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流動的居住に着目した集住地を継承する主体の養成に関する研究
ここには、地方移住・田園回帰の一歩先を見据えて、地域が如何に継がれていき、その継続性が確保されていくのか、その方策とはどのようなものなのか、といった問いを解いていこうとする意思を込めている。研究成果の公表のために、出版を予定しており、その進捗が思わしくないため。来年度上半期には出版予定である。本年度は、4月より8月にかけて研究成果を取りまとめて出版するための打ち合わせを数多く行った。その甲斐あって、山崎義人・佐久間康富著「住み継がれる集落をつくる」学芸出版社,2017.8を、本研究の集大成として公表することができた。また、関連して日本建築学会大会にて「住み継がれるカタチ限界の先へ住み継ぐ」と題した公開研究会を開催し議論を深めた。本研究において、導き出された集落を住み継いでいくための基本的なフレームは以下のようなものである。農山漁村集落の内発力はこれからも縮んでいくだろう。しかし都市部や全世界から拡散してくる外発力を取り込みつつ、集落内にそれらの魅力を凝縮していく、そのような戦略もありうる。この時、「移住」という言葉に重きを置きするぎると、移住者数などの定量的で静的なとらえ方を指標とすることに留まってしまいかねない。都市住民の移住・交流を受け入れつつも、集落の側に議論の軸足を移し、集落の空間・社会を持続していくために、集落を質的に転換しつつ、集落が住み「継がれ」ていくありようを描く必要がある。今後30年を射程において、集落を「継ぐ」担い手の養成を、集落が戦略的に展開する必要がある。以上のような考えを、2つのシナリオとして示す。住んでいる人には、それぞれにご縁がある。住んでいる人が多ければ、集落にあるご縁の総量も自ずと多くなる。このまま、時が過ぎ次第に住んでいる人々の数が減るのであれば、集落にあるご縁の総量も、そのまま減るだろう。これがシナリオ1である。これに対して、住んでいる人々が積極的に外部と連携して積極的に交流を展開することで、各自のご縁の量を増やして、住んでいる人々が減っても、集落の活動量(ご縁の量)を落とさないようにできるのではないか、というのがシナリオ2である。このことで、住み継いでくれる人が現れる偶発的な可能性を広げていけると考える。研究成果として「住み継がれる集落をつくる」を出版した。概要は以下の通りである。都市住民の移住・交流を受け入れつつも、集落の側に議論の軸足を移し、集落の空間・社会を持続していくために、集落を質的に転換しつつ、集落が住み「継がれ」ていくありようを描く必要がある。集落を「継ぐ」担い手の養成を、集落が戦略的に展開する必要がある。住んでいる人々が積極的に外部と連携して積極的に交流を展開することで、各自のご縁の量を増やして、住んでいる人々が減っても、集落の活動量(ご縁の量)を落とさないようにできるのではないか。このことで、住み継いでくれる人が現れる偶発的な可能性を広げていけると考える。交付申請時点では、各地域においての調査が行われている予定であったが、本研究組織の母体となっている日本建築学会の集落居住小委員会において日本建築学会の大会における研究懇談会を開催していたために、予定より遅れてしまっている。各分担者らから集めた7000字程度の事例報告をもとに、出版に向けた草稿を研究会を通じてブラッシュアップし、年度末には出版にこぎつけるよう、研究を進めていく。粛々と出版作業を進める。現在、脱稿しており、何度かの校正後に出版予定である。29年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-26289214
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26289214
学習障害ハイリスク児の教育的・心理的・医学的評価と継続的支援の在り方に関する研究
本研究は平成7-9年度科学研究費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病に発生する学習障害を長期追跡研究のなかでとらえかつ適切な介入を実施するという点で、二つの研究プロジェクトは共通している。本年度は4年の研究期間の最終年度にあたるので、収集した資料を整理し報告書を作成した。報告書の構成は3部からなる。第1部では、LDハイリスクとはなにかを論じている。LD、ADHD、発達性言語障害、高機能自閉症を取り上げて、それらの概念を解説している。次に、医学的立場からのLD児への支援の在り方を具体的に述べた。いわゆる「専門家チーム」の一員として、医師がLD判断にどのように関わるのかを示したガイドラインを添付した。最後に極低出生体重児のフォローアップの実際と支援の要点を述べた。第2部では、LDハイリスクの実態と題して、極低出生体重児に合併するADHD、発達性協調運動障害、LD、熱性けいれんに関して、研究期間中に収集した資料を整理した。急性リンパ性白血病(ALL)の認知機能の経過と、東京小児がん研究会の新しいプロトコール(TCCSG14)で治療されたALL児の認知特性を調査した。第3部はADHDのある児童生徒への教師の認識と態度に関する研究である。本研究は豪州の研究者(西シドニー大学J.Bailey教授とL.Graham博士)との共同研究である。共同で開発した質問紙(JJ-Scale)の英語版と邦訳版を補遺として掲載してある。本研究は平成7-9年度科学研究費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病に発生する学習障害を長期追跡研究のなかでとらえかつ適切な介入を実施するという点で、二つの研究プロジェクトは共通している。本年度は4年の研究期間の最終年度にあたるので、収集した資料を整理し報告書を作成した。報告書の構成は3部からなる。第1部では、LDハイリスクとはなにかを論じている。LD、ADHD、発達性言語障害、高機能自閉症を取り上げて、それらの概念を解説している。次に、医学的立場からのLD児への支援の在り方を具体的に述べた。いわゆる「専門家チーム」の一員として、医師がLD判断にどのように関わるのかを示したガイドラインを添付した。最後に極低出生体重児のフォローアップの実際と支援の要点を述べた。第2部では、LDハイリスクの実態と題して、極低出生体重児に合併するADHD、発達性協調運動障害、LD、熱性けいれんに関して、研究期間中に収集した資料を整理した。急性リンパ性白血病(ALL)の認知機能の経過と、東京小児がん研究会の新しいプロトコール(TCCSG14)で治療されたALL児の認知特性を調査した。第3部はADHDのある児童生徒への教師の認識と態度に関する研究である。本研究は豪州の研究者(西シドニー大学J.Bailey教授とL.Graham博士)との共同研究である。共同で開発した質問紙(JJ-Scale)の英語版と邦訳版を補遺として掲載してある。本研究は平成7-9年度科研費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続的研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病児に発生する学習障害を長期追跡研究の中で捉えかつ適切な介入を実施するという点で共通している。どちらの対象児についてもさらなる資料を集積中である。新たな研究の視点として、学習障害に高率に合併する注意欠陥多動性障害にも注目して研究を進めることにした。すてに極低出生体重児群では、前回の科研費において、Actigraphによる体動量の検討を実施しているが、本年度はさらに症例を集積して、第79回日本小児精神神経学会にて、研究代表者の原仁が、「学童期極低出生体重児に合併する注意欠陥多動性障害-Actigraphによる検討-」と題した口頭発表を実施した。なお、注意欠陥多動性障害児の重心動揺を測定するために、現在アニマ社製グラビコーダーGS3000を用いて資料を収集中である。また、第34回日本新生児学会にて、原仁が、「学童期極低出生体重児に発生する学習障害-WISC-RとPRS調査との比較-」と題して、研究成果の一部を口頭発表した。同学会にて、研究分担者の三石知左子が「発達検査からみた極低出生体重児の早期介入のありかたについて」を同じく口頭発表した。研究代表者原仁は、日本LD学会第7回研究大会の研究委員会企画シンポジウム「学習障害にどのような援助ができるか」に招聘され、医学の立場から話題を提供する機会が与えられた。本研究は平成7-9年度科研費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続的研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病児に発生する学習障害を長期追跡研究の中で捉えかつ適切な介入を実施するという点で共通している。
KAKENHI-PROJECT-10309010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10309010
学習障害ハイリスク児の教育的・心理的・医学的評価と継続的支援の在り方に関する研究
どちらの対象児についてもさらなる資料を集積中である。新たな研究の視点として、学習障害に高率に合併する注意欠陥多動性障害にも注目して研究を進めることにした。なお、注意欠陥多動性障害児の重心動揺を測定するために、現在アニマ社製グラビコーダーGS3000を用いて資料を収集中である。研究代表者原仁は、第26回日本小児神経学会近畿地方会に招聘され「特別講演・学童期極低出生体重児に発生する学習障害/注意欠落多動性障害」を発表する機会が与えられた。本研究は平成7-9年度科学研究費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続的研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病に発生する学習障害を長期追跡研究の中でとらえかつ適切な介入を実施するという点で共通している。どちらの対象児についてもさらなる資料を集積中である。昨年度より、学習障害に高率に合併する注意欠陥・多動性障害(ADHD)も、学習障害発生のリスク因子として注目して研究をすすめている。学童期極低出生体重児を中心に、アニマ社製グラビコーダーGS3000を用いて、重心動揺を測定して算料を収集中である。本研究は平成7-9年度科学研究費基盤研究(A)(1)「学習障害ハイリスク児における学習困難の発生要因と学校適応に関する研究(研究代表者原仁,課題番号07309014)」の継続研究である。学童期極低出生体重児と治療完了後の白血病に発生する学習障害を長期追跡研究のなかでとらえかつ適切な介入を実施するという点で共通している。本年度は4年の研究期間の最終年度にあたるので、過去3年間に収集した資料を整理し学会発表および論文発表をした。学童期に達した極低出生体重児を対象に二つの観点から学会発表した。第104回日本小児科学会(ワークショップ採用演題)にて「極低出生体重児に発生する注意欠陥/多動性障害」、第43回日本小児神経学会にて「極低出生体重児に発生する熱性けいれん」である。白血病に発生する学習障害に関しては、第43回日本小児血液学会にて「治療後の急性白血病児の認知機能(第4報)-WISC-III知能検査を用いた検討-」を発表した。日本LD学会第10回研究大会の大会企画シンポジウムに招聘され、講話「行動の間題の理解と支援」をおこなう機会が与えられた。
KAKENHI-PROJECT-10309010
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10309010
飽和粘土の変形の局所化挙動とその予測法に関する研究
地盤材料が破壊する場合、均一変形からある狭い範囲に変形が集中して行き、せん断帯が発生する変形の局所化現象が観察される。このような現象は、地滑りや地盤の破壊におけるすべり面の発生として、古くから知られている。したがって、地盤の破壊現象を把握し予測するためには、是非、この現象のメカニズムを明らかにする必要がある。本研究では、間隙水圧の存在により観察が困難である研究例の少ない粘性土を取り上げた。本研究においては、まず、自然粘土の試料を用いた非排水平面ひずみ試験を多軸試験機を用いて、せん断帯の形成の様子を観察した結果に基づき、特に、せん断帯の位置、角度と幅に注目した。このような飽和粘性土の変形の局所化について、非局所および局所型のひずみ軟化型粘塑性モデルを用いて問題を定式化し、数値シミュレーションを行った。解析はUpdated Lagragian法による有限変形有限要素法を用い、内部の水の移動を考慮した2相系解析を行なった。得られた主要な結果は、以下のようである。ひずみ軟化を考慮した足立・岡の粘塑性モデルはひずみの局所化を表現しうることが明らかとなった。また、間隙水圧の発生はせん断帯の周辺で多く、このことは、平面ひずみ試験で調べられた結果、非排水せん断後にせん断帯では他の部分に比べて、含水比は小さかったことに対応している。透水係数の小さい粘土ほど、せん断帯の発生は顕著である。せん断帯の幅は、塑性体積ひずみの空間二階勾配によって表現できる。また、このようなひずみの勾配の導入はモデルをより保存的なものとすることが明らかとなった。地盤材料が破壊する場合、均一変形からある狭い範囲に変形が集中して行き、せん断帯が発生する変形の局所化現象が観察される。このような現象は、地滑りや地盤の破壊におけるすべり面の発生として、古くから知られている。したがって、地盤の破壊現象を把握し予測するためには、是非、この現象のメカニズムを明らかにする必要がある。本研究では、間隙水圧の存在により観察が困難である研究例の少ない粘性土を取り上げた。本研究においては、まず、自然粘土の試料を用いた非排水平面ひずみ試験を多軸試験機を用いて、せん断帯の形成の様子を観察した結果に基づき、特に、せん断帯の位置、角度と幅に注目した。このような飽和粘性土の変形の局所化について、非局所および局所型のひずみ軟化型粘塑性モデルを用いて問題を定式化し、数値シミュレーションを行った。解析はUpdated Lagragian法による有限変形有限要素法を用い、内部の水の移動を考慮した2相系解析を行なった。得られた主要な結果は、以下のようである。ひずみ軟化を考慮した足立・岡の粘塑性モデルはひずみの局所化を表現しうることが明らかとなった。また、間隙水圧の発生はせん断帯の周辺で多く、このことは、平面ひずみ試験で調べられた結果、非排水せん断後にせん断帯では他の部分に比べて、含水比は小さかったことに対応している。透水係数の小さい粘土ほど、せん断帯の発生は顕著である。せん断帯の幅は、塑性体積ひずみの空間二階勾配によって表現できる。また、このようなひずみの勾配の導入はモデルをより保存的なものとすることが明らかとなった。本研究においては、自然粘土の大口径サンプリング(現有のサンプラーを使用)を実施し、多軸試験用の試料を得た。次に、多軸試験機を用いた平面ひずみ試験を実施し、せん断帯の形成過程を明らかにした。破壊近傍でのせん断帯の生成や含水比の分布等が明らかとなった。実験結果に基づき、粘土の弾粘塑性構成式を用いた解析を行い、有限変形有限要素法による数値シミュレーションを実施した。用いるモデルは、材料の劣化を考慮しうるひずみ軟化型構成式であるが、弾粘塑性型であるので、境界値問題が適切に定義でき、すなわち解がユニークにかつ安定に求められた。自然粘土の多軸試験を実施することにより、数値シミュレーションについては、破壊時近傍での不安定性を取り除くために、新たに開発した、塑性ひずみ勾配依存型構成式を用いた。しかしながら、空間2階勾配の計算のために、非常に複雑なアルゴリズムを提案したために、大規模な数値解析はできなかった。この問題を解決するため、平成8年度においては、硬化パラメータの塑性体積ひずみを8節点で定義し直し、新たな数値解析プログラムを作成することとする。地盤材料が破壊する場合、均一変形からある狭い範囲に変形が集中して行き、せん断帯が発生する変形の局所化現象が観察される。このような現象は、地滑りや地盤の破壊におけるすべり面の発生として、古くから知られている。したがって、地盤の破壊現象を把握し予測するためには、是非、この現象のメカニズムを明らかにする必要がある。本研究では、間隙水圧の存在により観察が困難である研究例の少ない粘性土を取り上げた。本研究においては、まず、自然粘土の試料を用いた非排水平面ひずみ試験を多軸試験機を用いて、せん断帯の形成の様子を観察した結果に基づき、特に、せん断帯の位置、角度と幅に注目した。このような飽和粘性土の変形の局所化について、非局所および局所型のひずみ軟化型粘塑性モデルを用いて問題を定式化し、数値シミュレーションを行った。解析はUpdated Lagragian法による有限変形有限要素法を用い、内部の水の移動を考慮した2相系解析を行なった。
KAKENHI-PROJECT-07650568
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650568
飽和粘土の変形の局所化挙動とその予測法に関する研究
得られた主要な結果は、以下のようである。ひずみ軟化を考慮した足立・岡の粘塑性モデルはひずみの局所化を表現しうることが明らかとなった。また、間隙水圧の発生はせん断帯の周辺で多く、このことは、平面ひずみ試験で調べられた結果、非排水せん断後にせん断帯では他の部分に比べて、含水比は小さかったことに対応している。透水係数の小さい粘土ほど、せん断帯の発生は顕著である。せん断帯の幅は、塑性体積ひずみの空間二階勾配によって表現できる。また、このようなひずみの勾配の導入はモデルをより保存的なものとすることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-07650568
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07650568
ドイツ語・オランダ語・フリジア語の対照文法記述 -西ゲルマン語類型論に向けて
本研究の主たる目標は、ドイツ語、オランダ語、フリジア語(Frisian)を含むいわゆる現代西ゲルマン語(West Germanic)の文法的構造にかんする組織的な対照研究を行い、ゲルマン語-とくに西ゲルマン語類型論の構築をめざすことにあった。そのさいの重点は、西・北・東の三つの下位グループに分かれ、歴史的に北海ゲルマン語(North-Sea Germanic)の唯一の後裔として位置付けられるフリジア語、とりわけ、オランダ・フリースラント州(Provincie Friesland)で約40万人の話者に用いられる西フリジア語(西フ.Wester-lauwersk Frysk)に置かれた。本研究から得られたもっとも重要な成果は、次の三点に集約される。まず第一に、ゲルマン語類型論の方法論的可能性にかんする概説的論考、第二に、関連するゲルマン諸語との比較を豊富に盛り込んだ西フリジア語の文法構造についての一連の論文(とりわけドイツ語、オランダ語と対比した同言語の名詞抱合(noun incorporation)は特筆に値するテーマである)-、そして、最後に、ドイツ語、オランダ語、英語といった隣接するゲルマン語への言及を配慮したオランダ語の音韻構造についての概観である。以上の研究は、さらに、北ゲルマン語の接辞定冠詞(cliticized definitearticle)の形態論的考察にも及んだ。本研究は従来、ゲルマニスティクの枠組みから看過されていた日本のドイツ語学、ゲルマン語学の領域を本質的に拡大することに成功したと言える。また、北ヨーロッパの複数の研究機関を直接訪れることによって、主要な研究者と積極的に交流したこともきわめて大きな意義があった。本研究の主たる目標は、ドイツ語、オランダ語、フリジア語(Frisian)を含むいわゆる現代西ゲルマン語(West Germanic)の文法的構造にかんする組織的な対照研究を行い、ゲルマン語-とくに西ゲルマン語類型論の構築をめざすことにあった。そのさいの重点は、西・北・東の三つの下位グループに分かれ、歴史的に北海ゲルマン語(North-Sea Germanic)の唯一の後裔として位置付けられるフリジア語、とりわけ、オランダ・フリースラント州(Provincie Friesland)で約40万人の話者に用いられる西フリジア語(西フ.Wester-lauwersk Frysk)に置かれた。本研究から得られたもっとも重要な成果は、次の三点に集約される。まず第一に、ゲルマン語類型論の方法論的可能性にかんする概説的論考、第二に、関連するゲルマン諸語との比較を豊富に盛り込んだ西フリジア語の文法構造についての一連の論文(とりわけドイツ語、オランダ語と対比した同言語の名詞抱合(noun incorporation)は特筆に値するテーマである)-、そして、最後に、ドイツ語、オランダ語、英語といった隣接するゲルマン語への言及を配慮したオランダ語の音韻構造についての概観である。以上の研究は、さらに、北ゲルマン語の接辞定冠詞(cliticized definitearticle)の形態論的考察にも及んだ。本研究は従来、ゲルマニスティクの枠組みから看過されていた日本のドイツ語学、ゲルマン語学の領域を本質的に拡大することに成功したと言える。また、北ヨーロッパの複数の研究機関を直接訪れることによって、主要な研究者と積極的に交流したこともきわめて大きな意義があった。上記の研究課題に基づいて研究を行った結果、裏面の業績表にあるように、論文3点を発表することができた。また、学会発表として、次の2つの発表を行った。「フリジア語群の変容と言語研究-多言語使用におけるアイデンティティー一」(京都ドイツ語研究会関西ドイツ文化センター5月)「フリジア語群をめぐる多言語使用と言語干渉」(北海道ドイツ文学会札幌大学7月)さらに、海外旅費を活用して、9月にドイツに出張し、キール大学北フリジア語辞書編集所(Nordfriesische Worterbuchstelle,Universitat Kiel)およびプレートシュテト(Bredstedt)の北フリジア超研究所(Nordfriisk In一situut)などで研究計画についてのレヴューを受けた。とりわけ、後者においては雑誌Nordfrieslandに投稿を求められ、申請者の研究についての紹介を行い、国際的な関心と評価を得ることができたく裏面業績表参照〉。今年度はドイツ語とオランダ語との対照を豊富に織り込んだ西フリジア語の動詞の構造について、語形変化、時制、法、アスペクトを中心に考察した(裏面業績表参照)。来年度は残りの現象についてできるだけ考察を進め、成果を公表するために努力したい。そのためには、西フリジア語学について、オランダに赴く必要があり、今年度と同様に海外旅費を活用する予定である。上記の研究課題に基づいて研究を行った結果、裏面の業績表にあるように、論文4点を発表することができた。さらに、海外旅費を活用して、9月にオランダ等に出張し、オランダのフローニゲン大学フリジア語学科(Fries Instituut,Rijksuniversiteit Gronigen)およびフリスケ・アカデミー(Fryske Akademy)において研究計画についてレヴューを受け、一部の研究成果について議論を行ったことがきわめて有効だった。今年度はドイツ語とオランダ語との対照を豊富に織り込んだ西フリジア語の動詞の構造について、話法の助動詞、受動態、再帰動詞、非人称動詞を中心に考察した(裏面業績表参照)。来年度は残りの現象についてできるだけ考察を進め、成果を公表するために努力したい。そのためには、再びヨーロッパに赴くことが必要不可欠であり、今年度と同様に海外旅費を活用する予定である。今年度は、西ゲルマン語類型論の立場から、西フリジア語の名詞抱合について考察した。
KAKENHI-PROJECT-10610491
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610491
ドイツ語・オランダ語・フリジア語の対照文法記述 -西ゲルマン語類型論に向けて
これはゲルマン語、あるいは印欧語として特異な現象であり、類型論的に興味深い題材を提供し、他言語の研究者からも好意的に迎えられた。また、ゲルマン語類型論の全体的な構想をまとめることにも努力し、低地ドイツ語の歴史からも題材を求めて、多角的に研究を進めた。その結果、裏面の業績表に示したように、論文3点を発表することができた。大きな目標だったウイーン開催の国際ゲルマニスト学会(IVG)での研究発表は、校務の都合上、日程的に無理が生じたので果たせなかったが、そのかわり、日本言語学会第121回大会(11月25日、名古屋学院大学開催)において、「西フリジア語の名詞抱合の特徴と抱合動詞の形成」と題する研究発表を行なった。もっとも意義が深かったのは、海外旅費を活用して、9月にアイスランドと北欧スカンジナヴィアに出張したことである。とくにアイスランド大学シーグルズル・ノルダル研究所(Stofnun Sigurδar Nordals)において研究計画についてレヴューを受け、一部の研究成果について議論を行なった。フリジア語と同様のマイナーなゲルマン語でありながら、地理的・政治的な理由から言語的アイデンティティーが強固なアイスランド語の生態は、社会言語学的にフリジア語との比較から非常に示唆に富むものだった。そのさい、北欧4カ国の代表的な大学図書館でゲルマン語関係の資料調査を行なうことができたが、従来のドイツ、オランダへの海外出張では得られなかった文献を大量に補う点で、きわめて有効であった。国内での文献情報が非常に乏しい本研究分野によって、海外旅費の活用は必要不可欠な使用用途であり、これを積極的に活用したことが、今回の成果に最大の貢献をもたらしたといえる。今年度は、西ゲルマン語類型論の発展として、ゲルマン語全体を視野に含む展開研究を行なった。すなわち、北欧スカンジナヴィアの北ゲルマン語と西ゲルマン語を比較し、デンマーク・ユトランド半島東部以北の北ゲルマン語に特徴的な後置定冠詞の類型論的特徴について、日本言語学会第122回大会(2001年6月24日一橋大学)で研究発表を行なった。同研究発表は別記論文として発表した。これは北ゲルマン語の後置定冠詞が同言語にかんする最近の代表的な概説書の記述と異なって、屈折語尾(inflectional ending)ではなく、接語(clitic)であることを明らかにしたものである。これは、西ゲルマン語と違って後置定冠詞が発達した理由を接語語化(cliticization)と語形成的制約に求めることによって、本研究の発展的成果としてとらえられる。研究費の活用としてもっとも意義が深かったのは、海外旅費によって8月から9月にかけてオランダ・ベルギー・ルクセンブルクに出張し、フローニンゲン大学をはじめとするフリジア語・オランダ語研究者と研究成果について議論を行なったことである。加えて、今回はルクセンブルクでルクセンブルク語の広汎な資料収集が可能になった。
KAKENHI-PROJECT-10610491
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10610491
言語理解における脳内情報統合機構の研究-情報の曖昧性解消、誤り修正過程の検討-
曖昧な情報を柔軟に処理して言語を理解する脳内処理を解明するために,非侵襲的脳機能計測実験を行い,複数の意味候補をもつ単語(多義語)の理解には左半球の前頭部の働きが重要であることを示した.多義語呈示直後には複数の意味が自動的に活性化され,呈示後約200msには左下前頭部において文脈を利用した意味検索が開始し,その後,文脈との意味的照合が行われて,呈示後約550msには文脈に適した意味に収束することが示唆された.曖昧な情報を柔軟に処理して言語を理解する脳内処理を解明するために,非侵襲的脳機能計測実験を行い,複数の意味候補をもつ単語(多義語)の理解には左半球の前頭部の働きが重要であることを示した.多義語呈示直後には複数の意味が自動的に活性化され,呈示後約200msには左下前頭部において文脈を利用した意味検索が開始し,その後,文脈との意味的照合が行われて,呈示後約550msには文脈に適した意味に収束することが示唆された.ことばの意味的な曖昧さ(語彙的曖昧性)が脳内でどのように表現され,また,それがどのように解消されて状況に適した意味が選択されるのか,そのメカニズムについてこれまで多くの行動学的アプローチがなされ,いくつかの処理モデルが立てられてきたが,その脳内処理の神経基盤は未だ明らかになっていなかった。本研究では,脳磁場計測法(MEG)を用いて,語彙的曖昧性を含むことば(多義語)の意味を先行情報(文脈)によって一つに確定するときの脳活動の部位と時間的変化を調べ,その結果から,語彙的曖昧性の解消に左半球の下前頭部の働きが重要であることを明らかにした。具体的には,多義語の呈示直後には,文脈に関係なく候補となる複数の意味表象が自動的に活性化され(ボトムアップ的意味処理),呈示約0.2秒後には左半球下前頭部において文脈を利用した意味検索(トップダウン的意味処理)が開始し,その後,文脈的に合わない意味表象の活性化は抑制されて,呈示約0.5秒後には文脈に合う一つの意味に確定されることを示唆した。これらの結果は,脳が文脈を利用して語彙的曖昧性を解消するメカニズムを,その活動の時間的・空間的側面から初めて詳細に示したものであり,候補となる複数の意味表象が一旦は並列的に賦活し,その後,与えられた文脈などの手がかりによって意味が一つに収束するとする行動学的アプローチで得られたモデルを神経生理学的アプローチからサポートするものである。コミュニケーションの場面において、ことばの意味は取り巻く状況(先行情報、心的状態、使用場面など)により変化しうる(語彙的曖昧性)。例えば、同じことばでも、相手がうれしそうに話しているときと怒って話しているときでは受け取り方は異なり、人によっても受け取り方はさまざまである。本研究では、感情的側面を含む言語理解の脳内処理を調べるために、脳磁界計測法(MEG)を用いた研究を行った。実験では、プライミングパラダイム(プライム:感情音声、ターゲット:視覚単語)を用いて、先行する感情的文脈が後続する単語の処理にどのような影響を与えるのかを調べた。ターゲットは感情的に中立な単語であるが、先行する感情音声の種類によって受け取り方が異なると予想される。ターゲット処理時において全被験者に共通して活動した脳部位は、左半球の下前頭後部、上側頭後部・縁上回、腹側後頭側頭部・紡錘状回、両半球の側頭前部、内側側頭前部、後頭部であった。そのうち、左下前頭後部、左側頭前部、左腹側後頭側頭部・紡錘状回は先行の感情音声による脳活動の差がなかったことから、これら左半球のネットワークの活動は感情的文脈によらない言語の中心的意味を理解するために働いていることが示唆された。一方、右側頭前部、左上側頭後部、両側の内側側頭前部は感情音声による脳活動の差が認められたことから、これら左右半球を結ぶネットワークの活動は、感情という言語の周辺情報を利用(統合)した意味の理解に関わっていることが示唆された。コミュニケーションの場面において、ことばの意味は取り巻く状況により変化しうる(語彙的曖昧性)。例えば、同じことばでも、相手がうれしそうに話しているときと怒って話しているときでは受け取り方は異なるように、ことばの解釈は多義的であり感情的情報の影響を受ける。本年度は、昨年度に引き続き、感情的情報に応じた言語理解の脳内処理を調べる脳磁界計測(MEG)研究を行った。実験は昨年度に完了しており、本年度はその結果をまとめて論文を執筆し国際雑誌に投稿したが、査読の結果、受理には至らなかった。査読者二名から共通して、統計処理に関する問題点を指摘されたため、それを踏まえてデータの再解析を実施した。その結果、感情的文脈は右半球の下前頭後部および中前頭後部で形成・保持され、視覚言語呈示後300ミリ秒後付近で文脈の利用が開始すること、さらには、その文脈情報は左半球の下前頭後部へ伝達され、400ミリ秒後付近からその情報をもとに言語解釈が行われていることが明らかになった。また、後頭部、左側後頭側頭部・紡錘状回、左上側頭後部・下頭頂部、左側頭前部は、先行する感情的文脈によって活動に差がなかった。
KAKENHI-PROJECT-19700314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700314
言語理解における脳内情報統合機構の研究-情報の曖昧性解消、誤り修正過程の検討-
先行研究では、上記部位はそれぞれ、初期視覚処理、視覚形態処理、音韻処理、語彙的意味アクセスに関与していることが報告されていることから、本研究の結果は、これらの処理が感情的情報の処理と独立して行われていることを示唆する。以上の成果は新たに論文としてまとめ、国際雑誌に投稿して現在査読中である。
KAKENHI-PROJECT-19700314
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700314
保健師のリーダーシップ能力尺度の開発と評価
市町村の保健師リーダーである統括保健師の役割の遂行状況を測定できる尺度を開発し、その信頼性・妥当性を検証すること、またその影響要因を検討することを目的とした。その結果、3因子15項目からなる尺度を開発した。尺度の信頼性・妥当性は、活用に耐え得るものであった。また、影響要因を検討した結果、3つの因子が抽出され、中でも自己研鑽の重要性が示唆された。市町村の保健師リーダーである統括保健師の役割の遂行状況を測定できる尺度を開発し、その信頼性・妥当性を検証すること、またその影響要因を検討することを目的とした。その結果、3因子15項目からなる尺度を開発した。尺度の信頼性・妥当性は、活用に耐え得るものであった。また、影響要因を検討した結果、3つの因子が抽出され、中でも自己研鑽の重要性が示唆された。本研究は市町村統括保健師のリーダーシップ能力を明らかにする尺度の開発を目的としている。本年度は、尺度項目の尺度の構成概念を検討するとともに、尺度項目、および能力への影響要因の収集整理を目的とした。方法として、リーダーシップ能力の構成概念を検討するため、国内外の文献レビューを実施した。また尺度項目、影響要因項目の収集のために半構成的インタビューを実施した。インタビュー対象は計12名であった。インタビュー内容を逐語録にしたものから、統括保健師の役割・機能に該当する文脈を取り出し、言葉を整理した。整理したものを文献レビューを参考に、「資質」「行政能力」「専門能力」に分類した。その中から、先行研究で統括がでてくる以前の管理者の役割・機能と言われているものは除き、統括保健師固有の役割・機能と考えられるものを整理した。また研究者間でブレーンストーミングを行った。なお倫理的配慮としてこれらの過程については九州大学の倫理審査委員会の承認を受けた。リーダーシップに関する構成概念としては、国内・国外において様々なものが得られたが、本研究成果の活用可能性の観点からは、厚生労働省の検討会において提示されている保健師に求められる能力の枠組みを活用するのが有効ではないかと考えられた。統括保健師に求められる固有の能力として、インタビューから15項目、ブレインストーミングから1項目が整理された。項目は「組織横断的に適切な人材配置をする」「保健活動の成果がでるような組織体制を自治体の中で提言する」「保健師全体の活動のビジョンを示す」「「課横断的に観点から優先順位の高い保健事業を推進する」その他である。次年度は、本年、整理された項目を精選するとともに、項目の過不足等を検討し、本調査を実施する予定である。本研究の目的は、市町村の統括保健師に求められる役割・機能の実施状況を測定できる尺時を開発するとともに、その要因を探索することである。本年度は、本調査を実施し、尺度の信頼性、妥当性を行い尺度を完成させることを目的とした。昨年度収集した尺度項目に関して、有識者に内容妥当性の検討を依頼した結果に基づき最終的に17項目からなる仮尺度を作成した。この仮尺度のほか基準関連妥当性の検討のための項目、役割・機能の発揮に影響が考えられる項目、属性からなる質問紙を作成し、自記式郵送調査を実施した。対象は平成23年3月31日現在の市町村のうち、東北3県を除いた1,621ケ所の統括保健師、もしくは自治体の中の保健師で最も職位が高いものである。調査期間は平成23年10月11月であった。1,035ケ所から回収が得られ、ほとんど回答の記載がなかった1通を除き、1,034通を分析に用いた(有効回収は63.8%)。このうち、「統括保健師あり」は450ケ所であった。項目分析により問題を有した1項目を削除し、16項目で主成分分析を行ったところ、全ての項目が第1因子に0.4以上の因子負荷量であった。主因子法、プロマックス回転を用いて因子負荷量0.4を目安として因子分析を行ったところ、3因子が抽出され、【自治体全体の保健活動の推進】(6項目)【保健師代表としての役割遂行】(4項目)【部下の能力の見きわめと開発】(6項目)と命名された。3因子での累積寄与率は54.4%であった。尺度のクロンバックα係数は0.88(下位尺度0.810.88)であった。基準関連妥当性については基準項目と有意な相関がみられた。また既知グループ法においては、得点に有意差がみられた。以上のことから信頼性・妥当性を有する尺度が作成されたと考えられた。昨年度の本調査の結果を再度検討し、市町村統括保健師役割遂行尺度を確定させた。最終的に確定した尺度は、15項目3因子からなる。それぞれの因子名は、分散配置されている保健師の意思疎通を図り、自治体全体の健康課題に向けて活動するとともに、その質の担保に働きかける行動から構成される【自治体全体の保健活動の推進】、統括という位置づけにもとづいて、保健師代表として行動したり、交渉したりする【職能代表としての調整の遂行】、保健師全体の能力の底上げを行う【部下の保健師の能力開発】と命名した。3因子の寄与率はそれぞれ41.6%、9.7%、5.1%で累積寄与率は56.1%であった。
KAKENHI-PROJECT-22592553
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592553
保健師のリーダーシップ能力尺度の開発と評価
信頼性の検討、また基準関連妥当性、既知グループ法による妥当性の検討結果も一定の水準を満たしたため、これを最終版とし、各因子の各項目得点を単純加算したものを統括保健師役割遂行尺度得点(RMSP得点)とした。本尺度の今後の地域での活用が望まれる。また、統括保健師の役割意識や自信への影響要因に関して、平成22年度に収集していた項目との関連性を検討した。要因に関して因子分析を行い、【意識的研鑚】【自他の客観視】【高次の職務経験とネットワーク】の3因子が得られた。この影響3因子と、役割意識、自信との関係性について、【意識的研鑚】が【自他の客観視】【高次の職務経験とネットワーク】の双方に影響し、その結果統括保健師としての役割意識の向上、自信につながるという仮説モデルを設定し、共分散構造分析で検討した。その結果GFI=0.944 AGFI=0.914、CFI=0.931と高い適合度が得られた。また潜在変数が観測変数に与えている標準回帰係数からも、潜在変数と観測変数は適切に対応している結果であった。以上のことから、統括保健師として高いパフォーマンスを得るうえでは、まず意識的な研鑚に向けた働きかけの重要性が示唆された。本年度は、本調査および基本的な分析が終了した。また、経過の一部を学会で発表した。これは当初の予定どおりの進捗状況であるため、おおむね順調に進展していると判断される。24年度が最終年度であるため、記入しない。本年度、尺度項目がほぼ確定したと考えられるため、次年度は計画どおりにそれらの役割・機能を発揮する上で、どのような要因が関連しているのかについての分析を進める。また、学会発表のほか、論文化を進め、広く研究成果を周知することを予定している。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22592553
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22592553
子宮体癌の新しい分子標的治療開発のためのp53変異とp63,p73の機能解析
dominant negative (DNE)作用を有するp53変異が体癌の高悪性化を誘導する機序を明らかにするために本研究を行い、以下の結果を得た。野生型p53を有する子宮体癌細胞HHUAに導入したp53DNE変異(R273H)は野生型p53の標的遺伝子であるp21、Bax並びにMDM2のpromoterの転写機能を強く抑制した。更に、HHUA細胞の浸潤能および運動能が促進され、浸潤抑制作用のあるMaspin, PAI-1およびKAI1のmRNA発現が低下した。一方、p53 DNE変異(R273H)の発現はp53 null癌細胞の浸潤能および運動能には関与しなかった。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子の発現を抑制することで浸潤能および運動能を促進すると考えられた。DNE作用の無いR213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。dominant negative (DNE)作用を有するp53変異が体癌の高悪性化を誘導する機序を明らかにするために本研究を行い、以下の結果を得た。野生型p53を有する子宮体癌細胞HHUAに導入したp53DNE変異(R273H)は野生型p53の標的遺伝子であるp21、Bax並びにMDM2のpromoterの転写機能を強く抑制した。更に、HHUA細胞の浸潤能および運動能が促進され、浸潤抑制作用のあるMaspin, PAI-1およびKAI1のmRNA発現が低下した。一方、p53 DNE変異(R273H)の発現はp53 null癌細胞の浸潤能および運動能には関与しなかった。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子の発現を抑制することで浸潤能および運動能を促進すると考えられた。DNE作用の無いR213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。p53がん抑制遺伝子のドミナントネガティブ変異は臨床的に子宮体癌の浸潤・転移に関わっており、この遺伝子変異を有する体癌患者の予後は変異の無い体癌患者に比して有意に不良である。このドミナントネガティブ作用を解明するために、野生型p53遺伝子を持つ子宮体癌細胞HHUA(wt細胞)にR273Hドミナントネガティブ変異p53遺伝子あるいはR213Qレセッシブ変異p53遺伝子を導入し、野生型p53とR273Hドミナントネガティブ変異p53を発現する細胞(273H細胞)および野生型p53とR213Qレセッシブ変異p53を発現する細胞(213Q細胞)を作成した。R273H変異p53は野生型p53によるp21, Bax, MDM2の発現を抑制した。R213Q変異p53にはこの作用を認めなかった。さらに、273H細胞においては213Q細胞やwt細胞と比べて、著明に浸潤能や遊走能が亢進しているのが認められ、これにはMaspin, PAI-1, KAI1 mRNA発現の低下が伴っていた。Adriamycinを用いて野生型p53の発現を誘導すると浸潤能・遊走能の抑制が認められた。これにはp53遺伝子の標的遺伝子の発現亢進を伴っており、その程度は213Q細胞とwt細胞において273H細胞よりも大きかった。R273Hをp53欠失細胞であるSK-OV3とSaos-2に導入しても浸潤能や遊走能に明らかな影響を及ぼさなかった。これらのことから、R273H変異によるHHUA細胞の浸潤能・遊走能はあらたな機能獲得(gain-of-function)によるものではなく、野生型p53に対するドミナントネガティブ作用によるものであると考えられる。今後はHHUA細胞の野生型p53をknockdownしてR273H変異遺伝子を導入して検討すると共に、p53関連タンパクであるp63, p73などとの機能的関連を明らかにしたいと考えている。p53はヒト癌において最も高頻度に変異が見られる遺伝子である。変異p53タンパクの機能的類型は、1)野生型p53遺伝子の転写機能の喪失(loss of function)、2)野生型p53遺伝子の転写機能を阻害するドミナントネガティブ作用(dominant negative effect)、3)癌浸潤や抗癌剤耐性などの機能亢進作用(gain-of-function effect)に分けられる。体癌の26%にp53変異が認められ、p53ドミナントネガティブ(DNE)変異を持つ子宮体癌は進展しやく、有意に予後不良であることが明らかとなっている。子宮体癌に認められるp53変異の機能的類型と癌細胞の浸潤能、運動能との関連を明らかにすることを目的に以下の検討を行った。(1)野生型p53を有する体癌細胞株HHUAにDNE作用を持つ変異(R273H)と持たないrecessive変異(R213Q)を導入し、p53DNE変異が体癌の高悪性化を誘導する分子メカニズムを解明する。(2)野生型p53を欠失している卵巣癌細胞株や骨肉種細胞株にp53DNE変異を導入し、p53変異のgain-of-function作用により癌細胞の浸潤および運動能が促進されるかどうかを検討する。その結果次のことが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-18390442
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390442
子宮体癌の新しい分子標的治療開発のためのp53変異とp63,p73の機能解析
1)p53DNE変異R273Hの発現により体癌細胞株HHUAの増殖能、運動能、浸潤能が促進される。2)p53DNE変異R273Hの発現はp53を欠失している癌細胞の浸潤能および運動能には関与しない。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子Maspin,PAI-1,KAI1のmRNA発現を抑制し、体癌細胞の浸潤能および運動能を促進する可能性が高いと考えられた。R213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。子宮体癌に認められるdominant negative作用を有するp53変異(p53 DNE変異)が体癌の高悪性化を誘導する機序を明らかにすることを目的に以下の研究を行った。(1)野生型p53を有する体癌細胞株HHUAにp53 DNE変異(R273H)と持たないrecessive変異(R213Q)を導入し、p53DNE変異が体癌の浸潤能、運動能を促進する分子機序を解明する。(2)野生型p53を欠失している卵巣癌細胞株や骨肉種細胞株にp53 DNE変異を導入し、p53変異のgain-of-function作用により癌細胞の浸潤および運動能が促進されるかどうかを検討する。その結果、以下のことが明らかとなった。野生型p53を有する子宮体癌細胞HHUAに導入したp53DNE変異(R273H)は強いdominant negative作用を示し、野生型p53の標的遺伝子であるp21、Bax並びにM)M2のpromoterの転写機能を有意に抑制していた。更に、HHUA細胞の浸潤能および運動能が有意に促進されることが認められた。この変化と関連して、R273H細胞では、癌細胞の浸潤を抑制する作用のあるMaspin, PAI-1およびKAI1のmRNA発現が有意に低下していた。一方、P53 DNE変異(R273H)の発現はp53を欠失している癌細胞の浸潤能および運動能には関与しなかった。すなわちR273Hは、gain-of-function作用ではなく、野生型p53遺伝子の転写機能を阻害し、癌浸潤抑制遺伝子Maspin, PAI-1, KAI1の発現を抑制することで浸潤能および運動能を促進すると考えられた。R213Qには浸潤能、運動能促進作用は認められなかった。
KAKENHI-PROJECT-18390442
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18390442
