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遺伝子発現特性に基づくカンキツ自家不和合性遺伝子の単離 | これまでに抗菌性に関与する遺伝子やエネルギー生産、代謝に関わる遺伝子が多く単離され、生殖に関与する最も保護すべき器官であるとともに急激な成長を示す器官の特徴であることがうかがえた。現在、得られた候補遺伝子について、組織特異性などの自家不和合性遺伝子の特徴や、既知の自家不和合性遺伝子型との対応などの実験も開始しており、遺伝子の単離を実現する足がかりを得た段階にある。カンキツの蕾の発育に伴って発現量が増大する遺伝子ライブラリーを作成し、222個の発現量が高まるクローンを得ることができた。また、データベース検索および組織特異性調査のための発現解析によって、1つの花柱特異的発現遺伝子を得ることができた。この遺伝子産物の機能は、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼと推定され、これまでの成果と併せて考えると、CuやZnを介した自家不和合性のメカニズムの存在が示唆された。まだ自家不和合性遺伝子本体の単離にはいたっていないが、自家不和合性反応に関わる可能性がある遺伝子の単離に至った点は評価できるものと考えられる。平成23年度には、カンキツの蕾の発育に伴って発現量が増大する遺伝子ライブラリーを作成した。すなわち、開花直前の花柱で発現している遺伝子から開花56日前の花柱で発現している遺伝子をサブトラクション(引き算)し、開花直前に発現量が高まる遺伝子だけを回収した。現在、このcDNAライブラリーの塩基配列の網羅的解析を進めており、DNAデータベース(EST等)の検索によって機能推定・発現組織の推定を行いS遺伝子候補になり得るかどうかのフィルタリングを行っている。既に、RT-PCRによる組織特異性の確認や遺伝子型に対応しているかどうかによるフィルタリングも開始している。ただし、最終的に目標が達成できたかどうかについては、遺伝子の単離に成功したかどうかにかかわってくるので、現時点では、成功かどうかは判断できないが、研究の進捗状況としては予定どおりと言える。本課題の最終年度にあたる本年度は、まずサブトラクションスクリーニングによって得られたcitT209について、品種間の多型の調査を行い、自家不和合性遺伝子の可能性について検討する。また、自家不和合性へのCu, Znの関与が示唆されたことから、蕾への硫酸銅処理が、ciT209の発現に及ぼす影響を調査する。さらに、citT209の遺伝子産物について確立したアッセイ系を用いることによって、花粉管伸長に及ぼす影響を調査する。今度は、平成23年度の解析を継続するとともに、これまでに得られている候補遺伝子について、組織特異性や既知のS遺伝子を持つ品種間での多型を確認する。S遺伝子の発現は花柱特異的であることが知られており、候補遺伝子について、特異的なプライマーを設計し、花柱、花弁、花糸、がく、葯、子房、葉の各器官での発現をRT-PCRで確認し、花柱でのみで発現する遺伝子をスクリーニングする。また、これまでに、クレメンティンマンダリンに類縁の品種のS遺伝子型を推定しており、組織特性によってスクリーニングされた候補遺伝子について、これらの品種間の多型を調べ、S遺伝子型との一致を確認する。一方、現在、遺伝子の機能解析のためのアッセイ系の検討を行っており、遺伝子を単離した後の同定に繋げる予定である。次年度の研究費は、遺伝子発現解析用試薬類、学会発表等の旅費としての使用を予定している。次年度の研究費は、遺伝子発現解析用試薬類、学会発表等の旅費としての使用を予定している。 | KAKENHI-PROJECT-23658033 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23658033 |
タバコ病害抵抗性誘導機構を活性化するキノコ揮発性物質の探索とその作用機構 | きのこから放出される揮発性物質が植物病害抵抗性の誘導活性を示すかについてこれまで全く明らかにされていない。そのため、本研究では多種多様なきのこ由来揮発性物質の中から植物病害抵抗性誘導活性を示す物質を明らかにすることを目的に行った。昨年度、9属37種50菌株のきのこ菌株を液体培地で培養し、培地中に放出される揮発性物質を2種類の組み換えタバコ植物(抵抗性遺伝子PR1aおよびPI-IIプロモーターとGUSレポーター遺伝子との融合遺伝子をそれぞれ導入したタバコ植物)に処理することにより評価した。その結果、PR1a導入タバコに対して誘導活性を示したきのこ抽出液は4種類、PI-II導入タバコに対して誘導活性を示したきのこ抽出液は3種類であった。また、これまでの研究において植物病原菌に対して抗菌活性を持つきのこ由来揮発性物質イソベレラロールおよび1-phenyl-3-pentanoneが病害抵抗性の誘導活性を示すかについても同様の方法で調べた結果、両物質とも顕著な誘導活性は認められなかった。きのこ由来揮発性物質を新たな植物抵抗性誘導剤として利用するには、安全性が重視されることが予想されるため、食用きのこが放出する揮発性物質に着目して研究を進めた。抵抗性誘導活性を示したきのこ7種類のうち3種類が食用きのこであった。これら3種のきのこが放出する揮発性物質の抗菌活性について調べた結果、キャベツ黒すす病菌の胞子発芽を顕著に抑制することが明らかとなった。現在、抵抗性誘導活性が認められた食用きのこ3種類において大量の液体培地で培養し、得られた培養ろ液を有機溶媒抽出し、シリカゲルクロマトグラフィーによる分画を行うことで抵抗性誘導物質の単離を試みている。きのこ廃菌床抽出液がイネの防御反応を誘導することが明らかとなり、きのこ廃菌床由来揮発性物質による抵抗性誘導活性についての検討も行った。当初の計画通り、抵抗性誘導活性の認められたきのこの培養ろ液の作製および抽出を行うことができ、おおむね計画通りに実施できている。今後、抵抗性誘導活性物質の単離および同定に繋げていくことができると考えている。選抜した食用きのこ3種の粗揮発性物質をタバコ野生型に処理し、抵抗性関連遺伝子の発現をリアルタイムPCRで解析することにより、抵抗性誘導経路の解析を行っていく予定である。また、今年度も引き続き、選抜食用きのこ培養ろ液からの抵抗性誘導物質の単離および同定を行っていく。キノコ由来揮発性物質を用いた新たな植物病害防除技術の確立を目指し、まず多種多様なキノコ由来の揮発性物質の中から植物に抵抗性を誘導し発病を抑制する物質の探索を行った。これまでの研究において様々な植物病原菌に対して抗菌活性を示すことが明らかとなっている3種類のキノコ由来揮発性物質を密閉容器内で生育させたキャベツ苗に暴露処理し、キャベツ黒すす病菌(Alternaria brassicicola)に対する病害抑制効果について調べた。揮発性物質処理1日後に処理植物を容器から出し、黒すす病菌を噴霧接種し発病程度を評価した結果、3種とも発病を抑制しなかった。次に8種類のキノコ子実体からの有機溶媒による粗抽出液における抵抗性誘導活性を同上の方法で調べたが、顕著な発病抑制を示すキノコ由来抽出物を見出すことができなかった。キャベツー黒すす病菌の組み合わせで抵抗性誘導活性をもつキノコ由来揮発性物質の選抜を試みたが、有効な活性を示す物質を見出すことができなかったため、今後は病害抵抗性に関する研究によく用いられているトマトを用いて選抜を行う計画である。トマト植物体にキノコ由来の揮発性物質およびキノコ子実体からの粗抽出物をそれぞれ暴露処理12日後にトマト灰色かび病菌(Botrytis cinerea)を接種して発病抑制効果を調べることにより、抵抗性誘導活性を評価する。活性の見られた物質を用いてタバコ植物における抵抗性誘導経路の解析を行う予定である。平成28年度8月より産休および育休を取得したために当初の計画通りに研究を行うことができなかったため。きのこ由来揮発性物質を用いた新たな植物病害防除技術の確立を目指し、多種多様なきのこ由来揮発性物質の中から組み換えタバコ植物を用いて植物病害抵抗性誘導活性を示す物質の選抜を行った.まず,9属37種50菌株のきのこ菌株の培養ろ液から有機溶媒抽出法によって粗揮発性物質を抽出した.次に2種類の組み換えタバコ植物(抵抗性遺伝子PR1a, PI-IIプロモーターとGUSレポーター遺伝子との融合遺伝子をそれぞれ導入したタバコ植物)の切り取り葉に粗揮発性物質を処理し,視覚的に抵抗性遺伝子が発現しているかどうかを評価し,抵抗性誘導活性を持つ物質の選抜を行った.その結果,50種類のきのこ由来粗揮発性物質中で8種の粗揮発性物質が対照区と比較して顕著な抵抗性誘導活性が認められた.8種中の2種がPI-II導入タバコ植物に対して誘導活性が示され,ジャスモン酸・エチレン系抵抗性経路を活性化する物質であることが示唆された.一方,残りの6種はPR1a導入タバコ植物に対して誘導活性が示され,サリチル酸系抵抗性経路を活性化する物質と考えられた.なお,両方の組み換えタバコを活性化する物質は見出せなかった.また,昨年度に引き続き,これまでの研究において植物病原菌に対して抗菌活性を示すブナハリタケ由来揮発性物質1-phenyl-3-pentanoneにおける抵抗性誘導活性を検討した.トマトに本物質1000ppmを暴露処理2日後に,トマト灰色かび | KAKENHI-PROJECT-16K18657 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18657 |
タバコ病害抵抗性誘導機構を活性化するキノコ揮発性物質の探索とその作用機構 | 病菌(Botrytis cinerea)を接種し発病抑制効果を調べた結果,無処理区と比較して発病抑制は認められなかった.そのため,本物質は植物病害抵抗性誘導活性を持っていないことが明らかとなった.さらに,シイタケおよびブナシメジの廃菌床から放出される揮発性物質処理によってキャベツに抵抗性誘導活性が認められ,この研究成果の一部を日本きのこ学会誌に論文発表した.平成29年9月より産休および育休から復職したため,平成29年度の計画を7カ月で実施した.おおむね計画通りに実施することができ,さらに平成30年度の計画の一部も実施することができた.当初はきのこ揮発性物質20種を目標にしていたが,大幅に上回る50種のきのこ揮発性物質より抵抗性誘導活性を有する物質の探索を行うことができた.その結果,抵抗性誘導活性を有する候補物質8種を選抜することができた.きのこから放出される揮発性物質が植物病害抵抗性の誘導活性を示すかについてこれまで全く明らかにされていない。そのため、本研究では多種多様なきのこ由来揮発性物質の中から植物病害抵抗性誘導活性を示す物質を明らかにすることを目的に行った。昨年度、9属37種50菌株のきのこ菌株を液体培地で培養し、培地中に放出される揮発性物質を2種類の組み換えタバコ植物(抵抗性遺伝子PR1aおよびPI-IIプロモーターとGUSレポーター遺伝子との融合遺伝子をそれぞれ導入したタバコ植物)に処理することにより評価した。その結果、PR1a導入タバコに対して誘導活性を示したきのこ抽出液は4種類、PI-II導入タバコに対して誘導活性を示したきのこ抽出液は3種類であった。また、これまでの研究において植物病原菌に対して抗菌活性を持つきのこ由来揮発性物質イソベレラロールおよび1-phenyl-3-pentanoneが病害抵抗性の誘導活性を示すかについても同様の方法で調べた結果、両物質とも顕著な誘導活性は認められなかった。きのこ由来揮発性物質を新たな植物抵抗性誘導剤として利用するには、安全性が重視されることが予想されるため、食用きのこが放出する揮発性物質に着目して研究を進めた。抵抗性誘導活性を示したきのこ7種類のうち3種類が食用きのこであった。これら3種のきのこが放出する揮発性物質の抗菌活性について調べた結果、キャベツ黒すす病菌の胞子発芽を顕著に抑制することが明らかとなった。現在、抵抗性誘導活性が認められた食用きのこ3種類において大量の液体培地で培養し、得られた培養ろ液を有機溶媒抽出し、シリカゲルクロマトグラフィーによる分画を行うことで抵抗性誘導物質の単離を試みている。きのこ廃菌床抽出液がイネの防御反応を誘導することが明らかとなり、きのこ廃菌床由来揮発性物質による抵抗性誘導活性についての検討も行った。当初の計画通り、抵抗性誘導活性の認められたきのこの培養ろ液の作製および抽出を行うことができ、おおむね計画通りに実施できている。今後、抵抗性誘導活性物質の単離および同定に繋げていくことができると考えている。育休を平成29年8月まで取得するため、期間延長および研究計画の変更をすでに申請している。復職後は速やかに計画に沿って、研究を推進していく。 | KAKENHI-PROJECT-16K18657 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K18657 |
日韓独禁法の比較研究 -フランチャイズ契約における優越的地位の濫用の適用と限界- | 日本の独占禁止法には優越的地位の濫用の条項があるが、これまでフランチャイズ・システムにおける紛争では必ずしも十分に使われてこなかった。そのため、日本より頻繁にフランチャイズ・システムが利用されていて、且つ、同紛争に関して日本より積極的に優越的地位の濫用の条項が利用されている韓国独禁法との比較研究によって、同条項の適用の拡大とその限界を明確にし、日本におけるフランチャイズ・システムのもとでの本部と加盟者間の紛争をより迅速且つ合理的に解決するための法的枠組みを模索・提案することを目的とする。これにより、実際は力の差がある本部と加盟者間の実情に沿った、合理的な紛争解決が可能となる。日本の独占禁止法には優越的地位の濫用の条項があるが、これまでフランチャイズ・システムにおける紛争では必ずしも十分に使われてこなかった。そのため、日本より頻繁にフランチャイズ・システムが利用されていて、且つ、同紛争に関して日本より積極的に優越的地位の濫用の条項が利用されている韓国独禁法との比較研究によって、同条項の適用の拡大とその限界を明確にし、日本におけるフランチャイズ・システムのもとでの本部と加盟者間の紛争をより迅速且つ合理的に解決するための法的枠組みを模索・提案することを目的とする。これにより、実際は力の差がある本部と加盟者間の実情に沿った、合理的な紛争解決が可能となる。 | KAKENHI-PROJECT-19K01331 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K01331 |
ウミヘビ類の視覚における海中環境への適応機構の解明 | 海棲適応を果たした有羊膜類の中でもコブラ科のヘビは,陸棲種と陸に上がる両棲ウミヘビと陸に上がらない完全な海棲ウミヘビの三様な生態が近縁種である唯一の特徴を持ち,海棲適応の研究のモデルとして近年注目を集めている。採用者らのこれまでの研究で視覚に関わるオプシン遺伝子のアミノ酸配列を三様の生態間で比較し,両棲ウミヘビのLWS遺伝子と海棲ウミヘビのRH1遺伝子が陸棲種に比べて異なる視覚の適応をしていることを予測した。本研究ではこれらのオプシンからなるウミヘビの視覚が見る光の測定と生息域の光環境の計測を行い,ウミヘビ類の視覚における海棲適応の解明を目的としている。視覚の機能を調べるためウミヘビの視物質を再構成し,吸収波長の測定を行った。RH1オプシン視物質の吸収波長計測では,陸棲種に比べ海棲種のRH1の吸収波長で実際に10nm程の長波長シフトが起きていることを確認した。LWSオプシン視物質の吸収波長計測については海棲種と両棲種一個体分ずつのデータが得られており,それらのデータからもアミノ酸置換から予測された両棲種の短波長シフトが起きていることを確認した。これらの結果は日本進化学会第20回大会とSociety for Molecular Biology and Evolution 2018で発表し,日本進化学会大会での発表における学生口頭発表最優秀賞の受賞や様々なメディアへの掲載など学術的な評価を受けた。年度末には所属大学で開催した国際ワークショップにゲストとして生物の視覚の研究を目的に光環境の計測用のソフトウェアの開発や光環境の計測のための水中撮影を行っている研究グループを招待し,彼らの開発した先進的なソフトの使い方や撮影の仕方を学んだ。来年度に実践する予定の環境光の計測はこれらの手法を用いる予定である。再構成した視物質の吸収波長の測定は時間のかかる実験系で長期にわたる研究が必要となる。その上でもRH1は十分なデータが得られており, RH1に比べて精製の難しいLWSでも測定に成功している。これらの研究内容は進化学分野の学会で国内学会と国際学会の2回の研究発表を行っており,残るは環境光の計測をする段階となっているため,研究は順調に進展していると評価した。引き続き,残りの再構成したLWS視物質の吸収波長の測定を行う。また視覚機能と生態の情報,生息域の光環境の情報を合わせ議論するため,来年度は環境光の計測を行う予定である。生息域の光環境の計測も終わらせ次第,これらの結果を論文にまとめて学術雑誌に投稿する予定である。海棲適応を果たした有羊膜類の中でもコブラ科のヘビは,陸棲種と陸に上がる両棲ウミヘビと陸に上がらない完全な海棲ウミヘビの三様な生態が近縁種である唯一の特徴を持ち,海棲適応の研究のモデルとして近年注目を集めている。採用者らのこれまでの研究で視覚に関わるオプシン遺伝子のアミノ酸配列を三様の生態間で比較し,両棲ウミヘビのLWS遺伝子と海棲ウミヘビのRH1遺伝子が陸棲種に比べて異なる視覚の適応をしていることを予測した。本研究ではこれらのオプシンからなるウミヘビの視覚が見る光の測定と生息域の光環境の計測を行い,ウミヘビ類の視覚における海棲適応の解明を目的としている。視覚の機能を調べるためウミヘビの視物質を再構成し,吸収波長の測定を行った。RH1オプシン視物質の吸収波長計測では,陸棲種に比べ海棲種のRH1の吸収波長で実際に10nm程の長波長シフトが起きていることを確認した。LWSオプシン視物質の吸収波長計測については海棲種と両棲種一個体分ずつのデータが得られており,それらのデータからもアミノ酸置換から予測された両棲種の短波長シフトが起きていることを確認した。これらの結果は日本進化学会第20回大会とSociety for Molecular Biology and Evolution 2018で発表し,日本進化学会大会での発表における学生口頭発表最優秀賞の受賞や様々なメディアへの掲載など学術的な評価を受けた。年度末には所属大学で開催した国際ワークショップにゲストとして生物の視覚の研究を目的に光環境の計測用のソフトウェアの開発や光環境の計測のための水中撮影を行っている研究グループを招待し,彼らの開発した先進的なソフトの使い方や撮影の仕方を学んだ。来年度に実践する予定の環境光の計測はこれらの手法を用いる予定である。再構成した視物質の吸収波長の測定は時間のかかる実験系で長期にわたる研究が必要となる。その上でもRH1は十分なデータが得られており, RH1に比べて精製の難しいLWSでも測定に成功している。これらの研究内容は進化学分野の学会で国内学会と国際学会の2回の研究発表を行っており,残るは環境光の計測をする段階となっているため,研究は順調に進展していると評価した。引き続き,残りの再構成したLWS視物質の吸収波長の測定を行う。また視覚機能と生態の情報,生息域の光環境の情報を合わせ議論するため,来年度は環境光の計測を行う予定である。生息域の光環境の計測も終わらせ次第,これらの結果を論文にまとめて学術雑誌に投稿する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18J15154 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J15154 |
抗癌剤の選択的治療効果に及ぼす内分泌環境の意義 | 担癌生体側の検討のうち、特に、その内分泌環境からの抗癌剤効果の検討をすすめ、癌化学療法の大成を招来するため、斉藤は、固形がん患者の【PGE_2】産生能がIL-1産生能など免疫応答関与物質と関連していることを明らかにし、これらからみたglucocorticoidの化学療法への関与を検討し、上條は、抗癌剤の短期、長期投与の視床下部下垂体機能異常及び甲状腺機能に与える影響を検討し、殊にTRH-OGTTによる癌患者でGHの上昇反応(奇異反応)は、腫瘍に関連する特異のものであることを明らかにした。涌井は、特に、MTX及びVCRとプロゲステロンの併用効果は相乗的で、著しい抗腫瘍効果を得た。長瀬は、正常ラット及びstrainの異るラット、癌において、CS投与時TSH及び【T_3】の低下が同様の傾向として認められることを述べた。安達は、Aromatase抑制剤、Aminoglutethimideの進行乳癌患者における治療効果を生体内ホルモンの変動、児玉は、エールリッヒ腹水癌に対する種々のステロイドホルモンと抗癌剤を組み合わせたChemo-endocrine therapyの条件の検討、松本は、シオノギ癌モデルでは、補助化学療法の併用が最も有効と認めた。螺良は、Cyclophosphamideとの併用による抗腫瘍効果について、【T_3】との併用が肺転移抑制を認めることを述べた。これらの結果は、さらに、各内分泌臓器と制癌剤効果の間に、それぞれ、検討すべき種々の微細な関連性を有することを示した。担癌生体側の検討のうち、特に、その内分泌環境からの抗癌剤効果の検討をすすめ、癌化学療法の大成を招来するため、斉藤は、固形がん患者の【PGE_2】産生能がIL-1産生能など免疫応答関与物質と関連していることを明らかにし、これらからみたglucocorticoidの化学療法への関与を検討し、上條は、抗癌剤の短期、長期投与の視床下部下垂体機能異常及び甲状腺機能に与える影響を検討し、殊にTRH-OGTTによる癌患者でGHの上昇反応(奇異反応)は、腫瘍に関連する特異のものであることを明らかにした。涌井は、特に、MTX及びVCRとプロゲステロンの併用効果は相乗的で、著しい抗腫瘍効果を得た。長瀬は、正常ラット及びstrainの異るラット、癌において、CS投与時TSH及び【T_3】の低下が同様の傾向として認められることを述べた。安達は、Aromatase抑制剤、Aminoglutethimideの進行乳癌患者における治療効果を生体内ホルモンの変動、児玉は、エールリッヒ腹水癌に対する種々のステロイドホルモンと抗癌剤を組み合わせたChemo-endocrine therapyの条件の検討、松本は、シオノギ癌モデルでは、補助化学療法の併用が最も有効と認めた。螺良は、Cyclophosphamideとの併用による抗腫瘍効果について、【T_3】との併用が肺転移抑制を認めることを述べた。これらの結果は、さらに、各内分泌臓器と制癌剤効果の間に、それぞれ、検討すべき種々の微細な関連性を有することを示した。 | KAKENHI-PROJECT-61010082 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61010082 |
コンソーシアムによる単一遺伝子病の連鎖解析と疾患遺伝子同定 | 本研究は、遺伝病を数多く診る各臨床領域とのコンソーシアム形成により組織的に単一疾患遺伝子家系を集積し、連鎖解析法で原因遺伝子の局在を明らかにし、次い疾患遺伝子の単離・同定を行うことを目的とした。研究期間内に以下の計14種の未知遺伝病(遺伝形質を含む)家系の連鎖解析、および8種の遺伝病(遺伝形質)の原因遺伝子の変異を同定した。(1)色素性網膜炎:日本人3家系とタイ2家系の連鎖解析で疾患座をマップ後、変異解析によりRPGRおよびNDPの変異を同定した。(2)Engelmann病:連鎖解析および変異解析で、TGFB1座と一致しない2家系の臨床的解析から、新規の疾患(2型Engelmann病)であることを報告した。(3)家族性低音障害型難聴:1家系の連鎖・ハプロタイプ解析で疾患座をマップし、変異を同定した。(4)Van der Woude症候群:2家系の疾患座を1q32-q41にマップし、各々IRF6遺伝子中に変異を同定した。(5)無嗅覚症:イラン人2家系を発見し、新規の疾患単位として確立し、連鎖解析とハプロタイプ解析の結果、無嗅覚症座をD18S452とD18S475間にマップした。(6)家族性心房中隔欠損症:1家系の連鎖解析で8p23-p22にマップし、GATA4の変異解析で1塩基欠失を認めた。(7)遅発性痙性麻痺:1大家系の連鎖解析で候補領域を2p23にマップし、SPG4内の大きな欠失を同定した。(8)手掌多汗症:11家族の連鎖解析を行い本症の1つの座が14q11.2に局在することが明らかとなった。(9)表皮水疱症:家系の連鎖解析と変異解析の結果、COL17A1変異を同定した。(10)耳垢型:家系の連鎖解析で、16p11.2-q12.1にマップし、次いで関連解析によりABCC11多型が耳垢型決定因子であることを明らかにした。(11)家族性血小板減少症:1家系における連鎖解析の結果、D17S950と017S1607の間にマップした。(12)家族性側索硬化症:家族性ALSの1家系の連鎖解析で、1pまたは17q領域にマップした。(13-14)家族性下顎前突症と家族性眼瞼下垂症では遺伝的異質性が明らかで、連鎖解析でも疾患座は未確定である。その他、(15)発作性運動誘発性コレオアテトーシス:16番染色体着糸点付近の候補遺伝子113個の変異解析を行ったが、変異は未同定である。(16)Sotos症候群:NSD1について、患者の新生変異の親起源を追及した結果、大多数が父の精子形成期に発生したことが分かった。本研究は、遺伝病を数多く診る各臨床領域とのコンソーシアム形成により組織的に単一疾患遺伝子家系を集積し、連鎖解析法で原因遺伝子の局在を明らかにし、次い疾患遺伝子の単離・同定を行うことを目的とした。研究期間内に以下の計14種の未知遺伝病(遺伝形質を含む)家系の連鎖解析、および8種の遺伝病(遺伝形質)の原因遺伝子の変異を同定した。(1)色素性網膜炎:日本人3家系とタイ2家系の連鎖解析で疾患座をマップ後、変異解析によりRPGRおよびNDPの変異を同定した。(2)Engelmann病:連鎖解析および変異解析で、TGFB1座と一致しない2家系の臨床的解析から、新規の疾患(2型Engelmann病)であることを報告した。(3)家族性低音障害型難聴:1家系の連鎖・ハプロタイプ解析で疾患座をマップし、変異を同定した。(4)Van der Woude症候群:2家系の疾患座を1q32-q41にマップし、各々IRF6遺伝子中に変異を同定した。(5)無嗅覚症:イラン人2家系を発見し、新規の疾患単位として確立し、連鎖解析とハプロタイプ解析の結果、無嗅覚症座をD18S452とD18S475間にマップした。(6)家族性心房中隔欠損症:1家系の連鎖解析で8p23-p22にマップし、GATA4の変異解析で1塩基欠失を認めた。(7)遅発性痙性麻痺:1大家系の連鎖解析で候補領域を2p23にマップし、SPG4内の大きな欠失を同定した。(8)手掌多汗症:11家族の連鎖解析を行い本症の1つの座が14q11.2に局在することが明らかとなった。(9)表皮水疱症:家系の連鎖解析と変異解析の結果、COL17A1変異を同定した。(10)耳垢型:家系の連鎖解析で、16p11.2-q12.1にマップし、次いで関連解析によりABCC11多型が耳垢型決定因子であることを明らかにした。(11)家族性血小板減少症:1家系における連鎖解析の結果、D17S950と017S1607の間にマップした。(12)家族性側索硬化症:家族性ALSの1家系の連鎖解析で、1pまたは17q領域にマップした。 | KAKENHI-PROJECT-13854024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13854024 |
コンソーシアムによる単一遺伝子病の連鎖解析と疾患遺伝子同定 | (13-14)家族性下顎前突症と家族性眼瞼下垂症では遺伝的異質性が明らかで、連鎖解析でも疾患座は未確定である。その他、(15)発作性運動誘発性コレオアテトーシス:16番染色体着糸点付近の候補遺伝子113個の変異解析を行ったが、変異は未同定である。(16)Sotos症候群:NSD1について、患者の新生変異の親起源を追及した結果、大多数が父の精子形成期に発生したことが分かった。平成13年度は、我が国で発見された2種の未知遺伝病(遺伝形質)の連鎖解析と、3種の遺伝病の原因遺伝子の位置的候補遺伝子探索を行った。(1)低音障害型難聴:長崎県離島1地域に見られる難聴の1家系(31名の構成員中、罹患者16名)について、マイクロサテライトマーカーパネルを利用したアレルタイピング(ゲノムスキャン)を行った。ハプロタイプ解析の結果、4番染色体短腕p16.1領域が連鎖候補領域として矛盾がなかったので、同領域マーカーを増加してさらにタイピングを行い、マーカーD4S431とD4S2983の間(約10cM)で最大2点ロッドスコア=5.77(組み換え値=0.04、浸透率=1.00)を得た。組換え部位の解析からD4S431とD4S2935との間、約1cMに原因遺伝子が存在すると思われ、この領域にマップされている11個の遺伝子すべてについて変異解析を行った結果、WFS1遺伝子のエクソン8にミスセンス変異を同定し、疾患遺伝子だと確定した。難聴に関するWFS1の変異は2例目である。(2)血小板減少症:遺伝性血小板減少症の1家系(23名の構成員中、罹患者15名)について同様の連鎖解析を行った結果、17q21.3領域のマーカーD17S950とマーカーD17S1607の間(約12cM)で最大2点間ロッドスコア=2.98(組み換え値=0.00、浸透率=0.80)を得た。同領域には血小板無力症の原因遺伝子ITGA3Bがあり,現在変異解析を行っている。(3)変異解析:過去の連鎖解析で疾患座の局在を明らかにしたBardet-Biedl症候群3型、後水晶体線維型先天盲、家族性合指症1型について、連鎖領域に存在する遺伝子群の変異解析を行った。現在25種の遺伝子のスクリーニングを終了したが、いずれの疾患についても未だ変異は同定されていない。平成14年度は、我が国で発見された4種の未知遺伝病(遺伝形質、全て常染色体優性)の連鎖解析と、3種の遺伝病の原因遺伝子の位置的候補遺伝子探索を行った。(1)家族性側索硬化症(ALS):九州1地域にみられる常染色体優性の家族性ALSの1家系(31名の構成員中、罹患者14名)について、マイクロサテライトマーカーパネルを利用したアレルタイピング(ゲノムスキャン)を行った。ハプロタイプ解析の結果、8番染色体領域が連鎖候補領域として矛盾がなかった。現在さらに、家族構成員および同領域マーカーを増加してさらにタイピングを行い、領域の狭小化を行っている。(2)無嗅覚症:イラン人の2つの大家系(計166名の構成員中、罹患者12名)について、(1)と同様の連鎖解析およびハプロタイプ解析を行った。現在18番染色体上の47cMまで狭めている。(3)緊張性四肢麻痺:49名中16名が罹患している遅発性家族性緊張性四肢麻痺の1家系、および19名中6名の罹患者がいる1家系、計2家系について、同様に連鎖解析を行っている。連鎖候補領域が数ヶ所得られたが、未だ確定していない。(4)常染色体優性多汗症:数名数十名の罹患者がいる27家系について、同様に連鎖解析を開始した。(5)変異解析:平成13年度までの連鎖解析で疾患座の局在を明らかにしたBardet-Biedl症候群3型、後水晶体線維型先天盲、家族性合指症1型、血小板減少症、肢中部異形成症、van der Woude症候群(VWS)について、連鎖領域に存在する遺伝子群の変異解析を行った。 | KAKENHI-PROJECT-13854024 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13854024 |
2型糖尿病モデルコンジェニックラットを用いた多因子疾患原因遺伝子の同定と解析 | 本研究の目的は2型糖尿病モデルであるOLETFラットで同定された高血糖、及び脂肪蓄積に関わる遺伝子座の詳細な解析を行い、原因遺伝子の同定と量的形質に関わる分子メカニズムを解明することであった。本研究で明らかになった知見は以下の通りである。1)コンジェニック系統のcharacterizationQTL解析によって同定した14個の高血糖遺伝子座についてコンジェニックラットを作成した。そのほとんどはmildな高血糖を示し、QTL解析の結果を裏付けた。2)ファインマッピングNidd2/of遺伝子座を導入したコンジェニックに戻し交配を行い、導入遺伝領域が短くなった1連のサブコンジェニック系統群(10系統)を作成した。その結果、Nidd2/of遺伝子座には少なくとも二つの高血糖遺伝子座があり、それらはそれぞれ約5cMの領域に存在することが推定された。また、脂肪蓄積遺伝子座は約10cMの領域へファインマップされた。3)遺伝子間相互作用(epistasis)の検証QTL解析から予想されたepistasisをダブルコンジェニック系統で検証した。Nidd1/ofとNidd2/of遺伝子座は血糖値上昇に相乗効果を示すことが判明した。4)肥満と高血糖遺伝子座の関係について2型糖尿病を理解する上で、肥満により応答性の高い遺伝子座を同定、解析を行うことはより重要と考えられる。コンジェニック系統にレプチン受容体欠損を導入し、肥満との相互作用を検証した。その結果、Nidd2/ofは遺伝学的肥満状況下で糖尿病を発症した。Nidd1/ofではそれが見られなかったことから、個々の遺伝子座で肥満への応答に明らかな差があることが判明した。Nidd2/ofは肥満が糖尿病を引き起こすメカニズムの解明により重要であると期待される。本研究は疾患モデル動物を用いたアプローチで多因子疾患の原因遺伝子同定と、その作用機序の解明を目的としている。OLETFラットは2型糖尿病のモデルとして知られており、我々はQTL解析の結果同定された高血糖原因遺伝子座を個々に持つコンジェニックラットを作製し、解析を進めている。初年度の今年、12系統すべてのコンジェニックラットの初期解析を終了し、論文に発表した。12系統の内、6系統に関して血糖値上昇を観察した。このことは先のQTL解析の結果を支持するものである。また、その他の5系統については通常飼料ではコントロールと差がなかったが、高脂肪食環境で血糖値の上昇を示した。これらは糖尿病誘発環境要因と単一の遺伝子座との相互作用を示しており、特定の環境要因がどのように個々の遺伝的変異に影響を及ぼすのか探るモデルになると期待している。QTL解析である遺伝子座間でepistasisが示唆された。Nidd1/ofとNidd2/ofはその一つで、直接的に遺伝子座間相互作用を示すためにダブルコンジェニックラットを作製した。初期解析は進行中であるが、二つの遺伝子座が高血糖に与える影響はSynergesticであるとの結果が出ている。Nidd2/of遺伝子座は高血糖だけでなく脂肪蓄積にも影響する遺伝子座であることから、遺伝子同定に向けてファインマッピングを行っている。F.O-Nidd2/ofコンジェニックラットのサブコンジェニックを確立中で、コンジェニック領域で組み換え体を複数同定している。15年度中にはサブコンジェニック系統作製を終了し、初期解析を始める予定である。本研究は疾患モデル動物による多因子疾患原因遺伝子同定とその作用機序の解明を目的としている。初年度の昨年、コンジェニックラット12系統の初期解析を終了したのに続き、今年度は以下の通り、計画が進行している。F.0-Nidd2/ofコンジェニックラットに宿主系統であるF344ラットを交配し、導入Nidd2/of遺伝子座内で組み換えを起こした染色体をスクリーニングし、合計12系統のサブコンジェニックラットを確立した。現在30週齢雄のOGTTテストを行っている。2)ダブルコンジェニックラットの解析QTL解析でepistasisが示唆された二つの遺伝子座を持つダブルコンジェニツクラットを作成した。F.0-Nidd1&2の解析結果から、Nidd1/ofとNidd2/of遺伝子座の遺伝的相互作用を更に指示する結果を得た。また、これらの遺伝子座は糖負荷テストで糖負荷後それぞれ後期と初期で顕著に影響を与えることも明らかになった。現在、論文投稿準備中。3)レプチン受容体欠損変異体との組み合わせによる肥満が及ぼすNidd高血糖遺伝子座に及ぼす影響の検証初年度の解析結果から、高脂肪飼料とNidd遺伝子座の一部の間に相乗効果が示された。更に肥満がこれらの遺伝子座に与える影響を調べるため、レプチン受容体欠損変異体と組み合わせて遺伝的に肥満を導入したコンジェニックラットを作成し、解析した。相乗効果を確認したばかりでなく、過度の肥満により一つのNidd/of遺伝子座が糖尿病発症の原因なりうることを示した。論文投稿準備中。本研究の目的は2型糖尿病モデルであるOLETFラットで同定された高血糖、及び脂肪蓄積に関わる遺伝子座の詳細な解析を行い、原因遺伝子の同定と量的形質に関わる分子メカニズムを解明することであった。本研究で明らかになった知見は以下の通りである。1)コンジェニック系統のcharacterizationQTL解析によって同定した14個の高血糖遺伝子座についてコンジェニックラットを作成した。そのほとんどはmildな高血糖を示し、QTL解析の結果を裏付けた。2)ファインマッピングNidd2/of遺伝子座を導入したコンジェニックに戻し交配を行い、導入遺伝領域が短くなった1連のサブコンジェニック系統群(10系統)を作成した。 | KAKENHI-PROJECT-14780626 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14780626 |
2型糖尿病モデルコンジェニックラットを用いた多因子疾患原因遺伝子の同定と解析 | その結果、Nidd2/of遺伝子座には少なくとも二つの高血糖遺伝子座があり、それらはそれぞれ約5cMの領域に存在することが推定された。また、脂肪蓄積遺伝子座は約10cMの領域へファインマップされた。3)遺伝子間相互作用(epistasis)の検証QTL解析から予想されたepistasisをダブルコンジェニック系統で検証した。Nidd1/ofとNidd2/of遺伝子座は血糖値上昇に相乗効果を示すことが判明した。4)肥満と高血糖遺伝子座の関係について2型糖尿病を理解する上で、肥満により応答性の高い遺伝子座を同定、解析を行うことはより重要と考えられる。コンジェニック系統にレプチン受容体欠損を導入し、肥満との相互作用を検証した。その結果、Nidd2/ofは遺伝学的肥満状況下で糖尿病を発症した。Nidd1/ofではそれが見られなかったことから、個々の遺伝子座で肥満への応答に明らかな差があることが判明した。Nidd2/ofは肥満が糖尿病を引き起こすメカニズムの解明により重要であると期待される。 | KAKENHI-PROJECT-14780626 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14780626 |
初期肺腺癌におけるIGBP1の抗アポトーシス機能の解明 | 私は、目的として(1)浸潤癌でのIGBP1高発現機序の解明、(2)IGBP1の核内移行の機序解明を挙げて研究を行った。(1)については、先行研究としてmicroRNAがIGBP1の発現幾序に関与しているとする報告があったため、ヒト肺切徐術材料を用いたmicroRNAアレイ解析を行った。具体的には、微小浸潤癌1例と小型浸潤癌2例に対してmicroRNAアレイ解析を行った。小型浸潤癌に共通して上昇が認められたものとしてはmiR-4301が、逆に低下していたものとしてはmiR-30b, miR30d, miR675, miR-659があきらかになった。Targetscanデーターベースを用いて検索した結果、IGBP1と関連したmicroRNAは得られなかったが、微小浸潤癌と小型浸潤癌は非常に類似した病変であるにもかかわらず、miRNAレベルが5へ7倍ほど変化しており、病態に何らかの関与をしている可能性が考えられた。(2)についてはLactoferrin投与により肺癌細胞株(PC-14)がG0-G1に留まる事をFlow cytometryにて確認し、その原因遺伝子検索のためcDNA microarrayを行った。Lactoferrinを添加した細胞珠で発現が増加している遺伝子は1,826個あり、発現が減少している遺伝子は2,136個あった。これらの遺伝子群をGene Ontologyでクラシフィケーションしたところ、lactoferrinにより発現が増加した遺伝子群には輸送系に関与する遺伝子が多く、lactoferrinにより発現が減少する遺伝子群には細胞周期やDNA複製に関与する遺伝子が多かった。輸送系に関与する遺伝子が多いという結果はIGBP1の咳内移行との関連を示唆する結果であった6.私は、目的として(1)浸潤癌でのIGBP1高発現機序の解明、(2)IGBP1の核内移行の機序解明を挙げて研究を行った。(1)については、先行研究としてmicroRNAがIGBP1の発現幾序に関与しているとする報告があったため、ヒト肺切徐術材料を用いたmicroRNAアレイ解析を行った。具体的には、微小浸潤癌1例と小型浸潤癌2例に対してmicroRNAアレイ解析を行った。小型浸潤癌に共通して上昇が認められたものとしてはmiR-4301が、逆に低下していたものとしてはmiR-30b, miR30d, miR675, miR-659があきらかになった。Targetscanデーターベースを用いて検索した結果、IGBP1と関連したmicroRNAは得られなかったが、微小浸潤癌と小型浸潤癌は非常に類似した病変であるにもかかわらず、miRNAレベルが5へ7倍ほど変化しており、病態に何らかの関与をしている可能性が考えられた。(2)についてはLactoferrin投与により肺癌細胞株(PC-14)がG0-G1に留まる事をFlow cytometryにて確認し、その原因遺伝子検索のためcDNA microarrayを行った。Lactoferrinを添加した細胞珠で発現が増加している遺伝子は1,826個あり、発現が減少している遺伝子は2,136個あった。これらの遺伝子群をGene Ontologyでクラシフィケーションしたところ、lactoferrinにより発現が増加した遺伝子群には輸送系に関与する遺伝子が多く、lactoferrinにより発現が減少する遺伝子群には細胞周期やDNA複製に関与する遺伝子が多かった。輸送系に関与する遺伝子が多いという結果はIGBP1の咳内移行との関連を示唆する結果であった6. | KAKENHI-PROJECT-24790345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24790345 |
自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」の開発および評価研究 | 自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」を「作品生成装置」として作成した。ツールの機能的特徴は、デザインパターンを高速・大量に半自動生成するところにある。ユーザは自分の指定した基準で生成されるパターンを繰り返し見ることで「表現と評価の作業」を容易に体験することが出来る。従って、その応用分野は大きく分けて二つあり、一つはデザイナや画家の発想と描画という作業を効率化させるドローイングツールの分野であり、もう一つはデザインの初学者に絵画的センスを身に付けさせるソフト面の分野である。「デッサンツール」には現代の美術作家や歴史上の巨匠といわれる画家などの作風から抽出したマクロプログラムが実装されており、ユーザ(人)はいつでも利用することが出来る。この機能の有効性を検証する応用として作品「ArtGenome」におけるヴィジュアルイメージを実際に制作し、アートギャラリーや環境芸術学会作品展「環境芸術の現在2004(武蔵野美術大学)」においてインスタレーションを行った。これらの発表によって、画家などの作風を数値化したマクロプログラムの活用が、高度なグラフィック表現に有効であり、芸術作品として質の高いオリジナル作品の制作が可能であることが実証された。「デッサンツール」のソフト面の有効性を検証する応用として、このソフトウェアをインストールし、ネットワーク経由で新たなコミュニケーションを可能にする「メディアテーブル」Art Acceleratorの開発を行い、ハードウェア・インタフェースによるインタラクティブシステムとして実用レベルまで完成させた。Art Acceleratorは創造性の発現といった自己の内面との対話性が人と共有できるものであり、インタラクティブなメディア・アートへの応用と拡張性が確認できた。今後はこのArt Acceleratorを元にユーザ評価を行い、これらハードウェアとソフトウェアを一体にしたコミュニケーションツールと新たなコミュニケーションを提供する場としてサイエンスミュージアムやアートミュージアムなどを想定したインスタレーションを目指す。自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」を「作品生成装置」として作成した。ツールの機能的特徴は、デザインパターンを高速・大量に半自動生成するところにある。ユーザは自分の指定した基準で生成されるパターンを繰り返し見ることで「表現と評価の作業」を容易に体験することが出来る。従って、その応用分野は大きく分けて二つあり、一つはデザイナや画家の発想と描画という作業を効率化させるドローイングツールの分野であり、もう一つはデザインの初学者に絵画的センスを身に付けさせるソフト面の分野である。「デッサンツール」には現代の美術作家や歴史上の巨匠といわれる画家などの作風から抽出したマクロプログラムが実装されており、ユーザ(人)はいつでも利用することが出来る。この機能の有効性を検証する応用として作品「ArtGenome」におけるヴィジュアルイメージを実際に制作し、アートギャラリーや環境芸術学会作品展「環境芸術の現在2004(武蔵野美術大学)」においてインスタレーションを行った。これらの発表によって、画家などの作風を数値化したマクロプログラムの活用が、高度なグラフィック表現に有効であり、芸術作品として質の高いオリジナル作品の制作が可能であることが実証された。「デッサンツール」のソフト面の有効性を検証する応用として、このソフトウェアをインストールし、ネットワーク経由で新たなコミュニケーションを可能にする「メディアテーブル」Art Acceleratorの開発を行い、ハードウェア・インタフェースによるインタラクティブシステムとして実用レベルまで完成させた。Art Acceleratorは創造性の発現といった自己の内面との対話性が人と共有できるものであり、インタラクティブなメディア・アートへの応用と拡張性が確認できた。今後はこのArt Acceleratorを元にユーザ評価を行い、これらハードウェアとソフトウェアを一体にしたコミュニケーションツールと新たなコミュニケーションを提供する場としてサイエンスミュージアムやアートミュージアムなどを想定したインスタレーションを目指す。自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」を「作品生成装置」として作成した。ツールの機能的特徴は、デザインパターンを高速・大量に半自動生成するところにある。ユーザは自分の指定した基準で生成されるパターンを繰り返し見ることで「表現と評価の作業」を容易に体験することが出来る。従って、その応用分野は大きく分けて二つあり、一つはデザイナの発想と描画という作業を効率化させるドローイングツールの分野であり、もう一つはデザインの初学者に絵画的センスを身に付けさせる教育用ソフトの分野である。ドローイングツールの有効性を検証する応用として「日本ソフトウェア科学会」など複数のプロシーディングス表紙デザインを行い採用された。この使用によって、デザイナの個性を数値化したマクロプログラムの活用が、高度なグラフィック表現に有効であることが実証された。教育用ソフト面の有効性を検証する応用としてワークショップとミュージアムでの1年間に及ぶインスタレーションを行った。ワークショップは小学生24名の参加者が作品を制作し、巨匠の抽象絵画と同じ環境下で比較評価を行った。この実施結果から、小学生が「デッサンツール」を使用することで、抽象絵画を理解し質の高い作品制作の出来ることが確認できた。また、埼玉県Skip Cityの映像ミュージアムに「デッサンツール」を常設展示し、ユーザによる膨大な作品データを収集した。この分析結果から、ユーザが直感的にツールを使用し、生成された作品に対してリフレクションを繰り返し作品の質を高めていく過程が明らかになった。次年度の準備として、「デッサンツール」をインストールするメディアテーブルのプロトタイプを制作した。これによって、創造性の発現といった個人レベルでの対話性が人と共有できるものとなり、ドローイングツール・教育ソフトの両面だけではなく、メディア・アートへの応用と拡張性が確認できた。自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」を「作品生成装置」として作成した。ツールの機能的特徴は、デザインパターンを高速・大量に半自動生成するところにある。ユーザは自分の指定した基準で生成されるパターンを繰り返し見ることで「表現と評価の作業」を容易に体験することが出来る。 | KAKENHI-PROJECT-15604014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15604014 |
