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 お尻を両手でギュッと掴んで、その掴んだ感じを振り向きながら見ていると、政代の長い髪の毛が顔の前に回りこんできた。
「この長い髪の毛だって俺のものなんだよな」
 クンクンと髪の毛を匂ってみると、かすかにシャンプーの香りがする。 このタイツは、そんなところまで再現しているのだ。
「そっかぁ……俺って今、姉貴なんだ……」
 分かりきった事を呟いた智一は、さっそく次の行動に出る事にした。まだ両親も政代も帰ってくる時間ではない。
 今のうち。今のうちにやりたいことをしておかなければ。
「よし、姉貴の部屋に行って化粧しよう」
 政代の声を使って呟き、裸のまま隣の彼女の部屋に向かった智一。
「えっと……」
 いつも政代が使っている化粧箱を取り出し、鏡台の上に置く。そして、裸のまま椅子に座ると、政代の顔に化粧を始めた。昨日の夜にインターネットで調べていた化粧の仕方を思い出しながら。
 まず、油取り紙で顔の油をとる。タイツ(マスク)なので油なんて出ないだろうと思っていたのだが、しっかりと汗や油が 紙に付いていた。マスクをつけてからまだ何分も経っていないのに。それほど智一が興奮して、汗を出していたという事だろうか。
「え~、まずは下地を作るって書いてあったっけ。たしかファンデーションってやつだよな」
 画像が載っていたので、それと同じようなものを探してみる。すると、肌色のリキッドタイプのファンデーションが入っているのを発見した。
「よし、これだこれ。これを……パフってやつで塗るんだよな」
 柔らかいスポンジ生地のパフを手にとり、リキッドタイプのファンデーションを付けて顔に塗り始める。 鏡に映る政代の顔にファンデーションが塗られると、小さなホクロや微かに見えるシミなどが面白いように消えてゆく。塗りすぎは良くないと書かれていたので、薄っすらと塗るだけに留めた智一は、次に口紅を手に取った。
 グロス入りのピンクが少し混ざっている赤色の口紅。リップブラシを使って、唇をなぞってゆく。鏡には、本物の政代が化粧をしているようにしか映らない。しかし、今化粧をしているのは政代のタイツを着ている智一なのだ。
 唇の外側をリップブラシで塗った後、口紅をそのまま唇に塗る。そして、綺麗に塗り終わったら白い紙を咥えて、余分な口紅を取った。
 その白い紙には、政代の唇の形が綺麗についている。
「これが姉貴の唇なんだよな……」
 次は目だ。化粧箱の中を探すと、コンパクトに入っている数種類のアイシャドウを発見した。
「これだこれ。確か姉貴はいつも青系のやつを使っていたような気が……」
 そう思いながら、一つ一つコンパクトを開いてゆくと、薄い青と濃い青のアイシャドウがあった。
「これかな。これを塗ればいいんだよな」
 鏡に映る政代に問い掛けるように呟く。適当なブラシを使ってアイホールに薄い青のアイシャドウを塗ってゆく。
 目を細めながら塗り終えると、目元に沿って塗ってみた。
 政代の目が大人っぽく綺麗に見える。
「よし、姉貴に近づいてきたぞ!あとはマスカラってやつだよな。その前にビューラーってのでまつ毛をカールさせるんだ」
 とても細かいところまで調べた智一は、すぐに見つかったビューラーでまつ毛を挟み、カールさせた。目をシバシバさせながらも、何とかうまく出来たようだ。その後、マスカラを使ってまつげにボリュームを与える。すると、パッチリとした政代の瞳が出来上がった。
「これで姉貴と同じだな。最後にふさふさのブラシを使ってチークを塗れば完成だ」
 そこまでこだわった智一は、ピンク色のチークを頬に塗り、少し赤みをつけてみた。生き生きとした肌の表情が頬に現れる。
 鏡に映る政代のマスク。智一が化粧で仕上げた事で、彼女にそっくりの表情をかもし出していた。
「我ながらよく出来たよな。何処から見ても姉貴だもん」
 鏡に向かって話し掛けると、政代が智一と同じ言葉を口にしているように思えた。
「これであのウェディングドレスを着れば……」
 心の底からゾクゾクする。化粧を済ませた智一は椅子から立ち上がると、まずタンスの中から政代の下着を取り出した。白いブラジャーに、白いパンティ。そして白いパンティストッキング。
「はぁ、はぁ……俺が姉貴の下着を穿くなんて」
 鼻息を荒くしながら、白いパンティに足を通す。 そして、ゆっくりと引き上げて丸見えになっていた政代の股間を隠した。
 張りのあるお尻がパンティの生地にフィットして気持ちがいい。タイツの上から穿いているのに、この感触が得られるのは本当に不思議な事だ。
 その後、ブラジャーの肩紐に腕を通すとカップに胸を入れて後ろのホックを止める。ぎこちない手の動きだが、何とかホックを止める事が出来た智一は、はみ出している胸をカップの中に仕舞い込んだ。深い胸の谷間がすごくセクシーだ。
 わざと二の腕で胸を寄せて、深い谷間を作ってみる。柔らかい胸が、窮屈そうに中央に寄せられて男心をくすぐる。
「姉貴の胸って結構でかいよな。服を着ている時はそんな風に思わなかったけど」
 胸の大きさを確かめた智一は、白いパンティストッキングを手繰って足を入れ始めた。ストッキングの生地が足に密着して、少し締め付けられるような感じ。片足ずつ、太ももまで入れたあと、腰まで引き上げて下半身を包み込む。すると、温かいパンティストッキングの感触を下半身全体に感じる事が出来た。
 足を蟹股に開いて、ストッキングの上からのっぺりとした股間を撫でると、当たり前のように肉棒の存在は無い。 
 政代がそんな事をしている――いや、させているという行為だけでもすごくいやらしい。
「姉貴、こんな事したことあるのかな。きっとしないんだろうな」
 政代のいやらしい行動を想像できない智一にとっては、今、自分が行っている事全てが新鮮であり、興奮させられるものだった。
「何だか下半身が熱くなる感じがする……」
 そんな風に感じながら、飾ってある白いウェディングドレスに視線を移す。そのドレスは、早く智一に着てほしいと言っているように思えた。
「おっと。やっぱり先にこれを着なければ!」
 嬉しそうに政代の声で呟いた智一は、軽やかな足取りでドレスの前まで歩いてきた。ドキドキしながらドレス掛けに掛けてあるウェディングドレスをそっと手にする。すると、ふわっとした感触が手のひらいっぱいに伝わってきた。
 白い――いや、純白のウェディングドレス。
 まじまじと眺めた智一は、ドレスの背中に着いているファスナーを下ろした。ドレスの裾が円を描くようにとても大きく広がっている。
「よ、よし。さ……早速……」
 シワが寄らないようにしながら、少しかがんでドレスの中に両足を入れる。そして、腰を伸ばしながらゆっくりとドレスを引き上げてゆく。ふわりとドレスの裾をたなびかせながら、両肩を通してしっかりと上まで引き上げた。
 ごわごわとした着心地は決して嫌ではない。 両手を腰に回して、後ろに着いているファスナーを引き上げる。
「よいしょっと……あ、あれ……途中までしかあげられないなぁ」
 それほど器用ではない。あと五センチほど引き上げなければならないのだが、うまく引き上げられない。
「まあいいか。これでも十分だ」