などを行っています。SCP-658-JP-2は20代と推定されるイギリス系の男性、SCP-658-JP-3は20代と推定される日本人女性です。目撃者は「SCP-658-JP-2~3が会話している」ことは認識出来ていますがそれらの会話が録音されたことはなく、映像からそれら読み取る試みも成功していません。また目撃者から説明を求めても「会話をしていた」以上の証言が得られたことはありません。SCP-658-JP-1~3と会話を行う試みは、全て失敗しています。SCP-658-JP-1~3の行動は固定されており、いかなる手段によっても妨害できません。SCP-658-JP-2の死とともにSCP-658-JPは不活性化します。 SCP-658-JPの現象を目撃した人はその一部始終を追い続ける衝動に駆られます。視聴を終えた被害者は極度の鬱状態に見舞われます。症状の度合いはSCP-658-JPの現象をどの程度視聴したかによって決定されます。被害者はSCP-658-JPの現象の体験談を誰かに伝えようとします。その際、独自のバックストーリーを追加します。被害者はクラスBの記憶処理により解放されます。 補遺1: SCP-658-JPで発生するイベント 午後8時0分 SCP-658-JP-2は特定の位置で待機しています。SCP-658-JP-3がSCP-658-JP-2に声をかけます。その後、約1分の会話を終了すると2体は移動をします。 午後8時2分 SCP-658-JP-3がSCP-658-JP-2に話しかけていますが、SCP-658-JP-2は受け答えません。 午後8時3分 SCP-658-JP-3が別れ道でSCP-658-JP-2と別れます。同時にSCP-658-JP-3はここで消滅します。SCP-658-JP-2は反対側の道へ移動します。 午後8時4分 SCP-658-JP-2が独り言を呟き出します。 午後8時8分 SCP-658-JP-2が██████崖に到着し、2分後に飛び降ります。 補遺2: SCP-658-JPを目撃した被害者による書き込み 掲示板の書き込み1 テキストを隠す 二人の男女がいたんだけど、男の方は意気地がないっていうの? 女に告れない訳だよ。 しかも、女はソイツの前で別の男の—要するに彼氏の話しているんだ。 彼氏を妬めばいいって話だけど、彼氏は男の親友で妬みに妬めないんだよ。 確かにソイツは我慢したと思うぜ。 だけどそういう葛藤に耐えきれなくて死んじまったんだ。 掲示板の書き込み2 テキストを隠す 二人の男女がいるけど、そいつらはカップルとかじゃない。 男は自殺癖があって、女の方がそれを気にかけてくれてるんだよ。 健気な感じだろ? だけど、暗めの男と一緒にいるせいで、女も周囲から嫌われるようになって・・・ 男はやっぱりちゃんと死のうって崖から飛び降りて自殺したんだ。 今じゃその女も男の事なんて忘れてるよ。 確か結婚して子供もいるんじゃなかったかな。 掲示板の書き込み3 テキストを隠す ある二人の男女の話を聞いたから書き込む。 男は女にベタ惚れしちまってるけど、女の方はタチの悪い奴でさぁ。 男に多額の保険金をかけて殺そうとしてたんだよ。 男はそれに気づいた。 でも、男は女が保険金目当てとかじゃなくって、単純に自分を殺そうとしてるんだって。 そう悟っちまったんだよ。 女の手を汚させない為に、男は自殺したって訳。どう思う? SCP-658-JPの現象を体験した話がたびたびインターネット上の掲示板に書き込まれた為、一部で怪奇現象ではないかと噂を広げられたのが財団に注目されました。財団の調査により██████崖から飛び降り自殺したSCP-658-JPと酷似する2█歳男性の存在が明らかになりました。遺書などは残されておらず、自殺の原因は不明です。周囲の供述によると、男性は社会適合的な人物ではなかった模様です。SCP-658-JP-3の詳細も現在調査中です。
scp-659-jp
評価: +87+–x アイテム番号: SCP-659-JP オブジェクトクラス: Euclid エージェント██自宅のリビングから回収される直前の SCP-659-JP 特別収容プロトコル: 回収されたSCP-659-JPは各国のサイトへ協力の要請を行い各サイトにつき1点のSCP-659-JPをサイト内の厳重な施錠と防火設備が完備された収容倉庫に保管してください。いかなる場合でもSCP-659-JPを同一のサイトに3点以上収容することは禁止されています。 SCP-659-JPを用いて実験を行う際はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の承認が必要です。現在SCP-659-JPの破壊・損傷が発生する可能性がある実験は禁止されています。 説明: SCP-659-JPは████社によって製造されたポリエステル生地の手すり付き4人用ローソファーです。SCP-659-JPは製造時から劣化の兆候を見せておらず当初の使用感を保持しています。SCP-659-JPは使用者に対して眠気を誘発しますが、これはSCP-659-JP本来の使用感の心地よさから起こるものであり異常性はありません。 SCP-659-JPの異常性はSCP-659-JPの上で人間(以下使用者と表記)が30分以上の睡眠をとった場合に発生します。SCP-659-JPの上で睡眠を30分以上行った使用者は即座に金縛りの状態となり一切体を動かすことができなくなります。同時に使用者の意識は金縛りになった時点で覚醒します。この金縛りは使用者が第三者によってSCP-659-JPから引き離されない限り回復することはありません。目を開けることが出来ないため視界は塞がれますが聴覚や嗅覚、気配などで周りの様子を知覚することは問題なく行うことが可能です。 金縛りの発生後、使用者は自身の意思に関係なく寝返りを打ち体の体勢を変え始めます。寝返りの結果、使用者の顔はSCP-659-JPの背もたれ・座面・手すり・SCP-659-JPの上に置かれているクッション・自身の腕などに押し付けられるような形となり呼吸が阻害されます。その後約10分ごとに身をよじらせ徐々に呼吸が不可能な体勢へと移行します。この特性により使用者は通常より長い時間をかけ窒息死することになります。通常の窒息と異なり痙攣・失禁・脱糞などの症状が起こらないため後述する異常性と合わさり周囲の人間が使用者の異常に気が付くことは困難です。 異常性が発生している間、周囲の人間はSCP-659-JP上で使用者が不自然な体勢・呼吸を行っているのにも関わらず、使用者が熟睡・安眠していると認識します。そのため多くの場合使用者はSCP-659-JPの影響下で放置されることになります。この効果は極めて弱いものであり他者からの命令や使用者を起こす必要性が出た場合は問題なく使用者の目を覚まさせるための行動をとることが可能です。使用者が窒息する前に第三者によりSCP-659-JPから引き離された場合、使用者を救出することが可能です。しかし第三者の行動が使用者の体勢を変えるのみに留まり、使用者をSCP-659-JPから引き離さなかった場合、使用者は再び寝返りを打ち呼吸が困難な体勢へと戻ります。 SCP-659-JPは国内で不慮の事故による窒息死が多発していることに対して調査を行っている最中、調査に関与しているエージェントの息子である██ █が「ソファーで幽霊に殺されそうになった」との証言を行ったことが報告されました。その後の██ █に対するインタビューを経てSCP-659-JPの異常性が発見、本格的な収容作業が開始されました。 SCP-659-JPの製造元である株式会社大林家具は経営不振により200█年に倒産しており、製造されたSCP-659-JPは大林家具の倒産に伴い商品として販売される以前に複数の中古家具店・オークションサイトへと売却されたことが判明しました。大林家具、およびSCP-659-JPを製造した工場の関係者に異常な点は確認されませんでした。どの時点でSCP-659-JPに異常性が発生したのかは現時点では不明です。 製造記録によるとSCP-659-JPは計1██点製造されており、現在財団では██点のSCP-659-JPを保管しています。 + インタビュー記録 - インタビュー記録を閉じる 対象: エージェント██の次男██ █ インタビュアー: ████博士 <録音開始> ████博士: それでは今からインタビューを開始します、今日は先日聞いた話をできるだけ詳しく説明してください。 ██ █: 分かりました。 ████博士: あのソファーは事故が起こる2週間前にアウトレット店で購入されたようだけどその時の印象はどんな感じだったかな。 ██ █: 特別何も・・・中古のソファーなんて嫌だなって最初は思いましたけどほとんど新品と変わらない使い心地だったからすぐに気にならなくなりました。 ████博士: そうですか・・・では次に事故が起きた時の様子と君が体験した内容を教えてもらえるかな? ██ █: はい、あの日は祝日で学校が休みだったので、昼ご飯を食べた後ソファーの上で漫画を読んでいました。でもお昼を食べた後だったので眠くなってしまって・・・そのまま仰向けの姿勢でソファーの上で寝てしまったんです。 ████博士: そのあとしばらくして金縛りになったのですね? ██ █: そうです、気が付いたときにはもう体が動かないし目も開かなくて・・・この時は普通の金縛りだと思っていたので、早く動ける様にならないかなーとか思いながら台所でお母さんがお皿を洗っている音やテレビの音を聞いていました。 ██ █: でも金縛りになってちょっと経った後、体が勝手に動き出したんです。仰向けから横向きの姿勢になって、顔がソファーの背もたれに押し付けられました。鼻がつぶれて鼻から息ができなくなって・・・自分の吐く息が顔にかかって気持ち悪かったです。 ██ █: 嫌な姿勢になったと思って体に力を入れて動こうとしたけどピクリとも動かなくて・・・そうしているうちにまた体が動き出しました。今度はさっき以上に顔が背もたれに押し付けられて、鼻から少し息が出来る様になった代わりに今度は口からほとんど息ができなくなって・・・。お母さんに助けてもらうためには鼻息を立てて何度も必死に息をしました。そうしたらお母さんが近づいてくる足音が聞こえてきたのでこれで助かったと思いました。 ████博士: だけどお母さんは君の異常に気が付かなかったのですね? ██ █: はい、お母さんはただ僕にタオルケットをかけてくれただけでした。その時また体が動いて今度は唇の端からほんの少し空気が吸えるだけでほとんど息ができなくなりました。何とかして気が付いてもらおうと今まで以上に激しく呼吸をしましたがお母さんは気が付かずそのままベランダの方へ行ってしまいました・・・。行かないでって・・・助けてって・・・何度もそう思ったのに全然気が付いてくれなくて・・・あんなにすぐ近くにいたのに・・・何で・・・。 ████博士: 落ち着いてください、もう今は安全だから。・・・話によると最初に君の様子がおかしい事に気が付いたのは君のお兄さんだったね。 ██ █: はい・・・その時はもう気絶してしまって覚えてないですけど。 ████博士: 話に聞いている分を説明してもらえれば大丈夫ですよ、お兄さんはどうやって君の様子に気が付いたのか聞いていますか? ██ █: はい、えっと・・・実は金縛りにあった日の何日か前にお兄ちゃんが大切にしていた・・・なんとかって言う選手のフィギアを壊してしまっていて、その事を黙っていたんです。その事に丁度僕がソファーで金縛りに会っているときに気が付いたらしくて。怒ったお兄ちゃんは僕の事を起こそうとしたらしいです。けどいくら揺さぶっても全然目を覚まさない僕に余計に腹を立てて、僕をソファーの上から突き落としたそうです。そこで初めて僕の様子がおかしい事に気が付いてお母さんと救急車を呼んだと言っていました。 ████博士: そうですか・・・ありがとうございます、今日のインタビューはこれで終わりです。また何か話を聞かせてもらうことがあるかもしれません。ところで杖を使って歩くのにはもう慣れましたか? ██ █: まだあんまり・・・動くときは誰かと一緒じゃないと不安です。 ████博士: 私たちは今後も君の新しい生活をお手伝いさせてもらいます、何か必要なものがあったら遠慮なく言ってください。 ██ █: はい、ありがとうございます。 <録音終了> 数度のインタビューの後、エージェント██の家族に記憶処置が行われました。 次男の██ █には酸素欠乏の後遺症による重度の視力の低下、軽度の記憶・運動機能の障害が見られています。現在、財団管理下の病院にて治療とリハビリが行われています。 + 補遺1 - 補遺1を閉じる SCP-659-JPの破壊実験の結果、SCP-659-JPにさらなる異常性が発見されました。SCP-659-JPが直接的・間接的にソファーとしての機能が失われるのに十分な損傷を受けた場合、損傷を与えた人物はSCP-659-JP-Bへと変化します。SCP-659-JP-Bとなった人物がいかなる方法であれ睡眠をとった場合、SCP-659-JP-Bに対してSCP-659-JPを使用し睡眠を行った場合と同様の異常性が発生しSCP-659-JP-Bは窒息により死亡します。複数人でSCP-659-JPの破壊を行った場合、破壊活動に関与した全員がSCP-659-JP-Bへ変化することが確認されました。SCP-659-JPが同一の人物によって複数破壊された場合、SCP-659-JP-Bとなる対象が段階的に増加していきます。現在財団によって確認されている最大のSCP-659-JP破壊記録は3点であり、この時点でSCP-659-JPを破壊した人物を中心とする直系の6親等と傍系の4親等及びその配偶者がSCP-659-JP-Bへと変化したことが確認されています。現在SCP-659-JP-Bへ変化した人物を戻す方法は発見されていません。 保管されているSCP-659-JPの一部を終了予定のDクラスを用いて廃棄処分する計画は現在審議中です。
scp-660-jp
評価: +35+–x 回収された際のSCP-660-JP アイテム番号: SCP-660-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-660-JPは額縁から外し布のカバーを掛けた状態で、サイト-81██の標準物品収納庫へ施錠して保管されています。SCP-660-JPの半径2m以内には、他のSCPオブジェクトを含め、人工物を近づけないよう注意して下さい。事案-660-Aを受け、移動や搬送等の場合はDクラス職員により25分以内に作業を終了させ、速やかにオブジェクトより2m以上離れて下さい。 説明: SCP-660-JPはルネサンス時代の絵画によく似た贋作です。贋作の対象はビデオ撮影を含め誰も観測していない間に変化します。また、オブジェクトを額縁に入れ壁に掛ける、イーゼルへ立てかけるなど水平方向から絵画部分を目視できる状態の場合、半径2m以内の「作品」に該当する物品の複製を生成(SCP-660-JP-A)します。元の作品の規模にもよりますが、これまでの実験では30分程度で複製を完了しました。 SCP-660-JP-Aはオブジェクトの絵画部分からずり落ちるように生成され、オリジナルとよく似ていますが、所々で相違が見られます。1000円札を元としたSCP-660-JP-JP-Aは札の肖像画が別人となり、機械物品を元としたSCP-660-JP-Aはその殆どに機能的欠陥がありました。 SCP-660-JPの複製能力はSCP-660-JP-Aにも引き継がれます。放置しておいた場合、元の「作品」や他のSCP-660-JP-Aを元とした別のSCP-660-JP-Aを際限なく生成する事に注意をして下さい。しかしSCP-660-JP-Aは元となった「作品」に準じた破壊方法で容易に無力化が可能です。 補遺: 事案-660-A 実験のため██研究員がオブジェクトを搬送し、実験室へ設置後メモを取っていたところ、SCP-660-JPから██研究員の複製(SCP-660-JP-Bとします)が生成されました。SCP-660-JP-Bは呼吸、鼓動など生命活動はしているものの、知性や意識といった物は見られず、焦点の合わない瞳で宙を見つめていました。SCP-660-JP-BのDNA検査および解剖をしたところ、姿こそ██研究員と酷似していましたが、DNAに相違は見られず、また片方の腎臓欠落、大腸および肺の萎縮が見られました。 SCP-660-JP-Bの生成現場に居合わせた██研究員は、現在長期療養中です。
scp-661-jp
評価: +37+–x SCP-661-JP所有の邸宅で発見されたSCP-661-JP-1。 アイテム番号: SCP-661-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-661-JPは現在サイト-8141の標準人型収容室に収容されています。SCP-661-JPに支給する物資に関して、何らかの光景を記録した絵または写真が含まれている物品を支給することは禁止されています。SCP-661-JPの実験及びインタビューを行う場合はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員2名の許可を得て、SCP-661-JPとの直接的接触が発生しない環境下で行ってください。SCP-661-JPの異常性に関する実験には現在第8隔離実験室が割り当てられています。 200█/██/██の尋問中に発生した事案以降、SCP-661-JPの異常性は現在まで確認されていません。SCP-661-JPの監視は継続的に行われ、異常が発生した場合は速やかに研究担当主任への報告を行ってください。 説明: SCP-661-JPは日本国籍を持つ4█歳の成人男性です。後述の異常性以外に身体的、精神的異常性は現在確認されていません。 SCP-661-JPは何らかの光景を模写した絵画、あるいは記録した写真に素手で接触した際にその異常性を発現させます。壁・扉・天井などによって屋外と隔離されている閉鎖空間において一定時間SCP-661-JPがその絵画・写真に接触した場合、閉鎖空間内に物体の被写体となった光景と同一の光景が再現されます。この再現された空間(以下SCP-661-JP-1とする)について、見かけ上の広さは無限大のように思われますが実際に動ける空間は元となる閉鎖空間と同じ範囲に限られ、不可視の障壁によってそれ以上の範囲に進むことは不可能となっています。またSCP-661-JP-1は別のSCP-661-JP-1によって上書きすることが可能であり、再現に要する時間は接触した物体のサイズ及びベースとなる閉鎖空間のサイズに依存します。 現在SCP-661-JP-1の発現が確認されているのは実際に何らかの光景を模写した絵画・撮影した写真のみであり、抽象画、絵画・写真のデジタルコピー及び動画の静止画面の印刷物等はSCP-661-JP-1の発現に失敗することが確認されています。また絵画や写真そのものを更に模写・撮影した物はその模写・撮影環境が再現されるのみであることが実験で確認されました。 SCP-661-JPはかつて国内外で怪盗███を名乗り絵画の窃盗事件を5件起こし、6件目の窃盗事件において████の現地警察によって逮捕されました。その後の家宅捜索において自宅の一室に先述の異常性を利用したと思われるSCP-661-JP-1が発見されたことで財団の目を引き、収容に至りました。現在その邸宅は財団による管理が続けられています。 実験記録001 以下の実験はサイト-8141の第8隔離実験室で行われました。 実験001-1 - 200█/██/██ 対象物: 草原の風景画 結果: 草原を再現したSCP-661-JP-1が出現。行動可能範囲は第8隔離実験室のサイズと同様。また実験を行った日の天候は雨であったが、SCP-661-JP-1内では風景画と同様に晴天が広がっていた。床面は土と草から構成されており、また第8隔離実験室の扉はSCP-661-JP-1内に直立し実験室内外の出入りは可能であった。 実験001-2 - 200█/██/██ 対象物: 実験001-1を行う前に撮影された第8隔離実験室の写真 結果: 第8隔離実験室を再現したSCP-661-JP-1が出現。見かけ上の広さ、行動可能範囲及び扉の位置は全て隔離実験室と同様。 メモ: 見かけ上は元通りにできたが……あくまで異常性を用いて再現した空間に過ぎない。完全に元通りと言い切るのは難しいだろうな。— ██博士 実験001-3 - 200█/██/██ 対象物: 街並みを模写した風景画 結果: 模写された街並みを再現するSCP-661-JP-1が出現。この風景画には人が写っておりSCP-661-JP-1内にもその実体が確認できたが、生命反応及び呼びかけへの応答はなかった。 実験001-4 - 200█/██/██ 対象物: 東京都██区で撮影された航空写真 結果: 床下に街並みを再現したSCP-661-JP-1が出現。不可視の床面によって空中に立つことができる状態でSCP-661-JP-1が構成されている。 メモ: 気になったのは実験の最中一度も風が吹いていなかったこと、雲が動いていなかったことだ。先の実験結果と合わせるとあくまで再現してるのは一瞬の光景のみ、時間が止まっているかのような空間と考えるのが妥当であろう。— ██博士 インタビュー記録001 - 日付200█/██/██ 対象: SCP-661-JP インタビュアー: ██博士 <録音開始, 200█/██/██> ██博士: これよりインタビューを執り行います。SCP-661-JP、よろしいですか。 SCP-661-JP: ああ。 ██博士: まず始めに、いつから自身の持つ異常性に気づきましたか? SCP-661-JP: ん?博士、何か誤解しているようだがこの能力は別に生まれ持っていたものではないぞ。教えてもらったものだ。 ██博士: 教えてもらったというと……誰からでしょう? SCP-661-JP: 誰、というのも難しいものでね。実を言うとその男の素性は私もよくわかってないんだ。 ██博士: では、出会った経緯を最初から教えていただけますか? SCP-661-JP: ……まあ経緯なら大丈夫だろう。確か199█年のことだったか……資産を持て余していた私は美術品に傾倒していてね。美術品を集めては眺め、時にはその縁の地に足を運んだこともあった。そんなことを知ってか知らずかその男1が私を訪ねてきたんだ。「美術家達が眺めてきた光景を貴方は辿ろうとしている。その答えをお教えしよう」なんて言ってたかな。 ██博士: そこでこの異常性を付与されたというわけですね。 SCP-661-JP: 方法を教えてもらった、と言うべきだな。資産の一部と引き換えにこの方法を教えようと交渉され、私はそれを飲んだ。その後は君達の知っているとおりさ。買えないような作品は少々拝借させてもらったというわけだ。 ██博士: その方法とやらを私たちに教えていただくことはできませんか? SCP-661-JP: 方法の中身を漏らしたら命は保証しないと言われてるからな……そこは流石においそれと話す気にはならんよ。 ██博士: なるほど……結構です。もう1つ聞きたいことがあるのですが、再現した空間を元の絵や写真に戻すことはできないのですか?現状ですと再現されっぱなしになっているわけですが。 SCP-661-JP: ……それは無理だ。 ██博士: 何故です? SCP-661-JP: 圧縮の方法は……教わってないからな。 <録音終了, 200█/██/██> 異常性の根本はSCP-661-JPそのものではなく、SCP-661-JPが知識として持ち実行している"絵画・写真から空間を再構成する方法"にあると思われます。その全容を掴むため、SCP-661-JPに対する更なる尋問を要請します。— ██博士 許可。 — サイト-8141管理者 追記: 200█/██/██に行われたSCP-661-JPへの追加尋問において、SCP-661-JPが「仮に方法を語った場合自分はその後どう扱われるか」と質問、これに対し██博士は「管理部門の決定するべきことであるが、恐らく研究継続のために当分は収容が続けられる」と返答しました。この後SCP-661-JPは何らかの発言を行う素振りを見せましたが、直後に尋問室から消失、同時にSCP-661-JPを模写したとされる絵画が出現し、この絵画に問いかけを試みましたが返答はありませんでした。絵画の右下には尋問当日の日付と共に"P."という筆記体のサインが記されており、SCP-661-JPまたはPOI-661-JPと何らかの関係があると見られています。また尋問室の映像記録を精査したものの室内の人員にSCP-661-JPへの接触を含む異常行動は見られませんでした。そのためこの現象は収容違反を目的としSCP-661-JPが自発的に起こした「圧縮」操作である可能性、あるいはSCP-661-JPによる再構成方法の口外を阻止するためにPOI-661-JPが事前に仕組んだ、SCP-661-JPの意図しない「圧縮」操作である可能性の2つが考えられています。 なおSCP-661-JPが「圧縮」されたと見られる絵画について、その後監視が行われましたが応答及び空間再構成能力の発現は確認されていません。絵画そのものの異常性が長期間確認できないことからNeutralizedへの再分類が検討されましたが、先述の収容違反を目的とした自己圧縮の可能性が考慮され再分類は却下、SCP-661-JPの監視及びPOI-661-JPの捜索・調査は現在も継続的に行われています。 Footnotes 1. SCP-661-JPの異常性に関わる要注意人物として、現在POI-661-JPに指定されています。
scp-662-jp
評価: +52+–x 不定形状態のSCP-662-JP アイテム番号: SCP-662-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-662-JPは、サイト-8105の空調が管理された免震構造の密室に収容されており、5つのステンレス製フックを用いた固定具によって、常時SCP-662-JP-Bの状態に維持されています。収容室は、SCP-662-JPの形状に影響を与えないように配慮された集塵装置によって、定期的に清掃を行ってください。万が一、SCP-662-JPの形状が崩れることがあれば、直ちにSCP-662-JP-Bの状態に復元してください。現在SCP-662-JPを用いたさらなる実験は凍結されています。 説明: SCP-662-JPは、柔軟性のある未知の材質の紐で構成される一周80 cmの輪です。この紐は赤色で光沢を持ち、その直径は常時0.█~█.█ mmの間で変動しているように見えます。SCP-662-JPはあらゆる汚染の影響を受けず、輪の切断、及びその構成する物質の採取は成功していません。 SCP-662-JPは特定の形状に保たれた時、その形状に対応した異常現象を発生させます。SCP-662-JPによって発生した現象は実験記録、及び事故記録662-JP-5を参照してください。現在のところ、不定形の状態にあるときに記録された現象はありませんが、観測できない現象が発生している可能性があります。これについては補遺を参照してください。 SCP-662-JPは財団のフロント企業が管理するマンションの住民より、「娘があやとりをしていたら、突然部屋が水浸しになった」との通報があったことから、発見、収容されました。SCP-662-JPの所持者が未就学児童ということもあり、その出所について有力な証言は得られませんでした。引き続き調査が行われています。事情聴取後、住民にはクラスB記憶処理が施され、カバーストーリー「ボヤ騒ぎ」が適用されました。 実験記録: 各実験記録には比較のため、異常性を持たない紐を用いて作成した同一形状の画像が添付されています。 実験記録662-JP-1: 19██/██/██ 形状名: ”川” (SCP-662-JP-A) + 画像を表示 - 画像を隠す ”川” 実験方法: サイト-8105標準実験室内において、D-58██にSCP-662-JPを用いてあやとりの要領で”川”を作成するように指示しました。 結果: D-58██にSCP-662-JP-Aを崩すよう指示するまでに、周囲に約1 L/secで水が発生しました。この水自体に異常性は見られませんでした。 コメント: このことからSCP-662-JPの所持者が作成したのはSCP-662-JP-Aであったと考えられる。 ―██博士 実験記録662-JP-2: 19██/██/██ 形状名: ”ほうき” (SCP-662-JP-B) + 画像を表示 - 画像を隠す ”ほうき” 実験方法: 実験662-JP-1の生成物を処理後、D-58██にあやとりの要領で”ほうき”を作成させました。 結果: D-58██にSCP-662-JP-Bを崩すよう指示するまでに、周囲に約2 g/secで粉末状の物質が発生しました。構成物質は実験室内に存在する埃と同一のものでした。 コメント: これでSCP-662-JPがあやとりの形状に対応した現象を発生させることはほぼ間違いない。次は生物を試してみよう。 ―██博士 実験記録662-JP-3: 19██/██/██ 形状名: ”うさぎ” (SCP-662-JP-C) + 画像を表示 - 画像を隠す ”うさぎ” 実験方法: サイト-8105生物用実験室内において、D-61██にあやとりの要領で”うさぎ”1を作成させました。D-61██は世界各国のあやとりに精通しています。 結果: 異常な現象は観測されませんでした。 コメント: 生物には対応していないのだろうか? ―██博士 実験記録662-JP-4: 19██/██/██ 形状名: ”こぶた” (SCP-662-JP-D) + 画像を表示 - 画像を隠す ”こぶた” 実験方法: 実験記録662-JP-3に引き続き、D-61██にあやとりの要領で”こぶた”2を作成させました。 結果: D-61██の周囲にSCP-064-JPが発生し、[編集済]。発生したSCP-064-JPは非活性化の後、即座に回収、収容されました。 コメント: 豚の発生は予想の範囲内であるが、こんな”形”でとは思わなかった。発生させられるものの大きさに制限があるのだろうか? ―██博士 + 事故記録662-JP-5 - テキストを隠す 事故記録662-JP-5: 19██/██/██ 発生状況: 実験662-JP-4の処理後、D-62██に実験室に入りSCP-662-JPを回収するよう指示しました。 内容: D-62██がSCP-662-JPを拾い上げた際、偶然にもSCP-662-JPが[削除済]の形状をとりました。それに伴い、実験室が[削除済]。幸いにもSCP-662-JPは形状が維持できなくなったため、現象の発生は数秒間にとどまりました。この時、サイト-8105から強い重力波が検出されたことが記録されています。 + 補遺 - テキストを隠す 補遺: 実験記録、及び事故記録から推測するにSCP-662-JPはその形状に対応した”粒子”を発生させている。SCP-662-JP-DがSCP-064-JPを発生させたのが、そのひとつの根拠である。この推測が正しければ、事故記録662-JP-5で発生したのは”重力子”であり、したがって、SCP-662-JPは██子や████粒子といった有用な”粒子”の研究を進展させる可能性を秘めている。しかしながら、形状と”粒子”の対応が明確でない以上、潜在的な収容違反のリスクのためにこれ以上の実験は凍結されるべきである。我々の科学では、██子や████粒子、あるいは全く未知の"粒子"が大量に発生した際に何が起きるか予測出来ていない。 ―██博士 以上の記録、及び補遺を踏まえ、比較的収容の容易なSCP-662-JP-Bの状態を維持する現在の特別収容プロトコルが制定されました。 脚注 1. アメリカの先住民に伝わるあやとりです。 2. ソロモン諸島やローヤルティ諸島リフ島に伝わるあやとりです。
scp-663-jp
評価: +40+–x アイテム番号: SCP-663-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: SCP-663-JPは現在Neutralizedに分類されています。6ヶ月に一度、SCP-663-JPが存在していた地点で、再び特異性が発現していないかを確認するようにしてください。 SCP-663-JP-Aはサイト-8181内の低危険度ロッカーに保管されています。 + Neutralized再分類前の収容手順 - 閉じる ██山のSCP-663-JPに通じる山道は全て封鎖してください。特に深夜0時から日の出の時刻までの間は、一般人がSCP-663-JPに近づかないように注意深く監視してください。 1か月に1回、Dクラス職員を用いて、SCP-663-JP内部に変化が生じていないかを確認してください。この際、居間の壁に設置されているコルクボードは特に注意して確認させてください。確認を行う時間帯は、13時から16時までとしてください。内部の映像や画像は残さないことになっているため、通信機を用いて口頭で指示や確認を行って下さい。確認終了後、Dクラス職員が内部の物品を持ち出していないか注意してください。 SCP-663-JPに関連する調査及び実験は、上記のDクラス職員を用いた確認作業を除いて禁止されています。また、Dクラス職員による確認作業によって、SCP-663-JPが特異性を示した場合は、確認作業を含めた全ての調査及び実験が禁止されることとなります。 説明: SCP-663-JPは██県███市の██山中に存在していた2階建ての一軒家です。土地及び住居の所有者は不明ですが、周辺住民への聞き込みから少なくとも1990年にはSCP-663-JPは存在していたと推測されています。SCP-663-JPは自身のことを『人』であると認識していた可能性があります。しかし、SCP-663-JPとコミュニケーションを取ろうとする試みは成果を出せずに終わりました。 深夜0時から日の出の時刻までの間に、SCP-663-JPの内部または周辺で特定の行為をした場合、SCP-663-JPは特異性を示します。特定の行為の例としては、「SCP-663-JPの許可を得ずに内部に留まる・または侵入しようとする」「SCP-663-JP内部の物を持ち去ろうとする」「SCP-663-JP内部の物またはSCP-663-JP本体を破壊しようとする」といったものがあります。特定の行動を行った人物は即座に体が細切れに切断されます。それと同時に、SCP-663-JP内部の居間の壁に掛けられているコルクボード上に、文章が書かれた1枚のメモが画鋲で留められた状態で出現します。この時メモに書かれている文章は、日本の刑法の条文に類似したものとなっています。切断された遺体とメモは、翌日の深夜0時になった瞬間に、遺体の血液等も含めて消失することが観測機器による映像により明らかになっています。ただし、メモはSCP-663-JPの外部へ持ち出された場合も深夜0時になると消失しますが、遺体は外部に持ち出されると消失することはありませんでした。SCP-663-JPの特異性によって切断されるのは人間のみであり、犬や猫などの人間以外の動物が切断されるといった現象は確認されていません。 注意すべき点として、SCP-663-JPによって切断される対象は、基本的には深夜0時から日の出の時刻までの間に特定の行為をした人物ですが、行為の内容によってはそれ以外の時間帯に行った場合も切断の対象となります(事案663-235を参照)。 + 実験記録 - 閉じる 実験記録は主要なもののみを抜粋しています。また、メモに書かれた文章そのものは斜体で表されています。 実験記録2 - 日付199█/03/29 対象: D-4556 実施方法: 23時から0時までの間、D-4556をSCP-663-JP内部に留まらせた。D-4556には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: 23時50分頃、呻き声のような音がするとD-4556が報告してきた。しかし、録音機器にはそのような音は記録されておらず、外部で待機していた職員もそのような音は聞いていないと証言した。その後、0時になった瞬間にD-4556は細切れに切断された。この瞬間、定点カメラにはD-4556以外の姿は映されていなかった。 メモの文章: 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、死刑に処す。 実験記録3 - 日付199█/04/04 対象: D-4567 実施方法: 23時から呻き声が聞こえ出すまでの間、D-4567をSCP-663-JP内部に留まらせた。D-4567には、呻き声が聞こえたら外部へ脱出するように指示していた。D-4567には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: 実験2の時と同様に、23時50分頃に呻き声のような音がするとD-4567が報告してきた。その直後にD-4567はSCP-663-JP外部への脱出を試み、無事脱出することが出来た。そして0時になっても、外部にいたD-4567が切断されることはなかった。 メモの文章: メモの出現は確認されなかった。 分析: 実験記録2,3を踏まえ、切断の対象となるのは深夜0時から日の出の時刻までの間に特定の行為を行った人物であると推測された。また、Dクラス職員が聞いた呻き声は、ある種の警告の役割をしていると推測された。 実験記録4 - 日付199█/04/05 対象: D-4567 実施方法: 深夜1時にSCP-663-JP内部への侵入を試みた。D-4567には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: D-4567が玄関の扉を開け足を踏み入れた瞬間に、D-4567は細切れに切断された。切断される直前までのD-4567からの報告から、実験記録2,3の時のような呻き声はどこからもしていなかったことが明らかとなっている。 メモの文章: 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、死刑に処す。 分析: 深夜0時から日の出の時刻までの間に侵入を試みた場合は、警告すらなく切断されることが明らかとなった。 実験記録6 - 日付199█/04/08 対象: D-4588 実施方法: 深夜1時にSCP-663-JP内部への侵入を試みた。その際、玄関の扉を開ける前にノックを3回行い、「ごめん下さい」と言うようにD-4588に指示していた。D-4588には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: D-4588が「ごめん下さい」と発言した瞬間に扉がひとりでに開いた。その後D-4588はSCP-663-JP内部へ足を踏み入れたが切断されることはなく、日の出の時刻となるまでの間ずっとSCP-663-JP内部へ留まることが出来た。その間目立った現象は確認されなかった。 メモの文章: メモの出現は確認されなかった。 分析: 深夜0時から日の出の時刻までの間であっても、SCP-663-JPの『許可』を得れば、内部へ入ることができると明らかになった。また、この結果から、深夜0時から日の出の時刻までの間に内部で人間が活動を行った場合のSCP-663-JPの反応が確認できると考えられた。 実験記録7 - 日付199█/04/09 対象: D-4588 実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を何か持って外部へ出ようとするようにD-4588に指示した。D-4588には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: D-4588は居間のテーブルの上にあったコップを持って外部への脱出を試みた。そして玄関から外部へ出ようとした瞬間、D-4588は細切れに切断された。この際、コップは地面に落ちて粉々に割れたが、翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。 メモの文章: 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、死刑に処する。 実験記録8 - 日付199█/04/12 対象: D-4434 実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を何か持って外部へ出ようとするようにD-4434に指示した。その際、「持ち帰らせていただきます」と言うようにD-4434には指示していた。D-4434には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: 「花瓶を持ち帰らせていただきます」と言った後、D-4434は居間のテーブルの上にあった花瓶を持って外部への脱出を試みた。そして玄関から外部へ出ようとした瞬間、D-4434は細切れに切断された。実験記録7と同様に、花瓶は地面に落ちて粉々に割れたが、翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。 メモの文章: 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、死刑に処する。 分析: 「盗みの許可が出るわけがない」あるいは「実験記録6の場合と異なり、SCP-663-JPが許可を出す方法がない」という2つの意見が、研究チーム内で出された。 実験記録9 - 日付199█/04/14 対象: D-3451 実施方法: 実験記録6と同様の方法で深夜1時にSCP-663-JP内部へ進入した後、内部の物を破壊するようにD-3451に指示した。D-3451には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: D-3451は居間のテーブルの上にあった花瓶を床に叩き付け、粉々に割った。その瞬間、D-3451は細切れに切断された。割れた花瓶は翌日の0時に元の状態でテーブルの上に出現した。 メモの文章: 他人の物を損壊し、又は傷害した者は、死刑に処する。 実験記録11 - 日付199█/04/19 対象: D-3918 実施方法: 外部からSCP-663-JPの窓ガラスをバールを用いて破壊するようにD-3918に指示した。D-3918には連絡用のトランシーバーを携帯させ、またSCP-663-JP内部には定点カメラ及び録音機器を設置した。SCP-663-JPのすぐ近くには財団職員4名が待機していた。 結果: D-3918が窓ガラスを割った瞬間、D-3918は細切れに切断された。割れた窓ガラスは、花瓶等と異なり翌日の0時になっても復元されなかった。 メモの文章: 人の身体を傷害した者は、死刑に処する。 分析: メモの内容から、SCP-663-JPは自身のことを『人』であると認識している可能性が示唆された。このことを踏まえ、SCP-663-JPとコミュニケーションを取る試みが検討された。 実験記録15 - 日付199█/04/25 対象: SCP-663-JP 実施方法: SCP-663-JP内部のコルクボードに、「あなたは何者か。」と書かれたメモ用紙を貼り付けた。このメモに対する反応で、コミュニケーションを取ることが可能かを確認した。 結果: 翌日の0時になった瞬間にメモは消失した。しかし、その後に目立った現象は確認されなかった。 メモの文章: メモの出現は確認されなかった。 分析: 実験記録15を含めて、こちらの呼びかけに対してSCP-663-JPが反応を示したのは、侵入時に「ごめん下さい」と言った時のみであった。よって、SCP-663-JPとコミュニケーションを取ることは困難であると推測された。 補遺1: 199█年5月2日、13時から14時にかけて、文章が書かれたメモとそれが留められていたコルクボードを含めた数種類の物品が、財団職員によってSCP-663-JP外部に持ち出されました。そしてそれらを調査のために研究施設へ持ち帰った結果、事案663-235が発生しました。なお、内部調査が行われていた当時は実験記録2,3等から、SCP-663-JPの影響を受けるのは深夜0時から日の出の時刻までの間に特定の行動をした人物のみと推測されていました。よって、それまでの全ての内部の物品等の調査や観測機器の設置は朝の9時から夕方の6時までの間で行われていました。 + 事案663-235 - 閉じる 事案663-235: 199█年5月3日の深夜0時になった瞬間に、SCP-663-JP内の物品を外部へ持ち出す作業をした研究員3名が財団の施設内で細切れに切断されました。その直後、持ち出していた物品全てが研究施設から消失しました。消失した物品は、後の調査で全てSCP-663-JP内の元々あった位置に戻っていることが確認されました。また、この際次のような文章が書かれたメモがコルクボードに出現しました。 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、死刑に処する。 事案663-235により、深夜0時から日の出の時刻の間以外で行った行為でも、その内容によっては切断の対象になるといったことが明らかとなりました。このことを踏まえ、内部に設置していた観測機器は撤去され、それらに記録されていた映像や画像、音声も破棄されました。そして、SCP-663-JP関連の実験及び調査は、Dクラス職員を用いた内部の確認を除いて禁止されることとなりました。 記録データまで処分することについて、過剰な反応だとする見解もあるかもしれません。しかし事案663-235から我々が学ばなければならないのは、SCP-663-JPに対して我々が行うどのような行為も、SCP-663-JPにとって『死刑』に値する被害になりかねないということです。 SCP-663-JP内部に観測機器が設置されていることや記録データが財団に保管されていることを『プライバシーの侵害』であるとSCP-663-JPがもし判断したなら、SCP-663-JPは我々関係者の身体を切断した後、その被害に相応する条文をコルクボードに出現させるでしょう。これを防ぐ最も手っ取り早い手段は、『プライバシーの侵害』の被害があったという事実を、SCP-663-JPが気付くより先に揉み消すことだと私は考えます。 財団への更なる被害の芽は早い段階で摘まれるべきです。 █████博士(事案663-235発生時の研究責任者) 補遺2: 200█年11月29日、██山で山火事が発生したことがきっかけとなり、事案663-108が発生しました。 + 事案663-108 - 閉じる 事案663-108: 200█年11月29日22時頃、近隣に住む高校生3人によるタバコの火の不始末が原因となり、██山で山火事が発生しました。この山火事によってSCP-663-JPは全焼しました。山火事の原因となった高校生3人は、200█年11月30日の0時になった瞬間に、繁華街の片隅で突如細切れに切断されました。その後の調査で、SCP-663-JPの焼け跡から1枚のメモが発見されました。このメモはそれまでのものと異なり、翌日の深夜0時以降になっても消失することはありませんでした。メモの内容は以下の通りです。 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を焼損した者は、死刑に処する。 失火でも死刑に処す。 未成年でも死(以降の文章は判読不能) このメモは現在SCP-663-JP-Aと定義されています。 事案663-108発生後、SCP-663-JPの無力化が確認され、最終的にNeutralizedへ再分類されました。
scp-664-jp
