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単一分子セル構造によるナノスケール電位情報の運用技術開発
有機分子ナノ構造体が支持基板に対して示す接触電位差(LCPD)値を化学合成およびナノ構造制御により調整し、分子構造体が内包するナノスケールの固有情報として検出し活用するための手法について走査型プローブ顕微鏡(SPM)を主たる手段として検討した。その結果、ポルフィリン誘導体について、分子構造中央に配位する金属原子種や分子コンフォメーションの違いに応じてSPM像やLCPD値が変化する様子が観測された。これらは分子の電子状態やナノ構造を適切に制御することで電位情報を介した分子メモリや分子回路を構成することが可能であることを示唆する重要な知見と考える。有機分子ナノ構造体が支持基板に対して示す接触電位差(LCPD)値を化学合成およびナノ構造制御により調整し、分子構造体が内包するナノスケールの固有情報として検出し活用するための手法について走査型プローブ顕微鏡(SPM)を主たる手段として検討した。その結果、ポルフィリン誘導体について、分子構造中央に配位する金属原子種や分子コンフォメーションの違いに応じてSPM像やLCPD値が変化する様子が観測された。これらは分子の電子状態やナノ構造を適切に制御することで電位情報を介した分子メモリや分子回路を構成することが可能であることを示唆する重要な知見と考える。本研究の目的は、有機分子構造体のLCPD値を単一分子レベルで定量的かつ精密に計測するための実験手段および分子ナノセルユニットとして最適な分子構造を開発し、LCPD値が確かに分子セル固有の情報として運用可能であることを実証し、有機分子ならではの機能性に基づくナノメートルスケール情報処理スキームに技術的な道筋をつけることにある。今年度は、分子ナノセルのコンセプトモデルとして、それぞれ異なる金属元素(Ni、Co、Zn)が中心に入ったポルフィリン分子ユニットを新たに合成した。これらを超高真空中にて清浄平坦化した金属基板上に分散配置し、STM、NCAFM、SKPMそれぞれの観測モードにて分子スケール分解能観測を試み、内包金属種の違いに起因する「分子の見え方の違い」について検討した。その結果、NiおよびCoを導入した分子ユニットについて、STMモードによる観測では分子形状のコントラスト構造に明確な差異があるものの、NCAFMモードによる観測ではその見え方にはほとんど違いが見られないという知見を得た。この結果が意味するところを明らかにするためにはSKPMによる観測が必須であるが、この手法による単一分子スケールの観測は技術的に未確立な部分が多く残されているため、今年度は本手法の安定動作と空間分解能向上を企図した技術探索に注力した。その結果、カンチレバーの基準固有振動数にさらに高次のハーモニック信号を重畳しつつそれぞれのモードを同時に自励発振させ、1次振動をSKPM信号、2次振動をNCAFM信号として検出することで、NCAFMの空間分解能を劣化させること無くSKPMの検出感度を大きく向上できることがわかった。次年度は早期にこの新手法の定量性を確立し、STM、NCAFM双方の観測実験で得られた違いが分子のLCPD値に確かに起因するものであることを確固たる形で実証する。昨年度に、分子ナノセルのコンセプトモデルとして合成した、分子内中心に配置される金属元素(Ni、Co、Zn)がそれぞれ異なるポルフィリン誘導体分子ユニットに対して、STM、NCAFM、SKPMによる高分解能観測を行い、その見え方の違いを定量的に比較するための技術評価と装置改良を実施した。特に、昨年度までに観測されたSTMとNCAFMでの個々の分子の見え方の違いがどういった要因によるものなのかについて具体的に評価するためにSKPMによる観測を進めるとともに、動作の安定性と得られるデータの信頼性向上に努めた。取得データの定量性と信頼性を高めるためには、同一の分子に対して、同時にNCAFMとSKPM観測を行うことが有効と考え、カンチレバーの基準固有振動数にさらに高次のハーモニック信号を重畳しつつそれぞれのモードを同時に自励発振させ、1次振動によるものをSKPM信号、2次振動によるものをNCAFM信号としてそれぞれ同に検出する方式の実装と改良を進めた。試行錯誤の結果、それぞれの検出モードにおける最適な観測条件が大きく異なり、通常の検出感度では同時観測が困難であることが判明したため、これに対応するべく、カンチレバースペックの変更やシグナル検出系の設定感度見直し等を行い一定の成果を得た。さらに観測対象とする分子ユニットについて、これまで取り組んできたポルフィリン系分子だけでなく、一分子内に酸化部位と還元部位を併せ持つ長鎖分子の採用を検討し、分子構造の設計と検討を行った。SKPMにより取得されるデータの定量性と信頼性を高めるためには、カンチレバーの基準固有振動数にさらに高次のハーモニック信号を重畳しつつそれぞれのモードを同時に自励発振させることでNCAFMとSKPM観測を同時に行い、その取得データを相互補完することが有効である。前年度は1次振動をSKPM信号、2次振動をNCAFM信号として検出する方式の実装を進めたが、この方式ではSKPMの出力がカンチレバーの1次振動の振幅量に大きく依存し、十分な信号確度が得られないことが判明したため、1次信号をNCAFM信号、2次信号をSKPM信号に設定変更し、観測条件の最適化を図った。その結果、微小な自励振幅においても十分な確度にてSKPMシグナルを得ることができるようになり、LCPD取得データの信頼性が向上した。また、基板上における分子の凝集様式や基板との結合様式がLCPD値に与える効果について確認するために、原子レベルで清浄平坦化したCu(111)表面に、中心にCu原子を含むポルフィリン分子を配置してそのNCAFMイメージのバイアス電圧依存性について詳細に調べた。
KAKENHI-PROJECT-21510122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21510122
単一分子セル構造によるナノスケール電位情報の運用技術開発
その結果、同一の分子でも、基板上における分子の並び方や下地基板の様態によってNCAFM像のバイアス電圧依存性が大きく異なることが明らかになった。LCPD値はカンチレバー先端と観測表面間のポテンシャルエネルギーの差異を反映しているため、ここで得られたSPMイメージのバイアス電圧依存性は個々の分子ユニットが近接しドメイン構造を組む、あるいは下地基板と相関をもつことによりその電子状態が変調を受けたためであると考えられる。
KAKENHI-PROJECT-21510122
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21510122
リンパ球のみをリンパ節へ動員する分子機構、特にHEV特異的遺伝子の機能的解析
リンパ球のみを血管外移動させる血管HEV内皮細胞をマウス末梢リンパ節、腸管リンパ節から単離し、HEV特異的3'末端cDNAライブラリを作成した。各々の3'末端cDNAライブラリから約1,500クローンを塩基配列を決定し、他組織由来の約30種の3'末端cDNAライブラリで同定された塩基配列、およびESTに登録されている塩基配列と比較検討をした。その結果、正常の内皮細胞に比べてHEVに高発現が認められる分子として、mac25/TAF/PSF,SGP-2,DARC,leucine-rich α2glycoprotein,Ig-heptaなどが同定された。さらにHEVには、SLC,ELC,BLC,fractalkine,KC,lymphotactinなどのケモカインが遺伝子および蛋白質レベルで発現することが明らかになった。SLCは既にリンパ節へのT細胞の動員に必須であることが報告されているが、その他のケモカインについては報告がない。これらのケモカインはKCを除いてはいずれもサブセット特異的なリンパ球の遊走を誘導するものであり、種々のリンパ球サブセットをリンパ節内に動員するためには合目的性が高いものである。またこれとは別に、HEV上に発現するL-セレクチンリガンド上に硫酸基を転移する酵素として、La JollaのFukudaらと共に、上記のライブラリから新規GlcNAc-6-O-sulfotransferaseをクローニングすることに成功した。本酵素はL-セレクチンリガンドである6-sulfo sialyl Lewis Xの形成に必須の酵素であり、リンパ球がL-セレクチン依存的にリンパ節に動員されるための分子機序の一翼を担うものである。リンパ球のみを血管外移動させる血管HEV内皮細胞をマウス末梢リンパ節、腸管リンパ節から単離し、HEV特異的3'末端cDNAライブラリを作成した。各々の3'末端cDNAライブラリから約1,500クローンを塩基配列を決定し、他組織由来の約30種の3'末端cDNAライブラリで同定された塩基配列、およびESTに登録されている塩基配列と比較検討をした。その結果、正常の内皮細胞に比べてHEVに高発現が認められる分子として、mac25/TAF/PSF,SGP-2,DARC,leucine-rich α2glycoprotein,Ig-heptaなどが同定された。さらにHEVには、SLC,ELC,BLC,fractalkine,KC,lymphotactinなどのケモカインが遺伝子および蛋白質レベルで発現することが明らかになった。SLCは既にリンパ節へのT細胞の動員に必須であることが報告されているが、その他のケモカインについては報告がない。これらのケモカインはKCを除いてはいずれもサブセット特異的なリンパ球の遊走を誘導するものであり、種々のリンパ球サブセットをリンパ節内に動員するためには合目的性が高いものである。またこれとは別に、HEV上に発現するL-セレクチンリガンド上に硫酸基を転移する酵素として、La JollaのFukudaらと共に、上記のライブラリから新規GlcNAc-6-O-sulfotransferaseをクローニングすることに成功した。本酵素はL-セレクチンリガンドである6-sulfo sialyl Lewis Xの形成に必須の酵素であり、リンパ球がL-セレクチン依存的にリンパ節に動員されるための分子機序の一翼を担うものである。本研究では、リンパ節へリンパ球のみを特異的にリクルートする機構を高内皮細胞静脈(HEV;high endothelial venule)内皮細胞の側から遺伝子、分子レベルで明らかにすることを目的に、マウスの末梢リンパ節および腸管膜根リンパ節からHEV内皮細胞を精製した。そして、Okuboらの方法により、Oligo-dTを付加したベクタープライマーを用いて、cDNAの3 ́末端約250bpを含み、もとのmRNA組成を正確に反映する3 ́末端cDNAライブラリを作製した。そして、省力化を目的に至適化をすませたプロトコルとオートシークエンサーを用いて、1,5002,000クローンのcDNAの塩基配列を決定した。cDNAの配列情報はmRNAの分子種を特定するのに十分な情報をもつので、データー検索を通じて、発現する分子種とその出現頻度情報を含む「HEV遺伝子発現プロフィル」をマウスにおいて世界に先駆けて作製することができた。これまでに末梢リンパ節HEVに関しては遺伝子発現プロフィルが殆ど完成し、正常内皮細胞やリンパ球などの他組織での発現がみられない新規遺伝子が少なくとも約十種類同定できた。そしてin situ hybridization法を用いて組織特異的発現を確認した後、全長をコードするcDNAを獲得中である。全長が得られたものについては現在、その機能を明らかにすべく解析を進めている。リンパ球のみを血管外移動させる血管HEV内皮細胞をマウス末梢リンパ節、腸管リンパ節から単離し、HEV特異的3'末端cDNAライブラリを作成した。各々の3'末端cDNAライブラリから約1,500クローンを塩基配列を決定し、他組織由来の約30種の3'末端cDNAライブラリで同定された塩基配列、およびESTに登録されている塩基配列と比較検討をした。その結果、正常の内皮細胞に比べてHEVに高発現が認められる分子として、mac25/TAF/PSF,SGP-2,DARC,leucine-rich α2 glycoprotein,Ig-heptaなどが同定された。
KAKENHI-PROJECT-11470057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470057
リンパ球のみをリンパ節へ動員する分子機構、特にHEV特異的遺伝子の機能的解析
さらにHEVには、SLC,ELC,BLC,fractalkine,KC,lymphotactinなどのケモカインが遺伝子および蛋白質レベルで発現することが明らかになった。SLCは既にリンパ節へのT細胞の動員に必須であることが報告されているが、その他のケモカインについては報告がない。これらのケモカインはKCを除いてはいずれもサブセット特異的なリンパ球の遊走を誘導するものであり、種々のリンパ球サブセットをリンパ節内に動員するためには合目的性が高いものである。またこれとは別に、HEV上に発現するL-セレクチンリガンド上に硫酸基を転移する酵素として、La JollaのFukudaらと共に、上記のライブラリから新規GlcNAc-6-O-sulfotransferaseをクローニングすることに成功した。本酵素はL-セレクチンリガンドである6-sulfo sialyl Lewis Xの形成に必須の酵素であり、リンパ球がL-セレクチン依存的にリンパ節に動員されるための分子機序の一翼を担うものである。
KAKENHI-PROJECT-11470057
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11470057
1910年代における日本の朝鮮植民地統治とキリスト教教育
本年度の研究目的は、現在までの研究をシャピロ氏が書籍にまとめることにあった。その内容は、日本帝国とグローバル規模のキリスト教伝道事業を代表するキリスト教青年会(YMCA)との二重の枠組みのなかで、日本と朝鮮におけるキリスト教徒がどのような関係を結んだのかを解明しようとするものである。この目的に向けて、2冊の出版企画書をまとめた。一つは日本・朝鮮・中国のYMCA運動の起源と相互関連を取り上げ、それらが植民地朝鮮においてどう交差したのかを問うものである。これまでの研究では、この過程を単に<非キリスト教勢力対キリスト教勢力>の衝突として扱うことが主流であったが、この研究ではキリスト教青年会(YMCA)に焦点を当て、このグローバル規模のキリスト教伝道団体と日本帝国における天皇制という二つの異質的な制度が、いかに植民地朝鮮において妥協点を探りながら共存しようとしたのかという観点に基づき二者の関係の解釈を試みる。もう一つの企画書は、プロテスタント教徒で有名なジャーナリストだった徳冨蘇峰が朝鮮総督府の御用新聞であった『毎日申報』の監督として果たした役割を取り上げる書籍の出版企画書である。1910年代の毎日申報を取り上げている先行研究では、監督の徳富蘇峰の編集方針を度外視してきたが、この発見によって朝鮮における最初の近代小説家とされる李光洙(イ・グァンス)との意外な思想的関係が明らかになる、というのがこの本の主張である。これをもとに、現在、出版企画が進んでいる。27年度が最終年度であるため、記入しない。27年度が最終年度であるため、記入しない。先年度(2013年9月2014年3月)の研究目的は、主にキリスト教青年会(YMCA)運動の日本と朝鮮と世界における発展に関する研究を行うことにあった。この目的に向けて、まずアメリカとイギリスにおける17世紀の清教徒が試みた教会を中心とする社会から非教会的(あるいは平信徒的な)な空間が生じ、結果的に20世紀の平信徒運動としてのYMCAの世界的普及を可能にした歴史的背景について研究する必要があると考え、同志社大学の図書館を利用し資料調査を実施した。この研究結果に基き、日本と朝鮮におけるキリスト教の平信徒達がキリスト教と国民主義を結びつけるための非教会的手段としてどのようにYMCAを活用したのかを明らかにすることができると考える。この仮説を裏付けるため、2月16日から3月4日まで米国(ミネソタ大学ミネアポリス校北米YMCA歴史資料館、イェール大学神学図書館)に出張し、日本と朝鮮における初期のYMCA運動について資料調査を行った。また、プロテスタント教徒でジャーナリストであった徳富蘇峰が、1910年代の植民地朝鮮における唯一の朝鮮語新聞であった「毎日申報」の監督として果たした役割についての研究も行った。特に同志社大学の人文科学研究所を利用し、徳富が日本で経営していた「国民新聞」を研究し、「毎日申報」の社説内容との共通点を探った。この結果、「毎日申報」が日本人と朝鮮人を同一民族として扱う同化政策を批判しており、むしろ朝鮮民族の独自性を尊重した上で日本の皇室に対する忠誠心を培うことによって同化できる可能性を提示していることが明らかになった。こうした「毎日申報」の論調は、キリスト教に深く影響を受けた徳富が、個人生活に究極の目的が不可欠だと主張する立場から来ていると思われる。近いうちにこの研究を論文にまとめて発表したいと考えている。本年度の研究目的は、日本帝国とグローバル規模のキリスト教伝道事業を代表するキリスト教青年会(YMCA)との二重の枠組みの中で、日本と朝鮮におけるキリスト教徒がどのような関係を結んだのかを解明することにあった。この目的に向けて同志社大学の図書館・図書室を利用し、朝鮮人と関わりが深かった日本キリスト教徒(特に海老名弾正と吉野作蔵)についての資料調査を行った。また、東京に長く留学した経験を持っていた朝鮮人キリスト教徒である張德秀(チャン・ドクス)と李光洙(イ・グァンス)についての研究については、佛教大学の図書館を利用して資料調査を行った。朝鮮YMCA運動に大きい影響を及ぼしたと思われる中国YMCA運動の起源について京都大学の図書館を利用して調べ、ミネアポリスのミネソタ大学とイーエル大学の神学図書館に出張し、日本・朝鮮・中国のそれぞれのYMCA運動の起源と相互関連について資料調査を行った。コロンビア大学のバーク図書館で植民地朝鮮におけるキリスト教弾圧事件としてよく知られる105人事件についての資料調査をおこなった。各場所で収集した資料を読み進めた。2014年9月22日、早稲田大学の韓国学研究所で開かれた若手夏季研究会で研究発表を行った。早稲田大学が企画している『韓国学論集』に「日本帝国の支配下における朝鮮キリスト教青年会(YMCA)と精神教育の戦略」という日本語の論文を投稿し、掲載されることになった。今年は米国のアジア学協会(AAS)の年次研究会に向けて、「日本帝国とグローバル規模のキリスト教」という研究パネルを日本の大学に在籍する研究者から組み、2015年3月22日に研究会開催場のシカゴ・シェラトン・ホテルでパネル発表を行った。このパネルは、トランスナショナルなテーマを取り上げるパネルを表彰する、F.ヒラリー・コンロイ賞(F.Hilary Conroy Award)をAASから受賞した。本年度の研究目的は、現在までの研究をシャピロ氏が書籍にまとめることにあった。その内容は、日本帝国とグローバル規模のキリスト教伝道事業を代表するキリスト教青年会(YMCA)との二重の枠組みのなかで、日本と朝鮮におけるキリスト教徒がどのような関係を結んだのかを解明しようとするものである。この目的に向けて、2冊の出版企画書をまとめた。
KAKENHI-PROJECT-13F03726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13F03726
1910年代における日本の朝鮮植民地統治とキリスト教教育
一つは日本・朝鮮・中国のYMCA運動の起源と相互関連を取り上げ、それらが植民地朝鮮においてどう交差したのかを問うものである。これまでの研究では、この過程を単に<非キリスト教勢力対キリスト教勢力>の衝突として扱うことが主流であったが、この研究ではキリスト教青年会(YMCA)に焦点を当て、このグローバル規模のキリスト教伝道団体と日本帝国における天皇制という二つの異質的な制度が、いかに植民地朝鮮において妥協点を探りながら共存しようとしたのかという観点に基づき二者の関係の解釈を試みる。もう一つの企画書は、プロテスタント教徒で有名なジャーナリストだった徳冨蘇峰が朝鮮総督府の御用新聞であった『毎日申報』の監督として果たした役割を取り上げる書籍の出版企画書である。1910年代の毎日申報を取り上げている先行研究では、監督の徳富蘇峰の編集方針を度外視してきたが、この発見によって朝鮮における最初の近代小説家とされる李光洙(イ・グァンス)との意外な思想的関係が明らかになる、というのがこの本の主張である。これをもとに、現在、出版企画が進んでいる。前年度の研究目的に沿って論文を1本公表し、パネル発表もおこなったため、目標は大体において達成できたと思われる。また、プロテスタント教徒だった徳冨蘇峰が朝鮮総督府の御用新聞であった『毎日申報』の監督として果たした役割を取り上げる論文と、日本・朝鮮・中国のYMCA運動の起源と相互関連を取り上げる論文を近いうちにまとめて発表できる段階にまで準備を進めることができた。本研究が最終目的とする博士論文を単著として出版することに向けて北米大学の出版会社への申請の準備も進めている。27年度が最終年度であるため、記入しない。今後の研究の推進方策は以下の三つの通りである。1前年度の研究結果を論文にまとめて発表する。2日本国内と韓国の大学への最終的な出張と資料調査を実施する。(特に東京の国会図書と外務省史料館と熊本大学、及び韓国の延世大学と安昌浩(アン・チャンホ)記念館に出張をする予定である。)3本研究の最終目的である、博士論文を単著として出版するために、北米の大学出版社に申請をする。キリスト教青年会(YMCA)運動の日本と朝鮮と世界における発展を明らかにするという先年度の研究目的は、大体において達成できたと思われる。しかし、まだ説明できていない課題も残っており、今年度に北米YMCA歴史資料館への再度の出張が必要になると考える。なお、もともと今年度に予定していた、徳富蘇峰と植民地朝鮮とのつながりについての研究が大きく前進したこともあり、全体としての研究は順調に進展していると思われる。27年度が最終年度であるため、記入しない。今後の研究の推進方策は以下の四つの通りである。1先年度の研究結果を論文にまとめる。北米YMCA歴史資料館への再度の出張を行う。2朝鮮人と関わりが深かった日本キリスト教徒(特に海老名弾正と吉野作蔵)について研究し、収集した資料を読みすすめる。徳富蘇峰と植民地朝鮮についての研究を論文にまとめて発表する。
KAKENHI-PROJECT-13F03726
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13F03726
血管内視鏡下血管内血管結紮、縫合および閉塞法の新技術の研究
末梢動脈における動脈瘤や動静脈交通、下肢静脈瘤などの手術では血管を結紮、もしくは縫合する事が求められる。そこで血管内に小さな器具を挿入することで血管内での手術操作により血管を結紮したり縫合することが出来ないかという考え方でこれまで研究を進めてきた。従来技術としては血管内にコイルを挿入して血栓形成を促したり、ゼラチンやセルロースを注入する方法が行われていた。しかし炎症反応や再疎通等が問題視されている。そこで本研究では血管内視鏡を用いて正確に血管内から血管を結紮したり縫合することを可能とするための基礎的研究を行った。ファイバースコープを透明の高分子材料で作成した疑似血管の内腔に挿入し、内視鏡による観察下と疑似血管の透明な壁を介した観察下により、一般の腹腔内内視鏡手術の器具を使用した血管縫合を行った。この結果、血管内での持針器の操作が極めて難しいことが判明した。それは十分なスペースが無いことと、持針器の針を持つ部分の硬直性によるものであった。この結果から、獣医師の使用する肺動脈内のフィラリア摘出術に使用するアリゲーター鉗子を使用して針をつかみ、疑似血管内操作を行った。すると内径が約2cmの疑似血管内では針を血管の長軸方向へ移動させる操作は容易であり、縫合操作は可能であることが判明した。しかし長軸方向以外の方向では針を動かすのに何らかの支えが必要であり、鉗子に何らかの工夫を施す必要のあることが判明した。また、この操作は内径2cmよりも細い血管内ではまだその操作を行うには無理であった。結論としては、血管内で血管の縫合や結紮が可能であることが判明したが、血管内操作に必要な特殊な器具の開発が進めば、血管内手術が可能であることが判明した。末梢動脈における動脈瘤や動静脈交通、下肢静脈瘤などの手術では血管を結紮、もしくは縫合する事が求められる。そこで血管内に小さな器具を挿入することで血管内での手術操作により血管を結紮したり縫合することが出来ないかという考え方でこれまで研究を進めてきた。従来技術としては血管内にコイルを挿入して血栓形成を促したり、ゼラチンやセルロースを注入する方法が行われていた。しかし炎症反応や再疎通等が問題視されている。そこで本研究では血管内視鏡を用いて正確に血管内から血管を結紮したり縫合することを可能とするための基礎的研究を行った。ファイバースコープを透明の高分子材料で作成した疑似血管の内腔に挿入し、内視鏡による観察下と疑似血管の透明な壁を介した観察下により、一般の腹腔内内視鏡手術の器具を使用した血管縫合を行った。この結果、血管内での持針器の操作が極めて難しいことが判明した。それは十分なスペースが無いことと、持針器の針を持つ部分の硬直性によるものであった。この結果から、獣医師の使用する肺動脈内のフィラリア摘出術に使用するアリゲーター鉗子を使用して針をつかみ、疑似血管内操作を行った。すると内径が約2cmの疑似血管内では針を血管の長軸方向へ移動させる操作は容易であり、縫合操作は可能であることが判明した。しかし長軸方向以外の方向では針を動かすのに何らかの支えが必要であり、鉗子に何らかの工夫を施す必要のあることが判明した。また、この操作は内径2cmよりも細い血管内ではまだその操作を行うには無理であった。結論としては、血管内で血管の縫合や結紮が可能であることが判明したが、血管内操作に必要な特殊な器具の開発が進めば、血管内手術が可能であることが判明した。
KAKENHI-PROJECT-09671240
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09671240
動画像に特化したリアルタイムストリーム認証方式
本研究では動画像のストリーム転送における効率的な認証方式の実現を目的にしている。本年度は18年度に引き続き、実際に使用されている動画像圧縮符号化方式H.264/AVCに特化したストリーム認証方式を提案した。本提案方式は用いるH.264/AVCの規格を損なわないものにする必要があった。H.264/AVCエンコーダでは動画データのみならず、その動画データを制御する制御データといった様々なデータが生成される。またこれらのデータは種類によって重要度が異なる。動画データは制御データなしにはデコードすることができない。したがって、制御データは重要度が高く、制御データを伝送路上で損失した場合、その制御データに依存する動画データをデコーダにおいて単独で受信し、認証できても意味を持たない。そこで、重要度の高い制御データにデータ損失に耐性を持たせる必要がある。ハッシュとディジタル署名を併用し、動画データと制御データ間に認証情報の関連性を持たせ、その制御データを保護する。制御データが損失しても復元することが可能であり、また、制御データに依存する動画データの認証も可能となるため、認証効率が向上する。しかし、制御データを保護することによるオーバヘッドが増加する問題があったため、本年度は特にオーバヘッドを軽減することを目的にした。具体的には一部の動画データと制御データを分離させ制御データのみに耐性を持たせた。評価として、提案したストリーム認証方式と既存方式について、実効率(データ損失への耐性)、オーバヘッド(認証を行うための通信量の増加)において比較評価を行い本提案方式の有効性を確認した。本研究では動画像ストリーム転送における効率的な認証方式の実現を目的としている.近年注目されているIP電話やネット会議などのリアルタイムストリーミングサービスではリアルタイム性を重視するため再送を行わないUDPが一般的に用いられる.そのためパケットロスが起こりやすくなる.そこで,パケットロスへの対応のためリアルタイムストリームの認証では1パケットごとに認証する必要がある.また,動画像では差分を用いて圧縮している方式が多いため,フレーム間に依存関係が存在し,フレームごとに重要度が異なる.しかし,既存のストリーム認証方式は動画像の構造を考慮しておらず全てのフレームを同等のものとして扱っている.そこで本研究では動画像の構造を考慮するためディジタル署名,ハッシュ,及び誤り訂正技術の1つであるIDAをうまく組み合わせる動画像のためのリアルタイムストリーム認証方式を提案した.提案方式ではフレームを格納するパケットの依存関係を考慮しパケットごとに認証情報の多重度を変えて付与する.具体的には,重要度の高いパケットに認証情報を付与し,それを元にしてIDAを用いて生成される復元情報を重要度の低いパケットに分散させて持たせる.よって重要度の高いパケットにパケットロスへの耐性を強く持たせることができる.評価として,提案したストリーム認証方式と既存の方式について,認証率,動画再生率,オーバヘッド,送信側遅延・受信側遅延の評価項目において比較評価を行った.認証率において,平均的に提案方式は既存方式と同等であるものの,より厳しい復元条件において提案方式は既存方式より良い認証率となった.また動画再生率において提案方式は既存方式に比べ約50%向上することができた.本研究では動画像のストリーム転送における効率的な認証方式の実現を目的にしている。近年注目されているIP電話やネット会議などのストリーミングサービスでは未だ技術的にデータの改ざん、成りすまし、事後否認が可能である。またストリーミング転送ではTCPとは違って、再送を行わない信頼性の低いUDPが一般的に用いられるため、データ損失に対する耐性を持つ認証方式が必要となる。本年度は実際に使用されている動画像圧縮符号化方式に特化したストリーム認証方式を提案した。本提案方式は用いる動画像圧縮符号化方式の規格を損なわないものにする必要があった。エンコーダでは動画データのみならず、その動画データを制御する制御データといった様々なデータが生成される。またこれらのデータは種類によって重要度が異なる。動画データは制御データなしにはデコードすることができない。したがって、制御データは重要度が高く、制御データを伝送路上で損失した場合、その制御データに依存する動画データをデコーダにおいて単独で受信し、認証できても意味を持たない。そこで、重要度の高い制御データにデータ損失に耐性を持たせる必要がある。ハッシュとディジタル署名を併用し、動画データと制御データ間に認証情報の関連性を持たせ、その制御データを保護する。制御データが損失しても復元することが可能であり、また、制御データに依存する動画データの認証も可能となるため、認証効率が向上する。評価として、提案したストリーム認証方式と既存方式について、実効率(データ損失への耐性)、オーバヘッド(認証を行うための通信量の増加)において比較評価を行い本提案方式の有効性を確認した。また、エンコーダ、及びデコーダにおける時間的処理負荷(認証・復元を行うための時間の増加)を測定することにより、提案方式の性質を確認した。本研究では動画像のストリーム転送における効率的な認証方式の実現を目的にしている。本年度は18年度に引き続き、実際に使用されている動画像圧縮符号化方式H.264/AVCに特化したストリーム認証方式を提案した。本提案方式は用いるH.264/AVCの規格を損なわないものにする必要があった。H.264/AVCエンコーダでは動画データのみならず、その動画データを制御する制御データといった様々なデータが生成される。またこれらのデータは種類によって重要度が異なる。動画データは制御データなしにはデコードすることができない。
KAKENHI-PROJECT-05J08133
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J08133
動画像に特化したリアルタイムストリーム認証方式
したがって、制御データは重要度が高く、制御データを伝送路上で損失した場合、その制御データに依存する動画データをデコーダにおいて単独で受信し、認証できても意味を持たない。そこで、重要度の高い制御データにデータ損失に耐性を持たせる必要がある。ハッシュとディジタル署名を併用し、動画データと制御データ間に認証情報の関連性を持たせ、その制御データを保護する。制御データが損失しても復元することが可能であり、また、制御データに依存する動画データの認証も可能となるため、認証効率が向上する。しかし、制御データを保護することによるオーバヘッドが増加する問題があったため、本年度は特にオーバヘッドを軽減することを目的にした。具体的には一部の動画データと制御データを分離させ制御データのみに耐性を持たせた。評価として、提案したストリーム認証方式と既存方式について、実効率(データ損失への耐性)、オーバヘッド(認証を行うための通信量の増加)において比較評価を行い本提案方式の有効性を確認した。
KAKENHI-PROJECT-05J08133
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05J08133
音声対話理解のための言語解析手法に関する基礎的研究
談話は無関係な文の単なる集まりではなく,談話中の文は互いに何らかのつながりを持っている.本研究では,この談話のつながりを明示する表層的な情報である語彙的結束性を用いた語義曖昧性解消手法について述べる.語彙的結束性を表す語彙的連鎖は,談話中の互いに関連する単語の連鎖であり,談話ゼグメントの境界を示す指標として,また,意味解析時における文脈情報として利用できる.本研究では,語彙的連鎖を漸進的に生成する過程で,語彙的連鎖をその重要度の順に管理することで,語彙的連鎖を構成する単語の語義曖昧性を,語彙的連鎖生成と同時に漸進的に解消する枠組を示す.語彙的連鎖の重要度は,最近更新された語彙的連鎖および,より長い語彙的連鎖を上位に来るように制御するものであり,重要度が上位にある語彙的連鎖から順に,現在解析中の単語との結束性を調べることで,その単語の近傍の文脈情報を得ることができるので,この文脈情報を用いた語義曖昧性解消が実現できる.本手法を実際の談話に適用したところ,平均63%の解析精度が得られた.この結果から,これまでの漸進的曖昧性解消手法に本手法を統合することで,解析精度の向上が期待できると考えられる.談話は無関係な文の単なる集まりではなく,談話中の文は互いに何らかのつながりを持っている.本研究では,この談話のつながりを明示する表層的な情報である語彙的結束性を用いた語義曖昧性解消手法について述べる.語彙的結束性を表す語彙的連鎖は,談話中の互いに関連する単語の連鎖であり,談話ゼグメントの境界を示す指標として,また,意味解析時における文脈情報として利用できる.本研究では,語彙的連鎖を漸進的に生成する過程で,語彙的連鎖をその重要度の順に管理することで,語彙的連鎖を構成する単語の語義曖昧性を,語彙的連鎖生成と同時に漸進的に解消する枠組を示す.語彙的連鎖の重要度は,最近更新された語彙的連鎖および,より長い語彙的連鎖を上位に来るように制御するものであり,重要度が上位にある語彙的連鎖から順に,現在解析中の単語との結束性を調べることで,その単語の近傍の文脈情報を得ることができるので,この文脈情報を用いた語義曖昧性解消が実現できる.本手法を実際の談話に適用したところ,平均63%の解析精度が得られた.この結果から,これまでの漸進的曖昧性解消手法に本手法を統合することで,解析精度の向上が期待できると考えられる.
KAKENHI-PROJECT-05241206
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05241206
自動運転技術とシェアリングが融合した新たなモビリティサービスに関する基礎研究
国内外で実施されている個人間カーシェアリング(CS)事業についての最新情報を収集した.IT事業を手掛ける企業がプラットフォームになる個人間CSサービスはワンウェイ型のCSサービスよりも普及が進んでいることが明らかになった.2017年度に別途,試行的に行ったサービス利用者と車両提供者を対象とたAVS (Autonomous Vehicle Sharing)サービスプロファイルに対する仮想選好意識調査のデータを用いて,利用者に対してはAVSサービスへの手段転換モデルを,車両提供者に対しては車両購入・貸出モデルを構築し,推定した.これらのモデルをカーシェアリングサービスの導入可能性の検証用に開発していたマクロ運用シミュレータに組み込んだAVSシステム運用シミュレータを新たに構築した.第4回熊本都市圏PT調査の29のCゾーンから成るエリアに対してAVSサービス運用シミュレーションを実行した結果,サービス提供後,一旦は車両提供者の元に帰還するサービスに比べて,車両所有者が次に利用するまでは継続してサービスを提供するサービスではより効率的なサービスを提供できることが分かった.AVSの車両価格が安価になるとAVの購入・貸出は増加する.しかし,その増加率の方が利用者の増加率よりも大きいために収益は低下する.サービス提供側としては,車両価格がやや高めの場合が財務的には良いことが明らかになった.AVはかなり高額になることが予想されているが,所有者はそれをAVSサービスの車両として貸し出すことにより,かなり高い収益を得ることが可能となることも明らかになった.1年目の2018年度は,利用者のAVSサービスへの手段転換モデルを,車両提供者に対しては車両提供モデルを構築し,仮想のAVSサービスプロファイルに対する選好意識調査データを用いて両モデルを特定化することを研究の到達目標としていた.この目標は十分に達成された上に,カーシェアリングサービスの導入可能性の検証用に開発していたマクロ運用シミュレータに両モデルを組み込んだAVSシステム運用シミュレータまで構築した.さらに,第4回熊本都市圏PT調査の29のCゾーンから成るエリアに対してAVSサービス運用シミュレーションを実行したところ,AVSサービスの導入による利用需要とAV供給量の均衡値,運用状況,貸出による収益などの試算が可能になった.今後は2018年度に開発して需要予測や評価モデルとしての利用可能性が検証されたAVSサービス運用シミュレーションモデルの構成要素であるAVSへの手段転換モデル,AV購入・提供モデルの改良を行う.さらに,料金や予約リードタイムなど,利用需要と提供車両数に影響を与えると考えられる要因に対して,市場均衡までの挙動をAVSシミュレーションモデルにより追跡する.その上で,都市規模や人口分布,ODパターンの異なる幾つかの都市圏を対象に,AVSサービスの普及による都市圏における自家用車利用距離,モビリティ水準の変化など,ASCサービスの導入による社会的,経済的インパクトの計測を行う.また,都市圏における総合交通サービスの中でのAVSのMaaS(Mobility as a Service)としての位置づけを明確にさせる.国内外で実施されている個人間カーシェアリング(CS)事業についての最新情報を収集した.IT事業を手掛ける企業がプラットフォームになる個人間CSサービスはワンウェイ型のCSサービスよりも普及が進んでいることが明らかになった.2017年度に別途,試行的に行ったサービス利用者と車両提供者を対象とたAVS (Autonomous Vehicle Sharing)サービスプロファイルに対する仮想選好意識調査のデータを用いて,利用者に対してはAVSサービスへの手段転換モデルを,車両提供者に対しては車両購入・貸出モデルを構築し,推定した.これらのモデルをカーシェアリングサービスの導入可能性の検証用に開発していたマクロ運用シミュレータに組み込んだAVSシステム運用シミュレータを新たに構築した.第4回熊本都市圏PT調査の29のCゾーンから成るエリアに対してAVSサービス運用シミュレーションを実行した結果,サービス提供後,一旦は車両提供者の元に帰還するサービスに比べて,車両所有者が次に利用するまでは継続してサービスを提供するサービスではより効率的なサービスを提供できることが分かった.AVSの車両価格が安価になるとAVの購入・貸出は増加する.しかし,その増加率の方が利用者の増加率よりも大きいために収益は低下する.サービス提供側としては,車両価格がやや高めの場合が財務的には良いことが明らかになった.AVはかなり高額になることが予想されているが,所有者はそれをAVSサービスの車両として貸し出すことにより,かなり高い収益を得ることが可能となることも明らかになった.1年目の2018年度は,利用者のAVSサービスへの手段転換モデルを,車両提供者に対しては車両提供モデルを構築し,仮想のAVSサービスプロファイルに対する選好意識調査データを用いて両モデルを特定化することを研究の到達目標としていた.この目標は十分に達成された上に,カーシェアリングサービスの導入可能性の検証用に開発していたマクロ運用シミュレータに両モデルを組み込んだAVSシステム運用シミュレータまで構築した.さらに,第4回熊本都市圏PT調査の29のCゾーンから成るエリアに対してAVSサービス運用シミュレーションを実行したところ,AVSサービスの導入による利用需要とAV供給量の均衡値,運用状況,貸出による収益などの試算が可能になった.今後は2018年度に開発して需要予測や評価モデルとしての利用可能性が検証されたAVSサービス運用シミュレーションモデルの構成要素であるAVSへの手段転換モデル,AV購入・提供モデルの改良を行う.さらに,料金や予約リードタイムなど,利用需要と提供車両数に影響を与えると考えられる要因に対して,市場均衡までの挙動をAVSシミュレーションモデルにより追跡する.
KAKENHI-PROJECT-18K04393
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04393
自動運転技術とシェアリングが融合した新たなモビリティサービスに関する基礎研究
その上で,都市規模や人口分布,ODパターンの異なる幾つかの都市圏を対象に,AVSサービスの普及による都市圏における自家用車利用距離,モビリティ水準の変化など,ASCサービスの導入による社会的,経済的インパクトの計測を行う.また,都市圏における総合交通サービスの中でのAVSのMaaS(Mobility as a Service)としての位置づけを明確にさせる.
KAKENHI-PROJECT-18K04393
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K04393
超音波による前立腺疾患の治療に関する研究
1975年Karpukinらは,経直腸的超音波照射装置を開発し,慢性非特異性前立腺炎にこの治療法を用いた.照射時にハイドロコ-チゾンを同時に肛門内に挿入し,治療効果が高められるとの報告がなされ,我々も追試を行いその有効性を確認した.その後この新しい治療法が他の前立腺疾患に応用できるのではないかと考え,まず高齢化社会の到来とともに増加しつつある前立腺肥大症に着目した.最近では前立腺肥大症の初期治療などを目的として,保存的治療の開発が盛んとなり,温熱療法をはじめ各種の試みが実施されている.超音波治療もその一つになりうるかは興味のあるところであり,その点からも各種の検討を行った.照射条件はパルス10msec,出力0.4W/cm^2(約500kHz),1日1回,連日照射7日間を1ク-ルとした.まずパイロット試験として,25例の治験を実施,自他覚所見ともに約40%の改善をみた.さらに症例を拡大して,115例を対象に治験を行ったところ,自覚的所見は40%の改善をみたが,他覚的所見は第一次治験ほどの改善を示さなかった.治療後6ヶ月以降の追跡可能例は72例で,その中13例(18%)が手術療法を受け,その中の70%は治療終了直後に比して自覚症状が悪化していた.17例(24%)は薬物療法が行われ,過半数の42例(55%)は無治療で経過できた.その中で17%が時間の経過とともにさらに自覚症が改善する傾向がみられた.本治療法は局所療法であり,全身への影響を含め副作用が殆どみられず,今後さらに照射条件,治療方法を検討し改善をはかれば,前立腺肥大症に対する保存的治療法の一つとなり得るという期待が持たれた.1975年Karpukinらは,経直腸的超音波照射装置を開発し,慢性非特異性前立腺炎にこの治療法を用いた.照射時にハイドロコ-チゾンを同時に肛門内に挿入し,治療効果が高められるとの報告がなされ,我々も追試を行いその有効性を確認した.その後この新しい治療法が他の前立腺疾患に応用できるのではないかと考え,まず高齢化社会の到来とともに増加しつつある前立腺肥大症に着目した.最近では前立腺肥大症の初期治療などを目的として,保存的治療の開発が盛んとなり,温熱療法をはじめ各種の試みが実施されている.超音波治療もその一つになりうるかは興味のあるところであり,その点からも各種の検討を行った.照射条件はパルス10msec,出力0.4W/cm^2(約500kHz),1日1回,連日照射7日間を1ク-ルとした.まずパイロット試験として,25例の治験を実施,自他覚所見ともに約40%の改善をみた.さらに症例を拡大して,115例を対象に治験を行ったところ,自覚的所見は40%の改善をみたが,他覚的所見は第一次治験ほどの改善を示さなかった.治療後6ヶ月以降の追跡可能例は72例で,その中13例(18%)が手術療法を受け,その中の70%は治療終了直後に比して自覚症状が悪化していた.17例(24%)は薬物療法が行われ,過半数の42例(55%)は無治療で経過できた.その中で17%が時間の経過とともにさらに自覚症が改善する傾向がみられた.本治療法は局所療法であり,全身への影響を含め副作用が殆どみられず,今後さらに照射条件,治療方法を検討し改善をはかれば,前立腺肥大症に対する保存的治療法の一つとなり得るという期待が持たれた.前立腺疾患に対する超音波治療は、ソ連を除き世界的にほとんど試みられていない。われわれの施設で試験的に行なった20余名の前立腺肥大症および前立腺炎に帯する治療では、70%近い有効率を得た。しかし、たまたまわれわれの使用したソ連製の装置では、超音波発生器(照射用プロ-ブ)に故障が多く、必ずしも十分な予め想定された照射量が得られたとはいい難い。そこで安定した出力が得られる、やや改良した装置を国産メ-カ-に依頼した。しかし、ソ連の特許の問題、および装置試作に関する技術的問題で時間を要し、残念ながら本年度は試作品完成をみるまでに至らなかった。そのため、急きょ従来使っていたソ連製装置の修理と、新しい照射プロ-ブの導入を、同国産メ-カ-の協力で行い、安定した照射出力が得られることを確認し、約10名の前立腺肥大症症例に対し治療を行なった。このシリ-ズは現在なお症例を追加して検討中である。以上のほかに、本年度は以前に超音波治療を施行し6カ月以上経過した前立腺肥大症症例40例に、アンケ-ト調査を行なった。回答者は34例(68%)であった。その結果、超音波治療後現在までに前立腺に対する手術を受けたもの7例(20.6%)、薬物治療をうけているもの5例(14.7%)で、過半数の22例(64.7%)は無治療で様子を見ていることが分かった。手術を受けた症例の中、5例は推定重量が25g以上の比較的大きい前立腺であった。
KAKENHI-PROJECT-01570906
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570906
超音波による前立腺疾患の治療に関する研究
自覚症の変化をわれわれの設定したスコアで評価し、治療終了時と追跡時とを比較して、総計2以上変化したものを悪化あるいは改善とし、それ以外、その中間を不変とすると、薬物治療例では5例中4例が不変、1例が悪化、無治療例では22例中17例(77.3%)が不変、2例が改善、3例が悪化という結果であった。従って、超音波治療で改善した状態は全体の7080%がそのまま6カ月以上維持されることが分かった。これは新しい知見でありさらに症例を増やし、より細かいデ-タ解析を行なう予定である。各種前立腺疾患に対する超音波治療の検討を,昨年に引続き行った。超音波の治療的応用が最近見直され始めており,さらに前立腺肥大症の保存的治療も世界的テ-マとなっており,本研究の重要性が窺われる。昨年同様,国産メ-カ-による開発は残念ながら進行していない。やはりソ連の特許問題と輸入業者と国産メ-カ-の疎通の問題,さらには現在治療に用いている超音波の物理的条件が治療に適しているかという国産メ-カ-側の疑問などが主な理由である。しかし,新たにソ連より照射用プロ-ブを補充できたので,臨床的検討は継続して行っている。その内容は,例えば治療期間を1週間以上にする,1回の治療時間を5分以上にする,2ク-ル目の治療を行うなどこれまで行わなかった条件での検討を試みている。しかしこれらは治療後の観察期間が短く,現時点での有効性の検討は困難である。そこで本年度も引続き19881989年に治療した症例の遠隔成績の検討を,昨年検討した例より拡大し総計90例でおこなった。アンケ-トの回答は90例中63例(70%)で,治療後6ケ月以上無治療は29例(32.2%),内服治療は18例(21.1%),手術療法をうけた例は16例(17.7%)であった。治療後3ケ月,6ケ月と確実に経過が追えた28例で検討すると,夜間頻尿については,治療直後での判定で改善とした15例中,3ケ月,6ケ月後にそれぞれ悪化した例は7,3例で合わせて66.7%,効力が持続したのは,僅か3例(20%)であった。一方治療中不変,悪化した13例中,その後改善したのは5例(38.5%)であった。これは他の自覚症スコアでの観察でも同様の傾向を示し,超音波治療に効果が一時的である例が多いことを意味しており,さらに異なった治療条件での検討を行うとともにこの治療法の限界などを十分に調べる必要があることを示唆していると思われた。今後この点に関しても解析を加える予定である。1975年Karpukinらは,経直腸的超音波照射装置を開発し,慢性非特異性前立腺炎にこの治療法を用いた。照射時にハイドロコ-チゾンを同時に肛門内に挿入し,治療効果が高められることの報告がなされ,我々も追試を行いその有効性を確認した。その後この新しい治療法が他の前立腺疾患に応用できるのではないかと考え,まず高齢化社会の到来とともに増加しつつある前立腺肥大症に着目した。最近では前立腺肥大症の初期治療などを目的として,保存的治療の開発が盛んとなり,温熱療法をはじめ各種の試みが実施されている。超音波治療もその一つになりうるかは興味のあるところであり,その点からも各種の検討を行った。照射条件はパルス10msec,出力0.4W/cm^2(約500kHz)で,1日1回,連日照射7日間を1ク-ルとした。まずパイロット試験として,25例の治験を実施,自他覚所見ともに約40%の改善をみた。さらに症例を拡大して,115例を対象に治験を行ったところ,自覚的所見は約40%の改善をみたが,他覚的所見は第一次治験ほどの改善を示さなかった。治療後6ヶ月以降の追跡可能例は72例で,その中13例(18%)が手術療法を受け,その中の70%は治療終了直後に比して自覚症状が悪化していた。17例(24%)は薬物療法が行われ,過半数の42例(55%)は無治療で経過できた。その中で17%が時間の経過とともにさらに自覚症が改善する傾向がみられた。
KAKENHI-PROJECT-01570906
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01570906
歩行中の骨盤の動きが重心移動および機械的効率性に与える影響
本研究では、骨盤の動きに制限を加えた時の歩行の機械的効率性や下肢・体幹の運動学的指標、下肢の筋活動に与える影響を明らかにすることを目的とした。健常若年者を対象に、装具などを用いて人工的に脚長差や股関節、膝関節および体幹の運動制限の状態を作り、歩行の運動学的指標や運動力学的指標に関して、制限のない場合と比較した。快適歩行速度においては、あらゆる条件において、下肢関節などに種々の代償運動が働き、歩行中の重心移動の機械的効率性が保たれることが示唆された.今回得られた結果は、加齢や種々の障害により形態異常や関節運動制限をきたした患者の歩行評価を行う上で、対照データとして有用な資料となり得ると考える。平成27年度の主な課題は、骨盤の上下移動に変化を与えた時の、1重心移動・エネルギー交換率に及ぼす効果、2下肢の運動学、運動力学的パラメーターへの影響、3下肢筋活動への影響を検討することである.健常成人12名を対象に,1片側の床面に15cmの段差を付け,人工的な脚長差を作った場合と2膝装具を用いて一側膝関節を伸展位(0度)に固定した場合の2つの歩行分析を行い,それぞれ裸足での対照条件と比較した.骨盤の前額面上の動きは,脚長差が大きくなるに従い,長脚側への側方傾斜が減少し,短脚側への側方傾斜が増大する傾向がみられたが,変化量は脚長差5cmで1度(短脚側)2度(長脚側)とわずかであった.上部体幹は,前額面上での顕著な変化は見られなかった.骨盤と上部体幹のなす側屈角度は,骨盤の動きを反映し,脚長差に従い,長脚側への側方傾斜が減少,短脚側への側方傾斜が増大した.筋活動は脚長差の増加に従い,長脚側の腰部脊柱起立筋と膝伸展筋の活動の増加と短脚側の中殿筋,膝伸展筋,足底屈筋群の増加がみられた.重心移動に関しては,脚長差が大きくなるに従い,側方,上下方向の重心移動幅が増大するが,脚長差5cmに対して2cm程度の増加に抑えられていた.機械的効率性を示す,体重,距離当たりの仕事量は脚長差が大きくなると低下する傾向がみられたがエネルギー交換率に関しては明らかな変化はみられなかった.膝固定時では,裸足または非固定時と比較して,骨盤の後傾が増加し,長脚側への側方傾斜が平均1度減少,短脚側への側方傾斜は逆に1度増加した.上部体幹の側方傾斜は約2度増大,骨盤に対する上部体幹の長側方向への回旋および前後屈角度が増加を示した.筋活動は,長脚側の脊柱起立筋,足背屈筋,短脚側の大殿筋,中殿筋の筋活動の増大がみられた.歩行中の重心移動幅は,裸足時に対して側方が約2cm,上下方向で1cm程度の増大がみられた.10名程度の測定を終えた段階で,4台中1台の床反力計に問題点(オフセットが作動しない)が判明したが,その後12名の計測を行い,各条件における運動学・運動力学的データおよび筋活動を予定通り測定,解析することができた.平成28年度の主な課題は,骨盤の上下移動に変化を与えた時の,1重心移動・エネルギー交換率に及ぼす効果,2下肢の運動学,運動力学的パラメーターへの影響,3下肢筋活動への影響を明らかにし,歩行中の異常な骨盤運動を伴う下肢関節運動の特徴や下肢筋活動にもたらす変化を特定することである.骨盤の上下移動に影響を与える条件として,一側股関節の伸展制限(0,10,20度),股関節内転10度固定,外転10°固定位での歩行を,股装具を用いて設定した.また,歩隔による重心移動への影響をみるために,歩行路に10cm間隔でテープを貼り,030cmの範囲における解析を行った.対象は,20-21歳の女性16名と男性14名である.三次元動作解析装置および4枚の床反力計を備えた歩行路上を各条件で歩行させとともに,筋電計,足圧計を用いて筋活動,足圧分布を測定した.股装具装着での無制限,ー20度伸展制限,10度内転固定,10度外転固定の4条件の比較(女性14例)では,歩行速度がそれぞれ,69.9,68.3,69.1,67.2m/secであった.一歩行周期中の重心移動幅は側方が,2.9,3.2,2.2,5.0 cmで上下は,3.78,3.75,3.80,3.71cmで,側方移動幅が内転固定時に小さく,外転固定時に大きくなるが,上下の移動幅には有意な変化をもたらさなかった.機械的効率性を示す体重1kg ,進行距離1mに対する仕事量は,同様に,0.69,0.63,0.66,0.66, Joule/kg/mで,重心の運動エネルギーと位置エネルギーの交換率は,65.2,66.4,66.2,66.2%と条件間による差はみられなかった.股伸展制限時の骨盤,体幹の矢状面上での運動に注目すると,無制限時と比較して,歩行中の股関節伸展角度の減少を骨盤前傾で代償することで,絶対空間上の胸椎部の屈曲伸展運動の変化を抑制していた.男女30名を対象として,多くの条件下における歩行分析を行った.