トロンビンレセプターを介した神経細胞のアポトーシスの細胞内分子機構
脳血管障害において、神経細胞は虚血や虚血再灌流後の酸化的ストレス等により細胞死に陥ると考えられているが、血栓の局所で産生される高濃度のトロンビン自体が神経細胞に直接アポトーシスを誘導する可能性が示唆されている。トロンビンによる神経細胞のアポトーシスの誘導にはトロンビンレセプター(PAR-1)が細胞死の誘導に関与すると考えられている。トロンビンレセプターは、7回細胞膜貫通構造をもつG蛋白共役型受容体の一つで、細胞内シグナル伝達機構にはCa^<2+>の動員とG蛋白の共役が重要かつ不可欠と考えられているが、その詳細な分子機構には不明な点が多い。申請者らは、これまでにゲル内リン酸化法を用いて、トロンビン刺激により新たに特異的に活性化される33kDaのカゼインをin vitroの基質とするリン酸化酵素を発見し報告してきた。この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、トロンビンレセプターアゴニストペプチド(TRAP)の刺激でもトロンビン同様に活性化されたが、プロテアーゼ活性を阻害したDIPトロンビンやヒルジン処理トロンビンでは活性化されなかった。また、EGTAとBAPTA-AMにより細胞内外のCa^<2+>イオンをキレート化すると、トロンビンによるこのリン酸化酵素の活性化は起こらなかったことより、33kDaリン酸化酵素は、PAR-1を介する情報伝達系において重要なリン酸化酵素であると考えられる。さらに、この酵素の基質を調べるために、PAR-1の細胞内ドメインをPCR法により増幅し、大腸菌にグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させた。この融合蛋白をゲル内リン酸化法のin vitroの基質として用いたところ、この33kDaリン酸化酵素はPAR-1の細胞内ドメインをリン酸化した。以上の結果から、この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、PAR-1を介するシグナルを伝達し、かつPAR-1の活性制御に関わる極めて重要なリン酸化酵素であると示唆された。脳血管障害において、神経細胞は虚血や虚血再灌流後の酸化的ストレス等により細胞死に陥ると考えられているが、血栓の局所で産生される高濃度のトロンビン自体が神経細胞に直接アポトーシスを誘導する可能性が示唆されている。トロンビンによる神経細胞のアポトーシスの誘導にはトロンビンレセプター(PAR-1)が細胞死の誘導に関与すると考えられている。トロンビンレセプターは、7回細胞膜貫通構造をもつG蛋白共役型受容体の一つで、細胞内シグナル伝達機構にはCa^<2+>の動員とG蛋白の共役が重要かつ不可欠と考えられているが、その詳細な分子機構には不明な点が多い。申請者らは、これまでにゲル内リン酸化法を用いて、トロンビン刺激により新たに特異的に活性化される33kDaのカゼインをin vitroの基質とするリン酸化酵素を発見し報告してきた。この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、トロンビンレセプターアゴニストペプチド(TRAP)の刺激でもトロンビン同様に活性化されたが、プロテアーゼ活性を阻害したDIPトロンビンやヒルジン処理トロンビンでは活性化されなかった。また、EGTAとBAPTA-AMにより細胞内外のCa^<2+>イオンをキレート化すると、トロンビンによるこのリン酸化酵素の活性化は起こらなかったことより、33kDaリン酸化酵素は、PAR-1を介する情報伝達系において重要なリン酸化酵素であると考えられる。さらに、この酵素の基質を調べるために、PAR-1の細胞内ドメインをPCR法により増幅し、大腸菌にグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させた。この融合蛋白をゲル内リン酸化法のin vitroの基質として用いたところ、この33kDaリン酸化酵素はPAR-1の細胞内ドメインをリン酸化した。以上の結果から、この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、PAR-1を介するシグナルを伝達し、かつPAR-1の活性制御に関わる極めて重要なリン酸化酵素であると示唆された。トロンビンは、血小板トロンビンレセプター(TR)内のヒルジン様構造部位に結合した後にTRを限定分解し、TR分子内に隠されていたアゴニスト領域を露出させ、この領域を介して細胞内にシグナルを伝達する。TRは7回膜貫通構造をもつG蛋白共役型受容体の一つで、細胞内シグナル伝達にはCa^<2+>の動員、G蛋白の共役、複数のリン酸化酵素の活性化が関与すると考えられている。TRのC末側の細胞内ドメインは細胞内にシグナルを伝達するためには必須の領域であり、また、リン酸化によりこのドメインとG蛋白との相互作用が阻害され、トロンビンに対する不応化が起こると考えられている。我々は、血小板におけるTRの細胞内ドメインを特異的にリン酸化する酵素を調べるために、TRの細胞内ドメインをPCR法により増幅し、大腸菌にグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させた。この融合蛋白をゲル内リン酸化法のin vitroの基質として用いたところ、血小板内にトロンビン刺激により新たに特異的に活性化される33kDaリン酸化酵素が検出された。この33kDaリン酸化酵素はin vitroの基質としてカゼインもリン酸化することから、申請者が発見し、これまで報告してきた33kDaセリン・スレオニンキナーゼと同一のものと考えられる。
KAKENHI-PROJECT-10680605
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680605
トロンビンレセプターを介した神経細胞のアポトーシスの細胞内分子機構
この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、TRを介するシグナルを伝達し、かつTRの不応化に関わる極めて重要なリン酸化酵素であると推定している。現在のところ、この33kDaリン酸化酵素の活性化機構、TRの細胞内ドメインとG蛋白との相互作用に及ぼすこの酵素の役割、TRのC末側細胞内ドメインのリン酸化と不応性の機構については全く明らかでない。脳血管障害において、神経細胞は虚血や虚血再灌流後の酸化的ストレス等により細胞死に陥ると考えられているが、血栓の局所で産生される高濃度のトロンビン自体が神経細胞に直接アポトーシスを誘導する可能性が示唆されている。トロンビンによる神経細胞のアポトーシスの誘導にはトロンビンレセプター(PAR-1)が細胞死の誘導に関与すると考えられている。トロンビンレセプターは、7回細胞膜貫通構造をもつG蛋白共役型受容体の一つで、細胞内シグナル伝達機構にはCa^<2+>の動員とG蛋白の共役が重要かつ不可欠と考えられているが、その詳細な分子機構には不明な点が多い。申請者らは、これまでにゲル内リン酸化法を用いて、トロンビン刺激により新たに特異的に活性化される33kDaのカゼインをin vitroの基質とするリン酸化酵素を発見し報告してきた。この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、トロンビンレセプターアゴニストペプチド(TRAP)の刺激でもトロンビン同様に活性化されたが、プロテアーゼ活性を阻害したDIPトロンビンやヒルジン処理トロンビンでは活性化されなかった。また、EGTAとBAPTA-AMにより細胞内外のCa^<2+>イオンをキレート化すると、トロンビンによるこのリン酸化酵素の活性化は起こらなかったことより、33kDaリン酸化酵素は、PAR-1を介する情報伝達系において重要なリン酸化酵素であると考えられる。さらに、この酵素の基質を調べるために、PAR-1の細胞内ドメインをPCR法により増幅し、大腸菌にグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白として発現させた。この融合蛋白をゲル内リン酸化法のin vitroの基質として用いたところ、この33kDaリン酸化酵素はPAR-1の細胞内ドメインをリン酸化した。以上の結果から、この33kDaリン酸化酵素はトロンビン濃度依存性に刺激後5秒以内に活性化されるセリン・スレオニンキナーゼであり、PAR-1を介するシグナルを伝達し、かつPAR-1の活性制御に関わる極めて重要なリン酸化酵素であると示唆された。
KAKENHI-PROJECT-10680605
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10680605
プロテアソームの機能制御に基づいた新規抗癌剤の作用に関する研究
ベラクトシンAは、強いプロテアソーム阻害作用を持つ天然化合物である。当該化合物の結合するプロテアソーム内のサブユニットを同定するために、細胞膜透過性の高い蛍光標識誘導体を作成した。これを用いてin vivoとin vitroの薬剤の挙動を比較したところ、in vitroでは、β5サブユニットに優先的に結合し遅い結合解離速度を示すが、in vivoにおいてはβ1サブユニットに優先的に結合し速い結合解離速度を示すことがわかった。この違いは制御サブユニットである19S複合体の影響によるものと示唆された。ベラクトシンAは、強いプロテアソーム阻害作用を持つ天然化合物である。当該化合物の結合するプロテアソーム内のサブユニットを同定するために、細胞膜透過性の高い蛍光標識誘導体を作成した。これを用いてin vivoとin vitroの薬剤の挙動を比較したところ、in vitroでは、β5サブユニットに優先的に結合し遅い結合解離速度を示すが、in vivoにおいてはβ1サブユニットに優先的に結合し速い結合解離速度を示すことがわかった。この違いは制御サブユニットである19S複合体の影響によるものと示唆された。抗癌剤候補物質ベラクトシンAのプロテアソーム阻害作用と酵素サブユニットのリン酸化修飾の関係を明らかにし、その抗腫瘍効果への影響を明らかにする。具体的には、ベラクトシンAの20Sプロテアソームサブユニットにおける作用部位を同定し、リン酸化修飾と阻害剤作用の関係を明らかにする。そこで、まずプロテアソームのリン酸化修飾とベラクトシンA作用の関係を解明するための手がかりを得るために、ベラクトシンAの作用部位を同定する。ベラクトシンAの作用部位は、ラクタシスチンといった他のプロテアソーム阻害剤での例にもある様に、酵素活性触媒部位そのものである可能性が高いものと考えられた。すなわち、酵素活性触媒部位を構成する活性型側鎖とベラクトシンA分子内のβ-ラクトン環が反応し、共有結合を形成しているものと考えられる。そこで、精製20Sプロテアソームとビオチン標識ベラクトシンAを反応させた後、SDSポリアクリルアミド電気泳動とプロッティングの行い、ビオチン検出試薬および抗体で結合サブユニットを解析した。また、さらに抗リン酸化修飾抗体で、当該サブユニットのリン酸化状態を解析した。今後、質量分析装置によるペプチドマッピングによりリン酸化修飾部位を同定する。リン酸化修飾と阻害剤作用の相関が解明できれば、そのリン酸化修飾がプロテアソームの生理的活性制御を行っている可能性が高く、この研究によりプロテアソーム機能について新たな知見を得られる期待は大きい。また、これらリン酸化状態と阻害剤の感受性の相関が証明できれば、プロテアソームを介した新規抗癌剤やこれを利用した治療法の開発に大きく貢献できる。抗癌剤候補物質ベラクトシンAのプロテアソーム阻害作用と酵素サブユニットのリン酸化修飾の関係を明らかにし、その抗腫瘍効果への影響を明らかにする。具体的には、ベラクトシンAの20Sプロテアソームサブユニットにおける作用部位を同定し、リン酸化修飾と阻害剤作用の関係を明らかにする。そこで、まずプロテアソームのリン酸化修飾とベラクトシンA作用の関係を解明するための手がかりを得るために、ベラクトシンAの作用部位を同定する。まず、ベラクトシンAの作用部位において、酵素活性触媒部位を構成する活性型側鎖とベラクトシンA分子内のβ-ラクトン環が反応し、共有結合を形成していることを明らかにした。また、前年度の取り組みでヒト赤血球より精製された20Sプロテアソームについて、抗リン酸化修飾抗体でリン酸化状態を解析した。今年度は、ウシ血液からプロテアソームを精製しリン酸化修飾の状態を解析し、顕著にリン酸化されたサブユニットを同定した。ウシ血液は入手が容易であることから、プロテアソームを大量精製し、ゲル内酵素消化と質量分析装置による解析によりリン酸化修飾されたサブユニットの種類を確定した。次年度は、これらのサブユニットのうち阻害剤が直接作用するβサブユニットの焦点を絞り、リン酸化状態を解析する。リン酸化修飾と阻害剤作用の相関が解明できれば、そのリン酸化修飾がプロテアソームの生理的活性制御を行っている可能性が高く、この研究によりプロテアソーム機能について新たな知見を得られる期待は大きい。ベラクトシンAは、強いプロテアソーム阻害作用を持つ天然物由来の低分子化合物である。他のプロテアソーム阻害剤にないユニークな構造(非天然アミノ酸・トリペプチド型・βラクトン)を持つベラクトシンAとプロテアソームの分子間相互作用解析を行った。直接的結合するサブユニットを同定するために、ビオチン標識ベラクトシンA誘導体を作製し、化学発光を利用した検出を行った。その結果、ベラクトシンAは、精製された20Sプロテアソームに対しては、蛋白質分解を担うサブユニットのうちβ5サブユニットへの結合親和性が高いことが観察された。次いで、細胞内のプロテアソームへの作用を直接観察できる細胞膜透過性の高い標識ベラクトシンA誘導体を作成した。これを用いてin vivoとin vitroの薬剤の挙動を比較したところ、以下のような知見が得られた。ベラクトシンAはin vitroでは、経時的にβ5サブユニットに優先的に結合し遅い結合解離速度を示すが、in vivoにおいてはβ1サブユニットに優先的に結合し速い結合解離速度を示す。さらに、その詳細を26Sプロテアソーム再構成系で検討した。検討の結果、この違いは細胞内に存在する制御サブユニットである19S複合体の影響によるものと示唆された。
KAKENHI-PROJECT-18790092
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プロテアソームの機能制御に基づいた新規抗癌剤の作用に関する研究
以上の結果から、種々の阻害剤に固有のサブユニットへの作用選択性に関して、19S複合体の影響がクローズアップされ、in vivoとin vitroという観点から見直しをはかる必要があることが示された。
KAKENHI-PROJECT-18790092
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シーケンス制御教材を用いた国際出前授業の推進
シーケンスの基本から応用までの実験キットの開発を行うことができた。開発した実験キットを短期の海外研修生に利用してもらい、その可能性を確認することができた。e-learningコンテンツに関しては、日本語、英語を準備し、日本人学生、海外研修生に利用してもらい、実験キットの連携を確認することができた。実際の国際出前授業の実施とその成果の確認までは達成できなかったが、その足掛かりとなるタイのモンクット王工科大学ラートクラバン校の教員に実験システムを公開することができ、今後の連携を確立することができた。国際交流が盛んになっている高専において、海外研修生から要求の高いシーケンスの学習キットの開発を行う。基本であるリレーシーケンスからPLCまでを実験実習することが可能である。これに伴うWebコンテンツの開発も行う。海外研修生の利用を考え、実験キットのテキスト、Webコンテンツは英語で開発する。実験キットはゲーム性を上げ、手動操作からセンサを用いたオートモードの開発までをステップバイステップで難易度を上げていくように設計している。PBLの課題、アクティブラーニングの素材として本キットを適用できることを念頭に開発を行っている。本キットを海外への出前授業、TV会議システムを用いた遠隔との同時授業、Webコンテンツ学習後の機材の貸し出しによる自学学習の環境を提供する。シーケンスの基本から応用までの実験キットの開発を行うことができた。開発した実験キットを短期の海外研修生に利用してもらい、その可能性を確認することができた。e-learningコンテンツに関しては、日本語、英語を準備し、日本人学生、海外研修生に利用してもらい、実験キットの連携を確認することができた。実際の国際出前授業の実施とその成果の確認までは達成できなかったが、その足掛かりとなるタイのモンクット王工科大学ラートクラバン校の教員に実験システムを公開することができ、今後の連携を確立することができた。オムロンのベーシックキットを用いた英語版のWeb教材の開発を行い、平成24年度のタイからの研修生に利用してもらった。ページのブラシアップとベーシックキットの教育利用環境を構築することができた。位置決め制御実験を行うための実験装置として、基礎実験装置の開発をおこなった。低コストでの実現のためにボールねじタイプの位置決め制御装置から、軽量タイプで慣性力の少ないベルトタイプの位置決め装置へ変更した。単純な位置決め装置では、学習意欲が低下すると考え、ゲーム形式で位置決め制御のシーケンスプログラム体験が可能な実験装置の開発を行った。制御としてベルトタイプの位置決め装置としたが、制御装置への指令をPLCで行うものとした。PLCへの入力は、手動タイプとセンサを用いた自動タイプの切り替えとした。制御装置のGUIには液晶タイプのGUI作成型とすることで、言語切り替えなどに対応できるようにした。センサに関しては、作成したゲーム形式の制御対象に簡単に取り付けられるように専用の治具を作成した。シーケンスの実験を行うための実験キットとして、位置決め制御を用いたピンボール盤の開発を行った。開発したキットは、基本となるリレーシーケンスの学習から、各種センサの利用方法、PLCを用いた主導位置決めから、センサを用いた自動位置決め制御までを学習することができる。段階的に自学学習を可能とするためのコンテンツの開発を行った。出前授業に対応できるよう可搬性を考えたキットとした。出前授業の実施までは行えなかったが、短期の海外研修に実際に使用してもらい、リレーシーケンスの学習方法から、PLCを用いたラダープログラム開発までのコンテンツに関しての改良を行うことができた。ゲーム性を持たせることで学生の興味をひき、国際交流との融合による学生間でのPBL授業の実施とコンペティション形式での学習効果の向上を新たな目標を掲げることができた。e-ラーニング教材学習キットの開発に時間を有している。見えやすい、わかりやすい、操作性を考慮することで、アクリル板上への部品の配置、センサ、PLCなどの設置方法とアクリル板の加工に時間を有している。Webコンテンツとの連動や学生の集中度を途切れないようするためにゲーム性を上げようとすることで、加工が困難となっている。また、出前授業を意識して堅牢さと軽量化が相反する物であり、作業工程が遅れている。基礎→活用→応用とコンテンツの構成を考えることでシーケンス制御を理解できるコンテンツを作成することができた。ベーシックキットによる基礎実験のためのe-learningコンテンツを英語で作成、タイの研修生に活用した。実験に必要な制御対象として、ボールが落下していくものを受け取るゲーム性を有し、制御装置へ指令を送るセンサの働きを理解しやすいものを作成した。視覚的に情報を確認しながら、PLCへの情報伝達、制御装置の動きを理解することができる。設計の早期終了と試作品の最終製作までを速やかに行い、Webコンテンツとの連携、実験装置の耐久性などを調査する必要がある。設計、製作の早期実現のために、技術職員との連携を密して、作業効率を向上させる。開発したシステムの実用性、有効性を確認するために、本校に訪れている海外研修生に実際に使用してもらい、開発したシステムの評価を行う。e-learningコンテンツを再度タイの研修生などの海外研修生に利用してもらい、修正箇所の洗い出しを行う。実験キットの制御装置、制御対象の連結を行い、シーケンスプログラム(ラダー図からSFCへの対応)の見直しを行い、ストレスなしに位置決め制御の実験教材を利用できるe-learningコンテンツの作成を行う。実際に海外で行われてるシーケンスの授業の見学、教材の調査を行い、利用しやすいコンテンツの作成を行う。
KAKENHI-PROJECT-24501233
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シーケンス制御教材を用いた国際出前授業の推進
実験キットの製作が計画より遅れ、海外への出前授業、国際会議での報告、国内での研究発表が思ったように遂行されていないため。制作予定のキットのセット数がまだ半分程度であり、耐久試験や出前授業が実施できていないためである。技術職員への制作依頼、設計の修正を迅速に行う。プロトタイプを8月迄には完成させ、10個程度の実験キットの作成を行う。実験キットの台数の増加タブレットPCなどによるコンテンツの利用環境の確認海外でのシーケンス実験の様子の調査を行い、作成コンテンツへの融合国内での公開講座での利用を行い、実験テキストの修正を行う研究会、学会での発表を行い、他高専、高校での実習を行う
KAKENHI-PROJECT-24501233
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非混入型分子トレーサ速度計測と酸素吸収分光を核とした燃料電池の統合的物質移動解明
燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で酸素、水素などの不均質な物質輸送と反応が生じていることが現象の解明を困難にしており、物質輸送ならびに反応分布を正確に把握することが重要である。レーザ速度計測は,パルスレーザー光を流路に対して垂直方向に照射することにより、アブレーションを起こし、流路水平方向からパルスレーザー光を一定の時間間隔で照射し、タグ物質からの発光を高速度カメラで撮影した画像からガス流速を測定する新しい手法を開発した。これと,酸素の濃度測定により、燃料電池が発電モードで、燃料電池の統合的な物質移動と反応を解明した。燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で酸素、水素などの不均質な物質輸送と反応が生じていることが現象の解明を困難にしており、物質輸送ならびに反応分布を正確に把握することが重要である。レーザ速度計測は,パルスレーザー光を流路に対して垂直方向に照射することにより、アブレーションを起こし、流路水平方向からパルスレーザー光を一定の時間間隔で照射し、タグ物質からの発光を高速度カメラで撮影した画像からガス流速を測定する新しい手法を開発した。これと,酸素の濃度測定により、燃料電池が発電モードで、燃料電池の統合的な物質移動と反応を解明した。燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で、酸素、水素、生成水の物質輸送と反応が不均質に生じていることが現象の解明を困難にし、実用化に向けて必須となる高効率発電と劣化防止の実現を難しくしている。多孔質体の外側にあるガス供給流路の中を発電のために消費されながら流れる酸素の速度と濃度の計測により酸素の局所の消費速度が求まり、これにより、水素の消費速度、水分の生成速度、電流密度が多孔質体の面の中でどのような分布をしているのかを明らかにすることができる。酸素の速度をレーザ計測により、"燃料電池が発電している状態"で、"非接触"でかつ"シード粒子などを混入する必要としない"、先進的に計測する手法を新たに開発した。この方法は,1つ目のYAGレーザを燃料電池流路の拡散層に照射し,このレーザ照射により引き起こされるアブレーションで微小な粒子群を発生させ,この粒子群が酸素の速度によって移動することを,2つめのYagレーザを流路の流れ方向に入射させて,そのレーザ光により散乱される粒子群をCCDカメラにより撮影する手法を開発した。この方法は,当初予定していた方法に比べて,ロバスト性があり,SN比も高く,極めて優れた方法である。燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で、酸素、水素、生成水の物質輸送と反応が不均質に生じていることが現象の解明を困難にし、実用化に向けて必須となる高効率発電と劣化防止の実現を難しくしている。多孔質体の外側にあるガス供給流路の中を発電のために消費されながら流れる酸素の速度と濃度の計測により酸素の局所の消費速度が求まり、これにより、水素の消費速度、水分の生成速度、電流密度が多孔質体の面の中でどのような分布をしているのかを明らかにすることができる。酸素の速度をレーザ計測により、“燃料電池が発電している状態"で、“非接触"でかつ“シード粒子などを混入する必要としない"、先進的に計測する手法を新たに開発したものに対して、局所局所での水分のサンドイッチ状燃料電池の厚さ方向に対して水分の輸送が生じている。この輸送現象を明らかにするために、電解質膜内の水分分布を計測するためのMRIプローブを購入し、水分分布計測を実施した。燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で、酸素、水素、生成水の物質輸送と反応が不均質に生じていることが現象の解明を困難にし、実用化に向けて必須となる高効率発電と劣化防止の実現を難しくしている。多孔質体の外側にあるガス供給流路の中を発電のために消費されながら流れる酸素の速度と濃度の計測により酸素の局所の消費速度が求まり、これにより、水素の消費速度、水分の生成速度、電流密度が多孔質体の面の中でどのような分布をしているのかを明らかにすることができる。酸素の速度をレーザ計測により、“燃料電池が発電している状態"で、“非接触"でかつ“シード粒子などを混入する必要としない"、先進的に計測する手法を新たに開発したものをふまえて、より発電性能の高い燃料電池での計測が可能な燃料電池の作製に成功した。また、流路の濡れ性を変化させた燃料電池を作製し、水分の排出が濡れ性によりどのように影響するかについても明らかにした。燃料電池は、拡散層、触媒層、電解質膜などがサンドイッチ状に積層された面状の多孔質体の中で、酸素、水素、生成水の物質輸送と反応が不均質に生じていることが現象の解明を困難にし、実用化に向けて必須となる高効率発電と劣化防止の実現を難しくしている。多孔質体の外側にあるガス供給流路の中を発電のために消費されながら流れる酸素の速度と濃度の計測により酸素の局所の消費速度が求まり、これにより、水素の消費速度、水分の生成速度、電流密度が多孔質体の面の中でどのような分布をしているのかを明らかにすることができる。
KAKENHI-PROJECT-22246024
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非混入型分子トレーサ速度計測と酸素吸収分光を核とした燃料電池の統合的物質移動解明
酸素の速度をレーザ計測により、“燃料電池が発電している状態"で、“非接触"でかつ“シード粒子などを混入する必要としない"、先進的に計測する手法を新たに開発したものに対して、より発電性能の高い燃料電池での計測に応用することを試みた。レーザ計測を可能にしつつ、面圧を大きくすることにより、接触抵抗を小さくした高出力の燃料電池の設計、製作を実施し計測を行った。燃料電池が発電している状態でガス流路の中の速度を計測する方法について、昨年度まで開発してきたレーザ計測法を、燃料電池が求められている高電流密度の下、液水が流路に発生する条件下での計測について実施した。まず、カソード流路内に液水が滞留し酸素の供給が阻害される現象の液水挙動メカニズムを把握し,最適な流路構造の設計や流路壁面の濡れ性制御等を行う必要があることから、流路断面の内部観察が可能な断面可視化セルを作製し,発電状態PEFCのカソード流路内における液水挙動の直接観察を行い,流路壁面の濡れ性の影響について評価した.次に、液水が発生している状態の高電流密度発電状態の燃料電池セルに、レーザを2本、アブレーション発生と流路内可視化、をタイミングを制御して入射し、液水が流路内可視化レーザの阻害にならない手法を開発し、カソード流路内速度を計測することに成功した。26年度が最終年度であるため、記入しない。エネルギー学・熱工学26年度が最終年度であるため、記入しない。酸素の速度をレーザ計測により、“燃料電池が発電している状態"で、“非接触"でかつ“シード粒子などを混入する必要としない"、先進的に計測する手法を新たに開発して、酸素の局所の消費速度が求まり、これにより、水素の消費速度、水分の生成速度、電流密度が多孔質体の面の中でどのような分布をしているかを明らかにしたことと、これに加えて厚さ方向の水分輸送現象を明らかにするために、電解質膜内の水分分布を計測するためのMRIプローブを購入し、水分分布計測を実施しており、面方向と厚さ方向の両面から計測を実施し、概ね順調に進捗している。新たに開発した先進的な計測法を適用するための、より発電性能の高い燃料電池の作製に成功している。また、流路の濡れ性を変化させたときの水分の排出挙動について明らかにしている。新たに開発した先進的な計測法を、より発電性能の高い燃料電池での計測に応用することを試みた。レーザ計測を可能にしつつ、面圧を大きくすることにより、接触抵抗を小さくした高出力の燃料電池の設計、製作を実施し計測を行っており、高効率化に向けての現象解明は概ね順調に進捗している。今まで開発してきた計測法を、発電性能の高い燃料電池に適用して、高効率発電のための要件の解明を行う予定である。高効率な燃料電池の水分の濡れ性が制御されたものについて、速度がどのように影響するのかを明らかにし、より高効率でロバスト性の高い燃料電池を開発することを目指す。高効率な燃料電池に対して、液滴がガス流路内で生成、移動する際に、開発した計測法をどのように適合させるかを考えながら研究を推進していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-22246024
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22246024
教育交渉史における日本教育観の形成と展開
1平成11年度は主として関連史料の調査と収集とを行い、次のような資料を発見した。(2)アジア班(中国)日本外務省記録、教育雑誌、清国人日本視察記(韓国)日本外務省記録、韓国人日本視察記(3)日本班大日本書誌、日本帝国書誌2平成12年度は主として収集資料の解題作業を行い、次のような知見を得た。東アジアにおける日本教育観については先行研究もあり、日本教育をモデルにして教育の近代化が行われたことが指摘されてきたが、本研究によりインドでも同様な日本教育観が明らかになった。欧米における日本教育観についても、19世紀後半からさまざまなメディアに現れていることがわかった。また、日本からアジアのみではなく欧米に向けて日本教育の紹介が行われていたことがわかった。3平成13年度研究のとりまとめを行い、次のように結論づけた。第一に欧米諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末から20世紀初頭にかけて近代日本の教育が発見された。第二に、アジア諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末に近代日本の教育が発見され、それはアジアの開国や近代化と強く結びついていたことがわかった。第三に日本では近代日本の教育に対する世界からの関心を傍観していたのではないことが判明した。文部省を中心にさまざまな手段で、欧米諸国に向けて日本の教育のいわば宣伝に努めていたのである。それは、日露戦争遂行とも関係があり、また、国際社会に文明日本が登場しようとする試みであったとも言える。1平成11年度は主として関連史料の調査と収集とを行い、次のような資料を発見した。(1)欧米班(イギリス)議会文書、Board of Educationの報告書、雑誌新聞記事(アメリカ)国務省記録、Japan Kindergarden Unionの機関紙(フランス)日仏会館学報(2)アジア班(中国)日本外務省記録、教育雑誌、清国人日本視察記(韓国)日本外務省記録、韓国人日本視察記(3)日本班大日本書誌、日本帝国書誌2平成12年度は主として収集資料の解題作業を行い、次のような知見を得た。東アジアにおける日本教育観については先行研究もあり、日本教育をモデルにして教育の近代化が行われたことが指摘されてきたが、本研究によりインドでも同様な日本教育観が明らかになった。欧米における日本教育観についても、19世紀後半からさまざまなメディアに現れていることがわかった。また、日本からアジアのみではなく欧米に向けて日本教育の紹介が行われていたことがわかった。3平成13年度研究のとりまとめを行い、次のように結論づけた。第一に欧米諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末から20世紀初頭にかけて近代日本の教育が発見された。第二に、アジア諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末に近代日本の教育が発見され、それはアジアの開国や近代化と強く結びついていたことがわかった。第三に日本では近代日本の教育に対する世界からの関心を傍観していたのではないことが判明した。文部省を中心にさまざまな手段で、欧米諸国に向けて日本の教育のいわば宣伝に努めていたのである。それは、日露戦争遂行とも関係があり、また、国際社会に文明日本が登場しようとする試みであったとも言える。1,欧米諸国における日本教育観(1)「米国国務省記録」日本教育関連記事の収集と分析米国においては、台湾、満州、朝鮮などの日本植民地の教育に対する興味がきわめて大きいことがわかった。日本教育関連記事を掲載した欧文雑誌には、キリスト教宣教会雑誌が多いことがわかった。2,日本教育界の自己認識『日本帝国書誌』にかなりの数の日本人執筆者がおり、日露戦争後において日本教育界は自信をもって、欧米諸国に日本教育を発信していたことがわかった。3,アジア諸国における日本教育観(1)「日本外務省記録」清国・韓国関連記事の収集と分析両国に於いて、官民による日本教育視察が頻繁に行われ、日本をとおして近代教育の理論と実際を導入したことがわかった。(2)『教育雑誌』日本関連記事の収集と分析民国期に於いては、日本教育情報を熱心に収集すると同時に、「奴隷化教育」という植民地教育批判も強かったことがわかった。本年度は中間報告書を作成した。その概要は次のとおりである。1西洋班イギリス、フランス、アメリカ合衆国の資料調査を行い、収集し、解題作業を行った。イギリスは、議会文書、Bord of Educationの報告書、雑誌、新聞の記事を調査した。フランスは、国際日本文化研究センターの『日本関係欧文図書目録』、『日仏会館学報』、横浜開港資料館ブルームコレクションを調査した。アメリカは、在日外国人宣教師によるJapan Kindergarten Unionの機関誌、国務省記録を調査し、収集したものについて解題作業を行った。2アジア班中国については、清末部分は「『日本外務省記録』所収清国人日本教育視察関係文書」と「明治期新聞紙上の呉汝綸-『東遊日報訳編』所収主要論説・記事から」の目録を作成した。民国部分は『教育雑誌』所収日本関係記事目録を作成した。韓国については留学生団体機関誌から関連記事を収集した。インドについては明治期に当たる時期の日本教育論を調査し研究した。3日本班主資料としてヴェンクシュテルン(Wenckstern, F.V.)が編纂した『大日本書誌』全二巻と、」ナホッド(Nachod, O.)による『日本帝国書誌』全六巻を用いた。
KAKENHI-PROJECT-11410075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11410075
教育交渉史における日本教育観の形成と展開
この両書は、ヨーロッパ言語による日本関係出版物を幅広くカバーしている。この書誌から、関連文献をリストアップし、収集し、解題作業を行った。今年度は研究の最終年度にあたり、研究のとりまとめを行い最終報告書を作成した。最終報告書では、次のような新知見が得られた。第一に欧米諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末から20世紀初頭にかけて近代日本の教育が発見されたことである。発見された背景は国によって異なり、その国の事情を反映していた。(1)イギリスでは当時、大英帝国の教育改革を進行させており、日本の教育が国民教育の意義を認識させる格好の材料として取り上げられた。(2)アメリカでは、教育を進歩や発展の基盤として捉えようとするプラグマティズム思潮が強く、日本における教育の普及に強い関心が集まった。(3)フランスでは、日本の小学校就学率の高さを評価する一方で、アメリカをモデルにした日本の教育近代化への反感が見られた。第二に、アジア諸国と日本との教育交渉史において、19世紀末に近代日本の教育が発見され、それはアジアの開国や近代化と強く結びついていたことがわかった。(1)朝鮮では、開国を主張する自修自強論者がアジアの伝統と異なる、日本教育への理解をいち早く示している。(2)清国では、一定の近代化を主張する変法自強運動側から日本の教育が高く評価された。(3)インドでは、イギリスモデルの植民地的学校制度への批判から日本教育への注目が集まった。第三に日本では近代日本の教育に対する世界からの関心を傍観していたのではないことが判明した。文部省を中心にさまざまな手段で、欧米諸国に向けて日本の教育のいわば宣伝に努めていたのである。それは、日露戦争遂行とも関係があり、また、国際社会に文明日本が登場しようとする試みであったとも言える。
KAKENHI-PROJECT-11410075
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11410075
コンクリートブロック塀の地震時倒壊防止に関する研究
1.1995年兵庫県南部地震の震度7の激震地域の一つである神戸市東灘区において,地震を経験し生き残ったコンクリートブロック塀(1,220件)の調査や1997年3月と5月の鹿児島県北西部地震によるブロック塀の被害調査を行った。これらの調査結果と兵庫県南部地震直後に同じ東灘区に設定した帯状調査区域で行った被害調査結果とを照らし合わせて,地震被害とブロック塀の構造との関係を検討した。その結果、倒壊した塀は縦筋と鉄筋コンクリート造の基礎とが十分に一体となっていないことなどから壁体脚部から転倒や大きく傾斜した塀が非常に多いこと,直交壁を有している塀のほうが直交壁を有していない塀よりも倒壊した割合は低いことなどを明らかにした。2.既存ブロック塀の構造の実態を明らかにするため,大分市内の4つの市立小学校の通学路沿いにあるすべてのブロック塀1,032件に対して実態調査を実施した。その結果,建築基準施行令の構造規定を満足していた塀は僅か5件しかなく,壁体と基礎とが一体となっていないブロック塀が非常に多いこと,竣工後20年経ったブロック塀には老朽化などの問題が見られることなど,ブロック塀の施工時の構造上の不備と老朽化とにより既存ブロック塀の耐震性は極めて乏しいことが明らかとなった。3.上記の神戸市東灘区,大分市および鹿児島県北西部における調査では,耐震補強されているブロック塀の調査を合わせて実施し,合計34件のブロック塀の補強方法に関する資料が得られた。4.補強材とのボルト接合部周辺のブロックの耐力に関する載荷実験を行い,施工が容易で安価なボルト接合方法が利用可能であることを確認した。5.耐震性に乏しい既存ブロック塀の補強方法と設計方法について検討した結果,壁体と基礎とが一体化されていない耐震性に乏しいブロック塀の補強方法としては,直交壁を利用とした補強方法は適用範囲も広く実用的でありかつ有効性が高いことを明らかにした。1.1995年兵庫県南部地震の震度7の激震地域の一つである神戸市東灘区において,地震を経験し生き残ったコンクリートブロック塀(1,220件)の調査や1997年3月と5月の鹿児島県北西部地震によるブロック塀の被害調査を行った。これらの調査結果と兵庫県南部地震直後に同じ東灘区に設定した帯状調査区域で行った被害調査結果とを照らし合わせて,地震被害とブロック塀の構造との関係を検討した。その結果、倒壊した塀は縦筋と鉄筋コンクリート造の基礎とが十分に一体となっていないことなどから壁体脚部から転倒や大きく傾斜した塀が非常に多いこと,直交壁を有している塀のほうが直交壁を有していない塀よりも倒壊した割合は低いことなどを明らかにした。2.既存ブロック塀の構造の実態を明らかにするため,大分市内の4つの市立小学校の通学路沿いにあるすべてのブロック塀1,032件に対して実態調査を実施した。その結果,建築基準施行令の構造規定を満足していた塀は僅か5件しかなく,壁体と基礎とが一体となっていないブロック塀が非常に多いこと,竣工後20年経ったブロック塀には老朽化などの問題が見られることなど,ブロック塀の施工時の構造上の不備と老朽化とにより既存ブロック塀の耐震性は極めて乏しいことが明らかとなった。3.上記の神戸市東灘区,大分市および鹿児島県北西部における調査では,耐震補強されているブロック塀の調査を合わせて実施し,合計34件のブロック塀の補強方法に関する資料が得られた。4.補強材とのボルト接合部周辺のブロックの耐力に関する載荷実験を行い,施工が容易で安価なボルト接合方法が利用可能であることを確認した。5.耐震性に乏しい既存ブロック塀の補強方法と設計方法について検討した結果,壁体と基礎とが一体化されていない耐震性に乏しいブロック塀の補強方法としては,直交壁を利用とした補強方法は適用範囲も広く実用的でありかつ有効性が高いことを明らかにした。1.1995年兵庫県南部地震の強度7の激震地域の一つである神戸市灘区において,地震を経験し生き残ったコンクリートブロック塀1,220件に対し,その規模・構造・傾斜などについて詳細に調査した。この調査結果を震災直後に同じ東灘区に設定した帯状調査区域で行った被害調査結果との比較も行い検討した結果,倒壊した塀や生き残っても大きな傾斜角が残留している塀では基礎がない塀や縦筋などの補強筋に不備がある塀の割合が高いこと,有効に接合されている直交壁を有する塀では生き残った割合が高いことなどを明らかにした。2.既存ブロック塀の構造の実態を明らかにするため,大分市内の4つの市立小学校の通学路沿いにあるすべてのブロック塀1,032件に対して実態調査を実施した。その結果,化粧ブロックや金属製フェンスを使用したブロック塀が増加していることが分かった。また構造上では,建築基準法施行令の構造規定を満足していた塀は僅か5件しかなく,耐震性に乏しい既存ブロック塀が非常に多いことが明らかとなった。3.1997年3月と5月の鹿児島県北西部地震によるブロック塀の被害について現地調査を行った結果,倒壊した塀には基礎や縦筋に不備があることや直交壁が倒壊防止に有効であることなどが明らかとなった。4.上記の神戸市東灘区,大分市および鹿児島県北西部における調査では,耐震補強されているブロック塀の調査を合わせて実施した。この調査により合計31件のブロック塀の補強方法に関する資料が得られた。ブロック塀の補強方法に関する耐震性能確認実験の予備実験として,コンクリートブロックとボルト接合部の耐力に関する載荷実験を行った。
KAKENHI-PROJECT-09650635
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09650635
コンクリートブロック塀の地震時倒壊防止に関する研究
1. 1995年兵庫県南部地震の震度7の激震地域の一つである神戸市東灘区において,地震を経験し生き残ったコンクリートブロック塀の構造実態調査結果,震災直後に同じ東灘区に設定した帯状調査区域で行った被害調査結果および1997年3月と5月の鹿児島県北西部地震によるブロック塀の被害調査結果を照らし合わせて,塀の倒壊パターンや塀の構造と被害について検討した。これらの結果より,RC造基礎がなかったり,縦筋の基礎への定着不備などにより,縦筋とRC造基礎とが一体となっていない塀が多く,倒壊した塀は塀の基礎天端の壁体脚部より転倒や大きく傾斜していた塀が多かったことを明らかにした。また,無被害の塀と倒壊した塀の構造を比較すると,無被害の塀は縦筋やRC造基礎および直交壁を有する塀の割合が高く,縦筋やRC造基礎および直交壁は塀の耐震性に大きな影響を与えることが調査からも明らかとなった。特に,直交壁は塀の転倒防止に対しては有効であることが分かった。2.補強材とブロック塀との接合で,補強された塀の実態調査においても多く使用されていて,また施工も簡単で安価なボルト接合に関して,ボルト接合部周辺のブロックの耐力に関する実験を実施した。平成9年度の予備実験を参考にし,ブロック種類,厚さ,ボルト径,座金種類およびブロックの支持条件などをパラメータにした24種類のそれぞれ3体の試験体計72体に対して実験を実施した結果,ボルト接合方法は利用可能であることが確認できた。3.上記の結果に大分の既存ブロック塀の調査結果を加え,耐震性に問題のある多くのブロック塀の耐震性向上の1つとして,直交壁を利用した方法について検討した。
KAKENHI-PROJECT-09650635
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ポルフィリン環状二量体超分子ポリマー/フラーレン一次元複合体を用いた材料開拓
