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重陽子融合反応を利用した注入重陽子拡散の新しい測定法 | (2)結晶構造、単結晶・多結晶の違い(Al,Cu,Mo,Pd,Ta)(3)温度変化(-5°C90°C)。特に金属元素の種類によって、単結晶と多結晶のあいだで反応陽子数の時間変化に著しい違いが観測された。例えば銅では単結晶と多結晶に差がまったく見られないが、タンタルでは単結晶と多結晶とで、注入重陽子の振る舞いがまったく違う。単結晶中では重陽子の拡散が異常に早いことを示しているのか、さらなる追試が必要と思われる。また反応陽子のエネルギーを精度良く測定することによって核反応の運動学から、注入重陽子の深さ方向に対する分布の情報が得られる。これらの測定量を合わせて注入重陽子拡散の挙動の解明を行う。 | KAKENHI-PROJECT-11680511 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11680511 |
実践的な大容量超高圧装置の開発と強相関電子系核磁気共鳴への適用 | 10GPa(万気圧)を超える超高圧核磁気共鳴(NMR)技術の開発を行なってきた。本研究ではこれまでにない、試料室が大きく使用しやすい高圧装置を初めて開発した。具体的には、新しい配線方法、10万気圧超まで多配線とルビー蛍光法の為の光ファイバーを簡単に導入可能な方法を見出した。物性測定では、鉄系超伝導体の単結晶を作成し、母物質の詳細な磁気状態、化学圧力による磁性・超伝導共存状態等を報告した。10GPa(万気圧)を超える超高圧核磁気共鳴(NMR)技術の開発を行なってきた。本研究ではこれまでにない、試料室が大きく使用しやすい高圧装置を初めて開発した。具体的には、新しい配線方法、10万気圧超まで多配線とルビー蛍光法の為の光ファイバーを簡単に導入可能な方法を見出した。物性測定では、鉄系超伝導体の単結晶を作成し、母物質の詳細な磁気状態、化学圧力による磁性・超伝導共存状態等を報告した。1年目は、超高圧装置の圧力発生範囲の拡大を目指した作業と、NaFeAsの超高圧下NMR実験を行なった。超高圧装置の改良案としては、WCアンビルに嵌めこむ透明光学窓の材質を変更して違いを調べた。コーンカットの特殊なダイアモンドを使用したが、モアッサナイトの場合と同じく10GPa以上ではヒビが入り始め、改善が見られなかった為、2年目は形状やガスケットによる改良を行う。超高圧NMR実験として、鉄系超伝導体の高圧下超伝導のNMR実験を行なった。自ら作成したセルフフラックス方によるNaFeAs単結晶を用いて常圧下で行ったNMR実験(論文1)では、45K以下の反強磁性状態において、非整合スピン密度波状態と整合反強磁性状態の間のクロスオーバーが観測された。この系において化学量論比の乱れのない結晶での非整合状態の報告は殆ど無く、また温度励起のクロスオーバーも珍しいために本論文はJPSJ誌において"Papers of editors'choice"に選ばれている。続いて行っている超高圧下実験では、1.5GPa以上で構造相転移線と反強磁性転移線が重なること、4GPaでは1次相転移的に相分離した反強磁性・超伝導共存状態であること、7GPaではクリーンな超伝導状態であることなどがNMR実験により判明した。また、反強磁性ゆらぎは相境界近傍の圧力で大きく増大していることが特徴的であった。前年度に引き続き、超高圧核磁気共鳴(NMR)技術の開発を行なった。前年度の試行により、これまでの10GPa級の技術とは異なる配線方法・光導入法が必要であることが判明していた。本年度の研究により、少なくとも10GPa前後までは、多本数の配線でも歩留まりが高く安価な光ファイバーも導入可能な新配線法を開発した。つまり、超高圧NMR実験が極めて簡単に行えるようになった。詳細は、高圧力学会の来年度の会誌に掲載される予定である。また、これまで鉄系の物理圧力下超伝導を行なってきたが、比較のためにAs/P置換による化学圧力効果をSrFe_2As_2のMRを用いて研究した。Pドープ系はBaFe_2As_2において精力的に研究されてきており、高い転移温度を持つ鉄系超伝導の中では異例となるラインノードの対称性が報告されてきた。また、最近、反強磁性と超伝導の共存も報告されている。しかし、単結晶育成が難しく、Pドープ系では単結晶NMR実験は殆ど行われていなかった。その中、SrAsセルフフラックス法により、mmサイズの単結晶を育成することに初めて成功した。P量を25%付近の相境界にチューニングして単結晶NMR実験を行なった結果、ある試料ではほぼ同温度で反強磁性と超伝導の共存状態に転移した。ただし、以前報告した物理圧力下の共存状態と異なり、空間的に均一に近いと思われる共存状態であったため、両者の違いを明らかにする予定である。 | KAKENHI-PROJECT-22840014 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22840014 |
在地社会の宗教思想と記念行為についての歴史民俗学的研究 | 北関東の調査地で「地域神話」について積極的な史料調査(整理と写真撮影)を続けている。いわゆる「在地縁起」をはじめ、由来書、記念碑、伝説など、地域共同体の「歴史」を語る多様な資料を「地域神話」とみなして分類整理し、さらに比較研究することで、「歴史」の物語が創られ、変化した社会的背景について解明を試みている。現在は地域的アイデンティティ構築の視座から、上野国の「国の父」とされる英雄的人物の来歴を説く「群馬八郎」伝説関係の資料を重点的に調査している。2018年度の重要な成果は、榛名山麓の戸榛名神社(高崎市)から『戸榛名権現根本之縁起』なる縁起書を多量の関連史料と共に発見したことである。「在地縁起」の研究では、関連史料が少ないこともあり、発見された縁起の多くは「中世的文化」の痕跡だと理解されている。しかし戸榛名神社の場合は例外的に、縁起書の伝来の経緯などを説く一連の文書が縁起書と共に現存することが重要である。そのため本事例においては、資料群全体の分析を通じて、「在地縁起」が現実の地域社会でどのような社会的役割を果たしたかを明らかにすることができるのである。近世の「在地縁起」は同時代の政治的、社会的状況のなかで作成されたのであり、それらを単に「古代的」または「中世的」なものとみる従来の通説的理解は不十分であった。『戸榛名権現根本之縁起』の場合も、縁起書自体は中世のものに擬しているが、実際には古縁起を装った18世紀の模造品であり、文書を加工し、焼き跡などを付けて古味を出そうとしした痕跡が見つかった。北関東は特徴的に「中世」の「在地縁起」が多数存在することで知られる。ところがそれらの多くは近世以降の写本であり、何らかの同時代的な事情によって創られたものなのである。戸榛名神社のケースをモデルにして、古い物語をリバイバルさせた在地の人々の動きについて検討してゆく。在地縁起、由来書、由緒書、記念碑など、民衆の歴史実践にかかわる多様な資料を調査分類し、それらの比較検討により研究を進めている。歴史実践と地域的アイデンティティとの関係を明らかにするのが目的であるが、扱う領域が極めて広範であるため、最初の調査対象を「国の父」に関するもっとも有名な在地縁起書(群馬八郎関係のもの)と、それに直接関係する資料のみに限定した。しかし、それでも予想を上回る点数の資料が発見され、その整理分類のために文書封筒を準備しなくてはならなくなるなど、予想外の事態が起きた。在地縁起に関する先行研究は、資料が作られた社会的背景までは考慮しなかったため、調査も縁起書それ自体のテキスト分析にとどまる例が多かった。そのため、先行する研究者がすでに調査ずみの寺社などの場合でも、関連する地方文書などが未整理のまま残されているケースが多い。本研究では、それらも漏らさず調査を進めているため、ひとつひとつの調査場所で非常に多くの時間を取られている。また、縁起書などの文化財的価値の高い資料については、専門家の意見を取り入れて取り扱い方を配慮するなど、資料を損傷することのないよう細心の注意を図っている。そのため調査には時間がかかるが、資料の性格を考えると妥当な処置と思われる。そのた調査はおおむね順調に進展しているといえる。在地縁起、由来書、由緒書、記念碑など、地域に残る貴重な資料について引き続き調査解読を進めてゆく。寺社や関係者宅などに保存されている資料を発掘し、整理分類して必要なものについては翻刻して公開するようにする。特に、未調査の資料を多く残す戸榛名神社をはじめとする調査箇所に関しては重点化して十分な調査を行い、地域神話が社会のなかで果たした役割を豊富な資料をもとに考察できるようにする。同時に、文書類を所持する人々(多くの場合宗教者やその末裔)を対象にインタビュー調査を行い、文書(特に縁起、系図、秘伝書類)の伝来について当事者の証言を詳しく記録する。貴重な地域資料の整理分類、記録、解読に対しては、地域社会からの期待が大きいことを鑑み、行政をはじめ、地域の文化振興を行うNPOなどと協力して作業を進めることにしたい。文書目録を作成し、写真撮影し、整理分類し、翻刻の作業を行う。また、中世の縁起書や秘伝書などの貴重資料については、撮影や調査分析に先立ち、当該分野の専門家による鑑定を行うものとする。民俗学者である研究代表者だけで行うのでなく、必ず中世史、近世史、古典文学の研究者を交え、それぞれの知識に基づいて資料の内容と形態を詳しく検討する。北関東の調査地で「地域神話」について積極的な史料調査(整理と写真撮影)を続けている。いわゆる「在地縁起」をはじめ、由来書、記念碑、伝説など、地域共同体の「歴史」を語る多様な資料を「地域神話」とみなして分類整理し、さらに比較研究することで、「歴史」の物語が創られ、変化した社会的背景について解明を試みている。現在は地域的アイデンティティ構築の視座から、上野国の「国の父」とされる英雄的人物の来歴を説く「群馬八郎」伝説関係の資料を重点的に調査している。2018年度の重要な成果は、榛名山麓の戸榛名神社(高崎市)から『戸榛名権現根本之縁起』なる縁起書を多量の関連史料と共に発見したことである。「在地縁起」の研究では、関連史料が少ないこともあり、発見された縁起の多くは「中世的文化」の痕跡だと理解されている。 | KAKENHI-PROJECT-18K01179 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01179 |
在地社会の宗教思想と記念行為についての歴史民俗学的研究 | しかし戸榛名神社の場合は例外的に、縁起書の伝来の経緯などを説く一連の文書が縁起書と共に現存することが重要である。そのため本事例においては、資料群全体の分析を通じて、「在地縁起」が現実の地域社会でどのような社会的役割を果たしたかを明らかにすることができるのである。近世の「在地縁起」は同時代の政治的、社会的状況のなかで作成されたのであり、それらを単に「古代的」または「中世的」なものとみる従来の通説的理解は不十分であった。『戸榛名権現根本之縁起』の場合も、縁起書自体は中世のものに擬しているが、実際には古縁起を装った18世紀の模造品であり、文書を加工し、焼き跡などを付けて古味を出そうとしした痕跡が見つかった。北関東は特徴的に「中世」の「在地縁起」が多数存在することで知られる。ところがそれらの多くは近世以降の写本であり、何らかの同時代的な事情によって創られたものなのである。戸榛名神社のケースをモデルにして、古い物語をリバイバルさせた在地の人々の動きについて検討してゆく。在地縁起、由来書、由緒書、記念碑など、民衆の歴史実践にかかわる多様な資料を調査分類し、それらの比較検討により研究を進めている。歴史実践と地域的アイデンティティとの関係を明らかにするのが目的であるが、扱う領域が極めて広範であるため、最初の調査対象を「国の父」に関するもっとも有名な在地縁起書(群馬八郎関係のもの)と、それに直接関係する資料のみに限定した。しかし、それでも予想を上回る点数の資料が発見され、その整理分類のために文書封筒を準備しなくてはならなくなるなど、予想外の事態が起きた。在地縁起に関する先行研究は、資料が作られた社会的背景までは考慮しなかったため、調査も縁起書それ自体のテキスト分析にとどまる例が多かった。そのため、先行する研究者がすでに調査ずみの寺社などの場合でも、関連する地方文書などが未整理のまま残されているケースが多い。本研究では、それらも漏らさず調査を進めているため、ひとつひとつの調査場所で非常に多くの時間を取られている。また、縁起書などの文化財的価値の高い資料については、専門家の意見を取り入れて取り扱い方を配慮するなど、資料を損傷することのないよう細心の注意を図っている。そのため調査には時間がかかるが、資料の性格を考えると妥当な処置と思われる。そのた調査はおおむね順調に進展しているといえる。在地縁起、由来書、由緒書、記念碑など、地域に残る貴重な資料について引き続き調査解読を進めてゆく。寺社や関係者宅などに保存されている資料を発掘し、整理分類して必要なものについては翻刻して公開するようにする。特に、未調査の資料を多く残す戸榛名神社をはじめとする調査箇所に関しては重点化して十分な調査を行い、地域神話が社会のなかで果たした役割を豊富な資料をもとに考察できるようにする。同時に、文書類を所持する人々(多くの場合宗教者やその末裔)を対象にインタビュー調査を行い、文書(特に縁起、系図、秘伝書類)の伝来について当事者の証言を詳しく記録する。貴重な地域資料の整理分類、記録、解読に対しては、地域社会からの期待が大きいことを鑑み、行政をはじめ、地域の文化振興を行うNPOなどと協力して作業を進めることにしたい。文書目録を作成し、写真撮影し、整理分類し、翻刻の作業を行う。また、中世の縁起書や秘伝書などの貴重資料については、撮影や調査分析に先立ち、当該分野の専門家による鑑定を行うものとする。 | KAKENHI-PROJECT-18K01179 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K01179 |
糖尿病妊婦における妊娠中毒症発症に関与する環境因子および遺伝因子の解明 | 糖尿病妊婦における蛋白尿および高血圧の危険因子を明らかにし、治療、管理に役立てることを目的とした。1994-99年に管理を行った糖尿病合併妊婦、1型糖尿病120名、2型糖尿病162名を対象とした。1.妊娠中に蛋白尿、高血圧が出現した症例(A群)と蛋白尿、高血圧、浮腫が認められなかった症例(C群)において、体重、血糖コントロール、合併症等の臨床パラメータ、および、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、アンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子多型を比較した。2.妊娠前より蛋白尿、高血圧の認められた妊婦(B群)の妊娠中の経過、ACE遺伝子多型につき検討した。1(1)1型糖尿病120名中20名、2型糖尿病162名中14名に妊娠中蛋白尿、高血圧が出現した。(2)初産婦の頻度は1型、2型糖尿病ともA群で高い傾向にあった。(3)1型糖尿病ではA群で網膜症の進行が認められた。(4)A群、C群で分娩年齢、罹病期間、高血圧の家族歴、ACE、AGT遺伝子多型に差はなかった。(5)1型糖尿病では妊娠前BMIおよび妊娠中の体重増加はA群で高値であった。(6)2型糖尿病では妊娠前HbA1cはA群で高値であった。2(1)妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦は4名、高血圧を認めた妊婦は1名、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦は1名であった。(2)蛋白尿陽性妊婦4名中3名で妊娠中に単純から増殖への網膜症の悪化を認めた。(3)遺伝子解析は5名に可能であった。ACE遺伝子に関しては、妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦はID2名、DD1名、高血圧を認めた妊婦はII、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦はIDであった。糖尿病合併妊婦の蛋白尿、高血圧の出現は、1型糖尿病では妊娠中の体重増加が、2型糖尿病では妊娠前の血糖コントロールが関与することが示唆された。妊娠前より血糖コントロール、体重管理を厳重にし、網膜症の進展に注意することが重要である。糖尿病合併妊婦における蛋白尿および高血圧の危険因子を明らかにし、治療、管理に役立てることを目的とした。1994-98年に管理を行った糖尿病合併妊婦、1型糖尿病91名、2型糖尿病138名を対象とした。1.妊娠中に蛋白尿、高血圧が出現した症例(A群)と蛋白尿、高血圧、浮腫が認められなかった症例(C群)において、体重、血糖コントロール、合併症等の臨床パラメータ、および、アンジオテンシン変換酵素(ACE)遺伝子多型を比較した。2.妊娠前より蛋白尿、高血圧の認められた妊婦(B群)の妊娠中の経過、ACE遺伝子多型につき検討した。1-1)1型糖尿病91名中15名、2型糖尿病138名中14名に妊娠中蛋白尿、高血圧が出現した。2)初産婦の頻度は1型、2型糖尿病ともA群で高い傾向にあった。3)1型糖尿病ではA群で網膜症の進行が認められた。4)A群、C群で分娩年齢、罹病期間、高血圧の家族歴、ACE遺伝子多型に差はなかった。5)1型糖尿病では妊娠前BMIおよび妊娠中の体重増加はA群で高値であった。6)2型糖尿病では妊娠前HbA1cはA群で高値であった。2-1)妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦は4名、高血圧を認めた妊婦は1名、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦は1名であった。2)蛋白尿陽性妊婦4名中3名で妊娠中に単純から増殖への網膜症の悪化を認めた。3)遺伝子解析は5名に可能であったが妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦はID2名、DD1名、高血圧を認めた妊婦はII、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦はIDであった。糖尿病合併妊婦の蛋白尿、高血圧の出現は、1型糖尿病では妊娠中の体重増加が、2型糖尿病では妊娠前の血糖コントロールが関与することが示唆された。妊娠前より血糖コントロール、体重管理を厳重にし、網膜症の進展に注意することが重要である。糖尿病妊婦における蛋白尿および高血圧の危険因子を明らかにし、治療、管理に役立てることを目的とした。1994-99年に管理を行った糖尿病合併妊婦、1型糖尿病120名、2型糖尿病162名を対象とした。1.妊娠中に蛋白尿、高血圧が出現した症例(A群)と蛋白尿、高血圧、浮腫が認められなかった症例(C群)において、体重、血糖コントロール、合併症等の臨床パラメータ、および、アンジオテンシン変換酵素(ACE)、アンジオテンシノーゲン(AGT)遺伝子多型を比較した。2.妊娠前より蛋白尿、高血圧の認められた妊婦(B群)の妊娠中の経過、ACE遺伝子多型につき検討した。1(1)1型糖尿病120名中20名、2型糖尿病162名中14名に妊娠中蛋白尿、高血圧が出現した。(2)初産婦の頻度は1型、2型糖尿病ともA群で高い傾向にあった。(3)1型糖尿病ではA群で網膜症の進行が認められた。(4)A群、C群で分娩年齢、罹病期間、高血圧の家族歴、ACE、AGT遺伝子多型に差はなかった。(5)1型糖尿病では妊娠前BMIおよび妊娠中の体重増加はA群で高値であった。 | KAKENHI-PROJECT-12770641 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770641 |
糖尿病妊婦における妊娠中毒症発症に関与する環境因子および遺伝因子の解明 | (6)2型糖尿病では妊娠前HbA1cはA群で高値であった。2(1)妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦は4名、高血圧を認めた妊婦は1名、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦は1名であった。(2)蛋白尿陽性妊婦4名中3名で妊娠中に単純から増殖への網膜症の悪化を認めた。(3)遺伝子解析は5名に可能であった。ACE遺伝子に関しては、妊娠前より蛋白尿を認めた妊婦はID2名、DD1名、高血圧を認めた妊婦はII、蛋白尿および高血圧を認めた妊婦はIDであった。糖尿病合併妊婦の蛋白尿、高血圧の出現は、1型糖尿病では妊娠中の体重増加が、2型糖尿病では妊娠前の血糖コントロールが関与することが示唆された。妊娠前より血糖コントロール、体重管理を厳重にし、網膜症の進展に注意することが重要である。 | KAKENHI-PROJECT-12770641 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-12770641 |
心筋炎における新たな細胞治療 | ラット自己免疫性心筋炎心筋炎モデルを用いて,多能性幹細胞であるMuse細胞の急性期における抗炎症作用や心機能保持作用について,また慢性期におけるMuse細胞の心筋細胞への分化,残存心機能への寄与の程度について検討することを目的とした.本年度は東北大学細胞組織学教室の協力のもと,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からMuse細胞の培養・単離を行った.Muse細胞は,市販ヒト骨髄間葉系細胞(Lonza社)をウシ胎児血清を含んだ培地で培養し,数代の継代後にMACS (magnetic-activated cell sorting)を用いてSSEA-3陽性細胞をsortingした.心筋炎急性期として想定されるミオシン投与後14日目にMuse細胞投与を行った.Muse細胞の投与法はイソフルランによる麻酔下で経尾静脈的投与とした.先行研究では,ラット心筋炎モデルにおいて,3×105106個の卵膜由来間葉系幹細胞の静脈内投与で治療効果を確認している.Muse細胞は骨髄間葉系細胞中の5%程度である.本研究ではまず,1Muse細胞1×106細胞投与群,2Muse細胞2×106細胞投与群,3Muse細胞4×106細胞投与群の3群に分け,MRI(magnetic resonance imaging)で計測した心機能を比較することで至適細胞投与数を決定する計画である.本年度は既に細胞投与を行っており,次年度に心機能を計測する予定としている.平成29年度はラット心筋炎モデルの心機能および組織評価を行った.まず,ブタミオシンおよび完全フロイトアジュバントをラットに投与して心筋炎モデルを作成した.モデル作成後2,3,4,5,6,8週後に評価を行い心機能と組織変化の経時的推移を観察した.心臓MRIによる心機能評価ではモデル作成後2週目より左室駆出率の有意な低下傾向を示し,5週目以降横ばいとなった.組織学的にはモデル作成後2週目よりわずかな単核球浸潤を認め,3,4週目には顕著な単核球,多核球の浸潤,心筋細胞壊死および軽度の心筋細胞の錯綜配列の乱れを認めた.5週目以降には炎症細胞数は減少傾向となり,線維化を認めた.単位切片あたりの線維化の面積比は4週目より有意に増加した.ヒトにおける重症心筋炎と同様の経過をたどることが確認できた.平成30年度は,心筋炎急性期として想定されるミオシン投与後14日目にMuse細胞投与を行った.Muse細胞の投与法はイソフルランによる麻酔下で経尾静脈的投与とした.先行研究では,ラット心筋炎モデルにおいて,3×105106個の卵膜由来間葉系幹細胞の静脈内投与で治療効果を確認している.Muse細胞は骨髄間葉系細胞中の5%程度である.本研究ではまず,1Muse細胞1×106細胞投与群,2Muse細胞2×106細胞投与群,3Muse細胞4×106細胞投与群の3群に分け,MRI(magnetic resonance imaging)で計測した心機能を比較することで至適細胞投与数を決定する計画である.本年度は既に細胞投与を行っており,次年度に心機能を計測する予定である.心筋炎モデルの心機能低下および組織学的な炎症性変化が確認でき,Muse細胞の培養・単離の技術も習熟したので,今後は心筋炎モデルラットに対してMuse細胞移植を行う.当初の予定通り,急性期におけるMuse細胞の抗炎症作用や心機能保持作用について,また慢性期におけるMuse細胞の心筋細胞への分化,残存心機能への寄与の程度について検討する.ラット心筋炎モデルを用いて,多能性幹細胞であるMuse細胞の急性期における抗炎症作用や心機能保持作用について,また慢性期におけるMuse細胞の心筋細胞への分化,残存心機能への寄与の程度について検討することを目的とした.本年度は,ラット心筋炎モデルの心機能および組織評価を行った.まず,ブタミオシンおよび完全フロイトアジュバントをラットに投与して心筋炎モデルを作成した.モデル作成後2,3,4,5,6,8週後に評価を行い心機能と組織変化の経時的推移を観察した.心臓MRIによる心機能評価ではモデル作成後2週目より左室駆出率の有意な低下傾向を示し,5週目以降横ばいとなった.組織学的にはモデル作成後2週目よりわずかな単核球浸潤を認め,3,4週目には顕著な単核球,多核球の浸潤,心筋細胞壊死および軽度の心筋細胞の錯綜配列の乱れを認めた.5週目以降には炎症細胞数は減少傾向となり,線維化を認めた.単位切片あたりの線維化の面積比は4週目より有意に増加した.ヒトにおける重症心筋炎と同様の経過をたどることが確認できた.また,心筋炎モデルの重症度について検討すべく,ミオシンおよび完全フロイトアジュバントの投与量を増減してモデル作成後3週目と8週目に心機能評価を行った.完全フロイトアジュバントの投与量を増加することで心機能の悪化傾向を認めた.同時に,東北大学細胞組織学教室の協力のもと,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からMuse細胞の培養・単離を行っている.当初予測していた通り,ラット心筋炎モデルにおいて心機能の悪化および組織学的な炎症性変化を認めた.ヒトにおける重症心筋炎と矛盾しない経過が確認できた. | KAKENHI-PROJECT-17K10720 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10720 |
心筋炎における新たな細胞治療 | ラット自己免疫性心筋炎心筋炎モデルを用いて,多能性幹細胞であるMuse細胞の急性期における抗炎症作用や心機能保持作用について,また慢性期におけるMuse細胞の心筋細胞への分化,残存心機能への寄与の程度について検討することを目的とした.本年度は東北大学細胞組織学教室の協力のもと,ヒト骨髄由来間葉系幹細胞からMuse細胞の培養・単離を行った.Muse細胞は,市販ヒト骨髄間葉系細胞(Lonza社)をウシ胎児血清を含んだ培地で培養し,数代の継代後にMACS (magnetic-activated cell sorting)を用いてSSEA-3陽性細胞をsortingした.心筋炎急性期として想定されるミオシン投与後14日目にMuse細胞投与を行った.Muse細胞の投与法はイソフルランによる麻酔下で経尾静脈的投与とした.先行研究では,ラット心筋炎モデルにおいて,3×105106個の卵膜由来間葉系幹細胞の静脈内投与で治療効果を確認している.Muse細胞は骨髄間葉系細胞中の5%程度である.本研究ではまず,1Muse細胞1×106細胞投与群,2Muse細胞2×106細胞投与群,3Muse細胞4×106細胞投与群の3群に分け,MRI(magnetic resonance imaging)で計測した心機能を比較することで至適細胞投与数を決定する計画である.本年度は既に細胞投与を行っており,次年度に心機能を計測する予定としている.平成29年度はラット心筋炎モデルの心機能および組織評価を行った.まず,ブタミオシンおよび完全フロイトアジュバントをラットに投与して心筋炎モデルを作成した.モデル作成後2,3,4,5,6,8週後に評価を行い心機能と組織変化の経時的推移を観察した.心臓MRIによる心機能評価ではモデル作成後2週目より左室駆出率の有意な低下傾向を示し,5週目以降横ばいとなった.組織学的にはモデル作成後2週目よりわずかな単核球浸潤を認め,3,4週目には顕著な単核球,多核球の浸潤,心筋細胞壊死および軽度の心筋細胞の錯綜配列の乱れを認めた.5週目以降には炎症細胞数は減少傾向となり,線維化を認めた.単位切片あたりの線維化の面積比は4週目より有意に増加した.ヒトにおける重症心筋炎と同様の経過をたどることが確認できた.平成30年度は,心筋炎急性期として想定されるミオシン投与後14日目にMuse細胞投与を行った.Muse細胞の投与法はイソフルランによる麻酔下で経尾静脈的投与とした.先行研究では,ラット心筋炎モデルにおいて,3×105106個の卵膜由来間葉系幹細胞の静脈内投与で治療効果を確認している.Muse細胞は骨髄間葉系細胞中の5%程度である. | KAKENHI-PROJECT-17K10720 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K10720 |
火道周辺岩石の浸透率測定によるマグマからのガス散逸に関する研究 | 本研究の目的は,火道周辺岩石や火山岩の浸透率測定によりマグマからのガス散逸過程を明らかにすることである.本年度は,前年度に構築した浸透率測定システムを圧力発生装置に組み込んで,火山体浅部の圧力条件下で浸透率測定を行う予定であった.しかし,圧力容器を製作するメーカー(理研精機,新潟県小千谷市)が平成16年10月の新潟県中越地震で被災したため,封圧下での測定システムの整備は大幅に遅れており,平成17年3月に完成する見込みである.雲仙普賢岳平成火道のボーリングコア試料は確保しているので,封圧下での浸透率測定システムの整備後,至急その測定に取りかかる予定である.予備実験として,焼岳溶岩試料の常圧下における浸透率測定および微細構造観察を行った.目的は,ガスの浸透性をもたらす気泡の連結過程を明らかにすることである.測定された浸透率(10^<-16>-10^<-11>m^2)の値を単純なチューブ・モデルに基づいて解釈すると,気泡の連結を維持しているのは浸透率が10^<-16>m^2の場合は0.1-10ミクロン,浸透率が10^<-12>m^2の場合でも10-100ミクロンと非常に細い部分であることがわかった.微細構造観察からは,気泡の多くが斑晶鉱物に接している様子が見られた.斑晶鉱物の多い箇所では,気泡どうしの接触している様子も見られた.接触部分は浸透率から示唆されるように非常に細いものであった.これらの観察事実は,斑晶鉱物が気泡の形成・成長の場となり,さらに気泡に変形を集中させるということを意味していると考えている.このように斑晶鉱物が気泡の連結に重要な役割を果たしているのではないかと考えている.本研究の目的は,火道周辺岩石の浸透率測定を行い,マグマからのガス散逸過程を明らかにすることである.火山の噴火様式はマグマ中の揮発性物質の量に依存しており,その量を決めるガスの散逸過程を明らかにすることは,噴火様式を理解する上で非常に重要である.また,浸透率というガス散逸を担う"プロセス支配物性"と弾性波速度という"観測可能物性"と並行して測定し,地球物理学的観測から火山体の浸透率構造を探ることも目指している.本年度は,火山体内部を再現する圧力発生システム(圧力容器およびポンプ,備品として導入)を中心とする封圧下での測定システムづくりを進め,常圧下での浸透率測定,封圧0-200MPaでの弾性波速度測定を実現した.(1)浸透率測定定常流法を採用した測定システムを開発した.試料のサイズは直径25mm,長さ約50mmである.流体としては窒素ガスを用いており,試料両端の圧力差を制御しながら,流れたガスを水に置換して流量を測定している.圧力差,流量ともすべてデジタル・データとしてコンピュータに記録される.おおよそ浸透率が10^<-16>から10^<-12>m^2の範囲で測定が可能である.(2)弾性波速度測定圧力容器内に6本の測定用リードを導入した.パルス透過法の場合は3方向,パルス・エコー法の場合は6方向の弾性波速度を同時に測定することができる.弾性波速度の測定には,既設のファンクション・ジェネレータ,デジタル・オシロスコープ,コンピュータを用いている.本研究の目的は,火道周辺岩石や火山岩の浸透率測定によりマグマからのガス散逸過程を明らかにすることである.本年度は,前年度に構築した浸透率測定システムを圧力発生装置に組み込んで,火山体浅部の圧力条件下で浸透率測定を行う予定であった.しかし,圧力容器を製作するメーカー(理研精機,新潟県小千谷市)が平成16年10月の新潟県中越地震で被災したため,封圧下での測定システムの整備は大幅に遅れており,平成17年3月に完成する見込みである.雲仙普賢岳平成火道のボーリングコア試料は確保しているので,封圧下での浸透率測定システムの整備後,至急その測定に取りかかる予定である.予備実験として,焼岳溶岩試料の常圧下における浸透率測定および微細構造観察を行った.目的は,ガスの浸透性をもたらす気泡の連結過程を明らかにすることである.測定された浸透率(10^<-16>-10^<-11>m^2)の値を単純なチューブ・モデルに基づいて解釈すると,気泡の連結を維持しているのは浸透率が10^<-16>m^2の場合は0.1-10ミクロン,浸透率が10^<-12>m^2の場合でも10-100ミクロンと非常に細い部分であることがわかった.微細構造観察からは,気泡の多くが斑晶鉱物に接している様子が見られた.斑晶鉱物の多い箇所では,気泡どうしの接触している様子も見られた.接触部分は浸透率から示唆されるように非常に細いものであった.これらの観察事実は,斑晶鉱物が気泡の形成・成長の場となり,さらに気泡に変形を集中させるということを意味していると考えている.このように斑晶鉱物が気泡の連結に重要な役割を果たしているのではないかと考えている. | KAKENHI-PROJECT-15038208 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15038208 |
帝国日本の自然誌研究:台湾・南洋諸島・琉球列島を中心に | 本研究課題では、近代日本における自然誌研究からいくつかの事例を取り上げ、それらを政治的・社会的文脈に位置づけた。具体的に検討したのは、(1)日本における害虫防除技術、(2)日本における進化論受容の展開、(3)帝国日本の動物学と狩猟文化、(4)琉球列島の自然誌研究、の4事例である。これらの成果によって、近代日本が自然誌研究・農学研究体制を整備したことによって、人々と自然との関係の変容、ひいては自然環境の改変がもたらされたことが明らかになった。以上の研究成果は、一般向けの図書、学術論文国際学会等での報告として発表された。本研究課題では、近代日本における自然誌研究からいくつかの事例を取り上げ、それらを政治的・社会的文脈に位置づけた。具体的に検討したのは、(1)日本における害虫防除技術、(2)日本における進化論受容の展開、(3)帝国日本の動物学と狩猟文化、(4)琉球列島の自然誌研究、の4事例である。これらの成果によって、近代日本が自然誌研究・農学研究体制を整備したことによって、人々と自然との関係の変容、ひいては自然環境の改変がもたらされたことが明らかになった。以上の研究成果は、一般向けの図書、学術論文国際学会等での報告として発表された。本年度は,戦前期日本における自然誌調査について,以下の3点を中心に研究を進めた。実施計画段階では,台湾・琉球列島を中心に研究をすすめる予定だったが,両地域に限らず,日本の支配地域全般における昆虫学者・鳥類学者の活動について検討した。(1)戦時期の日本の昆虫学者たちの食糧増産体制への組み込みや,化学兵器研究との関連について,国際生物学の歴史・哲学・社会学会(ISHPSSB)で発表し,本研究と関係するテーマをあつかう海外の研究者らと交流した。(2)名和昆虫研究所(岐阜市)にて戦前期の研究所の活動状況について資料調査をおこなった。研究所が所蔵する財務関係書類から,名和昆虫研究所と国との関係が明らかになった。また所長の名和哲夫氏らに戦後の活動状況について聞き取りをおこなった。この成果は,来年度出版される著書の一部として発表される。(3)日本における初期の鳥類学者の活動について調査し,とくに植民地における活動について明らかにした。その結果,日本における鳥類学の成立が,宮内省主猟局が管理する御猟場制度と深く結びついていることが明らかになった。本成果については,ヒトと動物の関係学会第58回月例会で報告した。現在は,台湾,朝鮮半島,中国大陸,ミクロネシアなどにおける鳥類学者の活動について研究を進めつつある。以上のような研究は,まだ初期段階ではあるが,戦前期における自然誌研究が,帝国日本の拡大とどのような関係にあったのか明らかにする端緒となるものである。本年度は以下の3点を中心に研究を進めた。(1)アメリカ占領下における自然誌研究8月に全米科学アカデミーアーカイブにて、占領下の沖縄における自然誌調査についての資料を収集した。そのほか同時期にジョンズ・ホプキンスにて開催された東アジア科学史会議にも出席し、台湾・韓国などの研究者と交流した。(2)戦前期日本の自然誌研究と天皇制日本における鳥類学の成立が、天皇の御猟場制度と結びついていることを明らかにし、日本科学史学会第55回年会にて発表した。同時にそこでは、大正期以降の植民地自然誌研究と皇族とのつながりについても明らかにした。以上の研究成果は論文「狩猟と皇族」として『動物観研究』第13号に発表した。さらに宮内庁書陵部が所蔵する史料を調査し、現在、日清・日露戦争期の宮内省における動物園事業と自然誌研究との関係を検討中である。(3)日本における進化論受容史をめぐる言説分析本研究課題は当初の研究計画にはなかったものだが、2009年のダーウィン進化論150周年記念シンポジウムにあわせて研究をおこなった。ここでは、これまでの日本におけるダーウィン記念行事において、どのような進化論受容史が語られたか検討し、歴史認識が時代的な文脈から受けた影響について明らかにした。以上の研究成果は日本科学史学会生物学史分科会シンポジウム「ダーウィン進化論の誕生と波紋」にて報告した。本年度は以下の4点を中心に研究を進めた。(1)日本における進化論受容日本の生物学者たちが進化論受容についてどのような歴史認識を持ってきたのか、メタ歴史学的な分析をおこない、従来のモース中心の受容史とは違った歴史記述の可能性を探った。この研究成果を日本科学史学会・日本進化学会で報告し、East Asian Scince, Technology and Societyでレビュー論文として発表した。(2)動物学と狩猟文化日本における動物学者の標本採集活動が、狩猟文化の変容によってどのような影響を受けたのか、幕末から1930年代まで検討した。この成果は日本科学史学会生物学史分科会シンポジウムなどで報告された。(3)環境倫理と歴史認識現在の里山保全や外来種駆除で語られている歴史認識を検討し、その問題点を指摘する論文「『自然の再生』を問う」が鬼頭秀一・福永真弓編『環境倫理学』の一部として出版された。(4)占領下沖縄における植物学研究米軍統治下の植物学研究と林学、緑化事業の関係について沖縄県公文書館、沖縄県立図書館で資料調査を行った。上記のほか、本研究課題初年度までにおこなった研究成果が『害虫の誕生』として出版された。 | KAKENHI-PROJECT-19700661 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19700661 |