KAKENHI-PROJECT-15K01421
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01421
歩行中の骨盤の動きが重心移動および機械的効率性に与える影響
床反力計のアンプ交換などにより,多少の測定の遅延が生じたが,測定自体は予定通り終了した.しかし,多くの条件での3次元の運動学,運動力学データ,筋電図,足圧分布という多量のデータを収集したため,その解析に膨大な時間を要し,現在も解析作業が継続中である.本研究では、骨盤の動きに制限を加えた時の歩行の機械的効率性や下肢・体幹の運動学的指標、下肢の筋活動に与える影響を明らかにすることを目的とした。平成27年度は、脚長差および一側膝関節を伸展位に固定した場合の影響を調べた.脚長差の増加に従い,骨盤と上部体幹のなす側屈角度は,長脚側への側方傾斜が減少,短脚側への側方傾斜が増大し、長脚側の腰部脊柱起立筋と膝伸展筋、短脚側の中殿筋,膝伸展筋,足底屈筋群の活動が増加した。上下方向の重心移動幅は脚長差5cmに対して2cm程度の増加に抑えられており、機械的効率性に有意な変化はみられなかった.膝固定時では,裸足と比較して,骨盤の後傾が増加し、側方、上下方向の重心移動の増加がみられた。また、長脚側の脊柱起立筋,足背屈筋,短脚側の大殿筋,中殿筋の筋活動の増大がみられた.平成28年度は、一側股関節の動きに制限を加えた場合の影響を検証した.股装具装着での無制限,伸展制限,内転固定,外転固定の4条件の比較では、側方移動幅が内転固定時に小さくなり,外転固定時に大きくなるが上下の移動幅には有意な変化はなく、歩行の機械的効率性も条件間による差はみられなかった.股伸展制限時の骨盤,体幹の矢状面上での運動に注目すると,歩行中の股関節伸展角度の減少を骨盤前傾で代償することで,絶対空間上の胸椎部の屈曲伸展運動の変化を抑制していた.平成29年度は、体幹に運動制限を加えた場合の歩行への影響を検討した。脊柱固定により、スライド長が有意に減少するとともに、骨盤の側屈、回旋、骨盤-胸腰部間の運動範囲、胸椎屈伸、側屈、回旋運動範囲、両側股関節内外転運動範囲が減少し、重心の上下移動幅も低下した。力学的因子として両側床反力垂直成分ピーク値の増加や両側股、膝伸展モーメント、両側足、膝関節仕事量の増加がみられたが、歩行の機械的効率性を示す指標においては有意な変化はみられなかった。本研究では、骨盤の動きに制限を加えた時の歩行の機械的効率性や下肢・体幹の運動学的指標、下肢の筋活動に与える影響を明らかにすることを目的とした。健常若年者を対象に、装具などを用いて人工的に脚長差や股関節、膝関節および体幹の運動制限の状態を作り、歩行の運動学的指標や運動力学的指標に関して、制限のない場合と比較した。快適歩行速度においては、あらゆる条件において、下肢関節などに種々の代償運動が働き、歩行中の重心移動の機械的効率性が保たれることが示唆された.今回得られた結果は、加齢や種々の障害により形態異常や関節運動制限をきたした患者の歩行評価を行う上で、対照データとして有用な資料となり得ると考える。基本的には当初の計画通りに実験を進める予定であるが,平成27年度に設定した課題における骨盤の運動範囲が比較的少なく,歩行の機械的効率性においても予想した程変化がみられなかったため,より骨盤運動に変化が生じる課題を付加することも検討している.平成29年度に予定していた股関節に運動制限を加えた条件での研究は28年度に終了したが,骨盤と体幹の間に運動制限を加えての歩行分析は行っていないので,予定通り,体幹装具を作成し実験を進める.平成28年度に予定していた随意的な体幹の側方傾斜と骨盤側方傾斜時の歩行分析に関しては,プレ実験の結果,対象者によるばらつきや再現性に問題があるため,解決策が得られない場合は中止する予定である.本年度は,これまでに得られた研究結果を論文として投稿する予定である.運動障がいの動作分析および理学療法情報収集のための学会への参加を2回分予定していたが,業務多忙のため1回1名の参加に止まった.解析のための人件費に高額を要し,予定した物品が購入できなかったため.研究成果の発表の場に参加する研究者の旅費に使用する予定である.本年度も解析作業の人件費が高額になることが予想されるため,その経費に充当する.
KAKENHI-PROJECT-15K01421
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15K01421
団体訴訟における判決の効力
本研究は、少額拡散利益の救済に対して伝統的な事後的・個別的救済を念頭においた解釈論では不十分であるという意識を前提として、消費者団体訴訟において、団体が受けた判決の効力が消費者や他の団体にどのように影響するかを検討したものである。訴訟担当構成を採用しない場合、団体が受けた判決の効力は第三者である消費者等に及ばないのが原則であるが、消費者団体訴訟においては、敗訴事業者は、後の消費者との訴訟において前訴判決と矛盾する主張を遮断されると考える。本研究は、少額拡散利益の救済に対して伝統的な事後的・個別的救済を念頭においた解釈論では不十分であるという意識を前提として、消費者団体訴訟において、団体が受けた判決の効力が消費者や他の団体にどのように影響するかを検討したものである。訴訟担当構成を採用しない場合、団体が受けた判決の効力は第三者である消費者等に及ばないのが原則であるが、消費者団体訴訟においては、敗訴事業者は、後の消費者との訴訟において前訴判決と矛盾する主張を遮断されると考える。2008年10月より、ドイツ・コンスタンツ大学で、客員研究員として研究を行っている。現在は、団体訴訟制度研究の第一人者であるシュタッドラー教授のアドバイスを受けつつ、適切な文献の収集・精読・分析作業中である。また、関連のテーマを取り扱った学会等(3月18日20日にイギリス・オックスフォードで開催された国際民事訴訟法学会等)への出席等によって、アクチュアルな情報収集にも努めている。当該テーマである団体訴訟における判決の効力を考える前提として、母法国であるドイツにおける団体訴訟制度の全体像を把握したうえで、その問題点を明らかにしておくことも有用であると思われる。そこで、今年度は、まず、ドイツにおける団体訴訟制度の歴史、団体訴訟の種類と利用状況、他の集団訴訟制度との相違および現在指摘されている論点などについて、調査することとした。わが国では、現在、業者に対する違法行為の差し止めのみならず、それを超えて団体による業者への損害賠償請求の可否等が検討されているが、ドイツの類似の制度である利益吐き出しの制度は実際にはほとんど利用されていないこと、また、司法による私的制裁に期待するところが大きいアメリカと、行政主導での政策実行が中心となるドイツとでは、司法制度の有する役割が異なるため、そもそもクラスアクションのようなオプト・アウト型の私的実行を認めるべきではないという議論がなされていることが注目された。さらに、消費者の被害額に着目し、個人での訴訟追行のインセンティブがある程度期待できる多額のものと、少額被害のため個人での訴訟追行が期待できないものとを区別し、異なった訴訟救済システムを構築すべきであるという議論もなされている。現在は、中間的に、以上についての研究成果を公刊すべく準備中である。当該年度は、前年度に引き続き(繰越)、前半では、資料収集およびその読解・整理・分析を行い、その過程において翻訳論文を2つ公表した。後半では、以上の資料分析の結果を統括し、論文執筆に着手した。本研究課題は、先に申請者が執筆した論文において残された課題であった団体訴訟における判決の遮断効の主観的・客観的範囲についてのより立ち入った検討を目的とするものであるが、その前提として、集団訴訟における実体的利益分析が必要であり、射程を明確にすることの必要性が認識された。すなわち、集団訴訟と一口にいっても、被害類型は多様であり、(1)複数名が被告の一個の不法行為により損害を受けているが、個人の損害額が大きく、単独でも訴訟提起するモチベーションがある場合(大規模不法行為等)、(2)被告の継続的な不法行為により損害が生じているが、個人の損害額は少額であり、単独での訴訟提起が期待できない場合、(3)被告による類似した継続的な不法行為により損害を被った者が複数存在する場合等に分類されうる。消費者団体訴訟がカバーするのは、主として(2)(3)類型であり((1)類型では提起された複数訴訟を訴訟法上どう取り扱うべきかという問題が生じるにとどまる)、一般に従来訴訟に至らなかったものである。認定団体が勝訴判決を得た場合、被告が違法行為を行っていたという判決理由中の判断に拘束力が生じることを前提としてこれを第三者である消費者が援用できるか問題になるが、従来の判決効理論では、当該訴訟当事者でない者が判決効を援用することは困難である。しかし、団体訴訟の構造、判決効の片面的拡張理論、ドイツ法の「援用」制度の実質的根拠および判決の遮断効論の展開を検討することにより、これを認めうると考える。以上の成果については、近く公表予定である。今後、国際不法行為ないし国際集団訴訟を念頭においた議論が必要であると思われる。
KAKENHI-PROJECT-20730062
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20730062
タイヒミュラー空間の解析及び幾何
平成13-14年度に行った研究は,次の三つに大きく分けることが出来る:1.リーマン面上の単純分割閉曲線の性質を解析的に特徴付ける.2.タイヒミュラー空間を大域実解析的に角度変数で表現する.3.角度変数で,タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を表現する.私は,単位円板に作用する一次変換の幾何をその変換の平方根やトレースで特徴付けた.この考察から,リーマン面S上の単純閉曲線Lが分割か非分割かの判定を,Sを表現するフックス群Gの特殊線形群SL(2,C)への持ち上げを用いて行った.このように,位相的性質を解析的性質で特徴付けすることが出来る.私は標識付きリーマン面上の測地線の交角からなる角度変数を新たに導入して,タイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現することを考察した.そして,代表的といえる穴あきトーラスや種数2,3の標識付きリーマン面から得られる(1,1),(2,0),(3,0)型タイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数は標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.双曲幾何を用いることで,これらの軸の配置は非常に高い「対象性」を持つことが分かった.そして,このような一次変換の幾何を調べることから,角度変数の関係式や情報が多く得られた.次に,タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することを目指し,次の考察を特に行った:I.タイヒミュラーモジュラー群を,軸から決定される特別な双曲多角形を別の双曲多角形に写す作用として調べる.II.タイヒミュラーモジュラー群を表示する角度変数と長さ変数の関係を調べる.例えば,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の場合には.次を示した:(1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群の標準生成元系を(A, B)とする.A, B, BAの軸で決定される双曲三角形Tを別の軸で決定される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来る.そして,このTの内角に対応する三つの角度変数のみで,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元を表示出来る.さらに,このTの三辺の長さの二倍が長さ変数に対応し,双曲三角法から,長さ変数による(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の表示も得られる.平成13-14年度に行った研究は,次の三つに大きく分けることが出来る:1.リーマン面上の単純分割閉曲線の性質を解析的に特徴付ける.2.タイヒミュラー空間を大域実解析的に角度変数で表現する.3.角度変数で,タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を表現する.私は,単位円板に作用する一次変換の幾何をその変換の平方根やトレースで特徴付けた.この考察から,リーマン面S上の単純閉曲線Lが分割か非分割かの判定を,Sを表現するフックス群Gの特殊線形群SL(2,C)への持ち上げを用いて行った.このように,位相的性質を解析的性質で特徴付けすることが出来る.私は標識付きリーマン面上の測地線の交角からなる角度変数を新たに導入して,タイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現することを考察した.そして,代表的といえる穴あきトーラスや種数2,3の標識付きリーマン面から得られる(1,1),(2,0),(3,0)型タイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数は標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.双曲幾何を用いることで,これらの軸の配置は非常に高い「対象性」を持つことが分かった.そして,このような一次変換の幾何を調べることから,角度変数の関係式や情報が多く得られた.次に,タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することを目指し,次の考察を特に行った:I.タイヒミュラーモジュラー群を,軸から決定される特別な双曲多角形を別の双曲多角形に写す作用として調べる.II.タイヒミュラーモジュラー群を表示する角度変数と長さ変数の関係を調べる.例えば,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の場合には.次を示した:(1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群の標準生成元系を(A, B)とする.A, B, BAの軸で決定される双曲三角形Tを別の軸で決定される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来る.そして,このTの内角に対応する三つの角度変数のみで,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元を表示出来る.さらに,このTの三辺の長さの二倍が長さ変数に対応し,双曲三角法から,長さ変数による(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の表示も得られる.平成12-13年度の研究内容は,(1)リーマン面上の単純分割閉曲線の性質を解析的に特徴付ける,(2)タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を角度変数で表現する,に大別出来る.
KAKENHI-PROJECT-13640164
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タイヒミュラー空間の解析及び幾何
単純分割閉曲線は,一つの曲面を二つに分割あるいは二つの曲面の連結和をとる際に考えられる等,曲面上で注目される曲線である.(1)に関しては,リーマン面S上の単純閉曲線Lが分割していることの特徴付けを,Sを表現するフックス群Gの特殊線形群SL(2,C)への持ち上げを用いて行った.例えば,Sが種数p(pは1より大きいとする)の閉リーマン面の場合には,次の主張になる:Gの持ち上げの個数は2の2p乗となる.Lに対応するGの一つの元をgとする.このとき,Lが分割しているための必要十分条件は,Gの任意の持ち上げにたいして,gを持ち上げた行列のトレースがいつでも負になることである.このように,位相的性質を解析的性質で特徴付けすることが出来る.以前,私はタイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現するために,新たな角度変数を導入した.そして,代表的なタイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数は,標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.軸の配置は非常に高い「規則性」を持つことが分かる.(2)に関しては,軸で表される特別な双曲多角形に注目し,角度変数の関係式を導き,タイヒミュラーモジュラー群の作用の表示を考察した.(1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群にたいして,次を示した:この群の標準生成元系を(A,B)とする.A,B,BAの軸で表される双曲三角形を別の軸で表される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来ることを示した.これから,双曲三角法を用いて,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することが出来た.研究内容は,(1)タイヒミュラー空間を大域実解析的に幾何的な量で表現すること,(2)この幾何的な量で,タイヒミュラーモジュラー群(写像類群)の作用を表現すること,に大別出来る.私は標識付きリーマン面上の測地線の交角からなる角度変数を新たに導入して,タイヒミュラー空間を大域実解析的に簡明に表現することを考察した.そして,代表的といえる(1,1),(2,0),(3,0)型タイヒミュラー空間の場合に,角度変数のみの変数空間は解析しやすい集合であることを示していた.角度変数の性質は,一次変換の幾何から捉えることが出来る.実際,角度変数は標識付きフックス群の生成元やこれらの積の軸の交角に対応している.軸の配置の規則性を調べることから,角度変数の関係式等が得られる.タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を,軸から決定される特別な双曲多角形を別の双曲多角形に写す作用として考察することを試みている.(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群にたいしては,次を示した:(1,1)型つまり穴あきトーラスを表現する標識付きフックス群の標準生成元系を(A, B)とする.A, B, BAの軸で表される双曲三角形を別の軸で表される双曲三角形に写す作用で,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群の元の作用を理解出来ることを示した.これから,双曲三角法を用いて,(1,1)型タイヒミュラーモジュラー群を角度変数のみで表示することが出来た.
KAKENHI-PROJECT-13640164
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樟脳および灯油からのカーボンナノチューブの効率的生成
木から作製された樟脳をカーボンナノチューブ作製の新規の先駆体として使用した。フェロシンを触媒として800-1050°Cの温度範囲で樟脳から熱合成することによって、単層、多層そして配列したカーボンナノチューブを成長させることができた。単層チューブは、収量は多くはないが直径が比較的揃ったもの(1.2-1.3nm)が得られた。多層チューブは、一様な直径のもの(20-40nm)を80-90%の高い収率で得ることができた。一方、石英板を基板としてその広い面積にわたって、板に垂直な方向に配列したナノチューブを200μmの長さまで成長させることができた。それらの構造のキャラクタリゼーションは、電子顕微鏡(SEM、TEM、HRTEM)やEDXやラマン散乱によって行われた。作製されたままのナノチューブの結晶性はかなりよく、一般にメタンやベンゼンなどのような炭化水素を原料としてCVD法で作製されたナノチューブのそれより良い性質を持っていた。これは、樟脳の分子の中にもともと酸素原子が含まれており、それによる同時酸化が可能となり、あとから堆積してくる不純物を除去する役割を果たしていることによるものと思われる。また、樟脳に対する触媒のフェロシンの量がわずか1%と少ない(通常の炭化水素原料の場合の約1/10)ので、できたナノチューブが触媒粒子で汚染されている割合もそれだけ少なくなっている。したがって、触媒を分離して精製するといった操作は必要とされない。この新規性・有用性は、樟脳の独特の構造と性賛に起因するものであり、それからのナノチューブ成長に関する成長機構に対する提案も行なった。木から作製された樟脳をカーボンナノチューブ作製の新規の先駆体として使用した。フェロシンを触媒として800-1050°Cの温度範囲で樟脳から熱合成することによって、単層、多層そして配列したカーボンナノチューブを成長させることができた。単層チューブは、収量は多くはないが直径が比較的揃ったもの(1.2-1.3nm)が得られた。多層チューブは、一様な直径のもの(20-40nm)を80-90%の高い収率で得ることができた。一方、石英板を基板としてその広い面積にわたって、板に垂直な方向に配列したナノチューブを200μmの長さまで成長させることができた。それらの構造のキャラクタリゼーションは、電子顕微鏡(SEM、TEM、HRTEM)やEDXやラマン散乱によって行われた。作製されたままのナノチューブの結晶性はかなりよく、一般にメタンやベンゼンなどのような炭化水素を原料としてCVD法で作製されたナノチューブのそれより良い性質を持っていた。これは、樟脳の分子の中にもともと酸素原子が含まれており、それによる同時酸化が可能となり、あとから堆積してくる不純物を除去する役割を果たしていることによるものと思われる。また、樟脳に対する触媒のフェロシンの量がわずか1%と少ない(通常の炭化水素原料の場合の約1/10)ので、できたナノチューブが触媒粒子で汚染されている割合もそれだけ少なくなっている。したがって、触媒を分離して精製するといった操作は必要とされない。この新規性・有用性は、樟脳の独特の構造と性賛に起因するものであり、それからのナノチューブ成長に関する成長機構に対する提案も行なった。
KAKENHI-PROJECT-00F00310
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-00F00310
有限型擬凸領域における複素解析の研究
多変数複素解析学において非常に重要な正則関数の境界挙動に関して、詳細な研究を行った。特に、私が興味を持ったのは、有限型という重要なクラスの領域に関するもので、このクラスの研究には、特異点論などで重要なニュートン多面体の幾何学的な性質を研究することに帰着される場合が多く、非常に面白い現象を見た。また、これらの研究と深く関連した、調和解析学で重要な振動積分と局所ゼータ関数に関する漸近解析も行った。多変数複素解析学において非常に重要な正則関数の境界挙動に関して、詳細な研究を行った。特に、私が興味を持ったのは、有限型という重要なクラスの領域に関するもので、このクラスの研究には、特異点論などで重要なニュートン多面体の幾何学的な性質を研究することに帰着される場合が多く、非常に面白い現象を見た。また、これらの研究と深く関連した、調和解析学で重要な振動積分と局所ゼータ関数に関する漸近解析も行った。本年度の研究の成果として重要なものは、以下のふたつが挙げられる。ひとつは、正則ベクトル東上のベルグマン関数に関してのものである。現在までの研究としては,正値の場合に関するものが中心であり、非常に詳しく調べられているが、退化した場合については詳しいものは皆無であったが、私は趙康治氏と野瀬敏洋氏と共同で、特別な場合について、漸近展開という非常に詳しい形でベルグマン関数の挙動を表すことに成功した。もうひとつは、実解析の問題である振動積分の挙動に関するものである。バルチェンコの有名な漸近展開の結果は、相関数のニュートン図形を用いてその挙動を表すものであるが、私は趙康治氏と野瀬敏洋氏と共同で、振幅関数が消えている場合に、そのニュートン図形もさらに考慮すると挙動がより正確に表示することができるというような結果を得た。これは、有限型擬凸領域上の複素解析学への応用が期待される成果である。ジェネリックな場合の解析を含む退化した場合の解析を行う際、ニュートン多面体の幾何学的な情報が非常に有用となってきていることは、国内外の研究をみて明らかであるが、この研究においても以下のような多くの成果を得た。一つは、複素解析、複素幾何において非常に重要なベルグマン核の挙動について、漸近展開の意味で、ニュートン多面体の情報を使って計算を行い、精密な成果を得た。その際、今までに得られてきた多くの複素解析学における研究の成果を用いた。もう一つは、調和解析学で重要な振動積分の挙動について、同様にニュートン多面体の情報を用いて解析を行った。これは、1970年代に得られたヴァルチェンコの結果の一般化、精密化になっているものである。具体的には、相関数のニュートン多面体のみならず、振幅関数のニュートン多面体を用いることで、漸近挙動が非常に正確に記述されることが解った。さらに、過去の研究では相関数は実解析的であることが必要であったが、その条件は自然に一般化され、無限回微分可能な関数のなすあるクラスにまで拡張されることが示された。その際に、特異点解消を構成する必要性が生ずるが、このクラスのトーリック特異点解消をしたという点で、非常に興味深い結果と言えよう。同様な、結果は局所ゼータ関数の極の分布に関しても得られている。この成果も、過去に得られているものと比較して非常に精密なものになっている。今年度は、引き続き、多変数複素解析学において非常に重要な積分核であるベルグマン核とセゲー核の境界挙動を有限型擬凸領域に関して、詳細に調べることに取り組んだ。そのために、実解析や調和解析で重要な振動積分や局所ゼータ関数に関する漸近解析を、特異点論的なアプローチにより行った。その際、重要となるのは、ニュートン多面体という概念であり、そのトポロジカルな情報が、漸近挙動に非常に大きく関わっていることが、理解された。さらに、これに関連して、特異点解消という代数幾何学で重要な問題に取り組む必要にせまられ、実際にそれを、いくつかの場合に関して行った。特に、興味深いのは、ある種の無限界微分可能な関数のクラスについて、ある条件の下で、定量的な特異点解消を行った点である。このクラスは、Denjoy-Carlemanクラスという実解析的なクラスに近いものの、真にテーラー展開が収束しない関数を含んでおり、このクラスに相関数が含まれている時に、振動積分の漸近展開が得られることを示した。この結果は、上に述べた複素解析の問題にも応用されるものと期待される.本年度の研究の成果として重要なものは、以下のふたつが挙げられる。ひとつは、様々な数学の分野において重要となる振動積分の無限遠での挙動に関するものである.この研究は現在では主に、調和解析、実解析の分野で盛んに行われているものである.特に、近年重要となっているのが、特異点解消との関連で、これは特異点論、代数幾何などの分野にまたがる面白いテーマであることを示してもいる.さて、申請者の研究の成果を述べる。現在までに主になされてきたものは、相関数が実解析的である場合であり、これは特異点解消の研究との関連である意味で必要とされるものであり、無限界微分可能関数(以下なめらかな関数とよぶ)に結果を拡張することは、困難と思われてきた.そこで、私は、なめらかな関数のクラスにある特別なクラスを定義し、このクラスに関する関数に関して、トーリック特異点解消に関する結果を得た。その成果から、相関数がそのクラスに属している時に、非常に詳しい振動積分の挙動に関する成果を得ることができた。
KAKENHI-PROJECT-22540199
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有限型擬凸領域における複素解析の研究
この解析で重要なのは、ニュートン多面体と呼ばれる、なめらかな関数に付随して得られる幾何学的な対象である。このニュートン多面体の幾何学的な情報から、定量的な意味で特異点解消を行うというプロセスを経て、なめらかな関数の場合にも振動積分に関して、非常に強い結果を得ることができた。もう一つの成果は、有限型擬凸領域に関する不変量の決定に関するものである.具体的な領域を与えたときに、型(タイプ)よ呼ばれる不変量を決定するという問題は、非常に難しく、現在までのところ、ある特別なクラスの領域の場合しかわかっていなかった。しかし、領域の定義関数のニュートン多面体を用いることで、具体的な型を求めるアルゴリズムが得られることがわかった。これは、振動積分の研究に類似するものである。今年度は、多変数複素解析学で重要な有限型領域上の正則関数の境界挙動について、様々な角度から研究を行った。具体的な対象としては、バンプ関数、ピーク関数、サポート関数などの構成の研究に関して、いくつかの考察を行った。特に、サポート関数の構成に関しては、コーン・ニレンバーグの有名な例について、さらに一般的な状況で、その存在に関する様子を詳しく調べ、必要かつ十分な条件について成果を得た。その他の関数については、ニュートン多面体という特異点論的な概念が重要となるが、その準備段階における研究を行っているところである。また、ベルグマン核とセゲー核についても、同様な姿勢で研究を行った。また、実解析や調和解析で重要な研究対象である振動積分について、非常に深い研究を行い、多くの成果を得た。特に、相関数が単に滑らかな場合についての研究は、現在までのところあまり行われていないが、かなり詳しい様子を知ることができた。特に、実解析的という仮定を付けない場合にしか、現れないような様々な現象についての考察が、非常に興味深い。その研究と関連して、局所ゼータ関数の解析接続に関する研究も行った。この場合も実解析的な場合には、非常に詳しい成果が得られているが、単に滑らかという条件では、まだ十分に研究がすすんでおらず、面白い現象もたくさん見られる。このことについて、詳しい考察を行った。26年度が最終年度であるため、記入しない。多変数複素解析、調和解析26年度が最終年度であるため、記入しない。今年度は、ニュートン多面体を用いた解析への理解が非常に深まり、多くの成果を得ることができた。しかしながら、時間的な制約があり、具体的な応用は不十分であった。実解析的な解析を中心に行うことにより、目標の研究に関する理解は深まってきているが,複素解析的な問題に取り組む時間的な余裕がなかった。当初、有限型擬凸領域上の正則関数の挙動に関する研究として、特異点論的なアプローチが有用であることはわかっていたのであるが、これらが振動積分の研究に関して新しい結果をえるまで、発展できるとは考えていなかった。振動積分に関して研究をすすめるうちに、調和解析学における非常に盛んに行われている研究を凌駕する結果をえることができたことに、非常に満足している。さらに、もとの複素解析学の研究に戻って、成果を出す段階にきている。振動積分の研究とベルグマン核の境界挙動の研究は、密接に関連しており、これらの研究を同時に進行させている段階であり、研究の進展には、満足している。
KAKENHI-PROJECT-22540199
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検察審査員の判断を規定する要因および判断に至る心的プロセスについての実証的研究
25年度は、下記の研究1と研究2を実施し、審査申立人の供述等が検察審査員の判断に及ぼす影響について検討した。研究1:殺人事件の事案で、申立人(被害者遺族)の目撃供述が、検察審査員の判断に及ぼす影響について検討した。協力者の大学生73人は、無作為に2つの条件(目撃供述有条件、目撃供述無条件)のうちのいずれかに割当てられ、審理の前後で質問紙に回答した。その結果、申立人の目撃供述は判断に影響を及ぼさず、審理前に「有罪になる確信」が弱いほど、検察の判断(不起訴相当)を支持する傾向がみられた。研究2予備実験:申立人の意見陳述が判断に及ぼす影響について検討するために、複数の事案を取り上げ、大学生192人を対象に、質問紙調査を行った。その結果、いずれの事案においても、申立人の意見陳述が判断に影響を及ぼさなかった。本実験:予備実験の結果をふまえ、本実験では、被疑者が申立人の求める示談に応じていることが、判断に及ぼす影響を検討した。取り上げた事案は、業務上過失致死罪の適用が申し立てられた事案1(柔道事故死)と事案2(交通事故死)であった。協力者の大学生38人は、無作為に2条件(事案1のみ示談が成立している条件、事案2のみ示談が成立している条件)のいずれかに割当てられ、同じ条件のグループ(8人11人)別に実験に参加した。各グループには、法的助言を行う審査補助員役が審理に加わった。その結果、事案1については、示談が成立している場合には、審理の前後ともに、検察の判断(不起訴相当)を支持する割合が有意に多く、示談が成立していない場合には、検察の判断を支持しない割合が有意に多かった。事案2については、審理前の判断に、示談成立の有無によるちがいはみられなかったが、示談が成立していない場合、審理前よりも審理後に、検察の判断(不起訴相当)を支持する割合が有意に多かった。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度は、下記の研究1と研究2を実施し、審査申立人の供述等が検察審査員の判断に及ぼす影響について検討した。研究1:殺人事件の事案で、申立人(被害者遺族)の目撃供述が、検察審査員の判断に及ぼす影響について検討した。協力者の大学生73人は、無作為に2つの条件(目撃供述有条件、目撃供述無条件)のうちのいずれかに割当てられ、審理の前後で質問紙に回答した。その結果、申立人の目撃供述は判断に影響を及ぼさず、審理前に「有罪になる確信」が弱いほど、検察の判断(不起訴相当)を支持する傾向がみられた。研究2予備実験:申立人の意見陳述が判断に及ぼす影響について検討するために、複数の事案を取り上げ、大学生192人を対象に、質問紙調査を行った。その結果、いずれの事案においても、申立人の意見陳述が判断に影響を及ぼさなかった。本実験:予備実験の結果をふまえ、本実験では、被疑者が申立人の求める示談に応じていることが、判断に及ぼす影響を検討した。取り上げた事案は、業務上過失致死罪の適用が申し立てられた事案1(柔道事故死)と事案2(交通事故死)であった。協力者の大学生38人は、無作為に2条件(事案1のみ示談が成立している条件、事案2のみ示談が成立している条件)のいずれかに割当てられ、同じ条件のグループ(8人11人)別に実験に参加した。各グループには、法的助言を行う審査補助員役が審理に加わった。その結果、事案1については、示談が成立している場合には、審理の前後ともに、検察の判断(不起訴相当)を支持する割合が有意に多く、示談が成立していない場合には、検察の判断を支持しない割合が有意に多かった。事案2については、審理前の判断に、示談成立の有無によるちがいはみられなかったが、示談が成立していない場合、審理前よりも審理後に、検察の判断(不起訴相当)を支持する割合が有意に多かった。24年度は、検察審査員の判断に影響を及ぼす要因について明らかにする目的で、各地の検察審査協会の協力のもと、検察審査員経験者31人を対象にした質問紙調査(研究1)を実施した。また、市民(大学生)93人を対象にした模擬検察審査会実験(研究2)を実施した。研究1では、(1)検察審査会についての知識、(2)審査内容、(3)検察審査会制度の意義および改善点、について回答を求めた。その結果、71%が審査員候補に選ばれるまで検察審査会制度について「知らなかった」と回答し、そのうち、「事務局の説明を受けた後に理解できた」と回答した者は60%であった。審査内容は、交通事故、横領、遺産相続など多岐にわたり、45%が審査の際に「法律の知識」が必要であったと回答した。また、「被害の大きさ」、「審査申立て人の処罰感情」、「社会に与える影響」、「被疑者が裁判で有罪となる可能性」のいずれも、「判断に影響した」と回答した者、「影響しなかった」と回答した者の割合にちがいはみられなかった。さらに、42%が検察審査会制度の意義について「市民の常識的判断の司法への反映」を挙げ、検察審査会制度の趣旨である司法への「民意の反映」に重きが置かれる傾向が示された。改善すべき点としては、「目を通す文書の量が多いこと」、「任期期間が短いこと」等が挙げられた。
KAKENHI-PUBLICLY-24101506
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-24101506
検察審査員の判断を規定する要因および判断に至る心的プロセスについての実証的研究
研究2では、過去に検察審査会で審理された複数の事案の概要を提示し、検察審査員としての判断(起訴相当、不起訴不当、不起訴相当)を求めた。その結果、検察審査員としての判断には、「申立人の処罰感情」が強く影響することが示された。また、判断に影響を及ぼす要因として、「処罰感情や世論の考慮」に関連する因子、「法律の考慮」に関連する因子の存在が示され、どちらの影響を強く受けるかによって、異なる判断が導きだされる傾向が示された。24年度の研究では、検察審査員経験者31人に対する調査を実施し(研究1)、検察審査員の判断を規定する要因を抽出した。また、検察審査会事務局長2人、検察審査員経験者4人を対象にした対面調査を実施し、模擬検察審査会実験の実施について助言を得ることができた。さらに、市民(大学生)93人を対象にした模擬検察審査会実験を実施し(研究2)、複数の事案に対する判断から、検察審査員の判断に影響する2つの要因ー「処罰感情や世論の考慮」に関連する因子と、「法律の考慮」に関連する因子の存在を示すことができた。以上、検察審査員の判断を規定する要因について明らかにするという24年度の研究目的は、概ね達成できたと考える。25年度は、模擬検察審査会実験を実施し、評議過程における検察審査員の判断に至る心的プロセスを質的分析と量的分析を行うことで明らかにする。24年度の検察審査員経験者に対する調査から、70%以上は検察審査会に対する知識がなかったこと、45%が審査にあたって法律の知識が必要だったと回答し、その中には説明を受けても十分理解できなかったと回答する者がいたことから、25年度に実施する模擬検察審査会実験では、法の実務家の協力を得て、法律の説明を十分に行うことに留意する。また、検察審査員としての経験を積むことが、判断にどのような影響を及ぼすかについても検討を行う。25年度が最終年度であるため、記入しない。25年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PUBLICLY-24101506
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顆粒球造血の細胞内情報伝達機構の解明
好中球の血液幹細胞からの増殖、分化を司るG-CSFの細胞内シグナル伝達機構に閔しては、Tyk2の欠損は血球数に影響を与えておらず、tyk2欠損マウスにG-CSFを投与したところ、野生型マウスと同様に好中球数の増加を認めており、好中球造血は複数のJakキナーゼが互いに補完して行っていることが判明した。また、in vivoでのTPOを投与後の血小板数、in vitroでの血小板凝集能は、野生型マウスとtyk2欠損マウス間に差は認めず、tyk2は血小板のシグナル伝達には関与していなかった。tyk2はIL-12刺激時にも活性化されるが、Tyk2欠損マウスではIL-12刺激によるIFNγ産生、Th1細胞への分化が仰制されていた。IL-12とならび生体内での主要なIFNγ誘導サイトカインてあるIL-8は、Jak-Statシグナル伝達系ではなく、MAPキナーゼを介してそのシグナルを伝達する。Tyk2欠損T細胞は、IL-18刺激によるIFNγ産生が野生型細胞と較べ低下していた。IL-12と18にはIFNγ産生に関し相乗作用があり、これもtyk2の欠損により阻害されていた。野生型マウス由来T細胞ては、IL-12刺激によりIL-18レセプターの発現が亢進する。Tyk2欠損細胞ではこの発現レベルの上昇が見られないが、弱いながらもIL-12と18の相乗作用が見られ、これはレセプターの発現レベル以外に、Jak-Statシグナル伝達系とMAPキナーゼのシグナル伝達系の間にクロストークが存在することを示している。好中球の血液幹細胞からの増殖、分化を司るG-CSFの細胞内シグナル伝達機構に閔しては、Tyk2の欠損は血球数に影響を与えておらず、tyk2欠損マウスにG-CSFを投与したところ、野生型マウスと同様に好中球数の増加を認めており、好中球造血は複数のJakキナーゼが互いに補完して行っていることが判明した。また、in vivoでのTPOを投与後の血小板数、in vitroでの血小板凝集能は、野生型マウスとtyk2欠損マウス間に差は認めず、tyk2は血小板のシグナル伝達には関与していなかった。tyk2はIL-12刺激時にも活性化されるが、Tyk2欠損マウスではIL-12刺激によるIFNγ産生、Th1細胞への分化が仰制されていた。IL-12とならび生体内での主要なIFNγ誘導サイトカインてあるIL-8は、Jak-Statシグナル伝達系ではなく、MAPキナーゼを介してそのシグナルを伝達する。Tyk2欠損T細胞は、IL-18刺激によるIFNγ産生が野生型細胞と較べ低下していた。IL-12と18にはIFNγ産生に関し相乗作用があり、これもtyk2の欠損により阻害されていた。野生型マウス由来T細胞ては、IL-12刺激によりIL-18レセプターの発現が亢進する。Tyk2欠損細胞ではこの発現レベルの上昇が見られないが、弱いながらもIL-12と18の相乗作用が見られ、これはレセプターの発現レベル以外に、Jak-Statシグナル伝達系とMAPキナーゼのシグナル伝達系の間にクロストークが存在することを示している。G-CSFの増殖シグナルはJakキナーゼにより伝達される。G-CSFのレセプターへの結合後、Jak1,Jak2,Tyk2が活性化される。報告されたJak1,Jak2欠損マウスの表現型によるとJak1,Jak2の欠損は顆粒球の増殖に影響を与えていない。この事よりG-CSFによる好中球の増殖には、G-CSFにより活性化される残りのJakキナーゼであるTyk2が必須であるか、または1種類のJakキナーゼの欠損を他のJakキナーゼが補完している可能性が想定され、この点を生体内で明確にするため、Tyk2欠損マウスを作成をおこなった。開始コドンを含むTyk2DNAの第1Exsonをneomycin registance geneで置換し、targeting constractを作製しES細胞に遺伝子導入した。相同組み換えが生じたES細胞をmouse blast cystに導入し、chimera miceを得た後、交配後、2個の独立したクローン由来のTyk2欠損マウスが得られた。Tyk2の欠損は生体の発育、生存に必須ではなく、現在その表現系を解析中である。また、G-CSFの文化シグナルは、そのレセプターのC末50塩基を介して伝達される。これに関与するシグナル伝達物質のクローニングを行っている。IL-3依存性細胞株に野生型G-CSFレセプターとC末をわずかに欠失したレセプターを導入した細胞をG-CSFで刺激後、両者より得られたcDNAをsubtractionし、複数個の遺伝子をクローニングした。現在これらの遺伝子の発現をNorthern blottingで検討中である。顆粒球造血を司るG-CSFの増殖シグナルはJakキナーゼにより伝達される。G-CSFのレセプターへの結合後、Jak1,Jak2,Tyk2が活性化されるが、Jak1,Jak2の欠損は顆粒球の増殖に影響を与えていない。
KAKENHI-PROJECT-11307015
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顆粒球造血の細胞内情報伝達機構の解明
よってG-CSFによる好中球の増殖には、Tyk2が必須であるか、または1種類のJakキナーゼの欠損を他のJakキナーゼが補完している可能性が想定され、この点を生体内で明確にするためTyk2欠損マウスを作成した。Tyk2の欠損は血球数に影響を与えず、In vitroコロニー形成法では、G-CSF,TPOがTyk2を活性化するのにもかかわらず、CFU-G,CFU-GM,CFU-Megコロニーの形成に差を認めなかった。また、マウスにG-CSFを投与したところ、野生型マウスと同様に好中球数の増加を認め、Tyk2の欠損は好中球造血に影響を与えなかった。つまりJak2単独により制御される赤血球や血小板造血と異なり、好中球造血は複数のJakキナーぜが補完して行っていることが判明した。また、Tyk2は遺伝子クローニングに際しIFNαのシグナルに必須のシグナル伝達分子として獲得されたが、Tyk2欠損マウスではIFNαによるNOの産生は障害されていたが、抗ウイルス作用やHLA classI分子の発現は保持されていた。しかし、Tyk2欠損マウスではIL-12刺激によるStat4のリン酸化、IFN γ産生、Th1細胞への分化が抑制されており、Tyk2はIL-12シグナル伝達に必須であり、免疫応答を司る重要なキナーぜであることを明らかにした。好中球の血液幹細胞からの増殖、分化を司るG-CSFの細胞内シグナル伝達機構に関しては、Tyk2の欠損は血球数に影響を与えておらず、tyk2欠損マウスにG-CSFを投与したところ、野生型マウスと同様に好中球数の増加を認めており、好中球造血は複数のJakキナーぜが互いに補完して行っていることが判明した。また、in vivoでのTPOを投与後の血小板数、in vitroでの血小板凝集能は、野生型マウスとtyk2欠損マウス間に差は認めず、tyk2は血小板のシグナル伝達には関与していなかった。tyk2は1L-12刺激時にも活性化されるが、Tyk2欠損マウスではIL-12刺激によるIFNγ産生、Th1細胞への分化が抑制されていた。IL-12とならび生体内での主要なIFNγ誘導サイトカインである1IL-18はJak-Statシグナル伝達系ではなく、MAPキナーゼを介してそのシグナルを伝達する。Tyk2欠損T細胞は、IL-18刺激によるIFNγ産生が野生型細胞と較べ低下していた。1L-12と18にはIFNγ産生に関し相乗作用があり、これもtyk2の欠損により阻害されていた。野生型マウス由来T細胞では、IL-12刺激によりIL-18レセプターの発現が亢進する。Tyk2欠損細胞ではこの発現レベルの上昇が見られないが、弱いながらIL-12と18の相乗作用が見られ、これはレセプターの発現レベル以外に、Jak-Statシグナル伝達系とMAPキナーゼのシグナル伝達系の間にクロストークが存在することを示している。
KAKENHI-PROJECT-11307015
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腎細胞癌増殖における塩基性線維芽細胞増殖因子の役割
腎細胞癌はX線画像上多くがhypervascularな形態を示す。我々は腎細胞癌における血管新生及び腫瘍の増殖に塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)の関与があるかどうか検討した。腎癌細胞のCell line(ACHN,VMRC-RCW,NT)を使った実験では、b-FGFが有意にDNA合成を促進することが判明すた。さらに実際に腎細胞癌患者より摘出した腎臓の正常部及び癌部のそれぞれについて遺伝子レベルで検討した。その結果67%に癌部が正常部と比し24倍のb-FGFの発現をみとめた。また免疫組織染色上、核ならびに細胞辺縁部に染色陽性をみとめた。一方腎癌細胞におけるb-FGFの働きを解析するうえで正常腎あるいは、腎の非腫瘍性の増殖性変化である腎再生現象におけるb-FGFの役割を検討することは重要である。ddyマウスを用いた一側腎摘後の代償性腎成長においてperitubular endothelial cellの増殖は、腎摘後6時間から48時間をピークにおこってくるが、この増殖は、抗b-FGF抗体の経静脈的投与によりブロックされた。このことからb-FGFは代償性腎成長でみられるperitubular endothelial cellの増殖を制御する重要な増殖因子であると考えられる。さらにHgCl_2投与によるラット急性腎不全モデルにおいて、障害後48時間から72時間を中心にみられる腎間質細胞の増殖経過に対し、障害腎組織中でのb-FGF mRNAは24時間から48時間後にその発現が増加していることから、急性腎不全においてもb-FGFが主として腎間質細胞の増殖に作用することが推測される。以上よりb-FGFは腎細胞癌や腎再生現象においてその細胞増殖制御を担う増殖因子の1つであるといえる。腎細胞癌はX線画像上多くがhypervascularな形態を示す。我々は腎細胞癌における血管新生及び腫瘍の増殖に塩基性線維芽細胞成長因子(b-FGF)の関与があるかどうか検討した。腎癌細胞のCell line(ACHN,VMRC-RCW,NT)を使った実験では、b-FGFが有意にDNA合成を促進することが判明すた。さらに実際に腎細胞癌患者より摘出した腎臓の正常部及び癌部のそれぞれについて遺伝子レベルで検討した。その結果67%に癌部が正常部と比し24倍のb-FGFの発現をみとめた。また免疫組織染色上、核ならびに細胞辺縁部に染色陽性をみとめた。一方腎癌細胞におけるb-FGFの働きを解析するうえで正常腎あるいは、腎の非腫瘍性の増殖性変化である腎再生現象におけるb-FGFの役割を検討することは重要である。ddyマウスを用いた一側腎摘後の代償性腎成長においてperitubular endothelial cellの増殖は、腎摘後6時間から48時間をピークにおこってくるが、この増殖は、抗b-FGF抗体の経静脈的投与によりブロックされた。このことからb-FGFは代償性腎成長でみられるperitubular endothelial cellの増殖を制御する重要な増殖因子であると考えられる。さらにHgCl_2投与によるラット急性腎不全モデルにおいて、障害後48時間から72時間を中心にみられる腎間質細胞の増殖経過に対し、障害腎組織中でのb-FGF mRNAは24時間から48時間後にその発現が増加していることから、急性腎不全においてもb-FGFが主として腎間質細胞の増殖に作用することが推測される。以上よりb-FGFは腎細胞癌や腎再生現象においてその細胞増殖制御を担う増殖因子の1つであるといえる。