評価: +28+–x 評価: +28+–x クレジット タイトル: SCP-664-JP - コメモドキ 著者: ©︎Mishary 作成年: 2020 評価: +28+–x 評価: +28+–x アイテム番号: SCP-664-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized Keter 特別収容プロトコル: SCP-664-JPの存在は隠蔽されています。 SCP-664-JPに関する情報はハドソン川協定第119条に基づき部分的に公開されています。公開範囲については文書IDS-664-JPを参照してください。 SCP-664-JP担当職員はオペレーション・シャイニングライスの実行に当たってください。SCP-664-JP個体は保護個体を除き、発見次第速やかに排除されます。財団は各国政府・団体と協力して食物へのSCP-664-JPの混入を防止し、人糞の肥料利用停止、SCP-664-JP耐性品種の開発及び非コメ主食型生活の推奨を行います。社会的な健康診断等を通じて可能な限りSCP-664-JP寄主を発見し、「脚気」や「腫瘍」等のカバーストーリーを用いて対象者の治療及びSCP-664-JPの排除に当たってください。 オペレーション・シャイニングライスは成功裏に終了しました。SCP-664-JPの野生個体は絶滅し、一部個体が種保存・保護を目的として、サイト-01SP、サイト-8177、サイト-4833で飼育されています。 SCP-664-JP担当職員は迅速なSCP-664-JPの発見及び排除に当たってください。種保存・保護用の個体はサイト-01SP、サイト-8177、サイト-4833で飼育されています。 説明: SCP-664-JPはコメモドキと呼称される、カメムシ目セミ上科コメモドキ科(Hemiptera Cicadoidea Oryzoidea)に分類される昆虫の総称です。SCP-664-JPの成虫の体長は一般に10mm~50mm程度であり、細長い口吻を有しています。形状や習性はセミに似ており、分類学上の観点からもセミ科(Hemiptera Cicadoidea Cicadidae)と近縁であると考えられています。SCP-664-JPは日本全土及び中国南部に分布していましたが、後述する作戦の成功により野性絶滅状態にあります現在では再野生化し、世界各地に分布しています。 SCP-664-JPは幼虫期、ヒト(Homo sapiens)などの哺乳類に寄生することで知られています。SCP-664-JPは夏から秋にかけて主にイネ目を中心とするイネ科植物へ卵を植え付けますが、これは当該植物の脱穀された種子に酷似しています。ただし近隣に産卵対象となるような植物が存在しない場合、樹木や住宅など様々な場所に産卵します。この時産卵場所は、米蔵などイネ科植物の種子が所在する地点が非常に多いという傾向が知られています。SCP-664-JPの卵は強固な外殻を有しており、加熱や酸によっては容易に死滅しません。自然に放置されたSCP-664-JPの卵は翌年の晩春から初夏にかけて孵化します。一方ヒトなどの体内に取り込まれた場合は数時間から数週間の後、体内で孵化します。自然環境下で孵化したSCP-664-JPはその後一般的なセミやウンカに類似した成長過程をたどりますが、ヒト等に寄生したSCP-664-JP(以下SCP-664-JP-1と呼称)は数年にわたり寄主の体内に存在し続けます。SCP-664-JP-1は主に寄主の体液やその摂取物に対し口吻を突き刺しこれを吸収することによって成長します。種によっては、寄主の生命エネルギーや神的エネルギーを栄養源とするものも確認されています。これは寄主の胃痛や腹痛、栄養不足、神経障害、心臓機能の低下などを引き起こし、最悪の場合死に至ります。一方でSCP-664-JP-1は寄主に対し向精神的な作用を及ぼす物質を分泌しており、これによって寄生の円滑な維持を図っていると見られています。 十分に成長したSCP-664-JP-1は寄主の体外へ移動し、脱皮して成虫となります。寄主から移動する方法は種によって異なりますが、宿主の排泄物への混入する、夜間に口腔を経由する、死亡した寄主の死体を突き破るなどの形態が知られています。多くの場合この移動は初夏から盛夏に集中的に発生し、成虫となったSCP-664-JP-1は約1か月から2か月程度の間生存し、近隣の田園部近郊で交尾を行います。 SCP-664-JP-1は自然界で成長したSCP-664-JPよりも身体的に優越している傾向にあり、これが生存上有利に働いているものと推測されています。 歴史: SCP-664-JPの存在は伝承などの文化資料等によれば古くから一部に知られていたと見られていますが、公には認識されていませんでした。SCP-664-JPは稲作の発展と共に東アジアを中心とするコメ等の主食地域に広く分布し、個体数を増加させました。近代以降、都市部での精米、特に白米が普及するに伴ってSCP-664-JP卵が排除されることは少なくなり、糞尿の農業利用も相まってSCP-664-JPの個体数はより一層増加しました。江戸時代末の江戸には、SCP-664-JP-1寄主が数千から数万人以上いたと推測されています。 SCP-664-JPは1820年、小野蘭山の弟子である本草学者吉水吉文1・八目黎朦2の二人によって発見され、その後の研究によりその異常性が明らかになりました。 吉水吉文は蒐集院本院の研儀大進であったことからその異常性はすぐに蒐集院へと報告され、蒐集院は江戸幕府との協力によりSCP-664-JPの排除を企図しました。しかしSCP-664-JPの分布は非常に広範であり、また米食は都市部を中心に広く普及していたために抜本的な対策が不可能であったことから、これは不十分に終わりました。これは明治・大正期に至ってもほとんど変化せず、毎年平均数百から数千名の死亡者が出るなどSCP-664-JPによる被害は依然深刻でした。 これを背景として、昭和期になると異常事例調査局などの超常機関は、SCP-664-JPに対する撲滅方針を利用方針へと転換し始めました。異常事例調査局の米津元首3や日本生類研究所の吉水鹿田4らを中心とする研究者が、SCP-664-JPの小型化と向精神性の増強に関する研究を行っていたことが明らかになっています(ウツセミ計画)。この計画は部分的に成功し、飢餓であっても志気旺盛な軍を形成するための手段として太平洋島嶼などの一部戦線で使用されました。 戦後資産の移譲に伴い蒐集院や異常事例調査局のSCP-664-JP関連資料は財団が継承することとなりました。SCP-664-JPによる被害は脚気によるものと改竄され、同種の存在は完全に隠蔽されました。また財団はGOC、GHQ及び日本政府等との協力の下、SCP-664-JP排除作戦「オペレーション・シャイニングライス」を策定・実行しました。この作戦では研究・保存用に保護された個体を除くSCP-664-JPの完全な排除が企図され、SCP-664-JPの寄生経路を遮断するための人糞の肥料利用停止や米生産の管理・違法コメ売買の摘発を行うと共にSCP-664-JPを排除する農薬の散布、コメの品種改良、SCP-664-JP-1を殺傷する薬剤の開発及び健康診断によるSCP-664-JP-1寄主の発見と薬剤の使用、洋食の推奨など多面的な計画が実行されました。これによって1960年代にはSCP-664-JPは一部サイトで管理された個体を除きほとんど完全に撲滅され、1970年に自然絶滅の発表とともに作戦の完了が宣言されました。 補遺: 2010年、前年の奇蹄病事件によって事実上倒産した日本生類創研の施設より、SCP-664-JPとみられる昆虫(SCP-664-JP-Aと呼称)が多数発見されました。回収された資料によれば、SCP-664-JP-Aは商品として販売されており、ポーランド及び日本を中心とする世界各地に広がっている可能性があると見られています。またSCP-664-JP-A開発に際して生産されたSCP-664-JPが管理を離れ、一部野性化しているとの情報が複数存在します。財団及びGOCは現在SCP-664-JP-Aの研究及び排除を企図した作戦を計画中です。詳細は日本生類創研より回収された資料を参照してください。 Footnotes 1. 吉水吉文(よしみず よしふみ)。大允氏吉水流。世民(せいみん)と号す。 2. 八目黎朦(やつめ れいもう)。 3. 米津元首(よねきつ もとさき)。八目黎朦の曾孫に当たる。 4. 吉水鹿田(おおたにろくでん)。吉水吉文の孫にあたる。
scp-665-jp
評価: +8+–x SCP-665-JP出現地域 アイテム番号: SCP-665-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-665-JPの出現する周辺地域は機動部隊そ-6(”夜警”)によって監視され、SCP-665-JPの出現する時間帯に敷地内部に侵入した人間は拘束し、尋問後にAクラス記憶処理を施したうえで退去させてください。SCP-665-JPの出現が確認された場合は必ず2人以上で会話を行い、SCP-665-JPの要求は全て拒否してください。 説明: SCP-665-JPは██県██市█丁目の屋外で、現地時間の0:00頃から4:00頃まで出現する人型実体です。見た目は60代の日本人男性のように見え、大きさ74 × 50 × 33cm程度のキャリーバッグを所持しており、常にボーラーハットを深く被っているため顔面及び頭部の詳細は確認出来ていません。SCP-665-JPは出現地域内を移動し、人間(以下、対象者と記載)を発見した場合接近し、対象者に対し「このバッグの中身をあなたに使って欲しい」と訴えかけます。この要求は弱い強制力を持ちますが、他者の説得によって拒否する事が可能です。 要求に対し対象者が承諾、あるいは拒否を示した場合、SCP-665-JPは消失し、その翌日まで再出現が確認されていません。 要求を承諾した場合、SCP-665-JPはキャリーバッグから食物を取り出し、対象者に渡した後に消失します。食物の種類、量は取り出す度に変化し、明らかにキャリーバッグの許容量を超えた量を取り出す事例も確認されています。この食物は常に十分な鮮度を保った状態を維持していますが、それ以外の異常性は確認されていません。対象者が食物を受け取ってから24時間後、対象者が消費していなかった食品は全て消失し、対象者を中心とした地域一帯に原因不明の事故・災害が発生します。消失後の食物を追跡するあらゆる試みは全て失敗に終わりました。この事故・災害の規模は対象者が消費した食物の量で変動し、消費量が大きい程影響を受ける範囲と規模が拡大しますが、対象者が受ける被害はより軽度な物となり、反対に消費量が少ない程周囲の被害は減少し対象者が甚大な被害を受ける事になります。要求を拒否した場合には災害の発生は確認されていません。 SCP-665-JPが物理的損傷を負った場合、SCP-665-JPは即座に消失し、出現地域内のランダムな地点に全ての負傷が回復した状態で再出現します。この時SCP-665-JPは自身の負傷に対して無反応であり、再出現後は自身を攻撃した相手にも再度要求を行います。 SCP-665-JPは██県で起きた不可解なマンションの倒壊の調査中にその存在が確認されました。この倒壊はマンションの102号室の真下10kmを震源としたマグニチュード6の地震によって引き起こされた物であり、その規模にも関わらず影響を受けたのは倒壊したマンション1棟のみでした。生存者の一人の「仕事帰りに変な男から饅頭を貰い、一人では食べ切れなかったから隣人に配って回った」という証言からエージェントが調査を進めた結果、SCP-665-JPが発見されました。関係者にはAクラス記憶処理を行い、マンションの倒壊に関してはカバーストーリー「違法建築による欠陥」を流布しました。これまでにSCP-665-JPが関与したとされる事案は██件確認されています。 実験記録665-JP-1 日付19██/██/██ 対象: D-665-JP-1、D-665-JP-2、D-665-JP-3 実施方法: D-665-JP-1に要求を承諾させ、出現した食品をD-665-JP-2、D-665-JP-3に完食させる。実験時の周囲への影響を考慮し、D-665-JP-1、D-665-JP-2、D-665-JP-3は財団の所有する太平洋上の無人島内で監視される。この時D-665-JP-1とD-665-JP-2は互いに100m以上離れないように指示し、D-665-JP-3のみ2km以上離れた状態で監視する。 出現した食品: アルミ箔に包まれたチョコレート2.5kg 結果: D-665-JP-2、D-665-JP-3は出現した食品を問題無く完食した。承諾から24時間後、D-665-JP-1の周囲█km圏内で森林火災が発生。消火後、D-665-JP-2は死亡が確認されたが、D-665-JP-1は衣服の一部が損傷していたものの、人体への被害は見られなかった。D-665-JP-3周辺の被害は確認されなかった。 分析: 摂食するのは対象者以外でもいいようだ。また、D-665-JP-2が死亡したにも関わらずD-665-JP-3が無傷だった事から、対象者以外の人物は摂食による被害の規模の変動は無いと考えられる。 実験記録665-JP-2 日付19██/██/██ 対象: D-665-JP-4、D-665-JP-5 実施方法: D-665-JP-4に要求を承諾させ、出現した食品を10%のみD-665-JP-5に摂食させる。その後D-665-JP-4及びD-665-JP-5を互いに2km以上離れた状態で財団の所有する太平洋上の無人島内で監視する。 出現した食品: 加熱処理されたトウモロコシ(Zea mays)5kg。摂食したD-665-JP-5は「塩で味付けされていて美味だった」と報告している。 結果: D-665-JP-5は問題無く規定量を摂食した。承諾から24時間後、D-665-JP-4の周囲200m圏内で風速350km/hに達する風が発生。D-665-JP-4は死亡が確認されたが、D-665-JP-5及びD-665-JP-4の周囲200m圏外は影響を受けなかった。 分析: 摂食したのが対象者以外だとしても、対象者を中心とした異常現象が起こる。 実験記録665-JP-3 日付19██/██/██ 対象: D-665-JP-6 実施方法: D-665-JP-6に要求を承諾させ、出現した食品を摂食させず財団管理下の焼却炉にて処分する。その後D-665-JP-6を財団の所有する太平洋上の無人島内で監視する。 出現した食品: 保温された状態のフランスパン7kg 結果: 出現した食品は問題無く焼却された。承諾から24時間後、D-665-JP-6の上空で嵐雲が形成され、1時間後に消失するまでに約100回の落雷が観測された。監視カメラの映像を確認したところ、全ての落雷がD-665-JP-6に誘導されるような軌道を描いていた。D-665-JP-6は落雷の直撃による死亡が確認されたが、それ以外の島内の被害は確認されていない。 分析: 摂食以外で消費した場合、対象者が消費したとは見なされないようだ。 実験記録665-JP-4 日付19██/██/██ 対象: D-665-JP-7 実施方法: D-665-JP-7に要求を承諾させた後、SCP-665-JPに食物の出現量を指定可能か要求する。 出現した食品: 実験結果を参照してください。 結果: SCP-665-JPは了承。その後、エージェントの指示を受ける前にD-665-JP-7が「どうせならくれるだけくれ」と発言。結果、SCP-665-JPはエージェントの攻撃により消失するまでに加熱処理されたウサギ(Leporinae Trouessart)、シカ(Cervidae)、ウマ(Equus caballus)、[編集済]の肉を██t出現させた。この際、SCP-665-JPは翌日まで再出現が確認されていない。出現した肉は全て焼却処分され、D-665-JP-7は財団の所有する太平洋上の無人島内で24時間体制で監視された。承諾から24時間後、[データ削除済]。 分析: 今回の事案で財団が失ったのがDクラス1名のみというのは奇跡だろう。これ以降のSCP-665-JPの要求を承諾する実験は禁止とする。 インタビュー記録665-JP-1 日付19██/██/██ 対象: SCP-665-JP インタビュアー: エージェント・岸田、エージェント・三沢 <録音開始> エージェント・岸田: こんばんは。少しお時間よろしいでしょうか? SCP-665-JP: おや、こんばんは。どうしました? エージェント・三沢: あなたは会った人にいつも何らかの食べ物をプレゼントしているらしいですが、何のためにそんな事をしているのですか? SCP-665-JP: 私の事をご存知だったのですね。これは全て私の贖罪の為にやっている事なのです。 エージェント・岸田: 贖罪? SCP-665-JP: はい。私はかつてある少年達に怪我を負わせました。彼らは私に謝罪を要求し、人々も私に罪を償うように言いました。だから私は償いとして未来ある人達の手助けをしているのです。私にはこれくらいの事しか出来ませんが。 エージェント・三沢: あなたが食べ物をプレゼントした人々が全員明らかに異常な災害に遭遇し、中には命を落とした人もいます。あなたの渡す食べ物に何らかの異常性があるのではありませんか? SCP-665-JP: [溜息]それは残念な話ですね。恐らくその死んでしまった人は使い方を間違えてしまったのでしょう。 エージェント・岸田: 使い方、ですか? SCP-665-JP: そうですよ。私が渡した物は全て食べる為に使う物です。溜めておいたりなんてしたら勿体無いじゃありませんか。全て使い切ってしまうべきなんですよ。そうだ、あなた方もこのバッグの中身を使いませんか?        [その後、エージェント三沢が拒否した為SCP-665-JPは消失した] <録音終了> 補遺: SCP-665-JPの関与が確認された最も古い事案の1年前である19██年に、SCP-665-JPの出現地域での目撃情報を最後に消息不明となっている人物の存在が明らかになりました。消息不明となった██ ██氏は1█歳の少年3名に対し所持していたカッターナイフで切りつけたとして現行犯逮捕され、懲役5年の判決を受けており、消息不明となる前日に刑期を満了していました。被害者である少年3名を調査した結果、1名がSCP-665-JPの関与した災害に巻き込まれて死亡しており、2名は199█年に起こした暴行事件で逮捕され、現在も服役中です。2名に対するインタビューでは有力な情報が得られませんでした。██氏とSCP-665-JPの関連性については現在調査中です。
scp-666-jp
評価: +37+–x SCP-666-JPの今の胴体と同じ外見のパジャマ アイテム番号: SCP-666-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別職員要件: 指定されたSCP-666-JP担当部門に割り当てられる職員は、大前提として、SCP-666-JPの顔写真の確認による試験を継続的にクリアしている人間に限られます。 また、SCP-666-JPに関しては、その収容違反への対策として確保用拘束ボックスと大型トラックを用いた特別再確保・再収容手順が定められており、前述の職員にはその手順に基づく定期訓練への参加も義務付けられています。 特別収容プロトコル: SCP-666-JPの収容コンテナは、サイト-8141の最下階に設けられた地下ユニット内に配置します。SCP-666-JPはコンテナの中で、天井から下りる鎖に両手首を拘束され、宙吊りとなって、足が床から50 cm以上離れた状態で収容されています。 コンテナの床に堆積していくSCP-666-JP-1は定期的な清掃により取り除かなければなりません。 説明: SCP-666-JPは現在は長袖のパジャマ上下一式、白い軍手、黒い革靴に見える外皮を持っており、機械の観測と「大多数の」人間によれば、首にあたる部分から上には何もありません(補遺666-2参照)。 SCP-666-JPは常に、足(靴)の裏からSCP-666-JP-1に指定される半固形物を分泌し続けています。通常時のSCP-666-JP-1は小麦粉、鶏卵、牛乳等を主な構成要素としており、特に害は見られません。しかしSCP-666-JPに「踏まれ」る: SCP-666-JP-1が床、壁、紙面などに一度付着し、その状態から更にSCP-666-JPの足の裏と接触すると、SCP-666-JP-1は赤く変色して凝固します。 「踏まれ」て変質したSCP-666-JP-1に関しては、接触すると非常に多彩な損害および被害(大体は致命的な内容)を発生させ、それから多くの場合は消失する、という事の他には殆ど何も分かっていません。接触した人間は「カチッと鳴った」「光った」等の証言を残す事がありますが、客観的な観測はできていません。分析の試みは常に、観測や検査の機器および研究者の損失により失敗しています。接触時の事例は数多く記録されていますが、もたらされる損害や被害の多様性について、その限界を推測する事はできていません。 SCP-666-JPは野外に存在させ続ける事ができません。詳細な条件は解明されていませんが、SCP-666-JPは建物の外に「そのまま」連れ出されると消失し、翌日の午前0時以降にランダムな家屋の中へ出現します。今のところ日本国外におけるSCP-666-JPの出現や逃亡の事例は確認されていません。先述の特別再確保・再収容手順はこの段落の特性を元に考案され、現在も特に支障なく運用されています。 + 参考記録666-1 - 参考記録666-1を閉じる 参考記録666-1: 財団に残された記録によれば、SCP-666-JPは群馬県高崎市内の民家で最初に確認されています。 危険物の保有が確実視されていたその民家へ警察の捜査官6名が突入して間もなく、捜査本部への通信が途絶えたと報告されています。やがてその民家の電話番号から高崎警察署へ、捜査員の1人である武藤巡査を名乗る者からの連絡が入りました。 参考記録666-1-1 - 高崎警察署の通話記録より抜粋 高崎警察署側の応答内容は重要度が低いため割愛します。また、電話の声は非常に聞き取りにくい状態であったため、本報告書では文書へ転写した内容を公開します。 みんな、やられた。 赤い足跡…赤い、足跡には、絶対、触らないで! ドアを、破った時、ひどい臭いで…それで、足跡…(息切れ)たくさん、沢山の、赤い足跡が見えました。 廊下も、階段も、そこらじゅう、びっしり、赤い、足跡で… それで氷川さんが踏み込んだら、床が抜けて…氷川さん、落ちて、…いなくなった。…いなかったんだ。 近くの足跡、調べました、でも何もなかった。…本当に、(嗚咽)何も起こらなかったんです! だから藤井さんが、行って、そしたら藤井さん、急に止まって、がくがく震えて、(息継ぎ)それで、それで…(激しいノイズ) みんな、みんな、逃げようとして、でもドアが、開かなくて…ぶち破ったはずなのに! 4人がかりでも開かなくなって、おまけに無線も…。なのになんで、なんでこの電話は…くそっ、畜生、畜生…(嗚咽) 逃げられなくて、でもあんなところにいたくなくて、進みました、足跡を踏まないで、歩いて、それなのに、気をつけてたのに、音が、(嗚咽)リビングの方で音が鳴って、幹さんが、足を…そしたら、そしたら上から、天井から、(息切れ)何なんだよ、何なんだよあれ! (嗚咽)ふざけてる、馬鹿みたい、本当に、馬鹿みたいだ… その後…虫! 虫が、飛んできて、服の中…ああ、(嗚咽)痛い、痛いよ、痛いよお、(悲鳴と嗚咽が10秒程度続く) (息継ぎ)吉野さんも、堤さんも、もう、虫で…お、おれは、身体の自由、効いて、リビング、来れて、電話、かけました…(約2秒沈黙)ああ、赤い足跡、踏んじゃだめだ、絶対、絶対に、赤い足跡は、踏むな! リビングも、赤い足跡、いっぱいです…ああ、(息継ぎ)音、聞こえてきた音、分かりました。テーブル、新聞をたたんで、椅子、引いたんだ、新聞の近くには、雑誌が置いてる。 それで、足跡の、新しいのが、椅子から、続いてます…キッチンに行ってる。くつろいでる、くつろいでるんだよ、俺たちのこと、無視して、畜生、畜生、畜生…(嗚咽) あ、あっ、戻ってきました、キッチンから戻ってきた…片手鍋を持ってる、お、俺の目の前で、ティーポットにお湯を…えっ、えっ、ティーポット、え、だって、首、首、えっ? (息継ぎ)えっ、てぃ、ティーポットって、そんな、そんな。何だよそれ、(嗚咽)馬鹿みたい、本当に…馬鹿みたいだ。 (以降、音声なし) 財団は警察内部に潜入させている諜報機関よりこの異常な通話内容を入手した後、警察による捜査を中断させるよう手配し、以後の対応を引き継ぎました。 参考記録666-1-2 - 財団による民家の現場検証 玄関を上がってすぐの床に開いていた穴の深さは30 cm程度でした。その少し先で藤井巡査が、上を向き、口から先の尖った竹筒を20-30 cmほど右上へ突き出しながら立ったままの状態で発見されました。足元を調べると、竹筒は藤井巡査の左足の裏の下から伸びていることが分かりました。 入り口の廊下を進んだ突き当たりの近くでは幹巡査が、底部の直径が1 m程もある巨大な金ダライの下敷きになっていました。金ダライは元々、次に述べる「中身」で満たされていたと分析されており、幹巡査はその重さで頭や首の骨を折って即死したと見られています。 屋内で最も多く発見された生物は羽蟻でした。金ダライ内部の分析結果より、羽蟻はその上半分に溜まっていたと考えられています。床の上で動いていたのは主にムカデ、サワガニ、オオグソクムシ等で、これらは羽蟻に飛び掛られた捜査官達が怯んでいる間に金ダライの下半分から拡散し、捜査官達に這い登っていく等を行っていたと推測されます: 回収された虫や甲殻類の全サンプルは、通常の食性にかかわらず生きた人間を優先的に襲おうとしたと記録されています。 金ダライの(入り口から見て)向こう側には、横たわる吉野巡査の身体を中心に、虫などの塊が形成されていました。その近くの様々な場所で、堤巡査のDNAを持つ破片が散見されました: 虫に襲われて倒れこんだ際、他の赤い足跡に触れて「解体」や「加工」を受けたものと思われます。 リビングでは、警察署へ連絡したとされる武藤巡査が電話機のそばで倒れていました。武藤巡査は血と吐瀉物の混ざったものに顔を突っ伏しており、これが通話中の激しいノイズの正体だったと考えられています。電話機の横に置いてあったメモ帳の1ページ目には、屋内で発見された誰とも一致しない筆跡で、こう書かれていました: ここで見たことを警察に話してみろ。 そうすればようやく死ねるよ。洗いざらいネ。 落ちてきた金ダライの最も近くにいたと解析されている武藤巡査が、なぜ、吉野巡査以上の損傷を受けながら、リビングまで這っていく事ができたのかは不明です。 以上の様相が確認されるまでに、財団の調査員2名が不意に足を「踏み外し」て、犠牲となりました。1人は天井から降りてきた釣り針によって未知のメカニズムで全身の衣服と皮を引き剥がされてショック死しました。もう1人は、踏んだ足跡の中央から噴き出したカスタードクリームを直に口をつけて飲み始め、他の調査員に力ずくでそこから引き離されると、全身を融解させてカスタードクリームへと変えていきました。 そして最後に探索された2階の寝室で、SCP-666-JPは文庫本を片手に寝転んでいました。 民家の家主とその家族の死因については、異常性のない殺傷方法であったため割愛します。民家で発見された死者は全て、表向きは反社会的人物による活動の結果として処理されました。 玄関の穴に落ちたと報告されていた氷川巡査は、50 m以上の高さから叩きつけられたような状態で裏庭から回収されました。 補遺666-1: SCP-666-JPが収容されて2ヶ月が経った頃から、ごく少数ながら、SCP-666-JPの頭部が存在すると主張する者が現れ始めました: 彼らの証言はまちまちで、原則として一致を見せる事はありません。安全のため、特別職員要件が定められ、SCP-666-JPの頭部を見たとする職員によるSCP-666-JP担当業務への関与は禁止されるようになりました。
scp-667-jp
評価: +24+–x ブラックボックスから解析されたSCP-667-JPの活動記録 アイテム番号: SCP-667-JP,SCPO-667-JP オブジェクトクラス: Safe,Safe 特別収容プロトコル: SCPO-667-JPは現在太平洋上の石油プラントに偽装された海上プラント-6670の海底に沈められる形で収容されています。SCPO-667-JPの周囲には観測用の無人探索艇を複数配備し、その姿を捉え続けられるように調整してください。海上プラント-6670の周囲50海里以上200海里以内を飛行、航行する全ての航空機と船舶は財団により許可されたものに限り、針路と通過日時、時間を正確に財団へ申請させるよう取り計らってください。海上プラント-6670の周囲50海里以内にはいかなる民間の航空機、船舶も侵入できません。観測衛星及び探査用ブイによって侵入する存在が認められた場合は可及的速やかに警告を行い、抵抗する場合には排除が認められています。このため、海上プラント-6670には自衛と侵入者排除のための実力保有が認められます。 SCP-667-JPは異常性を有する胸部コア、双頭部コンピュータ、動力伝達系統などを取り外した状態で個別にサイト-1706の大型異常静物収容容器に保存されます。それらを除いた外殻と骨格は同サイトの巨大異常静物収容容器に保存されます。全てのパーツを組み合わせた上での実験は収容違反の可能性が非常に高いため、O5評議会/倫理委員会全員の署名と捺印のある書類の提示により48時間のみ認められます。48時間の実験を終えた後は当該の書類の確認とSCP-667-JPの状態検査を終える必要があります。更なる実験には状態検査の後に異常性がないと認められてから24時間後にもう一度同様の書類を提出することで許可されます。一度に49時間以上の実験を行うことはいかなる理由が有っても認められません。 SCP-667-JPに内包されていたDNAサンプル群はサイト-1781の特秘冷凍収容庫の第12番金庫から第33,203番金庫に収容されています。実験に使用する際はサイト管理者に申請書を提出してください。 説明: SCP-667-JPは全高143m、重量1500tの金属構造物です。外観は四本の脚と四本の腕、最上部には二つの球形の頭部と思わしき突起物があります。脚部には人間と似通った位置、数の関節が設けられており、腕も同様です。4つの脚はX字状に伸びており、それらをまとめる腰から垂直に胴体が伸びています。胴体上部から腕も同様にX字状に伸びています。胴体部分には腹筋と胸筋の様に見える装甲が二組づつ存在しています。主体構造の殆どにはタングステンの外殻が露出していますが、一部の部分ではセラミックとチタンの層状複合構造体が内骨格を覆うように設置されており、本来は全面がこの複合構造で被覆されていたものと思われます。関節内部には放射性降下物が多数入り込んでおり、これらが故障の原因とされています。 SCPO-667-JPはSCP-667-JP発見時に同時回収された全長約100m、直径約6mの円錐型金属構造物です。SCP-667-JPの沈んでいた海域の調査中に発見され、その表面構造がSCP-667-JPと似通っていたためにSCP-667-JPの付随物として回収されました。回収当初、SCPO-667-JPの頂点部分では常に海水の沸騰と水蒸気爆発が発生しており、周囲の海域では異常な数のプランクトンが発生していました。これらがSCP-667-JP回収任務を大幅に遅らせる最大の原因となりました。SCPO-667-JPの主体構造の殆どはタングステンですが、その芯に使用されているのは木材です1。底面の一部採取検査によってSCPO-667-JP製造時期は人類誕生以前であることが分かっています。 SCPO-667-JPの周囲2mの空間に存在している物質は、通常と比べて3.41倍ほど早く劣化、風化、運動しており、これによってSCPO-667-JP周囲は常に未来の情景を早回しで映し出しています。この急速劣化現象は先端部分に行くに従って比例するように早くなり、頂点部分周囲の空間は通常の空間と比べて14,562.0023倍の速度で劣化/風化/分子が活動することが分かっています。しかしながら、これらの急速な運動は境界面を流出してくる物質にのみ確認されており、流入してく物質はむしろその分子運動が急激に減少します。また、これらの異常現象はSCPO-667-JPに接触している物体に対してより強く影響を及ぼし、頂点部分に接触している物質は約15,768,000,000倍の速度で劣化、運動し2、通常空間換算で秒速25mほどの速度で急速劣化現象が広がっていくことが確認されています。これらの急速な劣化/風化/分子運動は流入時の減速にも比例して発生します。このことから、頂点部分が空気に晒されている場合は常に加速された空気の摩擦で、影響の境界面が高温となり、SCPO-667-JPの先端付近は常に絶対零度を保ちます。この特性のため、現在は石油採掘プラントに偽装された海上プラント-6670の海底に直接沈められる形で収容されています。未だSCPO-667-JP周囲及び先端部分でどのような現象が発生しているのかは解明されていません。 SCP-667-JPにはコックピットのような人が入るスペースが存在せず、全ての動作は右頭部のメインコンピュータと左頭部のサブコンピュータが担っていることが分かっています。右頭部に内蔵されたコンピュータには12年現在一般家庭に普及しているシュリーマン型コンピュータを逸脱した演算方式が採用されていますが、左頭部に内蔵されたコンピュータは現在のシュリーマン型コンピュータと変わりありません。右頭部コンピュータは各機関から送られてくる情報を元に、SCP-667-JPの動作を検討、策定し左頭部のコンピュータに決定された指令を送る機能とインターフェイスを使って周囲の人間とコミュニケーションを取るための理性処理の機能3が備わっています。左頭部コンピュータは右頭部コンピュータからの指令を処理し、SCP-667-JPを動作させるための指令を各機関に伝達する能力のみが備わっています。 SCP-667-JP発見当時、右頭部コンピュータは完全にその機能を停止しており、左頭部コンピュータのみが機能していたと記録されています。 SCP-667-JPの主たる動力源と思われる胸部コアには非常に単純な振り子が配置されており、重力による反復運動が全機関の動力源とされていたようです。動力伝達系統などには稼働時の摩耗が見られず、実際に稼働していたかどうかには疑いを持つ研究者もいます。しかしながら後述するブラックボックスの活動記録はSCP-667-JPが[編集済み]年の間に14万8000kmを歩行したこと、脚部駆動装置の故障により右頭部コンピュータを再起動したものの上手く起動しなかった事実を示しています。 SCP-667-JPには、現代の自動車に搭載されるようなブラックボックスが胴体部分に格納されており、15年にその解析に成功しています。ブラックボックスにはSCP-667-JPの動作記録と周囲の音を録音するレコーダー、それに加えて幾つかの文書データが保存されていました。このうち、動作記録とレコーダーは完全な解析に成功しているものの、文書データは海水による浸食が激しくデータは破損しているものと判明しています。レコーダーの内部の音声のはじめにはSCP-667-JPが最初に建造されて起動された地点の環境音と人と思わしき声が録音されていました。録音されていた声の言語は解読されていませんが、発音や語数などからヘブライ語系であるとの仮説が立てられています。 クロステスト667 - 日付16/2/4 対象: SCPO-667-JP及びSCP-667-JP 実施方法: SCP-667-JPとSCPO-667-JPが無関係であるという仮説の検証のため、SCPO-667-JPがSCP-667-JPに接触した際の反応を見る。SCPO-667-JPとSCP-667-JPの右腕一つを接触させ、その風化/劣化の度合いを測定する。 結果: SCPO-667-JPの先端部分をSCP-667-JPに30秒間接触させた後、接触箇所を検査したが風化/劣化の兆候は見られなかった。この事は、他のあらゆる物質に対して均一に風化/劣化現象を引き起こしたSCPO-667-JPの特異性から逸脱する結果である。また、この実験が成功した後にSCPO-667-JPを収容容器へ戻す途中、突如先端から大樹が垂直に発生し先端部分の重量が増加、収容容器の一部破壊を引き起こした。これによる財団への被害は軽微。 分析: 当初予定されていた実験はSCPO-667-JPとSCP-667-JPの関係性を裏付ける良い材料となりました。しかしながら後の事故の原因が何であるのか未だに分かっていません。SCPO-667-JPの未知の特異性であるならば、早急な解明が求められます。大樹はSCPO-667-JPから切除され、検査されましたが通常のスギであることが判明し焼却処分となりました。 後の事故の原因の最有力仮説はSCPO-667-JP先端部分に樹木の花粉が付着したことによるというものです。この仮説は19年に実証されました。現在はSCPO-667-JPの先端に付着した花粉が単体で大樹となるプロセスの謎が研究されています。 SCP-667-JPは11年に南極大陸付近にて浮上する巨大構造物の報告として最初に確認されました。当時の記録ではSCP-667-JPは時速15kmで海中を移動しており、その後また遠洋に移動するとともにその深度を深め、米軍の補足から逃れました。米軍からの報告の解析により、この巨大構造物が異常な存在であることが確認されたため、財団は周囲の海域を調査し発見に至りました。 財団による発見時のSCP-667-JPは海底を歩行しており、財団の無人潜航調査艇”SCPSM-ディオゲネス”によってその姿が確認されました。発見時、SCP-667-JPの動きは海水による抵抗からか非常にゆったりとしたものであり、この事から無人潜航工作艇数機による確保に成功しました。 SCP-667-JPの動作系統、動力伝達系統以外の随所には様々な種類のDNAサンプルとその塩基配列のコードが格納されています。33,215種類のDNAサンプルは全て小さな保存容器の中に収納されており、英語でのラベル表示がなされていますが、現在の英語圏にその全ての単語は存在していません。また、それらDNAサンプルの全ても塩基配列のコードも全て既知の動物、存在していた動物に合致しませんでした。 管理記録667-JP SCP-667-JPの存在が確認された翌月より、SCPO-667-JPを収容している海上プラント-6670に所属不明の軍用艦が度々接近している事が確認されました。財団は当初この所属不明部隊の身元を明かすべく調査を進めましたがどれも該当する人物は確認されず、財団はイージス艦による退去命令と警告を行いましたが彼らが立ち去ることはありませんでした。O5はこれに対し撃滅命令を発令、サイト-1726よりロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦であるSCPSSN-"タナトス"、サイト-8199より倭型巡航ミサイル原子力潜水艦であるSCPSSGN-"ヤマト"が派遣されました。激しい交戦の末、対象はSCPSSGN-"ヤマト"のトマホーク巡航ミサイルにより撃沈、生き延びた部隊員の回収も行われました。翌日には尋問が行われましたが、その素性と目的を得ることは出来ませんでした。特筆すべきは、対象らがSCPO-667-JPと思われる存在の知識を部分的に有し、かつSCP-667-JPの存在も認知し『人』や『彼』という呼称を用いていた点にあり、この事実は現在も調査中です。 現在は沈没した軍用艦のサルベージとその鑑識が行われています。 20年10月45日 エロース博士の提唱により、SCPO-667-JPとDNAサンプルの接触実験が提唱されました。O5評議会はこの実験の申請を保留し、代替にSCPO-667-JPと一般動物のDNAサンプルの接触実験を承認しました。実験の結果は現在公表されておらず、DNAサンプルはそれまで収容されていたサイト-1706生体オブジェクト収容容器から現在の高セキュリティ施設へ移されました。エロース博士は解雇されました。現在、エロース博士の提案はハデス博士によってO5に再申請されています。 Footnotes 1. オークであることが判明しています。 2. この速度は一年がおよそ0.002秒で終了することを意味しています。 3. 一部の研究者は性能の低い人工知能である可能性を示唆しています。
scp-668-jp
評価: +60+–x 小型カメラによって撮影されたSCP-668-JPの内部映像 アイテム番号: SCP-668-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル:エリア-8179に指定された地域はSCP-668-JP封じ込めのために設置された広範囲収容領域です。当地域への一般人の立ち入りは禁止され、発見次第退去させてください。SCP-668-JPの探索は常に行われ、オブジェクトを発見次第プロトコルNK-668-αに基づいた措置が行われます。 説明:SCP-668-JPは中国雲南省████の山岳地帯の広い範囲に発生する異常な建築物です。SCP-668-JPの発生条件には一貫性は見られず、法則性は不明となっています。 SCP-668-JPは大小様々な部位の人骨を組み合わせて形作られており、実在する建造物を約1/24のスケールで内部空間に至るまで精密に再現します。模倣される建造物は多岐に渡り、橋や高速道路、ダムなどの個体も確認されています。模倣される建物も一貫性が見られず、地球上の全地域の建造物が対象であると見られています。 SCP-668-JPの発生は前兆なく起こり、発生プロセスは現在も観測されていません。発生したSCP-668-JPは不定期に崩壊することが観測されています。オブジェクトの崩壊イベントが起こると同時にSCP-668-JPに模倣された実在の建造物が同様に崩壊します。 SCP-668-JPは19██年に現地に滞在していたエージェントによって偶然発見され、監視が行われました。最初の発見から約五日後にオブジェクトは崩壊。その後の調査により崩壊のあった同日、中国安徽省にてマンションが倒壊していた事からオブジェクトとの関連が指摘され、さらなる調査の結果オブジェクトは倒壊したビルと酷似したものであった事が判明しました。 周辺地域の本格的な調査が行われさらに複数個のオブジェクトを確認、現在の収容措置が講じられました。オブジェクトの発生は非常に広い地域に拡散しており、かつ発生地域が地理的に奥深い山岳地域であるため完全な収容、発見が非常に困難である事に留意してください。 下記は現在までに確認されているSCP-668-JPオブジェクトの一部です。 発見日 内容 備考 19██年██月██日 広東省██市█████の一般家屋に酷似したオブジェクトを発見。発見より2週間後に崩壊。 家屋は築15年ほど。建材の老朽化によるものと見られる。 200█年██月██日 アメリカ ミネソタ州に設置されている██████川橋に酷似したオブジェクトを発見。発見から3日後に崩壊。 模倣対象となった建造物の特定が崩壊イベント後であったため被害は抑えることが出来なかった。 200█年██月██日 南アフリカ█████のマンションに酷似したオブジェクトを発見。発見から2ヵ月後に崩壊。 崩壊前に模倣された建物を特定。住民の強制退去が行われ、オブジェクトをコンクリートにより保護する措置が取られたが失敗。オブジェクトは保護作業中に倒壊、コンクリートの重みによるものと推察されるが詳細不明。 200█年██月██日 黒龍江省哈爾浜市███のマンションに酷似したオブジェクトを発見。崩壊日は備考参照。 崩壊前に模倣された建物を特定。マンションを人為的に倒壊させる実験を行う。結果として、オブジェクトと建物の崩壊は完全に同じタイミングで発生する事が特定された。 20██年██月██日 ロシア オリョール州█████のレンガ工場に酷似したオブジェクトを発見。崩壊日は備考参照。 崩壊前に模倣された建物を特定。建物を完全に閉鎖し、補修点検作業を実施後、オブジェクトを人為的に破壊。オブジェクトの破壊と同時に建物にも同様の崩壊が発生した。 200█年██月██日 ███ ███に建造された██████に酷似したオブジェクトを発見。現在の所オブジェクトの崩壊は起こっていない。 施設の崩壊イベント発生が懸念され、移設作業が進行中。 以上の記録からオブジェクトと建物の崩壊は相互に影響しあっている事がわかっておりますが現在のところ崩壊イベントを阻止する試みは全て失敗に終わっています。 実験では一件の例において5 tの圧力に耐え、それに基づき補強作業が行われましたが数kg程度の圧力で崩壊が発生するなどSCP-668-JPは物理的に異常な状態にあり、崩壊がなんらかの選択性を持って発生している可能性が指摘されています。実験の困難さなどから現在は発見されたSCP-668-JP固体の監視と周囲の安全確保、模倣された建造物の特定を主眼としたプロトコルNK-668-αが運用されています。 補遺1:20██年██月██日現在、発見された崩壊前オブジェクトは1567点、崩壊後のオブジェクトは3217点、保管されている人骨は170 tとなっています。採取された人骨はいずれも同一のDNAが検出されており、調査の結果DNAは1916年10月24日、フランスのロレーヌ地方ヴェルダンで戦死したフランス兵であることがわかっていますがオブジェクトとの関連は不明です。 補遺2:SCP-668-JPの影響を受け、倒壊した建造物の再調査の結果、全ての例に置いて地下部より人骨が発見されています。人骨はそれぞれ一体分で原型をほぼ留めており、全て補遺1にて示された人物と同一である事が判明しております。この結果を受け、財団施設及び各国重要施設などを対象とした調査が進められていますが現在の所成果は上がっていません。
scp-669-jp
評価: +116+–x 収容時に撮影されたSCP-669-JP アイテム番号: SCP-669-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-669-JPはサイト-8169の低危険性生物収容ユニット内に設置された高さ60cm幅、奥行きが80cmのアクリルケースにて収容されます。給餌の際は人体がケース内に入らないように注意を払いながら、保管期限の過ぎた廃棄予定の輸血用血液をシリンダーにて与えて下さい。また、SCP-669-JPは有害な物質を発生させる可能背がある為、直接の接触を行う職員は防毒マスク等の装備が推奨されます。 追記: 1日に1回、SCP-669-JPの精神状態の悪化を防ぐため心理鑑定士によるカウンセリングを兼ねた心理状態のチェックを行い、変化の見られた場合は担当研究員に報告して下さい。 説明: SCP-669-JPは環形動物門ヒル綱(Hirudinea)に類似した特徴を持つ全長15cmの生物です。外見的には摂食時に赤褐色に変化する事を除けばヒル類との相違点はありませんが、通常の種類には見られないクチクラ質の微細な歯と高い知性を持ち、未知の方法で中年男性の物と同質の音声で会話することが可能です。また、SCP-669-JPは自身の事を「吸血鬼の王 クレイグ・シュライベル」と称しており、「かつて吸血鬼の王として君臨し[削除済]との戦いの果てに世界を放浪を続け200年前に日本に移り住んだ」と主張していますが、そのような事実と合致する歴史的な記録等は確認されておらず、妄想性障害及び演技性パーソナリティ障害の可能性が指摘されている事を関係職員は留意して下さい。 SCP-669-JPは常に全身を覆う粘膜から未知の幻覚成分を含んだガス状の体液を噴出させる事によって、限定的かつ局所的な視覚の混乱を引き起こすことが可能であり、その事についてSCP-669-JPは「この幻術は我の秘術の欠片だ」と主張しています。SCP-669-JPは食料として人間の血液以外を摂取する事が不可能であると主張しており、人体からの直接な吸血による感染症等のリスク状の観点から保管期限を過ぎた廃棄予定の輸血用血液が与えられます。1 SCP-669-JPはナミウズムシ(Dugesia japonica)に見られるものと同等の再生能力を保持しており、細かく裁断された場合に置いても断片の何れかを起点として極性を持った再生を行います。この再生能力によってSCP-669-JPが複数再生した場合では、一匹の個体のみがSCP-669-JPの意識を持ったまま通常のサイズへと再生を完了し、他の個体は5cmから10cmの小型の個体へと再生します。再生を終えた小型の個体は知性を有する様子を見せず不規則に移動を行うか一切の行動を行わないまま、およそ3時間程で溶解しアミノ酸を含んだ液体へと変化しますが、SCP-669-JPと接触した場合は癒着した後に縮小を行いSCP-669-JPへと吸収されます。この吸収によってSCP-669-JPの重量は一時的に増大しますが外見的な変化はほぼ見られず、数期間後には重量も元の状態へと戻ります。この性質を用いる事でSCP-669-JPへの給餌を行う事も提案されましたが、再生自体にSCP-669-JPが疲労を見せた事、吸収によってSCP-669-JPが栄養を得ている様子が見られなかった事から、無意味であると判断されました。 再生実験を行った際の組織の断片を検査した結果から、SCP-669-JPからはヤマビル(Haemadipsa zeylanica japonica)とヒトの遺伝子の他に複数種の未知の生物の遺伝子情報が確認されている他、SCP-669-JPの粘膜及び体液からは上述した幻覚物質の他に複数の酵素や電解質が含まれており、最も近い存在としては唾液の成分が挙げられています。なお、体内から脳組織や臓器の存在は確認されず、大腸組織に似た構造の細胞と乱雑な神経組織のみが確認されており、それと同時に長さ3cm、幅2mm程の空洞が頭部付近から確認されていますが、この空洞はどのように損傷し再生した場合に置いても意識を持つ個体の頭部に存在します。 以下はSCP-669-JPに対して行われたインタビューの中でも重要だと思われる部分を抜粋したものです。 + インタビュー記録 669-JP-3 - 記録を停止する 対象: SCP-669-JP インタビュアー: SCP-669-JP研究班班長 下北沢博士 付記: 当記録はSCP-669-JPに対して行われた3回目のインタビューにて、敵対的な態度を改め収容に対する理解を示した為に個別に記録された物です。 <再生開始> [無関係な内容が多い為、インタビュー前半は省略] 下北沢博士: すると、貴方がこの国に来た理由は療養の為ということですか? SCP-669-JP: うむ、遥か昔…..我とその部下たちは十字狂い共によって辺境に追いやられ苦戦を強いていた。かろうじて逃げ延びた先に待ち受けていた腐れた肉共は倒せども倒せども沸き続け、吸血鬼の頂点である我であってもあの忌まわしき豚の陰嚢共の数と勢いはどうにもできなんだ…..。 下北沢博士: 十字?ああ、成程。しかし貴方を見る限りでは、その、大変だったでしょうね。人間との争いは。 SCP-669-JP: うん?人間なぞ相手にはならんしカルシウムだかなんだかいう肉共が鬱陶しかっただけだ。貴様等人間なぞ我ら吸血鬼にとっては何という事は無い!我が力に掛かれば貴様等を引きちぎって磨り潰す事など朝食の前だ。奴等の呪いによってこの姿に変えられてしまった事が最大の失敗だっただけの事だ。 下北沢博士: どういうことですか?SCP-669-JP。 SCP-669-JP: 吸血鬼の王でありかつては鮮血公と呼ばれた我であったが、奴等の珍妙な術には成す術が無かった。我が配下は歩く臓物や死者に捕まり、千々に引き裂かれ飲まれ……部下も十字狂いも飲み込まれ、やがて巨大な肉壁となった忌まわしきモノに……我も飲まれてしまったが……私も馬も……しかし、肉の上に立っていた襤褸布の、いや、とにかく我は奴に、相手を惑わし眠らせ毒を食らわせる秘術を行使する事が出来た為、我のみが生き延びる事が出来た。 下北沢博士: 大丈夫ですか?問題無いなら続けましょう。それで、何故この国に?そもそも吸血鬼は流水を渡れないという話では? SCP-669-JP: それはこの姿が幸いした様だ。以前のこの身を縛っていた忌まわしき鎖は皮肉なことに、奴等の呪いによって解かれたのだ。其のお陰で船に乗り込む事も出来、身を隠す事も出来た。この国に辿り着いたのは奴等の手が及んでいなかったからに過ぎない。なかなか住み心地は良いがな。 下北沢博士: はぁ。日本語は独自に学ばれたんですか? SCP-669-JP: それも我が大いなる力の断片にすぎない。心在る物の魂のうちに響く呟きを聞き取る力が、この姿であっても多少扱えたということだな。 下北沢博士: なるほど、よくわかりました。つまり貴方のその姿は本来の姿では無いということですね?SCP-669-JP。 SCP-669-JP: ああ、その通りだ…..。その名前にもそろそろ慣れてきたな。彼らは別の名で呼んでいたが。 下北沢博士: 彼ら?知り合いがいたんですか? SCP-669-JP: この国で巡り会いし呪い師達だ。シューシュー・・・コレクターと呼ぶべきか?奴等は様々な事を知り様々な術を用いていたし我や我が配下を苛みし塵芥共についてもよく調べていた。我に近づいたのも恐らくは我の知識と力を欲していたのであろうな。[含み笑い]、結局はこの呪いを解けず、愚かな人間同士の争いと馬鹿騒ぎによって散り散りばらばらになってしまったようだが。…..今となっては懐かしい話だが、今はこれ以上話す気分では無い。 下北沢博士: とても興味深いお話ですね。よろしければもう少しお聞かせ願いたいのですが。 SCP-669-JP: [含み笑い]…..貴様等の知る必要の無い事だ。話すつもりは無いと言っている。 下北沢博士: 分かりました、その話はまた今度に。ところでその「かつての姿」に戻る目処は立っているんですか? SCP-669-JP: …..実は一つの方法を考えている。これまでに世界を渡り歩いて得た知識とこの国で知った様々な事柄から考え付いたのだ。 下北沢博士: 聞かせてくれますか?SCP-669-JP。 SCP-669-JP: 貴様も知っていると思うが我々吸血鬼は人間の血を食らう…..人間の血から魔力を得るのだ。この姿になってから得られる血の量も減り、我が闇の力も落ち込んでしまった。もし…..もし大量の人間の血を得ることが出来たならばあるいは….. 下北沢博士: 大量の人間の血液を摂取する事によって元の姿に戻ることができるとお考えなんですね。 SCP-669-JP: ああ、その通りだ。それこそがこの煩わしくも我に絡みつく毒の茨を焼き尽くす唯一の方法だと考えている。そしてそれには貴様等の協力が不可欠であるとも考えているのだ…..貴様等人間と対等に話しているのもその為だ。 下北沢博士: それが協力的な態度の理由ということですね…..わかりました。とりあえず一度インタビューを中断します。再開は10分後に….. <再生終了> 終了報告書: インタビューの内容から、対象は過去に何らかの異常な存在と遭遇し、現在の性質を得た可能性が示唆された。発言には些か信憑性の無い物や大袈裟な物が見られるが、いくつかの内容から東欧諸国で確認されている異常な存在との共通点が見られる為、更なる聴取と調査が必要だと考えられる。また、発言内容から察する事のできるように、対象は誇大妄想を含んだ心因性の障害を患っている痕跡が見られるが、私個人の推測としては一種の記憶障害からなる妄想であると考えられる。対象を「元の姿」に戻す事で、知性の向上や脳組織の発生が認められた場合、ケア次第では記憶を復元できる可能性がある。対象の態度次第では実験を執り行う事が出来るだろう。 発見経緯: SCP-669-JPは房総半島沖に位置する████島内の廃屋から発見されました。