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活性酸素センサー分子とそのシグナル伝達機構
センサー分子PRLとその標的分子CNNM/MagExの結合が細胞の状態に応じて変化している可能性を調べたところ、細胞内Mg2+濃度が非常に重要であることを見つけた。また、そのときPRLのリン酸化状態が変化していることを示す実験結果も得られた。DOCAや食塩の投与による高血圧モデルマウス実験系で、CNNM2/MagEx2の遺伝子欠損によって明確に血圧が減少することを明らかにした。また、Six2プロモーターを利用したCreの発現により腎臓特異的なCNNM2の遺伝子欠損も行い、腎臓におけるCNNM2の機能がマグネシウム恒常性や血圧の調節に重要であることも明らかにした。TRPM6遺伝子欠損マウスの作成に関しては、注入したES細胞に由来する組換え遺伝子を有するマウスの存在を確認できた。高食塩刺激で血圧上昇が報告されているDahl SSラットに実際に高食塩を与え、その血圧の変化についての経時的モニターも実施した。(2)TNFα大量投与による全身性炎症モデルに対してKLHDC10欠損マウスが抵抗性を示すという表現型の分子基盤を探るべく、細胞系を用いた実験系を中心に解析を行った。全身性炎症の一次的反応として、細胞死を起こした細胞からDAMPsをはじめとする各種液性因子が放出される。このDAMPsに炎症性細胞が応答して、各種サイトカインを放出する結果、過剰な炎症応答が惹起されることが広く知られている。siRNAによる発現抑制系による検討の結果、KLHDC10の発現抑制による炎症性サイトカインの発現誘導抑制は観察されなかった。しかしながらKLHDC10の発現抑制によって、炎症細胞の細胞死が亢進するということを新たに見出した。この結果は、KLHDC10欠損マウスにおいては、炎症細胞の細胞死が亢進することによって過剰な炎症応答から免れていることを想起させる。本研究では、活性酸素の直接の酸化標的となる活性酸素センサー分子に着目して、細胞の活性酸素応答を分子レベルで明らかにすることを目的としており、センサー分子PRLやKLHDC10-PP5の酸化に始まる分子応答機序や、その下流で起こるMg2+輸送や細胞死などに関する解析を進める。27年度においては、交付申請書に具体的に記した研究計画をほぼ実施することができた。PRLとCNNMの結合の制御におけるMg2+の重要性や過剰な炎症応答を回避する新規の機構、など当初予想していなかった研究成果が得られた。今後これらの発見をベースに本研究のさらなる発展が期待でき、その基礎となる重要な発見と位置付けられる。これらの理由から、27年度はおおむね順調に進展していると判断した。活性酸素センサー分子PRLとその標的分子CNNM/MagExの結合が細胞内Mg2+で調節される分子機序を調べたところ、PRLのレドックス応答性Cysがリン酸化されていることが分かった。リン酸化PRLはCNNMと結合しないので、このMg2+応答性のCysリン酸化はPRL/CNNMの結合調節に働いていると考えられる。TRPM6-KOマウスの作成を引き続き進め、TRPM6遺伝子をホモ欠損すると致死となることが分かった。これは文献的に予想された結果だったが、Six2-Creマウスとの交配により腎臓特異的KOへ進め、目的のマウスが生育することを確認できた。
KAKENHI-PLANNED-26111007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-26111007
PDE III阻害薬の強心作用にアシドーシスが及ぼす影響に関する研究
モルモットの摘出右心室筋strip、左心房筋のミルリノン(10^<-7>10^<-4>mol/l)及び8-Br-cAMP(10^<-4>10^<-3>mol/l)に対するisometriccontractionをHEPES-Tyroid solution内で測定し、pH=7.4、7.0、6.6におけるconcentration-response curvesを求めた。さらに右心室筋を用い、pH=7.4及び7.0において、ミルリノン10^<-4>mol/lに対する細胞内cAMP濃度の変化を、enzyme immunoassay法を用いて測定した。その結果、pH=7.4においてミルリノンはconcentration-dependentに右心室筋、左心房筋に対して陽変力作用を示した。.pH=6.6においては何れの心筋においてもミルリノンは陽変力作用を示さなかった。pH=7.0においては、ミルリノンは右心室筋に対して陽変力作用を示さず、左心房筋に対して陽変力作用を示した。一方、8-Br-cAMPは、ρH=7.46.6の範囲でいずれの心筋においても陽変力作用をconcentration-dependentに示し、isometric contractionの%変化はpHにより影響しなかった。またpH=7.4において、心筋細胞内cAMP濃度はミルリノン(10^<-4>mol/l)により有意に上昇したが、pH=7.0においてcAMP濃度に変化はみられなかった。本研究の結果、モルモット摘出心筋に対するミルリノンの陽変力作用は、1)代謝性アシドーシスにより減弱する、2)陽変力作用減弱のメカニズムは、pHの低下による心筋細胞内cAMP産生の減少である、3)cAMP産生の減少は、adenylate cyclase活性の低下によると考えられる、4)代謝性アシドーシスがミルリノンによる陽変力作用を減弱させる程度は、左心房筋よりも右心室筋の方が強い。ハロセン麻酔、調節呼吸下のビ-グル犬に対し、アシドーシス(pH=7.4,n=7;pH=7.2,n=7;pH=7.0,n=6)モデルを作成し、PDEIII阻害薬であるミルリノンを2μg/kg/min、5μg/kg/minの速度で持続静脈内投与し、循環動態を調べた。・pH7.0群において、Baselineの平均血圧がpH=7.4群に比べ有意に低かった以外は、心拍数、心拍出量、平均肺動脈圧、右心房圧、左室拡張末期圧、LVdP/dtmax、末梢血管抵抗、肺血管抵抗に群間差はなかった。・pH=7.4及びpH=7.2群においては、ミルリノンは量依存的に心拍数、心拍出量、LVdP/dtmaxを増加させ、末梢血管抵抗を低下させたが、pH=7.0群においてこの現象はみられなかった。・以上の結果、pH=7.4及びpH=7.2群における循環動態に有意差はなかったが、pH=7.0群では他の2群に比べ平均動脈圧、LVdP/dtmaxが有意に低く、心拍数はpH=7.4群に比べ有意に少なかった。・Baselineからの変化量を比べると、pH=7.0におけるLVdP/dtmaxの変化は、他の2群に比べ、ミルリノン2μg/kg/min及び5μg/kg/minいずれの投与速度においても有意に少なかった。・心拍出量のpH=7.0群における変化量は、ミルリノン2μg/kg/minにおいてpH=7.2群より有意に少なく、ミルリノン5μg/kg/minにおいては他の2群に比べ有意に少なかった。・以上の結果、ミルリノンによる強心作用は、犬における代謝性アシドーシスモデルにおいて有意に低下することが分かった。モルモットの摘出右心室筋strip、左心房筋のミルリノン(10^<-7>10^<-4>mol/l)及び8-Br-cAMP(10^<-4>10^<-3>mol/l)に対するisometriccontractionをHEPES-Tyroid solution内で測定し、pH=7.4、7.0、6.6におけるconcentration-response curvesを求めた。さらに右心室筋を用い、pH=7.4及び7.0において、ミルリノン10^<-4>mol/lに対する細胞内cAMP濃度の変化を、enzyme immunoassay法を用いて測定した。その結果、pH=7.4においてミルリノンはconcentration-dependentに右心室筋、左心房筋に対して陽変力作用を示した。.pH=6.6においては何れの心筋においてもミルリノンは陽変力作用を示さなかった。pH=7.0においては、ミルリノンは右心室筋に対して陽変力作用を示さず、左心房筋に対して陽変力作用を示した。一方、8-Br-cAMPは、ρH=7.46.6の範囲でいずれの心筋においても陽変力作用をconcentration-dependentに示し、isometric contractionの%変化はpHにより影響しなかった。またpH=7.4において、心筋細胞内cAMP濃度はミルリノン(10^<-4>mol/l)により有意に上昇したが、pH=7.0においてcAMP濃度に変化はみられなかった。本研究の結果、モルモット摘出心筋に対するミルリノンの陽変力作用は、1)代謝性アシドーシスにより減弱する、2)陽変力作用減弱のメカニズムは、pHの低下による心筋細胞内cAMP産生の減少である、
KAKENHI-PROJECT-09771135
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09771135
PDE III阻害薬の強心作用にアシドーシスが及ぼす影響に関する研究
3)cAMP産生の減少は、adenylate cyclase活性の低下によると考えられる、4)代謝性アシドーシスがミルリノンによる陽変力作用を減弱させる程度は、左心房筋よりも右心室筋の方が強い。
KAKENHI-PROJECT-09771135
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析出面の高温マスキングによるSiCウィスカ-の成長制御に関する反応工学的研究
SiCウィスカ-の量産プロセスの確立による低コスト化のために、本研究では反応工学的な知見の蓄積と体系化にもとづき、太いウィスカ-のみを選択的に成長させる連続的プロセスを考案し、その実現のための基礎的知識の収集を目的とした。本研究では、連続SiOガス発生部(1400°C)とSiCウィスカ-成長部(1400°C1600°C)を有し、SiO長時間連続供給方式をもつ縦型反応器を作製し、触媒の組成、ガス流量、SiO発生粒子供給速度、重力に対するウイスカ-の成長方向等を変えてウィスカ-を合成した。その結果、SiO_2/C複合粒子を0.025g/min、CH_4+Arを流量400ml/minで供給したとき、直径50μmのNi滴を安定に維持することができ、10時間後に直径25μm長さ100μmの直線状の太くて長いウイスカ-を得た。ただし、基板上37ヵ所においた触媒粒子から成長したウイスカ-35本の大半は途中で折れ曲がる等の欠陥があるため、より基礎的な立場に立ち、ウイスカ-の形状におよぼす各種因子の効果を1つ1つ検討した。圧成物のSEM写真から、(1)触媒をあらかじめSiC飽和にすることによって触媒が過飽和となりウイスカ-が析出するまでの時間を短縮することが可能であり、また蒸気圧降下により蒸気圧を下げ、1次核の蒸発を防ぐことによって触媒液滴の小径化を防ぎ、2次核の生成を抑制することが可能であること、(2)ガス流速を下げてSiO濃度を上げることによりウイスカ-成長速度の向上が可能であることを確認した。なお、(3)重力による影響は確認できなかった。また、直線的なウィスカ-の合成については、重力による影響、ガス流速の影響が考えられたが、確認できなかった。いずれにしても、あらかじめSiC濃度を高くしたウイスカ-の核を基板上に設け十分長時間にわたりSiO(g)を連続的に供給すれば、直線的に、太く長いSiCウイスカ-を大量に生産しうることがわかった。SiCウィスカ-の量産プロセスの確立による低コスト化のために、本研究では反応工学的な知見の蓄積と体系化にもとづき、太いウィスカ-のみを選択的に成長させる連続的プロセスを考案し、その実現のための基礎的知識の収集を目的とした。本研究では、連続SiOガス発生部(1400°C)とSiCウィスカ-成長部(1400°C1600°C)を有し、SiO長時間連続供給方式をもつ縦型反応器を作製し、触媒の組成、ガス流量、SiO発生粒子供給速度、重力に対するウイスカ-の成長方向等を変えてウィスカ-を合成した。その結果、SiO_2/C複合粒子を0.025g/min、CH_4+Arを流量400ml/minで供給したとき、直径50μmのNi滴を安定に維持することができ、10時間後に直径25μm長さ100μmの直線状の太くて長いウイスカ-を得た。ただし、基板上37ヵ所においた触媒粒子から成長したウイスカ-35本の大半は途中で折れ曲がる等の欠陥があるため、より基礎的な立場に立ち、ウイスカ-の形状におよぼす各種因子の効果を1つ1つ検討した。圧成物のSEM写真から、(1)触媒をあらかじめSiC飽和にすることによって触媒が過飽和となりウイスカ-が析出するまでの時間を短縮することが可能であり、また蒸気圧降下により蒸気圧を下げ、1次核の蒸発を防ぐことによって触媒液滴の小径化を防ぎ、2次核の生成を抑制することが可能であること、(2)ガス流速を下げてSiO濃度を上げることによりウイスカ-成長速度の向上が可能であることを確認した。なお、(3)重力による影響は確認できなかった。また、直線的なウィスカ-の合成については、重力による影響、ガス流速の影響が考えられたが、確認できなかった。いずれにしても、あらかじめSiC濃度を高くしたウイスカ-の核を基板上に設け十分長時間にわたりSiO(g)を連続的に供給すれば、直線的に、太く長いSiCウイスカ-を大量に生産しうることがわかった。ウィスカ-強化複合材料用原料として重要なSiCウィスカ-を、より汎用な材料とするためには、製造法の連続化と量産プロセスの確立による低コスト化が不可欠な課題である。本反応系は高温場(14001600°C)で、炭素源(CH_4等)、Si源(SiO)、およびVLS成長のための触媒(Ni、Feなど)の挙動すべてを制御することが必要であり、所定の太さのSiCウィスカ-を選択的に成長させる連続プロセスの開発には、反応工学的な知見の蓄積と体系化が必要である。本研究では、従来のVLS機構を利用したSiCウィスカ-製造プロセスに、(1)電子材料の製造において発達してきたマスク法を利用し、触媒や高温レジスト材の基板上へのプリントを行い、(2)高温場での核生成、各物質間の界面エネルギ-等について基礎的測定とモデル化を行うとともに、(3)それらの知見を総合して、SiCウィスカ-の制御された成長の実現を試みることを目的とする。本年度はマスク法の適用に先立ち基礎的な実験を行い以下の知見を得た。I.SiOガス発生部とSiCウィスカ-析出部を有する横型
KAKENHI-PROJECT-02650703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650703
析出面の高温マスキングによるSiCウィスカ-の成長制御に関する反応工学的研究
環状反応器を用い、反応温度、昇温条件、ガス流量、ガス組成、SiO発生源であるシリカと炭素の複合粒子性状、析出基板の種類を変えて、ウィスカ-を合成し、生成物のSEM写真から、1.ウィスカ-先端の触媒液滴径dcとウィスカ-径dwの間には、dc/dw=2の関係があり、触媒液滴径の制御によりウィスカ-径の制御が可能である。2.同一基板上に成長したウィスカ-の径dwと長さlwの間には、duXlw=1定の関係が得られ、触媒液滴表面への原料ガスの物質移動律速を仮定した際に得られる相関と一致した。3.析出部の基板の材質はグラファイト、Sic、アルミナ、AlNのうちでは、Sic上に良好な生成物が得られた。これらについて化学工学会第56年会(1991年3月東京)で発表する。Sicウイスカ-の量産のプロセスの確立による低コスト化のために、本研究では反応工学的な知見の蓄積と体系化にもとづき、太いウイスカ-のみを選択的に成長させる連続的プロセスを考案し、その実現のための基礎的知識の収集を目的とした。本研究では、連続Sioガス発生部(1400°C)とSicウイスカ-成長部(1400°C1600°C)を有し、Sio長時間連続供給方式をもつ縦型反応器を作製し、触媒の組成,ガス流量、Sio発生粒子供給速度、重力に対するウイスカ-の成長方向等を変えてウイスカ-を合成した。その結果,Sio_2/C複合粒子を0.025g/min、CH_4+Arを流量400ml/minで供給したとき,直径50μmのNi滴を安定に維持することができ、10時間後に直径25μm長さ100μmの直線状の太くて長いウイスカ-を得た。ただし、基板上37カ所においた触媒粒子から成長したウイスカ-35本の大半は途中で折れ曲がる等の欠陥があるため、より基礎的な立場に立ち、ウイスカ-の形状におよぼす各種因子の効果を1つ1つ検討した。圧成物のSEM写真から、(1)触媒をあらかじめSic飽和にすることによって触媒が過飽和となるウイスカ-が析出するまでの時間を短縮することが可能であり,また蒸気圧降下により蒸気圧を下げ,1次核の蒸発を防ぐことによって触媒液滴の小径化を防ぎ,2次核の生成を抑制することが可能であること,(2)ガス流速を下げてSio濃度を上げることによりウイスカ-成長速度の向上が可能であることを確認した。なお,(3)重力による影響は確認できなかった。また、直線的なウイスカ-の合成については、重力による影響,ガス流速の影響が考えられたが、確認できなかった。いずれにしても,あらかじめSic濃度を高くしたウイスカ-の核を基板上に設け十分長時間にわたりSio(g)を連続的に供給すれば,直線的に,太く長いSicウイスカ-を大量に生産しうることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-02650703
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02650703
Genomic/non-genomic手法の統合による代謝関連遺伝子機能の解明
ゲノムワイド関連解析などの探索的なゲノム解析により同定された遺伝的座位/染色体領域内の責任遺伝子(群)を絞り込み、それらが引き起こす遺伝子発現変化等の生物学的機序を解明すべく、我々は代謝性疾患をモデルとして大きく3つの課題に取り組んだ。1近交系ラットでの、代謝性疾患に関連する遺伝的座位の精密マッピングを通じて責任遺伝子(群)を絞り込み、2その遺伝子発現制御におけるエピゲノム(特にDNAメチル化)の影響を検討した。さらに3遺伝-環境相互作用におけるmiRNAの臨床的意義を評価して、一部、病態バイオマーカーとして有用であることを見出した。ゲノムワイド関連解析などの探索的ゲノム解析により見いだされてきた遺伝子座/染色体領域の、責任遺伝子の同定の可否〔Genomic approach〕、および遺伝子発現変化等の機序の解明〔Non-genomic approach〕について、両アプローチを組み合わせた、代謝関連疾患の統合的理解を研究目的とする。大きく以下の3つの課題に取り組む。課題1.代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるexpression-QTL (eQTL:QTLは量的形質遺伝子座の略称)の探究:インスリン抵抗性のモデルである高血圧自然発症ラット(SHR)系統と対照のWistar Kyotoラット(WKY)系統間で、主要な遺伝的効果を示す、代謝関連疾患形質の責任遺伝子座(positional QTL:pQTLと略)の近傍領域に関して、(1)SNPの系統分布様式、(2)遺伝子発現量の系統差、を調べる。課題2.エピゲノム(DNAメチル化)の検討:ゲノムワイドなDNA methylation arrayを用いて、腎臓、肝臓、脂肪の組織間でのDNAメチル化の違いを検討する。その際、(1)「geneticとepigenetic variantsが親から子の世代に一緒に受け継がれるかどうか」を組織別に調べる。(2)代謝関連疾患に関わる介入(食塩負荷、高脂肪食負荷、及び糖質コルチコイド負荷)に伴う、遺伝-環境相互作用としてのepigeneticsの意義を検討する。課題3. microRNA (miRNA)の変動と分子ネットワークの探究:ゲノムワイドなRat miRNAmicroarrayを用いて、DNAメチル化解析と同様、組織間での発現プロフィールの違いを検討する。その際、miRNA(とその標的配列)の多型が代謝関連疾患形質のpQTL本体であるかどうか、および遺伝-環境相互作用におけるmiRNAの意義を検討する。ゲノムワイド関連解析などの探索的ゲノム解析により見いだされてきた遺伝子座/染色体領域の、責任遺伝子の同定の可否〔Genomic approach〕、および遺伝子発現変化等の機序の解明〔Non-genomic approach〕について、両アプローチを組み合わせた、代謝関連疾患の統合的理解を研究目的とする。大きく以下の3つの課題に取り組む。課題1.代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるexpression-QTL (eQTL:QTLは量的形質遺伝子座の略称)の探究:インスリン抵抗性のモデルである高血圧自然発症ラット(SHR)系統と対照のWistar Kyotoラット(WKY)系統間で、主要な遺伝的効果を示す、代謝関連疾患形質の責任遺伝子座(positional QTL:pQTLと略)の近傍領域に関して、(1)SNPの系統分布様式、(2)遺伝子発現量の系統差、を調べる。課題2.エピゲノム(DNAメチル化)の検討:ゲノムワイドなDNA methylation arrayを用いて、腎臓、肝臓、脂肪の組織間でのDNAメチル化の違いを検討する。その際、(1)「geneticとepigenetic variantsが親から子の世代に一緒に受け継がれるかどうか」を組織別に調べる。(2)代謝関連疾患に関わる介入(食塩負荷、高脂肪食負荷、及び糖質コルチコイド負荷)に伴う、遺伝&#8211;環境相互作用としてのepigeneticsの意義を検討する。課題3. microRNA (miRNA)の変動と分子ネットワークの探究:ゲノムワイドなRat miRNAmicroarrayを用いて、DNAメチル化解析と同様、組織間での発現プロフィールの違いを検討する。その際、miRNA(とその標的配列)の多型が代謝関連疾患形質のpQTL本体であるかどうか、および遺伝&#8211;環境相互作用におけるmiRNAの意義を検討する。「研究実績の概要」で述べた通り、本研究では大きく3つの課題に取り組んでいる。課題1〔代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるeQTLの探究〕に関しては、初年度に主に取り組み、SHRとWKY間の実験的交配系(F2世代)で同定した血圧、血糖、血中脂質(総コレステロール、中性脂肪、遊離脂肪酸)、体重、相対心重量などのpQTL近傍領域に関して、両progenitor系統間でのeQTLの絞り込みを行った。さらに、pQTLが集積するラット染色体1番に関して作成した、一連のコンジェニック系統を用いて、pQTLとeQTLの異同を調べた結果、特定の遺伝子座/染色体領域においては、一つでなく複数のeQTLが存在し得ることなどが実証された。課題2〔DNAメチル化の検討〕と課題3〔miRNAの変動と分子ネットワークの探究〕については、解析すべき組織検体(progenitor系統の通常餌飼育下と介入に伴う、脳、肝臓などのDNA・miRNA)各々のmicroarray実験を行った。同実験での大きなテーマは、(1)食事負荷、薬物負荷(stress hormoneであるdexamethasone)の有無に伴う、同一ラット(SHR)での遺伝子発現、epigenetic(miRNAとDNAメチル化)変化、及び(2)特定染色体領域(4SW2:SHRにWKY由来の15Mbの染色体断片を入れたコンジェニック系統)と特定遺伝子(CETP)の有無(通常食飼育下の条件)に由来する、遺伝子発現とDNAメチル化の変化、の検討である。
KAKENHI-PROJECT-26290067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26290067
Genomic/non-genomic手法の統合による代謝関連遺伝子機能の解明
ゲノムワイド関連解析などの探索的ゲノム解析により見いだされてきた遺伝子座/染色体領域の、責任遺伝子の同定の可否〔Genomic approach〕、および遺伝子発現変化等の機序の解明〔Non-genomic approach〕について、両アプローチを組み合わせた、代謝関連疾患の統合的理解を研究目的とする。大きく以下の3つの課題に取り組む。課題1.代謝関連疾患形質の責任遺伝子座におけるexpression-QTL (eQTL:QTLは量的形質遺伝子座の略称)の探究:インスリン抵抗性のモデルである高血圧自然発症ラット(SHR)系統と対照のWistar Kyotoラット(WKY)系統間で、主要な遺伝的効果を示す、代謝関連疾患形質の責任遺伝子座(positional QTL:pQTLと略)の近傍領域に関して、(1)SNPの系統分布様式、(2)遺伝子発現量の系統差、を調べる。課題2.エピゲノム(DNAメチル化)の検討:ゲノムワイドなDNA methylation arrayを用いて、腎臓、肝臓、脂肪の組織間でのDNAメチル化の違いを検討する。その際、(1)「geneticとepigenetic variantsが親から子の世代に一緒に受け継がれるかどうか」を組織別に調べる。(2)代謝関連疾患に関わる介入(食塩負荷、高脂肪食負荷、及び糖質コルチコイド負荷)に伴う、遺伝-環境相互作用としてのepigeneticsの意義を検討する。課題3. microRNA (miRNA)の変動と分子ネットワークの探究:ゲノムワイドなRat miRNAmicroarrayを用いて、DNAメチル化解析と同様、組織間での発現プロフィールの違いを検討する。その際、miRNA(とその標的配列)の多型が代謝関連疾患形質のpQTL本体であるかどうか、および遺伝-環境相互作用におけるmiRNAの意義を検討する。ゲノムワイド関連解析などの探索的なゲノム解析により同定された遺伝的座位/染色体領域内の責任遺伝子(群)を絞り込み、それらが引き起こす遺伝子発現変化等の生物学的機序を解明すべく、我々は代謝性疾患をモデルとして大きく3つの課題に取り組んだ。1近交系ラットでの、代謝性疾患に関連する遺伝的座位の精密マッピングを通じて責任遺伝子(群)を絞り込み、2その遺伝子発現制御におけるエピゲノム(特にDNAメチル化)の影響を検討した。さらに3遺伝-環境相互作用におけるmiRNAの臨床的意義を評価して、一部、病態バイオマーカーとして有用であることを見出した。「研究実績の概要」で述べた通り、本研究では大きく3つの課題に取り組んでいる。課題1
KAKENHI-PROJECT-26290067
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26290067
ナノ多結晶ダイヤモンドと各種遷移金属との間に生じる熱化学反応機構の解明
本研究では,ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)と焼結ダイヤモンド(PCD)製ツルーアとの間に生じる,熱化学反応のメカニズムを解明するための実験的研究を行った.焼結助剤として用いられているCoを遷移金属や高比熱材料で置換したPCD製円板をツルーアに使用し,NPD製ノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行った.その結果,NPDの表面に生成された熱変質層が,CD製ツルーアの砥石作用面に露出しているダイヤモンド砥粒で除去されるといったメカニズムでNPDから切りくずが除去される場合には,1 nm Rz以下の平坦かつ平滑な研削加工面が得られることが明らかになった.高純度グラファイトを超高圧・高温下でダイヤモンドに直接変換したナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は,サイズが数十ナノメータのダイヤモンドで構成されており,単結晶ダイヤモンド(SCD)よりも硬いだけでなく壁開性を持っていない.このNPDを高硬度金型材料に対して超精密切削加工を行うことができる次世代の工具素材として使用するためには,欠けが無く鋭利な切れ刃を成形できるNPDに対する超精密仕上げ成形技術を新たに開発する必要がある.本研究では,焼結ダイヤモンド(PCD)に介在するコバルトCoを各種の遷移金属で置換したPCD製円板を研削工具として使用し,NPDに対する乾式研削実験を行った.PCDの損耗量に対するNPDの除去体積(研削比)と各種遷移金属に関するd電子飽和度や酸化物の生成に関する標準自由エネルギーとの関連を明らかにするための研究を行った.すなわち,NPDと各種遷移金属との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための実験を行った.その結果,NPDと遷移金属との間には1)共有結合に関与している電子を遷移金属が奪い,結合強度が弱くなった炭素原子がNPDの表面から機械的なアブレーション作用によって除去される.2)遷移金属の表面に生成された酸化物をNPDを構成する炭素が還元し炭素が燃焼するといった,酸化・還元反応が発生してNPDの表面から炭素原子が除去される.3)NPDが遷移金属の酸化物と高温で接触するとNPDの表面に熱変質層が生成され,この熱変質層が機械的なアブレーションによって除去される.といった,最低でも3種類の熱化学反応が生じていることが明らかになった.本研究では,ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)と焼結ダイヤモンド(PCD)製ツルーアとの間に生じる,熱化学反応のメカニズムを解明するための実験的研究を行った.焼結助剤として用いられているCoを遷移金属や高比熱材料で置換したPCD製円板をツルーアに使用し,NPD製ノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行った.その結果,NPDの表面に生成された熱変質層が,CD製ツルーアの砥石作用面に露出しているダイヤモンド砥粒で除去されるといったメカニズムでNPDから切りくずが除去される場合には,1 nm Rz以下の平坦かつ平滑な研削加工面が得られることが明らかになった.ナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は,単結晶ダイヤモンドよりも耐摩耗性や耐劈開性に優れており,高硬度金型材料に対して超精密切削加工を行うことができる,次世代の工具素材として使用される可能性が高い.この,NPD製の切削工具を成形するためにはNPDから切りくずが排出されるメカニズムを解明する必要があると考え,本研究ではNPD製ノーズRバイトとそれを成形するためのツルーアとして使用した焼結ダイヤモンド(PCD)製円板との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための研究を実施した.平成23年度と平成24年度には,砥石作用面を30 nm Rz前後の粗さに成形したPCD製円板に対して電解加工と高周波スパッタを行い,焼結助剤として使用されているコバルトCoを遷移金属や高比熱材料で置換したPCD製円板を試作した.また,レーザ成形したNPD製ノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行った.その結果,NPDの表面に生成された熱変質層が機械的なアブレーション作用によって除去されるといったメカニズムでNPDから切りくずが除去される場合には,すくい面を1 nm Rz以下の粗さに成形できることが明らかになった.平成25年度にはCoを炭化ホウ素B4C,窒化ホウ素BN,窒化ケイ素Si3N4,ならびに酸化アルミナAl2O3といった高比熱材料で置換したPCD製円板を試作し,レーザ成形したNPD製ノーズRバイトのすくい面と逃げ面に対する乾式研削を行った.その結果,CoをB4Cで置換したPCD製円板をツルーアに使用した場合には,すくい面を0.5 nm Rz,逃げ面を2 nm Rz前後の値に成形することができた.すくい面と同様に逃げ面の粗さを0.5 nm Rzの粗さに成形できれば,切れ刃の丸み半径を1 nm以下の値に成形することも不可能ではないと考えている.平成23年度には,鏡面研磨した焼結ダイヤモンド(PCD)製円板に対して電解加工と高周波スパッタを行い,PCDに焼結助剤として用いられているコバルトCoを電気陰性度や比熱容量が異なる9種類の遷移金属で置換したPCD製円板を試作した.また,試作したPCD製円板をツルーアに使用しレーザ成形されたナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)製ノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行い,NPDとPCD製円板との熱化学反応のメカニズムを解明するための実験研究を行った.
KAKENHI-PROJECT-23360071
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ナノ多結晶ダイヤモンドと各種遷移金属との間に生じる熱化学反応機構の解明
その結果,NPDとPCD製円板の間には,(1) PCDに高周波スパッタした遷移金属によって電子を奪われ結合力が低下して脆弱になったNPDの表面層が,PCDツルーアの砥石作用面にあるダイヤモンド砥粒によって除去される.(2)乾式研削時にNPDの表面に生成された熱変質層が,PCD製ツルーアの砥石作用面に露出しているダイヤモンド砥粒によって除去される.といった,2つの現象が生じていることが確かめられた.また,(2)のメカニズムでNPDから切りくずが除去される場合には,PCDに高周波スパッタした遷移金属の比熱容量が増すに従って平滑な加工面が得られることが明らかになった.切れ刃が鋭利なNPD製の切削工具を成形するためには,すくい面や逃げ面を1 nm Rz以下の粗さに成形できる工具成形技術を開発する必要がある.そこで,平成24年度にはCoを遷移金属だけでなく,比熱容量の高い酸化物や炭化物等で置換したPCD製円板を試作した.また,前年度と同様にNPD製ノーズRバイトのすくい面に対する乾式研削を行い,粗さが1 nm Rz以下の加工面を創成するための実験を行った.その結果,Coを比熱容量の高い窒化硼素BNや炭化硼素B4Cで置換したPCD製円板をツルーアに用いた場合には,粗さが1 nm Rz以下の平滑な加工面を作ることができた.当該研究では,NPDとPCDとの間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明した後に,欠けのない鋭利な切れ刃を持つNPD製の切削工具を成形する予定である.平成23年度には熱化学反応のメカニズムを解明することに成功したが,欠けのない鋭利な切れ刃を持つNPD製の切削工具を成形することに関しては,平成24年度以降に継続して研究を進める必要が残されている.25年度が最終年度であるため、記入しない。高純度グラファイトをダイヤモンドに直接変換したナノ多結晶ダイヤモンド(NPD)は,単結晶ダイヤモンドよりも硬いだけでなく,劈開が伝播しない性質を持っている.したがって,NPDは高硬度金型材料に対して超精密切削を行うことができる,単結晶ダイヤモンドに代わる超精密切削加工用の工具素材として使用される可能性が高い.切削工具の切れ刃はすくい面と逃げ面とが交わる稜線であり,単結晶ダイヤモンド製の切削工具と同様に欠けが無く鋭利な切れ刃を成形するためには,NPD製切削工具のすくい面や逃げ面を1 nm Rz以下の粗さに成形することができる,工具成形技術を開発する必要がある.本研究の最終目標は,単結晶ダイヤモンド製の切削工具と同様に欠けが無く鋭利な切れ刃を成形できる工具成形技術を開発することであり,この最終目標を達成するためにNPDとNPDを成形するためのツルーアとして用いているPCD製円板との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための基礎実験を行っている.これまでに,Coを遷移金属,酸化物,ならびに炭化物で置換したPCD製円板をツルーアに用いてレーザ成形されたノーズRバイトのすくい面に対して乾式研削を行い,NPDとPCD製円板との間に生じる熱化学反応のメカニズムを解明するための基礎研究を行った.その結果,Coを比熱容量の高い窒化硼素BNや炭化硼素B4Cで置換したPCD製円板をツルーアに用いた場合には,NPDの表面に生成された熱変質層がダイヤモンド砥粒によって機械的に除去されるといったメカニズムでNPDから切りくずが除去され,粗さが1 nm Rz以下の平滑な加工面を創成することができた.本研究の最終目標を達成するために残されている課題は,逃げ面を1 nm Rz以下の粗さに成形できる工具成形技術を開発することであり,現時点で最終目標の80 %は達成できていると判断している.
KAKENHI-PROJECT-23360071
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トマトのイントログレッション系統を用いたホルムアルデヒド無毒化原因遺伝子の探索
トマト栽培種と野生種のイントログレション系統を活用し,ホルムアルデヒド無毒化能力に関わるゲノム領域の選抜を行った.そして,選抜したゲノム領域に座乗し,栽培種と野生種閒で発現量が異なる遺伝子を絞り込んだところ,ペルオキシレドキシン,UDP-グルコシルトランスフェラーゼ,チトクロムP450などが候補遺伝子として見出された.一方,ホルムアルデヒド脱水素酵素(FALDH)の過剰発現シロイヌナズナを作出し,ホルムアルデヒドの耐性および吸収能が上昇することを確認した.1イントログレション系統のホルムアルデヒド無毒化能力の検定(玉川大学担当)トマトの栽培種L. esculentumと野生種L. pennelliiのイントログレション系統,全74系統について,ホルムアルデヒド無毒化能力が高い系統=ホルムアルデヒド無毒化能力に関わるL. pennelliiのゲノム領域を持つ系統の選抜を行った.その結果,5番染色体の一部(27番系統),10番染色体の一部2カ所(61番系統,63系統と64系統の重複領域),11番染色体の一部(65系統と66系統の重複領域)の4カ所にホルムアルデヒド無毒化能力に関わるL. pennelliiのゲノム領域が存在する可能性を明らかになった.一方,L. esculentum,L.pennellii,L. cheesmanii,L. chilenseについて,葉の切片における,グルタチオン含量,ホルムアルデヒド脱水素酵素活性,ギ酸脱水素酵素活性を組織化学的に調査した結果,いずれにおいてもホルムアルデヒド無毒化能力と含量または活性に正の相関があることを明らかになった.2遺伝子座の決定と候補遺伝子の絞り込み(名古屋大学担当)上記の1において玉川大学が特定したホルムアルデヒド無毒化能力に関わる可能性のあるL. pennelliiの4つの遺伝子座(5番染色体の一部,10番染色体の一部2カ所,11番染色体の一部)に存在する遺伝子をデータベース検索したところ,それぞれ149個,241個,207個,121個の遺伝子が存在した.11番染色体の一部に座乗する121個の遺伝子について,トランスクリプトームデータベースを使ったL. esculentumとL.pennellii間の発現量の比較を行った.その結果,L. pennelliiで発現が2倍以上高い遺伝子として,pumilio-like,F-box protein-like,2-oxoglutarate/malate translocatorの3遺伝子を見出すことに成功した.1遺伝子座の決定と候補遺伝子の絞り込み(名古屋大学・玉川大学担当):トマト栽培種Solanum lycopersicumと野生種S. pennelliiのイントログレション系統を活用し、ホルムアルデヒド無毒化能力に関わるL. pennelliiのゲノム領域の選抜を行った。昨年度に、5番染色体,10番染色体,11番染色体の一部領域を候補としたが、今年度、新たに3番染色体の一部を候補として加えた。当初、F2分離集団の作出により,候補領域の絞り込みを行うことを計画したが、遺伝子発現データベースを活用して、候補ゲノム領域に座乗し、栽培種と野生種閒で遺伝子の発現量が異なる遺伝子を候補として絞り込む戦略に集中した。その結果、システインの細胞内分布を変化させる可能性があるシスチントランスポーターホモログ、ホルムアルデヒド分解への関与が考えられるペルオキシレドキシン、UDP-グルコシルトランスフェラーゼ、チトクロムP450などを候補遺伝子として見出すことができた。2形質転換トマトの作出と評価(名古屋大学・玉川大学担当):ホルムアルデヒド分解に関わるホルムアルデヒド脱水素酵素(FALDH)の遺伝子発現が、S. pennelliiで高いことを確認したために、FALDH過剰発現トマトを作出した。その結果、FALDH過剰発現体の実生においてホルムアルデヒドの耐性および吸収能の上昇が確認されたため、FALDHがホルムアルデヒド分解の律速段階であることが示唆された。3ゼラニウムでの遺伝子発現の調査(名古屋大学担当):当初、1で得られた候補遺伝子のゼラニウムにおける発現調査を行う予定であったが、実験の遅れのため、実施できなかった。しかしながら、ホルムアルデヒドの分解に関わるFALDHとギ酸脱水素酵素(FDH)の活性が、ホルムアルデヒド高吸収ゼラニウム品種で高いことを確認した。トマト栽培種と野生種のイントログレション系統を活用し,ホルムアルデヒド無毒化能力に関わるゲノム領域の選抜を行った.そして,選抜したゲノム領域に座乗し,栽培種と野生種閒で発現量が異なる遺伝子を絞り込んだところ,ペルオキシレドキシン,UDP-グルコシルトランスフェラーゼ,チトクロムP450などが候補遺伝子として見出された.一方,ホルムアルデヒド脱水素酵素(FALDH)の過剰発現シロイヌナズナを作出し,ホルムアルデヒドの耐性および吸収能が上昇することを確認した.平成26年度の研究は,全体として順調に進展した.『1イントログレション系統のホルムアルデヒド無毒化能力の検定(玉川大学担当)』については,計画したイントログレション系統の中からホルムアルデヒド無毒化能力が高い系統を選抜する実験を問題なく完了した.グルタチオン含量,ホルムアルデヒド脱水素酵素活性,ギ酸脱水素酵素活性の組織化学的調査は,イントログレション系統の選抜が年度末にずれ込んだため,イントログレション系統での実験は行えなかったが,その親系統についての実験を終え,これらの含量または活性とホルムアルデヒド無毒化能力との間に正の相関があることを明らかにした.選抜したイントログレション系統についての同実験にも既に着手している.
KAKENHI-PROJECT-26660023
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トマトのイントログレッション系統を用いたホルムアルデヒド無毒化原因遺伝子の探索
『2遺伝子座の決定と候補遺伝子の絞り込み(名古屋大学担当)』については,イントログレション系統の選抜が年度末にずれ込んだことに加え,選抜されたホルムアルデヒド無毒化能力に関わる可能性のある遺伝子座が1つではなく4つであったため, 1遺伝子座についてのみ計画通りの実験を完了することができ,候補遺伝子3個を特定することができた.残り3遺伝子座についても,現在,解析中であり,1ヶ月以内に解析が完了する予定である.園芸生理・生化学平成26年度の研究は全体として順調に進展したが,一部積み残しがあるため,この積み残しを27年度開始12ヶ月以内に完了させる.具体的には「イントログレション系統のグルタチオン含量,ホルムアルデヒド脱水素酵素活性,ギ酸脱水素酵素活性の組織化学的調査」と「選抜した未解析の3遺伝子座からの候補遺伝子の絞り込み」である.当初計画した27年度の研究計画は,状況の変化を踏まえて,以下のように実施する.2遺伝子座の決定と候補遺伝子の絞り込み(名古屋大学担当):当初はF2分離集団を作出して遺伝子の絞り込むことを計画したが,候補遺伝子座4つ見つかり,それらのF2分離集団の作出労力が膨大であるため,データベース情報を駆使した発現解析,多型解析,そしてホルムアルデヒド無毒化能力が異なる複数のトマト系統における候補遺伝子の定量PCRによる絞り込みに方針を転換する.3形質転換トマトの作出と評価(名古屋大学・玉川大学担当):上記2で絞り込んだ候補遺伝子について,L. pennelli由来のcDNAを過剰発現させるベクターを構築し,L. esculentum `マイクロトム'に形質転換する.形質転換体のホルムアルデヒド無毒化能力を検定し,候補遺伝子を評価する.4ゼラニウムでの遺伝子発現の調査(名古屋大学・玉川大学担当):上記3の評価で有望な遺伝子が見出せた場合,ホルムアルデヒド無毒化能力が著しく異なるゼラニウムにおいても,同じ遺伝子が鍵であるかを次の実験で評価し,同じであればこの遺伝子をホルムアルデヒド無毒化能力の高い観賞用園芸植物の育種マーカーとする.すなわち,トマトで特定した鍵遺伝子のオルソログをホルムアルデヒド無毒化能力が高いゼラニウム系統と低い系統からクローニングし,両者にアミノ酸置換や欠損をともなう変異がないか,そして遺伝子発現量に違いがないか(定量PCRを実施)を明らかにする.玉川大学においては,予定通り全額の予算を執行した.一方,名古屋大学においては,イントログレション系統の選抜が年度末にずれ込んだことに加え,選抜されたホルムアルデヒド無毒化能力に関わる可能性のある遺伝子座が1つではなく4つであったため,それらの全解析が終わらず,その次に行う予定であった定量PCRやcDNAクローニングの実験にまでたどり着かなかった.このため,定量PCRやcDNAクローニングを行うための予算が次年度使用額として残った.前述のように,本年度積み残しの「選抜した未解析の3遺伝子座からの候補遺伝子の絞り込み」は,27年度開始12ヶ月以内に完了するため,この完了の後に,全ての候補遺伝子について定量PCRやcDNAクローニングを行う.このために26年度の残額(次年度使用額)を使用する.