自己の内面とインタラクティブに対峙する「デッサンツール」の開発および評価研究 | 従って、その応用分野は大きく分けて二つあり、一つはデザイナや画家の発想と描画という作業を効率化させるドローイングツールの分野であり、もう一つはデザインの初学者に絵画的センスを身に付けさせるソフト面の分野である。「デッサンツール」には現代の美術作家や歴史上の巨匠といわれる画家などの作風から抽出したマクロプログラムが実装されており、ユーザ(人)はいつでも利用することが出来る。この機能の有効性を検証する応用として作品「ArtGenome」におけるヴィジュアルイメージを実際に制作し、アートギャラリーや環境芸術学会作品展「環境芸術の現在2004(武蔵野美術大学)」においてインスタレーションを行った。これらの発表によって、画家などの作風を数値化したマクロプログラムの活用が、高度なグラフィック表現に有効であり、芸術作品として質の高いオリジナル作品の制作が可能であることが実証された。「デッサンツール」のソフト面の有効性を検証する応用として、このソフトウェアをインストールし、ネットワーク経由で新たなコミュニケーションを可能にする「メディアテーブル」Art Acceleratorの開発を行い、ハードウェア・インタフェースによるインタラクティブシステムとして実用レベルまで完成させた。Art Acceleratorは創造性の発現といった自己の内面との対話性が人と共有できるものであり、インタラクティブなメディア・アートへの応用と拡張性が確認できた。今後はこのArt Acceleratorを元にユーザ評価を行い、これらハードウェアとソフトウェアを一体にしたコミュニケーションツールと新たなコミュニケーションを提供する場としてサイエンスミュージアムやアートミュージアムなどを想定したインスタレーションを目指す。 | KAKENHI-PROJECT-15604014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15604014 |
手指で表出される圧力パタ-ンによる感情の分析 | われわれの研究において、Clynes(1977)の情動理論に基づくsentogram(手指によって装置に与えられる圧力の変化曲線)が喜びや悲しみなどの基本感情によって異なるパタ-ンを示すことが確認された。また、表情が示す感情のsentogramとそれを認知した被験者のsentogramは対応する傾向があることが示唆された。しかしながら、Clynesの手続きでは、数10回の反復測定や練習の必要性、試行間間隔が感情によって異なるなど問題点も多い。そこで非表情画と表情画を混在させて提示し、より要求特性を減じた状況でのsentogramを検討した。実験Iでは、表情画のもつ感情成分が弁別課題遂行中の被験者のsentographのボタンの押し方に表われるかどうかを確かめ(弁別課題)、また実験IIでは、画面の線画を見ているときの自分の気持ちをsentographで表出するように教示した(表出課題)。第1実験の提示刺激は、「怒り」「喜び」「悲しみ」「無感情」を表す表情画に加えて、非表情画として顔の輪郭内に「十字」と「楕円」を描いたものおよび、顔の「輪郭のみ」を用いた。いずれもコンピュ-タグラフィックスで作成し、14インチのモニタ-に提示した。被験者は提示された図形の輪郭の楕円内に何か描いてある場合にのみセントグラフのボタンを押すという簡単な弁別課題を行った。一つの線画の提示時間は4秒間で刺激間間隔は24秒である。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。符号検定の結果、「悲しみ」の持続時間は「十字」「喜び」よりも長く、「怒り」の圧力最大値は「十字」「無感情」「喜び」「悲しみ」より強いことがわかった。第2実験では、実験Iで使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を被験者に提示し、見ているときの自分の気持ちをセントグラフで表出するように教示した。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。われわれの研究において、Clynes(1977)の情動理論に基づくsentogram(手指によって装置に与えられる圧力の変化曲線)が喜びや悲しみなどの基本感情によって異なるパタ-ンを示すことが確認された。また、表情が示す感情のsentogramとそれを認知した被験者のsentogramは対応する傾向があることが示唆された。しかしながら、Clynesの手続きでは、数10回の反復測定や練習の必要性、試行間間隔が感情によって異なるなど問題点も多い。そこで非表情画と表情画を混在させて提示し、より要求特性を減じた状況でのsentogramを検討した。実験Iでは、表情画のもつ感情成分が弁別課題遂行中の被験者のsentographのボタンの押し方に表われるかどうかを確かめ(弁別課題)、また実験IIでは、画面の線画を見ているときの自分の気持ちをsentographで表出するように教示した(表出課題)。第1実験の提示刺激は、「怒り」「喜び」「悲しみ」「無感情」を表す表情画に加えて、非表情画として顔の輪郭内に「十字」と「楕円」を描いたものおよび、顔の「輪郭のみ」を用いた。いずれもコンピュ-タグラフィックスで作成し、14インチのモニタ-に提示した。被験者は提示された図形の輪郭の楕円内に何か描いてある場合にのみセントグラフのボタンを押すという簡単な弁別課題を行った。一つの線画の提示時間は4秒間で刺激間間隔は24秒である。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。符号検定の結果、「悲しみ」の持続時間は「十字」「喜び」よりも長く、「怒り」の圧力最大値は「十字」「無感情」「喜び」「悲しみ」より強いことがわかった。第2実験では、実験Iで使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を被験者に提示し、見ているときの自分の気持ちをセントグラフで表出するように教示した。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。第1実験顔面表情画によって生じる感情喚起と手指で表出される圧力パターンとの個人差を検討した.刺激材料は,線画による4種類の表情画と3種類の非表情画である.怒り,喜び,悲しみ,無感情を表情画とし,二重楕円,楕円を非表情画とした.各刺激を各被験者に4秒間,カラーテレビモニターで提示した.そして被験者には,セントグラフ(手指の圧力を測定する装置)のボタンに指をのせるよう教示し,各刺激提示ごとにボタンを押させた.結果の分析は,データレコーダにセントグラムの垂直成分,水平成分,刺激提示のトリガーを集録したものを解析した.その結果,セントグラム開始点から終了点までの時間と圧力最大値の間に有意差が認められた.各感情ごとのセントグラムの分析の結果,個人差が大きいことが見い出された.とくに有意に個人差のみられた変数は,セントグラム開始から終了までの時間と垂直方向の圧力最大値であった.第2実験第1実験の結果をふまえ,顔面表情画と非表情画を提示された際に被験者に喚起される感情と手指で表出される圧力パターンを自己評定の測度を併用しながら考察することを目的として行なわれた.刺激材料及び装置は第1実験と同じものである.各被験者に,各刺激に対して喚起された感情と手指にこめながらセントグラフのボタンを押すように教示した.また各試行終了後,感情の自己評定を求めた.実験の結果,怒りと悲しみの間におけるセントグラムに有意な差がみられた. | KAKENHI-PROJECT-62510078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510078 |
手指で表出される圧力パタ-ンによる感情の分析 | また,典型的なセントグラムにおいて,怒り,悲しみ,喜びにおける開始点が一致する傾向がみられた.これらの結果を考察すると, Clynesの主張した各感情の内的脈波(inner puls)の仮説を支持することができよう.さらに,圧力最大値における,無感情と二重楕円にみられる有意差は1実験の目的の検討にも示唆を与えるものである.実験には、実験I(昭和62)で使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を用いた。被験者には画面の線画を見ているときの自分の気持ちを、sentographで表出するように教示した。線画は、各3回ずつ計18回提示した。その他の手続きは実験Iと同じである。課題終了後に、生起した感情の強度と表出の満足度について自己評定を求めた。得られた知見は、実験Iと同様、各線画に対する3回分の波形(垂直成分)を線画ごとにまとめた。各3回分の平均波形について実験Iと同じ各測度を算出し、Friedmanテストを行って所、持続時間(X^2r=14.50)と圧力最大値(X^2r=21.39)に有意差(P<.05)がみられた。総括今回のような実験状況におけるSentogram波形は、62年度の研究成果と比べて全体的に短く、感情間で互いに類似したものであった。しかしながら、被験者に表出を要請しない弁別課題においても表情図の効果が見られたことは、sentographを用いることで被験者が意識しないうちに感情の測定が可能であることを示唆する。また、非表情線画では「無感情」、「喜び」に近い波形が得られることがわかった。Sentogram波形で最も特徴的なのは、持続時間の長い「悲しみ」と圧力最大値の強い「怒り」であると言える。われわれは、表情線画と非表情線画を混ぜた刺激を被験者(女性)にランダムに提示し、要求特性が比較的減じられた条件下におけるセントグラムを検討した。セントグラムは、M.Clynesが考案し製作したセントグラフによって測定した。第1実験では、被験者の利き手第3指から装置の感圧部に与えられる圧変化を測定した。提示刺激は、「怒り」「喜び」「悲しみ」「無感情」を表す表情画に加えて、非表情画として顔の輪郭内に「十字」と「楕円」を描いたものおよび、顔の「輪郭のみ」を用いた。いずれもコンピュ-タグラフィックスで作成し、14インチのモニタ-に提示した。被験者は提示された図形の輪郭の楕円内に何か描いてある場合にのみセントグラフのボタンを押すという簡単な弁別課題を行った。一つの線画の提示時間は4秒間で刺激間間隔は24秒である。結果は、「輪郭」を除く各線画の提示時間から3秒間を計測の対象とし、線画ごとにまとめた。各線画におけるsentogram波形の比較のため各3回分の波形の反応開始時点を一致させて平均し、(1)反応開始から圧力最大値までの時間、(2)反応開始から終了までの持続時間、(3)圧力最大値の4測度についてFriedmanテストを行ったところ、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。符号検定の結果、「悲しみ」の持続時間は「十字」「喜び」よりも長く、「怒り」の圧力最大値は「十字」、「無感情」、「喜び」、「悲しみ」より強いことがわかった。第2実験では、実験Iで使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を被験者に提示し、見ているときの自分の気持ちをセントグラフで表出すように教示した。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。 | KAKENHI-PROJECT-62510078 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62510078 |
両生類初期胚におけるノーダル関連遺伝子の機能解析 | Nodal関連因子は、前駆体タンパク質からpro-regionが切断され、mature regionがダイマーを形成して活性化する。タンパク切断を受けないように認識配列を改変したコンストラクトを過剰発現すると、不活性なダイマー形成が促進され、ドミナントネガティブ変異体として機能することが知られている。Xtnr3の切断変異コンストラクトを作製し過剰発現すると、活性が少し弱くなるものの野生型と同様の表現型を示した。Xtnr3の切断変異コンストラクトはドミナントネガティブ変異体として機能していないと考えられる。ドミナントネガティブ変異体の作用機序から考えて、Xtnr3はホモダイマーを形成していないのではないかという仮説を立て、その検証を行った。免疫沈降法による解析と、還元状態、非還元状態でのウェスタンブロット解析の結果から、Xtnr3のmature regionはホモダイマーを形成せず、モノマーで存在している可能性が示唆された。TGF-βスーパーファミリーに属する因子のなかで、モノマーで機能しているものの存在は知られているが、それらはいずれもダイマー形成に関わる4番目のシステイン残基を欠損している。Xtnr3は4番目のシステイン残基を保持しており、Xtnr3のmature regionがモノマーで機能しているとは考えられていなかった。より詳細な解析を進めた結果、Xtnr3がダイマー形成できない原因となる領域を3つに絞り込むことができた。以上の結果は、Xnr3およびXtnr3がNodal関連因子の中で特異な活性を示す理由を知る上で有力な手がかりになると考えられる。アフリカツメガエルにおけるnodal関連遺伝子のうち、Xenopus nodal-related gene 3(以下Xnr3)によるBMPシグナルの阻害メカニズムについてより詳細な解析を進めてきた。BMPとNodalはmature regionを介してヘテロダイマーを形成する事により互いのシグナルを阻害しあうことが知られている。これに加え、ツメガエルnodal関連遺伝子Xnr3とXnr5のpro-regionがBMPのmature regionに結合することによってBMPシグナルの阻害に関与することを以前報告した。現在、pro-regionのどの領域がBMPシグナルの阻害に関与しているのかについて解析を進めている。ツメガエル初期卵の腹側領域でBMPシグナルが阻害されると二次軸が形成されることから、様々な領域を欠損させたコンストラクトを用いて二次軸アッセイを行い、BMPシグナルの阻害に関与する領域の同定を試みた。その結果、Xnr3のpro-regionによるBMPシグナルの阻害に必要な領域が複数存在することが明らかになった。免疫沈降法による解析から、これらの領域はBMPのmature regionとの結合に重要であると考えられ、さらに詳細な解析を進めている。また、BMPとNodalの間にみられたヘテロダイマーの形成がXnr3とBMPの間にはみられないことや、pro-regionを欠損させたXnr3のコンストラクトはBMPシグナルを阻害できないことから、Xnr3が持つBMPシグナル阻害活性は、TGF-βスーパーファミリーに属する因子の活性領域と考えられているmature regionではなく、pro-regionによって担われていることが示された。ノーダル関連遺伝子はTGF-βスーパーファミリーに属する因子であり、脊椎動物の初期発生において、中内胚葉誘導や軸形成(前後軸・背腹軸・左右軸)など重要なイベントに関与することが知られている。アフリカツメガエルにおいては6種類のノーダル関連遺伝子が知られている。このうち、Xenopus nodal-related gene 3(以下Xnr3)はTGF-βスーパーファミリーに属する因子の間で保存されている7つのシステイン残基の中でもっともC末端側にあるシステイン残基を欠損しているという構造的特徴をもつほか、他のノーダル関連遺伝子が示す中内胚葉誘導能を持たず、神経誘導能を示すなど機能的にも興味深い。しかし、その作用機序は不明な点が多い。Xnr3は骨形成因子(以下BMP)シグナルを阻害することにより神経誘導能を示す。この活性はTGF-βスーパーファミリーに属する因子がリガンドとして働くmature regionではなく、これまで独自の活性を持たないと考えられていたpro-regionによって担われていることを明らかにした。詳細な解析をおこなった結果、Xnr3 pro-regionのN末側とC末側にそれぞれ独立したBMP結合領域が存在し、これらを含む領域がBMPシグナルの阻害に重要であることを明らかにした。NodalとBMPはヘテロダイマーを形成することにより互いのシグナルを阻害しあうことが知られている。解析の結果、Xnr3はBMPとヘテロダイマーを形成しないことが分かった。このことから、Xnr3によるBMPシグナルの阻害は主としてpro-regionの活性により担われていると考えられる。この他、Xnr3のmature regionについても興味深い結果を得ており、Xnr3の作用機序を知る手がかりになると思われる。Nodal関連因子は、前駆体タンパク質からpro-regionが切断され、mature regionがダイマーを形成して活性化する。タンパク切断を受けないように認識配列を改変したコンストラクトを過剰発現すると、不活性なダイマー形成が促進され、ドミナントネガティブ変異体として機能することが知られている。Xtnr3の切断変異コンストラクトを作製し過剰発現すると、活性が少し弱くなるものの野生型と同様の表現型を示した。Xtnr3の切断変異コンストラクトはドミナントネガティブ変異体として機能していないと考えられる。ドミナントネガティブ変異体の作用機序から考えて、Xtnr3はホモダイマーを形成していないのではないかという仮説を立て、その検証を行った。免疫沈降法による解析と、還元状態、非還元状態でのウェスタン | KAKENHI-PROJECT-04J11564 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11564 |
両生類初期胚におけるノーダル関連遺伝子の機能解析 | ブロット解析の結果から、Xtnr3のmature regionはホモダイマーを形成せず、モノマーで存在している可能性が示唆された。TGF-βスーパーファミリーに属する因子のなかで、モノマーで機能しているものの存在は知られているが、それらはいずれもダイマー形成に関わる4番目のシステイン残基を欠損している。Xtnr3は4番目のシステイン残基を保持しており、Xtnr3のmature regionがモノマーで機能しているとは考えられていなかった。より詳細な解析を進めた結果、Xtnr3がダイマー形成できない原因となる領域を3つに絞り込むことができた。以上の結果は、Xnr3およびXtnr3がNodal関連因子の中で特異な活性を示す理由を知る上で有力な手がかりになると考えられる。 | KAKENHI-PROJECT-04J11564 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J11564 |
コンセプトマップとシミュレーションによるアセスメント教育プログラムの構築 | 近年、社会環境の変化や社会において求められる能力が高度化・多様化する中、看護職者には高度な思考・判断力が求められている。一方、看護基礎教育においては、学生の思考力の強化が課題となっている。本研究では、認知心理学領域の問題解決理論に基づき、コンセプトマップを用いて看護学生の知識をアセスメントに用いられやすい状態に構造化させ、そのうえでシミュレーション教育を行い知識の用い方を教育する新規のアセスメント教育プログラムを構築する。本教育プログラムでは、より多くの知識を活用して患者情報を総合的に捉えたアセスメント能力の向上を図る。近年、社会環境の変化や社会において求められる能力が高度化・多様化する中、看護職者には高度な思考・判断力が求められている。一方、看護基礎教育においては、学生の思考力の強化が課題となっている。本研究では、認知心理学領域の問題解決理論に基づき、コンセプトマップを用いて看護学生の知識をアセスメントに用いられやすい状態に構造化させ、そのうえでシミュレーション教育を行い知識の用い方を教育する新規のアセスメント教育プログラムを構築する。本教育プログラムでは、より多くの知識を活用して患者情報を総合的に捉えたアセスメント能力の向上を図る。 | KAKENHI-PROJECT-19K10792 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10792 |
周波数逓倍法を用いたアレイアンテナの小形化に関する研究 | 受信用アレーアンテナで、各素子アンテナの受信信号周波数をn逓倍すれば素子間位相差はn倍になるため、素子間隔を縮小しても指向性合成機能が得られる。無変調CW波を対象にλ/4モノポールアンテナを素子アンテナに用い、本法の原理確認、周波数逓倍器の特性及び本法の応用例について検討した。まず、ブロードサイドアレーの8字指向性パターンが得られる条件で原理確認を行い以下の結果を得た。周波数4逓倍で、従来の等間隔アレーの素子間隔に比べて、2素子で9.6%に、4素子で6.4%に短縮できた。理論計算では、8及び16素子で、周波数10逓倍の場合に位相調整をして、素子間隔がそれぞれ0.0017λ、0.00046λが得られたが、アンテナ導線の直径が10^<-6>λで実現性のない結果となった。これらの計算に必要なインピーダンスは起電力法とモーメント法で求め、λ/4モノポールアンテナでは両手法とも大差なく、実験値ともほぼ一致した。また4素子不等間隔アレーの理論計算では等間隔アレーよりもnullの落ち込みが大きい結果を得た。次に、PLL(Phase Locked Loop)を用いる逓倍器の方がダイオードによる周波数ダブラよりも入力信号レベルに対する位相変化が大きいものの、出力信号振幅が一定なため位相のみの情報で指向性合成ができる。しかしPLLは多数の能動素子で構成されているので、複数のPLLを用いると回路間の相互作用と思われる不安定な動作が現れる。本法を応用した自動同相化2素子アレーアンテナでは基本的な動作確認はできたが、周波数逓倍器が非線形回路のため、本法による指向性合成でnullを生じてもその方向から妨害波が到来するとその影響を受けることが分かり、単一到来波のみを相手にする方向探知機に応用して、その小形化に有効であることを確認した。受信用アレーアンテナで、各素子アンテナの受信信号周波数をn逓倍すれば素子間位相差はn倍になるため、素子間隔を縮小しても指向性合成機能が得られる。無変調CW波を対象にλ/4モノポールアンテナを素子アンテナに用い、本法の原理確認、周波数逓倍器の特性及び本法の応用例について検討した。まず、ブロードサイドアレーの8字指向性パターンが得られる条件で原理確認を行い以下の結果を得た。周波数4逓倍で、従来の等間隔アレーの素子間隔に比べて、2素子で9.6%に、4素子で6.4%に短縮できた。理論計算では、8及び16素子で、周波数10逓倍の場合に位相調整をして、素子間隔がそれぞれ0.0017λ、0.00046λが得られたが、アンテナ導線の直径が10^<-6>λで実現性のない結果となった。これらの計算に必要なインピーダンスは起電力法とモーメント法で求め、λ/4モノポールアンテナでは両手法とも大差なく、実験値ともほぼ一致した。また4素子不等間隔アレーの理論計算では等間隔アレーよりもnullの落ち込みが大きい結果を得た。次に、PLL(Phase Locked Loop)を用いる逓倍器の方がダイオードによる周波数ダブラよりも入力信号レベルに対する位相変化が大きいものの、出力信号振幅が一定なため位相のみの情報で指向性合成ができる。しかしPLLは多数の能動素子で構成されているので、複数のPLLを用いると回路間の相互作用と思われる不安定な動作が現れる。本法を応用した自動同相化2素子アレーアンテナでは基本的な動作確認はできたが、周波数逓倍器が非線形回路のため、本法による指向性合成でnullを生じてもその方向から妨害波が到来するとその影響を受けることが分かり、単一到来波のみを相手にする方向探知機に応用して、その小形化に有効であることを確認した。受信用アレーアンテナにおいて、各素子アンテナの受信信号周波数をn逓倍すれば素子間位相差はn倍になるため素子間隔を縮小しても指向性合成機能が得られる。素子アンテナ間の相互結合による影響を明らかにすることを本年の目的とし、無変調CW波を対象にlambda/4モノポールアンテナを素子アンテナとしてブロードサイドアレーの8字パターンを得る条件で、素子数-逓倍数-素子間隔について検討した。まず2素子アレーについて起電力法による相互インピーダンスを用いて求めた素子間位相差は実測値(アンテナの太さ=2×10^<-3>lambda(lambda=50cm))とほぼ一致し、理論計算には超電力法を用い得ることを確認した。2素子では空間位相差以上の位相差が生じ、従来では8字パターンがlambda/2の素子間隔で得られるが、周波数10逓倍を用いるとlambda/50となり、逓倍数による素子間隔の短縮以上に短縮できることが分かった。次いで4素子の等間隔アレーでは周波数4逓倍で間隔0.016lambdaのときに比較的形状の良い8字パターンが得られ、理論値と実測値はほぼ一致し、理論計算方法の有効性が確認できた。以上の測定には設備備品として購入したモジュラーアンプを用いている。さらに、多素子アレーとして8および16素子の等間隔アレーについて素子間隔に対する各素子間位相差および8字パターンに関する周波数10逓倍までの理論検討を行った。素子間隔が極端に小さくなるため、素子アンテナの太さを物理的実現性を無視して10^<-6>lambdaとした。その結果、ブロードサイドアレーとして最大感度方向(アンテナ配列軸に直角方向)では相互結合のため生じる素子間位相差によって同相合成にならないことが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-05650362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650362 |
周波数逓倍法を用いたアレイアンテナの小形化に関する研究 | そこで位相調整を行い8字パターンの得られる素子間隔を調べ、素子数が増すほど素子間隔は小さくなり、周波数10逓倍では素子間隔は8素子アレーで0.00016lambda、16素子アレーで0.0005lambdaとなる結果を得た。受信用アレーアンテナの各素子アンテナの受信信号周波数をn逓倍すれば素子間位相差はn倍になるため素子間隔を縮小しても指向性合成機能が得られる。この機能を応用し、受信用アレーアンテナの小形化を目指して2年間の研究課題として進めてきた。2年目の本年は回路上の問題点の検討および本法を用いた2素子自動同相化アレーアンテナの動作確認を課題とした。まず、周波数逓倍回路(出力周波数10MHz)を通した2信号間の入力信号レベルによる位相差変化を調べた。PLL(NE564N)を用いた試作回路では約10mV以上の入力信号レベルで動作するが、300mV以下では位相変化が大きく、逓倍数が増すほどその変化が拡大する。PLLが安定に動作できる入力信号レベルは、2逓倍で300mV以上、10逓倍で500mV以上が必要である。周波数2逓倍器(FD25C)では入力電圧150mV以上が必要であるが、位相差変化は2deg以内でPLLの場合より少なく、安定な動作に有効であるものの逓倍数を大きく取れない欠点がある。次に、周波数2逓倍器を用いて素子間隔を1/2にした2素子自動同相化アレーアンテナでは、アンテナ間の相互作用による位相変化が生じるが、補正を行えば電波到来方向に最大感度を有する周波数逓倍法を用いた自動同相化アレーアンテナが実現できることを、ディジタル移相器(DP-36)を用いた実験により確認できた。しかし、周波数逓倍法を用いる方法は、反射波等の複数の到来電波の合成波に応答する欠点が明らかになり、単一到来波の方向探知機への応用が最適であることが分かった。そこでアンテナの正三角形配置の位相差検出法による方向探知機の受信信号周波数を4逓倍して、到来角の検出精度を損なわずに、アンテナ間隔を17%に低減できることを確かめた。 | KAKENHI-PROJECT-05650362 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05650362 |
マクロファージは全身の脂質代謝を制御し、肥満症治療の標的となる | 脂質代謝関連遺伝子Xをマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスに高脂肪食を負荷したところ、オス・メス全頭において肥満を発症しなかった。肥満を発症しない機構として、現代医学で想定されるメカニズム(摂餌量低下、吸収障害、褐色細胞等によるβ酸化亢進、炎症性疾患による消耗)は否定的であった。質量分析法により血液中の脂質を網羅解析したところ、血中でトリグリセライドが著増していた。この変化は生化学的測定によっても再現的に認められた。すなわち通常の生物では余剰の脂質を脂肪組織等に蓄積し肥満するが、本ノックアウトマウスにおいては脂質が脂肪細胞等に取り込まれにくいため、肥満や脂肪肝を発症しないことが判明した。ノックアウトマウスはLysM-Cre transgeneを用いたものであり、通常はマクロファージ特異的なノックアウトを起こすが、高脂肪食を負荷した際に意図せぬ組織でノックアウトが起こる可能性を完全には排除できない。よって本ノックアウトマウスの骨髄細胞をC57BL/6Jマウスに移植し、そのマウスに高脂肪食を負荷する実験を行った。この実験においても、高脂肪食を3ヶ月間負荷してもマウスが肥満しないことが再現された。すなわち造血系細胞(この場合はほぼマクロファージと考えられる)によって、肥満が抑制されうることが証明された。現段階で本研究から示唆されることは、食事量の多寡・運動の多寡のみならず、マクロファージを操作することでも劇的に肥満を抑制できるという可能性である。肥満症が世界中で蔓延する現在、マクロファージが肥満抑制薬を開発するための新たなターゲットになることを期待させる成果だと考えている。マクロファージによって肥満が抑制されることをほぼ確実に証明した。また本マウスにおける肥満抑制の病態生理学的メカニズムを推定し得た。マクロファージがいかなる物質を介して肥満を抑制しているのか、またマクロファージから影響を受けて脂質取り込みが抑制されている細胞が何であるかを検討する。脂質代謝関連遺伝子Xをマクロファージ特異的にノックアウトしたマウスに高脂肪食を負荷したところ、オス・メス全頭において肥満を発症しなかった。肥満を発症しない機構として、現代医学で想定されるメカニズム(摂餌量低下、吸収障害、褐色細胞等によるβ酸化亢進、炎症性疾患による消耗)は否定的であった。質量分析法により血液中の脂質を網羅解析したところ、血中でトリグリセライドが著増していた。この変化は生化学的測定によっても再現的に認められた。すなわち通常の生物では余剰の脂質を脂肪組織等に蓄積し肥満するが、本ノックアウトマウスにおいては脂質が脂肪細胞等に取り込まれにくいため、肥満や脂肪肝を発症しないことが判明した。ノックアウトマウスはLysM-Cre transgeneを用いたものであり、通常はマクロファージ特異的なノックアウトを起こすが、高脂肪食を負荷した際に意図せぬ組織でノックアウトが起こる可能性を完全には排除できない。よって本ノックアウトマウスの骨髄細胞をC57BL/6Jマウスに移植し、そのマウスに高脂肪食を負荷する実験を行った。この実験においても、高脂肪食を3ヶ月間負荷してもマウスが肥満しないことが再現された。すなわち造血系細胞(この場合はほぼマクロファージと考えられる)によって、肥満が抑制されうることが証明された。現段階で本研究から示唆されることは、食事量の多寡・運動の多寡のみならず、マクロファージを操作することでも劇的に肥満を抑制できるという可能性である。肥満症が世界中で蔓延する現在、マクロファージが肥満抑制薬を開発するための新たなターゲットになることを期待させる成果だと考えている。マクロファージによって肥満が抑制されることをほぼ確実に証明した。また本マウスにおける肥満抑制の病態生理学的メカニズムを推定し得た。マクロファージがいかなる物質を介して肥満を抑制しているのか、またマクロファージから影響を受けて脂質取り込みが抑制されている細胞が何であるかを検討する。本年度の直接経費800,000円に対する残額2,173円は、比率にして0.27%と極めて小さな割合であり、適正・健全な予算執行の結果と考えうるものである。残額は翌年度に物品費として使用予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K16200 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K16200 |
トリテルペン生合成を制御する米含有成分の解明 | 本実験の過程で,新規ジテルペン型メロテルペン配糖体及びフラノン配糖体を発見した.今回、Malbranchea filamentosaの産生するトリテルペンを誘導する米培地含有成分の探索を行うため、すでに誘導活性が確認されているクロロホルム画分の分画を行った。まず、LH-20を担体としたカラムクロマトグラフィーに負荷し、10画分を得た。この時、Hexane-CHCl3 4:1、CHCl3-Acetone 4:1、2:3、Acetone、MeOHを移動相として用いた。得られた各分をM. filamentosaに添加培養し、トリテルペン産生誘導活性を確認した所、5、6及び7画分に活性が確認されたため、次にこれらの画分の精製を試みたが、含有量が少なく、構造決定に至らなかった。そのため、低分子化合物を多く含むと思われる市販の米油を購入し、誘導活性を確認した所、活性が確認されたため、これを用い、精製を行った。米培地の場合と同様に精製後、順相のHPLCを用い、誘導活性物質の単離、精製を試みたところ、活性画分に共通した物質が観測された。本物質の1H-NMRスペクトルを測定した所、d3.60 (dd, J=5.9, 11.7 Hz)、d3.70 (dd, J=3.4, 11.7 Hz)、d3.93 m、d4.25 (dd, J=6.2, 11.7 Hz)、d4.21 (dd, J=4.8, 11.7 Hz)というグリセロール残基に特徴的なピークが観測された。また、高磁場領域に脂肪酸由来と考えられるピークが観測されたことから、本物質はアシルグリセロール構造を持つと決定された。脂肪酸領域のピークのカップリングパターンから本物質は単一ではなく、脂肪酸部分が異なる二種以上のアシルグリセロールの混合物であることが示唆された。Malbrancheoside類の産生を誘導する米中の物質の探索を目的に、米抽出エキスを水と各種有機溶媒で液々分配したクロロホルム画分を単離、精製し、複数種の脂肪酸と共に、1H-NMRスペクトルにおいて、芳香族領域に複数のピークが存在する物質が単離された。米が含有するmalbanchoside類産生誘導物質の単離は達成したが、構造決定には至っておらず、進行状況は当初の予定より遅れている。また、malbrancheoside類の生合成遺伝子の探索は、達成できていない。これはM. filamentosaの生合成研究及びmalbrancheoside類及びその類似構造を持つ物質の生合成遺伝子研究が行われておらず、効率的な実験計画が立案できなかったためである。Malbranchea filamentosaはホネタケ目,ホネタケ科に属する真菌であり,これまでの研究から, anthrasteroid型とmalbrancheoside型のトリテルペンを産生することが知られている.本菌をPYG培地で培養した際にはanthrasteroid型のトリテルペンが産生されるが,米液体培地で培養した際にはanthrasteroid型とmalbrancheoside型の両者が産生される.そのため,米中にトリテルペンを産生誘導成分が存在すると考え,その探索を行った.本研究を行うにあたり,まず,malbrancheoside類産生の確認法の開発を行った.従来の方法では50 mLの三角フラスコを用い,行っていたが,本法では試料を大量に消費するため,24 well plateを用いた方法を検討した.結果として,上記に記した培地種による産生トリテルペンの違いが従来の方法と同様に確認されたため,本法をこの実験に用いることとした.また,本研究を遂行するにあたり,副次的な成果として,M. filamentosaの米培地培養エキスから,ジテルペンを母核としたメロテルペン配糖体及びdibenzofuran配糖体を新規化合物として単離した.これら以外にも構造の確認がされていない物質が複数含まれるため,さらなる新規化合物の獲得が可能と考えている.本実験の過程で,新規ジテルペン型メロテルペン配糖体及びフラノン配糖体を発見した.Malbranchea filamentosaのトリテルペン産生能を誘導する米培地の含有成分の探索を試みたが、培地に含有される物質量が想定より微量であり、他のリソースとして、米油を手配した為。また、活性本体はアシルグリセロールと考えているが、現在、わずかに異なる脂肪酸を部分構造に持つと考えられる複数のアシルグリセロールが混在しており、単離、精製が難航した為。米が含有するmalbanchoside類産生誘導物質の単離は達成した。しかし、本物質は極めて含有量が少ない物質であり、抽出方法、抽出対象を検討したが、獲得量の増加は認められず、構造決定には継続した米抽出物の分離操作が必要になる。また、malbrancheoside類類似物質の生合成研究はこれまで行われておらず、その生合成遺伝子の探索は難航している。そのため、次年度は当初予定していた、malbrancheoside類産生誘導物質を添加し発現する遺伝子を探索するだけではなく、変異株の作製を行い、生合成遺伝子の探索を行う予定である。天然物化学今後も活性本体と考えられるアシルグリセロールの単離を試みるが、良い結果が見られない場合、エステル結合を開裂し、得られた脂肪酸を分析することにより脂肪酸部分の同定を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26860070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860070 |
トリテルペン生合成を制御する米含有成分の解明 | 平成27年度に予定しているM. filamentosaの産生するトリテルペン産生誘導物質の大量入手は、現在アシルグリセロールが活性本体と目されていることから、グリセロールと脂肪酸部分をエステル結合することにより入手可能であり、大量入手は比較的容易と考えられ、平成26年度の遅れは十分挽回できると考えている。 | KAKENHI-PROJECT-26860070 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26860070 |
修飾核酸を標的とした新規がん免疫病態診断マーカー探索と個別化がん免疫療法への応用 | 本研究では、修飾核酸の標的メタボロミクスによる、がん免疫病態を診断する腫瘍関連バイオマーカーの探索・同定と個別化がん免疫療法の新しい治療戦略への応用を目的とした。アデノシン1リン酸、グアノシン1リン酸、イノシン1リン酸等のプリンヌクレチドに加え、シチジン1リン酸、ウリジン1リン酸がCD73の基質になることを示した。今年度は、これらヌクレオシド1リン酸によるT細胞抑制活性について、MHC-I、-II拘束性OVAペプチド特異的T細胞受容体組換マウスOT-I、-IIの脾臓細胞を抗原ペプチドで刺激し、各ヌクレオシド1リン酸の抑制効果を検討した。プリンヌクレチドのアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸は、OT-I CD8 T細胞、OT-II CD4 T細胞のOVAペプチド特異的T細胞増殖を濃度依存的に有意に抑制した。また、このT細胞増殖抑制はCD73阻害薬APCPで解消した。さらに、野生型マウスCD4 T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体との共刺激、あるいはPMAとionomycinとの共刺激で活性化した場合にもアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸によるT細胞抑制効果が認められ、これらヌクレオシド1リン酸がT細胞を直接的な標的にすることが明らかになった。一方、ピリミジンヌクレオチドのシチジン1リン酸とウリジン1リン酸はCD73の基質ではあるが、T細胞増殖に対する抑制効果は認められなかった。代表的な修飾ヌクレオチドであるN6-メチルアデノシン1リン酸の抑制効果を検討したところ、アデノシン1リン酸と同等かそれ以上のT細胞抑制活性が示唆された。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。平成30年度が最終年度であるため、記入しない。本研究では、修飾核酸の標的メタボロミクスによる、がん免疫病態を診断する腫瘍関連バイオマーカーの探索・同定と個別化がん免疫療法の新しい治療戦略への応用を目的とした。本年度は、極性化合物の保持に有用なアダマンチル基カラムを用いたマルチカラム法により、従来法よりも迅速なLC/MS/MSを用いた15種類の修飾核酸の一斉分析法を開発し、その成果を論文発表した。衝突誘起解離による核酸塩基とリボースの特徴的開裂パターンに着目し、標準品として入手困難な修飾核酸類のselected reaction monitoringによる探索的定量を行える分析環境を整えた。EL4胸腺腫と3LL肺癌を同系マウスに皮下移植した担がんマウスを作製し、その腫瘍増殖を確認した。現在、担がんマウス生体試料における修飾核酸類の変動解析を進めている。担がん病態で増加が報告されている1-メチルアデノシンがマウス脾臓T細胞の増殖を抑制することを見出した。一方、フローサイトメトリー解析では1-メチルアデノシンによるリンパ球活性化マーカーCD69の抑制は認められないことから、T細胞の抑制効果が部分的である可能性が示唆された。1-メチルアデノシンの産生に関与が示唆されるEcto-5'-nucleotidase/CD73リコンビナントタンパク質をCHO細胞発現系を用いて高純度に精製することに成功した。本リコンビナントタンパク質はアデノシン1リン酸をアデノシンに代謝する活性を有することが我々のLC/MS/MS解析法によって確認された。CD73リコンビナントタンパク質とLC/MS/MS分析法によるアデノシン修飾体の産生経路を解析する分子基盤を構築した。当初の予定通りにLC/MS/MSによる15種類の修飾核酸一斉分析法を開発し、マルチカラム法による迅速化を行うことにも成功した。しかしながら、血液や尿試料を測定する場合、試料マトリックスによるイオン化抑制の影響が大きいことが明らかになり、生体試料中の修飾核酸動態の解析がやや遅れる要因となった。Ecto-5'-nucleotidase/CD73の分泌型組換タンパク質を安定発現するCHO細胞を無血清培養し、CD73に付与した6×Hisタグを用いて順化培地からアフィニティー精製を行った。CBB染色によって単一バンドのCD73組換蛋白質として精製することに成功し、AMPを基質とする5'-nucleotidase活性を我々が開発したLC-MS/MSによる修飾核酸測定法で確認できた。次に、この蛋白質の修飾核酸に対する酵素学的特性の解析を進めたが、反応系に添加したヌクレオチドがLC-MS/MSによる測定を妨害していることが判明し、定量解析が困難であった。この問題点を解決するため、マラカイトグリーンを用いたリン酸比色定量によるCD73酵素活性測定法の開発に着手し、AMP、GMP、CMP、UMPに対する酵素学的パラメーターを算出することに成功した。CD73は各ヌクレオチドに対して類似したKm、Vmax、Kcat値を有することが示唆された。昨年度開発したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉分析法を血液試料に応用し、修飾核酸の動態解析に取組んだ。しかしながら、試料マトリックスによるイオン化抑制による影響が大きく、得られた血中修飾核酸測定値の信頼性が低いことが明らかになった。LC-MS/MSによる定量分析において、安定同位体標識化合物を内部標準物質として用いることがイオン化抑制の補正には有効である。現在、安定同位体標識修飾核酸の入手と有機合成を検討している。昨年度作製した担がんマウスに加え、MC38大腸がん細胞株を入手し、新たに担がんマウスを作製した。 | KAKENHI-PROJECT-16H04704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04704 |
修飾核酸を標的とした新規がん免疫病態診断マーカー探索と個別化がん免疫療法への応用 | MC38とMCA205担がんマウスにはPD-1/PD-L1阻害療法が部分奏功し、修飾核酸動態を解析するための有用なモデルマウスとして使用できることがわかった。開発したLC-MS/MSによる修飾核酸一斉分析法が、血液等の生体試料やヌクレオチドが添加された反応液等を測定する場合、マトリックスによるイオン化抑制の影響が大きく、修飾核酸の体内動態解析やCD73の修飾核酸特異性を解析する実験にそのままでは応用できないことが判明し、実験に遅れが生じた。このような現状において、CD73酵素活性評価にはマラカイトグリーン比色定量法を応用して問題を解決し、また、96穴フォーマットによる分光学的測定を可能にしたことから、LC-MS/MS測定法よりもむしろ迅速かつ簡便な測定ができるような分析環境を確立した。その結果、実験進捗状況の遅れを一部は取り戻すことができた。本研究では、修飾核酸の標的メタボロミクスによる、がん免疫病態を診断する腫瘍関連バイオマーカーの探索・同定と個別化がん免疫療法の新しい治療戦略への応用を目的とした。アデノシン1リン酸、グアノシン1リン酸、イノシン1リン酸等のプリンヌクレチドに加え、シチジン1リン酸、ウリジン1リン酸がCD73の基質になることを示した。今年度は、これらヌクレオシド1リン酸によるT細胞抑制活性について、MHC-I、-II拘束性OVAペプチド特異的T細胞受容体組換マウスOT-I、-IIの脾臓細胞を抗原ペプチドで刺激し、各ヌクレオシド1リン酸の抑制効果を検討した。プリンヌクレチドのアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸は、OT-I CD8 T細胞、OT-II CD4 T細胞のOVAペプチド特異的T細胞増殖を濃度依存的に有意に抑制した。また、このT細胞増殖抑制はCD73阻害薬APCPで解消した。さらに、野生型マウスCD4 T細胞を抗CD3抗体と抗CD28抗体との共刺激、あるいはPMAとionomycinとの共刺激で活性化した場合にもアデノシン1リン酸とグアノシン1リン酸によるT細胞抑制効果が認められ、これらヌクレオシド1リン酸がT細胞を直接的な標的にすることが明らかになった。一方、ピリミジンヌクレオチドのシチジン1リン酸とウリジン1リン酸はCD73の基質ではあるが、T細胞増殖に対する抑制効果は認められなかった。代表的な修飾ヌクレオチドであるN6-メチルアデノシン1リン酸の抑制効果を検討したところ、アデノシン1リン酸と同等かそれ以上のT細胞抑制活性が示唆された。生体試料中の修飾核酸の一斉分析にはイオン化抑制の影響を完全に回避することは困難であるが、定性的な修飾核酸プロファイル解析には資することができると考える。そこで、担がんマウス生体試料中の修飾核酸についてまず初めに定性的解析を行い、候補となる修飾核酸の選定を優先して行う。候補核酸の正確な体内動態の把握が必要な場合は、安定同位体標識内部標準物質を入手あるいは合成し、標的を絞った精密測定法を開発する。1-メチルアデノシンにT細胞抑制作用が示唆されていることから、修飾核酸による免疫抑制機構解明の突破口として1-メチルアデノシンの免疫抑制作用とその産生経路について解析を進める。CD73酵素活性の評価にはマラカイトグリーン比色定量法の確立により、既存の問題解決だけでなく、酵素活性測定法のスループット性に大きなメリットを得ることができた。今後、96穴プレートを用いてCD73の修飾 | KAKENHI-PROJECT-16H04704 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16H04704 |