財団は当時████島の付近で発生した沈没事故の調査及び遭難者の救助を補助しており、近辺に位置していた████島の調査を行っていた際に無人島であるにも関わらず洋館が存在した事が職員の注意を惹きました。洋館の探索を行っていた職員からの「巨大な蝙蝠に襲われた」「何かが動いたと思ったら黒い影が現れて怒鳴られた」といった報告があった為、各種装備を行った収容チームが向かった所、洋館内部にて「一匹のヒルに怯える救助班員」の姿を目撃した事により、事態を把握した職員によって迅速な収容が行われました。 洋館に関してSCP-669-JPは自身の城であると証言していますが内部調査から明治██年に貿易商の手で建設され放棄された建築物である事が判明しており、内部の様子やSCP-669-JPが洋館内の設備をほぼ使用せず内部を詳細に把握していなかった事から、オブジェクトと洋館自体は無関係である事が判明しています。 +当情報は関係性が未だ不明であり、機密情報を含んでいる事から閲覧はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員に限定されます - 閲覧を中止する ████島はかつての蒐集院が保有していた島であり、島内の洋館は異常存在及びその資料の保管施設となっていた事が過去の記録から判明しています。また、過去に島内から押収された資料を再度調査した結果、SCP-669-JPに関連していると思われる記述が為された資料が発見されており、SCP-669-JPが蒐集院によって過去に確保され████島内に移送された物であると財団は考えています。なお、過去の調査でSCP-669-JPが発見されていない点に関しては未だ不明ではありますが、何らかの形で財団の把握していない場所に収容されていたSCP-669-JPが逃亡を行い、島内に潜んでいた可能性が高いと推測されています。これらの情報に関して、SCP-669-JPは何も語っていません。 以下は押収された記録内でSCP-669-JPに関連していると思われる記述です。当文書はかつての蒐集院の末期に発生した混乱の影響からか保管に不備が発生しており文書が破損している為、また関与していた人員の消息が不明であるため正確な内容は判明していません。 蒐集物覚書██████九十六番 ██十██蒐集 ████████船内████████将█████の体内より発見。生████要素を保持しているが幻覚██████生体█████類される可能性有り。 ████人の████████状は蛭に酷似しており吸██為にて栄養補給を行う事が確認される。 発言は度々突飛な物へと変化██一方で理知的かつ██████から多重人格の様相を見█████████せ████████████████████ 体は蛞蝓や蛭と変わらぬ軟体生物███████に置いても即座の再生を見せ、個別の███と分裂・融合を確認。 █████████████████務官立ち合いの基、解剖手術を行った結████蠕虫状の白い生物を発見。この生████寄█████から、大陸での████見され████████████████████████恐らくは彼らの言語に████“Akul█t████████████から、██████████████on”██████████摘出を行い████にて研█████████████博士の管理の基で研究が█████████████ 対象の█████████による言動は妄想性の████虚言症███████████の影響であると███████████ ██████宗教的な██████████████████████休眠状態へと██████████████████ ██████████████████官の保有する██████████████封印を███████████████████ 補遺1: SCP-669-JP自身の収容に対する協力的な態度、及び保有する情報の提供を促す観点からSCP-669-JPに血液を与え「呪い」の解消を試みる事に問題は無いと判断されました。実験は隔離された実験棟で行われ、万が一の事態に備えユニット内外に合計12名の警備スタッフと戦闘訓練を積んだエージェント4名を待機させた状態で開始されました。 この姿に変えられて200年…..ようやくこの時が訪れた。貴様等、いや貴殿等には本当に感謝している。この借りは返しても返しきれぬ程の楔をこの身に打ち込んだ。我が本来の力を取り戻した暁には貴殿等にありとあらゆる秘術と知識を持って協力することを約束しよう。…..括目するが良い、我が真なる力を!真なる姿を!さぁ、博士!実験とやらを始めてくれ! -実験前のSCP-669-JPの発言記録より  + 実験時の映像記録 669-JP-A1 - 記録を停止する 実験記録669-JP-A1 - 日付20██/██/██ 対象: SCP-669-JP 実験担当者: 下北沢博士 実施方法: SCP-669-JPに対するチューブを用いた血液の投与と形態の変化及び反応の調査 付記: ユニット内には下北沢博士と共に2名のエージェントと4名の警備スタッフが滞在、ユニット外ではエージェント2名と警備スタッフ8名が待機しています。 <記録開始> 下北沢博士: 準備はいいですか?SCP-669-JP。念を押しておきますが、くれぐれも勝手な行動は起こさないで下さい。この「勝手」というのは許可されていない事、全てが該当します。よろしいですか? SCP-669-JP: ああ、わかっているよ博士。では頂くとするかな、この狂わしくも赤き命の酒を! [SCP-669-JPが血液の摂取を開始する。] 下北沢博士: 現在500mLを摂取。変化は無し。 エージェント・セントラル: 博士。あまり近付かない方が。 SCP-669-JP: そう怯える事は無いぞ人間。真の姿を取り戻した頃には腹も膨れているだろうからな! [20分が経過し摂取量は1Lを超える。SCP-669-JPの体長は約50cm幅は約30cmに達する。] 下北沢博士: 現在摂取量は1.5L。摂取量が上昇すると共に体積が増加しているのを確認。 エージェント・五月蠅: この調子では相当な時間がかかりそうですね。迅速な血液の摂取を促した方が良いのでは? SCP-669-JP: 黙れ下郎。闇の血族の王たる我は何時如何なる時であっても食の作法を乱すような真似はせぬ。[摂取を中断し振り返る] エージェント・セントラル: 博士!対象の口元に…..! 下北沢博士 ああ、わかっている。対象の口元に1対の牙と見られる部位の形成を確認、長さは5cm程で幅は1cm程と見られる。引き続き経過を観察する。 SCP-669-JP: 力が膨れ上がるのを感じるぞ、もうすぐだ!もうすぐ、新たなる暗黒神話が歴史に綴られる事となるのだ! [実験開始から1時間が経過。対象の背面部の紋様が赤く輝きだす。] 下北沢博士: 対象は現在血液5Lを摂取。体長はおよそ1.2m幅は50cm程と見られ、牙も20cm程度にまで成長した事を確認…..径を変えたチューブを用意したほうが良さそうだな。[新たなチューブを取り出す] 警備スタッフ: [交換作業を終える]チューブの交換を完了しました。 エージェント・五月蠅: 血液の漏洩が激しいですね。もう少し丁寧な“作法”を見せて頂けると助かるんですが。 エージェント・セントラル: 床にビニールシートを敷いた方が良かったかな。この大きさならチューブよりもバケツとかの方が飲みやすいんじゃないか? SCP-669-JP: 黙れ、黙れ、黙れ!!!貴様等の用意した食器が脆すぎるのだ!なんならこの牙で貴様等の…..。 下北沢博士: [遮って]SCP-669-JP。この実験は貴方の協力的な態度を考慮して行われているという事を忘れないで下さい。貴方の行動や言動によっては実験の中止も止むを得ないと私は考えています。わかって頂けますね? SCP-669-JP: …..ああ、わかっているとも博士。これ程の力の高まりを感じたのは久しぶりなのでね、少しはしゃいでしまっただけだ。…..はしゃぎすぎて軽口を叩いてしまう程に。貴殿の配下が怯えなければ良いのだが[笑う] 下北沢博士: ならば良いのですが。引き続き実験を継続します。続けてください。 [実験開始から2時間が経過。対象の全長は2mに達し、背面部に翼手目の物と酷似した1m程の皮翼が形成される。] 下北沢博士: 現在、摂取量は9Lを越えた。背面部の皮翼は血色を増して…..活発に動いている。牙は8対まで形成されているのが確認できる。 エージェント・五月蠅: 機動部隊から応答がありました。現在実験棟外部にて待機中との事です。 警備スタッフ: 爆破機構の準備、完了しました。 エージェント・セントラル: こちらも問題無い。[銃を構える] SCP-669-JP: [唸り声]素晴らしい!まるで偉大なる満月の夜のようだ…..!この身に、牙に、血に、かつての力が漲っていくのを感じる…..!さぁ、見ておくがいい。吸血鬼の王が長き時を経て再び蘇るのだ!凍て付き、朽ち果てし我が誇りが闇と共に復活するのだ!貴殿等の歴史書にも書き加えておくページが増えてしまったようだな!?[大声で笑う] 下北沢博士: 実験を継続します。 [実験開始から2時間半が経過。対象の体の側面からヒトと酷似した「腕」の発生が確認される。] 下北沢博士: 現在、摂取量は11L。対象に発生した腕はおよそ成人男性程、所見としては「鍛え上げられた」と付け加える…..後、10cm以上伸びた爪も。 SCP-669-JP: [唸り声]やはり時間がかかる物だな…..!かの連中の呪いはそれ程までに強力ということか。しかし、それも後僅かの辛抱…..今や我が力はこの身を張り裂きそうな程に高まっている…..![小規模のスパークが発生] 下北沢博士: …..対象は放電現象を引き起こしている。目的は不明。 エージェント・セントラル: 博士、そろそろユニット外へ退避を。 下北沢博士: [遮って]待て!何か様子がおかしい。どうかしましたか?SCP-669-JP。 [SCP-669-JPが突如激しい痙攣を起こし、唸り声を上げながら立ち上がる。スパークは激しく全身から発生。] エージェント・五月蠅: が、外部の人員に応援を![ユニットの扉へと向かう] 下北沢博士: だから待て!ユニットの開放は収容違反の危険性がある!SCP-669-JP!一体どうしたんですか!? SCP-669-JP: 焼け付くように臓腑が疼く…..我が…..闇の力に…..この身が耐え…..く、くる…..[呻き声] エージェント・五月蠅: 来ます!警備スタッフは退路を塞いで下さい![無線機を取り出す] エージェント・セントラル: 博士も早く外へ![SCP-669-JPへ銃を向ける] 下北沢博士: SCP-669-JP!自制を保ってください!この実験によって貴方の…..。 SCP-669-JP: …..く、くるしいいいいいい[検閲済]ええええええ!!!!!! [SCP-669-JPは叫び声を上げながら床へ倒れこみ、口から激しく血液を噴出しユニット内を転げ回る。SCP-669-JPの噴出した血液によってユニット内全体は赤く染まり、SCP-669-JPが血液を吐き出す毎に縮んでいく姿が確認される。30分後、血液の噴出は止まりSCP-669-JPは元の形状に戻りユニット中心で静止した。] 警備スタッフ: …..。[4名共、血に塗れたまま呆然と立ち尽す] エージェント・五月蠅: …..。[血を拭いながら立ち上がる] エージェント・セントラル: …..。[血を拭いながら銃を降ろす] 下北沢博士: …..実験を中断…..いえ、これで実験を終了します…..。 <記録終了> 終了報告書: SCP-669-JPは恐らく身体的な問題から血液の十分な量を確保する事が出来ず、実験途中に限界を迎え激しい血液の排出を引き起こしたものと考えられます。また実験時に確認された腕や皮翼の発生とその消失、放電現象等からSCP-669-JPの推測そのものは正しかった可能性が高いと思われます。なお、SCP-669-JPは現在も意識を取り戻していない為、収容ユニットに搬送された上で厳重な監視が行われています。 追記: この実験により研究員及び警備スタッフには被害はありませんでしたが噴出された血液によってユニット内が汚染され、3日間清掃スタッフによって清掃が行われている間ユニットは使用不可となっています。この事態を受けて、SCP-669-JPに対する同様の実験は今後禁止されました。SCP-669-JPは3日後に意識を取り戻していますが、改めて行われた検査の結果体長が10cmに変化していた事が確認されています。 もうどうでもいい、好きにしてくれ。 -意識を取り戻した後のSCP-669-JPの発言記録より  補遺2: 実験以降、SCP-669-JPは協力的な態度を崩してはいませんが著しく落ち込んだ様子と軽度の欝の兆候を見せ、血液の摂取を拒否する等の行動も報告されています。インタビューに対しては積極な姿勢を見せず、過去の経歴に関する有益な発言も見られてません。自己終了の可能性も考えられている為、定期的なカウンセリングを行いSCP-669-JPの精神状態の改善が試みられています。 脚注 1. SCP-669-JPは「どんな状態であろうと血は血だ。この際贅沢は言わんよ。」と言う旨の発言をしています。
scp-670-jp
評価: +98+–x タグを池に落とし困惑するSCP-670-JP アイテム番号: SCP-670-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-670-JPはサイト-81██の水鳥収容施設にて飼育します。SCP-670-JPは代謝を行わないため食料の補給や排泄物の清掃は不要です。しかし本人が希望した場合には、別紙の許可リストにある項目であれば物品やサービスを提供しても構いません。特に「新鮮なキャベツ」と「キューバ産の葉巻」の要求が多いことに注意してください。SCP-670-JPの精神影響を受けた疑いがあると判断された職員は、担当主任職員の許可を得てから所定の方法で精神影響を取り除いてください。 説明: SCP-670-JPは複数の異常特性を持つオオハクチョウの幼鳥です。財団による収容から█年が経過していますが、SCP-670-JPは幼鳥のまま成長しておらず、老化の兆候も示していません。また剛性に異常がないにも関わらず破壊が不可能であり、ケガをすることも、羽毛が抜け落ちることもありません。代謝は停止していますが、通常のオオハクチョウと同様に活動することが可能です。また食事、排泄、睡眠を必要としませんが、本人が望めばこれを行うことが可能です。SCP-670-JPはデンマーク語を解します。声帯はありませんが不明な原理で発話し、コミュニケーションをとることが可能です。 SCP-670-JPは19██年、新潟県瓢湖で他のオオハクチョウに攻撃されているところを地元住民によって発見されました。発見当時、地元住民がデンマーク語を理解できなかったため、SCP-670-JPは「奇妙な鳴き声のアヒル」として保護されました。19██/██/██、SCP-670-JPが成長しないことに気がついた地元住民が、SCP-670-JPについて[編集済]に調査を依頼しました。[編集済]潜入中のエージェントによる調査の結果、SCP-670-JPの鳴き声がデンマーク語であることが判明し、SCP-670-JPは財団に収容されました。 SCP-670-JPは発見当時から"Andersen"と書かれた金属製のタグを首にかけています。タグに異常性はなく、SCP-670-JPから回収することも可能ですが、タグを返すまでSCP-670-JPは激しい抵抗を行うため、回収は推奨されていません。タグの記載はSCP-670-JPの個人名を指しているわけではなく、現在のところ意味は判明していません。 SCP-670-JPは不定期に周囲の生物に強いフラストレーションを引き起こす異常性を持っています。このフラストレーションは、SCP-670-JPに対して暴力を振るうことで完全に解消されます。発見当時のSCP-670-JPが他のオオハクチョウから攻撃を受けていた理由は、この特異性に起因するものと考えられています。SCP-670-JPは自身に対する暴力について、不満は述べますが無抵抗であり損傷もしません。また異常性の発現有無に関わらず、SCP-670-JPに対する暴力は、対象人物が感じているあらゆるフラストレーションを軽減する効果があることが判明しています。しかしSCP-670-JPに対する暴力は、その精神影響を取り除く際にのみ許可されます。職員のメンタルヘルス維持のためにSCP-670-JPを利用する提案は却下されました。詳細な経緯は議事録670-JP-8を参照してください。1 インタビュー記録 670-JP-█: 対象: SCP-670-JP インタビュアー: ██博士 付記: インタビューはデンマーク語で行われました。 <録音開始, 20██/██/██> ██博士: インタビューを始めます。 SCP-670-JP: 葉巻くれよ。 ██博士: どうぞ。 SCP-670-JP: ありがと。ああ、こりゃどうも、ご親切に。[██博士がマッチで火をつける] ██博士: あなたの出自を教えてください。 SCP-670-JP: おぼえてないよ。あんた自分が生まれてきた時のことなんておぼえてる? 名前だって俺が自分で考えたんだ。ニコライ・オルリック。いい名前だろ? ██博士: そうですね。なぜ新潟県にいたのですか? SCP-670-JP: 旅してきたのさ。 ██博士: あなたは幼鳥で、まだ長距離は飛べないと思うのですが、どうやって旅をしたのですか? SCP-670-JP: あいつらに乗ってだよ。あの忌々しい兄弟たち。 ██博士: 保護時にあなたを攻撃していた、他の白鳥のことですか? SCP-670-JP: そうだよ。思い出しても腹がたつ。どこへいっても俺をいじめるんだ。いじめるためだけに俺を連れて移動してたのさ。おもちゃ扱いだよ。 ██博士: 質問を変えます。あなたはなぜ不老不死なのですか? SCP-670-JP: この体質のことなら生まれつきだよ。多分な。 ██博士: あなたが首にかけているそのタグは何ですか? SCP-670-JP: これ? 知らん。知らんけど昔から持ってた。かっこいいだろ。 ██博士: そこに書かれている"Andersen"という名前に心当たりは? SCP-670-JP: 特にない。 ██博士: ちょっと貸してもらえますか? SCP-670-JP: やだ。 ██博士: なぜですか? SCP-670-JP: 俺の家族は、こいつだけだからな。 ██博士: 今は我々があなたの家族ですよ。 SCP-670-JP: かもな。急にドアから入ってきて俺を蹴り飛ばすやつらを除いて。あいつらなんなの? ██博士: 機密事項です。 SCP-670-JP: あっそ。 ██博士: なにか要求はありますか? SCP-670-JP: これ録音してるんだろ? 公式な記録に残してくれよ。あんまり俺を蹴るなと俺が要求してるって。いいか、蹴られてもケガをしないってことと、蹴られても平気ってのは、意味が違うんだぞ? ██博士: 記録しました。 SCP-670-JP: いまに見てろよ。俺が大人になったら、おまえら驚くぞ。いつまでもちっちゃくて小汚い雛だと思ってたら大間違いだからな。 <録音終了> 終了報告書: SCP-670-JPが成長する兆候は、現在のところありません。 Footnotes 1. 議事録中で最も端的にこの経緯を示す内容は、諸知博士による「財団は冷酷だが残酷ではない」という発言です。
scp-671-jp
評価: +61+–x SCP-671-JP-1群体。 SCP-671-JP-2。 アイテム番号: SCP-671-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-671-JPは電気供給用の電極を備え、水面上に10mの空間を残した専用水槽内に収容します。水温、塩分濃度、水素イオン指数、電極電圧などの詳細な条件については別途規定する範囲内に収まるよう随時調節してください。5年に一度、朔日の夜間に水槽内空間の気温と湿度を調節し、イベント・ペンテコステを誘起してください。 説明: SCP-671-JPはヒドロ虫に類似した水棲生物です。SCP-671-JPは2種類の特筆すべき異常性を有します。第一に、SCP-671-JPは電気を直接のエネルギー源として利用することができます。第二に、空気中においても水中同様に浮遊し、生存することが可能です。 多くのヒドロ虫と同様、SCP-671-JPの生活環においてはポリプとメデューサの2種類の世代が交互に出現します。便宜的にポリプをSCP-671-JP-1、メデューサをSCP-671-JP-2と指定します。SCP-671-JP-1はギンカクラゲなどと同様に浮遊性の群体を形成します。群体はビゼンクラゲ科に似た外見をしており、群体を形成する個虫が無性的な増殖を繰り返すことによって徐々に大きく成長していきます。群体の成長は約5年に渡って続き、傘の直径は最大で3m以上にまで達します。また前述のとおり空気中においても生存が可能ですが、後述するイベント・ペンテコステの際を除けば自ら空気中へ出ようとすることはありません。 SCP-671-JP-2はキタカミクラゲ科に似た外見をしています。雌雄の別があり、それぞれが卵と精子を放出して有性生殖を行います。SCP-671-JP-1とは対照的に寿命は12時間以下と短く、出現するのはイベント・ペンテコステの際に限られます。 イベント・ペンテコステはSCP-671-JP-1群体が最大規模にまで成長した後に起こる一連の事象です。発生にはSCP-671-JP-1群体の十分な成長に加え、次に挙げる環境条件が全て満たされている必要があります。 朔日の夜間であること 気温26℃以上28℃以下、湿度70%以上であること 雨が降っていないこと 以上の条件を満たす日は自ずと限られるため、近い時期に生まれたSCP-671-JP-1群体は大抵の場合同じ日にイベント・ペンテコステを起こします。結果的に、ほとんど全てのSCP-671-JP-1が約5年周期で同じ日の夜間にイベント・ペンテコステを起こすことになります。発生する事象の詳細は次の通りです。 SCP-671-JP-1群体の成長が停止するとともに、水中から空気中へと脱し、なるべく高い高度へ浮遊しようとします。同時にSCP-671-JP-1群体の子茎よりSCP-671-JP-2が出芽、遊離します。 遊離したSCP-671-JP-2は周囲を浮遊しつつ、生殖腺から卵あるいは精子を放出します。 SCP-671-JP-2の出芽を終えたSCP-671-JP-1群体は、体内で強力な電気を発生させます。このとき、触手先端付近の個虫は正に、傘付近の個虫は負に帯電することで、群体の両端で数百万Vの電位差が発生し、傘の内側から触手先端へ向けて火花放電が起きます。更にこの火花放電は周囲の空気中で電子雪崩を引き起こし、小規模な落雷を発生させます。なおSCP-671-JPは電気刺激を受けて発光する蛍光タンパク質を有しており、SCP-671-JP-1の放電現象に伴って赤色に発光します。 SCP-671-JP-2が放出した卵と精子は結合して受精卵となります。受精卵はSCP-671-JP-1による放電現象から電気エネルギーを得て急速に分化し、プラヌラ幼生として孵化します。 イベント・ペンテコステは開始したその夜のうちに完結します。孵化したプラヌラは水中へと入り、成長、増殖してSCP-671-JP-1群体へと育ちます。古いSCP-671-JP-1群体およびSCP-671-JP-2は放電および生殖を一通り終えると死亡し、死骸は溶けるように崩壊します。 事例671-JP-01において撮影されたSCP-671-JP-1群体。 事例671-JP-01: SCP-671-JPは19██年、京都府京都市中京区におけるイベント・ペンテコステの大規模発生事例を契機に発見されました。イベント開始から収束までの約6時間の間に、SCP-671-JP-1群体の放電に巻き込まれた一般市民2人が死亡、14人が重軽傷を負ったほか、送電設備が被害を受け中京区と下京区の一部で翌日午前まで停電が発生しました。 後の調査により、当事例を引き起こしたのは中京区錦市場の鮮魚店「[編集済]」の木造店舗兼住宅にて飼育されていた7体のSCP-671-JP-1群体であったと特定されました。同店の店主であった██ ██氏は放電に巻き込まれ感電死したため証言は得られませんでしたが、無事であった██氏の妻の証言によれば、██氏はイベント発生の5年前に京都市内の古物商からSCP-671-JP-1の幼生を購入して以来、その育成に没頭していたようです。
scp-672-jp
評価: +124+–x 評価: +124+–x クレジット タイトル: SCP-672-JP - サカムケツヅケ 著者: ©︎izhaya 作成年: 2018 評価: +124+–x 評価: +124+–x SCP-672-JP アイテム番号: SCP-672-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-672-JPはサイト-81KAの標準収容ロッカーに格納されます。 説明: SCP-672-JPは長さ15cmの未知の素材で出来た釘です。SCP-672-JPの先端に直接接触した人間をSCP-672-JP-1に指定します。SCP-672-JP-1がSCP-672-JPに接触した周辺の皮膚の一部は細く剥離し、一般的に"さかむけ"と呼称されるような状態になります。また、SCP-672-JP-1の肉体は切除、分離できず、再生もできない状態となります。 SCP-672-JP-1の皮膚の剥離は身体運動やその他生理的活動に伴う刺激を受ける度に進行し、これに伴ってSCP-672-JP-1の表皮及び真皮、血管、神経、皮下組織等を裂断します。前述の異常性のため皮膚の剥離部分は分離することができず、裂断部分の再生も行われないため、剥離した皮膚片と裂断箇所は治癒することなく増大し続けます。出血に伴う刺激は皮膚の剥離を進行させる要因になり、止血も不可能であるため、血管の裂断以降は皮膚の剥離の進行が加速し、SCP-672-JP-1は失血し続けます。 SCP-672-JP-1の皮膚の剥離部分は概ね太さ2mmの紐状を維持します。皮膚の剥離は頭頂部まで直線的に進行した後に折り返し、指先や足先に到達するとまた頭頂部に向かって進行し、以降同様のプロセスを途切れることなく繰り返し続けます。刺激を抑えて可能な限り安静にしていても、生理的活動や出血に伴う刺激により剥離は進行するため、処置を行わなかった場合SCP-672-JP-1はおよそ3日後に失血死します。SCP-672-JP-1に対して輸血を実施し続けた場合は生存期間は大幅に伸びますが、およそ5日で全身の皮膚が剥離し出血量が輸血量を上回るため、7日以上の生存例は存在していません。 以下はDクラス職員を用いたSCP-672-JPの実験記録です。 + 実験記録 - 実験記録を隠す 実験記録672-JP-1 剥離した皮膚の各種刃物による切断、分離 - 日付2011/3/21 10:00 前提: SCP-672-JPの先端をD-26634の人差し指に接触させ、SCP-672-JP-1に指定された状態にした。D-26634の人差し指の皮膚は2mm程剥離し、一般的にさかむけと呼称される状態になった。 実験内容: 各種刃物を用いてD-26634の皮膚の剥離部分の切除を試みる。 結果: 皮膚片は一部を切断出来たが、D-26634の肉体から完全に分離することは出来なかった。この実験に伴う刺激により被験者の皮膚は1cm剥離し、剥離部分は人差し指の第一関節に及んだ。真皮が損傷したことでD-26634は出血し、軽度の痛みを訴えた。 分析: 特になし。 実験記録672-JP-2 剥離した皮膚の分離の再試行 - 日付2011/3/21 10:40 実験内容: 熱や薬品等を用いてD-26634の皮膚片の分離を試みる。 結果: 高温、低温による剥離部分の分離は不可能だった。各種の酸を用いても剥離部分は溶解しなかった。これらの実験に伴う刺激により被験者の皮膚は2.3cm剥離し、剥離部分は人差し指の第二関節に及んだ。真皮の損傷が増大した為、D-26634は苦痛を訴えた。 分析: さかむけ部分の切除は不可能と考える。出血の刺激による剥離の進行が早いため、遅延できるかを確認する。 実験記録672-JP-3 剥離した皮膚の接着と固定 - 日付2011/3/21 12:00 実験内容: 医療用の皮膚接着剤を用いて剥離した皮膚片を接着し、また医療用包帯で固定を行った。 結果: 剥離部分の接着は不可能だった。実験672-JP-1から2時間が経過しているにも関わらず剥離部分は出血を継続しており、この刺激によってD-26634の皮膚は毎時1cm程度の剥離が進行し続けているため、包帯による固定にも関わらず剥離は進行している事が確認された。剥離部分は人差し指の根本近くまで進行し、被験者は激しい苦痛を訴えた。 分析: 大本からの切断が可能かを試す。D-26634に鎮痛剤を投与した。 実験記録672-JP-4 人差し指の切断 - 日付2011/3/21 12:35 実験内容: 皮膚の剥離の進行を食い止めるため、D-26634の人差し指そのものの切断を実施する。 結果: 指の切断は不可能だった。人差し指はほとんどが医療用のこぎりにより切断できたが、一部の2mm程度の皮膚がいかなる手段でも切断できなかった。 分析: 手の甲と人差し指を繋いでいる皮膚の部分から剥離は再開し、出血の刺激によって毎時3cm程度の剥離が進行し続けている。出血が多いため、D-26634に可能な限り輸血を行い、鎮静、延命して観察を続ける。 観察記録672-JP-1 経過観察① - 日付2011/3/21 20:00 観察結果: 皮膚の剥離は毎時7cmのペースで進行している。剥離部分はD-26634の左肩に及び、人差し指のついた紐状の皮膚が肩から垂れ下がった状態になっている。 分析: 首元で動脈が傷つけば出血により剥離が加速し、輸血が追い付かなくなる可能性が高い。 観察記録672-JP-2 経過観察② - 日付2011/3/22 00:30 観察結果: 皮膚の剥離は首、左顔面と進み、頭頂部に達した後、逆方向に折り返した。折り返し後は既に剥離した部分に隣接した皮膚が剥離している。皮膚の剥離は毎時15cmのペースで進行しており、剥離過程が目視で確認可能である。 分析: 皮膚片の長さは1mを超え、剥離のスピードが目に見えて上がっている。人がほどけていくようだ。出血ペースが輸血ペースを上回ったタイミングで延命を取りやめ、D-26634を終了する。 実験記録672-JP-5 死亡後の異常性の確認 - 日付2011/3/24 18:00 実験内容: D-26634を終了し、死後に刺激を与えて異常性が存在するか確認する。 結果: D-26634の死亡後に肉体に刺激を与えると、皮膚片はこれまでと同様に紐状に剥離した。刺激を継続すると、骨や内臓を除いたほとんどの部分が紐状に剥離した。剥離は最終的に頭頂部で停止し、そこで初めて切断が可能となった。死亡時のD-26634の剥離した皮膚片の長さは700mを超えており、最終的に切除された皮膚片の長さは3.3kmに及んだ。 分析: 切除されたさかむけの紐は予想されるよりはるかに強靭であったが、切断などの加工が可能だった。
scp-673-jp
評価: +49+–x 事件記録673-5、奥のマッコウクジラがSCP-673-JP アイテム番号: SCP-673-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-673-JPはサイト-81██の水槽に収容されます。水槽は7m×8m×5mで内部は標準水棲生物収容マニュアルに則った環境にしてください。SCP-673-JPは5000匹ずつ収容し同じ水槽内に7000匹以上いないようにしてください。収容下にないSCP-673-JPは発見次第機動部隊ガンマ-6 ("大食らい")が処理を行います。 説明: SCP-673-JPは特異性を持つボラ(Mugil cephalus)の群体で、個体はすべてオスです。現在約30000匹が収容されています。SCP-673-JPは一般的なボラと比較し攻撃的です。SCP-673-JPが最低約10000匹で構成されるとSCP-673-JPを視認した生物に対して認識障害を引き起こしボラ以外の海洋生物のオスへ擬態が可能になります。擬態中のSCP-673-JPは擬態している生物に近い形状に隊列を構成します。例えば擬態している生物が頭足類なら触腕はSCP-673-JPが1列に連なった状態になります。これにより物理的な接触をともない擬態した生物のように振る舞うことが可能です。擬態は必要がないと考えられる状況になるか空気中で最大7分以上経過すると終了します。この擬態は外敵から身を守るなどSCP-673-JP一個体より大きな生物に対抗するため、また繁殖のために他の生物と交尾するためなどに用いられます。 SCP-673-JPは19██年██月██日に██県沖の████で発見されました。周辺を巡回中だったSCPS"まあゆ"1がイタチザメ(Galeocerdo cuvier)を捕食し終えた7匹のシャチ(Orcinus orca)が、ボラの魚群へと変化する瞬間を目撃し、財団はこれを異常現象と認定し確保作業を開始しました。"まあゆ"に配備していた網で捕獲を試みた直後に、SCP-673-JPは再度集合し全長約25mの頭足類の生物へと擬態しました。後に職員への聴取によりその大きさと触腕の鈎爪からダイオウホオズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltonia)であると結論づけられました。SCP-673-JPは船上にいた職員9人を殺害、また船体下部への攻撃を行い"まあゆ"は一部損壊しました。オブジェクト確保用アームでSCP-673-JPの触腕を掴んだ直後に、擬態を解除され9割以上のSCP-673-JPは逃走しました。財団はこれを踏まえて特別捕獲プロトコルを制定しました。 特別捕獲プロトコル: 機動部隊ガンマ-6 ("大食らい")に新たに2隻の船舶("ひさめ"、"はくろ")2を追加します。SCP-673-JPの進行方向の前方に"ひさめ"、"はくろ"を配置します。2隻の間で15m×100mの網を広げます。この網は直径10mmのワイヤー製で網目の間隔が30mmのものを使用します。網にSCP-673-JPが接触したら2隻が後方に移動し閉じ込めます。捕獲作業中に船舶を攻撃可能な生物に擬態した場合は配備している重火器により攻撃を行い沈静化を図ります。捕獲したSCP-673-JPはサイト-81██の収容室に併設している処理棟に輸送し焼却処分します。 事件記録673-5: ██県沖の████を巡回中だったSCPS"つばめ"3がマッコウクジラ(Physeter macrocephalus)に擬態したSCP-673-JPを発見。発見時SCP-673-JPは別のマッコウクジラと交尾をしていた。機動部隊がSCP-673-JPを処理した後に研究目的でこのマッコウクジラを確保した。この様子を撮影していた映像にはマッコウクジラの性器へSCP-673-JPからいくつかの個体が侵入する様子が記録されていた。その後のマッコウクジラへのレントゲン検査により子宮部にSCP-673-JPの個体が15体ほど確認された。確保から14ヶ月後マッコウクジラが出産する予兆を見せた直後に突如同質量のボラの卵に変化した。その後の観察によりこの卵から孵化したボラがSCP-673-JPと同様の特異性を有していたことが判明した。観察後今回生まれたSCP-673-JPはすべて処理された。 脚注 1. 船種:180トン型PS、満載排水量:197トン 2. 船種:3500トン型PL、満載排水量:3723トン 3. 船種:350トン型PM、満載排水量:370トン
scp-674-jp
評価: +48+–x アイテム番号: SCP-674-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 毎年3月4日に、2名以上の心理学のスペシャリストによって予測したSCP-674-JPの移動範囲から民間人を遠ざけ、民間人への漏洩を防いでください。この際、その時の状況に沿ったカバーストーリーの流布も行います。SCP-674-JP-1が予測から外れた行動を行うなど、何らかの原因によって民間人にSCP-674-JPが発見された場合、民間人にBクラス記憶処理を施した上で解放してください。 説明: SCP-674-JPはおよそ直径2m、高さ2.5mの空間に発生する移動性の認識異常です。SCP-674-JPは毎年3月4日午前9時に██県██市の██駅で発生し、その瞬間から移動を開始します。SCP-674-JPの移動速度は一般的な人間の徒歩から全速力程度の速度に留まります。通常、SCP-674-JPは人間が行動可能な範囲のみを移動しますが、何らかの要因で完全に移動不可能となった場合のみ、半径10m以内の位置に瞬間的に移動します。 人間がSCP-674-JPを視界に入れた場合、SCP-674-JP-1を知覚します。SCP-674-JP-1は30代前後の日本人とみられる男性で、やや草臥れたサファリジャケットとジーンズを着用しているように見えます。調査により、過去に████高校の付近で乗用車により轢かれ事故死した██ ██氏と非常に近い身体的特徴を持っていることが判明しています。SCP-674-JP-1に対する生体による干渉は、全てSCP-674-JP-1を透過するという形で失敗しています。 SCP-674-JP-1は自我が存在するような振る舞いを見せます。しかし、人垣を無視して透過により進む、職員によるインタビューや妨害行動に対し全くの無反応である等の事実から、SCP-674-JP-1は現実の生体を認識していないか、あるいは認識したうえで完全に無視しているものと考えられます。生体以外の障害物に対しては、通常の人間が可能な行動により突破や迂回を試みるため、SCP-674-JP-1は生体以外を無視しないと考えられています。 SCP-674-JPの移動の傾向や、SCP-674-JP-1の振る舞いから、SCP-674-JPは████高校を目的地として移動しているとの予測が立てられています。しかしながら、████高校の半径200m以内にSCP-674-JPが到達した場合、SCP-674-JP-1は突如、何かに衝突し█~█m程度突き飛ばされるような挙動を見せ、SCP-674-JPと共に消滅します。この消滅が起こった場合、SCP-674-JPは次の年まで発生しなくなります。また、シミュレーションの結果、消滅直前のSCP-674-JP-1の挙動は、SCP-674-JP-1と同体型の人間が時速80km/hの乗用車と衝突した場合と一致していることが判明しています。 SCP-674-JP-1はこれまでの出現から消滅までに起こったことを記憶している様子を見せます。この影響からか、現在SCP-674-JPは可能な限り民家の敷地内など、"一般的に乗用車が通過しない場所"を通って移動するようになっています。しかし、どの場所であっても████高校の半径200m以内にSCP-674-JPが到達した場合、同様に消滅します。 SCP-674-JPは、19██年、██市で活動していたエージェントから「幽霊が人をすり抜けて移動している」との報告を受け発見されました。目撃者には記憶処理を行い、カバーストーリーの流布を行いました。発見時は、その特性からSCP-674-JPを見失いましたが、次の年に改めて発見および研究が行われ、現在の収容手順の基礎が確立されました。それまでSCP-674-JPに関する一切の噂や文献がなかったことから、SCP-674-JPは発見された年に発生したものと考えられています。また、関係性は不明ですが、██氏の死亡事故は発見された年の1年前に発生しています。 補遺: ██氏の近辺調査の結果、死亡前はアーティストとして活動していましたが、人間関係に困窮しており、加えて各所に借金を作っていたことが判明しました。また、████高校は██氏の母校であり、死亡した年の10年前に卒業していることも判明しています。以下は、当時██氏の同級生であった█氏へのインタビュー記録です。 + インタビューログ - インタビューログを閉じる 対象: █氏 インタビュアー: エージェント・██ 備考: インタビューは█氏の自宅で行われた。█氏の希望により、子女に会話が聞かれないよう█氏の自室でのインタビューとなった。 <録音開始> エージェント・██: 学生時代、██さんはどういった方だったのでしょうか。 █氏: ██は[一呼吸を置く]、██はクラスの人気者でした。明るく、仲間思いで、いつも楽しむことに全力でした。彼と仲の悪い人は、少なくとも私の知る範囲では居ませんでしたね。文化祭とかも、基本的には彼の主導でやっていたように思います。 エージェント・██: どこか、変わったところはありましたか。 █氏: いえ、そういったことはまったく。…ああ、いや、思い返してみると、ときどき心配をしていましたね。 エージェント・██: 何についてでしょうか。 █氏: 仲の良い友人に囲まれてる今があまりにも幸せだから、いつか不幸になるんじゃないかって。当時は、周りの友人も気にし過ぎだって笑っていたんですけどね。それが、こんなことになるなんて。 エージェント・██: 心中お察しします。他に、変わったところはありましたか。 █氏: 強いて言うなら、音楽が好きだったことくらいでしょうか。音楽好きが高じて、高校卒業後はアーティストになるために関東の方に飛び出したことを覚えています。 エージェント・██: なるほど。事故当日、██さんがこの街にいた理由は分かりますか。彼の実家はここから離れた町にあるようですが。 █氏: [数秒、考え込む様子を見せる]ああ、そういえば。10年後に学校に集まって、埋めたタイムカプセルを掘り出す約束をしていたはずです。 エージェント・██: 約束について、他のご友人から連絡は無かったのですか。 █氏: いえ。何年も前のことですし、ほとんどの人が結婚していますからね。忙しくて、皆覚えていなかったんだと思います。私も先程まで忘れていましたし。 エージェント・██: 高校卒業後、██さんから連絡があったりは。 █氏: 何度か遊びの誘いがありました。ですが、ちょうど仕事が忙しい時期だったり、子どもができたばっかりの時でしたから。申し訳ないとは思ったんですが、断ってしまいましたね。 エージェント・██: 分かりました。ちなみに、タイムカプセルはどのあたりに埋めたか覚えていますか。 █氏: ええと、うろ覚えなんですが、学校の裏庭の木の下に埋めたような気がします。 エージェント・██: インタビューを終了します。ありがとうございました。 <録音終了> ████高校での調査を行ったところ、██氏らが埋めたタイムカプセルを発見しました。タイムカプセルが掘り返された形跡はなく、警備員に聞き込みを行ったところ、当日に当時の卒業生は来ていなかったとの返答が得られました。タイムカプセル内には雑多な物品が投入されていましたが、その中に1枚、裏面に██氏のメッセージが書かれた卒業写真を発見しました。以下が、そのメッセージです。 最高の仲間たちと ██ ██
scp-675-jp
評価: +53+–x SCP-675-JP曝露者の脳のCTスキャン画像。赤線で囲われた部分が融解していることが確認できる。 アイテム番号: SCP-675-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: 全てのSCP-675-JPはサイト-8122の冷蔵用低脅威度物品収容ロッカーに保管されます。SCP-675-JPの変性を防ぐため、ロッカー内の温度を3℃(276K)に保ってください。SCP-675-JP曝露者発見の為、回収部隊つ-13("大杯呑み")が全国の救急搬送事例と、脳外科及び精神科の診療記録を常時監視しています。SCP-675-JP曝露者と認められた場合、回収が行われ、対象は失踪または死亡したものとして扱われます。担当者の許可なく、SCP-675-JPの実験を行うことは禁じられています。 説明: SCP-675-JPは、一般的に日本酒(sake)と呼ばれる種類のアルコール飲料です。SCP-675-JPには高純度のミネラル及びアミノ酸、タンパク質、糖分が含まれ、通常の日本酒とは組成が大きく異なりますが、SCP-675-JP自体には如何なる異常な点も見受けられません。全てのSCP-675-JPは一般的な規格の瓶に封入され、「大吟醸 幸ぃのう」のラベルが付けられています。現在までに74本のSCP-675-JPが発見され、内68本が保存されています。 SCP-675-JPの異常性は、GABA-A受容体1を持つ生物がSCP-675-JPを摂取した時に発現します。SCP-675-JP摂取により血中アルコール濃度の上昇があり、かつ血中アルコール濃度が0.10%以下の場合、時間経過に従い対象の大脳皮質が融解していきます。この融解は一般的な脂肪の熱融解プロセスに酷似しており、影響を受けた脳細胞は不可逆な損傷を受けます。現在までの調査では、血中アルコール濃度0.10%の状態を約3時間保持すると、対象の全ての大脳皮質が完全に液状化することが判明しています。大脳皮質融解の影響として、呂律が回らなくなる、バランス感覚が失われる、記憶が欠落する、等の影響が現れます。 血中アルコール濃度が0.10%を超えた場合、融解は白質まで拡大し、未融解の脳下部を圧迫しだします。白質の融解、小脳の圧迫、及びそれらに伴う髄圧の異常上昇により、対象の言動はより常軌を逸したものとなります。同時に、対象は最早自身の足で自立不能になり、脳機能の低下が顕著になっていきます。脳細胞の融解が進行すると、対象は極度の悪心に襲われ、多くの場合嘔吐します。対象の脳細胞はこの時点で既に十分に液状化しているため、嘔吐を試みた対象の眼球を押し出し、もしくは対象の鼻孔内の穴から口腔へと流出し、外部へと漏れ出します。このプロセス中に対象が死亡することはありません。 SCP-675-JPを摂取した者は一様に、“過去飲んだ中で最も美味しいお酒である”と証言し、アルコールによる正常な反応以上に多幸感を得ることが分かっています。この為対象はより多くのSCP-675-JPを消費する事を望み、結果として大脳の完全な融解という結果を齎します。また、他者にSCP-675-JPを飲むことを強く勧める傾向にあります。SCP-675-JPによる全ての対外的な影響は、一般的なアルコールによる酩酊状態と外見上の差異が無いため、対象自身を含め周囲の人員が異常に気付くことはありません。アルコールの分解が終了した後、対象は通常通り酩酊状態から回復しますが、現在まで融解した脳細胞を戻す試みは全て失敗に終わっています。 回収記録: ██市にある居酒屋チェーン店████で飲食した客が急性アルコール中毒で搬送された際、CT検査にて当該被害者が“脳無し”であることが発覚した事から、SCP-675-JPの特定に繋がりました。████で飲食した全ての客の追跡調査が行われ、内██人がSCP-675-JP曝露者として回収されました。その後カバーストーリー『急性アルコール中毒による死亡事故』が適用され事件は収束しましたが、未回収のSCP-675-JP曝露者の人数は未知のままです。 当該居酒屋店から数100m離れた路上にて、SCP-675-JP犠牲者と見られる男性に対し、鼻孔上部に管状の棒を突き刺し[削除済]、不審な男が発見されました。外見上は酩酊者を介抱している様に見えましたが、犠牲者が終始奇声を上げていたため、周囲を巡回中だったエージェント・山嵐がこれを不審に思い、男を拘束した後にインタビューを行いました。インタビュー記録をインタビュー記録SCP-675-JPに示します。 + インタビュー記録SCP-675-JP - インタビュー記録SCP-675-JP: インタビュアー: エージェント・山嵐 対象: 男性 補遺: 対象は重度の斜視と歩行障害に陥っていた。 <記録開始> エージェント・山嵐: こんばんは、あんたは一体何を? 男: おめ、酒を飲んだか? エージェント・山嵐: 職務中ですんで。 [15秒沈黙] 男: 飲んだん、ど? エージェント・山嵐: あの人に、何してたのかって、訊いてるんですよ。 男: 酒こ飲むで、えが、べ? 皆せぬ。酒ばすすめてだだの。 エージェント・山嵐: 質問に答えて貰えないですかね。 男: あんびぇのえーツマミがありじゃが。すっとも、おみも欲しかど? エージェント・山嵐: あの。 男: 酒じゃうめ。すたらば飲んだんど、人のあため、うめじゃろて。かちこわるで駄目だかんど。せば、すうじゃ。で。 エージェント・山嵐: はぁ。 男: うめかろ、さちぃだろ、おめものめ。 エージェント・山嵐: あのお酒について何か御存じで? 男: [笑い] おめさには分からんじゃけ。わぁさあためばいらんじゃろて、なげろてみなゆーべさ。わさなっんて正しひことばさる人らなんだべおもて、してのんだっきゃ。 エージェント・山嵐: 難解ですね。 男: での、そいがしこっだまんめだかんの。やっこら、幸ぃだ知るべぇよ。わさ思うんべ、こんら神様な酒だが。したっけ、めーんなこれすずめてっと、しゃっけ。 エージェント・山嵐: ……。 男: 酒ば飲むれ。おめもなげれ。なぁのあためばへばせろじゃ。 エージェント・山嵐: ……インタビューを終了します。 <記録終了> 終了記録: 東北地方の訛りに理解のある職員に意見を求めたところ、対象は『他人の脳みそを啜ったのは、旨くてツマミになるからだ』『脳みそは不要だから捨てろと皆が言ったので、酒を飲んだ』という主旨の事を述べているそうです。"皆"とは後述の酒造と関係があるものと思われます。対象は拘束されたまま、他犠牲者と同じく財団の医療室へ運ばれましたが、自身の小脳を吐き出した後、完全に会話不可能な状態に陥ったため、終了されました。男の素性は現在に至るまで判明していませんが、南部・下北の訛りであることから青森県東北部の出身であると予想されています。 回収されたSCP-675-JPは、後の調査にて秋田県に存在する男鹿██酒造による製品であると判明しています。当該酒造への調査が入りましたが、男鹿██酒造の全ての従業員はSCP-675-JPの影響を受けていたため、SCP-675-JP製法の詳細は未だ分かっていません。断片的な情報から、男鹿██酒造の従業員達が"幸福な世界の実現"、"脳髄による支配からの脱却"という思想を持っていたことが判明しています。男鹿██酒造は周囲の村々にSCP-675-JPを配ることで信頼を得ていたことが分かっています。これらSCP-675-JPは後に財団により回収されました。残存する書類からの、製法解析の試みは継続中です。 Footnotes 1. エタノールの標的とされるイオンチャネル型受容体。主に脊椎動物が保持している。
scp-676-jp