記憶の数理モデルの新しい可能性とその神経生理学的意義 | 数理モデルのダイナミクス(動的振舞い)のさまざまな側面を解析することを通して,脳の記憶機構の可能性を議論し,それが神経生理学で得られている結果の解釈や新たな実験計画の提案に如何に役立ち得るかを検討することを目標とする.今年度の研究内容は「閾値素子に制限しない付加的特徴を持つニューロンの機能的役割の可能性のケーススタディーとして,自己連想記憶モデルにおけるニューロン及びシナプス・ダイナミクスの効果とそれらの関係を調べる」というものだった.ここでいう閾値素子にはシグモイド関数を含めて,また,付加的特徴には,能動的樹状突起やスパインの可能なモデルなどを含めて想定している.モデルの上では,付加的特徴はニューロンの2段ダイナミクスという形のものを議論した.能動的樹状突起は,ニューロンへの入力情報から,第1段階の内部電位以上の付加的情報を抽出し,それをダイナミクスに活用する機構であるとみれば,それはまさに第2段階の効果から議論できるはずである.ここでは,「ニューロン・ダイナミクス」はニューロンの入出力特性を,「シナプス・ダイナミクス」は学習(シナプス荷重変更)過程を意味する言葉として用いている.この研究では,「単なる記憶項目検索」以上の機能の発現の可能性も検討しようと試みた.記憶に関する2つのダイナミクスが記憶事項の引き出しに及ぼす影響を調べ,両ダイナミクスは等価であると同時に興味深い相違もある事を示した.相違として最も興味深いのは,記憶事項そのものが入力されると回路はそのままの状態を保持するが,少しでも記憶事項からずれたものが入力されると回路はすべての記憶事項と無相関な状態へ収束する,というものである.数理モデルのダイナミクス(動的振舞い)のさまざまな側面を解析することを通して,脳の記憶機構の可能性を議論し,それが神経生理学で得られている結果の解釈や新たな実験計画の提案に如何に役立ち得るかを検討することを目標とする.今年度の研究内容は「閾値素子に制限しない付加的特徴を持つニューロンの機能的役割の可能性のケーススタディーとして,自己連想記憶モデルにおけるニューロン及びシナプス・ダイナミクスの効果とそれらの関係を調べる」というものだった.ここでいう閾値素子にはシグモイド関数を含めて,また,付加的特徴には,能動的樹状突起やスパインの可能なモデルなどを含めて想定している.モデルの上では,付加的特徴はニューロンの2段ダイナミクスという形のものを議論した.能動的樹状突起は,ニューロンへの入力情報から,第1段階の内部電位以上の付加的情報を抽出し,それをダイナミクスに活用する機構であるとみれば,それはまさに第2段階の効果から議論できるはずである.ここでは,「ニューロン・ダイナミクス」はニューロンの入出力特性を,「シナプス・ダイナミクス」は学習(シナプス荷重変更)過程を意味する言葉として用いている.この研究では,「単なる記憶項目検索」以上の機能の発現の可能性も検討しようと試みた.記憶に関する2つのダイナミクスが記憶事項の引き出しに及ぼす影響を調べ,両ダイナミクスは等価であると同時に興味深い相違もある事を示した.相違として最も興味深いのは,記憶事項そのものが入力されると回路はそのままの状態を保持するが,少しでも記憶事項からずれたものが入力されると回路はすべての記憶事項と無相関な状態へ収束する,というものである. | KAKENHI-PROJECT-08279241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08279241 |
妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティに関する研究 | 妊娠期・育児期の夫婦に関わる看護者には、夫婦の関係性の継続および親役割遂行のためにも、その時期のセクシュアリティのニーズを把握し、性の健康を支援する役割があると考え本研究を実施した。その結果、妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティの実態や、親役割遂行に影響を与える因子が明らかになり、妊娠期・育児期の夫婦の性の支援に必要な看護が示唆されたのでここに報告する。妊娠期・育児期の夫婦に関わる看護者には、夫婦の関係性の継続および親役割遂行のためにも、その時期のセクシュアリティのニーズを把握し、性の健康を支援する役割があると考え本研究を実施した。その結果、妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティの実態や、親役割遂行に影響を与える因子が明らかになり、妊娠期・育児期の夫婦の性の支援に必要な看護が示唆されたのでここに報告する。本研究は妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティのニーズを把握し、夫婦の関係性の継続および親役割遂行のために、看護者には「性の健康」を支援する役割があると考え、今年度は(1)妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティの実態を明らかにすること、(2)妊娠期・育児期のセクシュアリティに基づいた関係性の構築や、親役割遂行を阻害する因子を明らかにすることを目的として、質問紙調査の実施およびホームページの開設を研究計画のメインとして取り組んだ。研究の実施に先立ち、研究分担者とはメール会議および研究会議(青森市2回、武蔵野市1回)にて、研究の企画・質問紙調査の内容等について検討した。作成後の質問紙は、4組の夫婦にパイロットスタディを実施し、その結果から内容の精選を行った。先行研究の成果公開と、質問紙調査(対象:妊娠中および乳幼児を持つ夫婦)への協力者募集のためにホームページを開設(平成19年11月中旬、途中サーバーシステムに不具合生じその後に回復再開)した。当初、協力者募集の広告を育児雑誌に掲載予定であったが、事情により断念せざるを得なくなり、名刺サイズカード(開設の目的・掲載内容・アドレスおよび連絡先明記)を作成し、全国6市町村の保健センターにて配布した。3月末時点でのアクセス数は239件であった。また、本学のPCサーバーシステムの環境上の都合により、質問紙調査の回収が予定数より大幅に少ないため、質問紙調査の実施を間接配布法に変更し、平成20年3月から全国の産婦人科施設および市町村保健センターにて配布し、現在回収中である。本研究は、妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティのニーズを把握し、夫婦の関係性の継続および親役割遂行のためにも「性の健康」を支援する役割があると考え、今年度は妊娠期・育児期の夫婦のセクシュアリティに応じたケアニーズを明らかにし、必要な性の支援を実施するために看護者の役割を検討することを目的とした。以下に方法ごとにその結果を述べる。1)質問紙調査;昨年度より継続して関東地区等2ヶ所の市町村保健センター・産婦人科施設にて実施(400組)した。回収結果は、女性141部、男性117部であった。2)データ入力;調査用紙の回収を受けて、研究補助者の協力を得てデータを入力した。その後、研究者がデータの集計・分析を実施した。3)ホームページの内容更新;上記2)のデータの集計後に、研究分担者・連携分担者らと更新案をもとにメール会議を実施、その結果を受けてホームページを更新した(平成20年10月)。また、ホームページの紹介のために、昨年度に引き続き名刺サイズカードをA県内産婦人科施設2ヶ所に配置した。4)研究会議の実施;研究計画の調整・進捗状況の報告・データの集計分析・ホームページの作成・学会発表・小冊子の作成については、研究代表者より検討案についてメール添付送信し、各研究者より返信を受けるという形にて研究会議をその都度実施した。5)成果発表;示説発表(第28回日本看護科学学会学術集会)、調査データをもとに小冊子を作成し研究協力機関6ヶ所に1000部配布した。以上のことより、妊娠期・育児期のセクシュアリティの支援においては、情報の提供や夫婦の相互理解を得るための介入が必要であると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-19592533 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19592533 |
cDNAアレイ法を用いた真核型無機炭素輸送体遺伝子の単離と機能解析 | (1)CO_2応答に必須な調節因子CCM1について、亜鉛フィンガー候補領域に亜鉛を結合しているかを明らかにするため、この領域をGST融合タンパク質として大腸菌で発現させて精製した。亜鉛の定量を行なったところ、亜鉛フィンガー領域とは約1:1の割合で亜鉛が結合していた。さらに、亜鉛フィンガードメインに含まれるAsp-60残基がCCM1の機能に必須であるかどうかを検証するため、これをHis、Cys、Valにそれぞれ置換した株を作出したところ、いずれの形質転換株もCO_2欠乏条件下で野生型と同様に生育したことから、Asp-60以外の残基に亜鉛が結合していることが推定された。一方、カルボキシ末端の54アミノ酸残基を欠損するとCO_2欠乏による転写誘導が起こらなかったので、この領域は転写誘導に必須であることが明確になった。(2)抗CCM1抗体を作成して、ウェスタン解析を行なったところ、クラミドモナスの可溶性画分に、約95kDaのタンパク質を検出した。CCM1タンパク質の推定分子量は70,073であるので、CCM1はin vivoで何らかの修飾を受けていることが示唆された。さらに、CCM1タンパク質はCO_2濃度に関わりなく構成的に発現しており、細胞内では高分子複合体を形成していると推定された。(3)無機炭素輸送体の実体については複数の候補遺伝子についてRNAi法による機能解析を更に進める予定である。真核光合成生物の炭酸固定において無機炭素(CO_2やHCO_3^-)の細胞内への輸送は、光合成効率を規定する重要な要因である。ラン藻や緑藻類では無機炭素を細胞内へ能動的に輸送するシステム(無機炭素濃縮機構)がある。これは培養中の無機炭素の供給不足で誘導され、逆に供給過剰で抑制されることが分かっている。また、緑藻クラミドモナスではこの機構の誘導制御に遺伝子Ccm1(Fukuzawa et al. PNAS2001)が必須であることが分かっている。本研究では真核光合成生物の無機炭素輸送体の単離及び解析を目的としている。そこでモデル生物としてクラミドモナスを選び、cDNAマクロアレイを用いた解析を行った。その結果、低CO_2ストレス条件下で顕著に誘導される5つの遺伝子を見い出し、cDNAを単離した。この中には葉緑体局在型の亜硝酸トランスポーターと相同性の高い遺伝子(LciA)やABCトランスポーターと相同性の高い遺伝子(LciF)が含まれていた。また、Ccm1遺伝子に変異を持ち、無機炭素の輸送ができない変異株では上記の各遺伝子が低CO_2ストレス条件下で誘導されず、これらが無機炭素濃縮機構に関連があることを示した。来年度以降は、RNAi法を用いた発現抑制系、および過剰発現系を構築し、各遺伝子の機能解析を進める。それぞれの遺伝子にコードされるタンパク質の細胞内局在についてWestern Blot解析で調べる予定である。真核光合成生物の炭酸固定において無機炭素(CO_2,HCO_3^-など)の細胞内への輸送は、光合成効率を規定する重要な要因である。緑藻やラン藻は、環境中の無機炭素を細胞内に能動輸送する。光合成生物の無機炭素輸送体はラン藻で報告されているが、真核光合成生物では同定されていない。本研究では真核光合成生物の無機炭素輸送体の単離および機能の解明を目的とする。(1)緑藻クラミドモナスのマクロアレイ解析およびノザン解析をおこなった。野生株とccm1変異株とを高CO_2条件および低CO_2条件で培養し、cDNAを合成した。それぞれをcDNAアレイに対してハイブリダイゼーションし、2サンプル間で発現レベルの差が2.5倍以上の差があった遺伝子を有為とした。(2)遺伝子発現プロファイルを網羅的に比較し、51種類の低CO_2誘導性遺伝子および、32種類の低CO_2抑制性遺伝子を見い出した。低CO_2誘導性遺伝子のうちLciAは、CO_2欠乏での順化に不可欠なCcm1遺伝子(Fukuzawaら2001)の変異株(C16)およびHCO_3^-輸送の変異株(pmp-1)で発現レベルが低下していた。これらの結果よりLCIAタンパク質がCO_2欠乏時の無機炭素輸送に関わっている可能性があると考えた。(3)LCIAタンパク質はN末端に葉緑体移行シグナル配列が予測された。6回の膜貫通領域をもつと推定され、膜外領域に正電荷を持つアミノ酸残基を持ち、陰イオンの輸送に関わることが考えられた。LCIAは5種類のホモログ(CrNAR1;1,2,3,4,5)の中でCrNAR1;2と一致し、葉緑体胞膜に局在する亜硝酸輸送体NAR1(CrNAR1;1)と47.5%の相同性をしめした。培養液に添加する窒素種および無機炭素の有無を変化させたところ、LciAはCO_2欠乏で誘導され、窒素種の変化には応答しなかった。上記(13)を論文投稿中である。(1)CO_2応答に必須な調節因子CCM1について、亜鉛フィンガー候補領域に亜鉛を結合しているかを明らかにするため、この領域をGST融合タンパク質として大腸菌で発現させて精製した。亜鉛の定量を行なったところ、亜鉛フィンガー領域とは約1:1の割合で亜鉛が結合していた。さらに、亜鉛フィンガードメインに含まれるAsp- | KAKENHI-PROJECT-02J02040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J02040 |
cDNAアレイ法を用いた真核型無機炭素輸送体遺伝子の単離と機能解析 | 60残基がCCM1の機能に必須であるかどうかを検証するため、これをHis、Cys、Valにそれぞれ置換した株を作出したところ、いずれの形質転換株もCO_2欠乏条件下で野生型と同様に生育したことから、Asp-60以外の残基に亜鉛が結合していることが推定された。一方、カルボキシ末端の54アミノ酸残基を欠損するとCO_2欠乏による転写誘導が起こらなかったので、この領域は転写誘導に必須であることが明確になった。(2)抗CCM1抗体を作成して、ウェスタン解析を行なったところ、クラミドモナスの可溶性画分に、約95kDaのタンパク質を検出した。CCM1タンパク質の推定分子量は70,073であるので、CCM1はin vivoで何らかの修飾を受けていることが示唆された。さらに、CCM1タンパク質はCO_2濃度に関わりなく構成的に発現しており、細胞内では高分子複合体を形成していると推定された。(3)無機炭素輸送体の実体については複数の候補遺伝子についてRNAi法による機能解析を更に進める予定である。 | KAKENHI-PROJECT-02J02040 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J02040 |
妊娠時抗うつ剤服用における胎児脳発生のリスク評価のための研究基盤の確立 | 本年度は、ゼブラフィッシュ胚の脳を発生初期の胎児脳モデルとし、抗うつ剤SSRIの標的であるセロトニントランスポーター(SERT, slc6a4a)のゼブラフィッシュ胚脳における発現解析と機能解析を行なった。slc6a4a mRNAは、受精後3日目の縫線核セロトニン神経細胞で発現することが報告されていたが、それ以前の発生初期におけるSLC6A4の発現・局在は不明であった。今回、SERTに対する抗体SLC6A4を用いて免疫染色を行ったところ、セロトニン神経が発生する前の受精後24時間(hpf)で、神経幹細胞である放射状グリア細胞でSERTは発現し、脳室に面する脳室帯の頂端側に局在していることが明らかになった。この結果は、SERTが脳の神経幹細胞で何らかの役割を果たすことを示唆した。これまでの解析から、発生初期の9 hpfからSERT阻害剤であるSSRIで処理すると、脳が僅かに縮小し、神経細胞の産生が抑制されることが示されていた。今回、神経幹細胞におけるSERTの機能を明らかにするため、SLC6A4Aの発現阻害を行ったところ、30 hpfで脳が僅かに縮小するという、SSRI処理と類似した表現型が観察された。一方、SLC6A4A発現阻害により、脳におけるリン酸化ヒストンH3陽性の分裂細胞は顕著に増加していた。次に、SLC6A4A発現阻害による神経回路形成への影響を、80 hpfで網膜視蓋投射に着目して調べたところ、視蓋神経細胞領域と網膜軸索投射領域は有意に拡大する一方で、神経細胞や神経回路の密度を反映する蛍光強度は有意に低下していることが明らかになった。妊娠時のSSRI服用によりリスクが高まる自閉症や自閉症モデルマウスにおいても、脳のサイズ拡大や神経回路異常を示すことが報告されており、発生初期のゼブラフィッシュ胚におけるSERT阻害が自閉症発症モデルとなり得る可能性が示唆された。本年度は、ゼブラフィッシュモデル系を用いて解析を行い、セロトニントランスポーターの発現と機能について、ある程度の成果を上げることが出来た。従って、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。今後は、ゼブラフィッシュ胚脳におけるセロトニントランスポーターの役割についてさらに詳細な解析を行うと共に、ヒト胎児脳、胎盤におけるセロトニン系の発現解析も行う予定である。また、マウスを用いた実験についても準備を進める予定である。本年度は、ゼブラフィッシュ胚の脳を発生初期の胎児脳モデルとし、抗うつ剤SSRIの標的であるセロトニントランスポーター(SERT, slc6a4a)のゼブラフィッシュ胚脳における発現解析と機能解析を行なった。slc6a4a mRNAは、受精後3日目の縫線核セロトニン神経細胞で発現することが報告されていたが、それ以前の発生初期におけるSLC6A4の発現・局在は不明であった。今回、SERTに対する抗体SLC6A4を用いて免疫染色を行ったところ、セロトニン神経が発生する前の受精後24時間(hpf)で、神経幹細胞である放射状グリア細胞でSERTは発現し、脳室に面する脳室帯の頂端側に局在していることが明らかになった。この結果は、SERTが脳の神経幹細胞で何らかの役割を果たすことを示唆した。これまでの解析から、発生初期の9 hpfからSERT阻害剤であるSSRIで処理すると、脳が僅かに縮小し、神経細胞の産生が抑制されることが示されていた。今回、神経幹細胞におけるSERTの機能を明らかにするため、SLC6A4Aの発現阻害を行ったところ、30 hpfで脳が僅かに縮小するという、SSRI処理と類似した表現型が観察された。一方、SLC6A4A発現阻害により、脳におけるリン酸化ヒストンH3陽性の分裂細胞は顕著に増加していた。次に、SLC6A4A発現阻害による神経回路形成への影響を、80 hpfで網膜視蓋投射に着目して調べたところ、視蓋神経細胞領域と網膜軸索投射領域は有意に拡大する一方で、神経細胞や神経回路の密度を反映する蛍光強度は有意に低下していることが明らかになった。妊娠時のSSRI服用によりリスクが高まる自閉症や自閉症モデルマウスにおいても、脳のサイズ拡大や神経回路異常を示すことが報告されており、発生初期のゼブラフィッシュ胚におけるSERT阻害が自閉症発症モデルとなり得る可能性が示唆された。本年度は、ゼブラフィッシュモデル系を用いて解析を行い、セロトニントランスポーターの発現と機能について、ある程度の成果を上げることが出来た。従って、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。今後は、ゼブラフィッシュ胚脳におけるセロトニントランスポーターの役割についてさらに詳細な解析を行うと共に、ヒト胎児脳、胎盤におけるセロトニン系の発現解析も行う予定である。また、マウスを用いた実験についても準備を進める予定である。予定よりも消耗品費を節約出来たため次年度使用額が生じたが、当該助成金は、次年度の研究計画で行う実験の消耗品費、旅費として使用する予定である。 | KAKENHI-PROJECT-18K09271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K09271 |
炭素ー水素結合活性化に基づく生物活性物質の合成 | 本研究では、不活性C-H結合を活性化・官能基化する新触媒・新反応を開発し、生物活性物質の超短工程合成を実現することを目的とした。昨年度に引き続き研究を行なった結果、ヘテロビアリール骨格を有する生物活性分子の合成を加速する新規芳香環直接アリール化反応を開発することができた。1. Ni触媒を用いた脱エステル型カップリング反応既にアリール化剤としてハロゲン化アリール、フェノール誘導体をもちいたNi触媒によるアゾール類の直接アリール化反応を見出していたが、今回芳香族エステルをアリール化剤とした新たなカップリング反応を発見した。本反応を応用したmuscoride Aの形式全合成も達成した2.嵩高いビアリール合成を促進する新規パラジウム触媒の開発独自に開発したパラジウム触媒によるチオフェン類とアリールボロン酸とのC4位選択的なC-Hアリール化反応を基盤として、嵩高いヘテロビアリール骨格の構築を様々な配位子を用いて検討を行なった。その結果、ビスオキサゾリン配位子を用いた場合、劇的な反応加速効果がみられ、嵩高いアリールボロン酸においても良好な収率でチオフェンやフラン、インドールなどのヘテロ芳香環と反応が進行することを見出した。さらにキラル配位子を用いた不斉反応へと展開し、不斉C-Hビアリールカップリング反応の開発にも成功した3. C-Hアリール化のメディシナルケミストリーへの応用σ1受容体として有効な化合物を探索した結果、スピロ環を有するアリールチオフェン骨格がσ1受容体として優れていることが明らかとなっている。今回、独自で開発したC5位およびC4位選択的チオフェンのアリール化反応を用いた、最終段階での直接C-Hアリール化反応を駆使する事でより幅広く誘導体を合成することに成功した24年度が最終年度であるため、記入しない。24年度が最終年度であるため、記入しない。本申請者の研究の焦点は、生物活性物質の迅速化学合成に不可欠な「真に自在な芳香環連結反応」の開発とこれを用いた標的物質の超短工程合成の実践である。本年度は以下の3種類の反応開発と標的物質の合成を行なった。1.ヘテロ芳香環の直接アリール化反応はPd,Rh,Ru触媒などが用いられてきたが、安価かつユビキタスな金属触媒系へのシフトが起こりつつある。我々は3種類のアリール化剤を用いた安価なNi触媒によるヘテロ芳香環の直接アリール化反応を見出した。また、本触媒反応を用いた痛風治療薬febuxostatやtexaline、muscoride Aの迅速合成に成功した。2.二つの異なるPd触媒を用いたチオフェン類のC-Hアリール化を見出した。一つ目は、PdCl_2/P[OCH(CF_3)_2]_3/Ag_2CO_3触媒を用いたチオフェン類とヨウ化アリールとの反応、二つ目は、Pd(OAc)_2/bipy/TEMPO触媒を用いたチオフェン類とアリールボロン酸の反応である。本触媒系は、種々のチオフェン類において4位(Sのβ位)C-H結合の選択的アリール化を促進することが明らかとなった。さらに後者の反応はチアゾール類を用いても4位選択的に進行する。この反応は、メルク社による新規アルツハイマー病治療薬候補化合物SCH-785532の主骨格や抗腫瘍活性を有するCKD-516の迅速合成に有効であることを実証した。3.C-H結合のみを利用したヘテロ芳香環連結反応の開発に着手した結果、インドール誘導体とアジンN-オキシドのC-H/C-H直接連結反応が進行することを見出した。DNA結合能を有するeudistomin Uの簡便な合成にも成功した。さらに、セリン-スレオニンPP阻害活性をもつ海洋天然物dragmacidin Dの全合成を達成した。本研究では、不活性C-H結合を活性化・官能基化する新触媒・新反応を開発し、生物活性物質の超短工程合成を実現することを目的とした。昨年度に引き続き研究を行なった結果、ヘテロビアリール骨格を有する生物活性分子の合成を加速する新規芳香環直接アリール化反応を開発することができた。1. Ni触媒を用いた脱エステル型カップリング反応既にアリール化剤としてハロゲン化アリール、フェノール誘導体をもちいたNi触媒によるアゾール類の直接アリール化反応を見出していたが、今回芳香族エステルをアリール化剤とした新たなカップリング反応を発見した。本反応を応用したmuscoride Aの形式全合成も達成した2.嵩高いビアリール合成を促進する新規パラジウム触媒の開発独自に開発したパラジウム触媒によるチオフェン類とアリールボロン酸とのC4位選択的なC-Hアリール化反応を基盤として、嵩高いヘテロビアリール骨格の構築を様々な配位子を用いて検討を行なった。その結果、ビスオキサゾリン配位子を用いた場合、劇的な反応加速効果がみられ、嵩高いアリールボロン酸においても良好な収率でチオフェンやフラン、インドールなどのヘテロ芳香環と反応が進行することを見出した。さらにキラル配位子を用いた不斉反応へと展開し、不斉C-Hビアリールカップリング反応の開発にも成功した3. C-Hアリール化のメディシナルケミストリーへの応用σ1受容体として有効な化合物を探索した結果、スピロ環を有するアリールチオフェン骨格がσ1受容体として優れていることが明らかとなっている。 | KAKENHI-PUBLICLY-23105517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23105517 |
炭素ー水素結合活性化に基づく生物活性物質の合成 | 今回、独自で開発したC5位およびC4位選択的チオフェンのアリール化反応を用いた、最終段階での直接C-Hアリール化反応を駆使する事でより幅広く誘導体を合成することに成功した24年度が最終年度であるため、記入しない。2年間で予定していたC-H結合直接反応の開発及び標的物質群の合成を9割方完了することができためである。24年度が最終年度であるため、記入しない。既に昨年度から推進している本研究により、様々な芳香環直接連結反応の開発、それらを用いた生物活性物質の短工程合成を実現した。本年度は新しい反応開発、生物活性物質の合成に加え、合成した化合物群のケミカルバイオロジー研究を行い、本研究のさらなるアウトプットの拡大を狙う。 | KAKENHI-PUBLICLY-23105517 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PUBLICLY-23105517 |
触知文字列および触知ピクトグラムを融合した触知案内図の研究 | 平成30年度は、「(a)3Dプリンタで作製したタクタイル文字の触識別特性」、「(b)触知向けピクトグラムのデザインに関する研究」の2テーマで研究を行った。(a)では、造形物の表面の粗さが触識別におよぼす影響について検討するために、近年低価格化の進む3Dプリンタの造形方式がタクタイル文字の触識別特性に及ぼす影響について調べた。造形方式は、光造形方式(素材はレジン)と熱溶解積層方式(素材はPLA FilamentとFlexible Filament)、とした。タクタイル文字は、要素数27のカタカナ18文字(各要素3文字)とし、文字サイズは10mm×10mm、文字高さは0.6mmとし、2227歳のアイマスクを着用した晴眼者10名を対象に行った。結果、正答率は造形方式による差は無かった(平均80%)。一方、識別時間は光造形方式で顕著に短くなり、分かりやすさ、および確信度は顕著に高い値を示し、熱溶解積層方式による造形物表面の細かい凹凸が触識別に影響を与えるものと考えられた。(b)では、昨年度の研究成果より、触識別しやすい図形の特徴である「1つのパーツが大きく構成要素数が少ない」ピクトグラムのデザインを検討し、検証実験を行った。PIAFにて縦横120mm、高さ1mmで触知ピクトグラムを作成し、アイマスクを着用した20代の晴眼者8名を対象に触識別実験を行った。新たにデザインしたピクトグラムによる学習時間および識別時間は短くなり、分かりやすさも増加する傾向となった。特に、エレベータやトイレなどの人物を含むピクトグラムにおいて要素数の削減、および簡略化が効果的であった。本研究の目的は、視覚障害者向け施設案内図である触知案内図において、カタカナを凸化した触知文字列および視覚的記号であるピクトグラムを触知向けにデザインした触知ピクトグラムを融合した触知案内図の提案と有効性の検証である。平成30年度の研究計画は、「1触知ピクトグラムの触識別特性と触知向けピクトグラムの提案」と「2触知案内図における触知文字列と触知ピクトグラムの利用可能性」の2課題である。1に関しては、「(b)触知向けピクトグラムのデザインに関する研究」より、触知向けピクトグラムの提案し、その有効性を示すことができた。しかし、2に関しては、触知文字列および触知ピクトグラムを触知案内図上に配置した探索実験まで行うことができなかった。原因は、昨年度からの課題として、造形物の表面の粗さが触識別におよぼす影響について検討する必要性があったためである。同課題については、「(a)3Dプリンタで作製したタクタイル文字の触識別特性」により問題解決している。また、2は、H30H31年度に達成することを目標としていることから、現時点での進捗状況は順調と考える。以上より、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。これまでの状況から今後においても計画通り研究を推進する。しかしながら、触知文字におけるフォントが触識別に及ぼす影響について検討する必要がある。特に、濁点半濁点の触知文字に対して、識別しにくいとの意見があることから、UD(ユニバーサルデザイン)フォントなど、従来のゴシック体以外のフォントでの触知文字の触識別特性を明らかにしながら、研究を推進していく必要があると考える。平成29年度は、「(a)カタカナ文字列における浮き出し文字高さと触識別の関係」、「(b)触覚ディスプレイによる指先への最適文字情報呈示法」、「(c)指先の触知軌跡と触知ピクトグラムの識別容易性の関係」の3テーマで研究を行った。(a)では、カタカナ文字列における浮き出し文字の高さが触識別に与える影響について検討を行った。駅構内に設置されている触知案内図を想定し、エレベーター、カイサツ、トイレ、などの15種の文字列において、文字サイズを1文字当たり縦×横が10mm×10mm,15mm×15mm、文字高さを0.31.5mmとし、アイマスクを着用した晴眼者9名を対象に、文字列の正答率、識別時間、わかりやすさ(5段階評価:5-わかりやすい1-わかりづらい)を測定した。結果、文字サイズによって触識別に適した文字高さは異なり、文字サイズ10×10mmでは、文字高さ0.9mm、文字サイズ15×15mmでは文字高さ1.5mmで正答率とわかりやすさが最大、識別時間が最小となることが分かった。(b)では、直径1mm、ピン間隔2.4mmの触覚ディスプレイを用いて、機械的振動刺激による受動的な文字識別特性(文字サイズ縦14.4mm(8ピン)×横9.60mm(6ピン)、高さ1mm)を調べた。結果、カタカナ文字を画数毎に呈示する手法において正答率が高く、触識別時間が短くなることが明らかとなった。(c)では、浮き出しピクトグラムを縦横120mmのサイズ、1mmの高さで作成し、アイマスクを着用した晴眼者10名を対象に触識別実験を行った。使用したピクトグラムはエレベーター、レストラン、階段など17種類である。結果、ピクトグラムにより触識別特性は異なり、1つのパーツが大きく閉じた図形は正答率、分かりやすさが高く、識別時間が短くなることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-17K01556 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01556 |
触知文字列および触知ピクトグラムを融合した触知案内図の研究 | 本研究の目的は、視覚障害者向け施設案内図である触知案内図において、カタカナを凸化した触知文字列および視覚的記号であるピクトグラムを触知向けにデザインした触知ピクトグラムを融合した触知案内図の提案と有効性の検証である。平成29年度の研究計画は、「1触知文字の触識別特性と文字列条件の確立」、「2触知ピクトグラムの触識別特性と触知向けピクトグラムの提案」の2課題である。1に関しては、「(a)カタカナ文字列における浮き出し文字高さと触識別の関係」、「(b)触覚ディスプレイによる指先への最適文字情報呈示法」の研究によりおむね目標を達成できたと考える。2に関しては、「(c)指先の触知軌跡と触知ピクトグラムの識別容易性の関係」の研究により触知ピクトグラムの触識別特性を明らかにすることが出来た。触知向けピクトグラムの提案は未達成であるが、本課題はH29H30年度に達成することを目標としていることから、現時点では進捗状況は順調と考える。以上より、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。平成30年度は、「(a)3Dプリンタで作製したタクタイル文字の触識別特性」、「(b)触知向けピクトグラムのデザインに関する研究」の2テーマで研究を行った。(a)では、造形物の表面の粗さが触識別におよぼす影響について検討するために、近年低価格化の進む3Dプリンタの造形方式がタクタイル文字の触識別特性に及ぼす影響について調べた。造形方式は、光造形方式(素材はレジン)と熱溶解積層方式(素材はPLA FilamentとFlexible Filament)、とした。タクタイル文字は、要素数27のカタカナ18文字(各要素3文字)とし、文字サイズは10mm×10mm、文字高さは0.6mmとし、2227歳のアイマスクを着用した晴眼者10名を対象に行った。結果、正答率は造形方式による差は無かった(平均80%)。一方、識別時間は光造形方式で顕著に短くなり、分かりやすさ、および確信度は顕著に高い値を示し、熱溶解積層方式による造形物表面の細かい凹凸が触識別に影響を与えるものと考えられた。(b)では、昨年度の研究成果より、触識別しやすい図形の特徴である「1つのパーツが大きく構成要素数が少ない」ピクトグラムのデザインを検討し、検証実験を行った。PIAFにて縦横120mm、高さ1mmで触知ピクトグラムを作成し、アイマスクを着用した20代の晴眼者8名を対象に触識別実験を行った。新たにデザインしたピクトグラムによる学習時間および識別時間は短くなり、分かりやすさも増加する傾向となった。特に、エレベータやトイレなどの人物を含むピクトグラムにおいて要素数の削減、および簡略化が効果的であった。本研究の目的は、視覚障害者向け施設案内図である触知案内図において、カタカナを凸化した触知文字列および視覚的記号であるピクトグラムを触知向けにデザインした触知ピクトグラムを融合した触知案内図の提案と有効性の検証である。平成30年度の研究計画は、「1触知ピクトグラムの触識別特性と触知向けピクトグラムの提案」と「2触知案内図における触知文字列と触知ピクトグラムの利用可能性」の2課題である。1に関しては、「(b)触知向けピクトグラムのデザインに関する研究」より、触知向けピクトグラムの提案し、その有効性を示すことができた。しかし、2に関しては、触知文字列および触知ピクトグラムを触知案内図上に配置した探索実験まで行うことができなかった。原因は、昨年度からの課題として、造形物の表面の粗さが触識別におよぼす影響について検討する必要性があったためである。同課題については、「(a)3Dプリンタで作製したタクタイル文字の触識別特性」により問題解決している。 | KAKENHI-PROJECT-17K01556 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K01556 |
古い記録フィルム映像の修復のための映像修復システムの開発 | 本研究では,記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去するために,フィルム映像の修復のための高速なアルゴリズムの開発ならびに実現を行った.実現した手法により, 35mmフィルムを高解像度映像(4Kサイズ)としてスキャンした約10分の映像に対して,位置ずれとフリッカ,ブロッチ,スクラッチを除去した.これらの処理にかかる時間を従来約1年程度だったものを約10日に短縮した.本研究では,記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去するために,フィルム映像の修復のための高速なアルゴリズムの開発ならびに実現を行った.実現した手法により, 35mmフィルムを高解像度映像(4Kサイズ)としてスキャンした約10分の映像に対して,位置ずれとフリッカ,ブロッチ,スクラッチを除去した.これらの処理にかかる時間を従来約1年程度だったものを約10日に短縮した.本研究では,記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去し,フィルム映像の修復のための実時間処理システムを開発することを目的としている.古いフィルム映像に固有の様々な劣化の代表的なものとして,カメラのフィルム送り機構の不安定性やフィルム送り穴の精度不良により生じたフレーム毎の不規則な位置ずれ,フィルムへの埃や髪の毛の付着による画素の欠落であるプロッチ,上映時にフィルムと上映機の接触により生じたスクラッチ,不均一なフィルム露光時間によるフレーム毎の不規則な輝度値の変化であるフリッカなどが挙げられる.本研究では,これらの劣化を自動的に高精度かつ高効率にディジタル修復を行う手法を開発する.本申請者らがこれまでに実現してきた位置ずれ補正法とフリッカ除去法やプロッチ除去法,スクラッチ除去法のプログラムにおいて,高解像度映像(4Kサイズ)での映像修復性能について評価した.その上で,それぞれの処理システムの統合のため,画像データのフォーマット統一ならびに修復パラメータのフォーマットを策定した.これらにより,処理時間の短縮ならびに処理過程でのデータの劣化を防ぐ手法を検討した.上記のシステムのプロトタイプシステムを構築し,実際の超高速コンピューティングシステムによる実時間での古いフィルム映像の修復システムの実現可能性について評価した.これらにより,高解像度映像において,これまでの手法と比較して処理結果の映像を劣化させることなく1フレームあたりの処理時間を11. 4%に減少させることが出来た.さらに,約10分の高解像度映像の処理にかかる時間を従来約1年程度だったものを約10日に短縮できた.本研究では,記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去し,フィルム映像の修復のための実時間処理システムを開発することを目的としている.古いフィルム映像に固有の様々な劣化の代表的なものとして,カメラのフィルム送り機構の不安定性やフィルム送り穴の精度不良により生じたフレーム毎の不規則な位置ずれ,フィルムへの埃や髪の毛の付着による画素の欠落であるブロッチ,上映時にフィルムと上映機の接触により生じたスクラッチ,不均一なフィルム露光時間によるフレーム毎の不規則な輝度値の変化であるフリッカなどが挙げられる.本研究では,これらの劣化を自動的に高精度かつ高効率にディジタル修復を行う手法を開発する.本申請者らがこれまでに実現してきた位置ずれ補正法とフリッカ除去法やブロッチ除去法,スクラッチ除去法のプログラムにおいて,高解像度映像(4Kサイズ)での映像修復性能について評価した.その上で,それぞれの処理システムの統合のため,画像データのフォーマット統一ならびに修復パラメータのフォーマットを策定した.これらにより,処理時間の短縮ならびに処理過程でのデータの劣化を防ぐ手法を検討した.さらに,スクラッチの検出において,フィルムとスクラッチの特徴を考慮して,映像データをフィルムと同じように連続したデータとして扱い,スクラッチの発生箇所を繰り返して検出することで検出精度を向上させた.また,フリッカの検出精度の向上のために,検出と修復の基準となる参照画像の作成方法について検討した.本研究では,記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去し,フィルム映像の修復のための実時間処理システムを開発することを目的としている。古いフィルム映像に固有の様々な劣化の代表的なものとして,カメラのフィルム送り機構の不安定性やフィルム送り穴の精度不良により生じたフレーム毎の不規則な位置ずれ,フィルムへの埃や髪の毛の付着による画素の欠落であるブロッチ,上映時にフィルムと上映機の接触により生じたスクラッチ,不均一なフィルム露光時間によるフレーム毎の不規則な輝度値の変化であるフリッカなどが挙げられる.本研究では,これらの劣化を自動的に高精度かつ高効率にディジタル修復を行う手法を開発する.本申請者らがこれまでに実現してきた位置ずれ補正法とフリッカ除去法,ブロッチ除去法,スクラッチ除去法のプログラムにおいて,高解像度映像(4Kサイズ)での映像修復性能について引き続き評価した.その上で,位置ずれ補正で使用する位相限定相関法についてその相関の性質について検討し,実現において位置ずれ量の推定精度を劣化ざせずに位置ずれ量を高速に得る手法を実現した.さらに,画像の回転を含めた位置ずれ量の推定を実現し,位置ずれ量推定性能を向上させた.その上で,映像内の移動物体を考慮した画像の位置ずれ量検出・フリッカ除去のための参照画像の作成について検討した.また,スクラッチの除去において,フィルムとスクラッチの特徴を考慮して,スクラッチ部分のデータを補間する方法について検討した.ず | KAKENHI-PROJECT-20560345 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20560345 |