亜鉛ポルフィリン、および炭素数12の長鎖アルキル基で修飾した二種類のメタクリレートのリビングラジカル共重合を行い、続いて得られたポリマーのポルフィリン上の金属イオンを三価のイリジウムに交換し、目的とするポリマーを合成した。1HNMRによる検討から、ポルフィリンと長鎖アルキル基の存在比は1:12,GPCから計算した分子量分布(Mw/Mn)は1.47となった。また、ポリマーとカーボンナノチューブの複合化については、以下の手順で行った。まず、ポリマーを含んだ1、2ジクロロベンゼン中で市販の単層カーボンナノチューブを超音波処理し、遠心分離によって上澄みを分離した。これを濾別し、クロロホルムによって遊離したポリマーを洗浄後、フィルター上に残った部分を複合体とした。上記手順で得られたサンプルを再度1、2ジクロロベンゼン中に分散し吸収スペクトルを測定したところ、イリジウムポルフィリンに由来する400nm付近の吸収帯の長波長シフトが観測され、カーボンナノチューブとの相互作用が示唆された。次に、複合体のカーボンナノチューブに由来するラマンシグナルを、カーボンナノチューブ単体と比較したところ、複合体中において、径の小さなカーボンナノチューブ由来のシグナルが相対的に強度を増していることが分かった。この結果は、径の細いカーボンナノチューブがイリジウムポルフィリンとの相互作用でエンリッチされる可能性を示している。ラマンスペクトル上で観測されたシグナル相対強度の変化は、有為ではあるが顕著ではなく、一段階の複合化における選択性はあまり高くないことを示唆している。選択性を向上するため、クロマトグラフィーの充填剤へのイリジウムポルフィリンポリマーの導入を検討している。サンドイッチ型フタロシアニン錯体におけるフタロシアニン環同士の相互回転運動の評価と、ポルフィリン環状二量体/フラーレン間の超分子的相互作用を利用した回転の動的挙動の制御を目的として、リンカー部位にフタロシアニン部位を組み込んだ新規ポルフィリン環状二量体を設計、合成経路の妥当性に関する検討を行い、実際に目的化合物を合成することに成功した。また、回転運動の制御に用いるフラーレンダイマーの合成を行った。さらに、合成したポルフィリン環状二量体とフラーレンとの超分子的相互作用を評価し、その結果を分子設計の修正にフィードバックし、片側のリンカーにのみフタロシアニン部位を有する新たなポルフィリン環状二量体の合成へと展開した。これとは別に、一次元集積化に従来用いたポルフィリン環状二量体の剛直なリンカーを見直し、柔軟かつ長さがフラーレンのサイズに最適なメチレンユニット5つを有する新たなリンカーを導入したポルフィリン環状二量体を設計、合成した。フラーレンを用いた滴定実験から、実際にこのポルフィリン環状二量体が従来の類似ホスト分子と比べフラーレンに対しより高い親和性を有することを確認した。また、望みの集積体オリゴマーを選択的に合成し、さらにそれを用いて段階的にポリマーを構築する手法の開発を目指して、ポルフィリン環状二量体間をフタロシアニンの希土類錯体を介して連結する合成経路の検討を、金属イオンとしてイットリウムを用いた系で行った。片側のリンカーにのみフタロシアニン部位を有する亜鉛ポルフィリン環状二量体とセリウムイオンとの反応から、サンドイッチ型セリウムフタロシアニン錯体で連結した亜鉛ポルフィリン環状二量体のダイマーを構築した。C_<60>,C_<70>,C_<120>や別途合成、光学分割した三種類のフラーレンダイマーとの複合化を行い、特にフラーレンダイマーとの複合化による、セリウムイオンを中心としたフタロシアニン同士の相互回転運動の抑制について、温度可変^1H NMR測定を利用して定量的に評価した。また、フラーレンとの相互作用をより強くするため、ポルフィリン部位のイリジウム錯体への誘導を検討した。その過程で、アキシャル位にジクロロフェニル基やビシクロ基を選択的に導入する合成手法を新たに見いだした。さらに、サンドイッチ型セリウムフタロシアニン錯体および亜鉛ポルフィリン環状二量体部位の酸化還元電位を電気化学的手法により決定し、酸化剤を用いた1電子および2電子酸化を行い、吸収スペクトル変化を明らかにした。また、類似の性質を持つサンドイッチ型ルテチウムフタロシアニン錯体の合成を検討した。これらとは別に、柔軟なメチレンユニット5つからなるリンカーを有するポルフィリン環状二量体とセリウムイオンとの反応を行い、主な生成物が分子内でセリウムイオンを挟み込んだサンドイッチ型錯体であることを明らかにし、ポリマー合成に必要なポルフィリン環状二量体の構造的要素に関する知見を追加した。亜鉛ポルフィリン、および炭素数12の長鎖アルキル基で修飾した二種類のメタクリレートのリビングラジカル共重合を行い、続いて得られたポリマーのポルフィリン上の金属イオンを三価のイリジウムに交換し、目的とするポリマーを合成した。1HNMRによる検討から、ポルフィリンと長鎖アルキル基の存在比は1:12,GPCから計算した分子量分布(Mw/Mn)は1.47となった。また、ポリマーとカーボンナノチューブの複合化については、以下の手順で行った。まず、ポリマーを含んだ1、2ジクロロベンゼン中で市販の単層カーボンナノチューブを超音波処理し、遠心分離によって上澄みを分離した。これを濾別し、クロロホルムによって遊離したポリマーを洗浄後、フィルター上に残った部分を複合体とした。
KAKENHI-PROJECT-05F05398
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05398
ポルフィリン環状二量体超分子ポリマー/フラーレン一次元複合体を用いた材料開拓
上記手順で得られたサンプルを再度1、2ジクロロベンゼン中に分散し吸収スペクトルを測定したところ、イリジウムポルフィリンに由来する400nm付近の吸収帯の長波長シフトが観測され、カーボンナノチューブとの相互作用が示唆された。次に、複合体のカーボンナノチューブに由来するラマンシグナルを、カーボンナノチューブ単体と比較したところ、複合体中において、径の小さなカーボンナノチューブ由来のシグナルが相対的に強度を増していることが分かった。この結果は、径の細いカーボンナノチューブがイリジウムポルフィリンとの相互作用でエンリッチされる可能性を示している。ラマンスペクトル上で観測されたシグナル相対強度の変化は、有為ではあるが顕著ではなく、一段階の複合化における選択性はあまり高くないことを示唆している。選択性を向上するため、クロマトグラフィーの充填剤へのイリジウムポルフィリンポリマーの導入を検討している。
KAKENHI-PROJECT-05F05398
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超小型圧センサーを用いた気管支喘息患者における気道拡張薬の作用部位の測定
喘息患者における気道拡張薬がどの気道を拡張させるのかという疑問は治療上必要である。気管支喘息患者に気管支鏡を用いて外径2mmの超小型圧センサーとそれに続く外径1mm長さ1mの導線を口腔から末梢気道へ楔入する。気管支鏡を取り除き、口腔流量と食堂内圧より末梢気道抵抗(Rp)を直接測定する。末梢気道抵抗を直接測定しながら、beta_2刺激剤、抗コリン剤、及びアミノフィリンを別々に投与した。結果はbeta_2刺激剤は中枢及び末梢気道共拡張効果を示し、抗コリン剤は主に中枢気道拡張効果を示した。アミノフィリンは末梢気道を主に張張した。これらの気道拡張剤の作用部位が異ることから、これらの薬剤は同時に用いた方が全気道拡張効果を有効に示すと考えられた。気管支喘息は全人工の3%と多いが治療法については確立されていない。私共は超小型圧センサーを試作し、喘息患者の末梢気道に楔入、末梢気道の換気を防げることなく、末梢気道内圧を測定し、末梢気道抵抗を直接測定する方法を開発した。本装置を用いてメサコリン吸入時の末梢気道過敏性を直接測定し、末梢気道が気道過敏性を決定していることを報告してきた。アミノフィリンは末梢気道のみ拡張させるため一秒率は不変でも自覚病状改善させると考えられた。喘息患者における気道拡張薬がどの気道を拡張させるのかという疑問は治療上必要である。気管支喘息患者に気管支鏡を用いて外径2mmの超小型圧センサーとそれに続く外径1mm長さ1mの導線を口腔から末梢気道へ楔入する。気管支鏡を取り除き、口腔流量と食堂内圧より末梢気道抵抗(Rp)を直接測定する。末梢気道抵抗を直接測定しながら、beta_2刺激剤、抗コリン剤、及びアミノフィリンを別々に投与した。結果はbeta_2刺激剤は中枢及び末梢気道共拡張効果を示し、抗コリン剤は主に中枢気道拡張効果を示した。アミノフィリンは末梢気道を主に張張した。これらの気道拡張剤の作用部位が異ることから、これらの薬剤は同時に用いた方が全気道拡張効果を有効に示すと考えられた。気管支喘息は全人工の3%と多いが治療法については確立されていない。私共は超小型圧センサーを試作し、喘息患者の末梢気道に楔入、末梢気道の換気を防げることなく、末梢気道内圧を測定し、末梢気道抵抗を直接測定する方法を開発した。本装置を用いてメサコリン吸入時の末梢気道過敏性を直接測定し、末梢気道が気道過敏性を決定していることを報告してきた。アミノフィリンは末梢気道のみ拡張させるため一秒率は不変でも自覚病状改善させると考えられた。
KAKENHI-PROJECT-05770390
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05770390
日豪におけるシティズンシップ教育と多文化教育の新展開に関する比較研究
この研究では、オーストラリアと日本におけるシティズンシップ教育と多文化教育の新展開について明らかにした。オーストラリアでは、特に、他州に比べて、シティズンシップ教育と多文化教育への体系的な取り組みがみられるビクトリア州を事例に、新たに策定された、グローバル・マルチカルチュラル・シティズンシップのための教育ストラテジーに注目し、その理念・政策・実践等を検討した。日本においては、シティズンシップ教育に関する実践はあるが、必ずしも多文化的な観点を考慮したものにはなっていないことが明らかとなった。この研究では、オーストラリアと日本におけるシティズンシップ教育と多文化教育の新展開について明らかにした。オーストラリアでは、特に、他州に比べて、シティズンシップ教育と多文化教育への体系的な取り組みがみられるビクトリア州を事例に、新たに策定された、グローバル・マルチカルチュラル・シティズンシップのための教育ストラテジーに注目し、その理念・政策・実践等を検討した。日本においては、シティズンシップ教育に関する実践はあるが、必ずしも多文化的な観点を考慮したものにはなっていないことが明らかとなった。本研究では、多文化市民社会の構築および見識ある行動的市民の育成に向けてオーストラリアの学校教育で取り組まれているシティズンシップ教育と多文化教育の新たな展開について、その理論、政策、実践を明らかにすること、および、多文化化の進む日本の学校における多様性への対応と市民性の育成に向けた取り組みとを明らかにすることを目的とする。本研究の1年目である平成21年度は、日本およびオーストラリアにおけるシティズンシップ教育と多文化教育の現状を明らかにするために、次のような作業を行った。(1)文献資料収集・分析:オーストラリアを含む諸外国および日本におけるシティズンシップ教育、多文化教育に関する文献・資料を収集し、収集した文献・資料を基にオーストラリアおよび日本のシティズンシップ教育、多文化教育に関する先行研究を整理し、また、諸外国の理論の分析を行い、研究の理論的枠組みをより精緻なものとした。(2)オーストラリアにおける調査計画:オーストラリアにおいて、学校教育について直接的な権限をもつ各州政府レベルにおけるシティズンシップ教育、多文化教育の最新動向を明らかにするために、ビクトリア州およびニューサウスウェールズ州において、シティズンシップ教育および多文化教育に関する指針および学校のカリキュラム・フレームワーク等を収集した。特に、ビクトリア州の取り組みについて、収集した資料を分析し、新たに打ち出された地球・多文化市民性の教育について、その特徴を明らかにした。本研究の2年目にあたる平成22年度は、主に、日本およびオーストラリアにおけるシティズンシップ教育と多文化教育の現状を明らかにするために、次のような作業を行った。オーストラリアを含む諸外国および日本におけるシティズンシップ教育、多文化教育に関する文献・資料(和書・洋書)を収集し、収集した文献・資料を基にオーストラリアおよび日本のシティズンシップ教育、多文化教育に関する先行研究を整理し、また、諸外国の理論の分析を行い、研究の理論的枠組みがより精緻なものとなるように検討した。オーストラリアの学校教育について直接的な権限をもつ各州政府レベルにおけるシティズンシップ教育、多文化教育の最新動向を明らかにするために、ビクトリア州およびニューサウスウェールズ州において、シティズンシップ教育および多文化教育に関する指針および学校のカリキュラム・フレームワーク、教師のための研修プログラムの内容等を収集した。メルボルンおよびシドニーの教育省や関係機関でのインタビュー調査も実施した。その結果、シティズンシップ教育と多文化教育に対して継続的な取り組みがなされるとともに、それぞれの州での実際の政策の違いが明らかとなった。また、学校での取り組みを明らかにするために、学校およびインテンシブイングリッシュセンターでの、調査および資料の収集を行った。そこでも、各学校やセンターにおいて、それぞれの実状に合わせた多様な取り組みを行っていることが明らかになった。日本については、日本国内におけるシティズンシップ教育への取り組み・実践に関する資料の収集を行った。本研究の3年目にあたる平成23年度は、主に、日本およびオーストラリアにおけるシティズンシップ教育と多文化教育の現状を明らかにし、両者の特徴や課題を抽出することを試みた。オーストラリアでは、連邦政府レベルにおいて、各教科・学習領域について、新しいナショナルカリキュラムが順次策定されている。その中で、シティズンシップ教育は、当初、一つの教科・学習領域としての明確な位置づけがなされていなかった。しかし、現在、そのあり方、カリキュラムをめぐって議論がなされている。2012年の3月には、専門家委員会よって提言書が作成されていることが明らかとなった。オーストラリアの学校教育について直接的な権限をもつ各州政府レベルにおけるシティズンシップ教育、多文化教育の最新動向を明らかにするために、ビクトリア州において、シティズンシップ教育および多文化教育に関する指針および学校のカリキュラム・フレームワーク、実践プログラム等を収集した。メルボルンの教育省や関係機関でのインタビュー調査も実施した。その結果、ビクトリア州では、政権交代があったため、シティズンシップ教育と多文化教育に関して、政策の変更があったことが明らかになった。それまでの取り組みは一時的に停止されていたが、その後過去の取り組みについて評価がなされ、一部変更ののち、継続されることとなった。また、ビクトリア州での異文化間教育的な取り組みが評価され、ナショナルレベルにおいて、新たに異文化間教育的取り組みが推進されていることも明らかとなった。日本については、日本国内におけるシティズンシップ教育への取り組み・実践に関する資料・情報の収集を行ったが、管見する限り多文化社会や多様性を前提としたシティズンシップ教育の実践が見当たらず、日本においては、そのような視点が捨象されていることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-21530874
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530874
欧州における東アジア伝統医学の受容と伝播に関する基礎的研究
最終年度に当たる本年度は、一・二年目に蒐集した資料(江戸期にオランダ商館医として来日したKaempfer, Thunberg, Sieboldの著述にかかる日本伝統医学、博物学関連資料)の整理を行うとともに、ドイツ、フランスにおける日本伝統医学関係資料の整理を試みた。スウェーデンウプサラ大学が所蔵するThunberg関連資料については、同大学進化学研究所植物部門所蔵のモグサ標本(Artemisia Vulgaris, Artemisia Japonica)の調査を行い、その写真画像を得た。またThunbergが帰国後、弟子Hallmanの学位論文として1782年に執筆した灸治療関連論文の原本を入手し、現在、同論文(ラテン語)の翻訳と、Kaempferが執筆した『廻国奇観』所収の鍼灸関係論文との比較を試みている。またThunbergの師であり、新しい植物の分類法を創始した植物学者Carl von Linneのラップランド探検記中に、Sami(ラップランド人)の伝統的な医療技術として灸に類似した治療法が紹介されており、リンネがこれを「Moxa」と呼んでいたこと(使用植物はヨモギではなく、別植物)などが明らかになった。またErwin von Bealtzが草津温泉にて撮影した写真の中に、ハンセン病患者への施灸を示すものがあり、ドイツのリンデン博物館に現存する。ベルツはドイツの医学雑誌において、灸治療がハンセン病の治療に有効であることを示唆するコメントを残しているほか、漢方治療を行っている医師を対象にアンケートを実施し、彼等のハンセン病観も併せて紹介していることが分かった。フランスにおける東アジア伝統医学の伝播状況については、江戸期に商館長として来日していたチチィングが日本から持ち帰った銅人形が東洋学者クロプラートに渡っていたことが判明した。初年度の本年はヨーロッパに現存する東アジア伝統医学関連資料のデータベース作成を行った。文献調査対象としてはライデン大学、パリ大学医学部の図書館を選択した。またこの過程で入手した論文のうち、オランダ商館医であったCarl Peter Thunbergが帰国後ウプサラ大学にて審査した弟子Hallmanの灸に関する学位請求論文(原文ラテン語)についてその邦訳作成を開始した。当該論文はNeedhamがその著Celestial Lancetにおいてすでに言及しているが「Thunbergはその論文を親切にみた」という簡単なコメントしか残しておらず、Hallmanの出自やThunbergとの関係、また先行する灸に関する欧文文献(Engelbert Kaempferの『廻国奇観』、ten Rhijneの著作)との関係については不明な点が残されているため今後さらに調査を進めていきたい。次年度は16世紀以降東アジアにおいて活躍したHermann Buschof, ten Rhijne, Kaempfer、Thunberg、Sieboldらの手になる伝統医学関連文献相互の引用関係にも目を配りつつ引き続き資料蒐集を行う。またこれに並行して、19世紀のヨーロッパにおいて鍼灸治療法の治療機序に対する解釈が劇的に変化していった背景について調査を進めていく予定である。二年目に当たる本年度は、一年目に蒐集した資料群に加えて、江戸期にオランダ商館医として来日したスウェーデン人医師、Carl PeterThunbergの著述にかかる日本伝統医学、博物学関連資料の調査、蒐集を行い、これらを整理するとともに、スウェーデンウプサラ大学に所蔵されるThunberg関連資料についても若干の知見を得た。来年度はかかる調査結果を基に、ウプサラ大学へ調査に赴き、Thunbergが日本で得た伝統医学知識をどのように評価し、本国における教育活動の中で学生達に知らせてきたかを具体的に追求していく。また19世紀後半、お抱え外国人医師として東京帝国大学にて教鞭を執っていたドイツ人医師、Erwin von Bealtzが日本の草津温泉にて撮影した写真の中に、ハンセン氏病患者に対する灸治療を行っていたことを示すものがあり、ドイツ、シュットガルトのリンデン博物館より同写真を入手し、その分析を行った。同写真は近代初期まで、民間医療の一環として、ハンセン氏病患者に対して、灸治を行っていたことを示す貴重な資料であり、かつベルツがかかる治療法に対して多大な関心を寄せていたことを示すものである。来年度はこれをふまえて、ドイツの医学雑誌においてベルツがどのように日本の伝統医学を紹介していたかを調査研究する予定である。フランスにおける東アジア伝統医学の伝播状況については、本年度はわずかな知見しか得ていないが、来年度はパリ大学医学部に所蔵される鍼灸模型について調査を行う予定である。最終年度に当たる本年度は、一・二年目に蒐集した資料(江戸期にオランダ商館医として来日したKaempfer, Thunberg, Sieboldの著述にかかる日本伝統医学、博物学関連資料)の整理を行うとともに、ドイツ、フランスにおける日本伝統医学関係資料の整理を試みた。スウェーデンウプサラ大学が所蔵するThunberg関連資料については、同大学進化学研究所植物部門所蔵のモグサ標本(Artemisia Vulgaris, Artemisia Japonica)の調査を行い、その写真画像を得た。またThunbergが帰国後、弟子Hallmanの学位論文として1782年に執筆した灸治療関連論文の原本を入手し、現在、同論文(ラテン語)の翻訳と、Kaempferが執筆した『廻国奇観』所収の鍼灸関係論文との比較を試みている。またThunbergの師であり、新しい植物の分類法を創始した植物学者Carl von Linneのラップランド探検記中に、Sami(ラップランド人)の伝統的な医療技術として灸に類似した治療法が紹介されており、リンネがこれを「Moxa」と呼んでいたこと(使用植物はヨモギではなく、別植物)などが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-14658002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14658002
欧州における東アジア伝統医学の受容と伝播に関する基礎的研究
またErwin von Bealtzが草津温泉にて撮影した写真の中に、ハンセン病患者への施灸を示すものがあり、ドイツのリンデン博物館に現存する。ベルツはドイツの医学雑誌において、灸治療がハンセン病の治療に有効であることを示唆するコメントを残しているほか、漢方治療を行っている医師を対象にアンケートを実施し、彼等のハンセン病観も併せて紹介していることが分かった。フランスにおける東アジア伝統医学の伝播状況については、江戸期に商館長として来日していたチチィングが日本から持ち帰った銅人形が東洋学者クロプラートに渡っていたことが判明した。
KAKENHI-PROJECT-14658002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14658002
ローカル・マシニング・ステーション方式放電加工機による精密加工
大型工作物の一部に形状加工や表面処理加工を局所的に行う自動加工システムでは、移動機構を兼ね備えた自走式の超小型の加工機械とそれの位置や姿勢を検出する測定系が必要となる。本研究では、ロボットアームに位置測定系を持つ移動基準面を固定し、この上を移動しながら加工を行う自走式放電加工機を開発し、大型工作物の局所加工において10mumオーダの精度を得ることを目的とする。アームで加工位置に粗位置決めを行った後、工作物にアームをクランプし、基準面上の局所座標を用いて自走式放電加工機で精密位置決めおよび加工を行う(この方式をローカルマシニングステーション方式と呼ぶことにする)。本年度は以下のことを行った。1.[プロトタイプの構成]単なる自走式加工機と比較し次のような利点がある。(1)移動基準面に位置測定系を持たせるため自走機構の移動量を高精度で検出できる。(2)アームに給電線や加工液供給ノズル等を取り付けるため、自走機構の動きを阻害しない。微動機構にはインパクト駆動機構を適用し、インパクト駆動機構を用いた放電加工機により加工を行った。放電加工では加工反力が小さいため、クランプは不要であることが明らかになった。[加工実験の結果]本方式による加工とロボットによる加工を比較した結果、ロボットは数10mum程度の誤差があったが本方式では最大で3mumであった。これより本方式の方が高精度であるといえる。[位置測定系の検討]デジタイザでは自走機構の位置は25mumの精度しか得られなかった。微動機構に用いたインパクト駆動機構は磁力により移動基準面に吸着する。そこに生じる磁束の変化をホール素子で検出することにより変位を測定する差動式変位測定装置を試作し検討を行った。原理的に優れていることが明らかになった。較正には渦電流センサ(申請)などを用いた。大型工作物の一部に形状加工や表面処理加工を局所的に行う自動加工システムでは、移動機構を兼ね備えた自走式の超小型の加工機械とそれの位置や姿勢を検出する測定系が必要となる。本研究では、ロボットアームに位置測定系を持つ移動基準面を固定し、この上を移動しながら加工を行う自走式放電加工機を開発し、大型工作物の局所加工において10mumオーダの精度を得ることを目的とする。アームで加工位置に粗位置決めを行った後、工作物にアームをクランプし、基準面上の局所座標を用いて自走式放電加工機で精密位置決めおよび加工を行う(この方式をローカルマシニングステーション方式と呼ぶことにする)。本年度は以下のことを行った。1.[プロトタイプの構成]単なる自走式加工機と比較し次のような利点がある。(1)移動基準面に位置測定系を持たせるため自走機構の移動量を高精度で検出できる。(2)アームに給電線や加工液供給ノズル等を取り付けるため、自走機構の動きを阻害しない。微動機構にはインパクト駆動機構を適用し、インパクト駆動機構を用いた放電加工機により加工を行った。放電加工では加工反力が小さいため、クランプは不要であることが明らかになった。[加工実験の結果]本方式による加工とロボットによる加工を比較した結果、ロボットは数10mum程度の誤差があったが本方式では最大で3mumであった。これより本方式の方が高精度であるといえる。[位置測定系の検討]デジタイザでは自走機構の位置は25mumの精度しか得られなかった。微動機構に用いたインパクト駆動機構は磁力により移動基準面に吸着する。そこに生じる磁束の変化をホール素子で検出することにより変位を測定する差動式変位測定装置を試作し検討を行った。原理的に優れていることが明らかになった。較正には渦電流センサ(申請)などを用いた。
KAKENHI-PROJECT-05750129
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750129
非平衡多孔質ナノ粒子の創製とそのバルク化
目的:リーチングによるナノ粒子からなるスケルタル構造の生成とバルク多孔質体の創製を目的とした。従来ほとんど報告例がない貴金属系のAl-Pt,Al-Au,Al-Pd,Al-Cu-Pd,Al-Cu-Au,Al-Ag-Pd合金の急速疑固粉末を前駆体として作製し、前駆体に及ぼす急冷効果、多孔質スケルトン構造の生成とバルク化ついて研究を実施する。微粒子生成機構について基礎的な検討を行う。結果:1.急冷効果:Al-X2元系ではX=Pd、X=PtではほぼAl fcc単相を得ることが出来た。3元系でも急速凝固の効果は大きく、Al-Pd-Ag系では均一過飽和固溶体単相の前駆体が得られた。2.多孔質体の生成:前駆体をNaOH20%溶液でリーチングした結果、全ての試料でリーチングが可能であった。得られた試料のX線回折は前駆体とは結晶構造が異なったブロードな回折パターンであり、リーチングによる相変態で貴金属微粒子が生じたことが明らかとなった。3.比表面積はPd系では80m^2/gときわめて高い値であり、Pt系でも55m^2/g程度であった。この結果は、数nmの微粒子からなるスケルタル構造が生成されたことを意味している。4.放電焼結法(sps)によるバルク状試料は可能であった。SPSによって得られたバルク材の見かけの密度はAuを除き、4-5g/cm3であり、通常のバルク材のものと比べて極て低い値であった。構造材としては強度は低いけれど、高い比表面積を持ったバルク材がSPSにより可能であと判断できた。5.リーチング過程のモデルについてはモンテカルロシミュレーションを試みたが現段階では多くのパラメータが未知であり、当初目的としたような成果を得るにはいたってはいない。目的:リーチングによるナノ粒子からなるスケルタル構造の生成とバルク多孔質体の創製を目的とした。従来ほとんど報告例がない貴金属系のAl-Pt,Al-Au,Al-Pd,Al-Cu-Pd,Al-Cu-Au,Al-Ag-Pd合金の急速疑固粉末を前駆体として作製し、前駆体に及ぼす急冷効果、多孔質スケルトン構造の生成とバルク化ついて研究を実施する。微粒子生成機構について基礎的な検討を行う。結果:1.急冷効果:Al-X2元系ではX=Pd、X=PtではほぼAl fcc単相を得ることが出来た。3元系でも急速凝固の効果は大きく、Al-Pd-Ag系では均一過飽和固溶体単相の前駆体が得られた。2.多孔質体の生成:前駆体をNaOH20%溶液でリーチングした結果、全ての試料でリーチングが可能であった。得られた試料のX線回折は前駆体とは結晶構造が異なったブロードな回折パターンであり、リーチングによる相変態で貴金属微粒子が生じたことが明らかとなった。3.比表面積はPd系では80m^2/gときわめて高い値であり、Pt系でも55m^2/g程度であった。この結果は、数nmの微粒子からなるスケルタル構造が生成されたことを意味している。4.放電焼結法(sps)によるバルク状試料は可能であった。SPSによって得られたバルク材の見かけの密度はAuを除き、4-5g/cm3であり、通常のバルク材のものと比べて極て低い値であった。構造材としては強度は低いけれど、高い比表面積を持ったバルク材がSPSにより可能であと判断できた。5.リーチング過程のモデルについてはモンテカルロシミュレーションを試みたが現段階では多くのパラメータが未知であり、当初目的としたような成果を得るにはいたってはいない。目的:貴金属系の多孔質構造の生成を目的にしてAl-Pt,Al-Au,Al-Pd,Al-Cu-Pd,Al-Cu-Au,Al-Ag-Pd合金の急速凝固粉末を前駆体として作製し、前駆体に及ぼす急冷効果、多孔質スケルトン構造の生成とバルク化ついて研究を実施した。結果:1.急冷効果:Al-X2元系ではX=Pd、X=PtではほぼAl fcc単相を得ることが出来た。X=AuではAuの一部はAl fccに固溶したが、Al_2Au相の晶出も認められた。3元系でも急速凝固の効果は大きく、Al-Pd-Ag系では均一過飽和固溶体単相が得られたことがX線回折、SEMによる組織観察、示差走査熱量測定などで明らかとなった。2.多孔質体の生成:前駆体をNaOH20%溶液でリーチングした結果、全ての試料でリーチングが可能であった.得られた試料のX線回折の結果、前駆体とは結晶構造が異なり、リーチングにより相変態が生じたことが明らかとなった。2元系ではX元素の構造のみが現れ、その半値幅はPd、Ptにおいて極めてブロードであり、微粒子の生成が期待された。また、3元ではAlを除く他の2種の元素のピークが重なっているのか、あるいは固溶した状態であるのか判断が難しい程度にブロードであった。特にAg-Pd系では固溶している可能性が高いと判断された。この結果については現在精細に検討中であり、固溶した状態であるとすれば、極めて学問的には大きい成果である。
KAKENHI-PROJECT-18560693
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非平衡多孔質ナノ粒子の創製とそのバルク化
また、比表面積はPd系では80m^2/gときわめて高い値であり、Pt系でも55m^2/g程度であった。また、Au系は13m^2/gと他のものに比べて低くAg系とほぼ同じであった。3.放電焼結法(SPS)によるバルク状試料の作製:いずれも、バルク状試料の作製は可能であった。SPSによって得られたバルク材の見かけの密度はAuを除き、4-5g/cm^3であり、通常のバルク材のものと比べて極めて低い値であり、バルク体も高い比表面積であることから、多孔質バルク材の生成がSPSにより可能であると判断できた。目的:リーチングによるナノ粒子からなるスケルタル構造の生成とバルク多孔質体の創製を目的とした。従来ほとんど報告例がない貴金属系のAl-Pt, Al-Au, Al-Pd, Al-Cu-Pd, Al-Cu-Au, Al-Ag-Pd合金の急速凝固粉末を前駆体として作製し、前駆体に及ぼす急冷効果、多孔質スケルトン構造の生成とバルク化ついて研究を実施する。微粒子生成機構について基礎的な検討を行う。結果:1.急冷効果:Al-X2元系ではX=Pd、X=PtではほぼAl fcc単相を得ることが出来た。3元系でも急速凝固の効果は大きく、Al-Pd-Ag系では均一過飽和固溶体単相の前駆体が得られた。2.多孔質体の生成:前駆体をNaOH20%溶液でリーチングした結果、全ての試料でリーチングが可能であった。得られた試料のX線回折は前駆体とは結晶構造が異なったブロードな回折パターンであり、リーチングによる相変態で貴金属微粒子が生じたことが明らかとなった。3.比表面積はPd系では80m^2/gときわめて高い値であり、Pt系でも55m^2/g程度であった。この結果は、数nmの微粒子からなるスケルタル構造が生成されたことを意味している。4.放電焼結法(sps)によるバルク状試料は可能であった。SPSによって得られたバルク材の見かけの密度はAuを除き、4-5g/cm3であり、通常のバルク材のものと比べて極て低い値であった。構造材としては強度は低いけれど、高い比表面積を持ったバルク材がSPSにより可能であと判断できた。5.リーチング過程のモデルについてはモンテカルロシミュレーションを試みたが現段階では多くのパラメータが未知であり、当初目的としたような成果を得るにはいたってはいない。
KAKENHI-PROJECT-18560693
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概均質ベクトル空間と付随する幾何構造
どのようなリー群上に不変平坦な射影構造とアファイン構造が存在するかについてまだ多くが未知である。代数的側面として、どのようなリー環が次元が一つ上の無限小概均質ベクトル空間を許容するかという問題が射影平坦性に関わる問題で、そして平坦なアファイン接続の存在問題はリー環が左対称代数(left symmetric algebras)の構造を持つかどうかという問題と同値である。これら幾何構造の構成について、部分多様体の観点から以下のように研究した。等質部分多様体が射影平坦になるかどうか、また射影構造を与える接続が更にアファイン平坦な接続に射影同値になるかどうかという研究は今回のものが初めてであると思われる。複素半単純リー代数のボレル部分代数上には平坦な複素アファイン構造が存在することがY. Takemoto氏、S. Yamaguchi氏により知られている。ここからすぐに実半単純リー環の岩沢分解に伴う可解部分代数S上には平坦なアファイン接続が存在することが分かる。そして放物型部分代数のLanglands分解に伴う可解部分代数上にはSから平坦なアファイン接続が誘導されることが示される。また平坦な射影構造を許容する実単純リー群のリー環はSL(n, R)とSL(n, H)のみであることが阿賀岡、浦川、Elduque氏らにより示されている。これらのリー環とその射影平坦な線形接続は任意の放物型部分代数Q上に射影平坦な接続を誘導することが分かる。そしてQ上の射影平坦な接続が平坦なアファイン接続と射影同値になるための必要十分条件が特殊線形リー環のディンキン図式のどの点を採用するかどうかという仕方で記述される。この結果をまとめた論文を執筆中である。(抄録なし)1研究目的の一つであった複素等質空間L/K上の不変平坦な複素射影構造と無限小の概均質ベクトル空間の対応を確立することができた。ここで無限小とは概均質ベクトル空間を微分して得られる表現と同一の条件をみたす複素リー環の表現である。この対応についてKが単位元の時、又Lが単連結の時は以前行ったので、それら以外の一般の場合が問題であった。特にLが単連結でない場合に与えられた無限小の概均質ベクトル空間から、一の分割を使わないことにより複素等質空間L/K上に正則な主ファイバー束と一次微分形式を構成することで、複素射影カルタン接続を構成し、従って平坦な複素射影構造をL/K上に得ることができた。これにより上述した対応は完全なものとなった。2概均質ベクトル空間の最も簡単な裏返し変換を微分幾何的に一般化し、多様体M上の射影構造[Γ']に対しその射影接枠束N上に射影構造[Γ']を構成することができた。Nは局所的に直積の構造を持つが、線形接続Γ'は積接続とは異なる。実際Γ'はΓとそのリッチテンソル、接枠束上の自然な一形式を組み合わせることで得られる。Γ'の振率はFのワイル射影曲率により与えられ、従って零とは限らない。またNのファイバーは射影変換群と同型であり、[Γ']に関し全測地的部分多様体でかつ射影平坦である。更にこの変換は射影構造の平坦性を保つものであり、連続して変換を施せるという概均質ベクトル空間の裏返し変換の良い特徴を持っている。リーマンやアファイン,共形構造とは違って,平坦な射影構造をもつ多様体の直積や連結和が必ずしも平坦な射影構造を許容しないことを考慮すると、この裏返し変換は一つの与えられた平坦な射影構造から新たな平坦な射影構造と多様体を作り出す現時点で唯一の方法だと考える。本研究の目的は多様体上の平坦な射影構造、グラスマン構造の構成を概均質ベクトル空間の裏返し変換を用いて実現するというものである。GL(n)とGL(m)(n,m>1)のテンソル積を構造群に持つG-構造をグラスマン構造という。研究実施計画に書いたように、グラスマン構造又は射影構造が多様体M上に与えられた時に、裏返し変換を連続して行うことにより次元の高い多様体Nとその上の射影構造の構成法を与えた。得られる多様体NはM上の主ファイバー束で構造群が射影変換群PL(k-i)の直積であり、可能な次数の組(k_1,k_2,...,k_j)はあるグラスマン型の2次方程式の正の整数解と対応することが分かった。また裏返し変換で隣り合う解たちはグラスマン構造を持つ多様体で結ばれている。その関係について、系列上の底空間は他の底空間の射影枠束を取るという操作と、グラスマン構造をその構造群の部分群である射影線形群で割るという操作によって結ばれている。特に始めに与えられたM上のグラスマン構造(又は射影構造)が平坦の時、有限回の裏返し変換によって得られた多様体N上の射影構造も平坦である。多様体が平坦な射影構造を持つかどうかというのは多様体の一つの特徴づけであり、平坦な射影構造を許容する多様体の分類は未解決だと言える。本研究の結果は平坦な射影構造を持つ多様体の系列を一つの与えられたものから構成することと、その2次方程式との関わりから興味深いと考える。更にM上のグラスマン構造(又は射影構造)が平坦な場合は、それらはグラスマン多様体(射影空間)の開集合の張り合わせを記述する変換関数によって与えられる。
KAKENHI-PROJECT-11J07999
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概均質ベクトル空間と付随する幾何構造
このとき有限回の裏返し変換で得られた多様体N上の平坦な射影構造もMと同じ変換関数で与えられることをカルタン接続を用いて示した。どのようなリー群上に不変平坦な射影構造とアファイン構造が存在するかについてまだ多くが未知である。代数的側面として、どのようなリー環が次元が一つ上の無限小概均質ベクトル空間を許容するかという問題が射影平坦性に関わる問題で、そして平坦なアファイン接続の存在問題はリー環が左対称代数(left symmetric algebras)の構造を持つかどうかという問題と同値である。これら幾何構造の構成について、部分多様体の観点から以下のように研究した。等質部分多様体が射影平坦になるかどうか、また射影構造を与える接続が更にアファイン平坦な接続に射影同値になるかどうかという研究は今回のものが初めてであると思われる。複素半単純リー代数のボレル部分代数上には平坦な複素アファイン構造が存在することがY. Takemoto氏、S. Yamaguchi氏により知られている。ここからすぐに実半単純リー環の岩沢分解に伴う可解部分代数S上には平坦なアファイン接続が存在することが分かる。そして放物型部分代数のLanglands分解に伴う可解部分代数上にはSから平坦なアファイン接続が誘導されることが示される。また平坦な射影構造を許容する実単純リー群のリー環はSL(n, R)とSL(n, H)のみであることが阿賀岡、浦川、Elduque氏らにより示されている。これらのリー環とその射影平坦な線形接続は任意の放物型部分代数Q上に射影平坦な接続を誘導することが分かる。そしてQ上の射影平坦な接続が平坦なアファイン接続と射影同値になるための必要十分条件が特殊線形リー環のディンキン図式のどの点を採用するかどうかという仕方で記述される。この結果をまとめた論文を執筆中である。不変平坦な射影構造を許容する等質空間の分類問題について、概均質ベクトル空間との対応は確立したがその先の分類まで進められなかったため。また射影構造の裏返し変換の研究に予想以上の時間を必要としたため。射影構造の裏返し変換の研究を十分に行うことができた。またこの研究を行うことにより不変平坦な射影構造を許容する等質空間の分類についても新たな見通しを得られたと考える。まず射影構造の裏返し変換を早く完成させたい。またその次に、概均質ベクトル空間の分類を幾何学的に推し進めること、また同時に概均質ベクトル空間と不変平坦な複素射影構造の間の対応を使い、それぞれの概念、手法をより活発に行き来させたい。多様体上の射影構造の中でも、開軌道を持つリー群の線形表現に研究対象を絞る。更にこのような表現の分類を行うに当たり、特殊線形群とGL(1)の直積で群と表現空間の次元が等しいものの分類、単純リー環の次数付けから得られる開軌道を持つ表卑の分類などを考える。固定された等質空間上の不変平坦な射影構造のなす空間は興味深い問題であるが、これは可解リー群に対して考えるのが適切だと考える。上記の半単純のクラスを考察した後にこの表現のモジュライの問題も考えたい。私個人にはこの順序がよいように思われる。(抄録なし)
KAKENHI-PROJECT-11J07999
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11J07999
企業活動のグローバル化と環境配慮型資材調達に関する組織論的研究
本研究は、企業の国際部品調達をめぐる諸問題を環境配慮型資材調達戦略と関連させて経営組織論の視角から理論的・実証的に考察することを主たる目的としたものであった。二年間にわたる研究を終え、次に示す知見を新たに得ることができた。第一に、企業活動のグローバル化が一段と進展しており、多くの組立企業と部品企業が国内外で多様かつ柔軟な取引関係の構築をめざしていることが確認された。第二に、資材の調達において、近年急速に電子購買システムの構築と導入をはかることで購買プロセスの簡素化、情報の一元化、および、それらにともなうコストダウンの実現をめざす組立企業が増加してきていることが確認された。第三に、各種の環境規制に対応するために、多くの企業がISO14000シリーズの認証取得、ライフ・サイクル・アセスメントにもとづく新製品開発、省エネルギー型生産設備の導入、リサイクルシステムの構築、そしてグリーン調達の実施を本格的に推進していることが確認された。第四に、組立企業による部品企業への要請によって、環境配慮型経営が個別企業から企業間関係のレベルに着実に進展しつつあることが確認された。しかし、環境配慮型経営のさらなる推進のためには、行為主体の境界を越え、全体論的な視点に立脚した社会・経済システムの再構築が求められる。また、グリーン調達が資源・エネルギー効率にもとづいて実施されるためには、市場取引におけるインセンティブの抜本的な見直しも政策的に必要となろう。今後、本研究で得られた知見を活用し、こうした問題意識を考慮した研究へと展開していきたい。本研究は、企業の国際部品調達をめぐる諸問題を環境配慮型資材調達戦略と関連させて経営組織論の視角から理論的・実証的に考察することを主たる目的としたものであった。一年間にわたる研究を終え、次に示す知見を新たに得ることができた。第一に、企業活動のグローバル化が一段と進展しており、多くの組立企業と部品企業が国内外で多様かつ柔軟な取引関係の構築をめざしていることが確認された。第二に、近年の環境問題に対する関心の高まりの中で、多くの企業が具体的な取り組みを本格的に開始していることが明らかとなった。具体的にはISO14000シリーズの認証取得、ライフ・サイクル・アナリシスにもとづく新製品開発、省エネルギー型生産設備の導入、リサイクルシステムの構築、そしてグリーン調達などの対策が推進されていた。ただし、ISO14000シリーズに関しては、システムの構築と維持にともなってさまざまな問題が生じることを理由に一部の企業が導入を見送る動きも確認された。第三に、環境配慮型経営が個別企業のレベルから企業間関係のレベルに着実に進展しつつあることが確認された。多くの組立企業は部品企業に環境配慮型生産の実施を要請し、また多くの部品企業は組立企業のこうした要請への対応を推進している。しかし、多くの組立企業はグリーン調達を標榜する一方で、コスト効率を重視した調達の推進もはかっており、必ずしも統一した方針にもとづいた調達がなされていないことが判明した。また、多くの企業による現時点におけるグリーン調達の理解も実施状況も資源・エネルギー効率の視点から検討するとまだ未成熟なものであり、今後の課題が多いことも確認された。以上が今年度における研究成果の概要である。これを受け、平成13年度はさらなる研究の発展をはかっていきたい。本研究は、企業の国際部品調達をめぐる諸問題を環境配慮型資材調達戦略と関連させて経営組織論の視角から理論的・実証的に考察することを主たる目的としたものであった。二年間にわたる研究を終え、次に示す知見を新たに得ることができた。第一に、企業活動のグローバル化が一段と進展しており、多くの組立企業と部品企業が国内外で多様かつ柔軟な取引関係の構築をめざしていることが確認された。第二に、資材の調達において、近年急速に電子購買システムの構築と導入をはかることで購買プロセスの簡素化、情報の一元化、および、それらにともなうコストダウンの実現をめざす組立企業が増加してきていることが確認された。第三に、各種の環境規制に対応するために、多くの企業がISO14000シリーズの認証取得、ライフ・サイクル・アセスメントにもとづく新製品開発、省エネルギー型生産設備の導入、リサイクルシステムの構築、そしてグリーン調達の実施を本格的に推進していることが確認された。第四に、組立企業による部品企業への要請によって、環境配慮型経営が個別企業から企業間関係のレベルに着実に進展しつつあることが確認された。しかし、環境配慮型経営のさらなる推進のためには、行為主体の境界を越え、全体論的な視点に立脚した社会・経済システムの再構築が求められる。また、グリーン調達が資源・エネルギー効率にもとづいて実施されるためには、市場取引におけるインセンティブの抜本的な見直しも政策的に必要となろう。今後、本研究で得られた知見を活用し、こうした問題意識を考慮した研究へと展開していきたい。
KAKENHI-PROJECT-12730077
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12730077
播種位置判別及び欠粒補償機能を有するマルチシ-ダの試作研究
本研究は畑作物の生産性向上に有望なフィルムマルチ栽培に関する高精度な播種システムの開発について研究を行ったものである。本栽培の播種ではフィルム孔へ播種することが最大の条件であることから、播種位置の限定、播種許容範囲の極小という激しい制約があり、裸地栽種概念では対応し切れない。そこで、フィルム孔の中心部への播種を可能とすることを目標に、フィルム孔を認知し欠粒補償機能を持つマイクロコンピュ-タを用いた精密播種システムの開発に取り組んだ。その結果、播種速度とフィルム孔径を入力情報に、刻々と計算・演算しながら播種するZ80CPUを用いたマルチ播種専用のマアクロコンピュ-タによる精密播種システムを完成した。播種機構には電子機器を用いたが、各々にフィルム孔を検出する光センサ-は孔の有無の判断が可能であったこと、フィルム孔と播種位置との同期には歯車式両開きシャッタ-機構が有利であったこと、デジタル播種での多関節型アクチュエ-タは各関節毎に速度制御をすることで合理的な播種動作となど適用性は高く評価し得た。大粒の落花生、トウモロコシ種子や、小粒の大根、レタス、ゴボウ種子などを用いた室内基礎実験では直径3cmまたは4cmのフィルム孔の中心部へ進入率9099%の高い割合で播種可能となったことより、目的の播種位置を判別する「位置決め播種」は達成できた。トラクタ牽引式の実用機(コンピュ-タ制御型マルチシ-ダ)も製作したので、高精度な播種の機械化を組み入れたマルチ栽培の機械化一貫体系が確立できることから、品目並びに規模拡大の可能性が期待される。なお、今後に本研究に関してはマイクロコンピュ-タの1回路で複数条を管理できるよウなプログラムの開発とハ-ドの改造をしてさらに実用化に導くものである。本研究は畑作物の生産性向上に有望なフィルムマルチ栽培に関する高精度な播種システムの開発について研究を行ったものである。本栽培の播種ではフィルム孔へ播種することが最大の条件であることから、播種位置の限定、播種許容範囲の極小という激しい制約があり、裸地栽種概念では対応し切れない。そこで、フィルム孔の中心部への播種を可能とすることを目標に、フィルム孔を認知し欠粒補償機能を持つマイクロコンピュ-タを用いた精密播種システムの開発に取り組んだ。その結果、播種速度とフィルム孔径を入力情報に、刻々と計算・演算しながら播種するZ80CPUを用いたマルチ播種専用のマアクロコンピュ-タによる精密播種システムを完成した。播種機構には電子機器を用いたが、各々にフィルム孔を検出する光センサ-は孔の有無の判断が可能であったこと、フィルム孔と播種位置との同期には歯車式両開きシャッタ-機構が有利であったこと、デジタル播種での多関節型アクチュエ-タは各関節毎に速度制御をすることで合理的な播種動作となど適用性は高く評価し得た。大粒の落花生、トウモロコシ種子や、小粒の大根、レタス、ゴボウ種子などを用いた室内基礎実験では直径3cmまたは4cmのフィルム孔の中心部へ進入率9099%の高い割合で播種可能となったことより、目的の播種位置を判別する「位置決め播種」は達成できた。トラクタ牽引式の実用機(コンピュ-タ制御型マルチシ-ダ)も製作したので、高精度な播種の機械化を組み入れたマルチ栽培の機械化一貫体系が確立できることから、品目並びに規模拡大の可能性が期待される。なお、今後に本研究に関してはマイクロコンピュ-タの1回路で複数条を管理できるよウなプログラムの開発とハ-ドの改造をしてさらに実用化に導くものである。本年度は、研究期間の初年度である。実施計画に添い研究遂行し、次の知見を得た。1.トラクタ直装式マルチシーダの試作研究フイルム敷設、播種の合理化を狙って、同時作業可能なマルチシーダを試作研究した。試作機は、フイルム孔有無の判別機能、播種時の欠粒補償機能を持つ電子制御播題システムとした。マルチ栽培では、播種位置の正確さが要求されるので、今回、播種速度、播種高さ、フイルム孔径を要因とする関係式を導入し、変数となる作業要因の定数化(今回は播種高さ)のために、マルチ畦上を走行可能な播種機構を開発試作した。また、フイルム直下で作条、覆土を実行する機構も試作した。試作機は今回購入したトラクタに取り付け、精密人工圃場での実験の結果、フイルム筒取付位置、作条器取付形状、重量等が問題となった。2.単粒播種装置の試作研究高品質種子の単粒播種を回転目皿式で検討した。種子とセルの形状が一致すれば単粒播種は可能となるので、種子形状のモデル化をコンピュータで行い、セル形状に近似する円形もしくは長円形を与える方式を提案した。本年度は、スイートコーン、大根、レタス、ゴボウ等の種子を検討し、各セル形の目皿を試作した。播種タイミングを確実に行う機構として、ロータリシャツタ機構を新たに開発した。本機構はコンパクトな構造で小粒種子用に適すると思われた。真空式は検討できなかった。3.位置決め播種制御システム小粒種子では粒子径が小さいので、確実な播種位置を制御するセンサーが必要である。光束が狭い光フアイバー