評価: +129+–x 評価: +129+–x クレジット タイトル: SCP-676-JP - うかれめ 著者: ©︎Pear_QU 作成年: 2020 評価: +129+–x 評価: +129+–x 蓮葉市子(享年10) アイテム番号: SCP-676-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-676-JPはサイト-8124の小型収容室に収容されます。SCP-676-JPは実験時を除いて専用のカバーに覆われた状態を保持され、担当職員により定期的に湿度・温度の点検が行われます。後述する異常性のため、実験目的でSCP-676-JPを持ち出す際には原則として小型の運搬機械を用いてください。 説明: SCP-676-JPは、縦28cm、横18cmの厚紙の上に貼り付けられた、一般に「ちぎり絵」或いは「貼り絵」と呼称される形式に則った絵画です。これらの紙質等に一切の異常性、非破壊性等は確認されておらず、通常の経年劣化の兆候が見られます。 絵画部分に使用されている紙は主に昭和40年代(1965年から1975年頃)に使用されていたモノクロ印画紙、若しくは新聞紙といった紙質をした白黒写真の切り抜きによって構成されており、それら全てにおいて恐らく同一人物と思われる女児の顔、或いは体の一部が映っているという点において統一されています。 一部は写真が剥がれるなど劣化が激しいため、この絵画作品が全体として何を象っているのかは未だ不明ですが、恐らくは人の顔であると推定されています。 SCP-676-JPの異常性は、人間(以下、対象)がSCP-676-JPを手で掴むなどして所持した場合に発生します。対象はSCP-676-JPを所持している間、「女児が泣き喚くよう」と形容される幻聴を聞くという形で、知覚障害及びそれに伴うストレス障害を発症します。この症状はSCP-676-JPから手を離すなどして接触を断つことにより概ね治癒し、また多くの場合で対象は幻聴から逃れようと、半ば本能的にSCP-676-JPの継続的な所持を拒みます。 対象の手にSCP-676-JPを固定するといった形で強制的に所持を継続させた場合、対象は幻聴の程度の悪化を訴え、最終的には強い心的ストレス反応の結果として血管迷走神経反射に伴う意識の喪失(失神)を起こします。精神安定剤等の服薬による対症療法的措置で意識喪失を防ぐといった対処法は、一時的な措置としてのみ機能しますがいずれも限定的なものであり、最終的な意識喪失を免れた例は現時点では存在しません。 副次記録676-JP-1 SCP-676-JPを所持する事によって得られた供述等を収集・再構成したところ、SCP-676-JP所持の継続時間と幻聴の程度には一定の相関が見られることを示唆する結果が示されました。 所持時間 幻聴の概略 0~10秒 「かすかに聞こえる」程度の音量で泣き声を聞く。対象によっては声に気付かない場合も存在する。 11~30秒 泣き声の音量が少しずつ大きくなる。複数の対象によって「声が近づいてくる」と形容されており、多くの場合において(特に指示されていない場合は)、対象はこの段階でSCP-676-JPの所持を拒否する行動を取る。 31~40秒 対象はSCP-676-JPの齎す幻聴に対し、重度の幻聴障害に陥った患者が見せるものと同等の回避反応を表出する(幻聴を搔き消す目的で耳を塞ぎ、叫声を発するなど)。 41~60秒 痙攣、過呼吸などの症状を経て、多くの対象がこの段階で意識喪失を起こす。複数例、「こちらに話しかけている」といった反応を示す症例が確認されている。 60秒~72秒 対象が精神安定剤の服用等、ストレス反応の軽減を目的とした措置を受けていた場合でも、意識喪失を起こすようになる。この段階までSCP-676-JPを所持し続けた対象は、多くの場合で強い心的外傷の結果として前部帯状回・海馬・扁桃体の萎縮といった後遺症を残す。 73秒~ 不明。 副次記録676-JP-2 過去に3例、SCP-676-JPを50秒程度所持した段階で「何者かに話しかけられている」或いは「何者かが存在する」ような反応を示した例が確認されています。これが一般的な臨床心理学的知見に基づく幻聴(幻声)及びパラノイアといったストレス反応の悪化の結果であるか、SCP-676-JPの異常性の何らかの変化によるものであるかは不明であり、実験後の対象の心理状態から、彼らに対するインタビュー等の事後調査は困難であると断定されています。 以下は財団の特殊心理学研究班により書き取られた上記3例の書き起こし記録の抜粋ですが、注記は原文のものではなく、報告書に再録するにあたり担当職員によって附せられたものです。 一例目 [00:00:51]: [鼻を啜る音]もう、いやだあ。1ああ。ああ[右手で床を叩く]うるさいよお。知らないもん、そんな風に言われたって僕しらないもん。やめてよお。[喃語、聞き取り不能] 二例目 [00:00:48]: [嘔吐音]ああ、あ、痛い。2痛いよお。[過呼吸状態に近い呼吸音]やめて、そんなじゃないよ。ちがうからあ。[泣き声] 三例目 [00:01:07]: [右手で実験の監視員を指差す]おにいさん、そこ。 副次記録676-JP-3 SCP-676-JPは、1982年10月に大分県北海部郡海辺村(現在の臼杵市)にて執り行われた蓮葉市子はすばいちこの葬儀において、地元の警察が「葬儀の参列者のひとりが突然に発狂した」との通報を受けたことをきっかけに発見・収容されました。現在、同村の関係者には適切な隠蔽処理が行われています。 以下は、財団の文化人類学第四調査班により1週間行われた参与観察記録の抜粋です。 事件が発覚した経緯を話す前に、まずはこの北海部群海辺村の文化・習俗における前提について共有しておかなければならないだろう。それは主に、この村の葬送儀礼についての情報である。 この村では、葬儀を行う際には何人か「ナキメ」という女性を雇う。恐らく、漢字を当てるならば哭女であろう。彼女らは読経その他が終わって棺を家から出す時、ある仕事を行う。出棺の際、その棺に縋り付いて、声を張り上げ泣き喚くのである。このような風習は此処に限らず幾つもの地方で行われているものであり、一説には生者の大きな泣き声によって邪鬼の類を退けるのだとされる。当時は、村の若い女性たちが交代でこれを担当していたのだそうだ。 さて、話は事件の経緯に戻る。幾つかの村民に聞き書きを行った結果を纏めると、概ね以下のようになるであろう。 この村に住む蓮葉市子という少女が突然の病に倒れ、そのまま帰らぬ人となった。病の原因は今なお不明である。近所に住んでいた老婆の言によると、艶々と丸みを帯びていた少女の顔は突然、或る日を境にみるみる爛れたように腐乱し、人々は祟りだと大騒ぎしたのだという。 そして、あっけないほどに早逝してしまった彼女を偲び、その蓮葉の家で葬儀が執り行われた。雇われた哭女は5名。滞りなく葬儀は進み、そして出棺という段になった。 その村の中での不文律的な流れとしては、まず村の若い男らが棺を持ち、ミチアケと呼ばれる棺の先頭に立って歩く者の合図で、棺を葬儀場たる家から運び出す。その際、葬儀を行っていた部屋の隅に座る哭女が泣き出し、頃合いを見て棺に取り縋るのである。無論、棺を持つ者の邪魔をしない程度に配慮して、ではあるが。 蓮葉家の葬儀でも同様の手順がなされた。基本的にミチアケは子供が亡くなった場合にはその母親が務めるのが習わしであるらしいのだが、娘の急逝に母親が相当気を弱らせていたのか、ミチアケは父親が代理で行ったとの事である。 父親が合図をし、村の若衆が棺を持ち上げる。哭女が泣き喚き、棺に取り縋る。しかし。 その5人の哭女のうち1人が、棺に向かうどころか立ち上がりもせずに絶叫しているのだ。しかも、その声が明らかに尋常ではない。あがん声は聞いた事の無か、とインタビューに答えてくれた村民たちは口々に語っていた。 あまりの狂態に、参列者がその哭女に注目する。 彼女の手には、ぐしゃぐしゃの紙が握られていたのだという。 副次記録676-JP-4 以下は先述の参与観察調査の過程で、地域住民から得られたインタビュー記録の抜粋です。 調査対象: 男性、54歳 市子ちゃんか。あん娘はえらしゅうして(可愛くて)なあ、体も丈夫やったけんで良う男どもと遊び回りよったわ。やからあがん風に、病気ばして居らんなるとは誰も思うちょらんかったんが。 骨噛ほねこぶり(大分県一部地域の方言で、葬儀へ加勢する意)ん時も、あの母ちゃんはむげねくて(可哀想で)なあ。もうずっとな、顔ば手で押さえてな、ひっ、ひいっ、って声ば漏らしゆうんじゃ。そいば見とったらもう悲しゅうて悲しゅうて、見てられんかったわ。 調査対象: 女性、71歳 あいが亡うなったんは、儂らみたいな老いぼれからしちゃあ、たまらんわ。市子は初物さわりも早かったんで、十とおになった時にゃあオコモリも済んどってな。ここも子が少のうなってきたけんが添臥そいぶしの増えるんはええことじゃて、婆も楽しみにしとったんじゃ。 ああ、確かに、あんさんからしちゃ、ひえた事(驚く事)かも知れんな。オコモリは向こうの村の女やと13じゃ。じゃて、困るような事ぁありゃせん。こんな辺鄙なとこじゃ、楽しみなんて食う事と番うことぐらいやけんなあ。 お月さんなんぼ、っちゅう歌は知っちゅうか。ああ、あんさんは学者さんか。豪いなあ。見ちみない(御覧)、儂なんぞ学校なんち所はいっちょん(ひとつも)行っとらんわ。へえ、そがん歌はいろんなとこに残っとんか。儂らはな、初めのオコモリば手伝う時にな、周りに居る婆がな、せっかましゅう(うるさく、やかましく)そいば歌うんじゃ。 知りたいか?歌にあてられて、若いもんの寄って来んとええなあ。まあ、そがん事なら儂よりも、西の海髪いぎす売りの婆に聞いた方がええわ。あん婆は今でも、手伝いばしよるけんがなあ。 調査対象: 女性、68歳 お月さんなんぼ、十三じゅうさん、七ななつ。 ちと年若いな、若けりゃ子生めえ。 子生んでどがんしょ、婆うんばに抱かしょ。 婆何処へ行く、酢買いに油ゆ買いに。 油屋ゆやのかどにて、油ば零し。 次郎兵ヱはんの狗と、太郎兵ヱはんの狗と。 けとけと舐ねぶった、けとけと舐った。 そん猫どがんしょ、千切って貼って。 あっち向いてどんど、こっち向いてどんど。 副次記録676-JP-5 日本民俗学を精力的に研究し、伊勢や播磨を中心に『民謡・猥歌の民俗学』に代表されるフィールドワーク調査記録を多数残している民俗学者の赤松啓介は、1960年代前半にかけて九州地方への実地調査も行っており、その過程で大分県北海部郡へも出向いていました。 この時の記録が生前に著作として製本・出版される事はありませんでしたが、2000年3月に同氏が没した後にその記録が発見され、大学共同利用機関法人・国立民族学博物館の学術資源研究開発センターによって回収・保管作業が為されました。 以下は、財団の民俗学第二研究班及びSCP-676-JP担当職員が、国立大学の研究チームと偽り同記録を一時的に借用・精査した際の研究記録の抜粋です。 SCP-676-JPそのものに関連する記述は、赤松氏の調査記録にも残念ながら載っていなかったが、幾つか興味深いものが散見された。 まず、「イチコ/市子」という言葉は、この村においてひとつの民俗語彙としても残っている。 江戸期の滑稽本『当風辻談義』に巫子と書いてイチコと読ませる記述もあるが、このような記述が端的に示す通り、イチコは一般的には巫女、つまり神に奉仕する女性のことを指す。しかしこの村では多くの場合で、いわゆる売淫を行う女性のことを指してこのように表現するのである。 嘗て巫女は巫娼とも呼ばれ、平安時代における諸国の『国司解申請官裁事』に「近頃の神社奉仕の采女には、殊に艶聞が多く、没落したので」などと書かれているように、ムラにおける娼婦としての役割を担っていた。恐らくは此処から神職としての意味が抜け落ち、いわば「裏の意味」だけが伝承されていったのであろう。 また、赤松氏が性民俗学研究に力を入れていた方だったため、そのような記述が集中していることもあるのだろうが、この記録には夜這に関する記述も非常に多い。 恐らくは、社会の存続にあたって、それが重要な役割を持っていたことの表れだと考えられる。当時の社会において妊娠・出産によるコミュニティの継続が非常に切実な問題であることは、これまでも赤松氏に限らず多くの民俗学者が記述している。また郡役所の記録によれば、当時の海辺村における男女比は概算して3:7程度と、女性に偏っている。このような現状も手伝っていたのであろう。 そんな海辺村の「夜這」伝承に共通して言えるのは、その層の幅広さである。まず年齢層としては、性徴の成熟の個人差にもよるが10歳から40歳。それより上の年齢層の人々も全く参加しないという訳では無く、特に女性はおくり婆様といって、初床の指南を行う役目に就く。赤松氏は「この村における男女比の偏りを考えると、男性はまだしも女性に関しては、三十路の後半で『引退』し、送り婆の役目を仰せつかることもめずらしくなかったと思われる」と考察しており、私もこの意見には概ね同意するところである。 この他にも様々な記述があったのだが、それでもSCP-676-JPに関しては依然として不可解な点が存在する。SCP-676-JP、あの絵に関する伝承や習俗の記述は、何も残っていないのである。 私も何十年と民俗学を研究しており、大体の伝承に関しては類型や出自を類推することも出来る。しかし、あのようなものを作る呪術も儀礼も聞いたことは無いし、赤松氏の記録にも、海辺村の民俗誌にも、あれの存在を示唆する記述は、存在しなかった。 SCP-676-JPは。ひとりの女児の写真を何十枚も切り取って貼り付けて、顔のような何かを象った、持つと耐え難い泣き声が聞こえてくる、ぼろぼろのちぎり絵は。 一体誰が、いつ、何のために作り、そして何故、あの哭女に持たせたのだろう。 副次記録676-JP-6 以下は、赤松啓介が上述の研究の過程で筆録していたインタビュー記録の一部であると推定されています。 同氏は民俗学研究における一種のフォーマットに基づき、インタビューや聞き書きを行う際には性別や年齢といった話者の情報を付記しているのですが、この記録に関してはそれらが行われておらず、「大分県北海部郡海辺村 聞書き記録」という一文のみが付記されています。そのため、このインタビュー対象者については未だ判明していません。 ああ、あんたか。最近ここに住み込んで色々聞き回りゆうっちゅう奴は。いんにゃ、ええがん。ここのもんは皆退屈しとるけんのう。話し相手が増えるに困りよる奴は居らんよ。 夜這?ああ、ドーキンゴトか。あんた、儂ゃ学者さんじゃて聞いちょったが、最近の学者さんはそげなことも書きなさるんかえ。 そうじゃなあ。あいは確か、何十年も前の話じゃ。うちの村ではな、冬になっとズズクリちゅうて、若えもんがいっぱい集まってな、オコモリばするんじゃ。多分、最初のうちは坊さんらが厳かに数珠ば繰るようなもんやったんじゃろうな。いつの間にか、変わってしもうたのよ。 木の棒をな、組の数だけ揃えるんじゃ。で、まずは女が木の端に名前ば書く。で、そいの見えんごとしてから、男がその棒ば引くんやな。わざわざ選り好みもしてられん、ちゅうて言いよったなあ。 そいでな、昔っからここにゃあ、女が多かったんじゃ。そんで組ば作るにも限界があるっちゅう事で、女の方は四十にもなったらもうズズクリには出られんのよ。そしたら、儂と同い年に情けねえ蓮葉女はすっぱおんなの居ってなあ。ズズクリにも出られんなってから、その女、何ばしたと思う? ズズクリの前、秋の更けた頃になるとなあ。村の若え女をなあ、呪い殺したんじゃ。 葬式じゃて、哭女ば手伝えって呼ばれても、その女、知らん顔で念仏ば唱えてな。お棺ば出すときも、棺に縋りついたんじゃち言いよったぞ。手で口ば押さえてなあ、ひっ、ひくっ、ひいっ、てな。 笑いよったんじゃ。 もう、話はええんか。えらい慌てて、どうしたんじゃ。次の人ば待たせちょる。ああ、学者さんは大変じゃなあ。また、いつでも来えや。儂も毎日、退屈しとるんじゃ。 あんたも、まだ若え男じゃろ。気い付けろ、老いぼれの婆さんからの忠告じゃ。 女の嘘は、怖えどお。 副次記録676-JP-7 当初、副次記録676-JP-3及び4における参与観察調査では、蓮葉市子の両親にもインタビュー等を行う予定でした。しかし調査の前日に両親が共に死亡したためにこの計画は頓挫し、近隣の村民に対する文化人類学的な観察調査に留まりました。この死亡事件に関して、特に異常現象の痕跡等は確認されなかったために、通常の事件として処理が為されています。 死体発見時の状況から、二人は家の仏間において無理心中を行ったものと推定されています。両者の死因は共に窒息であり、胃の内容物及び周囲の状況から、二人は葬儀の後に持ち帰った蓮葉市子の骨壺から取り出した骨粉を半分ずつティッシュのような紙に丸めて包み、嚥下したものと思われます。 妻に目立った外傷は有りませんでしたが、夫は歯を砕かれ、後ろ手に縛られた状態で窒息死していました。 長期間の調査による有意な調査を得られなかったため、SCP-676-JPの出自に関する調査・研究は2000年4月1日をもって凍結されています。 Footnotes 1. 編集者註: 対象は幻聴によるストレス反応として、退行現象の兆候を見せていた。 2. 編集者註: 41秒時点で、対象は自身の左手及び左腕とSCP-676-JPを固定する器具を外そうとした結果、左肩を脱臼している。
scp-677-jp
評価: +55+–x アイテム番号: SCP-677-JP オブジェクトクラス: Safe Neutralized Safe 特別収容プロトコル: SCP-677-JPはサイト-81██の耐火金庫内で保管されています。実験などによるSCP-677-JPの使用にはセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要です。 SCP-677-JPは特異性を喪失したため、実験などによる使用許可は必要ありません。 SCP-677-JP-3の使用にはセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可が必要です。SCP-677-JP-1及び2について使用許可は必要ありません。 説明: SCP-677-JPは平成██年に作成されたと思われる100円硬貨です。材質は通常の物と同様であり、外見上も特に異常はありません。 SCP-677-JPはコインの形状をした複数の実体です。現在収容されている物について材質は通常の物と同様であり、外見上も特に異常はありません。 SCP-677-JPは██県██市で流布していた「絶対に当る占いができるコイン」の噂を調査していた財団研究員により██市立██小学校内で回収されました。当初はAnomalousアイテムとして調査していましたが、以下の特異性の確認によりSCPとして分類されました。 SCP-677-JPの特異性は所持者が「占い」と称する一連の動作をした際に発揮されます。 手順1.SCP-677-JPを手に持ち「(特定の事象A)が起こるなら表、違うなら裏」と「宣言」する。同じ内容を連続して繰り返す場合、「起こるなら表、起こらないなら裏」程度の省略が可能。 手順2.SCP-677-JPをコイントスなどで投げ上げる 手順3.投げられたSCP-677-JPが停止したときに表と裏のどちらが上を向いているか確認する。この際、着地する場所は手の甲や掌、地面やテーブルなど不問。また必ず表または裏を上に向けて停止し、バランスを取って立つなどのイレギュラーは現在まで確認されていません 手順4.1で宣言した事象を肉眼で確認する この「占い」によりSCP-677-JPが表または裏を出すことで示す内容は、手順4で必ず確認できます。この一連の動作は人の手によって手順の通り行われなければならず、手順2のコイントスを機械で行うなどをしても特異性は発現しません。 SCP-677-JPは所有者に対して「占い」をしたくなるような軽度の精神干渉の能力を持っています。また「占い」の対象は身近な物に限りますが、次第に影響範囲を広くしていく傾向があるようです。 実験記録677-JP-1-1 - 20██/██/██ 実験者:██研究員 対象:サイト-81██最寄の国道██号線、道の駅████近辺 内容:「次に来る車が白なら表、それ以外なら裏」と「宣言」し「占い」を行い、その後に来る車を確認する 結果:試行回数1000回中表586回、裏414回。全ての場合で車体の色を当てることに成功した 実験記録677-JP-1-2 - 20██/██/██ 実験者:██研究員 対象:通常のトランプ1セット。ジョーカーを抜いた52枚 内容:「スペードのAなら表、それ以外なら裏」と「宣言」し「占い」を行い、その後にトランプを1枚引く 結果:試行回数20000回中表573回、裏19423回。全ての場合でスペードのAとそれ以外を当てることに成功した 実験記録677-JP-1-03 - 20██/██/██ 実験者:██研究員 対象:サイト-81██内に収容されているオブジェクトクラスsafeのSCP-███-JP。収容以来、異常性が停止したことは無い 内容:「SCP-███-JPが停止するなら表、それ以外なら裏」と「宣言」し「占い」を行い、その後SCP-███-JPを確認する 結果1:試行回数16回目で表が出る。同時刻にSCP-███-JPの異常性が停止。この停止状態は約1週間ほど継続した。 結果2:SCP-███-JPの活動再開後に再実験を試行。試行回数68557回目で表が出る。同時刻に再びSCP-███-JPの異常性が停止。この停止状態は約1週間ほど継続した。 未解明のSCPによるクロステストの危険性は今更言うまでもない。██研究員はBクラス記憶処理を行った上で全ての資格を剥奪。解雇処分とする ――██博士 追加事項1: ██研究員の解雇処分後、実験によりSCP-677-JPの特異性の消滅を確認。オブジェクトクラスをNeutralizedに再分類します。 追加事項2: ██元研究員を監視中の財団エージェント██により、██元研究員が所持する10円硬貨にSCP-677-JPと同様の特異性を確認。以後、元のSCP-677-JPをSCP-677-JP-1と再分類。██元研究員にはBクラスの記憶処理を実施。新しいオブジェクトをSCP-677-JP-2、オブジェクトクラスをsafeと分類し、エージェント██によって回収されました。 追加事項3: ██研究員による実験の結果、SCP-677-JP-2の特異性は確認されませんでした。オブジェクトクラスをNeutralizedに再分類します。 追加事項4: サイト-81██内カフェテラスにおいて、エージェント██が所持していた500円硬貨にSCP-677-JPと同様の特異性が発現。実験後に実験記録677-JP-3-1で使用された実体をカフェテラス内購買から収容、SCP-677-JP-3として分類。実験記録677-JP-3-2で使用された実体をSCP-677-JP-4として収容されました。下記の実験記録はカフェテラス内の監視カメラとエージェント██に対するインタビューを纏めたものです。 実験記録677-JP-3-1 - 20██/██/15 実験者:エージェント██ 対象:サイト-81██内カフェテラスで食事中の██博士 内容:「██博士が[削除済]なら表、違うなら裏」と「宣言」し「占い」を実行。その後██博士を視認。 結果:試行回数39回目で表が出る。直後に空調の異常で起こった強風により、██博士の[削除済] あのオッサンには大概ウンザリしてたんだが、実際あの有様を見せられるとご同情申し上げますとしか… ――エージェント██  実験記録677-JP-3-2 - 20██/██/17 実験者:エージェント██ 対象:サイト-81██内カフェテラスで食事中の██博士 内容:「██博士が[削除済]なら表、違うなら裏」と「宣言」し「占い」を実行。その後██博士を視認。 結果:試行回数102回目で表が出る。直後にサイト-81██全体に[削除済]。██博士は[削除済]。 これは俺のやった事が原因なのか?そんなつもりは無かったんだ… ――エージェント██  + 閲覧にはレベル3以上のクリアランスが必要です。 - アクセス承認。情報を開示します。 SCP-677-JPについて調査が進んだ結果、大幅なプロトコルの更新がありました。上記の内容は改定前の物であり、緊急性と情報拡散による混乱防止のため改定後の調査書の閲覧についてはレベル3以上のクリアランスを必要とします。 アイテム番号: SCP-677-JP オブジェクトクラス: Safe Keter 特別収容プロトコル: SCP-677-JP-αはサイト-81██の耐火金庫内に保管されています。実験を含むいかなる理由でも使用する事は禁止されます。SCP-677-JP-βはサイト-81██の標準人型収容室に収容されます。室内にある家具などは全て床や壁に固定し、取り外しできないようにしてください。本などの小物を与えることは許可されていません。食事は通常の物を与えられますが、その際には拘束した上でDクラス職員により補助をして与えてください。未収容のSCP-677-JP-αが発見された場合はDクラス職員に回収させ、既存のSCP-677-JP-αと同様に保管されます。回収を行ったDクラスはSCP-677-JP-βと設定し、上記の通り収容してください。 説明: SCP-677-JPは、SCP-677-JP-αとSCP-677-JP-βの2種類の要素により構成されています。 SCP-677-JP-αは基本的に投げる事が可能な実体であり、形状についてはコイン大の物から80cm×50cm程度の長方形の実体まで確認されています。SCP-677-JP-αはこれを投げた者をSCP-677-JP-βに変化させます。またSCP-677-JP-βに変化させられるのはSCP-677-JP-α1つにつき1人であり、それ以上の人間を変化させることはありません。後述の「占い」について、SCP-677-JP-β以外がSCP-677-JP-αを使って実行しても特異性は発現しません。 SCP-677-JP-βは、SCP-677-JP-αの影響を受けた人間です。SCP-677-JP-βはSCP-677-JP-αを使って「占い」と称する一連の動作をした際、その結果に応じた現実改変能力を示します。 手順1.SCP-677-JP-βがSCP-677-JP-αを手に持ち「(特定の事象A)が起こるなら表、違うなら裏」と「宣言」する。同じ内容を連続して繰り返す場合、「起こるなら表、起こらないなら裏」程度の省略が可能。 手順2.SCP-677-JP-αをコイントスなどで投げ上げる 手順3.投げられたSCP-677-JP-αが停止したときに表と裏のどちらが上を向いているか確認する。この際、着地する場所は手の甲や掌、地面やテーブルなど不問。また必ず表または裏を上に向けて停止し、バランスを取って立つなどのイレギュラーは現在まで確認されていません 手順4.1で宣言した事象をSCP-677-JP-βが肉眼で確認する この「占い」によりSCP-677-JP-αが表または裏を出すことで示す内容は、手順4で必ず確認できます。注意すべき点は、「宣言」の内容が通常なら起こりえない内容であっても「占い」の結果が起こるという事です。「宣言」の内容が一般的に起こりにくいと思われるほど「占い」でその結果が出る確率は低下するようですが、「占い」で起こると確認された場合は必ず起こります。 またSCP-677-JP-βは投げられる物を手にした際に「占い」をしたくなるよう精神干渉を受けており、「宣言」の後に投げた物体は全てSCP-677-JP-αに変化します。Aクラスの記憶処理でこの精神干渉および変化させる能力を取り除くことはできませんでした。 上記の改定は実験記録677-JP-3-2の後に収容されたエージェント██(以下SCP-677-JP-β-1と呼称)が収容施設内で食事のトレイを使用して「占い」を実行した事で行われました。これにより収容違反が発生し、SCP-677-JP-β-1は[削除済]。 これを受けて██元研究員をSCP-677-JP-β-2と再分類して収容施設へと収容する際、未確認の10円硬貨をSCP-677-JP-α-5として「占い」を実施。その結果SCP-677-JP-β-2は[削除済]により[削除済]。Neutralizedに分類されていたSCP-677-JP-1からSCP-677-JP-4をSCP-677-JP-α-1からSCP-677-JP-α-4に再分類し、上記のトレイをSCP-677-JP-α-6に分類しました。 上記の性質により未収容のSCP-677-JP-αとSCP-677-JP-βの存在が確実視されています。現在、最初にSCP-677-JPが確認された██県██市を中心に調査が行われていますが、複数のSCP-677-JPの存在を強く示唆する噂が幾つか確認されるものの実体の確保には至っていません。調査の結果、同様の噂は██県、██府など██都道府県で確認されています。更なる拡散、増殖の強い懸念と緊急性によりオブジェクトクラスがsafeからKeterに再分類されました。これに伴い機動部隊き-2" コインフリップ"を編成、現在回収活動を開始しています。  追加事項1-1: ██県██市の███小学校で13個のSCP-677-JP-α(それぞれα-7からα-20と呼称)と8人のSCP-677-JP-β(それぞれβ-3からβ-10と呼称)が確認されました。カバーストーリー「伝染病による緊急隔離」によりSCP-677-JP-αとSCP-677-JP-βは全て収容されました。SCP-677-JP-βの交友関係、家族関係を調査した結果、現在までにSCP-677-JP-βの可能性がある45名について臨時の収容を行い、調査が進んでいます。 追加事項1-2: 調査の結果、45名中38名がSCP-677-JP-βであることが判明。同時に家の内部から合計199個のSCP-677-JP-αを回収しました。また更に318名のSCP-677-JP-β、████個のSCP-677-JP-αが存在する可能性があります。SCP-677-JP-βの行動範囲である駄菓子屋、学習塾、ゲームセンター、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ショッピングモール等にSCP-677-JP-αは拡散し、各地点の関係者がSCP-677-JP-βに変化していることが推定されます。拡散の範囲については現在調査中です。 追加事項1-3: ██県██市に拠点を置く企業である██乳業の社員に複数のSCP-677-JP-βが確認されました。この企業は███小学校へ給食用の牛乳を卸している業者であり、牛乳瓶の蓋が変化したSCP-677-JP-αを回収した際に曝露したものと考えられます。このSCP-677-JP-βは複数の製品の作成行程に関与しており、各種製品が卸されている██県と██県にもSCP-677-JP-αおよびβの拡散が極めて強く懸念されます。 追加事項2-1: サイト-81██内カフェテラスの従業員1名がSCP-677-JP-βであると確認されました。実験記録677-JP-3-1後にエージェント██に支払われたSCP-677-JP-α-3に曝露した際に変化したものと思われます。インタビューにより複数のカフェテラス内の金銭がSCP-677-JP-αに変化しており、それらが釣り銭等の形で財団職員に流布している事実が確認されました。サイト-81██を緊急封鎖し、勤務している全ての関係者について現在調査が進んでいます。 追加事項2-2: SCP-677-JP-β-387と分類された元財団職員による収容違反が発生。床面素材を剥がしたSCP-677-JP-αを用いた「占い」により、全てのSCP-677-JP-αおよびβの異常性が停止しました。後日大規模な収容違反が発生しました。追加事項2-3を参照してください。これを受けてSCP-677-JP-βの収容施設の点検が強化されました。 追加事項2-3: SCP-677-JP-αの特異性が再び活性化しました。また調査の結果、追加事項2-2において特異性が停止していたのはSCP-677-JP-αのみであり、SCP-677-JP-βの特異性は持続していたことが判明。未確認かつ追跡不能なSCP-677-JP-αの大規模な拡散が確実視されています。回収方法及びカバーストーリーについては現在作成中です。 収容違反記録報告677-JP-2-3-387-1 - 20██/██/17 実験者:SCP-677-JP-β-387 対象:SCP-677-JP 内容:「「占い」が出来なくなれば表、そうでなければ裏」と宣言、その後で手元のSCP-677-JP-αを確認 結果:試行回数69回目で表が出る。直後の「占い」では異常性は確認できなかった。全てのSCP-677-JP-αは約1週間にわたり異常性を停止し、その後に再開した。 事態が好転したと一瞬でも思った我々が楽観的過ぎた。目下、効果的な収容方法が見つからない…どうすれば収容できるのか…占いでもするか… ――██博士  ██博士にSCP-677-JP-βの疑いがあります。権限の一時凍結及び速やかな収容、検査を実行してください――サイト-81██管理者
scp-678-jp
評価: +28+–x SCP-678-JP。 アイテム番号: SCP-678-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-678-JPはエリア-81██内の低危険物収容ロッカーに折り曲げられた状態で保管されます。またSCP-678-JPの半径1m範囲内に集塵装置を設置し、定期的にフィルターを交換してください。この際使用済みフィルターは焼却処分を施してください。 説明: SCP-678-JPは毛糸で構成されている約150×110mmのコースターです。青・緑・白の3色の毛糸が用いられており、成分検査では一部より[削除済み]成分が検出されていますが99.8%は既存のアクリル系繊維のものと一致しています。 SCP-678-JPの上に液体あるいは固体の物質がSCP-678-JPと接触した状態で存在している場合(この物質を対象と呼称)、対象に働く重力加速度が急激に減少し、最終的にゼロになります。この影響はSCP-678-JPと接触している間のみ働き、また対象に接触している物体は同様に影響を受けます。SCP-678-JPが影響を与えられる物質の限界量は体積にして██m3であり、これを超過する量の物質の場合、異常性を発揮しなくなります。 SCP-678-JPは折り曲げる・丸める等の変形を行った場合、特異性を発揮しないことが判明しています。 実験記録678-JP-001 - 20██/██/██ 対象: 水で満たしたグラス 実施方法: SCP-678-JP上に載せる。 結果: 水面が徐々にせりあがった。ある程度まで膨らむとそれ以上の変化は無かった。 実験記録678-JP-002 - 20██/██/██ 対象: 加速度計 実施方法: SCP-678-JP上に載せる。 結果: 少しの時間の後0m/s2を表示した。 実験記録678-JP-003 - 20██/██/██ 対象: 電子秤、食塩10mg 実施方法: 食塩を電子秤に載せた状態で電子秤ごとSCP-678-JP上に載せる。 結果: 少しの時間の後電子秤は0gを表示した。またこの際研究員の息が誤って食塩に吹きかかり、食塩が電子秤よりこぼれた。食塩は実験室の床へと落下した。 実験記録678-JP-005 - 20██/██/██ 対象: 実験用ラット 実施方法: SCP-678-JPの上に乗せ、対象とSCP-678-JPを拘束具で固定する。 結果: はじめ対象は動揺した様子を見せ、もがいていた。拘束具を外しSCP-678-JPから離すと対象は問題なく活動した。 実験記録678-JP-006 - 20██/██/██ 対象: D-3835 実施方法: SCP-678-JPの上に乗せ、対象とSCP-678-JPを拘束具で固定する。 結果: はじめ対象は"落ちる!助けてくれ!"といった旨の発言を繰り返し、非常に取り乱している様子であったが、実験開始から█分後に気絶したため実験は終了された。 分析: これはただ単に重力加速度がゼロになっているだけで落下は発生していないが、肉体がそう錯覚してしまったのだろう。今後の実験は十分に訓練を行ったDクラス職員で行うこととする。 -木林博士 実験後の清掃の際にDクラス職員が"埃っぽい"と報告しましたが、確認したところ何の異常もありませんでした。問題ないとは思いますが念のため追記しておきます。 -花海棠研究員 実験記録678-JP-008 - 20██/██/██ 対象: D-3850 実施方法: SCP-678-JPの上に乗せ、対象とSCP-678-JPを拘束具で固定する。 付記: D-3850はあらかじめ高所からの落下に耐えるための訓練を施されていました。 結果: 以下は実験の音声記録です。 <記録開始> [D-3850がSCP-678-JPに乗せられる] D-3850: うおっ!? 木林博士: どうした? D-3850: いや……ただ落下するような感覚がしたんだ。まるでここの床が幻で、無限の奈落に落っこちてしまったような感じだ。 木林博士: 今はどのような状態か? D-3850: 周りの風景は何にも変わらないが……相変わらず落下感だけは残ってる。どんどん落ちてる。……博士、これ本当に大丈夫だよな? 木林博士: 大丈夫だ。君の足は両方とも地面についている。 D-3850: なら良いけども……何だか変な感覚だ。 木林博士: 何か変化があればすぐに報告してくれ。 D-3850: 分かった。 [以後約1時間、視界が白んでいること以外対象からの目立った報告は無かった] 木林博士: 異常は無いか。 [約█秒の沈黙] D-3850: ああ……特に問題は無い…… 木林博士: そうか、だが反応が遅いし妙に声がゆっくりだぞ。 [約██秒の沈黙] D-3850: 博士……もっとゆっくり喋ってくれないと聞こえない…… 木林博士: どうした、疲れているのか。 [約██秒の沈黙] D-3850: いいや……特に…… [以後約██分間沈黙が続く] 木林博士: 大丈夫か? 瞬きもせずによくじっとしていられるな。 D-3850: …… 木林博士: おい。 D-3850: …… 木林博士: 気絶しているのか? 一旦実験を終了する。 <記録終了> 実験終了後SCP-678-JPより降ろされた対象はすぐさま活動を再開し、"随分と早く実験が終わった"と証言しています。 分析: 重力加速度がゼロになるだけであれば無重力感を感じるだけだが、対象は確かに"落ちている感覚"を訴えた。我々のまだ知らない特異性が存在するのかもしれない。また、長時間SCP-678-JPに晒されていると対象の生体活動が低下するらしい。これは反応の遅延、心拍数の低下、瞬き数の減少等から明らかである。人体の長期保存に有効かもしれない。更に長時間の実験の必要があるだろう。 -木林博士 実験記録678-JP-010 - 20██/██/██ 対象: D-3860 実施方法: 対象に肉体の状態を計測する機器を装着し、SCP-678-JPの上に乗せ、対象とSCP-678-JPを拘束具で固定する。 付記: 対象はあらかじめ高所からの落下に耐えるための訓練を施されていた。 結果: 実験開始から約2時間後、対象が消失したため実験は終了された。以下は実験の音声記録です。 <記録開始> [保安職員に連れられた対象がSCP-678-JPに乗せられようとする] D-3860: 博士聞いてくれ俺は時間を……!! [対象がSCP-678-JPに乗せられる] 木林博士: ん、どうしたのかね。 D-3860: [激しく動揺したような表情で不明な音声を発する] 木林博士: 落下の訓練は受けたはずだ。今更動揺することはないだろう。 [以降対象は約██分に渡り激しい動揺、不明な発声を行うが次第に沈静化してゆく] 木林博士: 気分はどうだね? D-3860: ……い……ろ……ど……も……た…… 木林博士: どうしたんだ? D-3860: ……お…………う…………な………………き………………じ…… 木林博士: さっきから何を言っている? [以降対象の発声の間隔が伸びてゆく] 木林博士: 対象の精神状態に多少の懸念はあるが、生体活動の状況は概ね予測通りだな。 D-3860: ………… [以後約██分間沈黙が続く。対象に取り付けられた計器の表示にも異常は見られなかった] 木林博士: 2時間を突破したが……D-3860、答えられるか? D-3860: [反応なし] 木林博士: うむ、まあ予想通りの反応だ。 [対象が消失する] 木林博士: なっ!? 消えた! 木林博士: 実験を中止する! Dクラスの行方を捜索しろ! <録音終了> + 木林博士の推測 - 隠す 先の実験結果を精査した結果、私は1つの推測に辿り着いた。SCP-678-JPの真の特異性は、載せた物体がもし自由落下し続けた場合に物体が受ける影響をその場でシミュレートし物体に反映する、というものだということだ。もし抵抗を加味しないならば物体は加速を続け、2時間強で光速に達する。相対性理論によれば光速に近づくほど流れる時間が遅くなるとされ、これならば実験結果を何ら矛盾なく説明できる。そしてもし光速を突破するようなことがあれば……そう、時間は後退を始めるだろう。つまり我々が見たのは、時間を逆行してくる対象の姿だったのだ。私の理論が正しければ、時間を逆行してきた対象は実験開始時に影響から解放され、同時に再び一から影響を受け始めるため、実験開始から2時間の間を永遠にループすることになる。 だとして……我々はいつ、彼の"時間を正進する姿"を見たのだろうか?   補遺: SCP-678-JP収容以降、サイト-81██勤務の職員からジャーキング1が入眠時以外にも頻繁に発生するとの報告がなされました。調査の結果ジャーキングの発生数はSCP-678-JP収容時を起点として約4倍に増加していることが判明し、追加調査が行われました。結果、サイト内の空調設備よりSCP-678-JP由来のものと思われる繊維が検出され、一部は[削除済み]を形成していました。これを受け、特別収容プロトコルが改訂されました。 Footnotes 1. 入眠状態への移行時に発生する不随意の筋肉の痙攣。落下するような感覚を伴う。
scp-679-jp
評価: +46+–x SCP-679-JP アイテム番号: SCP-679-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-679-JPを中心とした半径500m以上の土地を財団のフロント企業により買収し、フェンスを設置して民間人の立ち入りを禁止してください。エリア内は自動装置による監視を行い、侵入者の発生時には近傍のサイトから警備員を派遣し、拘束及び強制退去を実施してください。SCP-679-JPの周囲にはカント計数機によるヒューム値1測定を含む複数の測定機器による観察を行い、常時SCP-679-JPの状態と現実改変の有無を遠隔監視してください。異常が認められた場合、特殊現実対策班が初動調査と事態の収拾にあたります。 説明: SCP-679-JPは長野県████の山中に存在する建造物です。SCP-679-JPは外部からの観測では2階建ての木造家屋と地下1階までのコンクリート製の地下室で構成されています。しかし探索の結果、地下部分は外部からの計測よりも遥かに広い内部構造を有していることが判明しています。 SCP-679-JPは19██年、長野県███在住の██氏が狩猟の途中で行方不明になったことをきっかけとしてその存在が発見されました。██氏に対しては家族から地元警察に捜索願が出されていますが、██氏が狩猟の途中でSCP-679-JPを発見した痕跡が見つかっており、なんらかの原因でSCP-679-JP内に囚われたかSCP-679-JP内で死亡しているものと考えられます。SCP-679-JPは公的には長野県███在住の犀川氏所有の邸宅となっていましたが、当該人物は19██年に転居したのち行方不明になっていることが判明しています。 SCP-679-JP内部地上部分は、現実改変能力を持たない民間人であっても軽度の現実改変が行えるほど、現実強度が失われた不安定な空間となっています。強い思い込みや思考は予期せぬ現実改変を引き起こすおそれがあるため、進入の際には細心の注意が必要です。現在もSCP-679-JP内地上部分では、不定期に予測不能な異常現象が発生します。これは財団による収容以前に発生した民間人の侵入者がSCP-679-JPを「お化け屋敷」または「幽霊屋敷」であると認識していたために発生した現実改変の結果であると推測されています。SCP-679-JP内部地下部分は、恒常的に広大な空間であるという異常状態でありながらも、不規則な異常現象および現実改変が発生した事例は確認されていません。カント計数機による測定では地下部分も地上部分と同様に現実強度が低下していますが、 地下部分で不規則な現実改変が発生しない理由は不明です。現実改変の影響および現実強度低下エリアはSCP-679-JP内に留まっており、SCP-679-JP周辺への影響は現在まで発生していません。しかし有事に備え、SCP-679-JP周辺の現実強度の変動および異常現象の発生は、現在も厳重な監視状態にあります。現実強度低下エリアがSCP-679-JP外に及ばない理由は、SCP-679-JPの建材内に多量に含まれる銅ベリリウム合金と未知の物質による作用と考えられていますが、詳細は不明です。 SCP-679-JPの地上部分で発生した異常現象のリスト 壁面に手の跡に見える複数の染みが浮き出る。 オーブントースターのベルが連続で鳴る。 ソファの色が目を離す度に変化する。 鏡の中に「NO MORE WAR」と書かれたプラカードを持った様々な人種からなる群衆が映る。 目覚まし時計が人間のイビキに似た音を立てる。 鉢植えの観葉植物が笑うような音を立てる。 _ 第2次探索において、調査隊は地下室エリアで複数の敵性実体と遭遇しました。敵性実体は対話に応じず、調査隊を複数名殺傷したため、機動部隊による制圧が行われました。敵性実体はいずれも未知の動物であり、既存の生物との遺伝的類似性はみられませんでした。第2次探索終了時点では多くの敵性実体の個体が生存していたものと思われますが、続く第3次探索時には全個体が死亡していることが確認されました。死因は餓死または脱水によるものと思われますが、生態の違いから詳細は不明です。調査の結果、敵性実体は現実改変の結果として生じたものではなく、不明な場所からSCP-679-JP内地下エリアへ移動させられ、家畜として飼育されていたものであると、回収された文書やSCP-679-JP内地下エリアの設備から推測されています。 第2次探索で殺害した敵性実体のリスト # 外見上の特徴 接触ログ 1 体調3m程度、牛に似るが鋭利な牙と緑に光る目を持つ。 出会い頭の攻撃により機動部隊員4名が重傷を負う。火器にて制圧。6体殺害。 2 体調1m程度、犬に似るが足と目が8つずつあり、尾が発光している。 非常に凶暴。機動部隊員が先に存在を発見するも、俊敏な動作により初期制圧に失敗。3名死亡、5名重傷の被害を出す。4体殺害。 3 全身に布が撒かれた広葉樹に似る。扉を開ける知性を持つ。 機動部隊員に掴みかかり腕の骨を折る。その後も踏みつける、床に叩きつけるなどの攻撃を続けたが、援護射撃により無力化。1体のみ存在を確認。 4 蛇に似るが全身が柔らかな突起に覆われており非常に不快な見た目をしている。 隊列の頭上から突如現れ降下し、機動部隊員██の皮膚に接触。見た目と触覚の嫌悪から██は軽度のパニック状態に陥り、対象を射殺。殺害は1体のみ。個体数は無数に確認。 _ SCP-679-JP-A収容室のドア 第3次探索において、SCP-679-JPの地下室エリアの深部からSCP-679-JP-AおよびBに指定される稼働中の機械装置が発見されました。現実改変エリアの発生原因はSCP-679-JP-Aにあることが判明しています。回収された文書によればSCP-679-JP-Aは隣接した部屋に設置されたSCP-679-JP-Bに指定される機械装置と対になっており、A地点周囲の現実強度を消費してB地点周囲の現実強度を強化する、一種の反現実改変装置ともいえる機能を有していることが示されています。カント計数機による測定では、B地点の周囲はSCP-679-JP内部で最も高い現実強度を示しました。しかし失われたA地点の現実強度に対し、強化されるB地点の現実強度はわずかに減衰が発生します。このためSCP-679-JP-AおよびBの稼働は場全体の現実強度の緩やかな減衰を引き起こし、継続した運転は現実改変に対し脆弱な空間を作り出します。SCP-679-JP内の現実強度の低下はこれらの装置が原因で発生したものと考えられています。 また第3次探索において、以下に示す文書が発見されました。発見された文書やその他複数の形跡から、SCP-679-JP内には少なくとも一体以上の知的存在が生息していたものと推測されています。知的存在はSCP-679-JP-AおよびB、また地下部分に生息する家畜的生物群の管理者であったものと思われますが、現在の所在や素性は不明です。 _ 第3次探索で発見された文書 ██にちめ Englishはだいたいおぼえた。 つぎ べんきょの りゆうで にっき にほんご かく。 じっけん、じゅんちょ。 りろんうちゅうち いどう せいこう。 でもすこし よそう ちがう ある。 はやく ふるさと すくう したい。 [以下不明な文字列。おそらく執筆者の母語による詳細な日誌。現在解析作業中。] ██ にちめ じっけんけっか、いまひとつ。 理論宇宙値はいどうすると少しなくなる? こまる。 ふるさと助けるをいそぎたい。 [以下不明な文字列] 理論宇宙値いどうきかい 操作マニュアル あとでほんやくする [以下不明な文字列] ██ 日日 妻が侵入者にころされた。 しん入しゃはうしにくわれた。 私はとてもながい時間ないた。 [以下不明な文字列。他の日誌に比べて判読不能な文字が多く、執筆者の心理状態に乱れがあったことが推測される。] ██ 日目 事故が発生。先生に頂いた本やこれまで書きためた英語の資料のほとんどが消失。しかし再ほんやくをしている暇はない。早く研究を完成させなければならない。 [以下不明な文字列] ██ 日目 牛たちが騒がしく鳴いている。また侵入者か? 実験の途中だが見に行ってみることにする。 [この日誌のみ母語による記述なし] せんせい しやしん とったくれた きねん _ 補遺: 19██/██/██現在、SCP-679-JP内の現実強度の低下は依然として進行中であり、SCP-679-JP-AおよびBの安全な停止または破壊方法についての研究、検討が進められています。またSCP-679-JP内に生息していた知的存在はSCP-679-JP-AおよびBの停止方法を知っていたものと推測されるため、知的存在の捜索が並行して進められています。 _ 補遺: 19██/██/██、長野県███在住の██氏は失踪宣告の要件を満たしたため、公的に死亡したものとみなされました。 _ Footnotes 1. ヒューム値: 現実性の強度、現実改変の難易度を示す指数。カント計数機はその測定機器。FAQ:ヒュームって一体全体なんだ? 参照。
scp-680-jp