KAKENHI-PROJECT-26660023
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桿菌の形態形成に関わる細胞骨格蛋白RodZと赤痢菌病原遺伝子発現の解析
桿菌の桿状構造を形成するバクテリア細胞骨格のRodZ蛋白が、赤痢菌の病原性に作用することを発見した。rodZ遺伝子を破壊した赤痢菌では病原遺伝子のmRNAの安定性が増加することから、RodZ蛋白がmRNAに結合することが分かった。結合には塩基性アミノ酸群が必要であることを示すことで、RodZの形態形成以外の機能としてRNA結合能を持つことを初めて報告した。さらにRodZは膜蛋白にも関わらず、他のRNA結合蛋白Hfqのように6量体を形成していることを見出した。赤痢菌の主要な病原因子であるIII型分泌装置の発現を指標に申請者が同定したRodZ蛋白は、近年提唱されている新概念の“細菌の細胞骨格蛋白"(bacterial cytoskeleton)として細菌の形態形成に作用することが報告されている。初年度は内膜に局在するRodZが、これまで知られていなかったRNA結合活性を持ち、III型分泌装置の転写後制御に関わることを論文で報告した。以降、蛋白の基礎データの集積が重要と考えられたため、研究計画に基づいてRodZ蛋白の構造解析を進めた。RodZ蛋白は多量体が集合した高分子を形成しており、研究分担者の観察から蛋白が電顕で見える巨大な粒子、Superstructureを形成することが分かった。このSuperstructureが生体でも存在するか調べるため、生菌の可溶化分画を直接ゲル濾過分析にかけたところ、RodZ蛋白は高分子側に分画されたため、RodZは生体でもSuperstructureを形成する可能性が高いと考えられた。このSuperstructureはBasal complexと呼ぶべき、200kDa程度の複合体が疎水結合で集合することで構成されており、Basal complexは単量体がシステイン残基を介してジスルフィド結合で結合し構成されていることが明らかになった。Basal complexの分子量を新型の質量分析法(後述)で測定したところ、RodZは基本構造としてホモ6量体を取ることが分かった。細菌のなかでは比較的解析が進んでいるRNA結合蛋白Hfqもホモ6量体を形成することが知られている。RodZの単量体はRNAを結合しないため、RNA結合活性にはHfq同様に6量体の形成が必須であることが予想された。赤痢菌の主要な病原因子であるIII型分泌装置(TTSS)の発現に作用する因子として、近年提唱されている、桿菌の形態形成に作用する“バクテリア細胞骨格蛋白"(bacterial cytoskeleton)のRodZを見出した。RodZは膜蛋白でアクチン様に重合する別の細胞骨格蛋白であるMreBと結合し桿状構造を形成すると考えられている。研究計画に基づいてRodZの細胞骨格以外の機能の解析を進めた結果、1rodZ遺伝子を欠損した赤痢菌では転写後レベルで制御されるTTSSのレギュレーターInvE(virB)のmRNAの安定性が増加していること。2ホスホセルロースカラムとヒスチジンタグを用いて高度に精製したRodZ蛋白は、RNA結合活性を持ちinvE遺伝子の配列を持つRNAに強く(Kd=3.5nM)結合すること。3RNA結合能は膜貫通領域近くの塩基性アミノ酸群にあること。4これらを分子内で欠損させることで、形態を変化させずにInvE蛋白の発現を変化させることができること。5蛋白-RNAのクロスリンクでRodZがinvE-mRNAと結合することを明らかにし報告した。また構造の解析ではRodZ蛋白はジスルフィド結合で6量体を形成し、その基本構造がSuperstructureといえる複雑な複合体を形成することが示された。構造とRNA結合能の相関を調べたところ、6量体単独ではRNA結合能を持たず、Superstructureの形成がRNAの結合に必須であることが分かった。さらにinvE遺伝子以外のmRNAとの相互作用を調べるため、クロスリンク法で約80個の候補遺伝子を調べたところ、高い確率でmRNAが結合していることが分かった。以上の結果はRodZ蛋白が病原遺伝子のみならず、多数のmRNAを細胞膜の近傍で結合する能力があり、何らかの機能的な意義があると予想される細菌のmRNAの細胞内での局在に必要な因子として作用していることを示唆している。桿菌の桿状構造を形成するバクテリア細胞骨格のRodZ蛋白が、赤痢菌の病原性に作用することを発見した。rodZ遺伝子を破壊した赤痢菌では病原遺伝子のmRNAの安定性が増加することから、RodZ蛋白がmRNAに結合することが分かった。結合には塩基性アミノ酸群が必要であることを示すことで、RodZの形態形成以外の機能としてRNA結合能を持つことを初めて報告した。さらにRodZは膜蛋白にも関わらず、他のRNA結合蛋白Hfqのように6量体を形成していることを見出した。赤痢菌の主要な病原因子であるType III分泌装置の発現を指標に申請者が同定したRodZ蛋白は、近年提唱されている新しい機能蛋白の"細菌の細胞骨格蛋白"(bacterial cytoskeleton)として細菌の形態形成に作用することが報告されている。RodZは膜蛋白として細胞質とペリプラズムに局在し、細胞質側でアクチン様に重合する別の細胞骨格蛋白MreBと相互作用することで菌の桿状構造を形成するものと考えられている。申請以降、研究計画に基づいてRodZの細胞骨格以外の機能の解析を進めた。その結果、(1)rodZが欠損した赤痢菌ではType III分泌装置のレギュレーターinvEのmRNAが安定になっていること。(2)精製したRodZ蛋白はこれまで知られていないRNA結合活性を持ち、invEの配列を持つRNAに結合すること。
KAKENHI-PROJECT-23590531
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桿菌の形態形成に関わる細胞骨格蛋白RodZと赤痢菌病原遺伝子発現の解析
(3)RNA結合能は膜貫通領域近くの塩基性アミノ酸群にあること。(4)これらを分子内で欠損させることで、形態を変化させずにInvEの発現を変化させることができること。(5)蛋白-RNAのクロスリンクでRodZがinvE-mRNAと結合していることを報告した。また、精製の過程でRodZ蛋白は多量体を構成することが分かりその解析を進めた。ゲル濾過分析及び超遠心分析を行ったところRodZは約6量体の分子量をもつ多量体を構成することが分かった。さらに研究分担者が行った電子顕微鏡による観察では野生型のRodZの多量体は30ナノメートル程度のサイズの粒子を形成すること、高濃度では疎水性の膜貫通ドメインを介してさらに大きな構造体を取りうることが分かった。上述のようにRodZはSuperstructureといえる複雑な複合体を形成しており、超遠心分析等で複合体の分子量を求めたが、その決定は大変困難であった。偶然、ゲル濾過分析で非イオン性界面活性剤の存在下でSuperstructureからBasal complexが解離すること、また、低濃度のジチオスレイトールでBasal complexから単量体が解離することが発見されブレイクスルーとなった。RodZはジスルフィド結合で結合した蛋白をクロスリンクして行う新型の高分子量MALDIーTOF法(COVALX)で測定可能で、Basal complexの分子量が6量体に相当する224,112kDa(RodZ単量体:37.342kDa)と正確に測定することができた。この6量体の形成とRNA結合能がリンクしているのは既存のRNA結合蛋白Hfqとアナロジーがあるように思われた。さらに研究計画に従い、RodZが他の遺伝子群の転写後調節に作用しているか調べた。新鮮なmRNAとリファンピシンで転写を停止して4分後のmRNAをそれぞれrodZ欠損株と野生型株から精製し、cDNA合成後、マイクロアレイを用いて全てのmRNAの分解速度をrodZ欠損株と野生型とで比較した。その結果、少なくとも約80種類の遺伝子のmRNAがRodZが欠損することで、野生型よりも3倍以上分解が遅くなっていることが明らかになった。興味深いことに、これらの遺伝子産物の局在を調べると、内膜、ペリプラズム、外膜に存在するものが多いように思われた。また、その遺伝子自体は細胞質に局在しても、オペロンを構成している別の蛋白が細胞質以外に局在している例が多く見られた。以上のことから、RodZが特定のmRNAの菌体内における局在に関係している可能性が示唆された。RodZの赤痢菌の病原性への関与について論文にまとめることができた。また、RodZが多量体を形成することが分かった。機能解析についても予定していた実験を行い、データを蓄積中である。最終年度は蛋白の構造解析の結果と、rodZ欠損株と野生型株のマイクロアレイの結果を合わせて2報目の論文報告の準備を進める。前述した生菌の可溶化分画のゲル
KAKENHI-PROJECT-23590531
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リポ多糖刺激を介して血管内皮細胞で発現する組織因子の分子機能解析
外傷などに伴って組織因子が血液中に露呈されると、この因子が血血漿中のVIIa因子と分子複合体を形成しつつ、外因系凝固反応を開始する。我々は両因子間の相互作用を分子レベルで明らかにする目的で、VIIa因子上の組織因子結合部位の解析を行ない、2つの組織因子結合部位を見い出した。また、酵母を用いた発現系により、ウシ可溶性リコンビナント組織因子(rsTF,TF1-213)の大量調整に成功した。今回、このrsTFを用い、組織因子側のVIIa因子結合部位の解析を行なった。まず、VIIa-rsTF複合体による合成基質(S-2288)水解系に、ペプチドクロロメチルケトン処理によって不活化したVIIa因子、Gla-domainlesVIIa因子(VIIa(GD-))及び前駆体型VII因子を加えて拮抗阻害実験を行なった結果、不活化VIIa因子とVIIa(GD-)が強い阻害(IC_<50>=70nM)を示したのに対し、前駆体型VII因子では殆ど阻害が見られなかった(IC_<50>>900nM)。従って、rsTFはVIIa因子上の2つの組織因子結合部位のうち活性型VIIa因子に特異的に発現しているひとつを認識することが示唆された。また、この性質を利用して不溶化rsTFカラムにより、前躯体型VII因子中のきょう雑VIIa因子を特異的に除去することに成功した。一方、rsTFを、穏和な条件下トリプシン処理すると、Arg129-Ala130間のペプチド結合が切断され、切断後も約60%の活性が残存していた。そこで、両断片の分別を試みたが、1-129と130-213の断片は5M尿素存在下、分別されたものの、コファクター活性とVIIa因子結合能は共に消失した。現在、化学修飾法などを用いてVIIa因子結合部位を解析しつつある。外傷などに伴って組織因子が血液中に露呈されると、この因子が血血漿中のVIIa因子と分子複合体を形成しつつ、外因系凝固反応を開始する。我々は両因子間の相互作用を分子レベルで明らかにする目的で、VIIa因子上の組織因子結合部位の解析を行ない、2つの組織因子結合部位を見い出した。また、酵母を用いた発現系により、ウシ可溶性リコンビナント組織因子(rsTF,TF1-213)の大量調整に成功した。今回、このrsTFを用い、組織因子側のVIIa因子結合部位の解析を行なった。まず、VIIa-rsTF複合体による合成基質(S-2288)水解系に、ペプチドクロロメチルケトン処理によって不活化したVIIa因子、Gla-domainlesVIIa因子(VIIa(GD-))及び前駆体型VII因子を加えて拮抗阻害実験を行なった結果、不活化VIIa因子とVIIa(GD-)が強い阻害(IC_<50>=70nM)を示したのに対し、前駆体型VII因子では殆ど阻害が見られなかった(IC_<50>>900nM)。従って、rsTFはVIIa因子上の2つの組織因子結合部位のうち活性型VIIa因子に特異的に発現しているひとつを認識することが示唆された。また、この性質を利用して不溶化rsTFカラムにより、前躯体型VII因子中のきょう雑VIIa因子を特異的に除去することに成功した。一方、rsTFを、穏和な条件下トリプシン処理すると、Arg129-Ala130間のペプチド結合が切断され、切断後も約60%の活性が残存していた。そこで、両断片の分別を試みたが、1-129と130-213の断片は5M尿素存在下、分別されたものの、コファクター活性とVIIa因子結合能は共に消失した。現在、化学修飾法などを用いてVIIa因子結合部位を解析しつつある。
KAKENHI-PROJECT-05256225
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05256225
ASL法を用いた局所脳血流評価法の確立
初年度は,2D ASTAR法に関して,撮像パラメータが画像に与える影響をシングルスライスで検討し,その最適化を図った.ASL法を臨床で広く応用するにはマルチスライスでの撮像が不可欠であるが,本研究においても1年半を経過した時点で3D ASTAR法を用いたマルチスライス撮像が可能となり,以後は同法に関して基礎的・臨床的に検討した.マルチスライス法では,ラベル用パルスによるMTCの影響がコントロールパルスによって完全には補正されない.静止粗織の信号抑制を工夫することで臨床応用可能な画像が得られるようになった.ASL法はarterial transit time (ATT)の影響を強く受け,TIの変化によって画像コントラストが大きく変化することが確認された.若年の正常ボランティアにおけるシングルスライスでの検討でも,血流境界領域のようにATTが他の部位よりも延長した部位の信号は低く,この部位にあわせたTIの設定が必要と考えられた(10001200ms程度).マルチスライス法では頭側のスライスほどラベリングパルスとの間隔が広く,ATTの影響がより顕著となった.3Dで頭側のスライスまで十分な画質を確保するためにはTIを1400ms以上に設定することが好ましいと思われた.また,高齢者では若年者に比べて脳実質部の信号が弱く,血管内信号が残存しやすい傾向があった.血流速度が遅いためラベルされた血液が撮像範囲に十分到達していないためだと想定される。閉塞性動脈疾患症例では,ATTの延長に伴う局所脳血流の過小評価と血管内に残存するスピンによる過大評価の両者が問題となった.これらの影響は,頭側のスライスほど顕著な傾向にあった.ATTの影響を軽減するにはTIを延長する方法があるが,TIの延長はラベルされた血液の縦緩和に伴う信号低下および撮像時間の延長をもたらす.ATTに応じてTIなどの撮像条件を最適化する必要があるが,それぞれの症例におけるATTを予測することは容易ではない.また,縦緩和による信号低下や検査時間を考慮すると,現時点の手法ではTIの延長にも限界がある.進行したモヤモヤ病などでATTが極端に延長している場合には,この手法による脳血流評価は困難と考えられる.血管内信号を抑制目的で,データ収集前にラベリング位置に飽和パルスをかけることが可能であったが,血管内信号を選択的に抑制する手法ではなく,SNRの低下が問題であった.初年度は,2D ASTAR法に関して,撮像パラメータが画像に与える影響をシングルスライスで検討し,その最適化を図った.ASL法を臨床で広く応用するにはマルチスライスでの撮像が不可欠であるが,本研究においても1年半を経過した時点で3D ASTAR法を用いたマルチスライス撮像が可能となり,以後は同法に関して基礎的・臨床的に検討した.マルチスライス法では,ラベル用パルスによるMTCの影響がコントロールパルスによって完全には補正されない.静止粗織の信号抑制を工夫することで臨床応用可能な画像が得られるようになった.ASL法はarterial transit time (ATT)の影響を強く受け,TIの変化によって画像コントラストが大きく変化することが確認された.若年の正常ボランティアにおけるシングルスライスでの検討でも,血流境界領域のようにATTが他の部位よりも延長した部位の信号は低く,この部位にあわせたTIの設定が必要と考えられた(10001200ms程度).マルチスライス法では頭側のスライスほどラベリングパルスとの間隔が広く,ATTの影響がより顕著となった.3Dで頭側のスライスまで十分な画質を確保するためにはTIを1400ms以上に設定することが好ましいと思われた.また,高齢者では若年者に比べて脳実質部の信号が弱く,血管内信号が残存しやすい傾向があった.血流速度が遅いためラベルされた血液が撮像範囲に十分到達していないためだと想定される。閉塞性動脈疾患症例では,ATTの延長に伴う局所脳血流の過小評価と血管内に残存するスピンによる過大評価の両者が問題となった.これらの影響は,頭側のスライスほど顕著な傾向にあった.ATTの影響を軽減するにはTIを延長する方法があるが,TIの延長はラベルされた血液の縦緩和に伴う信号低下および撮像時間の延長をもたらす.ATTに応じてTIなどの撮像条件を最適化する必要があるが,それぞれの症例におけるATTを予測することは容易ではない.また,縦緩和による信号低下や検査時間を考慮すると,現時点の手法ではTIの延長にも限界がある.進行したモヤモヤ病などでATTが極端に延長している場合には,この手法による脳血流評価は困難と考えられる.血管内信号を抑制目的で,データ収集前にラベリング位置に飽和パルスをかけることが可能であったが,血管内信号を選択的に抑制する手法ではなく,SNRの低下が問題であった.平成12年度は,arterial spin labelingの一法であるASTAR(Signal Targeted Alternating Radio Frequency with Asymmetric Inversion Slabs)法に関して,撮像パラメータが画像に与える影響を正常ボランティアで検討した.TI(血液ラベリングと撮像の間隔)時間の変化によって画像コントラストが大きく変化することが確認された.静止組織の抑制のためのパルスを適切に選ぶことも重要であることが示された.臨床例でも同法を応用し,その有用性について検討している.高齢者では若年者に比べて脳実質部の信号が弱く,血管内信号が残存しやすい傾向があった.これは,血流速度が遅いためラベルされた血液が撮像範囲に十分到達していないためだと想定される.この解決法としてはTIを延長する方法があるが,信号/ノイズ比が低下する.
KAKENHI-PROJECT-12670889
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ASL法を用いた局所脳血流評価法の確立
脳血流速度に応じたTIなどの撮像パラメータの最適化が必要だと思われ,今後の課題である.脳虚血病変のみならず脳腫瘍など他の病態に関しても,他の脳血流検査の所見を反映した画像が得られることが確認された.通常の2D Fourier transformation(FT)を用いた撮像では,複数の断面で良好な画像を得るためにかなりの時間を要する.この問題への対応として,3DFTを用いた撮像法についても検討を行ってきた.しかし,撮像範囲の頭側部分になるほど血液をラベルするパルスとの間隔が開いてしまい,十分な画像が得られるには至っていない.平成12年度は基本的な撮像法の検討と臨床例の蓄積を行ってきたが,論文などへの発表には至っていない.平成13年度は,昨年に続いてarterial spin labelingの一法であるASTAR (Signal Targeted Alternating Radio Frequency with Asymmetric Inversion Slabs)法に関して,基礎的,臨床的に検討を加えた.この手法の最大の問題点は,ラベリングの位置から撮像スライスに至るまでのarterial transit timeが画像に大きく影響することである.特に,脳血流速度の低下した高齢者において,十分なASL信号が得られない場合がある.この解決法として,TI(血液ラベリングと撮像の間隔)を延長することが考えられるが、一方で縦緩和に伴うASL信号の低下が問題となる.また,ラベルされたスピンが血管内に残存することも,脳血流を正しく評価する上での障害となる.この解決法として,ラベリングパルスを印加した後に,同部位にtag end cut (TEC)パルスを印加する方法についての検討も行った.TECパルスによって血管内の信号を抑制することが可能であるが,全体としてのASL信号の低下も認められた.TECパルスを印加する場合には,ラベリングパルスからなるべくはなすことが望ましいことが判明した。複数の断面を同時に検査する手法として,3D Fourier transfomation (FT)を用いたパルス系列についても検討している.パルス系列の改良により,昨年度に比べてかなり良好な画像が得られるようになってきた.しかし、撮像範囲の頭側部分になるほどarterial transit timeの影響が強く,脳血流速度が低下した状況では問題となると考えられた.2D ASTARに関する検討については,昨年の日本磁気共鳴学会で発表した.また,本年の日本医学放射線学会総会およびアメリカ神経放射線学会での発表がacceptされている.現時点では,誌上発表には至っていない.平成14年度も,arterial spin labeling(ASL)の一法であるASTAR(signal Targeted Alternating Radio Frequency with Asymmetric Inversion Slabs)
KAKENHI-PROJECT-12670889
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RC造建物の有開口非構造壁を構造壁として活用するための性能向上に関する研究
本研究は、ひずみ硬化型セメント複合材料(以下, SHCCと称す)を利用して損傷低減性の高い有開口壁を開発することを目的としたものである。本研究では, 1/2.5スケールの縮小模型試験体を用いた構造実験を行い,基本的な耐震性能を検討した。その結果、1/400rad以上の変形角ではSHCCを用いることによって極めて優れた損傷低減効果が得られることがわかった。本研究は、ひずみ硬化型セメント複合材料(以下, SHCCと称す)を利用して損傷低減性の高い有開口壁を開発することを目的としたものである。本研究では, 1/2.5スケールの縮小模型試験体を用いた構造実験を行い,基本的な耐震性能を検討した。その結果、1/400rad以上の変形角ではSHCCを用いることによって極めて優れた損傷低減効果が得られることがわかった。H22年度は、1層1スパンの構面にドア開口と窓開口を有する実大の1/2.5スケールの有開口壁試験体の構造実験によって従来のRC造とSHCC造の基本的耐震性能を比較検討した。主な検討項目は剛性、耐力、変形性能およびひび割れ性状である。実験より得られた知見は以下の通りである。・剛性については、SHCCのヤング係数がコンクリートの約1/2程度であることやSHCC壁板部とRC周辺架構(柱・梁)との打ち継ぎ部に滑りが生じたことに起因して、従来のRC造よりも低い。・耐力については、正負交番繰返し加力の加力方向によって異なる結果となり、壁板部と周辺架構との打ち継ぎ部の滑りが小さい方向の加力では、SHCC造がRC造を上回った。・変形性能については、SHCC造の最大耐力時の変形角がいずれの加力方向についてもRC造を上回り、最大耐力以降の耐力低下もRC造に比べて緩やかであった。・ひび割れ性状については、RC造では1/200程度の変形角からひび割れ幅の拡大が顕著になるのに対し、SHCC造では1/100程度の変形角までひび割れ幅の拡大は極めて小さく抑えられた。以上の知見は、RC造建築物において有開口非構造壁を構造壁として活用する上でSHCCを利用することが極めて有益であることを示唆するものである。平成23年度は,SHCCのフレッシュ性状,基礎的力学性状および収縮ひび割れ性状を検討することを目的として,練混ぜ実験,円柱供試体の圧縮・引張実験および壁板の収縮ひび割れの観察実験を実施した。実験より得られた知見は以下の通りである。・PVA繊維を体積混入率で2.0%混入したSHCCの練混ぜ実験を同一配合によって3バッチ実施した結果,フロー値は222mm224mm,空気量は4.3%4.8%とばらつきも少ない安定したフレッシュ性状が得られた。・上記練混ぜ実験の各バッチより圧縮用3体,引張用3体の円柱供試体を採取して,力学性状に関する実験を実施した結果,圧縮性状については最大圧縮応力が2832N/mm2と比較的ばらつきの少ない結果が得られたが,引張性状については,引張歪0.5%時の引張応力を比較すると1.161.93N/mm2と比較的大きなばらつきが見られた。・上記のSHCCを用いて,有開口壁板を打設し,収縮ひび割れの観察を実施した結果,壁板の全体に多くの収縮ひび割れが発生し、そのひび割れ幅は最大で0.08mm程度であった。以上のことから,SHCCを実用化する上では,引張性状のばらつきの原因究明とその対策技術の確立,収縮ひび割れの低減技術の確立が重要な課題であることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-22760431
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京都盆地アレー地震観測による地盤震動評価と震害予測推定に関する研究
京都市域の地震アレー観測ネットワークを活用して、都市域におけるの地盤震動の評価と建物の震害予測推定に関する方法論を導くことを目的する本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる。1)京都盆地と地震動特性:京都市域アレー地震観測による記録を用いて、震源の位置、距離などの分類により京都盆地内での波動伝播特性を分析し、盆地地形が地震動特性に与える影響、特に観測点の地盤構造の影響を詳細に調べた。2)地盤構造と強震動特性:観測点における地盤構造の影響を調べるとともに、京都市域の北部と南部では地盤構造が異なるため、重力異常図や物理探査による情報をもとに2次元的に地盤構造をモデル化し、京都市域アレー地震観測によって得られる地中および地表での地震観測記録を用いて地盤震動特性を評価した。2次元地盤モデルによる解析結果を観測記録により検証するとともに、盆地周辺のエッジ効果など確認した。3)地震動強さと木造建物被害の評価:京都市域の木造住宅を対象に微動計測を実施して振動特性を評価するとともに、地震応答解析により建物の耐震性能を評価した。また、1995年兵庫県南部地震での木造被害調査、2000年鳥取県西部地震での被害調査から、これらの地震動特性のみならず、木造建物の構法などの特徴により被害発生が大きく異なることが分かった。4)震害予測推定法の開発:兵庫県南部地震など近年の地震被害調査結果を参考にして都市域の建物被害予測を行うために建物の被害率曲線を構成する方法を導いた。家具等の転倒による人的被害を検討するため、家具の転倒実験も併せて行い、被害発生の判定規範を導いた。今後は、建物が混在している都市域の建物を群として捉え、それらの分布性状や耐震性能を本質的に不確定・不規則なものとして、都市域の入力地震動、施設・建物群や破壊判定規範などを確率システム論的に取り扱う震害予測方の開発を目指す。京都市域の地震アレー観測ネットワークを活用して、都市域におけるの地盤震動の評価と建物の震害予測推定に関する方法論を導くことを目的する本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる。1)京都盆地と地震動特性:京都市域アレー地震観測による記録を用いて、震源の位置、距離などの分類により京都盆地内での波動伝播特性を分析し、盆地地形が地震動特性に与える影響、特に観測点の地盤構造の影響を詳細に調べた。2)地盤構造と強震動特性:観測点における地盤構造の影響を調べるとともに、京都市域の北部と南部では地盤構造が異なるため、重力異常図や物理探査による情報をもとに2次元的に地盤構造をモデル化し、京都市域アレー地震観測によって得られる地中および地表での地震観測記録を用いて地盤震動特性を評価した。2次元地盤モデルによる解析結果を観測記録により検証するとともに、盆地周辺のエッジ効果など確認した。3)地震動強さと木造建物被害の評価:京都市域の木造住宅を対象に微動計測を実施して振動特性を評価するとともに、地震応答解析により建物の耐震性能を評価した。また、1995年兵庫県南部地震での木造被害調査、2000年鳥取県西部地震での被害調査から、これらの地震動特性のみならず、木造建物の構法などの特徴により被害発生が大きく異なることが分かった。4)震害予測推定法の開発:兵庫県南部地震など近年の地震被害調査結果を参考にして都市域の建物被害予測を行うために建物の被害率曲線を構成する方法を導いた。家具等の転倒による人的被害を検討するため、家具の転倒実験も併せて行い、被害発生の判定規範を導いた。今後は、建物が混在している都市域の建物を群として捉え、それらの分布性状や耐震性能を本質的に不確定・不規則なものとして、都市域の入力地震動、施設・建物群や破壊判定規範などを確率システム論的に取り扱う震害予測方の開発を目指す。本研究では、京都市域に特有の盆地地形や地盤構造を考慮するとともに京都市域の地震アレー観測ネットワークを活用して、都市域における地盤震動の評価と建物の震害予測推定に関する方法論を導くことを目的としている。先ず、観測された記録のデータベースを作成するとともに、近地および遠地地震など地震観測記録の震源情報に基づいて整理し、京都盆地内での波動伝播特性を調べた。地震動特性に盆地地形の影響が強く現れることを明らかにした。さらに、京都市域の北部と南部では地盤構造が異なるため、数多くあるボーリング調査資料をデータベース化するともに京都市域アレー地震観測によって得られる地中、地表での観測記録を用いて、地盤震動特性を評価した。京都市域に大地震を引き起こす可能性のある活断層についての調査結果をもとに直下型大地震を想定し、経験的グリーン関数法、統計的波形合成法などによって盆地地形と地盤構造を考慮した強震動予測法について検討を行った。一方、建物の構造種別、規模、用途、建設年などのデータベースと兵庫県南部地震など近年の地震被害調査結果を参考にして、都市域の建物被害を予測する方法について調べた。ここでは、木造住宅の被害が最も重要になるため、木造住宅の耐震性能に注目して実大実験等により動力学モデルの構築と地震応答解析を実籐して損傷・破壊状況と地震強度との関係を調べた。今後は、地震応答観測ネットワークで得られる地震情報に基づいて早期に震害を推定する震害シミュレーション手法の開発にも取り組む。本研究では、京都市域に特有の盆地地形や地盤構造を考慮するとともに京都市域の地震アレー観測ネットワークを活用して、都市域における地盤震動の評価と建物の震害予測推定に関する方法論を導くことを目的としている。
KAKENHI-PROJECT-10555200
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京都盆地アレー地震観測による地盤震動評価と震害予測推定に関する研究
先ず、京都市域アレー地震観測による記録を用いて、近地地震および遠地地震などの分類により京都盆地内での波動伝播特性を分析し、盆地地形が地震動特性に与える影響、特に観測点の地盤構造の影響を詳細に調べた。さらに、京都市域の北部と南部では地震構造が異なるため、数多くあるボーリング調査資料を参考にして京都市域アレー地震観測によって得られる地中、地表での観測記録を用いて、地盤震動特性を評価した。京都市域に大地震を引き起こす可能性のある活断層についての調査結果をもとに直下型大地震を想定し、経験的グリーン関数法、統計的波形合成法などによって盆地地形と地盤構造を考慮した強震動予測モデルを構築している。一方、建物の構造種別、規模、用途、建設年などのデータベースと兵庫県南部地震など近年の地震被害調査結果を参考にして都市域の建物被害予測を行うために建物の被害率曲線を構成する方法について検討を行った。建物の倒壊等による人的被害のみならず家具等の転倒による人的被害を検討するため、家具の転倒実験も併せて行った。種々の構造種別、規模、用途や建築年の施設・建物が混在している都市域の建物を群として捉え、それらの分布性状や耐震性能は、本質的に不確定・不規則なものとして、都市域の入力地震動、施設・建物群や破壊判定規範などを確率システム論的に取り扱う震害予測のシミュレーションを行った。京都市域の地震アレー観測ネットワークを活用して、都市域における地盤震動の評価と建物の震害予測推定に関する方法論を導くことを目的する本研究で得られた成果は以下のようにまとめられる。1)京都盆地と地震動特性:京都市域アレー地震観測による記録を用いて、震源の位置、距離などの分類により京都盆地内での波動伝播特性を分析し、盆地地形が地震動特性に与える影響、特に観測点の地盤構造の影響を詳細に調べた。2)地盤構造と強震動特性:観測点における地盤構造の影響を調べるとともに、京都市域の北部と南部では地盤構造が異なるため、重力異常図や物理探査による情報をもとに2次元的に地盤構造をモデル化し、京都市域アレー地震観測によって得られる地中および地表での地震観測記録を用いて地盤震動特性を評価した。2次元地盤モデルによる解析結果を観測記録により検証するとともに、盆地周辺のエッジ効果など確認した。3)地震動強さと木造建物被害の評価:京都市域の木造住宅を対象に微動計測を実施して振動特性を評価するとともに、地震応答解析により建物の耐震性能を評価した。また、1995年兵庫県南部地震での木造被害調査、2000年鳥取県西部地震での被害調査から、これらの地震動特性のみならず、木造建物の構法などの特徴により被害発生が大きく異なることが分かった。4)震害予測推定法の開発:兵庫県南部地震など近年の地震被害調査結果を参考にして都市域の建物被害予測を行うために建物の被害率曲線を構成する方法を導いた。家具等の転倒による人的被害を検討するため、家具の転倒実験も併せて行い、被害発生の判定規範を導いた。今後は、建物が混在している都市域の建物を群として捉え、それらの分布性状や耐震性能を本質的に不確定・不規則なものとして、都市域の入力地震動、施設・建物群や破壊判定規範などを確率システム論的に取り扱う震害予測方の開発を目指す。
KAKENHI-PROJECT-10555200
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国際調査データの国際的共用をめざして
学術研究においては、社会調査が社会科学の実証研究において主要な研究方法のひとつであり、広く用いられているにもかかわらず、我が国では調査方法についての研究と教育が欧米諸国と比較して大幅に遅れている。殊に近年はグローバル化に伴い、調査データの国際比較が頻繁に行われるようになった。調査データの国際比較は日本の特殊性と一般性を理解するための有効な手段である。しかし、比較できないデータを形式的に比較しても意味はない。データの比較可能性を確保することが国際比較の大前提である。本研究では、日本の調査データの国際比較可能性をめぐる諸問題を次のような段階を踏んで研究した。(1)国際的に調査データを共用する場合に極めて重要な、標本抽出、調査手法、尺度・質問項目の比較可能性および反応傾向(極端な回答を避ける傾向、どんな質問にも肯定的に回答する傾向など)について、国際比較調査データを分析・検討して問題点を洗い出す、(2)そうした問題の背景にある社会文化的因および日本の調査環境や技法の特殊性を複合的な研究方法を用いて明らかにし、可能な解決法を模索する。その結果、標本の代表性など日本の社会調査方法の強みが明らかになると共に、欧米で開発され世界で広く使われている多くの尺度の比較可能性の問題に解を見出すのは極めて困難で、むしろ国際比較統計の利用者にガイドラインが必要であることが示唆された。学術研究においては、社会調査が社会科学の実証研究において主要な研究方法のひとつであり、広く用いられているにもかかわらず、我が国では調査方法についての研究と教育が欧米諸国と比較して大幅に遅れている。殊に近年はグローバル化に伴い、調査データの国際比較が頻繁に行われるようになった。調査データの国際比較は日本の特殊性と一般性を理解するための有効な手段である。しかし、比較できないデータを形式的に比較しても意味はない。データの比較可能性を確保することが国際比較の大前提である。本研究では、日本の調査データの国際比較可能性をめぐる諸問題を次のような段階を踏んで研究した。(1)国際的に調査データを共用する場合に極めて重要な、標本抽出、調査手法、尺度・質問項目の比較可能性および反応傾向(極端な回答を避ける傾向、どんな質問にも肯定的に回答する傾向など)について、国際比較調査データを分析・検討して問題点を洗い出す、(2)そうした問題の背景にある社会文化的因および日本の調査環境や技法の特殊性を複合的な研究方法を用いて明らかにし、可能な解決法を模索する。その結果、標本の代表性など日本の社会調査方法の強みが明らかになると共に、欧米で開発され世界で広く使われている多くの尺度の比較可能性の問題に解を見出すのは極めて困難で、むしろ国際比較統計の利用者にガイドラインが必要であることが示唆された。本研究の目的は、社会調査データの国際的共用をめざして、日本の調査データの国際比較可能性をめぐる諸問題を研究し、その成果を内外の調査データ利用者と共有することである。初年度にあたる本年の目標は既存の国際比較調査研究を収集し、それらを調査方法論の視点から体系的に分析して問題点を集約することであった。国際比較データには次の4類型がある。1.ひとつの調査機関あるいは調査チームがすべての国の調査を組織し調査票を作成してデータを収集する。2.ある国の調査機関あるいは調査チームが調査の自国で行い、それと同様の調査を他国の調査機関あるいは調査チームに依頼、委任する。3.既存の類似した調査データを各国から取得して統計的操作によって測定値をできるだけ比較可能にする。4.既存の調査統計(例、厚生白書)から数値(例、平均在院日数)をひきぬいて比較する。調査データの国際比較における信頼性及び妥当性という観点では類型1の調査が一番望ましく、類型の番号順に低下する。問題点は次のように要約される。類型1と2の国際調査においてはサンプリングは各国の事情(例、ほぼ全国民を住民台帳で把握している日本とそのような制度のない米国)によってかなり柔軟に異なるサンプリング法を用いてもよいが、調査方法(面接、電話、郵送調査等)と調査票の内容は厳密な同等性を確保する必要がある。サンプリングの違いはかなりの部分、統計的に修正できるが、調査方法と調査項目の違いから生じる測定誤差と真の測定値の差は判別困難だからである。類型3のように既存データを取得して国際比較をする場合には、サンプリングや調査方法・内容の同等性を厳密に審査して、必要な場合にはサンプルにウェイトをかけたり、測定値の再分類をして各国のデータ間の同等性を最大限高める努力をする必要がある。類型4に該当する国際比較では、まず、既存の統計資料が比較可能なものであるか否かを正しく見極めることが重要である。そして、サンプリングや調査方法・内容に違いがある場合にはそれを報告し、国際比較の表なりグラフを読む場合、読者が注意すべきことを併記する必要がある。第2年度の主要な課題は社会意識・社会行動の基本的尺度を選択し、全国の面接調査でランダムプローブ法(Schuman, 1986)を用いて、代表性のある標本による実際の調査条件下での質問文の解釈ならびに回答の背後にある情報を収集し、定量的、定質的な分析を行うことであった。代表研究者の秋山が別個の研究グループと行った全国中高齢者調査(N=3, 286)に相乗りして10月に調査を行った。調査は中央調査社に委託、回収率は83%であった。現在、データのクリーニングを終えたところで、これから分析を始める。
KAKENHI-PROJECT-12301007
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国際調査データの国際的共用をめざして
この調査はアメリカでも行われているので日本データの分析を終えた後、国際比較分析を行う予定である。今年度のもうひとつの課題は潜在的連想テスト(implicit association test)を用いて、調査回答者が質問に回答したような態度を実際にもっているかどうか実験的に調べることであった。この方法は、コンピューターを用いて、回答者が意識していない、あるいは隠している態度を調べることを可能にするものである。実験では、自己卑下する必要性の有無が質問紙で測定する自己評価に与える影響について検討することを目的とした。日本人の自己卑下的な傾向が、状況に応じた自己呈示の結果であると考え、そして、その自己呈示の必要性をなくせば、本当の自己評価、が現れるだろうと仮定した。そこで今回の実験では、皮膚電気反射を測定するSCR Meterと音声を分析するTrusterという装置を用い、実験者が真の自己評価を知りえたと思わせることによって、自己卑下を行う必要性をなくし、日本人の『隠された』本当の自己評価を測定しようとした。具体的には、その装置を取り付けた場合は、取り付けない場合より自己卑下的な傾向が弱まり、自己評価が高くなるだろうと予測しました。結果は仮説を支持していなかったが、手続きを改善した追加実験を行うことを計画している。社会のさまざまな分野で国際的連携が急速に進み、21世紀は世界共同体の世紀とも言われる今日、調査データの国際比較が頻繁に行われるようになった。本研究の目的は、日本の調査データの国際比較可能性をめぐる諸問題を次のような段階を踏んで研究し、その成果を内外の調査データ利用者と共有することである。(1)社会調査の基盤をなすサンプリング、調査手法、構成概念、質問項目、反応バイアスにおける比較可能性について既存の国際調査データを検討して問題点を確認・整理する、(2)そうした問題の背景にある社会文化的要因と日本の調査環境や技法の特殊性を複合的な研究方法を用いて明らかにし、可能な解決法を提示する。(3)日本の調査データを国際比較に活用する人達のためのガイドラインを作成する。上記の目的を達成するために、既存の国際データ及び関連資料の分析、フォーカス・グループ、ランダム・プローブ、潜在的連想テスト(IAT)による実験研究を行なった。サンプリングは各国で使用可能なsampling frame(例、住民台帳の有無)によって異なるが、統計的に調整可能である。データの公開にあたって、調整ソフトを添付することが望ましい。調査方法と調査票の内容は厳密な同等性を確保する必要がある。調査方法と調査項目の違いから生じる測定誤差と真の測定値の差は判別困難だからである。データ収集のコンピュータ化における日本の立ち遅れはデータの比較可能性を制限している。また、疾病名や家族構成(例、同居)などの極めて基本的な概念における文化間のズレ、鬱尺度や自尊感情尺度など多国で使用されている翻訳尺度における因子構造の違いや欠損値の量及び分布の差異が明らかになった。反応傾向の文化差は従来報告されているほど観察されなかった。
KAKENHI-PROJECT-12301007
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初期地球時代のプレート沈み込み帯でのマントルー地殻相互作用
太陽系惑星の中で現在の地球だけが持つ固有の特徴としてあげられるプレートテクトニクス・大陸・海の存在がが地球史のいつから存在し,現在とどう違い,なぜ違うのかは地球科学未解明問題である.本研究では西グリーンランド南部地域に産する地球史上最古(38億年前)の超苦鉄質岩(上部マントル物質)とその周囲の変成岩・花崗岩(地殻物質)を研究対象とし,(1)太古代地質帯の初期地球のプレート沈み込み帯の実態,(2)初期地球のプレート沈み込み帯深部でのマントルー地殻相互作用が関与する物質循環と大陸形成過程,(3)世界最古のマントル物質の特徴を明らかにし,初期地球のプレートテクトニクスと固体地球変遷の解明に貢献する.太陽系惑星の中で現在の地球だけが持つ固有の特徴としてあげられるプレートテクトニクス・大陸・海の存在がが地球史のいつから存在し,現在とどう違い,なぜ違うのかは地球科学未解明問題である.本研究では西グリーンランド南部地域に産する地球史上最古(38億年前)の超苦鉄質岩(上部マントル物質)とその周囲の変成岩・花崗岩(地殻物質)を研究対象とし,(1)太古代地質帯の初期地球のプレート沈み込み帯の実態,(2)初期地球のプレート沈み込み帯深部でのマントルー地殻相互作用が関与する物質循環と大陸形成過程,(3)世界最古のマントル物質の特徴を明らかにし,初期地球のプレートテクトニクスと固体地球変遷の解明に貢献する.