α-フルオロ-β-ヒドロキシエステルの新規高立体選択的合成プロセスの開発 | α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸誘導体は多様なモノフルオロ化合物を合成する際の中間体として重要な地位を占めている化合物である。この種の化合物を構築するにはアルドール型の反応を利用するのが最も一般的であるが、今日までの膨大な研究によって、モノフルオロ金属エノラートとカルボニル化合物とのアルドール反応やブロモフルオロ酢酸エチルのReformatsky反応は非立体選択的な反応であり、α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボニル骨格を高立体選択的に合成することはかなり難しいとされている。本研究では、入手の容易なジブロモフルオロ酢酸エチルからα-ブロモ-α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸エチル1を合成し、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステル骨格の立体選択的な構築法として1のスタナンによるラジカル反応、特にα-アリル化反応の立体制御法について詳細に検討した。その結果、原料1のヒドロキシル基をt-ブチルジメチルシリル基で保護したα-ブロモエステルを用いてアリル化反応を行なうと、特にβ位に芳香族置換基をもつエステルの場合に、エリトロ選択的にかつ良い収率で相当するアリル化生成物、α-アリル置換-α-フルオロ-β-シリルオキシカルボン酸エチルが得られることがわかった。一方、エステル1を保護せずにトリメチルアルミニウムで処理してβ-アルミニウムアルコキシドエステルに変換した後、ラジカル的アリル化反応を行なうと、β位の置換基が芳香族および脂肪族に関わらず、高トレオ選択的に良好な収率で対応するα-アリル化生成物が得られることが明らかになった。これらの結果は、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステルを立体選択的に合成する最初のプロセス(方法)を提供するものであり、今後、有機フッ素化学をはじめ一般有機化学や合成化学において大いに役立つものと期待される。α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸誘導体は多様なモノフルオロ化合物を合成する際の中間体として重要な地位を占めている化合物である。この種の化合物を構築するにはアルドール型の反応を利用するのが最も一般的であるが、今日までの膨大な研究によって、モノフルオロ金属エノラートとカルボニル化合物とのアルドール反応やブロモフルオロ酢酸エチルのReformatsky反応は非立体選択的な反応であり、α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボニル骨格を高立体選択的に合成することはかなり難しいとされている。本研究では、入手の容易なジブロモフルオロ酢酸エチルからα-ブロモ-α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸エチル1を合成し、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステル骨格の立体選択的な構築法として1のスタナンによるラジカル反応、特にα-アリル化反応の立体制御法について詳細に検討した。その結果、原料1のヒドロキシル基をt-ブチルジメチルシリル基で保護したα-ブロモエステルを用いてアリル化反応を行なうと、特にβ位に芳香族置換基をもつエステルの場合に、エリトロ選択的にかつ良い収率で相当するアリル化生成物、α-アリル置換-α-フルオロ-β-シリルオキシカルボン酸エチルが得られることがわかった。一方、エステル1を保護せずにトリメチルアルミニウムで処理してβ-アルミニウムアルコキシドエステルに変換した後、ラジカル的アリル化反応を行なうと、β位の置換基が芳香族および脂肪族に関わらず、高トレオ選択的に良好な収率で対応するα-アリル化生成物が得られることが明らかになった。これらの結果は、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステルを立体選択的に合成する最初のプロセス(方法)を提供するものであり、今後、有機フッ素化学をはじめ一般有機化学や合成化学において大いに役立つものと期待される。ジブロモフルオロ酢酸エチルとアルデヒドとのReformatsky型反応によりα-ブロモ-α-フルオロ-β-ヒドロキシエステル(1)を調製し,そのラジカル還元反応およびラジカルアリル化反応を検討した。還元剤として水素化トリブチルスズを,アリル化剤としてアリルトリブチルスズまたはメタリルトリブチルスズを用いて,金属反応剤,溶媒,反応温度,反応時間等の条件を変化させて反応を実施し,各反応における立体選択性について詳細に調べた。以下に,得られた重要な知見を要約する。1.分子内キレーションによる反応の立体制御を実現するために,1のヒドロキシル基を金属アルコキシドに変換させる金属反応剤(BuLi,Et_2Zn,Et_3Al,Me_3Al等)を精査した結果,Me_3Alを用いると極めて高いトレオ選択性(還元では86-96%,アリル化では83-96%)が発現することが明らかになった。2.溶媒としては,テトラヒドロフラン,ヘキサン,トルエン,ジクロロメタン(CH_2Cl_2)について検討したところ,還元ではトルエンまたはCH_2Cl_2が,アリル化ではCH_2Cl_2が最適の溶媒であることがわかった。3.還元反応は-15°C,4hまたは-78°C,6hで,アリル化反応は-15°C,6-8hで完結し,いずれも良好な化学収率で対応する還元体またはアリル化体を与えた。本研究により,α-フルオロ置換-β-ヒドロキシカルボン酸エステルおよびその誘導体を高立体選択的-トレオ選択的-に構築することが初めて可能になった。今後の研究展開としては,当合成プロセスを利用した有用なフッ素置換型標的化合物の創製を実施することの外,同一の出発物質1からエリトロ体のα-フルオロ-β-ヒドロキシエステルを高立体選択的-エリトロ選択的-に合成するプロセスを新たに開発することである。 | KAKENHI-PROJECT-11650893 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650893 |
α-フルオロ-β-ヒドロキシエステルの新規高立体選択的合成プロセスの開発 | α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸誘導体は多様なモノフルオロ化合物を合成する際の中間体として重要な地位を占めている化合物である。この種の化合物を構築するにはアルドール型の反応を利用するのが最も一般的であるが、今日までの膨大な研究によって、モノフルオロ金属エノラートとカルボニル化合物とのアルドール反応やブロモフルオロ酢酸エチルのReformatsky反応は非立体選択的な反応であり、α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボニル骨格を高立体選択的に合成することはかなり難しいとされている。本研究では、入手の容易なジブロモフルオロ酢酸エチルからα-ブロモ-α-フルオロ-β-ヒドロキシカルボン酸エチル1を合成し、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステル骨格の立体選択的な構築法として1のスタナンによるラジカル反応、特にα-アリル化反応の立体制御法について詳細に検討した。その結果、原料1のヒドロキシル基をt-ブチルジメチルシリル基で保護したα-ブロモエステルを用いてアリル化反応を行なうと、特にβ位に芳香族置換基をもつエステルの場合に、エリトロ選択的にかつ良い収率で相当するアリル化生成物、α-アリル置換-α-フルオロ-β-シリルオキシカルボン酸エチルが得られることがわかった。一方、エステル1を保護せずにトリメチルアルミニウムで処理してβ-アルミニウムアルコキシドエステルに変換した後、ラジカル的アリル化反応を行なうと、β位の置換基が芳香族および脂肪族に関わらず、高トレオ選択的に良好な収率で対応するα-アリル化生成物が得られることが明らかになった。これらの結果は、α-フルオロ-β-ヒドロキシエステルを立体選択的に合成する最初のプロセス(方法)を提供するものであり、今後、有機フッ素化学をはじめ一般有機化学や合成化学において大いに役立つものと期待される。 | KAKENHI-PROJECT-11650893 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11650893 |
線型および準線型対称双曲系の特性的境界値問題 | (1)線型対称双曲系に対する特性的境界値問題の解の正則性定理は境界行列のランクが一定という条件の下でほぼ最終的と思われる結果を既に得ていたがその証明の改良をいくつかの点で行った。例えば境界行列のランクは境界上でのみ一定なのであって境界を少し離れるともはやランクは一定でない。その為に問題を局所化して半空間に移して規準化するという方法を取るのだが結果として時間について「局所」的な解が先ず得られるのである。それを時間について延長する事によって与えられた時間間隔[O,T]上の解を得るのだがそのことの証明は以前はやや不十分であったと思う。他にもいくつかの改良点がある。従って理論としては漸く完成の域に達したと思う。(2)吸収効果をともなった半線形・非線形拡散方程式に現れる自由境界問題の一つであるサポートの分離現象を再現する数値解析法を構成した。その結果、サポートが分離するための十分条件を求める事ができた。これら条件は、半線形の場合は比較定理によって、非線形の場合は用いた差分法から得られるいくつかの評価式によってそれぞれ得られている。さらに、吸収項のない非線形拡散方程式ではサポートがある時間動かないという現象(waiting time)が見られる。このwaiting timeについての上からと下からの評価を差分式を用いて与えた。なお、以上の結果を数値的に調べるにあたっては、無限精度計算法の考えを用いて行った。(1)線型対称双曲系に対する特性的境界値問題の解の正則性定理は境界行列のランクが一定という条件の下でほぼ最終的と思われる結果を既に得ていたがその証明の改良をいくつかの点で行った。例えば境界行列のランクは境界上でのみ一定なのであって境界を少し離れるともはやランクは一定でない。その為に問題を局所化して半空間に移して規準化するという方法を取るのだが結果として時間について「局所」的な解が先ず得られるのである。それを時間について延長する事によって与えられた時間間隔[O,T]上の解を得るのだがそのことの証明は以前はやや不十分であったと思う。他にもいくつかの改良点がある。従って理論としては漸く完成の域に達したと思う。(2)吸収効果をともなった半線形・非線形拡散方程式に現れる自由境界問題の一つであるサポートの分離現象を再現する数値解析法を構成した。その結果、サポートが分離するための十分条件を求める事ができた。これら条件は、半線形の場合は比較定理によって、非線形の場合は用いた差分法から得られるいくつかの評価式によってそれぞれ得られている。さらに、吸収項のない非線形拡散方程式ではサポートがある時間動かないという現象(waiting time)が見られる。このwaiting timeについての上からと下からの評価を差分式を用いて与えた。なお、以上の結果を数値的に調べるにあたっては、無限精度計算法の考えを用いて行った。対称双曲系の特性的初期値境界値問題の解の正則性について、境界条件が特性的ではあるが、多重度は一定かつ極大非負であるという条件の下で、既に知られている一般的な正則性定理の精密化に成功した。従来よく言われてきた「解の法線方向の滑らかさの損失」であるが、その起こり方は個々の特性的初期値境界値問題によって必ずしも同じでなく、損失が大きい場合も小さい場合もあることは経験的に知られていた。これを理論的に分類する必要があることに気付いたのが本研究の出発点であった。微分の階数を表すmというパラメーターの他に、ν(ニュー)というパラメーターを導入し、(ν=0、1、2、...、m-1)、H^<m,ν>_*(Ω)というある種のソボルフ空間の中で、解を構成することが出来るのである。そして具体例として山本(大野)-白田によるMHDの線型化方程式に対する考察が、丁度ν=1の場合に相当することが分かる。我々が得た結果を一言でいえば、「法線方向の微分の損失」が階層構造を持つことを数学的に示したものである。線型対称双曲系の特性的境界値問題の解の正則性定理について境界行列のランクが一定という条件の下で最終的な結果を得た。現在までに知られている2つの結果のうちのひとつである山本(吉孝)の定理であるが、境界行列の核が時間に依存せずかつ空間変数についてはC^∞的に依存するという仮定をおいている。我々はこの仮定を以下に述べるように時間依存性を許すような形に弱めることに成功した。次にもうひとつの結果であるP.SECCHIの定理だが、この定理に述べられている諸仮定を吟味した結果、彼の結論を導くには不十分なものであることが判明した。証明のギャップを埋めることは現在のところ技術に無理であろうと思われる、SECCHIの論文は証明に誤りがありその結論は正しいとは云い切れないのである。我々は境界行列の核が時間にも空間変数にもC^∞的に依存するという仮定をつけ加えることによってSECCHIと同じ結果を得ることが出来た。現在のところこれが解の正則性定理の最終形と考えられる。(1)線型対称双曲系に対する特性的境界値問題の解の正則性定理は境界行列のランクが一定という条件の下でほぼ最終的と思われる結果を既に得ていたがその証明の改良をいくつかの点で行った。例えば境界行列のランクは境界上でのみ一定なのであって境界を少し離れるともはやランクは一定でない。その為に問題を局所化して半空間に移して規準化するという方法を取るのだが結果として時間について「局所」的な解が先ず得られるのである。それを時間について延長する事によって与えられた時間間隔[O,T] | KAKENHI-PROJECT-09440061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440061 |
線型および準線型対称双曲系の特性的境界値問題 | 上の解を得るのだがそのことの証明は以前はやや不十分であったと思う。他にもいくつかの改良点がある。従って理論としては漸く完成の域に達したと思う。(2)吸収効果をともなった半線形・非線形拡散方程式に現れる自由境界問題の一つであるサポートの分離現象を再現する数値解析法を構成した。その結果、サポートが分離するための十分条件を求める事ができた。これら条件は、半線形の場合は比較定理によって、非線形の場合は用いた差分法から得られるいくつかの評価式によってそれぞれ得られている。さらに、吸収項のない非線形拡散方程式ではサポートがある時間動かないという現象(waiting time)が見られる。このwaiting timeについての上からと下からの評価を差分式を用いて与えた。なお、以上の結果を数値的に調べるにあたっては、無限精度計算法の考えを用いて行った。 | KAKENHI-PROJECT-09440061 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09440061 |
野生遺伝子の導入による生物機能モデル動物の開発 | 本研究はバイオサイエンス部会の建議にのべられた新しいモデル動物開発の緊要性に鑑み,分子生物学,哺乳動物遺伝学,実験動物学の分野の専門家の有機的な協力を得て,マウスの野生集団から遺伝子を導入して生物機能の研究に有効なモデル動物を開発し,その特性を明らかにすることを目的として進められた.従来の実験用マウスのもつ遺伝的な変異性だけではこの種のモデルを開発するには不十分であるという観点と,これまでの実験用マウスと約100万年前に分岐した日本産野生マウス集団には独自の遺伝的変異が蓄積しているという我々の研究成果が基盤となっている.本年度の研究成果として森脇は野生集団の探索を中国大陸にまでひろげ,すでに新しいヘモグロビンの変異を見出した.また,インドネシア野生亜種系統と近交系A系統との間でRecombinant Inbred系統の育成を進めた.高木はXO雌系統を用い日本産野生マウス由来のX染色体を導入する実験を進めた.第4代に達したが, X染色体だけが別亜種になると姙性の低下がおこる.池田は日本および東南アジア由来の野生マウスがもっている白血病抵抗性遺伝子Fv-4のDNAレベルでの分析を進め,特にその発現に関与する領域を研究した.松島は日本産野生マウス集団を対象に涙液蛋白,唾液蛋白の多型を電気泳動によって分析し,多くの遺伝子座を同定した.名取は野生ラットのRTI遺伝子を分析し新しい多型を血清学的に見出し,更にDNAのRFPとしても同定した.城石は日本産野生マウスH-2領域から見出した遺伝的組換え促進遺伝子をクロン化し,その塩基配列を分析している.制限酵素による分析からはこの組換ホットスポットの大きさは1Kb以下であることがわかった.柳は野生マウスのT細胞レセプターDNAを分析し,日本産亜種に特異な配列をβ鎖の上に見出した.小幡はTLa, Qa領域のDNAプローブを作り,日本産野生マウス特有の変異を探索した.本研究はバイオサイエンス部会の建議にのべられた新しいモデル動物開発の緊要性に鑑み,分子生物学,哺乳動物遺伝学,実験動物学の分野の専門家の有機的な協力を得て,マウスの野生集団から遺伝子を導入して生物機能の研究に有効なモデル動物を開発し,その特性を明らかにすることを目的として進められた.従来の実験用マウスのもつ遺伝的な変異性だけではこの種のモデルを開発するには不十分であるという観点と,これまでの実験用マウスと約100万年前に分岐した日本産野生マウス集団には独自の遺伝的変異が蓄積しているという我々の研究成果が基盤となっている.本年度の研究成果として森脇は野生集団の探索を中国大陸にまでひろげ,すでに新しいヘモグロビンの変異を見出した.また,インドネシア野生亜種系統と近交系A系統との間でRecombinant Inbred系統の育成を進めた.高木はXO雌系統を用い日本産野生マウス由来のX染色体を導入する実験を進めた.第4代に達したが, X染色体だけが別亜種になると姙性の低下がおこる.池田は日本および東南アジア由来の野生マウスがもっている白血病抵抗性遺伝子Fv-4のDNAレベルでの分析を進め,特にその発現に関与する領域を研究した.松島は日本産野生マウス集団を対象に涙液蛋白,唾液蛋白の多型を電気泳動によって分析し,多くの遺伝子座を同定した.名取は野生ラットのRTI遺伝子を分析し新しい多型を血清学的に見出し,更にDNAのRFPとしても同定した.城石は日本産野生マウスH-2領域から見出した遺伝的組換え促進遺伝子をクロン化し,その塩基配列を分析している.制限酵素による分析からはこの組換ホットスポットの大きさは1Kb以下であることがわかった.柳は野生マウスのT細胞レセプターDNAを分析し,日本産亜種に特異な配列をβ鎖の上に見出した.小幡はTLa, Qa領域のDNAプローブを作り,日本産野生マウス特有の変異を探索した. | KAKENHI-PROJECT-62619002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62619002 |
神経細胞接着分子(N-CAM)のポリシアル酸含有糖鎖の精密構造解析と機能的役割 | 胎児期の神経系に発現される神経細胞接着分子(N-CAM)には、ポリシアル酸構造が存在し、N-CAM分子同士の特定ドメイン間のhomophilicな接着の強さを負に調節する機能をもつと言われており、神経形成過程において重要な役割を担っている。このポリシアル酸による接着制御の分子機構を解明することを目的として、本研究はN-CAMポリシアル酸含有糖鎖の精密な構造解析を行い、次の成果が得られた。(1)ニワトリ胎児型N-CAMのポリシアル酸含有糖鎖の構造決定:N-CAM由来のポリシアロ糖ペプチドを、ニワトリ14日胚1,500個体の脳から精製し、その構造を組成分析、メチル化分析、^1HNMRおよびFAB-MS測定の結果に基づいて決定した。triantenna構造をもつ硫酸化N-型糖鎖をコア糖鎖としてもつことを明らかにした。この硫酸化構造がポリシアル基の形成に関与する酵素の認識に重要な構造単位であることが示唆された。(2)ニワトリ胎児型N-CAMのポリシアル酸含有糖鎖のポリシアリル基には、O-アセチル基が存在することが初めて示された。O-アセチル基はNeu5Ac残基のC-7または8位に結合していると考えられる。(3)ポリシアル酸検出プローブとしてのバクテリオファージK1F由来エンドシアリダーゼ(Endo-N)のポリシアリル糖鎖に対する反応特異性を解析し、コア糖鎖にシアル酸残基を12個残すように切断することが初めて明らかになった。胎児期の神経系に発現される神経細胞接着分子(N-CAM)には、ポリシアル酸構造が存在し、N-CAM分子同士の特定ドメイン間のhomophilicな接着の強さを負に調節する機能をもつと言われており、神経形成過程において重要な役割を担っている。このポリシアル酸による接着制御の分子機構を解明することを目的として、本研究はN-CAMポリシアル酸含有糖鎖の精密な構造解析を行い、次の成果が得られた。(1)ニワトリ胎児型N-CAMのポリシアル酸含有糖鎖の構造決定:N-CAM由来のポリシアロ糖ペプチドを、ニワトリ14日胚1,500個体の脳から精製し、その構造を組成分析、メチル化分析、^1HNMRおよびFAB-MS測定の結果に基づいて決定した。triantenna構造をもつ硫酸化N-型糖鎖をコア糖鎖としてもつことを明らかにした。この硫酸化構造がポリシアル基の形成に関与する酵素の認識に重要な構造単位であることが示唆された。(2)ニワトリ胎児型N-CAMのポリシアル酸含有糖鎖のポリシアリル基には、O-アセチル基が存在することが初めて示された。O-アセチル基はNeu5Ac残基のC-7または8位に結合していると考えられる。(3)ポリシアル酸検出プローブとしてのバクテリオファージK1F由来エンドシアリダーゼ(Endo-N)のポリシアリル糖鎖に対する反応特異性を解析し、コア糖鎖にシアル酸残基を12個残すように切断することが初めて明らかになった。 | KAKENHI-PROJECT-06680576 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680576 |
粘土鉱物-色素複合体を用いた強発光材料の開発 | シアニン類縁体、ビオロゲン誘導体、ビピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体などを使って、それらの溶液中とナノシート上における発光挙動について検討した。その結果、分子内に回転部位を有する色素の多くで、ナノシート上では、溶液中に比べ、著しく発光強度が増強されることがわかった。蛍光量子収率、蛍光寿命の測定から、その発光増強の因子について検討した。放射速度の増加、もしくは、無放射失活速度の抑制が発光増強の原因であることを明らかとした。強発光性材料を作成するために粘土鉱物ナノシート上における色素の光化学挙動について検討した。ナノシート上の負電荷分布を考慮に入れて、分子内に三点、または四点のカチオン部位を有する色素を設計し、その合成を行った。それら色素の光化学挙動を、定常蛍光法、時間分解蛍光法により解析し、蛍光量子収率、蛍光寿命を求めた。これらの結果から、放射失活速度定数と無放射失活速度定数を求めた。ナノシートと複合化することで予期したとおり、著しい蛍光強度の増大が観察された。また、その要因は、色素の種類により、放射失活速度定数の増大、または、無放射失活速度定数の減少という二通り両方があり得ることが明らかとなった。ナノシート上に色素分子の構造が固定化されることにより、基底状態、励起状態の双方が類似する事により、これらの効果が得られたものと考察される。近年注目されている、凝集誘起発光(aggregation induced emission)では、色素の凝集による光化学特性の不明瞭化があるが、本手法では、実質的に完全な透明状態が保たれ、その応用性は高いと考えられる。また、適用する色素の構造を元に、蛍光増強がなされるかどうかを予想することも比較的容易である。また、色素によっては粉末状態としても発光が観察された。本手法で見出した原理を、表面固定誘起発光(Surface-Fixation Induced Emission(S-FIE))と名付けた。新たな蛍光増強原理を見出すことができた。粘土鉱物-色素複合体を用いた強発光材料の開発のタイトルのもと研究を進めた結果、下記のように優れた成果を得た。20を越える種類の化合物について系統的に、粘土鉱物との複合化による発光増強現象を調査した結果、ほとんどの色素において普遍的に発光増強が観察されることがわかった。粘土鉱物としてはおもに化学合成粘土鉱物である合成サポナイトを用いている。この材料は溶液状態、固体膜状態においてほぼ完全に可視域で無色透明となることができ、光学材料としての使用に適した性質を有している。適用する色素によっては10倍以上の発光増強が見られ、機能性光材料の開発において本技術が極めて有望であることがわかった。具体的には、ビオロゲン類、ポルフィリン類、ジミジウム塩類、スチルバゾリウム塩類などにおいて、著しい発光増強が誘起された。溶液状態、固体状態ともに著しい発光増強が認められたが、粘土鉱物は無色透明であるため視認性も非常に良い。また、発光増強のメカニズムについても、蛍光量子収率、蛍光寿命の解析の元に考察をすすめ、放射失活速度定数の増大、無放射失活速度定数の減少が、発光増強に大きく寄与することを明らかとした。具体的には温度効果実験を行い、エネルギーギャップ則に基づくデータの解析を行った。これらの結果からナノシート上の色素もエネルギーギャップ則に基づく発光挙動を示すことが明らかとなり、さらには、振電相互作用もこれらの発光増強機構に関与していることが示唆される結果を得た。これらの成果をもとに、国内外で招待講演などを行い、また、海外学術雑誌において、Invited Feature Articleとして総説による成果発信を行った。特に本現象を、Surface-fixation induced emission (S-FIE)と名付けた。今後はさらに適用色素を増加させるとともに応用面も見据えた研究展開をはかる予定である。シアニン類縁体、ビオロゲン誘導体、ビピリジン誘導体、ポルフィリン誘導体などを使って、それらの溶液中とナノシート上における発光挙動について検討した。その結果、分子内に回転部位を有する色素の多くで、ナノシート上では、溶液中に比べ、著しく発光強度が増強されることがわかった。蛍光量子収率、蛍光寿命の測定から、その発光増強の因子について検討した。放射速度の増加、もしくは、無放射失活速度の抑制が発光増強の原因であることを明らかとした。今後は、より程度の大きい蛍光増強を見出すとともに、発光増強例を、より多く見出すことが望まれる。ここまでの研究により、当初提案した、粘土鉱物との複合化による発光増強について、予想以上に好結果が得られている。今後は、より応用面を意識した検討を手厚く行う予定である。例えば、固体応対における検討、環境応答性の付与、必要な波長における発光色素の探索などに重点を置き、研究をすすめる予定である。特に環境応答性を検討することで、表示材料、センサーなどの開発に結びつく可能性があり、高い発光効率を利用すれば、省エネルギーにも寄与することが可能であると考えている。光化学前年度に購入した試薬類を用いた研究が進展し、それらの試薬類での研究が大幅に増加したため。次年度は応用も見据えた研究を行うため、試薬類などの支出を行う予定である。 | KAKENHI-PROJECT-15K13291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K13291 |
硫化銅鉱テトラへドライトの格子・電子物性の解明と高性能熱電変換鉱物の創製 | 銅ベースの鉱物であるテトラヘドライトは,その高い熱電変換性能,ガラス並みに低い熱伝導率,および金属ー半導体転移のために,高い関心を集めている。本研究では,テトラヘドライトの輸送・熱特性と結晶・フォノン構造を調べた。その結果,銅原子の低エネルギーで非調和な振動(ラットリング)がガラス的な熱伝導率と相転移の発現に関係していると判った。また,テトラヘドライトの熱電性能を銅のゲルマニウムおよびスズ置換により高めた。また,新規な熱電鉱物の探索を行った。銅をベースにした鉱物と鉱物関連物質のコルーサイトとチオスピネルがそれぞれ660 Kにおいて高い熱電変換性能を示すことを見出した。本研究では,高性能熱電変換物質であるテトラへドライトCu12Sb4S13の格子・電子構造を調べることで,室温以上での低い熱伝導率と高い熱電能の原因を明らかにし,さらに85 Kでの金属ー半導体転移の起源を解明することを目的とする。また,テトラへドライトの熱電変換性能の向上と,新規な高性能物質の創製を目指す。本年度は,以下に示す成果を得た。(1)相転移のない置換系のCu10Zn2Sb4S13を用いた比熱と熱伝導率の測定から格子構造を調べた。比熱測定から,特性温度20 Kの低エネルギーフォノンモードが在ると判った。この低エネルギーモードは,[CuS3]三角形中のCuの面直方向への大振幅振動に起因すると予想した。さらに,Cu10Zn2Sb4S13の熱伝導率が4 K付近にプラトーを有するというシリカガラスに似た振る舞いを示すことを見出した。これは,熱を伝える音響フォノンと低エネルギーモードが強く相互作用していることを示唆する。(2)相転移の原因に関する知見を得るために,金属ー半導体転移に対する圧力効果を調べた。転移は物理的圧力の印加により抑制され,1 GPa以上の圧力で消失する。一方,SbをAsで置換して化学的圧力を印加すると相転移は安定化し,Cu12As4S13は124 Kで転移することが判った。現在,これらの結果と結晶構造の特徴を関係付けて相転移の機構について考察している。(3)新規な熱電変換物質の探索により,硫化銅鉱物のコルーサイトCu26V2M6S32(M = Ge,Sn)が660 Kにおいて高い無次元性能指数ZT = 0.73(Ge), 0.56(Sn)を示すことを見出した。コルーサイトが高い性能を示すのは,Cuー3dとSー3pの混成軌道からなる価電子帯が良い電気的特性をもたらし,結晶構造の複雑さが熱伝導率を下げているためであると判った。本研究は,硫化銅鉱物のテトラへドライトCu12Sb4S13における高い熱電能とガラス的な格子熱伝導率,および85 Kでの金属ー半導体転移の原因を明らかにすることを目的とする。また,硫化銅鉱物を対象として,高性能な熱電変換物質の創出を目指す。本年度は,前年度に実施したテトラへドライトのマクロ物性の研究を進めると共に,放射光X線回折実験,中性子非弾性散乱実験,および光電子分光実験から結晶・格子・電子構造に関する知見を得た。また,本研究で発見した高性能熱電物質のコルーサイトCu26V2Sn6S32の高性能化を目的としてキャリア密度制御を行った。研究実績の概要を以下に記す。(1)Cu12Sb4S13を相転移温度以下まで冷却すると,結晶構造が立方晶(axaxa)から正方晶(2ax2ax2c)へ変化することが判った。それと同時に,Cu原子の大振幅振動に由来する低エネルギーフォノン構造が大きく変化し,さらにフェルミ準位における電子状態密度が減少することを明らかにした。他方,SbをAsで全置換したCu12As4S13も相転移を示すが,転移温度以下でも立方格子(axaxa)を維持することが判った。(2)テトラへドライトとコルーサイトのフォノン物性を比較した。テトラへドライトは低エネルギー光学的モードを持つが,その様なモードは結晶的な熱伝導率を示すコルーサイトには存在しない事が判った。この比較から,テトラへドライトにおけるガラス的な熱伝導率の発現には低エネルギーモードが重要な役割を果たしていると結論できる。(3)コルーサイトCu26V2Sn6S32のCuをZnで置換して電子をドープし,Snを欠損させてホールをドープした試料の性能を評価した。Sn欠損系では400°Cでの無次元性能指数が10%程度向上し0.62となった。テトラへドライトCu12Sb4S13の多結晶試料および単結晶の作製方法を確立した。その試料を用いたマクロ物性測定とミクロ構造解析から,ガラス的な熱伝導率と金属ー半導体転移に関する知見が得られている。また,As置換系Cu12As4S13も相転移を示すことを見出した。さらに,それらのZn置換やAg置換試料の作製と測定も行っている。この様に,昨年度末に立てた研究推進方策を順調に遂行している。コルーサイトCu26V2Sn6S32の熱電変換性能の向上を目指したが,その増分はわずかであった。しかし,CuのZn置換による電子ドープとSn欠損によるホールドープという2つのキャリア制御の方法を明らかにしたことは大きな進展である。 | KAKENHI-PROJECT-26820296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820296 |
硫化銅鉱テトラへドライトの格子・電子物性の解明と高性能熱電変換鉱物の創製 | 本研究では,テトラへドライトCu12Sb4S13における高い熱電能とガラス的な格子熱伝導率,および85 Kでの金属ー半導体転移の原因の解明を目指す。また,硫化銅鉱物をベースにして高性能熱電物質を開発することを目的としている。本年度の研究実績の概要を以下に記す。(1)Cu12Sb4S13のCu+をGe4+およびSn4+で置換したCu12-xMxSb4S13(x≦0.6; M=Ge,Sn)を作製した。置換によりホールキャリア密度が減少した結果,M = Ge, Snの665 Kでの無次元性能指数ZTはx=0の0.46からx=0.3ー0.5の0.65まで40%も増大した。また,相転移がわずかな量のGe/Sn置換により消失すると判った。これは相転移の発現に電子構造が関係している可能性を示唆する。(3)コルーサイトのSをSeで置換しSnを欠損させた系Cu26V2Sn6-zS32-xSexを作製した。x=4; z=0.25, 0.5の試料の665 KでのZTは0.65に達し,x=z=0よりも14%増加した。(4)硫化銅鉱物の関連物質であるチオスピネルCu2TrTi3S8を合成し,660 Kでの出力因子が0.6 mW/K2mもあることを見出した。この高い出力因子のために,熱伝導率は2 W/Kmと高いものの,660 KでのZTは0.2に達した。銅ベースの鉱物であるテトラヘドライトは,その高い熱電変換性能,ガラス並みに低い熱伝導率,および金属ー半導体転移のために,高い関心を集めている。本研究では,テトラヘドライトの輸送・熱特性と結晶・フォノン構造を調べた。その結果,銅原子の低エネルギーで非調和な振動(ラットリング)がガラス的な熱伝導率と相転移の発現に関係していると判った。また,テトラヘドライトの熱電性能を銅のゲルマニウムおよびスズ置換により高めた。また,新規な熱電鉱物の探索を行った。銅をベースにした鉱物と鉱物関連物質のコルーサイトとチオスピネルがそれぞれ660 Kにおいて高い熱電変換性能を示すことを見出した。これまでに,テトラへドライトCu10Zn2Sb4S13の熱伝導率がガラス的な温度依存性を示すことと,Cuの大振幅振動に由来するであろう低エネルギーフォノンモードが存在することを見出した。しかし,室温以上でテトラへドライトの熱伝導率が低く抑えられている原因は明らかにできていない。また,金属ー半導体転移を示すCu12Sb4S13の圧力実験から,物理的圧力に対しては転移が抑制され,化学的圧力に対しては転移が安定化するという対照的な結果を得た。この結果を理解するためには,低温半導体相と圧力下での結晶構造の情報が不可欠である。この様に,テトラへドライトのマクロ物性研究については概ね順調に進展しているが,低熱伝導率と高い熱電能および相転移の起源を解明するためには,ミクロ測定により結晶・格子・電子構造を詳細に調べる必要がある。新規な熱電変換物質の探索は当初の計画以上に進んでいる。硫化銅鉱物の一種であるコルーサイトCu26V2M6S32(M = Ge, Sn)の合成方法およびホットプレス焼結法による高密度多結晶体の作製方法を確立し,この鉱物が約400°Cにおいて高い無次元熱電性能指数ZT = 0.73(Ge), 0.56(Sn)を示すことを見出した。テトラへドライトCu12Sb4S13およびその置換系のマクロ物性測定とミクロ構造解析の結果を取りまとめ,金属ー半導体転移の原因を明らかにする。Cu原子の大振幅振動が相転移の引き金になっていると考えられるので,原子変位パラメータと低エネルギーフォノンモードの関係を詳細に探る。 | KAKENHI-PROJECT-26820296 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26820296 |
オープンデータを活用した地域向けアプリケーションの持続的開発・運用基盤 | 研究の進捗状況を踏まえ,当初掲げた3つのテーマのうち,テーマ1とテーマ2を統合して大きく2つのテーマについて研究を実施した.テーマ1「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発」とテーマ2「開発アプリの複数地域における試用とその受容に関する統計的な分析」を統合し,「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発とその受容」をテーマとして設定した.本テーマにおいては,福岡県新宮町を対象として構築したシステムを国内の他の地域における転用可能性の検討とその評価結果に基づく改良を実施する.そのためには,対象地域に適合した観光語彙基盤を構築する必要があるため,そのためのデータ収集と解析,これに基づく観光語彙基盤の設計とシステムの実装とその評価を行った.また,オープンデータやビッグデータの活用は社会的課題の解決のために有効な手段となりうる一方で,これらのデータには,個人に関する情報が含まれている場合があり,その循環的な利用にはEUにおいて発効したEU一般データ保護規則(GDPR)を考慮した運用が必須となる.そこで,オープンデータやビッグデータを利活用する上での課題,特に個人情報保護を中心とした法的なリスクや課題について整理し,個人情報保護とのバランスを考慮したオープンデータ・ビッグデータ利活用の在り方について検討した.これらの成果については,査読付きのジャーナルと国際会議において投稿,採択された.テーマ3については,オープンデータの利活用において先進的な英国南部の事例として,オープンデータを活用しているNPOやEUプロジェクトの関係者へのインタビューを実施した.その結果,データ収集過程においては,ある程度の長期間にわたるデータの可用性と財政的な持続性が重要な要件であることを確認した.研究成果発表は当初の予定通り進めることができた一方で、平成30年度頭に福岡工業大学より移設したデータ蓄積用サーバの調子が悪く、稼働環境の再設定作業を行なった結果、3ヶ月間ほどサーバを起動することができない期間が生じてしまった。このため、データの蓄積作業に遅延が生じている。また、英国のオープンデータ関連プロジェクトの訪問調査日程を再調整する必要があり、渡航時期の再調整を行なった。研究期間を1年間延長し,引き続き,前年度の方針を踏襲し,当初掲げた3つのテーマのうち,テーマ1とテーマ2を統合して大きく2つのテーマについて研究を実施する.テーマ1「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発」とテーマ2「開発アプリの複数地域における試用とその受容に関する統計的な分析」を統合し,「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発とその受容」をテーマとして設定している.本テーマにおいては,福岡県新宮町を対象として構築したシステムを国内の他の地域における転用可能性の検討とその評価結果に基づく改良を実施する.そのためには,対象地域に適合した観光語彙基盤を構築するためのデータ収集と解析,これに基づく観光語彙基盤の設計とシステムの実装とその評価を行う.対象地域としては,キャンパスの位置する東京都渋谷区周辺とする.テーマ3「経済学的分析によるアプリの継続的運用環境の評価」については,今年度実施した事例調査に基づいて,主にデータの収集・分析と公開,システムの開発・運用と更新の2点においてオープンデータの利活用モデルの評価分析を行う.特に初年度において調査した事例の経過分析を実施する.平成28年度は,当初掲げた3つのテーマを実施した.以下,各テーマの研究実績について整理する.まず,テーマ1「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発」については,地域の観光資源に関する情報流通を促進するために,福岡県新宮町において収集された観光情報を対象として,情報処理振興機構の共通語彙基盤をベースとした観光語彙基盤のプロパティに沿って新宮町LOD(Linked Open Data)を作成した.そして,ポータルサイトのプロトタイプを構築し,提案手法による意味検索機能の高度化が実現できたことを確認した.テーマ2「開発アプリの複数地域における試用とその受容に関する統計的な分析」については,行政主導,地域連携によるオープンデータの利活用環境が整っていない地域における市民主導によるオープンデータ環境整備推進の試行として,具体的に山梨県の観光情報の収集と発信を目的としたスマートフォン用のプロトタイプアプリを試作し,製作コストの検証と試用を行った.その結果,試作アプリの受容には,効果的な活用環境整備が必須であることを確認した.テーマ3「経済学的分析によるアプリの継続的運用環境の評価」については,事例調査として,平成28年10月に,オープンデータ・バロメータによるランキングが首位の英国のうち,スコットランドにおけるオープンデータ整備状況の調査を実施した.その結果,スコットランドでは,ユーザ参画を基本として,行政主導,地域連携でオープンデータを活用したアプリの開発が行われており,アプリの利用を促進することで,データを継続的に最新に保つことや,アプリ自体を頻繁なアップデートができるだけ必要ないような設計にすることの必要性が認識され,持続的なオープンデータの利活用環境の構築が目指されていることを確認した.[研究実績の概要]において記したように,当初掲げた3つのテーマのうち,テーマ1とテーマ3については,初年度の平成28年度は概ね計画通りの作業を実施することができた.一方で,テーマ2の「開発アプリの複数地域における試用とその受容に関する統計的な分析」については,平成28年度において開発したものが利用地域として範囲を限定するものにとどまっており,受容に関する統計的な分析の対象となるレベルには達していない.この点において当初の計画よりやや遅れたものとなっている.当初掲げた3つのテーマを分担者と共に実施した.以下,各テーマの研究実績について整理する. | KAKENHI-PROJECT-16K00465 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00465 |
オープンデータを活用した地域向けアプリケーションの持続的開発・運用基盤 | テーマ1「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発」では,初年度に構築したシステムを改良した.自治体などによりオープンデータ化も進んでいるが,これらのデータ構造は主語・述語・目的語の3組(Triple)で構成されるLinked Open Data(LOD)がUniform Resource Identifier(URI)ではなく文字型のリテラルで表現されている場合が多く.また,用語も十分に統一が図られていないので,データ間の繋がりもリンクが多くはない.これらの問題に対処するため,福岡県糟屋郡新宮町の観光情報サイトを対象に,観光語彙基盤を新たに定義し,クラス,ドメイン,プロパティからなる語彙体系を定義し,出来る限りURIで表現しWebサイトにもコンテンツを構造化して知識ベース化を図った観光情報サイトを構築した.これにより新宮町の観光に関連する質問応答システムを構築し,ほぼ質問に対して正しく回答できることを確認した.テーマ2「開発アプリの複数地域における試用とその受容に関する統計的な分析」では,オープンデータの活用が進んでいる福井県鯖江市の状況についての調査を行い,他の地域の観光情報に対してテーマ1の成果を活用するためんの検討を行った.テーマ3「経済学的分析によるアプリの継続的運用環境の評価」については,オープンデータの種類を時間軸に対して静的なものと動的なものに分類し,リアルタイムでデータ収集を行った結果を活用する公共交通情報を例にデータの精度とそのコストのバランスについての検討を進めた.研究成果については積極的に対外発表に努め,LOD Challenge 2017に応募した結果,「ゴールドスポンサー賞: JIST賞」を受賞した.[研究実績の概要]において記したように,当初掲げた3つのテーマのうち,テーマ1とテーマ2については,概ね計画通りの作業を実施し,研究成果をあげることができた.その結果,オープンデータを活用した地域向けアプリケーションの開発・運用が持続的に展開できているケースとそうでないケース間の重要な差異として,オープンデータの持続的な利活用にはLOD化の推進が極めて重要であるという知見が得られた.この結果に基づき,積極的なLOD化を推進しているケースにおけるより具体的な事例調査分析が必要であるとの判断に到達し,具体的な検討項目の見直しを行った.この点において当初の計画よりやや遅れたものとなっている.研究の進捗状況を踏まえ,当初掲げた3つのテーマのうち,テーマ1とテーマ2を統合して大きく2つのテーマについて研究を実施した.テーマ1「リンクAPIを利用した情報の構造化による地域コミュニティ支援システムとアプリ開発」とテーマ2 | KAKENHI-PROJECT-16K00465 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K00465 |