KAKENHI-PROJECT-63860033
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63860033
播種位置判別及び欠粒補償機能を有するマルチシ-ダの試作研究
センサーを用いた本制御システムは大根、ゴボウ、レタス種子も難なく感知し、かつ制御回路の小型化、省電力化ができ、本研究の制御システムに適することが認められた。昨年度の研究成果を踏まえて、今年度は下記の事項について遂行し、所定の知見を得た。1.野菜用マルチシ-ダの開発宮崎県ではマルチ栽培の野菜類への利用拡大の要望が強いことから野菜種子用マルチシ-ダを開発した。本研究課題の基本的機能の欠粒補償機能は、野菜種子の場合では、光ファイバ-センサ-を用い、繰り出し部シャッタ-をロ-タリ-式とするなど、落花生用とは異なる機構を開発した。室内実験の結果、シャッタ-下部に種子誘導管を設けるなどの若干の改良により適用性が確認できた。2.位置決め播種用マイクロコンピュ-タの開発マルチ穴径と播種速度を入力情報として、種子をマルチ穴の中央へ正確に播種する位置決め播種が可能な8ビット(Z80)マイクロコンピュ-タを開発した。本コンピュ-タは、マルチ穴径の情報を光センサ-で、播種速度情報をエンコ-ダで入力させ、種子導管が穴中心に到るまでの時間(待ち時間)を演算し、穴中心で播種させるものである。検定試験の結果、種子は速度の変化に関わらずマルチ穴中央位置に落下したことから回路の適用性が確認された。3.インテリジェント播種機構の開発人力による播種に近似した作業を目的に、多関節型アクチュエ-タの可能性を探った。今年は、ビデオによる動作分析だけに留まった。種子のピックアップ機構も課題として残った。今後は、上記のマイクロコンピュ-タとビデオカメラを組み合わせた播種機構の研究に取り組んで行く。4.マルチシ-ダの製作上記マイクロコンピュ-タを搭載した落花生用のマルチシ-ダを、民間共同研究者との共同設計により製作した。設計課程に時間がかかり、年度内に製作完了したが、試験期間が不足し、十分な検討結果が得られなかった。最終年度の来年度に再試験を実施し、結果の検討を行なうものである。本年度は、報告書作成を主目的としたが、追加試験も実施し、以下の事項の研究逐行にあたった。1.マイクロコンピュ-タ制御の播種位置判別機構の研究(1)歯車式両開きシャッタ機構の研究昨年度開発したマルチ孔内へ種子を確実かつ孔中心部へ播種するためのZ80マイクロコンピュ-タ用の制御機器として新たに開発した歯車式排種シャッタ-に関して、その特性を試験した。本機構は主歯車1枚と副歯車2枚からなる動力伝達機構を有することから従来機構より機械的タイムロスは減少し、耐久性も向上した。(2)デジタル播種機構の研究多関節型88ー5型マイクロロボットを用いて、パソコンによる播種動作を解析するプログラム(BASIC)と指定位置へ播種誘導するプログラムを開発した。本ロボットで合理的な播種動作を行なわせるには関節毎の速度制御が必要であることがわかった。(3)速度検出器(エンコ-ダ)の性能持ち時間演算の基本項目となる速度検出器の進行距離はエンコ-ダ1回転の基準値50mmに対し、実測値は基礎試験で0.1mm、圃場試験で0.3mm0.4mmとその差は小さく問題なかった。2.試作したマルチシ-ダとトラクタとの装着昨年度末に製作完了した試作機をトラクタへセッティングした。試作機は2条用マルチシ-ダで、フィルム敷設部と播種部からなり、特に播種部は本研究の特徴とする播種位置を判別するコンピュ-タと欠粒補機能を装備し、トラクタの走行速度を検出しながらフィルム孔中心へ播種制御するものであるので、装着は制御部と作業部の機能別とした。3.研究成果報告書の作成
KAKENHI-PROJECT-63860033
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ペルオキシソーム膜タンパク質複合体によるタンパク質の認識と輸送の分子機作
ペルオキシソームタンパク質は、分子内部に存在するPTS1もしくはPTS2と呼ばれる輸送シグナルの働きによって、サイトゾルからペルオキシソーム内へ輸送される。前年度の研究では、PTS1やPTS2を識別する2つのレセプター(Pex5pとPex7p)をアラビドプシスから同定するとともに、Pex5pとPex7p、およびPex5pとペルオキシソーム膜タンパク質Pex14pが結合能を有することを生化学的解析によって明らかにした。本年度は、これらのペルオキシソーム輸送因子間の結合が果たす役割をin vivoで明らかにすることを目的とした。いくつかの方法を試みた結果、RNAi法を用いた遺伝子発現抑制が有効であると判断し、PEX5およびPEX7遺伝子発現抑制株を作成した。これらの株を解析した結果、Pex5pを欠失するとPTS1タンパク質とPTS2タンパク質の両方の輸送が阻害されることが明らかになった。この株のペルオキシソームは、脂肪酸β酸化能と光呼吸の両方の機能が失わていた。Pex5pのカルボキシ来端を欠損したPex5pΔ7を過剰発現した場合にも、同様の表現型が認められた。一方、Pex7pを欠失した場合にはPTS2タンパク質の輸送のみが阻害されていた。この株のペルオキシソームは正常な光呼吸能を有するが、脂肪酸β酸化能は失っていた。以上の結果から、Pex5pとPex7pがサイトゾルでレセプター-カーゴ複合体を形成していること、またPex5pとPex14pの結合がレセプター-カーゴ複合体をペルオキシソームへ引き寄せる原動力になっていることをin vivoで証明した。ペルオキシソームタンパク質は、分子内部に存在するPTS1もしくはPTS2と呼ばれる輸送シグナルの働きによって、サイトゾルからペルオキシソーム内へ輸送される。前年度の研究では、PTS1やPTS2を識別する2つのレセプター(Pex5pとPex7p)をアラビドプシスから同定するとともに、Pex5pとPex7p、およびPex5pとペルオキシソーム膜タンパク質Pex14pが結合能を有することを生化学的解析によって明らかにした。本年度は、これらのペルオキシソーム輸送因子間の結合が果たす役割をin vivoで明らかにすることを目的とした。いくつかの方法を試みた結果、RNAi法を用いた遺伝子発現抑制が有効であると判断し、PEX5およびPEX7遺伝子発現抑制株を作成した。これらの株を解析した結果、Pex5pを欠失するとPTS1タンパク質とPTS2タンパク質の両方の輸送が阻害されることが明らかになった。この株のペルオキシソームは、脂肪酸β酸化能と光呼吸の両方の機能が失わていた。Pex5pのカルボキシ来端を欠損したPex5pΔ7を過剰発現した場合にも、同様の表現型が認められた。一方、Pex7pを欠失した場合にはPTS2タンパク質の輸送のみが阻害されていた。この株のペルオキシソームは正常な光呼吸能を有するが、脂肪酸β酸化能は失っていた。以上の結果から、Pex5pとPex7pがサイトゾルでレセプター-カーゴ複合体を形成していること、またPex5pとPex14pの結合がレセプター-カーゴ複合体をペルオキシソームへ引き寄せる原動力になっていることをin vivoで証明した。ペルオキシソームは、独自の遺伝情報を持たないオルガネラである。そのため、ペルオキシソームマトリックスに存在するすべてのタンパク質は、一旦サイトゾルで翻訳された後、ペルオキシソーム内へと輸送される。ペルオキシソームのタンパク質輸送には、PTS1やPTS2と呼ばれるごく簡単なアミノ酸配列が輸送シグナルとして働く、タンパク質の4次構造を保ったままペルオキシソーム膜を通過するなど、他のオルガネラには見られない独特な機構が存在する。申請者は、ペルオキシソーム機能を欠損するアラビドプシス突然変異体の解析から。PED2遺伝子の同定に成功した。この突然変異体の解析から、本遺伝子産物AtPex14Pはペルオキシソーム膜タンパク質複合体の構成因子であり、ペルオキシソーム膜上においてPTS1型およびPTS2型ペルオキシソームタンパク質両方の細胞内輸送を制御することが明らかになった。本年度は、まずPTS1およびPTS2を認識するレセプターの検索を行い、それぞれAtPex5PおよびAtPex7Pの2つのタンパク質を同定することに成功した。さらに、これら2つのタンパク質およびAtPex14Pとの結合活性を調べた結果、(1)AtPex5PとAtPex7Pがサイトゾルでレセプター複合体を形成している、(2)AtPex5PとAtPex14Pが結合することがレセプターカーゴ複合体をペルオキシソームへ引き寄せる原動力になっている、ことが判明した。ペルオキシソームタンパク質は、分子内部に存在するPTS1もしくはPTS2と呼ばれる輸送シグナルの働きによって、サイトゾルからペルオキシソーム内へ輸送される。前年度の研究では、PTS1やPTS2を識別する2つのレセプター(Pex5pとPex7p)をアラビドプシスから同定するとともに、Pex5pとPex7p、およびPex5pとペルオキシソーム膜タンパク質Pex14pが結合能を有することを生化学的解析によって明らかにした。本年度は、これらのペルオキシソーム輸送因子間の結合が果たす役割をin vivoで明らかにすることを目的とした。いくつかの方法を試みた結果、RNAi法を用いた遺伝子発現抑制が有効であると判断し、PEX5およびPEX7遺伝子発現抑制株を作成した。
KAKENHI-PROJECT-14340256
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ペルオキシソーム膜タンパク質複合体によるタンパク質の認識と輸送の分子機作
これらの株を解析した結果、Pex5pを欠失するとPTS1タンパク質とPTS2タンパク質の両方の輸送が阻害されることが明らかになった。この株のペルオキシソームは、脂肪酸β酸化能と光呼吸の両方の機能が失わていた。Pex5pのカルボキシ末端を欠損したPex5pΔ7を過剰発現した場合にも、同様の表現型が認められた。一方、Pex7pを欠失した場合にはPTS2タンパク質の輸送のみが阻害されていた。この株のペルオキシソームは正常な光呼吸能を有するが、脂肪酸β酸化能は失っていた。以上の結果から、Pex5pとPex7pがサイトゾルでレセプター-カーゴ複合体を形成していること、またPex5pとPex14pの結合がレセプター-カーゴ複合体をペルオキシソームへ引き寄せる原動力になっていることをin vivoで証明した。
KAKENHI-PROJECT-14340256
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幼児のふりにおける心的表象と行為の関係性の理解
(1)乳幼児のふりの理解レビュー論文の執筆,投稿乳幼児のふりの理解についてこれまでの先行研究をレビューし,ふりの理解の発達モデルを提案した。本モデルは,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となることを説明した。また,この2段階の理解は,目的論的推論と心理主義的推論(Gergely&Csibra,2003)の2種の異なる推論によってそれぞれ獲得されるものであることを提案した。(2)実験:乳児におけるふりの目的論的理解の検討1歳半児のふりの目的論的推論に基づく理解を予測の違背課題で検討し,彼らがふりを目的論的推論で理解していることを明らかにした。例えば,乳児は飲むふりをするという行為の目的を「のどの渇きを癒す」ことではなく,「遊ぶ」ことであると理解していたなら,その予想に背くジュースを飲むという行為の映像を長く注視した。(3)博士論文の執筆(1)の論文で提案したふりの理解の発達モデルを,7つの実験で検証した。これらの実験の結果は,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となること,乳幼児期を通してのふり遊びの体験がふり行為の心理的背景への理解をもたらすことを明らかにし,モデルの適切性を一部実証した。1.他者のふりの理解の発達モデルの構築(及びレビュー論文の作成)子どもは1歳半頃から,食べるふり,お母さんになったふりなどの様々なふりをしはじめる。同じ頃,周囲の大人(主に母親)も子どもの前で様々なふりをして見せる。では,子どもはどのようにして他者がふりをしているのだとわかるのだろうか。第1に,母親が子どもの前でふりをして見せる際,「これはふりだ」と分かるようなシグナル(笑いや視線などで)を発信し,それが子どもの理解を助けていると考えられる。一方,子どもの側でも他者の心的表象(例:意図,知識)を理解する能力が発達していくことで,ふりの理解が深まっていく。すなわち,幼児は他者(ふりをする人)が「お菓子があるつもり」(意図)で,お菓子を食べるふりをしていることに気づいていくのである。このように,子どもの他者のふりの理解は,子ども外の要因(ふりシグナル)と,子ども自身の要因(他者の心の理解)が絡み合って進んでいくものだといえるが,この2つの要素を取り入れた子どもの他者のふりの理解の発達モデルはないため,そのモデルを構築した。2.1歳半児に対する,日本の母親のふりシグナルの発信母親が子どもに対してふりをして見せるときにふりシグナルを発信するかどうかを検討した。その結果,母親はおやつを本当に食べる場合より,食べるふりをするときに,多く微笑し,子どもを長く注視し,効果音(擬音語,擬態語など)を多く発するなど,ふりシグナルを発信することが分った。これらのふりシグナルは子どものふりの理解を助けていると考えられる。母親のふりシグナルへの子どもの反応については現存分析中である。(1)母親のふりシグナルとトドラーのふりの理解昨年の調査では,母親は子ども(1歳半)の前でふりをして見せるときに,微笑や子どもへの注視,オノマトペを含む効果音など(これら全体をふりシグナルとする)を多用することを明らかにした。本年度では,これらの母親のふりシグナルと子どものふりの理解についての関連を検討した。その結果,母親がよく微笑し,子どもをじっと見つめ,効果音を多用するほど,その子どもは母親がふりをしているのだと理解しやすいことがわかった。この調査により,ふり遊びにおける母親のふりシグナルが文化普遍的な行動であることが示唆されたことが重要である。(2)1の追跡研究-母親のふリシグナルと後のトドラーのふりの理解-調査(1)の子どもの追跡を行い,子どもが1歳半時点での母親のふりシグナルが後(半年後)の子どものふりの理解に及ぼす影響を検討した。その結果,1歳半時点のときに母親による多くのふりシグナルが与えられていたほど,子どもは2歳になったときにふりの理解に優れていることを示した。また,1歳半のときに優れたふりの理解を示していた子どもは,2歳のときにも同様に優れたふりの理解を示した。(1)と(2)の調査より,子どもがふり遊びに参加しはじめる1歳半のときに母親がふりシグナルによってふりと現実の区別を明確に示すことが,1歳半時点だけでなく後の子どものふりの理解を促進することが明らかになった。(3)トドラーのふりにおける意図の理解注視法を用いて,1歳半時がふりをする人の「(例:食べる)かのようにしているつもり」という,ふり特有の意図を理解していくプロセスを検討した。結果については現在分析中である。(1)乳幼児のふりの理解レビュー論文の執筆,投稿乳幼児のふりの理解についてこれまでの先行研究をレビューし,ふりの理解の発達モデルを提案した。本モデルは,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となることを説明した。また,この2段階の理解は,目的論的推論と心理主義的推論(Gergely&Csibra,2003)の2種の異なる推論によってそれぞれ獲得されるものであることを提案した。(2)実験:乳児におけるふりの目的論的理解の検討
KAKENHI-PROJECT-08J05006
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幼児のふりにおける心的表象と行為の関係性の理解
1歳半児のふりの目的論的推論に基づく理解を予測の違背課題で検討し,彼らがふりを目的論的推論で理解していることを明らかにした。例えば,乳児は飲むふりをするという行為の目的を「のどの渇きを癒す」ことではなく,「遊ぶ」ことであると理解していたなら,その予想に背くジュースを飲むという行為の映像を長く注視した。(3)博士論文の執筆(1)の論文で提案したふりの理解の発達モデルを,7つの実験で検証した。これらの実験の結果は,1歳半頃にはふりという行為の理解が可能となり,ふりの背景にある主体の心的状態の理解は4歳以降に可能となること,乳幼児期を通してのふり遊びの体験がふり行為の心理的背景への理解をもたらすことを明らかにし,モデルの適切性を一部実証した。
KAKENHI-PROJECT-08J05006
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動脈硬化症におけるHDL受容体CLA-1の役割と臨床応用
#動脈硬化とCLA-1CLA-1相同遺伝子であるSR-B1の肝臓での発現は、コレステロール逆転送系を賦活し抗動脈硬化となることが報告されている。我々は肝臓で強く発現しているHDL受容体CLA-1が、高血糖によりその発現が抑制されることを認めた。高血糖によるCLA-1発現抑制はp38 MAP kinase inhibitorにより阻害された。グルコース用量依存的にp38 MAP kinaseの活性化を認め、活性p38 MAP kinase遺伝子導入によりCLA-1転写は活性化され、不活型p38 MAP kinase遺伝子導入により高血糖によるCLA-1発現抑制は阻害された。CLA-1 promoterの転写因子Sp1を含む領域の欠損により、高血糖によるCLA-1転写活性の抑制は認められなくなった。Sp1の発現により、CLA-1 promoterの転写活性は抑制され、Sp1発現抑制により高血糖刺激によるCLA-1転写抑制は阻害された(Am J Physio1EndocrinolMetab 2007 294:E78-87)。高血糖は心血管系のリスクファクターであり、高血糖による動脈硬化のメカニズムとして酸化ストレスなどがある。今回我々が検討したp38 MAP kinaseも炎症を介して動脈硬化を惹起することが知られている。つまり高血糖によるp38 MAPkinase/Sp1を介する肝臓でのCLA-1発現抑制は、糖代謝異常による動脈硬化発症機序の一因と推察できた。#CLA-1とその発現調節また肝臓でのCLA-1発現に影響する因子として我々はIFN-αの関与を発見した。IFN-αによりCLA-1蛋白の発現が減少し、またCLA-1のmRNA発現の低下・転写活性の低下を認めた。IFN-αによりHepG2におけるSTAT1/STAT2のリン酸化を用量依存的に認め、またsiRNAを用いたSTAT1/STAT2knock-down細胞においてIFN-αによるCLA-1発現抑制は認められなくなった。CLA-1promoter領域にはSTAT1/STAT2response sequenceがあり、EMSAを用いた実験により、その部位を介したSTAT1/STAT2の作用により、IFN-αによるCLA-1発現が抑制された。(Gut 2008 57:664-671)#CLA-1と細胞増殖(アポトーシス)と動脈硬化最近CLA-1の発現により副腎細胞であるが細胞の増殖が促され、その作用はHDL存在下でより促進されていた。細胞増殖促進はCLA-1のC末端の欠如により阻害され、PI3-K/Akt系が関与していることを証明した(BBRC in press)。現在wild typeのCLA-1およびCLA-1C末端mutantを血管平滑筋細胞・内皮細胞に遺伝子導入しDecoyCLA-1強発現細胞を作成し、細胞増殖・アポトーシスおよびCLA-1 C末端の関与する細胞内伝達系PI3-K/Akt・転写因子AP-1の影響について検討中である。また血管内皮細胞(HUVECs)にはCLA-1が発現しているが、動脈硬化進展に関与するAngiotensin II刺激により濃度依存的にCLA-1の発現が蛋白レベル、mRNA・転写レベルで抑制されることを見いだした。このAngiotensin IIによるCLA-1抑制効果に関与する細胞内伝達系を検討したところ、WortmanninやLY29402の添加により抑制効果が阻害され、この経路においてもPI3-K/Akt系の関与が推察された。CLA-1 C末端欠損mutant(Decoy mutant)の検討により、C末端がPI3-K/Akt系の情報伝達に関与していることが判明している。しかしC末端は、これまでの副腎皮質細胞などの検討でコレステロールの移送に関与しておらず、Decoy CLA-1強発現平滑筋細細胞・内皮細胞におけるselective cholesterol transfer・変性LDLの取り込みについて検討中である。さらに動脈硬化におけるCLA-1 C末端の役割について明らかにし、作動薬について検討予定である。CLA-1は肝臓で強く発現しているが、高血糖によりそのタンパク・遺伝子発現は抑制されることを認めた。高血糖によるCLA-1発現抑制効果はp38 MAP kinase inhibitorにより阻害された。グルコース用量依存的にp38 MAP kinaseの活性化を認め、活性型p38 MAP kinase遺伝子導入によりCLA-1の転写は活性化され、不活型のp38 MAP kinaseの遺伝子導入により高血糖によるCLA-1発現抑制効果は阻害された。つまり高血糖によるCLA-1発現抑制効果はp38 MAP kinaseを介する機序が考えられた。今後さらに動脈硬化の危険因子等に対するCLA-1発現について検討し、コレステロール逆転送系・抗動脈硬化の評価として検討予定である。#動脈硬化とCLA-1情報伝達系我々は肝臓で強く発現しているHDL受容体CLA-1が、高血糖によりその発現が抑制されることを認めた。高血糖によるCLA-1発現抑制はp38MAP kinase inhibitorにより阻害された。グルコース用量依存的にp38MAP kinaseの活性化を認め、活性型p38 MAP kinase遺伝子導入によりCLA-1転写は活性化され、不活型p38MAP kinase遺伝子導入により高血糖によるCLA-1発現抑制は阻害された。CLA-1 promoterの転写因子
KAKENHI-PROJECT-17790608
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動脈硬化症におけるHDL受容体CLA-1の役割と臨床応用
Sp1を含む領域の欠損により、高血糖によるCLA-1転写活性の抑制は認められなくなった。Sp1強発現により、CLA-1 promoterの転写活性は抑制され、Sp1発現抑制により高血糖刺激によるCLA-1転写抑制は阻害された(第49回日本糖尿病学会年次学術集会、東京2006年5月)。CLA-1の肝臓での発現がコレステロール逆転送系を賦活化し抗動脈硬化作用に働くと報告があり、つまり高血糖によるp38MAP kinase-Sp1を介する肝臓でのCLA-1発現抑制は、糖代謝以上による動脈硬化発症機序の一因と推察された。以上、動脈硬化症に関与するCLA-1発現調節の情報伝達系について解明してきた。#動脈硬化とCLA-1CLA-1相同遺伝子であるSR-B1の肝臓での発現は、コレステロール逆転送系を賦活し抗動脈硬化となることが報告されている。我々は肝臓で強く発現しているHDL受容体CLA-1が、高血糖によりその発現が抑制されることを認めた。高血糖によるCLA-1発現抑制はp38 MAP kinase inhibitorにより阻害された。グルコース用量依存的にp38 MAP kinaseの活性化を認め、活性p38 MAP kinase遺伝子導入によりCLA-1転写は活性化され、不活型p38 MAP kinase遺伝子導入により高血糖によるCLA-1発現抑制は阻害された。CLA-1 promoterの転写因子Sp1を含む領域の欠損により、高血糖によるCLA-1転写活性の抑制は認められなくなった。Sp1の発現により、CLA-1 promoterの転写活性は抑制され、Sp1発現抑制により高血糖刺激によるCLA-1転写抑制は阻害された(Am J Physio1EndocrinolMetab 2007 294:E78-87)。高血糖は心血管系のリスクファクターであり、高血糖による動脈硬化のメカニズムとして酸化ストレスなどがある。今回我々が検討したp38 MAP kinaseも炎症を介して動脈硬化を惹起することが知られている。つまり高血糖によるp38 MAPkinase/Sp1を介する肝臓でのCLA-1発現抑制は、糖代謝異常による動脈硬化発症機序の一因と推察できた。#CLA-1とその発現調節また肝臓でのCLA-1発現に影響する因子として我々はIFN-αの関与を発見した。IFN-αによりCLA-1蛋白の発現が減少し、またCLA-1のmRNA発現の低下・転写活性の低下を認めた。
KAKENHI-PROJECT-17790608
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Functional MRIおよび拡散強調画像を用いた脳機能局在およびその機能代償に関する研究―特に脳腫瘍・脳動静脈奇形治療後の機能温存について―
中心溝同定におけるfunctional MRI (fMRI)と拡散強調画像の有用性を比較検討した.対象は中心溝近傍の脳腫瘍5例及び脳梗塞2例の計7例である。使用機種はGE横河メディカル社製1.5TSigna LXで、fMRIはGradient type EPI (TR2000/TE40、6mmthk、4 slice)を用いて,掌握運動で賦活された領域を元画像又はT1強調画像に重ねて表示した。また同じ断層面で拡散強調画像(b factor=1000)をMPGを別々に3方向に印可し、各々のanisotropic imageから3D anisotropy contrast(3DAC)を作成、fMRIの結果と比較した。なおfMRI解析ならびに3DAC作成にはMR用ワークステーションAdvantageWindows3.1を用いた。その結果,fMRIでは全例に中心溝に一致した賦活領域の描出が見られた。また3DACでは中心前回と中心後回の白質が上下斜方向の神経束として紫色に描出されたが、腫瘍により脳回が変形し浮腫が及んでいた例では一部描出不良であった。fMRIで賦活された領域は3DACでは中心溝から前中心回に沿って認められた。以上,fMRIと3DACのcortical mappingの結果は良く一致し、これらは中心溝の同定に有用と思われた。ただ3DACでは脳浮腫などにより神経束の異方性が減少し描出困難な場合もあると考えられた.その結果,fMRIでは全例に中心溝に一致した賦活領域の描出が見られた。また3DACでは4/5例で中心前回と中心後回の白質が上下斜方向の神経束として紫色に描出されたが、腫瘍により脳回が変形し浮腫が及んでいた1例では一部描出不良であった。fMRIで賦活された領域は3DACでは中心溝から前中心回に沿って認められた。以上,fMRIと3DACのcortical mappingの結果は良く一致し、これらは中心溝の同定に有用と思われた。ただ3DACでは脳浮腫などにより神経束の異方性が減少し描出困難な場合もあると考えられた.中心溝同定におけるfunctional MRI (fMRI)と拡散強調画像の有用性を比較検討した.対象は中心溝近傍の脳腫瘍5例及び脳梗塞2例の計7例である。使用機種はGE横河メディカル社製1.5TSigna LXで、fMRIはGradient type EPI (TR2000/TE40、6mmthk、4 slice)を用いて,掌握運動で賦活された領域を元画像又はT1強調画像に重ねて表示した。また同じ断層面で拡散強調画像(b factor=1000)をMPGを別々に3方向に印可し、各々のanisotropic imageから3D anisotropy contrast(3DAC)を作成、fMRIの結果と比較した。なおfMRI解析ならびに3DAC作成にはMR用ワークステーションAdvantageWindows3.1を用いた。その結果,fMRIでは全例に中心溝に一致した賦活領域の描出が見られた。また3DACでは中心前回と中心後回の白質が上下斜方向の神経束として紫色に描出されたが、腫瘍により脳回が変形し浮腫が及んでいた例では一部描出不良であった。fMRIで賦活された領域は3DACでは中心溝から前中心回に沿って認められた。以上,fMRIと3DACのcortical mappingの結果は良く一致し、これらは中心溝の同定に有用と思われた。ただ3DACでは脳浮腫などにより神経束の異方性が減少し描出困難な場合もあると考えられた.
KAKENHI-PROJECT-12770496
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行動意向の情報と行動結果の情報の違いを考慮した交通行動モデルの開発
まず本研究において開発した手法の一つは,代表的なSPデータである「順位付けデータ」を用いた選択モデルの推定法である。この手法は,代替案の選好順位に含まれた情報の信頼性を明示的に考慮した独創的なモデル推定法である。次に,一人の回答者に対して繰り返し行なわれた一対比較データからその個人の各属性に対する重みを推定し,その情報をもとにサンプル全体を「好み」が同質なグループに分類し,さらにそのグループごとに選択モデルを推定するという手法を開発した。これは,通常,恣意的に行なわれているマーケット・セグメンテーションを客観的に行なう方法を提案するものである。最後に開発した手法は,RPデータとSPデータを同時に用いたモデル推定法である。この手法は,RPデータとSPデータという互いに補完的な性質を持つデータを統計的に融合することによって,両者の長所を利用するという全く独創的なものである。例えば,現存しない高快適性列車の導入に伴う鉄道利用者数の変化を予測するときには,通常のRPデータと仮想の高快適性列車に対する選好意識のSPデータを組み合わせてモデルを推定することができる。さらに,同じ個人内でRPデータとSPデータが相関を持つことに着目し,この個人内系列相関を明示的に考慮したモデルに発展させ,より精度の高い予測モデルを構築することができた。これらの開発した手法に対して,交通機関選択に関する実際のデータを用いたケーススタディを行い,その有効性を検証した。まず本研究において開発した手法の一つは,代表的なSPデータである「順位付けデータ」を用いた選択モデルの推定法である。この手法は,代替案の選好順位に含まれた情報の信頼性を明示的に考慮した独創的なモデル推定法である。次に,一人の回答者に対して繰り返し行なわれた一対比較データからその個人の各属性に対する重みを推定し,その情報をもとにサンプル全体を「好み」が同質なグループに分類し,さらにそのグループごとに選択モデルを推定するという手法を開発した。これは,通常,恣意的に行なわれているマーケット・セグメンテーションを客観的に行なう方法を提案するものである。最後に開発した手法は,RPデータとSPデータを同時に用いたモデル推定法である。この手法は,RPデータとSPデータという互いに補完的な性質を持つデータを統計的に融合することによって,両者の長所を利用するという全く独創的なものである。例えば,現存しない高快適性列車の導入に伴う鉄道利用者数の変化を予測するときには,通常のRPデータと仮想の高快適性列車に対する選好意識のSPデータを組み合わせてモデルを推定することができる。さらに,同じ個人内でRPデータとSPデータが相関を持つことに着目し,この個人内系列相関を明示的に考慮したモデルに発展させ,より精度の高い予測モデルを構築することができた。これらの開発した手法に対して,交通機関選択に関する実際のデータを用いたケーススタディを行い,その有効性を検証した。
KAKENHI-PROJECT-05750506
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05750506
希土類ナノ物質/有機ハイブリッド化による巨大組織体形成と機能創発
これまで、ファラデー効果に理想的な物質として希土類ナノ結晶EuX(ユーロピウムカルコゲナイド:X=0,S,Se)の合成およびファラデー効果に関する研究を世界に先駆けて行ってきた。このEuXナノ結晶から構成される巨大な自己組織体はEuXナノ結晶間の磁気的相互作用を増大させると考えられ、新しい機能材料への展開が期待される。本年度は溶液中におけるEuSナノ結晶から構成される巨大組織体の構造制御および機能発現に関する検討を行った。平均粒子サイズ15nmのEuSナノ結晶をアルコール中に分散し、その溶液中における自己会合体形成を光散乱測定(DLS測定)により観察した。観察の結果、アルコール分子の分子サイズが小さいもにほど、大きなEuSナノ結晶会合体を形成することがわかった。さらに、その会合体の大きさは使用するアルコール分子の種類によって制御できることも明らかにした。この溶液中における自己会合体の構造については小角X線散乱測定により同定をした。EuSナノ結晶会合体を含むアルコール溶液に磁場を印可し、偏光回転角測定を行った。測定の結果、偏光回転が見られる波長領域はEuSナノ結晶分散溶液にくらべて大きく超波長シフトしていることがあきらかとなった。これは、EuSナノ結晶会合体においてEuS結晶同士のエキシトン・カップリングが発生したためと現在考えている。本研究により、EuSナノ結晶会合体を形成することによる特異的な光物性発現の観察にはじめて成功した。機能性無機化合物として、Eu(III)イオンから構成される磁性半導体EuX(X=0,S,Se等)ナノ結晶の合成および磁気光学特性(ファラデー効果)に関する研究を行っている。このEuXナノ結晶から構成される巨大な自己組織体はEuXナノ結晶間の磁気的相互作用を増大させると考えられ、新しい機能材料への展開が期待される。しかし、これまでEuXナノ結晶の自己組織体による特異的な磁気機能発現に関する報告例はない。本年度はEuSナノ結晶から構成される巨大組織体の創成・構造制御および機能発現に関する検討を行った。球状および立方体型のEuSナノ結晶を有機媒体に分散し、ポリマー薄膜(マイラー)上にディップすることで会合体形成を行った。得られた薄膜のX線散乱測定にょり、EuSナノ結晶から構成される巨大組織構造の形成が明らかとなった。得られたEuS巨大組織構造を含むポリマー薄膜の磁気特性を評価するため、SQUIDによる磁気測定を行った。この磁気特性評価により、立方体型EuSナノ結晶組織体から構成される巨大組織体は球状から構成されるEuSナノ結晶組織体に比べて磁気特性の向上が観測された。本検討により、球状および立方体形状を有するEuSナノ結晶から構成される巨大組織体の構造形成に成功し、その自己組織化に基づく特異的な磁気機能発現の観察に成功した。これまで、ファラデー効果に理想的な物質として希土類ナノ結晶EuX(ユーロピウムカルコゲナイド:X=0,S,Se)の合成およびファラデー効果に関する研究を世界に先駆けて行ってきた。このEuXナノ結晶から構成される巨大な自己組織体はEuXナノ結晶間の磁気的相互作用を増大させると考えられ、新しい機能材料への展開が期待される。本年度は溶液中におけるEuSナノ結晶から構成される巨大組織体の構造制御および機能発現に関する検討を行った。平均粒子サイズ15nmのEuSナノ結晶をアルコール中に分散し、その溶液中における自己会合体形成を光散乱測定(DLS測定)により観察した。観察の結果、アルコール分子の分子サイズが小さいもにほど、大きなEuSナノ結晶会合体を形成することがわかった。さらに、その会合体の大きさは使用するアルコール分子の種類によって制御できることも明らかにした。この溶液中における自己会合体の構造については小角X線散乱測定により同定をした。EuSナノ結晶会合体を含むアルコール溶液に磁場を印可し、偏光回転角測定を行った。測定の結果、偏光回転が見られる波長領域はEuSナノ結晶分散溶液にくらべて大きく超波長シフトしていることがあきらかとなった。これは、EuSナノ結晶会合体においてEuS結晶同士のエキシトン・カップリングが発生したためと現在考えている。本研究により、EuSナノ結晶会合体を形成することによる特異的な光物性発現の観察にはじめて成功した。
KAKENHI-PUBLICLY-21111516
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-21111516
可搬型水素製造装置のための燃料改質および一酸化炭素除去技術の検討
水素を燃料とする燃料電池は化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる高効率なデバイスである。とくに高分子電解質燃料電池はコンパクトで可搬性に優れているため、自動車用、家庭用として期待されている。一方可搬型使用の場合、燃料である水素をいかにしてオンサイトで製造するかが問題となる。本研究ではメタノールや炭化水素から高効率で水素を製造する触媒反応系について検討した。メタノールからの水素製造について、担持Cu触媒を用いて検討した。担持濃度が低い場合には、担体によって、触媒活性は大きく異なり、高表面積を持つZnAl_2O_4を担体に用い、Cu濃度が高い場合に高いTOFを示した。また活性点には、XRDで検出されるCu種のXRDにピークを与えないCu種が存在した。粒子径の大きなCu種の反応性が高いということが明らかになった。つぎに、格子内にNi原子が含まれているヘキサアルミネート複合酸化物を高温処理した触媒を用いてメタンの部分酸化反応実験を行った。高温でも安定な活性を示した。この触媒は水蒸気改質反応においても高活性で高効率で水素を製造した。メタノールや炭化水素の改質ガスからのCO除去法として以前Cu-Al_2O_3-ZnO系触媒による酸素添加シフト反応が有効であると報告した。特に150°C程度の触媒が十分な活性を示さない領域の活性向上に有効あった。最後に、内部改質型の固体酸化物形燃料電池を用いて、メタンを電極上で水蒸気改質し水素を合成し、発電実験を行った。燃料極のNi-YSZサーメットに、CaO, SrO, CeO_2などの塩基性酸化物を添加するとコーク生成速度が大幅に低下した。とくに、CaOを添加したときには、内部改質速度が大幅に上昇する傾向が見られた。発電特性もCaOの影響は僅かで、電池の性能を低下させることなく、燃料の改質が電極上で起こることが明らかになった。水素を燃料とする燃料電池は化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる高効率なデバイスである。とくに高分子電解質燃料電池はコンパクトで可搬性に優れているため、自動車用、家庭用として期待されている。一方可搬型使用の場合、燃料である水素をいかにしてオンサイトで製造するかが問題となる。本研究ではメタノールや炭化水素から高効率で水素を製造する触媒反応系について検討した。メタノールからの水素製造について、担持Cu触媒を用いて検討した。担持濃度が低い場合には、担体によって、触媒活性は大きく異なり、高表面積を持つZnAl_2O_4を担体に用い、Cu濃度が高い場合に高いTOFを示した。また活性点には、XRDで検出されるCu種のXRDにピークを与えないCu種が存在した。粒子径の大きなCu種の反応性が高いということが明らかになった。つぎに、格子内にNi原子が含まれているヘキサアルミネート複合酸化物を高温処理した触媒を用いてメタンの部分酸化反応実験を行った。高温でも安定な活性を示した。この触媒は水蒸気改質反応においても高活性で高効率で水素を製造した。メタノールや炭化水素の改質ガスからのCO除去法として以前Cu-Al_2O_3-ZnO系触媒による酸素添加シフト反応が有効であると報告した。特に150°C程度の触媒が十分な活性を示さない領域の活性向上に有効あった。最後に、内部改質型の固体酸化物形燃料電池を用いて、メタンを電極上で水蒸気改質し水素を合成し、発電実験を行った。燃料極のNi-YSZサーメットに、CaO, SrO, CeO_2などの塩基性酸化物を添加するとコーク生成速度が大幅に低下した。とくに、CaOを添加したときには、内部改質速度が大幅に上昇する傾向が見られた。発電特性もCaOの影響は僅かで、電池の性能を低下させることなく、燃料の改質が電極上で起こることが明らかになった。水素を燃料とする燃料電池は化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる高効率なデバイスである。とくに高分子電解質燃料電池はコンパクトで可搬性に優れているため、自動車用、家庭用として期待されている。一方可搬型使用の場合、燃料である水素をいかにしてオンサイトで製造するかが問題となる。本研究ではメタノールや炭化水素から高効率で水素を製造する触媒反応系について検討する。メタノールや炭化水素を改質した燃料を使用することになるが、この方法では水素中に含まれるCOをいかに除くかが重要とされる。多量の水素中の微量のCOを数10ppmまで減少させる方法として、水性ガスシフト反応とCO選択酸化について検討した。シフト反応は熱力学的制約から出来るだけ低温で高い転化率を示す高活性触媒の開発が必要である。本研究では従来からシフト触媒として用いられている。Cu-Al_2O_3-ZnO形の触媒を用いて改質ガス中に微量の酸素を加えることによって転化率が増大することを見出した。特に炭化水素改質ガスなど、高濃度のCOを含むガス中のCOの除去には有効である。一方貴金属を用いたCOの選択酸化においては低濃度COの場合極めて低いレベルまでCO濃度を低減できることが明らかになった。しかし高濃度の場合には非選択的な反応が進行する。これらの反応の他にもメタノールを直接電極上に供給して発電を行う直接メタノール型燃料電池について検討し、Pt-TiO_2系電極が一般的なPt-C系に比較しても高い耐CO被毒性を示すことが明確になった。TiO_2上に水が吸着しやすくPt上の吸着COを酸化する能力を有すると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-11450308
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可搬型水素製造装置のための燃料改質および一酸化炭素除去技術の検討
この他にも燃料適応性に優れる内部改質型固体酸化物燃料電池についても検討した。水素を燃料とする燃料電池は化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる高効率なデバイスである。とくに高分子電解質燃料電池はコンパクトで可搬性に優れているため、自動車用、家庭用として期待されている。一方可搬型使用の場合、燃料である水素をいかにしてオンサイトで製造するかが問題となる。本研究ではメタノールや炭化水素から高効率で水素を製造する触媒反応系について検討する。メタノールや炭化水素の改質ガスからのCO除去法として以前Cu-Al_2O_3-ZnO系触媒による酸素添加シフト反応が有効であると報告した。特に150°C程度の触媒が十分な活性を示さない領域の活性向上に有効である。触媒の調製法について検討した結果、共沈法触媒では150°Cにおける経時劣化を受け難いのに対し、含浸法触媒では活性が時間とともに劣化する傾向が強く現れる。この劣化は水蒸気と酸素によるCuの酸化に起因することを明確にし、含浸法触媒では微細な細孔を有するために水蒸気が凝縮しやすいものと予想した。この他にも燃料適応性に優れる内部改質型固体酸化物燃料電池についても検討した。メタン改質反応やシフト反応は燃料電池発電の原料線速度では動作温度である1000°Cにおいて速やかに進行することが明らかとなった。また燃料ガス中の水素とCOの比率を変化させたところ1000°Cの運転ではCOリッチの燃料の方が性能が低い結果となった。900°Cにおいては水素、COの性能は近いことから、この効果は濃度過電圧の違いによるものと予想される。異なる炭化水素種について発電性能を比較したところC_2燃料の内部改質では炭素析出による大幅な性能低下が観察された。燃料電池の燃料として水素が必要とされているが、メタンの部分酸化反応は弱い発熱反応のため小規模な水素生成法として期待されている。格子内にNi原子が含まれているヘキサアルミネート複合酸化物を高温処理した触媒を用いて、N_285%,CH_410%,O_25%というガス組成で部分酸化反応実験を行うと、SV12,0001/kghという高流速条件でも、生成ガスは低温からほぼ平衡に達し、高温でも安定な活性を示した。この触媒は水蒸気改質反応においても高活性で高効率で水素を製造した。次にメタノールからの水素製造とCOの除去について、担持Cu触媒を用いて検討した。担持濃度が低い場合には、担体によって、触媒活性は大きく異なり、高表面積を持つZnAl_2O_4を担体に用い、Cu濃度が高い場合に高いTOFを示した。また活性点には、XRDで検出されるCu種とXRDにピークを与えないCu種が存在した。粒子径の大きなCu種の反応性が高いということが明らかになった。この触媒系では、ほぼ、COを副性することなく水素を生成した。最後に、内部改質型の固体酸化物形燃料電池を用いて、メタンを電極上で水蒸気改質し水素を合成し、発電実験を行った。燃料極のNi-YSZサーメットに、CaO, SrO, CeO_2などの塩基性酸化物を添加するとコーク生成速度が大幅に低下した。
KAKENHI-PROJECT-11450308
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チフス菌病原因子と宿主細胞応答に関する研究