慢性腎臓病(CKD)および腎心相関にはたすエピジェネティクスをかいした新規機序 | 本年度は,慢性腎臓病の共通進展機序である腎間質線維化におけるエピジェネティクスの意義,ことにfibrocyteをかいしたエピジェネティクスの役割について取り組んだ.すなわち,確立された腎間質線維化モデルであるマウスー側尿管結紮(UUO)モデルを作成し,腎間質線維化におけるヒストンアセチル化,およびヒストンアセチル化阻害剤(curcumin)を用いて腎間質線維化に与える効果を検討した.さらに,ヒストンアセチル化が腎内ケモカイン発現にあたえる影響を検討し,fibrocyteの腎浸潤を評価した.また,培養fibrocyteのコラーゲン産生機序に対するヒストンアセチル化の関与を検討した.その結果,UUOモデルにおいて腎内HAT活性の亢進,尿細管上皮細胞ならびに間質浸潤細胞におけるアセチル化ヒストンの増加,腎内NF-κBのDNA結合能亢進,腎内MCP-1発現亢進およびfibrocyte腎浸潤を認め,腎間質線維化が進展した.一方HAT活性阻害剤であるcurcumin投与により,これらの変化が抑制されることを明らかにした.さらにヒトfibrocyteを用いた検討において,TGF-β_1刺激によりI型プロコラーゲンα1mRNA発現の亢進を認め,一方curucumin処置によりその発現が抑制されることを明らかにした.これは,UUOモデルにおいて腎内ヒストンアセチル化が(1)ケモカインシステムを介したfibrocyteの腎浸潤調節機序,および(2)浸潤fibrocyteのI型コラーゲン発現機序に寄与することを示唆するものである.このことから,ヒストンアセチル化は慢性腎臓病の共通進展機序である腎間質線維化の新規進展機序および治療標的分子として意義あるものである.本年度は,慢性腎臓病の共通進展機序である腎間質線維化におけるエピジェネティクスの意義,ことにfibrocyteをかいしたエピジェネティクスの役割について取り組んだ.すなわち,確立された腎間質線維化モデルであるマウスー側尿管結紮(UUO)モデルを作成し,腎間質線維化におけるヒストンアセチル化,およびヒストンアセチル化阻害剤(curcumin)を用いて腎間質線維化に与える効果を検討した.さらに,ヒストンアセチル化が腎内ケモカイン発現にあたえる影響を検討し,fibrocyteの腎浸潤を評価した.また,培養fibrocyteのコラーゲン産生機序に対するヒストンアセチル化の関与を検討した.その結果,UUOモデルにおいて腎内HAT活性の亢進,尿細管上皮細胞ならびに間質浸潤細胞におけるアセチル化ヒストンの増加,腎内NF-κBのDNA結合能亢進,腎内MCP-1発現亢進およびfibrocyte腎浸潤を認め,腎間質線維化が進展した.一方HAT活性阻害剤であるcurcumin投与により,これらの変化が抑制されることを明らかにした.さらにヒトfibrocyteを用いた検討において,TGF-β_1刺激によりI型プロコラーゲンα1mRNA発現の亢進を認め,一方curucumin処置によりその発現が抑制されることを明らかにした.これは,UUOモデルにおいて腎内ヒストンアセチル化が(1)ケモカインシステムを介したfibrocyteの腎浸潤調節機序,および(2)浸潤fibrocyteのI型コラーゲン発現機序に寄与することを示唆するものである.このことから,ヒストンアセチル化は慢性腎臓病の共通進展機序である腎間質線維化の新規進展機序および治療標的分子として意義あるものである. | KAKENHI-PROJECT-21790802 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21790802 |
低磁場環境で動作する走査SQUID‐NMR顕微鏡の開発 | これまでに超伝導量子干渉素子(SQUID)を応用することで、局所磁場を空間分解能高く撮像可能な走査SQUIDプローブ顕微鏡を開発してきた。局所の核磁気共鳴(NMR)計測を目標にして、走査SQUIDプローブ顕微鏡と低磁場NMR計測とを組み合わせた走査SQUID-NMR顕微鏡の装置開発を行った。低磁場環境中で原子間力顕微鏡によりプローブ試料間距離制御を実現できる装置基本形までは完成させたが、SQUIDとプローブ間の磁気伝達に問題があり、顕微鏡としての磁気感度が十分でないことがわかった。そこで、磁気結合を向上させるために基板共振器がなくても動作できるrf-SQUIDを開発し、その解決を目指した。本研究では、走査プローブ顕微鏡の機能により表面形状を取得するとともに、高透磁率のプローブによって、試料の局所的なNMR信号をSQUIDまで伝達・検出することをコンセプトとした走査SQUID-NMR顕微鏡システムの開発を行った。前年度、NMR信号を検出するために必要と考えられる磁場感度に対して、現状の性能が大きく不足していることが明らかとなっていた。その原因の一つがプローブとSQUID間の磁気結合が悪いことにあり、磁束量換算にして1/1000以下しかSQUIDに伝達されていなかったことが判明した。rf-SQUIDを動作させるために、従来、SQUIDとは別基板の基板型レゾネータをフリップチップ配置して使用していたため磁束伝達が悪化しており、このレゾネータを省略することが最善策だと判断した。そこで、レゾネータとSQUIDとが一枚の基板に集積されたレゾネータ一体型rf-SQUIDに注目し、シミュレーションと実験の両方から、プローブとSQUIDの磁気結合も考慮して開発を進め、最終的に動作する新型rf-SQUIDの作製に成功した。まだ十分とは言えないが、感度が四倍以上向上した。また、NMR信号の検出にSQUIDを用いるため、プロトンの共鳴周波数を100 kHz以下に設定できるよう装置内部を十分に低磁場環境に保ちつつ、磁場印加ができるように磁気シールドを改善することが重要であった。試料交換および設置が容易でありながら、磁気性能を満たす分割式のシールドを設計し、低磁場環境を実現した。プローブ-試料間距離制御においては、真空環境で音叉型水晶振動子を用いたAFMの適用を実現しているが、時間を要するNMR信号の検出において、従来の構造は安定性が悪いという問題があった。将来、大気中環境でも動作させることも想定して、AFMユニットと呼んでいる部分の改良を進め、安定したプローブ-試料間距離制御を実現した。これまでに超伝導量子干渉素子(SQUID)を応用することで、局所磁場を空間分解能高く撮像可能な走査SQUIDプローブ顕微鏡を開発してきた。局所の核磁気共鳴(NMR)計測を目標にして、走査SQUIDプローブ顕微鏡と低磁場NMR計測とを組み合わせた走査SQUID-NMR顕微鏡の装置開発を行った。低磁場環境中で原子間力顕微鏡によりプローブ試料間距離制御を実現できる装置基本形までは完成させたが、SQUIDとプローブ間の磁気伝達に問題があり、顕微鏡としての磁気感度が十分でないことがわかった。そこで、磁気結合を向上させるために基板共振器がなくても動作できるrf-SQUIDを開発し、その解決を目指した。本研究は、走査プローブ顕微鏡の機能により表面形状を取得するとともに、高透磁率のプローブによって、試料の局所的なNMR信号をSQUIDまで伝達・検出する、走査SQUID-NMR顕微鏡の開発を行っている。対象試料の多くが絶縁体であることから、プローブ・試料間距離制御には、音叉型水晶振動子を利用したAFMを適用し、本年度は、計画段階において行っていた振幅変調制御方式から、周波数変調制御方式に変更することで、SQUIDを動作させながら、高感度に表面形状を取得することに成功した。一方、大きなNMR信号を得るためには、静磁場の均質性が重要であるが、本研究計画では高透磁率のプローブを試料極近傍に配置するため、印加した静磁場の均質性が乱される可能性がある。そこで、走査SQUID-NMR顕微鏡のシステムの構築を進めるとともに、電磁界シミュレーションにより、プローブ直下の磁場均質性を評価した。その結果、均質性の点では計画段階の予想よりも高透磁率のプローブが存在することの影響が大きく、共鳴条件が満たされる領域がかなり限られることが示唆された。NMR信号を検出するには、現状の走査SQUID顕微鏡の磁場検出感度を向上させることが必要不可欠と分かったので、現状の構築系に対し、改善点を検討した。試料から発生した磁場がプローブを通り、rf-SQUIDに至るまでの磁気伝達効率をシミュレーションした結果、SQUID側のプローブ末端部での減衰が特に大きいことが明らかとなった。そこで、プローブとの磁気的結合を向上させるため、現在用いているrf-SQUIDを構造から見直すことにした。今回、レゾネータとSQUIDとを一枚の基板に集積したレゾネータ一体型rf-SQUIDの適用を検討し、一体型SQUIDの構造最適化を行った。現在、設計した一体型SQUIDを実際に作製し、評価を進めているところである。顕微鏡本体側において、高透磁率のプローブを音叉型水晶振動子に取り付けることにより、基本的な装置構成を構築して、原子間力顕微鏡の機能を実現し、真空下ではあるが、周波数検出方式によりプローブ・試料間距離制御を行えるようにした。一方、本研究の特色にもなっているが、高透磁率のプローブを用いたことによる印加静磁場の均質性への影響のため、プローブを介してNMR信号を検出するという点においては未だ成功していない。 | KAKENHI-PROJECT-24760316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760316 |
低磁場環境で動作する走査SQUID‐NMR顕微鏡の開発 | そこで、基本に立ち戻って、電磁界シミュレーションなどにより解決策を模索をしてきた。これまでに、走査SQUID顕微鏡の磁場検出感度を向上させる方針で、現在用いているrf-SQUIDを見直すことにした。今までは、rf-SQUIDを動作させるために、SQUIDとは別基板の誘電体基板レゾネータをフリップチップ配置して使用していたが、そのレゾネータ分の基板厚みによって、プローブ末端からの伝達磁場が減衰することが分かったため、計画段階になかったことではあるが、レゾネータ一体型rf-SQUIDへの変更を検討した。この際、プローブと一体型SQUIDとの静磁場の結合、およびリードアウトコイルとの一体型SQUIDとの高周波磁場の結合とが両方満たされる形状を電磁界シミュレーションから検討し、一体型SQUIDの構造最適化を行った。検討の結果、第一案として十分な共振感度を有すると考えられるレイアウトでフォトマスクを作製した。現在、これを用いて、一体型SQUIDを実際に作製し、評価を進めているところである。計画通りに進捗しているところもあるが、SQUIDによるNMR信号検出ということにおいては、やや遅れ気味という自己評価をしている。次年度は、本年度に得られた結果を基に、開発した基本的な装置構成を改良する。計画通り、高透磁率のプローブを介して、NMR磁場信号をSQUIDによって検出する装置に発展させる予定であるが、磁性体であるプローブを用いると、試料直下の磁場の均質性が失われるために信号が弱まり、信号検出が大変難しくなることが示唆されている。そのため、SQUIDの感度を向上させることが重要で、プローブとSQUIDの結合を向上させることを目的としてレゾネータ一体型rf-SQUIDの適用など、SQUIDの磁場検出感度を向上させる研究を進めていく。また、装置構成に対しても、別方式で目標を達成することも視野にいれて、基礎的な検討を引き続き行っていく。一方、走査SQUID顕微鏡において、試料に対する制限の少ないAFMの適用により、真空中で測定できるような機構を開発してきたが、真空中での測定には装置上の取り扱いが難しくなるという欠点があり、大気中で測定を実現することも重要になっている。そこで、SQUIDを真空中、試料を大気中にセットできるような機構を新たに開発する。こうしてプローブ顕微鏡としての動作とNMR信号検出とを両立させるためのシステム構成、およびAFM・NMR両方の動作シーケンスが行えるソフトウェアの開発も行っていく。実際の画像化に関しては、現実的な時間での測定は難しい可能性が高く、まずは1点の信号の検出を実現したい。また、磁場の不均一性によって実効的な横緩和時間が短くなっているため、分極磁場の印加に加え、スピンエコーなどの手法もパルスシーケンスに取り入れる予定であり、磁場の不均一性の問題を克服するために、基本に立ち戻って、研究を進める予定である。また、実施体制としては、研究代表者の他に、これまで他テーマとの兼任の学生がいたが、専任的に実験してもらう学生にも加わってもらう予定にしている。 | KAKENHI-PROJECT-24760316 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24760316 |
6軸センサを用いた指先力および指先滑りの高精度な推定 | 本研究では,ヒトが物体を触る時に得られる触覚情報をどのように知覚しているかを明らかにすることを目標として,指の機械的特性と神経系における情報処理特性を考慮した皮膚感覚知覚のモデル化を行う.ヒトの皮膚感覚の知覚においては,センサである触覚受容器が存在する皮膚部分の機械要素のモデル化と神経伝導路や脳を含めた情報処理要素のモデル化が重要である.本研究では,機械要素を伝達関数モデルとして,情報処理要素を多層ニューラルネットワーク(以下,NN)モデルとしてモデル化し,個人差を考慮した皮膚感覚知覚モデルを構築するための手法を確立する.本研究では,ヒトが物体を触る時に得られる触覚情報をどのように知覚しているかを明らかにすることを目標として,指の機械的特性と神経系における情報処理特性を考慮した皮膚感覚知覚のモデル化を行う.ヒトの皮膚感覚の知覚においては,センサである触覚受容器が存在する皮膚部分の機械要素のモデル化と神経伝導路や脳を含めた情報処理要素のモデル化が重要である.本研究では,機械要素を伝達関数モデルとして,情報処理要素を多層ニューラルネットワーク(以下,NN)モデルとしてモデル化し,個人差を考慮した皮膚感覚知覚モデルを構築するための手法を確立する. | KAKENHI-PROJECT-19K12029 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12029 |
合成ガスプラットフォームによるバイオマスリファイナリー微生物触媒の開発 | 本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物M. thermoaceticaを宿主として、代謝工学による合成ガスを基質とした有用物質生産プラットフォームの有効性を明らかにすることを目的とした。その結果、耐熱性カナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとした遺伝子導入法を開発した。これを用いて、アルコール生産遺伝子を導入するとともに酢酸生成遺伝子を同時に破壊することにより、エタノール高生産菌の育種に成功した。本変異株のH2-CO2単独の資化能は消失したが、本変異株は糖を同時に添加することでH2-CO2資化能を回復したことから、糖と合成ガスの共発酵によるエタノール生産が期待できる。【発現量制御発現システムの整備】申請者らは、M. thermoacetica ATCC 39073株への遺伝子導入および発現には成功しているが、目的物質を効率的に生産する為には遺伝子の発現比率を適切に制御する必要がある。そこで、まず定量PCR法によりATCC39073株の解糖系、Acetyl-CoA経路など一次代謝経路酵素遺伝子や、ジャイレースなどのハウスキーピング遺伝子を中心に、それぞれの転写量を網羅的に測定、プロモーターの転写活性を評価した。次いで、T. ethanolicus由来のβ-ガラクトシダーゼをマーカー遺伝子としてそれぞれのプロモーターと連結し、pyrFとともにATCC39073株に導入し、翻訳活性をカタログ化した。【複数選択マーカーの取得】現在、確実に使用できる選択マーカー遺伝子はpyrFのみであるが、その他に抗生物質耐性遺伝子マーカーを使用可能とするため、ATCC 39073株がカナマイシンに感受性をもつことを利用し、耐熱性カナマイシン耐性遺伝子を、G3PDHプロモーターに連結し、ATCC39073株に導入し選択マーカとして利用できることを示した。【エタノール生産変異株の製作】本プラットフォームの有効性を示すために、これまでに構築した遺伝子組み換え法を適用し、M. thermoacetica ΔpyrF破壊株へのエタノール生産遺伝子を導入した変異株を作製した。具体的には、Moorellaがもつアルコール脱水素酵素遺伝子adhA、およびアルデヒド脱水素酵素遺伝子aldhの本来のプロモーター配列を実績のあるG3PDHプロモーター配列などに置き換えた人工オペロンを構築し、M. thermoacetica ΔpyrF破壊株に導入した。詳細は現在、解析中である。本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物M. thermoacetica ATCC 39073株を宿主とする、1)エタノールをモデル生産物とした高生産変異株の分子育種技術の開発、2)遺伝子導入・発現法の高度化、そして3)H2-CO2を基質とした培養技術の検討課題を解決してゆくことにより、バイオガスからの有用物質生産プラットフォームの有効性を明らかにする。昨年度、M. thermoaceticaの酢酸生成経路をほぼ完全に破壊するとともに、乳酸脱水素酵素遺伝子(T-ldh)を導入することにより、本来のホモ酢酸発酵をホモ乳酸醗酵へ転換することに成功した。そこで、本年度は、同様の手法により、エタノール生産株の作成を行った。M. thermoacetica ΔpyrF破壊株にアルコール生産遺伝子をグルタルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝プロモーター制御下で導入しただけでは、エネノール生産は見られなかった。しかし、同時に酢酸生成遺伝子を破壊することにより、酢酸生成は減少し著量のエタノールが生産された。このことから、酢酸生成遺伝子の破壊がM. thermoaceticaによるエタノール生産に有効であることが示された。今後、本エタノール生産変異株の代謝解析を行う予定である。また、M. thermoaceticaの遺伝子導入・発現を高度化するために、糖およびH2-CO2で培養した菌体抽出物のプロテオーム、MS分析により、それぞれの条件で高度発現しているタンパク質を検出、同定することができた。今後、高発現タンパク質のプロモーター強度を調べ、高発現系の開発を行う予定である。本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物M. thermoaceticaを宿主として、エタノールをモデル生産物とした高生産変異株の分子育種技術の開発、遺伝子導入・発現法の高度化、そしてH2-CO2を基質とした培養技術の検討課題を解決してゆくことにより、バイオガス(H2, CO, CO2)からの有用物質生産プラットフォームの有効性を明らかにすることを目的とした。研究開始時、M. thermoaceticaへの遺伝子導入に必要な選択マーカー遺伝子はpyrFのみであったが、新たに、耐熱性カナマイシン耐性遺伝子を適切なプロモーターに連結することで、新規選択マーカーとして利用できることを示した。また、定量PCR法による主要一次代謝経路酵素遺伝子の転写解析、およびプロテオームによる発現解析によりプロモーター活性を網羅的に解析し、有望なプロモーターを耐熱性β-ガラクトシダーゼと連結、翻訳活性をカタログ化した。さらに、本プラットフォームの有効性を示すために、M. thermoaceticaへのエタノール生産遺伝子を導入した変異株を作製した。M. thermoaceticaに、グルタルアルデヒド3リン酸脱水素酵素遺伝プロモーター制御下でアルコール生産遺伝子を導入しただけでは、糖質からのエタノール生産は見られなかったが、酢酸生成遺伝子を同時に破壊することにより、酢酸生成はほぼなくなり、著量のエタノールが生産された。しかし、本変異株のH2-CO2資化能は消失した。そこで代謝解析によりH2-CO2代謝経路の原因酵素を推定し、ボトルネックの解消を目指している。また、本変異株を用いたバイオマスモデル基質からの好熱エタノール生産に成功した。本変異株は糖を同時に添加することでH2-CO2資化能を回復したことから、糖と合成ガスの共発酵によるエタノール生産が期待できる。 | KAKENHI-PROJECT-25420832 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420832 |
合成ガスプラットフォームによるバイオマスリファイナリー微生物触媒の開発 | 本研究では、好熱性偏性嫌気性微生物M. thermoaceticaを宿主として、代謝工学による合成ガスを基質とした有用物質生産プラットフォームの有効性を明らかにすることを目的とした。その結果、耐熱性カナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとした遺伝子導入法を開発した。これを用いて、アルコール生産遺伝子を導入するとともに酢酸生成遺伝子を同時に破壊することにより、エタノール高生産菌の育種に成功した。本変異株のH2-CO2単独の資化能は消失したが、本変異株は糖を同時に添加することでH2-CO2資化能を回復したことから、糖と合成ガスの共発酵によるエタノール生産が期待できる。本年度、M. thermoaceticaに、アルコール生産遺伝子を導入すると同時に酢酸生成遺伝子を破壊することにより、糖を基質として酢酸生成は減少し著量のエタノールが生産することに成功した。ただ、予想通り、H2-CO2では増殖が見られないことから、2段階培養法を検討しており生産性改善については概ね順調に進んでいる。一方、代謝フラックス解析が遅れている。これは、解析費用が高価であるため、エタノール生産株と野生株を同時に解析を行うことで研究費を効果的に用いるためである。種々の有用物質生産変異株の製作については、耐熱性ブタノール生産遺伝子のクローニングを行っており、遺伝子導入に向けて準備を行っており、概ね順調に研究を進めている。生物化学工学研究計画と比較して、代謝解析は遅れてはいるものの、他は概ね順調に進んでおり、基本的には計画書通り研究を推進したい。まず、本年度育種したエタノール生産菌について、培養特性、代謝機能を詳細に解析し、最適な培養法を検討するとともに、バイオリアクターを用いたエタノール生産試験に挑戦し、高速エタノール生産を実現したい。さらに、開発した遺伝子組換え技術を用いて関連遺伝子を導入することでエタノール以外の代謝産物についても製造可能であることを示したい。平成25年度計画書に記載した研究計画は、サブテーマ1.遺伝子発現制御法の高度化(1-1.発現量制御発現システムの整備、1-2.複数選択マーカーの取得)、サブテーマ2.有用物質生産変異株の分子育種(2-1.エタノール生産変異株の製作、2-2.野生株代謝フラックス解析)である。この中で、野生株代謝フラックス解析以外は、ほぼ当初の目的を達成しており、順調に進展していると考えている。2-2.野生株代謝フラックス解析に関しては、解析費用が高価であることから、今後、共同研究も含め、エタノール生産変異株の解析を同時に行うことで効率的に解析を進める予定である。研究は概ね順調に進展しているので、基本的には計画書通りに研究を推進したい。 | KAKENHI-PROJECT-25420832 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25420832 |
オスミウムの地球科学:地球の始まりから現在まで | 超微量オスミウムの同位体の測定を可能にするために様々な工夫を繰り返した。その結果、天然試料中の超微量オスミウムの測定のための分析手順の開発(ソフト)はほぼ終わりつつある。予備実験において岩石試料の場合は8割近いオスミウムの回収が可能になり、いよいよ天然の試料に取りかかれる段階になった。海水中のオスミウムの分析には分離法のさらなる改良が必要であるが、今回の方法の開発に使ったノウハウを利用すれば、夢ではなくなりつつある。また装置での測定(ハード)に関しても大きな進展があった。今回陰イオン質量分析計で100pg(ピコグラム;10^<-12>グラム)のオスミウムの同位体比を測定した。通常質量分析計でストロンチウムなどの元素の同位体を分析をする場合、1μg(マイクログラム;10^<-6>グラム)が必要であることから考えれば、今回成功したオスミウムの同位体分析がいかに低濃度で行われたかということがわかる。さて分析方法を検討する過程で、オスミウムの分析をする際に問題となりうる点をいくつか見出した。中でも岩石中のオスミウムを分析する際の注意点として、その岩石生成後の熱水変質などでオスミウムが移動しうるということを実験的に示したことが、大きな成果として挙げられる。この事実は、得られたデータを解釈する上で軽視してはならない非常に重要な問題として位置づけられる。それを公表した論文(裏に示す)の海外での評価は概して高い。今後の展望としては、開発したオスミウムの分析法を利用して、今回手を着けるところまで達しなかった天然試料の分析に取りかかる。海水の分析法の検討も課題である。現在鉄共沈、イオン交換樹脂による分離の他にマンガンファイバーを用いたオスミウムの吸着回収を検討している。また、国内においてオスミウム分析を試みているグループはかなり苦労しており、今回のノウハウを公表して情報の交換を進め、共同して開発を進めていく予定である。超微量オスミウムの同位体の測定を可能にするために様々な工夫を繰り返した。その結果、天然試料中の超微量オスミウムの測定のための分析手順の開発(ソフト)はほぼ終わりつつある。予備実験において岩石試料の場合は8割近いオスミウムの回収が可能になり、いよいよ天然の試料に取りかかれる段階になった。海水中のオスミウムの分析には分離法のさらなる改良が必要であるが、今回の方法の開発に使ったノウハウを利用すれば、夢ではなくなりつつある。また装置での測定(ハード)に関しても大きな進展があった。今回陰イオン質量分析計で100pg(ピコグラム;10^<-12>グラム)のオスミウムの同位体比を測定した。通常質量分析計でストロンチウムなどの元素の同位体を分析をする場合、1μg(マイクログラム;10^<-6>グラム)が必要であることから考えれば、今回成功したオスミウムの同位体分析がいかに低濃度で行われたかということがわかる。さて分析方法を検討する過程で、オスミウムの分析をする際に問題となりうる点をいくつか見出した。中でも岩石中のオスミウムを分析する際の注意点として、その岩石生成後の熱水変質などでオスミウムが移動しうるということを実験的に示したことが、大きな成果として挙げられる。この事実は、得られたデータを解釈する上で軽視してはならない非常に重要な問題として位置づけられる。それを公表した論文(裏に示す)の海外での評価は概して高い。今後の展望としては、開発したオスミウムの分析法を利用して、今回手を着けるところまで達しなかった天然試料の分析に取りかかる。海水の分析法の検討も課題である。現在鉄共沈、イオン交換樹脂による分離の他にマンガンファイバーを用いたオスミウムの吸着回収を検討している。また、国内においてオスミウム分析を試みているグループはかなり苦労しており、今回のノウハウを公表して情報の交換を進め、共同して開発を進めていく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-07740433 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07740433 |
ポリロタキサンの分子ピストン機能を利用したケモメカニカル組織体の構築 | 本研究では、ポリロタキサン骨格を利用して分子ピストン機能を有する組織体の設計を目的として、蛍光色素であるフルオレセインイソチオシアナート(FITC)をポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)からなるABA型ブロック共重合体(プルロニック^<【encircledR】>)の両末端に導入したポリロタキサンを合成し、水溶液中における温度変化に応じたβ-CDのプルロニック^<【encircledR】>鎖上での局在化挙動を解析した。PEGとPPGとのABA型ブロック共重合体であるプルロニック^<【encircledR】>(P84:Mw=4200)の両末端にアミノ基を導入した後、β-CD飽和PBS緩衝溶液中に滴下、撹拌し、アミノ化プルロニック^<【encircledR】>が多数のβ-CD空洞部を貫通した擬ポリロタキサンを得た。続いて、FITCをDMF中、5°C、72時間反応させることにより、目的とするポリロタキサンを副反応なく合成することが出来た。合成の確認は^1H-NMR、2DNOESY NMR、GPC測定によりおこない、多数のβ-CD空洞部がプルロニック^<【encircledR】>を貫通したポリロタキサン構造と両末端のみのFITC導入を確認した。プルロニック^<【encircledR】>1分子に貫通しているβ-CD数は約7分子であった。生理的環境下においてポリロタキサンなかのβ-CDのプルロニック^<【encircledR】>鎖に沿った分布状態を把握するため、誘起円二色性スペクトル測定を検討した。ポリロタキサンは約490nm付近のFITC吸収波長領域にβ-CDとFITCとの包接に伴う誘起円二色性を示した。このことから低温においてβ-CDが末端FITCと相互作用しており、プルロニック^<【encircledR】>鎖上に分散していることを明らかにした。昇温すると正のモル楕円吸収が小さくなったことから、β-CDがプルロニック^<【encircledR】>鎖上を移動したことが示唆された。そこで、この移動現象を750MHz lH-NMR測定から解析した。温度上昇に伴い、PPG成分のメチル基に起因するピークが分裂し、低磁場側に新たなピークを確認した。分裂したピークの相対面積比から算出したPPG成分上のβ-CD数は、温度上昇に伴い約1.3分子(10°C)から約5.2分子(50°C)に増大した。このことは、貫通しているβ-CDのほとんどが、50°CにおいてPPG成分上に局在化していることを示している。以上から、ポリロタキサンを構成するβ-CDは、温度上昇に伴いPPG成分上に局在化することを明らかにした。本研究では、ポリロタキサン骨格を利用して分子ピストン機能を有する組織体の設計を目的として、蛍光色素であるフルオレセインイソチオシアナート(FITC)をポリエチレングリコール(PEG)とポリプロピレングリコール(PPG)からなるABA型ブロック共重合体(プルロニック^<【encircledR】>)の両末端に導入したポリロタキサンを合成し、水溶液中における温度変化に応じたβ-CDのプルロニック^<【encircledR】>鎖上での局在化挙動を解析した。PEGとPPGとのABA型ブロック共重合体であるプルロニック^<【encircledR】>(P84:Mw=4200)の両末端にアミノ基を導入した後、β-CD飽和PBS緩衝溶液中に滴下、撹拌し、アミノ化プルロニック^<【encircledR】>が多数のβ-CD空洞部を貫通した擬ポリロタキサンを得た。続いて、FITCをDMF中、5°C、72時間反応させることにより、目的とするポリロタキサンを副反応なく合成することが出来た。合成の確認は^1H-NMR、2DNOESY NMR、GPC測定によりおこない、多数のβ-CD空洞部がプルロニック^<【encircledR】>を貫通したポリロタキサン構造と両末端のみのFITC導入を確認した。プルロニック^<【encircledR】>1分子に貫通しているβ-CD数は約7分子であった。生理的環境下においてポリロタキサンなかのβ-CDのプルロニック^<【encircledR】>鎖に沿った分布状態を把握するため、誘起円二色性スペクトル測定を検討した。ポリロタキサンは約490nm付近のFITC吸収波長領域にβ-CDとFITCとの包接に伴う誘起円二色性を示した。このことから低温においてβ-CDが末端FITCと相互作用しており、プルロニック^<【encircledR】>鎖上に分散していることを明らかにした。昇温すると正のモル楕円吸収が小さくなったことから、β-CDがプルロニック^<【encircledR】>鎖上を移動したことが示唆された。そこで、この移動現象を750MHz lH-NMR測定から解析した。温度上昇に伴い、PPG成分のメチル基に起因するピークが分裂し、低磁場側に新たなピークを確認した。分裂したピークの相対面積比から算出したPPG成分上のβ-CD数は、温度上昇に伴い約1.3分子(10°C)から約5.2分子(50°C)に増大した。このことは、貫通しているβ-CDのほとんどが、50°CにおいてPPG成分上に局在化していることを示している。 | KAKENHI-PROJECT-10126223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10126223 |
ポリロタキサンの分子ピストン機能を利用したケモメカニカル組織体の構築 | 以上から、ポリロタキサンを構成するβ-CDは、温度上昇に伴いPPG成分上に局在化することを明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-10126223 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10126223 |
国際交渉におけるイシューリンケージの可能性と影響について | 国際交渉でイシュー領域間のリンケージが行われるケースが国際政治学・国際交渉分析の最近の傾向(イシュー構造モデル、国内政治重視)、および、国際化の中で更に重要性を増していることを示した。また、こうした状況を説明するため、無関係の2つのイシューがリンクされた時の、国内における分野間調整と国際交渉の力学に関するモデルを作成した。この理論的なモデルを用いて、1989年後半から1990年代初頭にかけての日米交渉(特に日米構造協議)を説明するため、交渉資料の収集を引き続き行った。収集においては、イシューのパッケージングと分野間調整(独立変数)、交渉の過程や結果(従属変数)を析出するため、詳細なアジェンダと行政機関内での取り扱いレベル、および、交渉結果の変遷(時期毎の合意文書、覚え書き等)に焦点を当てた。具体的には、アメリカ国務省、当時の担当者へのインタビューなどを通して、アメリカ側交渉担当者の行動について、具体的に以下のことが分かった。(1)1989年の日米構造協議開始直前から、92年に2度目の年次報告が出されるまでの間について、アジェンダに含まれていた内容とその変遷。(2)アメリカ政府内部の連絡・会議が行われていた時期、頻度、内容。(3)日本政府内部の取り扱いレベルの変化。また、日本政府が公開した資料から、アジェンダに含まれる要求事項に対する日本側の返答と、その時期ごとの変化が明らかとなった。これらを分析することによって、日本国内の取り扱いレベル変化の前後で、モデルの予測する結果が出ていることが分かった。国際交渉でイシュー領域間のリンケージが行われる場合の国内集団の選考や行動、交渉の過程や結果について、先行研究の成果と、そこで用いられている概念を整理した。そこから、国内における分野間調整と国際交渉の力学に関する仮説を立てた。また、このことが国際政治学・国際交渉分析の最近の傾向(イシュー構造モデル、国内政治重視)の中で更に重要性を増していることを示した。この理論的な仮説を検証する上で必要とされる事例研究を行うため、1989年後半から1990年代初頭にかけての日米交渉(特に日米構造協議)に関する資料収集を行った。イシューのパッケージング(独立変数)が交渉の過程や結果(従属変数)に及ぼす影響を調査するために、交渉の際のパッケージング(アジェンダと取扱い時期など)の特定、および交渉結果の変遷(時期毎の合意文書、覚え書き等)の収集を目指した。アメリカ商務省、ジョージブッシュ大統領図書館等での資料収集の結果、アメリカ側交渉担当者の行動について、具体的に以下のようなことが分かった。(1)1989年の日米構造協議開始直前から、92年に2度目の年次報告が出されるまでの間について、アジェンダに含まれていた内容とその変遷。(2)アメリカ政府内部の連絡・会議が行われていた時期、頻度、内容。また、日本政府が公開した資料から、アジェンダに含まれる要求事項に対する日本側の返答の一部が明らかとなった。申請した情報公開の多くがいまだに処理待ちであるため、結果の変遷に関しては全てが明らかになったわけではないが、アジェンダやアメリカ政府内部での調整頻度、初期の日本政府の対応等が今回明らかとなった。国際交渉でイシュー領域間のリンケージが行われるケースが国際政治学・国際交渉分析の最近の傾向(イシュー構造モデル、国内政治重視)、および、国際化の中で更に重要性を増していることを示した。また、こうした状況を説明するため、無関係の2つのイシューがリンクされた時の、国内における分野間調整と国際交渉の力学に関するモデルを作成した。この理論的なモデルを用いて、1989年後半から1990年代初頭にかけての日米交渉(特に日米構造協議)を説明するため、交渉資料の収集を引き続き行った。収集においては、イシューのパッケージングと分野間調整(独立変数)、交渉の過程や結果(従属変数)を析出するため、詳細なアジェンダと行政機関内での取り扱いレベル、および、交渉結果の変遷(時期毎の合意文書、覚え書き等)に焦点を当てた。具体的には、アメリカ国務省、当時の担当者へのインタビューなどを通して、アメリカ側交渉担当者の行動について、具体的に以下のことが分かった。(1)1989年の日米構造協議開始直前から、92年に2度目の年次報告が出されるまでの間について、アジェンダに含まれていた内容とその変遷。(2)アメリカ政府内部の連絡・会議が行われていた時期、頻度、内容。(3)日本政府内部の取り扱いレベルの変化。また、日本政府が公開した資料から、アジェンダに含まれる要求事項に対する日本側の返答と、その時期ごとの変化が明らかとなった。これらを分析することによって、日本国内の取り扱いレベル変化の前後で、モデルの予測する結果が出ていることが分かった。 | KAKENHI-PROJECT-02J07550 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02J07550 |