評価: +43+–x アイテム番号: SCP-680-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-680-JPは縦7m、横7m、高さ3mの磁気遮断処理が施された特別収容ユニット内に収容されます。収容ユニット内の中心には超電導磁石で構成された幅40cmの円柱と外部から操作可能な強磁場発生装置が配備され、磁力によって強制的にオブジェクトの固定が行われます。ユニット内に立ち入る職員は電磁波防護服の着用が徹底され、原則的に発声は認められ無い為に筆談で意思の疎通を行って下さい。 説明: SCP-680-JPは未知の素材で作られた物品と粒子で構成された物体群です。精密検査により金属に近い素材である事が判明していますが、その硬度から切削が不可能であり、素材の特性と思われる原因によって電子を吸収する性質を保持している為に正確な分子構造は特定されていません。 また、当該オブジェクトは視覚的には光沢の無い完全な黒色として観測されますが、これは塗装によるものではなく素材そのものの色ではないかと考えられており。上述した性質の為、詳しい理由は明らかになっていません。 SCP-680-JPを構成している物体群はSCP-680-JP-aからSCP-680-JP-cまで割り振られて指定されており、これらは説明不可能な力によって重力を無視して自律的な動作を行います。この動作の法則性は明らかになっていませんが、SCP-680-JPに関する情報や感想を述べた人間を優先的に追跡し攻撃を行う事が確認されています。実験記録の結果から対象となる発言の範囲は極めて幅広いと考えられており、特別収容プロトコルの一部改訂が行われました。 SCP-680-JP-aは長さ2m、幅が最大20cm、厚みが最大0.3mm、重量220kgの三日月を象った形状をした刃物です。刃は曲線の内周部分に存在し、外周部分は丸みを帯びる形で研磨が行われていますが、刃の部分は極めて鋭利な刃状に加工されています。確認されている動作として刃を水平に保った状態で回転すると共に、大きく曲線を描きながら移動する事が確認されていますが攻撃対象となった人物の行動に合わせて垂直に上下した事例も確認されています。また、移動を行う際は対象を基点とした半径5m以内を旋回しながら不規則に対象に向かって接近し攻撃を行います。 SCP-680-JP-bは厚さが最大0.5cmの五角形の星を象った形状をした物体で全ての辺が刃となっています。幅20cm重量75kgの物が3個、幅12cm重量45kgの物が5個、幅3cm重量12kgの物が15個の合計23個が存在しており、厚みの最小部位はSCP-680-JP-aと同様の検査結果が報告されています。確認されている動作として水平に回転しながら空中に静止し、不規則に対象に向かって最大5m程の直線的な移動を行います。 SCP-680-JP-cは煙・あるいは霧状の気体として視認可能なおよそ200nmの大きさの粒子です。これらの粒子は菱型あるいは二等辺四角形に近い形状をしており、鋭角の部分は上記の物体群と同様の特徴を示しています。正確な濃度は不明ですがSCP-680-JP-aとSCP-680-JP-bの位置の中心部を基点とした半径3m以内に充満しています。また、上述した反射光に対する性質の為、充満している範囲内は光源の有無にかかわらず暗所と同様の状態となります。SCP-680-JP-cは基本的には範囲内を流動するのみで攻撃的な動作を行う事はありませんが、その形状の為に範囲内に立ち入った対象の肉体に対して細胞間の拡張からなる損傷と、その拡大を引き起こします。 SCP-680-JPに対して、その性質を探る実験が行われています。詳細は以下のファイルを参照して下さい。 +SCP-680-JPに関する実験記録 - close 実験記録680-1 - 日付2014/9/17 対象: SCP-680-JP 実施方法: 実験ユニット内に移送されたSCP-680-JPに対して、同室のスピーカーからの音声を聴かせる事により反応を確認する。 結果: 反応無し 分析: 収容時の記録やインタビュー内容から人間の声に対して反応するという情報が得られた為に今回このような実験を行ったが、肉声で無い限りは反応しない事実が得られた。この事から場合によっては対応する人員に遮音式の密着衣服を着用させた上でマイクを用いる事で、安全な実験が可能であると判断した。 実験記録680-4 - 日付2014/9/17 対象: SCP-680-JP 実施方法: 同状況のSCP-680-JPに対して、同室内に進入させたDクラス職員、D-1163の声に対する反応を確かめる。 結果: D-1163に挨拶や自己紹介等、適当な発言を行わせたが反応は無し。その後SCP-680-JPに対する感想を尋ね、D-1163が「黒い」と発言した直後にSCP-680-JP群に取り囲まれた。およそ15分後にSCP-680-JPによる包囲が解除された後に遺体が回収された。 分析: 大型霊長類や人の言葉を真似たオウムを使用した実験と今回の実験を経て、SCP-680-JPが人間の肉声に対してのみ反応しない事が確定した。また、SCP-680-JPを対象とした発言以外に対して反応する様子を見せなかった事も今後のSCP-680-JP収容に関する重要な結果を得たと思われる。D-1163の遺体の損傷は極めて激しいが、検査結果を見る限り最初のSCP-680-JP-aによる頸椎の切断が直接の死亡原因であると考えられる。 実験記録680-7 - 日付2014/9/18 対象: SCP-680-JP-c 実施方法: 実験ユニット内からSCP-680-JP-a、SCP-680-JP-bを除去した状況下でDクラス職員、D-3738を用いての反応を検査する。SCP-680-JP-a、SCP-680-JP-bに対する個別の実験記録は実験記録680-5、実験記録680-6を参照。 結果: D-3738が用意されていた文章を読み上げた直後にSCP-680-JP-cによる包囲が行われD-3738の激しく咳き込む声と苦痛を訴える発言が確認される。その5分後、SCP-680-JP-cがこれまで確認されていなかった旋風を思わせる動作を行うと同時にD-3738の声が途絶えた。回収された遺体を検査した結果、喉頭の粘膜におびただしい損傷が確認されると同時に、全身の6割の皮膚の剥離が確認された。ユニット内からは細かく分解された衣服が発見された。 分析: 個別の状況下においてオブジェクトの一群は特異な動作を見せる事例が確認された。D-3738に着用させていた衣服は通常時の物と違い、頑強な繊維を織り込んだものであったが効果が見られない事からSCP-680-JP-cに対しても他のオブジェクトと同程度の危険性があると判断された。なお、D-3738に読み上げさせたのは収容時に発見された資料の一文である。 実験記録680-12 - 日付2014/9/18 対象: SCP-680-JP 実施方法: SCP-680-JPに対して複数の言語を用いての反応の検査。アゼルバイジャン語1に堪能なD-2216、ビシュヌプリヤ・マニプリ語2に堪能なD-42162、ケセン語3に堪能なD-3421が登用された。 結果: Dクラス職員3名の死亡が確認された。 分析: これまでの記録から、言語に関係なく反応していると考えられる。SCP-680-JPは一種の感応能力、あるいは独自の意思を持って活動を行っていると考えられるが、倫理委員会による判断でこれ以上の同様の実験は無意味だと判断された為、次をもって実験の一時的な終了とする。 実験記録680-13 - 日付2014/9/18 対象: SCP-680-JP 実施方法: ユニット内にDクラス職員、D-7630を進入させる。 結果: ユニット内で目隠しを外したD-7630が絶叫すると同時にSCP-680-JP群によって包囲された。およそ40分後に包囲が解除された為、遺体の回収が行われた。 分析: これまでの実験記録で気になっていたSCP-680-JP群による包囲から解除までの時間は、発言を行った対象の感情に応じて変化している可能性が高いと考えられる。概ね予想通り、SCP-680-JPは「自身に対する恐怖からの悲鳴」も攻撃対象として感知している事が確認された。当結果は感情が込められた音声ならば文章としての意味がなくとも攻撃対象となる事を意味している。 収容経緯: SCP-680-JPは2014年9月16日に、██県██市内のマンションの一室で発見されました。当室はアトリエや作業場としての物件として貸し出されており、近辺で活動を行っていた芸術活動を主にした団体「██市を彩る会」が使用していた事が確認されました。室内からはSCP-680-JPと共に14名の男女の死体と1名の生存者と複数の芸術品と思われる物品が発見されており、遺体が所持していた名簿等から同団体のメンバー全員が同室に集っていたことが判明しています。なお、この団体は定期的に個展を開く等の活動を行う一般的な芸術文化団体として周知されており、メンバーも学生や主婦、学校教師等の民間人によって構成され、各メンバーの身辺調査の結果からも異常な点が発見される事はありませんでした。 オブジェクトの発見に繋がったのは周辺住民からの悲鳴に関する通報によるものであり、██県警から「内部に踏み込んだ警官からの通信が途絶え、応援に駆け付けた人員が黒い煙と刃物に襲われた」との連絡が財団に通達された為、財団の収容チームによって収容が行われました4。また、室内から発見された作品はいずれも一部が欠損しているか何らかの形で損傷が加えられた形跡が見つかっていますが、これらが芸術品としての特徴の一つであるのか、オブジェクトによって加えられた傷であるのかは不明です。 以下は、SCP-680-JPが本来設置されていたと思われる台座の前に置かれていた紙片です。内容から、SCP-680-JPに関連した記述である可能性が示唆されており、重要資料として当該報告書にコピーが添付されます。 +発見された紙片 - 閲覧を中止する 評価ノート: 2014/7/27  題:「夜」 作者:垣田 ██ コメント: “夜”をイメージした作品です。実際の夜そのものを使用して、静かな夜を題材とした神秘的な作品を目指しました。 「夜」をイメージしたのはわかるんだが、このままでは余りにも安易に過ぎると思う。そのままのイメージを落とし込むよりも、別の観点から見た特徴を盛り込むべきではないか。  “コンセプト”が全く見えてこない。君の作ったコレはただの「物」だ。ただの黒い星と月を浮かべて「夜」だと説明されてもこちらとしても困る。君はこの作品を見る全ての客にいちいち説明して回るのか?3点(100点満点でだ) 素晴らしい素材を扱っていながらこれほどの物しか作りだせないのは嘆かわしい。これを作ったその努力は認めるが、我々は技術者では無く芸術家だ。ただ手をかければ言いという物では無い。先人たちは皆、もっと安価で素朴な素材から素晴らしい物を作り出しているよ、一度基本に立ち帰ってはどうだろうか?  シンプルイズベスト、を地で行くようなこの作品はとても素晴らしいと思います。ただ、シンプルすぎる事で込められた思いそのものよりも作品の見た目そのものに意識が行ってしまうのが少し残念に感じられました。 評価ノート: 2014/8/11  題:「夜の闇」 作者:垣田 ██ コメント: 頂いた意見を参考にして再度修正を行いました。夜の持つイメージとして「闇」を前面に押し出してみました。再度評価をお願いします。 中々の技術ではあると思うが、この作品からはお前のsoulが感じられない。芸術家たる者、小手先の技術や知識に頼らずにIdeaをImaginationへと変化させ、皆のsoulにお前のmindをぶつけるべきだ!そう!ありのままに!! 個人的にはとても面白いと思いましたが、現段階ではただの「面白い作品」止まりだと思います。どうせならば更に他の技術を用いた作品を組み合わせる事で、アクセントを付けてみるというのは如何でしょうか?我々は芸術をオモチャにするような連中とは違うのですから、真摯で芸術的な作品を目指すべきです。 芯となるイメージを蔑ろにしてあれやこれや付け足す、というのは未熟者に多いパターン。当初の自身が抱いたコンセプトに忠実に、基礎を守りながら高めていくのが向上の秘訣。基本を疎かにして奇抜なアイデアに向かうのは向上では無く、唯の逃避。 評価ノート: 2014/8/19  題:「静寂の夜」 作者:垣田 コメント: 一度基本に立ち返り、夜が元々持っていた静寂をコンセプトに、エッジ部分に加工を施す事で緊張感を加えています。 中々、評価に困る作品であると感じました。個人的には以前の作品のほうが好みでしたね。 初めて拝見しましたが、自分の中では久々の「アタリ」であると思える、良い作品です。ただ、現段階ではあまりコメントにあった緊張感をうまく感じとる事が出来ませんでした。もう少しシンプルな作品の方が、より緊張感が際立つかもしれませんね。 芯となるイメージを蔑ろにしてあれやこれや付け足す、というのは未熟者に多いパターン。当初の自身が抱いたコンセプトに忠実に、基礎を守りながら高めていくのが向上の秘訣。基本を疎かにして奇抜なアイデアに向かうのは向上では無く、唯の逃避。 評価ノート: 2014/8/25  題:「夜の恐怖」 作者:垣田 コメント: 自身を再度見つめなおし、夜について掘り下げて修正しました。正直、自分自身の中で思い悩んでいる部分があって一度作品を取り下げてみるべきか悩んでいます。 縦横無尽に動き回る闇と星々は確かに恐ろしい。しかしこのままでは唯恐ろしいだけの何かではないかと思う自分がいる。自身に思い悩む処があるのならば、一度手を止めるのも一つの結論ではないだろうか。 何が伝えたいのか、何をしたいのかがいまいちよく分かりませんでした。動きや見た目にも限界がありますし、他の美麗な作品を見習って機械等を使うという手もありますよ。 技術やデザインは工夫されているし、それらを流用して別のモチーフに使うという手もあるね。思い悩んだ時は休息も必要だし息抜きや別の作品に取り掛かるのもアリだと思うよ。 この作品からは君の悩みや苦しみがありありと現れている。しかしそれの何が悪い?そういった感情を形にするのも我々アナーティストの本分とも言えるのではないか?私はこの作品にこれ以上の無駄な要素は必要ないと思う、必要なのはあと一歩だ。君の本当の気持ち、君の本当の想いをこの作品に込めるんだ。そうすれば、少しはCOOLになれるだろう。 ↑そんな忌々しい言葉を使わないでください。あとノートに書き込むときはボールペンを使用して下さい。 ███ート: 2014██/16  題:「切り刻む夜」 █者:垣田 コメ██:             やれば出来るじゃないか 付記: 当資料の内容から、団体が異常な存在を認知していた可能性が指摘されています。上述された通りメンバーから不審な団体や人物との繋がりが確認されていませんが、生存していたメンバーからは当団体は特異な性質を保持した「真の芸術品を創造する団体」であったという証言が得られており、同時に「自分たちは芸術を玩具にしているような連中とは違う」との意見も主張しています。 回収された最後の紙片はSCP-680-JPが収容された当日の物である事が判明していますが、記述されていた文面に関して、広範囲に付着した血痕や回収された周囲の状況から団体のメンバーがSCP-680-JPによって殺害された後に書かれた物である可能性が高いと考えられています。なお、唯一生存していたメンバーの証言からはそのような筆記が行えた人物はその場にいなかったとの情報が得られており、現在も調査が続けられています。 以下は生存したメンバーの証言記録です。 +インタビュー記録680-2 - 視聴を中止する 対象: ███ ██ 男性 21歳 無職 インタビュアー: 山下研究員 付記: 事前に███を落ち着かせるために簡易的なインタビューを行っており、対象や団体、オブジェクトに関する説明はその際に聴取しています。 <録音開始, 2014/9/16> 山下研究員: 気分は落ち着いたかな? ███: ああ、はい……もう大丈夫…… 山下研究員: それじゃあ、先ほど君が証言した“品評会”について聞かせてもらおうか。 ███: そのまんまの意味だよ、何回かあのアトリエに集まって、みんなで作品を見せ合ってたんだ。評価ノートっていう紙にそれぞれ何かコメントしたりしてさ。 山下研究員: うん、そのノートは我々も回収しているよ。読んだ限りだと、あの“切り刻む夜”という作品は何度も提出されてたみたいだね。 ███: ああ、アイツも……垣田も芸術家として食っていくって頑張ってたから…… 山下研究員: 垣田さん……あの“夜”の作者だね。仲が良かったのかな? ███: いや、年が近かったんで何回か話した事があるだけだよ。俺はまだ作品を作れる段階じゃなかったし。……ただ、最近思い悩んでたみたいでずっと暗い顔してたのが気になってたけどな。今日は珍しく明るい顔してたんで良いのが出来たんだな、と思ったよ。 山下研究員: じゃあ、あの“夜”がどうやって作られたのかも聞いてないかな?他の作品についても。 ███: いや、知らない……どんな作り方してるのかなんて普通他人には教えないんだよ。ほら、技術は目で盗むって言うだろ。俺たちは芸術家なんだ。そんな作り方を聞き出すような恥ずかしい真似はしないね。 山下研究員: 成程、信用するよ。それじゃあ何があったのか、について聞こうかな。一体君が今日何を見たのかを教えてほしい。 ███: ああ、うん。今日は品評会だってんで朝からみんなと一緒にアトリエで準備をしてたんだよ。みんなで準備したり、飾りつけとか、掃除とか……そんで作品がどんどん運ばれてきて、垣田も布でくるんだ“月”や瓶に入れた黒い煙を持ってきてた。 山下研究員: その時は何も反応しなかったんだね? ███: まぁそりゃね。芸術品ってのは舞台が整ってから輝くもんだからさ。そんで、品評会が始まって、アイツの作品が一番最初のお披露目って事になった。正直、前見た時と違いが判らなかったんだけど……おっさんが近付いて何かを言った途端に……動き出して……急に…… 山下研究員: 落ち着いて、続けてくれ。何から動き出したんだ?その男性は何を言った? ███: ……おっさんは、なんか呆れた顔でなんか言おうとしてたけど、一言目くらいで頭が、無くなってたんだ。あの月が……ぶぅぅんとか音を立てながら俺の横を通り過ぎて…..黒い煙がおっさんのいた辺りにぶわって来て….. 山下研究員: 他のメンバーを襲いだした、と……君はよく無事だったね? ███: 気を失ってた、からかな。目が覚めたら部屋の壁に添うように煙が取り囲んでて、星がひゅんひゅん飛び回ってて、月は部屋の真ん中くらいで回りながら留まってた。みんなはバラバラになってて、垣田はなんか微笑んでぶつぶつ呟いてたよ。 山下研究員: その内容は? ███: ほとんど聞き取れなかったけど……誰かに話しかけてるみたいだった。ユミさん、とか言ってて……そんで、俺に気が付いたらしくて、目が合って、俺がその顔にビビって叫んだらあいつが笑い出して……月が…… ███: アイツの首を落とした……[俯いて泣き崩れる] <録音終了> 終了報告書: 収容時の被害状況や生き残ったエージェントの証言から音声に反応するタイプのオブジェクトの可能性が考えられるが、インタビュー対象の様子から、恐らく詳しい情報は所持していないと考えられる為、更なるインタビューを継続すると同時に実験を並行して行っていく。特に、SCP-680-JPが作成者の「笑い声」に反応した事はオブジェクトの性質が単なる声にのみ反応するものでは無い事を指し示している可能性が高く、更なる調査と実験で性質の特定を急ぐ。 どうやら室内の中心で頸椎を切断されていた遺体がオブジェクトの作成者と見て良いようだ。対象が無事だった件に関しては、気絶したことが功を奏したのかもしれない。気になる点は対象も悲鳴を上げていた事だが……その事に関しても追々判っていく事だろう。 -山下研究員 追記1: オブジェクトに対して強い感情を抱いている事が条件に合致しているという理由から███ ██の実験への使用許可が久我博士から申請されました。 追記2: 継続したインタビューの結果から、███ ██はインタビュー記録680-1で証言された内容以上の情報を保持しておらず、拘束の必要性が薄いと判断された為、久我博士の申請が受理されると共に対象はD-7630と指定され実験への参加が許可されます。実験内容は当報告書内の実験記録を参照してください。 脚注 1. アゼリー語とも呼ばれる、アゼルバイジャン共和国の公用語 2. インドのアッサム州、トリプラ州やバングラディシュ人民共和国で使用されている言語の一種 3. 岩手県気仙郡、宮城県気仙沼市で使用されている方言の一種 4. 収容当初は性質が把握されていなかった為、収容チームの人員数名に被害が出ています。
scp-681-jp
評価: +53+–x アイテム番号: SCP-681-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-681-JPはサイト-81██の小型物品収容庫に保管されています。取り扱いの際は手袋を着用した上で更に器具を用い間接的に扱い、直接の接触は避けて下さい。 説明: SCP-681-JPは刃渡り20cmの洋鋏です。生きた人間(以下被験者と表記)が素手で持つと活性化し、被験者は刃の開閉を繰り返したくなる衝動に襲われます。この衝動は決して強くはなく、被験者は自らの意志で開閉速度を変えることができ、SCP-681-JPから手を離すことも可能です。開閉時には「シャキン」と形容される金属音が、開閉の速度や強さに関わらず一定の音量で発生します。鋏としてのSCP-681-JPは右利き用ですが、被験者の利き手及び実際に左右どちらの手で触れたかに関係なく活性化します。また持ち手に指を入れず触れているだけの状態でも自発的に開閉することがあります。刃には図形の輪郭と見られる細い枠線とハイフンのような短い横棒が掘られており、本来ならばこの位置にロゴ、型番、商品名等が刻まれるものと考えられています。 暴露した被験者はSCP-681-JPを開閉するごとに、知識や記憶の連結をひとつずつ断ち切られ、その知識同士の連想が不可能となります。この時対象となる連結は無作為に選ばれるものと考えられています。また知識そのものが失われるわけではないことに注意して下さい。 一例として、「トマト」と「赤」の連結が失われた場合を記します。被験者はトマトについて味、形状、市場価格、調理法などは思い出せますが、赤色をしているという情報を思い浮かべることができなくなります。また赤い野菜の候補としてトマトを挙げることができなくなります。実物を目撃した場合は知識の整合性が取れず混乱するか、あるいは単純に新種、未知の存在であると認識します。 この断絶は学習によって回復することが可能であることから、SCP-681-JPの異常性は記憶を司る神経系に局所的な影響を与えるものとして研究が進められています。 補遺1: 2006年3月31日現在、実験記録や各種資料が行方不明となっています。調査の結果外部へ流出した可能性は低く、施設内のどこかにあると思われます。発見した職員は担当研究員まで即時報告して下さい。 事案記録681-1: 2006年3月31日、小型物品収容庫で出所不明の金属音が発生しました。収容物品の全担当職員及び保安要員、保守要因による大規模な調査が行われましたが、金属音の発生源は特定できませんでした。金属音は2時間をかけて断続的に発生した後に停止しました。 事案記録681-2: 2006年3月31日、小型物品収容庫で収容物品の全担当職員及び保安要員、保守要員による大規模な調査が行われました。収容物や設備に異常は見られませんでした。 事案記録681-3: 2006年3月31日、小型物品収容庫で収容物品の全担当職員及び保安要員、保守要員による大規模な調査が行われた際、SCP-681-JPと指定された物品庫の中身が空であることが確認されました。詳細は調査中です。 事案記録681-4: 2006年3月31日、小型物品収容庫で収容物品の全担当職員及び保安要員、保守要員による大規模な調査が行われた後、触ると開閉したくなるハサミが発見されました。一時保管し、後日anomalousアイテムとして申請する予定です。 収容違反記録681-1: 2006年4月1日、サイト管理者がSCP-681-JPの報告書には重要物品の紛失と見受けられる記述が含まれているにも関わらず一切の報告がないことに気付きました。███研究員1や事案記録681-1から同4にて調査を行った職員への聞き取り調査と収容庫の確認の結果、SCP-681-JPの収容違反が宣言されました。多数の職員が何らかの汚染を受けている可能性が高いためサイト管理官は特殊監査チームの派遣を要請し、日本支部理事会により即時承認されました。 収容違反記録681-2: 2006年4月2日、特殊監査チームは███研究員のデスクに保管されていたSCP-681-JPを確保・再収容することに成功しました。一方で各種資料はチームの予想に反し発見されておらず、破棄・流出の両面から調査が続けられています。 幸いにも実験時のノート・メモ類は残されておりそれらは検証実験の簡略化に貢献しました。検証の結果持ち手に指を入れて開閉した場合はその人間の知識のみを無作為に、自発的に2開閉した場合は「シャキン」と形容される金属音が届く範囲に存在する人間及び電子媒体の、SCP-681-JP自身に関する情報から優先して影響を与えることが発覚しました。3なお紙媒体の記述には影響を与えず4、またこの金属音は通常の音波に比べ遮蔽物による減衰を受けにくいことが確かめられました。 事案681及び収容違反中に暴露した全職員は、鋏・金属・金属音・収容違反・報告といった観念とSCP-681-JPが相互に連想出来ない状態にありました。精密な検査の結果SCP-681-JPに関わらない知識にはほとんど影響を受けていないと診断され、当面は外部から派遣された職員の補助・指導のもと職務を行い業務に支障なしと認定された段階で正式に復帰します。唯一、███研究員はSCP-681-JPの担当者であったこととanoumalousアイテムとして接触・暴露したこともありより多くの知識の断片化を受けていると診断されました。本人の希望もあり現在はセキュリティクリアランスを一時凍結の上、新人研究職員研修をはじめとした各種研修を再受講しています。これに伴いSCP-681-JPの管理担当者は██研究員に引き継がれました。 この事案を受けSCP-681-JPは暫定的に器具にて固定した上で防音金庫に収められ、地下施設に隔離収容されました。██研究員及び収容スペシャリストにより特別収容プロトコルの改定作業が進められています。 補遺2: SCP-681-JPは破壊工作を目的として持ち込まれた疑いがありますがその起源を探る試みは難航しています。SCP-681-JPがもたらす異常の完全解明・遮断・無力化を実現する努力が続けられています。 Footnotes 1. 当時のSCP-681-JP担当研究者です。 2. 人間が触れているかどうかを問いません。 3. 電子媒体においてはリンクやタグの消去・ファイル名の改竄等にてアクセス妨害を試みます。機器の物理的な損傷は確認されていません。 4. 当報告書の前半部分も印刷済みの報告書を元に復旧されました。
scp-682-jp
評価: +193+–x 電子顕微鏡により撮影されたSCP-682-JP アイテム番号: SCP-682-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-682-JPはサイト-81██内の生物実験施設で反磁性をもたせたうえで強磁場チャンバーに封じ込め、複数の手順を個別に実行することによって収容されます。定期的に電子顕微鏡による状態確認を行い、生命活動を記録し乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破や脱皮が確認された場合、実行中の手順を改稿するとともに速やかに[手順A]から[手順E]の順で循環的に手順を実行してください。現在は[手順C-11]が実行されています。未収容のSCP-682-JPについては機動部隊む-4(”虫とり少年”)によって捜索、回収が行われます。新たなSCP-682-JPが発見された場合は[手順A-1]から実行し収容してください(別紙682-JP-B参照)。 + [手順A-12] - 表示を隠す SCP-682-JPを高温に保ち、乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破が確認された場合、設定温度を10℃ずつ引き上げてください。現段階の設定温度は410℃です。 + [手順B-12] - 表示を隠す SCP-682-JPを超低温に保ち、乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破が確認された場合、設定温度を5℃ずつ引き下げてください。現段階の設定温度は−205℃です。 + [手順C-11] - 表示を隠す SCP-682-JPを高圧に保ち、乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破が確認された場合、設定圧力を0.1GPaずつ引き上げてください。現段階の設定圧力は2.0GPaです。 + [手順D-11] - 表示を隠す SCP-682-JPを高電圧に保ち、乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破が確認された場合、設定電圧を1MVずつ引き上げてください。現段階の設定電圧は11MVです。 + [手順E-11] - 表示を隠す SCP-682-JPを高線量のガンマ線に曝し、乾眠状態を維持してください。乾眠状態の打破が確認された場合、設定線量を100Gyずつ引き上げてください。現段階の設定線量は1100Gyです。 説明: SCP-682-JPは緩歩動物1の一種に酷似した生物で、現在の体長は25.█nm、体重は50.█gです。SCP-682-JPは既存の緩歩動物に比べて遥かに強力な耐久性を有しています。耐久実験を複数回行った結果、SCP-682-JPは環境の変化を瞬時に察知し、即座に乾眠状態へ移行することで高い耐久性を得ていることが判明しました。また長期間同じ環境に乾眠状態におかれたSCP-682-JPは、徐々に周囲の環境に適応し乾眠状態を打破します。オブジェクト本体の小ささと耐久性、脱皮の行動によりSCP-682-JPに継続して60%以上の損傷を与える試みは現在成功していません。 SCP-682-JPは一定の期間が経過するか損傷を負うと即座に脱皮を行います。SCP-682-JPが脱皮をすると全長は脱皮前のおよそ8█%に減少しますが、質量は減少することなく維持されています。乾眠状態から脱皮する場合は、周囲の環境に完全に適応するまで脱皮は行われません。そのため異なるストレスを段階的に与えることで脱皮を妨げる、あるいは遅らせることが可能です。また脱皮前に損傷があった場合、脱皮後に損傷は完治しています。財団が収容して以降、SCP-682-JPは7█回の脱皮が記録されています。 SCP-682-JPは197█/██/██、██県の山中で巨大なクマムシが発見されたという情報を入手した財団がその異常性に着目し、収容しました。収容時の全長は29.█cmと記録されています。 補遺: SCP-682-JPの脱皮が今後も続く場合、7█回後の脱皮で水素の原子核と同等の大きさに、1██回後の脱皮でブラックホールと同等の密度に達すると予測されます。現状では仮定に過ぎませんが、仮にSCP-682-JPがブラックホールに変化し尚且つ生命活動が維持された場合、通常のブラックホールと異なりホーキング放射2を持続しつつ半永久的に存続する可能性があります。 Footnotes 1. 一般的にクマムシと呼称されています 2. 放射されるエネルギーは約4500TJであり、TNT火薬1.2Mtに相当します
scp-683-jp
評価: +122+–x SCP-683-JPの発声器官 SCP-683-JPの捕食器官 アイテム番号: SCP-683-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-683-JPの棲息する██山一帯をサイト-81██として指定し、カバーストーリー"火山性有毒ガス発生地帯"に基づき一般人が侵入することを防いでください。1日1回鹿や猪などの大型の哺乳類を生きたまま給餌して下さい。給餌の際は大型ドローンを用いてSCP-683-JPの周囲100mに移送し、SCP-683-JPに捕食させて下さい。SCP-683-JP周辺への録音装置やレシーバー等の持ち込み、及びSCP-683-JPの発する音のDクラス職員を含めた人間の曝露は基本的に許可されておらず、実験に必要な場合はセキュリティクリアランスレベル3以上の職員の許可を得て実施してください。SCP-683-JPの現在地は装着したGPSデバイスによって捕捉されます。GPSデバイスの反応が消失した場合は遠隔操作ドローンを使用して再度デバイスを装着して下さい。 説明: SCP-683-JPは機械的な発声器官と捕食器官を有する生物です。現在1匹のみ発見、収容されており、他の個体や類縁種の存在は明らかになっていません。SCP-683-JPはスピーカーに似た異常な発声器官を有しており、聴覚に認識災害を引き起こす特異な鳴き声を発します。この鳴き声は周囲に別の生物が侵入した場合、及び摂食活動を行う際に主に発せられることが判明しています。SCP-683-JPの鳴き声を感知した場合、あらゆる音に対して耐え難い恐怖感を覚えるようになります。この恐怖感は経時的に増大し、さらに音に対して過敏になるという副次効果を伴います。これらの影響を記憶処理によって除去する試みは現在のところ成功していません。鳴き声は非常に大きな音量1であり、SCP-683-JPの付近で聴取した場合、前述した認識災害とは別に内耳器官の鈍化、或いは麻痺に伴い突発性難聴に類似した症状を呈します。難聴の症状は可逆的なものであり、SCP-683-JPから離れることで難聴は回復しますが、逆に近づくことで音を感じ取ることができなくなります。認識災害と難聴の両者の効果により、鳴き声に罹災した生物はSCP-683-JPに向かって移動することとなります。SCP-683-JPはこの効果を用いて生物の捕食を行っていると考えられます。 SCP-683-JPは██県において禁足地として知られている██山中に棲息しており、当該領域を調査していた財団フィールドエージェントの遭難によりその存在が発覚しました。遭難時の無線の音声記録を解析した際認識災害の兆候が見られたため、ドローンを用いた調査及び小型哺乳動物とDクラス職員を用いた影響調査を実施し、鳴き声の効果範囲を特定しました。その後、聴覚型認識災害の収容に長けた機動部隊む-5("魔女の犬")の人員を運用し、確保作戦が実施されました。しかしながら当該確保作戦は失敗し、捜索に携わった機動部隊員全員が死亡、あるいは行方不明となる結果となりました。作戦失敗の結果から、SCP-683-JPの財団施設への収容は見送られました。SCP-683-JPの移動速度は極端に遅く、また通常殆ど移動する兆候を見せないことから長距離の移動を嫌っていると考えられています。この生態を利用し、特別収容プロトコルに示す通り棲息する周辺地区を封鎖した上で定期的に給餌を行い、現在の位置に留める措置を取っています。 なお、以下に示すように確保作戦の際機動部隊員の一部は帰還に成功しましたが、帰還後全員が自殺、或いは決死任務への参加に伴い終了しています。 事案報告: SCP-683-JP収容作戦失敗に伴う人的資源の損耗状況 識別コード 状況 死亡日時 死因 アルファ(隊長) 自殺 2016/12/10 舌を噛み切ったことによる窒息死 ブラボー MIA2 2016/11/3 SCP-683-JP確保任務中山中にて行方不明 チャーリー KIA3 2016/11/3 SCP-683-JPに捕食された デルタ(副隊長) 自殺 2016/11/5 胸を強打したことによる心臓震盪 エコー KIA 2016/11/10 SCP-683-JPへの決死任務に志願、自殺直後に捕食された フォックストロット 事故死(結果的には自殺) 2016/11/4 脳出血に伴う脳浮腫 探査ログ683-JP-01 - 日付 2016/11/3 探索準備中の状況、各隊員は耐聴覚認識災害装備を着用している。 アルファ: 今回も聞いたら死ぬ声を発する化け物の探索任務だ、装備に不備があったら死に繋がる、チェックを行う。スロートマイク4とヘッドギアを着用しろ。 全員が着用し、アルファ隊長がブザーを鳴らす。 アルファ: ブザーの音は聞こえないな、私の声が聞こえたら手を挙げろ。 全員手を挙げる ブラボー: 問題ないです、アルファ隊長も大丈夫ですか。 アルファ: 問題なし、それでは出発だ。ブラボーとチャーリーは私とスリーマンセルで先行し、デルタは副隊長としてエコーとフォックストロットを指揮し、別のルートで上がってこい 山中を探索、アルファのヘッドギアに着装しているカメラ映像を本部に送信している 山中を122分探索 ブラボー: そろそろ音の範囲内に入る。ヘッドギアは外さないように。 チャーリー: 頼まれたって外しませんよ。聞いたら狂い死ぬんでしたっけ。 アルファ: ははっ、なあ、こういう時たまにヘッドギア外したらどうなるんだろうとか考えたりしないか。"マンドラゴラの叫び声"が聞けるぞ。 チャーリー: マンドラゴラの叫び声なんて聞きたくもないですけど、どんな音なんだろうと興味は沸きますね、Dクラスにでも聞かせましょう。 ブラボー: 私もたまに考えますな。まあ早死にしたくないもんですなあ。 チャーリー: 見えてきた、あれが例の化け物か。スピーカーみたいだな。 ブラボー: ちょっとデカいな、重機を使わないと難しいかもしれん。ギリギリまで近づいてGPSマーカーの設置とサンプルの採取を行う。注意しろ。 アルファ: ブラボー、少し先行しろ。向こうからこっちが見えてるかどうか分らんが、なるべく悟られないように。ヤバくなったら戻ってこい。 ブラボー: 了解、少し先行する。 ブラボーが数m前に出る、SCP-683-JPとの距離はおよそ50mとみられる ブラボー: スピーカーが目なのか?動くみたいだが。 ブラボー: こっちを見た? カメラが細かく振動する。 アルファ: くっ、頭が。ブラボー!大丈夫か! ブラボーがヘッドギアを投げ捨てた。恐怖の表情と共に一度アルファ隊長側に走り出すが即座に踵を返しSCP-683-JPの方に向かっていく アルファ: おいどうした。チャーリー、フォローを。 チャーリー: [悲鳴] チャーリーもヘッドギアを投げ捨てた、悲鳴の後アルファもヘッドギアを投げ捨てた。放置されたカメラは両者とも一度SCP-683-JPから離れる素振りを見せるが、直ぐにSCP-683-JPに向かって走り出す姿を捉えている。三人はそのまま姿を消した。 チャーリーがヘッドギアを投げ捨てたのと同時刻、別ルートでSCP-683-JPから100m程度離れた場所まで進んでいた別動隊も同様にヘッドギアを投げ捨て、潰走しました。 その後、デルタとエコーが昏睡状態のアルファとフォックストロットを連れ帰還しました。全員木の枝を両耳に突き刺したことにより内耳と脳に深刻な外傷を受けていました。アルファは3週間ほど昏睡状態の後意識を回復しましたが、フォックストロットは意識を回復することなく死亡しました。 治療の後、比較的軽症だったデルタ及びエコーにインタビューを行いました。インタビューはスロートマイクを用いて行い、こちらからの問いかけはディスプレイに文字を写すことで行っています。 インタビューログ"デルタ"683-JP - 日付 2016/11/8 ██博士: 体調はいかがですか? デルタ: 最悪な状況が続いている。頭がおかしくなりそうだ。 ██博士: SCP-683-JPの認識災害の影響ですか。 デルタ: [ノイズ]、そうだ、畜生。服の擦れすら恐ろしく感じて仕方がない。 ██博士: 鼓膜は既に破れているんですよね、それでも聴こえてしまうんですか。 デルタ: 細かい振動も頭に響くんだ。だんだん敏感に、恐怖は激しくなってきている。 ██博士: その恐怖、というのはどういったものなのでしょうか、どうも想像がつかないのですが。 デルタ: ヘロインやコカインが人間の快楽のスイッチを押すのと同じように、恐怖のスイッチが押されるような感覚だな、これまで経験した全ての恐怖が耳の奥に叩きつけられるような感じか、伝わるかわからんが。 ██博士: 少し想像がつきました。ところで、今日はSCP-683-JP収容作戦のことについて教えてもらいたいのですが、大丈夫ですか。 デルタ: [ノイズ]、うう、ああ、分かってる。イカれちまう前に話しておかないとな。聴覚型の認識災害オブジェクトの収容は何度もやったことがあるし、メンバーに油断もなかったと今でも思っている。 ██博士: それでも失敗したと、一体何があったのですか?探査映像は拝見しましたが、途中で途切れていましたが。 デルタ: 防音用のヘッドギアは途中まではきっちり仕事をしたと思うが、オブジェクトに近づくにつれ耳の奥の方に違和感を覚えるようになったんだ。オブジェクトを目視できる距離まで近づいた時、フォックストロットが突然おかしくなった。あれはクソったれのオブジェクトの音を聞いちまったに違いない。 ██博士: 音がヘッドギアを抜けた、ということでしょうか。 デルタ: [ノイズ]、ああ、分かってるんだよ。いや、そうじゃないと思う。何というか、振動が耳の奥に届いたと言うべきだろうな。あれだ、骨伝導ってやつだろう。肌にビリビリくるような音だったからな。 ██博士: なるほど、合点がいきました。それで聴覚への認識災害に罹災したわけですね。 デルタ: ああ、そうだな、こっちから話しかけたと同時にフォックストロットはヘッドギアを投げ捨てた。止める間もなかったし、俺もエコーもみんなすぐに同じになっちまった。[ノイズ]、オ、オブジェクトは見えていたし、逆方向に逃げるべきだとは理解できたんだが、逆に走ってすぐ足音やら虫の音が恐ろしくて仕方がなくなり、すぐに踵を返してオブジェクトに向かっちまった。みんな同じだよ。 ██博士: ノイズが酷いですね、何か問題でも。 デルタ: ぐ、いや、話を続けよう。[ノイズ]、分かってるんだよ。お、お、音が聞こえない方向に全力で走るとあのスピーカー野郎がそこにいた。何の音も聞こえなかった、どう考えてもおかしいが、妙に落ち着いた気持ちになったのを覚えている。 ██博士: ブラボーとチャーリーはオブジェクトに捕食されたんでしょうか。 デルタ: [ノイズ]ブラボーはいなかったが既に食われていたみたいだ。チャーリーは食われようとしていた。足を歯車みたいな歯に挟まれて、 デルタ: あああ!クソ![悲鳴]この音を止めろ。心臓が、もう駄目だ!駄目だ!止めろ! デルタは胸部を殴打した後、強く胸部を圧迫した。数秒後後気絶した。 その後、デルタは意識を取り戻した後も発作的に胸部の殴打、圧迫を繰り返しました。拘束を行いましたが、2日後睡眠中に拘束を外し胸部を殴打した結果、心臓震盪を引き起こし死亡しました。 インタビューログ"エコー"683-JP - 日付 2016/11/8 ██博士: 気分は如何ですか、エコー。 エコー: 良くないね、もっと枝を耳に深く突き刺して死んでおけばよかったと思うよ。結局みんな死んじまったのか? ██博士: アルファはまだ昏睡状態です。デルタは先日病室で亡くなりました。胸を自ら殴打して心臓にダメージが加わったためです。 エコー: 心臓を止めようとしたってか、俺も同じことを思ってるよ。心音が頭に響いて発狂しそうになる。いや、もうイカれちまってるんだろうな。 ██博士: 収容作戦の状況を教えて下さい。大丈夫ですか。 エコー: 別に構わないが、あまり大したものは見てないし覚えていない。ヘッドギアをみんなで投げ捨て、混乱しながらあっちに行ったりこっちに行ったりしてるうちに気がついたらオブジェクトの近くにいた。そこでチャーリーが食われていくのを見ていたよ。アルファ隊長が引っ張って助けようとしていたみたいだが、突然手を放しちまった。 ██博士: なぜそんなことをしたんでしょうか。 エコー: 分らんね。アルファ隊長はチャーリーと長い付き合いだったし、見殺しになんてするはずもなかっただろう。まああの時は皆頭がおかしくなってたからな、仕方あるまい。 ██博士: 状況の確認を続けます。その後どうなったんでしょうか。 エコー: オブジェクトの近くはとても、とても静かだった。食われてしまう恐怖よりも音の恐怖の方が強かったからその場に留まろうと思ったんだろうが、アルファ隊長がみんなを引っ張っていった。そして、その辺の枝を手に取って耳に突き刺した。何をするべきか直ぐにわかったよ。同じことをした。 ██博士: 皆さんそうされたんですか。 エコー: そうだ、もう誰もマトモに頭は働いてなかったからな。アルファ隊長に従ったというよりも、衝動的に同じことをしたという方が正しいな。枝の長さとか鼓膜までの距離とか考えることもできず、音の恐怖から逃れたい一心でその辺の枝をぶっ刺した。そうすると当のアルファ隊長とフォックストロットは耳から血を噴き出してぶっ倒れた。傷が浅かった俺とデルタが何とか二人を引っ張って逃げ帰ってきたってわけだ。 ██博士: ありがとうございます。状況が理解できました。他に何もなければインタビューを終了しますが、何かありますか。 エコー: 一つ、頼みがある。今は何とか死なずにいるが、多分俺もそう長くない。心音が聞こえるたびに止めようと思うが、デルタみたいに犬死にするのはまっぴらだ。せめて財団に貢献して死にたい。 ██博士: と、言うと。 エコー: オブジェクトにはGPSマーカーをつける予定だったが、結局できなかった。最後にあいつにマーカーをつける仕事をさせてくれ。食われる可能性は高く帰ってこれないだろうが別に構わない。 ██博士: 決死作戦ですか。私の一存では難しいです。持ち帰って検討します。 エコー: 頼むよ。認められなかったとしても自殺するだけだ。せめて皆の敵は取ってやりたい。 エコーの申し出に対して決死作戦への投入の検討が行われました。エコーの財団への忠誠度が十分高く、また失敗した場合の人的損失が軽微である点を鑑み決死作戦が実施されました。 探査ログ683-JP-02 - 日付 2016/11/10 エコー単独によるSCP-683-JPへのGPSマーカー装着任務を実施した。探索に支障が出ないように防音ヘッドギアと特殊スロートマイクを用いて自分の声を含めた音を遮断している。 エコー: これから潜入する、一応スロートマイクを用いてログを取るが悲鳴が入るのは許してほしい。可能な限り帰還は試みるが、まあアテにはしないでくれ。 150分山中を探索、途中SCP-683-JPの声の効果範囲内に入った。 エコー: [悲鳴]ひっ、頭にビリビリきた、この辺りか。 エコー: 姿がまだ見えない、聞いて探すか。まだ正気がある間に遺言を遺しておく。 個人情報を含む重要性の低い文言であるため省略 エコー: 最後に財団に感謝と謝罪を。正直なところ今回の決死作戦は仲間の敵を討つのはおまけだった。ただ、安らかな場所で死にたかった。あのオブジェクトの周りの、心臓の音が聞こえなくなるほどの静寂がどうしても忘れられなかったんだ。GPSマーカーは俺の命と引き換えに装着する、その対価として一時の静寂を頂きたい。自分勝手だし、死んでいった仲間に顔向けできるとは思えないが、どうか許してほしい。 エコー: よし、行こう。どうか安らかに死ねますように。 エコーはヘッドギアの防音機構を解除した、その途端に悲鳴を上げて走り出した。 十分ほど悲鳴を上げながら走り回った末、SCP-683-JPの周辺に到着した。 エコー: いた、本当に静かだ。さあ最後の仕事をしよう。ああ、会いたかった。 SCP-683-JPは動かない。近づき、スピーカー状の発声器官周辺にGPSマーカーを取り付けた。 エコー: これで俺の仕事も終わりだ。財団も悪いようにはしないだろう。本当に静かだ。恐怖心も消えていく。 エコー: お、俺を食うのか、いいぜ、くれてやるよ。この静けさのお礼だ。静かに殺してくれ。 エコーは糸が切れたように動かなくなった。SCP-683-JPは歯車状の摂食器官を動かし、エコーの足に食らいついた。 エコー: 痛い![悲鳴]クソ!足が[悲鳴]足が潰れる音が!いやだ!もっと静かにしてくれ!この音を消してくれ!クソ![銃声] エコーは所持していた拳銃で自殺したものと推定されます。 探査ログから、SCP-683-JPが発する音は摂食中にはある程度弱まるものと推定されます。当該決死作戦によりSCP-683-JPの現在地をモニタリングすることが可能となりました。 2016/11/25、アルファ隊長が昏睡状態から覚醒しました。精密検査の結果、脳機能と内耳に重大な損傷を受けたために首から下の運動機能、内耳の蝸牛・前庭・半規管の全機能を喪失していることが判明しました。そのため、外部及び自らが発する振動を感知できなくなっています。覚醒してから容体が安定した11/29にアルファ隊長へのインタビューが実施されました。インタビューには先の2人と同じくスロートマイクとディスプレイを用いて行っています。 インタビューログ"アルファ"683-JP - 日付 2016/11/29 ██博士: 気分はいかがでしょうか。 アルファ: 何というか、気持ちの悪い浮遊感がある、あまり生きている実感がしないな。吐き気も酷い。 ██博士: かなりの重症ですね。一応財団の医療技術を用いれば内耳機能が回復する可能性も残されていますが、なぜ拒否されたんですか。 アルファ: 回復したところであの恐怖にまた晒されるのはまっぴらだからな。一応治療も考えているが、しばらくこのままでいさせてほしい。 ██博士: わかりました。今回はSCP-683-JPの収容作戦についてお聞きしたく思います。 アルファ: なあ、みんな死んじまったのか。 ██博士: 残念ながら。最後まで生きていたエコーは自らSCP-683-JPにGPSマーカーをつける決死作戦に志願して亡くなりました。 アルファ: そうか。これも俺のせいか。で、何を聞きたいんだ、こんなクソ隊長に。 ██博士: チャーリーさんを助けようとしていたとお聞きしましたが、その時の状況についてお聞かせください。 アルファ: チャーリー、ああ、俺は何てことを。もう少しで助けられたのに、俺がクソビビリなせいで見殺しにしちまった。 ██博士: なにがあったんでしょうか。 アルファ: チャーリーがあの野郎に食われようとしていた時、俺は必死になってチャーリーを引っ張ろうとしていた。チャーリーは苦悶の表情を浮かべていたが、最期に少し表情を緩ませ、何かを俺に伝えようとした。今考えるとあれはアイツの遺言だったのかもしれない。 ██博士: 何と言ったか覚えていますか。 アルファは涙ぐんだ、1分ほど沈黙 アルファ: チャーリーの遺言は聞けなかった。チャーリーの声を聴いた瞬間に恐ろしくなり、手を放してしまったんだ。クソ、最期の言葉すら聞き届けられなかった。俺は隊長失格だ。 ██博士: なるほど、心中お察しします。そしてこれから、どうされますか。 アルファ: 目覚めてあいつらが全員死んだことを知った時は俺も後を追って死にたいと思ったが、地獄であいつらに怒られそうだ。せめてもう少し足掻いて生きていこうと思う。あいつらに会うのはいつでもできるしな。不幸中の幸いで自分の心臓の音すら聞こえない。こんなに静かなのは アルファは30秒ほど沈黙、キョロキョロと目を動かして周りを見回す。 ██博士: どうかしましたか。 アルファ: いや、何でもない。 アルファは10秒ほど沈黙 アルファ: なあ、下らないことを聞くんだが。 ██博士: なんでしょうか。 アルファ: ここは安全だよな? アルファはしばらく療養していましたが、インタビューから11日後の夜に舌を噛み切り、失血と舌の破片を喉に詰まらせ窒息死しました。自殺する前に不眠症を訴えていたこと、目を動かし何かを探す仕草を頻繁に行っていましたが、自殺した動機については不明です。 Footnotes 1. 測定機器による計測は成功していませんが、1██dB程度であると見積もられています。しかし、200m程度で急激に減衰し、300m程度離れると感知が不可能となります。 2. Missing in action 3. Killed in action 4. 特殊性のスロートマイク、声帯を動かす神経電流を補足し、音声情報に変換し通信を行う。同時に声帯への神経電流を遮断し、発声はできないように設定されている。
scp-684-jp