水晶体上皮細胞内でのグルタチオンレドックス回路によるデヒドロアスコルビン酸の還元 | イヌ水晶体上皮細胞をグルコースを含まない(Glu(-))培養液で30分3時間、1mMのDHAと共に培養した場合(以下-Glu+DHA)、細胞内のGSHは60100%酸化され走査型電子顕微鏡にて著しい形態変化を認めた。グルコースを含む(Glu(+))培養液で同様の実験を行った場合(以下+Glu+DHA)、GSHの酸化はほとんどなく形態変化もみられなかった。グルタチオンレダクターゼ阻害剤である0.3mMのBCNUで30分pre-cultureした後、Glu(+)の培養液で1mMのDHAとともに培養した場合(以下+BCNU+Glu+DHA)、細胞内のGSHは55100%酸化され著しい形態変化を認めた。Glu(-)の培養液でDHAの濃度を変えて30分培養した場合、細胞内のGSHはDHAの濃度依存性に低下し、GSSGは増加した。0.53mMのDHAとともに30分培養した場合、ペントースリン酸回路の活性は611倍の上昇を認めた。(+BCNU+Glu+DHA)の条件では活性の上昇はなかった。ウサギ培養水晶体を(-Glu+DHA)で13時間培養した場合、水晶体上皮細胞内のGSSGは2259%増加し、赤道部および前嚢下に混濁を生じた。(+Glu+DHA)では、GSHの酸化はほとんどなく水晶体の混濁もごく軽度であった。(+BCNU+Glu+DHA)の条件で培養した場合、細胞内のGSSGは4789%増加し水晶体赤道部および前嚢下に混濁を認めた。0.53mMのDHAとともに30分培養した場合、ペントースリン酸回路の活性は611倍の上昇を認めた。(+BCNU+Glu+DHA)の条件では活性の上昇はなかった。イヌ水晶体上皮細胞および培養ウサギ水晶体中には、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼの酵素活性認めなかった。グルタチオンレドックス回路が正常に機能しない条件で、水晶体や水晶体上皮細胞をDHAに暴露した場合、上皮細胞中のGSHは減少しGSSGは増加し水晶体の混濁および著しい細胞の形態変化を生じた。水晶体上皮細胞内でのDHAの還元は、グルタチオンレドックス回路により酵素を介さずに行われることが明かになった。DHAは酸化障害を生じるため、水晶体上皮細胞内での還元機構はきわめて重要である。DHAの蓄積による水晶体の混濁を起こさないために、グルタチオンレドックス回路の活性を正常に維持することがきわめて重要であると考えられた。イヌ水晶体上皮細胞をグルコースを含まない(Glu(-))培養液で30分3時間、1mMのDHAと共に培養した場合(以下-Glu+DHA)、細胞内のGSHは60100%酸化され走査型電子顕微鏡にて著しい形態変化を認めた。グルコースを含む(Glu(+))培養液で同様の実験を行った場合(以下+Glu+DHA)、GSHの酸化はほとんどなく形態変化もみられなかった。グルタチオンレダクターゼ阻害剤である0.3mMのBCNUで30分pre-cultureした後、Glu(+)の培養液で1mMのDHAとともに培養した場合(以下+BCNU+Glu+DHA)、細胞内のGSHは55100%酸化され著しい形態変化を認めた。Glu(-)の培養液でDHAの濃度を変えて30分培養した場合、細胞内のGSHはDHAの濃度依存性に低下し、GSSGは増加した。0.53mMのDHAとともに30分培養した場合、ペントースリン酸回路の活性は611倍の上昇を認めた。(+BCNU+Glu+DHA)の条件では活性の上昇はなかった。ウサギ培養水晶体を(-Glu+DHA)で13時間培養した場合、水晶体上皮細胞内のGSSGは2259%増加し、赤道部および前嚢下に混濁を生じた。(+Glu+DHA)では、GSHの酸化はほとんどなく水晶体の混濁もごく軽度であった。(+BCNU+Glu+DHA)の条件で培養した場合、細胞内のGSSGは4789%増加し水晶体赤道部および前嚢下に混濁を認めた。0.53mMのDHAとともに30分培養した場合、ペントースリン酸回路の活性は611倍の上昇を認めた。(+BCNU+Glu+DHA)の条件では活性の上昇はなかった。イヌ水晶体上皮細胞および培養ウサギ水晶体中には、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼの酵素活性認めなかった。グルタチオンレドックス回路が正常に機能しない条件で、水晶体や水晶体上皮細胞をDHAに暴露した場合、上皮細胞中のGSHは減少しGSSGは増加し水晶体の混濁および著しい細胞の形態変化を生じた。水晶体上皮細胞内でのDHAの還元は、グルタチオンレドックス回路により酵素を介さずに行われることが明かになった。DHAは酸化障害を生じるため、水晶体上皮細胞内での還元機構はきわめて重要である。DHAの蓄積による水晶体の混濁を起こさないために、グルタチオンレドックス回路の活性を正常に維持することがきわめて重要であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-07771562 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07771562 |
全身性エリテマトーデスにおけるCTLA-4遺体子変異体の発現解析と臨床的意義 | 本研究で得られた研究実績の概要は以下の通りである.1.CTLA-4遺伝子変異体のクローニングと塩基配列の決定:SLEの末梢血単核細胞より膜貫通領域をコードするエクソン3が選択的スプライシングによって欠失したCTLA-4遺伝子変異体をクローニングした.塩基配列より細胞外ドメインはリガンドとの結合領域を保持するが,C端側には22個の非CTLA-4アミノ酸の付加が推定された.2.CTLA-4遺伝子変異体による蛋白発現:CTLA-4遺伝子変異体組換え発現ベクターをCOS-7細胞に遺伝子導入すると,培養上清には可溶性CTLA-4活性が検出された.3.可溶性CTLA-4特異的モノクローナル抗体の作製とサンドイッチELISAの確立:C端側非CTLA-4アミノ酸をペプチド合成し,ペプチド-KLHをマウスに過免疫したのち,細胞融合法により可溶性CTLA-4に反応するモノクローナル抗体H11.6(IgG2a,κ)を作製した.既存のモノクローナル抗CTLA-4抗体との組み合わせによって可溶性CTLA-4を検出するサンドイッチELISAを初めて確立した.4.SLEにおける血清中可溶性CTLA-4レベルの測定と臨床的意義:本研究にて確立したサンドイッチELISA法により,SLE症例と健常者の血清中可溶性CTLA-4レベルを測定した.SLE群では健常者群に比較して可溶性CTLA-4レベルが有意に低下していた(P<0.03).可溶性CTLA-4レベルと臨床検査データおよびステロイド1日量などとの有意な相関は認めないが,CTLA-4レベルの低下がT細胞活性化の持続に関与する可能性が示唆された.5.可溶性CTLA-4の構造解析と存在様式:可溶性CTLA-4を含む培養上清をSuperose 12 HPLCにて解析すると,可溶性CTLA-4活性は分子量約26,000の位置に分画された.しかし,ヒト血清と混合したのちのSuperose 12HPLCおよび陰イオン交換クロマトグラフィー解析から,血清中ではアルブミンが可溶性CTLA-4のキャリア蛋白であることが初めて明らかとなった.本研究で得られた研究実績の概要は以下の通りである.1.CTLA-4遺伝子変異体のクローニングと塩基配列の決定:SLEの末梢血単核細胞より膜貫通領域をコードするエクソン3が選択的スプライシングによって欠失したCTLA-4遺伝子変異体をクローニングした.塩基配列より細胞外ドメインはリガンドとの結合領域を保持するが,C端側には22個の非CTLA-4アミノ酸の付加が推定された.2.CTLA-4遺伝子変異体による蛋白発現:CTLA-4遺伝子変異体組換え発現ベクターをCOS-7細胞に遺伝子導入すると,培養上清には可溶性CTLA-4活性が検出された.3.可溶性CTLA-4特異的モノクローナル抗体の作製とサンドイッチELISAの確立:C端側非CTLA-4アミノ酸をペプチド合成し,ペプチド-KLHをマウスに過免疫したのち,細胞融合法により可溶性CTLA-4に反応するモノクローナル抗体H11.6(IgG2a,κ)を作製した.既存のモノクローナル抗CTLA-4抗体との組み合わせによって可溶性CTLA-4を検出するサンドイッチELISAを初めて確立した.4.SLEにおける血清中可溶性CTLA-4レベルの測定と臨床的意義:本研究にて確立したサンドイッチELISA法により,SLE症例と健常者の血清中可溶性CTLA-4レベルを測定した.SLE群では健常者群に比較して可溶性CTLA-4レベルが有意に低下していた(P<0.03).可溶性CTLA-4レベルと臨床検査データおよびステロイド1日量などとの有意な相関は認めないが,CTLA-4レベルの低下がT細胞活性化の持続に関与する可能性が示唆された.5.可溶性CTLA-4の構造解析と存在様式:可溶性CTLA-4を含む培養上清をSuperose 12 HPLCにて解析すると,可溶性CTLA-4活性は分子量約26,000の位置に分画された.しかし,ヒト血清と混合したのちのSuperose 12HPLCおよび陰イオン交換クロマトグラフィー解析から,血清中ではアルブミンが可溶性CTLA-4のキャリア蛋白であることが初めて明らかとなった.平成11年度の研究計画を実行し、以下の研究成果が得られた。SLE症例の末梢血単核細胞において全長サイズのCTLA-4遺伝子発現をRT-PCR法にて解析した。SLEでは予想全長サイズのPCR産物と共に,それより約100塩基対短いPCR産物が明確に検出された.後者のPCR産物をTAベクターにサブクローニングして塩基配列を決定すると、1塩基のみ異なる2種類のCTLA-4cDNA変異体が得られ、何れもエクソン3の110塩基対が欠損していた。エクソン3は細胞外ドメイン基部と膜貫通領域をコードすることから、このCTLA-4cDNA変異体は、フレームシフトにより22個の非CTLA-4アミノ酸配列をC端側に有する可溶型CTLA-4蛋白をコードすることが予想された。シグナル配列内に存在する1塩基置換は、既に報告されている遺伝子多型の部位であったことから、両CTLA-4cDNA変異体は対立遺伝子における選択的スプライシングにより生成されると考えられた。CTLA | KAKENHI-PROJECT-11670432 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670432 |
全身性エリテマトーデスにおけるCTLA-4遺体子変異体の発現解析と臨床的意義 | -4cDNA変異体をSRα系発現ベクターに組換え、COS-7細胞に遺伝子導入した。培養上清中には、抗CTLA-4ポリクローナル抗体と同モノクローナル抗体を使用したサンドイッチELISAにて検出される蛋白が同定されたことから、CTLA-4cDNA変異体は少なくともCTLA-4の細胞外ドメインを含む可溶型蛋白を実際にコードすることがわかった。3.CTLA-4cDNA変異体がコードする可溶型CTLA-4特異的モノクローナル抗体の作製可溶型CTLA-4に特異的なモノクローナル抗体を作製するために、C端側非CTLA-4アミノ酸を合成し、このペプチドのKLH抱合体をマウスに過免疫し、細胞融合法にてモノクローナル抗体を作製した。クローンH11.6(IgG2a,κ)は、ペプチドのみならず可溶型CTLA-4分子も認識でき、既存の抗CTLA-4抗体との組合せによるサンドイッチELISA法を確立した。平成12年度の研究計画を実行し,以下の研究成果を得た.1.可溶性CTLA-4の臨床的意義前年度において作製したモノクローナル抗可溶性CTLA-4抗体(H11.6 : IgG2a,κ)を使用したサンドイッチELISA法により,全身性エリテマトーデス(SLE)患者(n=49)と健常者(n=36)の血清中可溶性CTLA-4レベルを測定した.健常者群では中央値49.3U/mlに対してSLE群では中央値33.0U/mlであり,SLE群では健常者群に比較して可溶性CTLA-4レベルが有意に低下していた(P<0.03).健常者群ではある一定レベル以上の可溶性CTLA-4が認められるのに対して,SLE群では可溶性CTLA-4が血清中に殆ど認められない症例が約22%(11/49)も存在していた.可溶性CTLA-4低下SLEは白血球数減少や補体価低下傾向が認められ,SLEの疾患活動性を反映していると考えられた.2.可溶性CTLA-4の構造解析と存在様式可溶性CTLA-4cDNAの発現ベクターをFuGENE6法によりCOS-7細胞に遺伝子導入し,低血清培養液中の可溶性CTLA-4活性をELISA法により確認した後,Superose 12 HPLCにて解析した.可溶性CTLA-4活性はヒト血清アルブミン(HSA)ピークとは異なる分子量約26,000の位置に検出されたことから,二量体として存在することが明らかとなった.次に血清中の存在様式を調べるために,可溶性CTLA-4活性のない健常者血清と混合して同様に解析すると,可溶性CTLA-4活性はアルブミンピークに一致していた.また,この活性ピークを陰イオン交換クロマトグラフィーにて再解析しても,アルブミンと可溶性CTLA-4活性は同一ピークを示したことから,可溶性CTLA-4のキャリア蛋白はアルブミンであることが初めて明らかとなった.しかし,可溶性CTLA-4を精製HSAと混合しても,両ピークは一致しないことから,血清中の第三の成分が可溶性CTLA-4とアルブミンの会合に関与している可能性も示唆された. | KAKENHI-PROJECT-11670432 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11670432 |
発現ベクタ-を目標とするヒトサイトメガロウイルス組み換え体の作製 | ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を外来遺伝子発現のための培養細胞でのベクタ-として使用できるかどうかの検討を行い、以下のような結果を得た。1.外来遺伝子導入部位・方法としてはHindIII0断片領域を引き抜いてかわりに外来遺伝子を導入する置き換え型の組換えが有効であった。この組換え体は非常に安定でリバ-タントの発生を見られず、感染増殖も良好であった。組換え体の産生率は出現ウイルスの10%と高率であった。2.外来遺伝子発現のためのプロモ-タ-としてはウイルス自身のプロモ-タ-だけでなく、ウイルス以外のプロモ-タ-でも効率よい発現が得られた。大型DNAウイルスにおいて自身以外のプロモ-タ-が有効であったのはこれが最初の例と思われる。特にSV40ウイルスのプロモ-タ-は良好な発現が得られたが、それでも感染後期では何らかの発現抑制が見られ現在解明中である。これが明らかにされるとさらに効率のよい発現ベクタ-ができる可能性がある。3.外来遺伝子として1acZ遺伝子を用いたが組換え体のアカラ-アッセイが容易にかつ確実に行えた。今後はこれを親株として組換えを行い、親好は青いプラ-クを組換え体は無色のプラ-クを生じるので組換え体の選択が簡単に行える。以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの有効性は大きいことが示唆された。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を外来遺伝子発現のための培養細胞でのベクタ-として使用できるかどうかの検討を行い、以下のような結果を得た。1.外来遺伝子導入部位・方法としてはHindIII0断片領域を引き抜いてかわりに外来遺伝子を導入する置き換え型の組換えが有効であった。この組換え体は非常に安定でリバ-タントの発生を見られず、感染増殖も良好であった。組換え体の産生率は出現ウイルスの10%と高率であった。2.外来遺伝子発現のためのプロモ-タ-としてはウイルス自身のプロモ-タ-だけでなく、ウイルス以外のプロモ-タ-でも効率よい発現が得られた。大型DNAウイルスにおいて自身以外のプロモ-タ-が有効であったのはこれが最初の例と思われる。特にSV40ウイルスのプロモ-タ-は良好な発現が得られたが、それでも感染後期では何らかの発現抑制が見られ現在解明中である。これが明らかにされるとさらに効率のよい発現ベクタ-ができる可能性がある。3.外来遺伝子として1acZ遺伝子を用いたが組換え体のアカラ-アッセイが容易にかつ確実に行えた。今後はこれを親株として組換えを行い、親好は青いプラ-クを組換え体は無色のプラ-クを生じるので組換え体の選択が簡単に行える。以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの有効性は大きいことが示唆された。ヒトサイトメガロウイルスに外来遺伝子を導入して組換えウイルスを作製するために、外来遺伝子導入部位の検討、遺伝子導入方法の検討、遺伝子発現のためのプロモ-タ-検討等を行いその結果、1.外来遺伝子導入の部位としてはHinddIII 0断片領域が適していて、この部位に外来遺伝子を導入してもウイルスの感染・増殖にはあまり影響を与えない。2.導入方法としてはウイルスのゲノムサイズが増大するインサ-ションベクタ-よりゲノムサイズがあまり変化しないリプレイスメントベクタ-の方が効率が圧倒的によく、燐酸カルシュウム法のトランスフェクションにより子孫ウイルスの約10%が組換えウイルスであった。3.遺伝子発現のためのプロモ-タ-としては、ウイルス自身の後期のプロモ-タ-(PgB)が有効であったが、SV40ウイルスの初期プロモ-タ-(PSV)はさらに効率がよかった。後者において遺伝子発現は感染6時間目より検出され、以後はほぼ一定量の発現が感染後期まで続いた。4.レポ-タ-遺伝子としてのlacZは有効で、組換えウイルスではXーgal添加後24時間以内に発現したβーガラクトシダ-ゼの働きによりブル-の発色が見られる。5.挿入された遺伝子は安定に存在し、子孫ウイルスでの挿入遺伝子の脱落は見られなかった(0.1%未満)。以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの可能性はきわめて有望なことが示唆された。昨年度の研究の結果、外来遺伝子発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルス(HCMV)の可能性を確認した。今年度はさらに応用性を高めるために各種の検討を行いその結果、1.SV40ウイルスの初期遺伝子プロモ-タ-を用いたときには、感染初期・中期では発現量はHCMV自身のタンパク合成に匹敵できる程度の多さであった。しかし感染後期になるとHCMV後期タンパクの発現量に比べて多くなく、HCMVの産生物によるネガティブなトランスアクティイングファクタ-の影響が示唆された。現在このファクタ-に関しての同定を行っている。判明すればそのファクタ-を産生しない温度変異株(tsミュ-タント)を親株として組換えを行えば感染後期にも発現量がさらに増加することが期待される。2.TK遺伝子を組換えウイルスに導入して薬剤感受性のHCMVを作ろうとする試みに関しては、まだ結果が得られていない。TK遺伝子をHCMVのDNAと一緒にトランスフェクションして組換えウイルスを得ようとしたが、まったくプラ-クが生じまいという不思議な現象が起こる。TK遺伝子の発現がHCMVの増殖に有害であるかもしれない可能性が示唆されるので、これについて確認の実験を行っているが、新しい抗ウイルス剤の開発につながる可能性がある。 | KAKENHI-PROJECT-01480182 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01480182 |
発現ベクタ-を目標とするヒトサイトメガロウイルス組み換え体の作製 | 3.メタロチオネインのプロモ-タを付けたlacZ遺伝子を作製して組換ウイルスを作製した。重金属の添加による遺伝子発現の誘導を現在確認中である。以上の結果から培養細胞における発現ベクタ-としてのヒトサイトメガロウイルスの可能性は大きいことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-01480182 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01480182 |
アセチルグルコース修飾ゲフィチニブの放射線増感機序の解明と新規増感剤の創製 | 本申請研究である「アセチルグルコース修飾ゲフィチニブの放射線増感機序の解明と新規増感剤の創製」は,UTX-103の抗腫瘍活性や放射線増感活性の詳細な機序を明らかにし,腫瘍移植鶏卵モデルおよびマウスモデルを用いて放射線増感剤としての有用性を評価してより最適なリード化合物を設計・合成し,臨床利用が可能な放射線増感剤の創出を行うものであり,平成30年度の計画は、ゲフィチニブ誘導体UTX-114の詳細な作用機序の解明と腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo活性の評価である。今年度の研究成果として,UTX-114はHepG2細胞に対してGLUT阻害剤サイトカラシンBと同程度の強いグルコース取込阻害活性を示した。よって、UTX-114はニトロイミダゾール基の酸素類似体としての作用に加えて、グルコース取込阻害を介して解糖系を阻害することで放射線増感活性を発揮することが示唆された。しかしながら、肺がんに対するゲフィチニブと放射線の併用は重篤な副作用が報告されているため、ゲフィチニブ誘導体UTX-114も同様の副作用が懸念される。そこで、ゲフィチニブと同様に上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブをリード化合物として選択し、アセチルグルコースを修飾したエルロチニブ誘導体UTX-119を分子設計・合成した。UTX-119のA549細胞に対する毒性は100μM未満では見られなかった。また、細胞内動態試験の結果、細胞内でアセチルグルコースとエルロチニブ誘導体が解離し、UTX-119の代謝物の取込量が添加24 h後で最大となった。さらに、UTX-119はエルロチニブよりも有意に高い放射線増感活性を示した。以上の結果より、アセチルグルコースを導入することでゲフィチニブと同様にエルロチニブでも放射線増感活性を付与することができることが証明された。研究実績の概要に記載の通り,平成30年度の計画であるUTX-114の詳細な作用機序の解明およびエルロチニブをリードとした新規誘導体UTX-119の分子設計・合成・活性評価を達成しているが、腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo活性の評価は検討したもののポジティブな結果を得ることが出来なかったため、このように判断した。今後は,腫瘍移植鶏卵モデルを用いて新規ゲフィチニブ誘導体UTX-114およびエルロチニブ誘導体UTX-119の薬物動態解析および放射線増感活性の評価を実施し,QSARによる放射線増感剤候補薬剤の創出を目指す。本申請研究である「アセチルグルコース修飾ゲフィチニブの放射線増感機序の解明と新規増感剤の創製」は,UTX-103の抗腫瘍活性や放射線増感活性の詳細な機序を明らかにし,腫瘍移植鶏卵モデルおよびマウスモデルを用いて放射線増感剤としての有用性を評価してより最適なリード化合物を設計・合成し,臨床利用が可能な放射線増感剤の創出を行うものであり,平成29年度の計画はUTX-103の詳細な作用機序の解明と,UTX-103をリードとした新規誘導体の分子設計・合成である。今年度の研究成果として,UTX-103は細胞内でのグリコシドの解離が見られず,ゲフィチニブ本来のEGFR自己リン酸化阻害効果が消失していた。そこで,グリコシドの解離能とEGFR自己リン酸化阻害効果を兼ね備えた放射線増感剤として,ゲフィチニブとアセチルグルコースとの間に炭素鎖(n=2,3,4)を導入したゲフィチニブ誘導体UTX-114, 115, 116を分子設計・合成した。合成したゲフィチニブ誘導体についてヒト表皮癌A431を用いて細胞内における代謝産物を追跡した結果,グリコシド結合の解離が確認された。また,ゲフィチニブ誘導体はEGFRの自己リン酸化を阻害することも確認され,その中でもUTX-115はゲフィチニブよりも高いEGFR自己リン酸化阻害活性を有することが明らかとなった。さらに,UTX-115およびUTX-116は6GyのX線との併用でゲフィチニブよりも有意に高い放射線増感活性を示し,その中でもUTX-115はより高い放射線増感活性を有することが明らかとなった。以上の結果より,EGFR自己リン酸化阻害効果と放射線増感効果を併せ持つ新規放射線増感剤UTX-115の開発に成功した。研究実績の概要に記載の通り,平成29年度の計画であるUTX-103の詳細な作用機序の解明およびUTX-103をリードとした新規誘導体の分子設計・合成を達成していることから判断した。本申請研究である「アセチルグルコース修飾ゲフィチニブの放射線増感機序の解明と新規増感剤の創製」は,UTX-103の抗腫瘍活性や放射線増感活性の詳細な機序を明らかにし,腫瘍移植鶏卵モデルおよびマウスモデルを用いて放射線増感剤としての有用性を評価してより最適なリード化合物を設計・合成し,臨床利用が可能な放射線増感剤の創出を行うものであり,平成30年度の計画は、ゲフィチニブ誘導体UTX-114の詳細な作用機序の解明と腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo活性の評価である。今年度の研究成果として,UTX-114はHepG2細胞に対してGLUT阻害剤サイトカラシンBと同程度の強いグルコース取込阻害活性を示した。 | KAKENHI-PROJECT-17K10480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10480 |
アセチルグルコース修飾ゲフィチニブの放射線増感機序の解明と新規増感剤の創製 | よって、UTX-114はニトロイミダゾール基の酸素類似体としての作用に加えて、グルコース取込阻害を介して解糖系を阻害することで放射線増感活性を発揮することが示唆された。しかしながら、肺がんに対するゲフィチニブと放射線の併用は重篤な副作用が報告されているため、ゲフィチニブ誘導体UTX-114も同様の副作用が懸念される。そこで、ゲフィチニブと同様に上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼ阻害剤であるエルロチニブをリード化合物として選択し、アセチルグルコースを修飾したエルロチニブ誘導体UTX-119を分子設計・合成した。UTX-119のA549細胞に対する毒性は100μM未満では見られなかった。また、細胞内動態試験の結果、細胞内でアセチルグルコースとエルロチニブ誘導体が解離し、UTX-119の代謝物の取込量が添加24 h後で最大となった。さらに、UTX-119はエルロチニブよりも有意に高い放射線増感活性を示した。以上の結果より、アセチルグルコースを導入することでゲフィチニブと同様にエルロチニブでも放射線増感活性を付与することができることが証明された。研究実績の概要に記載の通り,平成30年度の計画であるUTX-114の詳細な作用機序の解明およびエルロチニブをリードとした新規誘導体UTX-119の分子設計・合成・活性評価を達成しているが、腫瘍移植鶏卵モデルを用いたin vivo活性の評価は検討したもののポジティブな結果を得ることが出来なかったため、このように判断した。今後は,腫瘍移植鶏卵モデルを用いて新規ゲフィチニブ誘導体UTX-114の薬物動態解析および放射線増感活性の評価を実施し,QSARによる放射線増感剤候補薬剤の創出を目指す。今後は,腫瘍移植鶏卵モデルを用いて新規ゲフィチニブ誘導体UTX-114およびエルロチニブ誘導体UTX-119の薬物動態解析および放射線増感活性の評価を実施し,QSARによる放射線増感剤候補薬剤の創出を目指す。次年度使用額が生じた理由は、合成したゲフィチニブ誘導体の数が予想より少なくて済んだため,合成および評価実験にかかる費用が削減できたためである。この繰越金については、QSARを実施するために必要な誘導体の合成に使用する計画である。腫瘍移植鶏卵モデルでの評価に供した化合物の数が想定より少なくて済んだため,合成および評価実験にかかる費用が削減できたためである。この次年度使用額については、腫瘍移植鶏卵モデル評価およびQSARを実施するために必要な誘導体の合成に使用する計画である。 | KAKENHI-PROJECT-17K10480 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10480 |
東アジア海域史研究における史料の発掘と再解釈-古地図・偽使史料・文学表現- | 大陸沿岸・半島部・島嶼部で構成される東アジアでは、海を舞台とした人間の営みが大きな意味を持つ。本研究では、東アジアの国際関係史、文化交流史および海事史などで扱われている諸課題を相互に連関させ、かつそれらを基礎づけるとものとして「海域史」を位置づける。その立場から既知・未知を問わずに資史料を発掘し、新たな方法論を提示して、これまで見えてこなかった局面に光をあてた。こうした「海域史」の立場から資史料を見たとき、常に大きな困難となるのは資史料の性格である。第1に、中心(国家)から周縁(地域)を見る立場から作成された資史料が多いこと、第2に、「嘘」や「誇張」が含まれた記述を解釈しなければならないこと、第3に、文学作品や舞台表現など、そもそも「事実」であることを保証していないものも、資史料として活用しなければならないことなどである。以上の認識に基づいて、(1)古地図は何を語っているのか、(2)文学表現のなかの言説と「事実」のあいだ、(3)偽使の虚実を超えての3点の課題を設定し、これからの海域史研究における史資料活用の可能性を広げるための検討をおこなった。その結果、研究代表者・研究分担者だけでなく、研究協力者からも多様な成果が提示された。それらの成果は、国際的な学術誌を含め、論文・著書として発表され、最新の成果に関しては研究報告書に結実した。大陸沿岸・半島部・島嶼部で構成される東アジアでは、海を舞台とした人間の営みが大きな意味を持つ。本研究では、東アジアの国際関係史、文化交流史および海事史などで扱われている諸課題を相互に連関させ、かつそれらを基礎づけるとものとして「海域史」を位置づける。その立場から既知・未知を問わずに資史料を発掘し、新たな方法論を提示して、これまで見えてこなかった局面に光をあてた。こうした「海域史」の立場から資史料を見たとき、常に大きな困難となるのは資史料の性格である。第1に、中心(国家)から周縁(地域)を見る立場から作成された資史料が多いこと、第2に、「嘘」や「誇張」が含まれた記述を解釈しなければならないこと、第3に、文学作品や舞台表現など、そもそも「事実」であることを保証していないものも、資史料として活用しなければならないことなどである。以上の認識に基づいて、(1)古地図は何を語っているのか、(2)文学表現のなかの言説と「事実」のあいだ、(3)偽使の虚実を超えての3点の課題を設定し、これからの海域史研究における史資料活用の可能性を広げるための検討をおこなった。その結果、研究代表者・研究分担者だけでなく、研究協力者からも多様な成果が提示された。それらの成果は、国際的な学術誌を含め、論文・著書として発表され、最新の成果に関しては研究報告書に結実した。本研究の目的は、古地図・偽使・文学表現の3つの研究対象について、海域史研究における史資料活用の可能性を広げることである。そのなかでも第1年度の目標は、これまでの成果を発表し、この研究において何をめざすのかを明らかにすることであった。それぞれについて、成果、問題点、そして次年度以降の課題について略述する。古地図については、朝鮮製の地図について成果を発表することができた(ロビンソン、高橋)。ここでの成果を前提に、中国製の地図について検討する方針が明確になった。16世紀以降、中国で出版されてきた地図帳『広輿図』を混一系世界図との関連で注目し、日米の諸機関から収集した7種のコピーにもとづいて基礎的な分析を開始し、中間報告を行なった。また神戸市立博物館・大阪歴史博物館などで東アジア各地に関する地図の調査も実施した。偽使については、15・16世紀の朝鮮に関わる偽使についての総括的な検討と、17世紀以降の鬱陵島など日本海を舞台にした興味深い活動についての分析が発表された(橋本、池内)。その成果を前提に、偽使が朝鮮にもたらした情報、あるいは安龍福が日本側に与えた衝撃などを史料分析によって再検討する方針が明確になった。文学表現については、隠岐地域での現地調査を実施し、「隠州視聴合記(紀)」に関する分析(池内)、あるいは外交文書をどのように理解したかについての検討など(高橋)、やや個別的な成果が発表されたが、本研究の目標を設定するという点からすると、出遅れた感は免れない。2年度に向けて、漂流記など海域史に関する文学表現について、より時間を割いて検討する必要がある。本研究の目的は、古地図・偽使・文学表現の3つの研究対象について、海域史研究における史資料活用の可能性を広げることである。そのなかでも第2年度の目標は、1年度に引き続き、これまでの成果を発表し、この研究において何をめざすのかを明らかにすることであった。それぞれについて、成果、問題点、そして最終年度をどのように総括するかについて略述する。古地図については、地図のみではないが、『海東諸国紀』について成果を発表することができた(ロビンソン、橋本)。中国製の地図については、地図帳『広輿図』の諸本について、初年度で収集したテキストに加え、米国国会図書館での調査も実施し、基礎的な分析を行なっている。また山口県文書館・九州国立博物館などで東アジア各地に関する地図の調査も実施した。 | KAKENHI-PROJECT-17320093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320093 |
東アジア海域史研究における史料の発掘と再解釈-古地図・偽使史料・文学表現- | 偽使については、15世紀末に朝鮮に派遣された「久辺国主」について、偽使がどのような「ウソ」をついためか(高橋)、17世紀以降の竹島・隠岐島など日本海を舞台にした安龍福の興味深い活動についての分析が発表された(池内)。文学表現については、初年度と同様、やや出遅れているが、研究協力者の位田絵美、清水太郎を得て、最終年度に向け、成果を発表する準備をしている。最終年度においては、古地図では、『広輿図』と混一系世界図双方を視野に入れた研究および各地での地図調査の報告、偽使では、朝鮮史料に現れる偽使を視野に入れた「ウソ」についての基礎的な研究、文学表現では、漂流記(朝鮮から安南、日本から韃靼への漂流など)についての研究などを集約し、この共同研究の総括としたい。大陸沿岸・半島部・島嶼部で構成される東アジアでは、海を舞台とした人間の営みが大きな意味を持つ。本研究では、東アジアの国際関係史、文化交流史および海事史などで扱われている諸課題を相互に連関させ、かつそれらを基礎づけるとものとして「海域史」を位置づける。その立場から、既知・未知を問わずに資史料を発掘し、新たな方法論を提示して、これまで見えてこなかった局面に光をあてた。こうした「海域史」の立場から資史料を見たとき、常に大きな困難となるのは資史料の性格である。第1に、中心(国家)から周縁(地域)を見る立場から作成された資史料が多いこと、第2に、「嘘」や「誇張」が含まれた記述を解釈しなければならないこと、第3に、文学作品や舞台表現など、そもそも「事実」であることを保証していないものも、資史料として活用しなければならないことなどである。以上の認識に基づいて、(1)古地図は何を語っているのか、(2)文学表現のなかの言説と「事実」のあいだ、(3)偽使の虚実を超えての3点の課題を設定し、これからの海域史研究における史資料活用の可能性を広げるための検討をおこなった。その結果、研究代表者・研究分担者だけでなく、研究協力者からも多様な成果が提示された。それらの成果は、国際的な学術誌を含め、論文・著書として発表され、最新の成果に関しては研究報告書に結実した。 | KAKENHI-PROJECT-17320093 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17320093 |
3次元形状モデル陰関数表現の高速自動生成と多重解像度表現 | 本研究課題は陰関数曲面による3次元形状のモデリングを対象とし,曲面生成に伴う計算量およびメモリ使用量の問題の解決を目標としている.このうち,今年度は特に以下の3つ項目について成果が得られている.(1)曲面上の色分布関数の生成と品質向上3次元形状を陰関数として表現・デジタル化する研究はこれまで盛んに行われ,特にレーザスキャナなどの計測装置に基づく形状モデリング手法が多く提案された.本研究ではさらに色情報の再現を含めた曲面生成手法を提案し,曲面上の複雑な色情報の表現,および色境界の自動判別に成功している.(2)ウェーブレット変換による陰関数曲面の多重解像度解析3次元形状を陰関数として表現した場合,そのデータ量やノイズがしばしば問題となる.この問題を解決するために,本研究では曲面表現にウェーブレット変換を導入した.すなわち,曲面をウェーブレット変換に用いられる基底関数で表現することでその多重解像度解析を実現し,従来の画像処理で用いられる圧縮とノイズ除去の技術を曲面モデルにも適用可能とした.これは日本応用数理学会のセミナーで公表済みであり,今後,雑誌論文への掲載を目指す.(3)並列処理の導入微細構造を含む形状のモデリングやレンダリングではその計算量が問題となり,本研究では並列計算の導入による解決を目指している.特に共有メモリ型と分散メモリ型が混在する並列計算環境を想定し,このような特殊な環境下でも計算機の性能を十分に発揮する並列化の実現を目標としてきた.この実現のために,本研究ではプロセスの階層的な分割を考え,各階層を共有メモリ環境と分散メモリ環境に割り当てることで効率的な並列計算を実現している.ある3次元形状を表現する陰関数をその表面点群から生成するとき,最大の問題となるのは計算量と消費メモリの増大である.例えば3次元形状計測装置により得られる点群は数万点に及ぶことが多いが,この場合,その点数の2乗に比例する要素数を持つ行列を生成し,さらにこの行列を係数行列とする大規模な連立1次方程式を解かなければならない.最も典型的な直接解法では計算量は点数の3乗に比例する.本研究ではこの問題点を解決するために以下の構成により陰関数を生成する手法を用いた.まず,生成される係数行列が疎行列となるような陰関数モデルを採用することでメモリ消費量の大幅な削減を図り,さらに,連立1次方程式の解法として前処理付きの反復解法を適用することで,計算量の削減を図った.ここでポイントとなるのは,係数行列の特徴に応じた前処理と反復解法をどのように構成するかということである.まず前処理としては,不完全Cholesky分解,および可変的前処理が適することが確認された.また,反復解法としては最も単純な共役勾配法(CG法),および収束が保障される一般化最小残差法(GMRES法)による高速化の実現が可能となる.併せて,ウェーブレット変換による多重解像度表現の可能性を勘案し,そのプロトタイプとして四辺形メッシュで構成される3次元形状の多重解像度表現を実現した.これは,リフティングスキームと呼ばれるウェーブレット構成法を用いることで実時間での3次元形状の解像度変更を実現することを特徴とする.これは例えば3次元形状計測装置によって密に得られた点群を,その形状をできるだけ保ったまま疎な点群に変換するという目的で利用されるものである.近年3次元形状計測装置に基づく形状モデリングが一般的となった.特に精度向上のために高精細な計測データからの形状モデルの生成が必要とされ,計測される点群数は数万数百万に及ぶことも多い.このような計測データの大規模化に伴い,形状モデル生成のための計算量とデータ量の増加が問題となっている.点群データに基づく形状モデリングの代表的な方法として形状を陰関数曲面モデルとして表現する手法が挙げられる.このような陰関数曲面を大規模な点群データから生成する方法は現在数多く提案されおり,それぞれ生成速度や補間性能などに特徴が見られる.この典型的な手法の一つはCSRBF(Compactly Supported Radial Basis Function)を基底関数として陰関数を構成する方法である.その生成過程は大規模疎行列を係数とする連立1次方程式を解く問題に帰着され,共役勾配法による求解が有効とされている.我々は共役勾配法を効率的に適用するために,まず非零要素がランダムに分布する係数行列を帯行列に変換し,さらにこれに不完全コレスキー分解を施すことで反復解法の前処理とする方法を提案した.これは不完全コレスキー分解の不完全性を低減する効果があり,共役勾配法の収束性の向上を図ることができる.この有効性は数値実験により確かめられた.また,データと計算量の大規模化への対策として進めている並列化の研究についても成果が得られた.並列計算機のメモリアーキテクチャは共有,分散,あるいはそれらが混在するようなケースが考えられるが,我々はいくつかの基本的な数値解法について,このような多様なメモリアーキテクチャに適切に対応する並列化手法を提案し,数値実験を通してその有効性を確認した.今後はウェーブレット変換に関する昨年度の成果を応用することで,陰関数の多重解像度表現の実現を目指す.本研究課題は陰関数曲面による3次元形状のモデリングを対象とし,曲面生成に伴う計算量およびメモリ使用量の問題の解決を目標としている.このうち,今年度は特に以下の3つ項目について成果が得られている.(1)曲面上の色分布関数の生成と品質向上3次元形状を陰関数として表現・デジタル化する研究はこれまで盛んに行われ,特にレーザスキャナなどの計測装置に基づく形状モデリング手法が多く提案された. | KAKENHI-PROJECT-15700112 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700112 |
3次元形状モデル陰関数表現の高速自動生成と多重解像度表現 | 本研究ではさらに色情報の再現を含めた曲面生成手法を提案し,曲面上の複雑な色情報の表現,および色境界の自動判別に成功している.(2)ウェーブレット変換による陰関数曲面の多重解像度解析3次元形状を陰関数として表現した場合,そのデータ量やノイズがしばしば問題となる.この問題を解決するために,本研究では曲面表現にウェーブレット変換を導入した.すなわち,曲面をウェーブレット変換に用いられる基底関数で表現することでその多重解像度解析を実現し,従来の画像処理で用いられる圧縮とノイズ除去の技術を曲面モデルにも適用可能とした.これは日本応用数理学会のセミナーで公表済みであり,今後,雑誌論文への掲載を目指す.(3)並列処理の導入微細構造を含む形状のモデリングやレンダリングではその計算量が問題となり,本研究では並列計算の導入による解決を目指している.特に共有メモリ型と分散メモリ型が混在する並列計算環境を想定し,このような特殊な環境下でも計算機の性能を十分に発揮する並列化の実現を目標としてきた.この実現のために,本研究ではプロセスの階層的な分割を考え,各階層を共有メモリ環境と分散メモリ環境に割り当てることで効率的な並列計算を実現している. | KAKENHI-PROJECT-15700112 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700112 |
横断的アーカイブズ論の総合化・国際化と社会情報資源基盤の研究開発 | 本研究は、博物館、図書館、文書館分野を中心とした文化・知識情報の社会情報資源化に関する国際調査と技術動向の調査・開発研究を推進するため、(1)研究活動計画と技術開発動向・情報資源化動向情報を報告・議論するため研究会を遂行し、(2)各国の事情や国内の実態・動向を調査するために、国内・国際調査活動を行い、(3)これらの成果情報を社会公開するためにシンポジウムを開催してきた。この3年間の活動概要は以下の通り。1・平成17年度(1)は4回遂行した。(2)は同年8月1721日に主に韓国のソウルにおいて主要な博物館、図書館、文書館を訪問し、実務担当者と実態・計画等を議論し、資料を入手した。(3)は平成18年3月45日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、主に(2)を中心に成果情報の公開をした(講演資料集を刊行)。2.平成18年度(1)は4回遂行した。(2)は同年9月312日に、中国の北京、上海において、主要な博物館、図書館を訪問し、実務担当者と実態・計画について議論し、資料を入手した。(3)は平成19年3月34日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、主に(2)を中心に成果情報を公開した(講演資料集を刊行)。3.平成19年度(1)は4回遂行した。(2)は同年9月2730日に、台湾(中華民国)の台北市にて、故宮博物院を訪問し、実務担当者と実態・計画について議論し、資料を入手した。(3)は平成19年12月9日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、全体まとめを中心とした成果情報を公開した(講演資料集を刊行)。本研究は、博物館、図書館、文書館分野を中心とした文化・知識情報の社会情報資源化に関する国際調査と技術動向の調査・開発研究を推進するため、(1)研究活動計画と技術開発動向・情報資源化動向情報を報告・議論するため研究会を遂行し、(2)各国の事情や国内の実態・動向を調査するために、国内・国際調査活動を行い、(3)これらの成果情報を社会公開するためにシンポジウムを開催してきた。この3年間の活動概要は以下の通り。1・平成17年度(1)は4回遂行した。(2)は同年8月1721日に主に韓国のソウルにおいて主要な博物館、図書館、文書館を訪問し、実務担当者と実態・計画等を議論し、資料を入手した。(3)は平成18年3月45日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、主に(2)を中心に成果情報の公開をした(講演資料集を刊行)。2.平成18年度(1)は4回遂行した。(2)は同年9月312日に、中国の北京、上海において、主要な博物館、図書館を訪問し、実務担当者と実態・計画について議論し、資料を入手した。(3)は平成19年3月34日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、主に(2)を中心に成果情報を公開した(講演資料集を刊行)。3.平成19年度(1)は4回遂行した。(2)は同年9月2730日に、台湾(中華民国)の台北市にて、故宮博物院を訪問し、実務担当者と実態・計画について議論し、資料を入手した。(3)は平成19年12月9日に静岡大学佐鳴会館でシンポジウムを開催し、全体まとめを中心とした成果情報を公開した(講演資料集を刊行)。(1)第一回研究会:5月21日(静岡大学にて)研究計画を中心に。(2)第二回研究会:7月15日(近畿大学会館、大阪市立浪速人権文化センター)韓国京畿大学チェ教授を招聘し、図書館協会と共催のシンポジウムを遂行し、韓国訪問調査の協議(3)(3)古賀がオスロで8月18日18日に開催される2005年度国際図書館連盟(IFLA)大会に出席。研究発表、調査を遂行。(4)韓国訪問調査:8月17日20日、韓国の歴史編纂委員会、国立中央博物館、国立民俗博物館、国立中央図書館、教育学術情報院の訪問調査を八重樫、田窪、小川、小笠原(静大八重樫研究生)が遂行した。(5)第三回研究会:(石川県中能登町)10月28日29日、地域ポータルサイトの協議と地域見学もかねて研究会を遂行。(3)、(4)の報告、ならびにわが国の博物館情報化実態調査(水島担当)の協議・検討、また、公開シンポジウム開催の協議を行った。(6)小川が11月11日12月1日にアブダビで開催される国際文書間評議会(ICA)第38回円卓会議に出席し、世界の動向調査を遂行。(7)第四回研究会:(近畿大学会館)12月8月の韓国訪問調査の取りまとめと来年度計画の中国訪問調査の協議のため、韓国から京畿大学チェ教授、中国から北京大学李助教授を招聘し、報告・検討・協議をおこない、また、全国博物館実態調査と3月予定の公開シンポジウムの協議を行った。(8)第5回研究会・公開シンポジウム『文化・知識情報資源共有化とメタデータ』:(静岡大学)韓国訪問調査を中心として、インターネットによる情報世界のグローバリゼーションにともなった、分野の垣根を越えた世界のメタデータ標準化動向、そして社会知識情報資源としての博物館・図書館・文書館の連携動向について、大きなまとめができたものと確信する。また、全国博物館実態調査の報告も行われ、打ち合わせとして、来年度計画の中国訪問調査の協議も行った。 | KAKENHI-PROJECT-17300081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17300081 |