現在までにサルモネラの上皮細胞の侵入にはType3secretion sysytemという蛋白を分泌する細菌の機能が非常に重要であることが明らかになった。Type3secretion sysytemは多くの病原細菌に共通の蛋白分泌装置と考えられ、その働きは病原性を発揮するのに必要な蛋白の分泌と考えられている。サルモネラのType3secretion sysytemからはSipA,SipB,SipC,sipDなどの宿主細胞の侵入に必要な蛋白が分泌される。さらに、分泌されたSipB,SipCは宿主の細胞に注入されることが明らかになった。私たちの研究では、これらの分泌性蛋白に注目し、SipB,SipCが宿主の細胞内に入ってから細胞内での働きを明らかにすることを目的としている。酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してSipB,SipC等の蛋白が宿主の細胞内に入ってからどのような蛋白と相互作用があるかを探すことよりこれらの蛋白の宿主細胞内での働きを明らかにしたいと考えている。現在、酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してsipCと相互作用がある宿主の蛋白をスクリーニングした結果、ある細胞内器官がSipCと相互作用があるという結果が得られた。実際に細胞内で相互作用があるかを免疫沈降法を用いて解析したところ、実際にSipCと細胞内器官は細胞内で結合していることがウエスタンブロットにより確認できた。この結果より、サルモネラ分泌蛋白SipCはサルモネラの上皮細胞への侵入だけでなく、宿主細胞に侵入後細胞内器官に結合し、このあとに続く宿主細胞の形態の変化や、免疫応答に影響を与えていることを明らかにすることができた。現在までにサルモネラの上皮細胞の侵入にはType3 secretion sysytemという蛋白を分泌する細菌の機能が非常に重要であることが明らかになった。Type3 secretion sysytemは多くの病原細菌に共通の蛋白分泌装置と考えられ、その働きは病原性を発揮するのに必要な蛋白の分泌と考えられている。サルモネラのType3 secretion sysytemからはSipA,SipB,SipC,sipDなどの宿主細抱の侵入に必要な蛋白が分泌される。さらに、分泌されたSipB,SipCは宿主の細胞に注入されることが明らかになった。私たちの研究では、これらの分泌性蛋白に注目し、SipB,SipCが宿主の細胞内に入ってから細胞内でどのような働きをするのかを明らかにすることを目的としている。酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してSipB,SipC等の蛋白が宿主の細泡内に入ってからどのような蛋白と相互作用があるかを探すことよりこれらの蛋白の宿主細胞内での働きを明らかにしたいと考えている。現在、酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してsipCと相互作用がある宿主の蛋白の候補が見つかり、実際に細胞内で相互作用があるかを検討中である。さらにsipC抗体を作成し、培養上清中に分泌されるsipC蛋白の検出系を確立できた。また、これらsipB,sipC遺伝子をこわした変異株を作成中である。今後、ある特定の病原因子を遺伝子レベルで不活性化した変異株(鞭毛欠損株、線毛欠損株、Vi抗原欠損株など)と上記のsipB,sipC変異株を感染させ、貧食したマクロファージ内で活性化される、サイトカイン(TNF-α,IL-12,IL-6,IL-1,IL-15)遺伝子発現を調べ、マクロファージ応答を詳しく解析する予定である。現在までにサルモネラの上皮細胞の侵入にはType3secretion sysytemという蛋白を分泌する細菌の機能が非常に重要であることが明らかになった。Type3secretion sysytemは多くの病原細菌に共通の蛋白分泌装置と考えられ、その働きは病原性を発揮するのに必要な蛋白の分泌と考えられている。サルモネラのType3secretion sysytemからはSipA,SipB,SipC,sipDなどの宿主細胞の侵入に必要な蛋白が分泌される。さらに、分泌されたSipB,SipCは宿主の細胞に注入されることが明らかになった。私たちの研究では、これらの分泌性蛋白に注目し、SipB,SipCが宿主の細胞内に入ってから細胞内での働きを明らかにすることを目的としている。酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してSipB,SipC等の蛋白が宿主の細胞内に入ってからどのような蛋白と相互作用があるかを探すことよりこれらの蛋白の宿主細胞内での働きを明らかにしたいと考えている。現在、酵母を用いたTwo-Hybrid Systemを利用してsipCと相互作用がある宿主の蛋白をスクリーニングした結果、ある細胞内器官がSipCと相互作用があるという結果が得られた。実際に細胞内で相互作用があるかを免疫沈降法を用いて解析したところ、実際にSipCと細胞内器官は細胞内で結合していることがウエスタンブロットにより確認できた。この結果より、サルモネラ分泌蛋白SipCはサルモネラの上皮細胞への侵入だけでなく、宿主細胞に侵入後細胞内器官に結合し、このあとに続く宿主細胞の形態の変化や、免疫応答に影響を与えていることを明らかにすることができた。
KAKENHI-PROJECT-11770151
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経営者の下方リスク回避度の定量的測定とその決定要因ならびに企業行動との関係性
本研究は、ファイナンス、経済学分野において最近確立されつつある下方リスク回避度の測定方法を、経営者のリスク選好の測定に応用する方法を開発し、それを利用して、下方リスク回避度の決定要因ならびに企業行動・パフォーマンスへの影響を検証する学術的に先駆的な試みである。本研究は、ファイナンス、経済学分野において最近確立されつつある下方リスク回避度の測定方法を、経営者のリスク選好の測定に応用する方法を開発し、それを利用して、下方リスク回避度の決定要因ならびに企業行動・パフォーマンスへの影響を検証する学術的に先駆的な試みである。
KAKENHI-PROJECT-19K21709
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K21709
中枢性循環およびADH分泌調節に対する脳内アミノ酸とカテコールアミンの役割(自然発症高血圧ラットの脳内Glutamate,GABA,カテコールアミンの微小透析法による検討)
本実験では自然発症高血圧ラット(SHR)の視床下部ニューロンのGABA、Glu産生、分泌動態に異常がある否かを知るために、下記について検討した。1)NaClの負荷による傍室核(PVN)におけるGABA、Glu分泌と血圧およびvasopressin(AVP)分泌の変化2)出血刺激によるPVNのGABA、Glu分泌とAVP分泌3)視床下部におけるglutamate decarboxylase(GAD)活性と血圧の変化4)視床下部におけるGAB-mRNA発現と血圧変化。尚、上記の対象としては正常血圧のWKYを使用した。高張食塩水負荷では、SHRはWKYに比し血圧は上昇して、AVP分泌は亢進していた。この時、PVNのGABA活性はWKYに比してSHRでは低下していた。SHRとWKYの同程度の出血刺激に対してAVP分泌はSHRで亢進していた。この時、PVNのGABA分泌はSHRで低下していた。11週齢のSHRのGAD活性は同週齢のWKYと比べると低く、GABA分泌の低下に一致した所見であった。また、GADmRNAもWKYに比してSHRでは低下している事からGADの産生の低下がその分泌の低下に関与すると考えられた。以上の結果によりSHRの高血圧の発症にはGABA分泌の低下が関与し、これはGADの産生低下に関係すると考えられた。GAD産生低下には遺伝子レベルでの異常がGADの合成に影響し、これが高血圧の遅発的発症の原因となると推察された。この点のさらなる研究が将来必要と思われた。本実験では自然発症高血圧ラット(SHR)の視床下部ニューロンのGABA、Glu産生、分泌動態に異常がある否かを知るために、下記について検討した。1)NaClの負荷による傍室核(PVN)におけるGABA、Glu分泌と血圧およびvasopressin(AVP)分泌の変化2)出血刺激によるPVNのGABA、Glu分泌とAVP分泌3)視床下部におけるglutamate decarboxylase(GAD)活性と血圧の変化4)視床下部におけるGAB-mRNA発現と血圧変化。尚、上記の対象としては正常血圧のWKYを使用した。高張食塩水負荷では、SHRはWKYに比し血圧は上昇して、AVP分泌は亢進していた。この時、PVNのGABA活性はWKYに比してSHRでは低下していた。SHRとWKYの同程度の出血刺激に対してAVP分泌はSHRで亢進していた。この時、PVNのGABA分泌はSHRで低下していた。11週齢のSHRのGAD活性は同週齢のWKYと比べると低く、GABA分泌の低下に一致した所見であった。また、GADmRNAもWKYに比してSHRでは低下している事からGADの産生の低下がその分泌の低下に関与すると考えられた。以上の結果によりSHRの高血圧の発症にはGABA分泌の低下が関与し、これはGADの産生低下に関係すると考えられた。GAD産生低下には遺伝子レベルでの異常がGADの合成に影響し、これが高血圧の遅発的発症の原因となると推察された。この点のさらなる研究が将来必要と思われた。自然発症高血圧ラット(SHR)における脳内活性アミノ酸のvasopressin(ADH)分泌および血圧調節に果たす役割を明らかにするために、高張食塩水(HS)負荷を行い血圧、心拍数、血中ADHおよびMicrodialysis(MD)法により脳内GABAおよびGlutamateを測定し、正常血圧対照ラット(CTL)と比較検討した。実験は10週令の体重約200-250gのSHRおよびCTLの視床下部室傍核(PVN)に接する様にMD probeを挿入し、大腿動脈にcanulationして翌日無麻酔無拘束で施行した。ProbeをRinger液(2μl/min)で潅流し、HS(2.5MNaCl)を持続静注し30分毎に潅流液を採取しそのGABAおよびGlutamate濃度をHPLC-ECDにて測定した。結果:SHRではCTLに比して血漿浸透圧の増加が大きく(43.5vs28.2mOsm/kg)、平均動脈血圧の上昇が大きい傾向にあった(33.5vs28.2mmHg)。しかし、心拍数の低下は小さく、血中AVPの増加はSHRで著明に抑制されていた(77vs 136pg/ml)。潅流液中GABA濃度はCTLで著明に減少したが(23%)、SHRでの減少は軽度であった(65%)。他方、潅流液中Glutamate濃度はCTLで不変であったが、SHRでは減少した(71%)。考察:我々はSDラットを対象にMD法を用いて昇圧、降圧、出血および浸透圧刺激時のADH分泌調節に脳内GABAが重要な役割を果たしている事を明らかにしてきた。本研究ではGABAneuronの活性低下がその高血圧発症および維持に関与すると考えられているSHRを対象に脳内アミノ酸の中枢性循環調節およびADH分泌調節への関与を検討した。SHRでは浸透圧刺激時の抑制性アミノ酸であるGABAの変化が軽度で、血圧の上昇は大きく、ADH分泌増加がCTLに比して抑制されていた。またSHRでは刺激性アミノ酸であるGlutamateの濃度低下も認められた。すなわち、浸透圧刺激時の脳内GABAおよびGlutamateの反応がAHRではCTLと異なっていることが初めて実測にて証明された。
KAKENHI-PROJECT-07457162
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457162
中枢性循環およびADH分泌調節に対する脳内アミノ酸とカテコールアミンの役割(自然発症高血圧ラットの脳内Glutamate,GABA,カテコールアミンの微小透析法による検討)
しかし、これらの活性アミノ酸の変化がSHRの高血圧の発症やADH分泌調節の異常にどの様に関与するかは組織内のGlutamate decarboxylase(GAD)活性等の変化の検討が必要である。これについても現在検討中である。本実験では自然発症高血圧ラット(SHR)の視床下部ニューロンのGABA、Glu産生、分泌動態に異常がある否かを知るために、下記について検討した。1) NaCl負荷による傍室核(PVN)におけるGABA、Glu分泌と血圧およびvasopressin (AVP)分泌の変化2)出血刺激によるPVNのGABA、Glu分泌とAVP分泌3)視床下部におけるglutamate decarboxylase (GAD)活性と血圧の変化4)視床下部におけるGAD-mRNA発現と血圧変化。尚、上記の対象としては正常血圧のWKYを使用した。高張食塩水負荷では、SHRはWKYに比し血圧は上昇して、AVP分泌は亢進していた。この時、PVNのGABA活性はWKYに比してSHRでは低下していた。SHRとWKYの同程度の出血刺激に対してAVP分泌はSHRで亢進していた。この時、PVNのGABA分泌はSHRで低下していた。11週齢のSHRのGAD活性は同週齢のWKYと比べると低く、GABA分泌の低下に一致した所見であった。また、GAD mRNAもWKYに比してSHRでは低下している事からGADの産生の低下がその分泌の低下に関与すると考えられた。以上の結果によりSHRの高血圧の発症にはGABA分泌の低下が関与し、これはGADの産生低下に関係すると考えられた。GAD産生低下には遺伝子レベルでの異常がGADの合成に影響し、これが高血圧の遅発的発症の原因となると推定された。この点のさらなる研究が将来必要と思われた。
KAKENHI-PROJECT-07457162
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07457162
高脂肪食摂取母体由来胎児造血系細胞の動態変化を標的とした生活習慣病先制医療の開発
妊婦の栄養状態は、子供の成人期の摂食行動やエネルギー代謝に影響を及ぼし、肥満症や2型糖尿病の発症率を高めることが知られているが、その明確な機序は明らかになっていない。本研究では、母親マウスに脂肪成分の多い食事(高脂肪食)を妊娠前と妊娠中に与え、その仔マウスにおける糖尿病発症機序について検討した。結果としては、高脂肪食を与えた母親から生まれてきた仔マウスにおいて糖尿病の増悪を認めた。その機序として、仔マウスの骨髄から生成されるマクロファージが変化しており、仔マウスが高脂肪食を摂取した際に、反応して炎症の強いマクロファージとなることが、糖尿病増悪の一端を担っていることが明らかとなった。肥満マウスより産まれた仔マウス(肥満マウス仔)を作成し、標準マウス仔との比較を行った。高脂肪食負荷後8週間後に肥満マウス仔において有意なインスリン抵抗性の増悪を認めた。8週齢及び20週齢における肥満マウス仔の骨髄細胞を用いて、骨髄単球系細胞の表現型の解析を行った。Lin陽性(CD3e、CD4、CD8a、CD19、B220、Gr-1)細胞をネガティブセレクション後、造血幹細胞(HSCs:Hematopoietic stem cells、Lin-Sca-1+c-Kit+)、骨髄前駆細胞(MP:myeloid progenitors、Lin-Sca-1-c-Kit+)、単球前駆細胞(promonocytes、Lin-c-Kit-CD11b+)分画を其々同定し、その発現様式を両群間で比較したが、有意な差は認めなかった。そこで肥満マウス仔における内臓白色脂肪に着目して検討を行った。肥満マウス仔において内臓白色脂肪細胞のサイズの有意な増大と炎症性サイトカイン(TNFα、ICAM1、MCP1)の遺伝子発現レベルの増大、および血中TNFα濃度の有意に増大を認めた。次に白色細胞組織中のM1/M2マクロファージ比(M1:CD11c+CD206-, M2:CD11c-CD206+)の有意な増大を認め、肥満マウス仔の内臓白色脂肪組織内の炎症性マクロファージ(M1マクロファージ)関与が明らかとなった。上記結果を平成28年の米国心臓病学術集会と平成29年日本循環器学会学術集会にて発表を行った。8週齢の雌野生型マウス(C57BL/6)に高脂肪食を投与し、肥満マウスモデルを作成した。高脂肪食負荷開始1週間後に、雄野生型マウスと交配を行い、肥満マウスより産まれた仔マウス(肥満マウス仔)を離乳後4週間は標準食で飼育した後、8週齢から高脂肪食を投与した。経時的な体重および摂食量の変化ならびに20週齢時におけるインスリン抵抗性の評価(ipGTT、ITT、HOMA-IR)を行い、表現型の解析を行った。高脂肪食負荷後8週間後に肥満マウス仔においてITT試験で有意なインスリン抵抗性の増悪の確認ができた。8週齢及び20週齢における肥満マウス仔の骨髄細胞を用いて、骨髄単球系細胞の表現型の解析を行った。Lin陽性(CD3e、CD4、CD8a、CD19、B220、Gr-1)細胞をネガティブセレクション後、単球前駆細胞(promonocytes、Lin-c-Kit-CD11b+)分画を同定し、その発現様式を両群間で比較したが有意な差は認めなかったが、肥満マウス仔における内臓白色脂肪に着目して検討を行ったところ、肥満マウス仔において内臓白色脂肪細胞のサイズの有意な増大と炎症性サイトカイン(TNFα、ICAM1、MCP1)の遺伝子発現レベルの増大、および血中TNFα濃度の有意に増大を認めた。次に内臓白色細胞組織中のM1/M2マクロファージ比(M1:CD11c+CD206-, M2:CD11c-CD206+)の有意な増大を認め、肥満マウス仔の内臓白色脂肪組織内の炎症性マクロファージ(M1マクロファージ)関与が明らかとなった。8週齢の雌野生型マウス(C57BL/6)に高脂肪食を投与し、肥満マウスモデルを作成した。高脂肪食負荷開始1週間後に、雄野生型マウスと交配を行い、肥満マウスより産まれた仔マウス(肥満マウス仔)を離乳後4週間は標準食で飼育した後、8週齢から高脂肪食を投与した。経時的な体重および摂食量の変化ならびに20週齢時におけるインスリン抵抗性の評価(ipGTT、ITT、HOMA-IR)を行い、表現型の解析を行った。高脂肪食負荷後8週間後に肥満マウス仔においてITT試験で有意なインスリン抵抗性の増悪の確認ができた。8週齢及び20週齢における肥満マウス仔の骨髄細胞を用いて、骨髄単球系細胞の表現型の解析を行った。単球前駆細胞(promonocytes、Lin-c-Kit-CD11b+)分画を同定し、その発現様式を両群間で比較したが有意な差は認めなかったが、肥満マウス仔における内臓白色脂肪に着目して検討を行ったところ、肥満マウス仔において内臓白色脂肪細胞のサイズの有意な増大と炎症性サイトカイン(TNFα、ICAM1、MCP1)の遺伝子発現レベルの増大、および血中TNFα濃度の有意に増大を認めた。
KAKENHI-PROJECT-16K19416
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高脂肪食摂取母体由来胎児造血系細胞の動態変化を標的とした生活習慣病先制医療の開発
次に内臓白色細胞組織中のM1/M2マクロファージ比(M1:CD11c+CD206-, M2:CD11c-CD206+)の有意な増大を認め、肥満マウス仔の内臓白色脂肪組織内の炎症性マクロファージ(M1マクロファージ)関与が明らかとなった。さらにMetabolic Macrophageに着目したところ、肥満仔におけるIL1βの有意な上昇とcaspase-1の活性の上昇が明らかとなった。妊婦の栄養状態は、子供の成人期の摂食行動やエネルギー代謝に影響を及ぼし、肥満症や2型糖尿病の発症率を高めることが知られているが、その明確な機序は明らかになっていない。本研究では、母親マウスに脂肪成分の多い食事(高脂肪食)を妊娠前と妊娠中に与え、その仔マウスにおける糖尿病発症機序について検討した。結果としては、高脂肪食を与えた母親から生まれてきた仔マウスにおいて糖尿病の増悪を認めた。その機序として、仔マウスの骨髄から生成されるマクロファージが変化しており、仔マウスが高脂肪食を摂取した際に、反応して炎症の強いマクロファージとなることが、糖尿病増悪の一端を担っていることが明らかとなった。肥満マウス仔と標準マウス仔の骨髄由来マクロファージ(BMDMs)を用いて、グルコース(30mM)、インスリン(10nM)、パルミチン酸(0.4mM)で刺激を行ったmetabolic activation macrophageを作成し、発現マーカーをPCRで評価する。骨髄移植モデル(Donor:肥満マウス仔と標準マウス仔)を作成し、移植モデルにおけるインスリン抵抗性について検討する。内臓白色脂肪におけるMCP1の発現を白血球,内皮細胞,間質細胞にそれぞれにおいてFACSで検討する。高脂肪食負荷後の内臓白色脂肪におけるマクロファージ(M1, M2マクロファージ)の増殖活性についてKi67抗体を用いてFACSで検討する。循環器内科
KAKENHI-PROJECT-16K19416
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高速フ-リエ変換・ドプラ-カテ-テルによる不全心の冠血流・微小循環障害の解析
高速フ-リエ変換・ドプラ-カテ-テル法を新たに開発し,本法の冠血流動態評価における妥当性・有用性を動物実験において確認するとともに,臨床例において冠主要血管・微小循環の血流動態の異常を検討した。雑種成犬6頭を用いた基礎的検討において,従来のゼロクロス法ドプラ-カテ-テルによる冠血流速計測ではノイズやサンプルボリュ-ムの位置等の影響のため電磁流量計との同時計測により得た冠血流速を過小評価した。一方,高速フ-リエ変換ドプラ-カテ-テル法により得た冠血流速は電磁流量計による計測とよく一致し本法の有用性が確認された。心臓カテ-テル検査を行ない左室造影にて明かな異常を認めない29例の正常左冠動脈近位部における拡張期冠血流速波形の開始よりピ-ク流速となるまでの時間TPFVは年齢とともに延長し,加齢にともない拡張早期の冠血流流入が遅延することが明かとなった。塩酸パパベリン負荷により求めた冠血流予備能も加齢により減少し、高齢者における冠微小循環障害が示唆された。左室機能の低下した拡張型心筋症を含む精密圧トランスデュ-サ-にて左室圧を計測した28例の正常左冠動脈近位部拡張期冠血流速波形のTPFVは左室弛緩の指標である左室圧下行脚の時定数tauの遅延とともに延長し,左室弛緩の延長により拡張早期の冠血流流入が遅延することが明かとなった。さらにtauの遅延した例ではtauが正常の例に比しペ-シング負荷により心拍数が増加したときの拡張期冠血流流入が障害されることが明かとなった。拡張型心筋症においてはTPFVが延長し,拡張期冠血流速波形のdecelerationも急峻であり,それぞれtauの延長ならびに左室拡張末期圧の上昇による影響が考えられた。塩酸パパベリン負荷により得た冠血流予備能の減少にはこれらとの相関が認められず微小循環障害などの関与が考えられた。高速フ-リエ変換ドプラ-カテ-テルは不全心の冠血流・微小循環障害の解析に有用である。高速フ-リエ変換・ドプラ-カテ-テル法を新たに開発し,本法の冠血流動態評価における妥当性・有用性を動物実験において確認するとともに,臨床例において冠主要血管・微小循環の血流動態の異常を検討した。雑種成犬6頭を用いた基礎的検討において,従来のゼロクロス法ドプラ-カテ-テルによる冠血流速計測ではノイズやサンプルボリュ-ムの位置等の影響のため電磁流量計との同時計測により得た冠血流速を過小評価した。一方,高速フ-リエ変換ドプラ-カテ-テル法により得た冠血流速は電磁流量計による計測とよく一致し本法の有用性が確認された。心臓カテ-テル検査を行ない左室造影にて明かな異常を認めない29例の正常左冠動脈近位部における拡張期冠血流速波形の開始よりピ-ク流速となるまでの時間TPFVは年齢とともに延長し,加齢にともない拡張早期の冠血流流入が遅延することが明かとなった。塩酸パパベリン負荷により求めた冠血流予備能も加齢により減少し、高齢者における冠微小循環障害が示唆された。左室機能の低下した拡張型心筋症を含む精密圧トランスデュ-サ-にて左室圧を計測した28例の正常左冠動脈近位部拡張期冠血流速波形のTPFVは左室弛緩の指標である左室圧下行脚の時定数tauの遅延とともに延長し,左室弛緩の延長により拡張早期の冠血流流入が遅延することが明かとなった。さらにtauの遅延した例ではtauが正常の例に比しペ-シング負荷により心拍数が増加したときの拡張期冠血流流入が障害されることが明かとなった。拡張型心筋症においてはTPFVが延長し,拡張期冠血流速波形のdecelerationも急峻であり,それぞれtauの延長ならびに左室拡張末期圧の上昇による影響が考えられた。塩酸パパベリン負荷により得た冠血流予備能の減少にはこれらとの相関が認められず微小循環障害などの関与が考えられた。高速フ-リエ変換ドプラ-カテ-テルは不全心の冠血流・微小循環障害の解析に有用である。
KAKENHI-PROJECT-02670394
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劣化DNA試料の分析方法の確立と鑑定精度の向上に関する研究
本研究は、劣化DNA試料を対象としたDNA解析に関する鑑定精度の向上を目的とした研究である。X染色体上のinsertion-deletion多型(INDEL)に着目し、19のINDEL多型と11座位のX-STRを解析するマルチプレックスフラグメント解析システムを構築し、日本人集団の多型性と劣化DNA試料解析の有効性について検討した。さらに、硬組織解析における試料選択と最適な脱灰処理についても検討を加えた。その結果、日本人集団の識別に有効なシステムの構築に成功し、劣化試料への有効性を確認できた。また、硬組織の解析では歯牙が最も有効な試料であり、脱灰処理についも一定の傾向を確認することができた。DNA鑑定技術が進歩し、法医学的分野においてSTR解析を主とした個人識別法は確立されつつあるが、劣化DNA試料においては、決して十分とは言えない。劣化DNA試料に対しても精度の高い個人識別を可能にすべく、DNA分析法の確立と鑑定精度の向上を目的とした研究を遂行している。また、これまでに行っている、X染色体上のSTRにおける日本人集団での遺伝子頻度解析は決して十分とは言えず、更に遺伝子頻度解析の報告のない10座位を用いたマルチプレックスPCRによるSTR解析システムの構築も進めている。INDEL多型を用いた解析システムは、日本人集団の個人識別において有用であり、劣化DNA試料に有効になりうることが判明し、論文発表に至ったため。DNA鑑定技術の進歩の中、未だ解決すべき課題の多い劣化DNA試料を対象としたDNA解析に関する鑑定精度の向上を目的とした研究である。これまでに、Insertion-deletion(INDEL)多型に着目し、常染色体を主体とした30INDELsを解析するInvestigator DIPplex kit(QIAGEN社)を用いて、日本人集団における遺伝子解析頻度と個人識別についての有効性について検討し、その成果をLegal Medicine 17:467-470(2015)に報告することができた。さらに、X染色上のINDELを選定し、今回新たに19INDELsについてマルチプレックスシステムを考案し、日本人集団におけるその遺伝子頻度を解析したところ、総合識別能が男性で0.99996、女性で0.9999999であることが判明し、個人識別には極めて有効なシステムであることを確認できた。そこで、複数の劣化DNA試料を対象として本システムを用いて解析したところ、有効な結果が得られたため、第25回日本DNA多型学会学術集会で報告した。一方、ミトコンドリアDNA分析は一般的に劣化DNA試料にも比較的有効な個人識別として知られるが、劣化が極めて進行した試料の場合には分析が困難な場合も少なくない。従って、劣化が極めて進行した試料の解析を前提として、より短鎖領域の解析でハプロタイプを決定すべくsingle nucleotide polymorphism(SNPs)解析によるミトコンドリアハプログループ解析システムを目的とした。その結果、46SNPsのマルチプレックスシステムによるハプログループ解析に成功し、劣化DNA試料への応用でも良好な結果が得られたことから、その成果をJ ForensicSci 61:472-477(2016)に報告することができた。現在、さらなる劣化DNA試料の鑑定精度の向上を目的として研究を進めている。INDEL多型を用いた解析システムは、日本人集団の個人識別において有用であり、劣化DNA試料に有効になりうることが判明し、論文発表に至ったため。DNA鑑定技術が進歩し、法医学的分野においてSTR解析を主とした個人識別法は確立されつつあるが、劣化DNA試料においては、決して十分とは言えない。これまでに劣化DNA試料に対しても精度の高い個人識別を可能にすべく、DNA分析法の確立と鑑定精度の向上を目的とした研究を遂行してきた。最近では、INDEL多型に注目し、INDEL解析が劣化DNA試料の分析に有効性があることを確認するに至り、論文発表を行った。その上で、本研究では特異な血縁関係の鑑定に有効なX染色体に着目し、日本人集団に多型性があると推定されたX染色体の19INDEL多型を抽出し、マルチプレックスフラグメント解析システムの構築を試み、日本人集団の解析を試みた。その結果、いずれも連鎖不平衡は認めず、日本人集団における総合識別能は男性で0.99996、女性で0.99999990と算出され、X染色体の鑑定に極めて有効なシステムの構築ができ、劣化DNA試料への有効性も確認できた。さらに、既報に加えて新たな11座位のX染色体STRのマルチプレックスシステムを開発し、一層の鑑定精度の向上を図ることに成功した。一方、この研究過程で、劣化試料である硬組織のDNA抽出に際しての試料の選択及び分析試料の形状と脱灰処理が、状態の良いDNAの抽出に影響するのではないかと疑問を抱いたことから、歯牙・大腿骨・頭蓋底錐体部の部位別の比較、脱灰時間や脱灰温度を変化させた上での分析試料の形状の比較について、各々抽出したDNAの定量検査や分解能の測定によって相違を確認する研究を行った。その結果、部位別では歯牙が最も最適な試料であること、試料の形状と脱灰処理では形状に分析効率の有意差はないものの、脱灰温度については高温の方が短期間の脱灰時間でも抽出効率が高く、2, 3日から5日間の脱灰処理を行った場合が最も抽出効率が高まり、仮にそれ以上の長時間の脱灰処理を行ったとしても抽出効率の低下がないことを確認できた。本研究は、劣化DNA試料を対象としたDNA解析に関する鑑定精度の向上を目的とした研究である。
KAKENHI-PROJECT-15K08868
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劣化DNA試料の分析方法の確立と鑑定精度の向上に関する研究
X染色体上のinsertion-deletion多型(INDEL)に着目し、19のINDEL多型と11座位のX-STRを解析するマルチプレックスフラグメント解析システムを構築し、日本人集団の多型性と劣化DNA試料解析の有効性について検討した。さらに、硬組織解析における試料選択と最適な脱灰処理についても検討を加えた。その結果、日本人集団の識別に有効なシステムの構築に成功し、劣化試料への有効性を確認できた。また、硬組織の解析では歯牙が最も有効な試料であり、脱灰処理についも一定の傾向を確認することができた。常染色体及びX-染色体上のINDELマーカーを抽出し、PCR産物150bp以下になるようにプライマーを設計し、マルチプレックスフラグメント解析システムの構築を試みる。日本人集団を分析、統計解析を行い、個人識別に有用なシステムかを検証する。さらに本システムを劣化DNA試料に応用し、有効性を検討する。常染色体及びX-染色体上のINDELマーカーを抽出し、PCR産物150bp以下になるようにプライマーを設計し、マルチプレックスフラグメント解析システムの構築を試みる。日本人集団を分析、統計解析を行い、個人識別に有用なシステムかを検証する。さらに本システムを劣化DNA試料に応用し、有効性を検討する。法医学
KAKENHI-PROJECT-15K08868
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ドイツ・ニューシネマにおける「文学的」映画の研究
ドイツのニューシネマにおけるラディカルな映像美学とメディア批判を実践した映画監督たち、とりわけストローブ=ユイレとファスビンダーの映画における文学的要素の活用方法を考察した。とりわけ彼らの脚色映画を取り上げ、歴史的な原作テクストから20世紀後半のアクチュアルな政治性を掘り起こす手法、そして文学性を強調する演出法が映像メディアへの批判的な意識を喚起する技法を明らかにした。平成25年度は、これまでの研究成果を学会発表および複数の論文によって公開したことが第一の成果である。まず学会発表は9月28日開催の日本独文学会で、68年世代の作家を現代において再検証するシンポジウムを開催し、シンポ全体の司会およびライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの現代における再評価についての報告を担当した。60ー80年代という政治の季節から冷戦終結までの過渡期の作家活動を他の同世代の作家との比較で論じる機会として意義深い討論も行うことができた。このシンポの内容は平成26年度中に日本独文学会叢書として公刊する予定である。研究論文は、ストローブ=ユイレ映画における文学テクストの脚色の手法について、およびライナー・ヴェルナー・ファスビンダー映画における同テーマでそれぞれ論文を執筆した。これは本研究の中核をなすテーマを扱ったものであり、とりわけ文学的テクストを映像や音声に対し独立した要素といて考察し、そこに映画表現の多層性と現実社会や歴史とのコンテクスト化の可能性について、包括的な考察と具体的な作品分析の双方を盛り込めた。これまで映画研究と文学研究とでそれぞれ異なる取り扱われ方をしてきた映画脚色について、新たな視点を導入しようとする試みとして、26年度も継続して研究発表を続けてゆく予定である。第二の成果は、ドイツの映画監督レナーテ・ザミを始めて日本に招聘し、彼女の主要作品をほぼ全て字幕付きで上映、そして多くの対談や討論の機会をもったことである。商業上映や映画祭上映が見込めないマイナーな作家だが、ストローブ=ユイレと比較しうる独自の手法で言語と映像との関連性及びその政治的コンテクストを考察するにも重要な作品を生み出している。それを日本に紹介し、詳細に考察できる機会を得たことは大きな成果と言える。研究初年度である平成24年度は、これまで行ってきた研究の延長線上で題材を取り上げ考察を深めてきた。その成果は主に講演によって発表している。具体的にはライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの映画作品における文学脚色の方法論の考察であり、これはアテネ・フランセ文化センターで行われた映画『あやつり糸の世界』の日本初公開に際して、同センターホールでファスビンダーを中心としたニュージャーマンシネマにおける脚色映画についての講演及び討論会を行ったものである。討論会のゲストは映画研究者の堀潤之氏であり、彼の広範な理論的知見とフランス映画への深い造詣ゆえにドイツ映画という研究対象を多面的に討議できる機会となった。この模様は録画しており、近日中に映画の引用上映部分を削除したうえで映像アーカイヴとしてネット上で公開する。また研究論文として公表するべく、準備を行う。また研究対象についての資料収集のために2月にドイツ滞在した。そこで25年度に日本上映を計画しているレナーテ・ザミ監督へのインタヴューも行った。彼女の映画は文学的テクストを重視し、言葉と映像表現の対位法を重視する監督であるため、ブレヒトやストローブ=ユイレの伝統において研究する意義の大きい作家である。彼女の映画の日本導入のための予備考察を行っているところである。それ以外の活動としては、ドイツの未公開映画の上映や紹介の活動を通じて、映像とテクストの関係性を複数の映像作家において検証した。主にハンス=ユルゲン・ジーバーベルク監督のドイツ3部作と、ヴェルナー・ヘルツォーク監督のドキュメンタリー映画を詳細に検証する機会にも恵まれ、これらの研究成果は25年度以降に研究論文として発表する予定である。今年度は、昨年度の日本独文学会シンポジウムでの発表「ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーのオリジナリティ」を論文化してシンポジウムの叢書の形で発表した。ファスビンダーの既存のテクストや歴史の引用が実は作者のオリジナルなテクストへと読み替えられることを考察したものであり、本研究のニュージャーマンシネマのテクストと映像の関係を具個別の映画作家で検証するものである。またストローブ=ユイレの映画について研究考察を進めるために、映画上映と講演とを組み合わせた催しを東京と神戸で計8回開催した。作品は全て文学作品を原作としたものであり、とりわけ原作テクストの映画での使用方法と、ストローブ=ユイレの原作解釈の立場を詳細に検証し、それが彼らの美的特性と社会批判性の双方と有機的に結びついていることを明らかにした。対象作品は多岐にわたり、ハインリヒ・ベル、フランツ・カフカ、アーノルト・シェーンベルクなどドイツ語圏のテクストの映像化だけでなく、チェーザレ・パヴェーゼの小説や戯曲の映画化も扱い、考察の幅を広げることを試みた。これらの研究成果は、今年度論文として順次執筆し最終的に単著として刊行する予定であったが、研究対象が原作・映画化ともに非常に難解であることに加え、世界のニューシネマおよび戦後ドイツという歴史的文脈においてもストローブ=ユイレの位置付けを検証することで幅広い考察を必要とすることが次第に明らかになり、この課題は今年度中に完了させずに、次年度以降も継続的に取り組むことにした。そのためニュージャーマンシネマ(シュレーター、ヘルツォーク等)と現代のドイツ映画(新ベルリン派)についての考察も交え引き続き研究を進めており、順次研究論文を準備している状況である。本年度は平成26年度中に出版できなかった単著の発行が中心的な活動だった。
KAKENHI-PROJECT-24520172
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ドイツ・ニューシネマにおける「文学的」映画の研究
著書は『ドイツ映画零年』と題し共和国より出版準備を進めていたが、原稿の最終調整と印刷が平成27年度に持ち越しとなり、最終的に同年8月に発行されることとなった。また次年度の科研費応募のために本研究テーマだったドイツのニューシネマの考察も継続して行った。それにかかわる資料収集のために本研究費の残金を充てた。他の執筆活動としては共編著書として『国境を越える現代ヨーロッパ映画250』のドイツ映画のパートを執筆した。とりわけストローブ=ユイレや現代の作家映画など本研究対象となった事項の執筆が多い。また前年度まで継続的に行ってきたストローブ=ユイレの映画上映と講演も継続した。開催費用は東京国際大学の特別研究助成より捻出している。ドイツのニューシネマにおけるラディカルな映像美学とメディア批判を実践した映画監督たち、とりわけストローブ=ユイレとファスビンダーの映画における文学的要素の活用方法を考察した。とりわけ彼らの脚色映画を取り上げ、歴史的な原作テクストから20世紀後半のアクチュアルな政治性を掘り起こす手法、そして文学性を強調する演出法が映像メディアへの批判的な意識を喚起する技法を明らかにした。本来ならば今年度において、ストローブ=ユイレについての研究成果を単著として発表するはずだったが、映画の検証は予想以上に幅広い知見と詳細な分析を必要とし、またそれに先立ち1960-70年代のニューシネマの世界映画史的・社会史的コンテクストを明確化することで、改めて全体像を把握する必要があることがより明確になった。そこで今回の研究期間に単著として発表する内容を、私がこの10年余の間に行ってきた戦後ドイツ映画の研究を総括することでそこから新たなニューシネマ検証を端緒を見出すことに変更し、現在その出版に向けて準備を進めているところである。そのため当初の研究計画に沿った成果はまだ十分に生み出されているとは言い難いが、元来の目標に従って着実に成果は発表できるものと考える。ドイツ映画現在戦後ドイツ映画についての拙論を纏めた著書『ドイツ映画零年』の出版に向けて、現在校正作業を行っている。7月までには出版の予定である。その後はこの内容を基盤にして、さらにニュージャーマンシネマにおけるテクストと映像の関連をブレヒトの演劇論やメディア理論との関連でさらに掘り下げてゆく予定である。ストローブ=ユイレおよびファスビンダー作品の検証を映画理論と社会批判の文脈で進め、東京と神戸における映画上映と講演は今年度も継続する。これらの研究を纏めてさらなる考察へと深化させるために、ニューシネマとブレヒト理論の関連をテーマとした次年度以降の科研費申請の準備をする。今年度は研究成果をできる限り公表することを第一の目的としていたため、論文3本の執筆および1度の学会発表、また複数回の講演やイベントトークを行ったことで順調に研究成果を上げることができた。ただ研究を進める中で、26年度にストローブ=ユイレについて単著を出版するという当初の計画は見直しの必要があると考えている。
KAKENHI-PROJECT-24520172
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放射線治療効果とFDG集積に関連するGlut-1およびHIF-1発現について
2005年4月より2006年8月(2006年9月より関連施設のPET診断装置が入れ替えのため休止)までに当研究機関を受診した頭頸部悪性腫瘍患者でSCCと診断された17名のうち放射線治療を施行された14名を対象とした。放射線感受性の低い癌組織では、低酸素状態になっており、低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factorタイプ1:HIF-1)を活性化させることが最近報告されている。一方、FDGが癌細胞内に取り込まれる際には、グルコース輸送蛋白タイプ1(Glut-1)が活性化していることが知られている。本研究において、現在のところ、酵素抗体法の手法を用いた中では、Glut-1とHIF-1との有意な相関関係は明らかにできなかった。また、FDGの標準化集積率(SUV)との比較においても有意な相関関係を証明することは困難であった。[今後の課題、展開]1,当初の研究計画であったRT-PCR法を用いた定量的な評価を併用する(試料、標本の入手困難の症例があったため変更していた)。2,症例総数を(PET施設再開:2007年6月頃)増加させる。3,化学療法、外科療法との放射線併用療法がほとんどであり、放射線単独の治療がほとんどないため、治療効果との相関関係を正確に把握するため併用する治療法、レジメンそれぞれで評価を画一化する。<研究実績の概要>当研究機関を受診した頭頸部悪性腫瘍患者を対象に、放射線治療前の試験切除標本の一部から薄切切片の採取をおこなっている。また、切除標本の一部は、RT-PCR法にてHIF-1のmRNA発現の評価に用いる予定であるが、こちらは未施行であり平成18年度に行う予定である。対象症例に対しては、当施設、あるいはサイクロトロンセンターにおいて、放射線治療前にCTならびにFDG-PET検査を施行している。これにより得られたデーターは、当研究機関に現有する画像処理ソフトDr.View(旭化成)に転送し、重ね合せ画像を作り、FDG集積部位の解剖学的な同定とFDG集積量の測定を行っている。FDG集積は、PET上のFDG集積量をFDG投与量と体重とで標準化した標準化集積率(SUV)を用い定量的に評価している。研究成果については未発表だが、平成18年度に行う予定である。対象とした症例が、放射線治療を行い、かつ、FDG-PET撮影を治療前、治療後に行っているという理想的な状況にあることが少なく、症例数が少ない点が問題であるが、平成18年度は症例数の積み重ねと総合的な評価、考察を行う予定である。2005年4月より2006年8月(2006年9月より関連施設のPET診断装置が入れ替えのため休止)までに当研究機関を受診した頭頸部悪性腫瘍患者でSCCと診断された17名のうち放射線治療を施行された14名を対象とした。放射線感受性の低い癌組織では、低酸素状態になっており、低酸素誘導因子(hypoxia-inducible factorタイプ1:HIF-1)を活性化させることが最近報告されている。一方、FDGが癌細胞内に取り込まれる際には、グルコース輸送蛋白タイプ1(Glut-1)が活性化していることが知られている。本研究において、現在のところ、酵素抗体法の手法を用いた中では、Glut-1とHIF-1との有意な相関関係は明らかにできなかった。また、FDGの標準化集積率(SUV)との比較においても有意な相関関係を証明することは困難であった。[今後の課題、展開]1,当初の研究計画であったRT-PCR法を用いた定量的な評価を併用する(試料、標本の入手困難の症例があったため変更していた)。2,症例総数を(PET施設再開:2007年6月頃)増加させる。3,化学療法、外科療法との放射線併用療法がほとんどであり、放射線単独の治療がほとんどないため、治療効果との相関関係を正確に把握するため併用する治療法、レジメンそれぞれで評価を画一化する。
KAKENHI-PROJECT-17791345
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17791345
細胞成長制御シグナリングを担う分子探索と機能同定