評価: +80+–x   アイテム番号: █CP-684-JP   オブジェクトクラス: █afe   特別収容プロトコル: █CP-684-JPは実質的に収容が不可能な事象であり、致命的な影響の封じ込め、または人体に累積する認識災害的効果リセットの恒久的な実施という形で対処されています。現行に於いては執行プロジェクト-U2が処理を担当しており、詳細情報の申請は当該プロジェクト責任者に対して直接行ってください。   現在は、█CP-684-JPに対する広範囲的なミーム処理による対処が完了しています。しかしながら、処理手順の更新と█CP-684-JP現象の再発防止に要する措置、実験のために本報告書は特殊保護指定されています。█CP-684-JP現象の再発が確認された場合に備え、本報告書の閲覧が、セキュリティクリアランスレベル3以上の全職員に対して義務づけられています。 また、本報告書添付のクリアランス5レベル項は█CP-684-JP現象の大規模な再発が確認され次第、O5権限の自動的な発動に伴い全セキュリティクリアランスレベルに対して完全解除されます。   説明: █CP-684-JPは「アルファベットのエス」が人類に対して及ぼす不可思議な認識災害的現象です。本現象の存在は19██年に開発された、地域ごとの死因環境情報統合プログラムによる統計的データの算出によって、明らかに統計的に不自然な平均寿命データが継続して観察されたことによって調査が開始されました。 そして2█年間に及ぶ実験と統計の採取の結果、本現象が「アルファベットのエス」に起因する累積型の認識災害であると結論付けられ、財団による対処が決定されました。   █CP-684-JPは「アルファベットのエス」を認識する度に人間の記憶容量に累積するダメージです。「アルファベットのエス」の形状に類する認識がなされる度に█CP-684-JPは個人に累積し、累積量が17628回の暴露相当に達した時、その個人の肉体が一切の生命活動を停止します。 これは「アルファベットのエス」を直接視認した場合であっても、形状を正確に83%まで思い浮かべた場合であっても累積します。 この効果は言語としての「アルファベットのエス」に相当する認識ではなく、「アルファベットのエス」の形状そのものに原因があると見られているため、「アルファベットのエス」に似た形状の存在を認識する事によっても効果が累積すると推測されています。 █CP-684-JPの累積が肉体的な死を引き起こすメカニズム、または直接な因果関係は解明されていませんが、生命活動の停止という形で現象が完結する点から、非実在的な効果ではなく何らかの実体的な要因であると見なされています。   █CP-684-JPはその性質から、古来より多くの人類に影響を及ぼしてきたと考えられますが、これまで人間の死に関する情報の統合が困難であった点、歴史レベルでの長期間の暴露が継続してきた点、異常の原因の特定が技術的に困難であった点によって、発見がここまで遅れたものと思われます。 また「アルファベットのエス」が多くの文化に定着し、拡散している状況が常態化していることから、要因の根絶、もしくは情報的な収容は絶望的であるとの見方が強く、収容に拠らない対処法が現在検討されています。   補遺: █CP-684-JPの個人への累積に対抗する手段の研究の一環として、多様な認識効果への暴露実験が行われた結果、特定の視覚もしくは皮膚刺激パターンの認識に█CP-684-JPの累積をリセットする効果が認められました。 この結果に基づき、█CP-684-JPの危険性と影響力を考慮した上で、全人間社会に対する潜在的なミーム撒布処理が実行されました。█CP-684-JP対抗ミームは全人類を対象に撒布され、効果の継続のための執行プロジェクト-U2がO5-6によって組織されました。 執行プロジェクト-U2は█CP-684-JP対抗ミームが人類社会から自然的に、または人為的に消滅することを防ぐ機関として、複数のフロント企業を利用しての█CP-684-JP対抗ミームの各デザインへの埋め込みと流通の監視、潜在的な協力団体への間接的経済支援等を専任業務としています。           + 執行プロジェクト-U2梗概-※セキュリティクリアランス5レベル項※ - clo█e...       端末をスキャンしています…… 端末のクリアランスを確認しています… 端末に残留する生体的痕跡を確認中…………完了 執行プロジェクト-U2情報を認証… アクセス開始………………       アクセスに成功しました                       まずは、これを開いてくれた事に礼を述べなければならない。本当にありがとう。 君がこれから知る事は、より多くの人間に知られていなければならない事実でありながら、知る人間が多すぎても問題を招く。 矛盾した物言いである事は百も承知だが、我々が抱えている問題が如何に厄介なものであるかは、君のような人間であればよく知っているはずだ。 これから私は、それら問題の山脈で我々が見出した奇跡についてここに書き遺そうと思う。 君の覚悟は、高く評価されている。 これを読む人間の多くは、我々の仕事を継ぐに値するだろう。 執行プロジェクト-U2は存在しない。 U2の業績報告も、人事記録も、名簿も、全て虚偽のものだ。 執行プロジェクト-U2には誰も存在していない。強いて言えば、私一人ぐらいのものだろう。 全て架空の、更に架空の機関。作られた、精巧なダミーだ。 何故そのようなことをしなければならなかったのか? 多くの予算と労力を注ぎ込んで、我々は何を隠そうとしたのか? その答えこそが█CP-684-JPである。 我々が並べた嘘はU2だけではない。この報告書のほぼ全てが、偽情報の鋳型に流して固めたようなものである。 端的に述べて、█CP-684-JPに対抗手段は無い。 █CP-684-JPはミーム的な認識災害の蓄積によって肉体的死をもたらすオブジェクトではない。 █CP-684-JPに対する調査の中期に判明した事柄だが、█CP-684-JPは「█」を人生の内で総計17628回認識したことをスイッチにして発現される小規模な現実改変現象である。 その際の現実改変現象の発生源は現在も尚不明とされているものの、現実保護泡内に保存したデータとの照合とヒューム値の計測実験から、この見方は相当に信頼性が高いものと言える。 よって、対抗ミームなど、█CP-684-JPに対しては一切無意味なのである。 被験者は肉体的な死を迎えるのではなく、確率や統計と言った不確実性に対する現実改変によって、被験者の死という結果へと誘導されるのである。 それ故に、被験者の死因はそれぞれ異なったものとなり、それが█CP-684-JPの発見を困難たらしめていた真の理由なのである。 「█」という文字、あるいは記号のどこにそのような現象を引き起こすメカニズムが潜んでいるのか。その謎の究明は、既に行われてはいない。 何故ならば、この事実は、発生の起源への探究心以上に、我々の大きな恐怖を駆り立てたからだ。 考えてみてもらいたい。アルファベットというものが発明され「█」という原始的な記号に行き着いてから現代までの、ひたすら長い間、この地球上の至る所で、ほぼ絶え間無く█CP-684-JPは現実改変を引き起こし続けていた。 その現象が、この現実に、これまでどれ程のダメージを負わせ続けていたか。 小規模な現実改変が起こる度に、僅かずつ、世界の理や摂理は歪められ、本来の秩序だったものから逸れてゆく。 それはまるで、人間に細い針を次々と刺し続け、何本目で死に至るかを観察する実験のように、少しずつ現実を破壊へと導いていた。 それこそ、世界そのものに対する「17628回目」を目指しているかのように、である。 そして実際に、ある時期から急激に、我々が確保し、収容し、保護すべき異常存在の報告数が増加した。 我々は、最早議論の余地無しと判断した。 █CP-684-JPに早急に対処しなければ、事態は人類の死のみに留まらないだろう。 我々は即座に、そして静かに行動し、多くの犠牲と隠匿の廃墟の上に現実を再建した。 具体的に言えば、我々は人類史から「█」を根絶することに成功したのである。 既存のプロトコルを数多く応用し、あらゆる記憶、記録、そして自然界から「█」を根絶やしにした。 そうしてから、我々は代わりのものをプレゼントした。 何の意味も持たない、無害で無作為な「S」という記号である。 新たな世界に似つかわしい、誰もが傷つかぬ文字。我々は、全てをやり直す事に成功した。 しかし、終わりでは無い。 言語というものはある種の普遍性、あるいは人間の根源的本質の表出である。 で、あるならば、我々は█CP-684-JPが「再発明」される可能性を否定できない。 だからこそ執行プロジェクト-U2が、そしてこの報告書が存在するのだ。 █CP-684-JPの再発明を可能な限り防ぎながらも、それが起こってしまった時、その現象が「█CP-684-JPである」と君たちが認識できるようにするために。 我々がどのような手段を用いて█CP-684-JPを根絶したのかについても、有事の際には明らかとなるよう、データベースのダミープログラムの裏に仕込んである。 そのために、我々はとある重要な情報をここに残さなければならない。 根絶された「█」は実際の所、この世界でただ二ヶ所にのみ存在が残されている。 一つはサイト-8100の第三地下機密収容倉庫に保管された、Dクラス職員によって書き遺された一枚の色紙に。 もう一つは、私の頭の中に。 私は常に頭の中で「█」を思い描く事で、「認識する回数」が進まぬように抑えている。 我々の仕事を引き継いで欲しい。 君はそのためにここにいる。 我々の作った世界で、新しい現実を守るのだ。 我々が存在した█CP財団は、最早存在しない。 君の仕事が始まる。       ようこそ、SCP財団へ。 ──O5-6
scp-685-jp
評価: +22+–x アイテム番号: SCP-685-JP オブジェクトクラス: Euclid SCP-685-JP 特別収容プロトコル: SCP-685-JPはサイト-81██の低脅威収容ロッカーにプラスチック製のケースに入った状態で収容してください。また、SCP-685-JPの接触及び運搬は女性職員のみが許可されています。もし、SCP-685-JP-2の出現を誘引する条件を有した職員がSCP-685-JPに接触した場合、その職員を監視カメラを設置した人型収容セルに隔離してください。SCP-685-JPに対する実験を行う場合、主任担当職員の許可を得た上で、Dクラス職員もしくは、前述の隔離した職員を用いて行ってください。 説明: SCP-685-JPはポラロイド社製のシートフィルム式インスタントカメラ1です。SCP-685-JPの外装が鉄で構成されている事以外に特筆する点は存在せず、通常のインスタントカメラと同様に使用できます。 SCP-685-JPの異常性は未婚の12歳以上の男性がSCP-685-JPに接触した際に発現します。人間がSCP-685-JPに接触してから█時間後に、SCP-685-JPは細かく振動すると同時に、SCP-685-JPの正面部に儲けられている排出口から一枚の写真(以降SCP-685-JP-1と呼称する)を排出します。排出された全てのSCP-685-JP-1には、ヒトもしくは、動物をモチーフにした人形が写し出されています。SCP-685-JP-1に写し出されている人形(以降被写体と呼称する)の種類は、マネキン、市松人形、ビスクドール、ぬいぐるみ、こけし、マトリョーシカ等██種類が確認されています。すべての被写体は、花嫁衣裳の着用、もしくは結婚式を連想させる塗装もしくは、装飾が施されています。 SCP-685-JP-1は排出されると同時に、SCP-685-JPに接触した人間(以降対象と呼称する)の眼前へ転移を開始します。転移はSCP-685-JP-1の上部から順に行われ、転移開始から約█分ほどで完了します。また、SCP-685-JP-1の転移中、対象はSCP-685-JP-1の転移が終了するまで一切の動作が不可能となります。 SCP-685-JP-1が出現してから約██分後に対象の周囲に存在するドア、窓、引き出し等開閉が可能なすべての物品から全長1.5mから██mほどの人形(以降SCP-685-JP-2と呼称する)が出現します。SCP-685-JP-2が出現する瞬間を観測する試みは、撮影機器の原因不明の故障及び観察者の失神により現在まで成功していません。SCP-685-JP-2はSCP-685-JP-1の被写体と共通の外見を有していますが、一部のSCP-685-JP-2は対象と比較して、自身の移動及び後述する捕獲に適した外見を有しています。また、すべてのSCP-685-JP-2は人間の20代前半と推測される女性の声を発する事が可能です。 SCP-685-JP-2は、対象を知覚すると好意的な発言を発しつつ、対象を捕獲する事を試みます。この時、SCP-685-JP-2が対象の捕獲が困難だと判断した場合、自身の一部もしくは、全身を変形させることで対象の捕獲もしくは、捕獲の妨害となる存在を排除します。SCP-685-JP-2が対象を捕獲するとSCP-685-JP-2は、対象を自身に密着させる形で拘束もしくは、自身の内部に収納した後にその場で対象と共に消失します。また、SCP-685-JP-2と共に対象が消失すると同時に、GPSは反応が消失し、通信機、撮影機器は外部との通信が不可能となります。消失したSCP-685-JP-2及び対象の行方は現在不明です。 SCP-685-JPは200█年12月██日に██県██市で「押入れから現れた巨大な人形が息子を誘拐した」との通報を財団が傍受した事で存在が発覚、収容されました。収容時のインタビューで、対象と推測される██ ██氏(当時18歳)の父親は、SCP-685-JPの入手先を「息子がリサイクルショップでSCP-685-JPを購入した」と証言しました。しかし、財団の調査で青年は当日、リサイクルショップに来店していない事が判明しています。インタビュー後、██氏の父親及び警察関係者にAクラス記録処理を施した後に、カバーストーリー「家出」が適用されました。 現在、SCP-685-JPの販売元及び未収容のSCP-685-JPの有無に対する調査が継続されています。 + 出現したSCP-685-JP-1及びSCP-685-JP-2の抜粋 - 表示を格納する   SCP-685-JP-1の内容 及び被写体の特徴 SCP-685-JP-2 の特徴 対象 特記事項 SCP-685-JP-1-a 日本家屋の一室に安置された白無垢を着用した日本人女性を模したビスクドール 全長2.4m程の 白無垢を着用した女性 ██ ██ 財団がSCP-685-JPの収容と同時に発見した最初のSCP-685-JP-1。尚、SCP-685-JP-2は██氏のインタビュー内でしか存在を確認していない SCP-685-JP-1-b 陳列棚に並べられた市松人形とリボンが結ばれたナイフ 刃渡り60cmほどのナイフ2を所持した全長2mの市松人形。 エージェント██3 財団が初めてSCP-685-JP-2の存在を確認できたSCP-685-JP-1である SCP-685-JP-1-c 識別不明の列車の車内とベールを被ったこけし。胴体部は白く塗装されている 全長█mのこけし。胴体部には█本のリボンが結ばれていた4 D-1256 財団の実験によって、初めてSCP-685-JPの活性化条件が判明した SCP-685-JP-1-d [編集済]と推測される部屋に並べられた二体のウェディングドレスを着用したマネキン 全長1.7mのウェディングドレスを着用した二体のマネキン。 D-1258 複数のSCP-685-JP-2の出現が確認された初めてのケースである SCP-685-JP-1-g 段ボールの入った胴体部にブーケのデザインの刺繍が施された黒猫のぬいぐるみ 全長██m5の黒猫のぬいぐるみ D-1260 SCP-685-JP-2の出現時に、実験チャンバーの壁を破壊して。これにより、実験手順の一部が改訂された SCP-685-JP-1-k 艦橋がビスクドールの頭部に置換された白色のXIC型潜水艦6の模型 全長2mの女性の手が生えたXIC型潜水艦の艦首 D-1261 SCP-685-JP-2の出現時に、大量の水が実験チャンバーの侵入口から流入した7。 補遺: 20██年1月██日、SCP-685-JPが保管されているロッカー内で、一枚のA4サイズの紙を職員が発見しました。紙の両面には、以下の文面が印刷されていました。(詳細は文章685-JP-01及び 文章685-JP-02を参照) 文章685-JP-01 + 文章685-JP-01を閲覧する - 文章685-JP-01の閲覧を終了する 20██年12月分の縁結機使用明細 使用者:[解読不能]8 擬態形状:カメラ 使用回数:1██回 送信エラー:██回 婚約成立数:██組 矯正による婚約成立数:██組 要処分者数:█2人 定期アンケート結果は裏面に記載されています 縁結相手の選定の参考にしてください 文章685-JP-02 +文章685-JP-02を閲覧する - 文章685-JP-02を閲覧する この形像なら、自壊するまで一緒に駆動したい!!20経年以上の人形、1████体の理想縁結相手ベスト5 女形 1位:人間 2位:ぬいぐるみ 3位:五月人形 4位:招き猫 5位:藁人形 男形 1位:人間 2位:市松人形 3位:木彫りのクマ 4位:マネキン 5位:ラブドール9 最近、世間を騒がせている形像である人間が今月も理想の縁結相手ランキング、男女共に第1位に輝きました また、人間が存在する第二現実への渡航を希望する人形も先月の約10倍に増えています しかし、一部の工場関係型は、人間との縁結及びそれによる新規製造による設計図移入により、従来の人形の製造率が低下し、最終的には現人形は廃版となる意見を提示しています。 これは一部の型遅れのオンボロ達の主張であり、私達や第二現実の協力者達は人間との縁結が私達人形の幸せにつながると確信しています Footnotes 1. 一般的にはポラロイドカメラと呼称される 2. SCP-685-JP-1に撮影されたナイフと同じ物 3. SCP-685-JPの初期収容時にSCP-685-JPに接触していた 4. リボンを用いて対象を捕獲する様子が観察されている 5. 記録されているSCP-685-JP-2の中では最大級である 6. 第二次世界大戦期に建造されたドイツ海軍の潜水艦 7. 実験終了後、チャンバー内に残った水を分析した結果、塩化ナトリウムの水溶液であることが判明しました 8. 現在までに存在が確認されていない漢字らしき文字が記載されている 9. 男性の擬似性交、愛玩、観賞、写真撮影等に使用されるシリコンドールの一種
scp-686-jp
評価: +168+–x SCP-686-JP-011 アイテム番号: SCP-686-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: 財団のWebクローラを運用し、SCP-686-JPと類似の模様、画像や作図法等をネット上から検閲します。出版された書物にSCP-686-JPに言及しているものが無いか確認してください。SCP-686-JP-01は財団の標準小型アイテム収容ロッカー内に保管してください。SCP-686-JPを用いた実験はセキュリティクリアランスレベル3以上の担当研究員2人以上の許可を得て行ってください。実験後は担当研究員以外にSCP-686-JPを記憶する職員がいないよう適切に記憶処理や終了処置を行ってください。 説明: SCP-686-JPは3本の直線、[編集済]本の曲線及び3個の円と[編集済]からなる線対象な図形です。SCP-686-JPの異常性は図形が対象の固形物に描画された際に発生します。SCP-686-JPが描画された対象と描画された図形そのものは、描画した本人以外には破壊されなくなります。SCP-686-JPを描画した本人は、対象の材質に関わらず器具を使わない方法で対象の破壊が可能となります。 SCP-686-JP-01は焼印の直径8cm、柄の長さ102cmの焼きごてです。SCP-686-JP-01は桐箱に収められた状態で、19██/██/██に[データ削除済]に位置する蔵屋敷跡発掘調査中に発見されました。同梱されていた和紙の年代測定からSCP-686-JP-01は1800年頃には作成されていたと推測されています。SCP-686-JP-01を十分に熱するとSCP-686-JPを焼印として描画出来ます。発見当初はSCP-686-JP-01が異常性の原因と思われていましたが、実験を経て図形そのものに異常性が存在することが判明し、収容プロトコルが追加・更新されました。 現在、SCP-686-JPを危険度の高い軍事作戦に従事する機動部隊隊員の身体と各装備に描画し、損耗を軽減する計画が進行中です。計画は無期限に凍結されました。 + 実験記録の抜粋を表示 - 実験記録の抜粋を隠す 実験記録686-JP-1 焼印の性質確認 - 日付19██/██/██ 対象: 木製の薄い板 目的: 付与される異常性質を確認する。 実施内容: ███研究員がSCP-686-JP-01を熱し、板に焼印を付与する。その後、幾つかの手段で木の板の破壊を試みる。 結果: 銃撃、切断、強酸による溶解等複数の方法で破壊を試みたが木の板及び焼印は無傷であった。一通りの方法を試し終えた後、███研究員が木の板を回収しようと触れたところ、木の板を図形ごと「破る」事に成功した。 分析: 聞いていた通りの異常性を確認できた。███研究員は異常性が付与された木の板を破壊出来た事から、「破壊できない」異常の付与には条件があるようだ。 対象: 黒檀の分厚い板 目的: 異常性質が付与される条件を確定する。 実施内容: D-1654とD-1655は一卵性双生児である。D-1655がSCP-686-JP-01を熱し、板に焼印を付与する。その後、以下マトリクスに記載した全てのパターンでオブジェクトが破壊可能かを確認する。 実施者\破壊方法 器具有 素手 ███研究員 ① ② D-1654 ③ ④ D-1655 ⑤ ⑥ 結果: ⑥の場合(D-1655による素手での破壊)のみ破壊可能だった。 分析: 焼印を付与した本人が、素手でのみ対象を破壊することが可能であると推測出来る。D-1655は黒檀の分厚い板を易々と引き裂く事が出来た。焼印を付与した本人は、付与された対象の破壊が容易になるような別の異常性を持つと考えられる。 実験記録686-JP-6 図形自体の異常性の確認 - 日付19██/██/██ 対象: 木製の薄い板 目的: 焼印と同様の図形に異常性は発現するかを確認する。 実施内容: ███研究員が鉛筆での作図によりSCP-686-JPを対象に描画する。その後、対象の破壊耐性を確認する。 結果: 対象及びSCP-686-JPは███研究員の素手による破壊以外のいかなる手段でも破壊することが出来なかった。 分析: 焼印と同様の異常が発現した。異常性は焼きごてではなく図形そのものにある。SCP-686-JPの指定を焼きごてから図形に変更し、焼きごてをSCP-686-JP-01と指定するよう資料及び収容プロトコルを更新する。わざわざ焼印をつける必要が無くなったため、人体にも容易にSCP-686-JPを作図することが可能になった。 実験記録686-JP-8 作図者の終了時の異常性の確認 - 日付19██/██/██ 対象: 木製の薄い板 目的: 作図者の終了後、物品の異常性質を確認する。 実施内容: D-1683が鉛筆での作図によりSCP-686-JPを対象に描画する。その後、D-1683を終了し、対象の破壊耐性を確認する。 結果: D-1683の終了と同時に対象は炎上し、痕跡を残さず消失した。 分析: 描画者の終了に伴い破壊耐性のある物体は焼失する為、物体が永久に残り続けることは無い。問題は描画者が破壊できず終了できない場合だ。人体に対するSCP-686-JPの描画実験を実施する。 実験記録686-JP-11 人体へのSCP-686-JPの描画 - 日付19██/██/██ 対象: D-1684 目的: 作図後、人体の異常性質を確認する。 実施内容: ███研究員がボディペイントペンでの作図によりSCP-686-JPをD-1684に描画する。その後、対象の破壊耐性を確認する。 結果: D-1684は通常致命的な衝撃や酸、毒ガス等に耐えた。また、D-1684自身での指の切断や図形の破壊、追加の直線を描画することによる図形の変更は不可能だった。 補遺: D-1684は実験後、SCP-686-JPの図形の消去を拒否して脱走しようとした為、実験室に備え付けられた粘着剤の射撃により対象を拘束後、███研究員が図形を消去した。対象は実験後終了された。 分析: 人体に対しても同様に働くようだ。危険性の高い軍事作戦での利用を本格的に視野に入れて今後の実験内容を考案する。また、Dクラスに描画させる際はSCP-686-JPの異常特性に気付かれると自身に描画して脱走する可能性がある為、今後の実験では特に気を付ける事。 実験記録686-JP-13 SCP-686-JPの老衰に与える影響 - 日付19██/██/██ 対象: D-1693 目的: SCP-686-JPが作図された人間は老衰に抵抗するかどうかを確認する。 実施内容: ███研究員がボディペイントペンでの作図によりSCP-686-JPをD-1693を描画する。D-1693は98歳の男性であり、各種の症状から死期が近いと推測されている。 結果: D-1693は通常致命的な衝撃や酸、毒ガス等に耐えた。4ヶ月後にD-1693は老衰により死亡し、同時に遺体が炎上・消失した。 分析: SCP-686-JPによる破壊耐性は老衰を防ぐものでは無いらしい。寿命を延ばすことは出来無さそうだが、その方が運用に当たって倫理的な問題を少なくできるだろう。 実験記録686-JP-16 作図者自身へのSCP-686-JPの描画 - 日付19██/██/██ 対象: D-1685 目的: 作図後、人体の異常性質を確認する。 実施内容: D-1685は右腕以外を拘束された状態でボディペイントペンにより腹部にSCP-686-JPを作図する。その後、対象の破壊耐性を確認する。 結果: D-1685は通常致命的な衝撃や酸、毒ガス等に耐えた。また、D-1685は自身の腹部を一部図形ごとちぎり取る事が可能だった。これにより異常性が消滅後、D-1685は問題なく終了された。 分析: 作図者本人による異常性の付与が可能であることが確かめられたことは大きな成果だ。他人が図形を記載してしまうと、作図者本人が意図せず死亡した場合に部隊が全滅することがあり得るためだ。図形を消去する際は自身の肉体を傷つけないよう注意が必要だが、損耗を防ぎ[編集済]のような悲劇を二度と繰り返させないためにも、早急にこのオブジェクトの活用方法を策定すべきだ。 補遺686-JP-01: 実験結果を元に、危険度の高い任務に従事する機動部隊隊員に対して試験的にSCP-686-JPを運用する申請が19██/██/██付で███博士から提出され、受理されました。拉致等によるSCP-686-JPの拡散を防ぐ為、そのような可能性が少ない任務に使用を限定し、任務終了後は自主的に図形を削除して担当者による記憶処理を受ける事、万一拉致された場合には救出を待たず自己終了する事が隊員に求められます。 補遺686-JP-02: 19██/██/██、[データ削除済]の施設襲撃作戦にて、機動部隊み-5("塩胡椒")の隊員10名が試験的にSCP-686-JPを初めて運用しました。作戦は成功し、隊員は全員無傷で生還しました。隊員の装備類にもSCP-686-JPを付与できるよう申請が提出され、受理されました。 補遺686-JP-07: 19██/██/██、[データ削除済]の強奪作戦にて、機動部隊へ-7("とぐろ巻き")の隊員12名がSCP-686-JPを運用しました。作戦は成功し、隊員は全員無傷で生還しました。これはSCP-686-JPを運用した作戦において6例目の成功となります。SCP-686-JPの機動部隊内での汎用的な運用ルール作成が進められています。SCP-686-JPの機動部隊内での汎用的な運用ルール作成は現在凍結されています。尚、当作戦はSCP-686-JPが運用された最後の作戦です。 + 追加情報の表示にはレベル4セキュリティクリアランスが必要です。 - 追加情報を隠す 以下は補遺686-07の後に███博士によって非公式に行われた追加実験記録です。 追加実験記録686-JP-999 SCP-686-JP-01の異常性質の確認 - 日付19██/██/██ 対象: SCP-686-JP-01 目的: SCP-686-JP-01の破壊耐性を確認する。 実施内容: SCP-686-JP-01に対して銃撃、切断、強酸による溶解等複数の方法で破壊を試みる。 結果: SCP-686-JP-01は無傷。 分析: SCP-686-JPは線対称であるため、SCP-686-JP-01は印影、印面のどちらもSCP-686-JPと一致することになる。破壊耐性を持つこと自体は想定内だが、ならば何故SCP-686-JP-01が現存する? 追加実験記録686-JP-999 SCP-686-JP-01の模倣 - 日付19██/██/██ 対象: D-1790 目的: SCP-686-JPが印影、印面となる物体は作成者の終了後に消失されないことを確認する。 実施内容: 市販の紙粘土でSCP-686-JPが印影、印面となる物体をD-1790に作成させる。物体の破壊耐性を確認後、D-1790を終了する。 結果: 物体は異常性質を持ち、いかなる破壊も受け付けなかった。D-1790の終了後、物体は炎上し、痕跡を残さず消失した。 分析: 「印鑑」側もこれまでの物体と同様に作図者の終了時に消失するようだ。では、1800年から現在まで残り続けたSCP-686-JP-01は何故消失していない?SCP-686-JPは作図者の寿命を延ばさない。SCP-686-JP-01の作成者は、まだ生きているのか? 事件記録686-JP-01: 上記追加実験が実施された数日後の19██/██/██ ██:██頃、SCP-686-JPの機動部隊での試験運用に参加経験のあった機動部隊み-5("塩胡椒")、機動部隊[編集済]、機動部隊[編集済]、機動部隊[編集済]、機動部隊[編集済]、機動部隊へ-7("とぐろ巻き")の隊員全員、合計[データ削除済]名が同時に肉体に致命傷を負い、炎上後に消失しました。死亡した隊員には、当日自身にSCP-686-JPを描画していなかった隊員を多数含みます。また、実験の為に残されていたSCP-686-JPが描画されている、またはされたことのあるアイテム十数点も同時に炎上、消失しました。証言により、隊員達の額にSCP-686-JPの図形が浮かび上がった後、図形からの大量出血や図形部分の急激な膨張と頭部の破裂、図形部分が円筒型にくり抜かれる、[データ削除済]等の異常原因によって機動部隊員が死亡した事が明らかになりました。SCP-686-JPを以前に描画されていた人や物体が全て対象になったと推測されますが、███研究員と███博士は自身へのSCP-686-JPの描画を行っておらず、無事でした。 その後事情聴取の為隔離されていた███研究員2の個室内に人皮の封筒と手紙が出現しました。手紙の内容は以下の通りです。 愛する子肉 ███よ ここ一年間は味気のない木の板ばかりが送られ、私は子肉らの忠誠を疑っていました。 しかし大供祭での供肉には大変満足しました。 我が内での平穏と栄養、[編集済]を確約し、大肉地師の称号を与えます。 大肉天師を目指し励むように。次の大供祭にも期待しています。 追伸:供肉に私のしるしを刻むときはなるべく焼きごてを使いなさい。 [編集済]より ███と共に これを受けてSCP-686-JPを機動部隊内で運用する計画は無期限に凍結されました。 計画に関わった関係者は記憶処理を実施後に配置を変更し、SCP-686-JPの担当者は更新されました。 ███博士及び███研究員への外部団体からの接触は全て監視され、[編集済]に関連する宗教、人物の調査が進められています。 Footnotes 1. SCP-686-JPが判別出来ないよう真横から撮影した。 2. 実験に際し最も多くのSCP-686-JPを作図していました
scp-687-jp
評価: +155+–x 通販アプリに掲載されていたSCP-687-JPの画像 アイテム番号: SCP-687-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: 現在SCP-687-JPはサイト-81██の低脅威度オブジェクト収容ロッカーに保管されています。SCP-687-JPを使用した実験を行う際はカント計数器を設置し、ヒューム値の変動が見られた場合はその数値を記録してください。また、実験によるスタッフの負傷に備え、実験SCP-687-JP-1の結果に基づき選出された専門医療チームを配置してください。 説明: SCP-687-JPは、ケミカルウォッシュ加工の施された男性用のジーンズパンツです。SCP-687-JPの材質や耐久性に関して通常のジーンズパンツとの差異は確認されませんでした。対象の裏地には製造元や原材料、洗濯方法の記載されたタグの上に『しばしば、とんでもない悲劇がかえって笑いの精神を刺激してくれる』1と記されたタグが重ねられています。 SCP-687-JPの異常性は、対象を着用したうえで後述する条件が発生した際に確認されます。SCP-687-JPの着用者が故意であるか否かに関わらず一般的に失敗とされるものやそれに類似した行動を引き起こした場合、着用者を中心としておよそ5mの範囲にテレビ番組等でよく使用されるスタッフの笑いに似た出所不明の笑い声(以降「録音笑い」と表記)が発生します。録音笑いが発生した状態で着用者を視認した人間は例え人命に関わるような深刻な状況だったとしても概ねそれらを面白がるような反応を示します。 また、発生した録音笑いに対して周囲の人物が違和感を感じることは無く、視認者への影響は人種や年齢、性格、過去の経験によってある程度左右されることも確認されました。特に過去いじめ行為やモラルハラスメント等を受けた経験のある人物や、強い共感性羞恥を感じる人物は録音笑いに対して影響を殆ど受けないことが実験SCP-687-JP-1の結果から判明しています。 SCP-687-JPは、██博士が対象をフリーマーケット型通販アプリにて匿名の出品者から購入し実際に着用したことで異常性が発生、判明し収容に至りました。現在SCP-687-JPの出品者を特定中です。しました。(追記及びインタビュー記録SCP-687-JP参照) + SCP-687-JP実験記録抜粋 - 閉じる 実験記録SCP-687-JP-1 日時: 20██/10/09 被験者: ██博士 実施方法: ██博士にSCP-687-JPを着用した状態で通常の業務を行わせる。 結果: SCP-687-JP着用から約50分後、██博士が脚立に乗った状態で書類棚の整理を始めたところ脚立の固定具が破損して転倒。録音笑いが周囲に発生し、██博士の近辺に居た職員が一斉に笑い出した。唯一███研究助手のみ笑うことなく██博士を介抱しており、他の職員らに対して「非常に不快である」と述べた。また、異常性が発生した場所を映す監視カメラを後から確認したところ録音笑いの記録はされていなかった。 分析: 実験後の調査で███研究助手が中学生時代に同級生からいじめ行為を受けていたことが判明した。自己申告によりそういった経験のある職員を選出し、実験中に発生した負傷事故に対応の出来る医療チームを特別に編成出来るかもしれない。 -██博士 実験記録SCP-687-JP-4 日時: 20██/10/14 被験者: █研究員 実施方法: SCP-687-JPを着用した█研究員(小柄な女性の為、ベルトの他に裾を折り畳むことで着丈を調整してある)を設置物の無い部屋の中央にセットした椅子に座らせた状態で待機させ、その周囲に専門医療チームを含めた複数人の職員を配置する。 結果: SCP-687-JP着用開始から約2時間後、突然█研究員が急激な下痢の症状を訴える。実験を中断し█研究員がトイレに向かおうと歩き出した瞬間、折り畳んでいたSCP-687-JPの裾が緩んでいたことにより足を取られ転倒。その拍子に[削除済]、異常性が発生した。 分析: 実験直前までの█研究員の体調は万全であったにも関わらずこのような事態が発生したことから、一定時間異常性のトリガーとなる現象が起こらなかった場合SCP-687-JP自身が現実改変により、違和感の無い程度に着用者の「失敗」を誘発している可能性がある。 -██博士 この実験後█研究員は自身のサイト異動願を提出していましたが、現在その必要性が無いものとして処理されています。実験により█研究員が受けた精神的苦痛に関しては本人にAクラス記憶処理を行うことで対処しました。 実験記録SCP-687-JP-5 日時: 20██/10/16 被験者: D-26841 実施方法: D-26841にSCP-687-JPを着用しての就寝を指示した上で独房にカント計数機を設置し、2人の職員がそれぞれ計数機の数値とD-26841の様子を観察する。 結果: SCP-687-JP着用から約3時間30分後、カント計数機がヒューム値の変動(D-26841のベッド上1.38、独房内0.82)を確認。直後にD-26841が大きく寝返りを打った勢いでベッドから落下して目を覚まし、混乱した様子で辺りを見回していたところ異常性が発生した。D-26841は自身がベッドから落下したことについて「自分は昔から寝相が良いと言われていたし、ベッドから落ちるなんて生まれて初めてだ」と述べている。 分析: 実際にヒューム値が変動したことから、SCP-687-JPが異常性の為にごく僅かな現実改変を引き起こしたことは確定的である。これらの改変は現実を大きく捻じ曲げる危険性の高いものとは言い難いが、今後の実験にはヒューム値の計測を含めることを提案する。 -██博士 追記: SCP-687-JPを出品した人物の特定が完了しました。出品者はお笑い芸人[編集済]氏(本名██ ██)の妻であり、██氏本人は番組撮影中の事故による負傷で現在入院中です。また、██氏はデビュー当時から仕事中SCP-687-JPを決まって着用していたことが確認されました。 + インタビュー記録SCP-687-JP - 閉じる インタビュー記録SCP-687-JP 日時: 20██/10/20 対象: ██氏 インタビュアー: █博士 付記: 事故以来██氏は心的外傷後ストレス障害を発症した兆候が見られることから、██氏にはカウンセリングであると説明した上でインタビューを行うこととする。また、病院関係者に対してはカバーストーリー「非常勤のカウンセラー」を適用することで対応を行った。 <録音開始> █博士: それでは、これから貴方のことについて幾つか質問をさせて頂きます。 ██氏: ……どうも。 █博士: まず、こちらのジーンズパンツは貴方が所有していたもので間違いないでしょうか?[SCP-687-JPの写真を見せる] ██氏: 俺が初めてオーディションで採用された時に穿いていたから、験担ぎでずっと使ってたズボンですよ。それ穿いてるうちに段々オイシイこともよく起こるようになって、たまにちょっとした怪我することもあるけど笑いは取れるしある意味相方みたいな感じだったんです。もう使わないから処分してくれと嫁に言ったんですけど、何でそんなことを? █博士: 貴方が仕事道具として愛用されているものでしたので。ところでこちらは何処で購入なさったものか覚えてらっしゃいますか。 ██氏: 芸人になるって決めた頃に[削除済]で買ったんです。そこで服を買うと自分の好きな言葉を書いたタグを付けてくれるサービスやってるっていうんで、昔から座右の銘みたいな感じにしてた諺……名言?を入れてもらって。 █博士: では、それを手放された理由を可能な範囲でお聞きしたいのですが、宜しいでしょうか? ██氏: あぁ、それがですね……。俺、もう何日もしないうちに退院出来るんですけど、そしたら芸人の仕事を辞めようと思っているんです。 █博士: 成る程。そうお考えになった原因は撮影現場での事故ということでしょうか。 ██氏: [表情が曇る]いや、事故が原因といえばそうなんですけどね……。あの時番組スタジオで、セットの背景に付いてたパネルが俺の方に倒れて来たんです。……それで、最初は「あぁこれドッキリか」って思ってリアクション取ろうとしたんですけど、物凄く体が痛くて全然動けなくて……。 █博士: その時スタッフや他の出演者はどんな対応を? ██氏: ……皆、笑ってました。 俺が何とか声を絞り出して只事じゃないことを必死で伝えてたのに、MCのアナウンサーもカメラマンも芸人仲間も……暫くの間みんな笑ってばかりで誰も助けてくれなくて。結局あれはドッキリの仕掛けじゃなくて事故だったとマネージャーが言っていました。 [体が小刻みに震え始める]それ以来……病室の外から聞こえてくるちょっとした笑い声にも反応してしまって……。そんな筈無いと分かってても、自分が笑われてると思うと……怖くて仕方ないんです。 █博士: 分かりました。今日はこれで質問を終了させて頂きます。ご協力ありがとうございました。 ██氏: あの、これって治せるんですか……? ちょっと笑いかけられただけで……本当に、医師の先生や看護師さんが笑顔で話しかけてくれることすら物凄く怖いんです。今までずっと笑ってもらうことが生き甲斐だと思ってたのに、こんなのおかしいですよね。 █博士: 心配なさらずとも、最善は尽くします。 <録音終了> 補記: ██氏がSCP-687-JPを購入した店舗である[削除済]を調査したところ、販売されている衣服には同様の異常性が確認されませんでした。SCP-687-JPの異常性は██氏が芸人としての活動を続けていくうちに生じたものであると推定されます。 -█博士 + 事案SCP-687-JP - 閉じる 事案SCP-687-JP 日時: 20██/10/24 報告: インタビューの翌日に██氏が病院内の階段から転落死していたことが判明しました。当時病室に居た看護師によると「██氏が立ち上がった拍子に面会者用として備え付けられていたパイプ椅子を倒してしまったことが非常に面白く感じた。つい笑い声を上げてしまい、その様子を見た██氏はフラッシュバックによるものと見られる錯乱状態に陥っていた。その様子も愉快に思い腹を抱えて笑っている内に、病室を飛び出してそのまま逃げるように走り去って行ってしまった」とのことです。また、落下の現場を数人の医師が目撃しており、その内1人にインタビューした結果「階段を上がろうとしたら酷く怯えるような叫び声と共に██氏が階段上から転落してきた。転落直後の彼はまだ意識があったため呻き声を上げながら苦痛の表情を浮かべていて、早急に対応しようと近くで見ていた医師数人に協力を求めたが、その医師達は██氏に対して大笑いしながら面白がる素振りを見せておりとても救助活動が出来る状態では無かった」と述べていました。 このことから、SCP-687-JPを長期間に渡って着用していた人物が失敗とされる行為を起こした際、SCP-687-JP着用の有無に関わらず周囲に録音笑いを発生させている可能性が指摘され、今後も調査を進めていく方針となっています。 Footnotes 1. 喜劇王チャールズ・チャップリンの格言
scp-688-jp
評価: +47+–x SCP-688-JPの異常性の影響を受けた写真。SCP-688-JP-1が写真右下に写っているのが解る。加工により異常性は喪失済み。 アイテム番号: SCP-688-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-688-JP発生地域はカバーストーリー「自然環境保全地域」に基づき高さ2mの有刺鉄線付きの金網柵によって封鎖されています。SCP-688-JP発生地域内での実験を行なう際は必ずDクラス職員による写真撮影を行い、親族及び配偶者が生存していない研究員のみが実験に参加します。 SCP-688-JP発生地域周辺は常に最低でも4名の警備員によって監視され、撮影機器を所持した部外者の接近が確認された場合は早急に対象を拘束し、SCP-688-JPによる影響の対象外の研究員によって撮影された写真の調査を行います。SCP-688-JPの発生が確認された場合は該当する写真を全て消去し、その後クラスA記憶処置を行なった上で周辺地域から退去させてください。 説明: SCP-688-JPは██県██市内の██████公園を中心とする約500m²の土地で発生する異常現象です。SCP-688-JPは土地内部で写真撮影を行なった際に発現します。土地内部で撮影された写真には必ず本来撮影された場所には存在しないベンチ、及びそれに座る3人の人物(以下、SCP-688-JP-1と総称して記載)が映りこみます。人物はそれぞれ20代の男性、20代の女性、幼児のように見えます。ですが、撮影された写真では全て背を向けた状態の為正確な特定には至っていません。詳細は補遺を参照して下さい。 SCP-688-JPの異常性の影響を受けた写真を人間(以下、対象者と記載)が視認した場合、対象者はSCP-688-JPが発生した写真を全て破壊します。破損又は加工された状態のSCP-688-JPが発生した写真は異常性を喪失し、この破壊行為について対象者にインタビューを行ったところ、全ての対象者が「あの写真の中の人達が妬ましかった」と主張しました。 写真を破壊した後、対象者の親族又は配偶者が生存している場合、対象者は可能な限り多くの親族及び配偶者を自身の家に連れ込み、監禁します。この時、自身の家に連れ込む事が困難な場合は拉致等の暴力的な手段を用いる事が確認されています。監禁に成功した後、対象者は監禁した相手に対しワイヤーや縄等によって拘束する、先端の鋭利な棒1を作成し突き刺す、[削除済み]といった行為を行ないます。 SCP-688-JPは██県で起きた監禁事件の調査中に確認されました。監禁事件を起こした男性の友人の「██████公園で風景写真を撮影した直後に██2の様子がおかしくなり、自分で撮った写真を引き裂いていた」という証言から公園の調査が行なわれ、警察内部に潜入していたエージェントによりその異常性が明らかになりました。関係者にはクラスA記憶処置を行い、監禁事件に関してはカバーストーリー「無理心中未遂」を流布しました。財団の調査の結果、対象者となった人物が引き起こしたとされる事例は██件確認されています。 インタビュー記録688-JP-1 日付19██/██/██ 対象: ██ ██(SCP-688-JPによって対象者となった男性) インタビュアー: エージェント・岸田 <録音開始> エージェント・岸田: ではインタビューを開始します。██さん、あなたがあの公園で写真を撮影した時の事について詳しく話してもらえますか? ██ ██: ……はい。昔から風景写真を撮るのが好きで、あの時は同じ趣味の友人に誘われてあの場所で写真を撮ったんですが…写真の中にあの人達が写ってたんです。撮る直前までは誰もいなかったはずなのに。それで、写真の中のあの人達を見ていたら、羨ましくなって……。 エージェント・岸田: 羨ましい? ██ ██: はい。今まで私は家族の為に尽くしてきました。妻もそれを理解してくれて、███3も特にわがままも言わずに勉強を頑張って……自分達みたいな家庭が理想的なんだろう、って思ってたんです。あの人達を見るまでは。 エージェント・岸田: 続けてください。 ██ ██: あの人達を見た瞬間、自分がどれだけ馬鹿だったか思い知りました。私と娘ですら血が繋がっているだけの赤の他人なのに、妻はその血すら私と何ら関係が無いんです!娘も妻もいつ私から離れていくか解らないと思うと怖くてたまりませんでした。それに比べて、あの人達はそんな事を考える必要が無いのを良い事に私に見せ付けるように……だから、せめて写真の中だけでもあの家族を引き裂いてやろうと思ったんです。 エージェント・岸田: 家族……何故あの写真に写っていたのが家族だと解ったんですか? ██ ██: 見れば解るじゃないですか。家族でもなければあんなにぴったり合わさるなんてありえませんよ。絶対に離れないあの家族のようなつながりは私達には無いんです。……もういいでしょう?早く家に帰して下さい!あの家族に少しでも近づきたいんですよ。その為に接着剤とか縫合糸とか、使えそうな物を片っ端から集めたんです!お願いします……。 [重要度が低いため割愛] <録音終了> 補遺: SCP-688-JP発生地域での実験中、SCP-688-JP-1の前面を写した写真の撮影に成功しました。撮影されたSCP-688-JP-1の身体は3人の上腹部から下腹部にかけて結合しており、全員が前を向いた状態で笑顔を浮かべていました。現在のところSCP-688-JP-1の身元の特定には至っていません。 Footnotes 1. この時作成する棒の長さは監禁した人数に比例し、監禁した人数が多い程長い棒を作成する傾向にあります。 2. 監禁事件を起こした男性の名前 3. ██ ██の実娘の名前
scp-689-jp