KAKENHI-PROJECT-05671324
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雲南地域の植物性抗がん剤に関する研究
1.平成8年度は、雲南-四川地域の植物約400種類を採集し、抗がん活性、細胞周期の阻害およびBRM活性について評価した。その結果、A-15,W-15とA-104に強い抗がん活性があり有効成分を単離精製が進行中である。2.トロ根の1種Physalis alkekengi sp.より単離したマウス白血病P388/ADMに有効の物質は、4,7-didehydroneophysalin Bと同定した。この物質のin vivoの抗がん活性について評価を進めている。3.民間薬として、がんの治療に使われている"神農"から、bicalein,bicalinおよび2',5,5',7-tetrahydroxy-6',8-dimethoxyflavoneを単離同定した。これらのフラボン化合物は何れもin vitroで35μg/mlの濃度で強い細胞毒性を示した。4.グアバPsidium guajava L.の乾燥葉より単離したcastalagin、casuarininはP388/ADMに対し細胞毒性を示した。グアバ葉には他にも細胞毒性を示す化合物が多数含まれており、それらの成分の分離を進めている。これらポリフェノール化合物は、溶解性に問題があるものが多く、その解決のためにそれらの科学変換を必要と考えている。特にchebulagic acidについては可溶性誘導体を追求しており、それらの細胞レベルでの増殖阻害活性を評価中である。1.平成8年度は、雲南-四川地域の植物約400種類を採集し、抗がん活性、細胞周期の阻害およびBRM活性について評価した。その結果、A-15,W-15とA-104に強い抗がん活性があり有効成分を単離精製が進行中である。2.トロ根の1種Physalis alkekengi sp.より単離したマウス白血病P388/ADMに有効の物質は、4,7-didehydroneophysalin Bと同定した。この物質のin vivoの抗がん活性について評価を進めている。3.民間薬として、がんの治療に使われている"神農"から、bicalein,bicalinおよび2',5,5',7-tetrahydroxy-6',8-dimethoxyflavoneを単離同定した。これらのフラボン化合物は何れもin vitroで35μg/mlの濃度で強い細胞毒性を示した。4.グアバPsidium guajava L.の乾燥葉より単離したcastalagin、casuarininはP388/ADMに対し細胞毒性を示した。グアバ葉には他にも細胞毒性を示す化合物が多数含まれており、それらの成分の分離を進めている。これらポリフェノール化合物は、溶解性に問題があるものが多く、その解決のためにそれらの科学変換を必要と考えている。特にchebulagic acidについては可溶性誘導体を追求しており、それらの細胞レベルでの増殖阻害活性を評価中である。1.平成8年度は、雲南-四川地域の植物約400種類を採集し、抗がん活性、細胞周期の阻害およびBRM活性について評価した。その結果、A-15,W-15とA-104に強い抗がん活性があり有効成分を単離精製が進行中である。2.トロ根の1種Physalis alkekengi sp.より単離したマウス白血病P388/ADMに有効の物質は、4,7-didehydroneophysalin Bと同定した。この物質のin vivoの抗がん活性について評価を進めている。3.民間薬として、がんの治療に使われている"神農"から、bicalein,bicalinおよび2',5,5',7-tetrahydroxy-6',8-dimethoxyflavoneを単離同定した。これらのフラボン化合物は何れもin vitroで35μg/mlの濃度で強い細胞毒性を示した。4.グアバPsidium guajava L.の乾燥葉より単離したcastalagin、casuarininはP388/ADMに対し細胞毒性を示した。グアバ葉には他にも細胞毒性を示す化合物が多数含まれており、それらの成分の分離を進めている。これらポリフェノール化合物は、溶解性に問題があるものが多く、その解決のためにそれらの化学変換を必要と考えている。特にchebulagic acidについて可溶性誘導体を追求しており、それらの細胞レベルでの増殖阻害活性を評価中である。
KAKENHI-PROJECT-08042011
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08042011
レジオネラ属細菌の環境中および宿主内での生存適応戦略とその多様性の研究
1.バイオフィルム形成の分子遺伝学的・形態学的解析レジオネラ38菌種50菌株のうちバイオフィルムを形成したのはL.pneumophilaのみで、その他の菌種は形成しなかった。バイオフィルムは、25°Cではガラスへの付着能も強く多糖体マトリックスの中に短い本菌が生息していた。一方、37°Cでは多糖体マトリックスは少なく、菌体が線維状に伸長して菌体自身で織物のようなバイオフィルムを形成し、線維状の菌は多核であった。2.レポーター遺伝子を使ったレジオネラ遺伝子発現の動態の研究不安定GFPがL.pneumophilaのin vitro、細胞内での遺伝子発現の研究に応用できることを明らかにした。現在、細胞内増殖に必要な遺伝子であるicmS, icmT, icmQの発現をin vitroと細胞内で観察している。また、温度依存性プロモーター領域の探索を行った。その結果、1株はicmNのプロモーターであり、icmNノックアウト変異株では25°Cでの上皮細胞接着能が低下していた。トランスポゾン誘導変異によって、マウスのマクロファージ系株化細胞J774の中で増殖できないLegionella dumoffii変異株を作成・選択した。変異株のうちの一株は、トランスポゾンがDj1A遺伝子中に挿入されており、ファゴソームとリソソームの融合を阻害できないことがわかった。Dj1Aは熱ショックタンパクDnaJファミリーの一員であり、Dj1Aが、細胞内寄生菌の細胞内増殖に重要であるとの最初の報告となった。別の1株(KL15)は細胞内侵入能が低下していた。4.2-deoxy-D-glucose(2dG)がマクロファージ内でのL.pneumophilaの増殖を抑制する機序のマウスDNAマイクロアレイを使った解析2dG単独ではマウスマクロファージのいくつかのGタンパクの発現を抑制した。L.pneumophilaの感染単独ではToll-like receptor2、TNF-αなどの遺伝子の発現が亢進し、それに2dGを添加すると、これらの遺伝子の発現は抑制された。1.バイオフィルム形成の分子遺伝学的・形態学的解析レジオネラ38菌種50菌株のうちバイオフィルムを形成したのはL.pneumophilaのみで、その他の菌種は形成しなかった。バイオフィルムは、25°Cではガラスへの付着能も強く多糖体マトリックスの中に短い本菌が生息していた。一方、37°Cでは多糖体マトリックスは少なく、菌体が線維状に伸長して菌体自身で織物のようなバイオフィルムを形成し、線維状の菌は多核であった。2.レポーター遺伝子を使ったレジオネラ遺伝子発現の動態の研究不安定GFPがL.pneumophilaのin vitro、細胞内での遺伝子発現の研究に応用できることを明らかにした。現在、細胞内増殖に必要な遺伝子であるicmS, icmT, icmQの発現をin vitroと細胞内で観察している。また、温度依存性プロモーター領域の探索を行った。その結果、1株はicmNのプロモーターであり、icmNノックアウト変異株では25°Cでの上皮細胞接着能が低下していた。トランスポゾン誘導変異によって、マウスのマクロファージ系株化細胞J774の中で増殖できないLegionella dumoffii変異株を作成・選択した。変異株のうちの一株は、トランスポゾンがDj1A遺伝子中に挿入されており、ファゴソームとリソソームの融合を阻害できないことがわかった。Dj1Aは熱ショックタンパクDnaJファミリーの一員であり、Dj1Aが、細胞内寄生菌の細胞内増殖に重要であるとの最初の報告となった。別の1株(KL15)は細胞内侵入能が低下していた。4.2-deoxy-D-glucose(2dG)がマクロファージ内でのL.pneumophilaの増殖を抑制する機序のマウスDNAマイクロアレイを使った解析2dG単独ではマウスマクロファージのいくつかのGタンパクの発現を抑制した。L.pneumophilaの感染単独ではToll-like receptor2、TNF-αなどの遺伝子の発現が亢進し、それに2dGを添加すると、これらの遺伝子の発現は抑制された。1.バイオフィルム形成の条件L.pneumophilaがバイオフィルムを形成する条件について検討した。本菌をBYE液体培地中で培養した場合、37°Cでは液面に管壁から剥がれやすいバイオフィルムを形成し、電子顕微鏡で観察すると菌体は長く伸長して線維状になっていた。一方、25°Cで培養した場合、剥がれにくいバイオフィルムを形成し、菌体は短い桿菌状であった。(第55回日本細菌学会九州支部総会、平成14年9月、別府、にて発表)2.バイオフィルム中、アメーバ中のレジオネラの高温暴露に対する抵抗性の検討25°Cで形成されたバイオフィルムに生息するL.pneumophila、アメーバAcanthamoebaに貪食されたL.pneumophila、液中に単独浮遊するプランクトニック状態のL.pneumophilaを各々高温(6075°C)に暴露させ抵抗性を調べたところ、バイオフィルム中では有意に抵抗性が高くなっていた。3.細胞内増殖機序の多様性の研究Legionella dumoffii細胞内で増殖するのに必要な遺伝子を解析した。まずtransposon mutagenesisによって、マウスのマクロファージ系株化細胞J774の中で増殖できない変異株を選択した。
KAKENHI-PROJECT-14370094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370094
レジオネラ属細菌の環境中および宿主内での生存適応戦略とその多様性の研究
検索の結果トランスポゾンは変異株のDjl遺伝子中に挿入されていた。共焦点レーザー顕微鏡での解析により、本変異株はファゴソームとリソソームの融合(P-L融合)を阻害できないことがわかった。今後、Djl産物がP-L融合を阻害する機序について研究を進める予定である。(第55回日本細菌学会九州支部総会、平成14年9月、別府、にて発表)1.バイオフイルム形成の分子遺伝学的解析レジオネラ属細菌自身にバイオフィルム形成能があるかどうか、形成する能力はどの菌種が一番高いか、形成されるバイオフィルムの性質と、形成される条件について研究を行った。培養にはレジオネラ培養用液体培地であるBYE培地を用い、ガラス試験管にて本属菌を静置培養した。培養温度は25、30,37°Cとし、液面及びガラス面に形成されるバイオフィルムを経時的に形態を観察した。レジオネラ38菌種50菌株のうちバイオフィルムを形成したのはL.pneumophila(血清群111を調べた)のみで、その他の菌種は形成しなかった。形成されたバイオフィルムの性質は培養温度で異なっていた。25°Cでは多糖体マトリックスの中に短い本菌が生息し、ガラスへの付着能も強かった。一方、30、37°Cでは多糖体マトリックスは少なく、菌体が線維状に伸長して菌体自身で織物のようなバイオフィルムを形成し、繊維状の菌は多核であった。これらの新知見と成果は、"Temperature-regulated formation of mycelial mat-likebiofilm by Legionella pneumophila"という論文としてまとめ、米国微生物学会誌Appl.Environ.Microbiol.に投稿中である。2.細胞内増殖機序の多様性の研究Legionella dumoffiiが細胞内で増殖するのに必要な遺伝子を解析した。トランスポゾン誘導変異によって、マウスのマクロファージ系株化細胞J774の中で増殖できない変異株を作成・選択した。変異株のうちの一株は、検索の結果、トランスポゾンがDjlA遺伝子中に挿入されていた。共焦点レーザ顕微鏡での解析により、本変異株はファゴソームとリソソームの融合を阻害できないことがわかった。DjlAは熱ショックタンパクDnaJファミリーの一員であり、DjlAが、レジオネラのみならず、細胞内寄生菌の細胞内増殖に重要であるとの最初の報告であり、DjlAの機能の解析が期待される。2-deoxy-D-glucoseはマクロファージ培養液中に添加すると濃度依存的に、マクロファージ内でのL.pneumophilaの増殖を抑制する事を見いだした。その機序を解明するためにマウスのDNAマイクロアレイを使って解析中である。固形平板培地上で温度3745°Cにて培養されたL.pneumophilaの菌体は高率(95%以上)に100μm以上の長さをもつ線維状菌体に変化することを見いだした。この機序を形態学的に、また分子遺伝学的にはrelA、ftsZ遺伝子などに焦点を当て解析している。2.不安定GFPのレジオネラ属菌の遺伝子発現解析への応用
KAKENHI-PROJECT-14370094
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14370094
家畜伝染病発生時の防疫理論に関する研究
国内外の口蹄疫、豚コレラなど家畜伝染病流行時の防疫事例と軍事学領域で用いられる戦略理論を分析し、家畜伝染病発生時の防疫を検討する理論的枠組みとして、防疫実施主体である国や都道府県の階層機能構造と防疫に影響を与える要因(外的、中間的、内的)の2面を考慮することが有効であることを明らかにした。また、鳥インフルエンザの発生時の防疫作業を例として、鶏の処分に必要な人員を過去の発生事例から推定し、都道府県毎の動員可能数から発生時に人員が不足する確率とその人数をシミュレーションによって推定した。昨年度は軍事上の戦略・戦術の階層構造に着目し、家畜防疫の実施主体である国や都道府県の役割を明確にした。本年度は、さらに家畜伝染病の防疫活動の報告書などを分析し、疾病の流行状況、防疫組織の整備状況、緊急防疫体制、関係者の意見など防疫における意思決定に影響を与える要因を抽出・分類することにより、防疫理論構築のための影響要因を類型化した。影響要因は、外的要因、中間的要因、内的要因の3つに区分することが可能であり、外的要因は病原体の特性や家畜の地理的分布などが含まれ、防疫担当者が制御できないものとして分類した。中間的要因には、業界団体や政治家の意向などがあり、防疫担当者では制御が難しいものの、より高いレベルの権限を持った意思決定者には制御できる要因とした。また、防疫体制の整備構築などは防疫担当者が制御可能な内的要因に区分できた。これらの要因と戦略上の階層構造を組み合わせることにより、防疫理論体系化の土台構築が可能と考えられた。なお、軍事分野において危機管理上のリーダーシップ理論が発展しているが、通常時の活動規範も含まれる点においては、家畜防疫では経営で論じられているリーダシップ理論の方が参考になると考えられた。防疫戦略の理論化を検討するため、限られた人的資源を用いて最も効果的に口蹄疫のまん延防止が可能となるような資源配分方法について簡単なモデルを用いて検討した。具体的には、牛を飼養する非感染農場周辺に5戸の感染農場(様々な規模の牛及び豚農場)があったと仮定し、これらの感染農場での殺処分の実施状況が、非感染農場への口蹄疫伝播確率に及ぼす影響を評価した。その結果、殺処分を実施する順番の選択によって非感染農場への伝播確率が変わらことが明らかとなった。これにより、口蹄疫のように動物種間で伝播確率が異なる疾病の場合、防疫戦略がまん延防止の効果に影響することが示唆された。国内外の口蹄疫、豚コレラなど家畜伝染病流行時の防疫事例と軍事学領域で用いられる戦略理論を分析し、家畜伝染病発生時の防疫を検討する理論的枠組みとして、防疫実施主体である国や都道府県の階層機能構造と防疫に影響を与える要因(外的、中間的、内的)の2面を考慮することが有効であることを明らかにした。また、鳥インフルエンザの発生時の防疫作業を例として、鶏の処分に必要な人員を過去の発生事例から推定し、都道府県毎の動員可能数から発生時に人員が不足する確率とその人数をシミュレーションによって推定した。本年度は、家畜疾病発生時の危機管理対応に有用な軍事学の学問領域を特定するため、関連資料の網羅的な調査・分析を行った。また、防疫理論検討の視座を明確にするため、口蹄疫等の防疫の実施主体となる各機関の役割を定義した上で、それぞれの役割毎に対応する軍事学上の理論を分析した。軍事学の学問体系では、軍事学が扱う社会科学領域を軍事力の建設・維持・育成、軍事力の運用、リーダーシップの3つに分類している。このうち、防疫の実行に相当する分野は、戦術・戦略など軍事力の運用に関わる分野であり、古典的な用兵学から近年の意思決定理論など様々な研究が蓄積されている。また、特殊環境下の集団行動を扱うリーダーシップも軍事学では特に重要視され、多くの指針や方法論が示されている。これらの分野を本研究の対象範囲として今後詳細な検討を行うこととした。軍事学上の戦略や戦術が対象とする戦域規模や内容を考慮して、防疫における国や地方自治体の各機関の役割を軍事学上の戦略・戦術の分類に当てはめた。これにより、それぞれを対比しながら分析することが可能となった。国は防疫方針として疾病対策の大枠の決定を行う。これは軍事学における軍事戦略に当たり、陸海空それぞれの分野で理論が発達している。これらの理論の直接的応用は困難であるが、方針決定過程を検証する際の参考になるものと考えられた。地方自治体が行う疾病対策の立案・実行は野外の変化する状況の中で適切に決定されなければならない。これは軍事学の作戦と戦術に相当し、いくつかの意思決定理論が考案されており、これらの理論は疾病対策に応用できる可能性があると考えられた。実際の危機管理対応事例として、2001年に英国で発生した口蹄疫の検証報告書を分析した。国と地方自治体がそれぞれの立場から多くがとりまとめられており、情報管理、マニュアルの整備、訓練不足など多くの危機管理上の問題が指摘されていた。これまでに考案した防疫戦略に影響を与える三要因(外的、中間的、内的)と防疫実施主体の戦略機能分類に基づいて、豚コレラ流行時の防疫について事例研究を実施した。その結果、この理論的枠組みによって防疫対策の評価や課題を明確にすることが可能であり、家畜防疫理論の基礎を提供できることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-24580455
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24580455
家畜伝染病発生時の防疫理論に関する研究
疾病発生時の防疫作業における人員配備について検討するため、過去の鳥インフルエンザ(AI)発生事例に関する資料を用いて、発生農場での防疫作業に必要な人員について分析した。さらに、都道府県毎の養鶏農家の飼養規模を考慮して、AI発生時に政府が目標とする72時間以内の鶏の処分を終了することが各都道府県職員のみできる確率について、モンテカルロシミュレーションを用いて推定した。過去のAI発生事例57戸の分析の結果、肉用鶏農場では規模が大きくなるほど一人当たりの殺処分数が増加し、15万羽規模の農場では一人当たりの処理羽数が200羽を超えていた。一方、採卵鶏農場では飼養規模が大きくなっても一人当たりの処理羽数は100羽前後で頭打ちになる傾向が見られた。農場規模と処理羽数の関係をあらわす最適曲線を求め、各都道府県の動員可能数を一般職員の10%としてシミュレーションを実施した結果、20の都道府県でAI発生時に72時間以内に処分を終了できない確率が5%を超えた。同時に2戸発生した場合には、この確率は30の都道府県で5%を超えた。対応できない場合の平均不足人数は358人となり、このような場合は多くの人的支援が必要となることが明らかとなった。北海道を除く地域を東北、関東、中部、近畿、中四国、九州6つのブロックに分けて対応した場合、5%の職員動員でも4戸の同時発生までどのブロックも95%の確率で対応可能と推定された。したがって、家畜伝染病発生時の対応をブロック単位で検討することも有用であると考えられた。獣医疫学口蹄疫、豚コレラなどの発生時の対策等に関する資料の分析を進め、防疫対策の決定に与える要因を類型化することができた。これにより、防疫対策を決定する上で考慮すべき事項の整理が可能となり、軍事学上の意思決定範囲の階層構造と併せることにより、家畜防疫上の意思決定理論構築の足がかりができたと考えている。また、モデルを用いて試行的に理論の妥当性を検証することができたことも、今後いくつかの理論仮説の検証作業を進める上で重要なステップとなった。過去の発生事例の分析において、口蹄疫については多くの検証報告があり、資料収集は容易であったが、鳥インフルエンザについては清浄国において発生・封じ込めを実施した危機管理事例の報告が少なく、十分な分析ができていない。このため、理論の一般化の過程において鳥インフルエンザの扱いをどのようにするかを今後検討する必要がある。なお、本研究で得られた防疫理論に関する情報や成果は都道府県の防疫担当者を集めた研修会や講習会で発表し、防疫活動の一助となるよう還元している。軍事学の対象領域は、自然科学や社会科学の広い範囲を含むため、まず最初に本研究で扱う分野を明確にすることが重要と考えられた。軍事関係の専門書や資料を広範囲に分析することにより、家畜疾病発生時の危機管理対応に応用可能な領域を特定することができた。また、家畜防疫の実施主体である国や都道府県の機関の役割分担を明確にし、それぞれに対応する戦略・戦術概念を特定し、区分して検討することにより、軍事学上の理論の応用の可能性を明らかにすることができた。実際の研究活動においては、防衛大学総合情報図書館を訪問して各種資料を調査するとともに、高病原性鳥インフルエンザが発生した島根県を訪問し、家畜疾病防疫を担当する家畜保健衛生所の職員から防疫に関する話を聞くことができた。英国の口蹄疫に関しては、4つの地方自治体からの検証報告書を入手するとともに、英国政府や独立機関が発表した多くの報告書を入手し、口蹄疫発生時の対応の問題点や改善点について、理解することができた。
KAKENHI-PROJECT-24580455
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ヘパトゾーンに対する免疫応答に関与する抗原蛋白の同定とワクチンへの応用
本年度の研究計画としては、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集および抗原蛋白となり得る候補蛋白の探索と同定を行う予定であった。ヘパトゾーンはそのオーシストを含むマダニを動物が経口的に摂取することで感染が成立することが知られている。そこで、まずはヘパトゾーン陽性のマダニの採取および採取されたマダニ体内でヘパトゾーンの発育サイクルが宿主に感染可能なオーシストまで進んでいるかの確認を行った。本年度は日本産ヤマネコに寄生しているマダニを計32匹採取した。過去の報告を参照し、マダニ採取後の保存条件の検討を行い、保存中のマダニの生存率を向上させることを試みた。しかしながら、採取したマダニのそのほとんどが保存中に死亡し、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染を行うことはできなかった。また、死亡したマダニの押捺標本ではオーシストは確認されなかった。一方で、ヘパトゾーンと同じアピコンプレクサ原虫に属する原虫においてワクチンの候補蛋白としての有用性が示唆されているプロフィリンに着目し、ヘパトゾーンでも同様の蛋白の発現があるかの検討を行った。まず、ヘパトゾーン由来のプロフィリン遺伝子の増幅および遺伝子配列の決定を試みた。ヘパトゾーン陽性のヤマネコの血液からRNAを抽出し、それらをサンプルとしてRT-PCRを行った。ヘパトゾーンのゲノム遺伝子の全塩基配列はいずれの種においても不明であるため、他の原虫のプロフィリン遺伝子の配列を参考にプライマーを作成した。しかし、他の原虫で報告のあるプライマーを用いたPCRではヘパトゾーン由来のプロフィリン遺伝子は増幅されず、その後も複数種類のプライマーを作成したが、いずれにおいても遺伝子の増幅は確認されず、ヘパトゾーンにおけるプロフィリン蛋白の発現を検討するに至らなかった。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。本年度の研究計画としては、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集ならびに抗原蛋白となり得る候補蛋白の探索と同定を行う予定であった。ヘパトゾーンはそのオーシストを含むマダニを動物が経口的に摂取することで感染が成立するため、実験感染にはヘパトゾーン陽性のマダニが必要である。そこで、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染を行う前に、まずは実験感染に必要なヘパトゾーン陽性のマダニの採取を行った。日本産ヤマネコに寄生しているマダニからはヘパトゾーン由来遺伝子が頻繁に検出されており、日本産ヤマネコに寄生しているマダニをヘパトゾーン陽性のマダニとして採取した。イリオモテヤマネコおよびツシマヤマネコからそれぞれマダニを7匹と25匹採取した。次にヤマネコ由来のマダニが保有しているヘパトゾーンが実際に猫に感染可能なオーシストまでマダニ体内で成熟しているかの確認を行った。マダニを採取後、マダニ体内でヘパトゾーンがオーシストまで成熟するために要する時間を考慮し、全てのマダニ検体を14°Cで採取後35日以上保存した。マダニを採取してから35日以上保存した後、マダニから血体腔液を採取し、マダニ体内でのヘパトゾーンのオーシストの確認を行うことを試みた。しかし、採取したマダニの多くは保存途中で死亡し、35日以上生存したマダニ検体はわずか7匹となった。死亡したマダニからは血体腔液を採取することが困難だったため、マダニをスライドガラスで押捺することで塗抹標本を作成し、顕微鏡的に観察したが、ヘパトゾーンのオーシストは観察されなかった。残りの生存しているマダニからは血体腔液を採取し、顕微鏡的に観察した。しかしながら、血体腔液中にはマダニ由来のプラズマトサイトは観察されたものの、ヘパトゾーンのオーシストは観察されなかった。本年度の研究計画としては、まずヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集を行う予定であり、ヤマネコに寄生しているマダニをSPF猫に経口的に投与することでヘパトゾーンの実験感染を行う予定であった。しかし、前述の研究実績の概要の項目に記載した通り、実験感染を行う前にマダニの血体腔液内のヘパトゾーンのオーシストの確認を行うことができなかった。そのため、採取したマダニ体内で実際にヘパトゾーンが猫に感染可能なオーシストの状態まで成熟しているかの検証が不十分であり、SPF猫へのヘパトゾーンの実験感染およびそれに続く研究計画を実施することができなかった。また、犬へのヘパトゾーンの実験感染に関する過去の報告では、実験的にヘパトゾーンを感染させたマダニ30匹を犬に経口摂取させることで実験感染を行っているが、今回採取したマダニの大部分は死亡したため、マダニの検体数に関しても実験感染を行うには十分ではない状況である。そのため、動物実験計画書は作成したものの、実験感染に必要な材料が準備できていない状況にあり、計画書を作成した当初の予定よりも進歩状況としては遅れている。本年度の研究計画としては、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染および各発育ステージのヘパトゾーンの収集および抗原蛋白となり得る候補蛋白の探索と同定を行う予定であった。ヘパトゾーンはそのオーシストを含むマダニを動物が経口的に摂取することで感染が成立することが知られている。そこで、まずはヘパトゾーン陽性のマダニの採取および採取されたマダニ体内でヘパトゾーンの発育サイクルが宿主に感染可能なオーシストまで進んでいるかの確認を行った。
KAKENHI-PROJECT-15J05949
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J05949
ヘパトゾーンに対する免疫応答に関与する抗原蛋白の同定とワクチンへの応用
本年度は日本産ヤマネコに寄生しているマダニを計32匹採取した。過去の報告を参照し、マダニ採取後の保存条件の検討を行い、保存中のマダニの生存率を向上させることを試みた。しかしながら、採取したマダニのそのほとんどが保存中に死亡し、ヘパトゾーンのSPF猫への実験感染を行うことはできなかった。また、死亡したマダニの押捺標本ではオーシストは確認されなかった。一方で、ヘパトゾーンと同じアピコンプレクサ原虫に属する原虫においてワクチンの候補蛋白としての有用性が示唆されているプロフィリンに着目し、ヘパトゾーンでも同様の蛋白の発現があるかの検討を行った。まず、ヘパトゾーン由来のプロフィリン遺伝子の増幅および遺伝子配列の決定を試みた。ヘパトゾーン陽性のヤマネコの血液からRNAを抽出し、それらをサンプルとしてRT-PCRを行った。ヘパトゾーンのゲノム遺伝子の全塩基配列はいずれの種においても不明であるため、他の原虫のプロフィリン遺伝子の配列を参考にプライマーを作成した。しかし、他の原虫で報告のあるプライマーを用いたPCRではヘパトゾーン由来のプロフィリン遺伝子は増幅されず、その後も複数種類のプライマーを作成したが、いずれにおいても遺伝子の増幅は確認されず、ヘパトゾーンにおけるプロフィリン蛋白の発現を検討するに至らなかった。現段階の問題としては、マダニの血体腔内でのヘパトゾーンのオーシストの確認が行えていないこと、マダニの検体数が少ないことおよび保存中のマダニが死亡してしまうことが挙げられる。そのため、今後は日本産ヤマネコに寄生しているマダニの収集を継続的に行うとともにマダニ採取後の保存条件の検討を行い、保存中のマダニの生存率を向上させることを考えている。また、今回血体腔液の観察が行うことができたマダニ検体数が少ないため、今後はマダニの生存率を向上させることで検体数を増やし、血体腔液中のヘパトゾーンのオーシストの確認を行い、確認ができた場合には実験感染に進む予定である。一方で、十分な数のマダニ検体が採取できない可能性やマダニの血体腔液からヘパトゾーンのオーシストが確認できない可能性を考慮し、他の原虫でワクチンの候補蛋白としての可能性が報告されている抗原蛋白に関して、ヘパトゾーンでも同様の蛋白の発現があるかを検討し、ヘパトゾーンワクチンの候補蛋白となり得るかの検討を並行して行う予定である。具体的には、まずヤマネコの血液材料およびヤマネコから採取したマダニからRNAを抽出し、ヘパトゾーン由来のRNAを得る。その後、他の原虫で報告されている抗原蛋白をコードする遺伝子の配列を参考にして、プライマーを設計後、ヘパトゾーンでも同様の遺伝子の発現があるかを検証する。遺伝子の発現が確認できた蛋白に関してをヘパトゾーンにおける抗原蛋白の候補とする。候補蛋白の組換え蛋白を作成後、電気泳動を行い、日本産ヤマネコを含めたヘパトゾーンPCR陽性ネコの血清を一次抗体として、ウエスタンブロッティング法を行い、顕微鏡的に寄生虫血症が認められない個体に特異的に検出されるバンドを抗原蛋白の候補とする。得られたバンドのアミノ酸配列をペプチドシークエンス法により決定し、解析を進める予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J05949
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J05949
カルシトニン遺伝子関連ペプチドの炎症制御機構の解明と、眼内炎症疾患への応用展開
LPS硝子体内注射が過剰な炎症を惹起するため、足底注射による評価を試みた。足底注射では逆に軽微な炎症にとどまり、前房内炎症性細胞を認める個体は少なく、網膜血管の滲出性変化を認める個体は極めて稀であったため、LPS誘導ぶどう膜炎モデル以外での解析を検討した。糖尿病網膜症モデルマウスであるKimbaマウスにアドレノメデュリン(以下AM)を投与することで網膜血管の透過性亢進が抑制された。全身投与では網膜毛細血管脱落と異常血管形成も抑制された。網膜血管内皮細胞を用いた解析では、血管内皮増殖因子で誘導される炎症と透過性亢進がいずれもAMにより抑制された。AMの糖尿病網膜症における治療的効果が示された。リポポリサッカライド(以下LPS)の硝子体内注射を野生型マウスおよびヒトカルシトニン遺伝子関連ペプチド(以下CGRP)ノックアウトマウスに投与し、眼内の炎症の状況を観察した。LPSの硝子体内注射では、両群ともに顕著なぶどう膜炎所見を呈し、細隙灯顕微鏡による観察では結膜毛様充血と前房内炎症細胞を認めた。眼底観察では網膜血管の拡張と強い滲出性変化を認め、重症例では硝子体混濁を認め眼底観察が不能であった。蛍光眼底造影検査でも早期から顕著な蛍光漏出所見を認め、個体によっては早期から著名な蛍光漏出を認め評価が困難な状態だった。前眼部および後眼部所見や蛍光眼底造影所見に野生型マウスとノックアウトマウスでは明らかな差異はみられなかった。病理組織では、脈絡膜を中心に網膜内にも血管からの著名な白血球浸潤を認めた。LPS投与濃度を漸減し再実験を行ったが、やはり投与後数時間後から強い炎症所見を呈し、眼底が観察困難になり評価困難になる個体が低濃度でもみられた。LPSの硝子体内への投与では、眼内の炎症を過剰に誘導してしまい、眼内炎症の評価が不能になる固定がでてしまうこと、および野生型マウスとノックアウトマウスの表現型の差異もマスクされてしまうと考え、足底へのLPS投与による炎症誘導へ変更した。LPS皮下注射による炎症誘導では、結膜毛様充血と前房内炎症細胞、および網膜血管からの滲出性変化は軽度であったが、炎症の誘導には成功した。当初行った硝子体内注射による炎症誘導モデルでは野生型マウスとノックアウトマウスの群間に明らかな差異は認められず、また炎症が強く誘導されすぎたため、別途準備していた手法に変更した。また遺伝子ノックアウトマウスの実験対象週齢マウスの確保が途中困難となった期間があり、ノックアウトマウス群での実験が停滞した。リポポリサッカライド(以下LPS)の硝子体内注射による炎症誘導が過剰な炎症を惹起し評価が困難であったため、足底注射による炎症誘導による評価を試みた。足底注射では硝子体内注射とは逆に炎症の所見はごく軽微にとどまり、いずれの個体にも結膜毛様充血を軽度認めるものの、前房内の炎症性細胞を認める個体は少なく、眼底観察による網膜血管の滲出性変化を認める個体は極めて稀であった。LPS投与量を増量して再検を行っても全個体の網膜血管病変の誘導は得られなかったため、LPS誘導ぶどう膜炎モデル以外での解析を検討した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(以下CGRP)ノックアウトマウス(以下CGRP-/-)を用いた解析として、塞栓糸による中大脳動脈塞栓術を用いた急性脳虚血モデルによる解析では、レーザードップラーによる血流評価においてCGRP-/-は脳虚血後の再灌流遅延を認めた。病理所見では脳虚血後の神経細胞の減少とアポトーシスの亢進がCGRP-/-ではWTと比較し顕著であった。またCGRP-/-では脳虚血後の大脳皮質と海馬でのサイトカイン発現もWTに比べ亢進していた。これらの結果から、CGRPの虚血時における神経保護作用が示された。またCGRPのファミリーペプチドであるアドレノメデュリン(以下AM)とその受容体蛋白における解析では、網膜内で血管内皮増殖因子(以下VEGF)を発現することで網膜虚血と透過性亢進が誘導される、糖尿病網膜症モデルマウスであるKimbaマウスにAMを投与することで、全身投与と硝子体内投与いずれにおいても網膜血管の透過性亢進が抑制された。さらに全身投与では網膜毛細血管の脱落と異常血管形成も抑制された。網膜血管内皮細胞を用いた解析では、VEGF投与により誘導される炎症と透過性亢進がいずれもAM投与により抑制された。これらの結果からAMの糖尿病網膜症における治療的効果が示された。LPS硝子体内注射が過剰な炎症を惹起するため、足底注射による評価を試みた。足底注射では逆に軽微な炎症にとどまり、前房内炎症性細胞を認める個体は少なく、網膜血管の滲出性変化を認める個体は極めて稀であったため、LPS誘導ぶどう膜炎モデル以外での解析を検討した。糖尿病網膜症モデルマウスであるKimbaマウスにアドレノメデュリン(以下AM)を投与することで網膜血管の透過性亢進が抑制された。全身投与では網膜毛細血管脱落と異常血管形成も抑制された。網膜血管内皮細胞を用いた解析では、血管内皮増殖因子で誘導される炎症と透過性亢進がいずれもAMにより抑制された。AMの糖尿病網膜症における治療的効果が示された。
KAKENHI-PROJECT-15H06244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06244
カルシトニン遺伝子関連ペプチドの炎症制御機構の解明と、眼内炎症疾患への応用展開
LPS皮下投与による炎症誘導は硝子体内投与に比しかなり軽微であったため、投与するLPSの濃度による炎症の度合いを確認し、安定した眼内炎症が得られた後に野生型マウスとノックアウトマウスの差異の検討を開始する。ノックアウトマウスの個体数確保が難しい状況となった場合、実験計画に基づいて体外受精を大学動物実験施設に依頼し安定した個体確保を試みる。またカルシトニン遺伝子関連ペプチドでは特異的な眼内炎症に明らかな差異が確認されない場合、そのファミリーペプチドであるアドレノメデュリンとその受容体調節蛋白の遺伝子改変マウスを用いた検討を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。眼科学28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15H06244
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15H06244
X染色体上のRFLPマーカーを用いた内分泌臓器結節性病変のclonality解析
1.パラフィンブロック組織からDNAを抽出し、HUMARA法を施行した。(1)固定時間が2448時間を超える組織から得られたDNAは断片化を来し、PCRによる増殖は不良であったが、固定条件が良好な組織を選択したところ、安定した増幅結果が得られた。約半数の症例がandrogen receptor遺伝子に関してヘテロであり、解析可能であった。(2)バセドウ病と腺種様甲状腺組織ではHpaII後も2本のバンドは消失せず、polyclonalな増殖と推定された。(3)予想に反して、典型的な甲状腺濾胞腺種ならびに濾胞腺癌もpolyclonal patternを示した。さらに甲状腺乳頭癌もpolyclonalと判定された。2.上記(3)の結果は、腫瘍組織の間質細胞DNAの干渉に起因すると推定し、Dynal社製Magnet-beads(BerEP4抗体結合)を用いて腫瘍組織からの癌細胞選択的採取を試みた。(1)組織消化条件を調節した結果、乳頭癌細胞は13個の、リンパ球やfibroblastなどの間質細胞は単個に分離でき、BerEP4-coated magnetbeadsにより、ほぼ上皮細胞のみからなる細胞集団を分取できた。しかし、組織消化時に使用する酵素(trypsin)によって正常甲状腺濾胞細胞のBerEP4抗原性が賦活化され、病変周囲の正常細胞も同時に回収されている可能性が指摘された。(2)腫瘍細胞以外に上皮細胞が存在しなし甲状腺濾胞癌の軟部組織への転移巣に対し、同手法を用いたところ、monoclonal patternが得られた。3.Magnet-beadsを用いた細胞分取法は標的細胞以外に上皮細胞が存在しない検体に有効であり、甲状腺内病変に対しては、古典的なmicrodissectionを用いるべきと思われた。1.パラフィンブロック組織からDNAを抽出し、X染色体androgen receptor(AR)遺伝子をPCRにて検出した。その知見は以下の通り。(1)固定時間が2448時間を越える組織から得られたDNAは断片化を来し、PCRによる増幅不良であった。(2)固定条件が良好な組織を選択し、さらに新たに入手した組織を24時間以内で固定したところ、安定した増幅結果が得られた。約半数の症例がAR遺伝子に関してヘテロであり、解析対象となった。(3)バセドウ病甲状腺組織ならびに腺腫様甲状腺組織ではHpaIIによる切断でも2本のバンドは消失せず、polyclonalな増殖と推定された。なお、ヒト子宮内膜癌培養細胞から抽出したDNAをHpaII処理の陽性対照としている。結果の判定には申請備品のフィルムスキャナーとコンピューターを用いた。(4)予想に反して、典型的な甲状腺濾胞腺腫ならびに濾胞腺癌もpolyclonalな増殖を示した。さらに、甲状腺乳頭腺癌もpolyclonalと判定された。2.上記(4)の結果は、腫瘍組織内の間質細胞DNAによる干渉に起因すると推定し、Dynal社製Magnet-beads(BerEP4抗体結合)を用いて、腫瘍組織からの癌細胞選択的採取を試みた。その知見は以下の通り。(1)組織消化条件(酵素の種類、時間、破砕方法など)を調節した結果、乳頭癌細胞は13個の、リンパ球やfibroblastなどの間質細胞は単個に分離でき、BerEP4-coated magnet-beadsにより、ほぼ癌細胞のみからなる細胞集団を分取できた。(2)この(癌)細胞集団のDNAを解析した結果、一方のバンドの減弱が認められ、monoclonalな細胞集団と判定できた。現在、この手法の安定性、再現性を確認中である。1.パラフィンブロック組織からDNAを抽出し、HUMARA法を施行した。(1)固定時間が2448時間を超える組織から得られたDNAは断片化を来し、PCRによる増殖は不良であったが、固定条件が良好な組織を選択したところ、安定した増幅結果が得られた。約半数の症例がandrogen receptor遺伝子に関してヘテロであり、解析可能であった。(2)バセドウ病と腺種様甲状腺組織ではHpaII後も2本のバンドは消失せず、polyclonalな増殖と推定された。(3)予想に反して、典型的な甲状腺濾胞腺種ならびに濾胞腺癌もpolyclonal patternを示した。さらに甲状腺乳頭癌もpolyclonalと判定された。2.上記(3)の結果は、腫瘍組織の間質細胞DNAの干渉に起因すると推定し、Dynal社製Magnet-beads(BerEP4抗体結合)を用いて腫瘍組織からの癌細胞選択的採取を試みた。(1)組織消化条件を調節した結果、乳頭癌細胞は13個の、リンパ球やfibroblastなどの間質細胞は単個に分離でき、BerEP4-coated magnetbeadsにより、ほぼ上皮細胞のみからなる細胞集団を分取できた。しかし、組織消化時に使用する酵素(trypsin)によって正常甲状腺濾胞細胞のBerEP4抗原性が賦活化され、病変周囲の正常細胞も同時に回収されている可能性が指摘された。(2)腫瘍細胞以外に上皮細胞が存在しなし甲状腺濾胞癌の軟部組織への転移巣に対し、同手法を用いたところ、monoclonal patternが得られた。3.Magnet-beadsを用いた細胞分取法は標的細胞以外に上皮細胞が存在しない検体に有効であり、甲状腺内病変に対しては、古典的なmicrodissectionを用いるべきと思われた。
KAKENHI-PROJECT-10770079
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770079
医学教育における採血・注射シミュレーターの開発
採血技術習得にシミュレータは不可欠であり、既存の製品は解剖学的構造や皮膚の接触感覚、弾力性の点で不完全であり、穿刺による消耗品の発生は経済的に練習機会を制約している。今回、樹脂を選定し穿刺による漏出を高分子吸収ポリマーを利用し耐久性を上げたシミュレータの作成を試みた。学生および研修医による使用感アンケートからは、皮膚の感触や穿刺感覚で6割以上が適切と評価した。構造的改良は今後も必要であるが、穿刺の耐久性および力覚において良好な結果を得たので報告する。目的は、医学教育における採血シミュレータの開発と評価である。昨年度、疑似血管の漏出防止について検討し樹脂特性と高分子吸収ポリマーの使用で漏出を防止の改善を確認した。25年度は、採血用シミュレータの人腕型に形成し、作成したシミュレータと既存のシミュレータとの使用感のアンケートを実施した。腕型シミュレータの作成:人骨格モデルに筋肉層としてシリコン樹脂+ウレタンスポンジを巻きつけたものに、漏出防止機能を持つ疑似血管を這わせ、その上に表皮層に相当するのシリコンカバー(厚み1-2mm)をかぶせた。筋肉層に、2mm押し込みに対する反発力12×10-1MPa程度、表皮層に2.5×10-1MPa程度のシリコンを用いた。表皮カバーは上腕から指先まで一体構造で皮膚様のしわを表現した。疑似血を供給するゴム管は筋肉層の内側を走行させ、手首で分岐し表層を這わせた。腕の内部構造は不完全充填のため、穿刺ミスは空気が入る構造である。製品アンケート:既存と作成シミュレータの皮膚の質感、穿刺感覚、製品としての使用感について、研修医(22人)、学生(29人)の協力を得て比較アンケートを行った。既存品には装着タイプ2製品、一体型1製品を用いた。人へ穿刺機会の多い研修医と機会の少ない学生からの評価は、見た目や皮膚の質感、単純な難易度を評価する学生に対し、穿刺感覚や血管の走行、皮下層の厚みを踏まえた穿刺の難易度を評価をする研修医の意見に差異が示された。特に研修医からは、皮膚や穿刺の現実性に厳しい評価を受けても、練習用の使用の評価には影響は少なかった。今回作成したシミュレータは、研修医からの皮膚感覚や穿刺感覚は高評価を受けたが、練習用の評価は他と差異がなく、利用不可や我慢して利用可能と評価した研修医からは空気流入の指摘があり、現実的でないことが評価を下げたと考察された。今後、内部構造の充填改良が必要である。採血技術習得にシミュレータは不可欠であり、既存の製品は解剖学的構造や皮膚の接触感覚、弾力性の点で不完全であり、穿刺による消耗品の発生は経済的に練習機会を制約している。今回、樹脂を選定し穿刺による漏出を高分子吸収ポリマーを利用し耐久性を上げたシミュレータの作成を試みた。学生および研修医による使用感アンケートからは、皮膚の感触や穿刺感覚で6割以上が適切と評価した。構造的改良は今後も必要であるが、穿刺の耐久性および力覚において良好な結果を得たので報告する。24年度は、採血用シミュレーターの疑似血管の作成が課題であった。人に近い穿刺感覚をもつ柔軟な素材で引き張り強度による耐久性をもち、穿刺による疑似血液の漏出に対する耐久性の強化のための素材の選定を行っている。ベース素材としては、シリコン樹脂を基本として試験を行った。数社のシリコン樹脂を取り寄せ硬化させて卓上試験機FGS-TVにによる破裂試験、荷重検出試験をおこなった。柔軟性の高い樹脂は、荷重試験に対して人に近いDATAを示したが、耐久性の引き裂き強度が弱い傾向にあり、目的の適合性を欠いた結果となった。また穿刺による漏出に対しての耐久性を上げる目的で、樹脂に添加した高分子吸収ポリマー(SAP)実験では、住友精化の協力により3種のSAPを試験することが可能となった。穿刺による耐久性を上げるためには、高濃度比率の添加を必要とすることがわかり、対応した添加濃度では、荷重検出試験に対し、柔軟性が低下し、引き裂き強度に弱化が見られることが分かった。また、SAPとシリコン樹脂単体の硬度の種類の組み合わせによって、穿刺回数による疑似血液漏出に影響が大きいことが分かった。今回、疑似血管の鋳型を注文する費用の捻出が困難となったため、自作の鋳型を作成を試みた。予定外の工程であったため、試作を重ね易熱性樹脂により鋳型作成した。完成度は低いものの疑似血管の形状を作成することができた。SAP添加樹脂の疑似血管を作成し、採血針による穿刺回数と漏出耐久性の実験では、7-10%含有のものが漏出耐久性に優れることが分かったが、時間の経過で給水される樹脂の膨張で、内腔が塞栓を作ることがわかり、内皮膜の樹脂単体に外層にSAP含有樹脂の疑似血管二重構造を作成し、ほぼ良好な耐久性を示した。昨年度は、鋳型作成に時間を割いたため、疑似血管形状の作成法の確立に時間が必要であった。疑似血管の形状作成までは進行しているが、シミュレーター全体の形状作成までは達成されていない。24年度は現在までの達成度で述べたように、計画に若干の遅れが生じている。シミュレーターとしての形状の作成を行うためには、試作の疑似血管を形状作成の試作に利用するため、試験本数以上に必要であり(均一な量産化には至っていないため)、まずは疑似血管の試験可能な量の作成をする。
KAKENHI-PROJECT-24650567
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医学教育における採血・注射シミュレーターの開発