種々の情報通信系に内在する組合せ符号とその識別・復号アルゴリズムの研究 | 本研究では,情報通信に関連する組合せ構造の最適性,存在問題,構成法などについて研究を行い,以下の成果を得た.1)重みが3,4の最適なconflict-avoiding codeの構成法を与えた.2)光直交符号に関連して,affine-invariantスタイナー4重系の構成法を与えた.3)mutuallyorthogonal t-designsの概念導入して量子ジャンプ符号を定式化し,旧来のt-designを複素数体上に拡張し,その存在性を議論した.4)統計的に最適な2重同心球面上の点配置の構成法を与えた.5)グループテストを表わす2部グラフが正則のとき,識別確率が高いことを示した.本研究では,情報通信に関連する組合せ構造の最適性,存在問題,構成法などについて研究を行い,以下の成果を得た.1)重みが3,4の最適なconflict-avoiding codeの構成法を与えた.2)光直交符号に関連して,affine-invariantスタイナー4重系の構成法を与えた.3)mutuallyorthogonal t-designsの概念導入して量子ジャンプ符号を定式化し,旧来のt-designを複素数体上に拡張し,その存在性を議論した.4)統計的に最適な2重同心球面上の点配置の構成法を与えた.5)グループテストを表わす2部グラフが正則のとき,識別確率が高いことを示した.平成22年度は,主に3つのテーマに焦点を絞り,研究を遂行した.本研究は研究代表者と分担者三嶋が担当し,符号の重みが3の場合に,これまでの研究で未解決であった符号長について,最適なconflict avoiding codeの構成法を与えた.本研究成果は,IEEE,ITに掲載された.(2)自然減衰に対応した量子符号の最適性と最適符号の存在に関する研究本研究では,量子ジャンプ符号と呼ばれる組合せ構造について,量子減衰,量子ジャンプによる誤りを訂正するための組合せ構造を精査し,それをまとめてクロアチアでの国際会議で3時間の招待講演で発表を行った.また,その講演内容は情報通信に関する英文の著書の1章としてヨーロッパの出版社から出版公表された.本研究では,専攻研究で得られていた符号の次元に関する限界式を特別な符号長,符号重み,誤り訂正能力の場合に改良できることを示した.その後,より広い符号系列に対して,その方法が一般化できることを示した.(3)(2)の研究に関連して,アフィン幾何の平面から成る2-designをより会合数が小さい2-designに分割できることを示した.本研究成果は,量子ジャンプ符号のみでなく鍵分散暗号にも応用可能であることを示した.平成23年度は下記の2つのテーマについて研究を遂行した。(i)量子ジャンプ符号に基づく新しい組合せ構造およびその暗号などへの応用の研究今年度は昨年度に引き続き,複素数体上のmutually orthogonal partial t-designs (t-MOD)という概念を提案し,その組合せ構造,存在性,構成法について研究を行った.この概念は、量子ジャンプ符号から導かれた組合せ構造であり、組合せデザインの新しい研究テーマである。今年度は、与えられたパラメータのもとでデザイン数最大の最適なt-MODの存在性に注目し、ある種のパラメータについては最適なt-MODが存在しないことを明らかにした。また、最適なbinary t-MODはlarge set of tdesignと同値であることを示した。さらに、最適なbinary t-MODが存在しないパラメータに対して複素数上の最適なt-MODの存在を示した。本研究グループでは、t-MODの研究の意義と応用および数学的興味深ざをCalifornia工科大学、中国の逝江大学、蘇州大学などの研究集会、セミナーなど国内外の様々な研究集会、セミナーなどでアピールし、大きな反響を得た。(ii)fingerprint符号などの組合せ論的特徴付けと構成法およびそのgroup testingとの関連と組合せ構造,識別アルゴリズムの開発本研究ではgroup testingと呼ばれる手法が重要な役割を果たすが,平成23年度は特にgroup testingに注目して、反応抑制アイテムが存在する場合にpositiveアイテムを識別する識別アルゴリズムを開発し、その効率をシミュレーションにより実証した。本研究は、23年4,月に台湾での国際会議でHung-Lin Fu教授との情報交換を契機に始めた研究であり、Fu教授のグループはgroup testingの組合せ論的側面に注目しているのに対して、本研究では、その識別アルゴリズムに焦点を当てて、Belief propagationを用いたアルゴリズムを開発した。(1)重み4のconflict-avoiding code(CAC)の構成法:平成24年度に続き,重み4のCACの構成法を一般の符号長について与えた.この結果,符号長nを因子2の巾aと3の巾bおよび2,3と疎な整数部分mに分けて表したとき,(a, b)=(0,0),(1, 1)の場合を除いて,最適なCACの符号語数を決定し,その具体的構成法を与えることに成功した.本研究成果は,現在論文として纏めており,H26年度の早い時期に投稿予定である.重み4のCACの構成法については,現在,その構造が見通せるすべての場合について,か帰結に至ったと思われる.(2)グループテストのループサイズの最適性に関する研究:グループテストにおいて,テスト結果が陽性/陰性の2値であり,テスト結果に誤りがない場合に,各アイテムの平均テスト回数が与えられたもとで,グループサイズが一定のテストが識別確率を最大にするという意味で,最適であることを理論的に示した.また,その際の平均テスト回数の最適値についてもシミュレーションで最適値を求めた. | KAKENHI-PROJECT-22340016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340016 |
種々の情報通信系に内在する組合せ符号とその識別・復号アルゴリズムの研究 | 研究成果は,院生との共同研究として論文にまとめる予定である.(3)研究代表者は,量子ジャンプ符号に関連して,複素素体上のt-デザインの族(t-MOD)を定義し,1-MODの構成にquasi-difference matrixが関連していることを見出した.今年度は,対角要素が不定元であるquasi-difference行列の構成法に関する研究を行い,ある種の行列がquasi-difference matrixとなるための条件を明らかにした.また,その条件を満足する例を計算機を用いて見出した.平成24年度は主に下記のテーマについて研究を行った。(i)量子ジャンプ符号に基づく新しい組合せ構造の研究およびその暗号への応用:量子ジャンプ符号と同値な組合せ構造としてmutually orthogonal t-designs(t-MOD)という概念を提案したが,24年度は、特に最適な1-MODの数理構造,存在性,構成法について研究を行い、完全グラフの1-因子分解との関連を見出した。完全グラフの1ー因子分解は頂点数vが奇数の場合には存在しないが、複素数体上の1-MODに拡張するとv=7の場合に存在することを示した。一方、0, 1に値を制限したt-MOD(t-SEEDと呼ばれる)については、最適なt-SEEDはt-デザインのlarge setと同値であることを示した。さらに、t-SEEDの鍵分散暗号への応用にも触れ、t-SEEDはt-secureな鍵分散暗号と同値であることを示した。これらの結果は、論文として公表し、また、国内外の研究集会で口頭発表を行った。さらに、有限アフィン幾何の2-flatがなす2-デザインの分解問題に数論的手法を用いて、デザインの分解数を与えた。この研究成果はt-SEEDの更生法としても有用である。(ii) conflict-avoiding code(CAC)の構成:重みが3と4の最適なCACの存在問題および構成法についても研究を行い、円分多項式を用いて重みが3で奇数長の最適な等差CACの構成法を与えた。さらに、重みが4の場合に、最適な等差CACの構成法と符号語数を明らかにした。(iii)反応抑制がある場合のグループテストにおける識別アルゴリズム:sum-productアルゴリズムによる識別アルゴリズムを開発し、その識別能力をシミュレーションにより明らかにした。この研究成果はいくつかの研究集会で発表した。平成26年度の研究実績は下記のとおりである.(1)重み4の衝突回避符号の構成法:平成25年から引き続いて重み4の衝突回避符号(Conflict-avoiding code, CAC)の構成法を一般の符号長について纏めた.符号長nを2のa乗,3のb乗とそれ以外の積として表したとき,最大符号語数について,a, bに関する漸化式を求めて,a, bが小さい場合の最大符号語数を求める問題に帰着させ,さらに,(a, b)が(2, 1), | KAKENHI-PROJECT-22340016 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22340016 |
液晶素子における分子配向の耐光性とそのリアルタイム評価技術の開発 | ホモジニアス,ホメオトロピック,ハイブリッド,ツイステッドネマティック(TN)の計4種類を作製し403nmの半導体レーザ(約10mW)を集光し,液晶分子配向状態の異なる液晶素子にそれぞれ照射し,配向状態の変化から,数十分以内での耐光性評価を可能とした。光劣化とともに,透過レーザ光のファーフィールドパターンが変化することを利用し,配向変化の開始時間,劣化の進行状態を評価することができた。ホモジニアス,ホメオトロピック,ハイブリッド,ツイステッドネマティック(TN)の計4種類を作製し403nmの半導体レーザ(約10mW)を集光し,液晶分子配向状態の異なる液晶素子にそれぞれ照射し,配向状態の変化から,数十分以内での耐光性評価を可能とした。光劣化とともに,透過レーザ光のファーフィールドパターンが変化することを利用し,配向変化の開始時間,劣化の進行状態を評価することができた。◎各種配向状態の液晶素子作製とレーザ光照射条件の検討ホモジニアス,ホメオトロピック,ハイブリッド,ツイステッドネマティックの計4種類の液晶分子配向状態の素子を,種々の液晶材料を用いて作製した。配向膜としては、数種類のポリイミド、ポリビニルアルコールを用い,ラビング配向処理によって、平行配向、垂直配向、チルト配向表面を得た。青紫半導体レーザ光の直線偏光方向は、液晶分子の入射基板面の配向方向と直交、または平行とし、レンズで集光して液晶素子に照射した。その結果,1.光劣化による配向変化には,配向膜界面における液晶分子の極角方向(チルト角)変化,方位角方向(ねじれ角)変化,光分解の3つが,それぞれ単独または複合的に生じた。2.同-液晶材料であっても,配向膜の種類によって光劣化の状態が異なった。3.液晶材料ごとの耐光性順位は,配向膜によって異なった。4.配向界面での液晶分子配向変化は,バルクでの液晶分子配列状態,すなわち弾性ひずみの有無,またはレーザの偏光状態のバルク内および出射側配向膜界面における変化により,劣化の進行状態が異なった。5.配向膜の極角および方位角アンカリングカの低下が確認された。◎集光照射においては,ファーフィールドパターン(FFP)変化の観察を行い,光劣化のリアルタイム評価を試みた。1.光配向変化が生じるとほぼ同時に,同心円上の干渉縞が現れ,またそのパターンが劣化の進行とともに変化することを確認した。FFPの変化が生じるまでの照射時間を観察することで耐光性の順位を用意に明らかにできることを明らかにした。2.光分解に伴うFFPは,規則的な同心円状のFFPとならないため,光配向変化によるそれとは区別が容易であった。3.液晶ダイレクタとレーザの偏光方向が直行している場合,極角方向のみの光配向変化ではFFPが変化せず,一時的な1/2波長板の挿入等によりFFP変化を観察でき,光配向変化の形態に関する情報も得ることができた。◎実際のディスプレイに用いられているポリイミドを用いホモジニアス,ホメオトロピック,ハイブリッド,ツイステッドネマティック(TN)の計4種類の液晶分子配向状態の素子を作製した。さらに電圧印加時に光照射を行い,電圧無印加時との比較,電圧の実行値,周波数をパラメータとしたときの比較を行った。その結果1.ホモジニアス配向よりもTN配向も方が早く光劣化が生じた。このことから,方位角アンカリングカの低下が,チルト角増加に先駆けて生じることが明らかとなった。ハイブリッド配向との比較においても,極角アンカリングカの低下が観察された。ホメオトロピック配向が,最もが高かった2.電圧印加下における光照射による耐光性は電圧無印加時とまったく変わらなかった。このことは光劣化は配向膜界面で生じていることがわかった。したがって電圧実効値,周波数による影響も観察されなかった。また界面の光劣化に対する液晶バルク配列の弾性ひずみエネルギーの影響が無いことが明らかとなった。◎集光照射においては,ファーフィールドパターン(FFP)変化の観察を行い,光劣化のリアルタイム評価を試みた。1.光配向変化が生じるとほぼ同時に,同心円上の干渉縞が現れ,またそのパターンが劣化の進行とともに変化することを確認した。FFPの変化が生じるまでの照射時間を観察することで耐光性の順位を用意に明らかにできることを明らかにした。2.光分解に伴うFFPは,規則的な同心円状のFFPとならないため,光配向変化によるそれとは区別が容易であった。一時的な1/2波長板の挿入等によるFFP変化を観察によって,光配向変化が面内方向または面外方向で生じているかに関する情報も得ることができた。 | KAKENHI-PROJECT-19560009 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19560009 |
抗腫瘍免疫賦活化デバイスによるインテリジェント化サイトカインの創製 | 我々は、これまでに腫瘍壊死因子(TNF-α)を最適条件でPEGylation(PEGによるBioconjugation)することでTNF-αの生体内安定性を飛躍的に高め、未修飾TNF-αの100倍以上にも抗腫瘍効果を増大できることを見出している。本研究では、より優れた薬効と安全性を有するTNF-α製剤を分子設計するために、免疫賦活化能を有するジビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)を用い、さらに実用可能な機能化TNF-αの分子設計を行った。バイオコンジュゲーションは、pH応答性を有するアミノ基保護試薬であるジメチル無水マレイン酸(DMMAn)を用い、あらかじめTNF-αのリジン残基を一部保護してからDIVEMAと反応させた。このDMMAnを用いたバイオコンジュゲーション法により、TNF-αの比活性を殆ど低下させることなく、バイオコンジュゲート体(DIVEMA-TNF-α)を作製することに成功した。このDIVEMA-TNF-αの機能特性を検討するにあたり、まずDIVEMAのIFN-γ誘導能をリンパ球を用いて測定した結果、DIVEMAの濃度に応じたIFN-γの産生が認められた。次にこのDIVEMA-TNF-αの有用性をin vivoにて評価した結果、DIVEMA-TNF-αは、native TNF-αと比較して100倍以上もの抗腫瘍効果を示した。さらに、体重減少や血小板減少、肝障害などの副作用を全く示さなかったことから、その癌治療への有用性が明らかとなった。また、その抗腫瘍メカニズムを明らかにすべく、DIVEMA-TNF-αの体内動態を検討したが、DIVEMA-TNF-αはnative TNF-αと比較して血中滞留性の延長は認められなかった。投与3時間後の組織分布では、native TNF-αと比較して肝臓への移行量が上昇しており、修飾高分子の動態特性を反映しているものと考えられた。以上、本研究を通じて機能性修飾高分子を用いることにより新たな機能を有するインテリ化バイオコンジュゲート医薬品の分子設計が可能となることを示した。我々は、これまでに腫瘍壊死因子(TNF-α)を最適条件でPEGylation(PEGによるBioconjugation)することでTNF-αの生体内安定性を飛躍的に高め、未修飾TNF-αの100倍以上にも抗腫瘍効果を増大できることを見出している。本研究では、より優れた薬効と安全性を有するTNF-α製剤を分子設計するために、免疫賦活化能を有するジビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)を用い、さらに実用可能な機能化TNF-αの分子設計を行った。バイオコンジュゲーションは、pH応答性を有するアミノ基保護試薬であるジメチル無水マレイン酸(DMMAn)を用い、あらかじめTNF-αのリジン残基を一部保護してからDIVEMAと反応させた。このDMMAnを用いたバイオコンジュゲーション法により、TNF-αの比活性を殆ど低下させることなく、バイオコンジュゲート体(DIVEMA-TNF-α)を作製することに成功した。このDIVEMA-TNF-αの機能特性を検討するにあたり、まずDIVEMAのIFN-γ誘導能をリンパ球を用いて測定した結果、DIVEMAの濃度に応じたIFN-γの産生が認められた。次にこのDIVEMA-TNF-αの有用性をin vivoにて評価した結果、DIVEMA-TNF-αは、native TNF-αと比較して100倍以上もの抗腫瘍効果を示した。さらに、体重減少や血小板減少、肝障害などの副作用を全く示さなかったことから、その癌治療への有用性が明らかとなった。また、その抗腫瘍メカニズムを明らかにすべく、DIVEMA-TNF-αの体内動態を検討したが、DIVEMA-TNF-αはnative TNF-αと比較して血中滞留性の延長は認められなかった。投与3時間後の組織分布では、native TNF-αと比較して肝臓への移行量が上昇しており、修飾高分子の動態特性を反映しているものと考えられた。以上、本研究を通じて機能性修飾高分子を用いることにより新たな機能を有するインテリ化バイオコンジュゲート医薬品の分子設計が可能となることを示した。我々は、これまでに腫瘍壊死因子(TNF-α)を最適条件でPEGylation(PEGによるBioconjugation)することでTNF-αの生体内安定性を飛躍的に高め、未修飾TNF-αの100倍以上にも抗腫瘍効果を増大できることを見出している。本研究では、よりすぐれた薬効と安全性を有するTNF-α製剤を分子設計するために、免疫賦活化能を有するジビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)を用い、さらに実用可能な機能化TNF-αの分子設計を行った。その結果、DIVEMAとTNF-αのバイオコンジュゲーションでは、DIVEMAの分子内に蛋白質との反応部位である無水マレイン酸部分が多数存在するため、TNF-αの活性は大幅に低下した。この問題点を克服するため、pH応答性を有するアミノ基保護試薬であるジメチル無水マレイン酸(DMMAn)を用い、あらかじめTNF-αのリジン残基を一部保護してからDIVEMAを反応させる修飾部位制御法を開発した。このDMMAnを用いたバイオコンジュゲーション法により、TNF-αの比活性を殆ど低下させることなく、バイオコンジュゲート体(DIVEMA-TNF-α)を作製することに成功した。このDIVEMA-TNF-αは、ゲルろ過の結果よりTNF-α1分子に1ないし2分子のDIVEMAが結合していた。 | KAKENHI-PROJECT-11672259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672259 |
抗腫瘍免疫賦活化デバイスによるインテリジェント化サイトカインの創製 | また、DIVEMA-TNF-αの機能特性を検討するにあたり、まずDIVEMAのIFN-γ誘導能をリンパ球を用いて測定した結果、DIVEMAの濃度に応じたIFN-γの産生が認められた。TNF-αは、IFN-γとの併用により相乗的に抗腫瘍効果を増強することから、DIVEMA-TNF-αが強い抗腫瘍効果を示す可能性が示唆された。現在、DIVEMA-TNF-αの抗腫瘍効果について検討を行っている。昨年度は、ジビニルエーテル無水マレイン酸共重合体(DIVEMA)を用いてさらに実用可能な機能化腫瘍壊死因子(TNF-α)を分子設計するための基礎的検討を行い、DIVEMA-TNF-αの作製に成功し、その有用性をin vitroにて評価した。本年度は、DIVEMA-TNF-αの抗腫瘍効果についてin vivoにてその有用性を評価した結果、DIVEMA-TNF-αは、native TNF-αと比較して100倍以上もの抗腫瘍効果を示した。本検討で認められたDIVEMA-TNF-αの抗腫瘍効果は、我々がこれまでに報告しているPEG-TNF-αのそれを凌ぐものであった。さらに、体重減少や血小板減少、肝障害などの副作用を全く示さなかったことから、その癌治療への有用性が明らかとなった。また、その抗腫瘍メカニズムを明らかにすべく、DIVEMA-TNF-αの体内動態を検討したが、DIVEMA-TNF-αはnative TNF-αと比較して分子量アップしているにも関わらず、血中滞留性の延長は認められず、native TNF-αとほぼ同様の消失パターンを示した。また、投与3時間後の組織分布を評価したところ、native TNF-αと比較して肝臓への移行量が上昇しており、修飾高分子の動態特性を反映しているものと考えられた。従って、DIVEMA-TNF-αの抗腫瘍効果増強メカニズムは、体内動態に起因するのではなく、修飾高分子が有する機能特性に起因することが示唆され、機能性修飾高分子を用いることにより新たな機能を有するインテリ化バイオコンジュゲート医薬品の分子設計が可能となることを示した。 | KAKENHI-PROJECT-11672259 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11672259 |
励起子絶縁体の光誘起ダイナミクスに関する理論的研究 | 励起子絶縁体(および励起子秩序)は、半導体-半金属転移付近でバンド間クーロン相互作用によって誘起された状態で、電子-ホール対(励起子)の量子凝縮としても記述される状態である。本研究課題は、励起子絶縁体およびその候補物質の深い理解に向けて、相関電子系における光誘起ダイナミクスの研究を理論的に行うものである。平成30年度は、厳密対角化法などの数値計算を駆使して、励起子絶縁体を扱う二軌道模型における光誘起ダイナミクスを調べた。ここでは、パルス照射による励起子相関の減衰や、隠れた電子-電子ペア相関の誘起など、励起子絶縁体系に関する新しい識見を得ることができた。また、この課題と密接な関係にある現象として、Mott絶縁体において光誘起される異常な超伝導相関の上昇に関しても精力的に研究した。この研究では、Hubbard模型の固有状態の解析から、超伝導相関の上昇がη-pairing状態(スタッガードな電子-電子ペア密度波状態)に起因する現象であることを示した。光誘起系ではないが、平成30年度は、励起子絶縁体の候補物質であるTiSe2やTa2NiSe5に関する研究成果も得ることができた。TiSe2においては、現実的な電子-格子相互作用を導入した多軌道相関模型を用いて電荷密度波状態の安定性を調べ、励起子相関(クーロン相互作用)と電子-格子相互作用が協力的に秩序を導いていることを示した。他の候補物質Ta2NiSe5においては、実験で観測されている光学スペクトル構造が励起子相関に起因していることを示唆した。また、実験グループとも協力し、TiSe2の層間にCuを挟んだ系で生じるCuの整列化とそれに付随した電荷密度波状態のメカニズムも明らかにした。励起子絶縁体(および励起子秩序)は、半導体-半金属転移付近でバンド間クーロン相互作用によって誘起された状態で、電子-ホール対(励起子)の量子凝縮としても記述される状態である。本研究課題は、励起子絶縁体およびその候補物質の深い理解に向けて、相関電子系における光誘起ダイナミクスの研究を理論的に行うものである。平成30年度は、厳密対角化法などの数値計算を駆使して、励起子絶縁体を扱う二軌道模型における光誘起ダイナミクスを調べた。ここでは、パルス照射による励起子相関の減衰や、隠れた電子-電子ペア相関の誘起など、励起子絶縁体系に関する新しい識見を得ることができた。また、この課題と密接な関係にある現象として、Mott絶縁体において光誘起される異常な超伝導相関の上昇に関しても精力的に研究した。この研究では、Hubbard模型の固有状態の解析から、超伝導相関の上昇がη-pairing状態(スタッガードな電子-電子ペア密度波状態)に起因する現象であることを示した。光誘起系ではないが、平成30年度は、励起子絶縁体の候補物質であるTiSe2やTa2NiSe5に関する研究成果も得ることができた。TiSe2においては、現実的な電子-格子相互作用を導入した多軌道相関模型を用いて電荷密度波状態の安定性を調べ、励起子相関(クーロン相互作用)と電子-格子相互作用が協力的に秩序を導いていることを示した。他の候補物質Ta2NiSe5においては、実験で観測されている光学スペクトル構造が励起子相関に起因していることを示唆した。また、実験グループとも協力し、TiSe2の層間にCuを挟んだ系で生じるCuの整列化とそれに付随した電荷密度波状態のメカニズムも明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-18K13509 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K13509 |
電気化学高速走査プローブ顕微鏡による固液界面反応の原子レベルダイナミクスの解明 | 電極表面など固液界面における化学反応を原子レベルで解明する手法として、電気化学走査プローブ顕微鏡が用いられているが、一般に使われる現状の装置では走査速度が遅く、界面における高速なダイナミクスを観測することは出来ない。本研究では、1秒間に10枚以上の画像を取得できる電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作製し、これまで不明であった固液界面のダイナミクスを解明することにある。これまで、金沢大学の安藤敏夫教授らが開発したカウンターバランス法やアクティブダンピング法を用い、さらに試料の電極電位を制御可能なシステムを構築することで、1秒間に10枚以上の高速観察が電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作成した。本年度は、この装置を用いて、固液界面におけるダイナミクスの解明を進めた。具体的には、金電極上のハロゲンイオンの拡散、反応挙動、半導体電極上における溶解反応など、工業的に重要ながらもその基礎的な解明が行われていない系について、原子レベルでの機構解明を行った。これらの反応については、これまで既存の電気化学走査プローブ顕微鏡を用いた研究を行っており、原子レベルでの観測に成功している。さらに発展的にダイナミクスを観測することで、電極表面における反応機構を解明したい。本研究の目的は、1秒間に10枚以上の画像を取得できる電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作製し、これまで不明であった固液界面のダイナミクスを解明することにあった。既に当該装置は作製され、固液界面における化学反応の解明を進めている。よって、目標は順調に達成していると考えられる。金属電極上のハロゲンイオンの拡散、反応挙動、半導体電極上における溶解反応など、工業的に重要ながらもその基礎的な解明が行われていない系について、原子レベルでの機構解明の詳細をさらに検討する。これらの反応については、これまで既存の電気化学走査プローブ顕微鏡を用いた研究を行っており、原子レベルでの観測に成功しているが、未だ不明な点も多く、それらの解明を進める。固体と液体の界面である「固液界面」で起きる化学反応を、原子レベルで直接観察する手法として電気化学走査プローブ顕微鏡(EC-SPM)が広く用いられているが、現状では通常の場合の観察速度が0.001-0.003枚/秒程度と遅く、反応の動的過程を観察することは出来ない。本研究では、高速液中原子間力顕微鏡(液中高速AFM)、電気化学走査トンネル顕微鏡(EC-STM)、ラジオ周波数走査プローブ顕微鏡(RF-SPM)の3つの技術を融合し、世界最高速度(10枚/秒以上)で観察可能なEC-高速SPMを開発することで、固液界面反応の動的過程を原子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、液中高速AFMとEC-STMを融合させることで、電極電位が制御可能なEC-高速AFMを作成した。AFM測定における試料ステージ上でサイクリックボルタグラムが測定できたことから、試料の電極電位の制御は確立されたと考えている。来年度以降、電極電位を制御しながら高速AFM観察を行いたいと考えている。また、代表的な固液界面反応である金の電気化学エッチング反応を電気化学走査トンネル顕微鏡で観察した。電極電位を徐々に正にシフトしていくと、表面で金原子が拡散した後、脱離していく過程が観察された。電極電位により、ステップの形状が円状を形成する場合と三角状を形成する場合が制御できることが明らかとなった。さらに、電極電位を変化させることで、ステップ近傍からの金原子の脱離と、テラスからの金原子の脱離が観測された。これらを組み合わせることで、電気化学エッチングによる金の表面構造制御が可能である事を示した。固体と液体の界面である「固液界面」で起きる化学反応を、原子レベルで直接観察する手法として電気化学走杏プローブ顕微鏡(EC-SPM)が広く用いられているが、現状では通常の場合の観察速度が0.001-0.003枚/秒程度と遅く、反応の動的過程を観察することは出来ない。本研究では、高速液中原子間力顕微鏡(液中高速AFM)、電気化学走査トンネル顕微鏡(EC-STM)、ラジオ周波数走査プローブ顕微鏡(RF-SPM)の3つの技術を融合し、世界最高速度(10枚/秒以上)で観察可能なEC-高速SPMを開発することで、固液界面反応の動的過程を原子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度までに作成したEC-高速AFMを用いて、金単結晶試料上の塩化物イオンの直接観察を行った。通常のEC-SPMでは、観測速度が遅く、観測することが不可能であった溶液甲の塩化物イオンをEC-高速AFMを用いることにより、初めて観察することに成功した。塩化物イオン観測のためには、様々な実験条件を最適化する必要があり、特に電極電位の調整は非常に重要であることが分かった。その結果、これまでは不明であった塩化物イオンの集合体の拡散現象が観察された。塩化物イオンは孤立したイオンではなく、数10nm程度の集合体を形成し、拡散することが分かった。溶液中の塩化物イオンは、金表面の電気化学エッチングと強く相関があることが提案されており、来年度以降、この特異的な拡散とエッチング反応の関連などを明らかにする予定である。電極表面など固液界面における化学反応を原子レベルで解明する手法として、電気化学走査プローブ顕微鏡が用いられているが、一般に使われる現状の装置では走査速度が遅く、界面における高速なダイナミクスを観測することは出来ない。 | KAKENHI-PROJECT-21750002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21750002 |
電気化学高速走査プローブ顕微鏡による固液界面反応の原子レベルダイナミクスの解明 | 本研究では、1秒間に10枚以上の画像を取得できる電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作製し、これまで不明であった固液界面のダイナミクスを解明することにある。これまで、金沢大学の安藤敏夫教授らが開発したカウンターバランス法やアクティブダンピング法を用い、さらに試料の電極電位を制御可能なシステムを構築することで、1秒間に10枚以上の高速観察が電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作成した。本年度は、この装置を用いて、固液界面におけるダイナミクスの解明を進めた。具体的には、金電極上のハロゲンイオンの拡散、反応挙動、半導体電極上における溶解反応など、工業的に重要ながらもその基礎的な解明が行われていない系について、原子レベルでの機構解明を行った。これらの反応については、これまで既存の電気化学走査プローブ顕微鏡を用いた研究を行っており、原子レベルでの観測に成功している。さらに発展的にダイナミクスを観測することで、電極表面における反応機構を解明したい。本研究の目的は、1秒間に10枚以上の画像を取得できる電気化学高速走査プローブ顕微鏡を作製し、これまで不明であった固液界面のダイナミクスを解明することにあった。既に当該装置は作製され、固液界面における化学反応の解明を進めている。よって、目標は順調に達成していると考えられる。金属電極上のハロゲンイオンの拡散、反応挙動、半導体電極上における溶解反応など、工業的に重要ながらもその基礎的な解明が行われていない系について、原子レベルでの機構解明の詳細をさらに検討する。これらの反応については、これまで既存の電気化学走査プローブ顕微鏡を用いた研究を行っており、原子レベルでの観測に成功しているが、未だ不明な点も多く、それらの解明を進める。 | KAKENHI-PROJECT-21750002 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21750002 |
コレラ毒素Bサブユニットの粘膜アジュバントのメカニズムと組織安全性に関する研究 | コレラ毒素Bサブユニット(rCTB)の粘膜投与後の中枢神経系への影響の詳細な報告はまだされていない事から、脳、鼻腔等の組織切片の免疫染色法、HE染色法等により神経組織の影響を調査した。実験としてはコレラ毒素(CT)、rCTB経鼻投与マウスの脳、嗅球の凍結切片作製とヘマトキシリンヒオジシHE染色、抗CTB抗体による免疫染色による脳組織への移行性と組織への影響、ヒトで報告された顔面神経麻痺(ベル麻痺)から推測し、ベル麻痺の原因ウイルスであると言われている単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)感染マウスモデルの作製、HSV1感染マウスへCT、rCTB経鼻投与後の顔面神経麻痺の観察、顔面神経麻痺マウスの組織観察とNested PCR法によるHSV特異的DNA断片測定を行った。コレラ毒素(CT)、rCTB経鼻投与マウスの脳、嗅球の脳組織への移行性と組織への影響を観察した結果、HE染色で検討するとrCTB経鼻投与マウスの嗅球は、組織的変化、炎症性細胞の浸潤等は全く見られなかった。一方CTの場合、上皮の剥離が著明で、糸球体構造も不規則な形態を取り、切片作製でも組織自体が固定しづらく不安定な状態であった。抗CTB抗体による免疫染色では、両者共に経鼻投与を行うと、嗅球の糸球体、僧坊細胞層にまで移行する事が示された。HSV1感染マウスへCT、CTB経鼻投与後の顔面神経麻痺の観察をすると、CT経鼻投与マウスの一部に、ウイルス投与側の目に麻痺を観察した。CTB, PBSコントロールでは観察されなかった。Nested PCRによる特異的DNA断片は、CT経鼻投与マウスの一部で測定された。以上の結果はウイルス投与マウスで観察され、ウイルス非投与群では観察されなかった事から、ヒトに経鼻投与されたワクチンに混入した大腸菌易熱性毒素による影響でベル麻痺が発症したと推測される。コレラ毒素Bサブユニット(CTB)の粘膜投与後の中枢神経系への影響の詳細な報告はまだされていない事から、脳、鼻腔等の組織切片の免疫染色法、HE染色法等により神経組織の影響を調査し、実用化への基礎的データを求めて以下の実験を行った。コレラ毒素(CT)、組換えコレラ毒素Bサブユニット(rCTB)をセボフレン麻酔下マウスへ10μg経鼻投与した。マウスは、ヘパリン加生理食塩水と4%パラホルムアルデヒドで還流固定し、脳のパラフィン包埋を作製した。脳切片を作製し抗CTB抗体による免疫染色、HE染色等を行い、神経組織への影響を顕微鏡下で観察した。また、単純ヘルペスウイルス1型感染マウスにCT、rCTBを経鼻投与し、顔面神経麻痺の発症の有無の観察、脳、顔面神経でのウイルスのPCRによる確認、免疫組織学的検討等を行った。HSVウイルス投与量と経日変化をPCRにより観察した結果、感染後2時間で顔面神経へ到達している事が観察された。また、ウイルス量は規定量の半分で感染可能である事も示された。ウイルス投与量が明らかとなったため、HSVウイルス感染マウスを作製後、CT、rCTBを経鼻投与し、内在性HSVの挙動をPCRで観察した結果、PBS投与群、rCTB投与群では、ウイルスバンドの検出は見られなかったが、CTではHSVバンドが検出された。組織切片を観察したが、目立った影響は観察されなかった。CTによりHSVバンドが増強された結果から、経鼻投与により内在性HSVウイルスが活性化されて発現されたため、バンドが検出されたと考えられる。他の論文で報告された、CTに類似した大腸菌易熱性毒素LTとインフルエンザワクチンのヒトへの経鼻投与後のベル麻痺の発症は、今回実験で確認した事と同じ現象(LTによるHSVの活性化)が発症したためと思われた。rCTBの粘膜免疫アジュバントとしての安全性が示唆される。コレラ毒素Bサブユニット(rCTB)の粘膜投与後の中枢神経系への影響の詳細な報告はまだされていない事から、脳、鼻腔等の組織切片の免疫染色法、HE染色法等により神経組織の影響を調査した。実験としてはコレラ毒素(CT)、rCTB経鼻投与マウスの脳、嗅球の凍結切片作製とヘマトキシリンヒオジシHE染色、抗CTB抗体による免疫染色による脳組織への移行性と組織への影響、ヒトで報告された顔面神経麻痺(ベル麻痺)から推測し、ベル麻痺の原因ウイルスであると言われている単純ヘルペスウイルス1型(HSV1)感染マウスモデルの作製、HSV1感染マウスへCT、rCTB経鼻投与後の顔面神経麻痺の観察、顔面神経麻痺マウスの組織観察とNested PCR法によるHSV特異的DNA断片測定を行った。コレラ毒素(CT)、rCTB経鼻投与マウスの脳、嗅球の脳組織への移行性と組織への影響を観察した結果、HE染色で検討するとrCTB経鼻投与マウスの嗅球は、組織的変化、炎症性細胞の浸潤等は全く見られなかった。一方CTの場合、上皮の剥離が著明で、糸球体構造も不規則な形態を取り、切片作製でも組織自体が固定しづらく不安定な状態であった。抗CTB抗体による免疫染色では、両者共に経鼻投与を行うと、嗅球の糸球体、僧坊細胞層にまで移行する事が示された。HSV | KAKENHI-PROJECT-17790290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790290 |
コレラ毒素Bサブユニットの粘膜アジュバントのメカニズムと組織安全性に関する研究 | 1感染マウスへCT、CTB経鼻投与後の顔面神経麻痺の観察をすると、CT経鼻投与マウスの一部に、ウイルス投与側の目に麻痺を観察した。CTB, PBSコントロールでは観察されなかった。Nested PCRによる特異的DNA断片は、CT経鼻投与マウスの一部で測定された。以上の結果はウイルス投与マウスで観察され、ウイルス非投与群では観察されなかった事から、ヒトに経鼻投与されたワクチンに混入した大腸菌易熱性毒素による影響でベル麻痺が発症したと推測される。 | KAKENHI-PROJECT-17790290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17790290 |
複雑なモデル(非線形性・非ガウス性・長期記憶性等を有するモデル)のための微分幾何的方法及び確率的シミュレーション法の研究 | マルコフ連鎖モンテカルロ法および逐次モンテカルロ法に関して研究を行った.1.来日前から行っている信号処理におけるモンテカルロ法の応用についての研究を発展させ,衛星通信および離散信号源の分離への応用について,口頭発表及び論文の投稿を行った.2.受け入れ側の研究者と協力して,モンテカルロ法の方法論についての研究を行った.ブロックサンプリング法及び各種の補助変数を用いる方法について検討と実装を行った.3.2.のうち,ブロックサンプリング法については,予備的結果を国内で行われた国際会議で発表し,その後も研究を進めている.簡単な非線形性を持つ時系列モデルについては有効性を示すことができたので,ターゲットトラッキングヘの応用を開拓中である.4.補助変数を用いる方法のうち,平滑化した分布の間をJump-Diffusion法により移動する方法は次元が高くなるとうまく機能しないことがわかったので,問題点を論理的に解析中である.雑誌・会議への投稿は別記のとおりであるが,このほかに,フランス語での啓蒙的な著述,九州工業大学,早稲田大学での講演がある.昨年11月末に来日したばかりなため,共同研究についてはまだ予備的段階にあるものが多いが,以下に活動の概略を述べる.まず,マルコフ連鎖モンテカルロ法及び逐次モンテカルロ法については,統計数理研究所で行われている輪講に参加し,ホスト側との相互理解を深めるとともに,今後の研究方向についていくつかの方向を検討した.また,もうひとつの課題である幾何学的手法についてはCurvilinear Component Analysis(CCA)と呼ばれる手法の展開と応用を研究するという方針を決め,研究討論と計算機プログラムの作成を行っている.CCAとは,主成分分析や古典的な多次元尺度法などの手法が,直線や平面など線形の構造をベースにしていたのに対し,曲線,曲面など,一般の多様体の構造をデータから検出すように拡張された手法のひとつである.CCAの具体的な応用として,(1)音声認識における音素の分析に関する応用,(2)複雑・大規模な物理系シミュレーションのデータの解析,をテーマとして設定し,研究を進めている.また,埋め込み次元の推定に関する考察も行っており,結果を国際会議で発表する予定である.マルコフ連鎖モンテカルロ法および逐次モンテカルロ法に関して研究を行った.1.来日前から行っている信号処理におけるモンテカルロ法の応用についての研究を発展させ,衛星通信および離散信号源の分離への応用について,口頭発表及び論文の投稿を行った.2.受け入れ側の研究者と協力して,モンテカルロ法の方法論についての研究を行った.ブロックサンプリング法及び各種の補助変数を用いる方法について検討と実装を行った.3.2.のうち,ブロックサンプリング法については,予備的結果を国内で行われた国際会議で発表し,その後も研究を進めている.簡単な非線形性を持つ時系列モデルについては有効性を示すことができたので,ターゲットトラッキングヘの応用を開拓中である.4.補助変数を用いる方法のうち,平滑化した分布の間をJump-Diffusion法により移動する方法は次元が高くなるとうまく機能しないことがわかったので,問題点を論理的に解析中である.雑誌・会議への投稿は別記のとおりであるが,このほかに,フランス語での啓蒙的な著述,九州工業大学,早稲田大学での講演がある. | KAKENHI-PROJECT-02F00747 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-02F00747 |