評価: +30+–x アイテム番号: SCP-689-JP オブジェクトクラス: Keter 特別収容プロトコル: SCP-689-JPは縦に9基ずつ、横に9基ずつ配置された計81基のコンテナ群の中央のコンテナに収容し、Dクラス職員を交代制で入室させて常時内部に誰かが待機している状態を維持してください。入室者を交代させる際は、必ず入室者が先に部屋に入り、退室者はその後に部屋を出る方式を厳守させてください。SCP-689-JPは強力接着剤で固定し、振動や接触といった外的要因で動くことのないようにしてください。その他のコンテナは不必要な入室を防ぐため個別に施錠してください。 収容開始日から30日周期で、周囲80室のどこかのコンテナに別途Dクラス職員を派遣し、入退室を行わせてください。(201█/██/██収容実験中の事件記録1を参照してください。)入退室を行うコンテナはどこでも構いませんが、不測の事態を防止するため、30日前と同じコンテナを選択することは避けてください。 収容違反が発生した場合、速やかに適切な捜索を行ってください。SCP-689-JPを発見したら、SCP-689-JPの向きを都合のいい方角へ向け、外に隣室として、トラックで輸送可能な人が入れる大きさのコンテナを増設し、SCP-689-JPをコンテナへ誘導してください。誘導が完了したら、24時間以内にコンテナに職員を1人入室させ、収容地域まで輸送し、SCP-689-JPのあるコンテナが中央の位置に来るように周囲に別のコンテナを配置して9基 × 9基のコンテナ群を設けてください。 収容違反による被害の発生した地域の民間人には、Aクラス記憶処理を施し、別途マニュアルの「SCP-689-JP脱走時に想定される被害と対策」の頁を参照して適当なカバーストーリーを流布してください。 説明: SCP-689-JPは将棋で使われる「歩兵」の駒の外見をしています。材質はツゲで、文字は漆で書かれています。その他に特別な素材は使用されていません。 SCP-689-JPは、30日以内に、SCP-689-JPが存在する部屋を除いた周囲80室以内の、最低でも1人が入れる“部屋”と呼べる空間に人の入室が1度でもあれば、翌日SCP-689-JPの向いている方向に1部屋分を瞬時に移動します。この“部屋”の定義は、“扉の有無に関わらず、(リビング、バスルームなど)概念的な区切りがあり、屋根のある空間”であると見られ、廊下などの通路も当てはまるようです。 SCP-689-JPの移動を妨害する方法は現在確立されておらず、密室状態、固定状態からでも移動することが確認されています。また、これまでSCP-689-JPが移動によって屋外に現れたところは1度も確認されていません。 この移動には高さの制限がないように思われます。例として1階建ての家Aに存在するSCP-689-JPが正面の2階建ての家Bに移動した場合、家Bの1階に出現するとは限らず、2階に出現する可能性もあります。そのため、マンションやビルなどに入った場合、何階に出現しているかの予測ができません。 SCP-689-JPの移動先は、必ずSCP-689-JPが向いている方向の最寄りの“部屋”と呼べる場所で、距離は問いません。また、移動先は建築物に限らず、普通自動車や地下鉄の車両、航空機といった乗り物も“部屋”と見なされ、SCP-689-JPの移動対象になります。もし移動先の部屋の中に先客がいた場合、先客全員が原因不明の斬撃・刺突による負傷を受け、最悪の場合死亡します。この斬撃・刺突による攻撃は人間のみを対象としますが、自立歩行のできない小さな子供、寝たきりの重病人、身体に重度の障害のある人間は攻撃されないという事例が確認されており、SCP-689-JPの攻撃は対象の活動能力を奪う目的があると考えられます。 SCP-689-JPのある部屋に後から誰かが入室した場合、SCP-689-JPは活動を停止します。この活動停止状態は入室者1人以上を維持してさえいれば、内部の人間が交代しても継続されます。ただし、入室者が退出するなどして部屋が不在となった際には即座に活動を再開します。入室者の退室まで1日以上掛かり、かつその間周囲80室以内に人の入室があった場合、SCP-689-JPは不動だった日数分を1部屋ずつ瞬時に移動します。 また、SCP-689-JPの裏面には「と」の文字が見られ、何らかの条件でSCP-689-JPが裏返る可能性を示唆していると考えられていますが、裏返る条件については現在のところ不明です。 補遺: 以下はある条件で発生するSCP-689-JPの特異な反応と、その時の状況の記録です。 + 200█/██/██初回収容時の事件記録 - 閉じる 概要: 200█/██/██、原因不明の連続死傷事件が発生している地域を調査していたエージェントが、数日間に渡り何件かの被害のあった部屋で不審な“将棋の駒”を目撃しており、███博士に連絡を行った際の記録。 <記録開始> エージェント・██: 本日被害のあった芦屋市のマンションの一室にて例の“将棋の駒”を発見。 ███博士: ご苦労様です、エージェント・██。危険なオブジェクトである可能性があります。不用意に近づかないように。 エージェント・██: 承知しております。 ███博士: 収容チームを派遣します。安全な距離を確保しつつオブジェクトの監視をお願い致します。 [10分後、収容チーム到着。同行していたDクラス職員(D-5002)が“将棋の駒”オブジェクトを透明ケースに入れて持ち運ぶ。] ███博士: では、安全な地域まで輸送してください。 [███博士の指示により、収容チームが部屋を退出。] D-5002: あっ!え……!? ███博士: どうかしましたか、D-5002。 D-5002: 駒が消えた、煙みたいに……。 ███博士: 消えた?……嫌な予感がする。すぐに捜索を要請します。 <記録終了> [███博士が全国のエージェントに“将棋の駒”オブジェクトの捜索を要請。2日後、島根県の民家で犠牲者が出たことで発見された。] メモ: “将棋の駒”オブジェクト(以後SCP-689-JPと呼称する)を元ある部屋から持ち出すと別所に再出現することを確認。持ち運びでの回収は不可能。 - ███博士 + 201█/██/██収容実験中の事件記録1 - 閉じる 概要: SCP-689-JPの移動日のストックがない状態で、SCP-689-JPを9基 × 9基に並べた計81基のコンテナ群の中央の位置に収容。内部をカメラで常時監視。周囲80室以内での入室者がない状態を維持し続ければ、SCP-689-JPを封じ込められるのではないか、という███博士の仮説に基づき、収容実験を行った。 経過: 30日間異常なし。 結果: 31日目、カメラに映ったSCP-689-JPが風化するように消失。全てのコンテナを調べたがSCP-689-JPの存在は確認できず。 [すぐに全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。2日後、青森県の大学病院の病室にて、潜入していたエージェントにより発見された。] 注: SCP-689-JPが発見された病室に複雑骨折のため入院中だった民間人は、常時病室に居たにも関わらず、SCP-689-JPによる攻撃を受けなかった。 + 201█/██/██収容実験中の事件記録2 - 閉じる 概要: SCP-689-JPを9基 × 9基に並べた計81基のコンテナ群の中央の位置に収容。1日毎に周囲80室のどこかに入室者を派遣し、SCP-689-JPが移動するたびに中央の位置にコンテナを輸送する。不測の事態に備え、コンテナ内部をカメラで常時監視。犠牲者を伴わない移動を続けさせることで収容を確立できないか検証。 結果: 4回目の移動を終えたSCP-689-JPが風化するように消失。全てのコンテナを調べたがSCP-689-JPの存在は確認できず。 [すぐに全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。翌日、岐阜県の遊園地の観覧車内にて発見された。] メモ: 犠牲者を伴わない移動は3回が限界。4回目で再出現が起こることが判明。また、再出現場所の選定と再出現後の向きの設定は無作為である可能性が極めて高く、現在のところ予測は困難だが、再出現先の部屋は全ての例で無人だったことから、先客のいる部屋には再出現しないと仮定できる。 - ███博士 + 201█/██/██破壊実験時の事件記録 - 閉じる 概要: 201█/██/██、keter認定を受けたSCP-689-JPに対し、██研究員指示の下、SCP-689-JPに割り当てられたDクラス職員(D-689-JP-17)による破壊を試みた際の記録。 <記録開始> ██研究員: ではD-689-JP-17、ニッパーでSCP-689-JPを破壊してください。 [██研究員の指示を受け、D-689-JP-17がSCP-689-JPをニッパーで切断。] D-689-JP-17: うわっ、なんだ!? ██研究員: どうしましたか?状況を報告してください。 D-689-JP-17: さーっと消えた……。 ██研究員: さーっと消えた?SCP-689-JPの残骸は残っていないのですか? D-689-JP-17: 残ってない。砂糖が溶けたみたいに消えた。 <記録終了> [結果報告を受けた███博士が全国のエージェントにSCP-689-JPの捜索を要請。3日後、SCP-689-JPによるものと思われる被害が山形県で確認され、同県の倉庫で発見された。] メモ: SCP-689-JPを破壊しても別所に再出現することが確認できた。一先ず破壊の試みは見送りとするべきだ。 - ███博士
scp-690-jp
評価: +37+–x アイテム番号: SCP-690-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-690-JP周辺にカバーストーリー「老朽化の為封鎖」を流布して周辺住民の侵入を防ぎ、ハーリット・ヨシカワ式空間固定処置1によりポータルの固定・維持を行います。第4次内部調査実行は現在保留中です。 説明: SCP-690-JPは新潟県██群の民家内部から出入り可能な異次元空間に通じるポータルです。2010年8月29日、サイト-81██が軽度の空間振動を観測した事に基づく周辺調査により発見されました。内部は基底世界とは別の宇宙に存在する地球に繋がっていると考えられ、著しく荒廃した同新潟県██群の小屋が存在していたと思わしき場所へと出る事が可能です。人間を含む生命体は確認されておらず、廃墟表面の分析調査においては推定30年以上の時間が経過した血痕・組織片等が確認されました。 + 第1次調査結果 - 閉じる [該当するファイルは存在しません。] + 第2次調査結果 - 閉じる [該当するファイルは存在しません。] 第3次SCP-690-JP内部調査に関するインタビューログ 対象: D-690-JP-6(男性、20代後半、Dクラス就任前の趣味としてアウトドア技能を備える) インタビュアー: 真琴博士 付記: 軽度の精神的ショックの為、D-690-JP-6には精神安定剤を服用させている。 <2010-09-18 記録開始> D-690-JP-6: (無言) 真琴博士: あの空間の中で何を見たんだ、そしてどうしてあんな事をしたんだ? D-690-JP-6: ああするしか無かっただろ。俺達はあの時…あんた達のエージェントと一緒に、あの空間の中に行かされた。 真琴博士: 知っている。そして君がやった事も全て、映像として記録済みだ。全て見させて貰った。 D-690-JP-6: だったら、今更蒸し返させないでくれ。俺だって信じられない、まだ自分が…あんな事をして、今生きているのも… 真琴博士: 全くだ、生かされているのが信じられないくらいだ。だから改めて聞こう。どうしてあんな事をしたんだ? D-690-JP-6: (表情を曇らせる)だから、誰だってああするしか無かっただろ?突然に内臓みたいな化け物が出て来た、そしてエージェント2の一人の足を食った。あっという間だった。 D-690-JP-6: 俺も持たされていた銃を撃った。真っ青な肉のぶよぶよみたいなのがぐじゅぐじゅになるまで…だけど、奴の足は見つからなかった。既に食われていた。片足がそっくり無くなっていて、痛みは感じていないみたいだった。 D-690-JP-6: エージェントに肩を貸されながら、俺達はどうするかと言う事になった。すぐに一人だけ戻して、調査を継続するのが決まったけど、真後ろには俺達があっちに来るのに使った変な…ポータル?は無くなっていた。 真琴博士: いい加減にしてくれないか。 D-690-JP-6: (表情を濁らせる)どうしてだよ?俺が嘘をついているって言いたいのかよ? 真琴博士: 君はあの空間の中に入った直後、所持していた銃でエージェントの足を撃った。3 D-690-JP-6: (約4秒間無言)そんな筈はない。俺達は襲われたんだ。足を食われてからもう少しだけして、またあの肉みたいな化物が… 真琴博士: 当然だ。君はエージェントに撃たれたんだからな。すぐに調査の一時中断が決定された4。 D-690-JP-6: 違う、そんな事は無い…エージェント達だって、説明通りに後退しながら処置していたんだろう。俺、俺は知ってるんだ、あのいやな匂いに牙。俺達を食おうとしてたんだ。 真琴博士: しかし映像記録上では、君は他のエージェント達も撃ち殺している。一人残らず短時間で。5 D-690-JP-6: 俺は殺してない!(机を叩く)全員で逃げたんだ、化物を振り払うまで10分ぐらい歩いて、コンビニっぽい建物があったからそこに逃げ込んだ、中には缶詰とかが転がってて… 真琴博士: 嘘を続けないでくれ。あのポータルの5m圏内にずっといた。 D-690-JP-6: 違う、動いたんだ、逃げて…どうにか食える物を探して、傷の手当をして… 真琴博士: 君があの中で口にした物は一つだけだ。 D-690-JP-6: (約5秒間無言、顔に汗が浮かぶ)俺達は必死だった。寝ようとしたらまた化け物がやってきて一人の上半身が食われたんだ。 真琴博士: 向こうの空間はこっちの世界と大気成分に違いは無かった。幻覚成分、霊的実体、ヒューム値の変化も確認されていない。 D-690-JP-6: 逃げようとしてまた一人が負傷した。出血が激しかった。装備ごと食われた骨と太い血管から血が流れるのが見えた…(両手が小刻みに振動する) 真琴博士: 有線の設備を用いて通信機器も使う事が出来た。何かに差し替えられているという形跡もこれまで確認されてない。 D-690-JP-6: 違う……生き残ったのは俺と最初に足を食われたエージェントだけだっただろう。どれだけ時間が経っていたのか分からなかったんだ。俺達はやっとあの入り口を見付けて… 真琴博士: 君はエージェントを撃ち殺した。最初に足を撃たれたエージェントだけが、どうにかポータルを通じて逃げる事に成功した。 D-690-JP-6: 嘘に決まっている…だって、あれだけヤバかったんだ…全部本当だったんだろう。そうだって言ってくれよ。 真琴博士: 君は殺害したエージェントの肉を食べ血を啜った6。死体が肉片になるまで銃弾を浴びせた7。踏み付けた。笑いながら椅子代わりに座ったりして遊んでいた8。満足するまで死体を弄んでから悠々と戻って来た。だから今、君は身柄を拘束されている。違うか? D-690-JP-6: (俯きながらアクリル板を両手で叩く)俺…あんたがずっと励ましてくれたから…頑張って、二人で戻ろうって思ったんだよ…… 真琴博士: これまでの会話の中で、何か間違いはあるか? エージェント・襟鹿: この男が言っている内容が、全て間違いだという点以外は何も。間違いなく俺はこいつに足を撃たれて、他の参加したエージェントは全員撃ち殺されました。 (D-690-JP-6が絶叫する。アクリル板に血が滲むまで強く両手で複数回叩き続ける。これ以上のインタビューは不可能だと判断) <終了> 終了報告書: D-690-JP-6の装備表面に付着していた肉片から調査に参加した全エージェントのDNAを確認。D-690-JP-6の体重は内部調査前と比較して著しく減少している点は留意すべきと思われる。装備表面に胃液を確認。[該当するファイルが見つかりません]内3:28時の様子から嘔吐による体重減少であると思われる。 補遺: エージェント・襟鹿の装備表面にD-690-JP-6の血痕、側面に毛髪が付着していたのを確認。エージェント・襟鹿は「記憶にない」と回答し、[該当するファイルが見つかりません]とポータル内部で起こった事に差異がある可能性が予想される[該当するファイルが見つかりません]内0:14時の行動から毛髪が付着、続けての銃撃により血痕が付着したものであると思われる。 脚注 1. 霊的実体流出防止を伴う空間固定手法。詳細は冊子参照の事 2. エージェント・襟鹿の事と推測 3. [該当するファイルが見つかりません]0:38~参照 4. [該当するファイルが見つかりません]0:48~参照 5. [該当するファイルが見つかりません]1:39~参照 6. [該当するファイルが見つかりません]2:09~3:12参照 7. [該当するファイルが見つかりません]4:09~参照 8. [該当するファイルが見つかりません]5:44~参照
scp-691-jp
評価: +23+–x SCP-691-JP(収容以前に撮影されたもの) アイテム番号: SCP-691-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-691-JPは、サイト-8141の人型生物収容室に収容されています。収容室内には録音機能のある機械は入れることの無いようにしてください。物品の要求があった場合も録音機器以外のものなら基本的に承認して構いません。SCP-691-JPへのインタビューを行う際も、録音はせず必ず会話内容を文章に起こすことにより記録してください。また、インターネット調査部隊により音声差し替え前の「██████████」の動画がアップロードされていないかを常に監視するようにし、SCP-691-JP-1であると疑われる人物がいないか常に調査を行ってください。SCP-691-JP-1が発見された場合、「██████████」の音声の書き起こしをさせ、クラスD記憶処理を行ってください。 説明: SCP-691-JPは、収容以前は声優(芸名██████、戸籍上の氏名█████)として活動していた2█歳の日本人女性です。SCP-691-JPの持つ特異性は生まれ持ったものではなく、後述する「███████声優養成所」に通学していた期間に発露したものと考えられます。 SCP-691-JPの発する声を、録音機能のある機械で記録した場合、その記録内容が全て歴史上の独裁者を礼賛するものに変化します。歴史上の独裁者の例としては、マクシミリアン・ロベスピエール、ヨシフ・スターリン、ベニート・ムッソリーニ、アドルフ・ヒトラー、毛沢東などが挙げられます。 SCP-691-JPの録音された音声を聞いた人物は、その音声を非常に魅力的と感じ、またその内容が独裁者を礼賛した内容であるとは気づくことが出来ないという認識障害が判明しているため、SCP-691-JPの録音された音声にはミーム的影響があると考えられます。このミーム汚染は、録音された音声を聞きながら同時にその文章を文字に書き起こす行為により、その特異性を失うことが判明しています。 また、SCP-691-JPの録音された音声を聞いた回数が多くなっていくにつれて、ミーム汚染を受けている人物(以下SCP-691-JP-1とする)は、SCP-691-JPに対して心酔していきます。そして、国の主導者にSCP-691-JPこそがふさわしいという思想を持つ新たなミーム汚染を受けます。 SCP-691-JPに対するインタビューで、この特異性には自分でも気づいていなかったと話しています。よって、SCP-691-JP自身もミーム汚染を受けていることが推測されます。SCP-691-JPが生まれてから現在までの、音声が記録されている媒体を財団が全て調査した結果、SCP-691-JPが声優養成所に入所する以前に撮られた映像に記録されていた音声が特異性を持っていない最後のものであることが判明しました。更に、SCP-691-JPが通っていた「███████声優養成所」は、所在地であったビルから退去しており、その後の活動も一切詳細が掴めていないため、SCP-691-JPの特異性が発露した原因と何らかの関わりがあると考えられ、追加の調査が行われています。 SCP-691-JPは201█年養成所を卒業後、大手声優事務所██████プロダクションに所属し、初めての仕事として、同年█月からのTVアニメ「██████████」1の主役に選ばれました。これに関しても、プロダクション社員並びにアニメスタッフ側がミーム汚染を受けていたことが確かめられています。 「██████████」放送後、財団職員である岡安博士が自身の趣味であるアニメーション批評のため「██████████」の内容を文字に書き起こした際に、その特異性が発見されました。また「██████████」放送直後、岡安博士と同様に特異性が消失した人物によりネット上にその異常性を訴える意見が少数上がっていましたが、いずれも馬鹿馬鹿しいとされ無視されています。更にそれと同時期に重度のミーム汚染を受けたSCP-691-JP-1はインターネット上で自主的に“ファンクラブ”を結成し、SCP-691-JPを国家元首として、新たな国を作ろうという活動が始まっていました。“ファンクラブ”では、内閣総理大臣の暗殺など国家転覆のための計画が複数立てられていました。 “ファンクラブ”はネット上で確認できるだけで会員数█████人に達していたため、この大規模ミーム災害を鎮圧する為、財団によるプロトコル“全国ツアー”を発動、SCP-691-JP協力の下、全国にて声優イベントを開催し、ネット上にて特定したSCP-691-JP-1をイベントに来場するよう誘導、イベント会場にてSCP-691-JP-1を一斉確保、ミーム汚染の除去と記憶処理を行いました。 その後財団によるカバーストーリー「結婚と引退」によってSCP-691-JPを収容、また既に流通していた「██████████」ブルーレイ版もカバーストーリー「サブリミナル画像混入」により回収、主役を非常に声の似ている代役が演じたものを流通させました。ネット上に残った音声差し替え前の動画も削除されましたが、依然として定期的に動画がアップロードされ続けている為、現在も財団によりアップロード者、またその動画をダウンロード、並びに視聴したSCP-691-JP-1を特定し、記憶処理とともに特異性の消去を行っています。 補遺1:報告メモ 今回の事例において、SCP-691-JPは自分自身もミーム汚染を受けているため、自分こそがこの国の指導者にふさわしいと深く思い込む前に収容できた事は間違いなく幸運であった。 またSCP-691-JPが非常に控えめな性格であったため、ネット上に自らの音声の入った動画を上げる行為や、ライブ配信サイトでの生放送などを一切行っていなかった点もミーム汚染が広がらなかった要因の一つであり、これもまた幸運であったといえる。 仮にもし放送されたアニメが、深夜アニメではなく、ゴールデンタイムの児童向けアニメであったとしたら、SCP-691-JP-1が児童や、またその両親など幅広い年齢層にミーム災害が広がり、“ファンクラブ”が更に危険な団体となっていた可能性も否定できない。 最後に、SCP-691-JPの発見者、並びにプロトコル“全国ツアー”の発案者である岡安博士には感謝の意を表したいと思う。 ミーム災害対策部隊長 ████ Footnotes 1. 放送枠は30分間で、全12回。放送局は全国ネットで関東圏、中京圏、関西圏のそれぞれ3局。
scp-692-jp
評価: +54+–x SCP-692-JP アイテム番号: SCP-692-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-692-JPは、サイト-81██の低危険度物品用ロッカーに保管されます。SCP-692-JPの実験はクリアランスレベル3の職員2名の許可を得た上で日が昇っている時間帯に行ってください。SCP-692-JPの発光は、肉眼なら夜間にかろうじて観測が可能な程度のため、実験を昼に行うことで民間への情報漏洩を防止します。 説明: SCP-692-JPは直径25cmの陶磁器の破壊不可能な皿です。デザイン・形状は██製陶株式会社の販売する製品と一致しますが、██製陶株式会社及び██製陶株式会社のSCP-692-JP以外の製品からは現時点では異常性は発見されていません。 SCP-692-JPを皿回しの要領で回転速度が毎秒1回以上になるよう回転させると、発光しながら回転を維持します。この状態では、SCP-692-JPの回転を止めることはできません。 SCP-692-JPは回転速度が毎秒41回を超えると回転と発光を保ちながら浮遊し、高度400km付近を飛行しながら特定の地点(以下、SCP-692-JP-a)へ向けて移動します。SCP-692-JP-a上空に到達したSCP-692-JPは、上空でSCP-692-JP-aの周囲をゆっくりと浮遊します。 SCP-692-JPがSCP-692-JP-a上空に到着後数分で、SCP-692-JPを飛ばした人物(以下、SCP-692-JP-b)の付近に、SCP-692-JP-a付近で食べることが可能な料理を乗せた状態で出現します。 + 実験記録 - 隠す 以下は、SCP-692-JPの実験記録です。 SCP-692-JP-b 結果 ██研究員 SCP-692-JPは北海道付近の海上へ行き、数分後にマグロの盛り合わせを載せて出現。██研究員の好物はマグロであり、味を「非常に質のいいものだ」と評価した。 D-692-1 SCP-692-JPはサイト-81██の上空へ行き、数分後にDクラス職員に財団が支給する料理を載せて出現。D-692-1は拒食症を患っており、食事可能なものがドライフルーツ等に限定されていたが、料理を食べても体に影響はなく、D-692-1は「久しぶりに普通のものが食べれて嬉しい」と述べた。 D-692-2 SCP-692-JPはD-692-2の母親1が暮らしていた住宅の上空へ行き、数分後に唐揚げを載せて出現。D-692-2は「母親の得意料理は唐揚げだった」と話し、味を「母のものと同じだ」と評価した。 技術班により作られた皿を回す機械 SCP-692-JPは日本各地の上空を高速で移動、数分後に皿の上にM8×15のメートルねじの形状の飴2を乗せて出現。調査により、機械の一部のねじが破損していることが判明した。 D-692-3,D-692-4 D-692-3とD-692-4に1つの木製の棒を同時に持たせ、SCP-692-JPを回させた。SCP-692-JPは浮遊から十数分後に、中にエクレアの入った豚汁を器に有する状態で出現。D-692-3は甘いもの、D-692-4は豚汁を要求していた。料理の状態に関わらず、両者はそれぞれの味を「思ったより悪くない」と評価した。 以上のことから、SCP-692-JPとともに出現する料理はいずれもSCP-692-JP-bが望むものであり、料理の状態に関わらずSCP-692-JP-bは料理を好意的に評価することが分かりました。 + 補遺1 - 隠す 補遺1: 20██年██月██日に██県███市の市立病院で、当時█歳だった山村 ██が毒死する事件が起こりました。山村 ██は█歳の時点で少なくとも█種類以上の病気にかかっていたことも重なり、当時のニュースでマスメディアにより大々的に取り上げられました。警察の調査の中で山村 ██の病室から、SCP-692-JPと山村 ██に向けてのものと思われるメッセージカードが発見され、財団の調査によって異常性が認められたため収容されました。メッセージカードの内容は以下の通りです。 貴方にこれを送ります。これからはいくら食べても大丈夫です。 あなたの病気が早く治りますように。 事件が発生する一ヶ月前には、山村 ██は病気によって食事が満足にできない状態でした。また、メッセージカードの贈り主は判明していません。 + 補遺2 - 隠す 補遺2: 以上の内容を受け、██博士による実験が行われました。 SCP-692-JP-b 結果 D-692-5 SCP-692-JPはサイト-81██の上空で停止し、数分後に、Dクラス職員に財団が支給するスープを器に有する状態で出現。スープを調べたところ、シアン化カリウムが500mg混入していた。3D-692-5は自殺願望を持っていたため、今回の実験で選ばれた。 このことから、山村 ██自身による服毒が死因である可能性が高くなりました。民間に対しては、カバーストーリー「精神疾患者の奇行」を適用しました。 Footnotes 1. 故人。 2. 検査によって、一般的な鋼鉄と同程度の強度を持つことが判明した。 3. 成人の場合の致死量は150mg~300mgである。
scp-693-jp
評価: +241+–x 評価: +241+–x クレジット タイトル: SCP-693-JP - 人生に意味なんてない 著者: ©︎kyougoku08 作成年: 2016 評価: +241+–x 評価: +241+–x アイテム番号: SCP-693-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-693-JPは施錠された不透明のケースに保管され低脅威物ロッカーに収容します。SCP-693-JPを用いた実験を行う場合はサイト管理官の許可が必要です。また、実験の際は使用する研究室を無菌状態においたうえで、研究に関係する人物全てに殺虫消毒を行い SCP-693-JP-Aへ変態しうる可能性のある節足動物全てが死滅したことを確認してから行ってください。SCP-693-JP-Aは、標準的な人型オブジェクト収容室へ各個体ごとに収容を行ってください。取り扱いは通常の人型オブジェクトと同様の取り扱いを行ってください。 説明: SCP-693-JPは数冊の文庫本の総称です。現在までに7冊のSCP-693-JPが発見され、収容されています(SCP-693-JP-1~7と指定)。SCP-693-JPはいずれも現在発行されている書籍の形をとり、現在までに出版社を通じ出版されていない書籍は確認されていません。SCP-693-JPは外見上判別できる異常性は持ち合わせず、いずれも一般流通している該当書籍と組成面、内容面での差異は存在しませんでした。 現在までに確認されたSCP-693-JPの異常性を持つ書籍例には以下が含まれています。 『人間失格』 『ひかりごけ』 『死に至る病』 『ドグラ・マグラ』 『完全自殺マニュアル』 『若きウェルテルの悩み』 『██』 また、いずれのSCP-693-JPも見返しの部分に以下の文章が記されています。書き込んだ人物に対する筆跡からの追跡は全て失敗に終わりました。 生まれたことに、生きることに、意味なんてないわ SCP-693-JPの異常性は、SCP-693-JPを10ページ以上朗読することで発生します。SCP-693-JPが朗読された際、ヒトの可聴域でその朗読を聞いた節足動物はSCP-693-JP-Aへと変態します。一度に変態する数には限界があり、確定はしていないものの、5~15までの個体数が対象となります。 SCP-693-JP-Aは、遺伝子およびその他生物学的条件において、ヒトと同一の特性を持つ生物です。SCP-693-JP-Aは、一般的に優れた知性と身体能力、および温厚な性格を有しており会話が可能です。特に一般的に害虫、あるいは不快害虫として扱われる生物であるほどその傾向は顕著なものとなります。SCP-693-JP-Aの容貌は多くが「整った顔立ち」と表現され、人種、年齢、使用言語はその生物の現在時点での原産地、生存時間に依存することが判明しています。また、変態時には現代における常識、文化などの一般的な知識を習得しています。 SCP-693-JP-Aへの変態は異常性暴露後、主に10時間程度かけ原理不明のプロセスをこなし、比較的緩やかな速度で行われますが、記録用の機材が原因不明の故障を引き起こすため、現時点で映像及び音声としての記録は残っていません。また、変態中のSCP-693-JP-Aに対する干渉はいかなる機材、方法を用いても無効に終わりました。 現在、SCP-693-JP-A個体は偶発的に変態した個体、実験の結果変態した個体を合わせ██体が収容され、全個体が収容に協力的な態度を取っています。 現在までに確認されたSCP-693-JP-A例には以下のものが確認されています。 ゲジ(Scutigeromorpha)のオス。60代のアジア系男性に似たSCP-693-JP-Aに変態。収容に至る通報の際発見された最初のSCP-693-JP-A実例。この個体以外にも██体のSCP-693-JP-A個体が発見された。 アオクサカメムシ(Nezara antennata)のオス。20代のアジア系男性に似たSCP-693-JP-Aに変態。実験下において変態した初めての個体。 オオカバマダラ(Danaus plexippus)のメス。20代のヨーロッパ系女性に似たSCP-693-JP-Aに変態。英語を会話に使用した。 ケジラミ(Pthirus pubis)のメス。10代後半のアジア系女性に似たSCP-693-JP-Aに変態。実験時███研究員の頭部に付着していた個体が偶発的に曝露した。███研究員の就寝中に変態が完了し、███研究員は頸椎を捻挫。これ以降特別収容プロトコルの見直しが行われた。 ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)のメス。30代前半のアジア系女性に似たSCP-693-JP-Aに変態。変態時に妊娠しており、24日後██体の個体を出産し死亡。 SCP-693-JPは██県██市の中学校において「教室に全裸の不審者がいる」という通報を受けたエージェントが前日に国語科の授業において使用されたSCP-693-JP及びSCP-693-JP-Aを発見、確保、収容に至りました。その後、同様の事例が教育施設を主に発生しましたが、聞き取り調査の結果SCP-693-JPの購入記録及びSCP-693-JPを持ち込んだ人物は発見されませんでした。 インタビューログ693-JP-SR 対象: SCP-693-JP-A-17 変態以前はシラヒゲハエトリ(Menemerus fulvus)であり、現在は40代のアジア系男性に似た容貌となっている。 インタビュアー: 楠木博士 <録音開始> 楠木博士: では、インタビューを開始します SCP-693-JP-A-17: はい、お願いします 楠木博士: まずSCP-693-JP-A-17、貴方は変態以前の記憶を保持していると証言していましたが具体的にどのような記憶を保持していますか? SCP-693-JP-A-17: はい、そうですね、…お恥ずかしい話、あまり正確ではない上に断片的なのですが 楠木博士: 構いません SCP-693-JP-A-17: 分かりました。貴方もご存じのとおり私はこうなる前は蜘蛛でした。ええ、その当時は何と言いますか、ただ食べて寝て、そう、欲求に従うだけを考えていたように思いますね。もちろん、それを悪いことだとは考えていません。…ですが、あの時、…何と言いますか、…世界がひっくり返ったような衝撃でした。突然頭の中に文字や文化、…そう、まさしく知性と呼ぶほかにないような、混沌とした何かが流れ込んできました。そして、突然私には「生きなければならない」という感覚が生まれたんです 楠木博士: 「あの時」とはSCP-693-JPの朗読を聞いたときで間違いありませんか? SCP-693-JP-A-17: はい、今まで人の声は聞こえていなかった、あるいは意識にも留めていなかったはずなのに急に聞こえて…、あの時の感覚はどうにも言葉では言いようがありません。それから先は意識が遠のいて、気が付いたらこの姿になっていたというようなもので。こんな風に私自身の記憶も曖昧なものでして、そちらの質問に答えられるのは以上です。いや、お役に立てず申し訳ありません 楠木博士: いえ、構いません。では、これで今回のインタビューを SCP-693-JP-A-17: …すいません、最後にちょっとお願いをしても構いませんか? 楠木博士: 私の権限の及ぶ範囲であれば SCP-693-JP-A-17: この組織において私たちに何かできることはないでしょうか、いえ、出自が出自ですから今の扱いも理解してはいるんですが… 楠木博士: 納得できないと? SCP-693-JP-A-17: いえ、本来虫として何の意味も持たず…、こう言えば語弊がありますが無為に子孫を残すだけの生から、今こうやってヒトとして、考え、行動できてしまうものとして生まれ、生きているからには何かを為さないといけないのではないでしょうか、少なくとも私はそう考えるのです 楠木博士: …なるほど、検討させていただきます <録音終了> 現在、この報告を受け一部SCP-693-JP-Aをフィールドエージェントとして雇用する提案がなされ審議中です。同様にSCP-693-JP-AをDクラス職員として雇用する提案は財団倫理委員会によって否決されました。 補遺1: SCP-693-JPの朗読を担当したDクラス職員の約8割に自殺願望がみられることが判明しました。以下は朗読を担当し、その後自己終了を要求したD-1994に対してのインタビュー記録です。 インタビューログ693-JP-SV 対象: D-1994 過去に動物虐待の経験あり インタビュアー: 楠木博士 <録音開始> 楠木博士: まずD-1994、何故貴方は自己終了を要求したのでしょうか? D-1994: 分かんないのか、先生? …あー、まあ、あの声は俺にしか聞こえてなかったみたいだしな 楠木博士: あの声? D-1994: ずっと聞こえてくるんだ、「生まれたことに、生きることに、意味なんてないわ」って。それにさ、あの時俺が見たゴキブリみたいな気持ち悪い虫、あれ、人間になんだろ? それも俺よりずっとすごいやつにさ 楠木博士: …貴方にその情報は明かされていないはずですが D-1994: なんとなくそういうイメージ? そんなのが頭ン中に入ってくるんだ。それ思うともうなんかどうでもよくなって。まだ外にいたころにたくさん犬や猫殺したけどよ、あー、先生にはわかんないかもしれないけどあれって自分より下だって分かってるからできんの、自分より下にいる生き物だからって。でも、犬や猫よりもっとしょぼい生き物が俺よりずっとすごいんだぜ? もうなんだか生きていくのが嫌にもなるさ 楠木博士: つまり貴方は、生きることに意味を感じなくなった、と D-1994: …そう、そういうことだよ。頭ン中の誰かが言ってるように、俺たちみたいな屑人間なんかは生まれたことも、生きることにも、どうせ意味なんてないんだってことだろ <録音終了> この後、D-1994はSCP-███-JPの収容違反に関わり終了しました。SCP-693-JPの与える精神影響については現在検討中です。 補遺2: SCP-693-JPを朗読したD-1998において、朗読後の勤務態度に著しい改善が見られたため、インタビューを行いました。以下はその記録です。 インタビューログ693-JP-SX 対象: D-1998 インタビュアー: 楠木博士 <録音開始> 楠木博士: D-1998、貴女がSCP-693-JPの朗読後、何故勤務態度が改善したのか説明していただきたいのですが D-1998: えっと、先生はあの声のこととか、あの虫のこととか知ってるんですか? 楠木博士: はい、確認しています D-1998: それなんですけど、最初のうちは私もすごい嫌だったんです。ずっとお前には生きてる価値がないって言われてるみたいで。でも 楠木博士: でも? D-1998: でも、よく考えたらあんな気持ち悪い虫がすごい人になれる。だったら生まれたことや生きることに意味がないのは当たり前なんじゃないかって。そうじゃなくて、そこからどうするかが大切なんじゃないか、その意味を自分で作ればいいじゃないかって思ったんです。 楠木博士: 意味を作る、ですか D-1998: 私は何も分かんないまま人を殺して、何も考えずにここに来た。…たぶん屑って言われる人間ですけど、これまで何の意味もなかった人生にもしかしたら自分で意味を作ることができるかもしれない、作ろうと思って 楠木博士: なるほど、それが勤務態度の改善につながったと D-1998: はい、生きているんだから何かをできるんじゃないか。そう思ったらなんだかあの声も聞こえなくなったんです <録音終了> この後、D-1998は一カ月の雇用期間を過ぎ、定例解雇されました。 事案報告20██/██/██: D-1998の解雇と同時期に新たなSCP-693-JPが発見され、SCP-693-JP-8と指定されました。SCP-693-JP-8は『悦ばしき知識』の形をとっており、見返し部分に以下の文が追加されていました。 だから、真っすぐにいきなさい
scp-694-jp
評価: +47+–x アイテム番号: SCP-694-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-694-JPの新たな被呪者が発見された場合、即座に拘束し、可能ならば財団の民俗学者と宗教家の監督の元、除呪プロトコルを実施してください。除呪が不可能な場合、クラスF記憶処理によって当該の人物がSCP-694-JP-1となった場合にその被害が他者に向かわないよう、細心の注意を払ったのち処分してください。 SCP-694-JP-1の子孫、親戚筋についてはその全員に、葦舟式怨程度測定指標を参考に、その潜在的SCP-694-JP-1変化傾向度数を測定し、程度Bを超えた場合は処分の対象としてください。 説明: SCP-694-JPは、大戦時に旧日本軍と蒐集院によって共同設立された特別医療部隊(以下、『負号部隊』)における“ツチグモ”隊が関与しているとされる血脈伝来型呪術です。負号部隊の目的1の下、一般的に████として知られる███、及び長野県██村に伝わる民間信仰とを組み合わせ、同村の近辺に古くから伝わる妖怪譚をベースとして作成されたと推測されます。 SCP-694-JPの手段によって「呪われた」人間(以下、SCP-694-JPキャリア)は、その脳が活動を停止するか、不可逆、完治不能の重傷を肉体に負った段階でSCP-694-JP-1に変化します。SCP-694-JP-1となった人間は即死します。 同時に、その死の原因を作り出した存在2とSCP-694-JP-1が目する対象の下に、SCP-694-JP-1が現れます。この際、現れる場所はSCP-694-JP-1の意識/怨意が強く尊重されるようです。この際出現したSCP-694-JP-1はその全長が30〜50センチ程度になるように縮小されており、出現した対象にしか視認できず、実体を持ちません。対象となった人物の報告によると、SCP-694-JP-1は出現時、その手足を丸め、丁度対象の片足、脛部を挟み込むような形で三角座りを行いながら出現します。 一般的にSCP-694-JPはこのような姿で現れると報告されています SCP-694-JPはこの体勢を保ちながら、出現した対象へと罵倒を浴びせ、己の死について対象を強く批難しながら回転します。 概して、その速度は秒間0.8〜1回転程度であり、基本的には永久に脛部を中心に回転を続けているようです。対象が死亡した場合のSCP-694-JP-1の行方は、対象からのインタビューが不可能である上述の理由から不明です未確認です。SCP-694-JP-1は実体を持たないものの、出現している間、対象は極めて脚部を重く感じ、鬱血や足首の壊疽が併発する場合があります。 また、この異常性はSCP-694-JPキャリアの子孫に受け継がれ、子孫も同様の異常性を有します。財団の除呪工作によって現在SCP-694-JPへの新たな被呪は確認されていませんが、負号部隊の拠点から回収された報告書によると、負号部隊の名目上の解散までに███人の人間がその実験によってSCP-694-JPキャリアとされており、そのうちで消息不明な未確認のSCP-694-JP-1キャリアは██人に登ります。これらの人間の子孫、孫も同様にSCP-694-JPキャリアとされるため、その早急な特定と除呪が求められます。 補遺-1: 1996/04/██に作成されたインタビュー記録 対象: 当時、SCP-694-JP-1キャリアとなった人物の息子、██氏   インタビュアー: 東郷博士   付記: ██氏は当時負号部隊に編入されていた父親を持ち、父が老衰による感染症の併発によって命を落とした際、側で介護を行っていました。   <録音開始>   東郷博士: 今晩は。まだ……その音は続いているようだね。   ██氏: ……はい。僕にしか聞こえませんが、まだ父は……こちらに話しかけて来ます。   東郷博士: なんと言っている?   ██氏: ……言いたくありません。聞きたくもないんです。   東郷博士: ……そうか。足の具合はどうだ?   ██氏: とても重いです。ほんとうに人間が……一人すがりついているかのようです。先生、私は。私は……父がこんなことを思っていたとは信じたくないんです。   東郷博士: しかし、確かに見た目は君の父親なのだろう?   ██氏: ……一方的に話しかけてくるだけです。こちらの言うことに気づいているとも思えない。ただ、すごい形相で……叫んでるんです。   東郷博士: ……とりあえず、君を治せるようには努力するよ。   <録音終了>   終了報告書: インタビューから57日後、██氏の右足首が壊疽を始めました。1週間後、██氏は収容室で自殺しました。死体は焼却処分されましたが、遺骨の右足首、及び左足首の骨は火葬後に完全に切断されていることが確認されました。██氏自身がSCP-694-JPキャリアであった関係上、その死の原因となった人物を自分であると考え、死後に自身の死体に現れたと推測されます。これにより、死後であってもSCP-694-JP-1が死体に出現する可能性が示唆されました。 補遺-2: 負号部隊の研究所から発見された文書 咒名-臑劘3 星幽面カラノ兵士強化トシテ、死靈ノ行動ヲ制御セムト試ミル 實戰投入以來█年間ハ實用ニ足ル效果ヲ齎シメムケレドモ、██年以降ノ戰況惡化ニ順ジ上官ノ脛二出現ス例ノ漸増ガ報告サル ヨッテ廢棄處分トス ツチグモ-星幽體研究班長不破4 脚注 1. 不死の兵士の創造 2. 事故死、病死、老衰などの場合も同様、医師や家族の元に現れる場合が多い 3. すねこすり 4. 作成に当たり、kidonoi氏にご協力いただきました。ありがとうございました。
scp-695-jp
評価: +17+–x 確保時のSCP-695-JP アイテム番号: SCP-695-JP オブジェクトクラス: Euclid Neutralized 特別収容プロトコル: 2017/01/07にてNeutralizedに分類されました。死体は今後の検査を考慮し保存されます。 + 以前の特別収容プロトコルを閲覧 - 閲覧を終了 SCP-695-JPはその性質により内側からカーボン繊維強化樹脂・セラミックコーティングが施された耐熱パネル・耐火合金キラニウム1を用いた特別収容室にて収容します。SCP-695-JPが900℃以上まで発火した場合は鎮圧部隊ひ-1"小太陽落とし"によるSCP-695-JPの鎮圧が指示されます。SCP-695-JPが活性状態への移行の有無は室内に設置した無線サーモグラフィーカメラによって確認します。SCP-695-JPは1日に3回ずつ33gの家畜用飼料が与えられます。収容室内は衛生維持のため定期的に清掃がされます。 - 閲覧を終了 説明: SCP-695-JPは自らを不死鳥と呼称するウコッケイ(学名: Gallus gallus var. domestica)です。DNA検査においてもオブジェクトのDNAと一般的なウコッケイのDNAサンプルの構造の差に異常は見られません。 SCP-695-JPは原因不明の発火による炎で自身の体を燃焼させますがSCP-695-JP自身には燃焼による外傷・苦痛などの様子は見られません。その状態を活性状態とみなします。現時点ではおよそ3500℃が最高温度です。最低18時間もの間活性状態を続けることが可能です。活性状態により周囲に放出されるはずの熱は確認されていません。活性状態に移行した際に確認される熱量に対しSCP-695-JPの周囲に想定される影響は観測されません。活性状態時の温度はSCP-695-JPの体温を測る形でのみ計測が可能です。 SCP-695-JPは人間の言葉を発声可能としていますが発声器官に異常があるのかについては不明です。事案XXXJP-い-の後に解剖が行われました。発声器官の形状に異常は見られませんでした。 収容経緯記録: 2016/02/06、SCP-695-JPは███にて見られた上空からの飛来物の落下地点にて発見されました。1回目の確保は部隊の全滅により失敗しました。2回目にSCP-695-JPは約1分間に渡る交戦の後に飽きたと発言し抵抗をやめたことにより確保されました。確保時の記録映像については[データ消去済]を参照してください。 インタビュー + インタビュー記録695-JP - 2016/02/06を閲覧 - 閲覧を終了 対象: SCP-695-JP インタビュアー: 加瀬博士 <録音開始, 2016/02/06> 加瀬博士: これからインタビューを始めます。SCP-695-JP、いくつかの質問をしていいでしょうか。 SCP-695-JP: ……ふむ、その名は少々気に入らないが、皆この我に恐れているようだ。無知で短命で脆弱な貴様らには希望を与えるのは滑稽だ。だが許す。命を懸けて聞くがよい。 加瀬博士: ありがとうございます。では、あなたはどこから来たのですか? SCP-695-JP: 我は火山にて生まれた。体なぞ無く、眺めるしか出来なかった我は、いつの間にか火の海の中で目を覚ました。 加瀬博士: 火山とは、どこの火山かわかるでしょうか? SCP-695-JP: 貴様らの言う██山だ。体は醜かったがよしとした。そして外へ出るために飛んだ。後にニワトリが飛べぬ事をしったがな。それでも飛べた時点で我がニワトリではない事は明確だろう。 加瀬博士: 外見から見てあなたは一般的なウコッケイ等と差異はあれど異常が見られません。なぜ飛べるのか具体的な理由を求めさせてもらいます。 SCP-695-JP: 飛ぼうと思ったら飛べた。それだけだ。 加瀬博士: そうですか、わかりました。ではなぜウコッケイの体を持つあなたが人間の言語を扱う事ができるのですか?同時に、なぜ人間と同等の発声ができるのですか? SCP-695-JP: 喋ろうと思ったから喋れた。貴様らの使う言語は……眺めていたからだ、この世を。 加瀬博士: 先ほどの発言によると、あなたは生まれる前からそうしていたようですが、詳細を教えてもらえますか。 SCP-695-JP: 知らぬ。我は突然目が覚め、眺め、やがて眠りについた。目が覚めた事に気づかずほど早く眠りについた事などいくらでもある。あくまで例えだがな。 加瀬博士: 実体を、もっていなかったという事ですか? SCP-695-JP: あぁ、火山から生まれ、火を纏う……目覚めと眠りを繰り返す、即ち生死の輪廻と同価値。これのどこが不死鳥では無いと言うのだ? 加瀬博士: 不死鳥は同時に、老いると灰になり、そこから雛となって生まれるという説が最も語られておりますが……? SCP-695-JP: 知らぬ。我は不死鳥であり我のみが不死鳥である。諸行無常の世に先入観など不必要だ。肝に銘じよ。 加瀬博士: わかりました。ではその目覚めと眠りの繰り返しの際、あなたはどんな状況にいたのですか? SCP-695-JP: いつだって我は火の滾る海に漂っていたと同時に、我は必ず、文明を創る貴様らと共にいた。我を道具に扱い、時に絶望と指をさし、時に希望と称えた。そして止むことなく、貴様らを見ていた。 加瀬博士: なるほど……しつこいようですが、もう1度お聞きします。あなたは、何者だったのですか? SCP-695-JP: 答えを急くな。それは貴様らが見つければいいし、すぐに予想づいているものも現れるだろう。さぁ、そろそろ終いとしよう。無知なるものに教えを説くのは非常に根気をそがれるのだから。 加瀬博士: わかりました……インタビューはこれにて終了します。 <録音終了, 2016/02/26> 終了報告書: SCP-695-JPは概念上の存在だった可能性があります。「いつの間にか」と発言しているためになぜ肉体を得たのかについて対象から知ることはできないと思われます。SCP-695-JPは意志により飛行、人間の発声の模倣を可能にしたと発言したため自身への現実改変の力を持つと考えられます。今後SCP-695-JPの活性状態時に発する炎の最高温度を測定するための実験を行います。 追記: SCP-695-JPのDNAは数匹分のウコッケイのDNAと比較されましたが異常はみられませんでした。ヒューム値は1hm以下にて常に変動しています。活性状態のSCP-695-JPから約3500℃の熱が測定されました。 - 閲覧を終了 観察ログ + 観察ログ695-JPを閲覧 - 閲覧を終了 前ログと相違点のある部分がある項目を除き余分と判断された項目は省かれました。 観察ログ695-JP - 2016/02/27 対象: SCP-695-JP 観察結果: 対象は起床後朝食を要求しました。内容は和食や中華料理など本来ウコッケイに適したものでは無い物でした。対象には家畜用の飼料が用意されました。対象は雑談をするための会話相手を要求しました。会話相手については対象自身の詳細の情報が得られる可能性を考慮し承諾されました。会話内容から対象に関する情報は得られませんでした。 分析: 対象は要求物とは違う飼料に激情しましたが非活性状態のままでした。活性状態への移行の仕組みは感情とは関係しないのではないのでしょうか。 観察ログ695-JP - 2016/04/01 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は担当職員と会話中に活性状態へ移行しました。招集により鎮圧部隊が緊急出動しました。対象は激情し叫び散らしていましたが混乱した職員を見て「エイプリルフールとはこの事だろう!我とて知っているとも!!」と発言し、その後も事態を混乱させました。 補遺: 担当職員が04/01がエイプリルフールであると対象に伝えた事が無い事は確認済みです。―加瀬博士 観察ログ695-JP - 2016/05/19 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は収容室外を写した写真を要求しました。担当職員が所持している写真から許可されたものが支給されました。 分析: 外部の様子を伺うなどの発言はありますが収容室を抜け出そうとする様子は見られません。そのため少なくとも現時点では対象が協力体制を維持していると思われます。担当職員と対象のコミュニケーションはとても友好的なものです。 観察ログ695-JP - 2016/07/29 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は番となるメスのニワトリを要求しました。要求は却下されました。 分析: 対象は要求と同時に「子が欲しい」と発言していました。対象は不死鳥と自称していますが、死の恐れがない対象が子孫を残したいという本能を持っている可能性は限りなく低いと思われます。対象が本当に不死性を持っているか確かめるべきではないでしょうか。 観察ログ695-JP - 2016/08/10 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は過去に支給された作品から特定の作者の小説を要求しました。支給品は担当職員が所持しているもののみ許可されました。 補遺: 特に宮沢賢治が気に入ったようです。―担当職員 ██ ██ 観察ログ695-JP - 2016/09/02 対象: SCP-695-JP 観察報告: 担当職員が確保時の対象の発言の真意を聞いた際、対象が収容室内のマイク付カメラを意識し聞こえないように「疲れたのだ」と発言したのを担当職員の復唱による確認により認識しました。対象はこれに憤怒し、活性状態へ移行し担当職員へ襲い掛かりました。駆け付けた鎮圧部隊により対象は気絶しました。対象は目を覚ました後担当職員の状態を伺ったため容体を伝えたが、対象はその後非活性状態のまま暴れまわりました。5分後対象は睡眠状態へ移行しました。 補遺: 担当職員は対象により左腕を失いました。担当職員は70日間の休養を取ることになりました。対象は人間に対し好意的なのでしょうか?―加瀬博士 観察ログ695-JP - 2016/10/29 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は支給された飼料に対し「近頃飯が硬い、嘴が欠けてしまうだろう。」と発言しました。飼料の変更はされていません。 分析: 活動量に対し羽毛の散らばりが異常です。これは嘴同様、寿命が近くなるウコッケイの変化と類似しています。 補遺: 対象の異常性について1切解明できていない状態でのオブジェクトの死はあまり望ましくないと思われます。延命処置を計画するべきです。―加瀬博士 延命処置は認められない。―O5-█ 観察ログ695-JP - 2016/11/11 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は起床後から動かず、職員からの干渉に対し反応が見られませんでした。 分析: この1週間にて対象は摂取する食事の量を12gまで減少させました。ほとんど抜け落ちた羽毛などから対象の死期は限りなく近いと思われます。 補遺: 本当に残念です。―加瀬博士 観察ログ695-JP - 2016/12/25 対象: SCP-695-JP 観察報告: 対象は起床前から活性状態へ移行しました。炎の温度は35℃と計測されました。対象は飼料を食べませんでした。対象は「冬眠をする、関わるな。」と発言し睡眠状態を継続させました。 補遺: 危険なこのSCP-695-JPから死者を出すことなく済んだのは、とても好ましいことです。―[データ編集済] - 閲覧を終了 事案記録 事案記録695-JP - 2016/12/31 [2016/12/31 23:56]SCP-695-JPの活性状態による熱が急激に上昇しました。対象が自身に発火させた炎の熱は周囲に放出させられました。この例は前例にありません。駆け付けた特殊部隊に発言をした後天井を蒸発させ上空へ逃亡しました。SCP-695-JPの発言内容については音声としてカメラに記録されていました。下部を参照してください。 [2017/01/01 15:13]██県██町███にて四散したウコッケイの死体が発見されました。 [2017/01/03 09:00]DNA検査により墜落したSCP-695-JPの死体だと判明しました。 [2017/01/07 17:00]死体を検査、解剖を行いましたが異常性がみられないため2017/01/07にてNeutralizedに分類されました。 SCP-695-JPの発言内容 しばし話そう。 畏敬されるのは心地よかった、この世の王にでもなった気分だった、希望を抱かせ、警戒し、安堵する貴様らの顔はなんとも滑稽であった。だがいまや貴様たちは我を邪魔者扱いとしか思っておらぬ。 貴様らは知っていて黙っていたのだろう、この身は確かに、刻々と朽ちて行っているのを。我にとって時間は安いものであった。だが、死の気配は確かにそこにある。飼い殺されるなど無様な死はごめんだ。 鳥かごの鳥になるくらいならば、我はよだかとなってみせる。不死鳥は誇り高きものである。不死鳥が太陽となるのを、地にて見ているがいい。 Footnotes 1. 財団開発セラミック素材