再狭窄抑制剤、T細胞増殖抑制剤および抗がん剤としての薬効が注目されている薬剤ラパマイシンの哺乳動物細胞内標的タンパク質がmammalianTarget of Rapamycin(mTOR)である。mTORはアミノ酸濃度などの細胞が活発に増殖できる環境条件を感知し、細胞成長を制御しているシステムを司る情報伝達系の中枢の分子と考えられている。本課題はmTORを中枢とした細胞成長制御シグナリングを担う分子を探索し、このシステムの解明に寄与することを目的として始められた。探索した分子は以下の通りである。mTOR複合体の構成因子として、ヒトではSimilar to Gβ-like proteinと命名されている326残基からなる機能未知のタンパク質を同定した。出芽酵母ホモログはLst8であった。核酸の新生には原料となる大量のアミノ酸を必要とすることから、アミノ酸を感知するmTOR系と核酸新生代謝制御系とが深く関わっているのではないかと考え、これを裏付ける分子の探索を行った。その結果、ピリミジン生合成経路において重要な役割を担っている分子を見出した。mTORが核酸新生代謝制御系にも関与していること示唆する成果である。mTOR系上流の鍵を握るTSC1-TSC2複合体と相互作用する分子としてGTPase Activating Proteinドメインを備えた機能未知タンパク質を同定した。この分子の結合領域はTSC1コイルドコイル領域のC末端側881-996に限定されていた。raptorに結合するタンパク質として分子シャペロンHsp90が同定された。Hsp90の阻害剤ゲルダナマイシン存在下でmTORの下流因子とmTORのリン酸化が抑制されたことからmTOR複合体がHsp90の標的であり、ゲルダナマイシンの抗がん剤の作用点の一つがmTORシグナリングであることが示唆された。再狭窄抑制剤、T細胞増殖抑制剤および抗がん剤としての薬効が注目されている薬剤ラパマイシンの哺乳動物細胞内標的タンパク質がmammalianTarget of Rapamycin(mTOR)である。mTORはアミノ酸濃度などの細胞が活発に増殖できる環境条件を感知し、細胞成長を制御しているシステムを司る情報伝達系の中枢の分子と考えられている。本課題はmTORを中枢とした細胞成長制御シグナリングを担う分子を探索し、このシステムの解明に寄与することを目的として始められた。探索した分子は以下の通りである。mTOR複合体の構成因子として、ヒトではSimilar to Gβ-like proteinと命名されている326残基からなる機能未知のタンパク質を同定した。出芽酵母ホモログはLst8であった。核酸の新生には原料となる大量のアミノ酸を必要とすることから、アミノ酸を感知するmTOR系と核酸新生代謝制御系とが深く関わっているのではないかと考え、これを裏付ける分子の探索を行った。その結果、ピリミジン生合成経路において重要な役割を担っている分子を見出した。mTORが核酸新生代謝制御系にも関与していること示唆する成果である。mTOR系上流の鍵を握るTSC1-TSC2複合体と相互作用する分子としてGTPase Activating Proteinドメインを備えた機能未知タンパク質を同定した。この分子の結合領域はTSC1コイルドコイル領域のC末端側881-996に限定されていた。raptorに結合するタンパク質として分子シャペロンHsp90が同定された。Hsp90の阻害剤ゲルダナマイシン存在下でmTORの下流因子とmTORのリン酸化が抑制されたことからmTOR複合体がHsp90の標的であり、ゲルダナマイシンの抗がん剤の作用点の一つがmTORシグナリングであることが示唆された。本研究課題は、細胞成長制御シグナリングを司る蛋白質複合体の構成メンバーを同定することを目的として、プロテオミクス的手法によってmammaliantarget of rapamycin (mTOR)を介したシグナル伝達系を担う新規蛋白質を探索、同定し、その蛋白質のmTORシグナル伝達系における機能を解析することである。申請通り、最初に、最近我々が見出した新規蛋白質、mTORシグナル伝達系のスキャホールド蛋白質raptorに結合する蛋白質の探索、同定を試みた。Raptorに、FLAG-Tagを付加したリコンビナント蛋白質をHEK293細胞に発現させ、このFLAG-raptorと共精製される蛋白質を、SDS-PAGEによって分離し、質量分析法によって同定を試みた。Raptorの全長、およびアミノ末端側だけを有した変異体、およびWD40ドメイン構造を持つカルボキシル末端側を有した変異体をベイトとして用いたところ、WD40ドメイン構造を持つカルボキシル末端側に、アミノ酸代謝に重要な役割を担っているある蛋白質が有意に結合していることが見出された。Raptorと同様に、mTORと複合体を形成しているmLST8をベイトとした場合にもmTORと共にこの蛋白質が共精製された。これらの結果から、アミノ酸代謝に重要な役割を担っているこの蛋白質が、細胞環境中のアミノ酸バランスを感知して細胞成長を制御する中枢分子mTORの制御を受けていることは極めてリーズナブルなことであるが、これまでこの分子とmTORとの関連は全く調べられていなかった。この分子とmTOR複合体を形成する分子との結合については有意な結果を得ているが、今後はこの分子とmTORや他のmTORシグナリング関連分子との機能的な関連を解析し、加えて新たに構成メンバーの探索も継続する。本研究課題は、細胞成長制御シグナリングを司る蛋白質複合体の構成メンバーを同定することを目的として、プロテオミクス的手法によってmammalian
KAKENHI-PROJECT-15570116
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細胞成長制御シグナリングを担う分子探索と機能同定
target of rapamycin (mTOR)を介したシグナル伝達系を担う新規蛋白質を探索、同定し、その蛋白質のmTORシグナル伝達系における機能を解析することである。昨年に引き続き、申請通り、最近我々が見出した新規蛋白質、mTORシグナル伝達系のスキャホールド蛋白質raptorに結合する蛋白質の探索、さらにmTORそのものをベイトとした結合蛋白質の探索、同定を試みた。RaptorおよびmTORに、FLAGタグを付加したリコンビナント蛋白質をHEK293細胞に発現させ、このFLAGタグを付加した蛋白質と共精製される蛋白質を、SDS-PAGEによって分離し、質量分析法による同定を試みた。その結果、有意に結合する蛋白質として数種の候補蛋白質が同定された。そのなかで、今後mTORシグナル伝達系やこの系によってアミノ酸代謝システム、細胞成長を制御するシステムがいかに制御されているのかを解明する重要な手がかりとなりうる40K、120Kの分子量を有する機能未知蛋白質、および80Kの分子量を有するアミノ酸代謝に関与する蛋白質が有意な結合蛋白質として同定された。蛋白質リン酸化酵素であるmTORの基質としては、現在のところ、40Sリボソームの構成蛋白質の一つ、S6蛋白質をリン酸化するp70 S6キナーゼと翻訳開始因子eIF-4Eの活性を制御する4EBP1の2種類のみが知られているが、mTORの新規な基質となる可能性を持った分子も同定された。今後、これらの候補分子の生化学的な解析を進め、mTORシグナル伝達系への寄与を明らかにしていきたい。
KAKENHI-PROJECT-15570116
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IL-15による免疫反応制御機構
関節リウマチ(RA)等の炎症性疾患の病態解明には、免疫反応の中心を担うT細胞の機能制御機構の理解が必要である。本研究課題ではRAで発現上昇が認められる炎症性サイトカインの一つであるIL-15が、T細胞の機能に及ぼす影響について、主にマウスを用いたin vivoの実験で検討した。その結果、IL-15は特に自己抗原特異的T細胞の分化、維持、活性化の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになった。関節リウマチ(RA)等の炎症性疾患の病態解明には、免疫反応の中心を担うT細胞の機能制御機構の理解が必要である。本研究課題ではRAで発現上昇が認められる炎症性サイトカインの一つであるIL-15が、T細胞の機能に及ぼす影響について、主にマウスを用いたin vivoの実験で検討した。その結果、IL-15は特に自己抗原特異的T細胞の分化、維持、活性化の制御に重要な役割を果たしていることが明らかになった。本年度は主に自己抗原特異的T細胞の分化維持におけるIL-15の役割について検討した。自己抗原特異的T細胞をクローンレベルで解析する手法としては、雄個体で発現するHY抗原を特異的に認識するT細胞レセプター(TCR)の遺伝子導入マウス(HY TCR Tgマウス)を利用した。このマウスのT細胞は、雄個体では自己抗原特異的T細胞、雌個体においては外来抗原特異的T細胞と見なすることができる。HY TCR TgマウスをIL-15欠損マウスと交配し、各種免疫学的解析を行った。現在のところ以下の結果を得ている。1)自己抗原特異的T細胞の分化および維持はIL-15に高依存性であるが、外来抗原特異的T細胞はIL-15の有無による影響をほとんど受けなかった。特に末梢での恒常性維持の為の持続的分裂にはIL-15からのシグナルが必須であった。2)IL-15欠損状態では自己抗原特異的T細胞の機能成熟も障害されており、サイトカイン産生能、細胞傷害能が低下していた。3)炎症局所で自己抗原特異的T細胞は増殖、活性化を示したが、この際IL-15からのシグナルは、特に増殖反応の誘導に重要な役割を果たしていた。一方、それらのサイトカイン産生はIL-15非依存性に誘導されうることがわかった。昨年度の研究から、自己抗原特異的T細胞レセプター(TCR)遺伝子導入マウスのCD8T細胞の分化、維持、さらに活性化の局面においてもIL-15は重要な役割を果たしていることが明らかになったが、本年度では、まずその詳細な反応機構について解析を行った。特にMHC欠損マウスとIL-15欠損マウスとの組み合わせて作成した、混合骨髄キメラマウスを用いた解析からは、自己抗原特異的CD8T細胞がIL-15に反応する際、同一の骨髄由来細胞に提示された抗原ペプチドとIL-15が同時に認識することが必要であることが分かった。さらに、これらIL-15反応性自己抗原特異的CD8T細胞は、その分化過程において、骨髄由来細胞によって正の選択を受けることも明らかになった。これは胸腺上皮細胞に発現する自己MHC分子によって正の選択を受ける、通常の外来抗原特異的CD8T細胞とは大きく異なる性質である。特に加齢に伴い胸腺組織が退縮すること、加齢とともに自己免疫疾患の発症が増加することを考えると興味深い知見と思われる。本年度は上記のCD8T細胞の解析に加え、CD4T細胞の解析も試みた。近年、CD4T細胞の機能分化において、IL-15とそのレセプターや下流のシグナル伝達分子Stat5を共有するIL-2は、IL-17産生Th17細胞への分化は、むしろ負に制御することが示されているが、我々の現在までの解析ではIL-15はIFN-γ産生Th1細胞の分化には促進的に作用するが、Th17細胞の分化には明らかな影響は与えなかった。このような違いが生じる分子機構については、現在解析中である。本年度は前年度に引き続き、CD4T細胞機能制御におけるIL-15や、それとレセプターやシグナル分子を共有するIL-2の作用について解析した。またCD8T細胞を介した免疫寛容機構に置けるIL-15の役割についても検討した。IL-2レセプターからのシグナルは、IL-17を産生するTh17サブセットの分化に抑制的に働くと現在一般的に考えられている。しかし我々がIL-2レセプター欠損細胞を用いて、生体内での免疫反応を解析した結果、これはT細胞サブセット間のIL-2の細胞増殖シグナルに対する感受性の相対的な差に起因する見かけ上の抑制であることが分かった。すなわちTh1はその生存がIL-2レセプターシグナルに高く依存しているのに対し、Th17細胞はIL-2シグナル非存在下でも細胞数にほとんど変化を生じなかったため、割合が減少していたのであった。これはIL-2産生阻害作用を有するシクロスポリンAやFK506(プログラフ)が関節リウマチ等の炎症性疾患に臨床的に有効であることとも矛盾しない。一方、免疫制御性CD8T細胞については、IL2/15レセプターβ鎖を発現することが以前より知られていたが、最近その中でもCD279を発現する細胞亜群に免疫抑制活性が存在することが示された。そこで、これらの細胞の分化について調べた結果、IL-15依存性が他のCD8T細胞サブセットより低いことが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-20591783
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IL-15による免疫反応制御機構
すなわち、IL-15によりCD8T細胞の活性化バランスが制御されている可能性が考えられた。
KAKENHI-PROJECT-20591783
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アミニルラジカル種を駆使する新規触媒系の開発と医薬リードの迅速構造最適化への応用
環状スルホンアミドであるスルタムは多くの医薬活性化合物に含まれており、その骨格は創薬化学において頻繁に用いられている。しかしながら、スルタム骨格はその構造的な有用性とは相反して合成には複数工程を要するという問題を抱えていた。これまで私は、入手容易な反応剤と金属触媒を用いて短工程でスルタム骨格を構築する反応の開発に着手してきた。種々検討の結果、カチオン性の1価銅とN-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)を酸化剤、兼、反応基質として用いることで、アルケンから一挙に炭素ー炭素結合と炭素-窒素結合を構築し、わずか一工程での触媒的6員環スルタムの合成法の開発に成功している。しかしながら、上述の開発したスルタム骨格の合成法を用いても、依然として幅広い構造の多様性を持ったスルタム骨格を短工程で合成できるようになったとは言い難いのが現状である。これらの研究結果から、金属塩と既存の酸化剤から発生させた活性種では反応性の制御が困難であり、幅広い基質一般性を確立するには反応系に即した独自の配位子設計が必要不可欠であると考えた。そこで私は、合成経路として満足の行く水準の構造上の多様化を持ったスルタム骨格の合成法をさらに発展させたいと考え、以下の2点を目標に掲げて本研究を遂行してきた。すなわち、1独自の設計に基づく配位子と金属触媒を2電子酸化剤により酸化し、スルホンアミドからアミニルラジカル活性種を発生させる点、2アミニルラジカルを起点とし、アルケンから発生させたアルキルラジカルをSiやB源と反応させた新規反応の開発を行い構造の多様化を図る点である。これら2点の目的を達成し、標題の研究活動を完遂すべく研究に着手してきた。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。環状スルホンアミドであるスルタムは多くの医薬活性化合物に含まれており、その骨格は創薬化学において頻繁に用いられている。しかしながら、スルタム骨格はその構造的な有用性とは相反して合成には複数工程を要するという問題を抱えていた。これまで私は、入手容易な反応剤と金属触媒を用いて短工程でスルタム骨格を構築する反応の開発に着手してきた。種々検討の結果、カチオン性の1価銅とN-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)を酸化剤、兼、反応基質として用いることで、アルケンから一挙に炭素ー炭素結合と炭素-窒素結合を構築した触媒的6員環スルタムの合成法の開発に成功した。しかしながら、本反応系では、アルケン側の幅広い基質一般性と官能基許容性は達成されたものの、窒素源としてNFSIを使用しなければならないという課題を抱えていた。そこで昨年度は、NFSIを使用せずにスルタム骨格を構築することを目標とした。すなわち、求電子性の-CO2Rなどで保護されたスルホンアミドを用いて、窒素上を電子不足にし、NHのpKaを下げる。続いて、適切な塩基を用いてスルホンアミドを脱プロトン化し、1価の銅とN-Cu結合を形成させる。その後、2電子酸化剤を用いて3価の銅を発生させて、スルタム骨格を構築することを試みた。初期検討として、銅触媒を種々検討した。また、Selectfluor、1-fluoropyridinium salt、1-fluoro-2,4,6-trimethylpyridinium saltを用いて2電子酸化剤の検討を行った。しかしながら、目的の反応は進行しなかった。今回の条件検討では、反応剤が未反応のまま回収された。そのため、今回用いた2電子酸化剤では1価の銅を2電子酸化して触媒活性種であるアミニルラジカルを発生させられなかったと考えられる。環状スルホンアミドであるスルタムは多くの医薬活性化合物に含まれており、その骨格は創薬化学において頻繁に用いられている。しかしながら、スルタム骨格はその構造的な有用性とは相反して合成には複数工程を要するという問題を抱えていた。これまで私は、入手容易な反応剤と金属触媒を用いて短工程でスルタム骨格を構築する反応の開発に着手してきた。種々検討の結果、カチオン性の1価銅とN-フルオロベンゼンスルホンイミド(NFSI)を酸化剤、兼、反応基質として用いることで、アルケンから一挙に炭素ー炭素結合と炭素-窒素結合を構築し、わずか一工程での触媒的6員環スルタムの合成法の開発に成功している。しかしながら、上述の開発したスルタム骨格の合成法を用いても、依然として幅広い構造の多様性を持ったスルタム骨格を短工程で合成できるようになったとは言い難いのが現状である。これらの研究結果から、金属塩と既存の酸化剤から発生させた活性種では反応性の制御が困難であり、幅広い基質一般性を確立するには反応系に即した独自の配位子設計が必要不可欠であると考えた。そこで私は、合成経路として満足の行く水準の構造上の多様化を持ったスルタム骨格の合成法をさらに発展させたいと考え、以下の2点を目標に掲げて本研究を遂行してきた。すなわち、1独自の設計に基づく配位子と金属触媒を2電子酸化剤により酸化し、スルホンアミドからアミニルラジカル活性種を発生させる点、2アミニルラジカルを起点とし、アルケンから発生させたアルキルラジカルをSiやB源と反応させた新規反応の開発を行い構造の多様化を図る点である。これら2点の目的を達成し、標題の研究活動を完遂すべく研究に着手してきた。アルケンとスルホンアミドを用いた一工程でのスルタム骨格の構築を実現するために、銅触媒や2電子酸化剤の網羅的な検討を行っていた。
KAKENHI-PROJECT-14J12238
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14J12238
アミニルラジカル種を駆使する新規触媒系の開発と医薬リードの迅速構造最適化への応用
しかしながら、目的の研究成果は達成できなかった。今後は、独自で設計した酸化剤や触媒を構築することで目的の反応系を実現することを目指してほしい。27年度が最終年度であるため、記入しない。今後は、フッ素カチオン系の酸化剤の酸化力に注目して検討を進める予定である。Selectfluorのカウンターアニオンを変更するとSelectfluorの酸化活性が大きく変化するという知見から、各種酸化剤のカウンターアニオンを精査する予定である。27年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-14J12238
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視覚性再認記憶における視覚連合野皮質-海馬間の干渉機構
本年度の研究目的は、側頭葉内側部の損傷によって障害をもたらされる視対象再認記憶と空間再認記憶において、側頭葉内側部を構成する海馬傍回の諸皮質がどのような役割を担うかを理解するために、視覚連合野の対象認知領野(下部側頭葉)や空間認知領野(下頭頂小葉)と海馬傍回各領野との間の投射関係を検討した。このために、ニホンサルを用い、その下部側頭葉皮質のTE野や下頭頂小葉のPG野に逆行性および順行性標識物質のWGA-HRP酵素を注入し、海馬傍回やその周辺皮質領野における標識の有無、分布を調べた。PG野は、TF野、35+36野、海馬前支脚に投射したが、TH野、28野、海馬傍支脚やTG野にはほとんど投射は無かった。PG野から投射を受ける領野の中ではTF野が最も密な投射を受け、35+36野は、最も粗な投射を受けた。これらの二つの領野への投射、IV層に終止するfeedforward typeを示したが、海馬前支脚ではlamina principalis externaに終止した。PG野への投射は、TF野、35+36野、海馬前支脚で順行性標識が見られたほぼ同じ領域から見られた。これに対して、TE野は、35+36野、TG野、TF野,28野、海馬前支脚および海馬傍支脚に投射したが、35+36野とTG野への投射が特に強く、IV層に終止するfeedforward typeを示した。35+36野とTG野は、TE野の前腹側部から主に投射を受けた。TF野と28野は、TE野の背側部よりも腹側部から強い投射を受けた。海馬前支脚や海馬傍支脚はTE野の背側部からの投射が強い。また、TE野は、35+36野、TG野、TF野,TH野、28野、海馬前支脚および海馬傍支脚から投射を受けることがわかった。以上の結果より、海馬傍回やその周辺皮質の中では、TF野は空間再認記憶に密接に関係し、35+36野とTG野は対象再認記憶に密接に関係することが示唆された。本年度の研究目的は、側頭葉内側部の損傷によって障害をもたらされる視対象再認記憶と空間再認記憶において、側頭葉内側部を構成する海馬傍回の諸皮質がどのような役割を担うかを理解するために、視覚連合野の対象認知領野(下部側頭葉)や空間認知領野(下頭頂小葉)と海馬傍回各領野との間の投射関係を検討した。このために、ニホンサルを用い、その下部側頭葉皮質のTE野や下頭頂小葉のPG野に逆行性および順行性標識物質のWGA-HRP酵素を注入し、海馬傍回やその周辺皮質領野における標識の有無、分布を調べた。PG野は、TF野、35+36野、海馬前支脚に投射したが、TH野、28野、海馬傍支脚やTG野にはほとんど投射は無かった。PG野から投射を受ける領野の中ではTF野が最も密な投射を受け、35+36野は、最も粗な投射を受けた。これらの二つの領野への投射、IV層に終止するfeedforward typeを示したが、海馬前支脚ではlamina principalis externaに終止した。PG野への投射は、TF野、35+36野、海馬前支脚で順行性標識が見られたほぼ同じ領域から見られた。これに対して、TE野は、35+36野、TG野、TF野,28野、海馬前支脚および海馬傍支脚に投射したが、35+36野とTG野への投射が特に強く、IV層に終止するfeedforward typeを示した。35+36野とTG野は、TE野の前腹側部から主に投射を受けた。TF野と28野は、TE野の背側部よりも腹側部から強い投射を受けた。海馬前支脚や海馬傍支脚はTE野の背側部からの投射が強い。また、TE野は、35+36野、TG野、TF野,TH野、28野、海馬前支脚および海馬傍支脚から投射を受けることがわかった。以上の結果より、海馬傍回やその周辺皮質の中では、TF野は空間再認記憶に密接に関係し、35+36野とTG野は対象再認記憶に密接に関係することが示唆された。
KAKENHI-PROJECT-05267249
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膜ATP合成酵素回転触媒機構の構造生物学
膜酵素ATP合成酵素(FoF1)は、呼吸鎖がくみ出した水素イオンを膜貫通のFo部分で取り込み、膜外部分F1上でADPとPiからATPを合成する.私たちは好熱菌PS3由来のFoF1の構造解析を目指た結晶化を行い、decylmaltoside(10M)またはdodecylmaltoside(12M)で可溶化、精製した標品がつくる六角形板状結晶が7A程度の回折模様を示すことをみた。今年度は昨年度に引き続き、FoF1結晶の高質化のためのソースとなる新規の細菌の探索、並びに従来得られている回折模様の解析を行い、以下のような結果を得た。1.結晶の高質化これまで最良と考えてきた界面活性化剤12Mを用いて精製したPS3由来の標品が,この2年半、従来のような大きさの結晶にならなくなった。そこでBacillusなどの入手容易な実験室で確立した菌5種、および高温環境の野外から採取した菌15種について、菌、増殖の特性、膜のとれやすさ、FoF1のとれやすさについて検討を行い、後の2点でPS3に比べて優れている野外菌株を見いだした。2.回折模様の解析低分解能で、高いモザイク性を示す回折模様の検討のため、今年度は従来のMosflm、xdsに加えてHKL2000,d*trekのパフォーマンスの検討を行ったが、抜き出たパフォーマンスを示すものはなかった。そこでMosflmを用いて引き続き解析を行った。Autoindexの際のビーム位置の問題は昨年度解決したので、その結果得られたcell定数を用いて、integrationの際全てのrefineを停止させ、10フレームごとにautomatch optionをかけることによって、約60度分のフレームを処理できた(昨年は20度分)。これを良くするためには完壁なcell定数を探すことが必要で、現在この線に沿った努力が進行中である。膜酵素ATP合成酵素(FoF1)は、呼吸鎖がくみ出した水素イオンを膜貫通のFo部分で取り込み、膜外部分F1上でATPを合成する.私たちは好熱菌PS3由来のFoF1の構造解析を目指し、その結晶化を行ってきた。三年前、decylmaltoside(10M)またはdodecylmaltoside(12M)で可溶化、精製した標品がつくる結晶が7A程度の回折模様を示すことをみた。今年度は昨年度に引き続き、この結晶の高質化のための精製、結晶化実験、ソースとなる新規の細菌の探索、並びに回折模様の解析を行った。1.結晶の高質化(1)現在最良と考えている界面活性化剤12M(昨年度報告)を用いて精製した標品が,この1年半、従来のような大きさの結晶にならなくなった。種々のメーカーからの12M製品、PS3の異なるストック(菌ストック保存温度にも着目)、を組み合わせて種々の精製標品の結晶化能を調べたが、今のところこの後退の原因は特定できていない。(2)PS3以外の菌からのFoF1をとる試みを始めた。Bacillusなどの入手容易な実験室で確立した菌は、PS3に比べて菌が壊れにくいことがわかった。高温環境の野外から採取した菌のうちいくつかのものは、通常の好熱菌と異なり、高温/室温の両方で増殖できる特性を持つので結晶化に適しているかもしれないと考えている。2.回折模様の解析低分解能で、高いモザイク性(34度が現在の値)を示す回折模様の検討を昨年に引き続きMosflmを用いて行った。より良い解に至るためには、異なる角度位置の2個の静止データを用い、マニュアルピックオプションを使って出来るだけ多数のスポットを参加させることが必要であった。得られたオリエンテーション変数を用いて積分させたところ約20度分を処理できたが、これは以前のやり方で約4度分程度の処理できていたのと比べて良いが、まだ改善の必要がある。膜酵素ATP合成酵素(FoF1)は、呼吸鎖がくみ出した水素イオンを膜貫通のFo部分で取り込み、膜外部分F1上でADPとPiからATPを合成する.私たちは好熱菌PS3由来のFoF1の構造解析を目指た結晶化を行い、decylmaltoside(10M)またはdodecylmaltoside(12M)で可溶化、精製した標品がつくる六角形板状結晶が7A程度の回折模様を示すことをみた。今年度は昨年度に引き続き、FoF1結晶の高質化のためのソースとなる新規の細菌の探索、並びに従来得られている回折模様の解析を行い、以下のような結果を得た。1.結晶の高質化これまで最良と考えてきた界面活性化剤12Mを用いて精製したPS3由来の標品が,この2年半、従来のような大きさの結晶にならなくなった。そこでBacillusなどの入手容易な実験室で確立した菌5種、および高温環境の野外から採取した菌15種について、菌、増殖の特性、膜のとれやすさ、FoF1のとれやすさについて検討を行い、後の2点でPS3に比べて優れている野外菌株を見いだした。2.回折模様の解析低分解能で、高いモザイク性を示す回折模様の検討のため、今年度は従来のMosflm、xdsに加えてHKL2000,d*trekのパフォーマンスの検討を行ったが、抜き出たパフォーマンスを示すものはなかった。そこでMosflmを用いて引き続き解析を行った。
KAKENHI-PROJECT-18054032
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膜ATP合成酵素回転触媒機構の構造生物学
Autoindexの際のビーム位置の問題は昨年度解決したので、その結果得られたcell定数を用いて、integrationの際全てのrefineを停止させ、10フレームごとにautomatch optionをかけることによって、約60度分のフレームを処理できた(昨年は20度分)。これを良くするためには完壁なcell定数を探すことが必要で、現在この線に沿った努力が進行中である。
KAKENHI-PROJECT-18054032
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18054032
参加体験協同型のワークショップをeラーニングで可能にするための統合的研究
本研究は,参加体験型のグループ学習の形態で実施されるワークショップを,eラーニングによって可能にするための基礎的研究および実践的研究を行おうとするものである.具体的には,eラーニングと対面によるワークショップ的なグループワークを組み合わせたブレンド型授業を設計し,その効果を検討することを目的とした.その結果,ブレンド型授業の学生による評価は高かった.このことは,すべてを教室授業で行う形態から,eラーニングを取り入れたブレンド型授業に移行した場合でも,授業満足度や授業の良さを損なう可能性は低いということを示唆するものである.本研究は、参加体験型のグループ学習の形態で実施されるワークショップをeラーニングによって可能にするための基礎的研究および実践的研究を行おうとするものである。まず、基礎的な研究として明らかにしたいことは、集合して同時に数十人が参加して行うワークショップにおいて、どのようなコミュニケーション活動が行われ、それがどのように全体としての活動や意識に働きかけ、ワークショップ独特の盛り上がりと日常に戻ったときにも思い出されるような深い体験(アンカー体験)を生み出すのかというプロセスの全容である。次に、実践的研究として行いたいことは、そうしたワークショップをeラーニングシステム上で実施するためのプログラムを開発し、実際に参加者に協力してもらいeラーニングワークショップを実施したときに、そこでどれだけのワークショップ的体験が実現できるかを検討することである。次に、実践的研究として行いたいことは、そうしたワークショップをeラーニングシステム上で実施するためのプログラムを開発し、実際に参加者に協力してもらいeラーニングワークショップを実施したときに、そこでどれだけのワークショップ的体験が実現できるかを検討することである。本研究は,参加体験型のグループ学習の形態で実施されるワークショップを,eラーニングによって可能にするための基礎的研究および実践的研究を行おうとするものである.具体的には,eラーニングと対面によるワークショップ的なグループワークを組み合わせたブレンド型授業を設計し,その効果を検討することを目的とした.その結果,ブレンド型授業の学生による評価は高かった.このことは,すべてを教室授業で行う形態から,eラーニングを取り入れたブレンド型授業に移行した場合でも,授業満足度や授業の良さを損なう可能性は低いということを示唆するものである.本研究は、参加体験型のグループ学習の形態で実施されるワークショップを、eラーニングによって可能にするための基礎的研究および実践的研究を行おうとするものである。まず、基礎的な研究として明らかにしたいことは、集合して同時に数十人が参加して行うワークショップにおいて、どのようなコミュニケーション活動が行われ、それがどのように全体としての活動や意識に働きかけ、ワークショップ独特の盛り上がりと日常に戻ったときにも思い出されるような深い体験(アンカー体験)を生み出すのかというプロセスの全容である。次に、実践的研究として行いたいことは、そうしたワークショップをeラーニングシステム上で実施するためのプログラムを開発し、実際に参加者に協力してもらいeラーニングワークショップを実施したときに、そこでどれだけのワークショップ的体験が実現できるかを検討することである。本年度(2006年度)は、4カ年計画の1年目として、研究の全容について打合せを行った。6月に熊本に宿泊を取り、研究メンバー全員が集まり、集中的な議論を行うことによりアイデアを出した。ワークショップという研究対象に対して、どのような接近方法が考えられるのか、また、どのようなデータを取って分析すれば良いのかということについて、特に議論した。その結果、ビデオ収録を中心とした外側からの記録、そして、ワークショップ主催者とアシスタントからみた活動、さらには、ワークショップ参加者から見た活動、というように複数の視点からワークショップ全体を記録していく必要があると結論した。次年度からはこの方向性にしたがって、実際のワークショップに接近する予定である。本研究は、参加体験型のグループ学習の形態で実施されるワークショップを、eラーニングによって可能にするための基礎的研究および実践的研究を行おうとするものである。まず、基礎的な研究として明らかにしたいことは、集合して同時に数十人が参加して行うワークショップにおいて、どのようなコミュニケーション活動が行われ、それがどのように全体としての活動や意識に働きかけ、ワークショップ独特の盛り上がりと日常に戻ったときにも思い出されるような深い体験(アンカー体験)を生み出すのかというプロセスの全容である。次に、実践的研究として行いたいことは、そうしたワークショップをeラーニングシステム上で実施するためのプログラムを開発し、実際に参加者に協力してもらいeラーニングワークショップを実施したときに、そこでどれだけのワークショップ的体験が実現できるかを検討することである。本年度(2007年度)は、4カ年計画の2年目として、実際にワークショップを開催し、そのプロセスをビデオデータとして集めた。また、ワークショップがうまくいくためのデザインについて考察を深めた。その成果は、2008年度の大学教育学会でのラウンドテーブルで発表される予定である。その概要は次の通りである。ワークショップとeラーニングを融合させられないだろうかという問題設定において、2つの形態の可能性について考えた。1つ目は、ワークショップの中でeラーニングをするという形である。2つ目は、eラーニングの中でワークショップを実施するという形である。1つ目は、ワークショップの弱いところをeラーニングが補い、eラーニングの弱いところをワークショップが補うという融合であり、現在でも実現可能性は高い。2つ目は、必ずしも同じ時間と場所を共有しなくてもよいオンラインでのワークショップということになる。これまでに以下のような進展を見ている。(1)eラーニングをワークショップ的にする研究一般的に孤独感が学習離脱の大きな原因となっているeラーニングに対して、どのようにすれば学習が促進,持続されるかという問題意識を持って、eラーニングをワークショップ的にする研究を進めた。その1つの工夫が、受講生と教員・メンターが個別に授業の感想や質問をやり取りできる「レビューシート」という機能である。
KAKENHI-PROJECT-18300293
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参加体験協同型のワークショップをeラーニングで可能にするための統合的研究
これを実際にeラーニング授業で利用したものを評価した。(2)ワークショップそのものの分析eラーニングをワークショップ的にするためには、実際のワークショップの中で何が起こっているかを観察し、分析しなくてはならない。ワークショップそのものが全体論的な立場で設計されているものであるため、それを細かいデータを取った上で全体的に何が起こっているのかを検討しなければならない。これについては方法論的にも発展途上にあるものであるが、まずはパイロット的なデータを取って分析をし始めているところである。(3)eラーニングとワークショップをブレンドする授業実践これまでの研究で明らかになっていることは、eラーニングやワークショップの単体の授業よりも、それらを組み合わせたブレンド型授業の方がより効果的であるということである。eラーニングは知識教授中心のものであれば効率的ではあるが、それが行動レベルに至るまでにはなりにくい。一方ワークショップでは、体験や他者との交流をともなうため深い理解には至るが、時間や身体的なコストが高い。そこでこれらの両者を組み合わせたブレンド型授業の可能性に注目する。実際にブレンド型授業の実践を通じて、その実証的なデータを取りつつある。本年度の研究は最終年度にあたり、以下の2点のトピックについて研究を進めた。(1)eラーニングをワークショップ的にする研究(2)eラーニングとワークショップをブレンドする授業実践以下にそれぞれの研究実績を紹介する。(1)eラーニングをワークショップ的にする研究一般的に孤独感が学習離脱の大きな原因となっているeラーニングに対して、どのようにすれば学習が促進,持続されるかという問題意識を持って、eラーニングをワークショップ的にする研究を進めた。その1つの工夫が、受講生と教員・メンターが個別に授業の感想や質問をやり取りできる「レビューシート」という機能である。これを実際にeラーニング授業で利用したものを評価し、その効果について検討した。また、eラーニング上でディスカッションを行うときに使われるBBSで、グループワーク的な使い方を試行し、その効果を検討した。(2)eラーニングとワークショップをブレンドする授業実践これまでの研究で明らかになっていることは、eラーニングやワークショップの単体の授業よりも、それらを組み合わせたブレンド型授業の方がより効果的であるということである。
KAKENHI-PROJECT-18300293
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日本における批判的人種主義理論の構築
本研究は、欧米で概念化された人種主義を歴史的・思想史的に後付け、現代日本にその概念を適応する際の歴史的・社会的条件を考察・吟味することで、歴史的現象として欧米に特化されてきた人種主義を、日本を含む現代諸社会の構造的かつ普遍的な問題として捉える理論的パースペクティヴを構築することを目的とするものである。そこで一昨年度までは、欧米由来の概念である人種主義が日本において適応されるための諸条件を考察することで、逆にこれまで欧米の地域性・歴史性に根拠づけられてきた人種主義の普遍的な構造を剔抉して、日本における人種主義を批判的に考察する理論的フレームワークの構築を試みた。欧米では、大航海以来の植民地支配の統治の技法を、国民国家の形成過程で国内の統治に転用し、国民統治のための人権配分を行うためのイデオロギーとして機能したのが人種主義であった。日本では、明治政府が近代国民国家を作るべく、欧米の国家形成に倣って人種主義的な統治の技法を国民統合に利用し、その必然として植民地主義的な政策が行われたことを明らかにした。昨年度は、日本をケーススタディにして構築された批判的人種主義理論を、再度欧米の人種主義概念の形成過程に適用し、反セム主義と反黒人主義の二つの潮流に分断されてきたモメントに着目することで、地域的・歴史的に限定されることで人種差別の事象史でしかなかったものを、より構造的かつ普遍的な人種主義の社会思想史として把握するフレームワークを構築した。その成果としては、李孝徳「人種主義」『社会思想史事典』丸善出版、2019年、pp.440-441がある。研究開始の年度ということで、理論的フレームワーク構築のための準備とこれまでの研究の蓄積があまりない先住民に対する人種主義の現状の調査に注力した。前者の理論研究においては、現代の人種主義がどのように発動されているのかを検討するべく、現在、フランス社会で亢進しているイスラーム・フォビアを人種主義の観点から検証し、グローバリゼーション下で植民地主義とナショナリズムが「移民」という社会的マイノリティを他者化する現在の人種主義の機序について論じた。その成果は、李孝徳「フランス共和主義とイスラーム嫌悪」と長谷部美佳・受田宏之・青山亨編『多文化社会読本』東京外国語大学出版会、2016年、41-53頁として刊行した。後者の調査では、本研の対象になるのがアイヌの人々なので、現在の集住地域である北海道の旭川市と白老町で調査を行い、その国際社会での参照軸として先住民の研究と政策が最も進んでいる地域の一つであるハワイを調査した。旭川市では旭川市博物館内にある展示と資料を調査し、また、川村カ子トアイヌ記念館を訪問して旭川アイヌ協議会の代表からアイヌ文化振興法以後のアイヌの人々において形を変えながら継続する人種主義についての知識を得ることができた。アイヌの人々の集住地域である白老町では「アイヌ民族博物館」において、どのように「民族文化」が表象されているのかを展示と図書を中心に資料で調査し、日本における「先住民」の文化保存の現状を学んだ。また、ハワイのハワイ大学・マヌア校では、先住民族の権利に関する国際連合宣言」以後のハワイ州並びに合衆国連邦法に関する体系的な資料がKa Huli Ao Center for Excellencein Native HawaiianLawにあることがわかり、今後のアイヌ研究に資するものであることが確認できた。フランスにおけるイスラーム・フォビアの分析から、欧米における人種主義研究の動向について体系的に理解する土台が構築できると同時に、日本の人種主義について理論的に適応可能なフレームワークの構築に見通しが立てられた。また、アイヌの人々に関して現地調査を行ったことで先住民研究をエスニック・スタディーズではなくレイシズム研究として行う視点を確保でき、先住ハワイ人における現在の政策について体系的に調査できるアーカイヴにアクセス可能であることがわかったことで、今後のアイヌの人々に関する研究の参照軸を持つことができた。本研究は、欧米で概念化された人種主義を歴史的・思想史的に後付け、現代日本にその概念を適応する際の歴史的・社会的条件を考察・吟味することで、歴史的現象として欧米に特化されてきた人種主義を、日本を含む現代諸社会の構造的かつ普遍的な問題として捉える理論的パースペティヴを構築することを目的とするものである。初年度は、欧米のレイシズム研究のとりわけ理論的アプローチについてのサーヴェイを行った。昨年度はこうした研究を日本の人種主義の問題と比較検討するために、2000年代に日本で急速に広がった在日コリアンに対するヘイトデモに関する研究を調査し、その結果を戦前の植民地主義の問題の延長として再分節する理論的枠組みに取り組んだ。その研究調査のエッセンスは、同志社大学・植民地主義研究会の例会「レイシズム再考」(2016年6月18日開催)において「李孝徳「人種主義を日本において再考することー差異、他者性、排除の現在」で報告した。そこでのポイントは、人種主義が他者化のためのスキームとして、他者を本質化すること、同時にそうした本質化された他者に対する暴力は通常の社会規範が解除される中和の技法が行使されることをG. M. Sykes &とD. Matzaが概念を援用して説明し、ハンナ・アーレント「第三章人種と官僚制」『全体主義の起源』とミシェル・フーコー『社会は防衛しなければならない』の議論から、国民の創出と植民地支配の行使がこの技法を一般化したことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-15K02072
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日本における批判的人種主義理論の構築
上述したように初年度は欧米のレイシズム研究のとりわけ理論的アプローチについて、昨年度は日本の現況のレイシズム研究についてサーヴェイを行って、日本のレイシズム研究に理論的アプローチが欠けていることを明らかにできた。とりわけ日本のレイシズムが社会規範を犯す際に道徳観や倫理観を解除するための方法を植民地支配の経験から横領している点を欧米のレイシズム研究との比較から明らかにし、それを分析するための枠組みについての見通しを立てることができ、その骨子を口頭発表することができた。本研究は、日本において生じている特定のエスニック・マイノリティに対するヘイトクライム・ヘイトスピーチに対し、歴史的には欧米で形成された人種主義概念を適用する際に必要な検証を行うものであるが、昨年度は(1)欧米における人種主義概念の形成を人種概念の発生から系譜学的に生じたのかを歴史的に跡付けること、(2)国民国家と帝国主義の形成過程で国家と植民地の統治において双方が相互浸透しつつ人種主義が欧米社会にビルトインされた機序を考察すること、(3)日本において欧米由来の人種主義的統治体制がどのように移入されたのかを明治初年の社会政策と社会状況から分析した。とくに本研究は(3)日本における欧米由来の人種主義的統治体制構築の前提を考察することが目的であるため、(2)国民国家と帝国主義の形成過程で国家と植民地の統治において双方が相互浸透する過程の歴史的かつ理論的な解析に注力した。その結果は、李孝徳「人種主義を日本において再考することー差異、他者性、排除の現在」『クアドランテ』東京外国語大学・海外事情研究所20号、2018年、87-107頁に発表した。四年間にわたる本研究の効率的な取り組みのために、これまでの事前調査において得られた課題群を整理しつつ研究体制を整備する計画を立てていたが、概ね予定通りの進捗状況となっている。平成27年度に予定していた日本における人種主義を考察する際に必要と思われる欧米と日本における文献の収集と調査、平成28年度に予定していたこれまで日本で「差別」や民族問題として理解されてきた諸事情を人種主義としてとらえ返すための理論的アプローチの検討、平成29年度は前年度までの研究を踏まえて、そもそも欧米諸国において人種主義(レイシズム)概念がどのように形成されてきたのかを従来のような科学史的・思想史的にだけでなく社会史的に解析することを計画していた。実際、これまでの調査・研究を踏まえて、そのアプローチのための理論的フレームワークを構築することができ、本研究の理論的根幹を見出すことによって、次年度のより具体的な日本の人種主義の形成を考察するための視座を設定できている。本研究は、欧米で概念化された人種主義を歴史的・思想史的に後付け、現代日本にその概念を適応する際の歴史的・社会的条件を考察・吟味することで、歴史的現象として欧米に特化されてきた人種主義を、日本を含む現代諸社会の構造的かつ普遍的な問題として捉える理論的パースペクティヴを構築することを目的とするものである。そこで一昨年度までは、欧米由来の概念である人種主義が日本において適応されるための諸条件を考察することで、逆にこれまで欧米の地域性・歴史性に根拠づけられてきた人種主義の普遍的な構造を剔抉して、日本における人種主義を批判的に考察する理論的フレームワークの構築を試みた。
KAKENHI-PROJECT-15K02072
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ドローンを活用した噴火時に有用な火山ガス組成観測システムの開発
火山活動推移の予測・評価のためには,噴火事象の進展を理論的に解釈する必要がある。近年の火山ガス組成観測から,深部マグマ溜まりからの火山ガス供給の増加が,噴火発生の要因であるという仮説が提唱されている。しかし,噴火時の測定には危険がともなうため,実際の測定例は非常に限られている。そこで本研究では,噴火時にも火口近傍に接近できるドローン搭載型の観測システムを開発し,噴火時に放出される火山ガス組成を観測することにより,噴火発生の要因となった火山ガスの起源を明らかにすることを目標とする。火山活動推移の予測・評価のためには,噴火事象の進展を理論的に解釈する必要がある。近年の火山ガス組成観測から,深部マグマ溜まりからの火山ガス供給の増加が,噴火発生の要因であるという仮説が提唱されている。しかし,噴火時の測定には危険がともなうため,実際の測定例は非常に限られている。そこで本研究では,噴火時にも火口近傍に接近できるドローン搭載型の観測システムを開発し,噴火時に放出される火山ガス組成を観測することにより,噴火発生の要因となった火山ガスの起源を明らかにすることを目標とする。
KAKENHI-PROJECT-19K14806
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14806
疾患モデル動物における小胞体ストレスから細胞死に至るプロセスの解析