またシミュレーター用に形状試作し、試作シミュレーターと既存のシミュレーターでの耐久性のテスト、および採血経験者による使用感に関するアンケートを行う予定である。昨年度に形状作成に使用する予定であった費用等を25年度に繰越した。作成方法が確定した疑似血管の試作法で、疑似血管を作成するための費用と、シミュレーターとしての形状に作成するまでの費用、アンケートを行うための費用、学会参加費用などに利用予定である。
KAKENHI-PROJECT-24650567
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運動ニューロン疾患の病因に関する研究-脊髄運動ニューロンにおけるCholine acetyltransferase遺伝子発現調節機構の解析-
筋萎縮性側索硬化症を初めとする運動ニューロン疾患は脳脊髄のα運動ニューロンの選択的変性脱落を主体とし、本症の発症にはウイルス感染、外傷、DNA異常などの種々の仮説が考えられているが、その原因、病態は未だ不明である。α運動ニューロンを含むコリン作動性ニューロンにおいて特異的に発現するcholine-acetyltransferase(ChAT)は、acetylcholineの生合成酵素として、その代謝調節に重要な役割を演じている。今回、同ニューロンにおけるChAT遺伝子発現の解明を試みるとともに、同ニューロンに対して親和性を有すると考えられるポリオウイルスとの関連、また、retrograde axonal flowにより脊髄内に蓄積する金属因子としての水銀(Hg)の関連にも検討を加えた。ChAT酵素活性の測定法はSchrierらの方法に準じ、確立しSpraque-Dawleyラットの胎生1214日目および1618日目胎児脊髄のChAT活性を検討した。胎生12-14日目ラット胎児では0.41±0.27p moles/min脊髄、16-18日目胎児では0.86±0.62p moles/min脊髄と胎生期の成熟と一致したChAT活性の変化が明かとなった。このChAT活性にみられるコリン作動性ニューロンの成熟に関連するChAT遺伝子発現解明のために、DNAライブラリー作製、DNA抽出を行っているが、ラット胎生期における経時的変化の解析には至っていない。しかしながら、ChAT transcriptsの局在の検討にはradioactive methodに比してnon-radioactive methodがより良好な結果を示すことから、今後、コリン作動性ニューロン内の組織内分布形態の解析にはnon-radioactive methodが適しているという研究の方向性が示された。一方、コリン作動性ニューロンとポリオウイルスとの関連は北海道における1980年から1989年の10年間の運動ニューロン疾患患者とポリオが流行した1949年から1958年のポリオ患者との疫学的地域別検討を行った。上記対象期間中に389名の運動ニューロン疾患患者と2,171名のポリオ患者を確認し、その地域別別分布の相関性を検討したが、明らかな関連性は認めなかった。また、コリン作動性ニューロン蓄積し得る水銀濃度を筋萎縮性側索硬化症症例と健常人およびパーキンソン病などの他疾患からなる対照で頭髪、血液をサンプルとして解析し、筋萎縮性側索硬化症症例、対照各々の頭髪中水銀濃度は2.38±1.34ppm、2.50±1.29ppm、血漿中濃度が1.33±0.85ng/ml、2.11±1.07ng/mlで、筋萎縮性側索硬化症で低値を示す傾向を明らかにした。今後、他の金属因子についても検討していく。筋萎縮性側索硬化症を初めとする運動ニューロン疾患は脳脊髄のα運動ニューロンの選択的変性脱落を主体とし、本症の発症にはウイルス感染、外傷、DNA異常などの種々の仮説が考えられているが、その原因、病態は未だ不明である。α運動ニューロンを含むコリン作動性ニューロンにおいて特異的に発現するcholine-acetyltransferase(ChAT)は、acetylcholineの生合成酵素として、その代謝調節に重要な役割を演じている。今回、同ニューロンにおけるChAT遺伝子発現の解明を試みるとともに、同ニューロンに対して親和性を有すると考えられるポリオウイルスとの関連、また、retrograde axonal flowにより脊髄内に蓄積する金属因子としての水銀(Hg)の関連にも検討を加えた。ChAT酵素活性の測定法はSchrierらの方法に準じ、確立しSpraque-Dawleyラットの胎生1214日目および1618日目胎児脊髄のChAT活性を検討した。胎生12-14日目ラット胎児では0.41±0.27p moles/min脊髄、16-18日目胎児では0.86±0.62p moles/min脊髄と胎生期の成熟と一致したChAT活性の変化が明かとなった。このChAT活性にみられるコリン作動性ニューロンの成熟に関連するChAT遺伝子発現解明のために、DNAライブラリー作製、DNA抽出を行っているが、ラット胎生期における経時的変化の解析には至っていない。しかしながら、ChAT transcriptsの局在の検討にはradioactive methodに比してnon-radioactive methodがより良好な結果を示すことから、今後、コリン作動性ニューロン内の組織内分布形態の解析にはnon-radioactive methodが適しているという研究の方向性が示された。一方、コリン作動性ニューロンとポリオウイルスとの関連は北海道における1980年から1989年の10年間の運動ニューロン疾患患者とポリオが流行した1949年から1958年のポリオ患者との疫学的地域別検討を行った。上記対象期間中に389名の運動ニューロン疾患患者と2,171名のポリオ患者を確認し、その地域別別分布の相関性を検討したが、明らかな関連性は認めなかった。また、コリン作動性ニューロン蓄積し得る水銀濃度を筋萎縮性側索硬化症症例と健常人およびパーキンソン病などの他疾患からなる対照で頭髪、血液をサンプルとして解析し、筋萎縮性側索硬化症症例、対照各々の頭髪中水銀濃度は2.38±1.34ppm、2.50±1.29ppm、血漿中濃度が1.33±0.85ng/ml、2.11±1.07ng/mlで、筋萎縮性側索硬化症で低値を示す傾向を明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-04670480
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運動ニューロン疾患の病因に関する研究-脊髄運動ニューロンにおけるCholine acetyltransferase遺伝子発現調節機構の解析-
今後、他の金属因子についても検討していく。Spraque-Dawleyラットの胎生12-14日目および16-18日目胎児脊髄のChAT活性の測定法を確立した。培養下胎生12-14日目ラット胎児で0.41 I 0.27p moles/min/脊髄、16-18日目胎児で0.86±0.62p moles/min/脊髄と胎生期によるChAT活性の変化を認めた。ChAT活性にみられるコリン作動性ニューロンの成熟に関与すると考えられるChAT遺伝子発現解明のために、DNAライブラリーを作製し、DNA摘出などを行ったが、その摘出などに時間がかかり、ラット胎児胎生期における経時的変化の解析などには至っていない。運動ニューロン疾患の発症に、環境因子の関与が推定されており、外的要因として金属暴露、運動不可を含めた要因の影響を含めて今後の運動ニューロンにおけるChAT mRNAの定量法、組織内分布形態の解析を行い、本症の解明をめざす。筋萎縮性側索硬化症を初めとする運動ニューロン疾患は脳脊髄のα運動ニューロンの選択的変性脱落を主体とし、本症の発症にはウイルス感染、外傷、DNA異常などの種々の仮説が考えられているが、その原因、病態は未だ不明である。α運動ニューロンを含むコリン作動性ニューロンにおいて特異的に発現するcholine-acetyltransferase(ChAT)は、acetylcholineの生合成酵素として、その代謝調節に重要な役割を演じている。今回、同ニューロンにおけるChAT遺伝子発現の解明を試みるとともに、同ニューロンに対して親和性を有すると考えられるポリオウイルスとの関連、また、retrograde axonal flowにより脊髄内に蓄積する金属因子としての水銀(Hg)の関連にも検討を加えた。一方、コリン作動性ニューロンとポリオウイルスとの関連は北海道における1980年から1989年の10年間の運動ニューロン疾患患者とポリオが流行した1949年から1958年のポリオ患者との疫学的地域別検討を行った。上記対象期間中に389名の運動ニューロン疾患患者と2,171名のポリオ患者を確認し、その地域別別分布の相関性を検討したが、明らかな関連性は認めなかった。また、コリン作動性ニューロンに蓄積し得る水銀濃度を筋萎縮性側索硬化症症例と健常人およびパーキンソン病などの他疾患からなる対照で頭髪、血液をサンプルとして解析し、筋萎縮性側索硬化症症例、対照各々の頭髪中水銀濃度は2.38±1.34ppm、2.50±1.29ppm、血漿中濃度が1.33±0.85ng/ml、2.11±1.07ng/mlで、筋萎縮性側索硬化症で低値を示す傾向を明らかにした。今後、他の金属因子についても検討していく。
KAKENHI-PROJECT-04670480
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徳川秀忠・徳川家光関係文書の基礎的研究
本研究は、徳川秀忠・徳川家光関係文書を収集し、その集めえた文書をデータベース化することを第一の目的とし、そこから当該期の将軍権力の歴史的特質と日本近世の政治機構・組織の形成過程を明らかにすることを次なる目的とした。まず、従来収集してきた徳川秀忠発給文書・徳川家光発給文書に加えて、未調査である東京大学史料編纂所所蔵の島津家文書、国立資料館所蔵の蜂須賀家文書、防府毛利博物館蔵の毛利家文書、土佐山内家宝物資料館蔵の山内家文書中の調査、さらに内閣文書所蔵の秀忠・家光関係文書の調査を行った。収集しえた文書は、秀忠案内書が1283点、家光案内書が814点、領知宛行状が2431点が主なものである。これらをデータベース化し、その過半を研究成果報告書に載せた。具体的な分析としては、第一に、家光の花押を据えた文書のうち将軍就任までの文書について検討を加え、元和6年から元和9年までの家光の花押の変遷を確定し、かつ花押の変遷が年号を付さない文書の年代推定の有力な手段であることを明らかにした。その成果は、「徳川家光花押文書の研究(上)」(『京都大学文学部紀要』38号)として発表した。第二に、徳川秀忠大御所時代の領知宛行状について、その発給者の確定、文書様式を検討し、この時期の領知宛行状の発給者は、将軍家光ではなく大御所秀忠であったことを確定した。その成果は、「徳川秀忠大御所時代の領知宛行状」(『日本歴史』寄稿中)として発表予定である。本研究は、徳川秀忠・徳川家光関係文書を収集し、その集めえた文書をデータベース化することを第一の目的とし、そこから当該期の将軍権力の歴史的特質と日本近世の政治機構・組織の形成過程を明らかにすることを次なる目的とした。まず、従来収集してきた徳川秀忠発給文書・徳川家光発給文書に加えて、未調査である東京大学史料編纂所所蔵の島津家文書、国立資料館所蔵の蜂須賀家文書、防府毛利博物館蔵の毛利家文書、土佐山内家宝物資料館蔵の山内家文書中の調査、さらに内閣文書所蔵の秀忠・家光関係文書の調査を行った。収集しえた文書は、秀忠案内書が1283点、家光案内書が814点、領知宛行状が2431点が主なものである。これらをデータベース化し、その過半を研究成果報告書に載せた。具体的な分析としては、第一に、家光の花押を据えた文書のうち将軍就任までの文書について検討を加え、元和6年から元和9年までの家光の花押の変遷を確定し、かつ花押の変遷が年号を付さない文書の年代推定の有力な手段であることを明らかにした。その成果は、「徳川家光花押文書の研究(上)」(『京都大学文学部紀要』38号)として発表した。第二に、徳川秀忠大御所時代の領知宛行状について、その発給者の確定、文書様式を検討し、この時期の領知宛行状の発給者は、将軍家光ではなく大御所秀忠であったことを確定した。その成果は、「徳川秀忠大御所時代の領知宛行状」(『日本歴史』寄稿中)として発表予定である。徳川秀忠・徳川家光関係文書を収集し、その集めえた文書をデータベイス化することを第一の目的とし、そこから当該期の将軍権力の歴史的特質と日本近世の政治機構・組織の形成過程を明らかにすることを次なる目標としている。本年度は、これまで集めえた徳川秀忠発給文書・徳川家光発給文書をパソコンに入力する作業を行い、秀忠・家光の武家宛ての領知宛行状と家光の御内書についてはほぼ入力を終えた。この過程で領知宛行状の発給主体が写の場合しばしば混乱のあることが判明した。また未調査である東京大学史料編纂所所蔵の島津家文書、国立資料館所蔵の蜂須賀家文書の調査、さらに内閣文庫所蔵の秀忠・家光関係文書の調査を行った。この他、史料目録類で関係史料の所在を確認した。具体的な分析としては、家光の花押の変遷の研究を行った。その結果、家光の花押は、父秀忠のものを手本としたものであり、元和六年の従三位権大納言に叙任以降に花押の使用がはじまり、その後、基本型を変えないが、天地の線、跳ね、線の膨らみなどに時期的に変化のあることを確認した。こうした変化が、家光文書の発給年の特定に利用できるか、現在検討中である。本研究は、徳川秀忠・徳川家光関係文書を収集し、その集めえた文書をデータベース化することを第一の目的とし、そこから当該期の将軍権力の歴史的特質と日本近世の政治機構・組織の形成過程を明らかにすることを次なる目的としている。本年度は、未調査であった防府毛利博物館蔵の毛利家文書、土佐山内家宝物資料館蔵の山内家文書中の徳川秀忠・徳川家光関係文書を調査・撮影し、昨年度作成した秀忠・家光の武家宛ての領知宛行状と家光の御内書のデータベースに補った。さらにこれまで収集した公家宛の領知宛行状、寺社宛の領知宛行状、禅僧への公帖などのデータベースを作成した。
KAKENHI-PROJECT-09610333
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610333
徳川秀忠・徳川家光関係文書の基礎的研究
具体的な分析としては、家光の花押を据えた文書のうち、将軍就任までの文書について検討を加え、元和6年から元和9年までの家光の花押の変遷を確定し、かつ花押の変遷が年号を付さない文書の年代推定の有力な手段であることを明らかにした。その成果は、「徳川家光花押文書の研究(上)」(『京都大学文学部紀要』38号)として発表予定である。本研究は、徳川秀忠・徳川家光関係文書を収集し、その集めえた文書をデータベース化することを第一の目的とし、そこから当該期の将軍権力の歴史的特質と日本近世の政治機構・組織の形成過程を明らかにすることを次なる目的としている。本年度は、データベースを完成するために、これまで調査してきた諸史料について確認調査と補充調査を行った。その成果は、研究成果報告書に収めた。また、具体的な分析として、徳川秀忠大御所時代の領知宛行状について、その発給者の確定、文書様式を検討し、この時期の領知宛行状の発給者は、将軍家光ではなく大御所秀忠であったことを確定した。その成果は、「徳川秀忠大御所時代の領知宛行状」(『日本歴史』寄稿中)として発表予定である。
KAKENHI-PROJECT-09610333
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09610333
超伝導機器冷媒としての液体水素冷却特性に関する研究
液体水素の熱伝達特性に関する物理現象の解明と超伝導応用機器への冷却設計指針を与えることを目的とし、液体水素熱流動特性試験装置の設計製作を行った.浸漬冷却および未臨界圧・超臨界圧での強制対流冷却について、温度・圧力・強制対流流速の種々の条件下において,特に限界熱流束に注目して圧力・サブクール度の影響を系統的に測定した。さらに,浸漬冷却試験では、BSCCOおよびMgB2超伝導線を発熱体として熱伝達特性を取得した。液体水素の熱伝達特性に関する物理現象の解明と超伝導応用機器への冷却設計指針を与えることを目的とし、液体水素熱流動特性試験装置の設計製作を行った.浸漬冷却および未臨界圧・超臨界圧での強制対流冷却について、温度・圧力・強制対流流速の種々の条件下において,特に限界熱流束に注目して圧力・サブクール度の影響を系統的に測定した。さらに,浸漬冷却試験では、BSCCOおよびMgB2超伝導線を発熱体として熱伝達特性を取得した。本研究では、種々の液体水素冷却超電導導体を想定し、これを使った超伝導応用機器の設計を行うための、液体水素の基本的な熱伝達特性を把握することを主たる目的とする。したがって、広範囲の圧力条件下でのサブクール液体水素の浸漬冷却および強制対流冷却特性に関して基礎データを収集する。平成20年度は、既存の液体窒素用強制対流熱伝達実験装置を用いて、液体水素と同様に超伝導導体の冷媒として重要な液体窒素について、超臨界圧までのサブクール液体窒素強制対流熱伝達実験を実施した。この成果については、国際応用超伝導学会論文誌(IEEE Transaction on Applied Supercondcutivity)に報告した。また、液体ヘリウムを用いた超臨界圧強制対流熱伝達実験を実施し、液温・圧力・流速をパラメータとした熱伝達特性データを測定し、国際低温工学会(International Cryogenic Engineering Conference)にて報告した。これらの実験で得た知見をもとに、実験手法の確認、液体水素を用いた実験への展開上の課題を抽出し、液体水素強制対流熱伝達特性のための実験手法を策定した。そして、液体水素の超臨界圧までの実験が可能で、安全性を考慮して遠隔バルブ操作・計測を実現した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を設計・製作した。次年度以降は、製作した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を用いて、発熱体を含んだ種々の大きさ・長さの円管流路や方形状流路を作成・設置し、広範囲な温度・圧力・流速の強制対流下での測定を実施する予定である。初年度は、既存の液体窒素用強制対流熱伝達実験装置を用いて、液体水素と同様に超伝導導体の冷媒として重要な液体窒素について、超臨界圧までのサブクール液体窒素強制対流熱伝達実験を実施した。この実験で得た知見をもとに液体水素強制対流熱伝達特性のための実験手法を策定し、超臨界圧までの実験を可能で、安全性を考慮して遠隔バルブ操作・計測を実現した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を設計・製作した。昨年度は、製作した液体水素用強制対流熱伝達実験装置を用い、液体水素浸漬冷却実験として、液体水素中のマンガニン製平板発熱体からの定常・及び過渡熱伝達を、サブクール度、圧力、発熱率上昇速度などをパラメータとし、試験ヒータを指数関数状に緩やかに加熱することで対流から核沸騰、膜沸騰にいたる熱伝達特性を取得し、臨界熱流束の圧力及びサブクール温度依存性を評価するデーダを得た。核沸騰状態の熱伝達は圧力が大きいほど優れている。飽和沸騰臨界熱流束はKutateladzeの式でおおよそ記述されるが、実験結果は低圧力域で同式より高く、高圧域では低くなる。高圧域では、熱流束の増大で起こる水力的不安定性による臨界状態になる前に、発熱体表面が臨界温度に到達して気泡発生が一気に増加するのが一因と考えられる。強制対流試験では、LH2液送ラインの入口先端部にFRPブロックで断熱した試験円管流路を設置し、加圧圧送して液体水素を強制的に流した。非沸騰強制対流熱伝達は、Dittus Boelter式でほぼ記述され、膜沸騰直接遷移は観察されない。臨界熱流束は、流速が大きいほど、サブクール度が大きいほど大きいことが確認された。本研究は、これまで十分に行われていない液体水素の熱伝達特性に関する物理現象の解明と超伝導応用機器への冷却設計指針を与えることを目的とし、JAXA能代多目的実験場にて実施した。昨年度までに,液体水素熱流動実験装置を設計製作し,これを用いて昨年度実施した2回の試験で、液体水素の浸漬冷却(プール)および未臨界圧・超臨界圧での強制対流冷却について、圧力・サブクール度の影響を系統的に測定することができることを確認した。今年度実施した試験では、昨年度までに整備した実験装置を用い、試験発熱体を水平流路として重力の影響を検討する熱伝達実験を行った。この強制流動発生中に円管流路の一部に直流電流を流して加熱し、メインタンク圧力を0.4,0.7,1.1MPaとしサブクール温度(10K)を設定し、流速を変化(10m/s)させて、強制対流熱伝達特性を測定し、水平管路と垂直管路での相違を調べた。プール冷却試験については、マンガニン平板発熱体を用い発熱面を重力線に垂直にして対流から核沸騰、膜沸騰にいたる熱伝達特性を取得し、臨界熱流束の圧力及びサブクール温度依存性を評価するデータを得た。
KAKENHI-PROJECT-20360127
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超伝導機器冷媒としての液体水素冷却特性に関する研究
同様の試験を発熱体をSUSに変更し発熱面をたてて実施し、重力線に対する発熱面の位置角度の影響を調べた。超電導材冷却を想定して、クエンチによる急な発熱に対する冷却特性を調べるため、発熱体加熱速度をパラメータとして過渡熱伝達特性を測定した。さらに、流路管径を3mm,6mmおよび9mmと変えて,強制対流熱伝達特性への管路径の影響を検討した。また、浸漬冷却試験体として超伝導線材(BSCCO,MgB2)を用い、過電流通電時の冷却特性を測定した。さらに,管径6mmの試験体の流路長を2倍(200mm)とし強制対流熱伝達特性への管路長さの影響を調査した。管径9mmの試験体は、垂直設置し重力の影響を調べた。浸漬冷却試験体として超伝導線材(MgB2)を用い、過電流通電時の冷却特性を測定した。さらに、熱伝達と流速の関係を利用した液体水素流速計の設計のための基礎データを測定した。
KAKENHI-PROJECT-20360127
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20360127
クレンチングが頭位ならびに姿勢に及ぼす影響
平成13年度から14年度に、クレンチングが頭位ならびに姿勢に及ぼす影響を明らかにするために、以下の研究を行った。まず、被験者として、正常有歯顎者8名を選択し、咬頭嵌合位、全歯列接触型スプリント装着時、片側(左側、右側)、臼歯部接触型スプリント装着時のそれぞれの咬合位で、5秒間のクレンチング(以下、VMCとする)を試行させ、VMC試行時および下顎安静時における頭位を磁気センサ式3次元空間計測装置によって、測定・記録した。また、左右側の閉口筋および胸鎖乳突筋の表面筋電図を記録し、筋電図積分値を算出し、分析を行った。なお、閉口筋および胸鎖乳突筋の筋活動の左右的バランスを表示する非対称性指数(以下AIとする)を算出した。その結果、クレンチング時には頚部が前屈すること、また、クレンチング時の咬合支持の左右的不均衡は閉口筋の筋活動の不均衡のみならず、頚部筋の筋活動の不均衡をもたらし、その結果、頚部の咬合支持側への側屈をもたらすことが明らかになった。このことは、咬合機能と頭位すなわち姿勢との密接な関連を示唆するものである。次いで、正常有歯顎者5名を被験者として選択し,随意最大等尺性運動である両側の握力測定を行わせ,咬筋,側頭筋前部および胸鎖乳突筋の筋電図,下顎運動,頭位,重心動揺を同時に記録した.その結果、(1)被験者は身体運動時にクレンチングの発現する群(Clenching group : 3名)と発現しない群(Non-clenching group : 2名)に分類できた。(2)身体運動時の頭位については,Clenching groupでは前屈する傾向が認められたが、Non-clenching groupでは一定の頭位変化は認められなかった.さらに、正常有歯顎者6名を被験者として、閉眼状態で直立姿勢をとらせ,振り子を用いて右側腸骨稜側面に8.82Jの衝撃荷重を負荷し、頭部動揺,重心動揺,左右咬筋および左右胸鎖乳突筋の筋活動を測定した。なお、咬合条件は、下顎安静時(以下,Rest時),軽度の噛みしめ時,中等度の噛みしめ時,意識的最大噛みしめ時とした。なお、クレンチング強度の規定には,聴覚的フィードバックシステムを用いた.その結果、頭部動揺については,全てのクレンチング時の頚部側屈角最大振幅,頚部回旋角最大振幅および頭部動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).重心動揺については,全てのクレンンチング時の重心動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).筋活動量については,クレンチング強度が大きくなるにつれて,胸鎖乳突筋の筋活動量が有意に増大した(P<0.05).以上の結果から,咬筋と側頭筋は胸鎖乳突筋と共同して,頭部の固定あるいは運動に関与していること、また、身体のバランスを乱すような外力の負荷に対して,クレンチングとこれに随伴する胸鎖乳突筋の筋活動が頭部の固定に関与し,頭部動揺を抑制するとともに,全身の重心動揺を抑制する役割を担っている可能性が示唆された.平成13年度から14年度に、クレンチングが頭位ならびに姿勢に及ぼす影響を明らかにするために、以下の研究を行った。まず、被験者として、正常有歯顎者8名を選択し、咬頭嵌合位、全歯列接触型スプリント装着時、片側(左側、右側)、臼歯部接触型スプリント装着時のそれぞれの咬合位で、5秒間のクレンチング(以下、VMCとする)を試行させ、VMC試行時および下顎安静時における頭位を磁気センサ式3次元空間計測装置によって、測定・記録した。また、左右側の閉口筋および胸鎖乳突筋の表面筋電図を記録し、筋電図積分値を算出し、分析を行った。なお、閉口筋および胸鎖乳突筋の筋活動の左右的バランスを表示する非対称性指数(以下AIとする)を算出した。その結果、クレンチング時には頚部が前屈すること、また、クレンチング時の咬合支持の左右的不均衡は閉口筋の筋活動の不均衡のみならず、頚部筋の筋活動の不均衡をもたらし、その結果、頚部の咬合支持側への側屈をもたらすことが明らかになった。このことは、咬合機能と頭位すなわち姿勢との密接な関連を示唆するものである。次いで、正常有歯顎者5名を被験者として選択し,随意最大等尺性運動である両側の握力測定を行わせ,咬筋,側頭筋前部および胸鎖乳突筋の筋電図,下顎運動,頭位,重心動揺を同時に記録した.その結果、(1)被験者は身体運動時にクレンチングの発現する群(Clenching group : 3名)と発現しない群(Non-clenching group : 2名)に分類できた。(2)身体運動時の頭位については,Clenching groupでは前屈する傾向が認められたが、Non-clenching groupでは一定の頭位変化は認められなかった.さらに、正常有歯顎者6名を被験者として、閉眼状態で直立姿勢をとらせ,振り子を用いて右側腸骨稜側面に8.82Jの衝撃荷重を負荷し、頭部動揺,重心動揺,左右咬筋および左右胸鎖乳突筋の筋活動を測定した。
KAKENHI-PROJECT-13672048
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13672048
クレンチングが頭位ならびに姿勢に及ぼす影響
なお、咬合条件は、下顎安静時(以下,Rest時),軽度の噛みしめ時,中等度の噛みしめ時,意識的最大噛みしめ時とした。なお、クレンチング強度の規定には,聴覚的フィードバックシステムを用いた.その結果、頭部動揺については,全てのクレンチング時の頚部側屈角最大振幅,頚部回旋角最大振幅および頭部動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).重心動揺については,全てのクレンンチング時の重心動揺軌跡長はRest時のそれに比べて有意に小さな値を示した(P<0.05).筋活動量については,クレンチング強度が大きくなるにつれて,胸鎖乳突筋の筋活動量が有意に増大した(P<0.05).以上の結果から,咬筋と側頭筋は胸鎖乳突筋と共同して,頭部の固定あるいは運動に関与していること、また、身体のバランスを乱すような外力の負荷に対して,クレンチングとこれに随伴する胸鎖乳突筋の筋活動が頭部の固定に関与し,頭部動揺を抑制するとともに,全身の重心動揺を抑制する役割を担っている可能性が示唆された.平成13年度は、クレンチングが頭位に及ぼす影響を明らかにするために、以下の研究を行った。被験者として、顎口腔系に異常を認めない個性正常咬合を有する男性8名を選択した。各被験者に対して、坐位で閉眼状態にて、咬頭嵌合位、全歯列接触型スプリント装着時、片側(左側、右側)、臼歯部接触型スプリント装着時のそれぞれの咬合位で、5秒間の随意最大噛みしめ(以下、VMCとする)を試行させた。VMC試行時および下顎安静時における頭位を磁気センサ式3次元空間計測装置により、測定・記録した。頭位は頚部前後屈角、頚部側屈角、頚部回旋角について、VMC開始2秒後から4秒後までの2秒間平均値を算出し、分析を行った。左右側の閉口筋(咬筋、側頭筋前部)および胸鎖乳突筋の表面筋電図を記録し、筋電図積分値(2秒後から4秒後までの区間)を算出し、分析を行った。なお、閉口筋および胸鎖乳突筋の筋活動の左右的バランスを表示する非対称性指数(左右側の筋活動積分値の差をその和で除した値。以下AIとする)を算出した。頚部前後屈角について分析した結果、下顎安静位に比較して、咬合支持条件に拘わらず頚部は前屈した。また、頚部側屈角について分析した結果、頚部が咬合支持側に側屈する結果が得られた。頚部回旋角については、被験者間に一定の傾向が認められなかった。さらに、スプリント装着におけるVMC試行時の閉口筋AI、胸鎖乳突筋AIおよび頚部側屈角の3項目について、相関関係を分析した結果、閉口筋AIと胸鎖乳突筋AIとの間(r=0.57、P<0.05)に、また、胸鎖乳突筋AIと頚部側屈角との間(r=0.43、P<0.05)に有意な相関が認められた。以上の結果から、クレンチング時には頚部が前屈すること、また、クレンチング時の咬合支持の左右的不均衡は閉口筋の筋活動の不均衡のみならず、頚部筋の筋活動の不均衡をもたらし、その結果、頚部の咬合支持側への側屈をもたらすことが明らかになった。このことは、咬合機能と頭位すなわち姿勢との密接な関連を示唆するものであり、さらに咬合異常と頭頚部筋群における筋症状の発現との関連性を裏付けるのものであると考える。まず、正常有歯顎者5名を被験者として選択し,随意最大等尺性運動である両側の握力測定を行わせ,咬筋,側頭筋前部および胸鎖乳突筋の筋電図,下顎運動,頭位,重心動揺を同時に記録した.その結果、(1)被験者は身体運動時にクレンチングの発現する群(Clenching group : 3名)と発現しない群(Non-clenching group : 2名)に分類できた.(2)身体運動時の頭位については,Clenching groupでは前屈する傾向が認められたが、Non-clenching groupでは一定の頭位変化は認められなかった.
KAKENHI-PROJECT-13672048
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上皮幹細胞を用いた自家培養口腔粘膜の短期間で高能率な作製法の開発
生後13日の新生児ラットから口腔粘膜(頬粘膜)を採取した。口腔粘膜上皮を粘膜固有層から分離するために、ディスパーゼ処理を施し、その後、ピンセットにて、上皮を慎重に剥離した。口腔粘膜固有層の組織片をαMEM中で十分に細切して、ストレーナーで、余分な組織を除去したのち、カルチャーディッシュに播種した。10%FBS添加αMEMにて、約80%程度のサブコンフルエントな状態にまで培養すると、酵素処理にて線維芽細胞を剥離し、6代まで継代培養した。増殖させた線維芽細胞を、コラーゲンゲル内で培養した。しかしながら、コラーゲンゲルを種々の厚さにして培養した場合、その厚みが増すと、3次元的な線維芽細胞の培養を行っている途中で、細胞の増殖が停滞・ときには細胞死が生じた。コラーゲンゲルの厚みの検討を現在行っているため、技術的に十分な培養口腔粘膜固有層の作製には至ってない。次に、分離した口腔粘膜上皮を用いて、上皮底面を機械的に擦り、上皮細胞を多く分離させた後、上皮細胞専用の無血清培地にて分離培養した。種々の表面抗原をマーカーにして、FACSにて、上皮幹細胞の単離に挑戦した。しかしながら、1度に採取できる上皮幹細胞の数が少ないためか、分離してきた細胞が組織幹細胞として、的確でなかったためか、上皮細胞が十分にシート状に培養できなかった。口腔上皮から分離した上皮細胞を、上述のコラーゲンの上で培養すると、シート状の培養上皮は作製可能であったが、23週間必要で、その大きさが小さいため、培養上皮シートの迅速かつ大量な作製を目指した本研究の目的には適していなかった。現在、上皮幹細胞のFACSによる分離・培養法を検討中である。人工口腔粘膜作製技術は、口蓋裂患者や腫瘍切除後の粘膜欠損に対する補填再建、そしてインプラント患者や義歯患者の歯槽粘膜の再建などへの応用のために、その向上が待たれる技術である。本研究の目的は人工の口腔粘膜移植片を作製し、現在の課題である質感、安定性操作性に問題なく、永久生着もでき、そして拘縮にも抵抗できる自家培養口腔粘膜を目標として、まず実験ラットを対象として短期間内に大量に作製できる培養法の確立にある。そして、この動物の培養法の確立は、最終目標であるヒト自家口腔粘膜の短期間、大量作製法の確立につながる。ラット頬粘膜より採取した上皮を含んだ組織片をdispase(合同酒精)にて処理し、4時間後に上皮を剥離した。その後、トリプシン処理により細胞を採取し、培養dish上に捲いた。単層にて早期にconfluentになるように、培養液の組成、数種の培養液を組み合わせや、それぞれの培養液を使用する期間、培養dishのコーティング処理などの条件を検討した。その結果Medium 154Sで安定した単層の細胞が得られるようになった。今後多層化した安定したシートの作製の条件を検討していく。一方、培養dishから上皮細胞のシートの回収には、これまで、ディスパーゼなどの酵素が用いられてきているが、この処理により細胞が侵襲を受けることが知られている。そこで我々は温度感受性高分子(ポリN-イソプロピルアクリルアミド)の上で培養を試みている。これは予め培養ディッシュの表面に高分子をコーティングしておき、その上で上皮細胞を37°Cにて培養、その後32°C以下では可溶性であるので培養上皮シートが溶液中に脱離してくる。本年度は単層のコロニー形成した細胞を得ることができたので、今後シート状の形成を試みていく。生後13日の新生児ラットから口腔粘膜(頬粘膜)を採取した。口腔粘膜上皮を粘膜固有層から分離するために、ディスパーゼ処理を施し、その後、ピンセットにて、上皮を慎重に剥離した。口腔粘膜固有層の組織片をαMEM中で十分に細切して、ストレーナーで、余分な組織を除去したのち、カルチャーディッシュに播種した。10%FBS添加αMEMにて、約80%程度のサブコンフルエントな状態にまで培養すると、酵素処理にて線維芽細胞を剥離し、6代まで継代培養した。増殖させた線維芽細胞を、コラーゲンゲル内で培養した。しかしながら、コラーゲンゲルを種々の厚さにして培養した場合、その厚みが増すと、3次元的な線維芽細胞の培養を行っている途中で、細胞の増殖が停滞・ときには細胞死が生じた。コラーゲンゲルの厚みの検討を現在行っているため、技術的に十分な培養口腔粘膜固有層の作製には至ってない。次に、分離した口腔粘膜上皮を用いて、上皮底面を機械的に擦り、上皮細胞を多く分離させた後、上皮細胞専用の無血清培地にて分離培養した。種々の表面抗原をマーカーにして、FACSにて、上皮幹細胞の単離に挑戦した。しかしながら、1度に採取できる上皮幹細胞の数が少ないためか、分離してきた細胞が組織幹細胞として、的確でなかったためか、上皮細胞が十分にシート状に培養できなかった。口腔上皮から分離した上皮細胞を、上述のコラーゲンの上で培養すると、シート状の培養上皮は作製可能であったが、23週間必要で、その大きさが小さいため、培養上皮シートの迅速かつ大量な作製を目指した本研究の目的には適していなかった。現在、上皮幹細胞のFACSによる分離・培養法を検討中である。
KAKENHI-PROJECT-14657468
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14657468
中国沿岸から日本海への物質輸送過程解明に向けた東シナ海・黄海表層流変動の理解
本研究では、対馬暖流による東シナ海から日本海への物質輸送の現状把握と、東シナ海・日本海の表層流の時間変化特性を現場観測と人工衛星海面高度計データにより行った。東シナ海から日本海への物質輸送量の経年変化は大きく、その変化は東シナ海上での流動場の変化が大きく関係していることが明らかになった。また、衛星高度計データ解析により東シナ海、日本海南西部の表層流の変動特性を明らかにし、さらに、東シナ海・黄海の衛星高度計データの精度向上のための潮汐同化モデルの開発に成功した。本研究では、対馬暖流による東シナ海から日本海への物質輸送の現状把握と、東シナ海・日本海の表層流の時間変化特性を現場観測と人工衛星海面高度計データにより行った。東シナ海から日本海への物質輸送量の経年変化は大きく、その変化は東シナ海上での流動場の変化が大きく関係していることが明らかになった。また、衛星高度計データ解析により東シナ海、日本海南西部の表層流の変動特性を明らかにし、さらに、東シナ海・黄海の衛星高度計データの精度向上のための潮汐同化モデルの開発に成功した。2010年度は、2011年度に実施する海底設置式流速計による係留観測のための準備、潮汐・潮流モデルの開発、潮汐・潮流モデルに同化するための潮汐調和定数の算出を行った。2010年11月に海底設置式架台に水位計を搭載し、2011年度に係留を予定しているポイントとほぼ同じ水深の対馬海峡東水道において設置、回収作業のテストを行い、投入方法、回収方法の確認を行った。このテストにより海底設置架台の形状を改良しなければならないこと、架台の内部に回収のためのロープを搭載しなければならないことが明らかになり、2010年度内に改良、ロープの準備を完了した。潮汐潮流モデルに関しては、公開されている海底地形データからモデル地形を作成し、中国の海図をもとに中国沿岸、特に長江河口域の海底地形を改良、日本近海の潮汐モデルから得られた調和定数を境界条件として観測データを同化しないモデルを構築した。モデル結果を験潮所データと比較したところ、これまでの潮汐・潮流モデルと同程度の精度で潮汐を再現できた。中国沿岸の予報潮位と韓国沿岸の毎時の水位データから調和解析により、両国沿岸の16分潮の潮汐調和定数を計算した。日本沿岸については、潮汐調和定数表から計算対象領域のデータを整理した。また、1992年2010年までの海面高度計データを使い、2つの軌道が交差する点での16分潮の潮汐調和定数を算出した。本研究の中で開発する潮汐・潮流同化モデルと、そのモデルの計算値により潮汐成分を補正した衛星海面高度データの精度検証のため、5月中旬から7月中旬に東シナ海陸棚上の2点に水位計と流速計を設置し観測を実施した。観測海域は底曳き網漁が盛んな海域なため、2010年度に購入した海底設置架台に測器を搭載し観測を実施した。設置時に機器の不具合で小さなトラブルがあり、さらに回収時に切り離し装置の不具合により1台は回収、もう1台は2012年度に回収することとなった。回収できた係留系については欠測のない水位、流速データを取得でき、設置点での8分潮の潮汐と潮流の調和定数を算出できた。潮汐・潮流モデルに関しては、2010年度に構築した非同化モデルの改良を行い、験潮所データの同化実験を行った。大きな改良点としては、計算領域を2010年度より広くすることで東シナ海陸棚上への開境界の影響を減少させたことと、境界条件および各種パラメータを調整することにより韓国西岸の潮汐振幅が非常に大きい海域の再現性を向上できたことである。また、中国、韓国の験潮所データをモデルに同化したことで特に中国東岸の再現性を向上させることに成功した。衛星高度計データ解析としては、現状最も精度がよいとされる数値モデル結果により潮汐補正を行い、この衛星高度計データと漂流ブイデータから東シナ海の平均流速場を計算し、さらにその平均流速場と衛星高度計データとを組み合わせ1995年から2007年までの月平均海面流速場データセットを作成した。2011年度に回収できなかった係留系を回収後、2011年に引き続き、潮汐・潮流同化モデルと衛星海面高度計データの検証のため、東シナ海陸棚上と対馬海峡内に2ヶ月程度、水位計と流速計を海底設置架台に搭載し観測を実施した。設置・回収に関しては特に大きなトラブルはなく、データから8分潮の潮汐と潮流の調和定数を推算できた。潮汐・潮流モデルに験潮所データだけでなく、衛星高度計データから計算した水位情報も同化できるモデルを構築した。このモデル結果と観測値の比較から、これまで最も精度がよいとされていたモデルの誤差に比べ倍以上の精度で潮汐を再現できるようになった。特に主要4分潮の誤差は当初目的とした精度を満足するものであった。さらに、同化する衛星高度計データ数へのモデルの応答を調べ、軌道沿いに同化するデータを増やすよりも全体的に分散するように、そしてより正確なデータを同化することが必要であることを明らかにした。また、この潮汐・潮流同化モデルの結果を使い衛星海面高度計データの潮汐補正を行い1995年から2009年までの海面高度データセットを作成した。2011年度に作成した東シナ海の月平均流速場データの解析を実施した。
KAKENHI-PROJECT-22310009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22310009
中国沿岸から日本海への物質輸送過程解明に向けた東シナ海・黄海表層流変動の理解
この解析結果から台湾暖流、黒潮の陸棚上への分岐、黒潮、東部東シナ海での黒潮分岐流が比較的安定して流れていることが分かった。さらに、時間変化に注目すると年周期の変動が最も卓越していることが明らかとなった。この年周期の変動は台湾北東海域と対馬海峡からそれぞれ伝播してくる渦度偏差で特徴付けられ、台湾北東海域を起源とするシグナルは100mの等深線に沿って黒潮の下流方向へ、対馬海峡を起源とするシグナルは100200mの等深線に沿って対馬暖流の上流方向へ伝播することが示された。予定していた東シナ海での2台の水位計、流速計の係留は成功したが機器のトラブルにより1台を回収できなく観測データ取得においては計画よりやや遅れている。しかし、潮汐潮流モデルの開発、衛星高度計データ解析は概ね予定通り実行できている。24年度が最終年度であるため、記入しない。引き続き潮汐・潮流同化モデルの開発を進め当初目的とした精度で潮汐を再現できるモデルにする。さらに、モデルに同化するデータの精度検証、観測データとの比較によりデータ同化手法の検討を行い、潮汐および潮流の再現精度を向上させる。本研究で構築したモデルの出力を使い衛星高度計の潮汐補正を行い、東シナ海陸棚上の表層流変動、特に季節変動を明らかにする。今年度回収できなかった海底設置式流速計を夏に予定されている航海で回収する。今回トラブルを起こした船上から信号を送るシステムの修理、動作確認を綿密に行い確実に機器を回収できるように準備を行う。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22310009
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22310009
対称系と強双曲系
我々のとった研究計画,研究方法は概ね次のとうりであった.(i)対称化可能でない強双曲系はどのように特徴づけられるか.(ii)対称化可能な系の双曲摂動を研究する.(i)については以下の結果を得た.Lをm×mの一階偏微分方程式系とする.hでLの主シンボルの行列式を表わすとするとき,我々の得た結果は概略次のように述べられる:Lが強双曲系ならば,すべてのm-1次行列式印紙kに対しh+kに対するCauchy問題が適切となる.さらに考えている特性点zが包合的ならば,系が強双曲系となるためには,KerL (z) ∩ImL (z)={0}が必要である.このときLのKerLに沿ったテイラー展開は一次の項L_zから始まる.これはLをKerL上で近似するものでLの局所化と呼ばれる.さてzとwが各々系Lおよびその局所化L_zの特性点でさらに(z, w)が包合的ならば,Lが強双曲系であるためにはKerL_z (w) ∩ImL_z (w)={0}が必要である.(ii)については我々はまず,非退化特性点の概念を得た.zが非退化であるとはKerL (z) ∩ImL (z)={0}でL_zの次元が極大でさらにL_z (w)はすべてのwに対して対角化可能のときをいう.我々の得た主結果は双曲系は非退化特性点のまわりで対称化できるというものである.このことから非退化特性点の安定性が従う.すなわち,系に双曲摂動を加えても,非退化特性点は消えない.我々はこの研究をさらに推し進め次の結果を得た.Lをm×mの対称双曲系とする.今Lの次元がm (m+1)/2-m+2より大ならば,一般に,Lの双曲摂動は自明,即ち,摂動された系は再び対称化可能である.我々のとった研究計画,研究方法は概ね次のとうりであった.(i)対称化可能でない強双曲系はどのように特徴づけられるか.(ii)対称化可能な系の双曲摂動を研究する.(i)については以下の結果を得た.Lをm×mの一階偏微分方程式系とする.hでLの主シンボルの行列式を表わすとするとき,我々の得た結果は概略次のように述べられる:Lが強双曲系ならば,すべてのm-1次行列式印紙kに対しh+kに対するCauchy問題が適切となる.さらに考えている特性点zが包合的ならば,系が強双曲系となるためには,KerL (z) ∩ImL (z)={0}が必要である.このときLのKerLに沿ったテイラー展開は一次の項L_zから始まる.これはLをKerL上で近似するものでLの局所化と呼ばれる.さてzとwが各々系Lおよびその局所化L_zの特性点でさらに(z, w)が包合的ならば,Lが強双曲系であるためにはKerL_z (w) ∩ImL_z (w)={0}が必要である.(ii)については我々はまず,非退化特性点の概念を得た.zが非退化であるとはKerL (z) ∩ImL (z)={0}でL_zの次元が極大でさらにL_z (w)はすべてのwに対して対角化可能のときをいう.我々の得た主結果は双曲系は非退化特性点のまわりで対称化できるというものである.このことから非退化特性点の安定性が従う.すなわち,系に双曲摂動を加えても,非退化特性点は消えない.我々はこの研究をさらに推し進め次の結果を得た.Lをm×mの対称双曲系とする.今Lの次元がm (m+1)/2-m+2より大ならば,一般に,Lの双曲摂動は自明,即ち,摂動された系は再び対称化可能である.1.強双曲系の多重特性点で主シンボルの満たすべき条件はすでに知られているが、多重特性点の集合が包合的であるとき、主シンボルの局所化も同じ条件を満たすことを示した。即ち、特性点が包合的ならば、強双曲系のための必要条件は、局所化へと遺伝していく。2.変数係数の強双曲系の局所化は、定数係数の場合とは異なり、特性点が包合的であっても、必ずしも対角化可能でないことを例を挙げて示した。このことから、変数係数の強双曲系の構造は相当に複雑であることが推察される。3.包合的な特性点での局所化を更に詳しく研究した。この局所化の多重特性点が、余法束上の相対シンプレクティック形式に関して包合的ならば、この局所化は対角化可能であることを示した。即ち、局所化は包合的多重特性点で対角化可能でる。4.二次特性点において定義されていた、非退化という概念を一般の特性点にまで拡張した。この概念を使っていなかる系が滑らかに対称化可能であるか、という問題に関して、次の結果を得た:系の特性点が非退化でかつ局所化は対角化可能ならば、系はこの点の近くで滑らかに対称化可能である。
KAKENHI-PROJECT-07454027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454027
対称系と強双曲系
5.更に、局所化が対角化可能な非退化特性点は双曲摂動に対して安定であることを示し、この事実を利用して、F.Johnの古典的結果を拡張し、またその仕組を明らかにした。我々のとった研究計画,研究方法は概ね次のとうりであった.(i)対称化可能でない強双曲系はどのように特徴づけられるか.(ii)対称化可能な系の双曲摂動を研究する.(i)については以下の結果を得た.Lをm×mの一階偏微分方程式系とする.hでLの主シンボルの行列式を表わすとするとき,我々の得た結果は概略次のように述べられる:Lが強双曲系ならば,すべてのm-1次行列式因子kに対しh+kに対するCauchy問題が適切となる.さらに考えている特性点zが包合的ならば,系が強双曲系となるためには,KerL(z)∩ImL(z)={0}が必要である.このときLのKerLに沿ったテイラー展開は一次の項L_zから始まる.これはLをKerL上で近似するものでLの局所化と呼ばれる.さてzとωが各々系Lおよびその局所化L_zの特性点でさらに(z,ω)が包合的ならば,Lが強双曲系であるためにはKerL_z(ω)∩ImL_z(ω)={0}が必要である.(ii)については我々はまず,非退化特性点の概念を得た.zが非退化であるとはKerL(z)∩ImL(z)={0}でL_zの次元が極大でさらにL_z(ω)はすべてのωに対して対角化可能のときをいう.我々の得た主結果は双曲系は非退化特性点のまわりで対称化できるというものである.このことから非退化特性点の安定性が従う.すなわち,系に双曲摂動を加えても,非退化特性点は消えない.我々はこの研究をさらに推し進め次の結果を得た.Lをm×mの対称双曲系とする.今Lの次元がm(m+1)/2-m+2より大ならば,一般に,Lの双曲摂動は自明,即ち,摂動された系は再び対称化可能である.