欧州共通庇護制度における難民認定申請者の法的保護の研究 | 本研究の背景は難民認定申請者の退去強制につき、日本のみならず世界各国で様々な問題が生起していることにある。とりわけ、アラブの春以降の人の大量移動について欧州および国際機関がどのように対応してきたかに焦点を充てた。そのため、本研究では欧州を中心として、難民認定申請者に寛容と考えられるカナダおよびニュージーランドと日本の比較を通し、難民認定申請者の法的保護を明らかにした。また、現在、日本(東京地裁および名古屋地裁)において訴訟中である難民認定申請者の「裁判を受ける権利」(日本国憲法第31条および第32条、自由権規約第14条、難民条約第16条)について注目し訴訟代理人との情報交換を行った。2018年8-9月はフランスのストラスブールにあるストラスブール大学の図書館および欧州人権裁判所の図書館で文献調査を行い、欧州評議会内の欧州差別・不寛容撤廃委員会事務局(ECRI)の研究者・実務家と意見交換を行った。また、2017年12月7日に欧州評議会で採択された「人種差別と戦うための平等機関:国家レベルの不寛容に関する一般的政策勧告第18号」を和訳し、ECRIウェブサイトに和訳を掲載する予定である。さらに、日本でベトナムからの難民認定申請者が増えていることからベトナムで調査を行った。国内外の学会で以下を実施した。2018年5月カナダのオタワのカールトン大学で実施されたカナダ強制移住・難民学会にて報告、6月リスボンで実施された移民学会で報告、11月ニュージーランドのウェリントンで開催された国際難民移民法裁判官協会アジア・パシフィック支部大会に参加し情報交換を行った。論文「国際機構は『人の移動』にどのように取り組んできたのか」『グローバル・ガバナンス』第5号、2019年および「難民の国際的保護政策」『グローバリズムと公共政策の責任』第3巻、大阪大学出版会、2019年刊行予定を執筆した。本研究の目的は、欧州共通庇護制度の成功及び課題を明らかにすることである。欧州評議会は長期間、欧州連合と住み分けていた。しかし、グローバル化の中でヒトの移動に伴う人権の保護を無視できなくなり、平成16年の欧州連合資格指令以降、難民・外国人の権利の観点から欧州連合と欧州評議会の調整が積極的に実施され、欧州全体として、人権保護が強化されるかのように見えていた。しかし、平成23年以降、欧州への大量の人の移動は、人数の多さだけではなく、テロリズムに絡む国家安全保障の観点から、欧州共通庇護制度を改正し、シェンゲン協定を形骸化させている。その背景として、移民・難民に対して世論が厳しくなっている現状があり、その象徴的な出来事がイギリスのEU離脱であり、欧州各国での選挙に外国人排斥を掲げる極右政党が一定数の投票を得ることである。こうした動きに欧州委員会は無関係でいられず、まさに激動の時代を迎えているといえよう。当初、フランスのストラスブールに位置する欧州評議会の欧州差別・不寛容撤廃委員会事務局(ECRI)に拠点を置きながら調査を予定していたが、平成28年2月に新設された欧州評議会の移民・難民に関する事務総長特別代表部に調査滞在し、とりわけ、ハンガリー及びセルビアの移民・難民封鎖の現状について調査報告を行った。ハンガリーの状況は非常に深刻であり、平成28年10月2日の欧州連合が決定した移民受入れ割り当てを実行するか否かを問う住民投票に向け、広範囲にわたる移民排斥キャンペーンが進行中であった。また、ハンガリーは、国境警備に関する新法を公布し封鎖を合法化し、新たな壁を築くと共に、国境警備警察を増員する等として移民・難民の排斥の傾向が顕著であった。また、欧州を揺るがせているシリア難民の現状調査をするために、シリアには入国できないので、隣国のヨルダンで聞き取り調査を実施した。平成28年5月、カナダ強制移住・難民学会にて報告し、国際難民法裁判官協会の各国裁判官と難民法の動向について意見交換を行った。7月、韓国司法研修所で開催された国際難民法裁判官協会の初アジア・パシフィック支部会議にて難民法ワークショップに参加すると共に、韓国の裁判官や弁護士と難民法について意見交換を行った。また、人の大量移動における国際的保護義務のセッションでコメンテーターをつとめた。本研究の目的は日本における難民の保護に資することであるので、日本の弁護士とも積極的な情報交換を行っている。財団法人司法協会助成を得て、平成28年7月、国際強制移住・難民学会にて報告した。9月1日ー9月27日、フランス・ストラスブール及びロンドンを拠点に欧州共通庇護制度に関する研究調査を行った。前半は、平成28年2月に新設された欧州評議会の移民・難民に関する事務総長特別代表部に調査滞在した。後半はロンドンで開催された国際難民法裁判官協会欧州支部及び欧州行政法裁判官協会が共同主催した移民・難民法ワークショップに参加し、欧州連合司法裁判所及び欧州人権裁判所の最近の判例動向を欧州の難民法裁判官と、欧州連合加盟国の移民法廷・行政裁判所に属する難民法裁判官が直面している難民に厳しい政府の政策と法的保護について議論した。11月、一橋大学で開催された日本EU学会「自由・安全・正義の領域ー難民・テロ」に参加し、情報交換を行った。また、平成27年夏に、欧州評議会の欧州差別・不寛容撤廃委員会事務局(ECRI)に調査滞在していた際に準備中であった「非正規移民の差別に関する一般的政策勧告第16号」が平成28年3月16日に採択されたため、その起草担当者と相談し、大学院生ボランティアと共に和訳し、ECRIウェブサイトに和訳を掲載する準備を進めているところである。 | KAKENHI-PROJECT-16K03290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03290 |
欧州共通庇護制度における難民認定申請者の法的保護の研究 | 本研究の背景は、難民として認められなかった外国人の退去強制の送還先につき様々な問題が生起していることにある。本研究では、欧州人権裁判所、欧州連合司法裁判所等の事例の比較を通し、外国人の退去強制に関する送還禁止の基準を明らかにすることが目的である。具体的には、日本において、難民認定申請者の裁判を受ける権利、すなわち、日本国憲法第31条および第32条、自由権規約第14条、難民条約第16条に基づく日本初の訴訟が名古屋地方裁判所で進行中であり動向をおっている。2017年8-9月はフランスのストラスブールにある欧州評議会内の欧州差別・不寛容撤廃委員会事務局(ECRI)で調査および研究者・実務家と意見交換を行うと同時に、2016年3月16日採択「非正規移民の差別に関する一般的政策勧告第16号」を和訳し、ECRIウェブサイトに和訳を掲載した。日本国内および海外の学会で以下の研究報告および講演を実施した。2017年5月名古屋大学グローバルガバナンス学会にて報告、5月カナダのヴィクトリア大学で実施されたカナダ強制移住・難民学会にて報告、7月2日世界難民の日関西集会にて基調講演、7月22日とよなか地域創生塾にて講演、8月摂南大学にて講演、8月スイス・フリブール大学夏季講習にて講義、11月福岡大学日本EU学会にて報告、11月ギリシャ国際難民法裁判官協会世界大会参加、12月国際交流基金の外交官・公務員研修にて講義、12月スイス・フリブール大学にて報告を行った。また、新聞社の難民に関する取材に対応すると共に、難民裁判の判例評釈を執筆し、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドがどのように難民性の「現実的なおそれ」基準を発展させてきたかにつき、上3国の難民裁判官の寄稿文を大学院生等と共に翻訳し解説し論文とした。「難民の自立における公共倫理とイノベーション」と題して一章を執筆した。欧州差別・不寛容撤廃委員会事務局(ECRI)で調査滞在すると共に、「非正規移民の差別に関する一般的政策勧告第16号」が、欧州評議会で2016年3月16日に採択されたため、その起草案担当者と相談し、大阪大学の大学院生ボランティアと共に和訳を行い、研究代表者が監訳した後、ECRIウェブサイトに和訳を掲載した。2017年5月名古屋大学グローバルガバナンス学会にて報告、5月カナダのヴィクトリア大学で実施されたカナダ強制移住・難民学会にて報告、7月2日世界難民の日関西集会にて基調講演、7月22日とよなか地域創生塾にて講演、8月摂南大学にて講演、8月スイス・フリブール大学夏季講習にて講義、11月福岡大学日本EU学会にて報告、11月ギリシャ国際難民法裁判官協会世界大会参加、12月国際交流基金の外交官・公務員研修にて講義、12月スイス・フリブール大学にて報告を行った。メディアの取材は、2017年6月14日朝日新聞朝刊28頁大阪版「カナダ発民間主導の難民支援」、2017年7月28日毎日新聞朝刊東京版「難民問題欧州への渡航、トルコが規制」2017年8月9日THE BIG ISSUE ONLINE「市民が難民を受け入れる「プライベート・スポンサーシップ」きっかけは3歳のシリア難民男児の溺死ニュース」に対応した。 | KAKENHI-PROJECT-16K03290 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03290 |
マイクロデンティストリー時代のニーズにマッチした接着性修復材料の開発 | 近年,日常歯科臨床で広く使用されるヘッドライトが修復用コンポジットレジンの硬化に与える影響を調べるため,各種修復用コンポジットレジンに市販ヘッドライトを曝露し,その硬化深さを測定した.その結果,1光強度が大きい製品で,より大きい硬化深さを示した.2象牙質色に比べ,エナメル色でより大きい硬化深さを示した.3象牙質色では,各製品間に大きな差はみられなかった.4エナメル色では,透明度の高い製品ほど硬化深さが大きかった.また,5これらの光の照射下でも,オレンジ色のフィルターを介することで,硬化を防止できた.本研究では,1市販マイクロスコープ,拡大鏡用光源の波長特性の分析,2光源の曝露による口腔内環境の変化,3光源の曝露による市販光重合型修復材料の硬化度測定および重合率の測定,4光源に干渉しない光重合触媒の探索とこれを用いたレジン系材料の試作,およびその臨床応用に向けた材料の理工学的検討を行うことを研究計画として掲げ,特に平成25年度については1および2について検討を行っていく予定とした.本研究で当初予定していたこれらの検討に先立ち,これらの拡大鏡用光源の光強度や波長特性を測定するにあたり,分光放射照度計を用いることを予定した.本学施設には本装置を備えておらず,近隣施設からの機器レンタルにて対応する予定であったが,当初の予定に比べて研究環境の整備に時間を要した.そのためまずは歯科臨床において広く使用される5種類の市販チェアサイド光重合器用ラジオメーターの精密度を分光放射照度計と比較し,ラジオメーターでも本研究に代用できるか否かについて検討した.その結果,市販ラジオメーターで計測したパワー密度と分光放射照度計を用いたパワー密度との間には誤差があり,またその誤差はラジオメーター間でも異なること,各ラジオメーターには感知しやすい波長域とそうでない波長域とがあることが示された(Kameyama A, et al. Effect of emitted wavelength and light guide type on irradiancediscrepancies in hand-held dental curingradiometers. The Scientific World Journal 2013; 647961).なお1市販マイクロスコープ,拡大鏡用光源の波長特性については,すでにいくつかのデータ分析までを行っている.平成25年度から開始した本研究について,研究機器の使用不可能な状況などが生じたため,当初予定していた研究計画が遅延した.そのため,平成25年度に遂行する予定であった「1市販歯科用マイクロスコープに用いられる各種光源の波長域および光強度」「2市販歯科用拡大鏡に用いられる各種光源の波長域および光強度」3市販光重合型修復材料の,上記光源照射による硬化の程度,重合率」については平成26年度にその実験を開始した.現在においてもこれらの実験は継続中であるが,現在までの研究成果から,歯科用マイクロスコープや歯科用拡大鏡に用いられる光源の波長域は各々の機器によって異なっていた.特に,ハロゲン系の光源を用いた製品とLED系の光源を用いた製品とでは,その波長域が全く異なること,同じ白色LED系の光源でも,その波長は個々の製品で異なることが研究成果として得られた.このことから,光源によって歯科用光重合型レジン系材料の重合挙動が異なることが示唆された.また,市販の光重合型レジン系材料では,その製品によって用いられる重合促進剤が異なるため,各製品によって光源の波長反応域も異なる.したがって,光源の違いが各製品にあたえる重合度に影響することも示唆された.当初の予定では,平成25年度に検討する各種マイクロスコープや歯科用拡大鏡に用いられる光源の波長域をもとに,光源に干渉しない重合用触媒を用いたレジン系材料の試作を行う予定であった.これまでに得られた結果から,現在材料の試作にあたっての準備を行っている.日常臨床で,歯科用双眼拡大鏡は広く使用されてるようになってきた.特に,近年ではこれら双眼拡大鏡にLEDやハロゲンを光源としたライトを併用して臨床応用されている.本研究では,双眼拡大鏡と併用されている光源について,分光放射照度計を用いてその光特性を調べた.その結果,各製品によって光強度が異なるのみでなく,波長域やその波長分布が異なっていた次に,これらの光源を用いて臨床でコンポジットレジン修復を行うことを想定し,コンポジットレジンに各種双眼拡大鏡用ライトを曝露し,重合深度を測定した.その結果,1光強度が大きい製品で,より大きい重合深度を示した.2デンティンシェードに比べ,エナメルシェードでより大きい重合深度を示した.3デンティンシェード(A3相当)では,各製品間で重合深度に差を認めなかった.4エナメルシェードでは,製品間で重合深度に差が認められ,透明度の高い製品ほど重合深度が大きかった.5オレンジ色のフィルターを用いると,強い光強度を用いてもコンポジットレジンは重合しなかった.コンポジットレジンを用いて審美的,低侵襲的に修復を行うにあたり,その確実な接着性を求めることは長期耐久性の向上を目指すうえで重要である.そこでマイクロデンティストリーの臨床応用の一環として,セルフエッチング型の接着システムを用いた場合のコンポジットレジン修復を行った100症例について,セルフエッチングプライマー応用時の窩洞内での挙動をマイクロスコープ下で観察し,エアブローでの溶媒除去に要する時間の測定を行った.その結果,溶媒除去に要した時間は平均40.8秒であり,最大で90秒の溶媒除去時間を必要とした.また,溶媒除去は上顎前歯の症例より,下顎大臼歯の症例でより多くの時間を必要とすることが明らかとなった. | KAKENHI-PROJECT-25462966 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462966 |
マイクロデンティストリー時代のニーズにマッチした接着性修復材料の開発 | 近年,日常歯科臨床で広く使用されるヘッドライトが修復用コンポジットレジンの硬化に与える影響を調べるため,各種修復用コンポジットレジンに市販ヘッドライトを曝露し,その硬化深さを測定した.その結果,1光強度が大きい製品で,より大きい硬化深さを示した.2象牙質色に比べ,エナメル色でより大きい硬化深さを示した.3象牙質色では,各製品間に大きな差はみられなかった.4エナメル色では,透明度の高い製品ほど硬化深さが大きかった.また,5これらの光の照射下でも,オレンジ色のフィルターを介することで,硬化を防止できた.当初予定していた研究機器の使用が困難な時期があったため,平成25年度に予定していた研究計画が大幅に遅延した.その影響により,平成26年度に遂行予定であった研究が平成27年度にずれ込むこととなった.保存修復学本年度は,これまでに得られた研究成果をもとに,歯科用マイクロスコープや歯科用の双眼拡大鏡に併用される光源を用いても干渉しない重合用触媒を用いてレジン系材料の試作を行う予定である.また,試作した材料の臨床応用に向けた理工学的性質を検討していくことを予定している..当初平成25年度に予定していた拡大鏡用光源の光強度や波長特性を測定するにあたり,分光放射照度計を用いることを予定していた.本学施設には本装置を備えておらず,近隣施設からの機器レンタルにて対応する予定であったものの,使用環境が整うまでに時間を要し,研究開始が当初の予定に比べて大幅に遅れた.そのため,当初予定していなかった付随研究を優先して行うこととし,その成果を挙げることを最優先項目とした.研究計画の遅れによる前年度未使用額の発生今後は,平成25年度に行う予定であった研究のうち,いまだ検討が終了していないものについて検討を行うとともに,平成26年度に予定している材料開発についても同時に着手していく予定である.平成26年度に予定していた学会旅費などを平成27年度に使用することを予定している.平成25年度については,研究環境を整えるにあたり,機器の購入や消耗品の整備などを行った.その一方で,研究内容の一部修正に伴い,学会等旅費の必要がなく,予定していた使用額を下回った.当初,平成25年度に予定していた研究内容を平成26年度に一部盛り込むため,当初平成25年度に使用予定であった物品などを平成26年度に購入することとする. | KAKENHI-PROJECT-25462966 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462966 |
文化と価値と行動:新たな研究方法の適用と拡張 | 本研究の第一段階として文化と価値および行動の関係を明らかにした。SMGC及び従来の測定法により測定された文化と,自己の文化への同一化,および個人の価値システムとの関係を明らかにするための研究を行った。この目的のため,平成3年度に開発されたSMGC及び従来の文化測定法を札幌と長崎の学生に適用すると同時に,価値の普遍的心理構造を測定するため価値尺度を用いて,調査対象者の価値システムを測定した。また同時に,文化と価値が行動に及ぼす影響を調べるため,意志決定行動のいくつかの側面を測定するための尺度を実施した。本研究の第二段階として意志決定様式の文化差を説明する原理を主観的測定法を用いて測定された文化内容から引き出せるかどうか検討を行った。このため上の調査で明らかにされた正常人の文化概念とうつ病患者の持つ文化概念を比較検討し分析の手がかりを得ることをめざした。具体的には長崎大学医学部付属病院の入院および外来の精神病患者とその家族を対象として,彼らの価値体系及び精神病に対する知覚を測定した。この研究にあたっては,伝統的コミュニティーの間で異なった価値体系が存在しており,かつ精神病患者の症状に特徴の多く見られる五島列島の患者が中心となった。同時に,それぞれのコミュニティーの文化の特徴の測定を行い,文化と精神障害の関係を明らかにした。本研究の第一段階として文化と価値および行動の関係を明らかにした。SMGC及び従来の測定法により測定された文化と,自己の文化への同一化,および個人の価値システムとの関係を明らかにするための研究を行った。この目的のため,平成3年度に開発されたSMGC及び従来の文化測定法を札幌と長崎の学生に適用すると同時に,価値の普遍的心理構造を測定するため価値尺度を用いて,調査対象者の価値システムを測定した。また同時に,文化と価値が行動に及ぼす影響を調べるため,意志決定行動のいくつかの側面を測定するための尺度を実施した。本研究の第二段階として意志決定様式の文化差を説明する原理を主観的測定法を用いて測定された文化内容から引き出せるかどうか検討を行った。このため上の調査で明らかにされた正常人の文化概念とうつ病患者の持つ文化概念を比較検討し分析の手がかりを得ることをめざした。具体的には長崎大学医学部付属病院の入院および外来の精神病患者とその家族を対象として,彼らの価値体系及び精神病に対する知覚を測定した。この研究にあたっては,伝統的コミュニティーの間で異なった価値体系が存在しており,かつ精神病患者の症状に特徴の多く見られる五島列島の患者が中心となった。同時に,それぞれのコミュニティーの文化の特徴の測定を行い,文化と精神障害の関係を明らかにした。 | KAKENHI-PROJECT-04610034 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-04610034 |
血管SP細胞の病的リモデリングへの関与とその生理的機能の解明 | I研究の目的・血管壁内に存在する組織幹細胞を同定する。色素排出法を用いて、Side Population(SP)細胞と呼ばれる幹細胞群を単離する。血管壁由来SP細胞を特徴づけると同時に、生理的ならびに病的リモデリングにおけるその機能的意義を検討する。II主要な結果・血管SP細胞の細胞周期を調べた。98.9±0.3%のSP細胞は、G0/G1相にあった。8週令においては、野生型マウスでも、ApoE欠損マウスの血管においても類似した数のSP細胞が認められた。野生型マウスでは、加齢に伴い血管SP細胞の数は増加した。ApoE欠損マウスの動脈硬化性血管では、加齢に伴う増加はより顕著であった。・動脈硬化病変においてSP細胞が増加する機序におけるABCG2の役割を調べた。PDGF-BB(10ng/ml)添加により血管SP細胞の増殖能は2-3倍増加した。Fumitremorgin Cにより、ABCG2トランスポーター機能を抑制したところ、PDGF-BBによる増殖促進作用は消失した。また、ApoE欠損マウスの動脈硬化性病変を免疫染色で調べたところ、ABCG2陽性細胞の数が増加していた。・血管傷害後の狭窄病変形成におけるABCG2の役割を明らかにするため、野生型マウスならびにABCG2欠損マウスを用いて、頚動脈ならびに大腿動脈にカフを留置することで内膜形成を誘導した。4週後に形成された病変を解析したところ、頚動脈においても、大腿動脈においても、ABCG2欠損マウスでは内膜増殖が有意に抑制されていた。IIIまとめ・血管SP細胞の数は、加齢ならびに動脈硬化において増加する。この所見に一致して、ABCG2欠損マウスでは、傷害に反応した血管病変形成が抑制されていた。以上より、SP細胞の増殖能はABCG2トランスポーターによって制御されており、血管病変の病態生理に関与していると考えられた。I研究の目的・血管壁内に存在する組織幹細胞を同定する。色素排出法を用いて、Side Population (SP)細胞と呼ばれる幹細胞群を単離する。血管壁由来SP細胞を特徴づけると同時に、生理的ならびに病的リモデリングにおけるその機能的意義を検討する。II主要な結果・血管SP細胞の細胞周期を調べた。98.9±0.3%のSP細胞は、G0/G1相にあった。8週令においては、野生型マウスでも、ApoE欠損マウスの血管においても類似した数のSP細胞が認められた。野生型マウスでは、加齢に伴い血管SP細胞の数は増加した。ApoE欠損マウスの動脈硬化性血管では、加齢に伴う増加はより顕著であった。・動脈硬化病変においてSP細胞が増加する機序におけるABCG2の役割を調べた。PDGF-BB(10ng/ml)添加により血管SP細胞の増殖能は2-3倍増加した。Fumitremorgin Cにより、ABCG2トランスポーター機能を抑制したところ、PDGF-BBによる増殖促進作用は消失した。また、ApoE欠損マウスの動脈硬化性病変を免疫染色で調べたところ、ABCG2陽性細胞の数が増加していた。・血管傷害後の狭窄病変形成におけるABCG2の役割を明らかにするため、野生型マウスならびにABCG2欠損マウスを用いて、頚動脈ならびに大腿動脈にカブを留置することで内膜形成を誘導した。4週後に形成された病変を解析したところ、頚動脈においても、大腿動脈においても、ABCG2欠損マウスでは内膜増殖が有意に抑制されていた。IIIまとめ・血管SP細胞の数は、加齢ならびに動脈硬化において増加する。この所見に一致して、ABCG2欠陥マウスでは、傷害に反応した血管病変形成が抑制されていた。以上により、SP細胞の増殖能はABCG2トランスポーターによって抑制されており、血管病変の病態生理に関与していると考えられた。I研究の目的・血管壁内に存在する組織幹細胞を同定する。色素排出法を用いて、Side Population(SP)細胞と呼ばれる幹細胞群を単離する。血管壁由来SP細胞を特徴づけると同時に、生理的ならびに病的リモデリングにおけるその機能的意義を検討する。II主要な結果・血管SP細胞の細胞周期を調べた。98.9±0.3%のSP細胞は、G0/G1相にあった。8週令においては、野生型マウスでも、ApoE欠損マウスの血管においても類似した数のSP細胞が認められた。野生型マウスでは、加齢に伴い血管SP細胞の数は増加した。ApoE欠損マウスの動脈硬化性血管では、加齢に伴う増加はより顕著であった。・動脈硬化病変においてSP細胞が増加する機序におけるABCG2の役割を調べた。PDGF-BB(10ng/ml)添加により血管SP細胞の増殖能は2-3倍増加した。Fumitremorgin Cにより、ABCG2トランスポーター機能を抑制したところ、PDGF-BBによる増殖促進作用は消失した。また、ApoE欠損マウスの動脈硬化性病変を免疫染色で調べたところ、ABCG2陽性細胞の数が増加していた。・血管傷害後の狭窄病変形成におけるABCG2の役割を明らかにするため、野生型マウスならびにABCG2欠損マウスを用いて、頚動脈ならびに大腿動脈にカフを留置することで内膜形成を誘導した。4週後に形成された病変を解析したところ、頚動脈においても、大腿動脈においても、ABCG2欠損マウスでは内膜増殖が有意に抑制されていた。IIIまとめ・血管SP細胞の数は、加齢ならびに動脈硬化において増加する。 | KAKENHI-PROJECT-05F05799 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05799 |
血管SP細胞の病的リモデリングへの関与とその生理的機能の解明 | この所見に一致して、ABCG2欠損マウスでは、傷害に反応した血管病変形成が抑制されていた。以上より、SP細胞の増殖能はABCG2トランスポーターによって制御されており、血管病変の病態生理に関与していると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-05F05799 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05F05799 |
Resummation of nonglobal logarithms in Higgs production | QCDの輻射補正には赤外発散に由来する大きな対数が出現し、ナイーブな結合定数による展開は多くの場合破綻する。それらの対数は結合定数のすべての次数で再足し上げ(resummation)することが必要である。本研究ではHemisphere jet massと呼ばれる観測量に対するnon-global logのresummationを実行した。Nonglobal logは観測領域に制限をかけた場合に出現するソフトグルオンの放出に由来する対数である。通常カラーの数が大きい近似が用いられるが、我々は有限のカラー数の場合に世界で初めてこの観測量に対するresummationを成功させた。研究目的で述べたように、LHCでのjet veto入りのヒッグス生成断面積に現れるNonglobal logarithmの計算に向けて、オランダでポスドクをしている植田氏、京大大学院生の萩原氏と八田の3人で共同研究を行った。まずは、植田氏が以前の八田との論文で開発したランジュバン方程式の数値計算コードを萩原氏に修得させた。そして、ヒッグス計算にとりかかる前段階として、hemisphere jet mass distributionと呼ばれる電子陽電子消滅での観測量に対するNonglobal logの寄与の計算に着手した。これによって計算コードの汎用性をテストすることができ、結果はそれ自体独立な論文に値すると考えている。hemisphere jet mass distributionはこれまでカラーの数が無限大の場合にresummationが行われており、カラーの数が有限の場合にはfixed orderの計算しかできていなかった。今回我々が初めてカラーの数が有限の場合にall-orderでresummationを行うことになる。数値計算は、発散するスダコフ因子をNonglobal logの寄与から分離するという予想外の困難にみまわれたが、発散の正則化とランジュバン発展方程式の改良によって問題を克服することができた。またヒッグスの計算に関しては、手計算でできる部分を実行し、グルオン融合とベクトルボソン融合それぞれに関するソフトグルオン放射の振幅をウィルソンラインの積で表すことに成功した。QCDの輻射補正には赤外発散に由来する大きな対数が出現し、ナイーブな結合定数による展開は多くの場合破たんすることが知られている。それらの対数は結合定数のすべての次数で再足し上げ(resummation)をする必要がある。本研究課題はそのような対数項のうち、non-global logarithmと呼ばれるものに注目し、有限カラー数の効果を取り入れてresummationを行った。non-global logは2001年にDasugupta,Salamらによって指摘され、カラーの数が無限大の極限でresummationができることが知られていた。本研究ではHemishere jet mass distributionという電子陽電子消滅での観測量に対するnon-global logを有限カラー数で摂動の全次数で足しあげることに成功した。これはDasgupta,Salamらによる無限大のカラー数での結果以来、15年間成し遂げられなかった快挙である。得られた結果はPhysics Letters B756 (2016) 254-258に掲載されている。QCDの輻射補正には赤外発散に由来する大きな対数が出現し、ナイーブな結合定数による展開は多くの場合破綻する。それらの対数は結合定数のすべての次数で再足し上げ(resummation)することが必要である。本研究ではHemisphere jet massと呼ばれる観測量に対するnon-global logのresummationを実行した。Nonglobal logは観測領域に制限をかけた場合に出現するソフトグルオンの放出に由来する対数である。通常カラーの数が大きい近似が用いられるが、我々は有限のカラー数の場合に世界で初めてこの観測量に対するresummationを成功させた。当初予定していたヒッグス過程の計算とは別に、これまでの手法の応用としてhemisphere jet mass distributionを計算するという新たな研究テーマを見つけることができた。また、この研究は新しく指導することになった学生の教育にも役に立っている。高エネルギー量子色力学現在、hemisphere jet massに関する数値計算を進めており、独立した論文として発表することを目指している。それと並行してヒッグス+jet veto断面積の数値計算パートをグルオン融合とベクトルボソン融合の場合にそれぞれ遂行し、有限カラー数でのveto断面積を計算する。また、ランジュバン方程式における揺らぎの効果と平均場近似の破れを定量的に議論する。国内研究会参加のための旅費として使用することを計画していたが、残高が不足していたので別予算に切り替えたため。研究会における成果発表と、オランダから植田氏を招へいするための旅費、滞在費に使用する。 | KAKENHI-PROJECT-26800135 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26800135 |
システムバイオロジーを応用した次世代ワクチン安全性評価法の開発 | 我々は,インフルエンザワクチン接種後の肺組織の網羅的遺伝子発現解析によって,ワクチンの安全性評価に資するバイオマーカー群(BMs)を同定し,BMsを用いた安全性評価法の開発とその作用機序の解明を行なってきた。そこでインフルエンザワクチン以外で感染症予防に重要なワクチンを用い,接種後の網羅的遺伝子発現解析と生体反応の変化を詳細に解析して,ワクチンおよびアジュバントに共通して安全性評価が可能なユニバーサルバイオマーカー(UBMs)の同定を試みる。UBMsを用いたワクチンの次世代安全性試験法を開発し,UBMsの毒性発現における分子基盤について解析する。我々は,インフルエンザワクチン接種後の肺組織の網羅的遺伝子発現解析によって,ワクチンの安全性評価に資するバイオマーカー群(BMs)を同定し,BMsを用いた安全性評価法の開発とその作用機序の解明を行なってきた。そこでインフルエンザワクチン以外で感染症予防に重要なワクチンを用い,接種後の網羅的遺伝子発現解析と生体反応の変化を詳細に解析して,ワクチンおよびアジュバントに共通して安全性評価が可能なユニバーサルバイオマーカー(UBMs)の同定を試みる。UBMsを用いたワクチンの次世代安全性試験法を開発し,UBMsの毒性発現における分子基盤について解析する。 | KAKENHI-PROJECT-19K12873 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K12873 |
可換環における環の拡大とイデアルの研究 | 研究代表者を中心にして,学問における5名の研究分担者,6名の研究協力者が課題名の研究を行った結果,今年度において次に述べる研究実績(学術論文13編)を得た。1.吉田は主に可換環上に一個の代数的な元をつけ加える事によって得られる拡大環を中心に研究し,その拡大が整拡大となるための条件,平坦となるための条件,不分岐拡大となるための条件を,与えられた元の代数的関係式から導き出した。その結果これらの条件の障害イデアルを求める事が出来,環の拡大の構造定理を導き出した。2.永田は整数の中における特異な数列,フィボナッチ数列の一般化を研究し,素数に関する興味ある結果につなげた。3.橋爪は無限グラフの構造とスペクトルに付いて研究した。これは環の彩色数における隣接行列の研究に役立った。4.中岡は環の拡大を幾何学的にとらえ,不動点定理との関連を研究した。5.春木はコ-シ-・リーマンの方程式を一般化したある函数方程式の表現を得た。6.村上は充分大きな拡散係数を持つある拡散的積分微分方程式に対して,解の漸近挙動を調べた。又,概周期系に対し,概周期解の存在とそれの大域的漸近安定性とを示した。7.吉沢は微分方程式論における重要課題のひとつである解の漸近的性質に付いて,拡散環を持たない積分微分方程式との関連を調べる事により,拡散項を持つ積分微分方程式の解の漸近的行動を考察し,拡散係数が大きい場合,拡散項を持たない場合に対するある種の結果が拡散項を持つ場合にも拡張される事を示した。8.島田はSteenrcd代数上の加群に対する代数的解を構成した。9.神谷はユニタリ群U(l,n:c)の複散部分群の元の性質および基本多面体の研究のために必要なbisectrsの研究を行った。研究代表者を中心にして,学問における5名の研究分担者,6名の研究協力者が課題名の研究を行った結果,今年度において次に述べる研究実績(学術論文13編)を得た。1.吉田は主に可換環上に一個の代数的な元をつけ加える事によって得られる拡大環を中心に研究し,その拡大が整拡大となるための条件,平坦となるための条件,不分岐拡大となるための条件を,与えられた元の代数的関係式から導き出した。その結果これらの条件の障害イデアルを求める事が出来,環の拡大の構造定理を導き出した。2.永田は整数の中における特異な数列,フィボナッチ数列の一般化を研究し,素数に関する興味ある結果につなげた。3.橋爪は無限グラフの構造とスペクトルに付いて研究した。これは環の彩色数における隣接行列の研究に役立った。4.中岡は環の拡大を幾何学的にとらえ,不動点定理との関連を研究した。5.春木はコ-シ-・リーマンの方程式を一般化したある函数方程式の表現を得た。6.村上は充分大きな拡散係数を持つある拡散的積分微分方程式に対して,解の漸近挙動を調べた。又,概周期系に対し,概周期解の存在とそれの大域的漸近安定性とを示した。7.吉沢は微分方程式論における重要課題のひとつである解の漸近的性質に付いて,拡散環を持たない積分微分方程式との関連を調べる事により,拡散項を持つ積分微分方程式の解の漸近的行動を考察し,拡散係数が大きい場合,拡散項を持たない場合に対するある種の結果が拡散項を持つ場合にも拡張される事を示した。8.島田はSteenrcd代数上の加群に対する代数的解を構成した。9.神谷はユニタリ群U(l,n:c)の複散部分群の元の性質および基本多面体の研究のために必要なbisectrsの研究を行った。 | KAKENHI-PROJECT-06640094 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06640094 |