KAKENHI-PROJECT-19KK0092
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19KK0092
NUT midline carcinomaにおける新たな治療戦略の開発
難治の悪性腫瘍であるNUT midline carcinoma(NMC)において新たな治療標的を探索する研究を行った。次世代シークエンサー(NGS)を用いてNMCの遺伝子異常を網羅的に解析し、薬剤パネルを用いて薬剤の有効性をスクリーニングした。さらに、NMCにおけるSmall RNAのプロファイルをNGSにて解析した。その結果、治療への応用に結びつくような特定の遺伝子異常と、治療標的となりうるmicroRNAを見つけることに成功した。また、NMCの診断法を確立するため、digital PCR法を用いたNMCの新たな診断法を開発し、微量な臨床検体からNMC症例を同定することにも成功した。Nut midline carcinoma(NMC)に対する新たな治療ターゲットを発見するため、次世代シークエンサーを用いてNMC細胞株の遺伝子異常を検証した。その結果、NMC細胞における細胞増殖に関連するような遺伝子異常の候補をいくつか見出した。この候補遺伝子の機能を詳細に検討するため、野生型の候補遺伝子を発現するような細胞株を作成することとした。さらに、NMC細胞の遺伝子発現を変化するような遺伝子異常を見出したため、遺伝子発現の解析も平行することとした。一方で、NMC細胞における薬剤の抗腫瘍効果を検証するため、Drugscreening panelを用いて、薬剤スクリーニングを行った。そのなかで、あるシグナル阻害剤の抗腫瘍効果が高いことが明らかとなり、このシグナルと前述の候補遺伝子との関連を調べるべく、さらに研究を進めることとした。同時に、臨床検体におけるNMCの頻度を調べるため、In situ Hybridization(ISH)法によるNUT遺伝子の検出を試みた。しかし、ISH法では十分な検出感度が得られず、これに代わる方法を検討することとなった。Nut midline carcinoma(NMC)細胞株を用いた新たな治療ターゲットを検証する基礎研究は予定通りに進んでいる。研究計画当初予定していたDNAマイクロアレイに代わり、次世代シークエンサーを用いることで、遺伝子発現の解析に留まらず、網羅的に遺伝子変異の解析を進めることができた。さらにDrugscreening panelを用いることで、治療ターゲットの候補を絞ることができている。一方で、臨床検体におけるNMCの解析では、計画していたIn situ hybridization(ISH)法によるNUT遺伝子の検出感度が期待されるものではなかった。このため、検出方法について計画を変更し、代替法のvalidityを確認することとした。1次世代シークエンサーを用いて、Nut midline carcinoma(NMC)細胞株における遺伝子変異の解析を網羅的に行なった。その結果、ある遺伝子Aの異常が共通して見つかり、その機能を解析するべく研究を進めた。変異したその遺伝子Aの機能を評価するため、野生型の及び変異型の遺伝子Aを発現するような細胞株を作成することとした。NMC細胞株へその遺伝子を導入するにあたり、プラスミドベクターを作成した。遺伝子Aは癌抑制遺伝子でもあったため、遺伝子導入により細胞死を呈する可能性もあったため、coumermycinによって遺伝子の発現を調整できるようなプラスミドベクターの作成を行なった。2治療標的を探索するべく、次世代シークエンサーを用いてmicro RNA (miRNA)のプロファイリングの評価を行った。その結果、NMC細胞株では、ある特定の環境でmiRNAのプロファイリングが大きく変化することが判明した。そのうち、一番大きな発現の変動が見られたmiRNAを選択し、NMC細胞株におけるそのmiRNAの機能を解析することとした。miRNAのmimic及びinhibitorをそれぞれNMC細胞株に導入したところ、導入された細胞で、細胞増殖に変化が生じることが判明した。このmiRNAはNMCの新たな治療標的であることを初めて見出し、そのメカニズムをさらに検討することとした。3FFPE臨床検体を用いて、NMCを効率よく診断できるような研究プロトコールを作成した。スクリーニングとして、digital PCRを用いたNUT遺伝子発現の定量評価を利用することとした。様々な実験条件を試し、適切なプロトコールで臨床検体からNUT遺伝子発現の有無を評価できるシステムを作り上げた。複数のスクリーニング法で治療標的を検討した結果、細胞株を用いた基礎実験では、新たな治療標的の探索と、その機能をある程度まで評価することができた。in vitro実験まで概ね計画通りに進んでおり、in vivo実験で検証することで基礎研究データとして十分なものになることが予想される。臨床検体を用いたNut midline carcinomaの評価については、やや遅れている。当初予定していたIn situ hybridyzation法が上手く機能しなかったため、digital PCRを用いたスクリーニング法に切り替えた。その新たなスクリーニング法は効率的に機能するため、予定している症例数までを目標に、評価を実践している。前年度までの成果をもとに、Nut midline carcinoma(NMC)に対して有効性を示す薬剤の候補を突き止めた。その候補薬剤は、次世代シークエンサーの解析により同定された遺伝子Aの異常を持つことに由来すると考えた。また、BET阻害剤であるJQ-1に体制をもつNMC細胞株を作成したが、このJQ-1耐性株においても、候補薬剤それぞれの感受性が確認された。このため、候補薬剤の作用点が従来の治療標的であるBETとは異なる作用であることが示唆された。この研究を発展させるため、我々は新たな実験を遂行している。一方、Digital PCRを用いた臨床検体の解析により、NMC症例を同定することができた。この症例の腫瘍を同様に次世代シークエンサーで解析した結果、前年度までの成果と同様、遺伝子Aに異常を持つことが確認された。
KAKENHI-PROJECT-15K19406
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K19406
NUT midline carcinomaにおける新たな治療戦略の開発
遺伝子Aの異常が、細胞株および臨床検体からも検出されたことから、この遺伝子AがNMCに置けるOncogenesisに大きな役割をもつだろうと考え、さらに本研究を発展させることとした。難治の悪性腫瘍であるNUT midline carcinoma(NMC)において新たな治療標的を探索する研究を行った。次世代シークエンサー(NGS)を用いてNMCの遺伝子異常を網羅的に解析し、薬剤パネルを用いて薬剤の有効性をスクリーニングした。さらに、NMCにおけるSmall RNAのプロファイルをNGSにて解析した。その結果、治療への応用に結びつくような特定の遺伝子異常と、治療標的となりうるmicroRNAを見つけることに成功した。また、NMCの診断法を確立するため、digital PCR法を用いたNMCの新たな診断法を開発し、微量な臨床検体からNMC症例を同定することにも成功した。これまでの研究成果に基づいて、候補遺伝子の機能を調べるため、機能解析を進めていく。NUT midline carcinoma(NMC)細胞株に、野生型の候補遺伝子を遺伝子導入し、その機能を検証していく。さらにNUT遺伝子との関連を調べるため、Inducible NUT-shRNAをそれらに導入して、機能解析を進めていく。遺伝子発現の検証には、次世代シークエンサーを用いて解析を行っていく。薬剤スクリーニングから得られた結果をもとに、候補遺伝子との関連をしらべるべく、平行してシグナル解析も行っていく。臨床検体におけるNUT遺伝子の発現を解析するため、digital PCRを用いて解析を行う。NUT遺伝子のプローブを作成し、そのvalidityを確認していく。期待される感度が得られれば、病理組織検体のNUT遺伝子発現のスクリーニングを行い、陽性の組織サンプルを用いて、RNAシークエンスを行い、NUT融合遺伝子を検出・同定する。さらにRNAシークエンスの結果から、変異解析も行い、細胞株で認めた遺伝子異常の再現性を確認する。新たな治療標的の作用機序について、in vitro実験にて、さらなる検証を進める。想定される作用機序が仮説の通りであるのか、複数の研究モデルを用いて検証する。さらに、in vivo実験を用いて新たな治療標的の効果を検証する。マウスを用いた研究を行い、in vitro実験で認められた結果が、in vivo実験で再現されるか、検証を行う。臨床検体におけるNUT midline carcinomaの評価を進めていく。目標症例数までスクリーニングを行い、陽性となった検体で、次世代シークエンサーを用いて融合遺伝子異常の検索を行っていく。
KAKENHI-PROJECT-15K19406
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ビデオ画像の周波数解析による無人介護システムへの応用
本年度の研究は平成18年度の研究実施計画に沿って行った。前年度のシステム移行する際の不具合の除去を行った。具体的にはモジュールの細分化を行い、役割の明確化とコードの簡単化を図った。こうすることによって、リアルタイム処理までは行かなかったのですが、処理スピードが約30%向上したことが確認された。動き検出、動き識別に用いる時系列パターンの構成は、動きのスピードや向きによって変化するものと考えられますので、連続したフレームだけではなく、間引きした形でn(nは可変)フレームごとに時系列パターンを構成し、動き識別を行った。結果として、遅い動きに対しては、安定した出力が得られたが、速い動きの場合、フレーム間差分が大きくなり、時系列パターンが不安定になって、識別精度が低下する。改善策として、何種類の時系列パターンを同時に構成し、並列に動き識別を行うことが考えられますが、計算量が増えるため、高速化の課題が残っている。今年度はビデオカメラのランダムノイズによる瞳検出(顔位置検出)精度の影響を抑えるため、DCT係数を利用したパターンマッチング法を開発した。これと同時にDCT係数を利用した表情識別モジュールの開発を行った、無表情、笑い、悲しい、驚き、怒りの5表情の識別が登録者本人の表情を入力した場合に実現されている。苦しみという表情は、悲しみと怒りの両方の特徴を持つことが実験で分ったため、介護支援を目的にした場合、この3つの表情を統合して、苦しい表情と判定しても差し支えがないと判断される。以上の成果をメーカーに展示し、社会的な需要度と製品化する際にクリアすべき課題について検討した。更なる完成度の高いアルゴリズムの開発や、要介護度に応じたターゲットの絞込みや、介護現場での意見を取り入れたシステム構成など、現実問題とした課題が出されたので、今後の課題にしたい。平成15年度の研究は研究計画に従って行いました。まず、介護支援システムのフレームワークの設計を行いました。本システムの使用環境は室内と特定されているためビデオカメラの設置は固定方式を採用しました。または、24時間作動を考えて、テスト用ホストはサーバー系マシン(DELL Poweredge600)を採用し、OSは動作が比較的に安定なLinux系(TurboLinux 7.0 Workstation)を採用しました。カメラはCMOS、CCD素子を搭載したものをテストし、現在はオートフォーカス機能とホワイトバランス機能を有し、ソフト的に修正が少ないDVカメラを採用している。次は、コーアエンジン及び周辺ドライバの開発を行いました。これは、ビデオ信号をキャプチャボードでA/D変換を行い、デジタル信号としてメインプログラムへ渡し、処理結果を出力するまでの一連のコーディング作業を言います。各作業を行う前に、基本設計を行い、インタフェース間のスムーズなデータ交換を図っています。特に、高速処理のため、データの入力及び演算はすべてメモリ上で行うように工夫し、または、中間結果を確認するためのインタフェースも設けています。最後に、APIの作成を行いました。DCT変換を使ったリアルタイム周波数解析なので、振幅及び符号の変化は動くパターンによって大きく変化します、よって、定量的に分析を行う前に、振幅と符号情報をグラフィック化し、目による定性的な評価を行い、情報の抽出個所を絞り込みました。これらの情報を利用し、現在、ビデオカメラの軸に垂直した水平、垂直、斜めなどの動きについて、検出が出来ました。なお、ビデオカメラ軸に平行した動きは、移動量がないため検出は難しくなります、これを解決するため、垂直設置の2カメラシステムの構築を検討しています。平成16年度の研究は前年度の研究成果を基に行いました。動きを検出する場合、単なる2フレーム間差分を利用するだけでは、検出対象の揺れや、移動方向と違った体のブレが検出精度に影響を与えます。そこで、検出対象の典型的な動きを10から20の連続フレームを利用して、周波数解析による時系列パターンを作り、動き検出データベースにテンプレートとして登録します。こうすることで、一定の期間の動き状態をもとにした参照パターンができ、検出精度の向上が期待できると考えられます。ただし、動き検出する際には、フレームレートと同じ数の時系列パターンを作り、照合することになるので、現段階では、フルフレームレートでリアルタイム処理は出来ません。将来的には、処理過程の最適化やハードウェアの性能向上により解決できると思われますが、それまでは、DVカメラを利用して撮影したAVI動画を用いて、擬リアルタイム環境を構築し、本提案の有効性を検討します。また、Linux環境では、動画ファイルを扱うAPIの数が少なく、関連情報も十分でないため、開発環境の移行が必要となりました。以前開発したコードの再利用と豊富なAPIを持つ開発ツールの点を考量して、BSDベースのMac OS Xに決定しました。現在、移行作業をほぼ終了し、薪環境の実行テストを行っています。また、今年度はスケジュールにある寝たきり状態の人の表情を検出する開発を行いました。表情検出するには、先ず顔の検出を行わなければなりません。特に周波数解析を用いた場合、位置精度は直接検出精度に影響を与えます。このような先決条件があったので、今年度は顔位置の検出に重点を置きました。基本方針として、色信号を用いて顔領域を探索、それから、空間分離度フィルタを用いて、目の候補点を列挙、つぎにテンプレートマッチングとガイドパターンを使って、目の位置を決定。最後に、この位置情報を基に顔画像を正規化し、入力とします。100人の顔画像を用いて実験した結果、8割以上の目の位置決定に成功しています。本年度の研究は平成18年度の研究実施計画に沿って行った。
KAKENHI-PROJECT-15700101
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700101
ビデオ画像の周波数解析による無人介護システムへの応用
前年度のシステム移行する際の不具合の除去を行った。具体的にはモジュールの細分化を行い、役割の明確化とコードの簡単化を図った。こうすることによって、リアルタイム処理までは行かなかったのですが、処理スピードが約30%向上したことが確認された。動き検出、動き識別に用いる時系列パターンの構成は、動きのスピードや向きによって変化するものと考えられますので、連続したフレームだけではなく、間引きした形でn(nは可変)フレームごとに時系列パターンを構成し、動き識別を行った。結果として、遅い動きに対しては、安定した出力が得られたが、速い動きの場合、フレーム間差分が大きくなり、時系列パターンが不安定になって、識別精度が低下する。改善策として、何種類の時系列パターンを同時に構成し、並列に動き識別を行うことが考えられますが、計算量が増えるため、高速化の課題が残っている。今年度はビデオカメラのランダムノイズによる瞳検出(顔位置検出)精度の影響を抑えるため、DCT係数を利用したパターンマッチング法を開発した。これと同時にDCT係数を利用した表情識別モジュールの開発を行った、無表情、笑い、悲しい、驚き、怒りの5表情の識別が登録者本人の表情を入力した場合に実現されている。苦しみという表情は、悲しみと怒りの両方の特徴を持つことが実験で分ったため、介護支援を目的にした場合、この3つの表情を統合して、苦しい表情と判定しても差し支えがないと判断される。以上の成果をメーカーに展示し、社会的な需要度と製品化する際にクリアすべき課題について検討した。更なる完成度の高いアルゴリズムの開発や、要介護度に応じたターゲットの絞込みや、介護現場での意見を取り入れたシステム構成など、現実問題とした課題が出されたので、今後の課題にしたい。
KAKENHI-PROJECT-15700101
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錐体ジストロフィー及び錐体杆体ジストロフィーの原因遺伝子と表現型の多様性の解明
本課題の研究目標は、表現型の多様性に注目しつつ遺伝性眼底疾患の原因遺伝子の同定を行うことで、特に日本ではまだあまり検索がされていない錐体(杆体)ジストロフィーについて、原因遺伝子を同定し遺伝子型と表現型の関連について検討することである。錐体(杆体)ジストロフィーの約40家系についてCRX、RETGC1、peripherin/RDS、GUCA1A、HRG4、ABCA4、RPGRの各遺伝子を検討したところ、2家系にCRX遺伝子、3家系にGUCY2D遺伝子、1家系にperipherin/RDS遺伝子の変異を検出した。CRX遺伝子の変異とGUCY2D遺伝子の2種類の変異は既に海外から報告されているものと同じで、人種を超えて同じ遺伝子変異が原因となることが判明した。またGUCY2D遺伝子に新規のIle915Thr+Gly917Argの変異を検出した。このスクリーニングで、家族歴から優性遺伝と考えられた10家系中、4家系で原因が同定され、明らかな優性遺伝の家族歴がある場合は、比較的高い確率で原因が同定できると考えられた。変異が同定された症例について詳細な臨床検査を行ったところ、同じ遺伝子に原因がある場合は臨床像が似ていることが確認された一方で、同じ遺伝子異常が原因でも、症例によって重症度に大きな差がある場合があり、同定された遺伝子異常以外に、重症度や進行の程度に影響を与える要因があると考えられた。錐体(杆体)ジストロフィー以外では、眼底白点症の多数症例における遺伝子型と表現型の関連について検討し報告した。また不全型先天停止性夜盲では、網膜変性や視神経萎縮を伴う進行性の場合があることを見い出した。他にも青錐体増幅症候群では黄斑部に新生血管を伴う場合があることや、CRX遺伝子の突然変異がレーバー先天盲の原因となることがあることなどを明らかにした。本課題の研究目標は、表現型の多様性に注目しつつ遺伝性眼底疾患の原因遺伝子の同定を行うことで、特に日本ではまだあまり検索がされていない錐体(杆体)ジストロフィーについて、原因遺伝子を同定し遺伝子型と表現型の関連について検討することである。錐体(杆体)ジストロフィーの約40家系についてCRX、RETGC1、peripherin/RDS、GUCA1A、HRG4、ABCA4、RPGRの各遺伝子を検討したところ、2家系にCRX遺伝子、3家系にGUCY2D遺伝子、1家系にperipherin/RDS遺伝子の変異を検出した。CRX遺伝子の変異とGUCY2D遺伝子の2種類の変異は既に海外から報告されているものと同じで、人種を超えて同じ遺伝子変異が原因となることが判明した。またGUCY2D遺伝子に新規のIle915Thr+Gly917Argの変異を検出した。このスクリーニングで、家族歴から優性遺伝と考えられた10家系中、4家系で原因が同定され、明らかな優性遺伝の家族歴がある場合は、比較的高い確率で原因が同定できると考えられた。変異が同定された症例について詳細な臨床検査を行ったところ、同じ遺伝子に原因がある場合は臨床像が似ていることが確認された一方で、同じ遺伝子異常が原因でも、症例によって重症度に大きな差がある場合があり、同定された遺伝子異常以外に、重症度や進行の程度に影響を与える要因があると考えられた。錐体(杆体)ジストロフィー以外では、眼底白点症の多数症例における遺伝子型と表現型の関連について検討し報告した。また不全型先天停止性夜盲では、網膜変性や視神経萎縮を伴う進行性の場合があることを見い出した。他にも青錐体増幅症候群では黄斑部に新生血管を伴う場合があることや、CRX遺伝子の突然変異がレーバー先天盲の原因となることがあることなどを明らかにした。平成14年度の研究目標は、表現型の多様性に注目しつつ遺伝性眼底疾患の原因遺伝子の同定を行うことで、特に日本ではまだあまり検索がされていない錐体ジストロフィー及び錐体杆体ジストロフィーについて、原因遺伝子を同定し遺伝子型と表現型の関連について検討することだった。錐体(杆体)ジストロフィーの30例以上の症例についてCRX遺伝子とRETGC1遺伝子について検討したところ、各々数例づつに原因と考えられる遺伝子変異を同定した。2つの遺伝子共に、海外の錐体(杆体)ジストロフィーの症例で報告されている変異と同じ変異が検出され、人種を超えて同じ遺伝子の同じ変異が錐体(杆体)ジストロフィーの原因となることが明らかとなった。RETGC1遺伝子の変異が原因となる症例では、眼底に殆ど異常がみとめられず、錐体系機能が著しく障害される割には杆体系機能は軽度にしか障害されないという臨床的特徴が認められた。またこれまで報告された錐体(杆体)ジストロフィーを生じるRETGC1遺伝子の変異はすべてコドン838の異常を伴うものだったが、コドン838以外の異常による新規の変異を検出した。錐体(杆体)ジストロフィー以外の疾患については、これまで視力視野色覚等は正常で夜盲のみを呈する疾患と考えられていた眼底白点症には、小児でも黄斑変性を伴って視力が低下している例が存在することを見い出したり、青錐体増幅症候群では黄斑部に新生血管を伴うもうがあることを明らかにした。またCRX遺伝子の突然変異がレーバー先天盲の原因となることがあることや、一般に眼底に異常は伴わなわず視野はほぼ正常と考えられている不全型先天停止性夜盲では、眼底に網膜変性を伴い視野に暗点を生じる場合もあることなども、分子遺伝学的裏付けをもって示した。
KAKENHI-PROJECT-14370556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370556
錐体ジストロフィー及び錐体杆体ジストロフィーの原因遺伝子と表現型の多様性の解明
これらの結果は欧米の雑誌に報告され、各疾患の遺伝子型と表現型に関する知見を深めることに貢献した。本課題の研究目標は、表現型の多様性に注目しつつ遺伝性眼底疾患の原因遺伝子の同定を行うことで、特に日本ではまだあまり検索がされていない錐体ジストロフィー及び錐体杵体ジストロフィーについて、原因遺伝子を同定し遺伝子型と表現型の関連について検討することである。平成15年度は錐体(杵体)ジストロフィーの約40家系についてperipherin/RDS、GUCA1A、HRG4、ABCA4、RPGRの各遺伝子を検討したところ、peripherin/RDS遺伝子に変異を有する家系を見い出した。昨年度のCRX、RETGC1遺伝子についての結果とあわせると、6家系で原因となる遺伝子変異を確定できた。このスクリーニングで、家族歴により当初から優性遺伝と考えられた家系10家系中、4家系で原因が同定された結果となり、明らかな優性遺伝の家族歴のある家系では、比較的高い確率で原因が同定できると考えられた。変異の同定された症例については、詳細な臨床検査を行い、表現型についての検討を行った。その結果、同じ遺伝子が原因の場合は臨床像が似ていることが確認された一方で、同じ遺伝子異常が原因でも、症例によって重症度に大きな差がある場合があり、同定された遺伝子異常以外に、重症度や進行の程度に影響を与える要因があると考えられた。錐体(杵体)ジストロフィー以外の疾患については、例えば眼底白点症では女性で、また若くても、錐体ジストロフィーを合併しうることを見い出し、さらに眼底白点症多数症例における遺伝子型と表現型の関連について検討し報告した。また一般に不全型先天停止性夜盲では、眼底に異常を伴わず非進行性と考えられているが、重篤な網膜変性と視神経萎縮を伴う進行性の家系を見い出し報告した。
KAKENHI-PROJECT-14370556
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370556
C*-環の包含関係における不変的性質の研究と複雑系への応用
1.射影作用素を持ち得ず正値な作用素を用いて特徴付けられる、有限群から単位元をもつC*-環上への一般化されたトレース的ロホリン作用を、綿谷指数有限なC*-環のペアに拡張し、一般化されたトレース的ロホリン作用の双対作用のトレース的近似表現性を定義し、Phillips氏の有限群からC*-環上のトレース的ロホリン性を持つ作用とその双対作用のトレース的近似表現可能性の同値性の結果を拡張した。その際有効な道具として、Balark, Szaboによって定義されたC*-環A,からC*-環Bへのsequentially split *-homomorphismのorederedzero完全正値写像版を導入した。この下で、Zhang-Su吸収性と正値元からなるCuntz半群上の強比較性が, C*-環BからC*-環Aへ遺伝することを示した。2.ヒルベルト空間上の正値線形写像のクラス上で定義される作用素平均を、正値な作用素単調関数のクラスを用いて特徴付けることを試みた。例えば、与えられた作用素平均を保存する作用素単調関数fが存在することと、作用素平均及びfが重み付きharmonic meanになることが必要十分条件であることを示した。3.行列環における最大固有値を求めるペロンーフロビネンスの定理は有名であるが、無限次元ヒルベルト空間Hにおいてこのような性質を持つ作用素をnorm attaininig作用素(Nクラス)と呼ばれる。Hにおける任意の0でない閉部分空間に制限してもこの性質を持つクラスをANクラスと呼ばれる。ANクラスは多元環構造を持たないが、正値なANクラスは特徴付けられており、正値なコンパクト作用素と自己共役な有限階作用素と単位元の正値スカラー倍の和と表現される。この正値なANクラスを保存する正値な線形写像の特徴付けを行った。1.綿谷指数有限な包含関係を指数有限でない場合に拡張するために、直交性を保存するordered zeroの完全正値写像による*-homomorphismを導入したことにより、より広いクラスのC*-環の特徴付けに可能性が見いだすことができたことは大きい。2.自己相似写像から導かれる複雑系の解析のためにグラフ理論を見直しているが、こちらは進展はしていない。3.Petzによるエントロピーのリカバリーマップの評価を作用素平均を用いて行うことを試みたが、定式化はできたが評価はまだできていない。1.直交性を保存するordered zeroの完全正値写像による*-homomorphismを用いて保たれるC*-環における不変性について解析する。3.古市氏により導入されたツァリスエントロピーの評価を展望関数による評価に拡張し、その考察をもとに、先に定義したエントロピーのリカバリーマップの評価を行う。その際Ameur氏の補完関数の議論が応用できるか試みる。平成29年度の研究成果は以下の通りである:1.綿谷指数有限な単純な単位元を共有する可分な核型C*-環のペアP, A (PはAの部分環)で, Pが安定階数有限、AがJiang-Su安定ならば, Aの安定階数が1になることを示せた.これを用いて, Aが単純な単位元を持つ可分な核型C*-環で安定階数1、Jiang-Su安定、かつ、トレース的状態をただ一つ持つとき,任意の有限群からの作用から導かれるC*-接合積が安定階数1を持つことが示せた。これは1991年に高井博司氏により予想された問題への部分的解決である。2.Hyun Ho Lee氏との共同研究において, Balark, Szaboによって定義されたC*-環間のsequentially split *-homomorphismのトレース版を定義し,C*-環の分類問題に関連する環の不変性質(単純性、単純かつ安定階数1、単純かつ実階数0,単純かつJiang-Su吸収性、Cunz半群の単純かつ強比較性、単純かつ強安定性)が値域のC*-環から定義域のC*-環に遺伝することを示した.応用として,綿谷指数有限なC*-環のペアが大坂-照屋の意味でトレース的ロホリン性を持つならば、その自然な埋め込み表現が、Lee-大坂の意味でのトレース的sequentially split *-homomorphismを持つことを示した。3.Hyun Ho Lee氏との共同研究において、Phillipsにより有限群上で定義されたトレース的近似表現可能な作用を、綿谷指数有限なC*-環のペアに拡張し、このペアが大坂-照屋の意味でトレース的ロホリン性を持つこととそのBasic constructionのペアがトレース的近似表現を持つことが同値であることを示し、接合積の場合の拡張をおこなった。当初平成29年度の研究計画において提唱していた研究がおおむねうまくいっている。最終的な解決まではもう少し時間はかかると認識しているが、25年前に解けなかった問題が解決できたことは大きい。また、ロホリン性の一般化のみならず、トレース的ロホリン性に関しても一般の枠組みで指数有限な単位元を共有するC*-環のペアにおいて,C*-環の不変性質について解析が進んだことも大きい進展である。1.射影作用素を持ち得ず正値な作用素を用いて特徴付けられる、有限群から単位元をもつC*-環上への一般化されたトレース的ロホリン作用を、綿谷指数有限なC*-
KAKENHI-PROJECT-17K05285
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05285
C*-環の包含関係における不変的性質の研究と複雑系への応用
環のペアに拡張し、一般化されたトレース的ロホリン作用の双対作用のトレース的近似表現性を定義し、Phillips氏の有限群からC*-環上のトレース的ロホリン性を持つ作用とその双対作用のトレース的近似表現可能性の同値性の結果を拡張した。その際有効な道具として、Balark, Szaboによって定義されたC*-環A,からC*-環Bへのsequentially split *-homomorphismのorederedzero完全正値写像版を導入した。この下で、Zhang-Su吸収性と正値元からなるCuntz半群上の強比較性が, C*-環BからC*-環Aへ遺伝することを示した。2.ヒルベルト空間上の正値線形写像のクラス上で定義される作用素平均を、正値な作用素単調関数のクラスを用いて特徴付けることを試みた。例えば、与えられた作用素平均を保存する作用素単調関数fが存在することと、作用素平均及びfが重み付きharmonic meanになることが必要十分条件であることを示した。3.行列環における最大固有値を求めるペロンーフロビネンスの定理は有名であるが、無限次元ヒルベルト空間Hにおいてこのような性質を持つ作用素をnorm attaininig作用素(Nクラス)と呼ばれる。Hにおける任意の0でない閉部分空間に制限してもこの性質を持つクラスをANクラスと呼ばれる。ANクラスは多元環構造を持たないが、正値なANクラスは特徴付けられており、正値なコンパクト作用素と自己共役な有限階作用素と単位元の正値スカラー倍の和と表現される。この正値なANクラスを保存する正値な線形写像の特徴付けを行った。1.綿谷指数有限な包含関係を指数有限でない場合に拡張するために、直交性を保存するordered zeroの完全正値写像による*-homomorphismを導入したことにより、より広いクラスのC*-環の特徴付けに可能性が見いだすことができたことは大きい。2.自己相似写像から導かれる複雑系の解析のためにグラフ理論を見直しているが、こちらは進展はしていない。3.Petzによるエントロピーのリカバリーマップの評価を作用素平均を用いて行うことを試みたが、定式化はできたが評価はまだできていない。平成30年においては以下の研究計画をおこなう:1.照屋ー大坂によるトレース的ロホリン性のC*-包含関係の一般化を試みる。アイデアは、Balark, Szaboのsequentially *-homomorphismの概念を拡張し、最近様々な形でC*-接合積で導入されている一般化されたトレース的ロホリン性を含む形でおこなう。3.量子情報理論で最近注目されているMuller-Lennert et al. (2013)and Wilde et al. (2014)に導入されたサンドイッチタイプのエントロピーを作用素平均の理論を用いて再構成し、より一般化のエントロピーを導入する。さらに、最近Carlen, Vershyninaにより研究されている、Petzにより導入されたリカバリーマップの評価について解析し、一般化を試みる。1.直交性を保存するordered zeroの完全正値写像による*-homomorphismを用いて保たれるC*-環における不変性について解析する。
KAKENHI-PROJECT-17K05285
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05285
3八面体粘土鉱物の合成と変質
一般に鉱物の合成は生成の条件や成因などの地球科学的諸問題を解明することを主目的としていたが、最近では新素材としての工業材料を目的とした人工鉱物の合成実験が行われるようになってきた。今回の研究は天然に豊富に存在する珪藻土や籾殻灰の有効利用の一環として、これらの物質を原料として粘土鉱物の合成を試みた。1.珪藻土を用いた2八面体型粘土鉱物の合成珪藻土及びその500°C、1時間加熱処理物のSiO_2成分を基準として、これにカオリナイトの理論組成として不足しているAl_2O_3成分をAlCl_3溶液として添加して水熱合成をした。反応温度170°C、3時間、でカオリナイトが形成され始め、170°C、180時間では10%、200°C180時間の水熱合成では約30%、230°C、180時間で約60%のカオリナイトが生成した。2.珪藻土を用いた3八面体型粘土鉱物の合成(1)Mgスメクタイトの合成:Si:Mg(モル比)=8:86、反応温度200°Cで水熱合成を行うと、反応時間1218時間でスメクタイトが最も多く生成された。(2)Niスメクタイトの合成:出発物質のSi:Ni(モル比)はヘクトライトの理想式から求めたSi:Ni(モル比)8:5.33でスメクタイトの生成がよく、また反応前の溶液のpHが13.5のときが最もスメクタイトの生成がよい。珪藻土を長時間摩砕した出発物質の方がスメクタイトの生成がよい。3.籾殻灰を用いた3八面体型粘土鉱物の合成籾殻の焼成温度は、450°Cがスメクタイトの生成に最適である。出発物質の組成比はヘクトライトの理想式のSi:Mg:Li(モル比)であるSi:Mg:Li(モル比)=8:5.34:0.66がスメクタイトの生成に最適である。反応前の溶液のpHは13.213.5がスメクタイトの生成に最適である。一般に鉱物の合成は生成の条件や成因などの地球科学的諸問題を解明することを主目的としていたが、最近では新素材としての工業材料を目的とした人工鉱物の合成実験が行われるようになってきた。今回の研究は天然に豊富に存在する珪藻土や籾殻灰の有効利用の一環として、これらの物質を原料として粘土鉱物の合成を試みた。1.珪藻土を用いた2八面体型粘土鉱物の合成珪藻土及びその500°C、1時間加熱処理物のSiO_2成分を基準として、これにカオリナイトの理論組成として不足しているAl_2O_3成分をAlCl_3溶液として添加して水熱合成をした。反応温度170°C、3時間、でカオリナイトが形成され始め、170°C、180時間では10%、200°C180時間の水熱合成では約30%、230°C、180時間で約60%のカオリナイトが生成した。2.珪藻土を用いた3八面体型粘土鉱物の合成(1)Mgスメクタイトの合成:Si:Mg(モル比)=8:86、反応温度200°Cで水熱合成を行うと、反応時間1218時間でスメクタイトが最も多く生成された。(2)Niスメクタイトの合成:出発物質のSi:Ni(モル比)はヘクトライトの理想式から求めたSi:Ni(モル比)8:5.33でスメクタイトの生成がよく、また反応前の溶液のpHが13.5のときが最もスメクタイトの生成がよい。珪藻土を長時間摩砕した出発物質の方がスメクタイトの生成がよい。3.籾殻灰を用いた3八面体型粘土鉱物の合成籾殻の焼成温度は、450°Cがスメクタイトの生成に最適である。出発物質の組成比はヘクトライトの理想式のSi:Mg:Li(モル比)であるSi:Mg:Li(モル比)=8:5.34:0.66がスメクタイトの生成に最適である。反応前の溶液のpHは13.213.5がスメクタイトの生成に最適である。昭和62年度上半期に送風定温恒温器を購入して,秋田県に豊富に存在する珪藻土を出発物質とし,テフロン製容器を用いて粘土鉱物の合成及び反応速度論的な検討を行った.秋田県鷹栄町産の珪藻土を乾燥し, 48メッシュのフルイを通した粉体と,これを500°C1時間加熱処理した試料を出発原料とした.珪藻土のSiO_2成分とAl_2O_3成分のみに着目し,カオリン鉱物の理論組成として不足しているAl_2O_3成分をAgCl_3・6H_2O(試薬一級)で添加した.固形分を1.4gとし,蒸留水を7cc加えた後,テフロン製反応器に封入し, 170°C, 200°C, 230°Cで水熱処理を行った.反応時間は, 3180時間とし,反応後,急冷し室温で開封した.
KAKENHI-PROJECT-62540612
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3八面体粘土鉱物の合成と変質
固形分を洗浄した後,乾燥した試料のXRD及びDTA, TGを測定し,合成された粘土鉱物及びその生成量を見積った.上記実験條件で, DTAで見積った生成量は約50%, X線回折法による見積りでは約70%であった.カオリンの生成に関する速度論的考察から珪藻土中のSiが液相に溶解した後にカオリンの生成が始まることがわかった.従って本実験で行ったような反応処理では,できるだけ固形分が溶解しやすくような條件を見い出すことが必要である.昭和63年度は今年度の結果を踏えて3-八面体粘土鉱物の水熱合成を試みると同時に, 3-八面体粘土鉱物の変質機構の速度論的検討を行う予定である.昭和62年度に購入した送風温度恒温器を用いて秋田県に豊富に存在する珪藻土を出発物質として、3-八面体型スメクタイトの合成を試みた。秋田県鷹巣町産の珪藻土を乾燥後、48メッシュのフルイを通した粉体を塩酸処理した試料中のSiO_2成分とMgO成分のみに着目して、3-八面体型粘土鉱物であるヘクトライトの理論組成として不足しているMgO成分をMgCl_2水溶液として添加した。塩酸処理した珪藻土にMgCl_2水溶液を加え、Si/Mgモル比をA=8/8、B=8/6、C=8/4.5、D=8/3の4つのシリーズを作り、これらのシリーズのすべての試料に添加物として、LiCl水溶液をSi/Li=8/1.5のモル比で加え、NaOH水溶液でpH=12.68とした。これらのシリーズの溶液をテフロン製容器に封入し、反応温度を200°Cとし、反応時間を3時間4時間で水熱反応を行った。反応後、急冷し室温で開封し、固形物を洗浄した反応は生成物をXRD、DTA及びTGを行って合成された粘土鉱物を同定した。Aシリーズ(Si/Mgモル比=8/8)では反応時間3時間からスメクタイトが生成されたが、反応時間が12時間以上になると蛇紋石が生成された。Bシリーズ(Si/Mgモル比=8/6)では反応時間が12時間からスメクタイトが生成された。Cシリーズ(Si/Mgモル比=8/4.5)では反応時間が12時間からスメクタイトが生成されたが、反応時間が3日以上になるとタルクが生成された。Dシリーズ(Si/Mgモル比=8/3)ではアモルファスのXRDパターンを示す物質しか生成されなかった。この結果から珪藻土を用いた3-八面体型スメクタイトの合成の最適条件はSi/Mgモル比=8/6、反応時間:200°C、反応時間:24時間以上である。一般に鉱物の合成は生成の条件や成因などの地球科学的諸問題を解明することを主目的としていたが、最近では新素材としての工業材料を目的とした人口鉱物の合成実験が行われるようになってきた。今回の研究は天然に豊富に存在する珪藻土や籾殻灰の有効利用の一環として、これらの物資を原料として粘土鉱物の合成を試みた。1.試薬からの3八面体型粘土鉱物の合成シリカ源として珪藻土や籾殻灰を用いて3八面体型粘土鉱物を水熱合成する前に、合成に最も適した条件を設定するために次の予備実験を行った。(1)Mgスメクタイトの合成、(2)Niスメクタイトの合成両者とも、出発物質の組成、反応前のpHが反応生成物の大きく影響することがわかった。2.珪藻土を用いた三八面体型粘土鉱物の合成(1)スメクタイトの合成:Si:Mg(モル比)=8:86、反応温度200°Cで水熱合成を行うと、反応時間1218時間でスメクタイトが最も多く生成された。(2)Niスメクタイトの合成:出発物質のSi:Ni(モル比)はヘクトライトの理想式から求めたSi:Ni(モル比)=8:5.33でスメクタイトの生成がよく、また反応前の溶液のpHが13.5のときが最もスメクタイトの生成がよい。珪藻土を長時間摩砕した出発物質の方がスメクタイトの生成がよい。3.籾殻灰を用いた3八面体型粘土鉱物の合成籾殻の焼成温度は450°Cがスメクタイトの生成に最適である。出発物質の組成比はヘクトライトの理想式のSi:Mg:Li(モル比)であるSi:Mg:Li(モル比)=8:5.34:0.66がスメクタイトの生成に最適である。反応前の溶液のpHは13.213.5がスメクタイトの生成に最適である。
KAKENHI-PROJECT-62540612
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ゾルーゲル法を利用したフッ素ドープシリカの合成とキャラクダリゼーション
1.含フッ素シリカゲルの合成:出発原料のフッ素源としてSiF_4気体を用いる方法とH_2SiF_6溶液を用いる方法について検討し,いずれの場合も原子百分率で10%程度の含フッ素シリカゲルの作成に成功した.SiF_4気体を用いる方法は反応が急速に進行するため,フッ素ドープ量の微調整は困難ではあるが焼結性の良い微粉体の合成に適している.一方, H_2SiF_6溶液を用いる方法は出発溶液のフッ素濃度でゲル中のフッ素含有量を調整できる.また,薄膜やMonolithicなもの>作成に適していることが解った.2.加熱時のフッ素の挙動:含フッ素シリカゲルは10001200°Cの加熱でガラス化するが,それまでに多くのフッ素はSiF_4として逸散し,その挙動はゲルの合成法によって異る.この脱フッ素過程は拡散支配ではあるがゲルの焼結性に依存し,焼結性の高いゲルほど脱フッ素が抑えられることが解った.3.シリカ中のフッ素の結合状態と安定性:シリカならびにガラス中でのフッ素の挙動をより適切に理解する目的で半経験的分子軌道法, MNDO,ならびに分子動力学的シュミレーションによる研究を行った. Si-F結合はSi-OH基に対して唯一安定なハロゲン結合であると共に,シリカ中に均一にドープされることが解った.この事実は光通信用ファイバーに有害なシラノールの除去にフッ化物イオンを含む溶液のゾル・ゲル法が有益であることを意味する.4.フッ素化したシリコンエトキシドの熱力学的性質:フッ素化したシリコンエトキシド{Si(OC_2H_5)_<4-n>Fn}間の反応について質量分析法を主体とした平均測定を行い, n=13のフッ素化シリコンエトキシドの熱力学的性質を明らかにした.さらに,これら化合物間の不均化反応についての知見も得た.これらの結果は本研究の最終目的であるゾル・ゲル法を利用したフッ素ドープシリカ合成の際のシリカネットワーク形成反応設計の基礎知見となるものである.1.含フッ素シリカゲルの合成:出発原料のフッ素源としてSiF_4気体を用いる方法とH_2SiF_6溶液を用いる方法について検討し,いずれの場合も原子百分率で10%程度の含フッ素シリカゲルの作成に成功した.SiF_4気体を用いる方法は反応が急速に進行するため,フッ素ドープ量の微調整は困難ではあるが焼結性の良い微粉体の合成に適している.一方, H_2SiF_6溶液を用いる方法は出発溶液のフッ素濃度でゲル中のフッ素含有量を調整できる.また,薄膜やMonolithicなもの>作成に適していることが解った.2.加熱時のフッ素の挙動:含フッ素シリカゲルは10001200°Cの加熱でガラス化するが,それまでに多くのフッ素はSiF_4として逸散し,その挙動はゲルの合成法によって異る.この脱フッ素過程は拡散支配ではあるがゲルの焼結性に依存し,焼結性の高いゲルほど脱フッ素が抑えられることが解った.3.シリカ中のフッ素の結合状態と安定性:シリカならびにガラス中でのフッ素の挙動をより適切に理解する目的で半経験的分子軌道法, MNDO,ならびに分子動力学的シュミレーションによる研究を行った. Si-F結合はSi-OH基に対して唯一安定なハロゲン結合であると共に,シリカ中に均一にドープされることが解った.この事実は光通信用ファイバーに有害なシラノールの除去にフッ化物イオンを含む溶液のゾル・ゲル法が有益であることを意味する.4.フッ素化したシリコンエトキシドの熱力学的性質:フッ素化したシリコンエトキシド{Si(OC_2H_5)_<4-n>Fn}間の反応について質量分析法を主体とした平均測定を行い, n=13のフッ素化シリコンエトキシドの熱力学的性質を明らかにした.さらに,これら化合物間の不均化反応についての知見も得た.これらの結果は本研究の最終目的であるゾル・ゲル法を利用したフッ素ドープシリカ合成の際のシリカネットワーク形成反応設計の基礎知見となるものである.