KAKENHI-PROJECT-07454027
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07454027
分光学的手法及び計算科学による大気圧非平衡プラズマ-液相相互作用の研究
大気圧非平衡プラズマー液相相互作用を用いた応用研究が急速な広がりを見せているが、知見が不足していると感じられる界面現象に注力して研究に取り組んだ。電場の界面水分子構造への影響を調査するため、界面構造のみに活性な分光学的手法の一つである和周波発生分光に取り組んだ。測定対象界面はフッ化カルシウム/水溶液(pH3.8)界面とし、外部電場は界面垂直方向に印加した。四面体配位構造に起因すると考えられているピークは強い外部電場応答性を示し、比較的弱い電界によって水界面構造の配向性を制御できることを示した。更に、粒子計算によって、高エネルギー中性粒子による素過程も考慮に入れる必要性があることを示した。大気圧非平衡プラズマー液相相互作用を用いた応用研究が急速な広がりを見せているが、知見が不足していると感じられる界面現象に注力して研究に取り組んだ。電場の界面水分子構造への影響を調査するため、界面構造のみに活性な分光学的手法の一つである和周波発生分光に取り組んだ。測定対象界面はフッ化カルシウム/水溶液(pH3.8)界面とし、外部電場は界面垂直方向に印加した。四面体配位構造に起因すると考えられているピークは強い外部電場応答性を示し、比較的弱い電界によって水界面構造の配向性を制御できることを示した。更に、粒子計算によって、高エネルギー中性粒子による素過程も考慮に入れる必要性があることを示した。近年、バイオ応用、材料プロセス応用、環境応用など、大気圧非平衡プラズマー液相(主に水)相互作用を用いた応用研究が急速な広がりを見せており、更なる飛躍、継続的発展のためにも学術基盤の構築が必要である。本研究では、大気圧プラズマ領域、液相(水)領域、界面領域の3要素に対し、ラジカルの生成、輸送、反応過程に着目し、分光学的手法及び計算科学を用い素過程を明らかにしていく。素過程の理解をもたらすことで、経験的な応用技術改善・開発からの脱却を促し、戦略的応用技術改善・革新へと導く事を目的としている。当該年度には、プラズマー液相相互作用を行うためのプラズマ発生源の開発を行うとともに、可視レーザー及び赤外OPOレーザーの導入や、必要となる光学素子の導入・配置等、プラズマー水界面での和周波分光システムの構築を進めた。また、大気開放放電プラズマ中でのコヒーレントラマン散乱電界計測を通じ、大気開放雰囲気におけるプラズマ生成過程における残留電荷の強い影響を明らかにした。更に、水中でのラマン、蛍光分光を可能とするため、ナノ秒パルスレーザーと、高速イメージング分光を用いたシステムを構築し、バルク中の水分子由来のスペクトル測定に着手した。計算においては、プラズマから供給されるラジカルの水中化学反応における寄与を明確にするための反応速度計算コードの構築を行い、プラズマによる水中へのOH供給が、水中での化学反応に大きく寄与するといった知見を得た。近年、バイオ応用、材料プロセス応用、環境応用など、大気圧非平衡プラズマー液相相互作用を用いた応用研究が急速な広がりを見せており、更なる飛躍、継続的発展のためにも学術基盤の構築が必要である。本研究では、大気圧プラズマ領域、液相領域、界面領域の3要素に対し、素過程の理解をもたらすことで、経験的な応用技術改善・開発からの脱却を促し、戦略的応用技術改善・革新へと導く事を目的とし、特に知見が不足していると感じられる界面現象に注力して研究に取り組んだ。当該年度には、昨年度までに引き続き電界の水界面構造に対する効果に加え、大気圧プラズマから液相界面に照射する高エネルギー粒子の理解に取り組んだ。電場の界面水分子構造への影響を調査するため、界面構造のみに活性な分光学的手法の一つである和周波発生(SFG)分光に取り組んだ。SFG分光には可視レーザー(波長:532 nm)と波長可変赤外レーザー(波長:26003500 nm)を用いた。なお、測定対象界面はCaF2/水界面とした。外部電場は、水溶液中に接地電極を配置し、外部に配置した電極に電圧を印加することにより、界面垂直方向に印加した。水溶液のpHは3.8とした。四面体配位構造に起因すると考えられている3100cm-1付近のピークは強い外部電場応答性を示し、電界によって水表面構造の配向性を制御できるといった知見を得た。界面に照射する高エネルギー粒子に関し、HeおよびAr直流放電について中性粒子に関する運動も計算できる粒子計算コードを作成し計算を行った。高エネルギーイオンによるものよりも、高エネルギー中性粒子によってもたらされるエネルギーフラックスの方が大きい結果が得られ、プラズマー液相相互作用を考える際、高エネルギー中性粒子による素過程も考慮に入れる必要性があることを示した。近年、バイオ応用、材料プロセス応用、環境応用など、大気圧非平衡プラズマー液相(主に水)相互作用を用いた応用研究が急速な広がりを見せており、更なる飛躍、継続的発展のためにも学術基盤の構築が必要である。本研究では、大気圧プラズマ領域、液相(水)領域、界面領域の3要素に対し、ラジカルの生成、輸送、反応過程に着目し、素過程の理解をもたらすことで、経験的な応用技術改善・開発からの脱却を促し、戦略的応用技術改善・革新へと導く事を目的としている。当該年度には、プラズマー液相相互作用の理解をもたらすため、プラズマが液相に影響を与える要素の中から電界に注目し、電界が水の表面構造に与える影響について、可視レーザー(532 nm)及び赤外OPOレーザー(2600-3300 nm)を用いた和周波分光システムを用いて調査した。
KAKENHI-PROJECT-23684049
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分光学的手法及び計算科学による大気圧非平衡プラズマ-液相相互作用の研究
入射光が分子振動と共鳴するときに比較的強い和周波が生成される。界面における非等方性から界面における情報が選択的に得られ、そのスペクトルから界面構造が推測できる。pHおよび外部電界依存性から、外部電界によって水再表面構造の規則性が制御できるといった結果が得られた。また、誘電体との界面で自発的に生成する水の規則的構造は、外部電界の影響によって増強、緩和、反転させることが可能であり、反転に必要な外部電界のpH依存性は、誘電体表面における分極のpH依存性および規則構造を考慮することで説明できる可能性を示した。更に、水接触の大気圧非平衡プラズマに対する空間依存発光分光測定を行い、発光種の同定を行うとともに、水との相互作用による水分子由来のラジカル生成を確認した。また、水中でのラジカル計測や反応速度測定のためのラマン測定や吸収分光測定にも取り組んでおり、反応速度のpH依存性を明らかにするとともに、ラマン分光測定におけるシステム構築を完了させた。初年度においては、ほぼ予定通り実験装置の構築が行われ、計算においても、予定に近い形での進展が進めらてている。更に、当初の予定にはなかった、水中でのラマン分光や蛍光分光を追加できる形で研究が進展しており、当初の計画に対して、順調な進展が見られていると言える。25年度が最終年度であるため、記入しない。当該年度までに、発光分光によるプラズマ中のラジカル計測に取り組み、水との相互作用によるラジカル生成を確認した。また、和周波による水最表面の構造解析においては、電界の寄与による規則性の制御といった興味深い結果が得られており、プラズマー液相相互作用を用いた反応系に十分な知見を与える成果が得られている。更には、吸収分光測定や水中ラマン分光にも取り組んでおり、当初の計画に対して、順調な進展が見られていると言える。平成23年度に主に取り組んだ、界面における和周波分光、および反応計算コードの改良を進めるとともに、ラマン分光や蛍光分光などによる水中での分光を進める。大気圧プラズマ内でのラジカル計測も行い、目的とする大気圧非平衡プラズマー液相相互作用に関する素過程の理解を進める。25年度が最終年度であるため、記入しない。平成24年度には、和周波分光において、水表面構造への電界の影響を中心に調査した。平成25年度には、電界影響による知見を更に深めるとともに、ラジカルによる影響、プラズマとの直接接触による上記2要素の相乗効果などを明らかにしていく。ラマン分光や吸収分光などによる水中での分光測定、発光分光を主体とした気相プラズマ中での測定を進め、更には計算手法による反応解析を進めることで、目的とする大気圧非平衡プラズマー液相相互作用に関する理解を進める。
KAKENHI-PROJECT-23684049
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学校教育におけるジェロントロジー教育のカリキュラム開発システムの展開
本研究は、平成22年度から24年度基盤(C)で行われた研究の継続研究であり、その研究の評価・改善・発展を目指すものである。これまでの研究の成果によるジェロントロジー教育の理論に基づき、教員誰もが参加できるジェロントロジー教育・実践空間を、ホームページとして立ち上げた。この構築にはUniversity of Texas Health Science Center at San Antonioの協力を得、前任校の情報教育研究者との協議によりLinuxの様なOpen Source的なアプローチを展開する方法を一部構築した。以下が平成25年度の研究実施計画の実績概要である。1).国内外のジェロントロジー研究者の協力を得て作成された学校教育におけるジェロントロジー教育理論の枠組みに基づき、統合カリキュラムの理論(本学小林らの基盤B研究)の研究者から助言を得つつ、専門領域の大学教員、現職院生、教員の助言に基づき、共同研究者と共に日本向けの教育プログラムや教材開発システムを評価・改善し発展させ、教材開発をH26年度との関連で進めた。特に身体の老化といった生物学的問題と関わる領域では、小・中学校の理科教科書に掲載されている観察・実験等の類型化とその探究的特徴について、プロセス・スキルズを精選・統合して開発した「探究の技能」に基づいた基礎研究との関わりで展開を試みた。2).1)で評価・改善したジェロントロジー教育のプログラムとその教材をさらに発展させ、Linuxの様なOpen Source的アプローチでそれを展開すため研究を進めている。その研究・開発は、アメリカにおいては、テキサス大学サンアントニオ校でLinda Pruski教授らの協力を得て、スタートさせたところであり、本学で情報教育を担当する大森康正氏と共同することでその研究・開発をH26年度との関連で進めている。また、初等、中等教育における、ジェロントロジー教育研究が進んでいる欧米の実践的プログラムの調査・研究の評価を基に、その教育実践が高齢者イメージにどのような影響を与えるかを文献研究すると同時に、東アジアの研究動向とその教育実践が子どもたちにどのような影響をあたえるかを、東アジアの研究者の協力を得て探ため、H25年度韓国で開催された国際老年学会に出席し、ジェロントロジー教育と高齢者イメージとの関連で研究発表を行った。本研究の目的は、ジェロントロジー教育のプログラムとその教材開発手法の評価・改善とそれに基づく教材開発を進め、Linuxの様なOpen Source的アプローチでそれを展開し、それを多様な教科の教育現場で役立てる方法とそのシステムの評価・改善を行い発展させることである。具体的には、University of Texas Health Science Center at San Antonioの協力より、情報と知識の宝庫である大学・それを生み出す研究者と教育のプロである教職大学院教師や現職院生と協同し、新たなる「知識」をいわば蒸留し「情報」を抽出し、それを児童・生徒のためにわかりやすく翻訳・展開する手法を評価・改善・発展させることである。昨年度実施した研究の成果は、研究計画に示した項目3)の日本の学校教育に即したジェロントロジー教育を展開させるため、ジェロントロジーの研究・教育実践が進んでいるアメリカのUniversity of Texas Health Science Center at San Antonioでの研究と教育実践プログラムに基づき、ウェブページ作成上の問題等を専門家とともに調査・研究し、そこで得られた知見を考察、実際のウェブページ上の展開につなげるという事柄である。ウェブページ作成に関しては、上越教育大学の情報教育専門家の大森教員の協力を得て学校現場教員の双方向での意見交換が可能な環境をウェブページサイトで立ち上げの準備が整ったことである。また、3月のUniversity of Texas Health Science Center at San Antonioへの出張において、研究と教育実践プログラムに関わる情報収集を行うことができた。また、昨年国立の教育系大学より私立の被教育系大学への移動により、十分に実施できなかった2).初等、中等教育における、ジェロントロジー教育研究が進んでいる欧米の実践的プログラムの調査・研究にかかわる内容を一部実施できたことである。本研究は、平成22年度から24年度基盤(C)で行われた研究の継続研究であり、その研究の評価・改善・発展を目指すものである。研究の目的は、ジェロントロジー教育のプログラムとその教材開発手法の評価・改善とそれに基づく教材開発を進め、Linuxの様なOpen Source的アプローチでそれを展開し、それを多様な教科の教育現場で役立てる方法とそのシステムの評価・改善を行い発展させることである。具体的には、University of Texas Health Science Center at San Antonioの協力より、情報と知識の宝庫である大学・それを生み出す研究者と教育のプロである教職大学院教師や現職院生と協同し、新たなる「知識」をいわば蒸留し「情報」を抽出し、それを児童・生徒のためにわかりやすく翻訳・展開する手法を評価・改善・発展させることである。本年度は.日米の研究メンバー等により日本の学生・院生・現職教員を対象に、社会科学領域での日本での講義・ワークワークショップを実施した(コーレン・アピセラ氏の特別講義を実施)。それと同時に、日本でのカリキュラム開発システムを評価・改善し、東アジアでの教育実践に向けた研究協議を韓国、台湾の研究者と行い、東アジアの高齢化の問題に対し教育・研究領域で共働し、東アジアの高齢化に関わる教育に貢献した。さらに、これまでの研究の成果によるジェロントロジー教育の理論に基づき、教員誰もが参加できるジェロントロジー教育・実践空間を、University of Texas Health Science Center at San Antonioの協力を得、前任校の情報教育研究者との協議によりホームページ上で立ち上げ、Linuxの様なOpen Source的なアプローチを展開する方法を一部構築したが、細江の私立大学への転出により、iPad等で今後の学校教育を見すえて、日本でのジェロントロジー教育モデルの十分な展開には至らなかった。
KAKENHI-PROJECT-25381239
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学校教育におけるジェロントロジー教育のカリキュラム開発システムの展開
本研究は、平成22年度から24年度基盤(C)で行われた研究の継続研究であり、その研究の評価・改善・発展を目指すものである。これまでの研究の成果によるジェロントロジー教育の理論に基づき、教員誰もが参加できるジェロントロジー教育・実践空間を、ホームページとして立ち上げた。この構築にはUniversity of Texas Health Science Center at San Antonioの協力を得、前任校の情報教育研究者との協議によりLinuxの様なOpen Source的なアプローチを展開する方法を一部構築した。国立大学から私立大学への移動に伴い、教育にかかわる時間が大幅に増え研究にかかわる時間が縮小された。さらに本研究に関わる著書3冊の原稿執筆に関する時間確保等により、日本でのカリキュラム開発システムを評価・改善し、東アジアでの教育実践に向けた研究協議を韓国、台湾、中国の研究者と行うことで、東アジアの高齢化の問題に対し教育・研究領域で共働して取り組むことが十分に実施できなかった。さらに、大学学事スジュールから、University of Texas Health Science Center at San Antonioでの現場教員向けのセミナーへの出席が不可能になったことが目的達成にやや遅れをきたしたことの主な理由であると考える。しかし、昨年度の主な目標である3)の日本の学校教育に即したジェロントロジー教育を展開させるため、ジェロントロジーの研究・教育実践が進んでいるアメリカのUniversity of Texas Health Science Center at San Antonioでの研究と教育実践プログラムに基づき、ウェブページ作成上の問題等を専門家とともに調査・研究し、そこで得られた知見を考察し実際のウェブページ上の展開につなげる等の目的に関しては、おおむね達成されたと考える。社会老年学本年度は、UTSAとのセミナーやワークショップへの参加、研究課題に関しての海外の研究者の招聘、さらには、台湾・韓国の研究者の協力により、研究計画の実現が可能になると考える。本年度の使用計画としては、1海外の研究者との協力体制を強化したい。特に日本でのカリキュラム開発システムを評価・改善し、東アジアでの教育実践に向けた研究協議を韓国、台湾、中国の研究者と行うことで、東アジアの高齢化の問題に対し教育・研究領域で共働して実施する。
KAKENHI-PROJECT-25381239
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心臓性突然死におけるレムナント・リポ蛋白の意義
夕食後あるいは夜間に心筋梗塞等の心臓性突然死を来す場合の一つの可能性として食後の脂質代謝異常、特に食後高脂血症が考えられ、一方、Hvel,Rらにより食後高脂血症血清中のレムナント・リポ蛋白がLDL,VLDL以上に最も危険性の高い動脈硬化惹起因子として注目されるに至った。我々の経験する心臓性突然死の多くは高脂血症→動脈硬化→血管内皮細胞傷害→血栓症→突然死という病態によることが考えられるが、我々は動脈硬化軽症例の突然死をも数多く経験している。そこで、血清脂質特にRLPの動向を検討することにより、心臓性突然死と高脂血症、血栓との関係を検討し、その予知・予防あるいは法医診断の可能性を探るべく本研究を計画した。試料としては1994年1996年の間、本学法医学教室で解剖された症例中、年齢2069歳、死後経過時間12時間の心臓性突然死群93例、対照群(外因性突然死)26例を検討した。結果は(1)TCとTG、RLP-C,RLP-TGが心臓性突然死群において有意に高く、VLDL、LDL、HDLには両群間に有意差はなかった。(2)心臓性突然死群ではTC、TG、RLP-C,RLP-TG値が食後・空腹に関係なく何れも高く、対照群では予想通り食後にTG値のみが大幅に上昇していた。(3)RLP-C異常高値(10mg/dl以上)の6070%に進行した動脈硬化があり、一方心臓性突然死の80%にRLP-TG異常高値(100mg/dl以上)がみられたが、対照群では15%であった(4)ROCカーブから冠状動脈硬化にはRLP-Cが、また心臓性突然死にはRLP-TGが最も関与している事が示された。LDL、VLDL、LP(a)と動脈硬化・突然死との関係は否定的な結果であった。(5)アポEレベルは両群に有意差なく、3/3型の出現頻度は対照群80%(日本人平均頻度)であるが、心臓性突然死群では50%と有意に低く代わって4型が高頻度にみられ、genetic脂質代謝異常が示唆された。以上の如く、RLP値測定が、臨床的には動脈硬化の予知診断・予防に、法医学的には心臓性突然死診断の一助になる可能性が示された。夕食後あるいは夜間に心筋梗塞等の心臓性突然死を来す場合の一つの可能性として食後の脂質代謝異常、特に食後高脂血症が考えられ、一方、Hvel,Rらにより食後高脂血症血清中のレムナント・リポ蛋白がLDL,VLDL以上に最も危険性の高い動脈硬化惹起因子として注目されるに至った。我々の経験する心臓性突然死の多くは高脂血症→動脈硬化→血管内皮細胞傷害→血栓症→突然死という病態によることが考えられるが、我々は動脈硬化軽症例の突然死をも数多く経験している。そこで、血清脂質特にRLPの動向を検討することにより、心臓性突然死と高脂血症、血栓との関係を検討し、その予知・予防あるいは法医診断の可能性を探るべく本研究を計画した。試料としては1994年1996年の間、本学法医学教室で解剖された症例中、年齢2069歳、死後経過時間12時間の心臓性突然死群93例、対照群(外因性突然死)26例を検討した。結果は(1)TCとTG、RLP-C,RLP-TGが心臓性突然死群において有意に高く、VLDL、LDL、HDLには両群間に有意差はなかった。(2)心臓性突然死群ではTC、TG、RLP-C,RLP-TG値が食後・空腹に関係なく何れも高く、対照群では予想通り食後にTG値のみが大幅に上昇していた。(3)RLP-C異常高値(10mg/dl以上)の6070%に進行した動脈硬化があり、一方心臓性突然死の80%にRLP-TG異常高値(100mg/dl以上)がみられたが、対照群では15%であった(4)ROCカーブから冠状動脈硬化にはRLP-Cが、また心臓性突然死にはRLP-TGが最も関与している事が示された。LDL、VLDL、LP(a)と動脈硬化・突然死との関係は否定的な結果であった。(5)アポEレベルは両群に有意差なく、3/3型の出現頻度は対照群80%(日本人平均頻度)であるが、心臓性突然死群では50%と有意に低く代わって4型が高頻度にみられ、genetic脂質代謝異常が示唆された。以上の如く、RLP値測定が、臨床的には動脈硬化の予知診断・予防に、法医学的には心臓性突然死診断の一助になる可能性が示された。動脈硬化の発症ならびに進展に密接に関連する因子として注目されているレムナントリポ蛋白が、細菌レムナント様粒子(以下RLP)として測定可能となった。我々はRLPと動脈硬化性病変ないし心臓性突然死との関連に注目し、特に心臓性突然死はRLPの血小板凝集能がその一因ではないかとの考えから本研究を計画した。さらにRLP代謝関連物質としてのアポEリポ蛋白のフェノタイプ解析も試みた。以上の結果より心臓性突然死にはRLP-TGが強く関与し、動脈硬化にはRLP-Cが関与している可能性が示唆された。またRLPが死後変化を受けにくいことも確認できたので、死体血を用いた検査でも心臓性突然死あるいは動脈硬化病変の病態把握、解析に有用であると思われた。
KAKENHI-PROJECT-07807050
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心臓性突然死におけるレムナント・リポ蛋白の意義
なおアポEリポ蛋白の解析では心臓性突然死群において、通常では検出頻度の極めて低い4/3型が比較的高頻度(13、2%)に認められ、その意義については現在検討中である。次年度はRLPの血小板凝集能をin vivo、in vitroで検討する予定である。夕食後あるいは夜間に心筋梗塞等の心臓性突然死を来す場合の一つの可能性として食後の脂質代謝異常、特に食後高脂血症が考えられ、一方、Hvel,Rらにより食後高脂血症血清中のレムナント・リポ蛋白がLDL,VLDL以上に最も危険性の高い動脈硬化惹起因子として注目されるに至った。我々の経験する心臓性突然死の多くは高脂血症→動脈硬化→血管内皮細胞傷害→血栓症→突然死という病態によることが考えられるが、我々は動脈硬化軽症例の突然死をも数多く経験している。そこで、血清脂質特にRLPの動向を検討することにより、心臓性突然死と高脂血症、血栓との関係を検討し、その予知・予防あるいは法医診断の可能性を探るべく本研究を計画した。試料としては1994年1996年の間、本学法医学教室で解剖された症例中、年齢2069歳、死後経過時間12時間の心臓性突然死群93例、対照群(外因性突然死)26例を検討した。結果は(1)TCとTG、RLP-C,RLP-TGが心臓性突然死群において有意に高く、VLDL、LDL、HDLには両群間に有意差はなかった。(2)心臓性突然死群ではTC、TG、RLP-C,RLP-TG値が食後・空腹に関係なく何れも高く、対照群では予想通り食後にTG値のみが大幅に上昇していた。(3)RLP-C異常高値(10mg/dl以上)の6070%に進行した動脈硬化があり、一方心臓性突然死の80%にRLP-TG異常高値(100mg/dl以上)がみられたが、対照群では15%であった。(4)ROCカーブから冠状動脈硬化にはRLP-Cが、また心臓性突然死にはRLP-TGが最も関与している事が示された。LDL、VLDL、LP(a)と動脈硬化・突然死との関係は否定的な結果であった。(5)アポEレベルは両群に有意差なく、3/3型の出現頻度は対照群80%(日本人平均頻度)であるが、心臓性突然死群では50%と有意に低く代わって4型が高頻度にみられ、genetic脂質代謝異常が示唆された。以上の如く、RLP値測定が、臨床的には動脈硬化の予知診断・予防に、法医学的には心臓性突然死診断の一助となる可能性が示された。
KAKENHI-PROJECT-07807050
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体制転換からEU統合へ至る移行期の東欧におけるメディア環境の変容
本研究では、旧東欧社会主義国のメディア変容について、1)メディア秩序を巡る国際的論議についての検討、2) EUによるメディア政策の考察、3)社会主義システムの残存から生じる諸問題の考察:チェコとセルビアの比較、などのテーマに関して、文献研究および旧社会主義国にインタビューに基づいて、社会主義体制の崩壊からEU統合へ至る過程について総体的に考察した。社会主義に基づくメディア・システムは、東欧各国がEU加盟を果たした後も影響を及ぼしている。本研究の目的は、社会主義体制の崩壊からEU統合へ向かう旧東欧諸国のメディア変容について考察することにある。2012年度は、8月にチェコ・プラハを訪問し、2013年に入って3月に旧ユーゴスラヴィアのうち、セルビア・ベオグラードと、ボスニア・ヘルツェゴヴィナのサラエボを訪問した。チェコは本研究の軸となる国で、近年チェコでの研究が整備されているメディア法分析を行なう文献に多くあたることができた。しかし当該国の関心は、メディア領域、特に広告市場への参入が最も強いようで、本研究の目的であるメディア変容を長期的視野で捉える視点は見出しにくく、本研究の意義を確認することができた。ベオグラードでは、諸メディア機関への訪問によって、メディアが支える公共圏の性質について、チェコやハンガリーと異なる側面を知ることができた。すなわち、2004年にEU統合を先に果たしていった中欧諸国は、1990年代に西側からの資本流入によって商業メディアが活況を呈し、公共メディアとのせめぎ合いによって公共圏が規定されていった。他方で1990年代に未曾有の民族紛争を経験した旧ユーゴ諸国ではEU加盟が視野に入った時期にリーマン・ショックに遭遇し、EU諸国からの投資は減退メディア市場も縮小した。旧国営メディアは形態こそ公共メディアに移行したが、政府の強い影響を受ける性質には変化がない。センセーショナルなコンテンツを提供する商業メディアは広告市場で生き残れるが、商業メディアが良質性を確保しようとすると、不足する資金を国外からのドネーションによって賄わざるをえない。公共圏は偏向し脆弱である。サラエボでは、まさしく全てが崩壊した国における公共放送の再興ヘ向けた努力を、サラエヴォ・メディアセンターの訪問で知ることができた。このように2012年度は旧ユーゴへの訪問によって、中欧諸国との比較の視点を得ることができた。平成25年度は、調査の知見を最新の研究動向と照らし合わせる研究を行った。欧州全体を覆う商業主義的な潮流に対し、Hallin, Manciniなどは改めて、欧州内に様々な異なるタイプのメディア観が機能していることを、メディア・システムの類型化によって浮き彫りにした。またJakubowitczらは、旧社会主義諸国のメディアを詳細に類型化している。こうした研究動向は、冷戦期のパースペクティブを脱構築し、世界での欧州メディア・システムにより詳細な考察と修正を加える必要を示している。また、アラブ・メディアの動向を巡る研究は、今や最も重要な貢献が期待される研究の最前線となっている。国際的な情報格差を巡る問題では、運動の一翼を担った途上国側の動き特に非同盟諸国通信社機構の創設などが言及・評価されることはあまりなかった。最新の研究動向によれば、アラブ地域内での情報秩序の構築を目指す動きは、活発化すると各アラブ国家が自国の情報化を進展させる過程で寸断され、国家単位の情報力強化という方向へ変容する傾向がある。衛星放送登場にともなう「アラブ衛星放送憲章」の採択なども、新興のカタールやレバノンの離脱によって複雑な地政学がもたらされている。インターネット時代の国境を越える情報の流れに関する国際議論の舞台は、世界情報社会サミット(WSIS)へ移り、アクターも、マス・メディア機関や政府当局のほかNGOに対しても参加を認めるマルチ=ステークホルダー・アプローチが採用されている。NWICO失敗の教訓が、社会・経済的そして地政学的力学にある(Nordenstreng)とすれば、インターネットおよびデジタル技術の発展に技術決定論的成果を期待するのではなく、NWICOを批判的に継承しWSISを巡る地政学を展開する必要がある。旧東欧を含め、国各地域・各国のメディア状況の再検討と、国際的な情報の流れの世界レベルでの潮流との再接合が、国際コミュニケーション研究の展望を開く。本研究では、旧東欧社会主義国のメディア変容について、1)メディア秩序を巡る国際的論議についての検討、2) EUによるメディア政策の考察、3)社会主義システムの残存から生じる諸問題の考察:チェコとセルビアの比較、などのテーマに関して、文献研究および旧社会主義国にインタビューに基づいて、社会主義体制の崩壊からEU統合へ至る過程について総体的に考察した。社会主義に基づくメディア・システムは、東欧各国がEU加盟を果たした後も影響を及ぼしている。本研究の目的は、社会主義体制の崩壊からEU統合へ向かう旧東欧諸国のメディア変容について考察することにある。2011年度は、現在も社会主義体制下にある社会、中華人民共和国内モンゴルのメディア機能について視察を行った。内モンゴルでは、いわゆる共産党による一極集中的なメディア統制が行われると同時に、マジョリティである漢民族によるマイノリティのモンゴル民族への支配が行われるという、二重の支配構造にある。二重の支配構造下のメディア機能は、フフホト市中のいたるところで伺うことができた。視察にあたっては、内モンゴル大学出版メディア学部を訪問し、研究者との交流及びインタビューを行った。インタビューでは、メディア特に報道機関については、共産党による厳しい統制が現在も敷かれていること、特に、民族間の軋轢に関する報道は、ほとんど漢民族側の視点からしかできないことが明らかにされた。
KAKENHI-PROJECT-23530684
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23530684
体制転換からEU統合へ至る移行期の東欧におけるメディア環境の変容
そうした軋轢は、内モンゴル大学の組織自体にも反映され、内モンゴル大学には、漢民族向けのメディア学部とモンゴル民族向けのメディア学部が併置され、双方にはほとんど交流がない。またインタビューでは、主体的な報道のできない少数民族のモンゴル人にとって、モンゴル文字のフォント開発が、民族のアイデンティティを確保するにあたって非常に重要な位置づけとして認識されていること、他の少数民族にとっての先行事例にもなっていることが明らかになった。現行社会主義国のメディア変容は、東欧におけるメディア変容を実態的に感じ取ることの事例であると共に、アジアに於いて東欧の経験を活用する指標ともなり得るものである。2011年に発生した東日本大震災の影響を受けて研究の進行が遅れていた。既述「区分」では、「やや遅れている」を選択したが、2012年に入って遅れをかなり取り戻すことができた。2012年度は8月に主要研究対象地域であるチェコのプラハを訪問し、現地の新しい文献にあたることができた。また年度末の2013年3月には、旧ユーゴスラヴィアのベオグラードとサラエヴォを訪問し、メディア領域関係者と交流してEU加盟申請時期の諸問題を知ることができた。2011年度は研究予算の執行が不十分であったが、2012年度は充分に文献の購入を行って、文献研究を進めて業績公表へ向けた態勢を整えることができた。2011年3月11日に発生した東日本大震災および、福島第一原子力発電所の事故の影響で、同年3月中旬から下旬にかけて実施予定だった、科研費基盤B「冷戦期における米国の「広報外交」の実態とその評価法の解明」(研究分担者)予算での米国出張を取りやめざるを得なくなった。その後も容易には訪米できない状況が続き、文献研究および、幸運にも2011年8月に豪州で開催された国際コミュニケーション・シンポジウムに参加する事で研究を進めることはできた。しかし本研究で本来2011年度中に終えるはずだった東欧におけるメディア関連法に関する整理については、欧州訪問が2012年3月末となり、整理考察も2012年度にまでずれ込んでいる。2013年度は、これまでの研究成果をまとめる作業を中心に行なっていく。公表準備が整いつつあるサブテーマとして、1移行期における法制度の観察、2EU加盟申請期におけるグローバルな状況の影響ー旧ユーゴスラヴィア諸国の公共圏創出に及ぼした国際的環境の影響ー、などを挙げることができるので、これらの補足的な文献研究を先行して進める予定である。研究成果は、まず学内誌において基盤的箇所をまとめ、その後発展個所を日本マス・コミュニケーション学会および情報通信学会での研究発表および紀要への投稿を行っていく。2012年度は、夏季に東欧のメディア監督機関などへの訪問を予定している。その為、EU研究から挙げられた知見を文献によって考察する。また、東欧の民主化運動がメディア環境に与えた影響についての知見が、挙がってきていることから、研究予算を当該文献の購入に充て、文献研究を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-23530684
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睡眠時無呼吸症候群による心不全及び心筋梗塞における細胞死の分子機構に関する研究
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸或いは低呼吸が原因で低酸素血症となることで肺血管が収縮し、心臓から肺に血液を送る肺動脈の圧が上昇する肺高血圧となる。本研究では、より詳細な睡眠時無呼吸症候群の臓器障害の発生機序について哺乳動物であるラットを用いて検討を行った。そして、申請先研究室によって開発された間歇的低酸素(Intermittent Hypoxia: IH)発生装置を利用することで睡眠時無呼吸症候群の病態モデルを再現し、2ヶ月齢及び9ヶ月齢ラットを用いて4週間曝露後の加齢による心肺循環機能の影響について検討した。その結果、9ヶ月齢ではIH曝露により一酸化窒素(NO)合成低下による肺血管内皮細胞機能障害による肺高血圧症を発症し、2ヶ月齢ではIH曝露による肺血管機能が維持されていたことより、IH曝露による肺高血圧症の発症は、加齢に伴うNO合成抑制による肺血管内皮細胞機能の低下が考えられた。血管内皮細胞機能低下の一因に、血管内皮細胞内Arginase活性上昇に伴うNO合成低下が知られており、Arginaseは、加齢に伴いその活性が上昇することが知られている。そこで肺内Arginase活性について検討を行った結果、2ヶ月齢で、Arginase活性は対照群及びIH曝露群では有意な変化は認められなかったが、9ヶ月齢ではIH曝露群においてArginase活性の顕著な上昇が認められた。更に、9ヶ月齢ラットを用いてArginaseの選択的阻害剤をIH曝露期間中4週間投与したところ、肺高血圧症の発症抑制及びNO産生量の回復が認められた。以上より、2ヶ月齢及び9ヶ月齢のラットを用いたIH曝露では、加齢に伴い肺血管内皮細胞内でのArginase活性及び発現上昇がNO産生を低下させ、肺血管内皮細胞機能低下による肺高血圧症の発症を導いたことが明らかとなった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は、高血圧や肥満との関連性が強く、心不全や虚血性心疾患の危険因子である。日本人におけるSASの罹患率は数%と推定され、そのうちの大半を中高年以上の男性が占めている。現在、多くの臨床研究機関で、SAS及びその関連疾患に関する研究報告がなされているが、病態の起因となる生理学的及び分子生物学的機構は、未解明の部分が多い。そこで本研究では、申請先研究室によって開発された間歌的低酸素(Intermittent Hypoxia : IH)発生装置を利用することでSASの病態モデルを再現し、(1)糖尿病罹患モデル及び(2)加齢ラットモデルの2つのSASモデルを作成し、虚血性心疾患及び肺高血圧症等の病態への寄与について検討した。その結果、(1)糖尿病罹患ラットをIH曝露させると、体重あたりの左室拡張末期径が拡張し、左室駆出率及び左室内径短縮率の有意な低下が認められた。すなわち、予め糖尿病に罹患していると、IH曝露により、心収縮能低下及び心室拡張を来すことが明らかとなった。一方、(2)加齢ラットはIHを曝露しても左心室機能は維持されていたが、肺動脈血流の低下及び右心室収縮期圧の上昇が認められた。またIH群は、体重あたりの肺重量及び右心室重量の増大が確認された。肺組織での免疫染色では、IH群において、α-smooth muscle actin(SMA)の光学密度上昇が認められた。また、IH群の肺実質内では、ウエスタンブロッティング法により、α-SMAタンパク及びカルデスモンの有意な発現上昇が確認された。今回の結果より、加齢ラットにおいて、我々が以前行っていた7週齢ラットモデルでのIH曝露では確認されなかった、肺循環機能の著しい低下が明らかとなった。また肺組織では、平滑筋細胞の著しい増殖が認められたため、IH曝露により肺血管リモデリングが進行している可能性がある。睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は、睡眠中の無呼吸或いは低呼吸が原因で低酸素血症となることで肺血管が収縮し、心臓から肺に血液を送る肺動脈の圧が上昇する肺高血圧となる。日本人におけるSASの罹患率は数%と推定されており、そのうちの大半を中高年以上の男性が占めている。本研究では、申請先研究室によって開発された間歇的低酸素(Intermittent Hypoxia : IH)発生装置を利用することでSASの病態モデルを再現し、2ヶ月齢及び9ヶ月齢ラットを用い、4週間曝露後の加齢による心肺循環機能の影響について検討した。その結果、9ヶ月齢ではIH曝露により一酸化窒素(NO)合成低下による肺血管内皮細胞機能障害による肺高血圧症を発症し、2ヶ月齢ではIH曝露による肺血管機能が維持されていたことより、IH曝露による肺高血圧症の発症は、加齢に伴うNO合成抑制による肺血管内皮細胞機能の低下が考えられた。血管内皮細胞機能低下の一因に、血管内皮細胞内Arginase活性上昇に伴うNO合成低下が知られており、Arginaseは、加齢に伴いその活性が上昇することが知られている。そこで肺内Arginase活性について検討を行った結果、2ヶ月齢で、Arginase活性は対照群及びIH曝露群では有意な変化は認められなかったが、9ヶ月齢ではIH曝露群においてArginase活性の顕著な上昇が認められた。更に、9ヶ月齢ラットを用いてArginaseの選択的阻害剤をIH曝露期間中4週間投与したところ、肺高血圧症の発症抑制及びNO産生量の回復が認められた。
KAKENHI-PROJECT-12J02221
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睡眠時無呼吸症候群による心不全及び心筋梗塞における細胞死の分子機構に関する研究
以上より、2ヶ月齢及び9ヶ月齢のラットを用いたIH曝露では、加齢に伴い肺血管内皮細胞内でのArginase活性及び発現上昇がNO産生を低下させ、肺血管内皮細胞機能低下による肺高血圧症の発症を導いたことが明らかとなった。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の無呼吸或いは低呼吸が原因で低酸素血症となることで肺血管が収縮し、心臓から肺に血液を送る肺動脈の圧が上昇する肺高血圧となる。本研究では、より詳細な睡眠時無呼吸症候群の臓器障害の発生機序について哺乳動物であるラットを用いて検討を行った。そして、申請先研究室によって開発された間歇的低酸素(Intermittent Hypoxia: IH)発生装置を利用することで睡眠時無呼吸症候群の病態モデルを再現し、2ヶ月齢及び9ヶ月齢ラットを用いて4週間曝露後の加齢による心肺循環機能の影響について検討した。その結果、9ヶ月齢ではIH曝露により一酸化窒素(NO)合成低下による肺血管内皮細胞機能障害による肺高血圧症を発症し、2ヶ月齢ではIH曝露による肺血管機能が維持されていたことより、IH曝露による肺高血圧症の発症は、加齢に伴うNO合成抑制による肺血管内皮細胞機能の低下が考えられた。血管内皮細胞機能低下の一因に、血管内皮細胞内Arginase活性上昇に伴うNO合成低下が知られており、Arginaseは、加齢に伴いその活性が上昇することが知られている。そこで肺内Arginase活性について検討を行った結果、2ヶ月齢で、Arginase活性は対照群及びIH曝露群では有意な変化は認められなかったが、9ヶ月齢ではIH曝露群においてArginase活性の顕著な上昇が認められた。更に、9ヶ月齢ラットを用いてArginaseの選択的阻害剤をIH曝露期間中4週間投与したところ、肺高血圧症の発症抑制及びNO産生量の回復が認められた。以上より、2ヶ月齢及び9ヶ月齢のラットを用いたIH曝露では、加齢に伴い肺血管内皮細胞内でのArginase活性及び発現上昇がNO産生を低下させ、肺血管内皮細胞機能低下による肺高血圧症の発症を導いたことが明らかとなった。26年度が最終年度であるため、記入しない。26年度が最終年度であるため、記入しない。当初の研究計画では、糖尿病・高血圧モデル動物にIHを曝露して、心不全や虚血性心疾患の病態へ寄与するか否かを心筋細胞内分子機構について検討することを主目的としていたが、心機能のみならず肺循環機能についても検討を行うことで、包括的にSASの病態解明を目指すこととした。そのため、生理学的データに基づく有効な結果を得ることが出来たが、心筋及び肺血管内皮・平滑筋細胞内分子の結果については、来年度に詳細に検討する必要があるとしたため、(2)のおおむね順調に進展しているとした。申請時の研究計画では、IH曝露モデルにおける心不全や虚血性心疾患の病態へ寄与するか否かを心筋細胞内分子機構について心機能を重点的に検討することを主目的としていたが、心機能のみならず肺循環機能についても検討を行うことで、包括的にSASの病態解明を目指すこととした。その結果、生理学的及び分子細胞学的データを得ることが出来、成果を年度内に投稿するに至った(「American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine」に投稿、現在査読中)。
KAKENHI-PROJECT-12J02221
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経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究
近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。<平成29年度>健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像(DTI)の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。健常者においてfMRIにより個別の脳機能を評価した上で、想定されるsTMS施行中の脳活動の変化をfMRIで確認した。また、安全性についても確認し、個別化rTMSに向けての基礎的検討を行うことができ、一定の成果を上げることができたと考える。近年、脳活動をより選択的に操作する方法として経頭蓋磁気刺激法(Transcranial Magnetic Stimulation:TMS)に大きな注目が集まっているが、反復TMS(rTMS)治療による反応率は30%程度に留まる。本研究は、薬物治療抵抗性のうつ病患者に対して事前の脳活動の評価と単発TMS刺激(sTMS)による脳活動予測マップで想定される変化に基づき(個別化)、脳MRI画像検査とナビゲーションシステムを用いてrTMSを適切な刺激部位と刺激方向にかけるをすることで(精緻化)、予想された脳活動上の変化およびうつ症状の改善がえられるかを探索的に検証する。うつ病患者に対してrTMSの精緻化と個別化により、脳活動上予想された変化が確認でき、うつ症状の改善率の向上が図れれば、rTMSの治療効果の改善だけでなく、うつ病の神経生理学的な理解につながる基礎的知見を得ることができ、学際的な貢献も極めて高い。平成29年度は健常者に対して、研究用3T MRI(SIEMENS社)を用いて刺激部位の特定用の脳構造画像(sMRI)、TMS前の脳活動評価として全脳の安静時機能画像(rs-fMRI)および白質の繊維走行を評価するために拡張テンソル画像の撮像を行い、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。MRI室内で使用可能なコイルを使用しMRI室内でsTMSを施行し、sTMS刺激中の刺激部位(左前頭前野)と脳深部(線条体)との脳活動の同期性を確認した。平成30年度は、前年度の結果を応用し、うつ病患者に対して、個人のrs-fMRIの結果に基づき刺激部位を設定した。
KAKENHI-PROJECT-17K16378
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16378
経頭蓋磁気刺激の精緻化と個別化によるうつ病に対する有効性向上に向けた探索的研究
ナビゲーションシステムを用いて設定した部位を正確に特定し、rTMSを計20回行い、症状評価とrTMS前後での脳活動の変化を確認した。また、有害事象評価表を用いて有害事象の発生状況を確認し、有害事象の発生は認めなかった。平成29年度と同様にsMRI、rs-fMRI、DTIに加えて、DLPFCおよびPCCの脳活動評価を目的とした機能画像(task-fMRI)の撮像を行う。個人のrs-fMRIおよびtask-fMRIを解析し、多人数の既存のデータセットと照合し、個人の脳活動がどの領域で、どの程度外れているかを評価し、左DLPFC内のどの領域にTMSを行うか選択する。設定した刺激部位に的確に刺激を行うため、ナビゲーションシステムを用いて精確な位置決めを行い、rTMSを実施する。rTMSの刺激条件については、磁気刺激法の安全性に関するガイドラインを参考に、高頻度10Hz、刺激強度は安静時運動閾値の100-120%、セッション毎のパルス数は2000-3000パルス、セッション回数は20-30回で行う。治療中は有害事象評価表を用いて、有害事象の発生に細心の注意を払う。全てのセッション終了後、sMRI、rs-fMRI、DTI、task-fMRIなどの脳MRI評価を行い、rTMS前後の脳構造、機能の変化を評価するとともに、HRSDを用いたうつ症状評価を行い、反応率・寛解率(有効性)の向上が認められるかを確認する。<理由>平成29年度において実施する予定であった研究計画に若干の遅れが生じたため。<使用計画>研究費を次年度に一部繰り越し、さらなる被験者の募集を行い、実施のための費用に助成金を充てる。また、学会発表や論文発表に必要な経費に助成金を使用する。
KAKENHI-PROJECT-17K16378
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SCFは肥満細胞のIL-33依存性MHC class II発現を抑制させる