共同性の再構築に関する思想研究 | 本研究に関して、以下の2種類の成果をあげた。(1)新しい脱近代の世界観の意味とそれへのパラダイム転換の構造について、哲学、文学、宗教など根源的で学際的な研究によって解明した。(2)新しい脱近代的共同性の回復と再構築について、具体的に地域やことばの役割のみならず、石牟礼道子や高浜虚子のような脱近代の思想を通して研究した。さらに、脱近代的共同性の再構築のためには例えば正岡子規の思想に現れたような「近代性」が不可欠であることを示した。本研究に関して、以下の2種類の成果をあげた。(1)新しい脱近代の世界観の意味とそれへのパラダイム転換の構造について、哲学、文学、宗教など根源的で学際的な研究によって解明した。(2)新しい脱近代的共同性の回復と再構築について、具体的に地域やことばの役割のみならず、石牟礼道子や高浜虚子のような脱近代の思想を通して研究した。さらに、脱近代的共同性の再構築のためには例えば正岡子規の思想に現れたような「近代性」が不可欠であることを示した。21年度は「脱近代の思想と新しい価値観の創出」を主題に、以下の3つの研究を行った。1.「石牟礼道子の近代批判と新しい価値」の研究では、平成21年5月30日、くまもと県民交流館で一般公開で、シンポジウム「石牟礼道子-21世紀への応答」を開催。海外からリヴィア・モネ教授(トロント大学)、国内からブルース・アレン教授(清泉女子大)ら6人の報告者を招き、岩岡は司会と報告を行い、グローバルな視点から石牟礼の脱近代思想について研究交流し、その内容は熊日新聞でも大きく報じられた。2.「反近代の思想史と現代」の研究では、日本思想における反近代思想と共同性の回復について考察し、査読論文「共同性の再構築-高濱虚子の共同性思想」(『法と政策をめぐる現代的変容」成文堂、平成22年3月)として出版した。3.「ことば・思想・価値と地域形成」の研究では、査読論文「ことばと地域形成-共同性の再構築に向けて」(「熊本法学」119号、平成22年3月)を出版するとともに、平成21年11月18日、埼玉大学の後藤和子教授他を招いて、熊本大学で文化政策研究会「これからの熊本の文化運動と文化政策-ルネッサンス運動を中心に」を開催し、文化による共同性の形成に関する研究を行い、その成果を報告書(平成22年1月)にまとめた。22年度は脱近代パラダイム転換を踏まえた「共同性の思想研究と地域形成」をテーマに、次の3種類の研究成果を得た。(1)「脱近代パラダイムの思想研究」に関して、論文1本を執筆した。拠点形成研究会での脱近代パラダイム転換に関する研究報告を基に、これまでの研究をまとめて論文「パラダイム転換の時代」を執筆したが、これは拠点研究の共著の一部として23年秋に刊行予定。(2)「脱近代思想と共同性の思想研究」に関して、著書1冊と論文1本を出版した。22年度は、これまでの虚子における脱近代世界観と共同性論の研究をまとめて、『虚子と現代』(角川書店、22年12月)を出版した。本書は近代思想史における脱近代思想としての虚子とその共同性論を再評価する研究で、23年4月末で、新聞で8本、雑誌で6本、計14本の書評や紹介を得て高く評価され、23年4月に第11回【山本健吉文学賞】(評論部門・賞金30万円)に決定した。さらに23年3月には、論文(「熊本法学」査読あり)「虚子における自由」を出して、同書の一層の展開を試みた。(3)「共同性と地域形成の研究」に関して、2つのシンポジウムを企画・開催した。22年度は、共同性と地域形成について、熊本大学学際セミナー「都市コミュニティの再生」(22年12月熊本大)を企画開催した。さらに、文化による共同性の再構築論として、日本文化経済学会会長の後藤和子・埼玉大教授を招いて第2回文化政策研究会「熊本の都市戦略と文化政策」(23年1月、熊本大)を企画開催し司会を務めた。23年度は、これまでの研究をさらに進めるとともにそのまとめを行った。1「脱近代パラダイムの思想研究」...22年度に行った拠点形成研究報告を基にこれまでの私の研究をまとめて、「脱近代パラダイム転換」を共著『将来世代学の構想』(九州大学大出版会、24年3月)の一部として発表したが、同書の学際的試みは新聞書評欄でも紹介・評価された。2「脱近代の思想と共同性の思想研究」...共同性と自我の問題について、22年12月に出版した『虚子と現代』が、23年4月に第11回山本健吉文学賞・評論部門を受賞し社会的評価を得た。また、23年3月に「虚子における『自由』」(「熊本法学」査読あり)を発表したが、これに続き23年8月には正岡子規の共同性の基礎を探る「子規における近代性の構造」(「熊本法学」査読あり)を発表した。 | KAKENHI-PROJECT-21530124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530124 |
共同性の再構築に関する思想研究 | さらに、共同性の思想的基礎について原理的に考察し、「宗教と文学」(「道標」人間学研究会、23年9月)を発表するとともに、高浜虚子を素材に「虚子文学における自力と他力」と題して、国際学会(台湾日本言語文芸学会、台南、長栄大学、23年12月)で招待講演を行って、評価された。これは、近く同学会紀要(査読あり)に掲載予定である。3「共同性と地域の研究」...23年度は、共同性と地域形成について共同研究での知見も踏まえて第7回熊本大学学際セミナー「ポスト3・11から新たな行動変容を考える」(熊本大学24年3月)を開催しシンポジウムの座長を務めその報告書(62頁)も出たが、これは今後の学際研究にとって意義深い。4本研究の総括...23年度の研究終了に伴って、以上13を科研費報告としてまとめる(24年5月提出)とともに、そのまとめの一部として、とくに子規の共同性の問題に焦点を当て『子規と現代』(ふらんす堂)というテーマで24年度熊本大学出版助成を得たので、24年10月に刊行予定である。 | KAKENHI-PROJECT-21530124 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21530124 |
胎盤性セロトニンが骨格筋脂肪代謝能に及ぼす影響の解明 | 骨格筋はエネルギー源として脂肪を利用する赤色筋線維と糖を利用する白色筋線維から構成され、赤色・白色筋線維の組成は骨格筋の代謝特性を決定づける。筋線維の分化には神経支配が重要であるが、マウスにおいては胎盤で作られるセロトニンが胎仔期のセロトニン神経発達に影響する。本研究ではセロトニン合成阻害剤をマウスの胎盤に投与し、出生後のマウスの増体量および骨格筋筋線維構成を検討したが、生後12週齢までの増体量と骨格筋の筋線維型構成に胎盤性セロトニン合成阻害の影響は見られず、胎仔期の胎盤性セロトニン暴露が骨格筋の代謝特性に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかになった。骨格筋はエネルギー源として脂肪を利用する赤色筋線維と糖を利用する白色筋線維から構成され、赤色・白色筋線維の組成は骨格筋の代謝特性を決定づける。筋線維の分化には神経支配が重要であるが、マウスにおいては胎盤で作られるセロトニンが胎仔期のセロトニン神経発達に影響する。本研究ではセロトニン合成阻害剤をマウスの胎盤に投与し、出生後のマウスの増体量および骨格筋筋線維構成を検討したが、生後12週齢までの増体量と骨格筋の筋線維型構成に胎盤性セロトニン合成阻害の影響は見られず、胎仔期の胎盤性セロトニン暴露が骨格筋の代謝特性に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかになった。本研究は、胎盤のセロトニン生合成能と胎児筋発生に着目し、胎児期の子宮内環境が成体時の脂肪およびグルコース代謝能に与える影響を明らかにすることを目的とするものである。骨格筋はエネルギー源として脂肪を利用する赤色筋線維と糖を利用する白色筋線維により構成され、赤色・白色筋線維の組成は肉質を決定する要因であるだけでなく、骨格筋の代謝特性を決定づける要因でもある。発生過程における赤色筋線維分化には神経支配と前駆細胞でのセロトニン受容体系の確立が重要であるが、胎仔期のセロトニン神経発達には胎盤由来セロトニンが影響することが近年明らかになってきた。そこで、胎仔期の胎盤由来セロトニン暴露が出生後の骨格筋筋線維組成、すなわち骨格筋の代謝特性に及ぼす影響を調べるため、胎盤でのセロトニン合成を阻害するマウスモデルの開発を試みた。平成24年度には、胎盤におけるセロトニン合成の詳細を明らかにすることを目的として妊娠13.5, 14.5, 15.5, 16.5,および17.5日齢の胎盤を採取し、PCR法により胎盤におけるセロトニン合成酵素の発現を検討した。このセロトニン合成酵素はp-クロロフェニルアラニンにより阻害されることが知られている。そこで、胎盤にp-クロロフェニルアラニンを直接投与することによりセロトニン合成を阻害する手法の確立に取り組んだ。p-クロロフェニルアラニン投与区およびコントロールとしてPBS投与区の妊娠マウスより18.5日齢の胎盤を採取し、組織切片をヘマトキシリン・エオシン染色およびサイトケラチン免疫染色し、形態を観察し、胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与が胎盤の組織形態に影響を及ぼさないことを確認した。また、p-クロロフェニルアラニン投与は出生時体重に影響しないことも確認した。骨格筋はエネルギー源として脂肪を利用する赤色筋繊維と糖を利用する白色筋繊維により構成され、赤色・白色筋線維の組成は骨格筋の代謝特性を決定づける。筋発生過程における赤色筋線維文化にはセロトニン神経支配と前駆細胞でのセロトニン受容体系の確立が重要であるが、近年、マウスの胎盤がセロトニン生合成を行い、胎盤由来セロトニンが胎仔期のセロトニン神経発達に影響することが報告された。そこで、本研究では妊娠マウスの胎盤にセロトニン合成酵素阻害剤であるp-クロロフェニルアラニンを投与し、胎盤におけるセロトニン生合成不全が胎仔の出生後の増体、骨格筋線維組成および骨格筋の好気的代謝能に及ぼす影響を検討した。セロトニン阻害区および対象区マウスから出生したマウスを自由給餌にて飼育し摂食量および増体量を12週齢まで経時的に測定した結果、増体量、摂食量ともに有意な違いは見られなかったがセロトニン阻害区で摂食量がやや少ない傾向が見られた。そこで、給餌量をセロトニン阻害区に合わせたペアフィーディングを行い増体量を測定したが、ここでも有意な違いは見られなかった。本実験では活動によるエネルギー消費を評価していないが、胎仔期の胎盤性セロトニン暴露が出生後の増体に及ぼす影響は限定的であることを示唆された。セロトニン阻害区と対象区より出生したマウスの骨格筋構成は、3週齢時および12週齢時の大腿四頭筋および腰最長筋を用いて酵素組織化学的手法および抗fast-twich myosinと抗slow-twich myosinを用いたwestern blottingにより検討したが、胎盤性セロトニン阻害による影響は見られなかった。これらの結果から、マウスにおける胎盤由来セロトニンが骨格筋筋線維型構成および代謝特性に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかになった。本研究課題の採択は平成24年9月であったが、研究代表者は平成24年12月に所属が東京大学農学部の特任助教から琉球大学農学部の准教授へと変更になった。 | KAKENHI-PROJECT-24870008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24870008 |
胎盤性セロトニンが骨格筋脂肪代謝能に及ぼす影響の解明 | このため、琉球大学農学部において本研究を継続するための環境整備に多くの時間を費やす必要があり、本研究の達成度は当初予定を満たすことはできなかったが、現在までに本研究の遂行に必要な研究設備や学内での協力体制を確立することができた。25年度が最終年度であるため、記入しない。申請者はこれまでにマウスの胎盤におけるセロトニン合成を阻害するため、妊娠マウスの胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与法の検討を行い、妊娠期間や胎盤の形態的特徴および産子数や出生時体重に異常をきたすことなくp-クロロフェニルアラニンを投与することに成功した。そこで平成25年度はp-クロロフェニルアラニン投与マウスの胎仔脳組織の組織学的検証を行いTPH阻害によるセロトニン神経発達への影響を検討し、出生仔骨格筋の筋線維型構成を酵素組織化学および免疫組織化学的手法により検討することで胎盤TPH阻害が出生時の骨格筋脂質代謝能に及ぼす影響を検討する。また、胎盤TPH阻害が出生仔におよぼす長期的な影響を検討するため、p-クロロフェニルアラニン投与区および対象区マウスより産まれたマウスの骨格筋サンプルを経時的に採取し、その筋線維型構成を検討する。同時に、より簡便な定量的解析法として、western blottingによる骨格筋の脂質代謝能の解析法も検討する。胎盤へのp-クロロフェニルアラニン投与は胎盤におけるTPH阻害を目的としたものであるが、p-クロロフェニルアラニンが母体に全身性の作用を及ぼす可能性も考慮する必要がある。そこで、胎盤特異的にTPHの発現を阻害する手法としてレンチウィルスによる胚盤胞栄養外胚葉へのTph1 shRNAの導入法を検討する。25年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-24870008 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24870008 |
LC―MS/MSにおけるイオン系列選択的観測法の開発 | LC-MS/MSスペクトルにおいて、観測されるイオンの帰属は重要である。しかし、従来法ではC末端側とN末端側イオンとの区別は経験に基づくもので理論的にその帰属を行うことはできなかった。そこでN末端あるいはC末端を修飾する際、同位体を利用し、アイソトポログとし、MS/MSスペクトルを比較、共通のイオン、一定の質量差が生じるイオンを整理することでこれらを原理に区別することに成功した。本手法は、修飾時に、アイソトポログ混合物として誘導化しても、それぞれのイオンを選択すれば、十分解析が可能であることを確認した。また、自動的にイオンを分離するソフトウェア"MSMS Search Tool"を開発した。本研究では、ESIMSMSにおけるペプチド配列解析においてペプチドのN末端、あるいはC末端に質量差を設けることで差スペクトルなどにより確実にイオンを区別する方法の開発を行った。平成24年度は、ペプチドC末端のカルボン酸をメチルエステル、重水素置換メチルエステルへ誘導することによりC末端フラッグメントイオン(y ion)を確実に識別する方法を開発した。しかし、本手法の場合、内部開裂によって生じたフラッグメントイオンの形成も多く、N側フラッグメントイオン(b ion)の検出には問題が残った。また、本手法の場合、アスパラギン酸やグルタミン酸をペプチド配列に有する場合これらのカルボン酸も反応してしまい、解析が複雑になることが問題であった。これらの結果を踏まえ、25年度はN末端のアミノ基を修飾する手法を検討した。調製したAcOBtおよびその重水素置換隊は弱酸性(pH.5.5)条件下N末端アミノ基を選択的にアシル化した。用いたペプチド鎖のC末端にはリシンを配置したが、本条件では側鎖アミノ基は変化しないことが判明した。調製したN末端修飾ペプチドについて24年度に開発したプロトコルにより解析を行ったところ、きわめて確実にN側イオン(b ion)を検出することが判明した。ESIイオン化法ではまたC末端を修飾した時と比べて内部イオンの形成も少なく、C側イオン(y ion)の解析精度が向上した。これらの解析について、これまでマニュアルでスペクトルを再構成させており、非常に時間のかかる操作が必要であったことから、本プロトコルをプログラム化した。本プログラムでは読み込んだスペクトルを瞬時に解析、N側イオン、C側イオンを区別して書き出すことができる。本プログラムについては、近日中に公開する。LC-MS/MSスペクトルにおいて、観測されるイオンの帰属は重要である。しかし、従来法ではC末端側とN末端側イオンとの区別は経験に基づくもので理論的にその帰属を行うことはできなかった。そこでN末端あるいはC末端を修飾する際、同位体を利用し、アイソトポログとし、MS/MSスペクトルを比較、共通のイオン、一定の質量差が生じるイオンを整理することでこれらを原理に区別することに成功した。本手法は、修飾時に、アイソトポログ混合物として誘導化しても、それぞれのイオンを選択すれば、十分解析が可能であることを確認した。また、自動的にイオンを分離するソフトウェア"MSMS Search Tool"を開発した。近年質量分析装置の発展は著しく、その応用の一つHPLCを組み合わせたMS/MS解析によるペプチドの配列解析は従来法に比べ、より微量サンプルによる解析を可能とした。しかし、実際にはニュートラルロスをはじめ、解析に複雑なフラッグメントシグナルの存在から、各イオンの帰属を検証する方法が無く、市販の解析ソフトウェアでは遺伝子情報などを組み合わせたインフォマティック技術の支援を利用してその精度を高めている。本研究では、ペプチドMS/MSスペクトルにおいて、これまで困難であったN末端、C末端側イオンを区別したイオン検出を容易にし、観測イオンの検証を伴ったより確実なペプチド配列帰属法の開発を展開した。ペプチドをメタノール中酸を作用させるとC末端がメチル化されるが、このとき重メタノールを用いると分子量が3大きい、アイソトポマーが生成する。これらのCID-MS/MSスペクトルを比較するとC末端側フラッグメントイオンでは質量差3が維持されるが、N末端側では同一のイオンを与える。これら二つのスペクトルについて差スペクトル、質量を3ずらした後の差スペクトルなどにより、C末端側フラッグメントイオン、N末端側イオンを区別して消去できると期待した。実際に、合成、あるいは購入した複数のペプチドについて検討したところ、予想通り目的のイオンのみの消去が可能であることが判明した。ペプチド鎖が長くなるとESI法では二価イオンの強度が増大するが、エネルギーが高いためか、小さなCIDで効率的にフラッグメント化し、より単純化されることもも判明した。重メチル化法で、予想したイオンの区別はC側フラッグメントイオンではある程度うまくいくことが判明した。しかしN側フラッグメントイオンでは、内部開裂イオンとの区別ができないことが判明、その問題解決が必要である。また、現在は差スペクトルの作成をマニュアルで行っているが、今後、プログラムを作成し、自動化を検討したい。ペプチド内部にカルボン酸を有する場合、その解析が単純ではないと予想される。今後このような場合のフラッグメントイオンパターンを解析し、一般化する。また、N末端側イオンの解析では、内部イオンとの区別が難しく解析が複雑になる傾向があったが、N末端に質量差を導入して、フラッグメントイオン解析を単純化する方法を開発したい。該当なし | KAKENHI-PROJECT-24658104 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-24658104 |
細胞周期における核構造一染色体間のダイナミックスの解析 | 出芽酵母のNps1Pはヌクレオソームのリモデリングを介して複数の遺伝子の転写調節に働くことが明らかにされたSWI/SNF複合体の主要サブユニットであるSnf2pと相同性を持つ分子量約160KのG2/M期の進行に必須な核蛋白である。我々は、RSCの機能解析を目的としてNPS1の温度感受性変異株を2株分離し、これらの株の解析により、Nps1pあるいはRSC複合体が、増殖に伴うセントロメア等の染色体の特定部位での染色体高次構造の形成・維持に働いている事を明らかにできた。しかし、Nps1pは核全体に存在することから、さらに広い機能を持つ事が予測される。今回、我々はNPS1の温度感受性変異をホモに持つ2倍体が胞子形成に欠損を持つことを見いだした。変異株では胞子形成前DNA合成も顕著に遅延していたことから、この欠損は減数分裂開始後のごく初期に起こっていることが解った。そこで、減数分裂初期に転写誘導を受ける遺伝子について、変異株での発現を解析した結果、最も初期に誘導される転写因子をコードするIME1の転写はほぼ正常に起こるものの、IME1で転写活性化を受けるIME2,SPO11.SPO13の転写が極めて低下していた。このうち、IME2はプロテインキナーゼをコードし、SPO11,SPO13転写を正に調節することが知られている。従って、変異株における減数分裂初期遺伝子群の転写量の低下には、IME2の転写の欠損が最も大きな影響を与えていると考えられた。そこで、IME2上流の切り詰めを行い、nps1変異によって転写誘導に低下の生じる配列の同定を行った。この結果、nps1変異は、転写因子Ime1pの作用配列であるURS1を介した活性化を低下させることが解った。URS1配列には、DNA結合蛋白であるUme6pが結合し、体細胞分裂時にはこれにコレプレッサーSin3p、ヒストン脱アセチル化酵素Rpd3pが結合しており、この配列は転写抑制配列として機能するが、減数分裂期にはUme6p上にIme1p.Rim11pが結合して転写活性化配列として働く。URS1配列は、減数分裂初期遺伝子以外にも、INO1を始めとする数種の遺伝子の転写抑制に働いている。そこでnps1変異がINO1の転写誘導にも作用するかを調べたが、野生型の場合と変化は認められなかった。我々は、NPS1遺伝子自身の転写も減数分裂開始のごく初期に活性化されることを見いだしており、上述の本遺伝子の機能は、減数分裂時に特異的なものであると考えられた。出芽酵母のNps1Pはヌクレオソームのリモデリングを介して複数の遺伝子の転写調節に働くことが明らかにされたSWI/SNF複合体の主要サブユニットであるSnf2pと相同性を持つ分子量約160KのG2/M期の進行に必須な核蛋白である。我々は、RSCの機能解析を目的としてNPS1の温度感受性変異株を2株分離し、これらの株の解析により、Nps1pあるいはRSC複合体が、増殖に伴うセントロメア等の染色体の特定部位での染色体高次構造の形成・維持に働いている事を明らかにできた。しかし、Nps1pは核全体に存在することから、さらに広い機能を持つ事が予測される。今回、我々はNPS1の温度感受性変異をホモに持つ2倍体が胞子形成に欠損を持つことを見いだした。変異株では胞子形成前DNA合成も顕著に遅延していたことから、この欠損は減数分裂開始後のごく初期に起こっていることが解った。そこで、減数分裂初期に転写誘導を受ける遺伝子について、変異株での発現を解析した結果、最も初期に誘導される転写因子をコードするIME1の転写はほぼ正常に起こるものの、IME1で転写活性化を受けるIME2,SPO11.SPO13の転写が極めて低下していた。このうち、IME2はプロテインキナーゼをコードし、SPO11,SPO13転写を正に調節することが知られている。従って、変異株における減数分裂初期遺伝子群の転写量の低下には、IME2の転写の欠損が最も大きな影響を与えていると考えられた。そこで、IME2上流の切り詰めを行い、nps1変異によって転写誘導に低下の生じる配列の同定を行った。この結果、nps1変異は、転写因子Ime1pの作用配列であるURS1を介した活性化を低下させることが解った。URS1配列には、DNA結合蛋白であるUme6pが結合し、体細胞分裂時にはこれにコレプレッサーSin3p、ヒストン脱アセチル化酵素Rpd3pが結合しており、この配列は転写抑制配列として機能するが、減数分裂期にはUme6p上にIme1p.Rim11pが結合して転写活性化配列として働く。URS1配列は、減数分裂初期遺伝子以外にも、INO1を始めとする数種の遺伝子の転写抑制に働いている。そこでnps1変異がINO1の転写誘導にも作用するかを調べたが、野生型の場合と変化は認められなかった。我々は、NPS1遺伝子自身の転写も減数分裂開始のごく初期に活性化されることを見いだしており、上述の本遺伝子の機能は、減数分裂時に特異的なものであると考えられた。 | KAKENHI-PROJECT-10159212 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10159212 |
大学院教育における同期型授業のための国際遠隔教育システムの構築と評価 | 本研究の目的は、廉価なインターネットや汎用機器を活用し、海外の大学院生を対象とした、大学院専門教育のための同期型授業を提供する遠隔教育システムを構築し、その有効性を評価することである。具体的な研究内容として、まず能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築を実施し、システム実装を行うと同時に、システムの有用性を評価するために、中国側の研究協力大学で大学院生を募集し、このシステムを運用した専門科目の授業の実施準備を行った。1.能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築本システムの設計および実装に当たり、パソコン画面の提示や黒板の板書などの、さまざまの授業スタイルに対応できるようにした。また、能動的な受講を促すと同時に、黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにした。2.システムの運用および評価・考察実際の授業運用では、黒板の板書を授業撮影用カメラで撮影し、ストリーミングデータとして転送する使い方が全授業時間の90%以上を占めた。これは、数式の展開など、板書を多用する当該科目の性格にもよるが、専門科目の授業では、板書は未だに最も効果的な教授手法の1つであることを裏づけでもある。黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにしているが、教師の説明を集中して聞くなどの時の操作活動が鈍くなることがわかった。一方、遠隔講義システムによる授業は、普通の対面授業に比べて学生の反応をより意識し、授業のスピードや講義内容をこまめに調整するため、学生の満足度が高いという結果も、学生に対する聞き取り調査から分かった。本研究の目的は、廉価なインターネットや汎用機器を活用し、海外の大学院生を対象とした、大学院専門教育のための同期型授業を提供する遠隔教育システムを構築し、その有効性を評価することである。具体的な研究内容として、まず能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築を実施し、システム実装を行うと同時に、システムの有用性を評価するために、中国側の研究協力大学で大学院生を募集し、このシステムを運用した専門科目の授業の実施準備を行った。1.能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築本システムの設計および実装に当たり、パソコン画面の提示や黒板の板書などの、さまざまの授業スタイルに対応できるようにした。また、能動的な受講を促すと同時に、黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにした。2.システムの運用および評価・考察実際の授業運用では、黒板の板書を授業撮影用カメラで撮影し、ストリーミングデータとして転送する使い方が全授業時間の90%以上を占めた。これは、数式の展開など、板書を多用する当該科目の性格にもよるが、専門科目の授業では、板書は未だに最も効果的な教授手法の1つであることを裏づけでもある。黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにしているが、教師の説明を集中して聞くなどの時の操作活動が鈍くなることがわかった。一方、遠隔講義システムによる授業は、普通の対面授業に比べて学生の反応をより意識し、授業のスピードや講義内容をこまめに調整するため、学生の満足度が高いという結果も、学生に対する聞き取り調査から分かった。本研究の目的は、廉価なインターネットや汎用機器を活用し、海外の大学院生に対し、大学院専門教育のための同期型及び非同期型授業を提供する遠隔教育システムを構築し、その有効性を評価することである。平成17年度では、まず能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築を実施し、システム実装を行うと同時に、システムの有用性を評価するために、中国側の研究協力大学で大学院生を募集し、このシステムを運用した専門科目の授業を実施した。具体的な研究成果は下記の通りである。1.能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システム本システムの設計および実装に当たり、パソコン画面の提示や黒板の板書などの、さまざまの授業スタイルに対応できるようにした。また、能動的な受講を促すと同時に、黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにした。受講生は、専用機器や専用ソフトを一切必要とせず、PC上で動作する汎用WEBブラウザ、USBカメラ及びヘッドセットのみで遠隔から受講することができる。2.システムの運用および評価・考察本システムの運用において、各方面のさまざまなデータを詳細に収集した上で、下記の評価・考察を行った。(1)システムを運営するための人的、物的コスト及び配信や情報転送におけるパフォーマンスを総合的に評価し、それぞれの関連技術の役割や重要度を分析した。そのために、中国の研究協力大学で、大学院生を2名募集し、システムを用いた講義を6回計10時間行った。(2)上記の授業で得られた、受講者によるカメラ操作や授業中のチャットデータ等に基づき、大学院教育における中国と日本との違いを、教育工学の視点から調査・考察し、それらの違いやギャップを遠隔教育システム等で吸収することの可能性について検討している。本研究の目的は、廉価なインターネットや汎用機器を活用し、海外の大学院生を対象とした、大学院専門教育のための同期型及び非同期型授業を提供する遠隔教育システムを構築し、その有効性を評価することである。 | KAKENHI-PROJECT-17500668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500668 |
大学院教育における同期型授業のための国際遠隔教育システムの構築と評価 | 平成18年度では、前年度に構築したシステムを運用し、その評価及び最適化を主な研究活動とした。そのため、中国側の研究協力大学で大学院生を2名募集し、福岡工業大学大学院の正規科目である「超伝導工学特論」を遠隔講義対象科目とし、このシステムによる授業を12回(1回当たり80分)実施した。本システムの構築において、教師のパソコン画面の提示や黒板の板書などの、さまざまの授業スタイルに対応できるようにしているが、実際の授業運用では、黒板の板書を授業撮影用カメラで撮影し、ストリーミングデータとして転送する使い方が全授業時間の90%以上を占めた。これは、数式の展開など、板書を多用する当該科目の性格にもよるが、専門科目の授業では、板書は未だにもっとも効果的な教授手法の1つであることを裏づけでもある。黒板の文字などを識別させるために、受講生が遠隔から、授業撮影用カメラに対して様々な操作が自由にできるようにしているが、教師の説明を集中して聞くなどの時の操作活動が鈍くなることがわかった。また、教師の板書をノートに写すときのカメラ操作においても、学生は時々戸惑いを感じるという。一方、遠隔講義システムによる授業は、普通の対面授業に比べて学生の反応をより意識し、授業のスピードや講義内容をこまめに調整するため、学生の満足度が高いという結果も、学生に対する聞き取り調査から分かった。本研究の目的は,廉価なインターネットや汎用機器を活用し,海外の大学院生を対象とした,大学院専門教育のための同期型授業を提供する遠隔教育システムを構築し,その有効性を評価することである。昨年度では,能動的な受講を目指す同期型講義のための遠隔教育システムの構築を実施し,システムの試行運用及び評価を行った。最終年度である今年度では,システムの運用及び評価結果に基づき,システムの構成について改善を行い,パフォーマンスの最適化を施した上で,中国側の研究協力大学の大学院生に対し,このシステムを本格的に運用する専門科目の授業を実施し,総合的に評価行った。1.システムの改善及び最適化本年度は,授業効率や,受講生の学習効果を考慮した,カメラの数や設置形態の最適化を行った。通信チャンネルであるインターネットにおける様々な不安定要素や不確定要因に対応した,システムの強靭性を高めるため,WEBアプリケーションのアルゴリズムやプログラム構成及び使用言語などに関して,詳細にわたって再検討及び再構築を行った。また,ajaxなどの最新のWEB技術を取り入れて,ユーザーインターフェースの改善を図った。2.システムの運用および評価、考察本システムの運用について,昨年度に引き続き,中国側の研究協力大学の大学院生を対象に,福岡工業大学大学院の正規科目である「超伝導工学特論」を中国語及び英語で13回講義し,本格的な運用に堪えられることを証明した。また,システムを運営するための人的,物的コスト及び配信や情報転送におけるパフォーマンスを総合的に評価し,それぞれの関連技術の役割や重要度を把握した。 | KAKENHI-PROJECT-17500668 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17500668 |
小児膠原病患者における自己抗体対応抗原タンパク質の網羅的解析 | 小児膠原病患者における自己抗体対応抗原タンパク質の解析平成15年度に引き続き、HEP2細胞の培養を行い、細胞成分の抽出と核蛋白成分の抽出と患者血清を用いた自己抗体対応抗原蛋白質の解析に従事した。・まずHEP2細胞の培養後、核蛋白成分と細胞質成分に分離し、それぞれの蛋白成分を2次元電気泳動し蛋白のスポット展開を行った。HEP2細胞の培養ロット間でのスポットの出現を比較したところ、ロットによりスポットの発現に差異が認められた。このため同一ロットを用いて、全身性エリテマトーデス患者血清の分析を行った。患者血清でのスポット検出が、少検体量のため明らかなスポット同定ができなかった。・次に患者血清からIgG分画とアルブミンをIgGアルブミン除去カラムを用いて除去し、を2次元電気泳動を行い、疾患に特異的な蛋白スポットの同定を行った。患者血清を疾患発症期と回復期の2点で比較を行った。川崎病患者血清を用いて検討を行った。患者血清からIgG分画とアルブミン分画を除去した後、Cy5とCy3の蛍光色素で標識を行い2次元泳動を行った。その後、各スポットの蛍光を蛍光スキャナを用いて検出し、急性期と回復期での比較を行った。その結果、急性期に特異的な蛋白スポット171個を検出した。スポットはそれぞれアポリポ蛋白、急性反応蛋白、補体であった。しかし、蛋白を同定できないスポットが40個認められた。これらの結果から川崎病の炎症に特異的なスポットの存在が明らかとなった。今後も同研究で得られた未知のスポットの解析を継続して行っていくこととし、現段階までの成果を論文としてまとめ海外雑誌に投稿する準備をしている。また、今後、その他の小児リウマチ性疾患についても同様の手法を用いて行っていきたい。自己抗体対応抗原タンパク質のプロテオミクス手法を用いた解析試料の調製平成15年度は自己抗体対応抗原タンパク質の解析のための基礎検討を行った。まず、抗核抗体の検出に用いられるHEP2細胞の核タンパク成分と細胞質成分を抽出した。この抽出タンパクを二次元泳動を行いゲル上に核タンパクあるいは細胞成分をそれぞれ展開した。二次元泳動を行った際、細胞の培養条件、タンパク抽出方法のばらつきによりタンパク成分のスポット発現に再現性が認められなかった。このため至適条件設定を繰り返し行った。分析機器の調整タンパク抽出など試料の調整に並行して、細胞成分タンパク質や血清タンパクを用いてmatrix-assistedrazor desorption ion化飛行時間型質量分析装置やelectrospray ion化四重極飛行時間型質量分析装置の調整を行った。血清タンパクについては血清アルブミンと血清IgGが2次元電気泳動時に巨大スポットを生じその他のスポットをマスクしたため、これらの除去を行う必要性が生じた。このため血清試料中のアルブミンとIgGをアルブミンIgG除去カラムにより除去し二次元電気泳動を行った。これらの結果から、血清・細胞蛋白質の二次元電気泳動でのスポット展開が行いうることが確認された。小児膠原病患者における自己抗体対応抗原タンパク質の解析平成15年度に引き続き、HEP2細胞の培養を行い、細胞成分の抽出と核蛋白成分の抽出と患者血清を用いた自己抗体対応抗原蛋白質の解析に従事した。・まずHEP2細胞の培養後、核蛋白成分と細胞質成分に分離し、それぞれの蛋白成分を2次元電気泳動し蛋白のスポット展開を行った。HEP2細胞の培養ロット間でのスポットの出現を比較したところ、ロットによりスポットの発現に差異が認められた。このため同一ロットを用いて、全身性エリテマトーデス患者血清の分析を行った。患者血清でのスポット検出が、少検体量のため明らかなスポット同定ができなかった。・次に患者血清からIgG分画とアルブミンをIgGアルブミン除去カラムを用いて除去し、を2次元電気泳動を行い、疾患に特異的な蛋白スポットの同定を行った。患者血清を疾患発症期と回復期の2点で比較を行った。川崎病患者血清を用いて検討を行った。患者血清からIgG分画とアルブミン分画を除去した後、Cy5とCy3の蛍光色素で標識を行い2次元泳動を行った。その後、各スポットの蛍光を蛍光スキャナを用いて検出し、急性期と回復期での比較を行った。その結果、急性期に特異的な蛋白スポット171個を検出した。スポットはそれぞれアポリポ蛋白、急性反応蛋白、補体であった。しかし、蛋白を同定できないスポットが40個認められた。これらの結果から川崎病の炎症に特異的なスポットの存在が明らかとなった。今後も同研究で得られた未知のスポットの解析を継続して行っていくこととし、現段階までの成果を論文としてまとめ海外雑誌に投稿する準備をしている。また、今後、その他の小児リウマチ性疾患についても同様の手法を用いて行っていきたい。 | KAKENHI-PROJECT-15790535 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15790535 |
Study for nuclear functons of Themis in the thymus and periphery. | T細胞特異的に発現しているThemisの遺伝子座はヒトのセリアック病、アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患との関連が示唆されている。また、Themisノックアウトマウスでは成熟T細胞が激減している。これまで、ThemisタンパクはT細胞受容体シグナル伝達におけるアダプタータンパクとして働くと報告されてきたが、我々は細胞中の約半分のThemisタンパクが核に存在すること、Themisタンパクが細胞質にとどまるように変異を導入したThemis変異体ノックインマウス(R-NLSマウス)では、Themisノックアウトマウスと同様に成熟T細胞数が減少することを明らかにした。これらの結果からThemisが細胞核でも重要な役割を担っていることが明らかとなった。そこでこれまで注目されていなかったThemisの核での働きを明らかにするため質量分析を行いThemisと結合する分子を探索し、一つの転写因子を同定した。この結合は免疫沈降試験でも確認できた。この分子は転写制御分子であるためThemisによる転写制御を調べるため胸腺細胞を用いたChIPseq解析を予定している。また、R-NLSマウスとは逆に核にのみとどまるThemis変異体のノックインマウス(SV40マウス)でもT細胞の分化成熟が阻害されたことよりThemisはT細胞受容体近傍のシグナル伝達に必須であることも確認された。これらの結果から、Themisタンパクは細胞質と核の両方に存在することがその機能に必要であることが示唆される。R-NLSマウスとSV40マウスの交配によってできたマウスでは、片方の遺伝子座から細胞質にとどまるThemisが、他方の遺伝子座から細胞核にとどまるThemisが転写される。このようなマウスの胸腺でもT細胞の分化は明らかに阻害されておりThemisの細胞質-核間移動が重要であることが分かった。胸腺細胞を核分画と細胞質分画に分離してウエスタンブロッティングを行うことよりThemisタンパクは核と細胞質にほぼ同量存在することが分かった。Themisタンパクは核移行シグナル配列(NLS)を持つためこれを欠損したノックインマウスを作成したが、タンパクが不安定になるためかノックインマウスの胸腺細胞ではThemisタンパクの量が激減していた。これを改善するため、NLSをその相同配列と入れ替えたR-NLSマウスを作成しこの問題を回避した。樹立したマウスの胸腺細胞では予想通り、核は細胞質にとどまり、核分画では検出できなかった。このマウスの解析により細胞核にThemisがないとT細胞の分化が進まないことを明らかにした。このマウスでT細胞の分化が著しく阻害されていた。逆に、Themisが核のみにとどまればどうなるのかを調べるため、SV40のNSLをThemisに付加したノックインマウスを作成し調べた結果、このマウスでも同様に成熟T細胞が減少していた。このマウスの作成・解析により細胞質でのThemisの重要性を再確認した。さらに、これら2つのThemis変異ノックインマウスを掛け合わせたR-NLS/SV40マウスの解析よりThemisの細胞質・核間の移動がその機能に重要であることを示した。現在、細胞質から核への移行をタモキシフェンで制御するためERT2-Themis結合ノックインマウスを樹立する準備を進めている。Themisの核での働きを明らかにするために行った質量分析によりT細胞特異的転写因子が同定できたため、現在ThemisによるChIP-seqを行うための準備を進めている。このためのx3Flag Themisノックインマウスは樹立している。Themis ChIP-seqの遂行と解析を行う。また、結合を確認した転写因子についてもThemis存在・非存在下でゲノムへの結合が変化するかどうか調べる。つまり、この転写因子のChIP-seqを野生型マウス並びにThemisノックアウトマウスで行い比較する。ERT2-Themisノックインマウスが樹立できたらまず、Themisが細胞質にとどまることでT細胞の分化が抑制されるか確認したのち、タモキシフェンの投与でこれが解除されるかどうか、末梢血のフローサイトメーター解析で経過観察する。さらに、Themisの核への移行が何によって制御されているのか調べる。Themisと相同性のあるドメインを持つGAREM1が14-3-3によって核移行を制御されているという報告があるため14-3-3が最初の候補になる。末梢でのThemisの働きに関しては、成熟細胞でのみCREタンパクを発現するdLCK-creトランスジェニックマウスとThemis floxマウスの交配を準備している。樹立できれば腸を含む末梢での分化をフローサイトメーターで調べる。またナイーブT細胞を分離してTh1, Th2, Th17, Treg, CD4CTLへの分化能をしらべる。T細胞特異的に発現しているThemisの遺伝子座はヒトのセリアック病、アトピー性皮膚炎や潰瘍性大腸炎などの自己免疫疾患との関連が示唆されている。また、Themisノックアウトマウスでは成熟T細胞が激減している。これまで、ThemisタンパクはT細胞受容体シグナル伝達におけるアダプタータンパクとして働くと報告されてきたが、我々は細胞中の約半分のThemisタンパクが核に存在すること、Themisタンパクが細胞質にとどまるように変異を導入したThemis変異体ノックインマウス(R-NLSマウス)では、Themisノックアウトマウスと同様に成熟T細胞数が減少することを明らかにした。これらの結果からThemisが細胞核でも重要な役割を担っていることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-18K07188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07188 |