表現型を加速させる目的で家族性中枢性尿崩症(FNDI)モデルマウスに間歇的脱水負荷を与えた。電子顕微鏡を用いた検討により、自由飲水のFNDIマウスでは凝集体がバゾプレシンニューロンの小胞体内の一部に限局していたが、脱水開始4週後にでは凝集体が小胞体内内腔全体に広がるとともに内腔も拡大していた。また、凝集体を含有する小胞体をオートファゴゾームの前駆体であるファゴフォアが取り囲んでいた。脱水開始12週後には30-40%のバゾプレシンニューロンが脱落し、残存するバゾプレシンニューロンの細胞質は空胞で占拠されており、オートファギーが誘導されたことが示唆された。家族性中枢性尿崩症モデルマウス(FNDIマウス)に間歇的脱水負荷(1週間に48時間の絶水)を16週間加えると、視床下部視索上核におけるバゾプレシン(AVP)ニューロンが30-40%減少することがAVPの抗体、mRNAに対するプローブを用いた免疫染色法、in situ hybridization法により確認された。AVPニューロンの脱落はグリアのマーカーであるGFAPの免疫染色にても示された。電子顕微鏡を用いた検討では間歇的脱水負荷4週間間にてAVPニューロンの小胞体が隔離膜で囲まれていることが確認され、さらに歇的脱水負荷16週間ではAVPニューロンの細胞質が空胞化していた。一方、電子顕微鏡を用いた検討ではAVPニューロンの核の形態は比較的保たれていた。AVPheteronuclear RNAに相補的なプローブを用いたin situ hybridizationにより、AVP遺伝子転写活性が歇的脱水負荷16週間でも保たれているのが確認された。以上の結果はFNDIにおけるAVPニューロンの脱落はアポトーシスよりもオートファギー細胞死によるものの可能性が示唆された。次にマウス視床下部で小胞体ストレスがオートファギーを本当に誘導しうるのかを調べる目的で、オートファギーが惹起されたときにGFPが可視化されるGFP LC3トランスジェニックマウスを用いて視床下部器官培養を行ったところ、培養液中に小胞体ストレッサーであるタプシガルギンを加えると視床下部切片においてGFPが可視化されることが確認された。以上より、FNDIでは変異タンパクの蓄積が小胞体ストレスを誘導し、小胞体を対象としたオートファギーが惹起されることによりAVPニューロンの細胞死が生じる可能性が示唆された。家族性中枢性尿崩症(FNDI)モデルマウスの表現型を加速させる目的で同マウスに間歇的脱水負荷を与えた。自由飲水下FNDIマウスのバゾプレシンニューロンでは、凝集体が小胞体の一区画に限局して存在し(ERAC: ER-associated compartmentの形成)、正常な内腔が保たれた小胞体も同時に観察されたことから、小胞体の機能を維持するためにERACが形成される可能性が示唆された。一方,脱水負荷4週後にはERACの形成は破綻し、拡張した小胞体全域に散らばった凝集体を認めた。また,凝集体で満たされた小胞体を取り囲む二重膜が観察され、小胞体を対象としたオートファジー(ERファジー)が惹起されることが確認された。FNDI/GFP-LC3マウスのバゾプレシンニューロンでは脱水負荷によりGFP-LC3は集積し、かつ同部位にp62の発現を認めたことから、選択的オートファジーも誘導されていることが示唆された。脱水負荷12週後にはバゾプレシンニューロンの細胞数は30-40%減少し,残存するバゾプレシンニューロンでは細胞質が空胞で占拠されていた。以上より、FNDIマウスのバゾプレシンニューロンではERAC形成の破綻が誘因となってERファジーや選択的オートファジーが誘導されること、またp62の誘導はユビキチン化タンパク質の蓄積による二次的なものではなく、小胞体ストレスに対する応答(unfolded protein response)であることが示された。さらに,本来は細胞保護的なオートファジーが過剰に誘導され続けた結果として、細胞の生存に必要なオルガネラまでもが失われて細胞質が空胞化し,バゾプレシンニューロンが細胞死(オートファジー関連細胞死)に至ることが示唆された。表現型を加速させる目的で家族性中枢性尿崩症(FNDI)モデルマウスに間歇的脱水負荷を与えた。電子顕微鏡を用いた検討により、自由飲水のFNDIマウスでは凝集体がバゾプレシンニューロンの小胞体内の一部に限局していたが、脱水開始4週後にでは凝集体が小胞体内内腔全体に広がるとともに内腔も拡大していた。また、凝集体を含有する小胞体をオートファゴゾームの前駆体であるファゴフォアが取り囲んでいた。脱水開始12週後には30-40%のバゾプレシンニューロンが脱落し、残存するバゾプレシンニューロンの細胞質は空胞で占拠されており、オートファギーが誘導されたことが示唆された。家族性中枢性尿崩症(FNDI)は生後数か月から数年で抗利尿ホルモンであるバゾプレシンの合成・分泌が低下し、多尿が発症する常染色体優性遺伝の疾患である。FNDIの原因となる変異遺伝子はバゾプレシンのキャリア蛋白であるニューロフィジン領域に多く存在し、変異蛋白が小胞体内腔に蓄積することでバゾプレシンニューロンの機能が障害され、多尿が発症することが報告されている。
KAKENHI-PROJECT-23659475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659475
疾患モデル動物における小胞体ストレスから細胞死に至るプロセスの解析
本研究の目的は変異ニューロフィジンを発現するFNDIモデルマウスを用い、小胞体ストレスがどのような機序でバゾプレシンニューロンの細胞死を惹起するかを明らかにすることである。小胞体ストレスのバイオマーカーであるBip mRNAは野生型マウスの視床下部視索上核で基礎状態において発現し、その分布はバゾプレシンmRNAと類似していた。Dual in situ hybridization法を用いた検討ではBip mRNAがバゾプレシンニューロンに発現していることが確認された。また、脱水負荷によって視索上核におけるBip mRNAはバゾプレシンmRNAとともに増加することが確認された。さらに脱水負荷後の視索上核におけるBip mRNAの発現は、野生型マウスと比較しFNDIモデルマウスにおいて有意に高値を示した。以上の所見は、基礎状態においてバゾプレシンニューロンは小胞体ストレスにさらされていること、脱水負荷で小胞体ストレスが増強すること、さらにFNDIモデルマウスでは脱水負荷により野生型マウスよりバゾプレシンニューロンの小胞体ストレスが増強することを示唆している。間歇的脱水負荷によりFNDIマウスのAVPニューロンが脱落することが確認できたこと、電子顕微鏡を用いた検討でオートファギーの関与が明らかになったこと、GFP LC3トランスジェニックマウスを用いた検討で小胞体ストレスがオートファギーを誘導しうることを示すことができたことより、研究はおおむね順調に進展していると判断する。脱水負荷により野生型マウスのバゾプレシンニューロンにおいて小胞体ストレスが生じることを確認でき、FNDIモデルマウスに脱水負荷を与える今後の検討の基盤を築くことができたため。電子顕微鏡を用い、さらに詳細にAVPニューロンの形態の変化を観察する。GFP LC3マウスを用いた視床下部器官培養で、タプシガルギン以外の小胞体ストレッサー(トニカマイシンなど)を用いて、GFPの発現を観察する。GFP LC3マウスとFNDIマウスを交配し、FBDIマウスにおけるオートファギーの経時的変化を観察する。脱水負荷がバゾプレシンニューロンに小胞体ストレスを与えることが明らかになったことから、FNDIモデルマウスに間欠的脱水負荷(一週間に48時間の絶水負荷)を繰り返し与え、バゾプレシンニューロンの小胞体内腔に変異蛋白が蓄積することを加速させる。間欠的脱水負荷を4回もしくは12回繰り返した時点でFNDIモデルマウスを屠殺し、光学顕微鏡を用いてバゾプレシンニューロン小胞体内腔の凝集体を反映する封入体の数、大きさの継時的変化を観察する。小胞体ストレスマーカーであるBip mRNA、アポトーシスのマーカーであるChop mRNAの視床下部視索上核における発現はin situ hybridization法を用いて検討する。また、電子顕微鏡を用いて、脱水負荷が小胞体内腔の凝集体蓄積に及ぼす影響を検討する。さらに、細胞死が惹起される過程でオートファギーが関与する可能性を考え、GFP-LC3トランスジェニックマウスとFNDIモデルマウスを交配し、脱水負荷によりオートファギーが亢進しているか否かをバゾプレシンニューロンにおけるGFPの発現を検討することで明らかにする。また、免疫染色法、in situ hybridization法によりバゾプレシンニューロンの数の継時的変化を検討する。もし繰り返しの脱水負荷によりFNDIモデルマウスにおいて視床下部バゾプレシンニューロンの減少、すなわち細胞死が認められたら、電子顕微鏡を用いて細胞死に向かうバゾプレシンニューロンの形態的特徴を明らかにする。
KAKENHI-PROJECT-23659475
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23659475
高速回転・高出力運転が可能なスイッチトリラクタンス型ベアリングレスモータの開発
回転機の持つ半径方向の磁気吸引力を回転子主軸の支持に利用してモータと磁気軸受機能を磁気的に一体化したベアリングレスモータが提案されている。スイッチトリラクタンスモータは、効率よく回転トルクを発生できるように、ギャップ長を短く設計することが多いので、特に大きな半径方向の磁気吸引力が固定子と回転子突部に作用する。この大きな磁気吸引力を利用してベアリングレスモータ化すれば、大容量、高速化、メンテナンスフリー化というベアリングレスモータの特長を最大限利用できる。そこで、研究代表者は、1つの固定子に電動機巻線と支持巻線の2種類の巻線を持つ差動巻線構造のスイッチトリラクタンス型ベアリングレスモータを提案している。昨年度までに、高出力運転時における安定な軸支持運転の実現に欠かせない磁気飽和領域における支持力と回転トルクの算定方法を明らかにした。そして、求めた算定方法に基づいて、高出力運転時に安定な軸支持運転を実現するための制御手法とドライブシステムを開発した。しかし、高出力運転に加えて、高速運転を実現するには、巻線の逆起電力による電流の遅れも考慮する必要がある。そこで、本研究の目的は、電流の遅れを考慮した制御手法を提案し、高速回転・高出力運転時においても安定な軸支持を実現するドライブシステムを開発することである。スイッチトリラクタンスモータは、矩形波電流を電動機巻線に与えるのが一般的な駆動方法である。これまでの研究では、電動機巻線に指令値通りの矩形波電流が流れることを前提としていた。しかし、回転速度が上昇すると電動機巻線の逆起電力が増加し、電流の立ち上がり、立ち下がりが大きく遅れる。その結果、指令値通りの矩形波電流が流れないために、回転トルクと支持力は指令値通りに出力されない。従って、このような高速回転時は、高出力運転が行えず運転速度領域が制限され、また支持力の不足により安定な軸支持が困難となる。高速回転・高出力運転を実現するには、電動機巻線に流れる電流の遅れを正確に推定し、予め電流の遅れを考慮した電流指令値をドライブシステムに与える必要がある。そこで、平成15年度は、前年度までの研究成果に加えて、電流の遅れを正確に推定する制御手法を提案し組み合わせることで、高速回転・高出力運転時において、安定な軸支持を実現するドライブシステムを開発した。そして、実際に開発したドライブシステムを用いて高速負荷試験を行うことで、提案する制御手法とドライブシステムが有効であることを確認した。回転機の持つ半径方向の磁気吸引力を回転子主軸の支持に利用してモータと磁気軸受機能を磁気的に一体化したベアリングレスモータが提案されている。スイッチトリラクタンスモータは、効率よく回転トルクを発生できるように、ギャップ長を短く設計することが多いので、特に大きな半径方向の磁気吸引力が固定子と回転子突部に作用する。この大きな磁気吸引力を利用してベアリングレスモータ化すれば、大容量、高速化、メンテナンスフリー化というベアリングレスモータの特長を最大限利用できる。さらに、スイッチトリラクタンスモータ自身が持つ高温、低温などの特殊環境下や温度変化の激しい環境下での使用が可能であり、高速回転に適しているといった利点も引き延ばすことができる。そこで、研究代表者は、1つの固定子に電動機巻線と位置制御巻線の2種類の巻線を持つ差動巻線構造のベアリングレススイッチトリラクタンスモータを提案している。これまでに、磁気的に線形である動作領域における半径方向力・回転トルクと電流の関係を明らかにした。そして、求めた理論式を用いて、線形性が保たれる出力範囲において無負荷状態から負荷状態にわたって安定な軸支持運転を可能とするドライブシステムを製作した。しかし、この線形性に基づいたドライブシステムでは、磁気飽和が発生するような高出力運転時に安定な軸支持を実現することは困難であった。高出力運転時に安定な軸支持を実現するには、磁気飽和の影響を考慮したドライブシステムを新たに製作する必要がある。そのためには、磁気飽和領域における半径方向力・回転トルクと電流の関係を明らかにすることが不可欠である。そこで、磁気飽和領域における半径方向力と回転トルクを算出できる方法を新たに提案した。そして、提案する算出法に基づいて実際にドライブシステムを製作し、その有効性を実験により確認した。回転機の持つ半径方向の磁気吸引力を回転子主軸の支持に利用してモータと磁気軸受機能を磁気的に一体化したベアリングレスモータが提案されている。スイッチトリラクタンスモータは、効率よく回転トルクを発生できるように、ギャップ長を短く設計することが多いので、特に大きな半径方向の磁気吸引力が固定子と回転子突部に作用する。この大きな磁気吸引力を利用してベアリングレスモータ化すれば、大容量、高速化、メンテナンスフリー化というベアリングレスモータの特長を最大限利用できる。そこで、研究代表者は、1つの固定子に電動機巻線と支持巻線の2種類の巻線を持つ差動巻線構造のスイッチトリラクタンス型ベアリングレスモータを提案している。昨年度までに、高出力運転時における安定な軸支持運転の実現に欠かせない磁気飽和領域における支持力と回転トルクの算定方法を明らかにした。そして、求めた算定方法に基づいて、高出力運転時に安定な軸支持運転を実現するための制御手法とドライブシステムを開発した。しかし、高出力運転に加えて、高速運転を実現するには、巻線の逆起電力による電流の遅れも考慮する必要がある。そこで、本研究の目的は、電流の遅れを考慮した制御手法を提案し、高速回転・高出力運転時においても安定な軸支持を実現するドライブシステムを開発することである。スイッチトリラクタンスモータは、矩形波電流を電動機巻線に与えるのが一般的な駆動方法である。
KAKENHI-PROJECT-14750202
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14750202
高速回転・高出力運転が可能なスイッチトリラクタンス型ベアリングレスモータの開発
これまでの研究では、電動機巻線に指令値通りの矩形波電流が流れることを前提としていた。しかし、回転速度が上昇すると電動機巻線の逆起電力が増加し、電流の立ち上がり、立ち下がりが大きく遅れる。その結果、指令値通りの矩形波電流が流れないために、回転トルクと支持力は指令値通りに出力されない。従って、このような高速回転時は、高出力運転が行えず運転速度領域が制限され、また支持力の不足により安定な軸支持が困難となる。高速回転・高出力運転を実現するには、電動機巻線に流れる電流の遅れを正確に推定し、予め電流の遅れを考慮した電流指令値をドライブシステムに与える必要がある。そこで、平成15年度は、前年度までの研究成果に加えて、電流の遅れを正確に推定する制御手法を提案し組み合わせることで、高速回転・高出力運転時において、安定な軸支持を実現するドライブシステムを開発した。そして、実際に開発したドライブシステムを用いて高速負荷試験を行うことで、提案する制御手法とドライブシステムが有効であることを確認した。
KAKENHI-PROJECT-14750202
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味細胞における受容体および関連分子の発現と味神経との選択的シナプス形成の分子機構
本研究は、グルマリン感受性(GS-SwR〕及ぴ非感受性(Gl-SwR〕の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rs)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し用い、それぞれの受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討することを目的として行った。その結果、1)味細胞におけるレプチン受容体(Ob-Rs)とその細胞伝達関連分子STATsのアイソフォームの発現をみると、db/dbマウスで変異が見られるOb-Rbがレプチン受容の鍵分子であり、味細胞においてもOb-Rb-STAT3の伝達系が関与すること。2)GS-SwR系db/db(Ob-Rb変異)マウスとGl-SwR系BALBの交雑系F2の味覚行動応答の解析により、Gl-SwR系でOb-Rb変異で最も甘味応答が増大していることから、レプチンはGl-SwR発現の味細胞により大きな影響を与えている可能性が示唆された。3)鼓索神経挫滅後の神経再生過程ではGS-SwRの発現はGl-SwRにややおくれて回復するものの、挫滅3週後で発現個体の存在が確認され、Na応答のように3週後にアミロライド非感受性成分が、4週後にアミロライド感受性成分が回復するといった明確な回復時期の差は見られなかった。しかし、特定の甘味物質に対する応答が早期からGSを示すなど、甘味物質による差をもたらす、複数受容体の存在が示唆された。本研究は、グルマリン感受性(GS-SwR〕及ぴ非感受性(Gl-SwR〕の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rs)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し用い、それぞれの受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討することを目的として行った。その結果、1)味細胞におけるレプチン受容体(Ob-Rs)とその細胞伝達関連分子STATsのアイソフォームの発現をみると、db/dbマウスで変異が見られるOb-Rbがレプチン受容の鍵分子であり、味細胞においてもOb-Rb-STAT3の伝達系が関与すること。2)GS-SwR系db/db(Ob-Rb変異)マウスとGl-SwR系BALBの交雑系F2の味覚行動応答の解析により、Gl-SwR系でOb-Rb変異で最も甘味応答が増大していることから、レプチンはGl-SwR発現の味細胞により大きな影響を与えている可能性が示唆された。3)鼓索神経挫滅後の神経再生過程ではGS-SwRの発現はGl-SwRにややおくれて回復するものの、挫滅3週後で発現個体の存在が確認され、Na応答のように3週後にアミロライド非感受性成分が、4週後にアミロライド感受性成分が回復するといった明確な回復時期の差は見られなかった。しかし、特定の甘味物質に対する応答が早期からGSを示すなど、甘味物質による差をもたらす、複数受容体の存在が示唆された。本研究は、グルマリン感受性及び非感受性の2種の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rb)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し、それらマウスを用いて、各受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討する。A.遺伝的変異マウスのグルマリン及びレプチン感受性の行動学的及び神経生理学的解析グルマリン感受性受容体(GS-SwR)を欠損し、グルマリン非感受性受容体(GI-SwR)とOb-RbをもつBALBマウスと、GS-及びGI-SwRをもつがOb-Rbを欠損するC57-dbから、その交雑系F1及びF2を作出し、F2については、その体重と血糖値変化及びD-フェニルアラニン、サッカリン、ショ糖に対する嗜好性について2ビン法で検索し、親系統に関しては鼓索神経及び舌咽神経のグルマリン及びレプチンに対する応答変化について計測した。その結果、F2のdb/db個体(Ob-Rb変異系)のショ糖に対する嗜好性は、D-フェニルアラニン低嗜好性(GS-SwR欠損系)を示すものの方が高いことが分り、Ob-RbとGI-SwRとのより強い連関が示唆された。また、グルマリン感受性はC57の鼓索神経応答のみに認められ、レプチン感受性はC57及びBALBの鼓索及び舌咽神経にも認められた。この結果もOb-RbとGI-SwRとの連関を示唆する。GS-SwRについては現在抗体作成中である。Ob-Rの発現についてはRT-PCR法で検索、C57及びBALBで有郭あるいは茸状乳頭を含む舌上皮でOb-Rbの発現を確認した。本研究は、グルマリン感受性(GS-SwR)及び非感受性(GI-SwR)の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rb)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し用い、各受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討することを目的としている。A.遺伝的変異マウスのグルマリン及びレプチン感受性の行動学的
KAKENHI-PROJECT-12470394
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味細胞における受容体および関連分子の発現と味神経との選択的シナプス形成の分子機構
及び神経生理学解析GS-SwR欠損で、GI-SwRとOb-RbをもつBALBマウスと、GS-及びGI-SwRをもつがOb-Rbを欠損するC57-dbとの交雑系F2を育成し、昨年度よりその数をさらに増加させ、db/db個体を17匹選別した。D-フェニルアラニンの嗜好度はdb/db(17)と正常系(33)共に0.03Mレベルで二峰性の分布となりdpa-とdpa+に分類された。ショ糖に対する嗜好度は正常系でdpa+の方がdb/dbでdpa-が高く、サッカリンに対する嗜好は両群で差がなかった。それら各群の神経応答を検索したところ、dpa-とdpa+の分類とグルマリンによる甘味応答の抑制性がほぼ一致することが分かった。親系統C57の鼓索神経crush後の再生過程における、甘味応答の発現について予備的な検索を行ったところ、crush 3週後にショ糖、サッカリン、D-フェニルアラニンに対する応答が弱いものの見られることが分かった。GS-SwRについては抗体など準備状況が長引いており、まだ十分なデータが得られる状況に至っていない。また、各群マウスのOb-Rの発現をRT-PCR法で調べたところ、Ob-Ra, b,c,d, eの内、Ob-Reを除くすべてが味蕾を含む組織に発現していたが、Ob-Raの発現量がもっとも多かった。味細胞特異性があるガストヂューシンの発現パターンとOb-Rbの発現パターンが一致していたことから、Ob-Rbの味細胞特異性も示唆された。本研究は、グルマリン感受性(GS-SwR)及び非感受性(GI-SwR)の甘味受容体とレプチン受容体(Ob-Rb)を異なる組み合わせで発現するマウスを遺伝的に作出し用い、各受容体を発現する味細胞とそれにシナプスする味神経の選択性について分子遺伝学的及び神経生理学的に検索し、味細胞-味神経のシナプス形成と味細胞受容体関連分子発現の遺伝制御機構について検討することを目的としている。A.遺伝的変異マウスのグルマリン及びレプチン感受性の行動学的及び神経生理学解析C57-dbとBALBの交雑系の解析は昨年度と同様継続し行った。結果は昨年度と同様、神経応答と行動応答の対応がみられた。本年度は鼓索神経crush後の再生過程における、甘味応答の発現についての検索を中心に行った。Crush2週後では全く味神経応答がみられなかったが、crush3週後にショ糖、サッカリン、D-フェニルアラニンに対する応答が弱いものの見られることが分かった。しかし、グルマリンに対する感受性はこの時期ではみられなかった。さらにcrush4週後から甘味応答が増大し、グルマリンによる抑制効果も認められるようになった。したがって、3-4週にかけてグルマリン感受性の受容体の発現がみられるものと推定された。昨年までのOb-Rの発現をRT-PCR法で調べた研究により、味細胞にOb-Rbの発現が確認されていたが、本年度はin situ hybridization法によりOb-RbmRNAの発現を確認した。さらにその下流に位置する細胞内伝達系のSTATの発現をRT-PCR法で調べたところ、STAT3がもっとも強く発現することがあきらかになった。したがって、味細胞ではOb-RbからSTAT3を経て、甘味応答を抑制する可能性が示唆された。
KAKENHI-PROJECT-12470394
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少年院における、発達障害と非行、及び「キレる」に関する教育的研究
本研究では、少年院在院者に対して、いくつかの精神医学的尺度および心理学的質問紙を使用した調査を実施した。世界的にも女子における深刻な非行化群の研究例は少ない。本研究の目的は、女子少年院在院生を対象として、自尊感情や攻撃性、児童期のAD/HD徴候及び逆境的児童期体験における特性や明らかにすることである。またそれぞれの因子の関係性を解析し因果モデルを構築することである。その際、年齢と性別をマッチングさせた対照群を設定した。自尊感情尺度の結果、対象群の自尊感情は有意に低かった一方、攻撃性に有意差は認められなかった。ACE質問紙の結果両群には著明な差が検出され、対象群の深刻度が明らかとなった。AD/HD-YSRの結果、対象群は学童期から不注意や多動衝動性等の行動の問題が顕著であることが示唆された。またWISC-IIIの結果、対象群のFIQの平均値は79.4(SD=11.1)点であり、認知面の遅れが示唆された。相関分析では、攻撃性得点と自尊感情には有意な負の関係が認められ、攻撃性とACE score及びAD/HD-YSR得点には有意な正の相関が検出された。すなわちこれらの因子が攻撃性に影響を与えていることが示唆された。このような傾向は青年期のみならず、成人期以降も対象者(少年院在院者)に深刻な影響を与えると思われた。1.少年院在院生の発達的特性と矯正教育期間の自尊感情等の変容ある少年院でのLD,AD/HDスクリーニングテストの結果、LD疑いあり=63.9%,AD/HD疑いあり=81.9%,LD,AD/HD共に疑いあり=56.6%であった。WISC-III知能検査の結果、VIQ=82.2±9.9(M±SD)、PIQ=82.2±9.9(M±SD)、FIQ=82.2±9.9(M±SD)であった。VIQ-PIQの平均の階差は6.8であり、有意な差が確認された(p<.05)。自尊感情は、入院時・出院時ともに少年院生がコントロール群より有意に低かった(p<.01)。攻撃性は入院時は少年院生がコントロール群よりも有意に低かった(p<.01)。しかしながら出院時に、少年院生の攻撃性の有意な高まりが見られた。その結果、出院時の少年院生とコントロール群では攻撃性に差がなかった。すなわち、少年院在院者の顕著で深刻な低自尊感情が明らかとなった。同時に発達の遅れ偏りなどとの密接な関連性も示唆された。2.少年院在院者の逆境的児童期体験の調査結果男子少年院在院者(N=116)と女子少年院在院者(N=70),及びコントロール群として一般高校生(N=540)に,児童期の不適切養育体験(虐待を含む)の調査を実施した.ACE(Adverse Childhood Experiences;逆境的児童期体験)質問紙を使用した.これは,虐待のカテゴリー(身体的・心理的・性的虐待,ネグレクト)と養育機能不全のカテゴリー(保護者の不在・服役歴・精神疾患の罹病、家庭内暴力など)に分かれている.年齢と性をマッチさせた一般高校生と比較して,少年院在院者の児童期の逆境体験は極めて深刻であることが明らかにされた.9つの質問項目の内,男子少年院在院者は約522倍,女子少年院在院者は約433倍経験率が高く,身体的虐待は特に深刻であった.男女少年院在院者で比較すると,心理的虐待や性的虐待の項目で女子の方が有意に深刻な状況であることが判った.本研究では、少年院在院者に対して、いくつかの精神医学的尺度および心理学的質問紙を使用した調査を実施した。世界的にも女子における深刻な非行化群の研究例は少ない。本研究の目的は、女子少年院在院生を対象として、自尊感情や攻撃性、児童期のAD/HD徴候及び逆境的児童期体験における特性や明らかにすることである。またそれぞれの因子の関係性を解析し因果モデルを構築することである。その際、年齢と性別をマッチングさせた対照群を設定した。自尊感情尺度の結果、対象群の自尊感情は有意に低かった一方、攻撃性に有意差は認められなかった。ACE質問紙の結果両群には著明な差が検出され、対象群の深刻度が明らかとなった。AD/HD-YSRの結果、対象群は学童期から不注意や多動衝動性等の行動の問題が顕著であることが示唆された。またWISC-IIIの結果、対象群のFIQの平均値は79.4(SD=11.1)点であり、認知面の遅れが示唆された。相関分析では、攻撃性得点と自尊感情には有意な負の関係が認められ、攻撃性とACE score及びAD/HD-YSR得点には有意な正の相関が検出された。すなわちこれらの因子が攻撃性に影響を与えていることが示唆された。このような傾向は青年期のみならず、成人期以降も対象者(少年院在院者)に深刻な影響を与えると思われた。
KAKENHI-PROJECT-19653122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19653122
寄主転換に伴う種分化を促進する隔離障壁の進化機構の解明
野生生物には,別種とまではいかないまでも,餌や生息場所の違いと言った生態的な特徴が異なる集団が種内に見られることがしばしばあります.では,こうした生態的な違いは最終的には別種へと種を分化させることがあるのでしょうか.今回の研究は,植物を食べる昆虫の餌を決めている遺伝子と,種の分化を完了させる,例えば交配時に雌雄が互いを交配相手と認識するためのフェロモンのようなシグナルを決めている遺伝子を特定し,こうした遺伝子がどのように分化してきたのかを調べるための足がかりを得るために行いました.クルミレースと交配しにくいネジキレースの地域集団として,形質置換による交尾率の低下が確認されている宮城県仙台市の同所集団(クルミレースとネジキレースが同所的に生息している)を,クルミレースと交配しやすいネジキレースの地域集団として,ネジキレースのみが生息する愛知県岡崎市の異所集団を選び,ネジキレース内でF2世代を作成した.また,RAD-seqを用いた詳細な連鎖地図の作成用に,札幌のクルミレースと岡崎のネジキレースを交配して得られたF1個体に,鹿児島県霧島市のネジキレースをbackcross親として掛け合わせた戻し交雑世代と,山形県山形市のクルミレースをbackcross親として掛け合わせた戻し交雑世代を作成した.これらの雑種世代は,次年度にRAD-seqを行う予定である.これらに加えて,同じレース間で共通の交配前隔離が平行的に進化するかどうかを検証するため,仙台と新見の同所集団のネジキレースどうしの交配実験を行った.その結果,仙台-新見館の交配でも,コントロール(仙台集団内)と有意差なく交配することが確認できた.本研究ではまず,クルミレースとの交尾率の低下が生じているネジキレース集団を,地理的に離れた地域から採集し,これらネジキレースの地域集団間で交配実験を行った.実験には,クルミレースとネジキレースが同所的に生息している宮城県仙台市と岡山県新見市の個体群を用いた.これらの2地域では,ネジキレースのメス個体をクルミレースのオスと掛け合わせると,交尾率が低下する傾向が見られるが,仙台市と新見市のネジキレースどうしの交配では,仙台市のサンプルどうし,新見市のサンプルどうしを交配した場合と同様に,9割以上のペアが交配した.よって,クルミレースと同所的に生息するネジキレースで見られるクルミレースとの交尾前隔離を生じさせる機構は,各同所集団でランダムに生じているわけではないことが示唆された.次に,異所集団間での交尾率の差に注目し,クルミレースと交尾しやすいネジキレース集団と,クルミレースと交尾しにくいネジキレース集団の交雑からネジキレースの地域集団間F2世代を作成した.そして,次世代シークエンサーでの解析に適したゲノムが抽出できる蛹を用いて,restriction-site associated DNA sequencing (RAD-seq)により連鎖解析を行う実験系を確立した.また,成虫にまで育て上げたF2世代のメス個体をクルミレースとの交配実験に供し,得られたサンプル数は少なかったが,F2世代の交配の有無から交尾前隔離に関わるQTLを検出するための手法が確立できた.野生生物には,別種とまではいかないまでも,餌や生息場所の違いと言った生態的な特徴が異なる集団が種内に見られることがしばしばあります.では,こうした生態的な違いは最終的には別種へと種を分化させることがあるのでしょうか.今回の研究は,植物を食べる昆虫の餌を決めている遺伝子と,種の分化を完了させる,例えば交配時に雌雄が互いを交配相手と認識するためのフェロモンのようなシグナルを決めている遺伝子を特定し,こうした遺伝子がどのように分化してきたのかを調べるための足がかりを得るために行いました.当該実験の遂行中に,当研究室が所有する昆虫飼育用の恒温器が故障して実験に一部不都合が生じたが,新規に導入した恒温室等で何とか飼育,交配実験共に行えたため,ほぼ予定通り計画が遂行できた.進化生物学これまでに作成した雑種世代の個体からゲノムDNAを抽出し,RAD-seqによるジェのタイピングを行い,連鎖解析とQTL mappingを行う.同じレース間での交配前隔離の平行的進化の有無をより詳細に検証するため,仙台と新見の同所集団のネジキレースどうしの交配実験の反復数を増やすとともに,岡崎及び霧島の個体を用いた交配実験も行う.
KAKENHI-PROJECT-26840120
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26840120
輻射熱アクティブ補償エピタキシによる高品質II-VI半導体多元混晶の作製
本年は、昨年までの成果に引き続き、ZnCdS/MgCdS超格子やZnSe/MgCdS超格子の研究について詳細な検討を行ってきた。昨年までに、基板温度の面内分布やルツボのシャッター開閉による変化が結晶性に与える影響について明らかにし、熱輻射の積極的利用によりそれらの悪影響を引き下げる技術を開発してきた。超格子構造の特性は周期構造によって変化する。しかし、設計と作製したサンプルの周期構造が一致しているかを検討する必要がある。また、界面がぼやけて混晶化してしまうと量子効果が発生しないことが考えられる。したがって、超格子は井戸層と障壁層の界面が急峻であることが重要である。熱輻射を積極的に応用することで電子顕微鏡による観察やX線回折による評価から、超格子が設計どおりに作製可能なこと(膜厚や組成が制御可能なこと)を明らかにした。その光学的特性も、設計と対応して変化することが明らかになった。さらに本手法を応用し、ZnTeのホモエピタキシー膜の高品質化に関する検討も行なった。ZnTeは一般にp型の伝導型のみを示すことが知られている。その価電子制御を行なう際に成長条件の安定化を図ることが重要である。本研究では価電子制御のために超格子構造を発展させた構造の作製を行なったが、その際にもシャッターの開閉に伴う基板温度の変動を抑えるため、輻射熱の積極的制御を行なった。そして、安定した成長条件のもとで高品質ZnTeの作製も可能になり、ZnTeのホモエピタキシーや伝導型制御に対しても超格子構造の応用が有効であるとの知見を得るに至った。本年は、昨年までの成果に引き続き、ZnCdS/MgCdS超格子やZnSe/MgCdS超格子の研究について詳細な検討を行ってきた。昨年までに、基板温度の面内分布やルツボのシャッター開閉による変化が結晶性に与える影響について明らかにし、熱輻射の積極的利用によりそれらの悪影響を引き下げる技術を開発してきた。超格子構造の特性は周期構造によって変化する。しかし、設計と作製したサンプルの周期構造が一致しているかを検討する必要がある。また、界面がぼやけて混晶化してしまうと量子効果が発生しないことが考えられる。したがって、超格子は井戸層と障壁層の界面が急峻であることが重要である。熱輻射を積極的に応用することで電子顕微鏡による観察やX線回折による評価から、超格子が設計どおりに作製可能なこと(膜厚や組成が制御可能なこと)を明らかにした。その光学的特性も、設計と対応して変化することが明らかになった。さらに本手法を応用し、ZnTeのホモエピタキシー膜の高品質化に関する検討も行なった。ZnTeは一般にp型の伝導型のみを示すことが知られている。その価電子制御を行なう際に成長条件の安定化を図ることが重要である。本研究では価電子制御のために超格子構造を発展させた構造の作製を行なったが、その際にもシャッターの開閉に伴う基板温度の変動を抑えるため、輻射熱の積極的制御を行なった。そして、安定した成長条件のもとで高品質ZnTeの作製も可能になり、ZnTeのホモエピタキシーや伝導型制御に対しても超格子構造の応用が有効であるとの知見を得るに至った。GaAsに格子整合し、かつ室温でのEgを3eVに制御可能なZnMgCdS系材料に注目し、紫外線センサへの適応性を検討した。4元混晶に限定することなく、センサ特性改善のため超格子構造のZn0.6Cd0.4S/Mg0.8Cd0.2Sを作製し、紫外線センサへの適応性の検討を行なったところZnMgCdS材料の場合と同様に紫外光のみ選択的に感度のあるセンサを作製することができた。しかし、結晶成長とともに3次元成長が起こり結晶性が悪化し、センサ特性に影響が出るという問題が明らかになった。そこで、従来とはことなり、GaAs基板上に作製する代わりにエピタキシャル成長させた平坦なGaAs上にZnCdS/MgCdSを作製し、結晶性の改善とセンサの分光感度特性の改善を試みた。(100)GaAsエピタキシャル膜上にZnSeバッファ層成長後、ZnMgS/CdMgSをZn、Mg及びCdS化合物を用いて成長させた。組成はZn0.4Cd0.6S/Mg0.8Cd0.2S付近に設定し、層厚は9-60Å/8-20Åで作製した。RHEED観察においてGaAs基板上にZnSeバッファ層を成長した場合は成長開始直後からスポットになった。それに対しGaAsエピタキシャル膜上の場合は成長開始直後からストリークが見られ、超格子600nm成長後でもGaAsエピタキシャル膜上に成長したものはストリークが保たれていた。これらのことはGaAsとの界面の平坦性が改善されたことにより超格子の結晶性を改善できたためと考えられる。PL・反射スペクトルから2.95eV付近にEgに対応した強い発光が得られた。本超格子を用いて光導電素子のUVAセンサを作製したところ、従来の構造に比べカットオフ波長付近での感度特性が改善された。本年は、従来までに開発を行ってきたZnCdS/MgCdS超格子やZnMgCdS混晶のほかにZnSe/MgCdS
KAKENHI-PROJECT-16360013
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16360013
輻射熱アクティブ補償エピタキシによる高品質II-VI半導体多元混晶の作製
超格子の研究についても着手始めた。本超格子は、4元混晶やZnCdS/MgCdS超格子に比べて使用する原料の数が増えてしまうという問題点を抱えている。しかしながら、バンド構造がタイプIがたのものになるため、伝導体や価電子帯に明瞭な井戸を作製することが可能になってくる。そのため、量子準位が強調された素子になると期待される。他方、Se系材料はS系材料に比べて一般的に光に対する感度が低いため、光素子としては必ずしも高感度になるとは考えにくい。これらの長所と短所を内在しているため、素子への応用に関しては慎重に検討する必要がある。これまでに、分子線エピタキシー法により、標記材料の作製が可能なことを明らかにした。組成制御性や、電子状態の制御性については当初の期待していた結果が得られた。また、材料の光学的特性を低温フォトルミネッセンスにより測定したところ、バンド端に対応した信号が明瞭に得られた。そして、他の材料系に比べてほぼ遜色のない光学的特性を有する材料が作製されたことが明らかになった。紫外線センサとしての特性については今後検討していく予定である。本年は、昨年までの成果に引き続き、ZnCdS/MgCdS超格子やZnSe/MgCdS超格子の研究について検討を行ってきた。これらの超格子の作製に当たっては組成の制御と各層厚の制御が大変重要である。それらの制御が可能になって初めて超格子の物性制御が可能になるといっても過言ではない。これまでの成果により結晶成長条件の重要因子である基板温度の制御に関しては改善可能なことが明らかになってきた。しかしながら、成長時の分子線強度の均一性との対応は不十分であった。通常分子線エピタキシー法においては分子線強度はある程度不均一性があることが一般的であるとみなされてきた。それらの不均一性を改善するために結晶成長中に基板を回転させ、基板表面が平均的には均一の分子線に当たっていることが期待されていた。しかしながら、本研究で提案しているような超格子構造は低温の基板温度で成長することもあり、結晶成長速度も比較的遅いものであった。その結果、基板回転を行ったとしても基板回転に対応して層内に組成むらや膜厚むらが生じることが明らかになってきた。これまでは基板温度の制御も容易ではなかったため、層内の組成のむらや膜厚のむらが何に起因するのか明確ではなかったが、本研究の成果により、むらを引き起こす原因が特定できたと考えられる。これらの成果を元に、基板回転、基板温度安定化、に加え分子線の面内分布解消に向けた検討をいっそう進めていく必要があると考えられる。本年は、昨年までの成果に引き続き、ZnCdS/MgCdS超格子やZnSe/MgCdS超格子の研究について詳細な検討を行ってきた。昨年までに、基板温度の面内分布やルツボのシャッター開閉による変化が結晶性に与える影響について明らかにし、熱輻射の積極的利用によりそれらの悪影響を引き下げる技術を開発してきた。超格子構造の特性は周期構造によって変化する。しかし、設計と作製したサンプルの周期構造が一致しているかを検討する必要がある。また、界面がぼやけて混晶化してしまうと量子効果が発生しないことが考えられる。したがって、超格子は井戸層と障壁層の界面が急峻であることが重要である。熱輻射を積極的に応用することで電子顕徴鏡による観察やX線回折による評価から、超格子が設計どおりに作製可能なこと(膜厚や組成が制御可能なこと)を明らかにした。その光学的特性も、設計と対応して変化することが明らかになった。
KAKENHI-PROJECT-16360013
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近接ネットワークに基づくコンテクスト抽出による歩行者ソーシャルコンピューティング
歩行者の近接関係をセンサ等によつて取得し、これを用いて有用な都市情報サービスを提供するためのモデルを開発した。更に、このモデルに基づくシステムの試作を行い、提案モデルの有効性を検証するとともに次世代の都市情報サービスの可能性を議論した。歩行者の近接関係をセンサ等によつて取得し、これを用いて有用な都市情報サービスを提供するためのモデルを開発した。更に、このモデルに基づくシステムの試作を行い、提案モデルの有効性を検証するとともに次世代の都市情報サービスの可能性を議論した。本研究ではセンサーデータを用いてパブリックスペースにおける群衆の近接ネットワークを抽出し,近接ネットワークの構造と意味に基づいたコンテクストアウェアサービスを提供するシステムを実現する.ここでいう近接ネットワークとは,パブリックスペースにおいて歩行者の持ち歩く携帯端末を用いて,群衆の近接関係を示すセンサーデータから「出会い」の頻度,時間,距離等を考慮して,歩行者をノード,「出会い」をリンクとして構成されるネットワークである.このネットワークの構造的特徴と社会的意味を分析し,得られた知見に基づくコンテクストアウェアサービスフレームワークを構築する.更に,近接データの交換・共有が可能な歩行者端末と設置型の装置を用いて,このフレームワークに基づいた「群衆コンテクスト抽出ツールキット」を開発し,利用実験を通じて群衆インタラクションの理論の検討を行う.平成21年度は,まず群衆コンテクストの抽出を行う方法について基礎的な検討を行った.プライバシーに配慮して有用なコンテクストを抽出することが最も重要な課題の一つであると認識し,インタラクティブなプライバシー境界制御機構を提案するとともに,この機構を前提としたコンテクスト抽出法についても検討を開始した.近接データの取得と流通については,電子タグを利用した測位システムを用いて市街地で収集したデータを吟味し,絶対位置から相対位置を計算する方法と,直接的に相対位置を計測・流通する方法についで検討を行った.本年度は,群衆コンテクスト抽出の基礎モデルとプライバシー問題について入念に検討を行った.これにより,平成22年度以降にシステム開発とフィールドワークを円滑に進めるための環境が整ったと考えている.本研究ではセンサーデータを用いてパブリックスペースにおける群衆の近接ネットワークを抽出し、近接ネットワークの構造と意味に基づいたコンテクストアウェアサービスを提供するシステムを実現する。ここでいう近接ネットワークとは、群衆の近接関係を示すセンサーデータから「出会い」の頻度、時間、距離等を考慮して、歩行者をノード、「出会い」をリンクとして構成されるネットワークである。このネットワークの構造的特徴と社会的意味を分析し、得られた知見に基づくコンテクストアウェアサービスフレームワークを構築する。更に、このフレームワークに基づいた「群衆コンテクスト抽出ツールキット」を開発し、群衆インタラクションの理論の検討を行う。平成22年度には、平成21年度までの成果に基づいてコンテクスト抽出アルゴリズムの改良と近接ネットワーク合成手法・システムに関する研究を行い、過去に収集したフィールドデータに基づいてプライバシー保護手法の検討を行った。具体的な内容は、以下の通りである:1.コンテクスト抽出アルゴリズムの改良:平成21年度に行った基礎的な検討に基づき、近接ネットワークに基づいてコミュニティを高速に抽出するための改良を行った。2.近接ネットワーク合成手法・システムの開発:ユーザを中心とするego-centricネットワークと、場を中心とするplace-basedネットワークを補完的に統合利用するための手法を開発し、これに基づくアプリケーションを試作した。3.フィールドデータに基づくプライバシーについての検討:RFIDを用いたイベント支援のフィールド実験のデータに基づき、本研究におけるプライバシー保護のあり方について検討を行った。本研究ではセンサーデータを用いてパブリックスペースにおける群衆の近接ネットワークを抽出し、近接ネットワークの構造と意味に基づいたコンテクストアウェアサービスを提供するシステムを実現する。ここでいう近接ネットワークとは、群衆の近接関係を示すセンサーデータから「出会い」の頻度、時間、距離等を考慮して、歩行者をノード、「出会い」をリンクとして構成されるネットワークである。このネットワークの構造的特徴と社会的意味を分析し、得られた知見に基づくコンテクストアウェアサービスフレームワークを構築する。更に、このフレームワークに基づいた「群衆コンテクスト抽出ツールキット」を開発し、群衆インタラクションの理論の検討を行う。平成23年度には、平成22年度までの成果に基づいてコンテクストの利用とモデルに関する研究を行い、3年間の研究成果のまとめを行った。具体的な内容は、以下の通りである:1.群衆コンテクストの利用環境の開発:群衆の移動により形成される人と場所のネットワークのモデルとしてコロケーションネットワークを提案し、これに基づく利用環境を開発した。2.群衆コンテクストを用いたインタラクションデザイン環境の開発:コロケーションネットワークを利用してコンテクスト情報を効率良く取得し、これをスマートフォン上で利用する環境の試作を行い、有効性を検証した。3.フィールドスタディとモデルの検討:Bluetoothによる近接関係取得・利用の実験とタブレットPCを用いた質的コンテクスト情報収集の実験を行い、センサと人によるデータの補完的な利用について検討した。4.研究成果のとりまとめ:これまでの成果についてまとめ、国際会議の招待講演等で発表した。
KAKENHI-PROJECT-21500071
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脂肪酸による血管内皮細胞のタイトジャンクション透過性調節