IL-3で培養したBMMCをIL-33で処理後、SCFで刺激し解析した。IL-33単独処理したBMMCはMHC class IIを発現しているが、SCF添加により発現が低下していた。抗原-IgE応答に対する脱顆粒能は、IL-33単独処理したBMMCで増加してが、IL-6の産生能は変わらなかった。CIITA遺伝子のpromoter IIIとIVとH4がSCFにより発現低下した。これらの結果より、MHCクラスII発現が肥満細胞は、IL-33によって可逆的にMHC class IIを発現し、SCFは肥満細胞を安定・成熟させるために非常に重要である。本研究ではIL-33で刺激された成熟肥満細胞がSCFによりMHC class IIの発現が低下する機序について検討し、粘膜型と結合組織型の違いによりIL-33、SCFがMHC class IIの発現誘導に関与するか、In vitroとin vivoの実験により検討することを目的としている。既に終了していた予備実験の確認作業が中心だったため、研究の進行が予想より早かった骨髄培養肥満細胞をIL33±SCFで刺激し、c-kitおよびST2受容体の下流シグナルの違いをウエスタンブロットによって確認した。c-kitのシグナルとしてSTAT3を、ST2受容体のシグナルとしてNFκB、p38、また共通シグナルとしてERK、c-fos、c-Jun、JNKのリン酸化をサイトカンイ刺激後1h、24h、day5に確認した。その結果、IL33刺激によってこれらのリン酸化は亢進されたが、SCFを添加することによるリン酸化への影響はみられなかった。次にmembrane- bounded SCFによるMHC classII発現への影響を検討するためにNIH3T3との共培養を行った。その結果、可溶性SCFと同様にmembrane- bounded SCFもMHC class IIの発現を抑制する事が分かった。さらに、c-kit inhibitorであるimatinibを前処理することで、可溶性SCFによるMHC class IIの発現抑制効果は阻害された。しかし、membrane- bounded SCFに対する阻害効果はみられなかった。このことから可溶性SCFとmembrane- bounded SCFではMHC class II発現への影響が異なると予想された。SCFによる、c-kit、ST2受容体の下流のシグナルのリン酸化に影響はみられなかったが、MHC class IIの転写因子であるCIITAの発現は抑制されることから、CIITAの転写因子の発現にSCFがどのように関与しているかより詳しく確認する。前年度が大幅に研究が進んだため、今年度は余裕をもって進めることができたため本研究ではIL-33で刺激された成熟肥満細胞がSCFによりMHC class IIの発現が低下する機序について検討し、粘膜型と結合組織型の違いによりIL-33、SCFがMHC class IIの発現誘導に関与するか、In vitroとin vivoの実験により検討する。同時に、CIITA遺伝子と転写因子PU.1の関与についても検討する。上記の結果から可溶性SCFとmembrane- bounded SCFではMHC class II発現への影響が異なる可能性が出た。また、SCFによる、c-kit、ST2受容体の下流のシグナルのリン酸化に影響はみられなかったが、MHC class IIの転写因子であるCIITAの発現は抑制されることから、CIITAの転写因子の発現にSCFがどのように関与しているかより詳しく確認した。IL-3で培養したBMMCをIL-33で処理後、SCFで刺激し解析した。IL-33単独処理したBMMCはMHC class IIを発現しているが、SCF添加により発現が低下していた。抗原-IgE応答に対する脱顆粒能は、IL-33単独処理したBMMCで増加してが、IL-6の産生能は変わらなかった。CIITA遺伝子のpromoter IIIとIVとH4がSCFにより発現低下した。これらの結果より、MHCクラスII発現が肥満細胞は、IL-33によって可逆的にMHC class IIを発現し、SCFは肥満細胞を安定・成熟させるために非常に重要である。初年度で大幅に研究が進行したので、より精度の高い結果を残すために、余裕をもって研究計画を進めていきたい研究は問題なく進行している。そのため、今後も当初の研究計画通りに進めていく。皮膚科学研究が予定より進行したため、前払い支払いを請求した。そのため、少し使用額に誤差が生じた。研究は滞りなく進んでいるため、差額は誤差範囲だと考える研究の進行具合により試料・薬品等を予算と調整しつつ購入していきたい。研究結果をまとめるために使用していく
KAKENHI-PROJECT-15K09786
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高密度水素プラズマの物性の理論および計算機実験による研究
1.液体金属相にある高密度水素プラズマの粒子間相関構造を、イオン-イオン相関はhypernetted chain(HNC)近似で、電子-電子及び電子-イオン相関は修正された畳み込み近似(modified-convolution approximation、略してMCA)で取り扱う積分方程式の方法(HNC/MCA法)によって解析した。特に、金属相と絶縁体相の境界近傍の温度・密度領域に焦点を絞って、相関関数・状態方程式・輸送係数の計算を行い、次のような結果を得た:(1)絶縁体相に接近するにつれて、イオンがその周りに電子を強く引き付け、電子-イオン相関が孤立水素原子の相関構造に類似してくる。(2)(1)に伴って、電子-イオン対あたりの相関エネルギ-が孤立水素原子の値に漸近する。(3)さらに、(1)・(2)に伴い、電気伝導度・熱伝導度の急激な減少が見られる。2.高密度水素プラズマ中に埋め込まれた不純物イオンの電子準位を様々な物理効果を順次取り入れていくモデル計算により解析した。不純物(輻射粒子)としては、炭素とネオンを考え、束縛電子の数は1個であるとした。いくつかの温度・密度に対して計算を行った結果、プラズマの遮蔽効果・粒子間の強結合効果・プラズマ粒子の電子軌道内貫通効果と順次取り入れるにつれて、束縛電子の感じる原子ポテンシャルが浅くなり、それに伴って、電子準位が持ち上がることを見いだした。特に、プラズマの密度が高い場合には、これらの効果は定量的に重要である。3.高密度水素系の金属-絶縁体転移を論じるためには、高密度水素プラズマの相関構造と高密度物質中の水素原子・分子の電子状態の両方が正確にわかっている必要がある。上記の1・2の研究成果はこの問題を解決するための要諦となる部分である。1.液体金属相にある高密度水素プラズマの粒子間相関構造を、イオン-イオン相関はhypernetted chain(HNC)近似で、電子-電子及び電子-イオン相関は修正された畳み込み近似(modified-convolution approximation、略してMCA)で取り扱う積分方程式の方法(HNC/MCA法)によって解析した。特に、金属相と絶縁体相の境界近傍の温度・密度領域に焦点を絞って、相関関数・状態方程式・輸送係数の計算を行い、次のような結果を得た:(1)絶縁体相に接近するにつれて、イオンがその周りに電子を強く引き付け、電子-イオン相関が孤立水素原子の相関構造に類似してくる。(2)(1)に伴って、電子-イオン対あたりの相関エネルギ-が孤立水素原子の値に漸近する。(3)さらに、(1)・(2)に伴い、電気伝導度・熱伝導度の急激な減少が見られる。2.高密度水素プラズマ中に埋め込まれた不純物イオンの電子準位を様々な物理効果を順次取り入れていくモデル計算により解析した。不純物(輻射粒子)としては、炭素とネオンを考え、束縛電子の数は1個であるとした。いくつかの温度・密度に対して計算を行った結果、プラズマの遮蔽効果・粒子間の強結合効果・プラズマ粒子の電子軌道内貫通効果と順次取り入れるにつれて、束縛電子の感じる原子ポテンシャルが浅くなり、それに伴って、電子準位が持ち上がることを見いだした。特に、プラズマの密度が高い場合には、これらの効果は定量的に重要である。3.高密度水素系の金属-絶縁体転移を論じるためには、高密度水素プラズマの相関構造と高密度物質中の水素原子・分子の電子状態の両方が正確にわかっている必要がある。上記の1・2の研究成果はこの問題を解決するための要諦となる部分である。1.多成分荷電量子系を扱う積分方程式法である修正された畳み込み近似(modified-convolution approximation,略してMCA)の方法を有限温度電子液体に適用して、スピンに依存する相関構造を解析した研究の結果を公刊した。2.液体金属相にある水素プラズマの相関構造を、イオン-イオン相関は、hypernetted chain近似で、電子-電子および電子-イオン相関はMCA法で取り扱う積分方程式の方法(HNC/MCA法)よって解析した。とくに、金属相と絶縁体相の境界近傍の温度・密度領域の焦点をしぼって相関関数、応答関数、イオン間実効ポテンシャル、状態方程式、電気伝導度、熱伝導度の計算を行い、次のような結果を得た:(1)絶縁体相に接近するにつれて、イオンがそのまわりに電子を強く引きつけ、電子-イオン相関が孤立水素原子の相関構造と類似してくる。(2)(1)に伴って、電子-イオン対あたりの相関エネルギーが孤立水素原子の値に漸近する。(3)さらに(1)、(2)に伴い、電気伝導度・熱伝導度の急激な減少が見られる。3.水素プラズマ中に埋め込まれた不純物イオンの電子準位を輻射粒子とプラズマ粒子の間の相関をHNC/MCA法により取り扱う方法により解析した。その際、輻射粒子中の束縛電子が1個であるというモデルを採用し、束縛電子が感じるポテンシャルの原子核近傍と遠方の境界条件に留意した。イオンが電子を強く引きつける強結合効果により、各電子準位が浅くなる傾向を見い出した。4.2と3の結果をふまえて、高密度水素系の金属-絶縁体転移を扱う理論的手法を考察中である。高密度物質中の原子・イオンの電子状態を調べるために,高密度水素プラズマ中に埋め込まれた不純物イオンの電子準位を様々なモデル計算により解析した。不純物(輻射粒子)としては炭素とネオンを考え、束縛電子の数は1個であるとした。
KAKENHI-PROJECT-63580002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63580002
高密度水素プラズマの物性の理論および計算機実験による研究
束縛電子のエネルギ-準位を計算するのに必要な原子ポテンシャルを以下の順次改良された4つのモデルにより計算し、結果を比較した:(1)原子ポテンシャルとして原子核のつくるク-ロン・ポテンシャルを採用する。(2)輻射粒子の周囲の水素プラズマの遮蔽効果を、輻射粒子-プロトン、プロトン-プロトン、電子-電子の間の相関については平均場近似を越えた強結合効果も取入れ、それ以外の相関については平均場近似で取り入れることによって考慮に入れる。(3)HNC/MCA積分方程式法により、(2)で無視された輻射粒子-電子、電子-プロトン間の強結合効果も含めた全ての粒子間相関効果を考慮に入れ、原子ポテンシャルを計算する。(4)(1)-(3)で無視された、プラズマ粒子が束縛電子軌道内を貫通する効果を、原子ポテンシャルを原子核近傍と遠方の境界条件を満足するように構成することにより取り入れる。いくつかの温度・密度に対して計算を行った結果、プラズマの遮蔽効果、粒子間の強結合効果、プラズマ粒子の貫通効果、と順次取り入れるにつれて、束縛電子の感じる原子ポテンシャルが浅くなり、それにともなって電子準位が持ち上がることを見いだした。特に、プラズマの密度が高い場合には、これらの効果は定量的に重要である。高密度水素系の金属-絶縁体転移を論じるためには、高密度水素プラズマの相関構造と高密度物質中の水素原子・分子の電子状態の両方が正確にわかっている必要がある。前年度の水素プラズマの相関構造の研究と今年度の研究はこの問題の解決のための要諦となる部分である。
KAKENHI-PROJECT-63580002
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63580002
CRT輝度特性とヒト視覚特性の比較によるCRT診断能の検討
本研究の目的は、各種CRTの輝度特性を物理的に測定し、さらにヒトの視覚による評価を行うことで、CRT診断に要求されるCRTの物理的輝度特性を考察することにある。分析は、汎用のパーソナルコンピュータ用CRTであるPC-KD854 (NEC)、CRT診断を目的としたCRTであるVIEW 2000(Virtual Imaging)ならびにHI-C(富士メディカルシステム)を対象として行った。使用期間はいずれも約2年である。視覚評価としては、2種類のピクセル値からなるステップ像を種々のピクセル値に対して人工的に作成し、ステップ境界を識別できる最少のピクセル値の差を求めた。なお、物理的輝度測定ならびに視覚評価はいずれも暗室下にて行い、CRTの有効領域以外はマスクすることで余計な光の入射を防止した。物理的輝度測定の結果、提示可能な最大輝度はCRTの種類によつて異なり、PC-KD854では約146[cd/m^2]、VIEW2000では約233[cd/m^2]、HI-Cでは約300[cd/m^2]であった。また、ピクセル値の変化に対する輝度値の変化率もCRTの種類によつて異なった。視覚評価では、いずれのCRTにおいても、100[cd/m^2]程度まではピクセル値の差にして1のステップ境界をも識別できた。ただし、いずれのCRTにおいても、ピクセル値にして1の変化に対する輝度値の変化が比較的大きく、CRT診断に要求されるCRTの輝度特性を決定する上で重要なヒト視覚の識別限界輝度変化量を求めることができなかった。今後、微小な輝度変化を実現できるCRTを検索し、本研究を進める予定である。本研究の目的は、各種CRTの輝度特性を物理的に測定し、さらにヒトの視覚による評価を行うことで、CRT診断に要求されるCRTの物理的輝度特性を考察することにある。分析は、汎用のパーソナルコンピュータ用CRTであるPC-KD854 (NEC)、CRT診断を目的としたCRTであるVIEW 2000(Virtual Imaging)ならびにHI-C(富士メディカルシステム)を対象として行った。使用期間はいずれも約2年である。視覚評価としては、2種類のピクセル値からなるステップ像を種々のピクセル値に対して人工的に作成し、ステップ境界を識別できる最少のピクセル値の差を求めた。なお、物理的輝度測定ならびに視覚評価はいずれも暗室下にて行い、CRTの有効領域以外はマスクすることで余計な光の入射を防止した。物理的輝度測定の結果、提示可能な最大輝度はCRTの種類によつて異なり、PC-KD854では約146[cd/m^2]、VIEW2000では約233[cd/m^2]、HI-Cでは約300[cd/m^2]であった。また、ピクセル値の変化に対する輝度値の変化率もCRTの種類によつて異なった。視覚評価では、いずれのCRTにおいても、100[cd/m^2]程度まではピクセル値の差にして1のステップ境界をも識別できた。ただし、いずれのCRTにおいても、ピクセル値にして1の変化に対する輝度値の変化が比較的大きく、CRT診断に要求されるCRTの輝度特性を決定する上で重要なヒト視覚の識別限界輝度変化量を求めることができなかった。今後、微小な輝度変化を実現できるCRTを検索し、本研究を進める予定である。
KAKENHI-PROJECT-05771563
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05771563
有用植物の組織培養による形質転換と代謝産物の生産
Agrobacterium rkizogenesによる毛状根の発生と毛状根の培養、代謝産物の生産確認、植物体の再生について検討した。先ずタバコについては固体培地での毛状根培養プレートに光照射することにより再生植物体が得られた。再生植物体でのAgrobacterium遺伝子発現は、オパイン分析により確認した。即ち再生植物の葉を抽出し、電気泳動によりアグロピン、マンノピンの存在を確認した。再生植物体は様により著るしく形態が異なりRiプラズミドによる形質転換の際の葉のちぢれなどが顕著に表われている。葉のニコチン含量は1%をこすものもあり、通常の植物より高い価を示した。これはRiプラズミドのため不稔となり、また植物体の背が低くなったため摘心と同じ影響が出たとも考えられさらに検討が必要である。同様な実験は食用ニンジンでも可能であり、再生植物体が得られた。さらに現在迄にCassia属植物4種、薬用人参、赤カブ、甘草で毛状根培養に成功し、Cassia属植物の毛状根について生成色素を分析した結果、通常の植物根とは成分が大幅に異なることが判明した。即ち通常植物より反応が先に進んだキサントン化合物が主成分となっている。赤カブの毛状根はその中心部に色素を産成し、ベタシアニンの生産が可能であることを示している。薬用人参については、無菌植物体を得ることが困難であったので鉢植え植物体の茎に菌を接種する方法と根を滅菌しディスク状に切り接種する方法により毛状根の発生に成功し、固体培地培養をへて液体培養に成功した。薬用人参の有効成分であるサポニンの生産については薄層クロマトグラフィーにより確認され、現在液体クロマトグラフィーにより定量分析を行なっている。甘草については毛状根の形成に成功し現在成分の分析中である。Agrobacterium rkizogenesによる毛状根の発生と毛状根の培養、代謝産物の生産確認、植物体の再生について検討した。先ずタバコについては固体培地での毛状根培養プレートに光照射することにより再生植物体が得られた。再生植物体でのAgrobacterium遺伝子発現は、オパイン分析により確認した。即ち再生植物の葉を抽出し、電気泳動によりアグロピン、マンノピンの存在を確認した。再生植物体は様により著るしく形態が異なりRiプラズミドによる形質転換の際の葉のちぢれなどが顕著に表われている。葉のニコチン含量は1%をこすものもあり、通常の植物より高い価を示した。これはRiプラズミドのため不稔となり、また植物体の背が低くなったため摘心と同じ影響が出たとも考えられさらに検討が必要である。同様な実験は食用ニンジンでも可能であり、再生植物体が得られた。さらに現在迄にCassia属植物4種、薬用人参、赤カブ、甘草で毛状根培養に成功し、Cassia属植物の毛状根について生成色素を分析した結果、通常の植物根とは成分が大幅に異なることが判明した。即ち通常植物より反応が先に進んだキサントン化合物が主成分となっている。赤カブの毛状根はその中心部に色素を産成し、ベタシアニンの生産が可能であることを示している。薬用人参については、無菌植物体を得ることが困難であったので鉢植え植物体の茎に菌を接種する方法と根を滅菌しディスク状に切り接種する方法により毛状根の発生に成功し、固体培地培養をへて液体培養に成功した。薬用人参の有効成分であるサポニンの生産については薄層クロマトグラフィーにより確認され、現在液体クロマトグラフィーにより定量分析を行なっている。甘草については毛状根の形成に成功し現在成分の分析中である。
KAKENHI-PROJECT-61570995
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-61570995
γ-過程重元素合成のメカニズムの解明と銀河の化学進化の研究
r-過程は、ベータ崩壊よりも中性子捕獲のほうが速い元素合成過程で、鉄より重い元素の約半分を合成する。r-過程が起こると考えられている最も有力な天文学的サイトは、大質量星の重力崩壊型超新星爆発である。大質量星の超新星爆発では、超新星爆発時に誕生する中性子星から吹くニュートリノ風による加熱が必要であり、ニュートリノと原子核の反応が頻繁に起こる。しかし、ニュートリノ反応はr-過程を抑制する方向に働く。そのため、十分なr-過程重元素を合成するためには、爆発のタイムスケールが非常に短いモデルが必要となる。これまでの研究で、ニュートリノ反応を含めた元素合成計算によってr-過程元素の組成比を再現したモデルは、非常に重い(約2太陽質量)中性子星を仮定したモデルのみだったが、観測から中性子星の典型的な質量は1.4太陽質量であることが知られている。そこで、衝撃波の後ろの中性子星から十分はなれた境界領域の温度に注目し、組成比の温度依存性を調べた。1.4太陽質量の中性子星を仮定した場合でも、温度が低い場合には、r-過程元素の組成比が再現できることがわかった。さらに、r-過程元素の組成比を再現するための温度と中性子星の質量の関係も明らかにした。また、近年の観測からわかってきた、元素の組成比を普遍にするためには、中性子がなくなったあとのベータ崩壊による、崩壊経路が非常に重要であり、その経路を詳細に調べることにより、理論的にしか知られていない原子核の質量公式等にも制限をつけられることがわかった。r-過程は、ベータ崩壊よりも中性子捕獲のほうが速い元素合成過程で、鉄より重い元素の約半分を合成する。r-過程が起こると考えられている最も有力な天文学的サイトは、大質量星の重力崩壊型超新星爆発である。大質量星の超新星爆発では、超新星爆発時に誕生する中性子星から吹くニュートリノ風による加熱が必要であり、ニュートリノと原子核の反応が頻繁に起こる。しかし、ニュートリノ反応はr-過程を抑制する方向に働く。そのため、十分なr-過程重元素を合成するためには、爆発のタイムスケールが非常に短いモデルが必要となる。これまでの研究で、ニュートリノ反応を含めた元素合成計算によってr-過程元素の組成比を再現したモデルは、非常に重い(約2太陽質量)中性子星を仮定したモデルのみだったが、観測から中性子星の典型的な質量は1.4太陽質量であることが知られている。そこで、衝撃波の後ろの中性子星から十分はなれた境界領域の温度に注目し、組成比の温度依存性を調べた。1.4太陽質量の中性子星を仮定した場合でも、温度が低い場合には、r-過程元素の組成比が再現できることがわかった。さらに、r-過程元素の組成比を再現するための温度と中性子星の質量の関係も明らかにした。また、近年の観測からわかってきた、元素の組成比を普遍にするためには、中性子がなくなったあとのベータ崩壊による、崩壊経路が非常に重要であり、その経路を詳細に調べることにより、理論的にしか知られていない原子核の質量公式等にも制限をつけられることがわかった。
KAKENHI-PROJECT-01J06006
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図形・情景の構造的認識のためのマッチング手法の研究
(1)マッチングに適した画像内容の構造表現法濃淡画像の領域分割については、後の処理として意味のある構成要素を抽出しやすくするために、確実に一つの領域と判定される領域(確定領域)のみを領域分割の結果として抽出し、それ以外の部分は不確定領域として高次処理に委ねる手法を提案した。(2)最適なマッチングの定式化に関する研究二つの視点から撮影した同一情景の間の対応づけを行うために、それぞれの画像の領域分割結果を用いて領域間のマッチングを行う手法を2種類提案した。第一の方法では、注目する領域とその近傍にある3つの領域で形づくる3種類の三角形を用いて領域間の構造を表現し、領域間構造と領域それ自身の類似性に基づいて弛緩法でマッチングを行う。得られた領域対応からカメラの移動パラメータを推定し、カメラの移動によって生ずるオプティカルフローの全体的整合性から誤った領域の対応づけを検出し、修正を行う。第二は、同じ問題を属性つきグラフのマッチング問題として定式化して、コストつきグラフ変換操作を適用し、コスト最小グラフマッチング、すなわち最大類似グラフマッチングを求める方法である。平面グラフの性質およびそのグラフが領域の隣接関係を表していることから生ずる特性をうまく利用して、効率の良い属性つき平面グラフのマッチング法を構築した。また、この方法では、一方の画像の一つの領域が他方の画像では二つ以上の領域に分割されている場合、1対多対応を許すようなグラフ変換操作を陽に導入している。(1)マッチングに適した画像内容の構造表現法濃淡画像の領域分割については、後の処理として意味のある構成要素を抽出しやすくするために、確実に一つの領域と判定される領域(確定領域)のみを領域分割の結果として抽出し、それ以外の部分は不確定領域として高次処理に委ねる手法を提案した。(2)最適なマッチングの定式化に関する研究二つの視点から撮影した同一情景の間の対応づけを行うために、それぞれの画像の領域分割結果を用いて領域間のマッチングを行う手法を2種類提案した。第一の方法では、注目する領域とその近傍にある3つの領域で形づくる3種類の三角形を用いて領域間の構造を表現し、領域間構造と領域それ自身の類似性に基づいて弛緩法でマッチングを行う。得られた領域対応からカメラの移動パラメータを推定し、カメラの移動によって生ずるオプティカルフローの全体的整合性から誤った領域の対応づけを検出し、修正を行う。第二は、同じ問題を属性つきグラフのマッチング問題として定式化して、コストつきグラフ変換操作を適用し、コスト最小グラフマッチング、すなわち最大類似グラフマッチングを求める方法である。平面グラフの性質およびそのグラフが領域の隣接関係を表していることから生ずる特性をうまく利用して、効率の良い属性つき平面グラフのマッチング法を構築した。また、この方法では、一方の画像の一つの領域が他方の画像では二つ以上の領域に分割されている場合、1対多対応を許すようなグラフ変換操作を陽に導入している。
KAKENHI-PROJECT-06680350
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06680350
唾液メタボローム解析による乳癌診断法の確立
乳癌患者を対象として、唾液のメタボローム解析を行うことにより新たな乳がん診断法を開発することを目的とした。乳癌患者90例と健常者20例の唾液を採取し、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて50-1,000 m/zのイオン性代謝物の網羅的な測定を行った。乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は62物質であった。乳がん患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。目的:我々は乳癌患者を対象として、低侵襲に採取可能な体液である唾液のメタボローム解析を行うことにより新たな乳がん診断法を開発することを目的とした。対象と方法:当院を受診した乳癌患者60例の唾液を採取し、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて50-1,000 m/zのイオン性代謝物の網羅的な測定を行った。540物質の標準同定と定量を行った。対照として20名の健常女性から得られた唾液を用いた。統計解析にはnonparametric Mann-Whitney Utest及びreceiver operating characteristics (ROC)を用いた。結果:浸潤性乳管癌49例、浸潤性小葉癌2例、非浸潤癌9例を含む乳癌症例の年齢中央値は62.5歳(range:26-81歳)、平均腫瘍径は2.3cm、臨床的リンパ節転移陰性症例が48例(80.0%)であった。ホルモン陽性症例を51例(85.0%)、HER2陽性症例を12例(20.0%)に認めた。平均のKi 67値は20.4%であった。術前化学療法後の症例を13例(21.7%)に認めた。Mann-Whitneytestにて乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は61物質であったが、false discovery rateにて補正後は50物質となった。乳がん患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。これら4物質の濃度は術前化学療法施行後では低下する傾向がみられた。4物質におけるROC-(受動者動作特性)曲線下の面積は0.850、0.819、0.809、0.765と高値であった。結語:低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。目的:我々は乳癌患者を対象として、低侵襲に採取可能な体液である唾液のメタボローム解析を行うことにより新たな乳癌診断法を開発することを目的とした。対象と方法:当院を受診した乳癌患者90例の唾液を採取し、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて50-1,000m/zのイオン性代謝物の網羅的な測定を行った。540物質の標準同定と定量を行った。対照として20名の健常女性から得られた唾液を用いた。統計解析にはnonparametric Mann-Whitney Utest及びreceiver operating characteristics (ROC)を用いた。結果:浸潤性乳管癌70例、浸潤性小葉癌2例、非浸潤癌14例を含む乳癌症例の年齢中央値は61歳(range:26ー81歳)、平均腫瘍径は2.3cm、臨床的リンパ節転移陰性症例が71例であった。ホルモン陽性症例を77例、HER2陽性症例を19例に認めた。平均のKi-67値は20.4%であった。術前化学療法後の症例を21例に認めた。Mann-Whitneytestにて乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は61物質であったが、false discovery rateにて補正後は50物質となった。乳癌患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。これら4物質の濃度は術前化学療法施行後では低下する傾向がみられた。4物質におけるROC-(受動者動作特性)曲線下の面積は0.850、0.819、0.809、0.765と高値であった。結語:低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。目的:我々は乳癌患者を対象として、低侵襲に採取可能な体液である唾液のメタボローム解析を行うことにより、新たな乳癌診断法を開発することを目的とした。結果:浸潤性乳管癌70例、浸潤性小葉癌2例、非浸潤癌14例を含む乳癌症例の年齢中央値は61歳(range:26ー81歳)、平均腫瘍径は2.3cm、臨床的リンパ節転移陰性症例が71例であった。ホルモン陽性症例を77例、HER2陽性症例を19例に認めた。平均のKi-67価は20.4%であった。術前化学療法後の症例を21例に認めた。Mann-Whitneytestにて乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は61物質であったが、fales discovery rateにて補正後は50物質となった。
KAKENHI-PROJECT-25461996
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461996
唾液メタボローム解析による乳癌診断法の確立
乳癌患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。これら4物質の濃度は術前化学療法施行後では低下する傾向がみられた。4物質におけるROC-(受動者動作特性)曲線下の面積は0.850、0.819、0.809、0.765と高値であった。結語:低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。乳癌患者に特異的な唾液中の代謝物質を50個同定している。目的:我々は乳癌患者を対象として、低侵襲に採取可能な体液である唾液のメタボローム解析を行うことにより、新たな乳癌診断法を開発することを目的とした。結果:浸潤性乳管癌70例、浸潤性小葉癌2例、非浸潤癌14例を含む乳癌症例の年齢中央値は61歳(range:26ー81歳)、平均腫瘍径は2.3cm、臨床的リンパ節転移陰性症例が71例であった。ホルモン陽性症例を77例、HER2陽性症例を19例に認めた。平均のKi-67価は20.4%であった。術前化学療法後の症例を21例に認めた。Mann-Whitneytestにて乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は61物質であったが、fales discovery rateにて補正後は50物質となった。乳癌患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。これら4物質の濃度は術前化学療法施行後では低下する傾向がみられた。4物質におけるROC-(受動者動作特性)曲線下の面積は0.850、0.819、0.809、0.765と高値であった。結語:低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。乳癌患者を対象として、唾液のメタボローム解析を行うことにより新たな乳がん診断法を開発することを目的とした。乳癌患者90例と健常者20例の唾液を採取し、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて50-1,000 m/zのイオン性代謝物の網羅的な測定を行った。乳癌患者と健常者の間に有意差を認めた代謝物は62物質であった。乳がん患者における濃度が健常者の3倍以上の物質は34物質、10倍以上の物質は4物質であった。低侵襲かつ低コストにて採取可能である唾液のメタボローム解析により新たな乳癌検診システムの可能性が示唆された。乳癌患者に特異的な唾液中の代謝物質を50個同定している。組織を用いたメタボローム解析:唾液・血液から得られた特徴的な代謝産物が癌組織においても同様に増加ないし減少しているかを確認する。これら代謝物質の産生過程に注目し、酵素などの代謝産物を増加もしくは減少させる役割を担う蛋白を同定する。診断マーカーの有用性の評価:唾液メタボローム解析から得られた診断用マーカーの有用性を確認するために、検体情報をブラインドとしてメタボローム解析を行い、提案された診断システムの正診率を評価する。唾液のみならず血液も用いてマーカーの有用性を評価する。正診率が有意差を持って高率であれば、このメタボローム解析の代謝産物に関して特許を申請する。同様の検討を研究グループに属していない医療機関にサンプルの提供を求め、提案された診断用の有用性を再評価する。乳腺外科,外科腫瘍学組織を用いたメタボローム解析唾液・血液から得られた特徴的な代謝産物が癌組織においても同様に増加ないしは減少しているかを確認する。これら代謝産物の産生過程に注目し、酵素などの代謝産物を増加もしくは減少させる役割を担う蛋白を同定する。
KAKENHI-PROJECT-25461996
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25461996
富栄養化にかかわる急速な水質浄化が水生微生物群集におよぼす影響
水圏生態系における定常性保全機構は生物学的過程によって主な支配を受けていると見なして差し支えない。そして、人類の利益が関与する過程を除けば、水圏生態系における定常性保全機構を構成する諸過程は微生物によって概ね制御されている。本研究は、水圏生態系が貧栄養化の影響を受けた場合に、その影響により環境諸要因の定常振動振幅が同一湖沼標式内において可逆的に変動する様式を、茨城県つくば市内洞峰公園の洞峰沼において水質浄化システム「バイオフィルタ-システム」を稼動させた際の事例において追究した結果である。洞峰沼の水中に溶存する湖沼型決定要因である栄養塩濃度は、水質浄化システムの稼動により急激な増減を示したが、その定常振動振幅は中栄養型範囲内でのみ可逆的に変動した。そして、植物プランクトン優占種の出現様式は、水質浄化システムの稼動の有無に関係無い季節変動をしていたが、その生物量は水質浄化システムの稼動によって概ね半量に抑えられた。特に、Microcystisのような藍藻類の生物量は十分の一にまで低下して、夏季ブル-ムを形成するには至っていない。そして、水質浄化システムの稼動の有無に関係なく、植物プランクトンの固体群成長速度は同様な様式で季節変動をしていた。また、それらの固体群成長には、沼水中のアンモニア塩が制限要因であることが統計的に明らかになった。以上の結果から、水圏生態系が中栄養型湖沼標式の範囲において富栄養可や貧栄養化の急速な影響を受けても、その生態系を構成している微生物群集が優占種内での微細な交替などの環境適応を迅速に行なって系の恒常性を保とうとすることが明らかになった。その結果として、沼生態系構造は破壊されることなく、環境諸要因は中栄養型範囲内で可逆的な増減振動を繰り返すことが示された。水圏生態系における定常性保全機構は生物学的過程によって主な支配を受けていると見なして差し支えない。そして、人類の利益が関与する過程を除けば、水圏生態系における定常性保全機構を構成する諸過程は微生物によって概ね制御されている。本研究は、水圏生態系が貧栄養化の影響を受けた場合に、その影響により環境諸要因の定常振動振幅が同一湖沼標式内において可逆的に変動する様式を、茨城県つくば市内洞峰公園の洞峰沼において水質浄化システム「バイオフィルタ-システム」を稼動させた際の事例において追究した結果である。洞峰沼の水中に溶存する湖沼型決定要因である栄養塩濃度は、水質浄化システムの稼動により急激な増減を示したが、その定常振動振幅は中栄養型範囲内でのみ可逆的に変動した。そして、植物プランクトン優占種の出現様式は、水質浄化システムの稼動の有無に関係無い季節変動をしていたが、その生物量は水質浄化システムの稼動によって概ね半量に抑えられた。特に、Microcystisのような藍藻類の生物量は十分の一にまで低下して、夏季ブル-ムを形成するには至っていない。そして、水質浄化システムの稼動の有無に関係なく、植物プランクトンの固体群成長速度は同様な様式で季節変動をしていた。また、それらの固体群成長には、沼水中のアンモニア塩が制限要因であることが統計的に明らかになった。以上の結果から、水圏生態系が中栄養型湖沼標式の範囲において富栄養可や貧栄養化の急速な影響を受けても、その生態系を構成している微生物群集が優占種内での微細な交替などの環境適応を迅速に行なって系の恒常性を保とうとすることが明らかになった。その結果として、沼生態系構造は破壊されることなく、環境諸要因は中栄養型範囲内で可逆的な増減振動を繰り返すことが示された。富栄養化による湖沼生態系の破壊はよく知られているが、いったん富栄養化した生態系が栄養塩除去システムの稼働により急速な貧栄養化のストレスを受けた場合の生態系が受ける影響は殆ど知られていない。本研究において、経済的にも栄養塩除去の可能なシステムを目指して試験研究「バイオフィルターシステム実証試験が行われた洞峰沼において、沼水中における急速な栄養塩濃度の低下が其処に生息している単細胞藻類と細菌類に及ぼす影響を追求した。そして、洞峰沼中の栄養塩濃度を急速に低下させた前後の年度に、現場における浮遊性および付着性の藻類と細菌類の個体群生長速度を物質環境制御装置を用いて擬似現場的に測定することに成功した。洞峰沼は、本来は中準位の中栄養型で指標される沼の一つであったが、ホテイアオイを用いた「バイオフィルターシステム」の稼働によって数週間以内の期間に低準位の中栄養型で指標される湖沼型に移行することが明らかになった。この環境変化の結果として、夏季の植物プランクトンブルームの発生は抑えられた。このブルーム発生抑制作用の機構を解明するために、藻類や細菌類の生長速度と環境要因との関係に関する生態学的解析を行なった。そして、洞峰沼における植物プランクトンの個体群成長速度には、物理化学的環境要因のうちアンモニア塩と燐酸塩とが統計的に有意な影響を与えていることが判明した。上記の植物プランクトンブルームの発生抑制機構の解析に続いて、浮遊性と付着性の細菌群集や付着性単細胞藻類に及ぼす環境要因の影響などを現在解析中である。水圏生態系が富栄養化や貧栄養化の影響を受けると、その生態系を構成している環境諸要因は直ちに反応して系の恒常性を保とうとする。
KAKENHI-PROJECT-63560180
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63560180
富栄養化にかかわる急速な水質浄化が水生微生物群集におよぼす影響
この影響が充分には大きくない場合、それら諸要因の変動における定常振動の振幅は特定範囲内で可逆的に増大したり縮小したりするだけであるから、生態系構造は破壊されることはなく、同じ潮沼型生態系が保持されることになる。水圏生態系が富栄養化と貧栄養化との影響を受け、しかも、その影響により環境諸要因の定常振動振幅が同一湖沼標式内において可逆的に変動する様式を、茨城県つくば市内洞峰公園の洞峰沼において水質浄化システム「バイオフィルタ-システム」を稼働させた際の事例を研究した。沼水中に溶存する湖沼型決定要因である栄養塩濃度は、水質浄化システムの稼働により急激な増減を示したが、その定常振動振幅は中栄養型範囲内でのみ可逆的に変動した。水質浄化システムの稼働の有無に関係なく微生物(藻類、細菌類)の個体群成長速度は季節変動していたが、生物量は水質浄化システムの稼働によって概ね半量に抑えられた。特に、Microcystisのような藍藻類の生物量は十分の一にまで低下して、夏季ブル-ムを形成するには至っていない。また、植物プランクトンの基礎生産と個体群成長速度には、沼水中のアンモニア塩が制限要因であることが明らかになった。植物プランクトンの優占種は付着藻類の優占種としても出現した。基礎生産速度はクロロフィル濃度と類似した季節的変動を示し、洞峰沼の貧栄養化によって変動は減少していた。溶存態有機物濃度が1mgC/1付近に成長最適栄養濃度を有する貧栄養細菌と、溶存態有機物濃度が5mgC/1付近に成長最適栄養濃度を有する中栄養細菌とが洞峰沼に生息していた。また、付着細菌はバクテリオプランクトンと同一の細菌群集から構成され変動していることが明らかとなった。
KAKENHI-PROJECT-63560180
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-63560180
マクロファージのNO合成酵素及びサイトカイン遺伝子の発現抑制性寄生虫因子の研究
マンソン裂頭条虫擬充尾虫の分泌・排泄物質(ES物質)がマウスのマクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)、TNF-αやケモカインの遺伝子発現を抑制する機序について検討した。1.C3H/HeJとC3H/HeNマウスのTNF-αおよびIL-1の遺伝子発現に対するESの抑制効果の比較から、ESによるTNF-αの抑制は、TLR4より下流で作用していると推察された。2.この抑制に、マクロファージが産生する抑制因子であるprostaglandin E2,IL-10,SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の関与は認められなかった。3.ESの前処置によって、TNF-αmRNAのstabilityの低下は認められなかった。4.ESによってNF-κBの核への移行やκB elementへの結合低下が認められないかgel shift assayを用いて検討したが、抑制は認められず、ESによるTNF-αの発現抑制の機序にNF-κBは関与していないことが示唆された。5.マクロファージの細胞株J774.1とRAW264.7においても、ESの前添加によってNOの産生が抑制され、TNF-α、IP-10の遺伝子発現も抑制された。そして、これらの細胞株が、遺伝子発現抑制の機序の解明に有用であることが明らかになった。6.RAW264.7cellにMAPK阻害剤であるPD98059やSB203580を添加するとTNF-αの遺伝子発現が抑制されるが、ESを前添加した群ではさらに顕著に抑制した。このことから、ESによるTNF-αの遺伝子発現の抑制にMAPKが関与している可能性が示唆された。7.ESをtypsin15μg/mlまたはprotease K0.1U/mlで処理することによって抑制活性はほとんど消失し、抑制因子は蛋白性因子であると推察された。マンソン裂頭条虫擬充尾虫の分泌・排泄物質(ES物質)がマウスのマクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)、TNF-αやケモカインの遺伝子発現を抑制する機序について検討した。1.C3H/HeJとC3H/HeNマウスのTNF-αおよびIL-1の遺伝子発現に対するESの抑制効果の比較から、ESによるTNF-αの抑制は、TLR4より下流で作用していると推察された。2.この抑制に、マクロファージが産生する抑制因子であるprostaglandin E2,IL-10,SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の関与は認められなかった。3.ESの前処置によって、TNF-αmRNAのstabilityの低下は認められなかった。4.ESによってNF-κBの核への移行やκB elementへの結合低下が認められないかgel shift assayを用いて検討したが、抑制は認められず、ESによるTNF-αの発現抑制の機序にNF-κBは関与していないことが示唆された。5.マクロファージの細胞株J774.1とRAW264.7においても、ESの前添加によってNOの産生が抑制され、TNF-α、IP-10の遺伝子発現も抑制された。そして、これらの細胞株が、遺伝子発現抑制の機序の解明に有用であることが明らかになった。6.RAW264.7cellにMAPK阻害剤であるPD98059やSB203580を添加するとTNF-αの遺伝子発現が抑制されるが、ESを前添加した群ではさらに顕著に抑制した。このことから、ESによるTNF-αの遺伝子発現の抑制にMAPKが関与している可能性が示唆された。7.ESをtypsin15μg/mlまたはprotease K0.1U/mlで処理することによって抑制活性はほとんど消失し、抑制因子は蛋白性因子であると推察された。我々は、マンソン裂頭条虫擬充尾虫の培養上清(ES)中にICRマウスおよびC57BI/6マウスの腹腔マクロファージの一酸化窒素合成酵素、ケモカインおよびTNF-αの遺伝子発現を抑制する因子が存在することを報告してきた。最近マウスのLPSのレセプターはToll like receptor 4(TLR4)であることが見いだされ、LPS低応答性のC3H/HeJはTLR4の細胞質内ドメインの1アミノ酸の変異によることが明らかになった。そこで、C3H/HeNおよびC3H/HeJの腹腔マクロファージを回収し、擬充尾虫のESを前添加し20時間培養後、LPSで刺激すると、C3H/HeNマウスではNorthern BlotによってTNF-α,chemokine(KC,JE)の遺伝子発現が抑制されたが、IL-1とIP-10については全く抑制が認められなかった。一方、C3H/HeJマウスではC3H/HeNマウスに比べてLPSによるTNF-α,KC,JEの遺伝子発現は低かったが、ESの前添加によってこれらの遺伝子発現はさらに抑制した。しかし、IL-1とIP-10の遺伝子発現は認められなかった。TLR4からのシグナル伝達では、NF-kBの活性化による遺伝子発現が最も考えられているが、IL-1はその遺伝子発現にNF-IL6を必要とすると報告されており、またIP-10はLPSで誘導されるIFN-βによって発現するとの報告があり、ESによる遺伝子発現の抑制はNF-kBの抑制であることが示唆された。今回、さらにマクロファージ細胞株J774.1のNO産生への影響について検討した。J774.1は、腹腔マクロファージと異なり、LPS単独添加でnitriteを産生する。
KAKENHI-PROJECT-11670241
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マクロファージのNO合成酵素及びサイトカイン遺伝子の発現抑制性寄生虫因子の研究
ESを5μg/ml加えて20時間培養した後に、培養液を交換しLPS10ng/mlで刺激した場合には、nitrite産生は約90%抑制され、ES中の抑制因子精製のassay系として有用であると考えられた。マンソン裂頭条虫擬充尾虫の分泌・排泄物質(ES物質)がマウスのマクロファージの一酸化窒素合成酵素(iNOS)、TNF-αやケモカインの遺伝子発現を抑制する機序について検討した。1.C3H/HeJとC3H/HeNマウスのTNF-αおよびIL-1の遺伝子発現に対するESの抑制効果の比較から、ESによるTNF-αの抑制は、TLR4より下流で作用していると推察された。2.この抑制に、マクロファージが産生する抑制因子であるprostaglandin E2,IL-10,SLPI(secretory leukocyte protease inhibitor)の関与は認められなかった。3.ESの前処置によって、TNF-αmRNAのstabilityの低下は認められなかった。4.ESによってNF-κBの核への移行やκB elementへの結合低下が認められないかgel shift assayを用いて検討したが、抑制は認められず、ESによるTNF-αの発現抑制の機序にNF-κBは関与していないことが示唆された。5.マクロファージの細胞株J774.1とRAW264.7においても、ESの前添加によってNOの産生が抑制され、TNF-α、IP-10の遺伝子発現も抑制された。そして、これらの細胞株が、遺伝子発現抑制の機序の解明に有用であることが明らかになった。6.RAW264.7 cellにMAPK阻害剤であるPD98059やSB203580を添加するとTNF-αの遺伝子発現が抑制されるが、ESを前添加した群ではさらに顕著に抑制した。このことから、ESによるTNF-αの遺伝子発現の抑制にMAPKが関与している可能性が示唆された。7.ESをtypsin 15μg/mlまたはprotease K0.1U/mlで処理することによって抑制活性はほとんど消失し、抑制因子は蛋白性因子であると推察された。
KAKENHI-PROJECT-11670241
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C^3のMoishezonコンパクト化について
本研究ではC^3をZariski稠密に含む3次元非射影的非特異Moishezon空間Xの構造について詳しく考察した.Y:=X-C^3。をC^3の境界とする.そのとき,次を得た:(1)Yは非射影的かつ非正規Moishezon曲面である.また,境界因子Yはnefの時とnot-nefの時の二つの場合が生じる事が例によって示すことができる.そして,最終的に次が分かった.これらの結果は現在準備中である.Fano-index r=1の時はその例さえも知られていない.また,Yがnot-nefの時もその構造は殆ど分かっていないので今後の課題として更に研究を進めて行く予定である.本研究ではC^3をZariski稠密に含む3次元非射影的非特異Moishezon空間Xの構造について詳しく考察した.Y:=X-C^3。をC^3の境界とする.そのとき,次を得た:(1)Yは非射影的かつ非正規Moishezon曲面である.また,境界因子Yはnefの時とnot-nefの時の二つの場合が生じる事が例によって示すことができる.そして,最終的に次が分かった.これらの結果は現在準備中である.Fano-index r=1の時はその例さえも知られていない.また,Yがnot-nefの時もその構造は殆ど分かっていないので今後の課題として更に研究を進めて行く予定である.