KAKENHI-PROJECT-62604502
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62604502
非平衡プラズマ物理学のための乱流計測シミュレータ研究
この研究では、磁化不均一高温プラズマを対象に、乱流計測シミュレータ(大域的乱流シミュレーションの時間・空間4次元データ全体を蓄え、多元の乱流場を高次相関解析し、諸現象の因果関係を検定するシステム)を活用し研究を推進した。広域高次相関解析等の先進データ解析法を考案した。輸送障壁の形成機構の検証、勾配ー流束関係に現れるヒステリシスの発見、位相空間に働く新しい乱流駆動力の提唱、スケール混合にもとづく空間構造や時間的突発性の発生の研究など、多くの成果をもたらした。非平衡プラズマの大域的非線形機構の理解に大きな進歩をもたらした。平成23年度には、まず研究の全体設計を行った。(i)研究の体系的構想、(ii)研究者チームの役割分担、(iii)全体年次計画を確認する。この全体計画は、(a)大域的な非平衡ダイナミックス(プラズマ中の様々な領域が多スケールの揺動を介在として結びつき全体の構造を作り出す過程)の理論研究、(b)乱流計測シミュレータを活用した大域的因果関係の観測、(c)実空間の輸送界面や速度空間構造と乱流の相互作用の理論・シミュレーションによる研究、(d)得られる予言の実験での検証法の研究、等の個別ステップから構成される。この多元的研究展開を実現し、研究方法論として乱流計測シミュレータが大域的非線形ダイナミクスの本質的な過程を見いだしうる事を実証する。非平衡プラズマの物理学の新展開の典型例を形作る。具体的な研究として、次の研究に着手した。大域的な非平衡ダイナミックスの理論研究では、代表者によるSeesaw wmechanismのように、空間的にはなれた位置での相反する輸送応答をもたらす機構について研究に着手し、非拡散型の輸送をもたらす乱流の研究を進めた。乱流計測シミュレータについては、試作機をもとに、乱流場生成やデータ解析のおけるシミュレーションや解析プロセスの並列化に着手した。それによって、順次乱流計測シミュレータの物理解析面での高度化を図った。輸送界面のダイナミクスや、速度分布関数と輸送構造の関係の研究を進め、研究成果を投稿した。先進データ解析法と実験検証では、ウエーブレット解析による先進法を考案し輸送伝播研究での高精度化を実現したので、それを活用し、輸送界面探査法や、界面での乱流ダイナミックスの探査法を提示した。本研究の全体計画は、個別ステップ(a)大域的な非平衡ダイナミックス(プラズマ中の様々な領域が多スケールの揺動を介在として結びつき全体の構造を作り出す過程)の理論研究、(b)乱流計測シミュレータによる大域的因果関係の観測、(c)実空間の輸送界面や速度空間構造と乱流の相互作用に関する理論・シミュレーションによる研究、(d)得られる予言の実験での検証、から構成される。乱流計測シミュレータが、大域的非線形ダイナミクスの本質的な過程を見いだすための研究方法論となる事を実証し、非平衡プラズマの物理に新しい進展をもたらすことを目指す。平成24年度には、上記(a)-(d)の観点から次のような進展を得た。(a)大域的な非平衡ダイナミックスの理論研究では、空間的にはなれた位置での相反する輸送応答の具体的研究を進めた。非拡散型輸送現象との関連を解析した。(b)乱流計測シミュレータの研究では、前年度までのシステム高度化に立脚し、乱流計測シミュレータを用いた解析を進めた。乱流の塊の間欠的移送に対し統計的解析を行った結果、その運動のダイナミックな相関長を評価することに成功し、移動速度の理論的評価を検証することが出来た。ダイナミック輸送現象の実験観測への具体的応用を開始した。(c)輸送界面や速度空間構造と乱流輸送の相互作用の理論・シミュレーション研究は、代表者や分担者(登田)による内部輸送界面研究を進めるとともに、分担者(村上)が開拓した高精度ICRF加熱解析コードを活用し、イオンのエネルギー分布関数の構造と駆動流を介在とした乱流揺動構造の結びつきを研究に成果を得た。(d)先進データ解析法と実験検証では、輸送界面探査法や、広域相関探査法を展開し、実験データ解析に適用開始する。LHDやHL-2A装置を用いた実験に適用を進め成果を得た。揺動解析国際共同作業ワークショップを開催し成果を得た。平成25年度には次のように大きな成果が得られた。(a)大域的な非平衡ダイナミックスの理論研究について、乱流の塊の間欠的移送機構を定式化するため輸送量の変動に関するラグランジュ相関を用いる方法を示した。(b)乱流計測シミュレータの研究では、分担者(糟谷)を中心に研究協力者とともに動的輸送応答実験の解析を推進した。非拡散な輸送応答に伴い、非局所的な揺動の非線形結合が起きている事を示した。非拡散な輸送現象の観測法への具体像を提示し、実験家に提供した。(c)輸送界面や速度空間構造と乱流輸送の相互作用の研究は、代表者らによって提唱された位相空間乱流効果[Sci. Rep. 2 (2102) 860]の研究を進め、分担者や協力者とともに、イオンのエネルギー分布関数の構造と駆動流を介在とした乱流揺動構造の結びつきの具体的検証法の研究を進めた。(d)先進データ解析法と実験検証では、輸送界面探査法や広域相関探査法をトカマクの乱流データに適用し、大きな成果を得た。例えば、HL-2Aでの多チャンネルプローブシステムのデータに着目し、JFT-2MではL-H遷移が起きる状況での詳細な観測データを活用した。そこでの広域相関探査法応用によってトカマクでの大域
KAKENHI-PROJECT-23244113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23244113
非平衡プラズマ物理学のための乱流計測シミュレータ研究
乱流構造を観測し、L-H遷移近傍での自律的振動の物理を解明した。揺動塊の大域的変動の観測に成功した。成果をH-mode workshopなどの国際会議で発表しレビュー論文を刊行した。また、リアルタイムディジタルオシロスコープのデータ解析により密度分布の統計的把握が実現するという、当初予想されなかった、乱流計測シミュレータの進展が得られた。この革新的成果を新たに取り入れる乱流計測シミュレータの増強は、当該研究の十全な達成に必須である。平成25年度末に得られる実験データ確認後増強を完了する事とした。平成26年度には次のような研究実績を上げた。乱流計測シミュレータの研究では、乱流計測シミュレータの物理解析面での高度化を図った。それを活かし、動的輸送応答実験観測への具体像を提示し論文として発表した。速度空間を捨象した、実空間の乱流の大域的発展を研究し、それに伴う輸送の動的応答を解析した。その結果、勾配ー流束関係にヒステリシスがある事は再現出来たが、ヒステリシスの上を動く向きが、実験とは逆である事を確認した。これは、初期的な結果ではあるが、流体モデルでの不十分さを示唆しており、代表者らによって提唱された位相空間乱流効果[Nucl. Fusion 53 (2013) 073035]の重要性を支持している。輸送界面や速度空間構造と乱流輸送の相互作用の研究を進め、輸送障壁の構造に係る定性的なスケーリング則を導いた。先進データ解析法と実験検証では、マイクロ波コムを活用し分布の統計的変動を観測する理論手法を考案した。JFT-2MではL-H遷移が起きる状況での詳細な観測データが存在する。乱流計測シミュレータの考え方から、乱流の塊の間欠的移送が観測出来る事を予測した。広域相関探査法応用によってトカマクでの大域乱流構造を観測し、乱流の塊の間欠的移送機構を実測した。国際的にも中国西南物理学研究所にて揺動解析国際共同作業ワークショップを開催した。これらの成果を論文として投稿した他、国内外で発表した。本研究では、乱流計測シミュレータが、大域的非線形ダイナミクスの本質的な過程を見いだすための研究方法論となる事を実証し、非平衡プラズマの物理に新しい進展をもたらすことを目指している。平成27年度は最終年度であり、全体計画に沿って研究をとりまとめた。乱流計測シミュレータによる動的輸送応答実験観測への寄与を取りまとめ、実験観測に具体的に適用した。位相イメージコントラスト法と呼ばれる乱流計測法について検討した。通常、視線積分のデータをもとに実空間分布が推定されているが、推定の誤差(曖昧さ)が通常信じられているより大きいことを示し、乱流の解釈に基軸を示した。また、プラズマの大域的な非平衡ダイナミックスについて考察を深め、通常はミクロ・メゾ・マクロと分離されて議論されている物理過程が、スケールの差を超えて直接相互作用するクロススケールの考え方も示した。この成果を、輸送界面や速度空間構造と乱流輸送の相互作用の研究へと統合し、その結果、通常は滑らかと仮定されている分布に細かな凹凸が自律的に生まれ、それが大域的な輸送現象に大きな影響を与えることを示した。さらに、H-モード輸送障壁のスケーリング則を導いている。
KAKENHI-PROJECT-23244113
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23244113
頭蓋外短持続電気刺激に対する前庭神経ニューロンの反応に関する生理学的研究
短持続電気刺激を頭蓋外からあたえたときの前庭神経の反応について、モルモットにおける電気生理学的研究とヒトにおける誘発筋電位による臨床神経生理学的研究を行った。モルモットにおいては、中耳腔と前頭部間に電気刺激を与えた。今回の研究で、頭蓋外からの短持続電気刺激は、前庭神経を刺激し得ることが明らかになった.すなわち、モルモットにおいては、頭蓋外からの短持続電気刺激に対して、短い潜時で応じる前庭神経ニューロンの存在することが認められた。また、ヒトにおいて、乳突部-前頭部間を電気刺激し、胸鎖乳突筋における誘発筋電位を記録すると、潜時10-20msecで2相性の反応が記録された(p33g-n23g)。健常成人における反応閾値は2.5mAであった。最適の刺激頻度は5Hzと考えられた。さらに、前庭機能障害症例における検討からは、臨床検査としても応用可能なことが明らかとなった。すなわち、末梢前庭障害のうち神経障害(聴神経腫瘍など)では、電気刺激に対し無反応であるが、受容器障害(メニエール病など)では、電気刺激に対して反応のあることが明らかになった。短持続頭蓋外電気刺激法と従来から用いられている音響刺激法を併用して、末梢前庭障害を神経障害と受容器障害に分類することが可能となった。この方法を前庭神経炎症例に応用したところ、臨床的な前庭神経炎のうち、70%は、神経障害であるが、30%は、受容器障害であることが示唆された。短持続電気刺激を頭蓋外からあたえたときの前庭神経の反応について、モルモットにおける電気生理学的研究とヒトにおける誘発筋電位による臨床神経生理学的研究を行った。モルモットにおいては、中耳腔と前頭部間に電気刺激を与えた。今回の研究で、頭蓋外からの短持続電気刺激は、前庭神経を刺激し得ることが明らかになった.すなわち、モルモットにおいては、頭蓋外からの短持続電気刺激に対して、短い潜時で応じる前庭神経ニューロンの存在することが認められた。また、ヒトにおいて、乳突部-前頭部間を電気刺激し、胸鎖乳突筋における誘発筋電位を記録すると、潜時10-20msecで2相性の反応が記録された(p33g-n23g)。健常成人における反応閾値は2.5mAであった。最適の刺激頻度は5Hzと考えられた。さらに、前庭機能障害症例における検討からは、臨床検査としても応用可能なことが明らかとなった。すなわち、末梢前庭障害のうち神経障害(聴神経腫瘍など)では、電気刺激に対し無反応であるが、受容器障害(メニエール病など)では、電気刺激に対して反応のあることが明らかになった。短持続頭蓋外電気刺激法と従来から用いられている音響刺激法を併用して、末梢前庭障害を神経障害と受容器障害に分類することが可能となった。この方法を前庭神経炎症例に応用したところ、臨床的な前庭神経炎のうち、70%は、神経障害であるが、30%は、受容器障害であることが示唆された。(1)誘発電位による動物実験ネンブタールによる全身麻酔モルモットを用い、頭頂部-鼓室間あるいは、鼓室-鼓室間の短潜時電気刺激によって脊髄に誘発される誘発電位の記録を行った。この方法によって誘発電位の記録は可能であったが、電気的アーチファクトが大きく、反応の判定が容易ではなかった。このため、電気刺激法を改良し、鼓室内に挿入した、双極性の刺激電極についてその試用を開始したところである。本法による動物実験が来年度の課題の一つである。(2)ヒトにおける臨床研究ヒトにおける臨床研究においては、大きな成果が得られた。まず、健常被検者における記録で、前頭部-乳突部刺激によ'って潜時10msec付近に最初のピークを持つ2相性の電位が胸鎖乳突筋から記録された。3mA(1msec)の刺激で、健常被検者においては全例反応を認めた。反応閾値は、平均で2.5mAであった。反応には年齢の影響は認められなかった。また、メニエール病および聴神経腫瘍の症例における検討では、本反応が、迷路病変と後迷路病変の鑑別に有用である結果が得られた。すなわち、音響刺激によるVEMPが消失している上記2疾患において、メニエール病症例においては反応が認められ、一方、聴神経腫瘍症例においては反応が消失あるいは減弱していた。このような臨床応用についてはさらに検討をすすめる予定である。なお、第1報は2002年内にClinical Neurophysiology誌に掲載予定である。(1)誘発電位による動物実験ネンブタールによる全身麻酔モルモットを用い、頚筋上においた電極から誘発電位を記録する実験を行った。この部位で陰性電位が記録されることは明らかであったが、本年度は、外科的に前庭神経を切断した動物でこの電位が消失することを明らかにし、この反応が前庭由来であることが確実となった。電気刺激法については、改良を施し、鼓室内に挿入した双極性の刺激電極によって電位の測定を開始した。本法による動物実験を来年度も継続して行う。(2)ヒトにおける臨床研究ヒトにおける臨床研究においては、次のような成果が得られた。平成13年度の研究から、短持続電気刺激による頚筋反応が、迷路病変と後迷路病変の鑑別に有用である結果が得られたことから、この反応を前庭神経炎の障害部位診断に応用した。
KAKENHI-PROJECT-13671767
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13671767
頭蓋外短持続電気刺激に対する前庭神経ニューロンの反応に関する生理学的研究
前庭神経炎の場合約80%の症例では本反応も消失しており、障害部位は前庭神経にあると考えられたが、約20%の症例では、音響刺激によるVEMPが消失している症例においても本反応が認められ、障害部位は内耳と考えられた。このように、本反応の応用によって、臨床的に前庭神経炎と診断される症例のなかには、迷路障害型と神経障害型の二種類に分類されることが明らかとなった。この成果については、2002年に国際平衡神経学会であるBarany Society Meetingで発表した。また、同様の電気刺激で下肢筋からも誘発電位が記録されることが明らかとなった。動物実験ネンブタールによる全身麻酔モルモットを用い、頚筋上においた電極から誘発電位を記録する実験を行った。この部位で陰性電位が記録されることは明らかであったが、本年度は、薬理学的に内耳(前庭系)を破壊した動物でこの電位が消失することを明らかにした。電気刺激と免疫組織化学的手法の組み合わせによってもこの刺激が前庭系を刺激していることが示唆された。ヒトにおける臨床研究ヒトにおける臨床研究においては、次のような成果が得られた。短持続電気刺激による頚筋反応が、迷路病変と後迷路病変の鑑別に有用である結果が得られたことから、この反応を前庭神経炎の障害部位診断に応用した。前庭神経炎の場合約80%の症例では本反応も消失しており、障害部位は前庭神経にあると考えられたが、約20%の症例では、音響刺激によるVEMPが消失している症例においても本反応が認められ、障害部位は内耳と考えられた。このように、本反応の応用によって、臨床的に前庭神経炎と診断される症例のなかには、迷路障害型と神経障害型の二種類に分類されることが明らかとなった。この成果は、Neurology誌で発表された。また、この短持続電気刺激による刺激部位は、比較的長い持続の電気刺激を用いるgalvanic body swaytestにおける刺激部位と同一部位であることがわかった。この成果はClinical Neurophysiology誌で発表予定である。前年度に引き続き、短持続電気刺激を頭蓋外からあたえたときの前庭神経の反応について、モルモットにおける電気生理学的研究とヒトにおける誘発筋電位による臨床神経生理学的研究を行った。前年度までで確立された方法を用い、すなわち、モルモットにおいては、中耳腔と前頭部間に電気刺激を与えた、また、ヒトにおいては乳突部-前頭部間を電気刺激し、胸鎖乳突筋における誘発筋電位を記録した。前年度までの結果とあわせて、頭蓋外からの短持続電気刺激は、前庭神経を刺激し得ることが明らかになった。すなわち、モルモットにおいては、頭蓋外からの短持続電気刺激に対して、短い潜時で応じる前庭神経ニューロンの存在することが認められた。また、ヒトにおいて、乳突部-前頭部間を電気刺激し、胸鎖乳突筋における誘発筋電位を記録すると、潜時10-20msecで2相性の反応が記録された(p33g-n23g)。健常成人における反応閾値は2.5mAであった。最適の刺激頻度は5Hzと考えられた。さらに、前庭機能障害症例における検討を行った結果からは、臨床検査としても応用可能なことが明らかとなった。すなわち、末梢前庭障害のうち神経障害(聴神経腫瘍など)では、電気刺激に対し無反応であるが、受容器障害(メニエール病など)では、電気刺激に対して反応のあることが明らかになった。短持続頭蓋外電気刺激法と従来から用いられている音響刺激法を併用して、末梢前庭障害を神経障害と受容器障害に分類することが可能となった。
KAKENHI-PROJECT-13671767
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遷移金属合金の耐食機能における不働態皮膜の電子構造の役割
本研究は、遷移金属合金の耐食性に大きく関与する不働態皮膜の電子状態を、光照射を利用した電気化学的手法により調べ、実際の耐食機能との比較から、合金の耐食機能の本質と皮膜の電子構造との関連を明らかにすることを目的とした。具体的には代表的な遷移金属であるチタン合金に注目し、純チタンおよび周期律表の3d(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)、4d(NbおよびMo)5d(Ta)遷移金属元素をそれぞれ5at%添加した合金に生成する不働態皮膜の電子状態の変化を実験的に調べた。また、分子軌道計算により、皮膜の電子構造計算を行い、実験との比較検討を行った。Ti合金の不働体態皮膜に光を照肘すると、すべて正の光電流を生じる。すなわち、皮膜自体がn型の半導体特性を持っており、この基本的特性は添加元素によって変化しない。照射する光の波長を変化させて求めた光電流スペクトルの形状は、純Tiで得られるものと比べてそれほど大きな変化はなく、そこから得られる皮膜のバンドギャップは4.0eV付近であった。これに対して、表面皮膜のバンド構造の曲がりの大きさを表すフラットバンド電位は添加元素によって大きく変化した。Co,Cu,NbおよびTaを添加した場分は卑に、FeやMoを添加した場合には貴になる。フラットバンド電位の変化と皮膜の安定性の目安となる不働態保持電流密度との間には相関関係が認められた。電位の卑なものほど不働態保持電流密度は低く本電位が皮膜の安定性の目安になることが明らかとなった。皮膜の電子構造計算から求めたバンドギャップは実験値に近い値が得られたが、バンドの曲がりの大きさの原因となるフェルミ準位とフラットバンド電位の間には明瞭な関係は見いだせなかった。実験と理論計算との対応については今後もう少し詳細な検討が必要である。本研究は、遷移金属合金の耐食性に大きく関与する不働態皮膜の電子状態を、光照射を利用した電気化学的手法により調べ、実際の耐食機能との比較から、合金の耐食機能の本質と皮膜の電子構造との関連を明らかにすることを目的とした。具体的には代表的な遷移金属であるチタン合金に注目し、純チタンおよび周期律表の3d(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)、4d(NbおよびMo)5d(Ta)遷移金属元素をそれぞれ5at%添加した合金に生成する不働態皮膜の電子状態の変化を実験的に調べた。また、分子軌道計算により、皮膜の電子構造計算を行い、実験との比較検討を行った。Ti合金の不働体態皮膜に光を照肘すると、すべて正の光電流を生じる。すなわち、皮膜自体がn型の半導体特性を持っており、この基本的特性は添加元素によって変化しない。照射する光の波長を変化させて求めた光電流スペクトルの形状は、純Tiで得られるものと比べてそれほど大きな変化はなく、そこから得られる皮膜のバンドギャップは4.0eV付近であった。これに対して、表面皮膜のバンド構造の曲がりの大きさを表すフラットバンド電位は添加元素によって大きく変化した。Co,Cu,NbおよびTaを添加した場分は卑に、FeやMoを添加した場合には貴になる。フラットバンド電位の変化と皮膜の安定性の目安となる不働態保持電流密度との間には相関関係が認められた。電位の卑なものほど不働態保持電流密度は低く本電位が皮膜の安定性の目安になることが明らかとなった。皮膜の電子構造計算から求めたバンドギャップは実験値に近い値が得られたが、バンドの曲がりの大きさの原因となるフェルミ準位とフラットバンド電位の間には明瞭な関係は見いだせなかった。実験と理論計算との対応については今後もう少し詳細な検討が必要である。本研究は、遷移金属合金の耐食性に大きく関与する不働態皮膜の電子状態を、光照射を利用した電気化学的手法およびX線光電子分光などにより調べ、実際の耐食機能との比較から、合金の耐食機能の本質を明らかにすることを目的としている。本研究では、代表的な遷移金属であるチタン合金に注目している。本年度は、純チタンおよび、周期律表の4d(Zr,NbおよびMo)5d(Hf,TaおよびW)遷移金属元素をそれぞれ5at%づつ添加した合金を、トリアーク炉により溶製した。作製した合金試料について、0.5mol硫酸水溶液中でアノード分極測定ならびに、単色化したキセノンランプの光を照射し、光電流の測定を行った。現在までのところ、以下の様な結果が得られている。Ti合金のアノード分極測定により求めた不働態皮膜の安定性と関連する不働態保持電流密度は、添加した合金元素の種類によって大きく変化する。また、Ti合金の不働態皮膜に光を照射すると、正の光電流を生じる。すなわち、皮膜自体がn型の半導体特性を持っているが、合金元素の添加によってこの基本的特性には変化は生じない。照射する光の波長を変化させて求めた光電流スペクトルの形状は、純Tiで得られるものと比べてそれほど大きな変化はなく、皮膜のバンドギャップは4.4eV付近である。ただし、Moを添加した場合には、4.1eV付近にまで低下する。光電流を打ち消すのに必要なフラットバンド電位も添加元素によって大きく変化する。NbやTaを添加した場合は卑に、Moを添加した場合には貴になる。フラットバンド電位の変化と不働態保持電流密度との間には相関関係が認められ、電位の卑なものほど不働態保持電流密度は低く、安定な皮膜が形成されていることを示している。
KAKENHI-PROJECT-08650827
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遷移金属合金の耐食機能における不働態皮膜の電子構造の役割
現在、これら合金試料について、硫酸水溶液での浸漬腐食試験が継続中である。本研究は、遷移金属合金の耐食性に大きく関与する不働態皮膜の電子状態を、光照射を利用した電気化学的手法により調べ、実際の耐食機能との比較から、合金の耐食機能の本質と皮膜の電子構造との関連を明らかにすることを目的とした。具体的には代表的な遷移金属であるチタン合金に注目し、純チタンおよび周期律表の3d(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)、4d(NbおよびMo)5d(Ta)遷移金属元素をそれぞれ5at%添加した合金に生成する不働態皮膜の電子状態の変化を実験的に調べた。また、分子軌道計算により、皮膜の電子構造計算を行い、実験との比較検討を行った。Ti合金の不働態皮膜に光を照射すると、すべて正の光電流を生じる。すなわち、皮膜自体がn型の半導体特性を持っており、この基本的特性は添加元素によって変化しない。照射する光の波長を変化させて求めた光電流スペクトルの形状は、純Tiで得られるものと比べてそれほど大きな変化はなく、そこから得られる皮膜のバンドギャップは4.0eV付近であった。これに対して、表面皮膜のバンド構造の曲がりの大きさを表すフラットバンド電位は添加元素によって大きく変化した。Co,Cu,NbおよびTaを添加した場合は卑に、FeやMoを添加した場合には貴になる。フラットバンド電位の変化と皮膜の安定性の目安となる不働態保持電流密度との間には相関関係が認められた。電位の卑なものほど不働態保持電流密度は低く本電位が皮膜の安定性の目安になることが明らかとなった。皮膜の電子構造計算から求めたバンドギャップは実験値に近い値が得られたが、バンドの曲がりの大きさの原因となるフェルミ準位とフラットバンド電位の間には明瞭な関係は見いだせなかった。実験と理論計算との対応については今後もう少し詳細な検討が必要である。
KAKENHI-PROJECT-08650827
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海馬苔状線維の神経回路形成における神経細胞接着分子および神経活動の役割
海馬では、成体になっても例外的にニューロン(顆粒細胞)の新生が続いている。したがって,この新生した顆粒細胞が,軸索(苔状線維)を発達させ,標的(錐体細胞)の樹状突起とシナプスを形成し、成体の海馬に新しい神経回路を付加していると考えられる。私は,以前に行った神経細胞接着分子(NCAM)のノックアウトマウスの解析結果から、このような苔状線維と錐体細胞のシナプス形成時には、神経一筋で見られるような,神経支配の再構成が起こる、との仮説を立てた。本研究では,この仮説を証明する目的で、まず,正常マウス・ラットとMCAMノックアウトマウスの苔状線維の発達を,蛍光色素DiIと共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、正常な動物では,生後645日目に、錐体細胞層内に多数の苔状線維側枝が見られたが,1・2ヶ月令では,ごく少数の側枝しか見られなかった。また,側枝に存在する大小のボタンにはシナプスが見られた。これに対し,MCAMノックアウトマウスでは,2ヶ月令でも,錐体細胞層内に側枝が残存し,シナプスボタンが錐体細胞の細胞体と非シナプス性の細胞接着構造を形成していた。つぎに,生きている状態で,苔状線維側枝を観察する目的で,海馬切片培養法を用いて,苔状線維側枝を観察した。その結果,錐体細胞層側に伸びた苔状線維側枝が,伸長又は退縮する様子を観察できた。この場合,側枝上に存在するボタンが移動することも明らかになった。以上の観察結果から次のようなことが推測される。苔状線維の発達時期には,時的に側枝が錐体細胞層に侵入し,シナプスボタンを形成する。しかしそのシナプスボタンの結合は永久的なものではなく,おそらくある程度変化する。その後,苔状線維側枝は退縮するが,この時にはシナプスボタンも消失する。また,このような苔状練維の退縮過程には,NCAMが関与することが考えられる。海馬では、成体になっても例外的にニューロン(顆粒細胞)の新生が続いている。したがって,この新生した顆粒細胞が,軸索(苔状線維)を発達させ,標的(錐体細胞)の樹状突起とシナプスを形成し、成体の海馬に新しい神経回路を付加していると考えられる。私は,以前に行った神経細胞接着分子(NCAM)のノックアウトマウスの解析結果から、このような苔状線維と錐体細胞のシナプス形成時には、神経一筋で見られるような,神経支配の再構成が起こる、との仮説を立てた。本研究では,この仮説を証明する目的で、まず,正常マウス・ラットとMCAMノックアウトマウスの苔状線維の発達を,蛍光色素DiIと共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡を用いて観察した。その結果、正常な動物では,生後645日目に、錐体細胞層内に多数の苔状線維側枝が見られたが,1・2ヶ月令では,ごく少数の側枝しか見られなかった。また,側枝に存在する大小のボタンにはシナプスが見られた。これに対し,MCAMノックアウトマウスでは,2ヶ月令でも,錐体細胞層内に側枝が残存し,シナプスボタンが錐体細胞の細胞体と非シナプス性の細胞接着構造を形成していた。つぎに,生きている状態で,苔状線維側枝を観察する目的で,海馬切片培養法を用いて,苔状線維側枝を観察した。その結果,錐体細胞層側に伸びた苔状線維側枝が,伸長又は退縮する様子を観察できた。この場合,側枝上に存在するボタンが移動することも明らかになった。以上の観察結果から次のようなことが推測される。苔状線維の発達時期には,時的に側枝が錐体細胞層に侵入し,シナプスボタンを形成する。しかしそのシナプスボタンの結合は永久的なものではなく,おそらくある程度変化する。その後,苔状線維側枝は退縮するが,この時にはシナプスボタンも消失する。また,このような苔状練維の退縮過程には,NCAMが関与することが考えられる。海馬では成体でも顆粒細胞の新生が続いている.したがって,海馬では,一生の間ニューロンの新生によって,神経回路が付加され続けていると考えられる.この発達中の顆粒細胞の軸索(苔状線維)には、長鎖のポリシアル酸(PSA)が結合した神経細胞接着分子(PSA-NCAM)が特異的に発現している。このことは、PSA-NCAMが苔状線維の発達に重要であることを示唆している。発達中の苔状線維から酵素(endoN)によってPSAを除去すると、異所性シナプスが錐体細胞層内に多数形成される。本研究では、この異所性シナプスの形成機構を調べることを目的としている。生後ラット又はマウスの脳を4%パラフォルムアルデヒドで固定し、海馬スライスを作製する。このスライスの歯状回門付近に蛍光色素DiIを付着させることにより苔状線維を標識した。スライスからビブラトーム切片を作製後、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。また、さらに蛍光標識した苔状線維をphotoconversion法により、DAB(ジアミノベンチジン)反応に置換し、電子顕微鏡で観察した.その結果,正常な動物及びendoN処理群の両者で,生後2週間頃に、多数の苔状線維側枝が錐体細胞層内に侵入することが明らかになった.この側枝には、大小さまざまなボタンが観察された。生後1カ月の動物では,その側枝の数が減少した。
KAKENHI-PROJECT-11680792
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海馬苔状線維の神経回路形成における神経細胞接着分子および神経活動の役割
この一時的な側枝を電子顕微鏡で観察した結果、この側枝が錐体細胞とシナプス及び非シナプス様の細胞結合を形成することを見いだした.このことは,endoNの投与によって形成された異所性のシナプスは、この一時的に侵入する側枝が退縮せずに錐体細胞層内にシナプスを形成した結果であることを示唆している.海馬歯状回では、成体になってもニューロン(顆粒細胞)の新生が続いている。このようなニューロンの新生に伴って、新生したニューロンの軸索(苔状線維)も常に発達し続け、海馬に新しい神経回路が付加され続けていると考えられる。今までの実験から、生後の苔状線維-CA3錐体細胞間のシナプス形成には、神経-筋・小脳登上線維-プルキンエ細胞で見られるような神経支配の再構成が起こる、との仮説を立てた。今年度は、この仮説を証明する目的で、正常発生における苔状線維側枝について検討した。生後6日から2カ月のマウス及びラットの苔状線維をDiIでラベルし、共焦点レーザー顕微鏡・電子顕微鏡で観察した。その結果、生後15日目では、錐体細胞層内に多数の側枝と様々な大きさのボタンが侵入していた。そこで、つぎに海馬切片培養法(静置界面培養法)を用いて、苔状線維側枝を観察する実験始めた。生後5日目のラットから350μmの海馬切片を切り出し、フィルター(MILLICELL-CM)上で16日間培養した。苔状線維を蛍光色素DiIによりラベルし、錐体細胞層内に侵入する側枝を共焦点レーザー顕微鏡によって観察しところ、in vivoと同様に、錐体細胞層内に侵入する側枝が観察できた。よって、海馬でも苔状線維の発達中に一時的な神経支配が起こることが考えられる。海馬における記憶・学習の基盤は、神経活動に依存的な海馬の可塑性にあると考えられている。本研究では、海馬神経回路のうち、顆粒細胞の軸索(苔状線維)と錐体細胞の樹状突起との間に形成されるシナプス結合に着目し、その形成過程で起こる可塑的な現象を解明することを目的としている。今までの研究で、苔状線維の発達期には、一時的に苔状線維の側枝が,錐体細胞層内に侵入することを示唆する結果を得た。本年度の研究では、この側枝が実際に錐体細胞層に侵入し、退縮する様子を共焦点顕微鏡と培養装置を組み合わせて、経時的に観察した。生後5-7日目のラットから海馬を取り出し350μmの切片を作成した。培養には,35mmプラスチックdishの底に穴をあけ,カバーガラスを張り付けたものを用いた。このカバーグラス上に海馬切片を載せ,完全無血清培地であるNeurobasal+B27を少量加えた。その後,海馬切片上の苔状線維をDiIによってラベルし,一晩培養した。翌日,温度と炭酸ガス濃度をコントロールできるチェンバーを共焦点レーザー顕微鏡のステージに設置し、その中に培養海馬切片を置いた。このような状態で少なくとも2-3時間の観察が可能であった。その結果,錐体細胞層側に伸びた苔状線維側枝が,伸長又は退縮する様子を観察できた。この場合,側枝上に存在するボタンが移動することも明らかになった。以上の観察結果は,苔状線維の発達時期に,一時的に側枝が錐体細胞層に侵入し,その後退縮するとの考えを支持する。また,その過程で,側枝上に存在するシナプスボタンに変化が起こることも示唆された。
KAKENHI-PROJECT-11680792
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スギヒラタケの毒性解明と特異な基質開裂特性を有する新規酵素の創出
スギヒラタケレクチンと相互作用のある蛋白質の探索を行い、候補タンパク質の1つが、rPPLと混合するとプロテアーゼ活性を有することを見出した。PPL単独でもプロテアーゼ活性を示すことがあり、その時のMSの解析結果ではm/z 13,000付近にピークが確認される。そこで、このタンパク質の精製を行った結果、精製および部分一次アミノ酸配列の取得に成功した。担子菌Phanerochaetesordida YK-624株を用い, rPPLの異種発現系の構築を行った。スギヒラタケのゲノム及びトランスクリプトームのデータを用いて、データベースの構築を行った。酵母two-hybrid法を用いたスギヒラタケレクチン(PPL)と相互作用のある蛋白質の探索を行い、得られた候補タンパク質の酵母を用いた異種発現を順次行なった。その結果、候補タンパク質の1つが、担子菌で異種発現させたrPPLと混合するとプロテアーゼ活性を有することを見出した。このことから本プロテアーゼ活性は、スギヒラタケ中に存在する微量のプロテアーゼのコンタミネーションの可能性ではないことが証明された。また、プロテアーゼ活性試験を行っていくと、PPL単独でもプロテアーゼ活性を示すことがあり、その時のMALDI-TOF-MSの解析結果ではm/z 13,000付近に夾雑タンパク質のピークが確認される。そのため、このタンパク質(PP-13000)がプロテアーゼ活性に関与している可能性が示唆された。そこでPP-13000の精製方法の確立と構造解析を行うこととした。精製にはSuper Octylを用いた逆相クロマトグラフィーを用いた。その結果PP-13000の単離に成功した。また単離したPP-13000を担子菌にて発現させたrPPLと混合し、insulinを基質としたプロテアーゼ活性試験を行った結果、基質をN末端、C末端の両方から切断する活性を示した。現在、精製したPP-13000の一次アミノ酸配列の決定・遺伝子クローニングを試みている。スギヒラタケレクチンの抗体作成のため、PPLとマンガンペルオキシダーゼ(MnP)を融合させ担子菌(Phanerochaete sordida)を用いた細胞外分泌異種発現系の構築を行うことで、スギヒラタケレクチンの大量発現系の構築を試みている。その他、スギヒラタケのゲノム及びトランスクリプトームのデータを用いて、ユーザーが利用しやすいBLAST検索・キーワード検索・Gene ontology tree等を実装したデータベースの構築も行った。酵母two-hybrid法を用いたスギヒラタケレクチン(PPL)と相互作用のある蛋白質の探索を行い、得られた候補タンパク質の酵母・担子菌を用いた異種発現を順次行なった。その結果、候補タンパク質の1つが、担子菌で異種発現させたrPPLと混合するとプロテアーゼ活性を有することを見出した。このことから本プロテアーゼ活性は、スギヒラタケ中に存在する微量のプロテアーゼのコンタミネーションの可能性ではないことが証明された。また、プロテアーゼ活性試験を行っていくと、PPL単独でもプロテアーゼ活性を示すことがあり、その時のMALDI-TOF-MSの解析結果ではm/z13,000付近に夾雑タンパク質のピークが確認される。そのため、このタンパク質(PP-13000)がプロテアーゼ活性に関与している可能性が示唆された。そこでPP-13000の精製方法の確立と構造解析を行うこととした。精製にはSuperOctylを用いた逆相クロマトグラフィーを用いた。その結果PP-13000の単離に成功した。また単離したPP-13000を担子菌にて発発現させたrPPLと混合し、insulinを基質としたプロテアーゼ活性試験を行った結果、基質をN末端、C末端の両方から切断する活性を示した。更に、精製したPP-13000の部分一次アミノ酸配列の決定に成功し、現在遺伝子クローニングを試みている。スギヒラタケレクチンと相互作用のある蛋白質の探索を行い、候補タンパク質の1つが、rPPLと混合するとプロテアーゼ活性を有することを見出した。PPL単独でもプロテアーゼ活性を示すことがあり、その時のMSの解析結果ではm/z 13,000付近にピークが確認される。そこで、このタンパク質の精製を行った結果、精製および部分一次アミノ酸配列の取得に成功した。担子菌Phanerochaetesordida YK-624株を用い, rPPLの異種発現系の構築を行った。スギヒラタケのゲノム及びトランスクリプトームのデータを用いて、データベースの構築を行った。酵母two-hybrid法によるスギヒラタケレクチン(PPL)と相互作用のある蛋白質の探索の結果、rPPLと候補蛋白質を混合することでのプロテアーゼ活性が確認された。この結果から、本プロテアーゼ活性はスギヒラタケ中に含まれる他のプロテアーゼの微量なコンタミネーションの可能性ではないことが証明され、非常に大きな進歩であったと考える。しかし、そのプロテアーゼ活性は基質をN末端側から切断する活性しか確認できていない。現在、本候補蛋白質は酵母で異種発現させており、タンパク質のコンフォメーション・糖鎖修飾が異なるためと考えており、今後PPLと同様に担子菌での発現を試み必要がある。またもう一つのアプローチである、PP-13000の精製方法の確立にも成功しており、その一次アミノ酸配列の解明のために今後有効に活用できる。
KAKENHI-PROJECT-26850110
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スギヒラタケの毒性解明と特異な基質開裂特性を有する新規酵素の創出
また、別途遺伝子情報に関してはデータベースの整備も行ったため、上記の研究で得られたアミノ酸配列から、遺伝子情報・アノテーション・発現プロファイルを検索することが可能となった。上記結果から、プロテアーゼ活性の再現に関しては進展しており、データベースの構築等の作業も進展していることから、概ね順調に進展していると考える。木質科学酵母two-hybrid法によるスギヒラタケレクチン(PPL)と相互作用のある蛋白質の探索で得られた候補蛋白質は、担子菌を用いた異種発現系の構築を試み、プロテアーゼ活性の再現を試みる。またPP-13000は、一次アミノ酸配列及び遺伝子クローニングを試みる。また,その蛋白質分解活性の基質特異性について、様々な蛋白質、ペプチドの分解をMALDI-TOF-MSあるいはESI-TOF-MSを用いて解析する。また、発現した致死性毒物質とレクチンのアミノ酸変異を行い、構造と活性の相関を検討する。PPLの抗体に関してはPPLの大量発現系の構築を行う。また同時にNative PPLの大量精製も行うことで、抗体の作成を試みる。PPL抗体を作成後は、複合体の投与検体において、BBB表面にレクチンが存在するか否かを免疫染色によって確認する。更なるメカニズム解明のため、致死性毒物質とレクチン複合体がBBB以外のどの器官に作用しているか、また実際のスギヒラタケの生体内ではどの組織細胞に局在しているかを調べる。
KAKENHI-PROJECT-26850110
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26850110
硝酸希土類結晶の疑似安定状態における非線形性
硝酸希土類結晶は10°Cから-45°Cの温度領域に本質的な非線形性を有する疑似安定な結晶相を持ち,10^<-3>sec程度の長い緩和時間を有し,低周波数領域でのAC伝導率の周波数特性はガラス或いはアモルファス半導体に類似する特性を示す。本研究の目的は,この特異な非線形物性現象を実験的に解明する事である。配分された補助金(消耗品)によりランタンLa(57)からルテチュムLu(71)まで希土類の硝酸化合物の単結晶育成を行い,測定に耐え得る単結晶を得た。備品費により得た冷却装置,制御用コンピューター等の備品に基づき,室温から-80°Cまでの各温度においてACインピダンスの時系列データの計測システムを製作した。作製した測定システムは1ヶ月以上の長期計測に耐え得るものであり,従来の測定システムよりその測定能力は向上している。実験の結果より,物性が未定であった硝酸ツリウム結晶において,疑似安定相が存在する事が分かり,硝酸テルビウムにおいては顕著な経時変化が発見された。硝酸サマリウムは,疑似安定領域における,繰り込み次元に対してフラクタル次元が飽和し,この領域がカオス的或いは決定論的な特性を示す事が判明した。合わせて,1/fノイズの存在が見いだされた。現在,その結果をPhysicaに投稿中である。また硝酸ネオジム結晶における時系列データの温度変化測定より,そのスペクトルが不安定と安定領域の転移において変化することが解った。硝酸サマリウムと同様に1/fノイズの存在を示唆する結果を得た。以下の学会に研究結果は公表されている。平成5年9月岡山大の日本物理学会て1件,北大にて開かれた第29回応用物理学会北海道支部会にて3件また福岡工大にて平成6年3月に開催された日本物理学会にて1件で,合計5件の講演発表を行った。現在論文投稿中としては,Physicaへの投稿を含めて,3編程度ある。硝酸希土類結晶は10°Cから-45°Cの温度領域に本質的な非線形性を有する疑似安定な結晶相を持ち,10^<-3>sec程度の長い緩和時間を有し,低周波数領域でのAC伝導率の周波数特性はガラス或いはアモルファス半導体に類似する特性を示す。本研究の目的は,この特異な非線形物性現象を実験的に解明する事である。配分された補助金(消耗品)によりランタンLa(57)からルテチュムLu(71)まで希土類の硝酸化合物の単結晶育成を行い,測定に耐え得る単結晶を得た。備品費により得た冷却装置,制御用コンピューター等の備品に基づき,室温から-80°Cまでの各温度においてACインピダンスの時系列データの計測システムを製作した。作製した測定システムは1ヶ月以上の長期計測に耐え得るものであり,従来の測定システムよりその測定能力は向上している。実験の結果より,物性が未定であった硝酸ツリウム結晶において,疑似安定相が存在する事が分かり,硝酸テルビウムにおいては顕著な経時変化が発見された。硝酸サマリウムは,疑似安定領域における,繰り込み次元に対してフラクタル次元が飽和し,この領域がカオス的或いは決定論的な特性を示す事が判明した。合わせて,1/fノイズの存在が見いだされた。現在,その結果をPhysicaに投稿中である。また硝酸ネオジム結晶における時系列データの温度変化測定より,そのスペクトルが不安定と安定領域の転移において変化することが解った。硝酸サマリウムと同様に1/fノイズの存在を示唆する結果を得た。以下の学会に研究結果は公表されている。平成5年9月岡山大の日本物理学会て1件,北大にて開かれた第29回応用物理学会北海道支部会にて3件また福岡工大にて平成6年3月に開催された日本物理学会にて1件で,合計5件の講演発表を行った。現在論文投稿中としては,Physicaへの投稿を含めて,3編程度ある。
KAKENHI-PROJECT-05836001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05836001
血小板依存的な骨軟部肉腫の増殖・転移機構の解明と新規治療法の開発
本研究の目的は、骨肉腫ポドプラニン(Pod)と血小板CLEC-2の相互作用が増殖・転移における役割を解明し、それを治療につなげることである。1骨肉腫と血小板との凝集を確認した。この凝集は、ポドプラニン抗体、ないしCLEC-2ブロッキングペプチドで抑制された。2血小板と骨肉腫共培養により得られた上清は骨肉腫の遊走を誘導したが、EMTの誘導は部分的であった。3血小板CLEC-2抗体を投与すると肺転移が有意に抑制された。骨軟部肉腫領域での化学療法は、この20年間で特段の変化をみない。しかし肺転移が予後因子であるため、骨軟部肉腫の化学療法として、増殖と共に肺転移を抑制する新たな治療法の登場が望まれる。これまでに研究者らは、一部の扁平上皮癌等に発現する膜蛋白ポドプラニンは、血小板活性化受容体CLEC-2に結合して血小板凝集を惹起して、血行性転移を促進することを発見した。更に、ヒト骨肉腫細胞の高肺転移株ではポドプラニンが高発現し、また高肺転移株のみが血小板凝集を惹起することを見出した。H27年度は1)骨肉腫Podと血小板CLEC-2との凝集の有無の確認を行った。まず、1骨肉腫細胞株とそれ由来の高肺転移株を用いて、それらのPod発現をFACSで比較したがやはり高肺転移株の方がPod発現が高く、洗浄血小板との凝集も確認できた。また、高肺転移株のPod発現をsiRNAにて低下させた株では血小板凝集が見られなくなった。よって、骨肉腫細胞のPodは血小板凝集に重要な役割を担っている。2)血小板活性化による骨肉腫の増殖・遊走・EMTへの影響肉腫細胞Podによる血小板活性化の有無についての検討を行った。高肺転移株とヒト洗浄血小板を15分共培養ののち、遠心して得られた上清中に血小板活性の際に血小板顆粒中に含有するPlatelet Factor-4(PF-4)が特異的に放出されるので、そのPF-4の測定をELISAで測定した。その結果、PF-4の産生が確認された。また、SiRNAでPod発現を抑制した細胞株では産生が低下しており、血小板活性化にPodが必要であることが分かった。骨肉腫細胞Podの発現と血小板との凝集、活性化において、そのPodが機能的であることが証明された。今後はマウス血小板を使用し、CLEC-2抑制を行った血小板と、正常血小板と骨肉腫細胞間の凝集、活性化の有無を調べて、PodーCLEC-2の役割を更に明らかにしたい。骨軟部肉腫領域での化学療法は、この20年間で特段の変化をみない。しかし肺転移が予後因子であるため、骨軟部肉腫の化学療法として、増殖と共に肺転移を抑制する新たな治療法の登場が望まれる。これまでに研究代表者らは、一部の扁平上皮癌等に発現する膜蛋白ポドプラニンは、血小板活性化受容体CLECー2に結合して血小板凝集を惹起して、血行性転移を促進することを発見した(J Biol Chem. 285: 24494ー507, 2010)。更に、ヒト骨肉腫細胞の高肺転移株ではポドプラニンが高発現し、また高肺転移株のみが血小板凝集を惹起することを見出した。本研究では、これらの成果を更に発展させ、肉腫ポドプラニンと血小板CLECー2を介した血小板活性化が肉腫の増殖・転移に果たす役割を解明し、それを治療へ発展させることが目的である。平成28年度の計画と研究実績血小板活性化による肉腫細胞の変化1)浸潤能への影響;Boyden Chamberアッセイを用いる。上層には無血清条件で1.骨肉腫細胞のみ2.骨肉腫細胞と血小板の共培養3.血小板のみのとし、下層には10%FCS入りの基本培地を置く。その結果、骨肉腫細胞と血小板との共培養で最も高い浸潤能が認められた。2)上皮間葉転換(EMT)への影響;プレートに骨肉腫細胞を播き、1日待機する。培地をFCSなしに変え、洗浄血小板を添加する。その結果、血小板と共培養した骨肉腫細胞では、Nカドヘリン、Snailなどの間葉系マーカーの発現が見られた。血小板と骨肉腫が凝集し、その結果、一つは浸潤能の獲得、もう一つはEMTの促進が認められた。本研究では、肉腫Podと血小板CLEC-2の相互作用がどのように肉腫の増殖・転移を誘導するかを解明し、それを治療につなげることを目的とする。肉腫として代表的な骨肉腫細胞を用いて実験を計画したが、この研究結果は骨軟部肉腫全体への応用が可能と考える。マウスモデルによるCLEC-2抗体の治療効果と臨床検体を検討することで、新規治療ターゲットとしての妥当性を明らかにする。1ルシフェラーゼ遺伝子を導入した143Bを脛骨に移植するモデルを使用する。治療としては、CLEC-2抗体群、IgG抗体群、未投与群の3群とする。
KAKENHI-PROJECT-15K10436
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血小板依存的な骨軟部肉腫の増殖・転移機構の解明と新規治療法の開発
移植後6週間での肺転移を予備実験で確認しているので、2週、4週、6週の時間経過でルシフェラーゼアッセイにより治療効果判定を行う。また、治療中は血小板機能評価のため、2,4,6週で採血を行い、凝固能(PT,APTT)血小板数を測定する。副作用の有無に関しては毎週ごとに体重測定を行う。脛骨移植モデルでは、6週と経過がながく安定しなかったため、尾静脈注射を行い、肺転移の有無を調べた。また、原発については、皮下移植モデルを用いて効果判定を行った。尾静脈注射モデルでは、CLEC-2抗体投与群で、肺転移が抑制された。皮下移植モデルでは、3群で差は認められなかった。2当院で得られた骨肉腫患者サンプルを用いて、Podの発現を免疫組織学的に検討する。また、その発現強度と患者予後について関連性を検討する。現在、同一患者で、原発と肺転移の両方をマッチした症例で、Podの発現変化を見ている。肺転移症例でPod発現が高くなることが分かった。本研究の目的は、骨肉腫ポドプラニン(Pod)と血小板CLEC-2の相互作用が増殖・転移における役割を解明し、それを治療につなげることである。1骨肉腫と血小板との凝集を確認した。この凝集は、ポドプラニン抗体、ないしCLEC-2ブロッキングペプチドで抑制された。2血小板と骨肉腫共培養により得られた上清は骨肉腫の遊走を誘導したが、EMTの誘導は部分的であった。3血小板CLEC-2抗体を投与すると肺転移が有意に抑制された。おおむね計画どおり遂行されている。今後はマウス実験において、抗体の投与間隔などPreliminaryの実験が必要になると思われる。実験のまとめとして、マウスモデルへの抗体投与があるので、最終年度にそれを行う予定である。整形外科
KAKENHI-PROJECT-15K10436
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ケロイドにおけるオートファジー現象の関与解析
オートファジーとは、自己の細胞成分をリソソームで分解する現象を指す。最近、ラット創傷治癒モデルにおいて、肉芽組織中の線維芽細胞においてLC3陽性顆粒数が増加すると報告された。このことは、これら線維芽細胞においてオートファジー-リソソーム系が影響を受けていることを示す。しかし創傷治癒過程では、細胞増殖、細胞外基質の産生とリモデリング、筋線維芽細胞への分化など、複数の現象が異なる部位で一過性に起きているため、個々の線維芽細胞においてオートファジーが亢進しているかどうかを結論できていない。本研究では、哺乳類線維芽細胞におけるLC3陽性顆粒数の増加の原因を探り、かつ細胞増殖因子、分化因子のオートファジーへの関与を精査する目的で、ラット線維芽細胞由来のNRK細胞を用い、bFGFおよびTGF-βの効果について、免疫蛍光法およびLC3の検出によるフラックスアッセイを用いて解析した。結果、bFGF投与によりLC3陽性顆粒数は増加せず、オートファジーによる分解も変化しなかった。また、TGF-β投与によりLC3陽性顆粒数は変化せず、オートファジーによる分解も変化しなかった。更に、bFGF投与により隔離膜マーカーであるAtg16Lが増加するが、TGF-β投与72時間によりAtg16Lは減少した。現時点で、bFGFやTGF-βがオートファジー分解系のどの段階に影響を与えているかを示すことができなかった。これは、LC3ないしAtg16L以外の抗体を使用して、オートファジー分解系の初期あるいは後期段階での動向の調査が必要であると考える。ケロイド組織内におけるオートファジー動態は、いまだ明らかにはされておらず、そのため、研究の方針も見出されていない。一方、ケロイドの病理組織学的形態は、線維芽細胞の異常増殖であることが示されている。従って、ケロイドの動態の研究は線維芽細胞の研究に言い換えることができる。また、トランスフォーミング増殖因子のひとつであるTGF-βは、細胞を線維芽細胞に変換させる作用が知られている。ケロイドの形成は、この、線維芽細胞への変換能が関与している可能性があると考え、ネズミ腎細胞(NRK)にたいしてTGF-βを投与してのオートファジー活性の研究ならびに、強力な細胞増殖因子である塩基性線維芽細胞成長因子、bFGFを投与してのオートファジー活性の研究を行った。その結果、従来よりTGF-βはオートファジー活性を更新させる作用があると報告されているが、時間経過とともに活性を抑制させている可能性、そして、オートファジー関連タンパク質であるLC3ならびにAtg16Lを凝集させる効果が見いだされた。この結果より、オートファジー経路における、最重要ともいえる構造物である、隔離膜の形成に、TGF-βは関与している可能性を考慮している。今後は、TGF-β投与後に、オートファジー経路の後半に形成される構造物、オートリソソームの構造に変化があるかの調査を行い、TGF-βがオートファジー経路に与える影響の精査を進めていく方針である。なお、本研究の経過の一部は、2017年10月19日、第26回日本形成外科学会基礎学術集会にて概要を発表した。ケロイドにおけるオートファジー関連抗体による免疫染色では、有意な所見が見いだされていないため、ケロイドと最も関連が深い構造物である、線維芽細胞におけるオートファジー活性の調査から進めている段階である。オートファジーとは、自己の細胞成分をリソソームで分解する現象を指す。最近、ラット創傷治癒モデルにおいて、肉芽組織中の線維芽細胞においてLC3陽性顆粒数が増加すると報告された。このことは、これら線維芽細胞においてオートファジー-リソソーム系が影響を受けていることを示す。しかし創傷治癒過程では、細胞増殖、細胞外基質の産生とリモデリング、筋線維芽細胞への分化など、複数の現象が異なる部位で一過性に起きているため、個々の線維芽細胞においてオートファジーが亢進しているかどうかを結論できていない。本研究では、哺乳類線維芽細胞におけるLC3陽性顆粒数の増加の原因を探り、かつ細胞増殖因子、分化因子のオートファジーへの関与を精査する目的で、ラット線維芽細胞由来のNRK細胞を用い、bFGFおよびTGF-βの効果について、免疫蛍光法およびLC3の検出によるフラックスアッセイを用いて解析した。結果、bFGF投与によりLC3陽性顆粒数は増加せず、オートファジーによる分解も変化しなかった。また、TGF-β投与によりLC3陽性顆粒数は変化せず、オートファジーによる分解も変化しなかった。更に、bFGF投与により隔離膜マーカーであるAtg16Lが増加するが、TGF-β投与72時間によりAtg16Lは減少した。現時点で、bFGFやTGF-βがオートファジー分解系のどの段階に影響を与えているかを示すことができなかった。これは、LC3ないしAtg16L以外の抗体を使用して、オートファジー分解系の初期あるいは後期段階での動向の調査が必要であると考える。TGF-βにおける、オートファジー活性を精査することで、線維芽細胞、ひいてはケロイドの形成に関与があるか調査する方針である。初年度使用額の目標に沿って使用しましたが、少額の余りが出ました。