横断的アーカイブズ論の総合化・国際化と社会情報資源基盤の研究開発 | 現在、韓国訪問調査において、韓国国立中央博物館で入手した、韓国国家博物館・遺物分類標準の翻訳も終了し、来年度8月を目標に刊行し、関係専門家、関係機関に送付し、わが国の文化財メタ標準策定に向けた活動を遂行する計画である。来年度は、韓国の補完調査と中国(北京、上海を中心に)訪問調査を遂行する予定である。韓国の社会情報政策はシンポジウムで明らかになったが、中国の情報化国家政策は、いまだわが国には断片的にしか紹介されておらず、何が明らかになってくるか、楽しみである。(1)第一回研究会:6月10日(土)(静岡大学にて)中国文化財情報化動向報告討議(余梅分)、国内博物館記録情報調査分析成果についての報告討議(北岡タマ子、水嶋英治)、平成18年度研究分担と計画について協議。(2)第二回研究会:7月(静岡大学にて)中国訪問調査の事前打合せと手続き等の協議(3)中国博物館・図書館訪問調査:9月3日(日)9月12日(火)北京、上海(人重樫純樹、水嶋英治、田窪直規、余梅芬、木戸亮一(九州国立博物館))9月3日:関西空港→北京、9月4日:中国国家図書館、9月5日:中国国家博物館、9月6日:故宮博物印、9月7日:社会科学院・中国科学院、9月8日:首都博物館、9月9日:北京郊外の歴史遺産見学、9月10日:北京→上海、9月11日:上海博物館・上海図書館、9月12日:上海→帰国(4)第三回研究会:11月34日(静岡大学にて)中国訪問調査の各自分担報告・討議(水嶋英治、田窪直規、木戸亮一)、全体報告(人重樫純樹)・協議とシンポジウム開催の協議、2006年度IFLA大会報告・討議(古賀崇)、中国博物館学の紹介・討議(余梅分、水嶋英治)、国内博物館調査分析報告・討議(北岡タマ子、水嶋英治)(5)2006年度ICA円卓会議調査(研究協力者:小川千代子)(6)第四回研究会:12月1617日:(大阪・近畿大学会館)、(5)の報告・討議、国内博物館資料情報構造化モデルの報告・討議(村田良二)、欧米の博物館・文書館・図書館連携活動調査報告・討議(菅野育子)、民俗学資料情報化モデルの発表・討議(吉村裕一)、3月開催予定の本研究会2006年度成果発表を中心としたシンポジウムの打合わせと協議。(7)公開シンポジウムの開催:公開シンポジウム『文化・知識情報資源共有化とメタデータ横断的アーカイブズ論研究会2006年度成果報告(中国調査)を中心に』:2007年3月34日、(静岡大学佐鳴会館にて)主催:本科研研究会。2006年度IFLA大会報告(古賀崇)、2006年度ICA大会報告(小川千代子)、国内博物館情報記録実態調査分析報告(水嶋英治)、国内文書館目録記録実態調査報告(清水惠枝)、中国図書館調査考察(田窪直規)、中国博物館調査考察(水嶋英治)、中国問档案館組織と活動紹介(李常慶副教授より、特別講演)、中国調査全体考察(八重樫純樹)、欧米の博物館・文書館・図書館協働活動の紹介と考察(菅野育子)。・北京大学信息管理学部李常慶副教授を招聘し、特別講演頂いた。・本シンポジウムの発講演資料集を作成した。平成19年度は最終年度であり,以下の研究活動を行った。(1)研究会活動:新たな研究動向に関する報告、調査、分析、討議等を行い,全体研究を進めた。 | KAKENHI-PROJECT-17300081 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17300081 |
DNAマーカーを用いたクワコの行動と生態の遺伝学的解析 | 1.クワコの休眠ホルモン-PBAN遺伝子の特徴:埼玉県坂戸市のクワコは,B型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子を有しており,カイコが持つA型とは異なる遺伝子が休眠ホルモンとPBANをコードしていた。B型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子は,A型よりも長い第4イントロンと,長い第5イントロンを持ち,そこには進化の過程で転移してきたと考えられる挿入配列が認められた。一方,中国杭州市産のクワコでは,A型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子が見いだされた。2.クワコの休眠ホルモン-PBAN遺伝子の座位の決定:カイコの交配実験によって休眠ホルモン-PBAN遺伝子は第11連関群の-2.5cMにマップされた。その近くには,クワコの黒い蛹体色を発現するbpがある。カイコでB型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子を持つ系統が同時にbp遺伝子を持つ例があり,連関して残存したものと推定された。3.クワコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子の特徴:中国杭州市産のクワコは,C型の前胸腺刺激ホルモン遺伝子を有しており,カイコの多くは品種がA型またはB型の遺伝子をもつのことと対象をなしていた。C型の前胸腺刺激ホルモン遺伝子は,A型やB型よりも長い第3イントロンを有しており,そこにはやはり進化の過程で転移してきたと考えられる特異的な挿入配列が認められた。一方,日本産のクワコはA型の遺伝子を有していた。4.RAPDのマッピング:カイコとクワコのRAPDの差異について検討した。カイコのRAPDの連鎖地図を作成した結果,RAPDとクワコ由来の表現形質との連関関係が一部明らかになった。5.クワコのアリルフォリン遺伝子の特徴と分子進化:クワコのアリルフォリン遺伝子の塩基配列を決定し,ほかの絹糸昆虫の配列と比較することによりクワコの起源に関する知見を得た。1.クワコの休眠ホルモン-PBAN遺伝子の特徴:埼玉県坂戸市のクワコは,B型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子を有しており,カイコが持つA型とは異なる遺伝子が休眠ホルモンとPBANをコードしていた。B型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子は,A型よりも長い第4イントロンと,長い第5イントロンを持ち,そこには進化の過程で転移してきたと考えられる挿入配列が認められた。一方,中国杭州市産のクワコでは,A型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子が見いだされた。2.クワコの休眠ホルモン-PBAN遺伝子の座位の決定:カイコの交配実験によって休眠ホルモン-PBAN遺伝子は第11連関群の-2.5cMにマップされた。その近くには,クワコの黒い蛹体色を発現するbpがある。カイコでB型の休眠ホルモン-PBAN遺伝子を持つ系統が同時にbp遺伝子を持つ例があり,連関して残存したものと推定された。3.クワコの前胸腺刺激ホルモン遺伝子の特徴:中国杭州市産のクワコは,C型の前胸腺刺激ホルモン遺伝子を有しており,カイコの多くは品種がA型またはB型の遺伝子をもつのことと対象をなしていた。C型の前胸腺刺激ホルモン遺伝子は,A型やB型よりも長い第3イントロンを有しており,そこにはやはり進化の過程で転移してきたと考えられる特異的な挿入配列が認められた。一方,日本産のクワコはA型の遺伝子を有していた。4.RAPDのマッピング:カイコとクワコのRAPDの差異について検討した。カイコのRAPDの連鎖地図を作成した結果,RAPDとクワコ由来の表現形質との連関関係が一部明らかになった。5.クワコのアリルフォリン遺伝子の特徴と分子進化:クワコのアリルフォリン遺伝子の塩基配列を決定し,ほかの絹糸昆虫の配列と比較することによりクワコの起源に関する知見を得た。 | KAKENHI-PROJECT-06660063 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06660063 |
観光行動の時系列変化の構造解明に向けた複数の統計データを用いた分析方法の提案 | 様々な調査主体により観光に関する複数の統計調査が実施されている.しかし,これらの調査の対象,サンプル数,調査方法等の違いから同一の質問項目であっても調査結果が異なり,観光動向の実態が正しく把握できていないという問題がある.今後の観光マーケティングや観光政策の立案に向けては,各調査の特性を整理し,それらを踏まえた定量的な分析に基づき,実態をより正確に把握することが重要である.本研究では,複数の統計調査の個票データを用い,それらを比較することにより,各統計の特性を明らかした.さらに,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行った.また,都市間交通統計との比較も行い,組合せの可能性を示した.「国民の観光に関する動向調査」,「旅行者動向調査」,「旅行・観光消費動向調査」,「社会生活基本調査」,「国勢調査」のデータを用い,それら比較することにより,各統計の特性を明らかした.各統計は母集団特性,調査方法,調査規模の影響によりサンプルの性年齢階層や地域別抽出率に母集団との乖離が存在し,同じ項目でも結果に不整合があることを明示した.結果の活用に関しては,性年齢階層,地域等での補正処理や,統計の特性を考慮した解釈が必要であることを示唆した.また,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行い,若者の旅行離れの原因を,様々な統計調査の結果から明らかにし,さらには,温泉浴の今後の動向等も明らかした.「全国幹線旅客純流動調査」のデータを用いた,都市間交通統計と観光統計との比較からは,手段別,性別では乖離があるものの,総量や居住地別目的地のオーダーは等しいことを確認した.都市間交通統計は交通需要を精度高く把握できるが平休1日値と拡大した年間値のみのデータとなる.一方の観光統計は季節変動はあるものの都市間交通統計と比べると精度が低い.そのため,純流動の年間値に観光統計で得られた月別の需要変動,居住地別目的地の構成比を組み合わせると,より精度の高い観光データとなる可能性があることを示した.「国民の観光に関する動向調査」,「旅行者動向調査」,「旅行・観光消費動向調査」,「社会生活基本調査」,「国勢調査」のデータを用い,それら比較することにより,各統計の特性を明らかにした.各統計は母集団特性,調査方法,調査規模の影響によりサンプルの性年齢階層や地域別抽出率に母集団との乖離が存在し,同じ項目でも結果に不整合があることを明示した.結果の活用に関しては,性年齢階層,地域等での補正処理や,統計の特性を考慮した解釈が必要であることを示唆した.また,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行い,若者の旅行離れの原因を,様々な統計調査の結果から明らかにし,さらには,温泉浴の今後の動向等も明らかにした.「全国幹線旅客純流動調査」のデータを用いた,都市間交通統計と観光統計との比較からは,手段別,性別では乖離があるものの,総量や居住地別目的地のオーダーは等しいことを確認した.都市間交通統計は交通需要を精度高く把握できるが平休1日値と拡大した年間値のみのデータとなる.一方の観光統計は季節変動はあるものの都市間交通統計と比べると精度が低い.そのため,純流動の年間値に観光統計で得られた月別の需要変動,居住地別目的地の構成比を組み合わせると,より精度の高い観光データとなる可能性があることを示した.これらの知見を,学術論文として取りまとめた.様々な調査主体により観光に関する複数の統計調査が実施されている.しかし,これらの調査の対象,サンプル数,調査方法等の違いから同一の質問項目であっても調査結果が異なり,観光動向の実態が正しく把握できていないという問題がある.今後の観光マーケティングや観光政策の立案に向けては,各調査の特性を整理し,それらを踏まえた定量的な分析に基づき,実態をより正確に把握することが重要である.本研究では,複数の統計調査の個票データを用い,それらを比較することにより,各統計の特性を明らかした.さらに,その特性を踏まえた国内宿泊観光行動の時系列分析を行った.また,都市間交通統計との比較も行い,組合せの可能性を示した.平成23年度前半には,複数の観光統計調査を比較し,各調査の結果の原因の解明および特徴の整理を行った.また、後半には,前半に整理した特徴を踏まえ,それらのデータを組み合わせた国内観光行動の時系列分析を行った.具体的には,「旅行・観光消費動向調査」,「旅行者動向調査」,「国民の観光に関する動向調査」の個票データを用い,「参加率」,「旅行回数」,「宿泊数」などといった共通の項目に対して比較を行い,それらの調査による差異を明確し,また,その要因を母集団のサンプル数,調査方法,調査時期,男女別構成比,地域別構成費,年齢別構成比などから明らかにした.これらの分析結果から,各調査の特性,利用にあったっての注意点などは整理ができた.さらに,今の20歳代,団塊の世代といった観光需要に大きな影響を与えている層を対象とし,それらの観光行動を「時代」,「年代」,「世代」に着目した時系列の分析を行った.特に,20歳代の旅行離れについて,その理由,対応策などを分析したことは,実務的にも大きな意義がある.以上の分析結果を通して,観光統計調査を実施する主体,使用する人に対して有益な知見を得ることができた.また,最新のデータを用いて国内観光行動を分析し,今後の観光施策,観光マーケティングに必要な情報を示していることは,本年度の大きな成果と言える.東日本大震災の影響等もあり,統計調査データの公表が遅れたが,分析対象データを変更して分析を行ったことにより,おおむね順調に進展した. | KAKENHI-PROJECT-23760477 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760477 |
観光行動の時系列変化の構造解明に向けた複数の統計データを用いた分析方法の提案 | また,国際会議の延期により,1つの発表が遅れたことを除けば,研究成果の公表もおおむね順調であり,審査付き論文も掲載された.東日本大震災の影響により,研究成果の公表などに関しては若干の遅れはあるが,分析自体は交付申請書で示したとおり,おおむね順調に進んでいる.平成24年度までの研究成果を,引き続き学会発表するとともに,審査付きの学術誌に投稿する.統計調査データの更新を行い,これまでの成果を踏まえ,新たな研究へと深度化,展開する.これまで実施してきた国内観光行動分析の深度化を第一に行う.また,本年度の成果を学会の研究発表会で発表するとともに,学術論文として投稿を行う予定である.次に,全国幹線旅客純流動調査の観光目的のデータと観光統計調査の組合せた分析を実施する.具体的には,秋期一日の全国幹線旅客純流動調査データを,旅行目的別,月別,地域別の拡大を行い,観光の季節波動を考慮した年拡大の方法を提案することを考えている.10月に開催予定だった中国西安での国際会議が,情勢不安により延期になったため,その旅費が未使用額となった.延期となった国際会議が4月に開催されるのでこれに出席し,研究成果を発表する.学会出席,研究発表,論文投稿など,研究の情報収集,本年度の研究結果の発表に使用する予定である.また,次年度行う全国幹線旅客純流動調と観光統計調査の組合せた分析におけるデータ入力など,研究補助に対する謝金としても支出する計画である.あとは,書籍,文具などの購入を予定している. | KAKENHI-PROJECT-23760477 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23760477 |
生体システムを集積化した素子・システムの創製と実用化 | これまでにアルコキシシランを原料とした高含水ゲルを用い、活性を保持したままタンパク質を微小空間内へ固定化する方法を開発し、ガラス細管やマイクロチップを用い固定化したタンパク質の機能を効率的に利用することに成功した。本研究では、この技術の実用化を目指し、医療分野への応用研究、様々な生体分子、細胞、組織を固定化したバイオ素子・システムの作製、ならびに固定化ゲルの改良を目標とした。創薬研究への応用として、シトクロムP450固定化素子の開発研究を行った。開発したゲルは、薄膜状に調製しフィルムコーティングすることが可能である。そこで、現在薬物代謝研究及び一塩基多型解析において注目されているシトクロムP450(P450)を含有するミクロソームを96穴マイクロプレートのウェル内にコーティングすることで、医薬品開発候補品の代謝経路及びその阻害反応を解析するハイスループットスクリーニングシステムの開発を目指した。このP450固定化プレートは、現在まで不可能であったP450の繰り返し利用及び分析操作の簡便化を可能にし、経済的な効果が期待された。テトラメトキシシランの加水分解および重合反応により調製したゾル溶液にP450を含むミクロソーム溶液を加え混合した後、あらかじめポリ酢酸ビニルで表面を親水性処理した96穴マイクロプレートの各ウェルに分注し、4°Cで2日間以上放置することでゲル化を進行させ、P450をウェルに固定化した。代謝活性の測定には、蛍光性基質エトキシレゾルフィン溶液を用い、37°Cで反応させ、プレートリーダーを用いて生成したレゾルフィンの蛍光を測定した。その結果、反応時間の増加に伴い、生成量が増加した。また、繰り返しの測定も可能であった。これまでにアルコキシシランを原料とした高含水ゲルを用い、活性を保持したままタンパク質を微小空間内へ固定化する方法を開発し、ガラス細管やマイクロチップを用い固定化したタンパク質の機能を効率的に利用することに成功した。本研究では、この技術の実用化を目指し、医療分野への応用研究、様々な生体分子、細胞、組織を固定化したバイオ素子・システムの作製、ならびに固定化ゲルの改良を目標とした。創薬研究への応用として、シトクロムP450固定化素子の開発研究を行った。開発したゲルは、薄膜状に調製しフィルムコーティングすることが可能である。そこで、現在薬物代謝研究及び一塩基多型解析において注目されているシトクロムP450(P450)を含有するミクロソームを96穴マイクロプレートのウェル内にコーティングすることで、医薬品開発候補品の代謝経路及びその阻害反応を解析するハイスループットスクリーニングシステムの開発を目指した。このP450固定化プレートは、現在まで不可能であったP450の繰り返し利用及び分析操作の簡便化を可能にし、経済的な効果が期待された。テトラメトキシシランの加水分解および重合反応により調製したゾル溶液にP450を含むミクロソーム溶液を加え混合した後、あらかじめポリ酢酸ビニルで表面を親水性処理した96穴マイクロプレートの各ウェルに分注し、4°Cで2日間以上放置することでゲル化を進行させ、P450をウェルに固定化した。代謝活性の測定には、蛍光性基質エトキシレゾルフィン溶液を用い、37°Cで反応させ、プレートリーダーを用いて生成したレゾルフィンの蛍光を測定した。その結果、反応時間の増加に伴い、生成量が増加した。また、繰り返しの測定も可能であった。 | KAKENHI-PROJECT-04J02084 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04J02084 |
瞳孔径解析による統合失調症の非定型アラートネスの解明 | 統合失調症における認知機能(注意,記憶等)の低下は難治療性であり,当事者の社会参加を阻む大きな障害となっている。認知機能に関与する神経系の一つとして,青斑核ノルアドレナリン系による警戒機能(アラートネス)がある。前帯状皮質はアラートネスの切り替えに関わるが,統合失調症では同領域に解剖学的・機能的異常が認められる。本研究では,瞳孔径から交感神経系および副交感神経系の活動を同時に推定する手法により,非侵襲的に統合失調症におけるアラートネスの特徴を明らかにする。統合失調症における認知機能(注意,記憶等)の低下は難治療性であり,当事者の社会参加を阻む大きな障害となっている。認知機能に関与する神経系の一つとして,青斑核ノルアドレナリン系による警戒機能(アラートネス)がある。前帯状皮質はアラートネスの切り替えに関わるが,統合失調症では同領域に解剖学的・機能的異常が認められる。本研究では,瞳孔径から交感神経系および副交感神経系の活動を同時に推定する手法により,非侵襲的に統合失調症におけるアラートネスの特徴を明らかにする。 | KAKENHI-PROJECT-19K23395 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K23395 |
神経幹細胞の時間変化を制御する分子機構の解明 | 発生過程において、神経幹細胞の個性は常に一定でなく時間とともに変化していく。このため、一つの幹細胞は多様な子孫神経細胞を一定の順番で作り出すことができる。ショウジョウバエの神経系形成の前半過程において、ほぼ全ての幹細胞が、Hunchback、Kruppel、Pdm、Castorという4種の転写因子を順次発現し、これらの転写因子の発現を自律的に切り替える。しかし、Castor発現開始以降も神経幹細胞は胚発生期だけでも10回程度分裂するにもかかわらず、発生後期における神経幹細胞の時間変化についてはほとんど謎であった。本研究では、まず、転写因子の発現パターンにもとづいて時期特異的に発現される遺伝子を検索し、Castor発現開始以降に神経幹細胞において一過的に発現される一群の転写因子を同定し、それらの転写因子の正確な発現順序を明らかにした。それらの転写因子の一つはKruppelに類似した転写因子であり、DNA結合部位を互換する実験結果から、Kruppelと同様のDNA結合特性を持つと考えられるが、時期特異性を与えていることを明らかにしている。胚発生が終了すると、腹部の神経幹細胞は死滅するのに対して、脳と胸部の神経幹細胞の多くは、長い休止期に一旦入った後、幼虫期に分裂を再開し、一幹細胞あたり平均100個にも及ぶ神経細胞を産生する。本研究では、幼虫型神経幹細胞の時間変化についても解析を開始した。幼虫型神経幹細胞においても胚性型と同様な後期特異的転写因子の発現推移が認められた。すなわち、時期や作り出す細胞数が全く異なるにもかかわらず、これら2種の神経幹細胞は同じような内在性のメカニズムに従って時間変化していくことがわかった。また、胚性型から幼虫型への変換と時期特異的転写因子の発現切り替えとの間に強い連携があることを示唆するデータも得ている。ショウジョウバエでは、ニューロブラストと呼ばれる神経幹細胞様の細胞が非対称分裂を繰り返しながら順次異なる子孫細胞を作り出す。我々は、以前に、ほぼ全てのニューロブラスト系譜でHunchback、Kruppel、Pdm、Castorといった転写因子のセットが順次発現されること,さらに、これらの転写因子はニューロブラストや子孫細胞に時間的な個性を与えていることを示した。この転写因子セットの発見により、ショウジョウバエ中枢神経系においては神経幹細胞系譜の逐次的形成の機構の分子的解析が容易となっているが、この機構はまだその多くが謎のままである。そこで、我々は、この機構に含まれる新たな因子の同定を目的として、神経系で広範囲に時期特異的に発現される遺伝子の検索を行った。その結果、複数の線虫heterochronic遺伝子のショウジョウバエホモログをそのような因子の候補として見いだした。heterochronic遺伝子群は、線虫の幼虫発生において細胞に時間的個性を与える役割を持つ遺伝子群である。このうちの一つであるlin-29はKruppelと類似したZn fingerモチーフを持つタンパク質をコードしており、ショウジョウバエLin-29はニューロブラスト系譜形成後期に発現されていた。また、Lin-29に先立ってKruppelもCastor発現後に再び発現されるが、Lin-29と後期のKruppelの発現は相互排他的であり、Lin-29は後期のKruppelの発現を抑制することがわかった。現在、KruppelとLin-29のさらなる機能解析を中心に、これまで不明であったニューロブラスト系譜形成の後期過程について研究を進めている。発生過程において、神経幹細胞の個性は常に一定でなく時間とともに変化していく。このため、一つの幹細胞は多様な子孫神経細胞を一定の順番で作り出すことができる。ショウジョウバエの神経系形成の前半過程において、ほぼ全ての幹細胞が、Hunchback、Kruppel、Pdm、Castorという4種の転写因子を順次発現し、これらの転写因子の発現を自律的に切り替える。しかし、Castor発現開始以降も神経幹細胞は胚発生期だけでも10回程度分裂するにもかかわらず、発生後期における神経幹細胞の時間変化についてはほとんど謎であった。本研究では、まず、転写因子の発現パターンにもとづいて時期特異的に発現される遺伝子を検索し、Castor発現開始以降に神経幹細胞において一過的に発現される一群の転写因子を同定し、それらの転写因子の正確な発現順序を明らかにした。それらの転写因子の一つはKruppelに類似した転写因子であり、DNA結合部位を互換する実験結果から、Kruppelと同様のDNA結合特性を持つと考えられるが、時期特異性を与えていることを明らかにしている。胚発生が終了すると、腹部の神経幹細胞は死滅するのに対して、脳と胸部の神経幹細胞の多くは、長い休止期に一旦入った後、幼虫期に分裂を再開し、一幹細胞あたり平均100個にも及ぶ神経細胞を産生する。本研究では、幼虫型神経幹細胞の時間変化についても解析を開始した。幼虫型神経幹細胞においても胚性型と同様な後期特異的転写因子の発現推移が認められた。すなわち、時期や作り出す細胞数が全く異なるにもかかわらず、これら2種の神経幹細胞は同じような内在性のメカニズムに従って時間変化していくことがわかった。また、胚性型から幼虫型への変換と時期特異的転写因子の発現切り替えとの間に強い連携があることを示唆するデータも得ている。 | KAKENHI-PROJECT-15039235 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15039235 |
残存能力に適した自立移乗支援装置の選定と新しい自立起立支援ロボットの開発 | 本研究では,残存能力に適した移乗支援装置とロボット選定アルゴリズムの構築と起立動作誘導ロボットを開発した.身体負担評価実験より,起立動作を(1)自立起立(2)昇降座椅子を使用した起立(3)手すりを使用した起立(4)起立動作誘導ロボットを使用した起立に分類し,残存能力(足部耐荷重と重心動揺幅,臀部耐荷重と重心動揺幅,手部耐荷重,足と膝関節可動域)計測システムを開発し,足と膝関節残存能力の違いによる起立支援装置とロボット選定フローチャートを構築した.本研究では,残存能力に適した移乗支援装置とロボット選定アルゴリズムの構築と起立動作誘導ロボットを開発した.身体負担評価実験より,起立動作を(1)自立起立(2)昇降座椅子を使用した起立(3)手すりを使用した起立(4)起立動作誘導ロボットを使用した起立に分類し,残存能力(足部耐荷重と重心動揺幅,臀部耐荷重と重心動揺幅,手部耐荷重,足と膝関節可動域)計測システムを開発し,足と膝関節残存能力の違いによる起立支援装置とロボット選定フローチャートを構築した.1.身体負担を表わすパラメータを,臀部の重心移動範囲と耐荷重,足部の重心移動範囲と耐荷重,手部の耐荷重とし,日本リハビリテーション工学協会による移乗動作の分類(持ち上げ移乗/座位移乗/固定手すりを使用した立位移乗/支援装置なしの立位移乗)との関係を考慮し移乗支援装置選定フローを作成した.2.残存能力の定量化の一環として,使用者の身体特徴(身長,体重)と移乗の基本動作である起立動作時の身体負担の関係性について検討するため,健常男性4名による起立動作時身体負担検証実験を実施した.結果より,使用者の身長より,体重との方が起立動作時膝関節最大モーメントに相関関係が見られた.このことより,移乗支援装置選定フローの汎用性を高められる可能性が示唆された.また,自立起立可能な健常者を被験者としたことにより,起立移乗に必要な膝関節の残存能力が明確となり,実験結果より手すりを使用するより座面を高くする方が必要残存能力が低いことがわかった.このことより,移乗支援装置ごとに使用するのに必要な残存能力に違いがあることが確認され,移乗支援装置選定の必要性が示唆された.3.使用者の残存能力(身体負担)を計測するために,電動昇降座いすの座面部と足置き部に力センサを組み込めるよう改造し,その値を三次元計測装置VICON〓のADボードに入力することでVICON〓と同期してデータ取得が可能とした.また,手部の耐荷重を計測するために,手すりの部材や荷重センサを準備したので,今後計測システムに組み込む.4.一般の利用者が支援装置を実際使用しながらフィッティングができることを目指した拠点「人とロボットのコミュニケーションスクエア:COSMAR」を整備し,見学等に対応可能とし,今後の実験の準備を完了した.1.移乗の基本動作である起立動作時の身体負担を検討するため,(1)自立起立(2)手すり使用起立(3)昇降座いす使用起立について,健常男性4名による足関節と膝関節の必要残存能力の違いを実験した.結果より,使用者の体重と起立動作時膝関節最大モーメントに相関関係が見られ,選定に汎用性をもたせることができた.また,足関節の残存能力の低い使用者には手すりが有効で,膝関節の残存能力の低い使用者には昇降座いす等で座面を高くすることが有効であることが示唆され,残存能力に適した移乗支援装置選定の実現性が明確となった.2.残存能力を表わす身体負担パラメータとして,足部と臀部の耐荷重と重心動揺幅,手部の耐荷重を設定していたが,1.の実験結果より,さらに足部と膝部の関節可動角が必要であることがわかり,選定フローを改良した.3.残存能力を表わす2.の身体負担パラメータを計測可能な装置を開発した.さらに,一般人を被験者とした実験をする際の利便性や,将来的な普及性を考慮し,簡易測定用システムの部品等を購入した.今後システムの再構築を行う.4.固定手すりでは起立の際転倒の危険性が高い要介護者に対し,内蔵した肘と下腿角度センサを用いて使用者の重心位置をリアルタイムに検知し,安全かつ安定した起立動作誘導を可能とするロボットを開発した.このロボットを使用することにより,膝関節の負担を減らすことで安全に使用者の残存能力に適した起立誘導が可能となった.5.一般の利用者が支援装置を実際使用しながらフィッティングができることを目指した拠点「人とロボットのコミュニケーションスクエア:COSMAR」のWebページ(http://www.rt-gcoe.waseda.ac.jp/cosmar/index.html)を公開し,一般利用者との更なるコミュニケーションと,早稲田人支援ロボット研究の世間一般への情報発信を開始した.1.移乗の基本動作である起立動作時の身体負担を検討するため,1自立起立2手すり使用起立3昇降座いす使用起立4起立動作誘導ロボットについて,健常男性3名による足関節と膝関節の必要残存能力の違いを実験した.結果より,足関節の残存能力の低い使用者には手すりが有効で,膝関節の残存能力の低い使用者には昇降座いす等で座面を高くすることが有効であり,起立動作誘導ロボットを使用することで,膝関節の残存能力がさらに低い使用者でも起立できることが示唆された. | KAKENHI-PROJECT-22700583 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22700583 |
残存能力に適した自立移乗支援装置の選定と新しい自立起立支援ロボットの開発 | さらに,使用者の体重や身長と起立動作時膝関節最大モーメントに相関関係が見られ,選定に汎用性をもたせることができた.以上より,要介護者の残存能力に適した起立支援装置とロボット選定が可能となることがわかる.2.残存能力の定量化のために,移乗動作に必要な残存能力(足部の耐荷重と重心動揺幅,臀部の耐荷重と重心動揺幅,足関節角度,膝関節角度)簡易測定システムを構築し,動作確認のための予備実験を行った.結果,残存能力計測に十分な計測精度が得られた.3.支援装置やロボットをフィッティングができる「人とロボットのコミュニケーションスクエア:COSMAR」を含む早稲田大学人間支援ロボット体験場「RTフロンティア」が新宿区西早稲田に移転となり,月に1回ロボット体験イベントを開催している.2012年8月のリニューアルオープン後合計5回のイベントを開催し,延べ約250名の老若男女が来場し早稲田の人間支援ロボット研究開発の評価を上げている.4.3.のイベント内で,起立支援ロボットの必要性についてアンケート調査を行った結果,約8割以上が「必要」と回答しており,人間支援ロボットの需要が改めて明確となった.今後は,2.の残存能力計測システムを用いて,RTフロンティア来場者の残存能力を計測することにより起立支援装置やロボット選定アルゴリズムの構築の改良を目指す.移乗支援装置選定フロー確立にあたり,当初の計画ではわからなかった残存能力を表わす身体負担パラメータや,実験による確認が必要な被験者の身体的特徴が発覚し,それを考慮した実験に時間がかかっているため.24年度が最終年度であるため、記入しない。起立動作以外の移乗動作について選定のための残存能力確認実験やその他の実験においてN増しが必要となるため,現在被験者募集のためのフィールドを模索中である.また,起立以外の移乗動作時身体負担計測のためのシステム構築が必要であることが発覚したため,装置試作を共同で行う企業と連絡をとっている.24年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-22700583 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22700583 |
最適制御理論によるノンホロノミック車両系の軌道計画 | 本研究は農作業車両の運動を非ホロノミック車輪型移動ロボットの運動としてとらえ,主に,運動制御の問題を最適制御問題に変換して検討した。トラクタの枕地での最短旋回時間問題は最適制御理論で解くことが可能である。ところがこれはBang-Bang Principleを採用すると直観的に解くことができる。このため,1)直観的解法,2)微分幾何学的解法,3)最大原理による解法と4)数値解法を採用し完全解を得ることができた。また,数値解法を積極的に採用し,枕地問題を一般的な軌道生成問題に拡張し任意の初期位置から任意の終端位置への運動制御を検討し,農用車両の自律走行問題の基礎を検討した。他方,この枕地問題を研究する過程で,非ホロノミック車両の運動特性が横並び二輪車と縦並び二輪車で本質的に異なることに興味を持ち,その違いに制御方式がどのように係わりあいをもつかという新しい問題が浮かび上がってきた。このため,障害物や外乱を考慮したフィードバック制御を適用することを試みた。その具体例として,トラクタに作業機を装着する場合を取り上げ,そのときのフィードバック軌道生成問題を解いた。すなわち,自動的に位置決めを行うための自動操縦問題の一つの方法を示した。また,横並び二輪車(耕うん機や2輪ロボット)をモデル化し,障害物を回避しながら目的地に到達するフィードバック軌道の生成を行える一つの方式を提案した。この問題は農業機械ばかりでなく広く移動ロボットの軌道生成問題にも適用出来ることを示した。最適制御問題に変換する方法は,農用車両の自律走行問題の強力な武器になると考えられている。本研究は農作業車両の運動を非ホロノミック車輪型移動ロボットの運動としてとらえ,主に,運動制御の問題を最適制御問題に変換して検討した。トラクタの枕地での最短旋回時間問題は最適制御理論で解くことが可能である。ところがこれはBang-Bang Principleを採用すると直観的に解くことができる。このため,1)直観的解法,2)微分幾何学的解法,3)最大原理による解法と4)数値解法を採用し完全解を得ることができた。また,数値解法を積極的に採用し,枕地問題を一般的な軌道生成問題に拡張し任意の初期位置から任意の終端位置への運動制御を検討し,農用車両の自律走行問題の基礎を検討した。他方,この枕地問題を研究する過程で,非ホロノミック車両の運動特性が横並び二輪車と縦並び二輪車で本質的に異なることに興味を持ち,その違いに制御方式がどのように係わりあいをもつかという新しい問題が浮かび上がってきた。このため,障害物や外乱を考慮したフィードバック制御を適用することを試みた。その具体例として,トラクタに作業機を装着する場合を取り上げ,そのときのフィードバック軌道生成問題を解いた。すなわち,自動的に位置決めを行うための自動操縦問題の一つの方法を示した。また,横並び二輪車(耕うん機や2輪ロボット)をモデル化し,障害物を回避しながら目的地に到達するフィードバック軌道の生成を行える一つの方式を提案した。この問題は農業機械ばかりでなく広く移動ロボットの軌道生成問題にも適用出来ることを示した。最適制御問題に変換する方法は,農用車両の自律走行問題の強力な武器になると考えられている。本研究は農作業車両の運動を非ホロノミック車輪型移動ロボットの運動としてとらえ,枕地旋回問題に焦点を絞り最短時間旋回問題を検討する。この問題を自律走行という観点から見直すと,どのようなハンドル操作を行えば最短時間で行えるか,またその時の最適軌道はどうなるかなどの移動ロボットの軌道計画問題の一つとなる。本研究では,農用車輌の低速時の操舵と運動の関係を表す非線形運動学モデルを用いて,枕地問題を3つの異なるアプローチで考察する。第1の方法は,微分幾何的なアプローチで,車両運動が速度と曲率をもつ質点運動に等価であるということを利用し,応用数学の分野で得られた定理を用いて,枕地問題を解析的に解いた(文献1)。第2の方法は,最適制御理論の最大原理によるアプローチである。これについては,大域的な最適解を求めることは非常に困難であることを示した。第3の方法は,最適制御理論の分野で広く採用されている数値解法で,時間未知の最短時間問題を時刻を既知パラメータする問題に変換し,収束性のよい2次アルゴリズムを適用して枕地問題を解いた。得られた結果を要約すると,1)畝幅が車両の最小旋回半径Rの2倍よりも大きい場合には,速度最大で,最大操舵角あるいは,ゼロ操舵の組み合わせで最短時間旋回ができる。2)畝幅が2Rよりも小さい場合には,速度は前進と後退を組み合わせ,操舵は最大という場合が最短時間になることを示した。この方法は,どの時刻にどのようにハンドルを切るかということが計算できる。従って,自律走行車両の軌道計画が具体的に求まるというメリットがある。なお,人の制御遅れや実際の車両のハンドル部から操舵輪間での慣性項の影響を考慮した人による枕地の最短時間制御問題も考察している(文献2)。本研究は農作業車両の運動を非ホロノミック車輪型移動ロボットの運動としてとらえ,主に,軌道生成問題を検討した。枕地でトラクタは次の畝に入る場合,作業効率を高めるためには最短軌道とそのときの最適操作量(ハンドル操作)を求める必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-08660309 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08660309 |
最適制御理論によるノンホロノミック車両系の軌道計画 | この枕地での最短時間旋回問題は,ロボット工学における移動ロボットの軌道計画問題と等価であることが知られている。今年度は,前年度に引続き数値解法を積極的に採用し,枕地問題を一般的な軌道生成問題に拡張し農用車両の自律走行問題の基礎を検討した【文献1と2】。この枕地問題を研究する過程で,非ホロノミック車両の運動特性が横並び二輪車と縦並び二輪車で本質的に異なることに興味を持ち,その違いに制御方式がどのように係わりあいをもつかという新しい問題が浮かび上がってきた。特に文献1と2では開ループ制御であるが,障害物や外乱を考慮したフィードバック制御を適用することを試みた。文献3では,その具体例として,トラクタ(縦並び2輪車)に作業機を装着する場合を取り上げ,そのときのフィードバック軌道生成問題を解いた。すなわち,自動的に位置決めを行うための自動操縦問題の一つの方法を示した【文献3】。文献4では,横並び二輪車(耕うん機や2輪ロボット)をモデル化し,障害物を回避しながら目的地に到達するフィードバック軌道の生成を行える一つの方式を提案した。この問題は農業機械ばかりでなく広く移動ロボットの軌道生成問題にも適用出来る【文献4】。 | KAKENHI-PROJECT-08660309 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08660309 |
アフリカツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントの解析 | 両生類の発生過程において、胞胚の背側に形成体領域がつくられる過程は、形態形成の要となる重要なステップである。形成体領域の決定機構は卵細胞内にモザイク的に局財する細胞質因子(デタ-ミナント)にまで遡る必要があるため、デタ-ミナントの分子的実体の解明は初期発生の分子機構を理解するための重要な研究課題である。本研究では、デタ-ミナントの分子的実体を解明するために、卵形成期待異提供あるいは割球特異的に卵細胞内に存在するmRNAを手がかりとして、卵形成初期に転写される遺伝子のクローニングを行い、その機能を推定した。まず、卵細胞の細胞質内に局在するデタ-ミナントを、卵形成期に転写され発生初期にタンパクとして働く母性効果遺伝子の産物であると推定した。この考えに基づき第一のアプローチとして、卵形成初期に転写が起こり受精後翻訳されながら転写産物が消失していくタイプの遺伝子を検索し、EXT1遺伝子と高いホモロジーを示すXextをクローニングした。Xextは動物極側で抑制的転写制御を行う分子ではないかと推測している。第二のアプローチとして、デタ-ミナントが割球間で不均等に分布していることを期待し、8細胞期の4種類の割球間でmRNAの組成の比較を行った。割球特異的なcDNA断片をプローブとしてWD40リビ-トをモチーフとして持つ新規の遺伝子をクローニングした。第三のアプローチとして、リチウムの強い背方化作用により消失する転写産物は、背腹のパターン形成に積極的に使われる母性mRNAであるという予想のもとに、リチウム処理胚と未処理胚のmRNA組成の比較からXoeaをクローニングした。イムノグロブリンスーパーファミリーに属するこの遺伝子は、発生初期の割球間の情報伝達に関与している可能性がある。両生類の発生過程において、胞胚の背側に形成体領域がつくられる過程は、形態形成の要となる重要なステップである。形成体領域の決定機構は卵細胞内にモザイク的に局財する細胞質因子(デタ-ミナント)にまで遡る必要があるため、デタ-ミナントの分子的実体の解明は初期発生の分子機構を理解するための重要な研究課題である。本研究では、デタ-ミナントの分子的実体を解明するために、卵形成期待異提供あるいは割球特異的に卵細胞内に存在するmRNAを手がかりとして、卵形成初期に転写される遺伝子のクローニングを行い、その機能を推定した。まず、卵細胞の細胞質内に局在するデタ-ミナントを、卵形成期に転写され発生初期にタンパクとして働く母性効果遺伝子の産物であると推定した。この考えに基づき第一のアプローチとして、卵形成初期に転写が起こり受精後翻訳されながら転写産物が消失していくタイプの遺伝子を検索し、EXT1遺伝子と高いホモロジーを示すXextをクローニングした。Xextは動物極側で抑制的転写制御を行う分子ではないかと推測している。第二のアプローチとして、デタ-ミナントが割球間で不均等に分布していることを期待し、8細胞期の4種類の割球間でmRNAの組成の比較を行った。割球特異的なcDNA断片をプローブとしてWD40リビ-トをモチーフとして持つ新規の遺伝子をクローニングした。第三のアプローチとして、リチウムの強い背方化作用により消失する転写産物は、背腹のパターン形成に積極的に使われる母性mRNAであるという予想のもとに、リチウム処理胚と未処理胚のmRNA組成の比較からXoeaをクローニングした。イムノグロブリンスーパーファミリーに属するこの遺伝子は、発生初期の割球間の情報伝達に関与している可能性がある。ツメガエル8細胞期胚の背腹割球間にはアクチビン応答能を含めいくつかの質的な違いが存在している。この質的な違いは、受精直後の細胞質の再配置により受精卵の予定背腹軸に沿って細胞質因子(デタ-ミナント)の不均一な分布が生じた結果であると考えられる。本年度の研究では、ツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントを解明する一つの方法として、8細胞期の4種類の割球間で含まれるmRNAの種類を比較検討し、割球特異的に転写産物が局在する遺伝子のクローニングを行っていた。まず予備実験として胚軸形成に関与するmRNAの存在する時期を調べるために、ステージ分けした卵母細胞および受精卵からRNAを抽出し、精製したmRNAを4細胞期胚の予定腹側割球へ顕微注入した。軸形成への影響を検討した結果、卵母細胞のみならず、卵割期の胚内にも軸形成に影響をおよぼすmRNAの存在が示唆された。そこで以後は材料の取り扱い易さと量の得易さの点で好都合の8細胞期胚を実験材料に選び、8細胞期胚を4種の割球に分離後、それぞれの割球からRNAを抽出し、ディファレンシャルディスプレイを行った。4種類の割球に特異的に存在するmRNAがそれぞれ複数種検出されたが、それらの中から背側植物局割球(DV割球)に特異的に存在するPCR断片を選びクローニングした。得られたクローンの塩基配列を決定しホモロジー検索を行ったがホモロジーの高い遺伝子は存在しなかった。下流プライマーはオリゴdtであるため3′非翻訳領域のcDNA断片であると考えられる。プライマーの種類からセンス方向とアンチセンス方向を推定して、ホールマウントインシチューハイブリダイゼーションを行った結果、アンチセンスを用いたときにのみシグナルが8細胞期胚のDV割球動物局側に検出された。遺伝子の構造を決定するために遺伝子の全長をクローニング中である。 | KAKENHI-PROJECT-07680806 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680806 |
アフリカツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントの解析 | ツメガエル8細胞期胚の背腹割球間にはアクチビン応答能を含めいくつかの質的な違いが存在している。この質的な違いは、受精直後の細胞質の再配置により細胞質の不均一な分布が生じた結果であると考えられる。本研究では、ツメガエルの卵母細胞内に存在する軸形成デタ-ミナントを解明する一つの方法として、卵形成期特異的に卵細胞内に転写産物が局在する遺伝子に着目した。卵細胞内にモザイク的に存在する細胞質因子の一部は、卵形成期に転写され発生初期にはタンパクとして細胞質に局在している可能性が考えられる。このタイプの遺伝子は初期卵割期胚のmRNAの比較からは見いだせない。そこで、卵形成初期の卵母細胞と中期胞胚遷移以前の胞胚との間でDifferential displayを行い、卵形成期に特異的に発現している遺伝子の検討を行った。卵形成期に特異的に検出される多くのPCR産物をプラスミドにつなぎ換え、得られた部分塩基配列をコンピューター検索にかけた結果、アクチビン受容体をはじめ既知遺伝子のcDNA断片の他に、特徴のある新規cDNA断片が複数得られた。その一つであるクローンD8について塩基配列および予想されるアミノ酸配列のホモロジー検索の結果、ヒトext3のホモローグであることがわかった。この遺伝子は遺伝的多発性外骨腫症(exostosis)の原因遺伝子で、最近ヒトおよびマウスでクローニングされている。予想されるアミノ酸配列には既知の分子モチーフが見られず、全く新しい腫瘍原因遺伝子である。Xextと名付けた遺伝子は卵形成初期に転写され、転写産物は動物極側に移動し、卵割期には動物極側割球の細胞質中に局在するが原腸胚期には消失してしまう。神経胚後期になると、背側中胚葉の予定硬節領域で新たな転写が認められる。ヒトext3の転写抑制作用を考え合わせると、Xextは発生初期の動物極側割球の転写制御に関与している可能性が示唆される。 | KAKENHI-PROJECT-07680806 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07680806 |