KAKENHI-PROJECT-06640163
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肥満と過食のメカニズム-精神神経機能の変容の観点から肥満症の診断と治療を目指す
臨床研究では肥満症患者を対象とする2件の臨床研究を行った。減量に対する動機づけに関するアンケート研究被験者56例の解析では、減量に対する意欲はいずれの被験者も高く、また、医療従事者への信頼度も高かった。男性に比べ女性では、よりネガティブなボディイメージを持ち、より自分を我慢強いと認識していた。また、50歳以上の患者に比べ50歳未満の患者において、より社会的偏見を感じており、より多くの患者で身内を亡くすなどのトラウマティックな経験を有していた。減量成否に関連する回答の違いは認められなかった。初回回答時の体重が重いほど、減量目標(初回体重ー目標体重)が大きいほど、3年後の減量幅は大きかった。神経心理学的検査による認知機能の評価研究は被験者数が7例と少なく充分な解析結果が現時点では得られていない。これらの結果からは減量に重要な精神心理学的背景は明らかにすることが出来なかったが、被験者の減量意欲が高いことは明らかとなったことから、より減量に効果的なアプローチを包括的に行うことを目指し、平成28年8月より、申請者の所属する腎臓内分泌代謝内科に加え、食養管理室およびスポーツ医学総合センター・スポーツクリニックと共同で肥満症治療チームを発足した。平成29年4月からはスポーツ医学総合センター・ストレス外来も加わり、認知行動療法を活用した心理的支援も行える体制作りとなった。基礎研究では肥満関連動物モデル(遺伝子改変動物を含む)を作製し、代謝関連の基礎データを蓄積した。行動解析の系も野生型マウスでの検討を行った。Pyruvate carboxylase (Pcx)を、摂食亢進ペプチドであるAgRPニューロンCreマウスによりコンディショナルにノックアウトしたPcxΔAgRPマウスの解析では体重や摂食量に差は認められないが、耐糖能の改善およびインスリン感受性が良好である可能性が認められた。29年度が最終年度であるため、記入しない。29年度が最終年度であるため、記入しない。肥満症において内科治療単独で長期間にわたる減量効果を得ることは非常に困難である。その主な理由は、エネルギー消費を上回る摂食行動を修正することが困難なためである。そこで、本研究の基礎研究では、肥満小で認められる過食に繋がる精神神経機能の変容とそのメカニズムについて、肥満関連病態モデルマウスを中心とした病態モデルマウスを用いて、特に、肥満の形成および治療過程におけるマイクログリアの役割を重点的に検討し、治療介入による代謝状況および高次中枢神経系機能の評価を行っている。臨床研究では、肥満症患者の体重増加および減量経過と、減量に対する動機づけ、食行動についてのアンケートを行い、病態形成過程と心理社会的状況についての徴取を行っている。さらに、同肥満症患者に神経心理学的検査を減量治療経過中行い、食行動に影響を及ぼす高次中枢神経系機能の状況および可逆性について評価を行っている。平成27年度5月から12月の8ヶ月間は産休および育児のための研究中断期間ということであったが、4月および9-12月の研究再開準備期間を実験環境のセットアップに充てることが出来たため、1月から3月の3ヶ月間は基礎検討データの蓄積に当たることが出来た。【臨床研究】1外来肥満症患者を対象に、減量に対する動機づけに関するアンケートを行っている。ここまでの解析では、減量の動機は肥満合併症の改善が最も多く、次にパフォーマンスの改善が多かった。減量成功群の減量意欲の大きさには、減量に成功した後に目標が明確にあること、減量に対する期待が大きいこと、趣味があること、が相関していた。さらに、同じアンケートを同じ患者群に3ヵ月毎に行ったところ、徐々に食べることへの罪悪感が増え、減量が自分のためではなく周囲の人のためである、と考えるようになるという結果が得られた。経過とともに空腹感の制御およびモチベーションの維持が困難で、周囲のサポートをより必要とすると考えられた。2外来肥満症患者に当科オリジナル認知機能検査のエントリーを募集中である。【基礎研究】1報酬価値評価系の確立:マウス個体での食べ物の報酬価値を評価する行動解析(progressive ratio)を野生型マウスで検討している。2空腹感制御機構解析モデルの確立:脂肪からの離脱の検討のため絶食再摂食、sucroseからの離脱の検討のため、Two-bottle preferencetestを行い、マウスの代謝パラメーターの評価および脳内の変化を解析している。3肥満症脳内変化のメカニズム解析:19週間高脂肪食負荷を行ったマウスと正常食を負荷したマウスの視床下部および海馬マイクロアレイを行ったところ、視床下部だけでなく、海馬においても炎症系のpathwayに変化が認められていた。【臨床研究】1当科の肥満症患者を対象に、減量に対する動機づけに関するアンケートを質問紙により行っている。初診時の回答内容と体重減少率に相関するものはなかった。初診患者のうち通院継続群では、全例で5%以上の減量を達成した。最大減量率が得られたのは6か月から9か月の間でその後は緩やかに体重増加を認めた。アンケートを同一患者に3ヵ月毎に行ったところ、徐々に食べることへの罪悪感が増え、減量が自分のためではなく周囲の人のためである、と考えるようになるという結果が得られ、経過とともに空腹感の制御およびモチベーションの維持が困難で、周囲のサポートをより必要とするようになっていると考えられた。1年以上の時間経過を経ても目標体重や減量意欲には変化は質問紙上認められなかった。さらに、アンケート自由回答では、肥満教室や運動療法についてのサポートを希望する声を聴取した。
KAKENHI-PROJECT-15J40106
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肥満と過食のメカニズム-精神神経機能の変容の観点から肥満症の診断と治療を目指す
2上記同様、肥満症患者を対象に、既存の神経心理学的検査を組み合わせた当科オリジナルの認知機能検査を行っている。31、2を踏まえ平成28年8月に肥満症減量チームを発足した。【基礎研究】今年度は、肥満病態解明に繋がると考えている、高脂肪食誘発肥満モデルマウス、Foxo1, 3a,4ΔDATマウス、PcxΔAgRPマウスの繁殖や作製に時間を要し、解析対象となるモデルマウスを共同研究者の施設へ搬出するところまでは至らなかった。PcxΔAgRPマウスについては基礎検討が進んでおり、体重や摂食量に差は認められないが、耐糖能の改善傾向およびインスリン感受性が良好である可能性が認められている。高脂肪食誘発肥満モデルマウスについては、高脂肪食負荷の期間を変えたタイムコースを、サンプリング週齢を揃えたものを含め用意し、解析を行っている。小動物用麻酔装置は前述のマウスに摂食行動への作用があるペプチドの脳室内投与を行う際に使用している。臨床研究では、本研究計画により平成28年8月より肥満症治療チーム(食養課、スポーツクリニックおよび当科)が発足し、診療にあたっている。肥満患者を対象とした二つの研究計画のうち、アンケートについては終了間近であり、結果をまとめている。認知機能検査については平成29年3月31日現在、エントリー数は6例(50例を予定)で、うち、2名に半年後の再評価を行ったところである。平成28年8月に、当科、スポーツクリニック、および食養課共同で、肥満症減量チームを発足した。ここに、平成29年度からは認知行動療法の監修および実践者として、臨床心理士の指導も加わることとなり、症例ごとに個別に対応している。平成29年3月31日現在、対象患者は延べ40人となっている。今後は、肥満教室を設立し、集団療法も開始していく予定である。これら臨床研究の計画については当初の予定より進んでいる。基礎研究については、肥満症関連モデルマウスの作製と基礎データを得ている。具体的には、高脂肪食誘発肥満モデルマウスのサンプリングがほぼ終了している。海馬および視床下部のマイクロアレイ解析の結果から得られた情報のうち、炎症系の変化に注目し、解析を行っている。Foxo1, 3a,4ΔDATマウスの繁殖効率が著しく不良のため、基礎的データが充分蓄積できていない。PcxΔAgRPマウスについては基礎検討が進んでおり、体重や摂食量に差は認められないが、耐糖能の改善傾向およびインスリン感受性が良好である可能性が認められている。いずれの検討も、論文化可能なデータ蓄積は得られておらず、満足する成果が得られているとは言えない。本研究計画はすべての計画を申請者一人で行っており、平成28年度は基礎研究時間の十分な確保が難しかった。また、対象となる肥満モデルマウスの繁殖効率が当初の予定より不良である、などが原因として考えられた。臨床研究では肥満症患者を対象とする2件の臨床研究を行った。減量に対する動機づけに関するアンケート研究被験者
KAKENHI-PROJECT-15J40106
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難治性精神疾患における抗NMDA受容体抗体と脳神経線維構造の関連について
平成29年度は、まず、MRI撮影体制を構築するために、当院放射線医学教室や、当院MRI室との連携が必要であった。当院の、3T MRIは、当科以外にも、いくつもの診療科が使用しているため、頻回の撮影を行うことは、時間的制約があり困難である。また、研究目的で、緊急の撮影を行うことは困難である。そのため、当院神経免疫外来通院中で、すでに抗NR1、NR2抗体陽性であることがわかっている難治性精神疾患患者だけでなく、精神症状の出現に免疫学的異常が想定されるNPSLE患者、橋本脳症患者、神経ベーチェット病患者を対象に加え、慢性期における、MRIを撮影することとした。これにより、対象患者の全体的機能を修正版Rankin scaleで評価し、全体的な神経線維の平均拡散能との相関を検討した。平成30年度は、症例のリクルートをさらに継続し、同時に、MRI解析を開始している。現在、MRIは20例撮影している。3年間で50例を予定しているので、若干の遅れがあるが、MRIの画像解析も並行して開始している。継続して対象患者をリクルートする予定である。平成31年度も、引き続き、対象患者のリクルートおよびMRI撮影を継続する。また、最終年度であるので、同時に結果の整理を行い、随時学会発表、論文作成を行っていく予定である。当院の、3T MRIは、当科以外にも、いくつもの診療科が使用しているため、頻回の撮影を行うことは、時間的制約があり困難である。また、研究目的で、緊急の撮影を行うことは困難である。そのため、当院神経免疫外来通院中で、すでに抗NR1、NR2抗体陽性であることがわかっている難治性精神疾患患者だけでなく、精神症状の出現に免疫学的異常が想定されるNPSLE患者、橋本脳症患者、神経ベーチェット病患者を対象に加え、慢性期における、MRIを撮影することとした。これにより、対象患者の全体的機能を修正版Rankin scaleで評価し、全体的な神経線維の平均拡散能との相関を検討する。現在、MRIは7例で撮影している。3年間で50例を予定しているので、若干の遅れがあるが、初年度はMRI撮影体制の確立に時間がかかったため、許容範囲と考えている。継続して対象患者をリクルートする予定である。平成29年度は、まず、MRI撮影体制を構築するために、当院放射線医学教室や、当院MRI室との連携が必要であった。当院の、3T MRIは、当科以外にも、いくつもの診療科が使用しているため、頻回の撮影を行うことは、時間的制約があり困難である。また、研究目的で、緊急の撮影を行うことは困難である。そのため、当院神経免疫外来通院中で、すでに抗NR1、NR2抗体陽性であることがわかっている難治性精神疾患患者だけでなく、精神症状の出現に免疫学的異常が想定されるNPSLE患者、橋本脳症患者、神経ベーチェット病患者を対象に加え、慢性期における、MRIを撮影することとした。これにより、対象患者の全体的機能を修正版Rankin scaleで評価し、全体的な神経線維の平均拡散能との相関を検討した。平成30年度は、症例のリクルートをさらに継続し、同時に、MRI解析を開始している。現在、MRIは20例撮影している。3年間で50例を予定しているので、若干の遅れがあるが、MRIの画像解析も並行して開始している。継続して対象患者をリクルートする予定である。H30年度も、引き続き、対象患者のリクルートおよびMRI撮影を継続する。また、同時に結果の整理を行い、随時学会発表、論文作成に入る予定である。平成31年度も、引き続き、対象患者のリクルートおよびMRI撮影を継続する。また、最終年度であるので、同時に結果の整理を行い、随時学会発表、論文作成を行っていく予定である。物品費については、PCが、低価格で高性能のものを購入したため、予算の差額が生じた。その他については、新規患者から、抗NR1、抗NR2抗体を測定する件数が少なかったため。また、現在対象者がまだ少数であるため、費用が掛からなかった。未使用分は、来年度に持ち越し、対象患者の抗体測定費用に充当する。その他については、新規患者から、抗NR1、抗NR2抗体を測定する件数が少なかったため。また、現在対象者がまだ少数であるため、費用が掛からなかった。未使用分は、来年度に持ち越し、対象患者の抗体測定費用に充当する。
KAKENHI-PROJECT-17K16390
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K16390
超高感度テラヘルツヘテロダインCTおよび分光イメージングの実現
我々は、ダイナミックレンジ10桁を有する光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムの開発に成功した。発生側と同じ光注入型テラヘルツパラメトリック発生器を検出側に配し、検出するテラヘルツ波を種光として用いてアイドラー光(近赤外光)をLiNbO3結晶内で発生させ、それを近赤外検出器で観察する手法により、信号対雑音比10桁(100dB)という極めて高いダイナミックレンジを達成した。テラヘルツ分光イメージングシステムに関して、is-TPGの赤外光検出器を高感度フォトディテクタに変更し、さらに角度位相整合条件を満たすべく、フォトディテクタを最適位置へとステージ制御することで、さらに高いダイナミックレンジを有するテラヘルツ分光イメージングシステムを構築した。これにより広い帯域においてダイナミックレンジ10桁を実現し、更なる厚手の遮蔽物越しでの試薬ターゲットの画像抽出を可能とした。また、テラヘルツ波の多波長発振化およびCCDカメラを用いた近赤外光検出により、ワンパルスでのテラヘルツ分光を実現し、測定時間を大幅に短縮するとともに、分光イメージングの高速化に成功した。テラヘルツ3D-CTシステムに関して、低周波化is-TPGの導入を図り、吸収係数の大きいターゲットの3D-CTを実現した。また、解像度を向上させるための光学系の再設計および画像処理プログラムの最適化を進めた。特に、テラヘルツ波用レンズ設計の見直し、サンプル通過後のテラヘルツ波の屈折を補正する機構、およびサンプルの輪郭を強調させる画像解析技術等を導入した。テラヘルツ波検出の更なる高感度化および分光器としての広帯域化を図った。高感度化については光注入に無関係に、テラヘルツパラメトリック発生により生じる背景ノイズ光の除去が重要であり、空間フィルターの導入により12桁の高感度化を得た。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。平成29年度が最終年度であるため、記入しない。本研究ではまず、テラヘルツ分光/イメージングシステムを高いレベルで実現し、従来不可能であった、厚手の郵便物や小包等に隠された禁止薬物の検出や、病院や薬局で処方される薬の間違いを包装上から検出すること、などを可能にする。さらに、従来透過イメージングが困難であった複雑な構造のプラスチック製品やセラミクス製品などの欠陥検査へ供するテラヘルツヘテロダインCTを実現する。なお、これらの分光・イメージング技術に対するニーズは、申請者らが共同研究を進めてきた多数の企業、税関研究所、警察研究所、などからの要請が大きく、世界的にも重要な課題であることを確認しており、それらを解決し得る新たな技術を日本から発信する意義は大きい。研究期間内に明らかにする項目は、1光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツ分光イメージングシステムの実現2光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツヘテロダインCTシステムの実現3光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムの1THz以下の低周波域への拡大、および4上記システムの各種応用に対する実用性能評価および基盤技術の醸成、である。特に、項目3において、理化学研究所の南出、林研究員に参加を要請し、1THz以下の領域における光注入型テラヘルツパラメトリック発生器の開発を目的としている。1THz以下の帯域では、紙、ビニール、プラスチック、セラミクス、衣類、試薬、錠剤、など本研究で対象とする測定ターゲット中に含まれる様々な物質の透過率が高くなる。低周波化にともなう、空間分解能低下とのトレードオフの問題はあるものの、特に禁止薬物や処方薬などをターゲットとする分光検査においては、イメージング性能よりも分光性能が重要となるため、低周波域への拡大は有意義である。我々は今年度、近赤外検出素子であるフォトディテクターあるいはCCDカメラを用いて、ダイナミックレンジ10桁(SN比10桁)の性能を有する光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムの開発に成功した。このシステムの検出方式はコヒーレントなテラヘルツ波のみに感度を有するため、測定ターゲット中を直線的に透過した成分のみを計測し、散乱光は計測しないという、理想的な高精細イメージングが可能となる。本研究では、この方式の長所を活用した透過型CTおよび分光イメージングを実現し、例えば、プラスチック製品やセラミクス製品内部の欠陥検査、小包や厚手の郵便物内に隠された禁止薬物や爆薬検出、調剤薬局での処方箋ミス検出、などの社会的ニーズに応え得るシステムを実現するための基盤技術開発を進めた。今年度は、名古屋大学において、透過型テラヘルツヘテロダインCTを構築し、プラスチック製品などの内部構造の画像化を達成した。理化学研究所においては、従来の0.6THzを超える0.4THzの低周波域におけるテラヘルツ波パラメトリック発生に成功した。名古屋大学においては従来の2.8THzを大幅に超える4.7THzまでの発生に成功しており、理化学研究所の成果と併せて0.4THz4.7THzという超広帯域化に成功した。この成果も、テラヘルツ波CTの性能向上に大きく寄与するものと期待される。我々の独自方式である光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)は波長可変の単色テラヘルツ波光源であり、フーリエ変換を介さずに直接的に周波数スペクトルを得ることが出来る。近年の技術革新によりその出力はピークパワーで50kWを超えており、世界トップレベルの高出力光源である。
KAKENHI-PROJECT-25220606
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超高感度テラヘルツヘテロダインCTおよび分光イメージングの実現
また、本方式において、同様の原理を用いることで超高感度なテラヘルツ波検出も可能であり、is-TPGを発生、検出に用いることでダイナミックレンジ10桁を有するテラヘルツ波分光器を実現した。検出エリアもTHz-TDSに比べて大きいことや、フーリエ変換を介さないことからターゲット中のテラヘルツ波の散乱、多重反射、回折などに強いシステムの構築に成功し、遮蔽物下の禁止薬物や試薬類の検査に適した分光イメージングを実現した。超高感度テラヘルツ分光システムに特化した光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを立ち上げ、励起光強度および光注入光強度を増大し、高出力、高感度化を図った。また、遮蔽物越しの薬物分光検出技術を確立し、厚いターゲットの分光等を行った。特に、関税中央研究所、科学警察研究所、国際郵便局、などからの要請の大きい、厚手のEMS(Express Mail System)封筒に隠された禁止薬物の透過分光イメージングの性能を確立した。次いで、ヘテロダインCTの光学設計および基本動作確認、特に、コヒーレント成分の検出性能の確認を進めた。また、本方式の課題として高いレーザーエネルギーが必要であるといった点が挙げられるが、産業応用を考えた場合、レーザー増幅器などを必要としない簡便な装置が望まれ、テラヘルツ波発生の高効率化が必須である。名大と理研との共同研究により、数十ピコ秒程度の超短パルスレーザーを用いてテラヘルツ波発生効率を向上させることにも成功した。光注入型THz波パラメトリック発生及び検出を用いたテラヘルツ分光イメージングシステムの高出力化と高感度化を達成し、10桁(100 dB)のダイナミックレンジを得ることができた。そのシステムを用いた分光イメージングシステムを構築し、分厚い遮蔽物越しでの試薬の識別に世界に先駆けて成功し、実用レベルを達成した。実際に分光イメージングで用いたサンプルは、3種類の試薬粉末をプラスチック製の袋に封入し、厚紙のEMS封筒2枚、段ボール2枚、気泡緩衝材4枚で遮蔽した(名古屋税関職員監修の下、遮蔽物およびサンプルを準備した)。この際の遮蔽物の厚みは約23 mmもあり、2003年の報告で用いた約0.1 mmの薄い封筒よりも格段に分厚い。次に、テラヘルツ波の周波数を1.41.9 THzの範囲で変化させ、12枚のマルチスペクトル画像を測定し、予め測定した各試薬の指紋スペクトルを用いて、主成分分析法により、各試薬の空間分布と濃度の抽出に成功した。次に、3D-CTに関して、1.5 THzといった比較的高周波に中心周波数を持つ高出力波長可変光源である光注入型THz波パラメトリック発生器(is-TPG)を用いて3D-CTシステムの構築及び、プラスチックなどソフトマテリアルサンプルの3D-CT計測を行い、内部欠陥の観察等が可能であることを確認した。テラヘルツ波の産業応用を目指して,我々は,長年に渡り非線形光学結晶であるMgO:LiNbO3を用いた光注入型テラヘルツ波パラメトリック発生器(is-TPG)の研究開発を行ってきた.
KAKENHI-PROJECT-25220606
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25220606
不登校者のための通信ネットワークを用いた学習支援システムの開発
研究代表者が所属するカリキュラム開発研究センターでは,通信ネットワークを用いた教材データベースの流通,全国各地の学校との双方向通信による教育実験,衛星通信による教師教育の研究等を進めてきた。これらの通信ネットワークを用いた実験から,学校と学習者の通信ネットワークが現在の教育の社会的な問題の解決への適用が可能になってきた。一方,現代の教育課題として"いじめ"をはじめ各種の要因による不登校者への,学校をはじめ教育研究者による具体的な学習の支援研究がなされていないのが現状で,不登校者の学校教師による日常的な支援は不可能な状態である。このため,これを支援する新しい教育システムの確立が必要とされる。そこで,現在まで研究を進めてきた通信ネットワークおよび教材等のデータベースを用いた,不登校者に対する新しい学習の支援システムの研究開発を行った。本年度は,以下のような研究を実施した。(1)教室と保健室を結んだ遠隔授業参加システムを利用した実践遠隔カメラ制御ができるTV会議システムを用いて,校内LANによる在籍教室と保健室を結び,実際に保健室登校を行なっている生徒数名を対象に,遠隔授業参加の授業実践を行なった。(2)家庭とメンタルフレンドを結ぶ遠隔教育相談システムの開発と実践TV会議システムを用いて,不登校生徒の家庭とメンタルフレンドがいる大学研究室を結び,定期的・長期的な教育相談ができるようにし,実際に不登校生徒2名に対して実践を行った。学校への復帰までには至らなかったが,対人関係形成および学習意欲向上に効果が認められた。(3)教材データベースシステム開発とそれを用いた学習支援の開発カリキュラム開発研究センターの保有する教材・素材データを利用し,オブジェクトデータベースを用いた教材データベースシステムを開発し,個別学習用のパソコン端末によりアクセスできるようにした。個別教材作成用課題素材を,特に小学校算数について約11,000問整備した。研究代表者が所属するカリキュラム開発研究センターでは,通信ネットワークを用いた教材データベースの流通,全国各地の学校との双方向通信による教育実験,衛星通信による教師教育の研究等を進めてきた。これらの通信ネットワークを用いた実験から,学校と学習者の通信ネットワークが現在の教育の社会的な問題の解決への適用が可能になってきた。一方,現代の教育課題として"いじめ"をはじめ各種の要因による不登校者への,学校をはじめ教育研究者による具体的な学習の支援研究がなされていないのが現状で,不登校者の学校教師による日常的な支援は不可能な状態である。このため,これを支援する新しい教育システムの確立が必要とされる。そこで,現在まで研究を進めてきた通信ネットワークおよび教材等のデータベースを用いた,不登校者に対する新しい学習の支援システムの研究開発を行った。本年度は,以下のような研究を実施した。(1)教室と保健室を結んだ遠隔授業参加システムを利用した実践遠隔カメラ制御ができるTV会議システムを用いて,校内LANによる在籍教室と保健室を結び,実際に保健室登校を行なっている生徒数名を対象に,遠隔授業参加の授業実践を行なった。(2)家庭とメンタルフレンドを結ぶ遠隔教育相談システムの開発と実践TV会議システムを用いて,不登校生徒の家庭とメンタルフレンドがいる大学研究室を結び,定期的・長期的な教育相談ができるようにし,実際に不登校生徒2名に対して実践を行った。学校への復帰までには至らなかったが,対人関係形成および学習意欲向上に効果が認められた。(3)教材データベースシステム開発とそれを用いた学習支援の開発カリキュラム開発研究センターの保有する教材・素材データを利用し,オブジェクトデータベースを用いた教材データベースシステムを開発し,個別学習用のパソコン端末によりアクセスできるようにした。個別教材作成用課題素材を,特に小学校算数について約11,000問整備した。研究代表者が所属するカリキュラム開発研究センターでは,通信ネットワークを用いた教材データベースの流通,全国各地の学校との双方向通信による教育実験,衛星通信による教師教育の研究等を進めてきた。これらの通信ネットワークを用いた実験から,学校と学習者の通信ネットワークが現在の教育の社会的な問題の解決への適用が可能になってきた。一方,現代の教育課題として“いじめ"をはじめ各種の要因による不登校者への,学校をはじめ教育研究者による具体的な学習の支援研究がなされていないのが現状で,不登校者の学校教師による日常的な支援は不可能な状態である。このため,これを支援する新しい教育システムの確立が必要とされる。そこで,現在まで研究を進めてきた通信ネットワークおよび教材等のデータベースを用いた,不登校者に対する新しい学習の支援システムの研究開発を行った。本年度は3年計画の初年度として,研究用のネットワーク利用環境の整備を中心に行なった。(1)学習環境として通信ネットワークと不登校者の学習特性の関係の調査研究不登校者を調査し,その学習者特性の分類に対応した通信ネットワークの利用方法を検討した。(2)教室と特別教室の通信ネットワークの開発(教室の授業に参加できない者)校内LANを用いて,在籍教室と個人的な学習・共同学習ができる特別教室とを双方向の情報流通を用いた学習が可能なシステムの基本設計を行なった。(3)適応指導教室からの通信ネットワークを利用した学習環境の開発適応指導教室にいる学習者がネットワークを利用できる環境と,学習のための教材ソフト整備に関する検討を行なった。(4)ネットワークを用いた教材提供システムとの連携による学習支援カリキュラム開発研究センターの教材・素材データベースを利用した学習方法の検討の行なった。研究代表者が所属するカリキュラム開発研究センターでは、通信ネットワークを用いた教材データベースの流通、全国各地の学校との双方向通信による教育実験、衛星通信による教師教育の研究等を進めてきた。
KAKENHI-PROJECT-10558023
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10558023
不登校者のための通信ネットワークを用いた学習支援システムの開発
これらの通信ネットワークを用いた実験から、学校と学習者の通信ネットワークが現在の教育の社会的な問題の解決への適用が可能になってきた。一方、現代の教育課題として"いじめ"をはじめ各種の要因による不登校者への、学校をはじめ教育研究者による具体的な学習の支援研究がなされていないのが現状で、不登校者の学校教師による日常的な支援は不可能な状態である。このため、これを支援する新しい教育システムの確立が必要とされる。そこで、現在まで研究を進めてきた通信ネットワークおよび教材等のデータベースを用いた、不登校者に対する新しい学習の支援システムの研究開発を行う。本年度は、以下のような研究を実施した。(1)教室と特別教室(保健室)を結んだ遠隔授業参加システムを利用した実践。校内LANによる在籍教室と保健室とを、遠隔カメラ制御ができるテレビ会議システムを用いて、実際に保健室登校を行っている生徒数名を対象に、遠隔授業参加の授業実践(数学、社会、美術等)を行った。本開発システムだけによる成果ではないと思われるが、そのうち1名は、原学級での学習に復帰できたことは特筆に値する。(2)適応指導教室からの通信ネットワークを利用した学習環境の開発適応指導教室にいる学習者および相談員等が、ネットワークを利用して教育相談・学習相談ができるように、簡易テレビ会議システムを県教育センター相談部およびいくつかの適応指導教室に設置し、組織化を図った。(3)教材データベースシステム開発とそれを用いた学習支援の開発カリキュラム開発研究センターの保有する教材・素材データを利用し、オプジェクトデータベースを用いた教材データベースシステムを開発し、個別学習用のパソコン端末によりアクセスできるようにした。研究代表者が所属するカリキュラム開発研究センターでは,通信ネットワークを用いた教材データベースの流通,全国各地の学校との双方向通信による教育実験,衛星通信による教師教育の研究等を進めてきた。これらの通信ネットワークを用いた実験から,学校と学習者の通信ネットワークが現在の教育の社会的な問題の解決への適用が可能になってきた。一方,現代の教育課題として"いじめ"をはじめ各種の要因による不登校者への,学校をはじめ教育研究者による具体的な学習の支援研究がなされていないのが現状で,不登校者の学校教師による日常的な支援は不可能な状態である。このため,これを支援する新しい教育システムの確立が必要とされる。そこで,現在まで研究を進めてきた通信ネットワークおよび教材等のデータベースを用いた,不登校者に対する新しい学習の支援システムの研究開発を行った。本年度は,以下のような研究を実施した。
KAKENHI-PROJECT-10558023
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高精度電波観測による突発的電波新星の起源解明
那須観測所におけるモニター体制の整備に関しては当初よりも遅れが出たものの、後処理等の整備については当初予定を上回る成果を得ることができた。高感度・高精度VLBI観測システムについては予定通り整備が進んだ。実際に突発現象への対応を想定し、ある領域内に存在する多くの候補天体を観測するための試験を重ねるとともに、2010年に発生した活動銀河中心核天体における突発的なバースト現象に国内VLBI観測網として対応するという実績を作ることができた。那須観測所におけるモニター体制の整備に関しては当初よりも遅れが出たものの、後処理等の整備については当初予定を上回る成果を得ることができた。高感度・高精度VLBI観測システムについては予定通り整備が進んだ。実際に突発現象への対応を想定し、ある領域内に存在する多くの候補天体を観測するための試験を重ねるとともに、2010年に発生した活動銀河中心核天体における突発的なバースト現象に国内VLBI観測網として対応するという実績を作ることができた。本研究の目的は、早稲田大学の那須パルサー観測所(以後、那須観測所)で繰り返し行っている広域サーベイによって見つかりだした「電波領域において突発的に輝く天体(以後、電波トランジェント)」の正体解明に向け、主に国内の電波天文用観測網を利用することで、トランジェント現象の起源天体及び天体物理学的性質を探ることである。特に那須観測所の広域サーベイによって電波トランジェントが検出された後、数時間以内に天文観測装置の中で最も高い位置決定精度を持つ超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて観測することで、対応天体の同定が期待できる。本年度は那須観測所において広域サーベイをより感度良く実施するため、ナイキストレートでデータをサンプリングできるA/Dサンプラーを導入する。現在試験を行い観測システムに組み込む準備をしているところであるが、実際の観測に導入できればさらに高感度での定常観測の実施が見込めるため、今まで検出された電波トランジェントよりも数倍暗いものまで検出できる可能性がある。この天体の一様等方分布を仮定すれと、強度が今までの1/2の天体まで検出できれば検出数が約2.8倍に増えることも期待できる。検出機会が増えることにより、統計的な議論が有意になるだけでなく他の観測所(国内VLBI観測網や他の波長における観測装置など)を用いた追観測の機会が増え、この天体の起源に迫れる可能性が高くなるはずである。試験中のサンプリング装置及び今後導入予定の記録装置をセットにした試験を出来る限り早く済ませ、新年度中旬頃までに定常観測への導入することを目指す。本研究の目的は、早稲田大学の那須パルサー観測所(以後、那須観測所)で繰り返し行っている広域サーベイによりて見つかりだした「電波領域において突発的に輝く天体(以後、電波トランジェント)」の正体解明に向け、主に国内の電波天文用観測網を利用することで、トランジェント現象の起源天体及び天体物理学的性質を探ることである。特に那須観測所の広域サーベイによって電波トランジェントが検出された後、数時間以内に天文観測装置の中で最も高い位置決定精度を持つ超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて観測することで、対応天体の同定が期待できる。本年度は那須観測所において広域サーベイをより感度良く実施するため、高感度観測システム(新A/Pサンプラー及び大容量データストレージ)の導入準備を行った。本装置を那須観測所の観測システムに組み込むことにより高感度な定常観測可能となるため、今まで検出された電波トランジェントよりも数倍暗いものまで検出できる可能性がある。電波トランジェントの一様等方分布を仮定すると、強度が今までの1/2程度の天体まで検出できれば検出数が約2.8倍に増えることも期待できる。検出機会が増えることにより統計的に有意にな議論が可能になるだけでなく、他の観測所(国内VLBI観測網や他の波長における観測装置など)を用いた追観測の機会が増え、この天体の起源に迫れる可能性が高くなるはずである。加えて2011年度は高感度観測システムの導入及び追観測網の構築と併せて進めている速報システムにとって非常に重要となる、「検出信号の信頼度評価手法」及び、「天体強度の高精度評価法」について論文化することができた。両論文とも最近受理された(Aoki et al.2012in press, Tanaka et al. 2012 in press)。本研究の目的は、早稲田大学の那須パルサー観測所(以後、那須観測所)で繰り返し行っている広域サーベイによって見つかりだした「電波領域において突発的に輝く天体(以後、電波トランジェント)」の正体解明に向け、主に国内の電波天文用観測網を利用することで、トランジェント現象の起源天体及び天体物理学的性質を探ることである。特に那須観測所の広域サーベイによって電波トランジェントが検出された後、数時間以内に天文観測装置の中で最も高い位置決定精度を持つ超長基線電波干渉計(VLBI)を用いて観測することで、対応天体の同定が期待できる。那須観測所に設置予定の新観測装置については様々な要因によって性能出しが当初より遅れ、未だ本観測には至れていない。しかしながら「取得データの自動解析システム(Tanaka et al. 2012)」や、突発現象検出時における自動発信システムの「検出データ信頼度評価システム(Aoki et al. 2012)」については現観測システムにおける定常運用が進められており、突発現象のモニター体制自体の整備は予定通り進んでいる。高感度・高精度VLBI観測システムについては予定通り整備が進んだ。実際に突発現象への対応を想定し試験的に短時間のスナップショット観測である領域内の多くの候補天体を観測するという試験を重ねた。
KAKENHI-PROJECT-22740130
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高精度電波観測による突発的電波新星の起源解明
本試験観測により実際の観測における性能評価が進むとともに、改善点の洗い出しを行なうこともできた。また2010年に発生した活動銀河中心核天体の大フレアに対し、突発現象に国内VLBI観測網として対応するという実績を作ることができていたのだが、その観測結果の論文(Niinuma et al. 2012)も査読雑誌に受理された。また多角的視点から電波トランジェントの起源解明を目指し、重力波の研究者との共同研究を始めており、重力波研究者によるセミナーも開催した。高感度観測システムを2011年度中に観測所へ導入予定であったが、大震災及び観測所敷地内における放射能汚染の影響により、試験観測等を含めた作業に遅れが生じている。24年度が最終年度であるため、記入しない。遅れていた新観測システムの導入を2012年度早々に済ませ本観測に向けて動き出す予定である。試験観測、定常観測への準備と並行し、共同研究者等が論文化することのできた「信頼度評価システム」及び「高精度強度評価システム」を電波トランジェント検出時速報システムに組冷込む。VLBIによる追観測に向け、高感度VLBIシステムの立ち上げ、及び光結合VLBIシステムの再立ち上げも併せて行っていく。24年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-22740130
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天然変性タンパク質の折り畳みに伴う水和状態と構造揺らぎの変化
天然変性タンパク質は標的分子との結合に伴い、不規則に揺らぐ構造から高次の立体構造に折り畳まれる。結合折り畳みでは、構造の揺らぎが標的分子の認識に重要な役割を担う。また生理的な溶液条件下では、タンパク質構造の安定性や揺らぎは水和水に著しく影響を受けるほか、標的分子結合に伴い結合部位では脱水和が起こる。変性構造の水和状態や、結合折り畳みにおける水和状態の変化を理解することは、天然変性タンパク質の機能発現を理解するための重要な構造基盤となる。本研究では、結合折り畳み時のタンパク質の構造揺らぎと水和状態の変化を、中性子非弾性散乱によって解明することを目的とした。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の欠損変異体は、生理的条件下で非天然構造を取り、標的分子との結合により折り畳むなどの特徴を持ち、結合折り畳みに伴う動的構造変化や水和状態の変化など、天然変性タンパク質研究の優れたモデル系である。溶液中の野生型と変異体の中性子非弾性散乱データの解析を行ったところ、変異体の方がより強い準弾性散乱が観測された。準弾性散乱の解析により、蛋白質の折り畳みにより、40psの構造揺らぎがより狭い空間に制限されるようになることが示された。またポリペプチドが大きく揺らいだ天然変性状態での水和状態や、結合に誘導される折り畳みによる水和状態の変化を調べることは、天然変性タンパク質の動的構造の理解に重要であると考えられる。本年度の研究の結果、変性構造では、その大きな揺らぎのために折り畳み状態で形成されているような水和構造が壊れており、変性構造の水和水は天然構造の水和水より運動性が高いことが分かった。以上の結果より、IDPの折り畳みにより構造の揺らぎは空間的に小さくなり、その変化が水和水の揺らぎとカップルしていることが示唆される。天然変性タンパク質は標的分子との結合に伴い、不規則に揺らぐ構造から高次の立体構造に折り畳まれる。結合折り畳みでは、構造の揺らぎが標的分子の認識に重要な役割を担う。また生理的な溶液条件下では、タンパク質構造の安定性や揺らぎは水和水に著しく影響を受けるほか、標的分子結合に伴い結合部位では脱水和が起こる。変性構造の水和状態や、結合折り畳みにおける水和状態の変化を理解することは、天然変性タンパク質の機能発現を理解するための重要な構造基盤となる。本研究では、結合折り畳み時のタンパク質の構造揺らぎと水和状態の変化を、中性子非弾性散乱によって解明することを目的とした。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の欠損変異体は、生理的条件下で非天然構造を取り、標的分子との結合により折り畳むなどの特徴を持ち、結合折り畳みに伴う動的構造変化や水和状態の変化など、天然変性タンパク質研究の優れたモデル系である。溶液中の野生型と変異体の中性子非弾性散乱データの解析を行ったところ、変異体の方がより強い準弾性散乱が観測された。準弾性散乱の解析により、変異体の方がより広い構造空間を揺らいでいることが示された。またポリペプチドが大きく揺らいだ天然変性状態での水和状態や、結合に誘導される折り畳みによる水和状態の変化を調べることは、天然変性タンパク質の動的構造の理解に重要であると考えられる。まず折り畳まっている野生型の水和状態を調べたところ、タンパク質表面に水和水のネットワーク構造が見られ、この水和水ネットワークの揺らぎがタンパク質の揺らぎを制御していることが分かった。現在、変異体にはこのような水和構造が失われていることを示唆するデータを得ている。今後、野生型と変異体の水和状態を詳細に調べ、天然変性タンパク質における水和と揺らぎの関係性を調べる。天然変性タンパク質は標的分子との結合に伴い、不規則に揺らぐ構造から高次の立体構造に折り畳まれる。結合折り畳みでは、構造の揺らぎが標的分子の認識に重要な役割を担う。また生理的な溶液条件下では、タンパク質構造の安定性や揺らぎは水和水に著しく影響を受けるほか、標的分子結合に伴い結合部位では脱水和が起こる。変性構造の水和状態や、結合折り畳みにおける水和状態の変化を理解することは、天然変性タンパク質の機能発現を理解するための重要な構造基盤となる。本研究では、結合折り畳み時のタンパク質の構造揺らぎと水和状態の変化を、中性子非弾性散乱によって解明することを目的とした。スタフィロコッカルヌクレアーゼ(SNase)の欠損変異体は、生理的条件下で非天然構造を取り、標的分子との結合により折り畳むなどの特徴を持ち、結合折り畳みに伴う動的構造変化や水和状態の変化など、天然変性タンパク質研究の優れたモデル系である。溶液中の野生型と変異体の中性子非弾性散乱データの解析を行ったところ、変異体の方がより強い準弾性散乱が観測された。準弾性散乱の解析により、蛋白質の折り畳みにより、40psの構造揺らぎがより狭い空間に制限されるようになることが示された。またポリペプチドが大きく揺らいだ天然変性状態での水和状態や、結合に誘導される折り畳みによる水和状態の変化を調べることは、天然変性タンパク質の動的構造の理解に重要であると考えられる。本年度の研究の結果、変性構造では、その大きな揺らぎのために折り畳み状態で形成されているような水和構造が壊れており、変性構造の水和水は天然構造の水和水より運動性が高いことが分かった。以上の結果より、IDPの折り畳みにより構造の揺らぎは空間的に小さくなり、その変化が水和水の揺らぎとカップルしていることが示唆される。
KAKENHI-PUBLICLY-22113521
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-22113521
難治性血液腫瘍疾患に対する新規治療法の開発と新規細胞死機序の解析