KAKENHI-PROJECT-17K17023
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骨補填材の違いによる再生組織における炎症抵抗性の評価
本研究は、再生した組織に歯周炎を惹起させ、その炎症の波及について評価することを目的としている。平成28年度では、本研究モデルを確立するために必要な結紮糸誘導歯周炎を利用した予備実験を行なった。この予備実験に関連する内容を第81回日本口腔病学会学術大会で報告した。この内容は平成29年度に査読のある国際誌であるOdontologyに投稿・受理された。本実験ではビーグル6頭の下顎両側第1前臼歯と第3前臼歯を抜歯することで欠損スペースを作り、12週後に両側下顎の第2前臼歯遠心と第4前臼歯近心に3壁性の骨欠損を作製した。骨欠損には3種類の骨補填材を無作為に分けて補填した。そして12週後に絹糸を挿入した。歯周炎を惹起させてる間、著しい歯肉の腫脹・出血などの炎症所見を認めた。また経時的にデンタルX線写真を撮影することで軽度な骨吸収も確認した。一定期間炎症状態に置いた後に、抜糸を行った。そして急性症状が和らいだ後に標本を採取し、組織切片の作製を行った。平成30年度はmicroCT、および作製した組織切片から各種パラメータを計測し、統計処理を行なった。β-TCP群では、異種骨群や自家骨群よりも大きな骨吸収が認められたが、統計学的には歯周炎による組織破壊の材料による差は認められなかった。また、組織学的には、術後12週で自家骨とほとんどの人工骨は完全に吸収・置換されていたが、異種骨は全ての組織で残存していた。歯根周囲に残存した異種骨顆粒の間および周囲には結合組織が広範囲に入り込んでいる所見が得られた。この成果内容について秋季日本歯周病学会でポスター発表を行なった。現在国際誌への論文投稿の準備を行っている。我々の研究室では、筒状のβ-TCPを多数焼結させたブロック状の多孔質骨補填材が歯周組織再生、特に骨再生に有効であることを見出した。一般的に骨補填材などの人工材料は感染に弱いとされているが、感染の影響を報告した研究はほとんどない。再生した歯周組織をいかに持続させるかが、自身の歯を残す上で重要となってくる。無菌化できない口腔内環境で歯周炎が再発するリスクはゼロとは言えず、再生した歯周組織の変化やその予後は不明である。そこで再生した組織に歯周炎を惹起させ、その炎症の波及について評価することを目的とし研究を進めている。平成28年度では、本研究モデルを確立するために必要な結紮糸誘導歯周炎を利用した予備実験を行なった。この予備実験に関連する内容を第81回日本口腔病学会学術大会で報告した。そして本実験ではビーグル6頭の抜歯を終え、4頭までの欠損作製と骨補填材填入が進んでおり、絹糸を挿入するまでの治癒を待っている。あらかじめ下顎両側第1前臼歯と第3前臼歯を抜歯することで欠損スペースを作り、抜歯から12週後に両側下顎の第2前臼歯遠心と第4前臼歯近心に3壁性の骨欠損を作製した。材料は3種類の骨補填材を無作為に振り分けて補填した。術後2週での抜糸時に創の離開などの異常所見は認められず、術後の経過は良好である。次年度は引き続き実験を進め標本採取を行い、組織学的な評価および得られたデータを分析していく予定である。平成28年度は、様々な骨補填材を利用して再生させた組織に歯周炎を惹起させることを目的とした。しかし大型動物の1度あたりの飼育数に上限があること、また他研究との兼ね合いから、本実験開始が冬季となった。そのため、平成28年度内にデータ採取まで進められなかった。しかしながら、予備実験により結紮糸による歯周炎惹起の術式・及び経時的な変化が把握できた。これに関連した結果を国内学会で発表した。本研究は、再生した組織に歯周炎を惹起させ、その炎症の波及について評価することを目的として実験を進めている。本年度は、昨年度に行った4頭の治癒待機および2頭の欠損作製・骨補填材填入を行う時点から開始した。欠損作製・骨補填材填入手術から12週後に絹糸を対象歯に結紮し歯肉溝に挿入することで、歯周炎を惹起させた。この期間、歯肉の腫脹、出血などの炎症所見を十分に認めた。また経時的にデンタルX線写真を撮影することで軽度な骨吸収も確認した。一定期間炎症状態に置いた後に、抜糸を行った。そして急性症状が和らいだ後に標本を採取し、組織切片の作製を行った。まだ全頭分のデータが集まっていないため、解析は十分に進んではいないが、自家骨、異種骨、人工骨の違いで興味深い結果を得ることができた。組織学的には、術後12週で自家骨とほとんどの人工骨は完全に吸収・置換されていたが、異種骨は全ての組織で残存していた。また歯根周囲に残存した異種骨顆粒の間および周囲には結合組織が広範囲に入り込んでいる所見が得られた。また、予備実験で行った結紮糸誘導歯周炎を利用した実験の成果を、昨年度の学会発表に続き、国際誌であるOdontologyにに投稿し、受理された(epub ahead of print)。
KAKENHI-PROJECT-16K21019
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骨補填材の違いによる再生組織における炎症抵抗性の評価
今後はmicroCT、および組織切片から得られたデータをより詳細に分析してまとめ、学会や論文投稿を通じて国内外に発表していく予定である。平成28年度は、学内施設での飼育数に上限があること、また他研究との兼ね合いから、本実験開始が冬季となった。そのため、実験開始が遅れ、平成29年度内は組織切片作製までしか進められず、データを分析してまとめることができなかった。しかしながら、予備実験により得られた結果を平成29年度に国際誌で発表した。本研究は、再生した組織に歯周炎を惹起させ、その炎症の波及について評価することを目的としている。平成28年度では、本研究モデルを確立するために必要な結紮糸誘導歯周炎を利用した予備実験を行なった。この予備実験に関連する内容を第81回日本口腔病学会学術大会で報告した。この内容は平成29年度に査読のある国際誌であるOdontologyに投稿・受理された。本実験ではビーグル6頭の下顎両側第1前臼歯と第3前臼歯を抜歯することで欠損スペースを作り、12週後に両側下顎の第2前臼歯遠心と第4前臼歯近心に3壁性の骨欠損を作製した。骨欠損には3種類の骨補填材を無作為に分けて補填した。そして12週後に絹糸を挿入した。歯周炎を惹起させてる間、著しい歯肉の腫脹・出血などの炎症所見を認めた。また経時的にデンタルX線写真を撮影することで軽度な骨吸収も確認した。一定期間炎症状態に置いた後に、抜糸を行った。そして急性症状が和らいだ後に標本を採取し、組織切片の作製を行った。平成30年度はmicroCT、および作製した組織切片から各種パラメータを計測し、統計処理を行なった。β-TCP群では、異種骨群や自家骨群よりも大きな骨吸収が認められたが、統計学的には歯周炎による組織破壊の材料による差は認められなかった。また、組織学的には、術後12週で自家骨とほとんどの人工骨は完全に吸収・置換されていたが、異種骨は全ての組織で残存していた。歯根周囲に残存した異種骨顆粒の間および周囲には結合組織が広範囲に入り込んでいる所見が得られた。この成果内容について秋季日本歯周病学会でポスター発表を行なった。現在国際誌への論文投稿の準備を行っている。現在は本実験の欠損作製・骨補填材填入手術まで進んでいる。次年度は追加で必要な実験材料を購入し、引き続き動物実験を進めていきデータを採取・分析していく予定である。また、平成28年度に得られた予備実験の結果に関しては論文投稿中である。大型動物の飼育数の制限により本実験開始が遅れた影響で、脱灰組織切片作製も遅れ、当初予定の年度内に解析を終えることができなかった。平成30年度ではデータを解析し、学会発表および論文投稿を進める予定である。大型動物の飼育数の制限により本実験開始が遅れた影響で、脱灰組織切片作製も遅れ、平成29年度内に解析を終えることが困難となった。そこで平成30年度にデータの解析、英文校正などの論文投稿関係の費用、学会発表にかかる費用が必要となった。
KAKENHI-PROJECT-16K21019
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緑茶カテキンによる胃瘻チューブ内腔の細菌汚染予防効果
食酢洗浄法と比較して優位性/有効性はあるが統計学的には非劣性であった。微温湯とのクロスオーバー試験である本研究ではpseudomonous aeruginosaとacienotobactor baumauniiとで優位の差がみられ、院内感染においては予防効果があると考えられ、2本の論文発表予定である。胃瘻チューブ洗浄液にヘルシアという特定保健用食品である飲料水を使用する方法は研究期間中、健康障害や有害事象もみられなかったので、食酢を洗浄液とする従来の方法と比較して、間違えて酢酸を使用するような痛ましい医療事故を引き起こすことのない有用な洗浄液と考えられた。発表:佐々木晶世,永田茂樹,叶谷由佳:胃瘻増設患者における胃瘻留置チューブ内腔の細菌汚染状況,第26回日本健康学会総会(東京, 2016. 11 )先行研究として研究デザインを無作為割り付け比較試験とした臨床研究を実施した。栄養剤注入後に微温湯を注入する群を対照群とし、介入群では微温湯のあとチューブ内を満たす15mlの緑茶を注入しロックする。介入群と対照群が1:1になるよう封筒法を用いて割り付けを行った。緑茶はカテキン含有量540mg/350ml(GTP濃度0.15%)である花王ヘルシア緑茶を使用した。胃瘻造設7病日に昼食時の栄養剤注入前に検体採取を行った。胃瘻刺入部(ろう孔)の観察(発赤、腫脹、熱感の有無、浸出液や粘液の状態、栄養剤の漏れの有無)、消化器症状の観察(下痢、便秘、嘔吐)についても病棟の看護師により観察を行った。対象者は9名でうち、女性4名、男性5名であり、緑茶群に4名(うち女性1名)が、対照群に5名(うち女性3名)が割り付けられた。胃瘻刺入部の発赤、腫脹、熱感が7病日までにみられた患者はいなかった。7日目に浸出液と栄養剤漏れがみられた患者が1名であった。下痢や嘔吐が複数回継続するような消化器症状をもつ患者はいなかった。1名嘔吐後に発熱し誤嚥性肺炎であった。その過程で洗浄試験施行前の胃瘻留置チューブ内の細菌汚染が高度であったことが判明した。Klebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)が検緑茶群と対照群各群2名、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)は緑茶群2名、対照群1名、腸内細菌のEnterobacter属は緑茶群3名、対照群1名から、多剤耐性菌で第5類感染症であるAcinetobacter baumanniiが対照群で1名から検出された。この結果はIF=1.215のAging Clinical and Experimental Researchに投稿中である。また、この結果をもとに本臨床研究のデザインの見直しをし、本年5月よりの実施予定で準備を整えている。先行研究として研究デザインを無作為割り付け比較試験とした臨床研究を実施したところKlebsiella pneumoniae(肺炎桿菌)が緑茶群と対照群各群2名、Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)が緑茶群2名、対照群1名、腸内細菌のEnterobacter属は緑茶群3名、対照群1名より検出され、多剤耐性菌で第5類感染症であるAcinetobacter baumanniiが対照群で1名検出されたため、1.保健所などに届け、感染対策を行ったこと。2.洗浄試験施行前の胃瘻留置チューブ内の細菌汚染が高度であったことが判明したため、本臨床研究のデザインの見直しをしたこと。3.この結果をIF=1.215のAging Clinical and Experimental Researchに投稿することにしたこと。以上の3点で当初の予定より多少の遅れがが生じている。2.研究対象以外の入院患者からも同様の多剤耐性菌で第5類感染症であるAcinetobacter baumanniiが検出されるに至り、院内感染が確認された。3.厚生労働省関東信越厚生局よりの指導があり、感染対策を講じるも、多剤耐性菌で第5類感染症であるAcinetobacter baumanniiが再度検出されたため、解除されるまで6か月を要した。4.感染対策の徹底や研究方法の見直しをし、同意を得て、患者登録を開始するまで3か月かかった。以上より研究を中断せざるを得なくなった。1. 5類感染症である多剤耐性Acinetobactor baumanniiの院内感染が確認され、報告義務が解除されるまで研究を中止せざるを得なかった。2.再発防止のための院内感染対策の見直し、徹底をしたため、院内感染監視解除に時間がかかり、患者の登録と同意が再度必要になった。3.その後、登録、同意が順調に行われ、6か月で21名に対して培養結果結果が得られている。4.実施予定人数に達していないがすでに7名の同意が取れており、追加症例が見込まれるため、期間延長の申請をした。食酢洗浄法と比較して優位性/有効性はあるが統計学的には非劣性であった。微温湯とのクロスオーバー試験である本研究ではpseudomonous aeruginosaとacienotobactor baumauniiとで優位の差がみられ、院内感染においては予防効果があると考えられ、2本の論文発表予定である。
KAKENHI-PROJECT-15K15898
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K15898
緑茶カテキンによる胃瘻チューブ内腔の細菌汚染予防効果
胃瘻チューブ洗浄液にヘルシアという特定保健用食品である飲料水を使用する方法は研究期間中、健康障害や有害事象もみられなかったので、食酢を洗浄液とする従来の方法と比較して、間違えて酢酸を使用するような痛ましい医療事故を引き起こすことのない有用な洗浄液と考えられた。発表:佐々木晶世,永田茂樹,叶谷由佳:胃瘻増設患者における胃瘻留置チューブ内腔の細菌汚染状況,第26回日本健康学会総会(東京, 2016. 11 )院内感染対策を徹底し、多剤耐性菌で第5類感染症であるAcinetobacter baumanniiが検出されなくなり、肺炎桿菌、緑膿菌、腸内細菌のEnterobacter属の院内感染の可能性が低くなったため、本研究の目的である茶カテキンによる胃瘻チューブ内腔の細菌汚染予防効果を検証研究を再開する。研究デザインは無作為割り付け比較試験として栄養剤注入後に微温湯を注入する群を対照群とし、介入群では微温湯のあとチューブ内を満たす15mlの緑茶を注入しロックする。介入群と対照群が1:1になるよう封筒法を用いて割り付けを行う。なお、緑茶はカテキン含有量540mg/350ml(GTP濃度0.15%)である花王ヘルシア緑茶を使用したのち、ウォッシュアウト後にクロスオバー試験を施行するように変更する。対象(性、年齢、健常人か特定の疾病の患者か、適格基準、除外基準を含む)は該当施設で胃瘻造設術を受ける65歳以上患者。なお、緑茶を使用するため、鉄剤を服用中の者、不穏症状や不眠の訴えのある者は除外する。患者の属性として、年齢、性別、既往歴、現病歴、胃瘻の種類、経管栄養剤の種類、服用している薬剤の情報をカルテより得る。胃瘻刺入部(ろう孔)の観察(発赤、腫脹、熱感の有無、浸出液や粘液の状態、栄養剤の漏れの有無)、消化器症状の観察(下痢、便秘、嘔吐)についても観察を行う。対象症例数は40名程度。観察期間は12週間とし、うち洗浄介入期間は8週間で、胃瘻洗浄開始前および2週間後、4週間後、8週間後の計4回および洗浄終了、4週間のウォッシュアウト後の合計5回、細菌培養を行う。採取条件に差が出ないよう、昼食時栄養剤注入前に同一医師による検体採取を行う。4週間のウォッシュアウト後に同様の方法でクロスオバー試験に移行する。以上の様に本臨床研究のデザインの見直しをし、本年5月より再開予定である。1.研究デザインを栄養剤注入後に微温湯を注入する群を対照群とし、介入群では緑茶としてカテキン含有量540mg/350ml(GTP濃度0.15%)である市販の高濃度カテキン含有緑茶を使用する無作為割り付け比較試験とし、介入群と対照群が1:1になるよう割り付ける。割り付けは封筒法を用いる。洗浄介入は8週間で4週、8週後の昼食時の栄養剤注入前に検体採取を行う。検体採取方法は先行研究を参考にチューブを垂直に立てコネクト部分から滅菌スワブを5cm挿入し、チューブ内壁をこすり、細菌培養にて菌種およびコロニー数を検出する。4週間のウォッシュアウト後に同様の条件でのクロスオバー試験で研究代表者が研究を実施し、研究分担者は研究を担当するものが結果、分析に介在しないようにし、研究結果を保管、管理した上、分析をする研究に変更した。2.65歳以上の胃瘻造設患者で緑茶を使用するため、鉄剤を服用中の者、不穏症状や不眠の訴えのある者は除外し、同意のとれた15名について2017年4月よりエントリーを開始した。1. 5類感染症である多剤耐性Acinetobactor baumanniiの院内感染監視解除後、登録、同意が順調に行われ、6か月で21名に対して培養結果結果が得られている。
KAKENHI-PROJECT-15K15898
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新生児一過性糖尿病の発症に第6番染色体のisodisomyが関与しているか
新生児一過性糖尿病の患児の家系を4家系収集した。1家系は、我々が臨床報告を行った症例で、父母患児の3検体を収集した。2家系は、大阪府立母子保健総合医療センター新生児科の症例で、父母姉患児の4検体、父母患児の3検体である。1家系は、神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科の症例で残念ながら患児のみで1検体である。解析対象検体は11検体となった。Japanese Cancer Resourses Bank(JCRB)から供与された第6番染色体上に存在するRFLP markerを用いて解析を行った。既報告では、第6番染色体が2本とも父由来であるというisodisomyの報告であったが、今回の検討では、もちいたプローブ全域が父由来の患児は見られなかった。また、領域は広いもののpaternal disomyをと考えられる部位が6番染色体長腕に存在することが1患児において検出された。今回用いたRFLP markerのheterogeneityが低いためにその他の患児でpaternal disomyを検出できない可能性がある。そのため、現在よりheterogeneityの高い(CA)n repeat(CEPHのprimer)を用いて解析を継続している。新生児一過性糖尿病の患児の家系を4家系収集した。1家系は、我々が臨床報告を行った症例で、父母患児の3検体を収集した。2家系は、大阪府立母子保健総合医療センター新生児科の症例で、父母姉患児の4検体、父母患児の3検体である。1家系は、神奈川県立こども医療センター内分泌代謝科の症例で残念ながら患児のみで1検体である。解析対象検体は11検体となった。Japanese Cancer Resourses Bank(JCRB)から供与された第6番染色体上に存在するRFLP markerを用いて解析を行った。既報告では、第6番染色体が2本とも父由来であるというisodisomyの報告であったが、今回の検討では、もちいたプローブ全域が父由来の患児は見られなかった。また、領域は広いもののpaternal disomyをと考えられる部位が6番染色体長腕に存在することが1患児において検出された。今回用いたRFLP markerのheterogeneityが低いためにその他の患児でpaternal disomyを検出できない可能性がある。そのため、現在よりheterogeneityの高い(CA)n repeat(CEPHのprimer)を用いて解析を継続している。
KAKENHI-PROJECT-08770543
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MR(磁気共鳴)による各種血液疾患における骨髄病態の解析
1.正常骨髄MRI(2)正常骨髄MRI.STIR with Short TEにて腰椎矢状断像を解析していくと,明瞭な正常像が成人200名の画像から結論ずれられた。赤色髄高信号として椎体周辺部を枠どるように抽出された。各椎体の脂肪髄への変性は椎体中央部よりはじまり,腰椎全体としては下部より脂肪髄化は起っていた。脂肪髄への変性は20代後半より明瞭に同定できたが,30代中頃より40代後半までは画像のみから年代による椎移は判定できなかった。2.異常骨髄MRI84症例の各種血液疾患患者の腰椎矢状断像をSTIR with Short TEとlong TEのdouble Echo techniqueにて撮像し,信号強度の変化を観察読影し,さらに異常信号と皮下脂肪との信号強度比をとり比較検討した.STIR with Short TEで再生不良性貧血の80%は低信号を示し,夛発性骨髄腫慢性骨髄性白血病、骨髄線維症と骨髄異形成症候群は均一から不均一な高信号を示した。これら高信号を呈するもののうちSTIRlong TEで慢性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の80%は低信号を示した。STIR with Short TEは水成分を強調し,STIR with long TEは水成分のT_2を強調し高信号としていると考えている.1.正常骨髄MRI(2)正常骨髄MRI.STIR with Short TEにて腰椎矢状断像を解析していくと,明瞭な正常像が成人200名の画像から結論ずれられた。赤色髄高信号として椎体周辺部を枠どるように抽出された。各椎体の脂肪髄への変性は椎体中央部よりはじまり,腰椎全体としては下部より脂肪髄化は起っていた。脂肪髄への変性は20代後半より明瞭に同定できたが,30代中頃より40代後半までは画像のみから年代による椎移は判定できなかった。2.異常骨髄MRI84症例の各種血液疾患患者の腰椎矢状断像をSTIR with Short TEとlong TEのdouble Echo techniqueにて撮像し,信号強度の変化を観察読影し,さらに異常信号と皮下脂肪との信号強度比をとり比較検討した.STIR with Short TEで再生不良性貧血の80%は低信号を示し,夛発性骨髄腫慢性骨髄性白血病、骨髄線維症と骨髄異形成症候群は均一から不均一な高信号を示した。これら高信号を呈するもののうちSTIRlong TEで慢性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群の80%は低信号を示した。STIR with Short TEは水成分を強調し,STIR with long TEは水成分のT_2を強調し高信号としていると考えている.1.静磁場強度1.5Tにおける骨髄の画像化のための至適パルス系列について、STIR(Short TI IR)法をもちいることにより水と脂肪とのbiphasicな構造よりなる骨髄は最もよくその動体を画像化できると考えた。STIRとは反転回復法の反転時間TIをきわめて短くとったパルス系列であり、1.5TではTR=2000 msec,TI=160 msec,TE=20msecの2000/160/20をもちいた。2.STIRによる正常骨髄MR像80名の正常者の腰椎矢状断をSTIRにて撮像した。年令分布は18才から84才迄であり、男女ほぼ同数。骨髄の脂肪化は下部腰椎よりはじまり次第に上部腰椎に進み、最後まで脂肪髄になりにくいのは腰椎では第1、胸椎では12番であった。造血織の残存部位は高信号域として描出され、椎体をふちどるように存在した。脂肪化は椎体の中心部からはじまり、造血織との混在でまだらな高・低信号を示した。このパタ-ンに従わないものは全て異常と考えられる。脂肪髄への変化は18才では全くみられなかったが、26才では既に認められた。骨髄MRIでは30代40代では年令による差はほとんどなかったが、55才以上になると年令に比例して脂肪化は著明となった。3.血液疾患における骨髄MRIの応用上記のパルス系列による正常骨髄MR画像につき、本研究期間中にさらに改良を試みた。すなわち、presatulation pulseを動脈系及び静脈系にかけることにより、両者の脈管からのア-チファクトをなくし、腰椎矢状断面における骨髄MR画像はより明瞭となった。この知見をもとに、骨髄異形成症(Myelodysplastic syndrome,MDS)を中心に、再性不良性貧血患者の骨髄像につき治療前・後を比較した。MDSの骨髄MR像は脂肪浸潤の多寡に応じて、不均一な高低信号が無秩序に分布する像を呈した。この分布は骨髄生検像と一致した。再性不良性貧血患者の治療前にはSTIR with short TEによるMR像は無信号であったが臨床像の改善に伴い、椎体辺縁の骨髄から高信号にかわり、正常造血織の再生が示唆された。現在症例を重ね検討中である。2.グラジエントエコ-法による骨髄描出法について。高速、超高速MR撮像法のひとつであるTurbo FLASHと名付けられている方法がある。本法ではスピンを反転し、そのスピンの回復約300msec後にlow angleのパルスでスピンをもどす。回復時間を更に短くすることにより、骨髄中の脂肪の信号を抑え、水成分の信号を強調すべく、ファントム実験中である。
KAKENHI-PROJECT-01570594
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MR(磁気共鳴)による各種血液疾患における骨髄病態の解析
1.血液疾患における骨髄MR1STIR(shortTI IR法)を用い骨髄MR1の評価を84症例につきおこなった。内訳は骨髄異形成症候群9例,夛発性骨髄腫18例,慢性骨髄性白血病16例,再生不良性貧血9例,慢性リンパ性白血病,骨髄線維症および真性夛血症各3例と腎不全患者等を含むその他13例である。骨髄異形成症候群はSTIR with Short TEでは不均一な高信号を示し,TEを長くとったSTIR with long TEでは63%で均一な低信号を示した。夛発性骨髄腫のMR1像は結節型とびまん型の2型に分類され,STIR with longおよびShort TEにて共に高信号を示した。結節型はびまん型に比べ早期の病期に夛く認められた。経過を観察できた6症例のうち圧迫骨折を起こした3例ではSTIR with long TEで均一な信号の上昇を認めた。再生不良性貧血患者ではSTIR with short TEおよびlong TEで信号は無いか低く、骨髄像の改善と共に正常のパタ-ンで赤色髄の出現が椎体周辺部に認められた。網胞状分が夛く浸潤していると考えられる侵性骨髄性白血病ではSTIR with short TEでは高信号にSTIR withlong TEでは等から低信号を示したものが80%あった。慢性骨髄性白血病患者では寛解時および訴えのない時期でも膝関節周囲の骨髄に対称的に異常な信号が認められた。成因につき血液内科学および開理学的見地より検討中である。2.高速MRIによる骨髄の画像化は新しいソフトーウェアSegented TURBO FLASH(Fast low angle shot)導入により可能となる見通しである。その基礎的序察をおこなっている。
KAKENHI-PROJECT-01570594
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自己再生型の高強度動脈用および高弾性静脈用小口径絹人工血管の開発
高強度または高弾性を有する絹人工血管基盤を、各々、“編み"の技術を駆使して作製する。そして、生分解性の高い人工血管用に改変した高機能化絹多孔質スポンジで基盤へのコーティングを行い、動物移植実験による評価を行う。それを3年間にわたって繰り返すことによって、動脈用および静脈用の小口径絹人工血管を開発、本研究課題を達成する高強度または高弾性を有する絹人工血管基盤を、各々、“編み"の技術を駆使して作製する。そして、生分解性の高い人工血管用に改変した高機能化絹多孔質スポンジで基盤へのコーティングを行い、動物移植実験による評価を行う。それを3年間にわたって繰り返すことによって、動脈用および静脈用の小口径絹人工血管を開発、本研究課題を達成する
KAKENHI-PROJECT-19K05609
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〓性希土類イオンを探針とした高温超伝導酸化物の電子状態の評価
希土類イオン1ケ当りの帯〓率は大きな結晶場の効果を示すが,軽希土類イオンの場合の方が自由イオンからのずれが著しい。帯〓率の計算値との比較から,Hoイオンは結晶場の効果以外は周囲から孤立しているが,Naイオンは周囲の変化を影響を受けやすくCuO_2面の電子と相互作用を生じる直前にあり,PrイオンではCuO_2面を介しPrイオン間に-30K程区の交換相互作用が生じていることが推論される.希土類イオンの系例では,4f軌道は原子番号の増加とともに安定化され,その拡がりも減少する。123型酸化物中4f電子を有する最初のイオンであるPrイオンでは,4f電子はエネルギ-的に不安定であり空間的拡がりも大きいため,CuO_2面の価電子と混成をおこし,そのためCuO_2面のホ-ルの局在が起こり更に超伝導が抑制されると考えられる。LaBa_2Cu_3O_y,PrBa_2Cu_3O_yのXPS実験を行い,スペクトルを比較した結果Pr4F電子の状態密度は価電子帯と完全に重なり,フェルミ準位まで拡がっていることが示された。希土類イオンでは123型酸化物中においても,その4f軌道のエネルギ-,拡がりともに原子番号に対し連続的に変化していると考えられるがNaとPrの間でCuO_2面との混成が急激に生ずることは注目に値する。希土類イオン1ケ当りの帯〓率は大きな結晶場の効果を示すが,軽希土類イオンの場合の方が自由イオンからのずれが著しい。帯〓率の計算値との比較から,Hoイオンは結晶場の効果以外は周囲から孤立しているが,Naイオンは周囲の変化を影響を受けやすくCuO_2面の電子と相互作用を生じる直前にあり,PrイオンではCuO_2面を介しPrイオン間に-30K程区の交換相互作用が生じていることが推論される.希土類イオンの系例では,4f軌道は原子番号の増加とともに安定化され,その拡がりも減少する。123型酸化物中4f電子を有する最初のイオンであるPrイオンでは,4f電子はエネルギ-的に不安定であり空間的拡がりも大きいため,CuO_2面の価電子と混成をおこし,そのためCuO_2面のホ-ルの局在が起こり更に超伝導が抑制されると考えられる。LaBa_2Cu_3O_y,PrBa_2Cu_3O_yのXPS実験を行い,スペクトルを比較した結果Pr4F電子の状態密度は価電子帯と完全に重なり,フェルミ準位まで拡がっていることが示された。希土類イオンでは123型酸化物中においても,その4f軌道のエネルギ-,拡がりともに原子番号に対し連続的に変化していると考えられるがNaとPrの間でCuO_2面との混成が急激に生ずることは注目に値する。
KAKENHI-PROJECT-03211225
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複合糖質を素材とした糖鎖の超分子形成と生物機能
1.エリシター活性を有する糖ペプチドの合成エリシター活性の構造-活性相関を明らかにするために、最小の分子構造を有するエリシター活性体を見いだすことを目的として、ペプチド鎖の更なる延長、及び、糖鎖の分岐が活性に与える影響を明らかにするために、さらに7つのモデル化合物の合成を行った。三糖セリルプロリン誘導体1及び2、セリルプロリン誘導体3及び4を組み合わせてブロック合成を行った。ペプチド縮合反応には、ジクロロメタン中EEDQを、Fmoc基の選択的脱保護にはモルフォリンを、脱t-ブチル化にはトリフルオロ酢酸を、脱アセチル、脱Fmoc、及び脱メチルエステル化を同時に行う場合にはメタノール-水混合溶液中、NaOMeを用いて7つのモデル化合物(511)を得た。2.サプレッサーの合成病原菌はエリシターによって誘導される抵抗性を積極的に抑制する仕組みを備えていることが1970年代になってわかってきた。この機能を担う物質はサプレッサーと呼ばれており、エリシターによって宿主植物に誘導される防御応答を種特異的に抑制する。Supprescin A及びSupprescin B 2種の糖ペプチドの構造を明らかとしている。これらの構造と植物に対する抵抗性抑制との相関の解明のため、Supprescin A、Supprescin B及びそのモデル化合物の合成を試みた。ガラクトサミン誘導体とトリペプチド誘導体をジクロロメタン中TMSOTfを用いて縮合し、さらに還元後N-アセチル化、脱Z、脱Bn、脱アセチル、脱メチルエステル化を行い、Supprescin Aとそのβ-isomerを得た。1.エリシター活性を有する糖ペプチドの合成エリシター活性の構造-活性相関を明らかにするために、最小の分子構造を有するエリシター活性体を見いだすことを目的として、ペプチド鎖の更なる延長、及び、糖鎖の分岐が活性に与える影響を明らかにするために、さらに7つのモデル化合物の合成を行った。三糖セリルプロリン誘導体1及び2、セリルプロリン誘導体3及び4を組み合わせてブロック合成を行った。ペプチド縮合反応には、ジクロロメタン中EEDQを、Fmoc基の選択的脱保護にはモルフォリンを、脱t-ブチル化にはトリフルオロ酢酸を、脱アセチル、脱Fmoc、及び脱メチルエステル化を同時に行う場合にはメタノール-水混合溶液中、NaOMeを用いて7つのモデル化合物(511)を得た。2.サプレッサーの合成病原菌はエリシターによって誘導される抵抗性を積極的に抑制する仕組みを備えていることが1970年代になってわかってきた。この機能を担う物質はサプレッサーと呼ばれており、エリシターによって宿主植物に誘導される防御応答を種特異的に抑制する。Supprescin A及びSupprescin B 2種の糖ペプチドの構造を明らかとしている。これらの構造と植物に対する抵抗性抑制との相関の解明のため、Supprescin A、Supprescin B及びそのモデル化合物の合成を試みた。ガラクトサミン誘導体とトリペプチド誘導体をジクロロメタン中TMSOTfを用いて縮合し、さらに還元後N-アセチル化、脱Z、脱Bn、脱アセチル、脱メチルエステル化を行い、Supprescin Aとそのβ-isomerを得た。
KAKENHI-PROJECT-07229242
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背景重力波に対する余剰次元効果と観測可能性
ストリング理論は,全ての物質とその相互作用を統一する究極の理論として最も有力な理論であると信じられている。一方、WMAPによる宇宙背景輻射の観測が示しているように、インフレーション理論は現象論として大きな成功を収めている。そして、いまや、ストリング理論に基づいた宇宙論、弦理論的宇宙論が語られる時代を迎えつつあり、インフレーションの幾何学的構築が大きな課題となっている。我々の目的は、弦理論に基づいた初期宇宙の現実的なモデルの構築へ向けてまず第一歩を踏み出すことにある。我々は、現段階での研究を弦理論、相対論、宇宙論の3つの立場からの研究として分類する。それぞれのキーになるアイデアはフラックス、ブレーンワールド、ストリングガスである。どの場合にも主要な課題はインフレーション中における内部空間の安定性にある。我々は、これら3つのアプローチの長所と短所を整理し、弦理論と相対論からのアプローチの長所を組み合わせた新しいインフレーションモデル、余剰次元(バルク)中のフラックスによるブレーンワールドインフレーションモデルを提唱した。このモデルでは、インフレーションは2枚のブレーン間に存在するフラックスによって引き起こされる。インフレーションはブレーンの衝突で終了し、運動エネルギーが熱として解放されることで再加熱が起こり、ビッグバン宇宙が始まる。我々は、このモデルが予言する宇宙の曲率ゆらぎや重力波ゆらぎを計算し、それらの観測との整合性を持つことを示した。高次元宇宙論であるブレーン宇宙論が提案されて以来、その研究は盛んに行われ、様々な議論が繰り広げられてきた。この理論は「超弦理論」と言う素粒子のモデルに基づいている。このブレーン宇宙を宇宙背景輻射の観測によって検証することは今最も重要である。しかし、ブレーン宇宙における揺らぎの進化は自明でない背景場と時間変化する境界条件のために解くことが非常に困難であった。そこで、我々はまず、低エネルギーにおける揺らぎの進化を扱う方法として微分展開法を開発した。この方法を使うことで宇宙背景輻射の温度揺らぎに対する余剰次元効果を計算することが可能となった。この研究においては簡単のためバルクは真空であると仮定した。ところで、超弦理論によるとバルクにはスカラー場があるほうがより自然である。我々は低エネルギーにおける有効理論を求めるための新しい方法である微分展開法をこのより一般的な、バルクにスカラー場がある場合に拡張することに成功した。これにより、バルクにインフラトンがあるようなインフレーションモデルによる宇宙背景輻射の温度揺らぎの計算が可能となった。また、この方法をブラックホールが放射する重力波の計算へ応用することで有効的チューコルスキー方程式の導出にも成功した。この方程式を数値的に解くことでブラックホールが放射する重力波に対する余剰次元効果を知ることができる。これにより重力波観測による余剰次元の観測へも大きく前進したことになる。超弦理論は我々の世界を記述する究極の理論として、現在最も期待されている理論である。この理論は必然的に高次元の世界が存在することを予言している。従って、何らかのコンパクト化によって、我々の4次元世界と結びつかなければならない。このコンパクト化の機構として、ブレーン宇宙が自然なものであると超弦理論によって示唆されている。従って、ブレーン宇宙を宇宙背景輻射の観測によって検証することは今最も重要である。しかし、ブレーン宇宙における揺らぎの進化は自明でない背景場と時間変化する境界条件のために解くことが非常に困難であった。そこで、我々はまず、低エネルギーにおける揺らぎの進化を扱う方法として微分展開法を開発した。この方法を使うことで宇宙背景輻射の温度揺らぎに対する余剰次元効果を計算することが可能となった。さらにこの微分展開法と理論の共形不変性との関係に着目し、Kaluza-Klein補正を取り入れた有効作用の導出に成功した。また、有効理論を構築する非線形のアプローチとして、モジュライ近似と呼ばれる近似法があるが、我々の微分展開法との関係を明確にし、微分展開法の利点を明確にした。この近似法は弦理論に基づいたインフレーションモデルに用いられており、その正当性を支持する結果を与えた。また、ブレーンモデル全体の包括的なレヴュー論文を発表した。ブレーンモデルは余剰次元が1のものがよく研究されているが、我々は余剰次元が2のブレーンモデルの定式化を行い、ブレーンの厚みがダークマターとして振舞う可能性を指摘した。ストリング理論は,全ての物質とその相互作用を統一する究極の理論として最も有力な理論であると信じられている。一方、WMAPによる宇宙背景輻射の観測が示しているように、インフレーション理論は現象論として大きな成功を収めている。そして、いまや、ストリング理論に基づいた宇宙論、弦理論的宇宙論が語られる時代を迎えつつあり、インフレーションの幾何学的構築が大きな課題となっている。我々の目的は、弦理論に基づいた初期宇宙の現実的なモデルの構築へ向けてまず第一歩を踏み出すことにある。我々は、現段階での研究を弦理論、相対論、宇宙論の3つの立場からの研究として分類する。それぞれのキーになるアイデアはフラックス、ブレーンワールド、ストリングガスである。どの場合にも主要な課題はインフレーション中における内部空間の安定性にある。我々は、これら3つのアプローチの長所と短所を整理し、弦理論と相対論からのアプローチの長所を組み合わせた新しいインフレーションモデル、余剰次元(バルク)中のフラックスによるブレーンワールドインフレーションモデルを提唱した。このモデルでは、インフレーションは2枚のブレーン間に存在するフラックスによって引き起こされる。
KAKENHI-PROJECT-03J05476
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J05476
背景重力波に対する余剰次元効果と観測可能性
インフレーションはブレーンの衝突で終了し、運動エネルギーが熱として解放されることで再加熱が起こり、ビッグバン宇宙が始まる。我々は、このモデルが予言する宇宙の曲率ゆらぎや重力波ゆらぎを計算し、それらの観測との整合性を持つことを示した。
KAKENHI-PROJECT-03J05476
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The Expansion of Territorialism
国家の基本概念である「領土」は、グローバル化の進展により重要性は低下すると予想されてきたが、テロリズムや領土紛争などに見られるように逆に存在感を増し、概念的見直しが進んでいる。本研究は、初期に成立した非西洋における西欧型近代国家である日本の同概念の受容と発展の歴史を、国内史の先行研究と英語圏の先端研究の成果をつなぎ合わせ、近代国際社会の世界的展開における日本の関与をグローバル概念史の視点から再検証する。発表は英語で行い、国際的な議論への参加を目指す。これにより、国境が希薄化する一方、国境紛争が激化する現代的矛盾への示唆を探るとともに、社会科学の欧米中心主義、国家中心主義の乗り越えを模索する。国家の基本概念である「領土」は、グローバル化の進展により重要性は低下すると予想されてきたが、テロリズムや領土紛争などに見られるように逆に存在感を増し、概念的見直しが進んでいる。本研究は、初期に成立した非西洋における西欧型近代国家である日本の同概念の受容と発展の歴史を、国内史の先行研究と英語圏の先端研究の成果をつなぎ合わせ、近代国際社会の世界的展開における日本の関与をグローバル概念史の視点から再検証する。発表は英語で行い、国際的な議論への参加を目指す。これにより、国境が希薄化する一方、国境紛争が激化する現代的矛盾への示唆を探るとともに、社会科学の欧米中心主義、国家中心主義の乗り越えを模索する。
KAKENHI-PROJECT-19K13623
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13623
外部導体系プラズマ閉込めの最適化に関する研究
本研究では近年高温プラズマの安定な閉じ込めを実証しつつあり、かつ定常運転可能な外部導体系トーラス閉じ込め研究に的をしぼり、定常核融合炉プラズマ実現のために必要な閉じ込め配位の策定、及びそのために必要かつ未解明の分野の実験的解明をはかる事を目的とする。昭和61年度は以下のような研究成果を得た。【I】)外部導体系(ヘリカル型)トーラスによるプラズマ閉込めについて(1)磁気流体特性(平衡・安定性)(2)輸送現象,プラズマ閉込め、(3)真空磁場特性、(4)核反応プラズマの諸特性等の総合的観点から実験データ,理論解析の両面に亘って検討を進め最適化に関する策定方法,評価関数の選定作業を得た。【II】)個々の課題については以下のようになる。(1)磁気流体平衡・安定のコード(平均化法HーAPPOLO,HーERATO,3次元平衡コード)を完成し、ヘリカル磁場配位のパラメタサーベイを行い、磁気流体特性,真空磁場配位からの良好なパラメタ領域を見出すことができた。(2)輸送については粒子軌道解析,磁気座標によるモンテカルロ計算,輸送コードを完成し、磁場配位と粒子閉込め,輸送の関連を明かにした。これを用いた最適化作業は次年度になる。(3)実験研究としてはミラー磁場中プラズマの電位を端電極によって制御し電場とプラズマの輸送の関係の基礎現象を解明するとともに大型装置でのビームプローブによる計測法の開発を行っている。(4)ダイバータ・周辺プラズマについては小型トカマクによるエルゴディック層の研究を進め、磁力線の性質とプラズマの振舞の解明を行うとともにビームプローブ法の開発を行っている。これも大型装置への適用を次年度に行いダイバータ・周辺プラズマの実験研究を進める予定である。本研究では近年高温プラズマの安定な閉じ込めを実証しつつあり、かつ定常運転可能な外部導体系トーラス閉じ込め研究に的をしぼり、定常核融合炉プラズマ実現のために必要な閉じ込め配位の策定、及びそのために必要かつ未解明の分野の実験的解明をはかる事を目的とする。昭和61年度は以下のような研究成果を得た。【I】)外部導体系(ヘリカル型)トーラスによるプラズマ閉込めについて(1)磁気流体特性(平衡・安定性)(2)輸送現象,プラズマ閉込め、(3)真空磁場特性、(4)核反応プラズマの諸特性等の総合的観点から実験データ,理論解析の両面に亘って検討を進め最適化に関する策定方法,評価関数の選定作業を得た。【II】)個々の課題については以下のようになる。(1)磁気流体平衡・安定のコード(平均化法HーAPPOLO,HーERATO,3次元平衡コード)を完成し、ヘリカル磁場配位のパラメタサーベイを行い、磁気流体特性,真空磁場配位からの良好なパラメタ領域を見出すことができた。(2)輸送については粒子軌道解析,磁気座標によるモンテカルロ計算,輸送コードを完成し、磁場配位と粒子閉込め,輸送の関連を明かにした。これを用いた最適化作業は次年度になる。(3)実験研究としてはミラー磁場中プラズマの電位を端電極によって制御し電場とプラズマの輸送の関係の基礎現象を解明するとともに大型装置でのビームプローブによる計測法の開発を行っている。(4)ダイバータ・周辺プラズマについては小型トカマクによるエルゴディック層の研究を進め、磁力線の性質とプラズマの振舞の解明を行うとともにビームプローブ法の開発を行っている。これも大型装置への適用を次年度に行いダイバータ・周辺プラズマの実験研究を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-61050030
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61050030
IT化時代における家族実践:世代間コミュニケーションの実態解明
本研究プロジェクトは,IT化のすすむ現代日本社会における異世代間コミュニケーションの実態解明を試みた.特に,IT技術の発達に示唆される変化のスピードと,習慣や経験知にもとづくコミュニケーション実践の定着の相関関係を明らかにした.主に,インターネットやコンピュータ使用に関する経験知や,期待に異世代間に差異と分断の可能性があることは,会話のなかでコミュニケーション齟齬として認識される.こうした問題に直面したとき,話者は言語的・非言語的要素を活用して,様々な方法で問題解決に志向し,調整していることが分かった.本研究は,メディア使用現場における,日本人家族の世代間コミュニケーション実態を解明し,学際的アプローチを用いて,家族コミュニケーション研究に新しい方法論を提案することを目的とする.初年度である平成27年度の目標はメディア使用現場における,家族内世代間コミュニケーションの実態を解明するために,相互連関性の高いデータ収集手法および分析枠組みを設定する研究課題を遂行することであった.そのため,研究会に参加したり,みずから研究会を実施し,多角的アプローチを統合するための議論の機会を設けた.年初におこなった分担者を交えての会議では,それぞれ担当コミュニティ(日本・アメリカ・イギリス・ろう者など)における現状報告と,コミュニティを超えてどのように研究方法を統合していくか,課題を話あった.また,同意を得た研究参加者の引越しなどによる家族の都合により,新しく研究参加者を募る必要性が出た場合の対応についても議論した.さらに,研究代表者・分担者それぞれが,7月にベルギーアントワープで行われた国際語用論学会にて発表をおこなった.語用論学会では,研究代表者,分担者がそれぞれ発表し,自らの専門分野を発表し,お互いの領域からの知見を学習する良い機会となった.また,家族コミュニケーションを分析する研究グループ外のメンバーをあつめて研究会を開催し,データ収集後の分析の段階をも視野にいれた議論をおこなった.これらの結果を踏まえ,研究代表者は日本語論文1本,英語論文1本を投稿済みである.平成27年度春頃に妊娠が分かり、注意深い経過観察が必要となり入院を余儀なくされた。その結果、平成27年度中に予定していたインタビュー実施の遂行とのデータ収集ができなくなり,やや遅れを取っていると言わざるを得ない。しかし、内外の研究発表の研究会や学会,論文執筆を通じ、これまで集めたデータのみをもとにして、分析と次年度からのデータ収集・分析の方法論の画一化をはかることができた。本研究は,メディア使用現場における,日本人家族の世代間コミュニケーション実態を解明し,学際的アプローチを用いて,家族コミュニケーション研究に新しい方法論を提案することを目的とする.2年目は,メディアの意識や世代間差を調査するために談話実験を行った.初年度より継続中のコミュニケーション実践データを分析し,ミーティング,学会発表などによって得られた知見を元に,実験をデザインした.IT機器を利用する日常的な場面を設定し,その中から重要な状況を静的に抽出し,イラスト画家に依頼してオリジナルのイラストをデザイン,作成した.合計8枚のイラストをラミネート加工し,関西,関東の大学で大学生を被験者として実験を実施した.合計44名,主に20代の男女を対象とした(関東地区は30代から40代).2人1組の同性同年代ペアにストーリーを作成してもらった.ストーリーに正解はなく,カードは男女が通話する場面,LINEする場面,外出先で予期せぬことが起きる場面など,IT機器の介在する日常的な状況を含んだものである.実験は別室で同時に2組行い,作成後は2組を1室に集め,研究者同席の上,ストーリーの報告と研究者主導の話し合いを行った.実験の開始にビデオを回し始め,すべてが終了するまで可能な限り録画を継続した.実際のストーリー作成場面や半構造化インタビュー場面のみならず,実験参加者同士の余談,研究者をまじえての雑談などすべての行程を分析の対象とする.こうすることで実験環境のデータ,自然発話のデータを両方とらえることが出来た.また,2人1組と4人による,話者の人数設定が異なる設定でデータを収集したことで,対面場面と多人数場面の会話の参与構造を基本的に理解するという意味でも有益なデータ収集を行うことが出来た.昨年度の妊娠・出産による遅れを挽回しながらのスタートであったが,おおむね順調に進展している.また,新生児を抱えていたため,突然の体調不良に対応し,データ収集の日程を再調整せざるをえないこともあったが,44名(パイロットスタディを含めると48名)にイラストを使用した談話実験を予定通り実施することが出来た.本研究は,1メディア使用現場における,日本人家族の世代間コミュニケーション実態を解明し,2学際的アプローチを用いて,家族コミュニケーション研究に新しい方法論を提案することを目的とする.最終年度にあたる本年度は,初年度より継続中の家族コミュニケーション実践データの分析,第2年度に実施した談話実験データと,インタビューデータを整備・分析し,研究代表者,分担者とともに複数回にわたるミーティングを実施し,分析の進捗状況を定期的に報告した.また,これらのミーティングで得られた知見をもとに,国内外の学会発表,論文執筆などの研究活動を数々行ってきた.これらの研究活動を通じて,様々な発見があった.まず,メディアの経験値,所属する年代による社会的な期待の違いなど,会話に参与するもの同士がもつ多角的な違いが,話をすりあわせるといった行為のなかで解消されていることが明らかになった.また,これを「ビッグ・ストーリー確認作業」とよんだ.ビッグ・ストーリー確認作業は,社会学のみならず,言語学,相互行為研究におけるナラティブ研究へも示唆をあたえる発見であった.
KAKENHI-PROJECT-15K03907
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IT化時代における家族実践:世代間コミュニケーションの実態解明
また,参与者間が多様な「異なり」を認識するプロセスは,言語的資源や身体動作などの非言語的資源をもちいて表出される.異世代のメディア経験の違い,またそれらをコミュニケーションのなかで言語化するプロセスに特化した本研究プロジェクトであったが,マクロな視点でみると,人間が社会行為をつむぐうえで,どのように認識や解釈の差異を調整・交渉したらよいのかを示唆する基礎的研究基盤を構築したといえる.本研究プロジェクトは,IT化のすすむ現代日本社会における異世代間コミュニケーションの実態解明を試みた.特に,IT技術の発達に示唆される変化のスピードと,習慣や経験知にもとづくコミュニケーション実践の定着の相関関係を明らかにした.主に,インターネットやコンピュータ使用に関する経験知や,期待に異世代間に差異と分断の可能性があることは,会話のなかでコミュニケーション齟齬として認識される.こうした問題に直面したとき,話者は言語的・非言語的要素を活用して,様々な方法で問題解決に志向し,調整していることが分かった.前述したように,妊娠・出産のために平成28年度は当初の研究計画を半年ほどのばしながら進める.すでにインタビュー実施のための準備段階が具体的にすすんでおり,本研究プロジェクト参加予定家族に,IT化に関するインタビューを実施しビデオ録画する計画をすすめている.会話実践課題にむけて研究参加者の選定も同時にすすめる.フィールドワークにおける人間関係の構築を丁寧におこない,研究対象者と信頼関係を築きながら実践課題の実施にむけて計画をすすめる.今後は,現在続行中のデータ整備,分析,また異なる世代へのデータ収集を計画している.すでに実験参加者へのアプローチ,日程調整を始めている.また,分析結果を発表するための機会を設ける.すでに国内学会発表におけるワークショップ,国際学会発表における二つのパネルセッションを準備中である.社会言語学平成27年度春頃に妊娠が分かり、注意深い経過観察が必要となり入院を余儀なくされた。その結果、平成27年度中に予定していたインタビュー実施の遂行とのデータ収集ができなくなり,やや遅れを取っていると言わざるを得ない。しかし、内外の研究発表の研究会や学会,論文執筆を通じ、これまで集めたデータのみをもとにして、分析と次年度からのデータ収集・分析の方法論の画一化をはかることができた。今年度はデータ収集のための被験者集めに力を入れた.その結果,予想以上に多くのデータ収集の可能性を広げ実施することが出来たが同時に,データ収集の場所変更や,急な体調不良などにより,やむを得ず実験参加をとりやめなければならないことがあった.平成28年度は上記の理由よりインタビューの実施から行う.すでに,準備段階がスタートし,6月よりデータ収集を開始する.インタビューにかかる収録のための旅費や機材購入(ビデオカメラ,ボイスレコーダー,収録データ保存のためのハードディスク),研究協力者への謝金,収集データ管理のためのソフトウエア,コンピュータ購入に使用する.