可視光対応の新規光触媒による内分泌撹乱物質の分解 | 本研究では、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)として問題となっているアルキルフェノール(AP)と17β-エストラジオール(E2)に対して、下水処理場等における晴天下での分解を想定し、可視光応答性光触媒であるバナジン酸ビスマス(BiVO_4)の特性を明らかにした。また新規光触媒としてニオブ酸銀(AgNbO_3)の開発を行い、内分泌撹乱物質の分解に適用した。以下に本研究で得られた成果を簡潔にまとめた。(1)BiVO_4による直鎖型アルキルフェノールの光分解は、アルキル鎖長が長くなるほどBiVO_4表面への吸着力が強くなり、分解速度が速くなることが明らかとなった。従って、BiVO_4はノニルフェノールやオクチルフェノールなどの長鎖アルキルフェノールの分解に適している光触媒であると結論づけられる。また、固相抽出とGC-MS分析により生成物の幾つかを推定することができ、反応機構の一端を推論できた。(2)実際に工業用に使用され、環境問題となっている分岐型ノニルフェノールが、BiVO_4を用いることにより太陽光の下で完全に分解できること、並びにエストロゲン活性も消失することが酵母Two-hybrid試験により明らかとなった。ノニルフェノールの完全分解とエストロゲン活性の消失までの時間差は、何らかの中間体にエストロゲン活性があるためと推測した。(3)AgNbO_3は400nm以上の可視光照射下においてノニルフェノールをCO_2にまで無機化できることが明らかとなった。また、反応中間体としてギ酸の生成も観測された。本研究では、内分泌撹乱物質(環境ホルモン)として問題となっているアルキルフェノール(AP)と17β-エストラジオール(E2)に対して、下水処理場等における晴天下での分解を想定し、可視光応答性光触媒であるバナジン酸ビスマス(BiVO_4)の特性を明らかにした。また新規光触媒としてニオブ酸銀(AgNbO_3)の開発を行い、内分泌撹乱物質の分解に適用した。以下に本研究で得られた成果を簡潔にまとめた。(1)BiVO_4による直鎖型アルキルフェノールの光分解は、アルキル鎖長が長くなるほどBiVO_4表面への吸着力が強くなり、分解速度が速くなることが明らかとなった。従って、BiVO_4はノニルフェノールやオクチルフェノールなどの長鎖アルキルフェノールの分解に適している光触媒であると結論づけられる。また、固相抽出とGC-MS分析により生成物の幾つかを推定することができ、反応機構の一端を推論できた。(2)実際に工業用に使用され、環境問題となっている分岐型ノニルフェノールが、BiVO_4を用いることにより太陽光の下で完全に分解できること、並びにエストロゲン活性も消失することが酵母Two-hybrid試験により明らかとなった。ノニルフェノールの完全分解とエストロゲン活性の消失までの時間差は、何らかの中間体にエストロゲン活性があるためと推測した。(3)AgNbO_3は400nm以上の可視光照射下においてノニルフェノールをCO_2にまで無機化できることが明らかとなった。また、反応中間体としてギ酸の生成も観測された。 | KAKENHI-PROJECT-14042220 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14042220 |
歯原性上皮マーカーの単離を目指したマラッセ上皮特異的遺伝子のクローニング | マラッセ上皮遺残は、歯根膜の中という生理的に内部環境に存在する特殊な上皮であり、もともと内外エナメル上皮が発生過程の根相当部で断裂し、ベルトヴイッヒ上皮鞘が歯根膜に残存したものである。これまでに、このマラッセ上皮をブタ歯根膜から単離し、この細胞を用いた研究を行ってきている。口腔上皮と同じ扁平上皮細胞ということから歯肉上皮のモデル系として用いているとの報告もあるが、われわれの行ってきた実験では、Ca^<2+>濃度非依存的細胞増殖を示すなど口腔上皮との違いも明らかになってきている。本研究では、口腔上皮細胞との比較からマラッセ上皮細胞が特異的に発現、あるいは強度に発現しているものを単離し、それらのセメント質形成の誘導、歯根膜再生に関する因子の検索を目的とした。そこで、ブタ歯根膜から単離したマラッセ上皮細胞と口腔上皮細胞からそれぞれRNAを抽出、cDNAを作製後、Differential Display(DD)法を行った。DD法により特異的な遺伝子は、マラッセ上皮のみで発現しているものが16種、マラッセ上皮に強発現していると考えられるものが32種確認された。これらの確認された遺伝子をアクリルアミドゲルごと切り出し、クローニング用ベクターに組み込み単離し、塩基配列を確認した。Blast検索により、マラッセ上皮に特異性の高い遺伝子としてsmall heat shock proteinが候補にあがり、この遺伝子の情報から新たにPCR primerを作製しRT-PCRを再度行った。その結果、口腔上皮との発現の差がみられ、マラッセ上皮特異的遺伝子の一つと考えられた。また、その他切り出されたバンドについては再現性に乏しく、結果として、マラッセ上皮細胞に強く発現が確認された特異遺伝子は2つのみであった。今後は、さらにエナメル関連タンパクをはじめとしたセメント質形成誘導因子を検索していきたい。マラッセ上皮遺残は、歯根膜の中という生理的に内部環境に存在する特殊な上皮であり、もともと内外エナメル上皮が発生過程の根相当部で断裂し、ヘルトヴィッヒ上皮鞘が歯根膜に残存したものである。これまでに、このマラッセ上皮をブタ歯根膜から単離し、この細胞を用いた研究を行ってきている。口腔上皮と同じ扁平上皮細胞ということから歯肉上皮のモデル系として用いているとの報告もあるが、われわれの行ってきた実験では、Ca^<2+>濃度非依存的細胞増殖を示すなど口腔上皮との違いも明らかになってきている。そこで、プタ歯根膜から単離したマラッセ上皮細胞と口腔上皮細胞からそれぞれRNAを抽出、cDNAに逆転写後、両者に特異的あるいは強度に発現している一連の遺伝子を検索するため、まずDifferential Display(DD)法を行った。DD法により特異的な遺伝子は、マラッセ上皮のみで発現しているものが16種、マラッセ上皮に強発現していると考えられるものが32種確認された。これらの確認された遺伝子をアクリルアミドゲルごと切り出し、DNAを抽出し、クローニング用ベクターに組み込み特異的遺伝子の単離を行った。単離された遺伝子の配列は、PCRによる増幅の後、PE310Sequence analyzedによるダイレクトシークエンスで塩基配列を検索した。これらの遺伝子の中には、歯原性上皮に特異的あるいはあるいはエナメル関連タンパクをはじめとした歯胚発生過程に関わる遺伝子が含まれていることが示唆された。マラッセ上皮遺残は、歯根膜の中という生理的に内部環境に存在する特殊な上皮であり、もともと内外エナメル上皮が発生過程の根相当部で断裂し、ベルトヴイッヒ上皮鞘が歯根膜に残存したものである。これまでに、このマラッセ上皮をブタ歯根膜から単離し、この細胞を用いた研究を行ってきている。口腔上皮と同じ扁平上皮細胞ということから歯肉上皮のモデル系として用いているとの報告もあるが、われわれの行ってきた実験では、Ca^<2+>濃度非依存的細胞増殖を示すなど口腔上皮との違いも明らかになってきている。本研究では、口腔上皮細胞との比較からマラッセ上皮細胞が特異的に発現、あるいは強度に発現しているものを単離し、それらのセメント質形成の誘導、歯根膜再生に関する因子の検索を目的とした。そこで、ブタ歯根膜から単離したマラッセ上皮細胞と口腔上皮細胞からそれぞれRNAを抽出、cDNAを作製後、Differential Display(DD)法を行った。DD法により特異的な遺伝子は、マラッセ上皮のみで発現しているものが16種、マラッセ上皮に強発現していると考えられるものが32種確認された。これらの確認された遺伝子をアクリルアミドゲルごと切り出し、クローニング用ベクターに組み込み単離し、塩基配列を確認した。Blast検索により、マラッセ上皮に特異性の高い遺伝子としてsmall heat shock proteinが候補にあがり、この遺伝子の情報から新たにPCR primerを作製しRT-PCRを再度行った。その結果、口腔上皮との発現の差がみられ、マラッセ上皮特異的遺伝子の一つと考えられた。また、その他切り出されたバンドについては再現性に乏しく、結果として、マラッセ上皮細胞に強く発現が確認された特異遺伝子は2つのみであった。今後は、さらにエナメル関連タンパクをはじめとしたセメント質形成誘導因子を検索していきたい。 | KAKENHI-PROJECT-14771008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14771008 |
米国占領下沖縄の地域形成と国家のくびき | 本研究では、昨年に引き続き戦後沖縄のキリスト教史と地域形成史に関係する資料収集をし、それぞれの史料のデータベース化を行った。(1)日本キリスト教団沖縄教区資料室(宜野湾)の史料について、史料管理者の教区関係者との話し合いを持った。同室に所蔵されている史料は極めて貴重ではあるが、初期の保存状況がほとんど破壊されている。そのため、当分の間、教団・教区が所蔵している以外の周辺的な史料から当たっていくように方針転換をした。(2)沖縄公文書館では、昨年の沖縄キリスト教団機関誌『道しるべ』に続き、「財団法人沖縄キリスト教会に関する書類」18点と「財団法人沖縄キリスト教団に関する書類」134点を一部の制限を除き閲覧・複写した。これにより占領下での教会運営の実態と教会・信徒と琉球政府や軍との関係が次第に明らかになりつつある。また、琉球政府厚生局児童福祉課による「社会福祉事業に関する書類保母育成科設置関係(キリスト教学院短期大学)」も閲覧・複写することができた。公文書館では随時米軍関係資料の閲覧を行っている。(3)占領下沖縄の地域社会の実態を知るために公文書館や沖縄県立図書館所蔵の新聞史料、本年度は主として『沖縄タイムス』を1957年まで通読し、「暗い谷間の時代」と呼ばれる頃の社会史の発掘を行った。また、本年度は石垣市でも史料調査に着手し、石垣市立図書館で『八重島タイムス』『南琉日々新聞』『八重山毎日新聞』などを閲覧し、必要記事を複写した。沖縄本島分を合わせて複写した記事の総数は約900点にのぼる。これらの史料からは、米国キリスト教児童福祉会の援助で立てられた愛隣園(戦災孤児たちを収容した養護施設)や移動病院車と診療所、幼稚園、養鶏事業等を通して協会が地域社会と密接な関係を持ったことが分かった。また、沖縄群島社会福祉協議会や沖縄国際婦人クラブ等との密接な関係と、戦後沖縄の社会制度が整っていく過程でキリスト教系の諸団体がそれらの包括的組織に埋没してゆく姿が浮き彫りになった。また、戦後早い段階で占領軍と密接な関係を持っていた沖縄の協会が、占領体制が固定化し、土地問題が次第に激化する1950年代になると、地域住民との関係が微妙な物になっていく。かかる時代状況にあって、なお米国の良心に賭けようとする沖縄の教会の姿勢にその限界を見た。以上の調査をふまえて、キリスト教史学会第50回大会(1999年9月17日)において「米国占領下沖縄の地域形成とキリスト教ネットワークの研究-戦後復興事業を中心として-」と題して研究発表を行った。戦後沖縄のキリスト教界と地域形成史の研究は、現在、史料収集の段階にある.この点をふまえて,研究期間初年に当たる本年、本研究では史料の発掘、現存する資料の保存とそのデータベース化を主として行った.具体的には以下の通り.まず,沖縄では以下で調査を行った.(1)日本キリスト教団沖縄教区事務所内の教区資料室(宜野湾市)には沖縄キリスト教連盟,同教会、同教団関係の文書が筆者の推定で約4万件程度の保存されている.本年はその内の約2,000件文書をデータベース化し、目録を作製した。今後は、史料の保存についても検討したい.(2)沖縄県公文書館(南風原町)では、「琉球列島米国民政府(USCAR)資料」や琉球政府文書等から沖縄キリスト教界の活動をあと付ける史料の探索と複写を行った.特に,沖縄諮詢委員会議事録と沖縄キリスト教団機関誌『道しるべ』の全編を複写し,現在データベース化とその分析を進めている.(3)沖縄県立図書館では、主として『うるま新報』、『琉球新報』、『沖縄タイムス』から研究テーマに関する記事を探索し複写をした.第二に、東京では、(1)早稲田大学図書館で「米軍没収資料沖縄関係文書」、(2)法政大学沖縄文化研究所、(3)沖縄協会,(4)日本キリスト教団宣教研究所で調査を行った.このうち,(4)では同教団史編纂の際の沖縄関係文書のデータベース化を進めている.最後に,同志社大学神学部図書館、学術情報センター、人文科学研究所等でも沖縄の戦後教会史関係の史料収集を行った.以上の史料収集、データベース化の過程で農芸宣教師と農村復興事業や診療所・移動病院車等の医療活動,愛隣園等の孤児収容活動等の研究テーマを2年目に向けて設定した.なお,「キリスト教社会問題研究会」(1998年10月2日)において「米国占領下沖縄の地域形成とキリスト教ネットワーク-1945年から1950年代を中心に-」という題で研究報告を行った.本研究では、昨年に引き続き戦後沖縄のキリスト教史と地域形成史に関係する資料収集をし、それぞれの史料のデータベース化を行った。(1)日本キリスト教団沖縄教区資料室(宜野湾)の史料について、史料管理者の教区関係者との話し合いを持った。同室に所蔵されている史料は極めて貴重ではあるが、初期の保存状況がほとんど破壊されている。そのため、当分の間、教団・教区が所蔵している以外の周辺的な史料から当たっていくように方針転換をした。(2)沖縄公文書館では、昨年の沖縄キリスト教団機関誌『道しるべ』に続き、「財団法人沖縄キリスト教会に関する書類」18点と「財団法人沖縄キリスト教団に関する書類」134点を一部の制限を除き閲覧・複写した。これにより占領下での教会運営の実態と教会・信徒と琉球政府や軍との関係が次第に明らかになりつつある。 | KAKENHI-PROJECT-10710165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10710165 |
米国占領下沖縄の地域形成と国家のくびき | また、琉球政府厚生局児童福祉課による「社会福祉事業に関する書類保母育成科設置関係(キリスト教学院短期大学)」も閲覧・複写することができた。公文書館では随時米軍関係資料の閲覧を行っている。(3)占領下沖縄の地域社会の実態を知るために公文書館や沖縄県立図書館所蔵の新聞史料、本年度は主として『沖縄タイムス』を1957年まで通読し、「暗い谷間の時代」と呼ばれる頃の社会史の発掘を行った。また、本年度は石垣市でも史料調査に着手し、石垣市立図書館で『八重島タイムス』『南琉日々新聞』『八重山毎日新聞』などを閲覧し、必要記事を複写した。沖縄本島分を合わせて複写した記事の総数は約900点にのぼる。これらの史料からは、米国キリスト教児童福祉会の援助で立てられた愛隣園(戦災孤児たちを収容した養護施設)や移動病院車と診療所、幼稚園、養鶏事業等を通して協会が地域社会と密接な関係を持ったことが分かった。また、沖縄群島社会福祉協議会や沖縄国際婦人クラブ等との密接な関係と、戦後沖縄の社会制度が整っていく過程でキリスト教系の諸団体がそれらの包括的組織に埋没してゆく姿が浮き彫りになった。また、戦後早い段階で占領軍と密接な関係を持っていた沖縄の協会が、占領体制が固定化し、土地問題が次第に激化する1950年代になると、地域住民との関係が微妙な物になっていく。かかる時代状況にあって、なお米国の良心に賭けようとする沖縄の教会の姿勢にその限界を見た。以上の調査をふまえて、キリスト教史学会第50回大会(1999年9月17日)において「米国占領下沖縄の地域形成とキリスト教ネットワークの研究-戦後復興事業を中心として-」と題して研究発表を行った。 | KAKENHI-PROJECT-10710165 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10710165 |
ゲーティングナノポアによる単分子流動制御技術の開発 | 数ナノメートルの穴やチャネル内に配置された1対の電極間(ゲーティングナノポア構造)を通過する1分子のDNAとRNAの塩基配列を、1対の電極間を流れる電流を用いて、高い精度と速度で決定するためには、一定の速度で1分子を流す必要がある。本研究では、このナノ構造中を流れる1分子の速度を、電気的に制御するデバイス構造を開発し、1分子の速度制御の原理を構築するとともに、電圧で1分子の流れる速度を制御できることを実証した。数ナノメートルの穴やチャネル内に配置された1対の電極間(ゲーティングナノポア構造)を通過する1分子のDNAとRNAの塩基配列を、1対の電極間を流れる電流を用いて、高い精度と速度で決定するためには、一定の速度で1分子を流す必要がある。本研究では、このナノ構造中を流れる1分子の速度を、電気的に制御するデバイス構造を開発し、1分子の速度制御の原理を構築するとともに、電圧で1分子の流れる速度を制御できることを実証した。ゲート電圧、電気泳動、電気浸透流、および水溶液のイオン濃度を取り込んだマルチフィジックスモデルを用いて、SiO_2をゲート絶縁膜とするゲーティングナノポア内の1本のDNA分子の流動ダイナミクスシュミレーションを行った。正のゲート電圧を印加する場合、SiO_2表面に負電荷イオンが蓄積されるため、電気浸透流が電気泳動と同じ方向に流れ、1分子流動速度が速くなることが分かった。一方、負のゲート電圧を印加すると、正電荷が蓄積されるため、電気浸透流が電気泳動とは逆向きに流れるため、1分子流動速度が遅くなり、ゲート電圧の制御により、1分子流動速度を制御できることを理論的に明らかにした。また、1分子流動速度は、水溶液のイオン濃度に大きく依存し、高いイオン濃度ほどゲート電圧に対する速度変化が小さいことが明らかとなった。特に、ナノポア表面に本質的に存在する電荷量と電荷種が、ゲート電圧に対する流動速度を決定するため、ゲート絶縁膜材料の選択と表面処理が、現実のデバイスでは重要なパラメータになることを見出した。微細加工技術を用いて、シリコン基板に平行にゲーティングナノポアがある横型ゲーティングナノポアを開発し、ゲート電圧に対する1本のDNA分子の流動時間依存性を調べた。ゲート電圧を印加しないときの1本のDNA分子の流動時間は、約500マイクロ秒であった。一方、0.7Vのゲート電圧印加時には、約9ミリ秒と約200ミリ秒の2つの流動時間が得られた。200ミリ秒の遅い流動時間は、DNAと電極の静電相互作用により実現され、9ミリ秒の流動時間は電気浸透流により実現されたと考えられる。目標時間であった1ミリ秒より遅い流動時間が、ゲート電圧の変調により実現されることを実証した。ナノポアへのDNAの捕捉頻度を向上させるため、直径20nmのサラウンディングゲートナノポア(SGNP)構造とマイクロ・ナノ流路構造を集積させたデバイス構造を作製し、DNAの流動速度とともに捕捉頻度の計測を行った。ナノポア構造の前段にマイクロ・ナノ流路を組み込み、DNAをナノポアに誘導することで、捕捉率が向上した。ゲート電圧を印加することで、DNAのポア通過速度は広い分布を持ち、最大でゲート電圧無印加時の10%程度まで減速することに成功した。流体力学と電磁気学を組み合わせたマルチフィジックスモデルを用いて流動現象を解析した結果、電気泳動電圧が、ナノポアと流路に分圧され、DNAがナノポアに高い頻度で導入されると同時に、実効的な電気泳動電圧が小さくなり、遅い通過速度が実現されることが示唆された。この分圧効果により、100mVの電気泳動電圧印加時でも、DNAを捕捉することが可能となり、ポア通過時間のヒストグラム解析から、通過速度は54塩基/msであり、1塩基/msまで減速されたDNAも検出された。また、1分子の流動速度のイオン濃度依存性をマルチフィジックスモデルにより解析した。SGNPデバイスでは、シリコン基板を挟む上下の液体チャンバー内のイオン濃度は同じであると想定しているが、実験系では、有限なイオン濃度勾配が予測される。そこで、SGNPデバイスにおいて、イオン濃度勾配がある場合のシュミレーションを行ったところ、イオン濃度勾配は、DNA捕捉確率を向上させるが、濃度勾配で生じる電気浸透流の影響により、DNAの流動速度を急激に遅くすることが示唆された。これまでの研究から、ナノポア内の1分子流動速度は、ナノポア壁面近傍を流れる電気浸透流に大きく支配され、電気浸透流の大きさは、ナノポアの直径、ナノポア壁面の電荷量、イオン濃度、温度、およびゲート電圧をパラメータすることが明らかとなった。微細加工技術を用いてシリコン基板上にSiO2で被覆された金属細線を作製し、エレクトロマイグレーション法により金属細線を破断することで、約2nm程度のナノギャップ電極とナノ流路を持つ横型ナノデバイスの作製に成功した。一方、微細加工プロセスの最適化を行うことで、直径20nmの縦型ナノデバイスの作製に成功し、ゲート電圧の印加により、1分子の流動速度を制御するサラウンディングゲートナノポア(Surrounding Gate Nanopore:SGNP)の開発に成功した。SGNPは、ゲーティングナノポア構造にゲート電極を組み込んだ集積ナノ構造であり、ゲート電極がSiO2膜により被覆されている。直径20nmのSGNPを用いて、500塩基からなるDNAのナノポア通過時間のゲート電圧(Vg)依存性を調べたところ、Vg=0Vでは、通過時間は35msであったが、Vg=-0.5Vでは、通過時間は350msと遅くなった。 | KAKENHI-PROJECT-23681031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23681031 |
ゲーティングナノポアによる単分子流動制御技術の開発 | 負のゲート電圧を印加すると、ナノポア界面にはカチオンが集積されるため、負に帯電するDNAの電気泳動方向とは反対方向の電気浸透流がナノポア界面近傍で生じる。その結果、負のゲート電圧が、DNAの通過時間を遅くしたと考えられる。流体力学と電磁気学を同時に取り入れるマルチフィジックスモデルを用いて、SGNP内のDNAの流動ダイナミクスをシュミレーションしたところ、負のゲート電圧印加により、DNAの電気泳動方向とは反対方向の電気浸透流が発生することが支持された。一方、正のゲート電圧を印加すると、ナノポア界面にアニオンが集積される結果、DNAの流動方向と同じ方向に電気浸透流が発生するため、DNAの通過時間は短くなることが示唆された。ゲーティングナノポア内における1分子流動ダイナミクスを、電気泳動と電気浸透流を含めたマルチフィジックスモデルでシュミレーションし、1分子流動速度のゲート電圧依存性・イオン濃度依存性を明らかにすることで、ゲーティングナノポアデバイスの動作原理を理論的に示すことができた。さらに、微細加工技術により、ゲーティングナノポアデバイスを開発し、1ms以上の遅い1分子通過時間をゲート電圧の変調で実現した。25年度が最終年度であるため、記入しない。本年度計画した10nm以下のゲーティングナノポアデバイス(GNP)より微細化された2nmのGNPの開発に成功し、ゲート電極を組み入れたSGNPの開発に成功した。さらに、直径20nmのSGNPを用いて、ゲート電圧によるDNAのナノポア通過時間の変調を実現し、実験結果とシュミレーションを合わせることで、ゲート電圧による電気浸透流制御を用いた1分子流動ダイナミクス制御技術の可能性を実証した。一方で、1分子解析を基盤とするDNAシークエンサーや生体分子解析では、検出物質のナノポアへの導入率・捕捉率の低さが重要な解決課題となっている。本研究では、1分子DNAの塩基配列決定精度の向上を目指して、ナノポアを通過するDNAの速度を遅くする流動制御技術の開発に注力してきた。しかし、本研究目的を越えて、ゲート電圧によるナノポア通過速度の制御技術が、1分子DNAのナノポアへの捕捉率を向上させる技術にも応用可能であることに気が付いた。そこで、1分子DNAのナノポアへの捕捉率を流体力学と電磁気学を同時に組み入れたマルチフィジックスモデルを用い、また、DNAのコンフォメーション変化によるエントロピートラップを考慮したシュミレーションを行ったところ、正と負のゲート電圧が、それぞれ高い・低いDNA捕捉率を与えることを見出した。1分子DNAの捕捉率の観点から実験結果を解析すると、負のゲート電圧は、遅いDNA通過速度を与える一方で、低い捕捉率を与えることを明らかにした。この結果は、ゲート電圧による1分子流動制御技術が、1分子DNAシークエンサーに高い捕捉率と高い塩基読取精度を同時に与える技術になることを示唆しており、1分子流動制御技術の新しい展開が見えてきた。今後の研究では、1分子流動速度のゲート電圧依存性・イオン濃度依存性の詳細を実験的・理論的に検討し、1分子流動ダイナミクスの基礎科学を構築するとともに、1分子の流動速度制御技術を開発する。 | KAKENHI-PROJECT-23681031 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23681031 |
アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状化合物の合成と酸化還元挙動の解明 | アントラセン骨格を組み込んだ大環状分子として,最終年度は2,7-アントリレンユニットを組み込んだ大環状分子の合成を中心に進めた.昨年度,パラフェニレンジアミンと2,7-ジブロモアントラセンとのカップリングにより大環状分子を合成したので,今年度はメタあるいはオルトフェニレンジアミンとのカップリングを行い,目的化合物の合成に成功した.サイクリックボルタンメトリーにて酸化還元電位を調べたところ,パラ体と異なり非可逆なプロファイルがそれぞれ観測された.これは窒素原子と連結している芳香族との相互作用により複雑に酸化されることが示唆された.この結果から大環状分子の酸化種の安定性が置換位置によって異なることを見出した.また2,7-アントリレンユニット同士を窒素で直接連結した大環状分子の合成も試みた.当初2,7-ジブロモアントラセンとp-アニシジンとのカップリングを行ったが,生成物が非常に酸化されやすく取扱いが非常に困難であった.そこで2,7-ジブロモアントラセンの9,10位にフェニル基などを導入することで安定性の向上を図った.同様にカップリングを行ったところ,立体障害により環化反応が進まず,ポリマー化が優先的に起こった.このため,嵩高くない置換基としてアルキル鎖を導入することで環化反応を阻害しないように工夫して,2,7-アントリレンユニットを組み込んだ含窒素大環状分子の合成を進めている.本研究期間において,アントリレンユニットの様々な置換位置を窒素で連結した大環状分子の合成に成功し,それら酸化種の電子的特性を電子スペクトルとDFT計算により明らかにした.特に9,10-アントリレンユニットを組み込んだ含窒素大環状分子が構造的な要因により特異な電子物性を持つことを見出した.本研究により,アントラセンの構造的特徴を活かした新たな分子デザインの創出とその設計指針を確立することができた.アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状分子として,今年度は9,10-アントリレンユニットを用いた化合物を中心に研究を進めた.はじめに原料となるジアミノアントラセン誘導体の合成方法を最適化した.9,10-ジアミノアントラセンは市販品であるジブロモアントラセンとp-アニシジンによるカップリング反応により合成した.一部酸化した副生成物も得られたが,反応条件を最適化することで減少させることができた.これを用いて,種々の含窒素芳香族ユニットとのカップリング反応を試みた.はじめにカルバゾールユニットとの大環状化を行ったところ,一段階のカップリング反応としては良好な収率で合成することができた.また上記の方法を利用して新たにカルバゾールを基盤とした大環状化合物の合成にも成功した.合成した大環状分子の物性を明らかにするために,種々の分光学的測定を行った.またサイクリックボルタンメトリーにより酸化還元電位を測定し,酸化側では可逆なプロファイルを得ることができた.酸化状態における電子構造を考察するために電解UV測定を行ったところ,近赤外領域まで達する新たな吸収帯が確認できた.吸収帯の帰属を行うために,DFT計算の結果を用いて検討した.また,その他の置換位置を持つジアミノアントラセン誘導体の合成検討も行った.はじめにジブロモアントラセン誘導体の合成を行った.当初はBergman環化を利用して1,2-ジブロモアントラセン誘導体の合成を試みたが,副生成物の分離が困難であった.このため多段階となるがFriedel-Crafts反応を経由させて,前駆体のアントラキノンの合成を試みたところ,中程度の収率で得ることができた.現在,これらを利用してジアミノアントラセン誘導体の合成に着手している.様々な置換位置を有する原料となるいくつかのジアミノアントラセン誘導体の合成に成功している.9,10-ジアミノ体を利用した含窒素大環状分子の合成とその解析が順調に進行しており,特に酸化状態での物性において非常に興味深い結果が得られており,成果をまとめる段階となった.副次的な化合物も合成できており,それらの物性評価に着手している.またその他の置換位置を持つアントラセン誘導体の合成も進めており,他の大環状分子の合成を進めることが可能となった.以上のことにより,本研究課題の最初の1年間の進捗状況はおおむね順調に進んでいる.アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状分子として,今年度は2,3-置換および2,7-置換アントリレンユニットを導入した化合物を中心に研究を進めた.2,3-ジブロモアントラセンとp-アニシジンによるカップリング反応を用いて,パイ拡張型phenazine誘導体の合成に成功した.カップリング部位が立体的に混み合っていることから,現在反応条件を検討し,収率向上を目指している.パイ拡張型phenazine誘導体について良好な結晶が得られたのでX線結晶構造解析を行ったところ,分子構造は平面性が高く,パッキングは窒素を挟んだアントラセン部位同士が分子間でπーπスタックしている構造をとることがわかった.合成中間体である2,3-ジアミノアントラセン誘導体を用いて,ドナー/アクセプター型含窒素芳香族化合物の合成も試みた.合成した誘導体を用いて種々の分光学的測定を行った.吸収帯の帰属を行うために,DFT計算の結果を用いて検討した.一方,2,7-アントリレンを組み込んだ含窒素大環状化合物の合成も検討した.はじめに2,7-ジアミノアントラセンとジブロモベンゼンとのカップリングを試みたところ,ポリマーのような混合物が得られるのみであった. | KAKENHI-PROJECT-16K17874 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17874 |
アントラセン骨格を組み込んだ含窒素大環状化合物の合成と酸化還元挙動の解明 | そこで2,7-ジブロモアントラセンとパラフェニレンジアミンユニットとのカップリング反応を行ったところ,目的とする大環状化合物の合成に成功した.酸化還元電位を調べるためにサイクリックボルタンメトリーを測定し,可逆な3段階の4電子酸化波が観測され,酸化種が安定に存在できることが示唆された.酸化条件での電解吸収スペクトルも測定し,近赤外領域に幅広い吸収帯が観測された.これはTD-DFT計算の結果より電荷共鳴と電荷移動吸収に帰属できると示唆された.現在,置換位置による酸化種の安定性や電子状態への影響を調査しているところである.2,7-置換カルバゾールと9,10-ジアミノアントラセンおよび9,10-ジアミノアントラセンとパラフェニレンジアミンを交互に組み込んだ含窒素大環状分子の構造および酸化状態の分光学データ解析をDFT計算の結果から考察し,特に酸化状態の物性で非常に興味深い結果が得られた.これらの研究成果を取りまとめた論文を学術誌に発表することができた.また2,3-ジアミノアントラセン骨格を有する大環状分子について,副次的な化合物も合成できており,それらの物性評価に着手している.いくつかの含窒素大環状分子についても分光学および構造解析が進んでおり,成果をまとめる段階まできている.以上のことにより,本研究課題の2年目の進捗状況は概ね順調に進展している.アントラセン骨格を組み込んだ大環状分子として,最終年度は2,7-アントリレンユニットを組み込んだ大環状分子の合成を中心に進めた.昨年度,パラフェニレンジアミンと2,7-ジブロモアントラセンとのカップリングにより大環状分子を合成したので,今年度はメタあるいはオルトフェニレンジアミンとのカップリングを行い,目的化合物の合成に成功した.サイクリックボルタンメトリーにて酸化還元電位を調べたところ,パラ体と異なり非可逆なプロファイルがそれぞれ観測された.これは窒素原子と連結している芳香族との相互作用により複雑に酸化されることが示唆された.この結果から大環状分子の酸化種の安定性が置換位置によって異なることを見出した.また2,7-アントリレンユニット同士を窒素で直接連結した大環状分子の合成も試みた.当初2,7-ジブロモアントラセンとp-アニシジンとのカップリングを行ったが,生成物が非常に酸化されやすく取扱いが非常に困難であった.そこで2,7-ジブロモアントラセンの9,10位にフェニル基などを導入することで安定性の向上を図った.同様にカップリングを行ったところ,立体障害により環化反応が進まず,ポリマー化が優先的に起こった.このため,嵩高くない置換基としてアルキル鎖を導入することで環化反応を阻害しないように工夫して,2,7-アントリレンユニットを組み込んだ含窒素大環状分子の合成を進めている.本研究期間において,アントリレンユニットの様々な置換位置を窒素で連結した大環状分子の合成に成功し,それら酸化種の電子的特性を電子スペクトルとDFT計算により明らかにした.特に9,10-アントリレンユニットを組み込んだ含窒素大環状分子が構造的な要因により特異な電子物性を持つことを見出した.本研究により,アントラセンの構造的特徴を活かした新たな分子デザインの創出とその設計指針を確立することができた.9,10-アントリレンユニットを持つ化合物では,様々な含窒素芳香族ユニットを組み込んだ大環状化合物の合成に取り組み,その物性を電子スペクトルやサイクリックボルタモグラムにより明らかにする. | KAKENHI-PROJECT-16K17874 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K17874 |
オキシトシンの新規機能の展開:摂食制御の神経経路と生理的病態的役割 | 室傍核nesfatin-1(Nesf)-オキシトシン(Oxt)ニューロン系の下流神経経路と上流制御系(1) Oxtニューロン神経終末は延髄孤束核(NTS)POMCに加えて、視床下部弓状核(ARC) POMCニューロンにコンタクトしていた。Oxtの脳室内投与により弓状核POMCニューロンにc-FOS発現が見られた。Oxtは単離弓状核POMCニューロンの細胞内Ca^<2+>を増加させた。以上の結果より、Oxtは弓状核POMCニューロンにも神経伝達することが明らかとなった。(2) 48時間絶食後に2時間再摂食させた条件で、室傍核(PVN) Oxt及び弓状核POMCニューロンのmRNAは変化せず、Oxt-mRFP-Tgラットの室傍核RFP蛍光の更なる増加は捉えられなかった。(3)室傍核Oxtニューロンを制御しているNesfニューロンが、食事因子の高グルコースとインスリンにより活性化されることを明らかにした。末梢投与Oxtの摂食・代謝作用(2)高脂肪食負荷により肥満したマウスにOxtの末梢投与(皮下および浸透圧ポンプ)を2週間行ったところ、延髄孤束核と室傍核が活性化され、摂食抑制とエネルギー消費亢進により体重が減少し、内臓脂肪蓄積・脂肪肝・高血糖が改善した。末梢投与Oxtの中枢情報伝達と抗肥満・抗メタボリックシンドローム効果について論文を発表し(Aging 3 : 1169-1177, 2011)、特許を出願した。Nesfのストレス応答への関与(1)ラットに拘束ストレスを負荷すると、ストレス関連神経核に局在するNesfニューロンが活性化された。(2) Nesfを脳室内投与すると、ストレス関連神経核のCRH・ノルアドレナリン・セロトニンニューロンが活性化され、さらに、血中ACTH,コルチコステロンレベルが上昇した。室傍核nesfatin-1(Nesf)-オキシトシン(Oxt)ニューロン系の下流神経経路と上流制御系(1) Oxtニューロン神経終末は延髄孤束核(NTS)POMCに加えて、視床下部弓状核(ARC) POMCニューロンにコンタクトしていた。Oxtの脳室内投与により弓状核POMCニューロンにc-FOS発現が見られた。Oxtは単離弓状核POMCニューロンの細胞内Ca^<2+>を増加させた。以上の結果より、Oxtは弓状核POMCニューロンにも神経伝達することが明らかとなった。(2) 48時間絶食後に2時間再摂食させた条件で、室傍核(PVN) Oxt及び弓状核POMCニューロンのmRNAは変化せず、Oxt-mRFP-Tgラットの室傍核RFP蛍光の更なる増加は捉えられなかった。(3)室傍核Oxtニューロンを制御しているNesfニューロンが、食事因子の高グルコースとインスリンにより活性化されることを明らかにした。末梢投与Oxtの摂食・代謝作用(2)高脂肪食負荷により肥満したマウスにOxtの末梢投与(皮下および浸透圧ポンプ)を2週間行ったところ、延髄孤束核と室傍核が活性化され、摂食抑制とエネルギー消費亢進により体重が減少し、内臓脂肪蓄積・脂肪肝・高血糖が改善した。末梢投与Oxtの中枢情報伝達と抗肥満・抗メタボリックシンドローム効果について論文を発表し(Aging 3 : 1169-1177, 2011)、特許を出願した。Nesfのストレス応答への関与(1)ラットに拘束ストレスを負荷すると、ストレス関連神経核に局在するNesfニューロンが活性化された。(2) Nesfを脳室内投与すると、ストレス関連神経核のCRH・ノルアドレナリン・セロトニンニューロンが活性化され、さらに、血中ACTH,コルチコステロンレベルが上昇した。1.室傍核オキシトシン(Oxt)ニューロンの摂食抑制作用の仲介神経経路の解析:Oxt脳室内投与による摂食抑制が、メラノコルチン受容体(MC3/4R)ブロッカーで阻害されることを見出しており、MC3/4Rのリガンドである・・MSHを産生するPOMCニューロンがOxtの標的であると推定される。POMCニューロンは脳内で視床下部(ARC)と延髄(NTS)の2か所にのみ局在する。ARCのPOMCニューロンがOxtの標的であるかをラットにおいて検討した。形態学的観察の結果、室傍核OxtニューロンがARC POMCニューロンに投射していることが示された。またOxtは単離したARC POMCニューロンに直接作用し細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]i)を増加させた。このOxtの[Ca^<2+>]i増加作用は、レプチン抵抗性の肥満モデル動物であるZucker Fatty Ratでも正常動物と同様に観察された。以上の結果より、室傍核Oxtニューロンの標的として、以前報告した孤束核POMCニューロンと共に、ARC POMCニューロンが関与すること、OxtのARC POMCニューロン活性化作用はレプチン作用とは独立していることが明らかになった。2.室傍核Nesfatin-1-Oxt系のストレス性摂食変調への関与:ラットに拘束ストレスを負荷すると、視床下部と延髄のNesf神経細胞が神経活性化マーカーc-FOSを発現した。次に、Nesfatin-1を脳室内投与すると、視床下部・延髄のストレス | KAKENHI-PROJECT-22659044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22659044 |
オキシトシンの新規機能の展開:摂食制御の神経経路と生理的病態的役割 | 関連神経核にc-FOS発現が誘導され、その一部はCRH,セロトニン、ノルアドレナリンニューロンに局在した。さらにNesfatin-1の脳室内投与は血中ACTH、グルココルチコイドを増加させた。Nesfatin-1がストレス応答に関与することが明らかとなった。食事による室傍核Oxtニューロン、POMCニューロン活性化の検討1.Oxtニューロン軸索は孤束核POMCに加えて、弓状核POMCニューロンに投射していた。Oxtの脳室内投与により弓状核POMCニューロンにc-FOS発現が見られた。Oxtは単離弓状核POMCニューロンの細胞内Ca^<2+>を増加させた。以上の結果より、室傍核Oxtは弓状核POMCニューロンにも神経伝達することが明らかとなった。2.絶食後の再摂食によるニューロン活性化を検討した。48時間絶食後の2時間再摂食により室傍核オキシトシン(Oxt)、弓状核POMCニューロンのmRNAは変化しなかった。3.Oxt -mRFP-Tgラットの室傍核RFP蛍光は非常に強く、絶食後の再摂食による更なる増加は捉えられなかった末梢投与Oxtの摂食・代謝作用の検討2.末梢投与Oxtの中枢情報伝達と抗肥満効果:高脂肪食負荷による肥満マウスに2週間末梢Oxt投与(皮下および浸透圧ポンプ)すると、延髄とPVNが活性化され、摂食抑制・エネルギー消費亢進による抗肥満効果を示し、内臓脂肪蓄積・脂肪肝・高血糖を改善し抗メタボリックシンドローム効果を示した。特許を出願し、論文発表した(Aging3:1169-1177,2011)。 | KAKENHI-PROJECT-22659044 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22659044 |
顔と身体表現の多文化比較フィールド実験研究 | 研究1の感情認識と研究2の感情表出について、表情判断のタブレット実験、表情表出の描画実験により順調に進展している。2017年度のフィールド実験として、タンザニア・カメルーン・タイ・フィンランドで単純顔の表情描画実験を実施した。2018年度のフィールド実験として、タンザニア・カメルーン・中国雲南・ケニアで表情判断実験および人物模写描画実験を実施した。日本国内にて、これらの実験結果との比較のためのコントロール実験を実施した。人類学と実験心理学の越境的学際融合に関して、以下のような取り組みを行った。計画班人類心理会議をこれまでに6度開催し、フィールド実験の進め方や得られたデータの解釈、人類学と実験心理学の越境的学際融合の進め方についてなど密に議論を行っている。計画班A01-P01床呂氏や公募班A01-K102田氏なども参加し、領域全体に渡る人類学=実験心理学の研究連携のハブとして機能している。越境的学際融合のため2018年度文化人類学会分科会「文化人類学と異分野のコラボレーションー達成したこと・問題点・今後の課題」にてフィールド実験研究の取り組みや課題、学際融合の実情を紹介し議論を進めた。A01-P01床呂氏がコメンテーターとして参加した。計画班C01-P01と合同で第3回顔身体カフェ「顔を描く・顔を描かれる・顔を知る」を開催した。顔を「描く」ことによる内面の表出についての調査を行い、実験計画(自画像描画)の立案につながっている。我々が当たり前のように顔として認識し、顔として扱っているものが、他の地域や文化の人たちにとってはそう見えていないのかもしれないという可能性を複数の研究結果が示している。トランスカルチャー状況における「顔」とは何かについてもう一度考え直すこと、そして安易な先入観や思い込みを排除して丁寧に調査することが、我々には必要であろうという結論に至っている。フィールド実験を通じた成果は以下の通りである。単純顔の表情描画実験の結果は顔の単純化表現、顔認識の枠組み構造の多様性が示唆される結果となった。単純顔の表情判断実験では、タンザニアやカメルーンで収集した笑顔については、日本よりも当該地域の人々の方が「笑顔」と判断する割合が高かった。我々にはすぐには検出できないような「その地域の笑顔の特徴」を捉えているのかもしれないが、判断バイアスなのか表情判断の精度が高いのか、更なる検証を要する。人物模写描画実験では、単純顔ではなく顔写真を模写する課題を実施した。フィールド実験における語りの人類学的研究として、フィールド実験の過程で、インフォーマントとの対話の中から興味深い仮説が得られている。顔の抽象化や顔認識の枠組みの様式には、我々が思っているよりも多様性があるのかもしれない。現在この仮説の検証実験を準備中である。このように顔研究について事前の計画を遥かに超える興味深い知見が集められている。そして本計画班のもうひとつの目的でもある異分野融合ー心理学と人類学のコンパクトな学際研究ーについては、単に融合して進めるというだけでなく、具体的にどのようなアウトプットが可能なのか、研究スタイルの違いをどのようにフィットさせればいいのか、これら様々な問題に対して議論のフェイズを抜け実践を重ねる段階まで至っており、人類学と実験科学の融合という新領域創成にひとつの道筋が見えつつある。以上のことを総合的に考えると、当初の計画以上に研究が進展していると評価できる。研究計画に大きな変更はないが、これまでのフィールド実験で得られた研究成果をもとに、方向性の修正を柔軟に行っている。第一に、これまでの研究経過でも述べたように「感情」の表出と認識から出発し、「顔」とは何かという問いに直面することとなった。この問いに正面から取り組むために、描画実験を改善し、顔研究のウェイトを上げて、身体(ジェスチャ)研究のウェイトをやや落としている。研究手法として、当初は各地域・環境・文化の人類学的背景の上で、フィールド実験データに対する定量的検証を行い、解釈することをアウトプットとして想定していた。この方向性にはかわりはないが、人類学と実験心理学の境界を超えたフィールド実験研究のダイナミックなプロセス、特に人類学者が実験を行う際のインフォーマントとの「対話」の中に、報告すべき重要な知見が溢れているということがさらに明確になった。このため、実験データの定量的検証に加え、(実験心理学分野では通常は無視する)実験時の語りの解析にもより注力していくこととした。したがって、今後の研究ではフィールド実験の結果としての定量的データだけでなく、フィールド実験の過程で生み出される語りのような質的(場合によっては量的)データについても、それ自体を研究成果として論文化を進めていく。顔身体学フィールド実験として、アフリカ(タンザニア)・カメルーン・フィンランド・タイ等世界各国にて実験・調査を実施した。また日本国内にて多地域の表情刺激について判断を行う表情弁別実験を実施した。文化人類学者が博士研究員として研究チームに加わり、研究手法、研究内容についてこれまで以上に多角的な視点で評価、議論できる体制が整った。12月に東京外国語大学で開催された「トランスカルチャー状況下における顔身体学の構築第2回公開シンポジウム」にて実験・調査渡航の報告発表を行った。3月にはバリ島ワークショップにてフィールド実験チュートリアルを行い、文化人類学チームと研究手法の共有を図った。同じく3月には心理学チームに同行してスイス・フランスの共同研究者を訪問し、国際連携でのフィールド実験共同研究についての議論を行った。 | KAKENHI-PLANNED-17H06342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-17H06342 |