本研究は、正常なヒトの血管内皮培養細胞を使用し、各種脂肪酸による血管内皮細胞タイトジャンクション機能調節効果を検討するものである。それぞれのinhibitor添加の影響は短鎖脂肪酸の種類により異なるものであったことから、種類により機序が異なることが明らかになった。即ち、酪酸はCOXとER、プロピオン酸はLOX、酢酸はERを介する可能性が示唆された。また、代表的なhistone deacetylase(HDAC)阻害剤であるtrichostain Aが酪酸、プロピオン酸と類似の効果を示したことから、酪酸、プロピオン酸のタイトジャンクション機能調節効果にHDAC阻害作用が関与している可能性が示唆された。以上より、短鎖脂肪酸の種類によって透過性調節機序が異なることを明らかにした。短鎖脂肪酸は、ヒトの総エネルギー消費量の10%以上、草食動物では50%以上を占めているが、これまで血管への直接効果がほとんど研究されていなかった。血中に存在する短鎖脂肪酸が正常血管内皮細胞のタイトジャンクション透過性に影響することを明らかにした生理学的な意義は大きい。多価不飽和脂肪酸の循環器病・血管機能に対する研究は多数行われているが、血管内皮細胞タイトジャンクション透過性に特化した研究は報告されていない。本研究は、正常なヒトの血管内皮培養細胞を使用し、各種脂肪酸による血管内皮細胞タイトジャンクション機能調節効果を検討するものである。多様な脂肪酸による血管機能調節作用が明らかにされると、食品としての摂取、薬物としての脂肪乳剤、脂肪酸製剤投与、さらにはprobiotics、prebiotics投与による腸内細菌叢を介する短鎖脂肪酸による効果、各種の介入など、研究内容が大きく発展すると考えられる。本研究では、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞を2層培養法により培養し、タイトジャンクション透過性の指標として、molecular markerの透過性と膜電位を測定した。実験群は、0.0564mM短鎖脂肪酸、500μM中鎖脂肪酸、50200μM多価不飽和脂肪酸を添加し、透過性におよぼす効果を検討した。0.5mM酪酸、1mMプロピオン酸、および32mM酢酸は24時間で透過をいずれも抑制したが(ρ<0.01)、酪酸、プロピオン酸の濃度依存性は明らかでなく、二相性の変化を生じた。他方、中鎖脂肪酸および多価不飽和脂肪酸は透過を促進した。デカン酸は、3時間で透過を促進したが、多価不飽和脂肪酸は24時間でその効果を発揮した。炭素数18と20において、各々n-3系とn-6系脂肪酸の透過性促進効果に有意な差は認められなかった。以上より、短鎖脂肪酸は透過を抑制するが、中鎖、長鎖脂肪酸は透過を促進し、特に中鎖脂肪酸の効果は3時間と他の脂肪酸に比べ短時間で発揮されたことから、血管内皮細胞のタイトジャンクション透過性におよぼす脂肪酸の効果およびその作用時間は、それぞれ種類によって異なることを明らかにした。現在、その機序と詳細を検討中である。本研究は、正常なヒトの血管内皮培養細胞を使用し、各種脂肪酸による血管内皮細胞タイトジャンクション機能調節効果を検討するものである。それぞれのinhibitor添加の影響は短鎖脂肪酸の種類により異なるものであったことから、種類により機序が異なることが明らかになった。即ち、酪酸はCOXとER、プロピオン酸はLOX、酢酸はERを介する可能性が示唆された。また、代表的なhistone deacetylase(HDAC)阻害剤であるtrichostain Aが酪酸、プロピオン酸と類似の効果を示したことから、酪酸、プロピオン酸のタイトジャンクション機能調節効果にHDAC阻害作用が関与している可能性が示唆された。以上より、短鎖脂肪酸の種類によって透過性調節機序が異なることを明らかにした。短鎖脂肪酸は、ヒトの総エネルギー消費量の10%以上、草食動物では50%以上を占めているが、これまで血管への直接効果がほとんど研究されていなかった。血中に存在する短鎖脂肪酸が正常血管内皮細胞のタイトジャンクション透過性に影響することを明らかにした生理学的な意義は大きい。
KAKENHI-PROJECT-19650209
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光学活性有機カルコゲン触媒の創製と不斉合成への展開
本年度の研究実施計画に従い、不斉オキシラン合成反応のエナンチオ選択性を検討した。すでに、無水塩化メチレン中、ジ(2-ヒドロキシ-10-ボルニル)セレニド存在下フェナシルブロミド、ベンズアルデヒド及び水酸化リチウムとの反応から室温5時間において(2S,3R)-3-ベンゾイル-2-フェニルオキシランを66%・48%eeで得ている。各種溶媒検討の結果、同様の条件下無水クロロホルムを用いると目的物の化学収率及びエナンチオ過剰率を71%・55%eeまで向上させることができた。一方、四塩化炭素を用いた場合、42%と収率は低下し、エナンチオ選択性は観察されなかった。その他、クロロホルム中p-ブロモ、p-クロロ及びp-メチルベンズアルデヒドとの反応はそれぞれ、65%・56%ee、95%・48%ee、28%・45%eeの化学収率及びエナンチオ過剰率であった。ボルニル骨格を有する触媒のC_2対称構造について、本触媒をすでに報告のある不安定イリドとアルデヒドとの反応に適応し、その有用性を検討した。すなわち、アセトニトリル中、1当量のジ(2-ヒドロキシ-10-ボルニル)スルフィド存在下、ベンジルブロミド、p-クロロベンズアルデヒド及び水酸化ナトリウムとを室温24時間反応させ、(2S,3S)-2-(4-クロロフェニル)-3-フェニルオキシランを化学収率20%、46%eeで得た。フェナシルブロミドとの反応では全くエナンチオ選択性を示さなかったアセトニトリルで選択性が発現したことから、本反応は異なる反応機構で進行していることを示唆した。また、溶媒に塩化メチレンを用いた場合、収率は10%まで低下したものの、58%eeの選択性を示した。本年度の研究実施計画に従い、カンファー骨格を有する光学活性セレニドの合成及びそれらを用いたCorey-Chaykovsky反応を行った。3種の新規光学活性セレニドの合成を行った。ジ(2-ヒドロキシ-10-ボルニル)セレニドについて、まずDMF中リチウムセレニドをヨードカンファーと反応させ対称ジケトセレニドを91%で合成した。次にTHF中LAHでケトン基を還元しジヒドロキシ体の合成を行った。ジ(2-アミノ-10-ボルニル)セレニドについては、まずトルエン中PPTS触媒存在下、対称ジケトセレニドとベンジルブロミドよりジイミンを合成した。続いてイミノ基の還元を行った。還元剤としてLAHやDIBALを用いると目的物は全く得られてこないものの、ニッケルクロリド-ナトリウムボロヒドリドによる還元でジアミノ体を合成に成功した。さらに、ジ(2-メルカプト-10-ボルニル)セレニドについて、対称ジケトセレニドをトルエン中、Lawesson試薬と反応させジチオケトンへ変換し、さらにDIBALにより低温下還元を行うことでジチオール体も合成した。3種の光学活性セレニドを用いて、不斉Corey-Chaykovsky反応を検討した。塩基として水酸化リチウムを用い、0.3当量の触媒存在下p-ニトロベンズアルデヒドとフェナシルブロミドとの反応を行った。ジヒドロキシ体を用いた場合、3時間で反応は終了し化学収率90%、また79%eeのエナンチオ選択性が観察された。一方、ジアミノ体を用いた場合、反応は12時間で終了し化学収率は83%と高収率であったがエナンチオ選択性は全く観察されなかった。さらにジチオール体の場合には、12時間後で化学収率がわずか11%と反応の進行が遅く、エナンチオ選択性は観察されなかった。1.光学活性セレニド触媒を用いた不斉オキシラン化反応の検討:塩化メチレン中、光学活性セレニド触媒存在下フェナシルブロミド、ベンズアルデヒド及び水酸化リチウムとの反応は室温5時間において(253R)-3-ベンゾイル-2-フェニルオキシランを66%、48%eeで与えた。本反応をCorey-Chaykovsky型反応と仮定し、その反応中間体に相当するセレノニウム塩を別途合成した。すなわち、アセトン中、トリフルオロメタンスルホン酸銀存在下光学活性セレニドとフェナシルブロミドとの反応より目的のセレノニウム塩を85%の収率で得た。このセレノニウム塩を用いて塩化メチレン中水酸化リチウム存在下ベンズアルデヒドとの反応を行ったが、反応時間が3時間及び24時間いずれにおいても反応はほとんど進行ぜず、得られたオキシラン体はほぼラセミ体であった。本反応はセレニド触媒と水酸化リチウムとの光学活性複合塩基によるDarzens反応で進行していることが示唆された。2.カルコゲン触媒を用いた電子欠損アルキンと活性メチレン化合物との反応:クロロホルム中、触媒としてベンジルセレニド存在下3-ブテン-2-オンとアセチルアセトンとの反応は2,4,6-トリアセチルトルエンを与えた。本反応は、触媒、3-ブテン-2-オン及びアセチルアセトンの全ての要素が必須であり、還流条件で反応は進行した。興味深いことにベンジルセレニドの代わりにベンジルスルフィドを用いると反応は同条件下進行しない。活性メチレンカルバニオンの電子欠損アルキンへのマイケル付加より開始するタンデムダブルMichael付加-aldol反応による六員環形成反応より芳香環化を起こしているものと考えている。本年度の研究実施計画に従い、不斉オキシラン合成反応のエナンチオ選択性を検討した。
KAKENHI-PROJECT-17790015
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光学活性有機カルコゲン触媒の創製と不斉合成への展開
すでに、無水塩化メチレン中、ジ(2-ヒドロキシ-10-ボルニル)セレニド存在下フェナシルブロミド、ベンズアルデヒド及び水酸化リチウムとの反応から室温5時間において(2S,3R)-3-ベンゾイル-2-フェニルオキシランを66%・48%eeで得ている。各種溶媒検討の結果、同様の条件下無水クロロホルムを用いると目的物の化学収率及びエナンチオ過剰率を71%・55%eeまで向上させることができた。一方、四塩化炭素を用いた場合、42%と収率は低下し、エナンチオ選択性は観察されなかった。その他、クロロホルム中p-ブロモ、p-クロロ及びp-メチルベンズアルデヒドとの反応はそれぞれ、65%・56%ee、95%・48%ee、28%・45%eeの化学収率及びエナンチオ過剰率であった。ボルニル骨格を有する触媒のC_2対称構造について、本触媒をすでに報告のある不安定イリドとアルデヒドとの反応に適応し、その有用性を検討した。すなわち、アセトニトリル中、1当量のジ(2-ヒドロキシ-10-ボルニル)スルフィド存在下、ベンジルブロミド、p-クロロベンズアルデヒド及び水酸化ナトリウムとを室温24時間反応させ、(2S,3S)-2-(4-クロロフェニル)-3-フェニルオキシランを化学収率20%、46%eeで得た。フェナシルブロミドとの反応では全くエナンチオ選択性を示さなかったアセトニトリルで選択性が発現したことから、本反応は異なる反応機構で進行していることを示唆した。また、溶媒に塩化メチレンを用いた場合、収率は10%まで低下したものの、58%eeの選択性を示した。
KAKENHI-PROJECT-17790015
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骨形成因子の腎への影響の検討
TGF-βスーパーファミリーの一つである骨形成因子(BMP-7)は、そのリガンドとレセプターが腎臓の発生期に尿細管において強く発現していることから腎尿細管細胞の増殖や機能発現に重要な役割を有していることが予想される。これまで我々は上皮増殖因子(EGF)や肝細胞増殖因子(HGF)、TGF-βなどが急性腎不全時における腎再生に強く関与していることを報告してきたが、今回、BMP-7についても同様の方法論を用いて検討を加えた。これまでBMP-7の受容体であるBMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BMPR-II(u2)につき腎虚血による腎不全モデルラットを用いて腎における発現を免疫組織染色およびノーザンブロット解析により検討した。その結果R-IA、R-IB蛋白は尿細管細胞において虚血後24時間で著しい発現の増加が認められその後徐々に低下した。また、RNAの発現上昇も同様の経過で観察された。一方、R-IIに関しては蛋白およびRNAの明らかな発現の変化は観察されなかった。以上の結果より、腎障害後早期に発現増加してくるBMPR-IA、IBは引き続き起こってくる尿細管細胞の再生、に関与している可能性が考えられる。BMP-7自体の腎における生理的役割についても不明な点が多いが、今後リガンドについての検討も含めて研究を進めたい。既知の増殖因子の変化とも比較検討し、その関係を明らかにしたい。TGF-βスーパーファミリーは生体内で多彩な作用を示し様々な所で機能している。そのTGF-βスーパーファミリーのうちの1つであるBMP(骨形成因子)は、骨折時などの骨形成促進に関与する増殖因子として見つかったものだが、ごく最近そのリガンドとレセプターが腎臓の発生期において腎臓の近位尿細管と遠位尿細管に強く発現していることがわかった。我々は片腎摘出時に対側腎が代償性に肥大するのに増殖因子であるEGF(上皮増殖因子)やHGF(肝細胞増殖因子)が関係していることを報告してきた。(Biochem.Biophys.Res.Commun.,187(2)1015,1992;Am.J.Physiol.,265,61,1993)一方TGF-βは増殖抑制因子として働いていることも報告してきた。(Growth Regulation.,3,146,1993)TGF-βスーパーファミリーであるBMP(骨形成因子)は腎臓の発生に関係していると推測されるが、その他の増殖因子との関係を腎摘時及び急性腎不全時における腎再生における役割を分子生物学的手法を用いて解析してる。BMPの受容体は、BMPR-II(u2),BMPR-IA(ALK-3),BMPR-IB(ALK-6)が上げられるが、今までの研究ではラットの急性腎不全モデルの免疫組織染色において、腎不全モデル作製1日目にR-LA及びR-IBの著しい増加が認められた。一方R-IIに関してはほとんど変化が認められなかった。今後mRNAの発現についても検討を行いたい。TGF-βスーパーファミリーの一つである骨形成因子(BMP-7)は、そのリガンドとレセプターが腎臓の発生期に尿細管において強く発現していることから腎尿細管細胞の増殖や機能発現に重要な役割を有していることが予想される。これまで我々は上皮増殖因子(EGF)や肝細胞増殖因子(HGF)、TGF-βなどが急性腎不全時における腎再生に強く関与していることを報告してきたが、今回、BMP-7についても同様の方法論を用いて検討を加えた。これまでBMP-7の受容体であるBMPR-IA(ALK-3)、BMPR-IB(ALK-6)、BMPR-II(u2)につき腎虚血による腎不全モデルラットを用いて腎における発現を免疫組織染色およびノーザンブロット解析により検討した。その結果R-IA、R-IB蛋白は尿細管細胞において虚血後24時間で著しい発現の増加が認められその後徐々に低下した。また、RNAの発現上昇も同様の経過で観察された。一方、R-IIに関しては蛋白およびRNAの明らかな発現の変化は観察されなかった。以上の結果より、腎障害後早期に発現増加してくるBMPR-IA、IBは引き続き起こってくる尿細管細胞の再生、に関与している可能性が考えられる。BMP-7自体の腎における生理的役割についても不明な点が多いが、今後リガンドについての検討も含めて研究を進めたい。既知の増殖因子の変化とも比較検討し、その関係を明らかにしたい。
KAKENHI-PROJECT-08877248
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兜率天往生の思想とかたち
兜率天上の弥勒菩薩の造形について、インドから日本中世までの展開過程をおおよそ明らかにした。中国唐代までは持水瓶・交脚形が主流であるが、宋代およびその影響を受けた日本中世では持麈尾・趺坐形が浸透する。また兜率天浄土の表現についても、中央アジアから中国、日本に至る図様形成と変容状況を遺品から跡づけた。とくに日本中世の兜率天曼荼羅図のタイプを整理することができた。本研究は、古来より信仰があった弥勒の造像造画活動のなかでも、鎌倉時代に新しい局面を迎える弥勒上生信仰とその造形を研究し、兜率天往生思想との教学的関連を探ろうとする。兜率天上の弥勒菩薩の造形について、インドから日本中世までの展開過程をおおよそ明らかにした。中国唐代までは持水瓶・交脚形が主流であるが、宋代およびその影響を受けた日本中世では持麈尾・趺坐形が浸透する。また兜率天浄土の表現についても、中央アジアから中国、日本に至る図様形成と変容状況を遺品から跡づけた。とくに日本中世の兜率天曼荼羅図のタイプを整理することができた。本年度は当初の研究計画に即して、研究テーマに直結する絵画・工芸作品の調査を行い、その調書ならびに画像資料を取得した。弥勒菩薩が主宰する兜率天浄土のさまを描いた兜率天曼荼羅図は、日本では鎌倉時代以降の作品のみが数種残されており、そのなかでも特に最古の遺例として重要な鎌倉時代前半の興聖寺本、および鎌倉後半から南北朝時代の東京国立博物館本(旧広島明王院本)についての調査は、尊像構成や技法の詳細などを明らかにする点で意義があった。後者についてはこれまで良質の画像がなく、あらたに4×5のフィルム撮影、および一眼レフによるデジタル撮影での画像をあわせて取得した。兜率天に住する弥勒菩薩に関連する諸作品についても海外所在分を含めて調査を行った。実施した主な調査地ならびに調査対象は下記の通りである。○調査地:京都国立博物館。調査対象:興聖寺蔵兜率天曼荼羅図、高山寺蔵鏡弥勒像、高山寺蔵伝弥勒菩薩像、京都国立博物館蔵弥勒菩薩像、以上いずれも鎌倉時代。○調査地:米国ボストン美術館。調査対象:米国ボストン美術館蔵弥勒菩薩像・弥勒如来三尊像・白描弥勒菩薩像・法相蔓荼羅図、以上いずれも鎌倉時代。○調査地:東京国立博物館。調査対象:東京国立博物館蔵兜率天曼荼羅図衝立、鎌倉南北朝時代。本年度は当研究テーマに関連する資料収集を称名寺金沢文庫・徳川美術館・サントリー美術館などで行い、また延命寺の画像を取得した。さらに日本の兜率天曼茶羅および弥勒信仰のルーツともいえる中国甘粛省の壁画・彫像の関連遺跡および遺品を調査した。敦煌莫高窟のみならず、周辺の文殊山石窟、金塔寺石窟など、河西回廊と呼ばれる地域にはとくに弥勒信仰関連の美術遺品が多く残され、その中に兜率天を描いた壁画の中でも重要な遺例が含まれていることを確認、調査した。主な海外調査地は下記の通り。敦煌莫高窟: 57窟156窟(弥勒経変を含む)158窟(弥勒経変を含む)220窟ほか敦煌西千仏洞楡林窟: 3窟25窟(弥勒経変を含む)文殊山石窟千仏洞・万仏洞(兜率天浄土図を含む)馬蹄寺石窟北三十三天窟金塔寺東西窟(弥勒菩薩像を含む)以上の河西回廊に散在する石窟群には弥勒信仰がとくに強調して現われており、唐時代に入って中国中央では下火になるのに対し、宋に至るまで継続的に造像がなされていることが認識できたことは大きな成果であった。本年度は当研究テーマの調査対象として、海外は中国南部の仏教遺跡、国内は重要遺品として滋賀県成菩提院の兜率天曼荼羅図(滋賀県立琵琶湖文化館寄託)を選んで調査を実施した。また、関連する資料収集を、奈良国立博物館・サントリー美術館・東京国立博物館などの研究施設で行った。海外の主な調査地は以下の通りで、現地調査には研究協力者も同行した。〔杭州〕霊隠寺、飛来峰石仏、雷峰塔、浙江省博物館、慈雲嶺資延寺、烟霞澗、六和塔、通玄観、上天竺寺・下天竺寺〔紹興〕柯岩弥勒仏、会稽山寺、禹廟〔寧波〕阿育王寺、延慶寺、天一閣〔普陀山〕紫竹林、潮音洞、普済寺〔台州〕開元寺跡、台州博物館、黄岩博物館、黄岩霊石寺塔中国の五代から宋時代にかけての弥勒信仰の状況は、河西回廊以外では詳細が不明であり、今回いくつかの遺品・遺跡の存在を確認することが出来た。中でも北宋時代の台州で清凉寺式釈迦如来像の胎内に納入された兜率天弥勒の図像について、版行地とみなされる現地調査を行うことが出来た点は、貴重な成果といえる。また当該の研究対象である中世の兜率天曼荼羅について、成菩提院本を調査撮影したが、その図像については国内での類例となる興聖寺本・延命寺本などとはまた別系統のものである。兜率天曼荼羅に関しては、西方極楽浄土図における当麻曼荼羅のような規範的な図様が形成されず、図極系統も各別であった点が確認できた。
KAKENHI-PROJECT-19320021
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兜率天往生の思想とかたち
兜率天往生思想をはぐくむ弥勒信仰のありかたが統一的でなかったことを意味すると推測され、この問題の解決が次の考察のステップを提供すると考えられる。22年度は当研究テーマの調査対象として、海外は朝鮮半島南部の仏教遺跡、国内は重要遺品として岐阜市誓願寺の兜率天曼茶羅図、および兵庫個人蔵の弥勒浄土図扉絵を選んで調査を実施した。関連する資料収集を、東京国立博物館などの研究施設で行った。海外の主な調査地は以下の通りで、現地調査には研究協力者も同行した。〔慶州〕断石山、仏国寺、石窟庵、慶州国立博物館、〔金泉市〕弥勒磨崖仏、〔公州〕開泰寺、灌燭寺、〔扶余〕扶余国立博物館、定林寺、〔その他〕瑞山磨崖仏、白華山磨崖仏朝鮮半島では、弥勒信仰が古代において盛んであったが、その多くは弥勒下生信仰で、この傾向は高麗時代に至るまであまり変化しない様相を観察することができた。ただ、高麗時代以降において下生の弥勒仏を表す際にも、兜率天からの降下を示唆する雲の表現があることは興味深い発見である。また当該の研究対象である日本中世の兜率天曼茶羅について、岐阜・誓願寺本ならびに兵庫・個人像本を調査撮影したが、その図像についてはそれぞれ各別であり、この画題でのバリエーションの豊かさを認識した。個人像本では赤外線デジタル・カメラ撮影を併用することによって、はじめて図様が確認できたことも成果である。以上、これまでの調査研究を踏まえて、総合的な分析を加えるとともに、研究分担者・研究協力者による論文集の作成にはいった。総論および、日本語による各論2編、欧文による各論1編が執筆されるとともに、日本中世の兜率天曼薬羅図を集成した資料図版編を組み立てるべく企画を進め、これを作成・刊行した。
KAKENHI-PROJECT-19320021
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大気レーダー・イメージング法を用いた水蒸気高度分布推定手法の高精度化と実用化
本研究課題は、研究代表者が世界をリードして開発を推進してきたウインドプロファイラを用いた水蒸気推定手法を発展させ高精度化を計ることを目的とし、その最も重要なファクターであるレーダー観測の鉛直分解能の向上を目指した研究を進めた。従来の鉛直分解能向上手法では、レーダー観測値の保存性が原理的に確保されないため、水蒸気の定量的観測には使用できない。そこで、レーダーのオーバーサンプルデータを用いて、データ同化手法の一つである1次元変分法を用いることでレーダー分解能を向上させる手法を開発した。またレーダーエコー生成メカニズム解明に向けて、高分解能気球観測とレーダー観測の同時実証観測を実施した。本研究では、極端気象の駆動源を解明することを目指し、ウインドプロファイラを用いた技術開発およびフィールド観測の研究を推進してきた。特に降水を伴う極端気象で重要な役割を果たす大気中の水蒸気に着目して、大気レーダーを用いてその稠密動態を解明すること目指した研究を行った。時間・空間的に偏在する水蒸気を精度良く測定するためには、研究代表者が世界に先駆けて開発した大気レーダーを用いた水蒸気推定法の観測分解能を向上させる必要がある。しかしながら、従来の分解能向上手法であるレーダー・イメージング法は、観測物理量の保存性が確保できないため、大気現象の定量的理解には適さないことを示した。このため、大気物理量が保存する特徴を持つ新たな手法開発に取り組んだ。具体的にはレーダーの観測高度範囲を一部重ねながら受信するオーバーサンプル法を活用し、高分解能データを復元する手法を提案した。観測データには誤差が含まれるため、誤差を定量的に考慮した上で最適解を導出できる最尤推定法を用いて高分解能データを再現するプログラムを作成した。実際に分解能を悪化させたオーバー・サンプル・データを作成し、本手法により分解能が改善することを確認できた。さらに、極端気象の観測的解明についての研究を進めた。特に解明が進んでいない突風現象に着目してそのレーダー観測を目指した現地調査と基礎データ取得を進めた。琵琶湖の西岸の比良山地から琵琶湖側に吹き下ろす比良おろしに着目し、本領域でのレーダー観測を目指して、突風域に地上観測網、気球観測、ドップラー・ライダーを整備し、キャンペーン観測を実施した。水平分解能50mの高精細な気象シミュレーションも併用することで比良おろしの生成を再現し、突風発生における琵琶湖の影響を評価した。本研究課題は、研究代表者が世界をリードして開発を推進してきたウインドプロファイラを用いた水蒸気推定手法を発展させ高精度化を計ることを目的とし、その最も重要なファクターであるレーダー観測の鉛直分解能の向上を目指した研究を進めた。従来の鉛直分解能向上手法では、レーダー観測値の保存性が原理的に確保されないため、水蒸気の定量的観測には使用できない。そこで、レーダーのオーバーサンプルデータを用いて、データ同化手法の一つである1次元変分法を用いることでレーダー分解能を向上させる手法を開発した。またレーダーエコー生成メカニズム解明に向けて、高分解能気球観測とレーダー観測の同時実証観測を実施した。本研究課題では、研究代表者が世界をリードして開発を推進してきたウインドプロファイラを用いた水蒸気推定手法を発展させ高精度化を計ることを目的している。特に現在まで未知数として残されていたレーダー探査領域内部の乱流充填率(F)を観測的に求めるため、最新のレーダー技術を適用した水蒸気高度分布を推定手法の開発を進めている。周波数領域のレーダーイメージング法を行うことでレーダー探査領域内部の乱流位置の同定を行うことが可能となった。滋賀県甲賀市信楽町にあるMUレーダーを用いて観測を行い、レーダーイメージングを実施することで、乱流存在の有無のコントラストを際立たせて、乱流が存在する位置を同定することに成功した。水蒸気推定を実施したところ、レーダーイメージングでは得られたエコー強度の保存性が悪いため、新たな鉛直分解能向上法が必要であことがわかった。このため、レーダーイメージングに代わる新しい手法をウインドプロファイラ観測に取り入れる手法開発に着手した。。レーダー探査領域を重ね合わせながら観測を行うオーバーサンプル手法を用いて、重なりの異なるデータを併用することで鉛直分解能を向上する手法の開発をすすめ、試験観測データを得ることに成功した。同時に高鉛直分解能ラジオゾンデとの同時観測も実施した。この初期解析結果は良好でありより高い分解能での水蒸気推定が可能になると考えられる。本研究課題では当初周波数領域のレーダーイメージング法を行うことでレーダー探査領域内部の乱流位置と強度を定量的に求めることで、水蒸気推定精度を向上させることを目的としていた。実際のレーダーイメージングでは得られたエコー強度が保存しないため、水蒸気推定には適しないことが判明したが、新たにオーバーサンプル手法を用いて鉛直分解能を向上する手法の開発をすすることで研究の進捗には遅れは発生していない。新手法により試験観測データを得ることに成功しただけでなく、同時に高鉛直分解能ラジオゾンデとの同時観測も実施できたためおおむね順調に達成していると考える。本課題で新たに提案するオーバーサンプルによるレーダー分解能向上手法では、従来レーダーイメージングが適用できなかった雨滴の高分解能分布にも適用が可能である。水蒸気は地球大気中では微量分子に過ぎないが、その相変化に伴う潜熱は、集中豪雨など時に災害をもたらす激しい気象現象を駆動する主要なエネルギー源である。本手法では水蒸気という降水現象のソースと結果となる降雨現象を同時に観測することが可能となる。
KAKENHI-PROJECT-24740321
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大気レーダー・イメージング法を用いた水蒸気高度分布推定手法の高精度化と実用化
こういう観点で当初の計画の想定を超える大きな可能性も見えてきており、梅雨期に集中的に観測を実施して、強い降水時の水蒸気と降水の同時観測を実施する。観測用消耗品に約70%、論文出版費に20%、その他10%の支出予定を計画している。
KAKENHI-PROJECT-24740321
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育成した重金属耐性植物の機能強化とそれによる重金属汚染土壌の浄化
1.MT合成遺伝子CUP1導入ケナフの作成とCd耐性能の評価:将来の輪作体系構築を考慮し、ケナフにもCUP1遺伝子を導入して重金属耐性能を評価した。遺伝子導入ケナフ再生個体23株を作成し、各株についてCd耐性能を水耕法で検討した結果、最も高いCd耐性能を示したT19株は、Cd200μMでも枯死せず、体内Cd含量が2,300mgKg^<-1>となった。この株を挿し木によって栄養繁殖させたクローンを多数増殖させ、その一部についてLeaf Disk法によってCd耐性能を検討した結果、やはりCd耐性が示された。2.重金属耐性能の強化に関する検討:Cysteineはそれ自体が重金属を無害化するとともに、MTの主要構成アミノ酸である。そこで、MT合成遺伝子を導入した植物に、Cysteine合成酵素であるo-Acetylserine (thiol) lyase (CSase)を合成する遺伝子CS3Fを導入して過剰発現させれば、重金属耐性能の強化が可能と考えた。そこで、まずケナフにCS3Fを導入してCysteine合成能の高い植物の作成を試みた。ケナフ138株にCS3Fを導入し22株を選抜し、さらにRT-PCRによる導入遺伝子発現量のCS21を選抜した。このCS21のCSase活性はWildの約10倍の酵素活性を示し、しかも恒常的に酵素活性が高いことが明らかとなった。3.2種類の重金属耐性遺伝子の過剰発現による植物の重金属耐性能の強化:前述のメタロチオネイン(MT)合成遺伝子CUP1を導入して重金属耐性能を強化したケナフに、MTを構成するCysteineの体内濃度を増加することによって、より一層重金属耐性能を強化することを試みた。まず、2で作成したCSase合成遺伝子導入ケナフに、CIP1遺伝子をLeaf Disk法で導入を試みた。現時点では、km選抜によってCUP1遺伝子導入株を選抜した。1.MT合成遺伝子CUP1導入ケナフの作成とCd耐性能の評価:将来の輪作体系構築を考慮し、ケナフにもCUP1遺伝子を導入して重金属耐性能を評価した。遺伝子導入ケナフ再生個体23株を作成し、各株についてCd耐性能を水耕法で検討した結果、最も高いCd耐性能を示したT19株は、Cd200μMでも枯死せず、体内Cd含量が2,300mgKg^<-1>となった。この株を挿し木によって栄養繁殖させたクローンを多数増殖させ、その一部についてLeaf Disk法によってCd耐性能を検討した結果、やはりCd耐性が示された。2.重金属耐性能の強化に関する検討:Cysteineはそれ自体が重金属を無害化するとともに、MTの主要構成アミノ酸である。そこで、MT合成遺伝子を導入した植物に、Cysteine合成酵素であるo-Acetylserine (thiol) lyase (CSase)を合成する遺伝子CS3Fを導入して過剰発現させれば、重金属耐性能の強化が可能と考えた。そこで、まずケナフにCS3Fを導入してCysteine合成能の高い植物の作成を試みた。ケナフ138株にCS3Fを導入し22株を選抜し、さらにRT-PCRによる導入遺伝子発現量のCS21を選抜した。このCS21のCSase活性はWildの約10倍の酵素活性を示し、しかも恒常的に酵素活性が高いことが明らかとなった。3.2種類の重金属耐性遺伝子の過剰発現による植物の重金属耐性能の強化:前述のメタロチオネイン(MT)合成遺伝子CUP1を導入して重金属耐性能を強化したケナフに、MTを構成するCysteineの体内濃度を増加することによって、より一層重金属耐性能を強化することを試みた。まず、2で作成したCSase合成遺伝子導入ケナフに、CIP1遺伝子をLeaf Disk法で導入を試みた。現時点では、km選抜によってCUP1遺伝子導入株を選抜した。1.Cd耐性能付与カラシナの土壌からのCd吸収能の評価:重金属耐性遺伝子として酵母由来のMetallothionein(MT)合成遺伝子CUP1を導入したカラシナ(Brassica juncea)をCd 11mgKg^<-1>(黒ボク土)および7mgKg^<-1>(砂質土)と、その10倍の濃度である110mgKg^<-1>(黒ボク土)と70mgKg^<-1>(砂質土)で栽培し、その生育とCd吸収を検討した。その結果、砂質土のCd高濃度区では非組換えカラシナには重金属誘導鉄欠乏クロロシスが発生したが、組換えカラシナは正常に生育した。組換えカラシナの葉中Cd含有率は、砂質土の低濃度区では80100mgKg^<-1>、高濃度区では500800mgKg^<-1>となった。一方、黒ボク土のCd低濃度区では5080mgKg^<-1>、高濃度区では80150mgKg^<-1>となり、これは非組換えカラシナの約23倍で、重金属耐性遺伝子の導入によって重金属を高濃度に含有しても生育可能になった。2.MT合成遺伝子CUP1導入ケナフの作成:作季が異なり根量が多い植物(Biomassも大きい)であるケナフにCUP1を導入してCd耐性ケナフの作成を試みた。その結果、28株の組換えケナフを作成した。
KAKENHI-PROJECT-14560055
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育成した重金属耐性植物の機能強化とそれによる重金属汚染土壌の浄化
その再生個体を水耕法でCd処理を行ったところ、Cd200μM処理しても枯死しなく体内Cd含有率が約2,300mgKg^<-1>(枯死した非組換えケナフは約190mgKg^<-1>)と著しくCd耐性株を得た。この株は現在、挿し木によってクローン苗の大量生産を行っている。3.重金属耐性能の強化に関する検討:Cysteineは、それ自体が重金属と結合能を有する他、前述したMTは、Cysteine含量の高いポリペプチドであることから、MT合成能を付与した植物に、o-Acetylserin(thiol)lyase(Cysteine合成酵素)の合成遺伝子を導入し、Cysteine合成能を過剰発現させることで重金属耐性能を強化することを試みた。o-Acetylserin(thiol)lyaseの合成遺伝子は、ホウレンソウの葉緑体からクローニングしたCF3SFを用いてBinary vector法でカラシナ70株およびケナフ138株に導入した。その結果、Km耐性でスクリーニングした株はカラシナ60株、ケナフ80株を得た。それらの選抜株から個体再生させたカラシナ9株とケナフ22株を得た。これらについて、導入遺伝子CS3FをPCRによって検出を試みている。1.Cd耐性能付与カラシナの次世代種子の採取:重金属耐性遺伝子として酵母由来のMetallothionein(MT)合成遺伝子CUP1を導入したカラシナ13系統を栽培して自殖種子を得た。この次世代種子を無菌発芽させた幼植物を栽培し、Leaf Disk法によってCd耐性能を評価した結果、4系統でCd耐性能が発揮された。次年度は、この種子をCd汚染土壌で栽培し、Phytoremediationへの利用への可能性を検討する。2.MT合成遺伝子CUP1導入ケナフの作成とCd耐性能の評価:将来の輪作体系構築を考慮し、前述のカラシナと作季が異なるケナフにもCUP1遺伝子を導入して重金属耐性能を評価した。遺伝子導入ケナフ再生個体23株を作成し、各株についてCd耐性能を水耕法で検討した結果、最も高いCd耐性能を示したT19株は、Cd200μMでも枯死せず、体内Cd含量が2,300mgKg^<-1>となった。この株を挿し木によって栄養繁殖させたクローンを多数増殖させ、その一部についてLeaf Disk法によってCd耐性能を検討した結果、やはりCd耐性能が示された。今後、この苗の増殖と、導入遺伝子の発現量の検討および将来の圃場試験に備えて実質同等性の検討を行う。3.重金属耐性能の強化に関する検討:Cysteineはそれ自体が重金属を無害化するとともに、MTの主要構成アミノ酸である。そこで、MT合成遺伝子を導入した植物に、Cysteine合成酵素であるo-Acetylserine(thiol)lyase(CSase)を合成する遺伝子CS3Fを導入して過剰発現させれば、重金属耐性能の強化が可能と考えた。そこで、まずケナフにCS3Fを導入してCysteine合成能の高い植物の作成を試みた。ケナフ138株にCS3Fを導入し22株を選抜し、さらにRT-PCRによる導入遺伝子発現量のCS21を選抜した。このCS21のCSase活性はWildの約10倍の酵素活性を示し、しかも恒常的に酵素活性が高いことが明らかとなった。今後、このCS21について、その重金属耐性を評価すると共に、この株にCUP1遺伝子の導入を行う予定である。1.MT合成遺伝子CUP1導入ケナフの作成とCd耐性能の評価:将来の輪作体系構築を考慮し、ケナフにもCUP1遺伝子を導入して重金属耐性能を評価した。
KAKENHI-PROJECT-14560055
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フロー反応を志向した8員環状エーテル化合物の環縮小反応の開発
フロー精密有機合成においてこれまでほとんど検討が行われてこなかった立体選択的炭素ー酸素結合生成反応の開発を行う。フロー精密有機合成においては、副生成物が生成することは、流路の閉鎖や生成物の単離が必要となるため望まれない。そこで副生成物が全く生成せず、天然物合成の骨格構築において多用されてきた転位反応を用いることにより炭素ー酸素結合を生成させることができると考えた。本研究においては、フロー反応系にてZ-オレフィンを有した8員環状エーテル化合物の6員環状エーテル化合物への立体選択的転位反応を行う。フロー精密有機合成においてこれまでほとんど検討が行われてこなかった立体選択的炭素ー酸素結合生成反応の開発を行う。フロー精密有機合成においては、副生成物が生成することは、流路の閉鎖や生成物の単離が必要となるため望まれない。そこで副生成物が全く生成せず、天然物合成の骨格構築において多用されてきた転位反応を用いることにより炭素ー酸素結合を生成させることができると考えた。本研究においては、フロー反応系にてZ-オレフィンを有した8員環状エーテル化合物の6員環状エーテル化合物への立体選択的転位反応を行う。
KAKENHI-PROJECT-19K05568
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競泳競技における高強度インターバルトレーニングの負荷特性の究明
よくトレーニングされた男子競泳選手8名を対象に、3次元モーションキャプチャーシステムおよび手部の圧力分布測定法を用いて、ストローク頻度の上昇に伴い泳者が発揮する推進力および推進効率の変化を分析した。泳試技は、20m全力泳の際のストローク頻度を基準(100%試技)とし、全力泳より低い70%、80%、90%ストローク頻度の試技と、全力泳より高い110%、120%ストローク頻度を実施した。ストローク頻度の調節には電子音メトロノームを使用した。本年度に実施した実験の結果、手部で発揮される1ストローク中の平均推進力は、70%から100%試技まで上昇するが、100%以上の試技においては手部速度が上昇しているのにも関わらず1ストローク中の平均推進力は増加しないことが観察された。この低下は、ストローク後半のプッシュ局面で発揮される推進力の低下が関与していることが明らかとなった。一方で、1ストローク中に発揮した総推進力は、70%試技から100%試技において変化は認められず、110%および120%試技において低下していくことが観察された。また、手部で発揮された総流体力に対する推進力の割合であるフルード効率は、全ての条件間で有意な差は認められず、ストローク頻度を上昇させても推進効率は変化しないことが明らかとなった。これらの結果から、1ストローク中により多くの推進力を発揮することを目指す際は低強度で泳ぐ必要があることが示唆された。しかしながら、ストローク頻度を超最大まで増加させた高強度領域で泳いだ際の泳効率が低下することはないことが示唆された。初年度において泳速度の上昇に伴う泳動作の変化を分析し、本年度において推進力発揮の変化を明らかにした。2年間の研究結果より競泳競技における高強度インターバルトレーニングを実施する際に考慮すべきバイオメカニクス的特徴を明らかとすることに成功しており、本研究課題の目的の達成に向けて当初計画通り順調に進展していると言える。また、泳速度上昇に伴う筋活動解析の予備実験も重ね、次年度において本実験を行う準備が整っている。ただし、代謝応答の測定に関しては、使用する機材を変更したことにより、次年度において測定手順を再確認する必要がある。今後は、クロール泳を対象に泳速度の上昇に伴う上肢筋活動の変化について分析する。特に、動員される各筋の協調性の変化に着目し、次年度の春より本実験を開始する。代謝応答の分析に関しては、新しく導入した水泳用呼気ガス分析器の使用法および測定手順を再度確認し、次年度の秋以降に実験を行えるように準備を進める。本年度までに収集したバイオメカニクス的知見に上記の運動生理学的情報を加え、競泳競技における高強度インターバルトレーニングの特性について更なる解明を進める。平成29年度においては、運動強度(泳速度)の上昇にともなう泳動作の変容を、3次元モーションキャプチャーシステムを用いて分析した。よくトレーニングされた一流女子競泳選手8名が、回流水槽において100m自由形の自己記録の80%、85%、90%、95%の泳速度で10秒間泳いだ。各泳速試技における3ストロークの動作情報から、ストローク頻度とストローク長、肩・腰のローリング角度、各ストローク局面(グライド局面、プル局面、プッシュ局面、リカバリー局面)の所要時間を分析した。その結果、ストローク頻度の変化において、試技速度の有意な主効果が見られた。しかし、試技速度が変化しても(すなわちストローク頻度が増加しても)ストローク長に有意な変化は認められなかった。これは、ストローク頻度の増加に伴い、2名の対象者のストローク長が増加していたことが影響したと考えられる。このことから、女子選手においては高い泳速度の獲得には、ストローク頻度のみならずストローク長の増加にも着目する必要があることが示唆された。先行研究では男子選手におけるストローク頻度と肩・腰のローリング角度の関係が示されているが、女子選手を対象とした本研究においては、試技速度の変化に伴いストローク頻度は変化したものの肩のローリング角度においては有意な変化が認められず、腰のローリング角度のみに試技速度の有意な主効果が観察された。この結果から、女子選手は男子選手より体幹の捻りを利用してストロークを行う必要性が高いことが示唆された。ストローク頻度を増加させる際、各ストローク局面の所要時間は男子選手同様に、非推進局面であるグライド局面が有意に減少し、推進局面であるプル局面が有意に増加していた。これらの結果から、高い強度で泳ぐ際に、一流女子競泳選手は特有の泳技術を発揮している可能性が示唆された。平成29年度は、当初平成30年度に実計画していた運動強度の変化に伴う泳動作の変化について分析を行い、3次元モーションキャプチャーシステムを用いてクロール泳の解析を行った。また、クロール泳中の手部における圧力分布を測定する予備実験を同時に進めており、平成30年度には、泳動作と実際に発揮された流体力との関係を分析する準備が整っている。さらに、運動強度の上昇に伴う代謝応答の解析についての予備実験も完了しており、平成29年度に計画していた研究を、平成30年度より開始する準備も整っている。よくトレーニングされた男子競泳選手8名を対象に、3次元モーションキャプチャーシステムおよび手部の圧力分布測定法を用いて、ストローク頻度の上昇に伴い泳者が発揮する推進力および推進効率の変化を分析した。
KAKENHI-PROJECT-17K01714
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01714
競泳競技における高強度インターバルトレーニングの負荷特性の究明
泳試技は、20m全力泳の際のストローク頻度を基準(100%試技)とし、全力泳より低い70%、80%、90%ストローク頻度の試技と、全力泳より高い110%、120%ストローク頻度を実施した。ストローク頻度の調節には電子音メトロノームを使用した。本年度に実施した実験の結果、手部で発揮される1ストローク中の平均推進力は、70%から100%試技まで上昇するが、100%以上の試技においては手部速度が上昇しているのにも関わらず1ストローク中の平均推進力は増加しないことが観察された。この低下は、ストローク後半のプッシュ局面で発揮される推進力の低下が関与していることが明らかとなった。一方で、1ストローク中に発揮した総推進力は、70%試技から100%試技において変化は認められず、110%および120%試技において低下していくことが観察された。また、手部で発揮された総流体力に対する推進力の割合であるフルード効率は、全ての条件間で有意な差は認められず、ストローク頻度を上昇させても推進効率は変化しないことが明らかとなった。これらの結果から、1ストローク中により多くの推進力を発揮することを目指す際は低強度で泳ぐ必要があることが示唆された。しかしながら、ストローク頻度を超最大まで増加させた高強度領域で泳いだ際の泳効率が低下することはないことが示唆された。初年度において泳速度の上昇に伴う泳動作の変化を分析し、本年度において推進力発揮の変化を明らかにした。2年間の研究結果より競泳競技における高強度インターバルトレーニングを実施する際に考慮すべきバイオメカニクス的特徴を明らかとすることに成功しており、本研究課題の目的の達成に向けて当初計画通り順調に進展していると言える。また、泳速度上昇に伴う筋活動解析の予備実験も重ね、次年度において本実験を行う準備が整っている。ただし、代謝応答の測定に関しては、使用する機材を変更したことにより、次年度において測定手順を再確認する必要がある。平成29年度に行った予備実験をもとに、3次元モーションキャプチャーシステムと手部の圧力分布測定を同時に測定し、運動強度の上昇と泳技能の変化について詳細に分析を進める。また、高強度運動中の代謝応答の測定を実施し、高強度トレーニングの生理学的特性についての分析を進める。高強度運動中の筋電図解析については、平成30年度より実験準備を開始することとする。今後は、クロール泳を対象に泳速度の上昇に伴う上肢筋活動の変化について分析する。特に、動員される各筋の協調性の変化に着目し、次年度の春より本実験を開始する。代謝応答の分析に関しては、新しく導入した水泳用呼気ガス分析器の使用法および測定手順を再度確認し、次年度の秋以降に実験を行えるように準備を進める。本年度までに収集したバイオメカニクス的知見に上記の運動生理学的情報を加え、競泳競技における高強度インターバルトレーニングの特性について更なる解明を進める。共同研究者の山川啓介氏が担当する筋電図解析についての実験を平成30年度から主に開始することになったため、山川氏への分担金を次年度で使用することとなった。筋電図解析および代謝応答の分析データ解析を次年度に実施することにしたため、共同研究者との打ち合わせおよびデータ解析にかかる費用を次年度に使用することとなった。
KAKENHI-PROJECT-17K01714
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01714