KAKENHI-PROJECT-15K03907
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狭指向性と全方位性を両立する指向性スピーカアレーの研究
本研究課題では、前後左右上下あらゆる方向に対して指向性を自由に再現可能でかつ、狭指向性を持つスピーカアレーの検討を行った。具体的には、正多面体で模擬可能な球面スピーカアレーに着目し、球面調和関数展開領域において最小分散ビームフォーマの原理に基づいてフィルタ設計(球面上で音の大きさと位相を制御)することで、狭指向性と指向性の向きの容易な回転の両立を実現した。さらに、ユーザがジャイロセンサを回転させ、その回転角度に合わせて指向性が回転するシステムを構築し、水平方向内ではあるが、壁からの反射等を利用して音の前後感を含めた音像定位が可能であることを明らかにした。本研究課題では,360度あらゆる方向に対する指向性の再現と狭指向性を両立するスピーカアレー技術の確立を,理論的な側面のみならず,実際のスピーカアレーを構築しながら進めている。平成25年度においては,360度あらゆる方向に音の指向性を向けることが可能な球面調和関数展開に着目し,これを球面アレーおよびデカルト座標系に配置した多重極スピーカアレーによって構築することを目指した。性能評価を行うにあたり,まず比較対象となる球面調和関数展開に基づく球面アレーの指向性がどの程度実環境で合成できるのかを確かめるため,正12面体のスピーカアレーの構築およびその指向性合成実験を行った。実験は無響室で行い,正12面体スピーカアレーの周囲512か所における音圧測定を行った。その結果,概ね3kHz以下であれば2次以下の球面調和関数が実際のスピーカアレーを用いても再現可能であることを示すことができた。本研究成果については平成26年3月に開催された日本音響学会にて発表を行った。本年度の当初の目標は,多重極スピーカアレーによる実再現実験までであったが,まずは球面スピーカアレーを用いた実験を行い,再現性能を明らかにすることができた。一方,多重極スピーカアレーの構築においては,基本的な形状であるエンドファイアアレーの構築と測定までを行った。本結果の詳細な解析は平成26年度に行う予定であるが,多重極スピーカアレーにおいては,スピーカの配置条件からスピーカ素子を裸で用いているため,再現周波数帯域に制限があることが分かった。平成26年度においては,スピーカ筐体についての工夫や,次数の少ない多重極スピーカでの基本性の評価も行う予定である。一方,本研究課題を遂行するにあたり球面調和関数展開を基礎とするエリア制御をマイクロホンアレーに応用することを考案し,本件については国内会議発表,国際会議投稿,国内論文投稿を行った。本研究課題では,あらゆる方向に対する指向性の再現と狭指向性を両立するスピーカアレー技術の確立を,理論的な側面のみならず,実際のスピーカアレーを構築しながら進めている。平成25年度は,球面調和関数展開に着目し,この展開方式に基づく球面スピーカアレーの指向性がどの程度実環境で合成できるのかを確かめるため,市販の正12面体のスピーカアレーを改良し,その指向性合成実験を行った。平成26年度は,直線アレーによる多重極スピーカについては,概ね指向性が合成できることが分かったことと,3Dプリンタにより正多面体のスピーカアレーが構築できる可能性があることが分かったため,球面スピーカアレーの研究に軸足を移して,指向性合成のアルゴリズム構築と実スピーカアレー実験を推進した。その結果,アレー信号処理分野において通常の座標系,例えばデカルト座標系において研究が進められてきた最小分散ビームフォーマのアルゴリズムを,球面調和関数領域におけるスピーカアレーフィルタ設計に応用することで,球面調和関数領域の係数のまま鋭い指向性を持つフィルタ設計を行えることを明らかにした。また,球面調和関数領域のフィルタ係数から,同一の指向性パターンを維持したまま,ビームの主軸を上下左右に自由に回転することができることも明らかにした。これらの結果を正12面体スピーカアレーへ適用し,実験において指向性再生を確認できたので,平成27年3月の電子情報通信学会応用音響研究会および日本音響学会平成27年度秋季研究発表会で発表を行った。また,3Dプリンタを利用して,正20面体のスピーカアレーの作成にも取り組んだ。スピーカアレーの作成においては,筐体の材質,厚み,組み方において工夫が必要であることが分かり,スピーカ数の多いスピーカアレーについての実際の構築と実験は平成27年度に行うこととした。本研究課題では,あらゆる方向に対する指向性の再現と狭指向性を両立するスピーカアレー技術の確立を,理論的な側面のみならず,実際のスピーカアレーを構築しながら進めてきた。平成25年度は,球面調和関数展開に着目し,この展開方式に基づく球面スピーカアレーの指向性がどの程度実環境で合成できるのかを確かめるため,市販の正12面体のスピーカアレーを改良し,その指向性合成実験を行った。平成26年度は,直線アレーによる多重極スピーカについては,概ね指向性が合成できることが分かったことと,3Dプリンタにより正多面体のスピーカアレーが構築できる可能性があることが分かったため,球面スピーカアレーの研究に軸足を移して,指向性合成のアルゴリズム構築と実スピーカアレー実験を推進した。
KAKENHI-PROJECT-25330187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330187
狭指向性と全方位性を両立する指向性スピーカアレーの研究
その結果,アレー信号処理分野において通常の座標系,例えばデカルト座標系において研究が進められてきた最小分散ビームフォーマのアルゴリズムを,球面調和関数領域におけるスピーカアレーフィルタ設計に応用することで,球面調和関数領域の係数のまま鋭い指向性を持つフィルタ設計を行えることを明らかにした。また,球面調和関数領域のフィルタ係数から,同一の指向性パターンを維持したまま,ビームの主軸を上下左右に自由に回転することができることも明らかにした。平成27年度においては,正12面体のみならず正20面体において球面調和関数の次数を上げたビーム形成に取り組んだ。また,正12面体スピーカアレーを用いて,ユーザが操作するジャイロセンサに合わせて指向性を回転させることにより,壁からの反射等を利用して水平方向内ではあるが,音の前後感を含めて音像定位が可能であることを明らかにした。本研究課題では、前後左右上下あらゆる方向に対して指向性を自由に再現可能でかつ、狭指向性を持つスピーカアレーの検討を行った。具体的には、正多面体で模擬可能な球面スピーカアレーに着目し、球面調和関数展開領域において最小分散ビームフォーマの原理に基づいてフィルタ設計(球面上で音の大きさと位相を制御)することで、狭指向性と指向性の向きの容易な回転の両立を実現した。さらに、ユーザがジャイロセンサを回転させ、その回転角度に合わせて指向性が回転するシステムを構築し、水平方向内ではあるが、壁からの反射等を利用して音の前後感を含めた音像定位が可能であることを明らかにした。当初の目標では,球面配置よりもデカルト座標系にスピーカ素子を配置した方が容易な設計が可能と考え,多重極アレーの検討を行っていたが,3Dプリンタにより球面スピーカアレーあるいは正多面体アレーが容易に設計,作成できる可能性が出てきたため,正多面体のスピーカアレーの検討を推進してきた。その結果,球面スピーカアレーにおいて,球面調和関数領域でスピーカアレーフィルタを設計すると,指向性の回転が容易に行えることが分かった。また,球面調和関数領域においても,フィルタ係数をスピーカごとではなく,球面調和関数展開された係数とし,また,目標となる指向特性も球面調和関数展開した特性としながらも,拘束付の最小分散ビームフォーマの理論を適用可能であることを示し,鋭い指向性が合成可能であることを示すことができた。本件については,平成27年3月の電子情報通信学会応用音響研究会および日本音響学会春季研究発表会で発表を行った。一方,本研究課題を遂行するにあたり球面調和関数展開を基礎とするエリア制御をマイクロホンアレーに応用することを考案し,本件については平成26年度に開催されたIEEE主催の国際会議にて発表し,さらに国内論文にも投稿し,掲載された。音響信号処理全方位に対して狭指向性を実現するでスピーカアレーを構築するにあたり,3Dプリンタにより球面スピーカアレーあるいは正多面体アレーが容易に設計,作成できる可能性が出てきたため,デカルト座標系での直線配置にこだわらず,球面スピーカアレーあるいは正多面体スピーカアレーも視野に入れた検討を推進する。特に,正多面体スピーカアレーについては,正12面体よりも面数の多い正20面体,また将来的には疑似的な正多面体であるサッカーボール構造の多面体スピーカへの発展も視野に入れた検討を行う。これにより,指向性の鋭さや,低周波数領域での指向性合成など,楽音再生や立体音響など応用についての基礎的な検討を推進したい。また,指向性合成のアルゴリズムについても従来のマイクロホンアレーやアンテナ分野で培われてきたものを球面調和関数領域に適合させるなど検討を行いたい。
KAKENHI-PROJECT-25330187
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25330187
制御性T細胞によるB細胞分化の抑制とウイルスの再活性化誘導の機序
薬剤性過敏症症候群(DIHS)とStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の血中の制御性T細胞(Treg)の量と機能を解析し、DIHSでは発症初期のTregの増加がヘルペスウイルスの再活性化をもたらしている可能性が示唆され、一方、SJS/TENではTregの機能低下がエフェクターT細胞の過度の活性化をきたし、このために表皮の傷害を引き起こしている可能性が示唆された。薬剤性過敏症症候群(DIHS)とStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の血中の制御性T細胞(Treg)の量と機能を解析し、DIHSでは発症初期のTregの増加がヘルペスウイルスの再活性化をもたらしている可能性が示唆され、一方、SJS/TENではTregの機能低下がエフェクターT細胞の過度の活性化をきたし、このために表皮の傷害を引き起こしている可能性が示唆された。1.本年度の研究では薬剤性過敏症症候群(DIHS)の経過において、CD25より機能と関連の深いFoxP3+細胞として検出される制御性T細胞がどのように変動するのかを検討した。この結果、DIHSの急性期において採取された末梢血において制御性T細胞は著明に増加していることが判明し、一方、回復期に採取された末梢血では制御性T細胞は機能的に傷害されていることが明らかになった。このような、結果は通常経験される薬打疹においては認められない所見であった。2.DIHSの患者から得られた病変部の皮膚組織においてFoxP3+制御性T細胞の検索を施行した。この結果、DIHS病変部の真皮において多数のFoxP3+制御性T細胞の浸潤が認められた。この分布密度は他の病型、すなわち、Stevens-Johnson症候群や中毒性表皮壊死症の陽性細胞の分布密度と比較して有意に増加していた。さらに、FoxP3+制御性T細胞のマーカーの検索においてこの細胞はCCR4,CLA,ESL,CXCR3などが陽性で、CCR6やCCR7は陰性であることが判明し、皮膚向性を有する皮膚に浸潤しやすい細胞であることが明らかになった。3.これらの所見より、DIHSにおいて特異的に認められる制御性T細胞の像加がウイルス再活性化に関与する可能性が測され、この細胞は皮膚へ浸潤するポテンシャルを有していることが示唆された。4.今後はFoxP3+制御性T細胞がB細胞やNK細胞に与える影響を検討していく必要がある。1.重症薬疹である薬剤性過敏症症候群(DIHS)とStevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN)の発症初期の末梢血中の制御性T細胞(Treg)の量と機能を解析した。2.DIHSの急性期にはTregは顕著に増加しており、T細胞の増殖やサイトカイン産生を抑制する機能や、皮膚への遊走に必要な接着分子の発現は健常人と同様に保持されていた。一方、SJS/TENではTregの量は健常人のそれと比較して有意な差はなかったが、Tregの機能が著明に低下していた。3.DIHSの発症初期では機能的に正常な機能を有するTregが増加することが、B細胞の減少やNK細胞の減少をもたらし、潜伏しているヘルペスウイルスの再活性化の一因になっている可能性がある。4.SJS/TENの発症初期のTregの機能的な低化は薬剤特異的エフェクターT細胞の過度の活性化をまねき、表皮の壊死性の変化をもたらしている可能性がある。5.DIHSとSJS/TENの回復後のTregの量、機能の解析結果ではDIHSにおいて初期に増加していたTregは回復後には量的に正常に復していたが、機能傷害が生じていた。一方、SJS/TENでは発症初期に低化していたTregの機能は臨床症状の回復期には正常の機能に復していた。6.このようなDIHSの回復後のTregの機能傷害は後遺症として認められる自己免疫疾患の発現に関与している可能性がある。7.重症薬疹におけるTregの解析結果はDIHS、SJS/TENの発症機序の解明に貢献するとともに、適切な治療の選択に繋がり、臨床的にも有用な結果もたらすと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-19591326
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19591326
DNAメチル化酵素・脱メチル化酵素の肝特異的ノックアウトマウスの表現型解析
肝細胞特異的DNMT3BKOマウスを経時的に解剖し肝臓の組織学的評価を行ったところ、肝組織は正常な発生及び発育を呈したが、チオアセトアミド負荷による慢性炎症刺激下においては、DNMT3B野生型のコントロールマウスと比較して強い炎症細胞浸潤を認めた。また、チオアセトアミド負荷が長期(30週)に及ぶと、コントロールマウスには見られない著明な肝線維化及び発癌が確認された。発生した腫瘍はすべて、病理学的には高分化型の肝細胞癌であり、ヒトにおいて慢性肝炎を背景として発症する腫瘍に合致する所見であった。我々はこれを、肝臓におけるDNMT3Bの役割を示唆する重要な表現型と考え、現在サンプル数を増やすために実験を継続中である。また、こうした表現型を引き起こす機序を解明するため、肝細胞特異的DNMT3B KOマウス及びコントロールマウスの肝組織よりRNAを抽出し、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を現在行っている。発現解析はもちろんのこと、DNMT3Bによるgenebodyのメチル化が関与する可能性が報告されているalternative transcription start sitesについても近日中に解析予定である。なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。DNA脱メチル化酵素TETについては動物モデルの確立ができていない状況であるが、DNAメチル化酵素DNMT3Bについては肝特異的ノックアウトマウスモデルの作成に成功し、慢性炎症刺激下で線維化及び発癌が増加するという表現型が得られ、現在トランスクリプトーム解析などによりこの機序を解明に向けて研究を進めているところである。まずマウスモデルの表現型を得ることが申請時点での第1年時の目標であったため、概ね順調と自己評価する。DNMT3Bノックアウトにより生じているDNAメチル化パターンの変化を解析するため、これらのマウス組織から抽出したDNAを用いて、バイサルファイトシークエンシングなどの手法により網羅的にDNAメチル化状態を解析することを計画中である。なお、チオアセトアミド投与下で発癌した肝細胞特異的DNMT3BKOマウスのサンプル数が十分増えた時点で、腫瘍部のトランスクリプトーム解析及びメチル化解析も行っていく。これらの実験により、DNAメチル化の異常が慢性炎症を背景とする発癌に寄与する機序を明らかとしたい。なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。肝細胞特異的DNMT3BKOマウスを経時的に解剖し肝臓の組織学的評価を行ったところ、肝組織は正常な発生及び発育を呈したが、チオアセトアミド負荷による慢性炎症刺激下においては、DNMT3B野生型のコントロールマウスと比較して強い炎症細胞浸潤を認めた。また、チオアセトアミド負荷が長期(30週)に及ぶと、コントロールマウスには見られない著明な肝線維化及び発癌が確認された。発生した腫瘍はすべて、病理学的には高分化型の肝細胞癌であり、ヒトにおいて慢性肝炎を背景として発症する腫瘍に合致する所見であった。我々はこれを、肝臓におけるDNMT3Bの役割を示唆する重要な表現型と考え、現在サンプル数を増やすために実験を継続中である。また、こうした表現型を引き起こす機序を解明するため、肝細胞特異的DNMT3B KOマウス及びコントロールマウスの肝組織よりRNAを抽出し、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を現在行っている。発現解析はもちろんのこと、DNMT3Bによるgenebodyのメチル化が関与する可能性が報告されているalternative transcription start sitesについても近日中に解析予定である。なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。DNA脱メチル化酵素TETについては動物モデルの確立ができていない状況であるが、DNAメチル化酵素DNMT3Bについては肝特異的ノックアウトマウスモデルの作成に成功し、慢性炎症刺激下で線維化及び発癌が増加するという表現型が得られ、現在トランスクリプトーム解析などによりこの機序を解明に向けて研究を進めているところである。まずマウスモデルの表現型を得ることが申請時点での第1年時の目標であったため、概ね順調と自己評価する。DNMT3Bノックアウトにより生じているDNAメチル化パターンの変化を解析するため、これらのマウス組織から抽出したDNAを用いて、バイサルファイトシークエンシングなどの手法により網羅的にDNAメチル化状態を解析することを計画中である。なお、チオアセトアミド投与下で発癌した肝細胞特異的DNMT3BKOマウスのサンプル数が十分増えた時点で、腫瘍部のトランスクリプトーム解析及びメチル化解析も行っていく。これらの実験により、DNAメチル化の異常が慢性炎症を背景とする発癌に寄与する機序を明らかとしたい。
KAKENHI-PROJECT-18J14635
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14635
DNAメチル化酵素・脱メチル化酵素の肝特異的ノックアウトマウスの表現型解析
なお、肝細胞特異的TET1 KOマウス、TET2 KOマウス、TET1/TET2 KOマウスについては、EpCAM-CreERT2マウスとの交配により作成したが、肝臓においてTETの十分なノックアウトが得られる実験系が現時点で確立できておらず、別の実験系で固形腫瘍におけるTETの機能を解析できないか探索中である。
KAKENHI-PROJECT-18J14635
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J14635
災害時における高齢者の援助体制づくりと地域防災力との関係に関する研究
本研究は、高齢社会を迎え、災害時における高齢者のための援助体制づくりが重要であり、そのためには「地域防災力」の向上が不可避であるとの視点より展開した研究であり、結果を以下のように要約できる。第一に、援助体制のモデルを「常設型」「転用型」「拡張型」「創発型」とし、全国の先進地では情報システムづくりが「常設型」を中心に展開されており、転用・拡張・創発へ移行するための条件づくりが重要であることを指摘している。第二に、地域防災力のキィパ-ソンとして「民生児童委員」を取り上げ、現状の役割と地域活動形態の欠損状態を明らかにした。その結果、災害時における寝たきり高齢者の搬出や救護訓練、近隣との話し合いが日常的に行われることが必要であることが確認された。第三に、高齢者の状態像からみた災害時に機能する人・物関係、地域防災力の欠如状態を「寝たきり高齢者」「一人暮らし高齢者」の要援護高齢者を対象に調査・分析した。その結果、「寝たきり高齢者」は援助を同居家族に約8割期待し、「近所の人」「知人・友人」への期待は低い。しかし、昼間、家族の就労形態によっては災害時・緊急時に一人暮らしになる高齢者や介護能力が極端に減少する高齢者も存在し、「常設型」から転用・拡張型へと転開できる近所の人・民生児童委員を中心とした地域的な安全確認システムづくりが必要であること、また「一人暮らし高齢者」では、災害時の援助を期待する人に「近所の人」が約3割、「別居の家族・親戚」への期待が約78割占め、緊急時や即応時には機能しない人的関係に依存している姿が表われている。以上から、「寝たきり高齢者」では家族・地域住民の昼間・夜間における生活構造から対応できる家族・地域条件の検討、「一人暮らし高齢者」では、近隣住民を中心とした安全確認システムの援助体制づくりが重要であることが明らかになった。本研究は、高齢社会を迎え、災害時における高齢者のための援助体制づくりが重要であり、そのためには「地域防災力」の向上が不可避であるとの視点より展開した研究であり、結果を以下のように要約できる。第一に、援助体制のモデルを「常設型」「転用型」「拡張型」「創発型」とし、全国の先進地では情報システムづくりが「常設型」を中心に展開されており、転用・拡張・創発へ移行するための条件づくりが重要であることを指摘している。第二に、地域防災力のキィパ-ソンとして「民生児童委員」を取り上げ、現状の役割と地域活動形態の欠損状態を明らかにした。その結果、災害時における寝たきり高齢者の搬出や救護訓練、近隣との話し合いが日常的に行われることが必要であることが確認された。第三に、高齢者の状態像からみた災害時に機能する人・物関係、地域防災力の欠如状態を「寝たきり高齢者」「一人暮らし高齢者」の要援護高齢者を対象に調査・分析した。その結果、「寝たきり高齢者」は援助を同居家族に約8割期待し、「近所の人」「知人・友人」への期待は低い。しかし、昼間、家族の就労形態によっては災害時・緊急時に一人暮らしになる高齢者や介護能力が極端に減少する高齢者も存在し、「常設型」から転用・拡張型へと転開できる近所の人・民生児童委員を中心とした地域的な安全確認システムづくりが必要であること、また「一人暮らし高齢者」では、災害時の援助を期待する人に「近所の人」が約3割、「別居の家族・親戚」への期待が約78割占め、緊急時や即応時には機能しない人的関係に依存している姿が表われている。以上から、「寝たきり高齢者」では家族・地域住民の昼間・夜間における生活構造から対応できる家族・地域条件の検討、「一人暮らし高齢者」では、近隣住民を中心とした安全確認システムの援助体制づくりが重要であることが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-02201205
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02201205
ルーズホール設置型ローラー支承の3次元動的特性の解明と保有耐震安全性の評価
RC造架構と鉄骨造屋根で構成される体育館において,東日本大震災や熊本地震でコンクリート落下被害が見られた.これらの被害に関しては,屋根のベースプレートとRC架構上部のモルタル間の摩擦力が地震下でどのように作用しているのか,影響があると考えられる.屋根の定着部は,一般的に露出柱脚と同様に設計されるが,ベースプレートとモルタル間に働く垂直荷重は,露出柱脚よりもかなり小さい.既往の研究では.露出柱脚の条件下において,黒皮付き鋼板とモルタル間の動摩擦係数の速度依存性が明らかとなったが,屋根のベースプレートとRC架構上部のモルタル間でも同様の動摩擦係数の速度依存性が生じるか不明である.そこで今年度は,既往の研究の露出柱脚の実験を基に,鋼板とモルタル間の摩擦係数に関する振動実験を行う.実験パラメータは鋼板の表面処理(黒皮,赤錆面,ラッカー塗装面),振動の周波数,速度を設定した.また,地震等により鉄骨屋根に面外変形や曲げモーメントが生じた場合,その下部のベースプレートがモルタルに対して傾きが生じて摩擦係数が小さくなることが考えられる.よって上記の各表面処理において,鋼板の傾きを変えた場合の検討も行った.実験結果より下記のことが示された.(1)すべり速度ピーク値での,それぞれの動摩擦係数を以下に示す.黒皮付き鋼板では,0.2 0.25,赤錆付き鋼板では,0.250.3,ラッカー塗装した鋼板では,0.15 0.2であった.(2)黒皮付き鋼板の場合,すべりの最大速度が100 mm/s以下の場合は,速度依存性は弱く,最大速度が100mm/sを超え,速度の上昇を伴い線形的に摩擦抵抗が低下した.(3)黒皮付き鋼板の場合,ベースプレートに傾きがついた場合,傾きがない場合よりも摩擦係数が0.4以上となり,大きくなった.計画当初から今年度は鋼とモルタル間の動摩擦力を検討することを予定していた.振動台の容量ややや不足していたため,予想よりも小さい試験体となったことや,周波数や速度の設定が予定していたより低い範囲で実施せざるを得なかった.また,モルタルがやや強度の強いものであったため,既往の研究で実施していたような鋼板の表面凹凸による掘り起しなどの再現はできなかった.しかし,鉛直荷重が軽い場合でもある程度の速度依存性が発生していること,その限界値が露出柱脚とは異なる傾向にあること,ベースプレートに傾きが生じた場合の摩擦性状の違いを把握することができたため,おおむね順調であると判断する.2019年度は海外にて研修中であるため,定着部の載荷実験の実施に向けて有限要素解析および骨組解析を実施し,実験で予定している二方向載荷をどのように実施するのがよいか,二方向載荷による影響がどのように生じるのか,検討する.また主に有限要素解析により,今年度実施した鋼板とモルタル間の摩擦性状に関して,主にモルタル強度が低い場合の破壊も含めて検討する予定である.研究初年度である平成29年度は,ルーズホール設置型のローラー支承の水平二方向載荷実験を行うために,試験体の設計と製作,載荷履歴の検討を行った.RC柱の上部に鉄骨置き屋根が設置されている場合のルーズホール設置型ローラー支承について,実地震動を模擬した水平二方向繰り返し載荷実験を行うことで,より現実的な支承の力学的性状を把握することが期待される.試験体はRC躯体の上部を模擬したRC部分,立体トラスの節点を模擬したトラス節点部とそれに接合するベースプレート,RC部分とベースプレート間のベースモルタル,アンカーボルトから構成される.これらは地震でローラー支承に被害を生じた建物を参考に設計し,実際の1/2程度の規模とする.実験装置は,多軸載荷実験装置(最大振幅±500mm,最大載荷荷重±1000kN)を用いる.実験パラメーターは(1)ルーズホールと通常の正円孔,(2)入力方向(一方向,水平二方向),(3)ベースモルタル周囲の鋼板補強の有無の3つであり,これらを組み合わせて計4体の試験体を設定した.ルーズホールの大きさは既存建物の調査結果を参考に,正円孔の3倍程度とした.(1)により正円孔とルーズホールとの間での耐力・変形の違いを一方向載荷により把握し,(2)で稼動できるように設計された方向以外でローラー支承の挙動,ルーズホール側面とアンカーボルトの衝突による耐力上昇や破壊モードの変化を検討する.(3)は以前行った定着部の載荷実験で履歴特性に大きく違いを生じたパラメーターであり,ルーズホールを持たない定着部の挙動との比較を行うと同時に,これらの値の設定と(1)(2)のパラメーターとの相互関係を明らかにする.これらによって現実的な3次元地震動下でのローラー支承の力学的挙動が把握できる.また,水平二方向載荷は柱脚の水平二方向載荷実験を基にオービットを検討した.試験体4体および載荷治具はすでに完成し,載荷するための準備が進んでいる.平成30年度上期には載荷実験を実施する予定となっている.RC造架構と鉄骨造屋根で構成される体育館において,東日本大震災や熊本地震でコンクリート落下被害が見られた.これらの被害に関しては,屋根のベースプレートとRC架構
KAKENHI-PROJECT-17K06632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06632
ルーズホール設置型ローラー支承の3次元動的特性の解明と保有耐震安全性の評価
上部のモルタル間の摩擦力が地震下でどのように作用しているのか,影響があると考えられる.屋根の定着部は,一般的に露出柱脚と同様に設計されるが,ベースプレートとモルタル間に働く垂直荷重は,露出柱脚よりもかなり小さい.既往の研究では.露出柱脚の条件下において,黒皮付き鋼板とモルタル間の動摩擦係数の速度依存性が明らかとなったが,屋根のベースプレートとRC架構上部のモルタル間でも同様の動摩擦係数の速度依存性が生じるか不明である.そこで今年度は,既往の研究の露出柱脚の実験を基に,鋼板とモルタル間の摩擦係数に関する振動実験を行う.実験パラメータは鋼板の表面処理(黒皮,赤錆面,ラッカー塗装面),振動の周波数,速度を設定した.また,地震等により鉄骨屋根に面外変形や曲げモーメントが生じた場合,その下部のベースプレートがモルタルに対して傾きが生じて摩擦係数が小さくなることが考えられる.よって上記の各表面処理において,鋼板の傾きを変えた場合の検討も行った.実験結果より下記のことが示された.(1)すべり速度ピーク値での,それぞれの動摩擦係数を以下に示す.黒皮付き鋼板では,0.2 0.25,赤錆付き鋼板では,0.250.3,ラッカー塗装した鋼板では,0.15 0.2であった.(2)黒皮付き鋼板の場合,すべりの最大速度が100 mm/s以下の場合は,速度依存性は弱く,最大速度が100mm/sを超え,速度の上昇を伴い線形的に摩擦抵抗が低下した.(3)黒皮付き鋼板の場合,ベースプレートに傾きがついた場合,傾きがない場合よりも摩擦係数が0.4以上となり,大きくなった.計画当初から今年度は鋼とモルタル間の動摩擦力を検討することを予定していた.振動台の容量ややや不足していたため,予想よりも小さい試験体となったことや,周波数や速度の設定が予定していたより低い範囲で実施せざるを得なかった.また,モルタルがやや強度の強いものであったため,既往の研究で実施していたような鋼板の表面凹凸による掘り起しなどの再現はできなかった.しかし,鉛直荷重が軽い場合でもある程度の速度依存性が発生していること,その限界値が露出柱脚とは異なる傾向にあること,ベースプレートに傾きが生じた場合の摩擦性状の違いを把握することができたため,おおむね順調であると判断する.載荷実験を行ってその力学的性状や破壊モードを確認すると同時に,関連する実験を実施している研究者とも意見交換を行い,FEMによるモデル化とその校正を始める.また一方で,次の段階である鋼とモルタルの動的摩擦実験についての既往研究の分析や試験体製作,実験の実施についても進めていく.2019年度は海外にて研修中であるため,定着部の載荷実験の実施に向けて有限要素解析および骨組解析を実施し,実験で予定している二方向載荷をどのように実施するのがよいか,二方向載荷による影響がどのように生じるのか,検討する.また主に有限要素解析により,今年度実施した鋼板とモルタル間の摩擦性状に関して,主にモルタル強度が低い場合の破壊も含めて検討する予定である.次年度使用額が生じた理由は当該年度に実施した摩擦係数用の振動実験が予定より小規模であったため,予算が余ったことが主な原因である.振動台の使用スケジュールからして試験体を後から追加することは厳しい状況であったことと,当初予定していたパラメータは一通り実験できたことから,次年度に繰り越すことにした.また,翌年度に使用する解析用のPCも購入したことにより,次年度は解析による分析と,定着部載荷実験の追加試験体を検討する予定である.
KAKENHI-PROJECT-17K06632
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K06632
内耳障害におけるストレス関連遺伝子の発現とその制御機構に関する研究
細胞内外における種々の酸化ストレスに対して応答する一連のカスケードを構成する分子群の中で、hypoxia-inducible factor (HIF-1)が、多くの細胞および組織で働くことが明らかになってきている。また、細胞内のHIF-1の活性をコントロールする分子としてRedox factor-1 (Ref-1)が重要な分子として注目されている。一方、急性音響外傷の発症メカニズムとしてフリーラジカルの関与が示唆されているが、フリーラジカルなどの酸化的ストレスが聴覚路に及ぼす影響、及びそれらが聴覚路の組織を細胞傷害や細胞死に至らしめる過程等、詳細は殆ど不明である。そこでモルモットの音響外傷モデルを用いて、蝸牛障害におけるHIF-1α,Ref-1の関与を検討したので報告する。プライエル反射正常の有色モルモットを使用し、防音室内で105dBオクターブバンドノイズ(4kHz中心)を2時間および5時間曝露した。強大音曝露後、直ちに麻酔、断頭、顕微鏡下に蝸牛感覚上皮をダイセクションした。次に試料をホモジナイズし、SDS処理し、電気泳動後、PVDF膜に転写しwestern blottingを、また、強大音5時間曝露後の蝸牛感覚上皮については免疫染色も併せて行った。まず、モルモット蝸牛内においてRedox factor-1はほぼ全ての細胞において発現していることが判明した。ウェスタンブロットではコントロールに比べて強大音曝露2時間後に蝸牛感覚上皮と外側壁においてHIF-1αの発現の上昇傾向が認められ、曝露5時間後には明らかな発現の増加が認められた。免疫組織化学においては強大音曝露後の蝸牛感覚上皮においては、三列の外有毛細胞において、HIF-1αの強い染色が認められた。音響外傷により、初期には外有毛細胞に主な変性が認められることより、音響外傷の分子メカニズムへのレドックス感受性転写因子の関与が考えられる。HIF-1αは、低酸素環境に応答して発現が増加し、またその他の転写制御因子であるAP-1やNF-kappaB、Ref-1などの活性を増加させて、酸化的ストレスに応答する種々の遺伝子発現を制御していると考えられている。内耳障害におけるレドックス制御機構を解明することは急性感音難聴のメカニズムの解明および治療につながるものと考えられる。最近になり、低酸素依存的転写に必要なエレメントに結合し作用するhypoxia-inducible factor (HIF-1)が、多くの細胞および組織で働くことが明らかになってきている。一方、近年において強大音暴露による急性感音性難聴、いわゆる急性音響外傷のメカニズムとしてフリーラジカルの関与が示唆されているが、フリーラジカルなどの酸化的ストレスが聴覚路に及ぼす影響、及びそれらが聴覚路の組織を細胞傷害や細胞死に至らしめる過程等、詳細は殆ど不明である。そこでモルモットの音響外傷モデルを用いて、蝸牛の音響外傷成立のメカニズムにおけるHIF-1αの関与を検討したので報告する。プライエル反射正常の有色モルモツトを使用し、防音室内で105dBオクターブバンドノイズ(4kHz中心)を2時間および5時間曝露した。強大音曝露後、直ちに麻酔、断頭、顕微鏡下に蝸牛感覚上皮をダイセクションした。次に試料をホモジナイズし、SDS処理し、電気泳動後、PVDF膜に転写しwestenblottingを、また、強大音5時間曝露後の蝸牛感覚上皮については免疫染色も併せて行った。ウェスタンブロットではコントロールに比べて強大音曝露2時間後に蝸牛感覚上皮と外側壁においてHIF-1αの発現の上昇傾向が認められ、曝露5時間後には明らかな発現の増加が認められた。免疫組織化学においては強大音曝露後の蝸牛感覚上皮においては、三列の外有毛細胞において、HIF-1αの強い染色が認められた。音響外傷により、初期には外有毛細胞に主な変性が認められることより、音響外傷の分子メカニズムへのレドックス感受性転写因子の関与が考えられる。HIF-1αは、低酸素環境に応答して発現が増加し、またその他の転写制御因子であるAP-1やNF-kappaB、Ref-1などの活性を増加させて、酸化的ストレスに応答する種々の遺伝子発現を制御していると考えられている。内耳障害におけるレドックス制御機構を解明することは急性感音難聴のメカニズムの解明および治療につながるものと考えられる。細胞内外における種々の酸化ストレスに対して応答する一連のカスケードを構成する分子群の中で、hypoxia-inducible factor (HIF-1)が、多くの細胞および組織で働くことが明らかになってきている。また、細胞内のHIF-1の活性をコントロールする分子としてRedox factor-1 (Ref-1)が重要な分子として注目されている。一方、急性音響外傷の発症メカニズムとしてフリーラジカルの関与が示唆されているが、フリーラジカルなどの酸化的ストレスが聴覚路に及ぼす影響、及びそれらが聴覚路の組織を細胞傷害や細胞死に至らしめる過程等、詳細は殆ど不明である。そこでモルモットの音響外傷モデルを用いて、蝸牛障害におけるHIF-1α,Ref-1の関与を検討したので報告する。プライエル反射正常の有色モルモットを使用し、防音室内で105dBオクターブバンドノイズ(4kHz中心)を2時間および5時間曝露した。強大音曝露後、直ちに麻酔、断頭、顕微鏡下に蝸牛感覚上皮をダイセクションした。
KAKENHI-PROJECT-13771003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771003
内耳障害におけるストレス関連遺伝子の発現とその制御機構に関する研究
次に試料をホモジナイズし、SDS処理し、電気泳動後、PVDF膜に転写しwestern blottingを、また、強大音5時間曝露後の蝸牛感覚上皮については免疫染色も併せて行った。まず、モルモット蝸牛内においてRedox factor-1はほぼ全ての細胞において発現していることが判明した。ウェスタンブロットではコントロールに比べて強大音曝露2時間後に蝸牛感覚上皮と外側壁においてHIF-1αの発現の上昇傾向が認められ、曝露5時間後には明らかな発現の増加が認められた。免疫組織化学においては強大音曝露後の蝸牛感覚上皮においては、三列の外有毛細胞において、HIF-1αの強い染色が認められた。音響外傷により、初期には外有毛細胞に主な変性が認められることより、音響外傷の分子メカニズムへのレドックス感受性転写因子の関与が考えられる。HIF-1αは、低酸素環境に応答して発現が増加し、またその他の転写制御因子であるAP-1やNF-kappaB、Ref-1などの活性を増加させて、酸化的ストレスに応答する種々の遺伝子発現を制御していると考えられている。内耳障害におけるレドックス制御機構を解明することは急性感音難聴のメカニズムの解明および治療につながるものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-13771003
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13771003
全身性エリテマトーデス・皮膚筋炎患者におけるサイトカイン産生異常の解析
目的:各種全身性自己免疫疾患におけるサイトカイン産生異常について、単球とT細胞の機能に注目して解析を行い、病態に直接つながるサイトカイン異常を見出す。結果:まず、すでに検討の終了したSLE、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎以外の全身性自己免疫疾患の一つであるシェ-グレン症候群について検討を進めた。サイトカインELISPOT法を用いた結果、患者末梢血中にIFNγあるいはIL-2産生細胞数が低下しており他の検討済みの自己免疫疾患と共通性のあることを見出した。また、同症候群は唾液腺・涙腺に限局した病態を呈することも多いが、血管炎等全身性の異常のある患者群でこのサイトカイン産生異常がより顕著であった('96年米国リウマチ学会にて報告)。これは、SLEや皮膚筋炎での結果と一部共通しており、これらの共通した異常が全身性自己免疫疾患に共通の病態に関連していることが予想される。次に、SLE患者末梢血中の単球の機能亢進の指標としてCD25発現についてフローサイトメトリーを用いて解析した。CD14との二重染色や、CD14を分離しての解析を行ったが、SLEと健常人で有意差は認められなかった。また、マグネティックビーズ法で末梢血を各細胞集団に分離した後ELISPOT法を行った結果、SLE患者でのIFNγ産生細胞数は、健常人よりも低下しているがその細胞集団の偏りに目立った変化はなく、最も貢献度の大きいCD8細胞からの分泌低下の関与が大きいと思われた。さらに、健常人末梢単核球でのIFNγ産生細胞数は、外因性IFNγと数時間co-cultureすることにより数倍に増加するが、数人の患者で同様の効果を検討したが健常人と有意な差はまだ認められていない。今後さらに検討を進め、動物実験を含めてより病因に近いサイトカイン異常とその責任細胞を同定し、治療につなげるものとしたい。目的:各種全身性自己免疫疾患におけるサイトカイン産生異常について、単球とT細胞の機能に注目して解析を行い、病態に直接つながるサイトカイン異常を見出す。結果:まず、すでに検討の終了したSLE、慢性関節リウマチ、皮膚筋炎以外の全身性自己免疫疾患の一つであるシェ-グレン症候群について検討を進めた。サイトカインELISPOT法を用いた結果、患者末梢血中にIFNγあるいはIL-2産生細胞数が低下しており他の検討済みの自己免疫疾患と共通性のあることを見出した。また、同症候群は唾液腺・涙腺に限局した病態を呈することも多いが、血管炎等全身性の異常のある患者群でこのサイトカイン産生異常がより顕著であった('96年米国リウマチ学会にて報告)。これは、SLEや皮膚筋炎での結果と一部共通しており、これらの共通した異常が全身性自己免疫疾患に共通の病態に関連していることが予想される。次に、SLE患者末梢血中の単球の機能亢進の指標としてCD25発現についてフローサイトメトリーを用いて解析した。CD14との二重染色や、CD14を分離しての解析を行ったが、SLEと健常人で有意差は認められなかった。また、マグネティックビーズ法で末梢血を各細胞集団に分離した後ELISPOT法を行った結果、SLE患者でのIFNγ産生細胞数は、健常人よりも低下しているがその細胞集団の偏りに目立った変化はなく、最も貢献度の大きいCD8細胞からの分泌低下の関与が大きいと思われた。さらに、健常人末梢単核球でのIFNγ産生細胞数は、外因性IFNγと数時間co-cultureすることにより数倍に増加するが、数人の患者で同様の効果を検討したが健常人と有意な差はまだ認められていない。今後さらに検討を進め、動物実験を含めてより病因に近いサイトカイン異常とその責任細胞を同定し、治療につなげるものとしたい。
KAKENHI-PROJECT-08770330
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08770330
19世紀初頭の東南アジア貿易の実態解明―輸入と消費に着目して―
2018年度は蓄積・整理した統計データを用いた分析を実施し、その内容を国際会議で発表した。統計データが少ない19世紀初頭の東南アジア貿易の実態に迫るため、重要な貿易相手であったインドの貿易統計を包括的に整理分析した。その結果、インドと東南アジア間の貿易は19世紀初頭にも増加傾向にあったこと、また東南アジアには消費財としてインド綿布が継続的に輸入されていたことが明らかになった。加えて、インド綿布はペナン、マラッカ、バタビアといった貿易港を中継して東南アジア全域に供給されていたことが分かった。さらには、19世紀初頭の貿易成長が19世紀中葉にどのように継承されたのかを分析するため、両時代の統計データの接続も試みた。その結果、19世紀中葉以降も東南アジアにとってインドとの貿易は重要であり続けたこと、しかし一方で、対インド貿易はイギリス海峡植民地に集約され、そして主要な輸入商品もインド綿布からアヘンへと切り替わっていったことなどが判明した。しかし、東南アジア最大の中継港であったシンガポールに注目すると、インド綿布の流通がある程度後期まで存続し、その流通システムは新たな工業品であったイギリス綿製品の東南アジアへの再輸出に受けつがれた。このように、単純な商品の転換に終結しない流通網や制度の持続性も観察された。これらの研究成果は、第18回国際経済史学会(ボストン)やジョンモーア大学での国際ワークショップ(リバプール)において報告した。またシンガポール設立200周年を記念する論文集(仮題Singapore 200: Two Centuries of the Lion City)の一章として出版される予定である。本研究プロジェクトの核となるインドの貿易統計の整理と、対東南アジア貿易の抽出は完了しており、またそれを用いた実証分析も実施済みである。これら研究プロジェクト2年目の成果を基盤として、最終年度の3年目には研究論文の執筆と出版が可能であると期待できる。今後は分散的に整理してきた統計データを統合し、18世紀末から19世紀にかけての東南アジア貿易の全体的な傾向を導き出すことを試みる。また、統計データから垣間見えた制度や流通ネットワークの継続性の実態と意義を見極めるため、記述資料や先行研究の知見を用いた包括的な分析を実施する。研究1年目には主にデータベース作成と国際学会での報告、そして国際ジャーナルへの論文掲載という実績を得ることができた。本研究の新たな視角は、インドの貿易統計を用いて19世紀初頭の東南アジア貿易を検証する点にある。これを実証的に進めるために、インドの貿易統計から東南アジア貿易のデータベースの作成に取り組んだ。具体的には、データベースの作成のために、1800-1825年のインド貿易統計から対東南アジア貿易のデータを抽出し、エクセルファイルに入力する作業を外部業者に委託し、完了させた。この統計データをもとに適切なデータベースのフォーマットをアクセスファイルで作成し、データベースの完成に近づいた。また、2017年8月にシンガポールで開催された資源環境経済学東アジア学会第7回国際会議において、研究報告を行った。「Development of Resource Exports and Food Supply in SoutheastAsia: Historical experience in the19th century」という報告で、19世紀の東南アジア一次産品輸出の長期的な成長と、中継港であったシンガポールの役割について議論した。この報告に対して多くの有意義なコメントやアドバイスを得ることができ、今後の研究に生かすことができる有意義な学会報告となった。1年目の最大の課題であったデータベースの作成にほぼ見通しが立ったことで、今後の研究が大きく進展することが期待できる。また、国際会議において報告したことで海外の研究者との交流が得られ、今後の国際的な研究プロジェクトへの参加が見込まれる。具体的には、イギリス・リバプールのジョンムーア大学で進められているシンガポール設立200年プロジェクトに、2018年からの参加が決まっている。2018年度は蓄積・整理した統計データを用いた分析を実施し、その内容を国際会議で発表した。統計データが少ない19世紀初頭の東南アジア貿易の実態に迫るため、重要な貿易相手であったインドの貿易統計を包括的に整理分析した。その結果、インドと東南アジア間の貿易は19世紀初頭にも増加傾向にあったこと、また東南アジアには消費財としてインド綿布が継続的に輸入されていたことが明らかになった。加えて、インド綿布はペナン、マラッカ、バタビアといった貿易港を中継して東南アジア全域に供給されていたことが分かった。さらには、19世紀初頭の貿易成長が19世紀中葉にどのように継承されたのかを分析するため、両時代の統計データの接続も試みた。その結果、19世紀中葉以降も東南アジアにとってインドとの貿易は重要であり続けたこと、しかし一方で、対インド貿易はイギリス海峡植民地に集約され、そして主要な輸入商品もインド綿布からアヘンへと切り替わっていったことなどが判明した。しかし、東南アジア最大の中継港であったシンガポールに注目すると、インド綿布の流通がある程度後期まで存続し、その流通システムは新たな工業品であったイギリス綿製品の東南アジアへの再輸出に受けつがれた。このように、単純な商品の転換に終結しない流通網や制度の持続性も観察された。これらの研究成果は、第18回国際経済史学会(ボストン)やジョンモーア大学での国際ワークショップ(リバプール)において報告した。またシンガポール設立200周年を記念する論文集(仮題Singapore 200: Two Centuries of the Lion City)の一章として出版される予定である。
KAKENHI-PROJECT-17K13774
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13774
19世紀初頭の東南アジア貿易の実態解明―輸入と消費に着目して―
本研究プロジェクトの核となるインドの貿易統計の整理と、対東南アジア貿易の抽出は完了しており、またそれを用いた実証分析も実施済みである。これら研究プロジェクト2年目の成果を基盤として、最終年度の3年目には研究論文の執筆と出版が可能であると期待できる。2年目は、早急にデータベースを完成させる。そのデータベースをもとに議論を展開し、国際学会で研究報告を行う。具体的には2018年8月にアメリカのボストンで開催される国際経済史会議のセッションで「Changing Consumption and Trade Growth in Southeast Asia, c. 1800-1870」という報告を行う。また、2018年9月にリバプールのジョンムーア大学・海洋史研究所での国際会議で「The Origin of Singapore's Economic Prosperity, 1800-1870」という報告を行う。そこで得られたフィードバックを取り込んで、研究をさらに発展させる。3年目にはそれまでの研究をもとに国際ジャーナルへの論文投稿を行い、研究成果を出版する。今後は分散的に整理してきた統計データを統合し、18世紀末から19世紀にかけての東南アジア貿易の全体的な傾向を導き出すことを試みる。また、統計データから垣間見えた制度や流通ネットワークの継続性の実態と意義を見極めるため、記述資料や先行研究の知見を用いた包括的な分析を実施する。
KAKENHI-PROJECT-17K13774
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K13774
マッキベン型人工筋肉の変形特性に関する理論解析
本研究では、マッキベン型人工筋肉を対象に、エネルギーのつり合いに基づいてチューブの幾何形状と収縮率、ゴム膜内圧、引張り力(負荷)などの理論関係式の導出を試みた。具体的には、人工筋肉の仕事速度と内圧による膨張の仕事速度に加え、各種エネルギーの損失項目を付加した理論解析手法を新たに提案した。また、人工筋肉が有する周期境界に着目してユニットモデルを作成し、有限要素法を用いて効果的な数値シミュレーションを実施するとともに、実際のマッキベン型人工筋肉の収縮実験との比較を通して、理論解析手法の妥当性を検証した。さらに、提案した理論式を用いたパラメトリックスタディを行い、マッキベン型人工筋肉の各種設計変数の最適値を評価可能であることを示した。本研究では、マッキベン型人工筋肉を対象に、エネルギーのつり合いに基づいてチューブの幾何形状と収縮率、ゴム膜内圧、引張り力(負荷)などの理論関係式の導出を試みた。具体的には、人工筋肉の仕事速度と内圧による膨張の仕事速度に加え、各種エネルギーの損失項目を付加した理論解析手法を新たに提案した。また、人工筋肉が有する周期境界に着目してユニットモデルを作成し、有限要素法を用いて効果的な数値シミュレーションを実施するとともに、実際のマッキベン型人工筋肉の収縮実験との比較を通して、理論解析手法の妥当性を検証した。さらに、提案した理論式を用いたパラメトリックスタディを行い、マッキベン型人工筋肉の各種設計変数の最適値を評価可能であることを示した。マッキベン型人工筋肉は,人間の行動を補助するウェアラブルロボットや歩行支援機を始めとした介護・補助機器に多用されている.しかし,従来の設計・制御方法は,ほとんどが試行錯誤的な手法に基づいているうえに,人工筋肉の挙動は強い非線形性を示すため,その制御には困難を伴う.そこで本研究では,エネルギーのつり合いに基づいてチューブの幾何形状と収縮率,ゴム膜内圧,引張り力(負荷)などの理論関係式の導出を試みた.具体的には,人工筋肉の仕事速度と内圧による膨張の仕事速度に加え,各種エネルギーの損失項目を付加した理論解析手法を新たに提案した.これらの各項目は,人工筋肉の幾何形状および材料条件の関数として表されるため,エネルギーのつり合いに基づく本理論解析法により,収縮率・内圧・引張り力の経時変化の算出が可能となった.また,人工筋肉が有する周期境界に着目してユニットモデルを作成し,有限要素法を用いて効果的な数値シミュレーションを実施するとともに,実際のマッキベン型人工筋肉の収縮実験との比較を通して,理論解析手法の妥当性を検証した.以上のように,本年度の研究により,マッキベン型人工筋肉の収縮率アップなどに関する最適設計(例えば,人工筋肉を構成する各種部材の幾何形状や材料特性の選定),あるいは高精度制御を可能とする力学的指針(実際の補助作業速度と負荷の関係)の提案などの次年度の研究推進のための基礎的な成果が得られた.マッキベン型人工筋肉は,人間の行動を補助するウェアラブルロボットや歩行支援機を始めとした介護・補助機器に多用されている.しかし,従来の設計・制御方法は,ほとんどが試行錯誤的な手法に基づいているうえに,人工筋肉の挙動は強い非線形性を示すため,その制御には困難を伴う.そこで本研究では,エネルギーのつり合いに基づいてチューブの幾何形状と収縮率,ゴム膜内圧,引張り力(負荷)などの理論関係式の導出を試みた.具体的には,人工筋肉の仕事速度と内圧による膨張の仕事速度に加え,各種エネルギーの損失項目を付加した理論解析手法を新たに提案した.これらの各項目は,人工筋肉の幾何形状および材料条件の関数として表されるため,エネルギーのつり合いに基づく本理論解析法により,収縮率・内圧・引張り力の経時変化の算出が可能となった.またこれを用いたパラメトリックスタディを行い,マッキベン型人工筋肉の各種設計変数の最適値(例えば,人工筋肉を構成する各種部材の幾何形状や材料特性の選定)を評価可能であることを示した.他方,編み込み接触構造を有する人工筋肉において,摩擦挙動の精緻なモデル化は不可欠である.そこで,速度依存性摩擦モデルを提案するとともに,具体的な境界値問題への適用をおこなった.以上のように,本年度の研究により,マッキベン型人工筋肉の収縮率アップなどに関する最適設計法の提案や編み込み構造の摩擦挙動のモデル化などの成果が得られた.