Study for nuclear functons of Themis in the thymus and periphery. | そこでこれまで注目されていなかったThemisの核での働きを明らかにするため質量分析を行いThemisと結合する分子を探索し、一つの転写因子を同定した。この結合は免疫沈降試験でも確認できた。この分子は転写制御分子であるためThemisによる転写制御を調べるため胸腺細胞を用いたChIPseq解析を予定している。また、R-NLSマウスとは逆に核にのみとどまるThemis変異体のノックインマウス(SV40マウス)でもT細胞の分化成熟が阻害されたことよりThemisはT細胞受容体近傍のシグナル伝達に必須であることも確認された。これらの結果から、Themisタンパクは細胞質と核の両方に存在することがその機能に必要であることが示唆される。R-NLSマウスとSV40マウスの交配によってできたマウスでは、片方の遺伝子座から細胞質にとどまるThemisが、他方の遺伝子座から細胞核にとどまるThemisが転写される。このようなマウスの胸腺でもT細胞の分化は明らかに阻害されておりThemisの細胞質-核間移動が重要であることが分かった。胸腺細胞を核分画と細胞質分画に分離してウエスタンブロッティングを行うことよりThemisタンパクは核と細胞質にほぼ同量存在することが分かった。Themisタンパクは核移行シグナル配列(NLS)を持つためこれを欠損したノックインマウスを作成したが、タンパクが不安定になるためかノックインマウスの胸腺細胞ではThemisタンパクの量が激減していた。これを改善するため、NLSをその相同配列と入れ替えたR-NLSマウスを作成しこの問題を回避した。樹立したマウスの胸腺細胞では予想通り、核は細胞質にとどまり、核分画では検出できなかった。このマウスの解析により細胞核にThemisがないとT細胞の分化が進まないことを明らかにした。このマウスでT細胞の分化が著しく阻害されていた。逆に、Themisが核のみにとどまればどうなるのかを調べるため、SV40のNSLをThemisに付加したノックインマウスを作成し調べた結果、このマウスでも同様に成熟T細胞が減少していた。このマウスの作成・解析により細胞質でのThemisの重要性を再確認した。さらに、これら2つのThemis変異ノックインマウスを掛け合わせたR-NLS/SV40マウスの解析よりThemisの細胞質・核間の移動がその機能に重要であることを示した。現在、細胞質から核への移行をタモキシフェンで制御するためERT2-Themis結合ノックインマウスを樹立する準備を進めている。Themisの核での働きを明らかにするために行った質量分析によりT細胞特異的転写因子が同定できたため、現在ThemisによるChIP-seqを行うための準備を進めている。このためのx3Flag Themisノックインマウスは樹立している。Themis ChIP-seqの遂行と解析を行う。また、結合を確認した転写因子についてもThemis存在・非存在下でゲノムへの結合が変化するかどうか調べる。 | KAKENHI-PROJECT-18K07188 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K07188 |
菌食性小蛾類の系統分類と寄主利用に関する研究 | 1シイタケ害虫を含むMorophagoides属の分類学的研究:分類学的再検討の結果、M .moriutiiのタイプシリーズに複数種の混在を確認し、タイプ標本を検して真の本種の再記載を行った。さらに国内から未記録種1種と6未記載種を確認し新種記載を行った。これまで確認した8種のうち5種が害虫として報告(混同)されていることが分かった。その5種は、雌雄交尾器とDNAバーコーディングによる識別が可能であった。2マンネンタケ害虫を含むMorophaga属の分類学的研究:マンネンタケ害虫のM. formosanaは近縁のM. iriomotensisに外見が類似しているものの、斑紋や交尾器で識別可能であることが分かった。3貯蔵食品の害虫を含むNemapogon属の分類学的研究:日本産本属の分類学的再検討を行った結果、N. granellaに加えて、N. mesoplaca、N. robusta、N. bidentataの3日本新記録種を含む4種に整理した。これらの種は、斑紋・交尾器・DNAバーコードで識別可能であることを明らかにした。害虫として報告されているのはN. granellaだけである。N. granellaとN. bidentataは幼虫でも識別可能である。4その他、非害虫種の再検討および生活史に関する研究:野生のキノコ類を寄主とする分類群について、4種の日本未記録種を記録し、2種の未記載種を確認し新種記載を行った。各種の寄主情報などの新知見も収集できた。そして、ヒトクチタケを寄主とするAmorophaga japonicaの幼虫・蛹の形態記載を行い、生活史の知見をまとめた。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。オオヒロズコガ亜科シイタケ害虫を含むMorophagoides属では、既知のシイタケオオヒロズコガM. moriutii、ウスリーシイタケオオヒロズコガM. ussuriensis、ニシシイタケオオヒロズコガM. occidentalis、ミナミシイタケオオヒロズコガM. meridianusの4種に加えて、キイシイタケオオヒロズコガM. robinsoni、ミヤマシイタケオオヒロズコガM. aquilonis、ヒメシイタケオオヒロズコガM. breviculus、ヤクシマシイタケオオヒロズコガM. yakuensisの4新種の記載を行った。これらシイタケ害虫はDNAバーコーディングによる識別も可能であることが分かった。マンネンタケの害虫であるマダラオオヒロズコガMorophaga formosanaと近縁なヤエヤママダラオオヒロズコガM. iriomotensisの再記載を行い、2種の識別点を明らかにした。ツリガネタケを寄主とするScardia属の1新種の記載を行った。これまで知られていなかったAmorophaga japonicaの幼生期の記載を行った。コクガ亜科貯穀害虫を含むNemapogon属は、コクガN. granellaの他に、オビコクガN. mesoplaca、シロコクガN. robusta、ウスイロコクガN. bidentataの3日本新記録種を含む4種を確認した。これらの種は外見的に類似しているが、斑紋や交尾器で識別が可能であることが分かった。加えて、DNAバーコード領域による識別も可能であることを明らかにした。Archinemapogon bacurianusを国内で初めて確認し、雌交尾器を初めて記載した。これらの成果は6本の査読付き国際英文誌の論文として結実している。また、害虫種となっている分類群を手掛けることもあって、応用面にも大きく貢献している。この他、学会発表等も積極的に行い、多くの研究者との交流を発展させた。今後の研究のますますの発展を期待する。また、これらの功績が認められて九州大学大学院生物資源環境科学府の学府賞を受賞した。よって、期待通りの研究が進展したと見なした。1シイタケ害虫を含むMorophagoides属の分類学的研究:分類学的再検討の結果、M .moriutiiのタイプシリーズに複数種の混在を確認し、タイプ標本を検して真の本種の再記載を行った。さらに国内から未記録種1種と6未記載種を確認し新種記載を行った。これまで確認した8種のうち5種が害虫として報告(混同)されていることが分かった。その5種は、雌雄交尾器とDNAバーコーディングによる識別が可能であった。2マンネンタケ害虫を含むMorophaga属の分類学的研究:マンネンタケ害虫のM. formosanaは近縁のM. iriomotensisに外見が類似しているものの、斑紋や交尾器で識別可能であることが分かった。3貯蔵食品の害虫を含むNemapogon属の分類学的研究:日本産本属の分類学的再検討を行った結果、N. granellaに加えて、N. mesoplaca、N. robusta、N. bidentataの3日本新記録種を含む4種に整理した。これらの種は、斑紋・交尾器・DNAバーコードで識別可能であることを明らかにした。害虫として報告されているのはN. granellaだけである。N. granellaとN. bidentataは幼虫でも識別可能である。4その他、非害虫種の再検討および生活史に関する研究:野生のキノコ類を寄主とする分類群について、4種の日本未記録種を記録し、2種の未記載種を確認し新種記載を行った。各種の寄主情報などの新知見も収集できた。 | KAKENHI-PROJECT-15J07389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J07389 |
菌食性小蛾類の系統分類と寄主利用に関する研究 | そして、ヒトクチタケを寄主とするAmorophaga japonicaの幼虫・蛹の形態記載を行い、生活史の知見をまとめた。今後は、農林業害虫を中心とした小蛾類の分類体系の再構築を行い、害虫管理の基礎として各種の幼生期の各齢および蛹の詳細な形態記載を行い、各種の識別法を確立させていく。そして、得られた成虫形態・幼虫形態・蛹形態・分子情報を統合した、発育ステージを問わない総合的な検索同定システムの構築、そして応用体系昆虫学を用いた潜在的な害虫の探索・推定・抽出を行う。28年度が最終年度であるため、記入しない。28年度が最終年度であるため、記入しない。 | KAKENHI-PROJECT-15J07389 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15J07389 |
二価白金イオンからなる三角形型三核クラスター錯体 | 本研究は、筆者らが初めて見出した三角形型の骨格を含む白金IIクラスター錯体について,このタイプの骨格をもつ新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とする.以下に主な成果を示す.三角形型白金(II)三核クラスター錯体の合成法.このタイプのクラスター骨格を形成できる面内配位粒子はグリオキシム類,ジアミンなどの窒素配位の2座キレート配位子に限られるが,以下の二つのルートにより目的化合物を合成できることを明らかにした.使用する面内配位子の種類によってルートを選択する必要がある.1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成法.ドナー原子周辺が嵩高いジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(dqgH_2),およびN,N`-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)などを面内配位子として使用する場合,この反応によって目的錯体の合成が可能である.(2)三角形型白金(II)クラスター錯体の面内配位粒子置換反応に基づく合成法.上記(1)で得られた三核錯体から誘導する方法で,エチレンジアミンやその誘導体に適応できる.2.195Pt-,131C-,1H-NMR,X線解析に基づく分子構造,EHMO計算による電子構造研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であるり,白金間には直接結合が存在する.スピン-スピン結合定数J_<Pt-Pt>の大きさは75008000Hz程度である.3.クラスター面内の配位粒子置換反応性に関する研究.(1)グリオキシム類を含む系では,分子内水素結合のため反応性が著しく低い.(2)分子内水素結合が存在しない系では,置換活性ではあるが白金ー窒素結合が強く反応性は著しく高くはない.本研究は、筆者らが初めて見出した三角形型の骨格を含む白金IIクラスター錯体について,このタイプの骨格をもつ新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とする.以下に主な成果を示す.三角形型白金(II)三核クラスター錯体の合成法.このタイプのクラスター骨格を形成できる面内配位粒子はグリオキシム類,ジアミンなどの窒素配位の2座キレート配位子に限られるが,以下の二つのルートにより目的化合物を合成できることを明らかにした.使用する面内配位子の種類によってルートを選択する必要がある.1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成法.ドナー原子周辺が嵩高いジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(dqgH_2),およびN,N`-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)などを面内配位子として使用する場合,この反応によって目的錯体の合成が可能である.(2)三角形型白金(II)クラスター錯体の面内配位粒子置換反応に基づく合成法.上記(1)で得られた三核錯体から誘導する方法で,エチレンジアミンやその誘導体に適応できる.2.195Pt-,131C-,1H-NMR,X線解析に基づく分子構造,EHMO計算による電子構造研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であるり,白金間には直接結合が存在する.スピン-スピン結合定数J_<Pt-Pt>の大きさは75008000Hz程度である.3.クラスター面内の配位粒子置換反応性に関する研究.(1)グリオキシム類を含む系では,分子内水素結合のため反応性が著しく低い.(2)分子内水素結合が存在しない系では,置換活性ではあるが白金ー窒素結合が強く反応性は著しく高くはない.本研究は,筆者らが偶然に初めて見出した三角形型のクラスター骨格を含む白金II価クラスター錯体について,このタイプの新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とするものである.本年度の研究により,以下の成果が得られた.1.新規白金II価三核クラスター錯体の合成.つぎの二つの方法により合成研究を行った.(1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成.ジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(bqdH_2),および,N,N"-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)と四核錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]を反応させることにより,それぞれ新規三核錯体[Pt_3(CH_3COO)_4(dpgH)_2-(dpgH_2)],[Pt_3(CH_3COO)_4)(bqdH)_2(bqdH_2)],[Pt_3(CH_3COO)_4(Me_2en)_3]を合成・単離することに成功した.(2)白金II価三核クラスター錯体の面内配位子置換に基づく新規錯体の合成.本研究以前に筆者らが単離していた三核錯体および上記(1)で得られた三核錯体を利用して種々試行した結果,エチレンジアミン(en)を含む新規三核錯体[[Pt_3(CH_3COO)_4(en)_3] | KAKENHI-PROJECT-08454207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454207 |
二価白金イオンからなる三角形型三核クラスター錯体 | 合成単離に成功した.また,上述した、[Pt_3(CH_3COO)_4(Me_2en)_3]もこの手法により合成できることが明らかとなった.2.^<195>Pt-,^<131>C-,^1H-NMRに基づく分子構造,電子構造に関する研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であり,分子内に2回軸をもつ構造をとっている.スピン-スピン結合定数J_<Pt-Pt>の大きさは75008000Hzとかなり大きく,白金間に直接接合をもつことを示唆している.3.置換反応性に関する研究を行い,つぎの知見を得た.(1)グリオキシム類を含む錯体は,水素結合の存在のため,[Pt_4(CH_3COO)_8]に比べ反応性が著しく低い.(2)しかし,より配位性の強いエチレンジアミン類より面内置換は不可能ではない.本研究は,筆者らが初めて見出した三角形型の骨格を含む白金II価クラスター錯体について,このタイプの骨格をもつ新規化合物の合成,構造,反応性,電子構造などその化学を総合的に研究することを目的とする.以下に主な成果を示す.1.三角形型白金(II)三核クラスター錯体の合成法.このタイプのクラスター骨格を形成できる面内配位子はグリオキシム類,ジアミンなどの窒素配位の2座キレート配位子に限られるが,以下の二つのルートにより目的化合物を合成できることを明らかにした.使用する面内配位子の種類によってルートを選択する必要がある.(1)白金II価四核クラスター錯体[Pt_4(CH_3COO)_8]の骨格変換反応に基づく合成法.ドナー原子周辺が嵩高いジフェニルグリオキシム(dpgH_2),ベンゾキノンジオキシム(bpdH_2),および,N,N'-ジメチルエチレンジアミン(Me_2en)などを面内配位子として使用する場合,この反応によって目的錯体の合成が可能である.(2)三角形型白金(II)クラスター錯体の面内配位子置換反応に基づく合成法.上記(1)で得られた三核錯体から誘導する方法で,エチレンジアミンやその誘導体に適応できる.2.^<195>Pt-,^<131C>-,^1H-NMR,X線解析に基づく分子構造,EHMO計算による電子構造研究.いずれの三核錯体においても,クラスター骨格は二等辺三角形型であるり,白金間には直接結合が存在する.スピン-スピン結合定数J_<pt-pt>の大きさは75008000Hz程度である.3.クラスター面内の配位子置換反応性に関する研究.(1)グリオキシム類を含む系では,分子内水素結合のため反応性が著しく低い.(2)分子内水素結合が存在しない系では,置換活性ではあるが白金-窒素結合が強く反応性は著しく高くはない. | KAKENHI-PROJECT-08454207 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08454207 |
口腔粘膜上皮におけるメカノセンサー Piezoの発現と機能調節 | 口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないかとの仮説をたて研究を行った。その結果、Piezo1が5週齢および8週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないか、また機械刺激を常に受ける口腔内においてPiezoが口腔粘膜上皮のAnoikisに関わり、結果として皮膚に比べ数倍速い口腔粘膜上皮のターンオーバーがおこるのではないかとの仮説をたて、研究を行った。研究は5週齢のC57/BL6Nマウスの皮膚と歯肉、頬粘膜および口蓋粘膜を対象に、発現の局在を免疫組織化学的検索により解析した。また定量的PCRにより解析した。その結果、免疫組織化学的検索により、Piezo1が5週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。また定量的PCRにより、頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないか、また機械刺激を常に受ける口腔内においてPiezoが口腔粘膜上皮のAnoikisに関わり、結果として皮膚に比べ数倍速い口腔粘膜上皮のターンオーバーがおこるのではないかとの仮説をたて、研究を行った。研究は5週齢のC57/BL6Nマウスの皮膚と歯肉、頬粘膜および口蓋粘膜を対象に、発現の局在を免疫組織化学的検索により解析した。また定量的PCRにより解析した。その結果、免疫組織化学的検索により、Piezo1が5週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。また定量的PCRにより、頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。これらの結果は、第56回歯科基礎医学会学術大会・総会にて発表を行った。口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。
本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないか、また機械刺激を常に受ける口腔内においてPiezoが口腔粘膜上皮のAnoikisに関わり、結果として皮膚に比べ数倍速い口腔粘膜上皮のターンオーバーがおこるのではないかとの仮説をたて、研究を行った。
研究は5週齢のC57/BL6Nマウスの皮膚と歯肉、頬粘膜および口蓋粘膜を対象に、発現の局在をin situ hybridizationおよび免疫組織化学的検索により解析した。また定量的PCRにより解析した。その結果、in situ hybridization法および、免疫組織化学的検索により、Piezo1が5週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。また定量的PCRにより、頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。
機械刺激センサーとして知られるPiezo1の口腔粘膜上皮での発現はない。本研究では、in situ hybridizationおよび免疫組織科学的検索、および定量的PCRによりその発現について解析を行った。現在論文投稿に向け、準備を行っている。口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないか、また機械刺激を常に受ける口腔内においてPiezoが口腔粘膜上皮のAnoikisに関わり、結果として皮膚に比べ数倍速い口腔粘膜上皮のターンオーバーがおこるのではないかとの仮説をたて、研究を行った。研究は5週齢のC57/BL6Nマウスの皮膚と歯肉、頬粘膜および口蓋粘膜を対象に、発現の局在をin situ hybriduzation法および免疫組織化学的検索により解析した。また定量的PCRにより解析した。その結果、in situ hybriduzation法および免疫組織化学的検索により、Piezo1が5週齢および8週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。また定量的 | KAKENHI-PROJECT-25462861 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462861 |
口腔粘膜上皮におけるメカノセンサー Piezoの発現と機能調節 | PCRにより、頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。口腔は多様な刺激に晒されている。常に咀嚼、嚥下や会話等により物理的機械的な力がかかり、粘膜の構築はそれに対応して口腔内で頬、口蓋や舌などの部位による多様性を示していると考えられる。本研究は、Piezoが口腔粘膜においても機械刺激のレセプターとして働くのではないかとの仮説をたて研究を行った。その結果、Piezo1が5週齢および8週齢のマウス歯肉上皮および頬粘膜上皮の顆粒細胞層、有棘細胞層に発現することが認められた。頬粘膜におけるPiezo1の発現は皮膚に比較して高い発現をしていることが明らかとなった。機械刺激センサーとして知られるPiezo1の口腔粘膜上皮での発現は皆無である。申請者は口腔粘膜におけるPiezoの発現について免疫組織学的検討を行ってきたが、in Vivoでの染色を行った報告が少なく、どの抗体が染色に適しているか不明であった。そこでmRNAの発現の解析を行うべく、in situハイブリダイゼーションによる解析を開始したため、若干進行が遅延している。今後は、Piezoの機能解析を行う。歯科保存学1. Piezoの局在を明らかにする。in situハイブリダイゼーションでPiezo1および2の局在を明らかにする。2.口腔組織におけるPiezoの発現量を明らかにする5週齢のC57/BL6Nマウスの皮膚と歯肉、頬粘膜および口蓋粘膜にPiezo1の発現が認められることが確認された。さらにin situハイブリダイゼーションにより、口腔内の上皮にも発現量の違いが認められることから、レーザーマイクロダイセクションにて口腔粘膜上皮の部位による発現量の差異を明らかにする。3. Piezoの機能解析を行う。機械刺激センサーとして知られるPiezo1は、細胞接着不全に起因する細胞死として知られるAnoikisに関わることが報告されている。しかし口腔領域での報告はこれまで皆無である。そこで申請者は、口腔粘膜におけるPiezoの発現について検討をした。しかしながら、これまで他の組織においても、in vivoでの染色を行った報告が少なく、どの抗体が染色に適しているかが不明であった。そこで、数種類の抗体を用いて染色を行うなど、適条件を検討する必要が生じ、進行が若干遅延している。H27年度に口腔粘膜上皮におけるPiezoの発現と機能について定量的PCR分析と組織学的解析を行い、その結果をもとに論文発表する予定であった。しかし組織学的解析に遅れを生じたため、計画を変更し論文発表をH28年度に行うこととした。申請者は口腔粘膜における免疫組織化学的検索により、Piezo1の発現を明らかにすべく研究を行っているが、これまで他の組織においてもin vivoでの染色を行った報告が少ないため、条件の検索が困難であった。そこで、in situハイブリダイゼーションによる検索を行うべく、現在条件を整えており、進行が遅延している。未使用額は論文投稿の経費に充てたいと考えている。1. Piezoの機能解析を行うb.口腔粘膜上皮の適機械刺激を調べるため、細胞進展装置により伸展刺激を加えてカルシウムイメージングで活性化を観察する。 | KAKENHI-PROJECT-25462861 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-25462861 |
ビジョンチップと反応拡散チップを用いた運動視知覚の研究 | 本研究目的は人間の網膜を模した視覚処理デバイスであるアナログビジョンチップを用いてのターゲットトラッキング(運動する対象物体を追跡すること)の実現である.そこで,ニューラルイメージ社製ビジョンチップ内蔵のカメラをアップグレードした.そのカメラの特徴は,六角格子から,正方格子構造へと移行したことと,人間の低位の視覚処理の二つの流れ,すなわち,大細胞系を模した空間的ガウシアンフィルタリングと,小細胞系を模した時間差分を同時に行えることである.そこで,本研究では,オプティカルフローの計算を,上記ビジョンチップを用いて行う方法にについて検討した.実際に,ビジョンチップを用いてフローを計算する前の予備実験として,ガウシアンフィルタリングと時間差分を用いて,フローを計算する方法を検討した.動きの情報のみに着目している点を強調するため,ランダムな濃淡値からなる動画をPC上で作成し,その画像を元に,シミュレーションを行った.この場合にも,アナログビジョンチップの持つ,強力なガウシアンフィルタリングによって,ある程度正確なオプティカルフローが得られることを示した.そして,この知見をいかにビジュアルトラッキングに応用するかについて考察したその後も,ビジョンチップを用いた運動視を行うための実験環境整備に努めた.本研究では,人間の網膜を模した視覚処理デバイスであるアナログ型のビジョンチップを用いて動画像処理・認識を並列処理で行うことを試みることが目的であった.そこで,大阪大学の学内ベンチャー企業である,ニューラルイメージ社製のアナログビジョンチップ内蔵のカメラを購入した.そのカメラの特徴は,人間の低位の視覚処理の二つの流れ,特に,大細胞系に密接な関係のある空間的なガウシアンフィルタリングと,小細胞系に密接な関係のある,時間差分を同時に行えることである.そこで,本研究では,運動視知覚の問題として最も重要かつ多彩な広がりを持つ,オプティカルフローの計算を,上記ビジョンチップを用いて行う方法にについて検討した.実際に,ビジョンチップを用いてオプティカルフローを計算する前の予備実験として,ガウシアンフィルタリングと時間差分を用いて,オプティカルフローを計算する方法を検討した.特に,動きの情報のみに着目している点を強調するため,ランダムな濃淡値からなる動画,即ちランダムドットキネマトグラムをPC上で作成し,その画像を元に,シミュレーションを行った.ランダムドットキネマトグラムの場合にも,アナログビジョンチップの持つ,強力なガウシアンフィルタリングによって,ある程度正確なオプティカルフローが得られることを示した.その結果を,第19回自律分散システム・シンポジウムにおいて,「アナログビジョンチップに基づく運動視知覚の一考察」という題目で発表した.その後も,実際にビジョンチップを用いて運動視を行うための実験環境整備に努めた.本研究目的は人間の網膜を模した視覚処理デバイスであるアナログビジョンチップを用いてのターゲットトラッキング(運動する対象物体を追跡すること)の実現である.そこで,ニューラルイメージ社製ビジョンチップ内蔵のカメラをアップグレードした.そのカメラの特徴は,六角格子から,正方格子構造へと移行したことと,人間の低位の視覚処理の二つの流れ,すなわち,大細胞系を模した空間的ガウシアンフィルタリングと,小細胞系を模した時間差分を同時に行えることである.そこで,本研究では,オプティカルフローの計算を,上記ビジョンチップを用いて行う方法にについて検討した.実際に,ビジョンチップを用いてフローを計算する前の予備実験として,ガウシアンフィルタリングと時間差分を用いて,フローを計算する方法を検討した.動きの情報のみに着目している点を強調するため,ランダムな濃淡値からなる動画をPC上で作成し,その画像を元に,シミュレーションを行った.この場合にも,アナログビジョンチップの持つ,強力なガウシアンフィルタリングによって,ある程度正確なオプティカルフローが得られることを示した.そして,この知見をいかにビジュアルトラッキングに応用するかについて考察したその後も,ビジョンチップを用いた運動視を行うための実験環境整備に努めた. | KAKENHI-PROJECT-18700190 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18700190 |
明治期における産業発展と地域経済 | 本研究の目的は、これまで必ずしも研究が進んでいない明治期の産業、とくに在来産業の発展に関する詳細な実証分析を蓄積することである。さらに多くの在来産業が地方産業として展開していた事実に関連して、近年ようやく本格的な実証研究が登場するようになった地域経済の展開についても独自の見解を打ち出すことをめざしている。そのためにわれわれは、公刊資料およびすでに収集した一次資料の整理・分析を進めるとともに、各研究分担者が新資料の発掘にも努めた。平成6年12月には政治史・技術史・経済地理学など関連分野の専門家の参加も得て、「日本における産業発展と地域経済-阪神工業地帯を中心に-」と題するワークショップを開催した(参加者24名)。本ワークショップではさまざまな事実・論点が提示されたが、なかでも(1)工業地帯の形成と展開の論理、(2)阪神工業地帯の特徴、(3)問屋制度と工業制度の関連、(4)産業発展と環境・インフラストラクチャーの関連などの論点を巡って活発な討議が展開された。また、第一次資料および公刊資料に基づいてデータの収集・整理が進められたが、なかでも工場名簿の分析・資産家名簿(『日本全国商工人名簿』)などのデータベース化では相当の進展が見られた。以上のような研究活動の成果の一部が、宮本又郎ほか『日本経営史』(有斐閣、平成7年3月)、宮本又郎・阿部武司編『経営革新と工業化』(日本経営史2、岩波書店、平成7年6月)、西川俊作・尾高煌之助・斎藤修『日本経済の200年』(日本評論社、平成8年1月)として刊行された。本研究の目的は、これまで必ずしも研究が進んでいない明治期の産業、とくに在来産業の発展に関する詳細な実証分析を蓄積することである。さらに多くの在来産業が地方産業として展開していた事実に関連して、近年ようやく本格的な実証研究が登場するようになった地域経済の展開についても独自の見解を打ち出すことをめざしている。そのためにわれわれは、公刊資料およびすでに収集した一次資料の整理・分析を進めるとともに、各研究分担者が新資料の発掘にも努めた。平成6年12月には政治史・技術史・経済地理学など関連分野の専門家の参加も得て、「日本における産業発展と地域経済-阪神工業地帯を中心に-」と題するワークショップを開催した(参加者24名)。本ワークショップではさまざまな事実・論点が提示されたが、なかでも(1)工業地帯の形成と展開の論理、(2)阪神工業地帯の特徴、(3)問屋制度と工業制度の関連、(4)産業発展と環境・インフラストラクチャーの関連などの論点を巡って活発な討議が展開された。また、第一次資料および公刊資料に基づいてデータの収集・整理が進められたが、なかでも工場名簿の分析・資産家名簿(『日本全国商工人名簿』)などのデータベース化では相当の進展が見られた。以上のような研究活動の成果の一部が、宮本又郎ほか『日本経営史』(有斐閣、平成7年3月)、宮本又郎・阿部武司編『経営革新と工業化』(日本経営史2、岩波書店、平成7年6月)、西川俊作・尾高煌之助・斎藤修『日本経済の200年』(日本評論社、平成8年1月)として刊行された。7月に研究会を開催して、今後の研究の方向性について討論するとともに、宮本が近世の商業、猪木が労働市場、阿部が綿業、沢井が機械工業、尾高が労動、山本が貿易・金融、斉藤が人口、天野が工業地帯、谷本が醸造業、広田が小売市場についてそれぞれ報告した。さらに10月、12月、2月に開催された研究会において明治期の経済発展とアジア市場の関係、企業勃興期における地方企業家、工場制度の定着と労務管理などのテーマに関する報告が行われた。以上の報告と並行して各地において収集した第一次史料および公刊資料に基づいたデータの収集・整理が続けられ、とくに工場名簿の分析、資産家名簿のデータベース化などでは相当の進展をみ、『日本全国商工人名簿』所収データの中から税額順・50音順別に大阪府のデータをデータベース化し、東京都・愛知県についてもデータの一部を入力した。さらに今年度の活動の成果の一部が、尾高煌之助・斉藤修編『日本経済の200年』(日本評論社)として近刊予定であり、また今年度の経営史学会全国大会において共同研究のメンバーが研究報告を行い、次年度の社会経済史学会全国大会においても研究報告を行う予定である。今後の研究課題としては、(1)地方・在来産業と地域産業政策の関連、(2)国民経済・地域産業構造の中での各産業の位置と役割、(3)地域間・企業間競争と企業者活動の関連、(4)工業地帯形成の実態と工業集積を促進する制度的諸条件(教育制度、公的試験・研究機関など)などの諸点の検討が残されている。次年度においても研究会を通して、公刊資料および各自収集した第一次史料に依拠して担当部分に関わる個人報告を積み重ねる一方、先にみた研究課題およびそれまでの研究成果を総合的観点から検討するために年末には関連領域の研究者をも招いて、2泊3日30人程度のワーク・ショップを開催する予定にしている。今年度においても関連データ・資料の発掘につとめるとともに、研究会を開催して個別報告を積み重ねた。また12月25-28日には技術史・政治史・経済地理学などの専門家の参加も得て、「日本における産業発展と地域経済-阪神工業地帯を中心に-」をテーマにワークショップを開催した(参加者24名)。 | KAKENHI-PROJECT-05301079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05301079 |
明治期における産業発展と地域経済 | ワークショップでは宮本・阿部が明治期に資産家のデータベース分析、猪木が工場労働構成、沢井が大阪の明治期の機械工業、尾高が工場制度の成立と労働問題、山本が貿易・金融問題、斎藤が人口、天野が4大工業地帯における産業構成、谷本が埼玉県入間地方の織物業、広田が阪神工業地帯における日用品流通についてそれぞれ報告を行い、とくに(1)工業地帯の成立条件、(2)阪神工業地帯の特質、(3)問屋制度と工場制度の関連、(4)産業発展と環境・インフラストラクチャーの関連などのトピックスをめぐって活発な討論が展開された。さらに今年度の活動の成果の一部が、宮本又郎ほか『日本経営史』(有斐閣、1995年3月)として刊行され、宮本又郎・阿部武司編『経営革新と工業化』(日本経営史2、岩波書店)も近刊予定である。今後の課題としては、(1)地方・在来産業と地域産業政策の関連、(2)地域間・企業間競争と企業者活動の関連、(3)工業地帯形成の実態と工業集積を促進する制度的条件などの論点の検討が残されている。こうした論点を念頭に次年度においても3カ月に1回程度の研究会を通して各自担当部分に関わる個別報告を行い、先のワークショップの成果を踏まえて各自の報告内容を論文化し、成果刊行の準備を進める。そのために必要に応じて打合会を持つ予定である。今年度においても各研究分担者の分担課題に関する調査・分析が続けられたが、とくに第一次資料および公刊資料にもとづいたデータの収集・整理が迫んだ。なかでも工場名簿の分析・資産家名簿(『日本全国商工人名録』など)のデータベース化では相当の迫展が見られた。また平成7年10月14日の研究会では奈良産業大学経済学部専任講師山田雄久氏より「明治後期における肥前陶磁器業の組織化」と題する報告を受けるとともに、研究の取りまとめについて意見交換が行われた。さらに、これまでの研究活動の成果の一部が、西川俊作・尾高煌之助・斉藤修編『日本経済の200年』(日本評論社・平成8年1月)としてに刊行された。また平成8年2月17日の研究会では研究の取りまとめと今後の研究活動について行動が行われた。 | KAKENHI-PROJECT-05301079 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-05301079 |