顔と身体表現の多文化比較フィールド実験研究 | またフィールド実験という研究の方法論を含む、本研究チームの活動内容については多くの場で招待講演等を行った(日本視覚学会2018年冬季大会・大会企画シンポジウム「多文化をつなぐ顔と身体表現」、第1回犬山認知行動研究会議、関西学院大学KG-RCSP合同ゼミ、専修大学社会知性開発研究センター/心理科学研究センター「心理学における再現可能性入門」)。以上のように、研究初年度であったが、フィールド実験によるデータ取得と予備調査、国内外での研究チームの活動報告、様々な活動を通して文化人類学・哲学との連携体制を構築することが出来た。最大の目標であった顔身体学フィールド実験としては、アフリカ(タンザニア)・カメルーン・フィンランド・タイ等世界各国にて実験・調査を実施した。また日本国内にて多地域の表情刺激について判断を行う表情弁別実験を実施した。これらのデータについては現在、整理中であり、一部は学会発表等で報告している。予定していたとおり文化人類学者が博士研究員として研究チームに加わり、研究手法、研究内容についてこれまで以上に多角的な視点で評価、議論できる体制が整った。これにより、次年度以降の研究の計画立案も順調に進んでいる。その他、アウトリーチ活動も行っており(マハレ珍道中第9回帰路、一人旅、ムガンボ村にて船を待つマハレ珍聞, 30 (2017冬)、認知心理学者のタンザニア滞在記、心理学ワールド)、初年度としては順調に進んでいると言える。研究1の感情認識と研究2の感情表出について、表情判断のタブレット実験、表情表出の描画実験により順調に進展している。2017年度のフィールド実験として、タンザニア・カメルーン・タイ・フィンランドで単純顔の表情描画実験を実施した。2018年度のフィールド実験として、タンザニア・カメルーン・中国雲南・ケニアで表情判断実験および人物模写描画実験を実施した。日本国内にて、これらの実験結果との比較のためのコントロール実験を実施した。人類学と実験心理学の越境的学際融合に関して、以下のような取り組みを行った。計画班人類心理会議をこれまでに6度開催し、フィールド実験の進め方や得られたデータの解釈、人類学と実験心理学の越境的学際融合の進め方についてなど密に議論を行っている。計画班A01-P01床呂氏や公募班A01-K102田氏なども参加し、領域全体に渡る人類学=実験心理学の研究連携のハブとして機能している。越境的学際融合のため2018年度文化人類学会分科会「文化人類学と異分野のコラボレーションー達成したこと・問題点・今後の課題」にてフィールド実験研究の取り組みや課題、学際融合の実情を紹介し議論を進めた。A01-P01床呂氏がコメンテーターとして参加した。計画班C01-P01と合同で第3回顔身体カフェ「顔を描く・顔を描かれる・顔を知る」を開催した。顔を「描く」ことによる内面の表出についての調査を行い、実験計画(自画像描画)の立案につながっている。 | KAKENHI-PLANNED-17H06342 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PLANNED-17H06342 |
新規開発アデニル酸シクラーゼ阻害薬による心筋細胞アポトーシス抑制 | 平成16年度に引き続き5型アデニル酸シクラーゼ抑制薬の検討を行った。5型アデニル酸シクラーゼは心臓におけるβ受容体の下流酵素であり、この酵素を標的とした薬剤はβブロッカーの欠点を解決しうる可能性を持つが、5型アデニル酸シクラーゼの生理的機能は未だ不明である。そこで本研究の目的は5型アデニル酸シクラーゼの心筋収縮及びアポトーシスに果たす役割を解明し、また新たに開発した5型アデニル酸シクラーゼ特異的抑制薬(PMC-6)の効果について調べることである。マウス及びラットの心筋初代培養を用いて、β受容体刺激時の心筋収縮及びアポトーシスをノックアウトマウス或いはPMC-6存在下で検討した。10週令マウスの分離心筋細胞を用いて、イソプロテレノール刺激時の心筋細胞収縮に対するPMC-6の効果を調べたところ、PMC-6はcAMP産生を減少させるにも関わらず心筋細胞の収縮性に影響を与えなかった。次に5型アデニル酸シクラーゼノックアウトマウスを用いてイソプロテレノール刺激時のアポトーシスについてTUNEL法で調べたところ、ノックアウトマウスの心筋細胞ではアポトーシスが誘導されなかった。次にPMC-6の効果を調べたところ、TUNEL法、DNA fragmentation ELISA法、caspase-3活性測定法の全てにおいてイソプロテレノール刺激によるアポトーシスを抑制した。これらより5型アデニル酸シクラーゼはβ受容体を介した心筋収縮には関与せず、アポトーシス誘導に選択的に働いていることが示唆された。結論としてPMC-6は、喘息患者にも投与可能な、且つ心機能に影響を与えない心臓特異的なアポトーシス阻害剤となる可能性が示された。次にin vivoでの検討を行うべくマウスの皮下に浸透圧ポンプを埋め込み、イソプロテレノールの持続注入下でPMC-6の効果を検討することとし現在基礎検討中である。βブロッカーは心機能抑制や喘息患者に対する慎重投与などの欠点を持つ。5型アデニル酸シクラーゼは心臓におけるβ受容体の下流酵素であり、この酵素を標的とした薬剤はβブロッカーの欠点を解決しうる可能性を持つが、5型アデニル酸シクラーゼの生理的機能は未だ不明である。そこで本研究の目的は5型アデニル酸シクラーゼの心筋収縮及びアポトーシスに果たす役割を解明し、また新たに開発した5型アデニル酸シクラーゼ特異的抑制薬(PMC-6)の効果について調べることである。方法:マウス及びラットの心筋初代培養を用いて、β受容体刺激時の心筋収縮及びアポトーシスをノックアウトマウス或いはPMC-6存在下で検討した。10週令マウスの分離心筋細胞を用いて、イソプロテレノール刺激時の心筋細胞収縮に対するPMC-6の効果を調べたところ、PMC-6はcAMP産生を減少させるにも関わらず心筋細胞の収縮性に影響を与えなかった。また、PMC-6はイソプロテレノールによるフォスフォランバンのリン酸化にも影響を与えず、5型アデニル酸シクラーゼは心筋収縮に関与しないことが示唆された。次に5型アデニル酸シクラーゼノックアウトマウスを用いてイソプロテレノール刺激時のアポトーシスについてTUNEL法で調べたところ、ノックアウトマウスの心筋細胞ではアポトーシスが誘導されなかった。次にPMC-6の効果を調べたところ、TUNEL法、DNA fragmentation ELISA法、caspase-3活性測定法の全てにおいてイソプロテレノール刺激によるアポトーシスを抑制した。これらより5型アデニル酸シクラーゼはβ受容体を介した心筋収縮には関与せず、アポトーシス誘導に選択的に働いていることが示唆された。結論としてPMC-6は、喘息患者にも投与可能な、且つ心機能に影響を与えない心臓特異的なアポトーシス阻害剤となる可能性が示された。平成16年度に引き続き5型アデニル酸シクラーゼ抑制薬の検討を行った。5型アデニル酸シクラーゼは心臓におけるβ受容体の下流酵素であり、この酵素を標的とした薬剤はβブロッカーの欠点を解決しうる可能性を持つが、5型アデニル酸シクラーゼの生理的機能は未だ不明である。そこで本研究の目的は5型アデニル酸シクラーゼの心筋収縮及びアポトーシスに果たす役割を解明し、また新たに開発した5型アデニル酸シクラーゼ特異的抑制薬(PMC-6)の効果について調べることである。マウス及びラットの心筋初代培養を用いて、β受容体刺激時の心筋収縮及びアポトーシスをノックアウトマウス或いはPMC-6存在下で検討した。10週令マウスの分離心筋細胞を用いて、イソプロテレノール刺激時の心筋細胞収縮に対するPMC-6の効果を調べたところ、PMC-6はcAMP産生を減少させるにも関わらず心筋細胞の収縮性に影響を与えなかった。次に5型アデニル酸シクラーゼノックアウトマウスを用いてイソプロテレノール刺激時のアポトーシスについてTUNEL法で調べたところ、ノックアウトマウスの心筋細胞ではアポトーシスが誘導されなかった。次にPMC-6の効果を調べたところ、TUNEL法、DNA fragmentation ELISA法、caspase-3活性測定法の全てにおいてイソプロテレノール刺激によるアポトーシスを抑制した。これらより5型アデニル酸シクラーゼはβ受容体を介した心筋収縮には関与せず、アポトーシス誘導に選択的に働いていることが示唆された。結論としてPMC-6は、喘息患者にも投与可能な、且つ心機能に影響を与えない心臓特異的なアポトーシス阻害剤となる可能性が示された。 | KAKENHI-PROJECT-16790426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790426 |
新規開発アデニル酸シクラーゼ阻害薬による心筋細胞アポトーシス抑制 | 次にin vivoでの検討を行うべくマウスの皮下に浸透圧ポンプを埋め込み、イソプロテレノールの持続注入下でPMC-6の効果を検討することとし現在基礎検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-16790426 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16790426 |
デジタル化社会における公平な課税―「フェア・シェア」の探求 | 海外の租税法研究者との議論を通して,「フェアな課税」はフリーライダーを排除できる市場・社会において実現可能であることが確認できた。そのようなフリーライダーが,高度にデジタル化した市場において,急激に増大している。「新しいビジネスには新たな税」という考え方もありうるが,既存の課税システムを基本的に維持しつつ,申告納税手続の煩雑さを軽減するための新技術を活用するべきであろう。「公平課税」は,伝統的に国家によって保障されてきた。しかしながら「フェアな課税」は,納税者自らが実践していくものである。その意味で,高度にデジタル化された社会における納税者は,高い納税者意識と社会的責任を持つ必要がある。当初計画に沿い、EU域内の研究者との連携による下記セミナーを開催した。これらのセミナーには、大学院生を含む若手研究者にも報告者及び開催者として参加してもらうことを通して、EU域内の若手研究者との交流をはかることもできた。3上記2の共同セミナーの翌日1月16日、ウィーン側報告者4名と主催者で、前日のセミナーの論点整理と報告書作成のための準備会合を開催し、2015年夏を目途に、セミナー報告書(ディスカッション・ペーパー)を刊行するための手順を決定した。2課税における「フェアネス」は、日本の社会ではまだ十分に理解を得ていないことから、研究代表者においては学会報告や公表論文を通して、この考え方の紹介を行った。学会報告として「消費課税における事業者と消費者」(日本税法学会第105回大会・2015年6月13日開催)、公表論文として「デジタル化社会における消費課税の新たな手法」(税務弘報63巻5号48-54頁、2015年5月)、「消費課税における『事業者』と『消費者』ーフェアネスの視点からの考察ー」(税法学537号209-224頁、2015年5月)など。3グローバルな視点から最新の租税情報を入手するために、IFA総会(2015年度は2015年8月30日から9月4日までスイス・バーゼルにて開催)への出席が不可欠であるところ、研究代表者及び研究分担者が勤務校の公務のために日本を離れられないため、研究協力者(古賀敬作・大阪経済大学経営学部専任講師)を派遣し、「国際課税の最近の展開」や「国境を越えるサービスの提供と消費税」などのテーマに関する情報収集を行った。また、IFA総会に予定通り、古賀敬作・大阪経済大学経営学部専任講師を派遣することができ、国際租税の最新情報を入手することができた。今年度は、国内で組織した研究会(日本税務研究センター・「消費税の研究」特別研究会)を基盤に、フェアな消費税および現代的消費税の在り方を検討した。その成果は、下記のとおりである。1「消費税の税率構造とインボイスー伝統的消費税と現代的消費税からの示唆」税理59巻5号1ー9頁(2016年4月)2「仕入税額控除」公益財団法人日本税務研究センター編『消費税の研究』465ー514頁(2017年1月)また、研究代表者・西山および研究分担者・柴は、中央大学法学会・法学新法において、下記の論文を公表した。3西山由美「消費課税におけるインボイスの機能と課題ーEU域内の共通ルールと欧州司法裁判所判例を素材としてー」法学新法123巻11・12号119ー150頁(2017年3月)4柴由花「非居住者・多国籍企業の情報:自動的情報交換に関連するEUルールの模索」法学新報123巻11・12号357-388頁(2017年3月)研究報告としては、大阪経済大学で研究代表者・西山および研究分担者・柴は、下記の高騰報告を行った。5西山由美「消費税とフェアシェア」大阪経済大学:ビジネス法コース・税法務プログラム(2016年8月13日)6柴由花「中小企業の事業承継と税不動産を中心として」大阪経済大学:経営・ビジネス法情報センター、経営学部、大学院経営学研究科共催経営と法セミナー(2016年8月20日)上記の業績の中でも、とくに公刊された論文14は、2016年に耳目を集めたパナマ文書やBEPS(税源浸食・利益移転)の問題を踏まえ、真にフェアな課税を実現するための取引情報・税務情報の透明化に向けた制度設計の在り方に着目している。最終年度(2016年度)には、「公平課税」の権威であるドイツの教授を招聘し、「課税におけるフェアネス」をテーマにセミナーを開催する予定であったが、同教授の体調不良による来日断念により、計画変更をせざるをえなかった。また研究代表者・西山が、同僚の急病に伴って急きょ、平成28年度4月より大学院(法と経営学研究科)主任を務めることになり、完成年度の組織運営に忙殺され、同年度中の新たなセミナーの開催計画を立てることができず、本科研費課題を1年延長せざるをえなくなった。しかしながら、海外の研究者との共同研究に代え、国内の研究者と研究会(「消費税の研究」特別研究会)を組織し、法学、経済学、財政学の専門家とともに「フェアかつモダンな消費税」の研究を行った。研究代表者・西山は、この研究会に副部会長としてかかわり、研究会の成果を580頁に及ぶ報告書(「消費税の研究」)としてまとめることができた。 | KAKENHI-PROJECT-26380048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380048 |
デジタル化社会における公平な課税―「フェア・シェア」の探求 | 以上により、当初計画の海外研究者とのセミナー開催は、2017年度に持ち越されたものの、国内研究者との共同研究を通して本科研費課題に即した研究成果を出すことができたことから、進捗状況としては「やや遅れている」に相当するものと判断した。最終年度には,1研究の総括として国際セミナーを開催および2研究課題に即した論文の公表3デジタルエコノミーに即応した税制を持つオランダでの実地調査を行った。1の開催準備は,研究代表者と研究分担者が協力して行った。1について,2017年10月27日に明治学院大学にてRichard Krever教授(西オーストラリア大学)を招へいし,「ポスト・モダン消費税に向けて」というテーマでセミナーを開催した。地域横断的に世界中の消費税を実地で研究しているKrever教授の視点を通した「フェアな消費税の在り方」について,研究者,実務家およびこの分野を学ぶ大学院生とともに議論を行った(参加人数はゲストを含め19名)。2について,次に,2017年度に本研究課題について公表した研究代表者の論文(単著)は,以下のとおりである。(a)「消費税と脱税」木村弘之亮先生古稀記念論文集編集委員会編『公法の理論と体系思考』・・・相対的に消費税率の高いEU域内では,消費税の脱税スキームが蔓延している。欧州司法裁判所の判例を用いてその実態を概観し,各加盟国の対策について考察を加えた。(b)「消費課税ー国境を越えるデジタル取引をめぐって」金子宏監修『現代租税法講座・国際課税』・・・国境を越えるデジタルサービスに対する消費課税ルールの不備が,フェアな課税を阻んでいることに鑑み,2016年10月から日本でも導入されるリバースチャージ制度の課題について検討を行った。(c)「金融サービスに対する消費課税」論究ジュリスト24号・・・Krever教授の近著“VAT and Financial Services"を素材に,金融サービス領域での仕入税額控除の遮断について論じた。33月にアムステルダムのIBFDでオランダ税制の調査を行った。海外の租税法研究者との議論を通して,「フェアな課税」はフリーライダーを排除できる市場・社会において実現可能であることが確認できた。そのようなフリーライダーが,高度にデジタル化した市場において,急激に増大している。「新しいビジネスには新たな税」という考え方もありうるが,既存の課税システムを基本的に維持しつつ,申告納税手続の煩雑さを軽減するための新技術を活用するべきであろう。「公平課税」は,伝統的に国家によって保障されてきた。しかしながら「フェアな課税」は,納税者自らが実践していくものである。その意味で,高度にデジタル化された社会における納税者は,高い納税者意識と社会的責任を持つ必要がある。1当初の予定通り、Lang教授(ウィーン経済大学)及び4名の若手研究者を招聘して、共同セミナーを開催することができた。2上記共同セミナーは、ウィーン側4名及び日本側3名の若手研究者が報告を担当し、これに実務家の特別講演が加わり、中堅世代の研究者が質疑応答をリードする形式をとることにより、率直かつ活発な意見交換を実現できたことに加え、両国の若手研究者同士の交流の機会をもつこともできた。3上記共同セミナーに先立ち、「フェアネス」の概念の理解を深めるために、Hemels教授(エラスムス大学)とのセミナーを開催することができた。4これまでのEU域内の租税法研究が英独仏中心であったが、中堅国であるオーストリアやオランダの研究者との交流を通して、EU域内の租税政策への理解を深化させることができた。 | KAKENHI-PROJECT-26380048 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26380048 |
VLPを用いたノロウイルスの浄水処理性評価 | 培養ができないことから明かではなかったノロウイルスの浄水処理性を、ウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を用いることにより明らかにした。また、免疫PCRによるノロウイルスの高感度検出系を確立し、VLPsと組み合わせることにより、より詳細なノロウイルスの浄水処理性を調べた。その結果、凝集を前処理として組み込んだMF膜処理は、分画分子量1kDaのUF膜処理と同等のノロウイルス除去性を有することが示された。培養ができないことから明かではなかったノロウイルスの浄水処理性を、ウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を用いることにより明らかにした。また、免疫PCRによるノロウイルスの高感度検出系を確立し、VLPsと組み合わせることにより、より詳細なノロウイルスの浄水処理性を調べた。その結果、凝集を前処理として組み込んだMF膜処理は、分画分子量1kDaのUF膜処理と同等のノロウイルス除去性を有することが示された。微生物(原虫,細菌,ウイルスなど)を用いた水処理実験を行う際には、実験に先立ち、対象微生物を培養し、大量のストックソリューションを作成する必要がある。ところが、ノロウイルスは、これまで多くの努力が払われてきたにも関わらず、未だ細胞を用いた培養が確立されておらず、ウイルスの大量培養ならびに添加実験が極めて難しい状況にあるのが現状である。近年、培養不能なノロウイルスの構造や抗原性を調べるため、ウイルス外套タンパク(VLPs : Virus Like Particles)を遺伝子組換え生物を用いて発現させる手法が確立された。また、発現されたVLPsを用いることによりノロウイルスの酵素免疫測定法が開発され、現在では検出キットが市販されるようになった。本研究では、VLPsを用いてノロウイルスの室内水処理実験を行うことを目的とした。本年度は、ウイルスの超微粉化活性炭への吸着性を調べた。その結果、ウイルスを吸着することのできる活性炭と、できない活性炭があることが分かった。この差異は、(1)活性炭の表面電位が異なること、(2)活性炭表面に40100nm程度の細孔が存在するか否か、に依存する可能性が示された。また、1時間の接触でウイルスが1log程度除去できることが分かった。現行の水処理ではウイルスは活性炭の除去対象とは考えられていないが、カビ臭抑制などの主目的の他にも、副次的効果としてウイルス除去にもいくぶん貢献していることが示された。昨年度は、遺伝子組換え技術によりノロウイルスVLPを発現させ、その形状,サイズ,比重などが野生ノロウイルスと同様であることを確認した。また、このVLPを用いて、凝集-沈澱-砂ろ過という一般的な浄水処理プロセスでのノロウイルスの処理性をベンチスケールの室内実験により世界で初めて評価することに成功した。しかしながら、昨年度に用いたVLPの定量法(市販のキットを用いたELISA法)では感度不足であるため、室内実験設備に添加するVLP濃度が、実処理施設に流入すると予想される濃度より遙かに大きい値での実験しか行うことができなかった。本年度は、浄水処理過程におけるウイルスの処理性を評価する目的で、ノロウイルス外套タンパク粒子(VLPs)を使用した実験を行っているが、検出系のELISA法の代替となるimmuno-PCR検出系を構築した。外套タンパク粒子は内部にRNAやDNAを持たないため、検出用の抗体にタグ配列を結合し、PCRによる高感度検出を目指した。抗原抗体反応を行うプレートの形状の影響排除、反応プログラムの至適化、制限酵素EcoRIによるタグ配列の分離回収、プライマー濃度等組成の至適化を行った結果、10^<10>10^<12>VLPs/mLで濃度依存性が観察された(図7)。この範囲内でVLPsのimmuno-PCRによる定量が可能となり、ELISA法と同等の感度に達した。使用する抗体等の最適化を進めることで、さらに感度向上が期待された。昨年度までに、遺伝子組換え技術によりノロウイルスVIP(ノロウイルスの外套タンパク粒子)を発現させ、その形状,サイズ,比重などが野生ノロウイルスと同様であることを確認した後、凝集ー沈澱ー砂ろ過でのノロウイルスの処理性をベンチスケールの室内実験により世界で初めて評価することに成功した。しかしながら、これまで用いてきたVLPの定量法(市販のキットを用いたELISA法)では感度不足であるため、室内実験設備に添加するVLP濃度が、実処理施設に流入すると予想される濃度より遙かに大きい値での実験しか行うことができなかった。本年度は、検出系のELISA法の代替となるimmuno-PCR検出系を構築した。外套タンパク粒子は内部にRNAやDNAを持たないため、検出用の抗体にタグ配列を結合し、PCRによる高感度検出を目指した。抗原抗体反応を行うプレートの形状の影響排除、反応プログラムの至適化、制限酵素EcoRIによるタグ配列の分離回収、プライマー濃度等組成の至適化を行った結果、10^5VLP/mL程度まで定量が可能となった。これにより、これまで用いてきたELISA法の1,00010,000倍の高感度でノロウイルスVLPを定量することができるようになった。この手法を用いて、MF膜,UF膜,凝集ーMF膜処理でのノロウイルスの除去性を調べたところ、以下の知見を得た。(1)分画分子量1kDaのUF膜を使うと、ノロウイルスを4log除去できた。 | KAKENHI-PROJECT-21686049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21686049 |
VLPを用いたノロウイルスの浄水処理性評価 | (1)孔径0.1umのMF膜ではノロウイルスは除去できなかったが、PACIを用いた前凝集処理を行うことにより、分画分子量1kDaのUF膜と同等の除去率が得られた。(3)大腸菌ファージQβもMS2も、MF膜,UF膜,凝集ーMF膜処理でのノロウイルスの代替指標として用いることはできないと判断された。 | KAKENHI-PROJECT-21686049 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21686049 |
難治性卵巣がんに対する新規がん胎児性抗原を標的とした免疫療法の開発 | 難治性卵巣がんの免疫療法として「卵巣明細胞腺がんに対するHLA-A24および-A2結合性Glypican-3(GPC3)由来ペプチドワクチン療法の臨床第II相試験」をスタートさせており、症例登録が徐々に進んでいる。Ex vivo IFNγELISPOTアッセイを用いた免疫学的モニタリングにてワクチン投与前に比べ、ワクチン投与後でGPC3特異的CTLが末梢血中に増加していることおよび安全性が確認できつつある。また、進行症例1例においてPRの結果を得ており今後さらに症例の集積を行う。難治性卵巣がんの免疫療法として「卵巣明細胞腺がんに対するHLA-A24および-A2結合性Glypican-3(GPC3)由来ペプチドワクチン療法の臨床第II相試験」をスタートさせており、症例登録が徐々に進んでいる。Ex vivo IFNγELISPOTアッセイを用いた免疫学的モニタリングにてワクチン投与前に比べ、ワクチン投与後でGPC3特異的CTLが末梢血中に増加していることおよび安全性が確認できつつある。また、進行症例1例においてPRの結果を得ており今後さらに症例の集積を行う。卵巣がん患者の死亡数は年々増加しており、上皮性卵巣癌の中で明細胞腺癌は抗がん剤抵抗性であることから、進行、再発癌の予後が極めて不良であり、新規治療法が期待されている。我々は卵巣明細胞腺癌患者60例における免疫染色の結果、患者の約50%に新規がん胎児抗原であるGlypican-3(GPC3)が発現していることを確認した。また、1期症例に限定するとGPC3の発現は予後不良因子になることを見出した。また、癌組織のRT-PCRによる解析では約60%の患者においてGPC3mRNAの発現が確認された。さらに、卵巣明細胞患者の血清のELISA染色において、約40%の患者血清中においてsoluble GPC3の発現が確認された。また、悪性卵巣胚細胞腫瘍の1つである卵黄嚢腫瘍の免疫染色において100%の症例においてGPC3の発現が認められた。以上の結果からGPC3は癌免疫療法の腫瘍抗原となり得る可能性が示唆された。また、我々は卵巣がん細胞株におけるGPC3の発現の検討を行い、卵巣明細胞腺癌細胞株においてGPC3の強発現を確認した。その他、卵黄嚢腫瘍細胞株でも発現を認めた。特にKOC7C細胞ではGPC3が強発現していた。我々は、日本人の多くが所有するHLA-24とHLA-2に結合親和性の高いGPC3エピトープペプチドを作製した。また、卵巣明細胞腺癌患者から文書による同意を得て、末梢血単核球(PBMC)を採取し、ペプチド特異的CTLの誘導をELISPOTアッセイ、Tetramerアッセイにて検討し、ペプチド特異的CTLのクローン化に成功した。今後、このクローンを用いてGPC3発現細胞株(KOC7C)およびshRNA導入によるGPC3発現抑制細胞株における細胞障害性についての検討を予定している。卵巣明細胞腺がんにおけるGlypican-3 (GPC3)ペプチドワクチン療法の基礎的検討を行うことを目的として本年度の研究を行った。HLA-A2拘束性GPC3ペプチド特異的CTLクローンを用いて卵巣明細胞腺がん細胞株に対するIFN-γELlSPOT assayおよび細胞傷害性試験を行った。その結果、IFN-γELISPOT assay及び細胞傷害性試験により、GPC3ペプチド特異性が認められ、明細胞腺がん細胞株KOC-7cを傷害した。GPC3-shRNA導入によりKOC-7cのGPC3発現量を低下させることでこのCTLの反応は抑制された。様々ながん種を対象とした検討では、CTLクローンの免疫応答はGPC3の発現量に左右される結果であった。subtoxicな抗がん剤用量であっても、前治療を併用することでCTLによる細胞傷害効果の上乗せが認められた。GPC3発現量とGPC3ペプチド特異的CTLクローンの免疫応答について相関関係が認められたことから、臨床試験に用いているHLA-A2のGPC3ペプチドについては、HLA-A2陽性のGPC3陽性がん細胞から内因性に提示される本ペプチド量は、GPC3自体の発現量を調べることで推測されうると考えられた。subtoxicな抗がん剤用量での前治療とGPC3特異的CTLの併用によって細胞傷害性に上乗せ効果が得られたが、卵巣明細胞腺がんのGPC3ペプチドワクチン臨床試験では抗がん剤併用群も設定しており、その作用機序を含めた追加解析を計画している。本年度は臨床試験を中心に研究を行った。ペプチドワクチンを投与された卵巣明細胞腺がん患者におけるEx vivo IFNγELISPOTアッセイを用いた免疫学的モニタリングにて17症例中16症例(寛解群11例、化学療法併用群1例:および進行群4例)においてワクチン投与前に比べ、ワクチン投与後でGPC3特異的CTLが末梢血中に増加していることが確認できた。TC(パクリタキセル+カルボプラチン)療法と併用された1例のみではあるが、免疫抑制作用のある化学療法併用群においてもGPC3特異的CTLが誘導された結果が確認できた。現在までの登録症例は20例とまだ少数例ではあるが、注射部局所の発赤や硬結は全例にみられたものの、投与中止基準に相当するGrade4のような重篤な非血液有害事象の発生は1例もみられなかった。 | KAKENHI-PROJECT-21592127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592127 |
難治性卵巣がんに対する新規がん胎児性抗原を標的とした免疫療法の開発 | 現時点で、寛解群(ワクチン投与計10回のプロトコール終了7例およびワクチン投与中6例)の平均観察期間は7.6か月とまだ短いものの、全例において再発は認められていない。進行群5例中1例で、治療開始3か月時点でPRの臨床効果(肝転移、傍大動脈および右外腸骨リンパ節転移の縮小あり、新規病変なし)を認めた。また、この症例を含み進行群5例中3例で、ワクチン投与前に比べ腫瘍マーカーの低下がみられた。HLA-A2402陽性であった進行群患者2名のワクチン投与後PBMCからのGPC3ペプチド特異的CTL誘導ではそれぞれの患者のPBMCから12個および10個のクローンが樹立された。樹立された22個のCTLクローンは、すべてDextramerを用いたFACS再解析で、ほぼ100%GPC3デキストラマー陽性のGPC3ペプチド特異的CD8陽性キラーT細胞であり、GPC3ペプチドをパルスした標的細胞(T2細胞)に対してIFNγELISPOTアッセイにおいても明らかなGPC3ペプチド特異性が認められた。 | KAKENHI-PROJECT-21592127 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21592127 |
明末北曲雑劇における本文批判とその刊行に関する考察 | 従来、明代に編纂された『元曲選』より成立の早い戯曲テクストについて、その本文は大同小異であり、いずれも宮廷本が起源とされてきた。だが、南京の書肆継志斎が刊行した「揚州夢」を調査した結果、これに近いテクストが民間に伝わり、継志斎本収載の「揚州夢」がこの民間に伝わるテクストに拠っていることが判明した(福永2018)。この議論は、「価値のあるものは民間にある」という思想が士大夫層に浸透していることを「揚州夢」の本文批判をとおして明らかにしたものであるが、本研究はそれをさらに発展させることを目的とする。従来、明代に編纂された『元曲選』より成立の早い戯曲テクストについて、その本文は大同小異であり、いずれも宮廷本が起源とされてきた。だが、南京の書肆継志斎が刊行した「揚州夢」を調査した結果、これに近いテクストが民間に伝わり、継志斎本収載の「揚州夢」がこの民間に伝わるテクストに拠っていることが判明した(福永2018)。この議論は、「価値のあるものは民間にある」という思想が士大夫層に浸透していることを「揚州夢」の本文批判をとおして明らかにしたものであるが、本研究はそれをさらに発展させることを目的とする。 | KAKENHI-PROJECT-19K13092 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K13092 |
血小板活性化因子(PAF)の新しい酵素的微量定量法とその応用 | 血小板活性化因子(PAF)は, 1-アルキルー2-アセチルーsn-グリセロー3-ホスホコリンの構造を持つリン脂質メディエーターであり,微量で様々な生理活性を示す.生体内での血圧の恒常性やアナフィラキシー,炎症反応等でPAFが作用している可能性が示唆されているが,簡便で再現性のある微量定量法がないため,未だ生体内反応における真の重要性は明らかにされていないのが現状であった.従来PAFの定量はおもに生物学的方法は試料の血小板活性化能を測定するもので,検出限界(10^<-13>モル)は低いが,活性化させずに血小板を調製することが難しく,再現性に問題がある.一方質量分析法は検出限界(2×10^<-11>モル)が高く,質量分析計が必要である.我々はコリンアセチルトランスフェラーゼ活性の測定法をコリンの微量定量に応用し,簡便で再現性よく10^<-11>モルのPAFを定量できる測定系を構築した.すなわち試料中の脂質からHPLCでPAF画分を分離後,ホスホリパーゼD処理で得たコリンを[^3H]-アセチルCoA存在下コリンアセチルトランスフェラーゼで[^3H]-アセチルコリンとし,抽出後放射活性を測定する.様々な条件検討を行った結果,ホスホリパーゼDはストレプトマイセスクロモホスカス由来の部分精製酵素,コリンアセチルトランスフェラーゼはヒト胎盤より部分精製酵素を用いることで感度を向上させた.反応液量を15μlとし,ホスホリパーゼD, [^3H]-アセチルCoA,コリンアセチルトランスフェラーゼを同時に加え6時間で定量できるようにした.アセチルコリンの抽出に用いる溶媒混合比を変えて感度を向上させた.この新しい酵素的定量法を応用し,マクロファージ様細胞株J774.1をA23187刺激した際にPAFの産生及び放出が起こることを示した.またカゼイン投与で誘導したラット腹腔侵出液中に多量のPAFを検出した.血小板活性化因子(PAF)は, 1-アルキルー2-アセチルーsn-グリセロー3-ホスホコリンの構造を持つリン脂質メディエーターであり,微量で様々な生理活性を示す.生体内での血圧の恒常性やアナフィラキシー,炎症反応等でPAFが作用している可能性が示唆されているが,簡便で再現性のある微量定量法がないため,未だ生体内反応における真の重要性は明らかにされていないのが現状であった.従来PAFの定量はおもに生物学的方法は試料の血小板活性化能を測定するもので,検出限界(10^<-13>モル)は低いが,活性化させずに血小板を調製することが難しく,再現性に問題がある.一方質量分析法は検出限界(2×10^<-11>モル)が高く,質量分析計が必要である.我々はコリンアセチルトランスフェラーゼ活性の測定法をコリンの微量定量に応用し,簡便で再現性よく10^<-11>モルのPAFを定量できる測定系を構築した.すなわち試料中の脂質からHPLCでPAF画分を分離後,ホスホリパーゼD処理で得たコリンを[^3H]-アセチルCoA存在下コリンアセチルトランスフェラーゼで[^3H]-アセチルコリンとし,抽出後放射活性を測定する.様々な条件検討を行った結果,ホスホリパーゼDはストレプトマイセスクロモホスカス由来の部分精製酵素,コリンアセチルトランスフェラーゼはヒト胎盤より部分精製酵素を用いることで感度を向上させた.反応液量を15μlとし,ホスホリパーゼD, [^3H]-アセチルCoA,コリンアセチルトランスフェラーゼを同時に加え6時間で定量できるようにした.アセチルコリンの抽出に用いる溶媒混合比を変えて感度を向上させた.この新しい酵素的定量法を応用し,マクロファージ様細胞株J774.1をA23187刺激した際にPAFの産生及び放出が起こることを示した.またカゼイン投与で誘導したラット腹腔侵出液中に多量のPAFを検出した.血小板活性化因子(PAF)は微量で強い生理作用を発現し、血小板活性化だけでなく血圧降下,血管透過性上昇など広範な生理作用を持つため、炎症やショック時におけるケミカルメディエーターとして注目されている。PAFの生体内動態を知り、役割を明らかにするためには、正確にPAFの量を定量する必要がある。しかしPAFの定量法としては従来、血小板活性化を指標とした生物学的方法と、質量分析を用いた方法しか報告されておらず、前者は定量性および再現性に欠け、後者は感度が劣り操作が煩雑である欠点を持っていた。そこで本研究では、PAFがコリン残基含有リン脂質であることに注目し、酵素反応を組みあわせた新しいPAFの酵素的微量定量法を考察した。すなわち、まず試料中からHPLCで精製したPAF画分をホスホリパーゼD処理することにより定量的にコリンを得た。次に生成したコリンにコリンアセチルトランスフェラーゼと放射標識アセチルコリンを作用させ生じる放射標識アセチルコリンを有機溶媒に抽出し定量した。酵素源はいろいろ検討の結果、ホスホリパーゼDとしてはストレプトマイセスクロモホスカス由来の部分精製品を、コリンアセチルトランスフェラーゼとしてはヒト胎盤からやはり部分精製したものを用いることにした。また、種々の条件を検討したところ、pmolオーダーのPAFを測定することが可能となった。最近PAFを静脈投与することによりラットに実験的胃潰瘍を惹起できることが報告された。 | KAKENHI-PROJECT-61571046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61571046 |
血小板活性化因子(PAF)の新しい酵素的微量定量法とその応用 | そこで、本定量法を用いてラット胃粘膜中のPAF画分の定量を行うことにした。現在までのところ未処理ラットの胃粘膜中には比較的多量のlyso PAFを含んでいることが明らかとなった。ストレス付加により生じるストレス潰瘍について検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-61571046 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61571046 |
量子ビーム架橋技術を用いたコラーゲンゲルにおけるヒト歯髄幹細胞の幹細胞特性の解明 | 本研究で使用する、電子線やγ線、イオンビームなどの量子ビームを応用した架橋技術によるコラーゲンゲルは、コラーゲンの硬さ(強度)を2次元あるいは3次元的に制御したハイドロゲル化により、歯髄幹細胞の機能性足場となる。本技術は、薬剤を用いず生体適合性を保った状態でコラーゲンをハイドロゲル化することにより、その硬さを神経や血管組織、硬組織に適合した強度にコントロールすることを可能とする。本研究を基盤とし、歯髄幹細胞を用いた量子ビーム架橋コラーゲンハイドロゲル材料の先端バイオデバイス応用による高度な物性制御技術を駆使して、新規再生治療法に向けた研究開発を進める。本研究で使用する、電子線やγ線、イオンビームなどの量子ビームを応用した架橋技術によるコラーゲンゲルは、コラーゲンの硬さ(強度)を2次元あるいは3次元的に制御したハイドロゲル化により、歯髄幹細胞の機能性足場となる。本技術は、薬剤を用いず生体適合性を保った状態でコラーゲンをハイドロゲル化することにより、その硬さを神経や血管組織、硬組織に適合した強度にコントロールすることを可能とする。本研究を基盤とし、歯髄幹細胞を用いた量子ビーム架橋コラーゲンハイドロゲル材料の先端バイオデバイス応用による高度な物性制御技術を駆使して、新規再生治療法に向けた研究開発を進める。 | KAKENHI-PROJECT-19K10191 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K10191 |
麻痺性貝毒原因藻シストのミトコンドリア遺伝子の動態解明による発芽予測法の開発 | 本年度の計画は以下の通りである。1.昨年度までの研究で本有毒渦鞭毛藻のミトコンドリア遺伝子には明確な翻訳開始コドンや終結コドンが見つからないことを報告したが、実際にはどのコドンが開始および終結に関わっているのかを精査し、明確な開始・終結コドンがない状態が機能的なのかそれとも偽遺伝子なのかを判定する。2.さらにはA.catenella培養細胞を用いて作成したシストからの効果的なRNA抽出法を確立し、発見したエネルギー生産における鍵遺伝子をRT Real-Time PCRにより定量的に検出する手法を開発する。3.生存しているシスト数と鍵遺伝子の発現量の相関関係および発芽ポテンシャルと鍵遺伝子の発現量の相関関係を調べることで、生存シストや高い発芽ポテンシャルを有するシストの定量法を開発する。結果の概要1.本研究員は、ミトコンドリアタンパク質(COB)に特異的な抗体を作成した。本抗体を用いてアフィニティーカラムを作成し、A.catenella培養栄養細胞からの粗抽出液からCOBを精製することを試みたが精製に至らなかった。2.および3.一部のシストから抽出したRNAからはcox1 mRNAおよびcob mRNA逆転写PCRによって増幅が見られず、以下2つの原因が考えられた。A.今回用いたRNA抽出法が効果的なものと効果的でないものが存在する。B.シストがcobおよびcox1遺伝子をmRNAレベルで発現させ始めるのに、シスト間でタイムラグがある。今後、RNA抽出法の再検討と詳細な発現解析が望まれる。上述した原因のため、RT Real-Time PCRは行えなかった。渦鞭毛藻のミトコンドリアゲノム中のタンパク質コード遺伝子について3種類(サイトクロムオキシダーゼサブュニット1および3:COX1およびCOX3、サイトクロムb : COB)、構造RNA遺伝子(大サブュニットrRNA)について1種類を発見した。特にミトコンドリア大サブュニットrRNA遺伝子は通常ひとつのRNA鎖として発現・機能するが、渦鞭毛藻Alexandrium属のそれは100bpほどに細かく断片化されてゲノム中に存在し、それぞれの断片が別個に発現したのち、機能するということを報告した。また、Alexandrium属COB遺伝子上流には種内で高度に保存された領域があり、その種特異性を示し、1細胞PCRに応用した。このようなミトコンドリア遺伝子の発見とその発現解析は最終的な研究目標である「Alexandrium属シストの発芽予測法の開発」におおいに役立つ画期的な発見である。大分県高田湾に発生したAlexandrium属細胞を32株単離し、すべてのパターンについて掛け合わせ実験を行い、シスト形成率を比較した。しかし、今回単離したシストからは有効な組み合わせは得られず、現在本研究室と瀬戸内海区水産研究所有毒プランクトン研究室で所有している組み合わせが最も効果的にシストを形成することがわかった。平成19年度以降の実験には、本組み合わせをもちいてシストを作成し、休眠時と発芽時のミトコンドリア遺伝子発現解析を行う。「研究目的」海洋性微細藻は海洋生態系の根幹を支える重要な一次生産者である一方で、その一部は、養殖漁業や食品衛生に甚大な問題を引き起こす有害種または有害赤潮形成種である。特に麻痺性貝毒の原因藻であるAlexandrium tamarenseおよびA.catenellaは、世界中にその分布域を拡大しており、シストは上記のAlexandrium両種のブルームにおける「発生源」とも言うべき重要な存在であるにもかかわらず、その生死判別および発芽ポテンシャル評価、シスト発芽後の交配群形成に関する知見は全く得られていない。そこで「シストの生死判別法」、および「シストの発芽ポテンシャル評価法」の手法を開発する。「研究目標およびその成果」[研究目標1]シスト発芽に関連すると思われる遺伝子の探索をおこなう。[研究成果1]渦鞭毛藻はタンパク質合成にEFLという遺伝子を用いることが知られている。本研究員は有毒種A.tamarenseのEFL遺伝子を同定した。さらに渦鞭毛藻以外の藻類でEFLを探索することは標的種の特異的検出に重要であるため、他の赤潮藻である珪藻に関して同遺伝子の探索を行った。その結果、珪藻の大部分が本遺伝子を有していることがわかり、これは有孔虫から遺伝子水平伝播によって獲得されたものであることが判明した[研究目標2]A.tamarenseおよびA.catenella培養細胞を用いてシストを作成する。作成したシストからの効果的なRNA抽出法を確立し、発見したエネルギー生産における鍵遺伝子をRT Real-Time PCRにより定量的に検出する手法を開発する。[研究成果2]cox1に関しては栄養細胞およびシストから抽出したRNAのいずれからも増幅された。その一方、cobに関しては、栄養細胞から抽出したRNAからは増幅されるもののシストから抽出したRNAからは増幅が起こらなかった。これらの結果は、今後cobの発現状況をモニタリングすることで、「シストが発芽し、栄養細胞として赤潮を形成する現象を予測する」ことが可能であることが示唆された。本年度の計画は以下の通りである。1.昨年度までの研究で本有毒渦鞭毛藻のミトコンドリア遺伝子には明確な翻訳開始コドンや終結コドンが見つからないことを報告したが、実際にはどのコドンが開始および終結に関わっているのかを精査し、明確な開始・終結コドンがない状態が機能的なのかそれとも偽遺伝子なのかを判定する。 | KAKENHI-PROJECT-06J03336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J03336 |
麻痺性貝毒原因藻シストのミトコンドリア遺伝子の動態解明による発芽予測法の開発 | 2.さらにはA.catenella培養細胞を用いて作成したシストからの効果的なRNA抽出法を確立し、発見したエネルギー生産における鍵遺伝子をRT Real-Time PCRにより定量的に検出する手法を開発する。3.生存しているシスト数と鍵遺伝子の発現量の相関関係および発芽ポテンシャルと鍵遺伝子の発現量の相関関係を調べることで、生存シストや高い発芽ポテンシャルを有するシストの定量法を開発する。結果の概要1.本研究員は、ミトコンドリアタンパク質(COB)に特異的な抗体を作成した。本抗体を用いてアフィニティーカラムを作成し、A.catenella培養栄養細胞からの粗抽出液からCOBを精製することを試みたが精製に至らなかった。2.および3.一部のシストから抽出したRNAからはcox1 mRNAおよびcob mRNA逆転写PCRによって増幅が見られず、以下2つの原因が考えられた。A.今回用いたRNA抽出法が効果的なものと効果的でないものが存在する。B.シストがcobおよびcox1遺伝子をmRNAレベルで発現させ始めるのに、シスト間でタイムラグがある。今後、RNA抽出法の再検討と詳細な発現解析が望まれる。上述した原因のため、RT Real-Time PCRは行えなかった。 | KAKENHI-PROJECT-06J03336 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06J03336 |