KAKENHI-PROJECT-19760104
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19760104
パンルヴェ系・超幾何系・力学系
超幾何方程式は、超幾何関数と呼ばれる重要な関数を解とする線形微分方程式である。一方、パンルヴェ方程式は、ある意味で超幾何方程式の非線形化と見なされる微分方程式であるが、非線形性の故に、その研究には力学系的な手法が必要となる。そこでパンルヴェ方程式に関しては、軌道体上のハミルトン力学系的な観点から相空間の構成や幾何学的特徴づけを行った。また周期解についても考察した。超幾何関数については、特殊値公式、特にガンマ乗積表示に注目し、そのような公式が存在するための算術的な必要条件を与えた。(1)ガウス超幾何級数F(a,b,c;x)に対してf(w)=F(pw+a,qw+b,cw;x)とおく.我々の課題はf(w)がガンマ乗積表示を許すようなパラメータ(p,q,r;a,b;x)を特徴付けることである.ガウス超幾何級数という最も古典的な超幾何級数に対しても,この問題は完全な解決からは程遠い.本研究を始めるに当たって,初年度は種々の基盤整備を行った.先ずオイラー積分表示へ鞍点法を適用することによりf(w)の漸近展開を得た.またf(w)の極の分布に関する算術的な性質を確立した.その応用としてf(w)が高々有限個の極しか持たない場合(初等的な場合)のガンマ乗積表示を或るパラメータの範囲で全て決定した.(2)次の内容の論文2篇が出版された.パンルヴェ第VI方程式の解空間の中で,非初等的な閉曲線に沿う非線型モノドロミー写像で不変な既約コンパクト部分集合は,孤立周期解か超幾何関数解のなすリッカチ曲線かのいずれかに限る.また,周期解のなす曲線,すなわち周期曲線はリッカチ曲線に限る.孤立周期解の個数は周期と共に指数的に増大する.あるクラスの代数関数解は,リーマン・ヒルベルト対応を通じて指標多様体上の力学系の有限軌道の観点から特徴づけられる.(3)各パンルヴェ方程式の相空間は,葉層構造の特異点解消の観点から,ヒルゼブルフ曲面のブローアップの反復により構成された(1970年代).その後,第II型から第VI型までのパンルヴェ方程式については,相空間のシンプレクティック・アトラスの構成,及びその上の多項式ハミルトン構造が確立された.逆にこれらの幾何構造がパンルヴェ方程式を一意的に特徴づけることが示された(1990年代).しかし,これらは第I方程式については未解決であった.そこでハミルトン構造の代わりに軌道体ハミルトン構造を考えることにより,この問題を解決した(岡田脩と共同).パンルヴェ系の分野では,パンルヴェ第I方程式の相空間の構成,その軌道体ハミルトン構造の確立,更に相空間の幾何構造がパンルヴェ第I方程式のハミルトン構造を一意的に決定することを示した内容の論文(岡田脩との共著)がJ. Math. Soc. Japanに受理され,掲載待ちとなっている(掲載巻号未定)。超幾何系の分野では,前年度に引き続き,超幾何級数がいつ閉形式やガンマ乗積表示を持つかという問題に取り組んだ。非初等解の極の漸近解析やトーラス上の力学系,ディオファンタス解析に関する成果,および隣接関係式の方法の基盤整備に関する成果をプレプリントOn some hypergeometric summations (arXiv:1408.5658)にまとめ,論文誌に投稿中である。今年度は更に,超幾何和の閉形式およびガンマ乗積表示に対する相対性(duality)および相互性(reciprocity)の概念を導入した。これらの概念を用いて,与えられた超幾何和がガンマ乗積表示を持つための必要条件について,従来得ていた結果の有効領域を拡張するとともに,従来の結果自体をより算術性の高いものに深化発展させることができた。これらの結果をまとめてOn some hypergeometric summation II. duality and reciprocityと題する論文を作成中である。また関連分野の研究集会において,パンルヴェ系とその力学系に関する口頭発表を1回,超幾何系とその力学系に関する口頭発表を4回行った。最終年度は、主として超幾何系について研究を行った。従来から進めてきたガウスの超幾何級数がガンマ乗積表示を持つための必要条件を求める研究を今年度も継続的に実施した。特に超幾何級数の隣接関係式の対称性、とりわけ双対性と相互性と名付けた二つの対称性が、解の存在のための深い算術的必要条件をもたらすことを示し、この主題に関する第2作目のプレプリント(arXiv: 1504.03140)をまとめた。これまでに得られた結果は、理論構成の規範・典型となる中央領域におけるものが主であるが、理論を他の領域に拡張するためには更なる創意が必要である。これは今後に残された興味深い課題である。これまでの研究成果は、ワークショップ「超幾何学校2015」(神戸大学)において講義を行いこの分野への周知に努めた(講義録は印刷中)。またフィリピンで開かれた研究集会でも概要を発表した。更に蛭子彰仁との共同研究で、一般超幾何関数3F2(1)の連分数表示の研究を開始し、その基礎をなすものとして3F2(1)の隣接関係式・三項関係式の一般論を構成した。この研究は今後も継続していく予定である。研究期間全体を通じての研究成果は、パンルヴェ方程式の力学系的研究と超幾何関数の特殊値・隣接関係式の研究に関するものである。
KAKENHI-PROJECT-25400102
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パンルヴェ系・超幾何系・力学系
前者については、パンルヴェ第VI方程式の非初等的ループに沿う非線形モノドロミー写像の不変部分集合の決定や周期解の個数の評価を得た。次にパンルヴェ第I方程式の軌道体ハミルトン構造を確立し、更にこの幾何構造によるパンルヴェ第I方程式の一意的な特徴付けを与えた。なおパンルヴェ方程式の力学系について講演するため招待を受けていたKIAS(韓国)の研究集会はMARSのため中止になった。超幾何系については、最終年度に得た上述の結果に加えて、そこへ至るまでの過年度の理論的な基盤整備がある。超幾何方程式は、超幾何関数と呼ばれる重要な関数を解とする線形微分方程式である。一方、パンルヴェ方程式は、ある意味で超幾何方程式の非線形化と見なされる微分方程式であるが、非線形性の故に、その研究には力学系的な手法が必要となる。そこでパンルヴェ方程式に関しては、軌道体上のハミルトン力学系的な観点から相空間の構成や幾何学的特徴づけを行った。また周期解についても考察した。超幾何関数については、特殊値公式、特にガンマ乗積表示に注目し、そのような公式が存在するための算術的な必要条件を与えた。パンルヴェ系とその力学系に関しては,ハミルトン系の研究集会で口頭発表を行い,また投稿中であった論文の掲載が決定した(掲載巻号未定)ことにより,順調な成果発信を行うことができた。超幾何系に関しては,これまで得られたの成果を4か所の研究集会で口頭発表するとともに,論文の第I篇目の執筆を終え,アーカイブへの掲載・論文誌への投稿を終えた。引き続き第II篇の執筆も順調に進んでいる。さらにさまざまな研究連絡を通じて,今後の研究につながる新しい知見を得ることができた。以上から研究が順調に進んでいると評価できる。複素領域の微分方程式パンルヴェ系とその力学系に関しては,韓国KIASのワークショップLiouvilletheory, Integrable system, and relatedtopicsに主講演者の一人として招待され,パンルヴェ方程式の幾何学とダイナミクスに関する三連続講演を行う予定である。超幾何系に関しては,執筆中の論文第II篇の完成を目指すと共に,双対性・相互性の概念の適用範囲をより広い領域に拡大する研究を行う。ガウス超幾何級数のガンマ乗積表示の研究で,パラメータの動く範囲をある範囲に限った上であるが,漸近挙動の確立や,極の分布の算術的性質について,研究目標に向けての基盤整備が十分に出来た.また,そのパラメータの範囲内で,初等的な解の決定が完全に出来た.次に,以前から研究していたパンルヴェ第VI方程式の非線形モノドロミーに関する論文,及びある種の代数関数解に関する論文が2篇出版された(1篇は上原崇人と共著).最後に,岡田修との共同研究により,パンルヴェ第I方程式の軌道体ハミルトン構造に関する理解がかなり進展し,ある未解決問題を解決することができた.これらは研究がおおむね順調に進んでいることを示している.ガウス超幾何級数のガンマ乗積表示の研究では,既に得ている漸近挙動の結果や,極の分布の算術的性質に加えて,留数の漸近挙動,(sin x)(sin y) = c (定数)なる超越平面曲線の算術的性質などを研究する.これらを総動員し,更に無理数の有理近似に関する定理をなど適用して,ガンマ乗積表示が存在するための必要条件を導出する.
KAKENHI-PROJECT-25400102
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食の安全・リスクに関する教職員の共考と児童・生徒の学びの促進に関する研究
教職員の食の安全に対する考え方を明らかにするため、中学校教諭(理科、社会、保健体育)を対象とし質的研究方法(デルファイ法)を用いた調査を実施した。その結果に基づき、中学生の子どもをもつ母親を対象とし、Webサイトを利用した質問紙調査を実施した。また、同時期に実施された内閣府食品安全委員会の調査結果も参考に、児童・生徒の学びの促進のために、食の安全に関する知識習得、及び食のリスクを学ぶ教材を開発した。リスクについては、食生活におけるリスクのトータルバランスを学ぶためのすごろく型ボードゲームと、リスク軽減を図るためのバランスゲーム(カード)である。目的は、食の安全に関する教育を担う様々な教職員の共考を促し、教育・指導の質の向上により、児童・生徒の食の安全に関する学びを促進することである。そのために以下2点を研究の柱とした。1.教職員の共考を促すために、様々な生徒を取り巻く学校現場の教職員(理科及び社会科教諭)の食の安全やリスクに対する考え方を明らかにする。2.児童・生徒の学びの促進のために、知識供与ではない、参加型のリスクの考え方を学ぶ教材を開発し、試行する。平成27年度は1.にとりかかり、質的調査のデルファイ調査を実施することであった。2回の班会議で対象者の選定方法について議論し、1)教職員の対象を理科、社会、体育の3教科とすること、2)1つの中学校の校長先生に対して、その中学校に在籍している3教科の職員を各1名推薦してもらうこと、3)対象となる中学校は全国とし、対象校は30校を目標に、スノウボウルサンプリングによって校長先生を紹介してもらう、の3事項を決定した。3月よりサンプリングを開始し、3月末時点で約10校である。質問紙は、第1回の班会議で決定しており、28年度6月までに調査を開始する。デルファイ法の対象者(校)の選定に手間取った。スノウボウルサンプリングを実施しているが、対象校の校長先生には直接面談はしておらず、調査の内容を理解していただくための説明に時間をとってしまった。目的は、食の安全に関する教育を担う教職員の共考を促し、教育・指導の質の向上により、児童・生徒の食の安全に関する学びを促進することである。そのための研究は2側面からなる。1)教職員の共考を促すために、理科及び社会科及び保健体育教諭の食の安全やリスクに対する考え方を明らかにすること。2)児童生徒の学びの促進のために、知識供与ではない参加型のリスクの考え方を学ぶ教材を開発し試行する。1)では、考えを明らかにするためにデルファイ法による質問紙調査の実施を予定した。対象校30校を選定し各校各教科1名ずつ選定を校長に依頼したが、回答者個人からの協力依頼が得られず調査の信頼性を担保できる対象者数が確保できなかった。研究班会議において、対象者の選定法について、再検討し、1県から30校を選定する方法、またはWeb調査会社のモニターで中学校教師を対象とする方法の2案が出された。デルファイ調査後に量的調査としてのWeb調査を実施することを計画しているため、Web調査も未実施である。Web調査会社のモニターで中学校教諭を対象とすることで、全国的に選定できると考え、対象者への協力依頼方法を変更し、次年度実施する。調査協力者への情報提供として、リーフレットを作成できた。2)では、教材開発は、5つの骨子がまとまった。それは、農薬、添加物など特定のハザードを連想させないこと、すなわち限定しないこと。架空のハザードを設定すること。また、ハザードと暴露量との関係からリスクが発生するため、それをシミュレーションできる設計とすること。コミュニケーションを主体とするため、ボードゲーム形式にすること。利用対象を小学校低学年以上とし、高齢者まで利用可能とする。ただし視覚障がい者への対応は困難と判断した。集団(学校のクラスなど)で利用し1グループ34名での利用とすること、である。質問紙調査の実施において、調査の信頼性が担保できる協力者を得ることができなかったため、未実施となっている。対象者の選定法について再検討し、1県から30校を選定する方法、またはWeb調査会社のモニターで中学校教師を対象とする方法の2案が出された。デルファイ調査後に量的調査としてのWeb調査を実施することを計画しているため、Web調査も未実施である。教材開発に着手し、骨子が固まった。食の安全に関する教育を担うと考えられる教職員のなかで、中学理科、社会、保健体育教諭の、食の安全に対する考えを明らかにするために、Webサイトを利用したデルファイ法の調査を実施した。各々の教員数を平均化したかったが、保健体育教諭の参加は少なかった。約90名を対象として3回にわたる調査が実施された。その結果をもとに、中学生の子どもをもつ母親を対象としたWeb調査を実施した。ほぼ同時期に内閣府食品安全委員会で実施されたデルファイ法の調査結果も参考に質問内容は設定された。中学生に伝えたい食の安全に関する内容は何か、というものである。約1000名の母親からの回答があった。これらの2つの調査結果から、リスクの概念等が伝えるべき優先項目としてあがった。調査結果に基づいた教材の開発を行い、3つが開発された。ひとつは、調査項目となった優先度の高い項目8項目について、知識を習得するためのカードゲーム「カルテット」である。食の安全について広く浅く学ぶことが可能でる。2つめは、すごろく型ボードゲームを開発した。
KAKENHI-PROJECT-15K00884
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食の安全・リスクに関する教職員の共考と児童・生徒の学びの促進に関する研究
食の安全を、実際のプレイヤーの食生活から考えるものである。すべての食品にリスクが含まれていること、また、実際にはその程度は問題がないことを疑似体験するボードゲームである。3つめは最優先項目となったリスクの概念を考えるためのボードゲームを開発した。リスクと食によるメリット(栄養素など)のバランスを考えるゲームとなっている。いずれも小学生以上で利用可能と考えられる。これらの教材の「内容」が、リスクの専門家が伝えたいことではなく、教える立場の教職員や保護者の意向を踏まえたものであることに特徴がある。教職員の食の安全に対する考え方を明らかにするため、中学校教諭(理科、社会、保健体育)を対象とし質的研究方法(デルファイ法)を用いた調査を実施した。その結果に基づき、中学生の子どもをもつ母親を対象とし、Webサイトを利用した質問紙調査を実施した。また、同時期に実施された内閣府食品安全委員会の調査結果も参考に、児童・生徒の学びの促進のために、食の安全に関する知識習得、及び食のリスクを学ぶ教材を開発した。リスクについては、食生活におけるリスクのトータルバランスを学ぶためのすごろく型ボードゲームと、リスク軽減を図るためのバランスゲーム(カード)である。6月下旬よりデルファイ法の調査を開始する。調査は8月下旬に終了する。調査結果を9月にはまとめる。この内容は論文化に着手する。29年3月または4月投稿目標。当初28年度実施予定の全国アンケート調査の実施に向けた調査票の開発に着手し、1月から調査票を全国配布する。デルファイ調査は、Web調査モニター対象とし、倫理審査書類の変更が認められ次第、調査を早急に開始する。分析にあたり新たな分担研究者の参画を得てスピードアップを図る。結果を踏まえた質問紙調査をWebサイトを利用して実施する。今年度着手した教材開発において、年度末に研究協力依頼できたゲーミングの専門家を含め、完成させる。公衆衛生学初年度実施予定の調査(デルファイ法)について、調査対象者のサンプリングに時間を要し、サンプリングが完了できず、調査ができなかったため。当初予定していた調査が、対象者の確保ができなかったために未実施となり、最終年度に対象者選定方法を変更して実施するため。27年度末より調査対象者のサンプリングがすすみ、6月より調査を実施する。そのため、27年度に使用できなかった分については、28年度調査費として使用する。未実地となったデルファイ法調査の調査対象者はWeb調査会社モニターと変更しているため、謝品の必要はなくなった。Web調査会社への調査委託となる。
KAKENHI-PROJECT-15K00884
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K00884
時間発展するパターンを信号伝播媒体とする反応拡散信号伝播様式
時間発展するパターンについて、信号伝播離散ダイナミクスと相互作用を行うスポットの分裂パターン形成の離散モデルを提案し、パターンの時間変化のパラメータ依存性から、スポット状の場が等方的に進展する条件等を見いだした。また場の形状等に依存して、信号の単方向伝播・消失・フィルタリング・回転波の発生等が起こることを見いだし、これらの信号伝播様式を通して、信号の融合および、時間差を因子とした論理積演算が行われうることを示した。時間発展するパターンについて、信号伝播離散ダイナミクスと相互作用を行うスポットの分裂パターン形成の離散モデルを提案し、パターンの時間変化のパラメータ依存性から、スポット状の場が等方的に進展する条件等を見いだした。また場の形状等に依存して、信号の単方向伝播・消失・フィルタリング・回転波の発生等が起こることを見いだし、これらの信号伝播様式を通して、信号の融合および、時間差を因子とした論理積演算が行われうることを示した。本研究の目的は、反応拡散系で生じる動的パターンを信号伝播媒体とする、信号伝播とパターン変化が相互に影響しあう系における、信号伝播様式の同定、及びそれらの様式から解釈され得る機能の実験的検証である。具体的には,信号伝播媒体/経路(信号が存在しうる場)生成系として、スポット状のパターンが進行・分裂することで知られるGray-Scottモデル、及びそれに類するダイナミクスを対象系とする。また経路生成系と相互作用する信号生成・伝播ダイナミクスとしては、活性・抑制因子系で見られる興奮系を想定し、興奮波(反応拡散波)の生成・伝播・消滅を信号の生成・伝播・消滅とみなす。20年度は対象とする信号伝播経路パターン形成及び信号伝播ダイナミクスの全体的な条件出しとして,糸の単純化の観点から、まず信号伝播媒体となる時空間パターン生成ダイナミクスの離散化を行った。変数の関係式が連続で表される偏微分系を、離散値のルールで記述するため、繊細な関係の縮約は困難であるが、経路の成長因子を多値化することで、分裂パターンの再現は部分的に実現された。しかし分裂特性に異方性が残っているため、より等方的なルールへの改善を次年度の課題としている。信号伝播を記述する反応拡散波ダイナミクスの離散化については、Tvsonらによる離散ダイナミクスを改変したものを用いるとした。また上記に関連して、パターン生成・反応拡散波伝播の両ダイナミクスの相互作用方式を検討した。反応拡散波の伝播履歴が、パターン変化の様相に影響を与える条件を見るため、二つのダイナミクスの時定数差がパターンに与える影響を予備的に調べた。しかしこれは経路パターン生成のダイナミクスに強く依存するため、より詳細な検討を次年度も引き続き行う予定である。上記を、既存の計算機資源および20年度購入の計算機システムを用いて行った。本研究の目的は、反応拡散系で生じる動的パターンを信号伝播媒体とする、信号伝播とパターン変化が相互に影響しあう系における、信号伝播様式の同定、及びそれらの様式から解釈され得る機能の実験的検証である。具体的には,信号伝播媒体/経路(信号が存在しうる場)生成系として、スポット状のパターンが進行・分裂することで知られるGray-Scottモデル、及びそれに類するダイナミクスを対象系とする。また経路生成系と相互作用する信号生成・伝播ダイナミクスとしては、活性・抑制因子系で見られる興奮系を想定し、興奮波(反応拡散波)の生成・伝播・消滅を信号の生成・伝播・消滅とみなす。21年度は前年度に引き続き,信号伝播媒体となる時空間パターン生成ダイナミクスの離散化,およびパターン生成・反応拡散波伝播の両ダイナミクスの相互作用方式の,より一般的な形での導出をはかった.具体的には,信号伝播ダイナミクスの興奮状態から休止状態へと戻る必要条件の簡略化,経路場への信号伝播履歴の寄与の正負双方の効果の導入,及びこれまで外部からの入力を主としていた信号入力条件の,経路場変化からの再帰的な条件付けなどを行った.また,経路場・信号伝播双方についてのパラメータ毎の相図作成をはかった.平行して,信号伝播様式の基礎的な知見を増やすため,場の形状や信号の入射・伝播方向が非対称である場合の信号伝播様式を調べ,自発的信号発生のひとつの要因となり得る回転波の発生条件や,信号消失・フィルタリングの条件を明らかにした.上記を、既存の計算機資源および20年度購入の計算機システムを用いて行った。本研究の目的は、反応拡散系で生じる動的パターンを信号伝播媒体とする、信号伝播とパターン変化が相互に影響しあう系における、信号伝播様式の同定、及びそれらの様式から解釈され得る機能の実験的検証である。具体的には,信号伝播媒体/経路(信号が存在しうる場)生成系として、スポット状のパターンが進行・分裂することで知られる反応拡散モデル、及びそれに類するダイナミクスを対象系とする。また経路生成系と相互作用する信号生成・伝播ダイナミクスとしては、活性・抑制因子系で見られる興奮系を想定し、興奮波(反応拡散波)の生成・伝播・消滅を信号の生成・伝播・消滅とみなす。最終年度である22年度は、これまでに得られた系のダイナミクスに基づく相図をもとに、信号伝播媒体となる時空間パターン生成ダイナミクスの離散化,およびパターン生成・反応拡散波伝播の両ダイナミクスの相互作用方式について、よりダイナミックなパターンの変化を求めて、引き続きモデルの改良を続けた。
KAKENHI-PROJECT-20700213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700213
時間発展するパターンを信号伝播媒体とする反応拡散信号伝播様式
また信号伝播のパターンからどのような信号処理機能が解釈可能になるかについての検討を継続し、基本的には信号が伝播する方向は、時間発展するパターン領域の進行方向にほぼ準じていることから、信号の伝播とともに伝播媒体が移動し、かつ二つないし三つの信号・媒体が衝突することで、信号の融合および、時間差を因子とした論理積演算が行われうることを検証した。上記を、既存の計算機資源および20年度購入の計算機システムを用いて行った。
KAKENHI-PROJECT-20700213
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700213
統合失調症モデル動物に対するD-serineと新規抗精神病薬の治療効果比較
生後7日目(PD7)、無作為に傷害群と対照群に分け、傷害群にはイボテン酸を注入し両側腹側海馬を破壊した。PD56に浸透圧ポンプを挿入し、D-serine投与群、RIS投与群、OLZ投与群、D-serine・RIS併用群、D-serine・Haloperidol併用群に分け、4週間に渡り脳室内持続投与を行った。PD56、PD70、PD84に、赤外線式運動量測定装置に移した後60分間、MAP投与後90分間の移所運動量を測定した。D-serine単独投与では異常行動が抑制されないが、D-serineと抗精神病薬の併用により異常行動抑制傾向があること、また抗精神病薬の単剤投与に比べD-serine併用時において異常行動抑制傾向があること、D-serineと併用する抗精神病薬については定型抗精神病薬であるhaloperidolに比し非定型抗精神病薬であるrisperidoneにおいて異常行動抑制傾向が高いこと、が示唆された。現在例数不足があるが、今後も実験を継続し確定的知見を得たい。生後7日目(PD7)、無作為に傷害群と対照群に分け、傷害群にはイボテン酸を注入し両側腹側海馬を破壊した。PD56に浸透圧ポンプを挿入し、D-serine投与群、RIS投与群、OLZ投与群、D-serine・RIS併用群、D-serine・Haloperidol併用群に分け、4週間に渡り脳室内持続投与を行った。PD56、PD70、PD84に、赤外線式運動量測定装置に移した後60分間、MAP投与後90分間の移所運動量を測定した。D-serine単独投与では異常行動が抑制されないが、D-serineと抗精神病薬の併用により異常行動抑制傾向があること、また抗精神病薬の単剤投与に比べD-serine併用時において異常行動抑制傾向があること、D-serineと併用する抗精神病薬については定型抗精神病薬であるhaloperidolに比し非定型抗精神病薬であるrisperidoneにおいて異常行動抑制傾向が高いこと、が示唆された。現在例数不足があるが、今後も実験を継続し確定的知見を得たい。【目的】【方法】生後7日目(PD7)の仔ラットを無作為に傷害群と対照群に分け低温麻酔した。マイクロインジェクションポンプを用いて、傷害群には0.3ulのイボテン酸(10ug/ul)を注入し両側腹側海馬を破壊した。対照群には同様に同量の人工脳脊髄液を注入した。PD56に薬物持続投与ポンプ挿入手術を施し、以降、それぞれD-serine投与群、OLZ投与群、D-serine・Haloperidol;HPD併用群、D-serine・RIS併用群に分け、それぞれ4週間に渡り持続投与を行った。対照群には、同様に生理食塩水を投与した。PD56の各群のラットを、それぞれ赤外線式運動量測定装置付の測定用アクリルケージに移した後60分間(環境変化ストレス)、methamphetamine(MAP)1.5mg/kgを投与後の90分間の移所運動量を測定した。その後、同様にPD70(薬物投与2週間後)、PD84(薬物投与4週間後)に行動測定を行った。全ての行動測定後にラット脳の凍結切片を作製し、海馬の傷害範囲を確認した。【結果・考察】現時点では各群を比較検討するに十分な例数が揃っていないが、新規抗精神病薬とD-serine併用群において過活動を抑制することが予想される。【目的】【方法】生後7日目(PD7)、無作為に傷害群と対照群に分け、傷害群にはイボテン酸を注入し両側腹側海馬を破壊した(対照群には人工脳脊髄液を注入)。PD56に浸透圧ポンプを挿入し、D-serine投与群、OLZ投与群、D-serine・Haloperidol ; HPD併用群、D-serine・RIS併用群に分け、4週間に渡り脳室内持続投与を行った(対照群には同様に人工脳脊髄液を投与)。測定:赤外線式運動量測定装置に移した後60分間(HAB)、MAP投与後90分間の移所運動量を、PD56、PD70、PD84に測定した。【結果・考察】
KAKENHI-PROJECT-16591149
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16591149
離散選択問題が引き起こす景気変動に関する研究
本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択(discrete choice)問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題でことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分(indivisible)であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。本研究では、個人レベルにおける離散選択問題と複雑動学の関係を解明した。具体的には、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題の証明した。正確には、同命題は次のとおりである。「一般的条件の下では、確定的無限期間経済における離散選択問題の最適経路は、定常点にも循環経路にも収束しない複雑なものになる。」手法的には、ダイナミック・プログラミングを用いずに、無限期間の最適化問題を無限次元における最適化問題として捉えることが基本的なアプローチである。状態変数の空間と最適経路の空間を比較することにより、最適経路は一般的に複雑なダイナミックスに従うということを証明した。上記の分析結果をまとめた論文は投稿準備中である。本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択(discrete choice)問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題でことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分(indivisible)であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。本研究では、個人レベルにおける離散選択問題と複雑動学の関係を解明した。具体的には、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題の証明した。正確には、同命題は次のとおりである。「一般的条件の下では、確定的無限期間経済における離散選択問題の最適経路は、定常点にも循環経路にも収束しない複雑なものになる。」手法的には、ダイナミック・プログラミングを用いずに、無限期間の最適化問題を無限次元における最適化問題として捉えることが基本的なアプローチである。状態変数の空間と最適経路の空間を比較することにより、最適経路は一般的に複雑なダイナミックスに従うということを証明した。上記の分析結果をまとめた論文は投稿準備中である。本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題でことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。ところが、既存のマクロ経済理論の大部分は、財が無限に可分であるという仮定の上に成り立っている。離散選択問題と経済動学の複雑性の間には重要な関係があると考えられるのだが、この関係に焦点を置いた研究は当研究者の最近の研究を除けばほとんど皆無である。本研究の目的は、未開発領域である離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。本年度の具体的な目標は、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題を証明することであった。同命題は当研究者の最近の研究により、2つの特殊ケースにおいて成立することが知られている。その証明方法から、一般的なケースにおいても成立することが予想された。手法的には、ダイナミック・プログラミングを用いずに無限期間の最適化問題を無限次元における最適化問題として捉えるというアプローチを取った。状態変数の空間と最適経路の空間を比較することにより、最適経路は一般的に複雑なダイナミックスに従うということを証明した。本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題でことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。ところが、既存のマクロ経済理論の大部分は、財が無限に可分であるという仮定の上に成り立っている。離散選択問題と経済動学の複雑性の間には重要な関係があると考えられるのだが、この関係に焦点を置いた研究は当研究者の最近の研究を除けばほとんど皆無である。本研究の目的は、未開発領域である離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。本年度の昨年度に引き続き、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題を成立する条件の一般化、及びこの命題に基づいたマクロモデルに関する研究を行った。
KAKENHI-PROJECT-15530123
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15530123
離散選択問題が引き起こす景気変動に関する研究
本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題のことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。ところが、既存のマクロ経済理論の大部分は、財が無限に可分であるという仮定の上に成り立っている。離散選択問題と経済動学の複雑性の間には重要な関係があると考えられるのだが、この関係に焦点を置いた研究は当研究者の最近の研究を除けばほとんど皆無である。本研究の目的は、未開発領域である離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。本年度の昨年度に引き続き、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題が成立する条件の一般化、及びこの命題に基づいたマクロモデルに関する研究を行った。本研究の目的は、離散選択問題と景気変動の関係を明らかにすることである。離散選択(discrete choice)問題とは、(通常)有限個の選択肢の中から最適なものを選択する問題でことである。例えば、車を買い換えるべきか、新しいパソコンを買うべきか等は離散選択問題である。離散選択問題の研究が現実経済を理解する上で重要であるのは、現実経済における財の多くが不可分(indivisible)であり、不可分財の売買を扱った問題はすべて離散選択問題であるからである。不可分財とは、売買可能な最小単位が存在する財のことである。本研究では、個人レベルにおける離散選択問題と複雑動学の関係を解明した。具体的には、「個人レベルにおいては、離散選択問題は必然的に複雑なダイナミックスを引き起こす」という命題の証明した。正確には、同命題は次のとおりである。「一般的条件の下では、確定的無限期間経済における離散選択問題の最適経路は、定常点にも循環経路にも収束しない複雑なものになる。」手法的には、ダイナミック・プログラミングを用いずに、無限期間の最適化問題を無限次元における最適化問題として捉えることが基本的なアプローチである。状態変数の空間と最適経路の空間を比較することにより、最適経路は一般的に複雑なダイナミックスに従うということを証明した。上記の分析結果をまとめた論文は投稿準備中である。
KAKENHI-PROJECT-15530123
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美術館観衆の実証的調査研究
昨年度に引き続き美術館の観衆調査を続行することができましたが、今年度は予算の制約もあり、主としてこれまでの調査データの入力と分析の作業に意を注ざました。とくに昨年度おこなった豊田市美術館の調査については、美術館側からの要請もあり、たいへん詳しい分析をおこなって、館長様を始めとするスタッフの方々に、調査結果の説明をおこないました。こうした交流を通して実感されたのは、「自分たちの美術館に来ているのはどんな人々か?」について非常に強い関心がある点です。とりわけ公立美術館の場合、地方自治体や議会にたいする関係の上からも、美術館観衆についてのデータはたいへん重要なものであることが如実に感じられました。新たに調査をおこなったのは、ジョルジュ・ブラック回顧展を開催中であった三重県美術館です。ここでは従来から、他館に見られない充実した観衆調査を自主的に実施しています。ふつう、美術館によるアンケートは,館内に置かれた用紙に、訪れた人が自主的に書き込むという形のため、来館者の1割程度しか把握できません。しかしこの館では館内にアンケートの場所と人員を一定の期間配置し、協力をお願いするという形で、私の調査方法と共通点があります。このデータと私がおこなったデータを比較することで、訪問者の居住地や履歴、年齢、性別に関する特徴に類似が見られたことは、たいへん有益でした。これまでの調査全体の概要、分析に関する小論を、98年4月刊行の「現代美術館学」(並木他編、昭和堂)のなかに、「美術館との対話----社会学」として発表しました。当初、右も左もわからず開始した観衆調査ですが、調査に回答頂いた人数も5000を越え、また、美術館側からのさまざまな要望などに実際に肌で触れることができ、この調査の価値がますます実感されております。今後とも調査を継続いたしますので、各方面からのご協力をお願いいたします。このたびの研究補助のおかげにより、以下の美術館で調査を行うことができ、たいへん感謝しております。藤田美術館(大阪市)京都市美術館徳川美術館(名古屋市)豊田市美術館愛知県美術館(名古屋市)また、これまでの調査によって得られながら集計が遅れていたデータにつきましても、研究補助金によって入力作業を行うことができました。これらの結果を97年10月に行われた日本社会学会第70回大会で発表することができました。さらに京都市美術館で行った調査では、地元マスコミから調査そのものに対する関心が寄せられ、98年3月に『京都新聞』紙上で調査の経緯と結果を発表することができ、反響を呼んでおります。この京都市美術館での調査結果は、ちょうど平安神宮の鳥居をはさんで真向かいにある京都国立近代美術館で、以前行った調査結果と比較することにより、たいへん興味深いものとなりました。すなわち、(1)京都市美の観衆は京都近美のそれに比べて男性の割合が多い。(2)京都市美の観衆は京都市内からが半分以上で、2割程度の京都近美と対照的である。(3)京都市美の観衆は友人どうしよりも夫婦や家族での来館が多く、よりアットホームな憩いの場となっている。以上のように、立地条件の似た美術館ではあっても観衆の特徴に差があることを証明することができ、またそれを新聞紙上に発表できたことは、この研究補助金のおかげであり、大いに感謝いたします。昨年度に引き続き美術館の観衆調査を続行することができましたが、今年度は予算の制約もあり、主としてこれまでの調査データの入力と分析の作業に意を注ざました。とくに昨年度おこなった豊田市美術館の調査については、美術館側からの要請もあり、たいへん詳しい分析をおこなって、館長様を始めとするスタッフの方々に、調査結果の説明をおこないました。こうした交流を通して実感されたのは、「自分たちの美術館に来ているのはどんな人々か?」について非常に強い関心がある点です。とりわけ公立美術館の場合、地方自治体や議会にたいする関係の上からも、美術館観衆についてのデータはたいへん重要なものであることが如実に感じられました。新たに調査をおこなったのは、ジョルジュ・ブラック回顧展を開催中であった三重県美術館です。ここでは従来から、他館に見られない充実した観衆調査を自主的に実施しています。ふつう、美術館によるアンケートは,館内に置かれた用紙に、訪れた人が自主的に書き込むという形のため、来館者の1割程度しか把握できません。しかしこの館では館内にアンケートの場所と人員を一定の期間配置し、協力をお願いするという形で、私の調査方法と共通点があります。このデータと私がおこなったデータを比較することで、訪問者の居住地や履歴、年齢、性別に関する特徴に類似が見られたことは、たいへん有益でした。これまでの調査全体の概要、分析に関する小論を、98年4月刊行の「現代美術館学」(並木他編、昭和堂)のなかに、「美術館との対話----社会学」として発表しました。当初、右も左もわからず開始した観衆調査ですが、調査に回答頂いた人数も5000を越え、また、美術館側からのさまざまな要望などに実際に肌で触れることができ、この調査の価値がますます実感されております。今後とも調査を継続いたしますので、各方面からのご協力をお願いいたします。
KAKENHI-PROJECT-09871042
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09871042
間狂言台本をめぐる研究
間狂言台本を多く収集し、その伝存状況等について把握することができた。また、間狂言に限らず、幅広く能楽資料の研究を進めることができ、とりわけ島原藩の能楽について多くのことが明らかにできた。間狂言台本を多く収集し、その伝存状況等について把握することができた。また、間狂言に限らず、幅広く能楽資料の研究を進めることができ、とりわけ島原藩の能楽について多くのことが明らかにできた。長崎県島原市の島原図書館松平文庫所蔵の間狂言台本の調査を中心に行った。間狂言台本の性格は徐々に明らかになりつつあるが、二種の間狂言台本の全貌についてもう少し詳細な調査を行う必要があるため、論文としての発表は現在のところ見送っている。しかし、その位置づけについては見通しが出てきた。これらの資料としての位置づけをよりはっきりさせるため、松平文庫の能楽関係資料、あるいは島原藩関係資料の調査を同時に行っている。その中で、島原藩における能楽や近世の能楽について貴重となる、宝生大夫関係の資料に着目し、藝能史研究會二月例会(平成19年12月9日)において自頭発表を行った。能役者と島原藩を含む諸藩との関わりの一端を明らかにし、島原藩における狂言の実体を探りながら、最終的に島原藩の狂言、間狂言台本の解明につなげていく。藩の資料の中から、狂言役者や能役者の氏名を見つけることができたが、藩の記録の量が膨大であるため、全てを調査するにはかなりの時間を要するものと思われる。引き続き、なるべく短期間で多くの資料調査を行っていくつもりである。また他の間狂言資料については、京都大学文学部蔵『大蔵流惣間語』について、デジタル画像にまとめることができた。今後、翻刻作業も含め、特に大蔵八右衛門派の間狂言台本について、資料収集と調査を引き続き行っていく予定である。長崎県島原市の島原図書館松平文庫所蔵の間狂言台本の調査を中心に行っている。「文政七年」の奥書を持つため、この周辺の時代の島原藩の能楽を探ることに重点を置いた。まずこの時代の藩主であった松平忠侯の天保三年の奥書を持つ伝書『乱伝書等』より、当時の能が金剛流であること、また「大友勘之丞」の名が見え、島原藩日記の記事より、この人物が江戸住みの金剛流の役者であろうことが明らかになった。さらには忠侯の先々代に当たり、宇都宮藩から再び島原藩に転封された忠恕時代には、既に金剛流であり、大友勘之丞が稽古を行っている。以前に調査した初代藩主・忠房の時代には宝生流であり、この間の時代についても調査することにより、島原藩の能楽の変遷の流れをある程度把握できる見通しが出てきた。また同文庫に所蔵される謡本の中に、同時代の書写になる金剛流謡本が数種類見られ、これらもその能楽史を考えるにおいて重要な位置を占めるものと思われ、今後の調査対象の一つとしたい。こうした中において、間狂言台本がどのような経路を経て島原藩に流入したのか、また一部の内容が重なる京都大学文学部蔵『大蔵流惣間語』についても、その履歴の一端が明らかにできるのではないかと考えている。他機関所蔵の間狂言台本についても調査を続けながら、これらの台本の位置付けをさらに明らかなものとすると同時に、特に島原藩の能楽についての調査も重点的に続けていくつもりである。長崎県島原市の島原図書館松平文庫所蔵の間狂言台本についての調査を進めた。特に文政7年の奥書を持つ『間狂言』(一冊)を取り巻く状況にたいて、他の資料の調査と併せて行ってきた。この台本が書写されたのは藩主・松平忠侯の治世に当たるが、忠侯が稽古を受けている大友(大供)勘之丞という江戸住、金剛座の地謡役者につき、さらに明らかにすることができた。今後、間狂言台本が書写された背景などを、この役者の周辺を中心に調査して明らかにしていくつもりである。この台本と京都大学文学研究科図書館蔵『大蔵流惣間語』との内容の関わりについては、近く成稿する予定である。その上に立ち、さらに『大蔵流惣間語』を中心とする台本研究を進めていきたい。その他の間狂言台本について、国立国会図書館、内閣文庫、早稲田大学演劇博物館、法政大学能楽研究所などの研究機関所蔵のものを中心に、その内容の検討や比較を行っている。分量が膨大であるため、体系的にこれをまとめるのはかなり先のことになると思われるが、今後も調査を継続しながら、まずは曲ごと、流派ごと、台本ごとなど的を絞った観点から逐一その成果について発表を続け、最終的に全体像を明らかにし、諸台本の系統などを体系づけていきたい。また一方で、島原藩の能楽についてかなり多くのことを解明できているので、引き続き間狂言台本にとどまらない調査も進め、島原藩の能楽の歴史についてまとめる機会も持ちたいと考えている。
KAKENHI-PROJECT-18720058
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18720058
自由表面下の非定常水中翼に働く流体力に関する研究
平成元年度の研究では、任意形状の三次元翼が調和振動する際に翼に加わる非定常流体力について、ダブレット分布を用いた新しい数値解法を提案し、従来から知られている結果と比較することによってその信頼性を確かめた。また、いくつかの平板翼、三角翼に対して実験を行い、定常揚力特性および上下揺の場合の非定常揚力特性を比較したところ、理論と実験の一致は、全般的に良好であること、三次元翼の非定常揚力特性は位相平面上へプロットすることによって容易に理解しうることなどを示した。さらに、胴体と翼が一体として存在する場合の両者の流体力学的干渉問題について考え、後流渦は翼からのみ流出すると仮定した近以理論と実験とを比較した。平成2年度は、自由表面下の2次元水中翼に働く流体力について、翼厚を考慮した数値計算プログラムを開発するとともに2種類の対称翼に対して実験を行い、比較検討した。定常翼に働く流体力は、流れ関数による表現を使って翼表面に分布された接線ダブレットに関する積分方程式を解いて求めた。また、非定常問題については翼および後流渦から発生する波動項を含めてグリ-ン関数の計算を行い、速度ポテンシャルに関する積分方程式を導いた。実験は、NACAOO12およびNACAOO24の2種類の翼を用い、没水深度、定常迎角などを変化させて定常流体力と強制上下揺時の非定常揚力などを求めた。これらの理論計算値と実験を比較した結果、(1)定常揚力は没水深度が小さな時に大きくなり、没水深度に応じて定常揚力が0となる迎角がある、(2)翼厚の違いによる流体力の変化はそれほど大きくないが、翼厚が大きいほど付加質量係数は一般に小さくなる、(3)自由表面影響は前進速度と動揺周波数の比が一定の関係を満たすときに大きく表れる、などの結論を得た。平成元年度の研究では、任意形状の三次元翼が調和振動する際に翼に加わる非定常流体力について、ダブレット分布を用いた新しい数値解法を提案し、従来から知られている結果と比較することによってその信頼性を確かめた。また、いくつかの平板翼、三角翼に対して実験を行い、定常揚力特性および上下揺の場合の非定常揚力特性を比較したところ、理論と実験の一致は、全般的に良好であること、三次元翼の非定常揚力特性は位相平面上へプロットすることによって容易に理解しうることなどを示した。さらに、胴体と翼が一体として存在する場合の両者の流体力学的干渉問題について考え、後流渦は翼からのみ流出すると仮定した近以理論と実験とを比較した。平成2年度は、自由表面下の2次元水中翼に働く流体力について、翼厚を考慮した数値計算プログラムを開発するとともに2種類の対称翼に対して実験を行い、比較検討した。定常翼に働く流体力は、流れ関数による表現を使って翼表面に分布された接線ダブレットに関する積分方程式を解いて求めた。また、非定常問題については翼および後流渦から発生する波動項を含めてグリ-ン関数の計算を行い、速度ポテンシャルに関する積分方程式を導いた。実験は、NACAOO12およびNACAOO24の2種類の翼を用い、没水深度、定常迎角などを変化させて定常流体力と強制上下揺時の非定常揚力などを求めた。これらの理論計算値と実験を比較した結果、(1)定常揚力は没水深度が小さな時に大きくなり、没水深度に応じて定常揚力が0となる迎角がある、(2)翼厚の違いによる流体力の変化はそれほど大きくないが、翼厚が大きいほど付加質量係数は一般に小さくなる、(3)自由表面影響は前進速度と動揺周波数の比が一定の関係を満たすときに大きく表れる、などの結論を得た。水中翼は船舶や水中ロボットの運動制御の目的のために頻繁に用いられる構成要素のひとつであり、その流力特性を精度良く推定することは重要である。今年度の研究では曳航体の深度制御で多用されている低アスペクト比翼の流力特性を明らかにする目的で、アスペクト比が1と2の矩形翼と、2と4の三角翼に対して(1)定常流中の定常揚力、(2)上下揺時の非定常揚力、および(3)定常迎角がある場合の前後揺時の非定常揚力などを理論的・実験的に研究した。理論計算は3次元揚力面理論によるポテンシャル計算で、ダブレット分布によって任意形状の翼に適用できるものを新たに開発した。実験では3次元翼の形状やアスペクト比の違いによる揚力の変化を明確にするために、今回は没水深度を大きくし、自由表面の影響を除いて簡単化した。これらの計算と実験結果の比較によって、定常揚力についてはアスペクト比が1の矩形翼では翼端からの渦放出によって大迎角でも失速が遅れ、揚力が増加するなどの非線形影響が好ましい方に働くこと、三角翼は矩形翼に比べて失速角が大きいので揚力については好ましいことなどがわかった。次いで、非定常揚力については付加質量係数と減衰力係数に位相分離して比較したが、一般的には理論と実験の一致は良好であることがわかった。しかし、無次元周波数が小さな所で付加質量係数が一様流速の影響によって変化することや逆に高周波数域では減衰力に粘性抗力と思われる非線形影響が生じることなどの問題点も明らかになった。これらについては、没水深度が小さな場合に生じる自由表面影響の問題とともに来年度の研究で考察したいと考えている。自由表面下の2次元水中翼に働く流体力について、翼厚を考慮した数値計算プログラムを開発するとともに2種類の対称翼に対して実験を行い、比較検討した。