Rhabdoid腫瘍におけるdepsipeptideの細胞死誘導機序にオートファジーが関与し、AIFの核からミトコンドリアへの偏移が関与すること、depsipeptide耐性化にERKシグナルが関与することを報告した。マウス骨肉腫好転移株を樹立し、zoledronic acidやCPT11で肺転移を抑制でき、invasionも抑制されることを見出した。小児AML新規予後不良因子としてBAALC exon5、新規予後良好因子としてCEBPA変異を同定した。Rhabdoid腫瘍におけるdepsipeptideの細胞死誘導機序にオートファジーが関与し、AIFの核からミトコンドリアへの偏移が関与すること、depsipeptide耐性化にERKシグナルが関与することを報告した。マウス骨肉腫好転移株を樹立し、zoledronic acidやCPT11で肺転移を抑制でき、invasionも抑制されることを見出した。小児AML新規予後不良因子としてBAALC exon5、新規予後良好因子としてCEBPA変異を同定した。抗癌剤による細胞死は、近年アポトーシス以外の細胞死が注目されている。抗癌剤(doxorubicin)投与後の心筋症マウスモデルにおいて、G-CSFをdoxorubicin投与直後から投与すると、心筋の細胞死が抑制され、特にミトコンドリア機能障害(膜電位低下、呼吸鎖complex IV酸素消費能低下)が軽減されることを報告した。(Am J Physiol Heart Circ Physiol 296:H823-H832, 2009)心筋の細胞死はtunnel色陰性であり、アポトーシス以外の細胞死と考えれ、G-CSF投与により、in vitro, in vivo共にdoxorubicin投与による細胞死が抑制された。また、抗酸化剤であるEUK8もマウス心筋症を改善した。(Circ J 73:2125-2134, 2009)緑茶に含まれるカテキンが、慢性骨髄性白血病細胞株にカスパーゼ非依存性アポトーシスを誘導することを報告した。(Cancer Sci 100:349-356. 2009)小児急性骨髄性白血病(AML)患者検体の解析で、t(8;21)症例のうち、c-kit変異があっても、AML-ETO9aを有する症例の予後は、c-kit変異のない症例の予後と有意差がないことを見出した(未発表データ)。CPT11投与により、マウス骨肉腫転移が抑制され、in vitroの系において、invasionが抑制されることを見出した。(1) BAALC発現量;AML99 104例(M3とDown症候群は除外、normal karyotypeは29例)を対象とした。診断時の骨髄サンプルから抽出作成したcDNAを使用し、Real time RT-PCRにて解析を行った。BAALCの発現量を示す分散図をFAB分類別で見ると、M0, M1では高発現、M4, M5では、低発現の傾向を示し、これは、成人AMLの報告例と相関した結果であった。M2のBAALC高発現は、小児で特徴的であった。またnormal karyotype 29例について、BAALC高発現群と低発現群でOS及びEFSを検討したが、小児では両群に有意差を認めなかった。(2) BAALCisoform ; BAALC低発現を示した全8例および高発現群の18例はいずれも1-6-8のisoformパターンのみを示したが、高発現群のうちの3例では、1-6-8以外にエクソン5を含む1-5-6-8 isoformが同定された。この3例は、いずれもBAALC高発現群に属し、2例がM4, 1例がM5aであった。臨床的には再発2例、寛解導入療法開始後day2に頭蓋内出血で死亡1例と全例死亡の転帰を示した。また3症例ともFLT3-ITDを認めなかった。したがって、小児AML(normal karyotype)で、エクソン5を含むisoform (BAALC高発現群)の予後不良因子としての意義が示唆された(3) CEBPA変異;normalkaryotype 49例中4例(8.2%)に、新規のCEBPA変異を同定した。FAB分類上、M1とM2各2例であった。M1の2例は、C末側のDNA binding domainであるbZIP内のin-frame insertion (c.1074_1075insAGA及びc.1092_1093insCAC)であり、M2の1例は、N末側の遺伝子欠失(c.214_224delCCCCGCACGCG)、もう1例はN末側とC末側の両方に遺伝子変異(c.212_213insCとc.720_721insCGCACC)を認めた。これらはいずれもFLT3-ITDを共発現せず、長期寛解を維持しており、小児においてもCEBPA変異は、予後良好因子であることが示唆された。また、新規細胞死の機序の探索としては、免疫不全マウス(NOGマウス)にPhlALL細胞を移植した系において、TKIを投与後、in vivoにおいてオートファジー細胞の同定に成功しており、今後、その機序の探索を行う。
KAKENHI-PROJECT-20591254
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20591254
スピングラス理論の最適化問題への展開による近似手法の典型評価法の確立
本課題はスピングラス理論を組合せ最適化問題のみならず、問題に対する近似アルゴリズムの典型(平均)近似精度の解析に展開することを目的としている。より具体的には、ランダムに与えられる組合せ最適化問題に対する貪欲法、確率伝搬法、線形計画緩和の典型近似性能を平均場近似を用いることで解析的に導出し、それらの典型性能比較を可能とする。これにより、情報科学、ネットワーク理論、統計力学に関わる最適化問題の典型的な困難さへの数理的理解を深化させることを目指した。本年度は本研究課題の最終年度であるため、研究成果全体の総括を行う。(1)最小頂点被覆問題のランダム化として、従来よりも広いクラスのランダムグラフにおいて上記3アルゴリズムの典型性能比較を実施した。その結果、先行研究で多用されるランダムグラフでの典型性能の大小関係とは異なるランダムグラフが存在することを見出し、大小関係の分類を行った。本成果は国際論文誌に発表されている。また、最大カバー問題における上記3アルゴリズムの典型性能比較により、確率伝搬法の優位性を解析的に示し、同等の最悪近似性能をもつ貪欲法と線形計画緩和が異なる典型近似性能をもつことを明らかにした(現在論文準備中)。これらの成果は、典型近似性能が最悪近似性能と同等に重要であり、また系統的な解析を要することを示唆している。(2)最適化問題と統計的推論問題の類似性に着目し、統計力学的手法による集団検査法におけるブーリアン圧縮センシングの効率的近似アルゴリズム提案とその典型性能解析を行った。これにより、従来法よりも効率的な手法提案という実用面と典型性能評価という理論面の両面での進展を実現した(現在論文準備中)。(3)線形計画緩和を用いた数値計算により最適化問題の典型的な困難さとグラフ構造の相関を数値的に評価した(現在論文準備中)。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。報告者は本年度主に3個のテーマに対して研究を進めた。第一に、統計力学的手法を用いた最適化問題に対する近似手法の典型性能評価である。昨年度は特定のランダムグラフ上に定義された最小頂点被覆問題に対する線形緩和法を解析した。本年度はこの結果を(1)多体相互作用を含む場合と(2)任意の次数分布で定義されたランダムグラフの場合へ拡張した。結果として、(1)の場合においても統計力学的解析により線形緩和法の典型近似性能が正しく見積られることを明らかにした。(2)では、貪欲法と線形緩和法という2つの近似手法の典型性能の悪化が起こる転移点とレプリカ対称性の破れる転移点の大小関係が3つの場合に分類されることを示した。以上の結果は、近似手法の統計力学的な典型性能評価の適用範囲を広げ、その転移とグラフ構造やレプリカ対称性の破れとの関連を明らかにした意義をもつ。第二に、代表的な統計的推論である集団検査法の統計力学的解析を行った。多数の製品から少数の不良品を検出するために必要な検査回数を減らす方策を集団検査法と呼ぶ。報告者はその近似手法の一種であるブーリアン圧縮センシングを確率伝搬法によって実装した。さらに、その典型的な性能を一部拡張したレプリカ対称キャビティ法を用いて解析した。その結果、製品数が十分多い場合、ブーリアン圧縮センシングでは全不良品の検出に必要な検査回数が従来手法の半分となることを示した。第三に、最小頂点被覆問題に対する線形緩和法の近似性能と反復回数(実行時間)の関係をレアイベント・サンプリングの手法を用いて数値的に研究した。線形緩和法により真の最適値が得られたか否かで各問題を簡単/困難に分類し、それらの問題での頻度分布間の距離を測定した。結果として、典型的に問題が簡単な状況では2つの頻度分布が区別できない一方で、典型的に問題が困難な状況ではそれらが区別されることが示唆された。統計力学を用いた線形緩和法の典型性能評価に関しては、適用する最適化問題の拡張や任意の次数分布をもつランダムグラフにおける解析などを行い、その有効範囲を広げることができたと考えている。本課題については現在論文を投稿中である。さらに、集団検査法におけるブーリアン圧縮センシングに対して確率伝搬法を用いた近似手法を提案し、その典型性能を統計力学的に解析する、といった統計力学的なアプローチに基づいた新たな近似手法の典型性能解析を行うことができた。本課題については現在投稿論文を執筆中である。線形緩和法の反復回数に関するレアイベント・サンプリングによる研究は、今後グラフ構造と問題の難易度の相関を調べることを目標としており、近似手法の典型性能とグラフ構造の関係を明らかにすることが期待される。本研究はオルデンブルグ大学(ドイツ)のA. K. Hartmann教授との国際共同研究である。以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると考えられる。本課題はスピングラス理論を組合せ最適化問題のみならず、問題に対する近似アルゴリズムの典型(平均)近似精度の解析に展開することを目的としている。より具体的には、ランダムに与えられる組合せ最適化問題に対する貪欲法、確率伝搬法、線形計画緩和の典型近似性能を平均場近似を用いることで解析的に導出し、それらの典型性能比較を可能とする。これにより、情報科学、ネットワーク理論、統計力学に関わる最適化問題の典型的な困難さへの数理的理解を深化させることを目指した。本年度は本研究課題の最終年度であるため、研究成果全体の総括を行う。(1)最小頂点被覆問題のランダム化として、従来よりも広いクラスのランダムグラフにおいて上記3アルゴリズムの典型性能比較を実施した。その結果、先行研究で多用される
KAKENHI-PROJECT-15J09001
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J09001
スピングラス理論の最適化問題への展開による近似手法の典型評価法の確立
ランダムグラフでの典型性能の大小関係とは異なるランダムグラフが存在することを見出し、大小関係の分類を行った。本成果は国際論文誌に発表されている。また、最大カバー問題における上記3アルゴリズムの典型性能比較により、確率伝搬法の優位性を解析的に示し、同等の最悪近似性能をもつ貪欲法と線形計画緩和が異なる典型近似性能をもつことを明らかにした(現在論文準備中)。これらの成果は、典型近似性能が最悪近似性能と同等に重要であり、また系統的な解析を要することを示唆している。(2)最適化問題と統計的推論問題の類似性に着目し、統計力学的手法による集団検査法におけるブーリアン圧縮センシングの効率的近似アルゴリズム提案とその典型性能解析を行った。これにより、従来法よりも効率的な手法提案という実用面と典型性能評価という理論面の両面での進展を実現した(現在論文準備中)。(3)線形計画緩和を用いた数値計算により最適化問題の典型的な困難さとグラフ構造の相関を数値的に評価した(現在論文準備中)。統計力学を用いた半正定値計画緩和の典型性能評価については、イタリアのグループが論文を出版したため、課題の内容を一部を変更する予定である。一方で、線形緩和法のレアイベント・サンプリングに関する研究をより推し進め、グラフ構造と近似手法の近似精度の相関を検証することを目標とする。また、コミュニティ検出のような最適化問題として定式化可能な課題についても、統計力学的アプローチによる近似手法の提案と典型性能評価を推進していく予定である。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。
KAKENHI-PROJECT-15J09001
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多発性外骨腫の責任遺伝子と悪性化における遺伝子変化に関する研究
本研究では主として二つのアプロ-チから多発生外骨腫及びそれに続発する軟骨肉腫の病態の解明をめざした。一つは多型性マ-カ-を用いた連鎖解析による多発性外骨腫の原因遺伝子の存在部位の同定である。これは未だ統計学的に有為な判定を下すために十分な試料が得られず、今後も試料収集を続行する必要がある。次にもう一つのアプロ-チとして、いくつかの遺伝性腫瘍において成功している、腫瘍においてヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity:LOH)が認められた染色体上にその原因遺伝子が存在しているという作業仮説のもとに、各染色体上の多型性マ-カ-を用いて軟骨肉腫におけるLOHを検索した。その結果高頻度にLOHを示した染色体は検出されなかったが、17番染色体短腕のマ-カ-では15例中6例(40%)の腫瘍でLOHを認めた。更に同部位に存在する癌抑制遺伝子の一つであるp53遺伝子を解析したところ4例において点突然変異が検出された。即ち軟骨肉腫における17pのLOHはp53遺伝子の異常に関連したものであることが判明した。興味深いことに、このp53遺伝子の変化は悪性度の高い腫瘍、特に脱分化型軟骨肉腫において高頻度に認められ、低悪性度の軟骨肉腫では検出されなかった。この結果はp53遺伝子の変化が正常組織から骨軟骨腫、あるいは軟骨肉腫へと変化する過程ではなく、その後の腫瘍の進展に関与していることを示唆する。また脱分化型軟骨肉腫において高頻度に異常が認められたことは、p53遺伝子の異常と分化形質の発現制御との関連を示唆し興味深い。このように本研究では原因遺伝子の単離に関してはいまだその端緒を得ていないが、悪性化に関わる遺伝子の変化としては今後の研究の手がかりが得られた。今後更にin vitroにおける悪性形質の抑制、分化形質の再獲得の実験など細胞生物学的なアプロ-チを含めその実体の解明を進めていきたいと考える。本研究では主として二つのアプロ-チから多発生外骨腫及びそれに続発する軟骨肉腫の病態の解明をめざした。一つは多型性マ-カ-を用いた連鎖解析による多発性外骨腫の原因遺伝子の存在部位の同定である。これは未だ統計学的に有為な判定を下すために十分な試料が得られず、今後も試料収集を続行する必要がある。次にもう一つのアプロ-チとして、いくつかの遺伝性腫瘍において成功している、腫瘍においてヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity:LOH)が認められた染色体上にその原因遺伝子が存在しているという作業仮説のもとに、各染色体上の多型性マ-カ-を用いて軟骨肉腫におけるLOHを検索した。その結果高頻度にLOHを示した染色体は検出されなかったが、17番染色体短腕のマ-カ-では15例中6例(40%)の腫瘍でLOHを認めた。更に同部位に存在する癌抑制遺伝子の一つであるp53遺伝子を解析したところ4例において点突然変異が検出された。即ち軟骨肉腫における17pのLOHはp53遺伝子の異常に関連したものであることが判明した。興味深いことに、このp53遺伝子の変化は悪性度の高い腫瘍、特に脱分化型軟骨肉腫において高頻度に認められ、低悪性度の軟骨肉腫では検出されなかった。この結果はp53遺伝子の変化が正常組織から骨軟骨腫、あるいは軟骨肉腫へと変化する過程ではなく、その後の腫瘍の進展に関与していることを示唆する。また脱分化型軟骨肉腫において高頻度に異常が認められたことは、p53遺伝子の異常と分化形質の発現制御との関連を示唆し興味深い。このように本研究では原因遺伝子の単離に関してはいまだその端緒を得ていないが、悪性化に関わる遺伝子の変化としては今後の研究の手がかりが得られた。今後更にin vitroにおける悪性形質の抑制、分化形質の再獲得の実験など細胞生物学的なアプロ-チを含めその実体の解明を進めていきたいと考える。家族性多発性外骨腫4家系、散発性多発性外骨腫2家系について染色体分析及びRFLPプロ-ブを用いた各染色体のlinkage analysisを施行した。前者4家系における患者の白血球の染色体分析の結果は全て異常を認めなかったのに対し、後者のうち、患者1人のみに15番染色体短腕にギムザ染色に濃染する領域の拡大を認めた。これはその領域がAーT richであり、また複製時期が後期で反復配列も多く、遺伝情報が少ないと考えられた。その患者の多発性外骨腫ではない母親の染色体分析も行なった結果同様の異常を認めたため、この異常はこの疾患特有のものではないと判断した。6番、7番、8番、9番、10番、12番、15番染色体のプロ-ブを用いたlinkage analysisでは、症例数が少ないため正確なrod scoreを計算できないが、6番染色体長腕のプロ-ブとは関連している可能性が示唆された。多発性外骨腫が悪性変化して二次性軟骨肉腫になる頻度は非常に低く、1症例においてのみlow gradeの軟骨肉腫を認めた。このようなlow gradeの軟骨肉腫においては、今までに検索した4番、8番、11番、12番、17番、18番、19番染色体でヘテロ接合性が保持され、ヘテロ接合性の消失頻度は骨肉腫と異なり非常に低かった。特に癌抑制遺伝子であるp
KAKENHI-PROJECT-02454344
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多発性外骨腫の責任遺伝子と悪性化における遺伝子変化に関する研究
53遺伝子の乗っている17番染色体短腕においては更に詳細な検討を行なった結果、一次性軟骨肉腫を含む全ての軟骨肉腫において2症例にp53遺伝子を含む領域でヘテロ接合性の消失を認めた。現在p53遺伝子の小さな変化をみるために、PCRーSSCP(polymerase chain reactionand single strandconformationpolymorphism)を施行中である。今年度は特に軟骨肉腫の発生・進展に関与する遺伝子の変化、特に癌抑制遺伝子の変化について研究を行なった。対照としたのは原発性軟骨肉腫14例、続発性軟骨肉腫3例、計17例の軟骨肉腫である。まず17種類の染色体長腕あるいは短腕上の多型性マ-カ-を用いて、軟骨肉腫におけるヘテロ接合性の消失(loss of heterozyーgosity:LOH)の特徴を検討した。その結果最も高頻度にLOHが認められた染色体は17pであり、情報が得られた15例中6例(40%)において、LOHが認められた。LOHが検出された6例中3例は脱分化型軟骨肉腫、他の3例はgrade IIIの軟骨肉腫でありいずれも悪性度の高い腫瘍であった。17p以外では2q、6q、及び13qでそれぞれ1例ずつLOHを認めたのみで軟骨肉腫全体ではLOHの頻度は低いことが判明した。次にこれまで我々が骨肉腫において解析してきた癌抑制遺伝子である網膜芽細胞腫(RB)遺伝子及びp53遺伝子の異常を解析した。13qに存在するRB遺伝子に関してはcDNAを用いたサザン・ブロット法により、13qのLOHが認められた脱分化型軟骨肉腫1例で遺伝子内の欠失が検出された。17pにあるp53遺伝子に関してはcDNAを用いた構造異常の検索では明かな異常は認められなかったが、脱分化型軟骨肉腫3例及びstage IIIの軟骨肉腫1例おいて点突然変異が発見された。4例全てにおいて検出された突然変異の部位では正常な対立遺伝子は失われていた。即ち17pのLOHは、p53遺伝子の異常に関連したものであると考えられる。低悪性度の軟骨肉腫ではその異常が検出されなかったことより、p53遺伝子の変化は軟骨肉腫の発生そのものではなく、低悪性度の腫瘍から更に悪性度の高い腫瘍へと変化する腫瘍の進展の過程に関与していること強く示唆し、今後軟骨肉腫の悪性度の判定の際指標の一つになると思われる。
KAKENHI-PROJECT-02454344
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遠心法による木材中の透過径評価
1.遠心力によるウォーターポテンシャルの低下とメニスカスによるウォーターポテンシャルの低下の釣り合いから、湿潤状態の針葉樹材6種の心材の透過径分布を求め樹種特性を明らかにした。早材と晩材ではいずれの樹種でも早材の方が大きな透過径を示した。乾燥材では晩材の方が透過性が良いという報告があり、湿潤材と乾燥材に差があった。2.湿潤状態で熱処理の一つである局所的水蒸気爆砕処理を行った材は透過径が大きくなることが遠心法によって定量的に求められた。3.遠心力場で壁孔に破壊が見られた。心材より辺材の方が破壊しやすく、この理由として壁孔縁とトールスの付着の強さが考えられた。またスギとベイマツでは、明らかにベイマツの方が破壊が少ない。SEMでの観察の結果トールスと壁孔口の大きさの比がベイマツの方が大きく、トールスの壁孔縁での支持機能が大きいことが明らかになった。4.遠心力の程度によって破壊の程度が異なり、遠心力の大きさから壁孔の破壊に要する力を求めると、スギの辺材で0.1から0.2MPaであった。心材では数倍大きな値であった。これから判断すると、壁孔は乾燥時に発生する毛管張力で破壊することが十分考えられた。5.湿潤木材の接触角は心材の方が辺材より大きく濡れ性が悪かったが、熱処理することによって心材の接触角と同じになった。心材をアルコール・ベンゼン抽出すると両者は同じ値になり、濡れ性の差は細胞壁内腔に沈着する抽出物に起因することが判明した。1.遠心力によるウォーターポテンシャルの低下とメニスカスによるウォーターポテンシャルの低下の釣り合いから、湿潤状態の針葉樹材6種の心材の透過径分布を求め樹種特性を明らかにした。早材と晩材ではいずれの樹種でも早材の方が大きな透過径を示した。乾燥材では晩材の方が透過性が良いという報告があり、湿潤材と乾燥材に差があった。2.湿潤状態で熱処理の一つである局所的水蒸気爆砕処理を行った材は透過径が大きくなることが遠心法によって定量的に求められた。3.遠心力場で壁孔に破壊が見られた。心材より辺材の方が破壊しやすく、この理由として壁孔縁とトールスの付着の強さが考えられた。またスギとベイマツでは、明らかにベイマツの方が破壊が少ない。SEMでの観察の結果トールスと壁孔口の大きさの比がベイマツの方が大きく、トールスの壁孔縁での支持機能が大きいことが明らかになった。4.遠心力の程度によって破壊の程度が異なり、遠心力の大きさから壁孔の破壊に要する力を求めると、スギの辺材で0.1から0.2MPaであった。心材では数倍大きな値であった。これから判断すると、壁孔は乾燥時に発生する毛管張力で破壊することが十分考えられた。5.湿潤木材の接触角は心材の方が辺材より大きく濡れ性が悪かったが、熱処理することによって心材の接触角と同じになった。心材をアルコール・ベンゼン抽出すると両者は同じ値になり、濡れ性の差は細胞壁内腔に沈着する抽出物に起因することが判明した。1.湿潤木材の接触角は心材の方が辺材より大きく濡れ性が悪かったが、熱処理をすることによって心材の接触角と同じになった。心材をアルコール・ベンゼン抽出すると両者は同じ値になり、濡れ性の差は細胞壁内腔に沈着する抽出物に起因することが判明した。2.遠心力によるウォーターポテンシャルの低下とメニスカスによるウォーターポテンシャルの低下の釣り合いから、湿潤状態のスギとダグラスファーの透過径分布を求めることを試みた(遠心法の開発)。3.その結果、辺材ではトールスの動きが予見され壁孔分布を求めることが困難と判断された。心材の透過径分布はスギとダグラスファーでは異なり、スギの方が大きいものの個体間でばらつきがあることがわかった。4.湿潤状態で熱処理の一つである局所的水蒸気爆砕処理を行った材は透過径が大きくなることが遠心法によって定量的に求められた。5.透過径に及ぼす乾燥方法の影響を調べたところ、高周波減圧乾燥法で乾燥した木材の通気性は熱気乾燥で乾燥したそれより良好で、透過径が大きいことがわかった。これは高周波減圧乾燥法における水分移動の機構から説明されうる。1.遠心力によるウォーターポテンシャルの低下とメニスカスによるウォーターポテンシャルの低下の釣り合いから、湿潤状態の針葉樹材6種の心材の透過径分布を求め樹種特性を明らかにした。早材と晩材ではいずれの樹種でも早材の方が大きな透過径を示した。乾燥材では晩材の方が透過性が良いという報告があり、湿潤材と乾燥材に差があった。2.スギ材の黒心材と赤心材では明らかに黒心材の方が透過径が小さく、黒心材の乾燥が悪いことを木材組織学的に明らかにした。3.遠心力場で壁孔に破壊が見られた。心材より辺材の方が破壊しやすく、この理由として壁孔縁とトールスの付着の強さが考えられた。またスギとベイマツでは、明らかにベイマツの方が破壊が少ない。SEMでの観察の結果トールスと壁孔口の大きさの比がベイマツの方が大きく、トールスの壁孔縁での支持機能が大きいことを明らかにした。
KAKENHI-PROJECT-08456089
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08456089
遠心法による木材中の透過径評価
4.遠心力の程度によって破壊の程度が異なり、遠心力の大きさから壁孔の破壊に要する力を求めると、スギの辺材で0.1から0.2MPaであった。心材では数倍大きな値であった。これから判断すると、壁孔は乾燥時に発生する毛管張力で破壊することが十分考えられた。5.透過径に及ぼす乾燥方法の影響を調べたところ、高周波減圧乾燥法で乾燥した木材の通気性は熱気乾燥で乾燥したそれより良好で、透過性が良いことが分かった。しかしベイマツのような心材含水率が低くほとんど自由水がない場合には乾燥法により差がない。これは高周波減圧乾燥法においては、材内部の水分移動が蒸気で行われることを表している。
KAKENHI-PROJECT-08456089
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脊椎動物頭部の進化的起源の解明
脊椎動物頭部の進化的起源を調べる為に頭索類ナメクジウオと脊椎動物の発生機構を比較した。その結果ナメクジウオ胚において中胚葉の領域マーカーは重なったままであるのが脊椎動物胚ではこれらのマーカーが前後軸方向にヘテロトピックシフトをおこしていることがわかった。これらのことから脊椎動物の頭部はナメクジウオのbodyplanを前後軸方向に引き延ばすことにできた新規形質であることが示唆される。申請者は脊椎動物の頭部の進化的起源を解明するために頭索類ナメクジウオと脊椎動物の発生過程を比較した。ナメクジウオは体節がからだの前まで並ぶのにたいし、脊椎動物は体節が体幹部にならび頭部には頭部中胚葉由来の外眼筋や鰓弓筋が分布する。そこで脊椎動物の頭部中胚葉がナメクジウオのような祖先からどのように進化したのか調べたところ原腸胚期における細胞運動が根本的に違うことがわかった。ナメクジウオ胚では前後軸の領域マーカーであるGsc, Brachyury, Deltaが重なったままであるのにたいし脊椎動物(ヤツメウナギ、サメ、カエル)胚ではこれらのマーカーの発現が前後軸で重ならなくなる。次に脊椎動物胚においてこれら中胚葉マーカーが重ならなくなる原因を調べたところ、脊椎動物胚ではBlastocoelの空間を利用し領域マーカーの発現する細胞を分けていることが考えられた。そこでカエル胚を用いてBlastoceolの空間を物理的に遮断したところナメクジウオの発生を模倣した。また細胞の動きを制御するシグナル経路であるWnt/pcpシグナルを阻害したところやはりナメクジウオの発生を模倣した。次に脊椎動物胚の中胚葉の前後軸パターンを形成するうえで必須のシグナル経路であるWnt/β-catenin経路の下流因子であるβ-cateninの核内移行の状態を観察したところ野生型では頭部で核内移行が見られず尾部で強く核内移行が見られた。一方Wnt/pcpシグナル経路を阻害した胚ではβ-cateninの核内移行の状態が前後軸で差がなかった。これはナメクジウオの胚の状態と同じであった。脊椎動物頭部の進化的起源を調べる為に頭索類ナメクジウオと脊椎動物の発生機構を比較した。その結果ナメクジウオ胚において中胚葉の領域マーカーは重なったままであるのが脊椎動物胚ではこれらのマーカーが前後軸方向にヘテロトピックシフトをおこしていることがわかった。これらのことから脊椎動物の頭部はナメクジウオのbodyplanを前後軸方向に引き延ばすことにできた新規形質であることが示唆される。申請者は脊椎動物の頭部の起源を理解するために脊索動物の最後の共通祖先に最も近いと考えられている現存する脊索動物であるナメクジウオを用いて脊椎動物胚の発生と比較を行った。注目した点は1918年、イギリスの動物学者グッドリッチが指摘した脊椎動物の頭部は体幹部の発生と相同であるという点である。原始的脊椎動物であるサメの胚を用いた研究から脊椎動物の頭部中胚葉は体幹部のそれと異なる遺伝的背景を持つことが解っている。(Adachi et al 2012)そこで申請者はナメクジウオ胚においてサメ胚で頭部に発現する遺伝子の発現パターンをin situ hybridization法により調べたところナメクジウオの原腸胚期では頭部中胚葉マーカーであるgscやdkk1が原口から体軸の前端まで発現していることがわかった。一方体幹部マーカーであるdeltaがgscの発現と重なることも解った。従ってナメクジウオ胚では頭部と体幹部の領域化が起きておらずシグナル経路の極化が行われていないことが示唆された。次に最も原始的である脊椎動物であるヤツメウナギにおいてgscとdeltaの発現を調べたところサメ胚と同様に発現が重ならないことから脊椎動物の頭部と体幹部の分離は遺伝子発現レベルでは円口類ヤツメウナギからすでに起きていたことが示唆された。次にナメクジウオ胚の体節が脊椎動物の体節の発生と同じ遺伝子プログラムを利用しているのか調べるために脊椎動物胚で体節の分節形成に必須のシグナルであるNotch/deltaシグナルの機能阻害を行ったところナメクジウオ胚において体節の分節構造形成が阻害された。従ってナメクジウオの体節は脊椎動物の体節と同じシグナル経路を使っていることがわかった。当初の予定ではサメ胚でのエレクトロポレーション法の確立などを考えていたが、その必要はなくなり、現在はアフリカツメガエルを用いて脊椎動物の中胚葉の進化がどのような発生プロセスの変更でおきたのか実験的に証明しようとしている。出てきているデータも非常に簡潔で現在論文投稿準備中である。カエル胚を用いて頭部中胚葉と体幹部中胚葉が以下に分離されるか解析している。具体的にはWnt/pcp経路の調節により中胚葉の分離が起きない胚を作成し、これとナメクジウオの原腸胚を比較することで脊椎動物の中胚葉がいかに進化したか明らかにする。該当なし
KAKENHI-PROJECT-24770222
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24770222
低分子化合物群による骨再生システムの最適化と分子機序に関する基礎的検討
本研究の目的は、骨形成性低分子化合物を用いて、再生骨の形と量を自在に制御できる骨再生療法を確立するための基礎的知見を集積することである。骨形成性低分子化合物による骨形成誘導法の最適化から、数種の低分子化合物が骨分化を効率的に誘導することが明らかとなった。その作用機序としては、骨芽細胞への運命決定と骨芽細胞の成熟によることが示唆された。また、これらの化合物を骨欠損モデルに局所投与することで、良好な骨再生を誘導できることが動物実験において確認された。これらの知見は、低分子化合物による骨再生法の開発へ寄与するものと思われる。本研究の目的は、骨形成性低分子化合物を用いて、再生骨の形と量を自在に制御できる骨再生療法を確立するための基礎的知見を集積することである。骨形成性低分子化合物による骨形成誘導法の最適化から、数種の低分子化合物が骨分化を効率的に誘導することが明らかとなった。その作用機序としては、骨芽細胞への運命決定と骨芽細胞の成熟によることが示唆された。また、これらの化合物を骨欠損モデルに局所投与することで、良好な骨再生を誘導できることが動物実験において確認された。これらの知見は、低分子化合物による骨再生法の開発へ寄与するものと思われる。申請者らがこれまでに同定してきた骨形成性低分子化合物群と骨形成性シグナル作動性化合物群の適用時期と量を最適化し、これらの化合物を「骨形成過程における最適な時期」に「最適な量及び組み合わせ」で投与することにより、欠損部周囲の前駆細胞が自律的に骨の形・量・場所を決め、骨を再生させるシステムを開発することが本研究の目的である。1.ex vivo骨形成検出システムを用いた、骨形成性低分子化合物群と骨形成性シグナル作動性化合物群による骨形成誘導法の最適化骨形成性低分子化合物群7種:ヘリオキサンチン誘導体TH、イソフラボン誘導体GI、Hhシグナル作動薬SAG、MAPK経路調節化合物anisomysin(活性化)・SB203580(抑制)、Wntシグナル調節化合物CHIR99021(活性化)・XAV939(抑制)をex vivoマウス中足骨器官培養骨形成検出システムに投与し、投与方法の最適化を試みた。その結果、SAGとTHをそれぞれ1μMで7日間同時に曝露すると、中足骨における異所性の骨殻形成を著しく誘導することが明らかとなった。来年度より、このSAGとTHの組合せを中心に解析を進める予定である。2.最適化された化合物投与プロトコールの頭蓋骨器官培養系における検証上記のSAGとTHの組合せを頭蓋骨において検証するために、器官培養系の確立を行った。4日齢マウスの頭蓋骨を10%ウシ胎仔血清を含むDMEMで培養することでexvivoにおいて骨形成を観察できることが確認された。現在、この培養系を用いたSAGとTHの骨形成効果の確認を進めている。申請者らがこれまでに同定してきた骨形成性低分子化合物群と骨形成性シグナル作動性化合物群を「骨形成過程における最適な時期」に「最適な量及び組み合わせ」で適用することによって、形成される骨の形と量を制御できるのではないかという考えのもとに本研究は着想された。骨形成誘導過程における上記の化合物群の適用時期と量を最適化することにより、欠損部周囲の前駆細胞が自律的に骨の形・量・場所を決め、骨を再生させるシステムを開発することが本研究の目的である。本年度は、昨年度までの検討により骨形成に有望であることが確認されたヘリオキサンチン誘導体(TH)の骨再生効果をラット歯周疾患モデルにより検証した。A)TH含有ゲルの作製:THは疎水性であり、水に不溶なため、シクロデキストリンに包接させ、ヒドロキシプロピルセルロースを用いて、生体に投与可能なTH含有ゲルを作製した。TH含有ゲルはインビトロにおいて顕著な細胞毒性は示さず、骨芽細胞への分化を誘導できることが判明した。また、TH含有ゲルからのTHの徐放についてもインビトロで検証すると、THのゲルからの徐放は少なくとも8日間継続することが明らかとなった。B)ラット歯周疾患モデルの樹立:Wistar rat 8週齢オスの上顎第2臼歯の片側に4週間5-0絹糸結紮を行うことで作製した。本モデルでは、絹糸結紮1週目より歯肉の腫脹と発赤を、絹糸除去直後から歯槽骨の炎症性吸収を認め、骨吸収は絹糸除去後4週まで継続することを確認した。C)ラット歯周疾患モデルにおけるTHの骨再生効果の検証:絹糸除去後1週間目に、TH含有ゲルを歯肉溝内に注入し、絹糸除去後4週(TH含有ゲル投与後3週)でその歯槽骨再生効果を検証した。マイクロCT像では、対照群、TH投与群共に骨欠損部を認めたが、TH投与群では骨破壊が減少していた。歯槽骨量の定量を行うと、TH投与群では、歯槽骨の減少が有意に抑制されていることが明らかとなった。申請者らがこれまでに同定してきた骨形成性低分子化合物群と骨形成性シグナル作動性化合物群の適用時期と量を最適化し、これらの化合物を「骨形成過程における最適な時期」に「最適な量及び組み合わせ」で投与することにより、欠損部周囲の前駆細胞が自律的に骨の形・量・場所を決め、骨を再生させるシステムを開発することが本研究の目的である。A)
KAKENHI-PROJECT-23390460
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低分子化合物群による骨再生システムの最適化と分子機序に関する基礎的検討
化合物の下流遺伝子・シグナルの検索23年度までに骨形成に有望であることが確認されたHhシグナル作動薬SAGとヘリオキサンチン誘導体THについて下流遺伝子の検索を行った。Hhシグナル作動薬SAGについては、マウス中足骨軟骨膜より採取した初代細胞を用いて、SAG刺激により発現変動する遺伝子を骨・軟骨マーカーに焦点をあてて一細胞定量的PCR法により検証した。その結果、軟骨膜には種々の遺伝子発現パターンを有する細胞がおり、SAG刺激への応答性も異なることが明らかとなった。また、THで処理した前骨芽細胞株、SAGで処理した間葉系細胞株についてマイクロアレイ解析を行い、未処理群のデータと比較して、標的遺伝子・シグナル経路の同定を試みた。その結果、THによって活性化されるいくつかのシグナル経路の候補や、SAG刺激によって発現が上昇する遺伝子が明らかとなった。B)化合物と相互作用する細胞内分子の検索THと相互作用する細胞内分子を探索するため、磁性ビーズとアミド結合を介して相互作用する官能基をもつヘリオキサンチン誘導体を作製し、この化合物がTHと同等の骨形成活性を保持していることを確認した。現在、前骨芽細胞株のライセートを用いて、化合物と結合する細胞内分子のアフィ二ティー精製を進めている。アフィニティー精製後、ビーズに結合した分子を溶出し、LC-MSにより同定する予定である。本年度は、当初の計画通り骨形成性低分子化合物群による骨形成誘導法の最適化を行い、有望な化合物の組合せと投与方法が明らかとなった。頭蓋骨器官培養系における検証は終了していないものの、現在のところ解析が最終段階にきていることから、全体としては順調に進行していると考えている。25年度が最終年度であるため、記入しない。本年度は、当初の計画通り骨形成性低分子化合物の作用機序に関する検討を行った。下流遺伝子やシグナル経路の解析においては、一細胞定量的PCR法やマイクロアレイ解析によって、有望な候補遺伝子とシグナル経路が明らかとなった。プロテオーム解析によるヘリオキサンチン誘導体THと相互作用する細胞内分子の探索は終了していないが、基礎検討がすでに開始されていることから、全体としては研究の進捗は順調であると考えている。今年度の進捗がおおむね順調であることから、研究計画に大きな変更はないと思われる。来年度は本年度見出された低分子化合物群の骨形成メカニズムの解析を予定しているが、特にLC-MSを用いた標的タンパク質の解析においては、解析条件の最適化と解析データの処理と解釈に時間を要すると予想される。これらの進捗が予定通り進まない場合、再来年度にin vivoにおける検証と併せて引き続き解析を行う等、柔軟に対応していきたいと考えている。25年度が最終年度であるため、記入しない。プロテオーム解析を継続して行うものの、25年度の計画に大きな変更はないと思われる。25年度は、これまでに明らかとなった骨形成性低分子化合物とその投与方法の骨再生効果を動物実験により検証する予定である。最も簡便なモデルから検証を開始するが、動物実験が予定通り進まない場合は、モデルの再考も含めて柔軟に対処していく予定である。
KAKENHI-PROJECT-23390460
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23390460
アメリカ合衆国における女性の「市民」意識形成と「市民」的行動に関する政治史的研究
本年度は,主として,20世紀初頭のアメリカ合衆国で展開されたユダヤ人移民の母親による抗議行動について,史料収集ならびに論文作成を行った。当該期のユダヤ人移民の母親による抗議行動として,コウシャー肉ボイコット(食糧暴動)と家賃ストライキのふたつがあげられるが,本年度は特に前者に注目し研究を進めた。女性の「合衆国市民」としての意識形成を検討するにあたって,労働者階級,特に移民女性がとった行動やその際に使われたレトリックを分析することは重要であり,それを前年度までの主たる研究対象としてきたWASPを中心とするエリート女性の行動やレトリックと比較することで本研究に大きな成果があがると思われる。食糧暴動は,1719世紀のイギリス,フランス,ドイツなどのヨーロッパ諸国,あるいは日本や中国などアジア諸国でもしばしば発生しており,またそれに関する優れた先行研究も多数存在する。合衆国でも1837年の小麦粉の「独占」に伴う食糧価格高騰に抗議して起こった暴動についてH・ガットマンが言及しているものの,総じてヨーロッパやアジア諸国に比べると研究がすすんでいない分野であるように思われる。加えてヨーロッパの食糧暴動研究に関して最も重要な研究を行ったE・P・トムスンは,暴動の主唱者が非常にしばしば女性であったとしながら,それについて十分な説明をしていない。こうしたことを踏まえて,20世紀初頭の合衆国におけるユダヤ人女性が扇動したコウシャー肉暴動を1902年の事例に沿って分析した。この暴動に関して,少数ながら国内外でいくつかの先行研究があるが,これらの研究は概ねこの暴動をたんなるモラル・エコノミーの発露とは見ておらず,当該期のほかの改革運動や労働運動とのつながりを読み取ろうとしているように思われる。しかし,コウシャー肉暴動や家賃ストライキと他の運動とのつながりを十分に考察し論じている先行研究は非常に少なく,これらのユダヤ人移民女性による行動は移民史の中のエピソードとして扱われている場合が大半で,暴動の実態そのものもあまり知られていない。そこで本年度は,収集した史料から1902年のコウシャー肉暴動の実態を,原因の明確化と暴動の進展,また暴動の際に用いられた抗議の手法やレトリックに沿って具体的に明らかにすることに主眼をおいた。コウシャー肉の高騰が直接の原因で1902年の暴動は起こったのであるが,その背景には東欧ユダヤ人の家庭像,食習慣,合衆国での苦しい生活とならんで,「トラスト」問題が見え隠れしており,本年度の研究でこれについて言及した。次年度以降,さらにユダヤ人移民女性の抗議行動に関する研究を進めていく予定である。本年度は、従来の私の研究テーマであった全国禁酒法問題に対する階級あるいは階層による女性の取り組み方の差異について、「母性」「女性市民」をキーワードとしつつ取りまとめた。その際、特に、働きかけられてもこの問題にほとんど関心を示さなかった労働者階級の女性と、彼女たちとは社会階層の上では真逆に位置しながら同様にこの問題に距離をおこうとした知的エリート層の女性とに注目し、禁酒法問題に積極的に取り組んだ女性たちの「母性」や「市民」意識と彼女たちのそれとのずれを中心に考察した。全国禁酒法論争に積極的に参加した女性たちの大半が中産階級以上で、かつ給与あるいは賃金報酬を受ける職業についていない女性であった。その彼女たちが論争の中で展開した「良妻賢母」像や「個人的自由」を守る「女性市民」像は、「キャリア・ウーマン」であった知的エリートの女性や労働者であった女性に大して共感をもたらさなかったことを本年度の研究で明らかにし、それの歴史的な意義づけを行った。この成果については、近々に共同研究として出版される予定である。また本年度は、従来の研究視野を拡大し、あらたに女性労働組合連盟(WTUL)をはじめとした労働組合運動に見られる中産階級と労働者階級女性の連帯と反発、革新主義時代からニューディール直前までの福祉政策推進者がシェパード・ターナー法のような政策の立案・推進に際して描いた理想とその政策の対象者が暮らす現実との食い違いについて、考察を開始した。新しく取り上げた事象に関しても、従来の研究からひき続いて、「ジェンダー・アイデンティティ」「階級ないしは階層」「人種あるいは民族」の3つの要素が、どのように女性の社会的・政治的動きに影響を及ぼしていたのかということに注目して考察を行った。本年度は,主として,20世紀初頭のアメリカ合衆国で展開されたユダヤ人移民の母親による抗議行動について,史料収集ならびに論文作成を行った。当該期のユダヤ人移民の母親による抗議行動として,コウシャー肉ボイコット(食糧暴動)と家賃ストライキのふたつがあげられるが,本年度は特に前者に注目し研究を進めた。女性の「合衆国市民」としての意識形成を検討するにあたって,労働者階級,特に移民女性がとった行動やその際に使われたレトリックを分析することは重要であり,それを前年度までの主たる研究対象としてきたWASPを中心とするエリート女性の行動やレトリックと比較することで本研究に大きな成果があがると思われる。食糧暴動は,1719世紀のイギリス,フランス,ドイツなどのヨーロッパ諸国,あるいは日本や中国などアジア諸国でもしばしば発生しており,またそれに関する優れた先行研究も多数存在する。合衆国でも1837年の小麦粉の「独占」に伴う食糧価格高騰に抗議して起こった暴動についてH・ガットマンが言及しているものの,総じてヨーロッパやアジア諸国に比べると研究がすすんでいない分野であるように思われる。加えてヨーロッパの食糧暴動研究に関して最も重要な研究を行ったE・P・トムスンは,暴動の主唱者が非常にしばしば女性であったとしながら,それについて十分な説明をしていない。
KAKENHI-PROJECT-14710266
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710266
アメリカ合衆国における女性の「市民」意識形成と「市民」的行動に関する政治史的研究
こうしたことを踏まえて,20世紀初頭の合衆国におけるユダヤ人女性が扇動したコウシャー肉暴動を1902年の事例に沿って分析した。この暴動に関して,少数ながら国内外でいくつかの先行研究があるが,これらの研究は概ねこの暴動をたんなるモラル・エコノミーの発露とは見ておらず,当該期のほかの改革運動や労働運動とのつながりを読み取ろうとしているように思われる。しかし,コウシャー肉暴動や家賃ストライキと他の運動とのつながりを十分に考察し論じている先行研究は非常に少なく,これらのユダヤ人移民女性による行動は移民史の中のエピソードとして扱われている場合が大半で,暴動の実態そのものもあまり知られていない。そこで本年度は,収集した史料から1902年のコウシャー肉暴動の実態を,原因の明確化と暴動の進展,また暴動の際に用いられた抗議の手法やレトリックに沿って具体的に明らかにすることに主眼をおいた。コウシャー肉の高騰が直接の原因で1902年の暴動は起こったのであるが,その背景には東欧ユダヤ人の家庭像,食習慣,合衆国での苦しい生活とならんで,「トラスト」問題が見え隠れしており,本年度の研究でこれについて言及した。次年度以降,さらにユダヤ人移民女性の抗議行動に関する研究を進めていく予定である。
KAKENHI-PROJECT-14710266
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14710266