乳がん患者のワーク・トリートメントバランスを支える患者支援プログラムの開発 | 【目的】化学療法を継続しながら就労を継続する乳がん患者の「思い」を可視化し支援プログラムを開発する。【方法】研究Aでは、インタビューを行い、テキストマイニングソフトを用いて、目的に合致する<困っている>コードを抽出した。研究Bでは研究Aの結果から、患者を支援する機関の関係者を集め、支援について検討を行った。【結論】研究Aでは【治療方針を自己決定しなければならない精神的重圧】【病気の予後不安】【治療計画の不透明さ】他12カテゴリが得られ、関連図を作成した結果、上位に「治療計画の不透明さ」があった。研究Bでは【医療者と企業の連携】【相談】【制度】他12カテゴリが得られた。外来で化学療法を受けている乳がん患者のインタビュー調査を継続して行っている。施設の協力のもと、今年度までに21例のインタビュー調査が終了している。現在は目標の30例を目指して調査をおこなう傍ら、すでに収集できている21例の分析を、データマイニングにより行っている。また同時に、質問紙による調査も実施していることから、量的データの因子分析、重回帰分析等にも着手している。今年度は以下の国際学会に成果を発表した。また今年度は以下の学術誌に投稿し掲載が決定している。日本医療福祉情報行動科学会学術誌Vol.2来年度は最終年ということもあり、外来で化学療法を受けている乳がん患者の治療と仕事の両立を継続するための困難を明らかにし、それを支援するためのプログラムを作成していく計画である。そのために、予定している対象者数に対するインタビュー調査を完了し、分析結果をまとめたうえで、がん看護学会への発表と、論文投稿を進めていくつもりである。33名の患者に対してインタビュー調査を行い、そのなかから仕事を持たない患者等を除く17名の患者を対象として、治療と就労を両立していく上での苦悩と課題についてテキストマイニングを用い分析を行った(研究A)。その結果、【治療方針を自己決定しなければならない精神的重圧】【家族との信頼関係の希薄さ】【病気と治療への理解不足による思いやりの欠如】【病気の予後不安】【経済的負担の大きさ】【病気が原因で仕事を失うことへの不安】【ボディイメージの変容】【副作用の辛さ】【治療計画の不透明さ】【医療者との信頼関係の希薄さ】【信頼できる友人がいない】【医療機関までの距離と時間の融通】の12カテゴリが得られた。またこの課題を克服していくためには、外来でかかわる医師と看護師の支援だけでは不十分であることもわかった。そこで、医療者・雇用者・その他の社会資源調整者といったさまざまな「患者を支援する関係者」を集め、治療と就労を両立させるための具体的な支援方略の検討を行った(研究B)。その結果、【不安】【知識】【医療者と企業の連携】【副作用】【偏見】【相談】【経済的負担】【経済的サポート】【制度】【仕事への影響】【通院阻害要因】【セクシャリティへの思い】の12カテゴリが得られた。このことから、病院と会社、そして地域で活動する多岐にわたる関係機関が、強い連携を実現することの大切さが明らかになった。また本研究の成果から、「治療計画の不透明さ」という新たな課題を得ることができ、今後の研究につなげていきたいと考えている。【目的】化学療法を継続しながら就労を継続する乳がん患者の「思い」を可視化し支援プログラムを開発する。【方法】研究Aでは、インタビューを行い、テキストマイニングソフトを用いて、目的に合致する<困っている>コードを抽出した。研究Bでは研究Aの結果から、患者を支援する機関の関係者を集め、支援について検討を行った。【結論】研究Aでは【治療方針を自己決定しなければならない精神的重圧】【病気の予後不安】【治療計画の不透明さ】他12カテゴリが得られ、関連図を作成した結果、上位に「治療計画の不透明さ」があった。研究Bでは【医療者と企業の連携】【相談】【制度】他12カテゴリが得られた。まず対象者を確保するため、がん拠点病院に対し、研究目的、研究方法、研究機関等について説明をし理解を得た。その後、院内の倫理委員会に対し書類を作成し、倫理委員会に参加した。その結果倫理委員会を通過し、対象者の選定作業に入った。選定においては共同研究者とともに検討を重ねた。また対象者は化学療法中の乳がん患者であるため、体調不良時に備えた医師と診察室の確保が必要と考え、病院側にそれを依頼し使用許可を得ることができた。対象者の多くは化学療法を受けに来ている乳がん患者であるため、調査項目・インタビュー内容については共同研究者と充分検討を行った。調査項目数が負担にならないよう倫理的な配慮をおこない、調査項目と内容の選定には時間を要した。またインタビュー調査で尋ねる項目においても、がんの告知を受けた後に、さまざまな苦痛な治療を受けている患者の精神的な負担にならないような内容にするため吟味した。その後、調査用紙、インタビュー内容を完成させ実際の調査に入った。対象者は化学療法中の乳がん患者であるため、季節の変わり目や気温の変化の激しい時期には対象を崩されることが多く、調査は想定していた通り、順調には進まない。しかし何度も足を運ぶことにより、調査の機会を多く作り、地道に調査を実施している。 | KAKENHI-PROJECT-23510355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23510355 |
乳がん患者のワーク・トリートメントバランスを支える患者支援プログラムの開発 | 対象とする人数は30名であるが、現在20名ほどの調査が終了している。残り10名の調査は8月末までに終了の見込みである。インタビュー終了時に、随時逐語録を起こしており、その内容の分析手法について再検討を行っていく計画である。9月頃より分析に入り今年度内には2回目の学会発表を検討している。外来で化学療法を受けている乳がん患者のインタビューを進めているが、乳腺外科専門医と認定看護師のフォローを受け慎重に調査を行っていても、化学療法による予期せぬ副作用の重症化や季節の変わり目による体調不良により、調査が中止になることがある。予定通りに調査が進まないことで研究はやや遅れているが、対象者への倫理的配慮を重視するとやむをえないことと判断している。看護大学において実質的に領域のリーダとなったため、5名の部下を抱え、予想以上に業務が多忙であった。今後は対象者数を目標値にすることを目指してインタビュー調査を継続し、同時にテキストマイニングによる分析を行う。分析から支援プログラムを作成し結果をまとめる。結果は日本がん看護学会への発表、国際学会への発表、論文投稿を行う。看護大学の常勤教員から非常勤の教員になり、研究の時間が取れるようにすることで、これまでの遅れをキャッチアップする。研究の遅れを取り戻すため、インタビュー調査終了後にはすみやかに逐語録に起こすことを目的としてパソコンを購入し、専従で逐語録を起こしている研究補助者にパソコンを貸出し逐語録完成の速度をあげる。そのためパソコンを1台購入する。英語論文での論文投稿を考えていることから、英文のネイティブチェックを受けるための確認費用を予定している。インタビュー調査のため、医療機関までの交通費、滞在費、調査対象者への謝礼、研究協力者への謝礼、研究代表者、研究協力者の国内学会、国際学会への参加のための交通費、滞在費を予定している。次年度は約1,500,000円の直接経費を受ける予定である。その用途は、主に以下のとおりである。・現在在住している広島県から、本研究に理解を示し最大限の協力をしてくれる岐阜県の病院へ調査に行くための出張旅費、謝金。・分析手法を学ぶための勉強会や学会に出席する出張旅費、参加費。・分析の経過を発表するための学会参加費。 | KAKENHI-PROJECT-23510355 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23510355 |
探査機開発の基盤となる月火星環境における「地盤-機械相互作用モデル」の構築 | 将来の月惑星探査に向けて、月や火星特有の環境における地盤と機械の相互作用の解明が急務の課題である。本研究では、月や火星の地表面で探査機(着陸機や探査車)に生じる力や沈下の関係を解析し、その関係を表す数理モデルを構築する。そのために、月や火星の特有環境を模擬する実験装置を開発し、この装置を用いた実験から着陸機の脚、および探査車の車輪と地盤の間で働く力や沈下の様子を詳細に解析する。本研究の完成は、探査機の設計や制御の基盤を与え、月惑星探査プロジェクトの推進に貢献する。将来の月惑星探査に向けて、月や火星特有の環境における地盤と機械の相互作用の解明が急務の課題である。本研究では、月や火星の地表面で探査機(着陸機や探査車)に生じる力や沈下の関係を解析し、その関係を表す数理モデルを構築する。そのために、月や火星の特有環境を模擬する実験装置を開発し、この装置を用いた実験から着陸機の脚、および探査車の車輪と地盤の間で働く力や沈下の様子を詳細に解析する。本研究の完成は、探査機の設計や制御の基盤を与え、月惑星探査プロジェクトの推進に貢献する。 | KAKENHI-PROJECT-19K15207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K15207 |
3価コバルト酸化物における特異なスピン状態の電子構造的起源の探求 | 本年度は、RCoO3(R=希土類)の電子構造を中心に研究展開をし、以下のような研究実績を得た。(1)硬X線光電子分光(HAXPES)測定による電子構造研究:昨年度は最低温度(10 K)までの温度変化測定に成功したので、今年度はさらに情報量を増やすために、Co 2p内殻の詳細な温度変化測定、および硬X線領域で顕著になる、価電子帯の入射光偏光ー光電子放出角依存性実験(通称偏光依存実験)を行った。この測定は研究計画通りであり、測定の結果、どちらのスペクトルも低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことを見出した。(2)コンプトン散乱を用いた電子運動量密度測定の論文執筆:一昨年度測定に成功した、コンプトン散乱実験の結果を論文にまとめた。内容は以下の通り:(2a) LaCoO3の100 Kスピンクロスオーバーによるeg-t2g間電子移動が、500Kスピン転移においてさらに生じていること、Co(3d)軌道状態がO(2p)と混成した分子軌道の特徴を持つこと、を明らかにした。(2b) 100 K-スピン転移を生じず、500K転移までそのCo3+が低スピン状態を維持するとされているPrCoO3のコンプトンプロファイルの温度依存性を5-300 Kの範囲で測定し、温度上昇に伴うPr-4f電子状態変化を示唆する結果を得た。(3)スピン状態が類似している酸化物の電子構造:昨年度に引き続き、関連する「多量体を組んでスピンシングレット(=低スピン)となるV酸化物」についても、比較測定を実施し、論文執筆を行っている。昨年度、LaCoO3の100 Kのスピンクロスオーバーに伴う電子構造変化を測定するために試料準備を工夫し、室温10 KのHAXPES測定を世界に先駆けて成功した。今年度はこの変化をより詳細に理解するために、Co 2p内殻の詳細な温度変化測定、および硬X線領域で顕著になる、価電子帯の入射光偏光ー光電子放出角依存性実験(通称偏光依存実験)を行った。この測定は研究計画通りであり、測定の結果、どちらのスペクトルも低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことを見出した。また、一昨年度測定に成功した、コンプトン散乱による500 Kのスピンクロスオーバーについては、結果をまとめて論文にまとめた。以上の結果から、おおむね順調に進展していると言える。今後の光電子分光測定については、室温で低スピン状態にあるとされているR=Pr, Ndの室温以下の温度変化測定を実施し、これを確認する。またLaCoO3については、昨年度に低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことが示唆されたため、理論グループと協力してCo 2p内殻スペクトルのDMFTクラスターモデル計算のシミュレーションと比較し、中間スピンやそれ以外の状態の検討を行う。さらに第一原理バンド構造計算も実施し、この温度変化について包括的な理解を目指す。本年度は、RCoO3(R=希土類)の電子構造を中心に研究展開をし、以下のような研究実績を得た。(1)硬X線光電子分光(HAXPES)測定による電子構造研究:ペロブスカイト型Co酸化物LaCoO3で見られる100 K及び500 K付近のスピンクロスオーバーのうち、100 Kのものに伴う電子構造の温度変化を、低温でのチャージングを防ぐ試料準備を行い、室温300 Kから十分基底状態に近い10 KまでHAXPES測定することに成功した。その結果、価電子帯、Co 2p内殻スペクトルはともに大きな温度変化を示し、その変化は定性的には低温低スピンから高温高スピン的な変化であると解釈した。(2)コンプトン散乱を用いた電子運動量密度測定:(2a)LaCoO3の500 Kでの絶縁体-金属転移をともなうスピンクロスオーバー現象における電子軌道状態の対称性変化を明らかにするため、LaCoO3単結晶において、コンプトンプロファイルの結晶方位依存性を測定し、100 Kスピンクロスオーバーによるeg-t2g間電子移動が500Kスピン転移においてさらに生じていること、Co(3d)軌道状態がO(2p)と混成した分子軌道の特徴を持つこと、を明らかにした。(2b) 100 K-スピン転移を生じず、500K転移までそのCo3+が低スピン状態を維持するとされているPrCoO3の[100]方向のコンプトンプロファイルの温度依存性を5-300 Kの範囲で測定し、温度上昇に伴うPr-4f電子状態変化を示唆する結果を得た。(3)上記以外の関連するペロブスカイト型酸化物、特に多量体を組んでスピンシングレットとなるようなV酸化物についても比較測定を実施した。LaCoO3の100 Kのスピンクロスオーバーに伴う電子構造変化するためには、室温から10 K付近までの光電子分光測定が必要であるが、このような最低温までの温度変化測定は、これまでチャージングのために成功例が無かった。本研究はこれに挑戦するものであるが、今回試料準備を工夫し、HAXPESを用いて世界で初めて成功した。これは研究計画通りである。また、光電子分光が苦手な室温以上の500 Kのスピンクロスオーバーについては、コンプトン散乱測定が成功し、LaとPrの違いについて示唆が得られた。以上の結果から、おおむね順調に進展していると言える。本年度は、RCoO3(R=希土類)の電子構造を中心に研究展開をし、以下のような研究実績を得た。 | KAKENHI-PROJECT-17K05502 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05502 |
3価コバルト酸化物における特異なスピン状態の電子構造的起源の探求 | (1)硬X線光電子分光(HAXPES)測定による電子構造研究:昨年度は最低温度(10 K)までの温度変化測定に成功したので、今年度はさらに情報量を増やすために、Co 2p内殻の詳細な温度変化測定、および硬X線領域で顕著になる、価電子帯の入射光偏光ー光電子放出角依存性実験(通称偏光依存実験)を行った。この測定は研究計画通りであり、測定の結果、どちらのスペクトルも低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことを見出した。(2)コンプトン散乱を用いた電子運動量密度測定の論文執筆:一昨年度測定に成功した、コンプトン散乱実験の結果を論文にまとめた。内容は以下の通り:(2a) LaCoO3の100 Kスピンクロスオーバーによるeg-t2g間電子移動が、500Kスピン転移においてさらに生じていること、Co(3d)軌道状態がO(2p)と混成した分子軌道の特徴を持つこと、を明らかにした。(2b) 100 K-スピン転移を生じず、500K転移までそのCo3+が低スピン状態を維持するとされているPrCoO3のコンプトンプロファイルの温度依存性を5-300 Kの範囲で測定し、温度上昇に伴うPr-4f電子状態変化を示唆する結果を得た。(3)スピン状態が類似している酸化物の電子構造:昨年度に引き続き、関連する「多量体を組んでスピンシングレット(=低スピン)となるV酸化物」についても、比較測定を実施し、論文執筆を行っている。昨年度、LaCoO3の100 Kのスピンクロスオーバーに伴う電子構造変化を測定するために試料準備を工夫し、室温10 KのHAXPES測定を世界に先駆けて成功した。今年度はこの変化をより詳細に理解するために、Co 2p内殻の詳細な温度変化測定、および硬X線領域で顕著になる、価電子帯の入射光偏光ー光電子放出角依存性実験(通称偏光依存実験)を行った。この測定は研究計画通りであり、測定の結果、どちらのスペクトルも低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことを見出した。また、一昨年度測定に成功した、コンプトン散乱による500 Kのスピンクロスオーバーについては、結果をまとめて論文にまとめた。以上の結果から、おおむね順調に進展していると言える。今後、光電子分光測定については、室温では低スピンであるとされているR=Pr, Ndの室温以下の温度変化測定を実施する。またLaCoO3について、理論グループと協力してCo 2p内殻スペクトルのDMFTクラスターモデル計算のシミュレーションを実施し、中間スピンが必要であるのか否かの考察を実施する。今後の光電子分光測定については、室温で低スピン状態にあるとされているR=Pr, Ndの室温以下の温度変化測定を実施し、これを確認する。またLaCoO3については、昨年度に低スピンと高スピンの重ね合わせでは再現できないことが示唆されたため、理論グループと協力してCo 2p内殻スペクトルのDMFTクラスターモデル計算のシミュレーションと比較し、中間スピンやそれ以外の状態の検討を行う。さらに第一原理バンド構造計算も実施し、この温度変化について包括的な理解を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-17K05502 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K05502 |
新規自己組織由来オリゴデンドロサイト/シュワン前駆細胞による再生治療法の開発 | 嗅粘膜上皮に存在するHorizontal Basal cells(HBCs)は組織幹細胞であり、オルファクトリーニューロンの他、嗅粘膜を構成するボーマン嚢や支持細胞に分化する。申請者らはHBCがオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーを発現していることを見いだした。そして、嗅粘膜組織より無血清培地下で、遺伝子工学的・細胞工学的手法を用いずに、HBC由来のOPCマーカーを発現する細胞集塊の作成に成功した。嗅粘膜組織(OM)は終生神経再生が生じる興味深い組織である。嗅粘膜上皮に存在する水平基底細胞は多分化能を有する組織幹細胞である。われわれは水平基底細胞がオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーを発現していることを見いだした。そして嗅粘膜組織よりOPCマーカーを発現する細胞集塊(オルファクトリースフィア:OS)の作成に成功した。本研究では、安全で効果的な細胞移植治療の為に、中枢・末梢神経の病的環境モデルを作成し、OS細胞のそれぞれの環境における生着(生存)・分化(運命)を明らかにする。また臨床応用へ向けヒトOS細胞の樹立を目指す。最後にどのような外的シグナルが特定の分化を誘導するのか、その一端を明らかにする。本年度は、次の15の研究項目の実験を行った。1ラットOS細胞がin vitroとin vivoにおいて、オリゴデンドロサイトとシュワン細胞の両方へ分化することを報告した(Stem Cell Res. 2013 Ohnishi et al.)。2ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で、かつ抗てんかん薬であるバルプロ酸により、ラットOS細胞のニューロンへの分化誘導を促進することを、in vitroにて明らかにした。そして分化したニューロンのサブタイプの同定を行った。3ラットOS細胞の病態モデルラットへの移植実験をおこなった。4ヒト嗅粘膜組織よりヒトOS細胞の樹立方法を確立した。5ラットOS細胞のラット顔面神経切断モデルへの移植実験を行った。中枢神経の再生医療では失われたニューロンをどこから得るか、またいかにして分化させるかが大きな課題である。成体中枢神経系は再生能力に乏しいが、嗅粘膜は終生ニューロンの再生が繰り返されるユニークな組織である。嗅粘膜上皮に存在するHorizontal Basal cell(HBC)は組織幹細胞であり、オルファクトリーニューロンの他、嗅粘膜を構成するボーマン嚢や支持細胞に分化する。申請者らはHBCがオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーを発現していることを見いだした。そして嗅粘膜組織より無血清培地下で、遺伝子工学的・細胞工学的手法を用いずに、HBC由来のOPCマーカーを発現する細胞集塊(オルファクトリースフィア:OS)の作成に成功した。これまでに申請者らは、以下の点を明らかにしている。1)ラットOS細胞はオリゴデンドロサイトへ分化し、ラット損傷脊髄へ移植した際に下肢動機能の改善に働くことを明らかにした(Ohnishi et al. 2013)。2)ラットOS細胞をラット末梢神経切断モデルへ移植した際には、シュワン細胞へ分化し末梢神経軸索再生が改善することを明らかにした(Ohnishi et al. 2013)。3)ラットOS細胞はバルプロ酸によってGABAニューロンへ分化誘導された。ラットOS細胞をてんかんモデルラットの海馬へ移植しバルプロ酸を腹腔内投与した際には、OS細胞はGABAニューロンへ分化誘導されることを明らかにした(Ohnishi et al. 2015a)。4)ヒト嗅粘膜組織よりヒトOS細胞の樹立に成功した。ヒトOS細胞は自律的にニューロンへ分化することが明らかとなった(Ohnishi et al. 2015b)。嗅粘膜上皮に存在するHorizontal Basal cells(HBCs)は組織幹細胞であり、オルファクトリーニューロンの他、嗅粘膜を構成するボーマン嚢や支持細胞に分化する。申請者らはHBCがオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)マーカーを発現していることを見いだした。そして、嗅粘膜組織より無血清培地下で、遺伝子工学的・細胞工学的手法を用いずに、HBC由来のOPCマーカーを発現する細胞集塊の作成に成功した。脊椎脊髄当該年度では、中枢・末梢神経の病的環境モデルを作成し、OS細胞の移植実験を行っている。また臨床応用へ向けヒトOS細胞の樹立方法を確立した。次年度では中枢・末梢神経の病的環境モデルを作成し、ヒトとラットOS細胞の移植実験を行う。またヒトOS細胞のキャラクタライゼーションを進める。当該年度ではin vivo実験機器の購入が少なかったことが理由である。in vivoモデル動物の作成自体は順調にすすんでいるが、解析の為の機器が次年度にずれた為、次年度使用額が生じることとなった。 | KAKENHI-PROJECT-25462215 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462215 |
住宅におけるエネルギー消費構造の分析と新型熱源導入可能性の検討 | 応募時に提出した年次計画に基づき、以下の研究課題を遂行した。(1)実住戸における消費エネルギーの実測調査実住戸6世帯における消費エネルギーの計測関東の6住戸について、電気・ガス・灯油の消費状況を詳細に計測し、消費エネルギーの用途別内訳や住戸差・季節変動について、重要な知見を得ることができた。実住戸3世帯における給湯消費の計測関東の3住戸において給湯の消費状況を詳細に計測し、高齢世帯においては給湯消費が少なくなる傾向などが明らかになった。また、給湯消費については既往の実測データの再整理を行い、その平均や変動について重要なデータを得た。(2)多数の住戸を対象とするアンケートによるエネルギー消費に関する調査全国の4000住戸における消費エネルギーに関するアンケート調査全国の住戸において、消費エネルギーの検針値や生活行動についてアンケートを通して調査を行った。検針値からの消費用途の推定・分離、生活行動と消費エネルギーとの関係の分析を通し、有効な知見を収集することができた。(3)集合住宅における暖冷房要因に関する実験・実測実大の試験用集合住宅における熱移動に関する実験建築研究所に設置されている実大の試験用集合住宅において、上下左右の隣接住戸の空調条件が空調負荷に与える影響を、実験を通し把握した。その結果、隣接住戸の空調状況の変化による影響は大きく、住戸間の断熱は簡易であっても効果が大きいことが示された。上記の研究活動により、1年度の年次計画をほぼ達成することができたと考える。応募時に提出した年次計画に基づき、以下の研究課題を遂行した。(1)実住戸における消費エネルギーの実測調査実住戸6世帯における消費エネルギーの計測関東の6住戸について、電気・ガス・灯油の消費状況を詳細に計測し、消費エネルギーの用途別内訳や住戸差・季節変動について、重要な知見を得ることができた。実住戸3世帯における給湯消費の計測関東の3住戸において給湯の消費状況を詳細に計測し、高齢世帯においては給湯消費が少なくなる傾向などが明らかになった。また、給湯消費については既往の実測データの再整理を行い、その平均や変動について重要なデータを得た。(2)多数の住戸を対象とするアンケートによるエネルギー消費に関する調査全国の4000住戸における消費エネルギーに関するアンケート調査全国の住戸において、消費エネルギーの検針値や生活行動についてアンケートを通して調査を行った。検針値からの消費用途の推定・分離、生活行動と消費エネルギーとの関係の分析を通し、有効な知見を収集することができた。(3)集合住宅における暖冷房要因に関する実験・実測実大の試験用集合住宅における熱移動に関する実験建築研究所に設置されている実大の試験用集合住宅において、上下左右の隣接住戸の空調条件が空調負荷に与える影響を、実験を通し把握した。その結果、隣接住戸の空調状況の変化による影響は大きく、住戸間の断熱は簡易であっても効果が大きいことが示された。上記の研究活動により、1年度の年次計画をほぼ達成することができたと考える。 | KAKENHI-PROJECT-03J02848 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-03J02848 |
スラリ-特性制御により超微粉砕した窒化ケイ素の易焼結化と微構造の三次元解析 | <「三種類の窒化ケイ素および界面活性剤を用いたスラリ-制御超微粉砕実験」>___ー;直接窒化法およびアミド分解法など製法の異なる窒化珪素粉末をアルミナ,イットリア助剤添加条件下で均一混合および凝集構造の超微粉砕し、最適界面活性剤の選択および分子量,疎水基,親水基組成等を助剤添加混合時の泡末の発生を抑制しかつ粘度,ゼ-タ電位および沈降体積等を最適化するものを決定した。<「スプレ-ドライヤ-法による顆粒作製実験と顆粒体構造および性質の評価」>___ー;得られた低粘性スラリ-をスプレ-ドライヤ-法で顆粒化し、超微小圧縮試験機による最小1μmまでの顆粒体強度,変形特性の評価と水銀圧入法による微構造,細孔径分布の測定を行った。成形体の微構造を決定する顆粒体構造および流動性を最適化するスラリ-制御条件を検討した。<「原料粉体物性,顆粒体構造が成形性、焼結性に及ぼす影響」>___ー;以上の方法で得られた原料粒子物性や構造の異なる窒化珪素顆粒体を2種類の成形方法および圧力変えて成形し、1650から1850°Cの範囲で9.5気圧のガス圧焼結を行った。成形体構造を細孔径分布に着目して評価した結果、成形密度が低くても平均細孔径が小さい成形体を得られる原料粒子特性が低温でち密化することが確認された。<「超微粉砕機構」>___ー;遊星ミルおよび媒体撹拌ミルの2種類の超微粉砕機を用いた各種セラミックスの粉砕実験を行い、特にスラリ-制御を行わなくとも平均粒子径100nm,BET比表面積50m^2/g以上の微粉砕に成功している。すでにボ-ル径,材質,ボ-ルおよび粉砕試料の充填条件,スラリ-濃度やミルの回転条件などについて粉砕効率を最適化する条件を求めた。<「三種類の窒化ケイ素および界面活性剤を用いたスラリ-制御超微粉砕実験」>___ー;直接窒化法およびアミド分解法など製法の異なる窒化珪素粉末をアルミナ,イットリア助剤添加条件下で均一混合および凝集構造の超微粉砕し、最適界面活性剤の選択および分子量,疎水基,親水基組成等を助剤添加混合時の泡末の発生を抑制しかつ粘度,ゼ-タ電位および沈降体積等を最適化するものを決定した。<「スプレ-ドライヤ-法による顆粒作製実験と顆粒体構造および性質の評価」>___ー;得られた低粘性スラリ-をスプレ-ドライヤ-法で顆粒化し、超微小圧縮試験機による最小1μmまでの顆粒体強度,変形特性の評価と水銀圧入法による微構造,細孔径分布の測定を行った。成形体の微構造を決定する顆粒体構造および流動性を最適化するスラリ-制御条件を検討した。<「原料粉体物性,顆粒体構造が成形性、焼結性に及ぼす影響」>___ー;以上の方法で得られた原料粒子物性や構造の異なる窒化珪素顆粒体を2種類の成形方法および圧力変えて成形し、1650から1850°Cの範囲で9.5気圧のガス圧焼結を行った。成形体構造を細孔径分布に着目して評価した結果、成形密度が低くても平均細孔径が小さい成形体を得られる原料粒子特性が低温でち密化することが確認された。<「超微粉砕機構」>___ー;遊星ミルおよび媒体撹拌ミルの2種類の超微粉砕機を用いた各種セラミックスの粉砕実験を行い、特にスラリ-制御を行わなくとも平均粒子径100nm,BET比表面積50m^2/g以上の微粉砕に成功している。すでにボ-ル径,材質,ボ-ルおよび粉砕試料の充填条件,スラリ-濃度やミルの回転条件などについて粉砕効率を最適化する条件を求めた。 | KAKENHI-PROJECT-02229210 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02229210 |
妊娠女性に対する口腔ケア教育プログラム開発の試み | 母親の口腔内う蝕菌は、育児中に子どもに感染しやすいため、感染予防目的で妊娠中から女性の口腔内ケアに注意する必要がある。本研究の目的は、(1)妊娠中の女性の口腔内ケア教育の実態を明らかにすること、(2)妊婦の口腔内環境を検査・評価すること、である。その結果、分娩施設では口腔衛生指導が十分とはいえなかった。一方、妊婦の口腔内衛生状態は良好であった。しかし、21%の妊婦ではう蝕リスクの高い状態にあった。母親の口腔内う蝕菌は、育児中に子どもに感染しやすいため、感染予防目的で妊娠中から女性の口腔内ケアに注意する必要がある。本研究の目的は、(1)妊娠中の女性の口腔内ケア教育の実態を明らかにすること、(2)妊婦の口腔内環境を検査・評価すること、である。その結果、分娩施設では口腔衛生指導が十分とはいえなかった。一方、妊婦の口腔内衛生状態は良好であった。しかし、21%の妊婦ではう蝕リスクの高い状態にあった。本研究の目的は、「妊娠女性に対する口腔ケアは、次世代を担う子どもたちの、う蝕予防策を策定する上で、根源的に効果を発揮する方策である」という仮説のもとに、妊婦に対する口腔ケア教育のあり方を提言することにある。よって最終目標は、妊婦の口腔内環境改善に向けた教育プログラム開発をめざしている。H 25年度は、関東圏の市区町村および分娩取り扱い施設の出産準備教育担当者に対し、無記名郵送法による質問紙調査を行った。調査内容は、1出産準備教育での歯科保健指導の取り組み状況、2歯科保健指導者の職種、3歯科保健指導内容および時間等である。その結果、市区町村では349施設のうち227施設から回答があり(回答率:65%)、病院300施設と診療所432施設の計732施設では、227施設から回答があった(回答率:31%)。全体に、市町村の妊婦に対する口腔衛生指導の取り組みは進んでいるが、分娩施設で行われる妊婦保健指導では、口腔衛生指導はおざなりで不足しているといえる。さらに、口腔衛生指導の詳細について、分析を進めていく。また、妊娠時期別の妊婦のう蝕関連菌の保有状況を比較するために、産婦人科施設に妊婦健診を目的として来院した妊娠前半期(妊娠819週)および妊娠末期(妊娠2840週)の妊婦各200名に対し、唾液中う蝕関連菌検査を行った。検査内容は、総レンサ球菌数、ミュータンスレンサ球菌数、う蝕菌比率、乳酸菌比率、唾液PH、5分間の唾液量、色等であった。現時点で、150検体を収集した。う蝕関連金とその関連要因について明らかにする。本年度は効果的な口腔衛生教育に向けて(1)妊婦の口腔内環境の実態と、う蝕関連菌の保有に関連する要因を明らかにした。さらに、(2)妊婦のう蝕関連菌と周産期アウトカムの関連を検討した。調査対象は「A」医療施設に通常の妊婦健康診査を目的に来院した妊娠28週以降の初妊婦とした。自記式アンケート調査による対象妊婦315名の平均年齢は30.7±4.2歳であり、平均妊娠週数は27.9±6.6週であった。口腔内環境の実態調査とアンケート結果より、歯ブラシを鉛筆持ちし、1本1本の歯を意識し、5分以上かけて丁寧に歯みがきをし、きちんと磨けている自信を持つことは、う蝕菌比率の低下と関連があった。また、規則正しい生活習慣、抑うつ、落ち込みのない精神状態もう蝕菌比率の低下と関連があった。したがって、妊娠期の早い時期に口腔内のアセスメントとともに、適切な衛生教育と歯みがき指導によってう蝕菌を減らす可能性が示唆された。また、妊婦のう蝕関連菌と周産期アウトカムの関連では、GBS陽性の妊婦は陰性の妊婦よりもう蝕菌比率が有意に低い結果を得た。しかし、周産期アウトカムと口腔内環境の関連では、分娩時週数や出生児体重との関連は認められなかった。昨年度を含めた2年間の研究成果をまとめると、すべての妊婦が妊娠の早い時期に、以下の4点について教育を受け・歯磨きを実践することによって、妊婦の口腔内環境が改善され、それによって、次世代への感染リスクを低下させる可能性が示唆された。1口腔衛生を良好に維持する必要性について情報を得ること、2ブラッシング方法などの適切な口腔ケアについての指導を受けること、3歯科健康診査または歯科受診等で口腔内のアセスメントを受けること、4適切な口腔ケアを継続して実践していること。母性看護学・助産学研究組織がうまく機能し、各自のなすべきことを順調に遂行できている。ただし、妊婦のう触菌の検体は50%程度の収集状況のため、今年度も引き続き調査を継続する。平成26年度は、妊娠前半期(妊娠819週)と妊娠末期(妊娠2840週)の妊婦に対する唾液中のう蝕関連菌検査を継続するとともに、秋までには分析を完了する。また、最終年度でもあることから妊婦に対する口腔ケア教育のあり方をまとめ、教育プログラム試案の作成をめざす。 | KAKENHI-PROJECT-25670962 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25670962 |
日常場面で幼児が獲得する数・量の知識と適用に関する交差文化的研究 | 日本とアメリカ両国において、同一幼児が自由遊びの中で自発的にあらわす「数・量」表現を3年間にわたって縦断的に観察調査し、これらの表現の発達的変化にどのような文化的な差異があるかを明らかにした。日米の被験児合計33名(日本18名、アメリカ15名)について、年に約10回の縦断的観察を行った結果、次の点が明らかになった。(1)両国のデータに共通する3歳6ヶ月から5歳11ヶ月までの間、1回の観察時間(約50分)内に用いられた数表現および量表現全体の出現数は、いずれの年齢段階においても、日本の方が圧倒的に多かった(数表現:平均して日本がアメリカの7.6倍。量表現:平均4.5倍)。(2)両国ともに、すべての年齢段階で、量表現のほうが数表現よりも多く出現した(日本の数表現:1回の観察当たり5.5回、量表現:8.9回、アメリカの数表現:1.5回、アメリカの量表現:2.2回)。(3)数表現の内容を分類した結果、日本では、「物・人数」に関する言及が際だって多かったが、アメリカでは特に多く出現したものはなかった。(4)日本では、数字の「読み書き」に関する表現の出現数が、アメリカよりも多かった(日本:1回の観察当たり0.3回、アメリカ:0.0回)。(5)量表現に関しては、日米共に「多さ」に関する表現が多く出現したが、日本はアメリカの3.1倍の出現数であった。(6)日本では「内包量(温度・速さ・濃さ等)」の多いことが特徴的であった。(アメリカの16.4倍)。日本で多かった内包量は「早く」であり、子どもを取り巻く環境(親の働きかけ)の影響と推測される。日本とアメリカ両国において、同一幼児が自由遊びの中で自発的にあらわす「数・量」表現を3年間にわたって縦断的に観察調査し、これらの表現の発達的変化にどのような文化的な差異があるかを明らかにした。日米の被験児合計33名(日本18名、アメリカ15名)について、年に約10回の縦断的観察を行った結果、次の点が明らかになった。(1)両国のデータに共通する3歳6ヶ月から5歳11ヶ月までの間、1回の観察時間(約50分)内に用いられた数表現および量表現全体の出現数は、いずれの年齢段階においても、日本の方が圧倒的に多かった(数表現:平均して日本がアメリカの7.6倍。量表現:平均4.5倍)。(2)両国ともに、すべての年齢段階で、量表現のほうが数表現よりも多く出現した(日本の数表現:1回の観察当たり5.5回、量表現:8.9回、アメリカの数表現:1.5回、アメリカの量表現:2.2回)。(3)数表現の内容を分類した結果、日本では、「物・人数」に関する言及が際だって多かったが、アメリカでは特に多く出現したものはなかった。(4)日本では、数字の「読み書き」に関する表現の出現数が、アメリカよりも多かった(日本:1回の観察当たり0.3回、アメリカ:0.0回)。(5)量表現に関しては、日米共に「多さ」に関する表現が多く出現したが、日本はアメリカの3.1倍の出現数であった。(6)日本では「内包量(温度・速さ・濃さ等)」の多いことが特徴的であった。(アメリカの16.4倍)。日本で多かった内包量は「早く」であり、子どもを取り巻く環境(親の働きかけ)の影響と推測される。本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。本年は研究の1年目にあたるので、幼稚園の3歳児を対象として自由遊び場面のビデオ撮影を開始した。1回の撮影では1人の幼児だけを追い(約1時間)、音声が収録できる範囲まで近づいて映すという手法をとった。これまでに明らかになった結果は以下の通りである。1)日米ともに、3歳児での数・量表現は非常に少ない。2)数表現と量表現を比較すると、日米ともに、量表現の方が多く現れる。3)分析が終了した一部のデータ結果に基づけば、1回の撮影当りの出現数(平均値)は、日本の場合は、数表現:0.75、量表現:1.37、アメリカでは、数表現:1.11、量表現:1.78で、出現傾向にそれほど大きな差は見られなかった。4)分析終了数の多い日本のデータ結果によると、数・量表現の現われ方には、大きな個人差があった。また、同一幼児であっても、遊びの内容によって差が見られた。5)日本のデータでは、数表現や量表現を多く示した幼児は、同一の表現を繰り返し使う傾向があった。本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。本年度は、研究の2年目にあたる。平成12年度に引き続き、幼稚園の4歳児(3歳の時と同一の幼児)を対象として、自由遊び場面のビデオ撮影を継続的に行った。3歳半から4歳ばの1年間について、これまでに明らかになった結果は以下の通りである。 | KAKENHI-PROJECT-12480051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12480051 |
日常場面で幼児が獲得する数・量の知識と適用に関する交差文化的研究 | 1)自由遊びの中で用いられる数表現および量表現の出現数は、日本の幼児の方が多かった(アメリカの約3倍)。2)数表現と量表現を比較すると、日米ともに量表現の方が多く出現した。1回の撮影での出現数(平均値)は、日本の場合は、数表現:3.2、量表現:8.5、アメリカでは、数表現:1.0、量表現:1.9であった。3)日米ともに、数・量表現の現われ方には大きな個人差があり、同一幼児であっても、遊びの内容によって差が見られた。4)質的分析の結果、数表現の多くは個数、人数、回数などを数えるものであり、これらの合計は、日本では数表現の62%、アメリカでは57%を占めた。5)日本の幼児のカウンティングは正確であったが、アメリカでは数え間違いが見られた。6)量表現に関しては、アメリカでは「多さ」に関するものが大部分であったが(66%)、日本ではその割合はいくぶん低かった(48%)。次いで、アメリカでは「大きさ」が(26%)、日本では「内包量(温度・速さ・濃さなど)」が多く現れた(33%)。本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。本年度は、平成13年度に引き続き、幼稚園の5歳児(4歳の時と同一の幼児)を対象として、自由遊び場面のビデオ撮影を継続的に行った。4歳半から5歳半ばの1年間について明らかになった結果は以下の通りである。(1)自由遊びの中で用いられる数表現および量表現の出現数は、日本の方が多かった。(2)数表現と量表現を比較すると、日米ともに量表現の方が多く出現した。1回の撮影での出現数(平均値)は、日本の場合は、数表現:5.5、量表現:7.3、アメリカでは、数表現:3.2、量表現:42であった。(3)日米ともに、数・量表現の現われ方には大きな個人差があった。また、同一幼児であっても、撮影時の遊びの内容によって、大きな差がみられた。(4)質的分析の結果、数表現の多くは個数、人数、回数などを数えるものであり、これらの合計は、日本では数表現の50%、アメリカでは68%を占めた。(5)量表現に関しては、アメリカでは「多さ」に関するものが大部分であったが(63%)、日本ではその割合はいくぶん低かった(48%)。次いで、アメリカでは「大きさ」が(26%)、日本では「内包量(温度・速さ・濃さなど)」が多く現れた(24%)。本研究は、日本とアメリカ両国において、3年間にわたって同一幼児が自発的にあらわす数及び量の表現を縦断的に調査し、文化的な差異の有無や、数・量の知識獲得に関わる経験に質的普遍性があるか否かを明らかにすることを目的とする。アメリカでは、5歳になるかならないかの時点で、プリスクールから小学校一貫のキンダーガーテンに入学するが、諸般の事情により5歳以降の継続的データを得ることができなかったので、本年度はそれに代わる横断的データを収集して日本との比較を行うこととした。日本においても継続的データ数が3年の間に大幅に減少したために、横断的データの収集を行った。日米両国における横断的データを比較した結果、次の点が明らかになった。(1)日米ともに、5歳6歳児が自由遊びの中で用いる数表現および量表現の出現数及び種類は、4歳児に比べて増加した。特に数表現において、計算や金額に関する表現の増加が目立った。(2)日本では、計算・数字の読み書きに関する表現の出現率が、アメリカよりも高かった。アメリカでは、数字を書く表現は現れなかった。(3)量表現に関しては、アメリカでは「多さ」に関するものが大部分であったが、日本ではその割合はいくぶん低かった。 | KAKENHI-PROJECT-12480051 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12480051 |
食物アレルギーに関与する抗原特異的補助T細胞亜群の解析とその制御法開発 | 卵アレルギーの乳幼児の末梢血リンパ球は、卵白、オボアルブミン、オボムコイド刺激により、増殖反応を示し、IL-4産生細胞数増加がおこり、IL-4分泌も亢進した。また、in vitroでの刺激なしに、IL-4の分泌が見られた。PHA刺激により、CD4+細胞内のIL-4産生細胞の割合が、対照に比べて高かった。IFN-γの産生は、即時型アレルギー反応のみの患者群に比べ、アトピー性皮膚炎のある患者群では、低下していた。これは、特異的抗原ではなく、PHA刺激においてもみられ、ダニに反応のあるアトピー性皮膚炎等、遅延型反応のある場合の共通の異常である可能性がある。今回の検討対象である卵アレルギーでは、即時型反応のみの群と遅延型反応を示す群は、卵の成分に反応するという点で共通し、IL-4産生の亢進がサイトカイン産生の異常として基盤にあり、前者と後者の違いは、INF-γの産生の点であると考えられた。しかし、その本体は不明のままであり、今後の研究が必要である。遅延型反応のある患者から、オボアルブミン特異的CD4^+T細胞クローンを9株樹立した。すべてTh2タイプのサイトカイン産生パターンを示した。1クローンのみオボアルブミンペプチド323-339に反応して増殖した。PH-1.0ペプチド(Leu-Tyr-Gln-Glu-Leu-Gln-Lys-Leu-Thr-Gln-Thr-Leu-Lys)は、この患者由来のリンパ芽球様細胞株に対するペプチド323-339の結合を抑制し、クローンの増殖反応を抑制した。今後、オボアルブミンのT細胞エピトープの解析によってT細胞への抗原提示の段階における制御を利用した治療の開発に結びつくことが期待される。卵アレルギーの乳幼児の末梢血リンパ球は、卵白、オボアルブミン、オボムコイド刺激により、増殖反応を示し、IL-4産生細胞数増加がおこり、IL-4分泌も亢進した。また、in vitroでの刺激なしに、IL-4の分泌が見られた。PHA刺激により、CD4+細胞内のIL-4産生細胞の割合が、対照に比べて高かった。IFN-γの産生は、即時型アレルギー反応のみの患者群に比べ、アトピー性皮膚炎のある患者群では、低下していた。これは、特異的抗原ではなく、PHA刺激においてもみられ、ダニに反応のあるアトピー性皮膚炎等、遅延型反応のある場合の共通の異常である可能性がある。今回の検討対象である卵アレルギーでは、即時型反応のみの群と遅延型反応を示す群は、卵の成分に反応するという点で共通し、IL-4産生の亢進がサイトカイン産生の異常として基盤にあり、前者と後者の違いは、INF-γの産生の点であると考えられた。しかし、その本体は不明のままであり、今後の研究が必要である。遅延型反応のある患者から、オボアルブミン特異的CD4^+T細胞クローンを9株樹立した。すべてTh2タイプのサイトカイン産生パターンを示した。1クローンのみオボアルブミンペプチド323-339に反応して増殖した。PH-1.0ペプチド(Leu-Tyr-Gln-Glu-Leu-Gln-Lys-Leu-Thr-Gln-Thr-Leu-Lys)は、この患者由来のリンパ芽球様細胞株に対するペプチド323-339の結合を抑制し、クローンの増殖反応を抑制した。今後、オボアルブミンのT細胞エピトープの解析によってT細胞への抗原提示の段階における制御を利用した治療の開発に結びつくことが期待される。アトピー性皮膚炎があり,スクラッチテストで卵白に即時型の反応があり,RASTで3以上の卵アレルギーの乳児を対象として,その末梢血リンパ球をアレルゲンのオボムコイド,オボアルブミン,およびカンジダ,PHAを用いで刺激し、反応性を検討した。トリチウムチミヂンの取り込みでみると,PHAに対する反応よりも弱いながら,オボムコイド,オボアルブミンのいずれか,あるいは両者に反応を示した.サイトカインの産生でみるとIL-4の産生があり,IFN-γの産生は健康人に比べ低下していた.PHAでは,IL-4もIFN-γも産生がみられ,T細胞全体として反応が低下しているわけではないことが明らかであった.アレルゲンに反応した細胞について単一細胞レベルでサイトカインの産生パターンを解析し,反応した細胞の割合を算定しようと試みた.細胞内で作られたサイトカインの分泌を抑制するためにモネンシンを加えた.PHA刺激によるサイトカインの産生では,535%の細胞に陽性像がみられたが,アレルゲン刺激による場合,染色はきわめて弱かった.適切な抗体を入手するか,in situ hybridizationによりmRNAを検出するかしなければならないと考えられる.また,それらの培養により,リミッティングダイリューション法によりクローニングを試みた。数週間の維持は可能であったが,クローンの分離には成功しなかった.細胞株の維持に適切な血清の選定が必要である.卵アレルギーと診断された乳児においてパッチテストを用いた遅延型皮膚反応の結果と末梢血リンパ球をin vitroでアレルゲンのオボムコイド,オボアルブミンと共に培養して調べた芽球化反応の反応性は良い相関が見られた。末梢血リンパ球のサイトカインの産生は昨年度,IL-4、IFN-γについて検索したが,今年度は症例数を増やし同様の,IL- | KAKENHI-PROJECT-06670773 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670773 |
食物アレルギーに関与する抗原特異的補助T細胞亜群の解析とその制御法開発 | 4産生の亢進とIFN-γ産生の低下を確認した.また,IL-5についても検討を加えIL-4と平行して産生亢進がみられることが分かった.サイトカインの産生を行う細胞の割合を算定しようとin situ hybridization法を試みた.アレルゲン刺激による場合,陽性細胞は0.2-5.5%と値も症例間で様々ではあったが,コントロールに比べ明らかに多い例が多く,反応細胞の割合が末梢血で高いことがわかった.また,卵アレルギーの末梢血リンパ球からリミッティングダイリューション法を用いたクローニングによりいくつかのクローンを得た.解析の途中であるが,末梢血リンパ球での検討結果と矛盾せず,Th2タイプのもであった.アレルゲンのエピトープの決定は現在進行中である.MHC classΠ分子に結合するペプチドの原型ともいえるペプチド(PH-1.0)は患者リンパ球のアレルゲンに対する反応を抑制したので,有力なアレルギー抑制法の開発に役立つものと考えられた. | KAKENHI-PROJECT-06670773 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06670773 |