KAKENHI-PROJECT-01550354
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550354
自由表面下の非定常水中翼に働く流体力に関する研究
定常翼に働く流体力は、流れ関数による表現を使って翼表面に分布された接線ダブレットに関する積分方程式を解いて求めた。揚力は表面圧力積分から、造波抵抗は無限遠における発散波振幅から計算した。それらの結果を他の文献と比較したところ精度的にも良好な結果が得られた。また、非定常問題については翼および後流渦から発生する波動項を含めてグリ-ン関数の計算を行い、速度ポテンシャルに関する積分方程式を導いた。実験は、NACA0012およびNACA0024の2種類の翼を用い、没水深度、定常迎角などを変化させて定常流体力と強制上下揺時の非定常揚力などを求めた。これらの理論計算値と実験を比較した結果、(1)定常揚力は没水深度が小さな時に大きくなり、没水深度に応じて定常揚力が0となる迎角がある、(2)翼厚の違いによる流体力の変化はそれほど大きくないが、翼厚が大きいほど付加質量係数は一般に小さくなる、(3)自由表面影響は前進速度と動揺周波数の比が一定の関係を満たすときに大きく表れる、などの結論を得た。
KAKENHI-PROJECT-01550354
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01550354
Protein-Energy Wastingの発症・進展における褐色脂肪の関与
近赤外時間分解分光法で測定した褐色脂肪(BAT)密度に基づき血液透析患者および健常成人のBAT密度を評価した。生体電気インピーダンス法で測定した体組成とBAT密度の関係を評価した。33例の血液透析患者のBAT密度は75.6±31.4μM(p = 0.059)で、同年代の健常者61.1±4.3μMと比較し高い傾向を示した。BAT密度および体脂肪量は、血液透析患者において負の相関があった。内臓脂肪面積が血液透析患者で有意に多かったにもかかわらず、BATは血液透析患者において、より高い傾向があった。CKD合併高血圧患者で筋交感神経活動が上昇することがBATの増加の原因として関与している可能性がある。慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)患者では異化亢進を来たしやすいエネルギー消耗状態にあるが、同患者の栄養障害やそれに伴うサルコペニアの発症・進展機序の詳細は明らかでない。CKD患者では、経口摂取の低下のみならず、尿毒素の蓄積,代謝亢進、炎症、酸化ストレス、インスリン抵抗性など複数の要因が関与し、体蛋白(骨格筋)やエネルギー源(体脂肪)が減少するが、2006年の第12回国際腎栄養代謝学会において、この様なCKDにおける栄養障害は、蛋白異化亢進と過度の食事制限と食欲減退などによる蛋白摂取量低下に基づくことから、「protein-energy wasting(PEW)」と呼ぶことが提唱された。本研究では、褐色脂肪がCKDにおけるPEW病態形成に及ぼす影響の観点から、PEWの発症機序を解明することを目的としている。本研究では、まず白色脂肪細胞の褐色化を誘導する骨格筋由来の生理物質であるイリシンの血中濃度を血液透析患者で測定し、栄養スクリーニング指標、エネルギー必要量に加え、炎症性サイトカイン、食欲制御因子などとの関連を検討する。合わせて時間分解近赤外分光法装置による褐色脂肪組織の検出・定量を併せて行う。これにより、褐色脂肪細胞への分化に寄与する可能性のある腎不全の病態や、褐色脂肪が腎不全におけるPEWの病態形成に及ぼす影響について検討している。平成28年度は、血液透析患者および対照者における褐色脂肪定量の測定を施行した。また、血液透析患者の血液検体の採取を行った。その他、交感神経活性の指標となる心電図の測定と、インピーダンス法による体組成の計測を施行し、BDHQによる栄養評価も併せて行っている。維持血液透析患者を対象として、(1)PEWの診断を含めた従来の栄養評価、(2)炎症性サイトカイン(血中IL-1、IL-6、TNF-α、ならびに高感度CRPなど)の血中濃度、(3)褐色脂肪誘導因子であるイリシンの血中濃度、(4)褐色脂肪細胞定量について調査し、(5)年齢、透析歴、腎不全の原因疾患などの臨床プロフィールとこれらの関係を検討することで、褐色脂肪細胞への分化に寄与する可能性のある腎不全の病態や褐色脂肪細胞が腎不全におけるPEWの病態形成に及ぼす影響を明らかにする。イリシンはEnzyme-Linked Immunosorbent Assay (ELISA)法で測定し、血液透析の影響を併せて検討する。褐色脂肪組織の検出には、時間分解近赤外分光法装置を用いる。交感神経活性による刺激が褐色脂肪の増加をきたすことから、交感神経の評価に際し、(6)心電図のRR間隔のゆらぎ測定による心拍変動解析を併せて行う。平成28年度は、血液透析患者および対照者における褐色脂肪定量の測定を施行した。また、血液透析患者の血液検体の採取を行った。その他、交感神経活性の指標となる心電図の測定と、インピーダンス法による体組成の計測を施行し、BDHQによる栄養評価も併せて行っている。実際に採取した血液検体を用いたELISA測定のみ現在未施行で準備中である。慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)患者では異化亢進を来たしやすいエネルギー消耗状態にあるが、同患者の栄養障害やそれに伴うサルコペニアの発症・進展機序の詳細は明らかでない。CKD患者では、経口摂取の低下のみならず、尿毒素の蓄積、代謝亢進、炎症、酸化ストレス、インスリン抵抗性など複数の要因が関与し、体蛋白(骨格筋)やエネルギー源(体脂肪)が減少するが、2006年の第12回国際腎栄養代謝学会において、この様なCKDにおける栄養障害は、「Protein-Energy Wasting(PEW)」と呼ぶことが提唱された。本研究では、褐色脂肪がCKDにおけるPEWの病態形成に及ぼす影響の観点から、PEWの発症機序を解明することを目的としている。本研究では、まず白色脂肪細胞の褐色化を誘導する骨格筋由来の生理物質イリシンの血中濃度を血液透析患者で測定し、栄養スクリーニング指標、エネルギー必要量に加え、炎症性サイトカイン、食欲制御因子などとの関連を検討する。合わせて時間分解近赤外分光法装置による褐色脂肪組織の検出・定量を併せて行う。これにより、褐色脂肪細胞への分化に寄与する可能性のある腎不全の病態や、褐色脂肪が腎不全におけるPEWの病態形成に及ぼす影響について検討している。平成28年度は、血液透析患者および対照者における褐色脂肪定量の測定を施行した。また、血液透析患者の血液検体の採取を行った。その他インピーダンス法による体組成の計測を施行し、BDHQによる栄養調査も併せて行った。
KAKENHI-PROJECT-16K19498
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Protein-Energy Wastingの発症・進展における褐色脂肪の関与
平成29年度は、BDHQの解析委託後、褐色脂肪定量測定結果および、体組成や生化学的検査、身体検査結果と合わせて解析を行なった。結果に関しては、各種学会および研究会での公表を行なった。また、現在、採取・保存した血液検体を用いて、ELISA法でイリシン、MCP-1に関して測定、解析中である。近赤外時間分解分光法で測定した褐色脂肪(BAT)密度に基づき血液透析患者および健常成人のBAT密度を評価した。生体電気インピーダンス法で測定した体組成とBAT密度の関係を評価した。33例の血液透析患者のBAT密度は75.6±31.4μM(p = 0.059)で、同年代の健常者61.1±4.3μMと比較し高い傾向を示した。BAT密度および体脂肪量は、血液透析患者において負の相関があった。内臓脂肪面積が血液透析患者で有意に多かったにもかかわらず、BATは血液透析患者において、より高い傾向があった。CKD合併高血圧患者で筋交感神経活動が上昇することがBATの増加の原因として関与している可能性がある。平成28年度に、血液透析患者および対照者における褐色脂肪定量の測定を施行している。また、血液透析患者の血液検体の採取を行った。その他、交感神経活性の指標となる心電図の測定と、インピーダンス法による体組成の計測を施行し、BDHQによる栄養評価も併せて行っている。血液検体は採取・保存が完了しているが、実際に採取した血液検体を用いたELISA測定のみ現在未施行で準備中であり、今後、炎症性サイトカイン(血中IL-1、IL-6、TNF-α、ならびに高感度CRPなど)の血中濃度、褐色脂肪誘導因子であるイリシンの血中濃度について測定する予定。平成29年度は、平成28年度同様、維持透析症例を対象として、(1)protein-energy wasting(PEW)の診断も含めた栄養評価、(2)褐色脂肪誘導因子であるイリシンの血中濃度、(3)褐色脂肪細胞定量を行い前年からの経時的変化についても検討する。更に、平成29年度は、(4)食欲抑制ホルモン(血清中のレプチン、グレリン、ネスファチンなどの食欲抑制ホルモンの血中濃度についてELISA法にて調査し、これら(1)(4)と(5)年齢、透析歴、腎不全の原因疾患などの臨床プロフィールとの関連を検討することで、褐色脂肪細胞への分化に寄与する可能性のある腎不全の病態や、褐色脂肪が腎不全におけるPEWの病態形成に及ぼす影響について検討し、経時的変化をみることにより、褐色脂肪細胞の低栄養進行への関与についても検討する。腎臓内科学平成28年度の褐色脂肪測定が3月であり、その際の使用金額精算が翌年度に繰り越しとなっている。また、採取した血液検体を用いたELISA測定が未施行で、これらに必要な物品を購入する必要がある。上記の精算および、採取した検体を用いたELISA測定物品を購入予定である。その他、現在施行した栄養評価の解析委託費用の発生や、経時的栄状況の変化により群別した上で、再度測定予定であり、さらに、食欲制御因子についてもELISA測定予定である。また、得られた結果を国内外の学会および論文で公表予定であり、報告に関わる費用も発生予定である。
KAKENHI-PROJECT-16K19498
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ビデオ援用に基づく保育者の専門性に関する研究-協同的な活動を中心に-
本年度は,以下の研究活動を実施した.(1) 3歳児の「協同遊び」を支える保育者を対象に、ビデオ・フィールドワークを実施した。また、収集した観察データを用いて、当該保育者、他園の保育者にインタビューを実施した。(2)映像実践を媒介とした保育者と研究者の協働性の構築について、日本保育学会第62回大会(千葉大学)において研究成果を発表した。(4)映像の中の他者の保育を通した児この保育の省察について、日本教育方法学会第45回大会(香川大学)において研究成果を発表した。(5)保育者の実践的思考に関するこれまでの研究成果について、『教育学研究ジャーナル』(第6号2009 54-63頁)に投稿し、掲載された。(6)映像実践を媒介とした保育者と研究者の協働性の構築について、『保育の実践と研究』(第14巻第3号2009 54-63頁)に投稿し、掲載された。(7)保育・幼児教育分野における映像実践の最前線について、子ども社会学研究(依頼論文)に投稿した(掲載予定・印刷中)。本年度は,以下の研究活動を実施した.(1)先行研究の収集:「保育者の専門性」「協同的な活動」「研究方法」の3点に関する先行研究について,和雑誌・洋雑誌ともに,直近10年間の文献を収集した.現在,その分析を行っている.(2)協同的な活動の概念の明確化とフィールドワーク:協同的な活動の概念については,『幼児期から児童期への教育』に基づきながら,「協同での遊び」を研究対象とした.その上で,2007年11月2008年3月の間,3,4,5歳児の協同遊びを支える保育者の言動注目しながら,定期的にフィールドワークを実施した.観察データは,ビデオカメラを用いて収集した.(3)研究会の実施:本年度は,計3回の研究会を実施した.第一回は,明星大学にて,4名の保育実践者を招聘し,協同遊びを支える保育者の専門性について,専門的知識の提供を受けた(2007.12.25).第二回は,広島大学附属幼稚園にて,4名の保育実践者に協力いただき,撮影したビデオデータに関する解釈や,専門的知識の提供を受けた(2008.1.31).第三回は,広島大学にて,門田理世氏(西南学院大学准教授)を招聘し,Visual&Multi-vocal Ethnographyとともに,本研究に対する指導・助言を頂いた(2008.2.29)以上の実績を踏まえ,次年度は,以下の点を検討する.(1)「保育者の専門性に関する研究の動向と課題」という観点から,先行研究をレビューする.(2)研究方法を検討し,保育者の専門性を探り出す一助としてのエスノグラフィーの可能性について論しる.(3)ビデオクリップの作成と上映を通して,保育者の声を収集する.(4)研究会,学会等で発表し,指導・助言を受ける.本年度は,以下の研究活動を実施した.(1)フィールドワーク:3歳児の「協同遊び」を研究対象とした.その上で,2008年4月2009年3月の間,協同遊びを支える保育者の言動に注目しながら,定期的にフィールドワークを実施した.観察データは,ビデオカメラを用いて収集した.(2)研究会における研究成果の発表:2008年4月20日(明星大学),2008年5月13日(東京大学)における幼児教育研究会の揚でこれまでの研究成果を発表した。参加者はいずれも,大学研究者,幼児教育関係者であった。3日本子ども会社学会第15回大会(松山大学)でラウンドテーブルを開催し,これまでの研究成果を発表した。小田豊氏(国立特別支援教育研究所理事長)を招聘し,本研究に対する指導・助言を頂いた(2008.6.29).(4)これまでの研究の成果を研究方法論の視点から検討し,子ども社会学研究(依頼論文)に投稿した(掲載予定・印刷中)以上の実績を踏まえ,次年度は,以下の点を検討する.(1)これまでの研究成果を報告書にまとめる.(2)日本保育学会,PECERA(環太平洋乳幼児教育学会),日本教育方法学会等で発表る.(3)論文を投稿する(教育学ジャーナル,保育の実践と研究,教育方法学研究,保育学研究)(4)研究会,学会等で発表し,指導・助言を受ける.本年度は,以下の研究活動を実施した.(1) 3歳児の「協同遊び」を支える保育者を対象に、ビデオ・フィールドワークを実施した。また、収集した観察データを用いて、当該保育者、他園の保育者にインタビューを実施した。(2)映像実践を媒介とした保育者と研究者の協働性の構築について、日本保育学会第62回大会(千葉大学)において研究成果を発表した。(4)映像の中の他者の保育を通した児この保育の省察について、日本教育方法学会第45回大会(香川大学)において研究成果を発表した。(5)保育者の実践的思考に関するこれまでの研究成果について、『教育学研究ジャーナル』(第6号2009 54-63頁)に投稿し、掲載された。(6)映像実践を媒介とした保育者と研究者の協働性の構築について、『保育の実践と研究』(第14巻第3号2009 54-63頁)に投稿し、掲載された。(7)保育・幼児教育分野における映像実践の最前線について、子ども社会学研究(依頼論文)に投稿した(掲載予定・印刷中)。
KAKENHI-PROJECT-19653092
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チューリップ耐病性二次代謝産物の活性化に関わる新規酵素系の解明
本研究では、チューリップにおける主要二次代謝産物であるチューリッポシド(Pos)類をアグリコンのラクトン化体である抗菌活性物質チューリッパリン(Pa)類へと変換する酵素系の解明を目的とした。主要Pos類であるPosAおよびPosBはそれぞれに対応するPosA変換酵素とPosB変換酵素によって、PaAおよびPaBへとそれぞれ変換されることが分かった。本酵素は加水分解酵素であるカルボキシルエステラーゼと高い配列相同性を有していたが、加水分解反応は全く触媒せず、分子内エステル転移によるラクトン形成反応のみを触媒する非常にユニークな酵素であることが明らかとなった。チューリップにおける主要二次代謝産物であるチューリッポシド(Pos)A、Bは、チューリップ組織内のPosA変換酵素(TCEA)およびPosB変換酵素(TCEB)によってアグリコンのラクトン化体である抗菌活性物質チューリッパリン(Pa)A、Bへとそれぞれ変換される。これまでに、チューリップ花弁からTCEAをコードする遺伝子TgTCEA1を単離・同定し、本酵素が分子内エステル転移によるラクトン形成反応を触媒する新しいタイプのカルボキシルエステラーゼであることを明らかにしているが、TgTCEA1遺伝子は球根においては全く発現がみられなかったことに加え、以前に球根と花弁から精製されたTCEAの性状が異なっていたことから、球根特異的なTCEAアイソザイム遺伝子の存在が強く示唆された。そこで今年度は、球根からの同遺伝子のクローニングおよびその機能解析を行い、チューリップにおけるTCEAの分子多様性を明らかにすることを目的とした。球根から精製されたTCEAの部分アミノ酸配列に基づいたdegenerate RT-PCRおよびRACE-PCRを経て、花弁由来TgTCEA1の一次配列と約77%の相同性を示す新規遺伝子TgTCEA-b1 cDNAを球根から単離した。大腸菌で発現させた組換え酵素はPosからPaへの定量的変換反応を触媒し、PosBよりもPosAに対して約20倍高い反応効率を示したことから、TgTCEA-b1遺伝子がTCEAをコードしていることが確認された。遺伝子発現解析の結果、球根ではTgTCEA-b1のみが発現しており、それ以外の組織ではTgTCEA1が優先的に発現していることが分かった。すなわち、チューリップでは組織によってTCEAアイソザイムの使い分けがなされていることが明らかとなった。チューリップにおける主要二次代謝産物であるチューリッポシド(Pos) A, Bは、チューリップ組織内のPosA変換酵素(TCEA)およびPosB変換酵素(TCEB)によってアグリコンのラクトン化体である抗菌活性物質チューリッパリン(Pa) A, Bへとそれぞれ変換される。これまでに、チューリップ組織からのTCEAの精製とTCEA酵素遺伝子のクローニングに成功しており、本酵素が分子内エステル転移によるラクトン形成反応を触媒する新しいタイプのカルボキシルエステラーゼであることを明らかにしている。今年度はTCEBの精製とTCEB酵素遺伝子のクローニング、機能解析を行い、TCEAとの相違を明らかにすることで、Pos→Pa酵素変換系の全容を解明することを目的とした。開花期のチューリップ各組織の粗酵素中のTCE活性を測定したところ、特に葯において高いTCEB活性が検出された。酵素活性の詳細な局在解析の結果、葯でみられるTCEB活性の大半は葯に付着している花粉細胞に由来することが明らかとなった。そこで、花粉細胞から、各種カラムクロマトグラフィーによってTCEBの精製を行った。精製されたTCEBはPosAよりもPosBに対して顕著に高い酵素活性を示し、先に同定されたTCEAとは明らかに異なるものであることが分かった。精製酵素のN末端および内部アミノ酸配列解析の後、酵素遺伝子のクローニングを行った結果、TCEBはTCEAと同じくカルボキシルエステラーゼファミリーに属する酵素であることが明らかとなった。また、TCEB翻訳産物はN末端にプラスチド移行シグナルを有しており、成熟ポリペプチドはTCEAと同様にプラスチドに局在していることが分かった。本研究では、チューリップにおける主要二次代謝産物であるチューリッポシド(Pos)類をアグリコンのラクトン化体である抗菌活性物質チューリッパリン(Pa)類へと変換する酵素系の解明を目的とした。主要Pos類であるPosAおよびPosBはそれぞれに対応するPosA変換酵素とPosB変換酵素によって、PaAおよびPaBへとそれぞれ変換されることが分かった。本酵素は加水分解酵素であるカルボキシルエステラーゼと高い配列相同性を有していたが、加水分解反応は全く触媒せず、分子内エステル転移によるラクトン形成反応のみを触媒する非常にユニークな酵素であることが明らかとなった。チューリップにおける主要二次代謝産物である「チューリッポシド(Pos)類」は、チューリップ組織内のチューリッポシド変換酵素(tuliposide-converting enzyme; TCE)によってアグリコンのラクトン化体である「チューリッパリン(Pa)類」へと変換される。Pa類は抗菌、殺虫等の活性を示すことから、PosからPaへの変換反応はチューリップの生体防御において重要な役割を担っていると考えられる。Pos/Pa変換系の全容を分子レベルで明らかにするため、今年度はPosA変換酵素(TgTCEA)遺伝子の単離・機能解析を行った。精製酵素の部分アミノ酸配列に基づいたdegenerate-PCRおよびRACE-PCRを行うことで、チューリップ花弁からTgTCEA1およびTgTCEA2の2種の新規遺伝子cDNAを単離した。大腸菌発現組換え酵素を用いた機能解析によって、両遺伝子がPosA変換酵素をコードしていることを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-23780120
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チューリップ耐病性二次代謝産物の活性化に関わる新規酵素系の解明
また、定量RT-PCRによる転写レベル解析によって、TgTCEA1, TgTCEA2両遺伝子は球根以外の全組織において構成的に転写されていることを示した。さらに、GFP融合タンパク質を用いた細胞内局在解析によって、TgTCEA酵素が細胞内ではプラスチドに局在することを明らかにした。TgTCEA酵素の一次配列はカルボキシルエステラーゼと相同性を有しており、触媒残基を含む同ファミリー酵素の保存アミノ酸残基の変異によって、その活性は著しく低下した。しかしながら、TgTCEA酵素はPosAの加水分解産物であるヒドロキシ酸を経由せずに直接ラクトン化体であるPaAを生成することから、本酵素は典型的なカルボキシルエステラーゼが触媒する加水分解ではなく、分子内エステル転移反応によるラクトン形成を触媒する新規カルボキシルエステラーゼであると結論づけた。本研究においては、チューリッポシド類をチューリッパリン類へと変換する酵素系の解明を目指している。これまでの研究によって、チューリッポシドA変換酵素には組織特異的に発現する複数のアイソザイムが存在することを明らかにし、いずれのアイソザイムについても酵素学的諸性質、発現様式、細胞内局在等を明らかにすることができている。目的とする酵素系の全容解明に向けて、生化学および分子生物学的観点からの新しい知見が着実に得られており、概ね順調に進展していると判断できる。本研究において同定を目指している酵素遺伝子のうち、チューリッポシドA変換酵素遺伝子を単離・同定することに成功し、その酵素学的諸性質、発現様式、細胞内局在等も明らかにすることができており、研究は順調に進展していると判断できる。これまでチューリッポシドA変換酵素の同定および機能解析を主としていたが、次年度はチューリッポシドB変換酵素の同定と機能解析を中心に研究を進めていく。同酵素については既に酵素精製を達成しており、酵素遺伝子の単離、組換え酵素発現系の構築、酵素学的諸性質の解明、発現様式の解明、細胞内局在性の解明に取り組んでいく。また、既に同定しているチューリッポシドA変換酵素については、結晶化実験を進め、結晶構造解析を行う予定である。これによって、分子内エステル転移によるラクトン形成反応を触媒する新規カルボキシルエステラーゼとして同定された本酵素の触媒機構を解明する。さらに、これまでに未同定のチューリッポシド生合成遺伝子の同定に向けて、次世代シーケンサーによるトランスクリプトーム解析も状況によっては行っていきたいと考えている。今年度同定することに成功したチューリッポシドA変換酵素遺伝子に続いて、次年度はまずチューリッポシドB変換酵素遺伝子の同定を行う。チューリップ組織からの酵素精製、遺伝子単離の後、チューリッポシドA変換酵素と同様に、酵素学的諸性質、発現様式、細胞内局在を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-23780120
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発生工学的手法を用いたヒト造血幹細胞増殖系の確立
1.ヒトサイトカイントランスジェニックSCIDマウスによるヒト造血系の再構築chicken-βactinプロモーターを使用してヒトGM-CSF,およびIL-3トランスジェニックマウスの作製し,免疫不全マウスであるSCIDマウスと交配をおこない,ヒトGM-CSFとIL-3を発現するSCIDマウス(以下TG-SCIDと呼ぶ)を作製した.作製したTG-SCIDマウスはヒトサイトカイン(GM-CSFとIL-3)を高発現しており,ヒトMDS患者由来の白血病細胞株であるF-36Pをマウス個体内で増殖させることが可能であった.F-36Pを移植されたTG-SCIDマウスでは骨髄組織への顕著な浸潤が見られ,しかも骨髄破壊性質や中枢神経への圧迫による下半身麻痺を引き起こすことが明らかになり,MDS白血病細胞の治療モデルや白血病細胞による神経系への浸潤モデルとして有用でると思われた.また,マウスNK細胞による拒絶反応はSCIDマウスを用いたヒト造血さいぼう再構築研究において検討すべき問題の一つであり,NK細胞の低活性を持ったNOD-SCIDマウスの利用も有用な手段であろう.今後,本モデルマウスを用いて,MDS白血病細胞の骨髄神経への浸潤とそれに伴った神経障害に関する研究,または新しい治療法の開発に有用であると考えられた.2)ミニブタおよびブタ胎児へのヒト造血幹細胞の移植ヒト造血幹細胞による長期骨髄再建モデルを確立するため,ブタ胎児への移植によりヒト血液系の再構築を試みた.ミニブタおよびlarge white系ならびにDuroc系ブタを受胎させ,妊娠日数48日から81日までの15頭の妊娠ブタを1)開腹後経子宮的に,2)開腹したのち腹膜を開けずに,3)超音波診断装置のガイド下で開腹せずに,の3通りの方法でヒト骨髄細胞あるいは臍帯血を胎児に移植した.現在までのところ移植した15頭の妊娠ブタのうち8頭が流産,2頭が妊娠中,5頭が出産した.生まれてきた胎児が1ケ月齢に達したところで抹消血並びに骨髄細胞を採取し,単核球細胞を抗ヒトCD45抗体をはじめとする各種ヒト血球細胞表面抗原と反応する抗体で染色した.これまでのところではヒト血球細胞が1%以上になった例は認められていない.1.ヒトサイトカイントランスジェニックSCIDマウスによるヒト造血系の再構築chicken-βactinプロモーターを使用してヒトGM-CSF,およびIL-3トランスジェニックマウスの作製し,免疫不全マウスであるSCIDマウスと交配をおこない,ヒトGM-CSFとIL-3を発現するSCIDマウス(以下TG-SCIDと呼ぶ)を作製した.作製したTG-SCIDマウスはヒトサイトカイン(GM-CSFとIL-3)を高発現しており,ヒトMDS患者由来の白血病細胞株であるF-36Pをマウス個体内で増殖させることが可能であった.F-36Pを移植されたTG-SCIDマウスでは骨髄組織への顕著な浸潤が見られ,しかも骨髄破壊性質や中枢神経への圧迫による下半身麻痺を引き起こすことが明らかになり,MDS白血病細胞の治療モデルや白血病細胞による神経系への浸潤モデルとして有用でると思われた.また,マウスNK細胞による拒絶反応はSCIDマウスを用いたヒト造血さいぼう再構築研究において検討すべき問題の一つであり,NK細胞の低活性を持ったNOD-SCIDマウスの利用も有用な手段であろう.今後,本モデルマウスを用いて,MDS白血病細胞の骨髄神経への浸潤とそれに伴った神経障害に関する研究,または新しい治療法の開発に有用であると考えられた.2)ミニブタおよびブタ胎児へのヒト造血幹細胞の移植ヒト造血幹細胞による長期骨髄再建モデルを確立するため,ブタ胎児への移植によりヒト血液系の再構築を試みた.ミニブタおよびlarge white系ならびにDuroc系ブタを受胎させ,妊娠日数48日から81日までの15頭の妊娠ブタを1)開腹後経子宮的に,2)開腹したのち腹膜を開けずに,3)超音波診断装置のガイド下で開腹せずに,の3通りの方法でヒト骨髄細胞あるいは臍帯血を胎児に移植した.現在までのところ移植した15頭の妊娠ブタのうち8頭が流産,2頭が妊娠中,5頭が出産した.生まれてきた胎児が1ケ月齢に達したところで抹消血並びに骨髄細胞を採取し,単核球細胞を抗ヒトCD45抗体をはじめとする各種ヒト血球細胞表面抗原と反応する抗体で染色した.これまでのところではヒト血球細胞が1%以上になった例は認められていない.IL-3とGM- CSFは共に未分化な造血前駆細胞に作用して増殖・分化を誘導するサイトカインである.他の多くのサイトカインと異なりIL-3とGM-CSFはヒトとマウスで交差反応性を示さないことが知られている.そこで今年度はヒトIL-3遺伝子とヒトGM- CSF遺伝子のcDNAをchicken albumin promoterの下流に組み込み、マウス受精卵にマイクロインジェクションすることによりそれぞれの遺伝子を発現するトランスジェニックラインを確立することを試みた.これまでにヒトGM- CSFは3ライン、ヒトIL-3は2ライン確立することができた.これらのトランスジェニックマウスでは共にヘテロの状態で平均約30ng/mlという極めて高濃度のヒトGM- CSFおよびIL-3が血清中に検出されたが、これらのマウスを詳しく解析した結果、マウスの造血系がマウスのそれぞれの受容体と全く交差反応しないことが確認された.さらにこれらのトランスジェニックマウスをSCIDマウスと交配することによりヒトサイトカイン遺伝子ををホモにもつSCID
KAKENHI-PROJECT-07557077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07557077
発生工学的手法を用いたヒト造血幹細胞増殖系の確立
マウスを作製した.現在両方のヒトサイトカイン遺伝子をホモに持つSCIDマウスを作製中である.このマウスができしだい純化したヒト造血前駆細胞による再構築を試みる予定である.昨年度までに確立したヒトIL-3遺伝子とヒトGM-CSF遺伝子のトランスジェニックマウスを免疫不全マウスであるSCIDマウスとかけ合わせることにより両方のサイトカイン遺伝子を持つトランスジェニックSCID(TG-SCID)マウスラインを確立した。このマウスは出生、体重、成長に異常は認められず、正常に繁殖を行うことが可能であった。また血液系にも異常を示さず、ヒトIL-3、GM-CSFがマウス血液細胞に全く影響を与えないことがあらためて確認できた。TG-SCIDマウスにおけるヒト造血支持能を明らかにするため、ヒトMyelodysplastic syndrome(MDS)患者由来のIL-3またはGM-CSF依存性に増殖する細胞株であるF36P細胞の移植を試みた。1x107個のF36P細胞をSCIDマウス、TG-SCIDマウス、抗マウスIL-2受容体β鎖抗体を全投与したTG-SCIDマウスに移植したところ、抗マウスIL-2受容体β鎖抗体を全投与したTG-SCIDマウス群においてのみ、マウス個体内でF36P細胞の強い増殖が観察された。これらのマウスでは移植二ヶ月後には全例で後肢の麻痺が見られ、3ヶ月で全例が死亡した。骨髄細胞の役70%がヒト由来の芽球細胞でしめられており、椎体骨への骨溶解性の浸潤ならびに脊髄への浸潤も認められた。また、ヒト正常臍帯細胞を移植したTG-SCIDマウスでは4ヶ月以上にわたりヒト骨髄球系の細胞が末梢血中に観察されており、我々が確立したTG-SCIDマウスがヒト造血系を長期にわたって再構築可能であることを示すデータが得られている。さらに現在、ヒトG-CSFトランスジェニックマウスと交配していて、将来的にはヒトIL-3,GM-CSF,G-CSFの3種類のサイトカインを産生する免疫不全トランスジェニックマウスを作製し、さらに効率の良いマウス個体内でのヒト造血系の再構築を目指す。ヒトIL-3,GM-CSFダブルトランスジェニックSCIDマウスをさらにヒトG-CSFトランスジェニックマウスと交配し、ヒトIL-3,GM-CSF,G-CSFの3種類のサイトカインを産生する免疫不全トランスジェニックマウスの作製を試みたが、3種類の遺伝子を持つマウスラインを得ることができなかった。この原因は不明であるがG-CSFの産生が受精卵の着床や胎児の発育に不利益に働くことが考えられる。マウス個体内でのヒト造血系の再構築を目的として、通常のSCIDマウスではなくNOD-SCIDマウスを使用してヒト骨髄細胞や臍帯血血球細胞の移植を試みた。その結果、非致死量の放射線照射後にヒト血球細胞を移植したところ、3ケ月後でもほとんどのマウスでヒト血球細胞の存在が末梢血ならびに骨髄中で認められ、NOD-SCIDマウスがヒト造血系の再構築を行ううえで、極めて適切なレシピエントであることが明らかになった。今後ヒト造血幹細胞を同定するためのアッセイ系として有用であると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-07557077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07557077
線虫の神経回路における相反性シナプス伝達の分子メカニズム
線虫C. elegansにおいて、温度応答に関わるシンプルな神経系をつかい、温度情報伝達に関わるシナプス情報伝達やシナプス区画化に関わる分子をスクリーニングし、個体レベルでの温度応答の表現型に関して正と負の相反性の制御に関わる分子生理機構を解明することをめざした。解析方法としては、分子遺伝学や個体温度応答に加え、神経活動の光学イメージング技術ももちいた。得られた結果としては、温度受容ニューロンにおける神経伝達物質の自己制御と、温度応答に関わる介在神経におけるプレシナプスとポストシナプスの区分けの分子機構,新規の温度応答現象の解析系の確立があげられる。線虫C. elegansにおいて、温度応答に関わるシンプルな神経系をつかい、温度情報伝達に関わるシナプス情報伝達やシナプス区画化に関わる分子をスクリーニングし、個体レベルでの温度応答の表現型に関して正と負の相反性の制御に関わる分子生理機構を解明することをめざした。解析方法としては、分子遺伝学や個体温度応答に加え、神経活動の光学イメージング技術ももちいた。得られた結果としては、温度受容ニューロンにおける神経伝達物質の自己制御と、温度応答に関わる介在神経におけるプレシナプスとポストシナプスの区分けの分子機構,新規の温度応答現象の解析系の確立があげられる。線虫C.elegansのゲノムDNAのデータベースに公開されているDNA配列情報や、温度受容ニューロンで発現する遺伝子プロファイルから、神経伝達に関わる関連遺伝子をピックアップし、その遺伝子が欠損している変異体などの、温度応答テストを行い、温度応答に異常をもつかを検証した。その結果、幾つかの変異体で異常が観察された。温度刺激を与える前後や、刺激を与えてから数時間後のRNAを単離するための検討実験をおこなった。既に単離されている、温度刺激により発現変動する遺伝子にかんしては、温度学習に関わる変異体(インスリン経路の変異体)において、それらの遺伝子の発現変動が起きているかを測定した。具体的には、リアルタイムPCRをつかい、変異体や野生株において各遺伝子の発現変動レベルを定量化した。その結果、幾つかの遺伝子に関して顕著に発現レベルの変化が観察された。また、温度応答の実験系をもちいて、変異原EMSを利用し、順遺伝学的に温度応答に異常を持つ変異体を単離し、野生株間の1塩基多型を用いて責任変異のマッピングをおこなった。上記の解析に加え、温度学習変異体にかんして、カルシウムイメージングをつかい、既知の温度走性回路におけるシナプス伝達の異常の有無を測定し、相反性のシナプス伝達の学習への関与を解析した。さらに、相反性シナプス伝達が、軸索内でどのようなトポロジーで行なわれるかを調べるために、温度走性回路におけるシナプス局在変異体をもちいて、温度走性行動とシナプス局在を相関付けた解析をおこなった。本研究では、神経情報伝達を含む線虫の温度応答の情報処理メカニズムを解析し、神経情報処理の新しい分子生理システムの同定を行っている。さらに、線虫をモデルとして、温度応答に関わる新規の分子生理機構をシンプルにとらえるための解析系の創出とその分子神経遺伝学的解析をおこなっている。線虫C. elegansにおいて、前年度に引き続き、温度刺激を与える前後や、刺激を与えてから数時間後のRNAを単離するための実験をおこない、DNAマイクロアレイ解析の試行回数を重ね、温度刺激により発現変動する遺伝子の候補を多数同定した。既に単離されている温度刺激により発現変動する遺伝子にかんしては、温度応答神経回路上で機能する変異体における発現変動の解析をおこなってきたため、今回得られた温度応答遺伝子に関しても、リアルタイムPCRをつかい、変異体や野生株において各遺伝子の発現変動レベルを定量化した。昨年度までに、順遺伝学的に温度応答に異常を持つ変異体を単離したため、その責任遺伝子のマッピングを、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかいおこなった。具体的には、X染色体の中央付近にマッピングされた。新規の温度感知神経細胞の候補を明らかにしたため、従来の温度神経回路と相反性神経伝達との関係を、細胞内カルシウムにより、生理的機能を解析した。前年度の解析から単離した温度応答のシナプス伝達に関与していると考えられる遺伝子に関して、GFPやRFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行った。シナプスに局在しているものに関しては、細胞内カルシウムや膜電位のイメージングにより、生理的機能を解析した。本研究では、神経情報伝達を含む線虫の温度応答の情報処理メカニズムを解析し、神経情報処理の新しい分子生理システムの同定を行っている。さらに、線虫をモデルとして、温度応答に関わる新規の分子生理機構をシンプルにとらえるための解析系の創出とその分子神経遺伝学的解析をおこなっている。これまでに同定した温度刺激により発現変動する遺伝子のうち、特に分泌性の分子であるFLP型神経ペプチドに関して、温度応答の異常が観察された。興味深いことに2つのナルアリル間で表現型が相反的であるため、表現型のレスキュー実験を行った。また、温度受容ニューロンにおける神経情報伝達分子の多重変異体解析から、分泌性分子であるグルタミン酸に関しては、温度受容ニューロンから分泌されたグルタミン酸が、温度受容ニューロン自身へ代謝型受容体を介してフィードバックする可能性が示唆された。遺伝学的解析により単離された変異体に関しては、次世代DNAシークエンサー解析を取り入れ、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかい、責任遺伝子候補を2つに絞った。そのうち1つの遺伝子で表現型が部分的に回復した。新しい解析系としては低温適応現象を見つけた。神経ネットワーク情報処理に関しては、細胞内カルシウムイメージングにより、新たな温度受容ニューロンを同定し、その生理的機能を定量化した。
KAKENHI-PROJECT-24687002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24687002
線虫の神経回路における相反性シナプス伝達の分子メカニズム
この温度受容ニューロンのシナプスからインスリンの分泌と、カルシウム依存性のリン酸化酵素の機能が必須であることを公表した。26年度が最終年度であるため、記入しない。分子神経遺伝学26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の計画に従い、計画通りに研究が進んでいるため。目的とした神経伝達に関わる変異体で温度応答の異常が観察されたため。温度刺激前後に発現変動する遺伝子に関して、温度学習の変異体において、その変動が起きているかを検証したため。温度学習の変異体において相反性シナプス伝達回路の異常が見られたため。区画化されたシナプス局在と行動との関係を調べることができたため。当初の計画に従い、計画通りに研究が進んでいるため。温度情報伝達の神経伝達の新規分子が多数単離されたため。温度刺激前後に発現変動する遺伝子と、温度応答の既知の遺伝子との相関性を得たため。新しく同定した温度応答ニューロンのシナプス伝達と神経回路の関係を捉えたため。26年度が最終年度であるため、記入しない。前年度のDNAマイクロアレイ解析から単離した遺伝子のうち、新規の遺伝子に関しては、GFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行う。シナプスに局在しているものに関して、細胞内カルシウムや膜電位のイメージングにより、生理的機能を解析する。前年度に遺伝学的解析により単離された変異体に関しては、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかい、責任遺伝子の同定を行なう。これまでに同定した遺伝子の機能に応じて、関連遺伝子変異との遺伝学的優位解析から機能を決定する。本年度にDNAマイクロアレイ解析から単離した遺伝子のうち、特に分泌性の分子に絞って、GFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行う。神経ネットワーク情報処理に関わる場合は、細胞内カルシウムイメージングにより、生理的機能を解析する。本年度に引き続き遺伝学的解析により単離された変異体に関しては、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかい、責任遺伝子の同定を行なう。26年度が最終年度であるため、記入しない。初年度において光学機器や研究材料を購入し、研究を遂行できる状況となったため、本年度はより効率的に研究を遂行するために研究員を雇用し研究の遂行に努める。研究に必要な材料か海外からの輸入品であったため、メーカーへの年度内の納品が間に合わず、若干の未使用額が生じた。本年度はより効率的に研究を遂行するために研究員を雇用し研究の遂行に努めたため、興味深い結果が得られた。当初計上していた研究に必要な機器が最新の技術の発展により、機能が相対的に低くなってしまったため、次年度での購入を検討した結果、その分の未使用額が生じた。カルシウムイメージングを行う際に線虫の動きが予想以上に大きいため、その動きをとらえるためのソフトウェアを計上する。7月にC. elegansの国際学会が行われるため、その旅費を大きく計上する。
KAKENHI-PROJECT-24687002
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流動的居住に着目した集住地を継承する主体の養成に関する研究
研究成果として「住み継がれる集落をつくる」を出版した。概要は以下の通りである。都市住民の移住・交流を受け入れつつも、集落の側に議論の軸足を移し、集落の空間・社会を持続していくために、集落を質的に転換しつつ、集落が住み「継がれ」ていくありようを描く必要がある。集落を「継ぐ」担い手の養成を、集落が戦略的に展開する必要がある。住んでいる人々が積極的に外部と連携して積極的に交流を展開することで、各自のご縁の量を増やして、住んでいる人々が減っても、集落の活動量(ご縁の量)を落とさないようにできるのではないか。このことで、住み継いでくれる人が現れる偶発的な可能性を広げていけると考える。過疎地域においては限界集落や消滅集落という言葉が一般に普及し深刻な状況に立たされている。地方小都市の中心市街地などの衰退も顕著になってきており、国土保全を考える上でこれらの集住地の持続は重要な課題である。このとき、空き家を有効活用し新規居住者を招き入れることを契機として、地域の維持・継承を目指す事例が増えている。本研究では、兵庫県篠山市や徳島県神山町、和歌山県紀美野町などを対象とし、「住まいの確保」「職業の確保」「コミュニティの支援」といった課題と、住み手、貸し手、コミュニティといった主体との関係から、集住地を継承する主体養成に資する要件を抽出することを目的としている。本年度は、準備期間中に連携を図っていた、兵庫県篠山市、徳島県神山町、和歌山県紀美野町などからゲストを迎え、日本建築学会大会において「住み継がれるカタチ」と題した研究懇談会を開催し、流動的居住と地域の継承について討論を行った。また、大分県国東市において公開研究会も開催し、国東半島芸術祭と地域の継承について討論も行った。これらの記録をもとにしながら、成果を出版していくために、議論を進めているのが現状である。本年度は、日本建築学会大会農村計画部会において、オーガナイズドセッション「空き家と地域」を開催し、主に研究分担者らの発表を促し、5件の研究発表と意見交換を行った。また、研究成果の取りまとめに向けて、研究分担者らから、7000字程度の各地の事例報告を提出してもらった。これに基づいて、出版に向けて調整を始めている。本書は、日本建築学会農村計画委員会の集落居住小委員会のメンバーを中心に編集刊行するものである。自ずと「居住」を核として議論を展開していることに特徴がある。2012年度の小委員会設立以降、年2-3回にわたる公開研究会(6回実施)、学会での研究協議会を通じて、全国各地の地元の仕掛け人や移住者、アーティスト、地域おこし協力隊員など、数多くの地域づくりの実践者とともに現地にて「住み継ぐカタチ」をテーマに掲げた議論を重ねてきた。こうした作成のプロセスから、閉じた学問領域の学術書にとどまるものでは決してない。現地の人々の声に耳を傾け、実践者・研究者として得られた知見を紹介し、またその意見を受け止める、こうした相互のやりとりの中で描き出された知見をまとめている。その結果、本書の構成も、各地での議論を振り返りながら内容をとりまとめたものになっており、その成果をまた全国各地に還元していくものである。本書が各地の地域づくりの実践者のための処方箋となり、住み継がれる地域に向けた取り組みが全国各地で展開され、地域が持続的になっていくことが期待される。1年目に問題意識や仮説を共有し、2年目に各研究分担者の事例調査を行い、3年目に取りまとめて出版に向けて調整をしていくという、当初の予定通りに概ね進んでいると言える。長期にわたり過疎・少子高齢化に取り組んできた課題先進地である農山漁村に目を向けると、田園回帰といわれるように、現役世代の移住・交流が頻繁に行われている。本書は、このような現代社会のモビリティの高まりにもとづいた、都市と農村との往来が頻繁になった今日の暮らし方から、持続的な地域社会をつくるための解決策を探っている。本書では「住み継がれる」という言葉には、「住む」と「継がれる」という二つの課題を掛け合わせて解いていくべきという想いを託している。「住む」という言葉は、一般的には「定住」するということが前提になる。つまり一定の場所に居所を定め、住まい続けることと言い換えられる。しかし、昨今は、二地域居住や週末居住、多拠点居住という言葉を耳にするようになった。今日的な暮らし方として、一定の場所に「定住」することが、すなわち「住む」という行為では必ずしもなくなりつつある。これを私たちは「流動的居住」とか「動居」と呼んでみたりしている。人々の「住む」という行為を、もっと拡張して捉えることの中から、地域の持続性を高める可能性の見い出せるのではないだろうか。「住む」という行為を拡張して捉えると、コミュニティとの関係や農地・山林といった地域資本を誰がどのように継承していくのか、という問いも生まれてくる。「継ぐ」という能動的な表現であると自ずと住み継ぐ主体である人間に焦点があたる。移住ブームにもそのような傾向があるように思う。もちろん、それはそれで大切な視点ではある。敢えて「継がれる」という受動的な表現を打ち出していくことで、住み継がれる対象である「地域」に重きを置こうとしている。
KAKENHI-PROJECT-26289214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26289214