scp-696-jp
評価: +53+–x 評価: +53+–x クレジット タイトル: SCP-696-JP - 眠れる姫と目覚めぬ夢 著者: ©︎amamiel 作成年: 2018 評価: +53+–x 評価: +53+–x SCP-696-JP-Bの一例 アイテム番号: SCP-696-JP オブジェクトクラス: Euclid 特別収容プロトコル: SCP-696-JP-Aはサイト-81██の隔離医療室に収容され、継続的な麻酔投与によって昏睡状態が維持されます。接続機器より検出されるバイタルサインに異常が確認された場合、プロトコル"夢死"に従い、SCP-696-JP-Aに対する安定化処置が試みられます。この試みにも関わらず、意識レベルの上昇が規定値を上回った場合、SCP-696-JP-Aは即時終了されます。 また、隔離医療室内には武装した警備員4名以上を常時配備し、SCP-696-JP-Bが出現した場合には確保を行ってください。確保完了後、待機スタッフによって即座にSCP-696-JP-Bの生体検査・解剖が実施されます。 説明: SCP-696-JPは、以下の2つの要素から成ります。 SCP-696-JP-Aは、かつて███・████として知られていた日系ブラジル人女性です。クラスⅣ現実改変者1に指定されており、認識可能な範囲内での異常な物質生成、物理法則や認識の改竄を行使可能であることが確認されています。20██/01/16以降、財団によって継続した昏睡状態下に置かれており、現在までに身体的な異常は確認されていません。 SCP-696-JP-Bは、SCP-696-JP-Aの周囲に出現する生物群の総称です。現在までに既知の5種類の生物が観測されており、いずれの個体も異常性は見受けられず、同種の個体との明確な差異も確認されていません。SCP-696-JP-Bの出現現象は不明なスパンで瞬時的に発生し、必ず1個体だけが出現します。また、出現したこれら個体は一定時間経過後に、生死の状態を問わず霧散するようにしてその場から消失します。 以下は、現在までに観測されているSCP-696-JP-Bの一覧です。 初出現日 最終出現日 SCP-696-JP-B 概要 20██/03/27 20██/01/24 ハツカネズミ(Mus musculus) 計57体出現。いずれも出現から20分程度で消失。 20██/02/02 20██/08/09 アナウサギ(Oryctolagus cuniculus) 計4体出現。いずれも出現から60分程度で消失。 20██/10/21 20██/02/28 シバヤギ(Capra hircus) 計2体出現。いずれも出現から80分程度で消失。 20██/03/17 20██/03/17 アカゲザル(Macaca mulatta) 1体のみ出現。出現から130分程度で消失。 20██/05/06 N/A 潜水服を着用した男性 現在までに1度だけ出現。詳細は後述する事案報告を参照のこと。 上記一覧からも判断できるように、出現するSCP-696-JP-Bの質量・サイズが期間経過に伴って、段階的に増大していることが確認できます。また、出現しているSCP-696-JP-Bの大半がハツカネズミであり、遺伝子調査の結果、その大半が近交系実験用マウスであった点についても指摘が挙がっていますが、依然として関連性は不明です。それに加え、20██/05/06の人型実体の出現以降から、現在までSCP-696-JP-Bの新たな出現は確認されておらず、出現生物群に関する明確な傾向性を得るには至っていません。 SCP-696-JP-Aは20██/01/15、京都府██郡██町にて確保されました。当初は確保後に即時終了される予定でしたが、GoI構成員である疑い2が浮上したことで終了処置は延期され、調査完了までの間を昏睡状態下で勾留することが決議されました。この2ヶ月後、初のSCP-696-JP-Bの出現事象が観測され、その後もSCP-696-JP-Aの周囲で多発した生物出現事象を受け、現在のSCP-696-JPとしてのナンバリングが暫定的に付与されました。 なお、分類初期より、SCP-696-JP-Bの出現事象がSCP-696-JP-Aの現実改変能力に起因する可能性が挙げられています。しかし、出現事象中であってもSCP-696-JP-Aの情動的反応等には通常時との差異が見受けられず、依然として結論付けるに足る確証を得られていない状態です。 SCP-696-JP-B-65、潜水服に似た装備を着用 事案報告696-JP: 20██/05/06、以前までの出現生物の傾向とは大きく異なり、初の人型SCP-696-JP-B(以下、SCP-696-JP-B-65)の出現が観測されました。 SCP-696-JP-B-65は旧式の潜水服に似た装備を身に着けており、出現直後にSCP-696-JP-Aへと何らかの危害を加えようと試みたため、警備員によって即座に取り押さえられました。以下は、拘束後に実施されたSCP-696-JP-B-65に対するインタビュー記録からの抜粋です。 インタビューログ696-JP - 日付 20██/05/06 対象: SCP-696-JP-B-65 インタビュアー: 阿久津博士 付記: SCP-696-JP-B-65は、自身の主張を聞くことを条件にインタビューへと応じました。また、強い抵抗を示したこともあり、対象は上記装備を身に着けたままの状態でインタビューを受けました。 <記録開始, 20██/05/06> 阿久津博士: それでは、いくつか質問いたします。 SCP-696-JP-B-65: 分かりました。 阿久津博士: まず、なぜ貴方は現れるや否や、ベッドで眠る女性に危害を加えようとしたのですか? SCP-696-JP-B-65: 誤解されているようですが、私は別に危害を加えるつもりはありませんでした。ただ、あの女に目覚めてほしかっただけです。 阿久津博士: つまり、貴方がここへ現れた理由は、あの女性を覚醒させるためだと? SCP-696-JP-B-65: その通りです。これも、全ては私たちが目覚めるために必要なことなのです。 阿久津博士: 貴方たちが目覚めるとは、それはどういう意味でしょう。彼女と同様、貴方も眠っている状態だと? SCP-696-JP-B-65: ええ、きっと現実の私は今も眠ったままなのでしょう。そして、この私は夢の中の私。つまり、現実の私の、夢の中のアバターとでも言いましょうか。 [SCP-696-JP-B-65は数秒間沈黙] SCP-696-JP-B-65: これから話すことは、きっと多くが理解に苦しむことでしょうが、それでもお話をしてよろしいですね? 阿久津博士: 構いません、続けてください。 SCP-696-JP-B-65: ではまず、あの女のことから話しましょう。いえ、正確には、あの女の潜在意識、夢の世界について。かつて、あの女の夢の中には、私のように他所からやってきた誰かの夢のアバター達で構成されたコミュニティーと都市が存在していました。数はせいぜい2000人ほど。特に何を目的に活動するでもなく、皆はただ夢の中での第2の暮らしを満喫していました。 阿久津博士: なぜ、わざわざ彼女の夢の世界へとやって来てまで都市の構築を? 現実での彼女の危険性を考えれば、あまり賢い考えとも思えませんが。 SCP-696-JP-B-65: 最初、夢の中でのあの女の姿は、空に浮かぶ電気クラゲでした。何も危険性はなく、ただボーっと空に浮かんでいるだけ。妙に居心地が良かったのもありますが、女の現実での大暴れを間近で見られる等もあり、物好きな連中もチラホラ集まっていました。しかし、あの女が目覚めなくなってから日を追う毎に、電気クラゲは自分が夢の中の存在であることを理解し始めていました。そして、私たちが気付いた時には身体が透き通ったドレスの女へと姿を変えていました。おまけに、現実のように夢を改変する力を持った上で。 [SCP-696-JP-B-65は項垂れて溜息を吐く] SCP-696-JP-B-65: そして、女は突然に自らを女王と称し、「ここに自らの王国を作る」と宣言したかと思うと、私たちを自らの夢から出られぬよう閉じ込めました。その結果、異変に気付き早々に退去した連中を除けば、少なくとも1000人以上が夢へと囚われ、王国のためにと労働を強いられることになりました。 阿久津博士: では、現実において1000人近くの昏睡状態の人間が存在すると? SCP-696-JP-B-65: おそらくはそうかと。もっとも、すでに半分近くは殺され、現実へと目覚めることも叶わぬ状態となっていることでしょう。しかし、私を含む幸運な数人は何とか女王から逃げおおせ、隠れ家で悪夢から目覚める手段を探し続けました。そんな夢の中、時間は嫌というほどにあったものの、現実に残した家族のことを想うと、少しも気が休まる暇はありませんでしたが。 阿久津博士: そうして貴方は、夢から目覚める手段として「現実で眠る女王を直接的に目覚めさせる」という手段を見つけ、実行したというわけですか。 SCP-696-JP-B-65: はい。思い返せば、実験には多くの苦労と犠牲を伴いました。しかし幸か不幸か、夢の中でも動物の調達には苦労しませんでしたし、現実での仕事柄、研究での動物の取り扱いにも慣れていました。そして今日、私は目的を果たすために夢の身でありながら、現実の地を踏むに至ったのです。 阿久津博士: つまり、今までに出現した動物も実験でしたか。では、その装備にも何か意味があるのですか? SCP-696-JP-B-65: この身にとって、現実は余りにも濃すぎます。私自身もこの防護服がなければ、即座に現実性で押し潰され消えてしまうでしょう。しかし、犠牲になろうとも、私には目的がありました。無論、私の手で直接女王を目覚めさせることが成功できぬだろうとは考えておりました。そのため、私の主張を聞いていただきたいのです。 阿久津博士: お聞かせください。 SCP-696-JP-B-65: あの女を目覚めさせてください。ほんの少し、数秒でも構いません。その時間で、私たちは女王の夢から抜け出すことができる。私は、私たちはただ、目覚めたいだけなのです。愛する家族たちが待つ、唯一の現実へと。 阿久津博士: 善処しましょう。ところでこちらからも、もう1つよろしいでしょうか? SCP-696-JP-B-65: 何でしょう。 阿久津博士: 現実の貴方について、いくつか情報をいただきたいのです。名前、年齢、住んでいる場所、家族構成、その他諸々を。貴方の証言が全て事実である、その裏付けを取りたいですので。 SCP-696-JP-B-65: 分かりました、私が王国に閉じ込められる前までの情報で良ければ、全てお話しします。私の名前、仕事、家族についてを。 [以下、重要性の低い内容のために省略] <記録終了, 20██/05/06> 終了報告書: 更に30分程度のインタビューが行われた後、各種検査・調査のためにSCP-696-JP-B-65の了承の下で装備が取り外されました。その20分後、SCP-696-JP-B-65及びその装備は他のSCP-696-JP-B群同様、その場から霧散するようにして消失しました。 追記: SCP-696-JP-B-65が上記インタビュー中に証言した情報を基に、「██ ██」と称される人物に関する調査が実施されました。その結果、██ ██氏が実在する人物であり、その人物像や経歴、家族構成等もSCP-696-JP-65が証言した情報と完全に一致していることが確認されました。しかし、同氏は約1年前に交通事故で死亡しており、それまでの間も長期的な昏睡状態へと陥った事実は存在していませんでした。 その一方で、██夫人に対して実施された生前の██氏に関しての聴取では、同氏が数年前に一時的な熟眠障害の症状に悩まされており、その際に「寝つきが悪く、夢が見られなくなった」と主張していた、との証言が得られています。しかし、上記症状は1年程度で解消されており、それ以降も目立った異常は確認されていませんでした。それに加え、SCP-696-JP-Aが昏睡状態下へと置かれた20██/01/16から数日以内の期間において、約千人規模の集団昏睡事案が発生した記録も一切確認できていません。 現段階において、SCP-696-JP-Aを昏睡状態より覚醒させる試みは計画されていません。 Footnotes 1. 詳細は「ベンソン・R. 現実歪曲実体分類. 財団研究誌, 3(7), (1921), P10-58.」を参照ください。 2. その後の調査結果より、この疑いは完全に否定されました。
scp-697-jp
評価: +26+–x アイテム番号: SCP-697-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-697-JPはセキュリティシステムを搭載した、小型動物収容房にて飼育されています。収容房はクリアランス3以上の職員の許可を得た上で、収容房の複数の解錠パスワードがSCP-697-JP専任セキュリティ担当者より発行されます。発行されたパスワードは全て2時間後に無効化されます。また、収容プロトコル外部に持ち出す場合には、必ず専用のプラスチック製ケージに入れてください。実験に使用する際であっても、ヒトの皮膚と接触する危険性のある状態で収容房の外部にSCP-697-JPが連れ出された場合には、収容違反と見做されます。 外部から一日一度、収容房に備え付けられた餌投入口とチューブを使用して、餌の補充と給水を行ってください。SCP-697-JPの排泄物や塵等が卵の発見を阻害することのないよう、3週間に1回以上の清掃をクリアランス3以上の職員の監督の下で行ってください。収容房内にSCP-697-JPの卵を発見した職員は迅速に回収し、破壊してください。クリアランス3以上の職員の監督下以外で許可無くSCP-697-JP-1に産卵させた者、卵を孵化させた者は厳重な処罰を受けます。 説明: SCP-697-JPはハト目ハト科ジュズカケバト(学名:Streptopelia risoria)の白変種のメスです。外見や肉体の構造上に異常は見られませんが、ヒトの皮膚に接触した時その異常性を発揮します。SCP-697-JPはヒトに接触された場合、約20秒後に産卵します。産卵直後の卵は2cm程ですが、1時間に10~15cmずつ肥大します。120~███cmの大きさにまで肥大した卵の殻は自ら破れ、中からはSCP-697-JPに接触したヒトを完全に模した身体が前屈姿勢の状態で出現します。(以降これをSCP-697-JP-Aと表記) SCP-697-JP-Aは古傷や健康状態に至るまで、身体の状態が模倣元と完全に一致していると判明していますが、生命活動が停止しています。また、生存していた形跡も発見されていないことから、死体の状態で生成されているものと推測されます。SCP-697-JP-Aが致命的負傷を受けた場合、加害者はSCP-697-JP-Aのオリジナルを"殺した"と確信する現象が確認されています。これは、加害者がSCP-697-JP-Aとオリジナルを同時に視界に入れていた場合でも変わらず、加害者はオリジナルの生存を認識できなくなるようです。この異常性は、"致命傷"の場合のみに現れ、致命的ではない負傷や[削除済]の場合には確認することができませんでした。 SCP-697-JPは、長崎県南島原市██海岸にて、「ハトが知り合いの死体を温めている」と住民から現地の警察に通報が入った際、別任務の為現地住民に扮して潜伏していたエージェント・██によって警察が現場到着するより先に回収され、事なきを得ました。SCP-697-JP捕獲の際、エージェント・██はSCP-697-JPに接触したと証言しています。SCP-697-JPから産まれた卵は確保から約1時間後に孵化し、孵化したエージェント・██モデルのSCP-697-JP-A-2は収容経路にて破壊されました。破壊されたこのSCP-697-JP-A-2は現在特別霊安室にて保管されています。詳細の研究が終了した為破棄されました。 SCP-697-JP、SCP-697-JP-A(██海岸にて回収されたSCP-697-JP-A-1とエージェント・██モデルのSCP-697-JP-A-2の二体)を輸送中に一般人男性に襲撃される事件が発生しました。この一般人男性はSCP-697-JP-A-1に瓜二つであった為、SCP-697-JP-A-1のオリジナルであると想定されます。エージェント・██は男性が「島原の民を救う為に主が遣わしたのだから」としきりに発言し、SCP-697-JPの返却を求めてきたと証言しています。エージェント・██が返却を拒むと、男性は激高し、エージェント・██を所持していた日本刀で殺害しようとしました。しかしエージェント・██がとっさに盾にしたSCP-697-JP-A-2の首を意図せぬ形で切断すると、男性は沈静化し、撤退しました。後日財団職員により捕らえられ、インタビューを受けた後、Aクラス記憶処理を施されました。インタビューの内容は以下です。   対象: 南島原市出身の一般人男性。調査された経歴に不審な点は見受けられなかった。 インタビュアー: ██尋問官 <録音開始> インタビュアー: 何故彼を襲撃したりしたのです? 男性: お前たちがやったことだ。我々は苦しめられていた。ただ信仰に救いを求めただけなのに、お前たちはそれを踏みにじってくれた。 インタビュアー: 私たちが今まで貴方に接触したことは無いはずです。それに、エージェント・██は貴方とは初対面であったと仰っていましたが。 男性: 死んだ男が何を語る。我々は主の救いをもってして、聖人だけでも生かさねばならない。 インタビュアー: ……貴方は██ ███1さんで間違いないですね? 男性: ██████████████████ インタビュアー: ありがとうございました。インタビューを終了します。 <録音終了> 終了報告書: 男性は原因不明のミーム汚染に蝕まれていることが判明。インタビュー後、これ以上状況を判明させることのできる情報は期待できないとして、Aクラス記憶処理の後、正常な精神状態と記憶を取り戻した為、解放した。     補遺: 20██/04/11、SCP-697-JPがヒトとの接触が完全に絶たれている状態で産卵しました。卵は肥大せず、やがて孵りましたが、SCP-697-JP-Aではなく、ラテン語の文章が墨によって書かれた横20cm、縦12cmの和紙が出現しました。内容は以下です。 qui de tantis periculis eripuit nos et eruet in quem speramus quoniam et adhuc eripiet2 なお、この事件によりSCP-697-JPが卵を産み出すメカニズムと卵から産まれる物質の不確実性が判明したため、オブジェクトクラスのEuclid昇格が現在検討中です。 Footnotes 1. 男性の本名。 2. 新約聖書 コリントの信徒への手紙Ⅱ 1章10節の文章と一致します。
scp-698-jp
評価: +51+–x SCP-698-JP アイテム番号: SCP-698-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-698-JPは筒状に丸めて、適切なサイズのケースに収納します: この状態でのSCP-698-JP-1の出現は現在まで確認されていませんが、万一の可能性を考慮し、ケースは常に監視装置の作動している収容室内で保管されています。 説明: SCP-698-JPは縦78 cm × 横54 cmのポスターです。SCP-698-JPが貼り出されている時、不定のタイミングで、その前方付近にSCP-698-JP-1が出現します。 SCP-698-JP-1はポスターに描かれたとおりの姿をしており、青い粘土でできたキャラクターがプラスチック製の「スイッチ」を頭上に持ち上げている状態で現れます。SCP-698-JP-1は「ねーねースイッチ押してー」「誰か押してよー」等と話しながら歩行します: 人の多い所へ行こうとする傾向にあるようです。 SCP-698-JP-1を視認する人間は、非現実的、非科学的、あるいは何らかの特別な存在を見ているようには感じません。可愛らしい等と思う事もありません。しかしSCP-698-JP-1の外見「以外」に対する印象に関しては、前述のような心理操作を受けることはありません。実験に参加した被験者のおよそ8割はSCP-698-JP-1に不信感や面倒臭さ等の感情を示し、SCP-698-JP-1を無視あるいは軽く会釈して離れようとして、自発的にスイッチを押そうとはしませんでした。 SCP-698-JP-1はスイッチを押されると、喜ぶような顔をして感謝の言葉を述べ、SCP-698-JPの近くへ戻って消失します。スイッチを「押した」人間に関してSCP-698-JP-1は「もう自分のスイッチを押せてた人」と評しますが、特異な点や「押した」後の変化は確認されていません。 SCP-698-JP-1を視認してもスイッチを「押さなかった」人間は、SCP-698-JP-2に指定されます。SCP-698-JP-2は後述の「行動」を起こすまで、「押さなかった」事実を忘れる事ができません。SCP-698-JP-1を視認してから長期間が経過し、何かの作業に従事している時であっても、SCP-698-JP-2はSCP-698-JP-1について尋ねられると「押さなかった」時の事を詳しく思い出し、多くの場合は後悔の言葉を交えて話し始めます。「押さなかった」経験がSCP-698-JP-2の日常に支障をきたすレベルで影響を及ぼした事例は記録されていません。 SCP-698-JP-2は他者への援助や貢献などの「行動」を起こす事に対して積極的になります。元々の性格にかかわらず、SCP-698-JP-2は「行動」の機会を見つけると率先してそれを遂行しようとします。「行動」の詳しい定義は解明されていませんが、以下のような事例が記録されています。 高齢者や障害者等への座席の譲渡。 荷物運びの手伝い。 持ち物を落としたことの指摘。 火災や事故の現場での救助活動、またはその手伝い。 急病人の介抱。 他者間のハラスメントに対する抗議や告発。 このような「行動」を達成したSCP-698-JP-2は、「押さなかった」事を忘れられるようになります。 SCP-698-JPは財団の物流部門により発見されました: 財団に搬入される物資の中に、SCP-698-JPを筒状にして収めた箱が紛れ込んでいました。箱の中にはSCP-698-JPの他に、電子メールをプリントアウトしたと見られる書面1枚と、防腐処理を施された人間の人差し指が同梱されていました。 SCP-698-JPと共に発見された人差し指は、DNA鑑定によりPOI(要注意人物)-011/013-JPのものと判明しています。POI-011/013-JPはAre We Cool Yet?の反乱分子として知られる「池光子いけてるこ」本人もしくはその構成員と推測されている人物で、財団は今回の人差し指以外にも複数の、POI-011/013-JPの分割された身体の一部を回収しています。 SCP-698-JP-1は、財団が収容する前のSCP-698-JPについて「大きな交差点が近くにある、都会の駅」に貼られていたと主張しますが、その駅名については覚えていないと話します。 補遺698-1 - SCP-698-JPの裏側に書かれた記載: 近くにいたりするとイヤーなカンジになる、うっとーしい、メーワクなやつ。 今回はうまいこと作れたと思うんだけど、どうかな。 てるこ 補遺698-2 - SCP-698-JPと共に発見された書面: 特級品の糞だ。 あんたが撒き散らした中でもこいつは特にひどい。 駄作に過ぎる、いや作品ですらない、アート未満だ。 道徳なんて糞だと言われた意味をこれっぽっちも理解していない、 救いようの無いあんたの無能さを体現したかのようだ。 見てるだけで虫唾が走るこいつも、有志のメンバーがアートに昇華してくれるかもしれない。 あんたの他の糞みたいにな。 だが俺は敢えて、この惨めな姿を見せしめとして残しておいてやろうと思う。 何しろこいつのくせえくせえ悪臭ときたら、 あんまり突き抜けすぎてて逆にクールだ。(注: 黒く塗りつぶされていました。下に書かれた内容は判読不能) 素材を素材のままありがたがるような、物の価値を知らない奴らの元へこいつを送っておいてやる。 奴らなら、こいつを俺たちからうまく隠しておいてくれるだろう。 追伸:息子の件とは関係無い。あの世で永遠に眠っていろ、クソアマ。
scp-699-jp
評価: +20+–x アイテム番号: SCP-699-JP オブジェクトクラス: Safe SCP-699-JP-Bに指定された石段 特別収容プロトコル: SCP-699-JPには複数のカバーストーリーが適用されます。SCP-699-JP-Aは周囲を環境に適した高さ2mの柵で囲って完全に封鎖し、「老朽化」のカバーストーリーを流布して新しく建てられた神社に登記簿を移して下さい。SCP-699-JP-Bはカバーストーリー「危険生物の増加」の流布を行い経路を全て封鎖した上で警備員による監視を行ってください。SCP-699-JP-Aの神主に対しては円滑な収容を行う為に一部の事情の説明と問題にならない程度の記憶処理を行い、新たな神社での業務を続けさせて下さい。 説明: SCP-699-JPはSCP-699-JP-AとSCP-699-JP-Bに対しての一定の手順を踏んだ通行を行った際に発生する、現実改変と思われる異常現象です。SCP-699-JPの異常性の発露には手順を行った個人の認識が強く関係していると考えられており、該当する認識を意識していない個人に対しては効果を及ぼさないと考えられています。常識の範囲外の事象で効果を及ぼす可能性があります。 SCP-699-JP-Aは██府███市に位置する████神社、及び境内に設置されている御籤です。SCP-699-JPの発露の手順は当区域内で発露要素を含む紙片(以下、紙片と既述)を手に入れる行為です。1この発露要素は「待ち人来る」の文字(以下、発露要素と表記)であり、印刷や手書きに関わらず発露要素を含む紙片であればSCP-699-JPは発露します。また御籤を撤去した場合は敷地内の全ての落ち葉、冊子、紙幣、生物の皮膚等が発露要素の記述された白色の繊維質へと変化する事が確認されています。 SCP-699-JP-Bは████神社から国道██号線までに位置する約50mの距離の階段と坂を含んだ歩道です。SCP-699-JPの発露の手順として、SCP-699-JP-Aにて保有した紙片を所持した状態で通過する必要があります。この際にSCP-699-JPの発露以前に紙片を損壊、破棄した場合には何も発生しませんが、その場合紙片は消失することが確認されています。 SCP-699-JPは上述した手順を行った際に、行った人物が会いたいと望む人物を可能な限り違和感の無い形でSCP-699-JP-Bへ誘導します。この際に誘導された人物は様々な理由でSCP-699-JP-Bへ自らの意思、あるいは相応の理由で辿り着いたと証言しますが本来一緒に行動していた人物や目撃者の証言等から認識操作、もしくは一種の現実改変が行われていると考えられています。 以下はSCP-699-JPの実験を一部抜粋した資料です。 詳しい資料の閲覧にはSCP-699-JP担当研究者の許可が必要です。 + 資料を閲覧する - 閲覧を中止する 実験記録699-JP-1 - 日付20██/██/██ 対象: D-5648、45歳、男性、誘導を行う対象を質問した際に「7歳になる娘」と返答。 実施方法: 手順を踏ませSCP-699-JP-Bを通過させる 結果: 国道側からD-5648の実子が走りながらSCP-699-JP-Bへと現れた。後に現れた担当教諭は付近に遠足に来ていた所はぐれてしまったと証言。 分析: 対象を呼び寄せる為に関係する人物や周辺の情報を丸ごと書き換えた結果だと考えられる。なおD-5648の実子の監視を行っていたエージェントの事前の報告では遠足の予定等は確認されていなかった。エージェントは遠足を行っている間も監視を続けており、SCP-699-JP-Bの付近に訪れた事に対して何の違和感も感じていなかったと証言している。 実験記録699-JP-2 - 日付20██/██/██ 対象: D-2418、31歳、男性、対象に関して「自身の妻」と返答。D-2418の妻の所在地は██府でありエージェントによって監視が行われている。 実施方法: 上記と同様。 結果: 御籤を振り続けたが要素を含む紙は出現しなかった。御籤の容器内の紙を全て取りだし「待ち人来る」と表記した紙片を300枚投入した上で再度挑戦を試みた結果、何も書かれていない紙片のみが300枚現れた。その後の██回に渡る試みも同様の結果だった。 分析: D-2418に改めて話を聞いた所「思い付いたから答えただけで妻に会いたい訳では無かった」との証言が得られた事からSCP-699-JPの発露には、手順を行う人物の認識が関係していると思われる。 実験記録699-JP-4 - 日付20██/██/██ 対象: D-4504、29歳、男性、対象に関して「前に見かけた美人の研究員」と返答。対象に関して調査を行ったが財団職員ということ以外は判明していない。 実施方法: 上記と同様。 結果: D-4504が突如消失。3日後の捜索の際に██研究員がSCP-699-JP-Bに立ち入った所、D-4504がSCP-699-JP-Aの方向から歩いて現れた。D-4504は「たった今神社から帰ってきた所だ」と返答し時間の経過を把握していなかった。その後の聴取でD-4504の選んだ対象は██研究員である事が判明したが、██研究員は見覚えが無いと証言している。 分析: 被験者そのものに影響を及ぼした事例が確認された。このような現象が発生した理由に関しては、恐らく呼び寄せた対象が財団職員だった事が誘導の障害となった為だと考えられる。なお実験後██研究員の衣服や所有物の一部が全て男性の物に変化していた事が報告されたがSCP-699-JPとの関連性は不明である。 実験記録699-JP-7 - 日付20██/██/██ 対象: D-3156、27歳、女性、対象に関する質問に対して「10年近く会っていない姉」と返答。実験結果の変化を確認する為に対象は██県に位置する財団施設にて身柄を拘束している。 実施方法: 上記と同様。 結果: D-3156と似た外見をした女性が国道側から現れた。この女性は「自分はD-3156の姉だ」と証言しており、D-3156もそれを認めた為に検査を行った結果施設で拘束している人物とDNAが一致した。双方から事情を聞いた所拘束されるまでの証言は一致したが、SCP-699-JP-Bに現れた人物は拘束を逃れて逃亡していた所偶然現地に辿り着いたと証言した。 分析: 矛盾を解決する為に対象を複製したと思われる。D-3156の姉に関しては2名共記憶処理を行った上で研究施設へと移送を行い現在も監視を続けている。 実験記録699-JP-9 - 日付20██/██/██ 対象: D-7740、36歳、男性、対象に関して「誰も思い付かない」と返答。なおD-7740には生存している家族、友人がいないことが確認されている。 実施方法: 上記と同様。 結果: 助けを求める█歳の少女が草叢から現れた。保護した後に身分等を訪ねた所D-7740が過去に起こした犯罪の被害者の情報と一致していた。 分析: 恐らくは被験者が無意識に望んでいた人物を呼び寄せたと考えられる。なお実際の被害者女性は現在██歳であり、D-7740がSCP-699-JP-Bを通過する直前に失踪して現在も行方不明である事を追記する。 実験記録699-JP-13 - 日付20██/██/██ 対象: エージェント・██、男性、28歳、対象に関して「亡くなった同僚」と返答。この同僚はエージェント・███であると被験者は証言している。 実施方法: 上記と同様。 結果: 小規模な地震の発生の為に石段が破損し埋没していた人間の遺体が露出した。DNA検査の結果、実験が行われる数週間前に別件でSCP-699-JP-B近辺を調査中に失踪したエージェント・███の物であると判明した。 分析: 死体として現れた初めての事例。なお上記のエージェント・███の失踪に関しては実験前の段階では判明しておらず、音声記録と物的証拠から恐らく研究班と共に実験を監視していたと考えられるが研究班全員はこの事実を否定している。エージェント・███が死体として現れた理由は恐らくエージェント・██が以前起きた事案の際に記憶処理を受け別のサイトに異動したエージェント・███が死亡した記憶を刷り込まされていた事が関係していると思われる。 実験記録699-JP-17 - 日付20██/██/██ 対象: D-3180、19歳、女性、対象に関して「アイドルグループ████の████」と返答。実験時に対象は██県の撮影所にてドラマの撮影を行っており、潜入したエージェントによって監視が行われていた。 実施方法: 手順を踏ませSCP-699-JP-Bを通過させる 結果: ████が上空のヘリコプターからSCP-699-JP-Bへと降下した。 この結果についてエージェントの報告では実験開始直後に急遽監督の指示により台本の内容を変更してスカイダイビングを行った事が原因とされている。この際に異常を察知したエージェントからの報告によって撮影会社への上層部を通じた撮影中止の通達が試みられたがスタッフの携帯電話の紛失、事故による断線、役員の突然死等のトラブルによって失敗している。事態を重く見た理事会の判断によって撮影所内のエージェントによる直接の撮影中断も試みられたが警備員とスタッフの「異常な程統率の取れた妨害」によって失敗に終わり、撮影は続行され████はスカイダイビングを実行した。 分析: この実験記録を持って、SCP-699-JPの手順が実行された場合の中断、妨害は不可能であると断定された。以降の実験に関しては審議中。 上記の実験結果を鑑みた結果、これ以上の実験の継続は世間への混乱、深刻な情報漏洩、財団内部への干渉を及ぼすと判断した日本支部理事会の命令によって禁止されました。 補遺: 20██/██/█、SCP-699-JPが関与している可能性のある事案が発生しました。警備員の報告によると境内に突風が発生し御籤の容器が倒れた事によって内部の紙片がSCP-699-JP-Bへと飛ばされた事が発端だとのことです。警備員が紙片の回収に向かった所、80代と見られる男性が現れ突如敬礼するような動作を行った後に万年筆を使用して自己終了を行いました。その後身元を調査した所SCP-699-JP-Aから5km離れた場所に位置する戦没者慰霊碑へ訪れていた██氏であった事が判明しましたが、SCP-699-JP-Aに一度も訪れた事は無い事が確認されています。██氏の行動の原因は判明しておらず、SCP-699-JP-Bに飛ばされた紙片に発露要素が含まれていた事との関連性は不明です。 脚注 1. 発露要素を含まない紙片に関しては異常性は確認されていません。
scp-700-jp
評価: +132+–x アイテム番号: SCP-700-JP オブジェクトクラス: Safe 特別収容プロトコル: SCP-700-JPは現在財団の収容下にありません。当該オブジェクトの奪還作戦メンバーに加えられた新たな職員はレベル3実戦想定訓練プロトコルとレベル4模擬実戦実弾使用プロトコルを受けてください。奪還に使用される資材の全ては財団総資産の0.000000009%の範囲内に収めてください。この額を超える資金の要求は財団経理課長の承認を得て前述の最大1.5倍までが認められます。当該オブジェクトの周辺に存在する住宅地への被害情報の漏洩を最小限に抑えるため、作戦実行前にプロトコル"集団記憶喪失"に当該住民を適応させてください。作戦の是非に関わらず作戦が終了した場合、カバーストーリー"爆竹による悪戯"・"直下型大地震"・"ハリケーン"・"津波被害"の内適切なものが適用されます。このカバーストーリーの適用に伴い、予想される死者数に応じて回収した民間人から規定人数の終了を行ってください。奪還に成功した場合、新たな警備体制と収容手順を作成し、Malchut評議会へ提出してください。 + 旧収容プロトコルの表示 - 閉じる 特別収容プロトコル: SCP-700-JPの発生地点は現在サイト-51██に指定されており、SCP-700-JPは発生場所を起点とした2 m×2 m×2 mの標準的Safeクラスオブジェクト収容コンテナを重量計に載せた形で収容され、施設全体は8時間間隔3交代制による警備が行われます。重量計の値が増加を示した場合、新たな物品排出の可能性があるためそれらを迅速に査定し、可及的速やかな危険性の把握・対応を行ってください。この対応にはオブジェクトナンバーの割り当て、Anomalouアイテム指定、廃棄処分等が該当します。亜財団による実験停止要求は現在審議中です。 説明: SCP-700-JPは北緯 29度36分█秒・東経 C度1B分██秒41.902166, 12.453938に位置する地上0.5 mほどに浮かぶ直径1 mほどの二次元平面状の空間異常です。正面から観測した際、SCP-700-JPは別の空間へ繋がる穴のような振る舞いを見せ、その外周は常に不規則に発光しています。発見当初の記録によると非常に狭い部屋の内側に繋がっている様に見えると報告されています。正面180度以外の角度から観察した場合、SCP-700-JPは視認することが出来ません。SCP-700-JP内部に存在する組織1との検証の結果、当該オブジェクトの内部は既に発見されている特異点の接続先と異なっており、SCP-700-JPは新たに"一般的特異点-D"に割り当てられました。 SCP-700-JPを物体が通過すると空間差、あるいは次元差による物体への"変異"が生じます。これまでの実験の結果より、この変異の規則性は不明ですがSCP-700-JPを通して目視で観測される物の形状は、通過の前後で大きく変わる事が分かっています。この"変異"には意図しない物質の通過も含まれており、常時不規則に発光しているのはSCP-700-JP内部の光や大気が当該オブジェクトを通過した結果であると推測されています。研究の結果、SCP-700-JP内部へ変異しない健全な情報を伝達するには、単純で変異の少ない2進法を用いた非接触型電気信号が有効である事が分かっています。これらは後述の実験の全てにおいて、SCP-700-JP内部との情報伝達に用いられています。 SCP-700-JPの内部にはヒトと酷似した文化を持つ二足歩行の生命体が確認されています。これらから送られてきた文章の解読の結果、これらは財団と人類に対して非常に強い関心を示しており、SCP-700-JP内部にも財団と似た組織(以降この組織を"亜財団"と呼称します)が存在していることが確認されています。亜財団はSCP-700-JP内部に展開される独自の物理法則に準拠しない異常な特性を有する物体の確保、収容、保護を目的として設立された機密性の高い組織であり、最高理念は異常な特性を持つ物体の研究による科学技術の進歩であると主張しています。 7D7年█月█日までに行われた相互実験の結果、当該オブジェクト内部において存在する"元素"にあたる粒子の種類は、安定して存在し、なおかつ公表されているものが合計で70種類であると亜財団側は主張しています。また、送られてきた詳細な元素のデータのうちSCP-700-JP内部と共通する物質は"元素番号10番硫黄"だけでした。なぜ硫黄だけが共通するのか理由の解明には至っていません。SCP-700-JP内部の亜財団の存在する天体は、1つの恒星の周りを、公表されている限りD個の惑星が同一方向に周回している恒星系に存在します。亜財団の存在する星は、直径C27 kmで衛星を1つ持つ、恒星から見て3番目の惑星であることが分かっています。 物質相互投入実験1 - 日付7D7/█/█ 要求: 両財団の存在する星において生物の生存に不可欠な物質の代表例を安全で開封が容易な容器に入れて投入 対象: 水1 Lを一般的プラスティック容器に入れ投入 結果: 直方体の容器に入った液体EA mL これらは人体に対し毒性がありませんでしたが人類にとって生存に不可欠な物質ではありませんでした。 その後の通信の結果、亜財団は投入した水に対し非常に強い関心を示し、投入した水が「赤色で既存の液体を際限なく侵食する人類に対して有害な物である」と主張しています。この特性の変質は次元差による変異であると結論されました。 備考: 交換されたこれら二つの物質は現在双方の財団で収容対象に指定されています。 物質相互投入実験2 - 日付7D7/█/█ 要求: 両財団の存在する星において最も一般的な金属を代表する物質を最大限の純度で最も精度の高い加工技術を用いて規則的な形にし投入 対象: 純度FF.FF %の鉄を真球にして投入 結果: 非常に不規則な形に加工された未知の物質1 kgの形に関する質問を亜財団に提出したところ、"次元差による変化の範囲内である"と回答がありました。なお、亜財団の加工技術は断面の解析結果より人類より低レベルであると結論されています。また、亜財団は財団が投入した鉄に対して非常に強い関心を示し、それらが「危険な認識災害を伴う物質であり、似た形の物体を作成する無謀な努力を試みさせるものである」と主張しています。 備考: 交換されたこれら二つの物質は現在双方の財団で収容対象に指定されています。 相互人体投入実験 - 日付7D7/█/█ 要求: 亜財団の職員の中から実験用の人物1名の投入 対象: 健康的なDクラス職員の中からD-3DEC6Dを選出し投入 結果: SCP-700-JPの外観より観測される内部に存在した二足歩行生物と全く形の違う生物(以降、SCP-700-JP-1と呼称)が排出されました。SCP-700-JP-1は中心から伸びる2Aつの突起物を持ち、それぞれの突起の末端部分は大小様々な膨らみを持っています。そのうち1つの膨らみを繋ぐ結合部を振動させることで声を発することが分かっています。この声は人間の可聴領域と不可聴領域の音を不規則に発しており、解読は困難です。排出からおよそ18時間でSCP-700-JP-1はそれまで行っていた移動や跳躍などの運動を止め、発声も見られなくなり、完全に活動を停止しました。この現象は死亡と推測されており、遺体はSCP-700-JPへ投入されました。  亜財団はD-3DEC6Dの投入から3時間後に通信を行っており、内容はD-3DEC6Dが「非常に敵対的で自ら改変した歴史に自らを組み込み、人類に重篤な危害を及ぼす凶暴で強力な武力を持つ人型オブジェクトであった」とするものでした。亜財団へこちらの研究結果を報告した際の返信を鑑みて検証した結果、これらは次元差による変異だと結論されました。  備考: 後の通信により亜財団は財団が投入したD-3DEC6Dの特異性のため財団への返還を希望していますが、それらは亜財団側の力では困難であるため、早急な返還は不可能であると主張するものでした。財団はこの通信に対して「困難であれば返還を要求しません。D-3DEC6Dの封じ込めが最大限であるならば亜財団に委ねます」と返答しました。 + [要セキュリティクリアランスレベル4] - [要セキュリティクリアランスレベル4] 特異物質投入実験 - 日付7D7/█/█ 要求: 亜財団の収容する敵対的な生物オブジェクトの組織片の投入と返還 対象: SCP-███の外皮1 kgを投入 結果: 2Aヶ月の交渉と議論猶予を設けた結果の極秘投入により、一般的なコモドオオトカゲ (学名:Varanus komodoensis)と全く同じ遺伝子構造を持つ爬虫類の外皮1.12 kgが排出されました。 亜財団から事前に添付された資料によるとこれらは非常に敵対的であり、外皮の断片から全身を復元する事のできる非常に危険性の高いオブジェクトであると警告を受けていましたが、警告された全ての危険性は認められませんでした。 この投入実験より1年の間亜財団からの通信はなく、回線が回復した7D7/██/██の通信によると財団が投入したSCP-███の外皮は「ヒトの体液で出来た凶暴で強力な力を持つ生物に復元した」と主張しました。通信途絶の理由に関しては「財団が投入したSCP-███の外皮の収容と被害の復興に尽力していた」とのことでした。送られてきた研究結果を総合するとSCP-███は次元差による変異のため、その特異性と危険性を増して亜財団側へ排出されたものと思われます。 備考: 後の通信で亜財団は排出されたコモドオオトカゲの外皮を返還しないよう要求してきました。また、亜財団は財団が投入したSCP-███の外皮の特異性と危険性のため、返還は不可能であると主張しました。財団はこの全ての要求を承諾しました。 低危険性-特異物質投入実験2 - 日付7D7/█/█ 要求: 亜財団の収容する低危険度の異常な特性を持ったアーティファクトの一時的投入と返還 対象: 人に軽度の殺人衝動と強制の認識災害をもたらすSCP-███ 結果: 中央に楕円形の赤色鉱石がはめ込まれた円形白色金属の上に複数の小さな透明の結晶の乗った首飾りのような円盤が排出されました。事前に警告された通信によると、このアーティファクトは直接触れた生物の精神を汚染し、共通した1つの人格を作り出す人体に対して不可逆性の強い危険なものとされていましたが、Dクラスを用いた5回の実験の全てにおいて何の異常も観測されませんでした。この実験結果を亜財団に送信することが成功した翌年2月の通信において、亜財団はSCP-███が「目視した人間に対し強い殺害衝動を引き起こし、なお且つ自身の損傷の度合いに応じて人間を未知の方法で傷つける危険性の高い若年人型オブジェクトである」と主張しました。亜財団は"アーティファクトの要請"に財団が違反したと主張していますが、これに対し財団側は否定しました。詳細なデータの送信と議論の結果、この物質から人体への変化も次元による変異の範囲内であると結論されました。 備考: 実験結果に関して亜財団は排出されたオブジェクトの即時返還と、財団が投入したSCP-███の返還不可を通達しました。財団はこの不測の事態の代償とみなし、SCP-███の返還要求を取り下げました。また、亜財団はあらゆる投入実験の恒久的停止を要求しました。現在実験の停止要求の是非を審議中です。 空白 [事件記録700]及び[通信記録No.F2C "最後の通信"]:7D7年█月█日に受けた要注意団体:████の襲撃と、████の内通者であった元収容責任者██と元サイト管理者██████=███の離反により、サイト-51██の彼らを除く職員全員が死亡、SCP-700-JPは現在████の管理下に保護されました。現在まで行われた2A回全ての奪還作戦は失敗しており、最後に行われた財団の潜入工作員の調査によると████は、無差別にあらゆる物品をSCP-700-JP内部へ投入し続けていることが判明しました。これに伴う亜財団側への被害は現在調査中です。 前述の潜入工作員の秘匿通信において、財団は「複数の致命的現実改変と超危険度のオブジェクトへの対処の目処は全く建っておらず、プロトコル"胡蝶の夢"の発動を検討している」と主張しました。これを受けた潜入工作員はその旨をMalchut評議会へ通達し、即座に財団が保有する幾つかの記憶処理技術と再建のための[データ抹消]の設計図が送信されました。[データ抹消]の孕む危険性を十分に説明した後、当該の潜入工作員との通信は途絶し、現在も帰還していません。このため、亜財団側がどのような対処を行ったのかは判明していません。 空白 もし、次に通信を行えるチャンスが巡ってきたならば、我々が真っ先に行うべきことは事の謝罪である。我々が犯した収容と警備の怠慢を彼らに報告し、心の底から謝罪することが我々の任務だと思っている。例え世界が違えど、同じ意思を貫いてきた組織であるなら我々はこの失敗を真摯に受け止めるべきだ。彼らが今どのような危機に直面しているのか見当もつかないのだから、我々は持てる力を駆使してSCP-700-JPを奪還しなければならない。財団の最高司令部を代表して記す、O5の方々、ほんとうにすまない。  —Malchut-01 Footnotes 1. 後述の"亜財団"を指します。