癌細胞特異的可溶型VEGFR-3遺伝子導入によるリンパ管新生阻害療法の開発 | 本研究では、扁平上皮癌細胞の腫瘍抗原であるSCC抗原遺伝子をプロモーターとするSCC抗原作動型遺伝子導入法を開発するとともに、膜貫通領域を欠失し、チロシンリン酸化によるシグナル伝達能を持たない可溶型VEGFR-3を発現・産生させることによりVEGF-VEGFR系を標的としたリンパ管新生阻害療法を開発することを目標としている。そのために我々は、口腔扁平上皮癌細胞株NAおよびHSC4を用いて、これら癌細胞におけるVEGFファミリーの発現状況をRT-PCR法にて解析した。その結果、両細胞株ともにVEGF-CおよびVEGF-Dを発現していた。また、両細胞株ともにVEGFRの発現は認められなかった。一方、癌の浸潤転移成立機構において、癌細胞と間質細胞の相互作用が重要な働きを担っている。VEGFの発現調節機構の上流にはMetが存在し、そのうちc-Metは間質細胞の産生するhepatocyto growthfactor(HGF)のレセプターとして細胞内情報伝達機構を誘導する。そこで、両細胞株のc-Met発現状況をRT-PCR法にて解析したところ、両細胞株ともにc-Metを発現していた。また、我々は生体における腫瘍内部の低酸素環境に応答する転写因子HIF-1αに着目し、ハイポキシア・チャンバー内で培養した口腔扁平上皮癌細胞株がHIF-1αを高発現すること、その下流にあるVEGFおよびc-Metが高発現すること、およびシクロキシゲナーゼ(COX)-2の発現増強を見いだした。c-Metの下流には癌細胞浸潤の中心的役割を担う細胞外基質分解酵素MMP群が存在している。そこで分子標的としてのCOX-2に注目し、COX-2アンチセンス遺伝子導入による癌細胞浸潤能への影響を検討した結果、MMP-2,9およびMT-1MMPに加え、接着蛋白CD44の発現抑制を認めた。現在、SCC抗原作動型遺伝子導入法を用いて、扁平上皮癌による可溶型VEGFR-3産生を目指すとともに、c-Metを標的としたVEGF産生抑制による癌浸潤制御療法を検討中である。本研究では、扁平上皮癌細胞の腫瘍抗原であるSCC抗原遺伝子をプロモーターとするSCC抗原作動型遺伝子導入法を開発するとともに、膜貫通領域を欠失し、チロシンリン酸化によるシグナル伝達能を持たない可溶型VEGFR-3を発現・産生させることによりVEGF-VEGFR系を標的としたリンパ管新生阻害療法を開発することを目標としている。そのために我々は、口腔扁平上皮癌細胞株NAおよびHSC4を用いて、これら癌細胞におけるVEGFファミリーの発現状況をRT-PCR法にて解析した。その結果、両細胞株ともにVEGF-CおよびVEGF-Dを発現していた。また、両細胞株ともにVEGFRの発現は認められなかった。一方、癌の浸潤転移成立機構において、癌細胞と間質細胞の相互作用が重要な働きを担っている。VEGFの発現調節機構の上流にはMetが存在し、そのうちc-Metは間質細胞の産生するhepatocyto growthfactor(HGF)のレセプターとして細胞内情報伝達機構を誘導する。そこで、両細胞株のc-Met発現状況をRT-PCR法にて解析したところ、両細胞株ともにc-Metを発現していた。また、我々は生体における腫瘍内部の低酸素環境に応答する転写因子HIF-1αに着目し、ハイポキシア・チャンバー内で培養した口腔扁平上皮癌細胞株がHIF-1αを高発現すること、その下流にあるVEGFおよびc-Metが高発現すること、およびシクロキシゲナーゼ(COX)-2の発現増強を見いだした。c-Metの下流には癌細胞浸潤の中心的役割を担う細胞外基質分解酵素MMP群が存在している。そこで分子標的としてのCOX-2に注目し、COX-2アンチセンス遺伝子導入による癌細胞浸潤能への影響を検討した結果、MMP-2,9およびMT-1MMPに加え、接着蛋白CD44の発現抑制を認めた。現在、SCC抗原作動型遺伝子導入法を用いて、扁平上皮癌による可溶型VEGFR-3産生を目指すとともに、c-Metを標的としたVEGF産生抑制による癌浸潤制御療法を検討中である。本研究では、扁平上皮癌細胞の腫瘍抗原であるSCC抗原遺伝子をプロモーターとするSCC抗原作動型遺伝子導入法を開発するとともに、膜貫通領域を欠失し、チロシンリン酸化によるシグナル伝達能を持たない可溶型VEGFR-3を発現・産生させることによりVEGF-VEGFR系を標的としたリンパ管新生阻害療法を開発することを目標としている。そのために我々は、予備実験として口腔扁平上皮癌細胞株NAおよびHSC4を用いて、これら癌細胞におけるVEGFファミリーの発現状況をRT-PCR法にて解析した。その結果、両細胞株ともにVEGF-CおよびVEGF-Dを発現していた。また、両細胞株ともにVEGFRの発現は認められなかった。一方、癌の浸潤転移成立機構において、癌細胞と間質細胞の相互作用が重要な働きを担っている。VEGFの発現調節機構の上流にはMetが存在し、そのうちc-Metは間質細胞の産生するhepatocyto growthfactor (HGF)のレセプターとして細胞内情報伝達機構を誘導する。そこで、両細胞株のc-Met発現状況をRT-PCR法にて解析したところ、両細胞株ともにc-Metを発現していた。現在、SCC抗原作動型遺伝子導入法を開発中であり、扁平上皮癌による可溶型VEGFR-3産生を目指すとともに、c-Metを標的としたVEGF産生抑制による癌浸潤制御療法を検討していく予定である。 | KAKENHI-PROJECT-16592020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592020 |
癌細胞特異的可溶型VEGFR-3遺伝子導入によるリンパ管新生阻害療法の開発 | 本研究では、扁平上皮癌細胞の腫瘍抗原であるSCC抗原遺伝子をプロモーターとするSCC抗原作動型遺伝子導入法を開発するとともに、膜貫通領域を欠失し、チロシンリン酸化によるシグナル伝達能を持たない可溶型VEGFR-3を発現・産生させることによりVEGF-VEGFR系を標的としたリンパ管新生阻害療法を開発することを目標としている。そのために我々は、予備実験として口腔扁平上皮癌細胞株NAおよびHSC4を用いて、これら癌細胞におけるVEGFファミリーの発現状況をRT-PCR法にて解析した。その結果、両細胞株ともにVEGF-CおよびVEGF-Dを発現していた。また、両細胞株ともにVEGFRの発現は認められなかった。一方、癌の浸潤転移成立機構において、癌細胞と間質細胞の相互作用が重要な働きを担っている。VEGFの発現調節機構の上流にはMetが存在し、そのうちc-Metは間質細胞の産生するhepatocyto growthfactor (HGF)のレセプターとして細胞内情報伝達機構を誘導する。そこで、両細胞株のc-Met発現状況をRT-PCR法にて解析したところ、両細胞株ともにc-Metを発現していた。また、我々は生体における腫瘍内部の低酸素環境に応答する転写因子HIF-1αに着目し、ハイポキシア・チャンバー内で培養した口腔扁平上皮癌細胞株がHIF-1αを高発現すること、その下流にあるVEGFおよびc-Metが高発現することを見いだした。現在、SCC抗原作動型遺伝子導入法を用いて、扁平上皮癌による可溶型VEGFR-3産生を目指すとともに、c-Metを標的としたVEGF産生抑制による癌浸潤制御療法を検討中である。 | KAKENHI-PROJECT-16592020 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16592020 |
肺癌の血液中マイクロRNA解析による新規バイオマーカー開発 | マイクロRNAは、タンパク質をコードしない小さなRNAで、肺癌のバイオマーカーとして有効かを検討する研究である。約900のマイクロRNAを網羅的に解析した。その後、統合解析を行い、特異的なマイクロRNAを検出した。その結果、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。この結果を基に、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性について検討を開始した。血液中の変異検出率を規定する因子は、腫瘍の体積であった。血液中での腫瘍由来の遺伝子解析では、手術の対象となるような早期の肺癌では、検出が困難であることが示された。マイクロRNAは、早期の症例でも有効か研究を継続中である。組織からのRNAの抽出平成26年度には、組織からのRNAの抽出およびマイクロRNAの検出を行うことを主に予定していた。当院で行われた肺癌手術の患者を対象に外科的治療の際に摘出された組織を病院病理部にてホルマリン固定された病理学的診断に影響のない部分から採取されたものを用いる。腫瘍部および正常部の肺組織パラフィン包埋ホルマリン固定ブロックから、それぞれ4-10μm厚の薄切片を作製し、腫瘍部は2枚、正常部は4枚をチューブに入れて、キシレンを用いて脱パラフィンを行う。次にエタノールを加えて組織を洗浄してキシレンを完全に除去した後、組織を風乾してエタノールを除く。そこに、Proteinase K溶液を加えて加熱することで、組織を消化する。最後に、カラムを用いてRNAを精製する。吸光度測定および電気泳動により、抽出したRNA収量、純度、分解の程度を確認して、実験に使用する。miRNAの検出抽出した全RNAを、Hy5 miRCURY LNAでラベルし、マイクロRNAをHy5 Power labeling kit(Exiqon A/S, )でラベルし、マイクロRNAの発現をマイクロRNA microarray kitを用いて約900のマイクロRNAを網羅的に解析する(3D-Gene, Toray, Kamakura, Japan)。その後、統合解析を行い、各群に特異的なマイクロRNAを検出する。現在のところ、組織でのRNAの抽出を行い、一部の腫瘍でマイクロRNAの検出を開始した。平成27年度には、平成26年度から継続して組織からのマイクロRNAの検出を行うとともに、解析を開始して、臨床情報との関連を解析を開始した。また、血液からのRNAの抽出を開始してマイクロRNAの検出を始めた。インフォームドコンセントの得られている試料提供者に対して行う。採取した血液は、核酸抽出試薬を適量混和し,-80度にして凍結保存する。その後RNAを抽出する.抽出されたRNAはマイクロRNA解析に用いる。血液からは、RNA抽出キットを用いて抽出を行い、微量なRNAの増幅をおこなう。組織からの結果と血液からの結果が一致するか検討を開始したところだが結果が安定せず、改良が必要と考えられた。また、国内外の権威ある学会に発表を行い、情報収集および情報交換を行ったので、その結果をふまえて実験法などの軌道修正を行っていきたい。miRNAの検出では、抽出した全RNAを、Hy5 miRCURY LNAでラベルし、マイクロRNAをHy5 Power labeling kit(Exiqon A/S, )でラベルし、マイクロRNAの発現をマイクロRNA microarray kitを用いて約900のマイクロRNAを網羅的に解析する(3D-Gene, Toray, Kamakura, Japan)。その後、統合解析を行い、各群に特異的なマイクロRNAを検出した。現在のところ、組織でのRNAの抽出を行い、腫瘍組織でのマイクロRNAの検出を行い、結果を得たが、その結果を基に今後は、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性を検討していく。組織でのマイクロRNAの検出は、概ね順調に行えたが、血液での検出が、安定せず、改良を要している。国内外の学会に参加、発表して情報交換をした結果を踏まえて軌道修正して実験を進めていきたい。平成28年度には、平成26年度、平成27年度から継続して組織からのマイクロRNAの検出を行った。miRNAの検出では、抽出した全RNAを、Hy5 miRCURY LNAでラベルし、マイクロRNAをHy5 Power labeling kit(Exiqon A/S, )でラベルし、マイクロRNAの発現をマイクロRNA microarray kitを用いて約900のマイクロRNAを網羅的に解析した(3D-Gene, Toray, Kamakura, Japan)。その後、統合解析を行い、特異的なマイクロRNAを検出した。現在のところ、組織でのRNAの抽出を行い、腫瘍組織でのマイクロRNAの検出を行い、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。この結果を基に現在は、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性を検討中である。血液からのRNAの抽出を開始してマイクロRNAの検出を始めたが、安定した結果が得られずに改良が必要と思われた。採取した血液は、核酸抽出試薬を適量混和し,-80度にして凍結保存する。その後RNAを抽出する.抽出されたRNAはマイクロRNA解析に用いる。血液からは、RNA抽出キットを用いて抽出を行い、微量なRNAの増幅をおこなう。組織からの結果と血液からの結果が一致するか検討を開始したところだが結果が安定せず、軌道修正を行ってきた。組織でのマイクロRNAの検出は、順調に行え、腫瘍組織でのマイクロRNAの検出を行い、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。血液での検出が、安定せず、進行が遅れている。当大学の分子病理学分野 | KAKENHI-PROJECT-26462138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462138 |
肺癌の血液中マイクロRNA解析による新規バイオマーカー開発 | 黒田教授のアドバイスを基に軌道修正を行い、血液での安定した実験結果が得られるように改良している。血液検体の採取も予定よりも遅れている。平成26年度から組織からのマイクロRNAの検出を行った。マイクロRNAの発現をマイクロRNA microarray kitを用いて約900のマイクロRNAを網羅的に解析した(3D-Gene, Toray, Kamakura, Japan)。その後、統合解析を行い、特異的なマイクロRNAを検出した。その結果、組織でのRNAの抽出を行い、腫瘍組織でのマイクロRNAの検出を行い、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。この結果を基に、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性について検討を開始した。血液中での遺伝子解析として、肺癌のバイオマーカーとして最も確立されているEGFR遺伝子変異を中心に解析を行った。当科で肺癌の診断で手術を行った症例に対して手術標本と術中に採血した血清を用いて遺伝子変異の検出率を比較検討した。IA-IIIA期の手術切除標本とマッチした患者血清150検体を収集し、遺伝子変異を解析した。腫瘍組織において検出された遺伝子変異とその検出頻度は、EGFR (37%), TP53 (39%), KRAS (10%)であった。血清を用いた検討では、EGFR (3/150), TP53 (5/150), PIK3CA (1/150)であった。血液中の変異検出率を規定する臨床病理学的因子を検索した結果、腫瘍の優位に体積が関係しているという結果が得られた。病理病期との相関は得られなかったが、I期の症例では、血液中で検出されなかった。血液中での腫瘍由来の遺伝子解析では、手術の対象となるような早期の肺癌では、検出が困難であることが示された。マイクロRNAでも同様の結果が心配され、比較的進行した症例を含めた解析を開始している。マイクロRNAは、タンパク質をコードしない小さなRNAで、肺癌のバイオマーカーとして有効かを検討する研究である。約900のマイクロRNAを網羅的に解析した。その後、統合解析を行い、特異的なマイクロRNAを検出した。その結果、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。この結果を基に、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性について検討を開始した。血液中の変異検出率を規定する因子は、腫瘍の体積であった。血液中での腫瘍由来の遺伝子解析では、手術の対象となるような早期の肺癌では、検出が困難であることが示された。マイクロRNAは、早期の症例でも有効か研究を継続中である。実験計画に対して概ね順調に経過している。しかしながら、マイクロRNAの測定が予定よりも遅れており、比較的高額であるマイクロRNAのプレートの使用を次年度に予定している。このような経緯により、次年度は予定よりも支出が多くなる予定である。 | KAKENHI-PROJECT-26462138 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26462138 |
アルブミン合成遺伝子の一塩基多型と持久性トレーニング効果の個体差 | アルブミン合成遺伝子に存在する3つの一塩基多型(SNPs)の違いによって、トレーニング前の血漿量、血漿総蛋白濃度、血漿総蛋白量が有意に異なること、また、血漿蛋白濃度のトレーニングによる変化量が異なる傾向にあることを明らかにした。さらに、運動負荷に対する血漿量および血漿アルブミン量の増加反応性を検討し、それらに認められる大きな個人差にはアルブミン合成遺伝子SNPsが影響すると考えられることを示唆した。アルブミン合成遺伝子に存在する3つの一塩基多型(SNPs)の違いによって、トレーニング前の血漿量、血漿総蛋白濃度、血漿総蛋白量が有意に異なること、また、血漿蛋白濃度のトレーニングによる変化量が異なる傾向にあることを明らかにした。さらに、運動負荷に対する血漿量および血漿アルブミン量の増加反応性を検討し、それらに認められる大きな個人差にはアルブミン合成遺伝子SNPsが影響すると考えられることを示唆した。本研究の目的は、「持久性トレーニングに伴う血漿蛋白質(アルブミン)の増加量、好気的運動能、体温調節能の改善の個体差は、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域の一塩基多型(SNPs)の違いに起因する」という実験仮説を検証することである。本年度は、運動トレーニング反応性に及ぼす候補アルブミン合成遺伝子SNPsの特定を行った。若年者18名について、実験の内容および意義を文書および口頭で十分に説明し、実験参加の同意を得た。被検者に連続5日間の持久性トレーニング(自転車エルゴメータ、最大酸素摂取量の70%強度、30分/日、気温30°C、相対湿度50%)を行わせ、その前後に、血漿量(エバンスブルー色素希釈法)、血漿総蛋白質およびアルブミン濃度(比色法)を測定した。血漿総蛋白質およびアルブミン量は、血漿量に血漿総蛋白質およびアルブミン濃度を乗じて算出した。また、最大酸素摂取量(自転車エルゴメータ多段階漸増負荷法)、暑熱環境下運動時(上記と同様)の体温調節反応(食道温上昇に対する前腕皮膚血管反応[体積変動法]および胸部発汗量[カプセル法])および心拍出量(インドシアニングリーン色素希釈法)を測定した。さらに、トレーニング後に採取した血液(EDTA-2Na)から得られた遺伝子サンプルを用いて、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域における3つのSNPsを解析(TaqManプローブ法)した。得られた遺伝子情報は、信州大学医学部医療情報部において匿名化で管理している。その結果、SNPsの出現頻度は、SNPs-A(CC:CT:TT=5:8:5)、SNPs-B(AA:AG:GG=3:10:5)、SNPs-C(AA:AG:GG=4:9:5)であった。今後、各種測定結果を匿名化データベースに再連結して解析し、次年度に発表予定である。本年度は、アルブミン合成遺伝子の転写調節領域の一塩基多型(SNPs)が血漿蛋白質の増加量に影響するメカニズムを明らかすることを目指し、急性運動に対する血漿蛋白質量の増加反応性に加え、血漿蛋白質合成速度を測定した。まず、研究機関の変更に伴い、血漿量の測定手技を確立した。若年者5名を被験者とし、エバンスブルー色素希釈法および一酸化炭素再呼吸法を用いて血漿量の測定を行い、両者間に良好な相関関係の認められることを確認した。次に、若年者2名を被験者とし、急性運動に対する血漿蛋白質量の増加反応性、および、血漿蛋白質合成速度の測定を実施した。最大酸素摂取量(VO_<2max>、多段階漸増負荷法)の測定に加え、人工気象室(環境温28°C、相対湿度40%)内での座位安静時に、運動前、運動負荷(72分間、80%VO_<2max>,4分間+20%VO_<2max>,5分間×8回)終了直後、1、2、3、4、5、および、23時間後に採血を行い、血漿量、血漿総蛋白質およびアルブミン濃度(ビューレット法およびBCG法)を測定した。血漿総蛋白質およびアルブミン量は、血漿量に血漿総蛋白質およびアルブミン濃度を乗じて算出した。血漿蛋白質合成速度の測定は、蛋白質および糖質(熱量:3.2kcal/kg、蛋白質量:0.18g/kg)を運動直後あるいは2時間後に摂取する2試行を実施し、2試行間の血漿総蛋白質量の差から評価する方法を用いた。その結果、血漿蛋白質量の増加反応性、および、血漿蛋白質合成速度には大きな個人差が認められた。全ての測定を行った被験者が2名であったことから、匿名化の問題により、SNPsの解析およびSNPsが血漿蛋白質量の増加反応性におよぼす影響に関する検討は行わなかった。以上、本年度の研究成果から、一定の運動負荷に対する血漿蛋白質量および血漿蛋白質合成速度の増加反応性に大きな個人差の認められることが明らかになった。これらの成果は、体力向上のための効果的な運動指導方法確立のために重要な基礎データとなる。 | KAKENHI-PROJECT-20700522 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20700522 |
流体中を走行する弾性体の非接触振動抑制 | 本申請では、水中を電磁推進力によって高速走行するモノレール等の車両の振動制御や、連続亜鉛めっき処理工程における亜鉛の安定な蒸着を実現するための鋼板の非接触振動制御等の、制御手法の基礎資料を作成することを目的とした。従来、電磁力技術は電気軸受や磁気浮上車両等のような大気中や宇宙空間での応用が主であった。したがって。水のような流体中で振動する弾性体の非接触制振技術を確立することは重要な課題である。水中を走行する車両の振動制御を想定した場合、特に非対象モードを生じる原因となるコリオリ力が流体抗力によってどのような影響を受けるかを、走行速度との関係について考察し、電磁アクチュエータやセンサの最適な配置及び個数を検討する必要がある。一方、めっき処理工程を対象とした場合、めっき槽内にある部分が大きな流体抗力を受けるため、対象物の振動モード形状が流体抗力を受ける部分の深さによって異なることから、これを考慮したモデル化を行い、最適な電磁アクチュエータやセンサの配置を検討する必要がある。本年度は研究発表欄にも記したように、本研究課題の基礎段階である四辺自由端の薄鋼板を非接触支持する制御機構を開発し、その実現性に関して理論的・実験的に確認できた。現在水中を搬送する機構を製作中であり、理論的・実験的に基礎的な検討を行っている。当初の研究目的は本年度中に十分達成できなかったが、現在は次年度以降に十分な成果を得ることが可能な研究段階である。本申請では、水中を電磁推進力によって高速走行するモノレール等の車両の振動制御や、連続亜鉛めっき処理工程における亜鉛の安定な蒸着を実現するための鋼板の非接触振動制御等の、制御手法の基礎資料を作成することを目的とした。従来、電磁力技術は電気軸受や磁気浮上車両等のような大気中や宇宙空間での応用が主であった。したがって。水のような流体中で振動する弾性体の非接触制振技術を確立することは重要な課題である。水中を走行する車両の振動制御を想定した場合、特に非対象モードを生じる原因となるコリオリ力が流体抗力によってどのような影響を受けるかを、走行速度との関係について考察し、電磁アクチュエータやセンサの最適な配置及び個数を検討する必要がある。一方、めっき処理工程を対象とした場合、めっき槽内にある部分が大きな流体抗力を受けるため、対象物の振動モード形状が流体抗力を受ける部分の深さによって異なることから、これを考慮したモデル化を行い、最適な電磁アクチュエータやセンサの配置を検討する必要がある。本年度は研究発表欄にも記したように、本研究課題の基礎段階である四辺自由端の薄鋼板を非接触支持する制御機構を開発し、その実現性に関して理論的・実験的に確認できた。現在水中を搬送する機構を製作中であり、理論的・実験的に基礎的な検討を行っている。当初の研究目的は本年度中に十分達成できなかったが、現在は次年度以降に十分な成果を得ることが可能な研究段階である。 | KAKENHI-PROJECT-06750241 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-06750241 |
電子伝導液体の磁気分光 | 磁気共鳴分光法は液体中の化学種の微視的状態を知るための極めて有力な手段である。しかし、伝導電子が多量に存在にするような電子伝導性液体では、電磁波が試料に十分浸透できないという表皮効果のためにその適用には限界がある。とくに通常のESR装置は共鳴周波数が高い(135GHz)ため、限られた情報しか得られない。本研究ではESRとNMRの測定を同一周波数(約100MHz)で行い、アルカリ金属ーアンモニア(アミン)溶液を中心とする各種の電子伝導性液体の電子状態の解明を計るものである。このための低磁場ESR装置を自作し、既設のNMR装置との組合わせと調整を行った。低磁場ESR装置としてCW方式を採用し、測定は共鳴磁場195MHz,掃引磁場6376ガウス、磁場変調周波数6kHzで行った。冷却窒素ガスを用いて、170250Kでの測定を可能にした。リチウム金属ーメチルアミン系に対する実験結果は以下にまとめられる。1.金属の単位量当りのESRスペクトルの面積強度は温度の上昇とともに増加し、また金属濃度の増加とともに減少する。2.スペクトルの線幅から見積もられる見掛けの横緩和時間T^*_2は0.1ー0.3μsで、温度および金属濃度の増加とともに増加する。3.スペクトルの線形はリチウムの濃度が23モル%(飽和濃度)に至るまで、良い対称性を示す。第2年度にはさらに装置のパルス化による緩和測定を試みた。装置の特性上スペクトルの線幅は20ミリガウス程度であることが心要であり目下金属ーアンモニア系の試料の調製について検討している。一方、いくつかのカルコゲナイド系液体半導体の電子物性に対するタリウムとビスマスの添加効果に大きな差があることを見出した。今後それぞれの核のNMRおよび伝導電子のESRを調べる予定である。磁気共鳴分光法は液体中の化学種の微視的状態を知るための極めて有力な手段である。しかし、伝導電子が多量に存在にするような電子伝導性液体では、電磁波が試料に十分浸透できないという表皮効果のためにその適用には限界がある。とくに通常のESR装置は共鳴周波数が高い(135GHz)ため、限られた情報しか得られない。本研究ではESRとNMRの測定を同一周波数(約100MHz)で行い、アルカリ金属ーアンモニア(アミン)溶液を中心とする各種の電子伝導性液体の電子状態の解明を計るものである。このための低磁場ESR装置を自作し、既設のNMR装置との組合わせと調整を行った。低磁場ESR装置としてCW方式を採用し、測定は共鳴磁場195MHz,掃引磁場6376ガウス、磁場変調周波数6kHzで行った。冷却窒素ガスを用いて、170250Kでの測定を可能にした。リチウム金属ーメチルアミン系に対する実験結果は以下にまとめられる。1.金属の単位量当りのESRスペクトルの面積強度は温度の上昇とともに増加し、また金属濃度の増加とともに減少する。2.スペクトルの線幅から見積もられる見掛けの横緩和時間T^*_2は0.1ー0.3μsで、温度および金属濃度の増加とともに増加する。3.スペクトルの線形はリチウムの濃度が23モル%(飽和濃度)に至るまで、良い対称性を示す。第2年度にはさらに装置のパルス化による緩和測定を試みた。装置の特性上スペクトルの線幅は20ミリガウス程度であることが心要であり目下金属ーアンモニア系の試料の調製について検討している。一方、いくつかのカルコゲナイド系液体半導体の電子物性に対するタリウムとビスマスの添加効果に大きな差があることを見出した。今後それぞれの核のNMRおよび伝導電子のESRを調べる予定である。通常のESRの測定が困難な高濃度電子伝導性液体(例えば、アルカリ金属-アンモニア、アミン溶液)について、低磁場のESRを適用するため、補助金の備品費により新しく装置を製作した。すなわち、周波数発生器、RF増幅器、RF受信器、ロックイン増幅器、低周波発信器等を組み上げて、低い周波数に対するESR装置を作成した。今回の観測周波数は200MHzであった。磁場の発生には鉄心磁石を用い備品費で購入した直流安定化電源を使用した。オシロスコ-プ内蔵の掃引発信器を用いて電流を駆動し、10120ガウスの磁場を掃引した。磁場を2kHzおよび5kHzの低周波で変調し、ESR信号を観測した。標準物質である。DPPHについて、十分に良好なスペクトルが得られた。次いで、ESRプロ-プを温度可変が出来るように作製し、-100°C+100°Cまでの温度範囲での測定を可能にした。このプロ-プを用いて、金属リチウムのメチルアミン溶液中の不対電子のESRを観測した。測定温度範囲は-100°Cから-30°Cまで、濃度範囲は金属の飽和濃度(23モル%)に至るまでの濃厚溶液である。信号対雑音の比を向上させるため、パ-ソナルコンピュ-タを用いて、40乃至80回信号を積算した。得られたESRの微分波形を積分し、その面積とg値を決めた。従来のESRにおいては、高金属濃度領域で得られる線形が非対称になるが、今回のESR装置では周波数を下げため、表皮効果が改善され、従来の低金属濃度の実験を拡張し、その測定範囲高濃度領域にまげ拡げることができた。現在、スペクトルの溶液組成と温度に対する依存性を調べ、リチウム-メチルアミン溶液の電子状態と金属-非金属転移について検討を加えている。 | KAKENHI-PROJECT-01470003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01470003 |
電子伝導液体の磁気分光 | 通常のESRの測定が困難な高濃度の電子伝導性液体(例えば、アルカリ金属とアンモニア、アミンとの溶液)に対して、低磁場のESRを用いるために、本補助金により100MHz領域のESR装置を製作した。すなわち、RF増幅器、RF受信器、ロックイン増幅器、低周波発信器等を購入し、これを用いて分光器を組み立て、ラジオ波用のESR装置を作製した。磁場の発生には鉄芯磁石を用い、直流安定化電源で駆動した。初年度はオシロスコ-プ内蔵の掃引発信器を用いて、10120ガウスの磁場を掃引したが、本年度はこの磁場を部分的に掃引するように改造し、分解能をほぼ1桁あげることができた。磁場は25kHzの低周波で変調してESR信号を観測した。次いで、ESRブロ-ブを低温度まで可変制御できるように作製し、-100°C+100°Cまでの温度範囲での測定ができるようにした。このプロ-ブを用いて、金属リチウムとメチルアミンの溶液の溶媒和電子のESRスペクトルと温度と、濃度による変化を測定した。得られたESRの微分波形を積分してその面積強度を求め、またスペクトルの半値幅を決めた。半値幅より求めた溶媒和電子の見掛けのTは0.10.3μsの値をとり、温度および濃度の増加とともに増加した。溶液中の金属濃度と観測された電子スピン濃度との相関についても検討を加えた。金属濃度の増加、および温度の低下とのもにスビン対形成の傾向が見られた。これらのアルカリ金属ーアンモニア(アミン)系のESRの測定と並行して、液体半導体中の伝導電子スピンの観測のための準備として、いくつかの系の電子物性の測定を行った。またこれら全ての電子伝導性液体に対してNMRの測定を同時に行うことを今後の最大の課題としている。 | KAKENHI-PROJECT-01470003 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01470003 |
電子ラマン散乱分光法を用いた電荷秩序-ディラック相転移の解明 | ディラック電子系は応用の観点からも基礎学理の観点からも注目を集めている。電荷秩序を示す有機電荷移動錯体の中に圧力印加下においてディラック電子相を示す物質がある。これらの物質におけるディラック電子状態についてはまだ不明な点が多い。本研究ではラマン散乱分光法を主として赤外、紫外可視反射分光測定などの種々の分光測定を用いることによって電荷秩序物質の低温、圧力下における光学応答を明らかにし、空間分解、時間分解測定と合わせてディラック電子系における電子状態の詳細な理解を目指す。ディラック電子系は応用の観点からも基礎学理の観点からも注目を集めている。電荷秩序を示す有機電荷移動錯体の中に圧力印加下においてディラック電子相を示す物質がある。これらの物質におけるディラック電子状態についてはまだ不明な点が多い。本研究ではラマン散乱分光法を主として赤外、紫外可視反射分光測定などの種々の分光測定を用いることによって電荷秩序物質の低温、圧力下における光学応答を明らかにし、空間分解、時間分解測定と合わせてディラック電子系における電子状態の詳細な理解を目指す。 | KAKENHI-PROJECT-19K14631 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K14631 |
p21/waf1とテロメラーゼを標的とした癌の遺伝子治療 | テロメラーゼアンチセンス発現アデノウイルスを作成後、in vitroにおいてヒト肺癌細胞A549に感染させたところ、容量依存性にmRNAの発現が認められた。しかし、高用量のアデノウイルス感染によってもテロメラーゼ活性の有意な変化が見られず、細胞の増殖曲線にも明らかな変化が見られなかった。これはin vivoにA549細胞を注入して作製した皮下腫瘍モデルでも同様であった。細胞をHeLa細胞や他の肺癌細胞株に替えた場合でも同様の結果で、ウイルスベクターを新たに作製したが、今のところ期待された腫瘍抑制効果は得られていない。P21発現アデノウイルスベクターについては、in vitroにおいて期待された増殖速度の抑制がみられた。しかし、in vivoの皮下腫瘍モデルでは、一時的には腫瘍の進展は抑制するものの腫瘍の一部に遺伝子の移入を免れたものがあると、その細胞分裂によって再度腫瘍が増大する結果となり、最終的な腫瘍の進展速度には有意な変化を及ぼさなかった。P21アンチセンスベクターはin vitroでは細胞の増殖速度には有意な変化を与えなかったが、コロニーの形成能に変化を与える印象があり、様々な細胞株を用いて更に検討を重ねている。ただし、今のところはin vivoにおいて皮下腫瘍の増殖速度を有意に抑制するにはいたって居らず、原因の一つにはアデノウイルスを用いても作製した皮下腫瘍細胞すべてに効率よく遺伝子が導入されないという技術的なハードルが存在するようである。この治療概念の可能性を更に追求する目的でin vitroであらかじめ遺伝子を高濃度のアデノウイルスで導入した腫瘍細胞を実験動物の皮下に注入して腫瘍の作製を行う実験を行っている。P21/waf1の遺伝子を順方向で発現するアデノウイルスベクターを作成する目的で,cytomegalovirus immediate early promoter/enhancerがp21/waf1cDNAを発現するプラスミドベクター(pCMVp21SV2+)を,またp21/waf1をアンチセンス方向で発現するアデノウイルスベクターの作成目的でp21/waf1cDNAを逆方向に挿入したプラスミドベクター(pCMVp21SV2+AS)をそれぞれ作成,精製した。これらのプラスミドを,Microbix社から購入したpJM17(E1/E3領域欠失アデノウイルスゲノムを含んだコスミド)と共に293細胞にリン酸カルシウム法で導入した結果,それぞれp21/waf1を高発現するアデノウイルス(Adp21)とp21/waf1のアンチセンスRNAを発現するAdp21ASを得た。各ウイルスはA549細胞に感染すると高レベルのp21/waf1mRNAとp21/waf1 antiscnse RNAを発現していることが確かめられた。現在,これらのアデノウイルスを感染させた場合の癌細胞株の細胞周期に与える影響を解析中であり,特にAdp21の感染により細胞分裂が停止することが明らかであった。Adp21ASを高いMOIで感染させると細胞のコロニー形成能が変化するようであるが,未だ定量性のある結果には至っていない。抗癌剤や放射線感受性に与える影響については,現在実験系をsetupしている段階にある。また,平行してこれらウイルスのin vivo投与の影響を探る目的で,種々の細胞株の皮下腫瘍モデルを作成,対照群のデータを得ている。また,テロメラーゼを阻害するテロメラーゼアンチセンスRNA発現ベクターについては,アンチセンス発現プラスミドベクターを作成途上にあり,ウイルスベクターの作成の前段階にある。今後,ウイルス作成に進み,Adp21,Adp21ASと同様にin vitro系での評価を行う予定である。テロメラーゼアンチセンス発現アデノウイルスを作成後、in vitroにおいてヒト肺癌細胞A549に感染させたところ、容量依存性にmRNAの発現が認められた。しかし、高用量のアデノウイルス感染によってもテロメラーゼ活性の有意な変化が見られず、細胞の増殖曲線にも明らかな変化が見られなかった。これはin vivoにA549細胞を注入して作製した皮下腫瘍モデルでも同様であった。細胞をHeLa細胞や他の肺癌細胞株に替えた場合でも同様の結果で、ウイルスベクターを新たに作製したが、今のところ期待された腫瘍抑制効果は得られていない。P21発現アデノウイルスベクターについては、in vitroにおいて期待された増殖速度の抑制がみられた。しかし、in vivoの皮下腫瘍モデルでは、一時的には腫瘍の進展は抑制するものの腫瘍の一部に遺伝子の移入を免れたものがあると、その細胞分裂によって再度腫瘍が増大する結果となり、最終的な腫瘍の進展速度には有意な変化を及ぼさなかった。P21アンチセンスベクターはin vitroでは細胞の増殖速度には有意な変化を与えなかったが、コロニーの形成能に変化を与える印象があり、様々な細胞株を用いて更に検討を重ねている。ただし、今のところはin vivoにおいて皮下腫瘍の増殖速度を有意に抑制するにはいたって居らず、原因の一つにはアデノウイルスを用いても作製した皮下腫瘍細胞すべてに効率よく遺伝子が導入されないという技術的なハードルが存在するようである。この治療概念の可能性を更に追求する目的でin vitroであらかじめ遺伝子を高濃度のアデノウイルスで導入した腫瘍細胞を実験動物の皮下に注入して腫瘍の作製を行う実験を行っている。 | KAKENHI-PROJECT-10770271 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10770271 |
糖尿病ラットおよび実験的歯肉炎ラットの白血球活性酵素産生に関する研究 | 糖尿病患者は、感染に対する生体防御機能が低下し、歯周疾患に罹患しやすいとの報告が多数見られるが、未だその詳細なメカニズムは明らかにされていない。そこで、このメカニズムの一端を明らかにする目的で、先ず、ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させたラットおよび歯肉炎自然発症ラット(Susラット)を用いて、白血球(多形核白血球、単球・Mφ)の細菌能を測定することにより、生体防御機構と糖尿病および歯周疾患との関連性について基礎的検討を加えた。食細胞である多形核白血球やMφは、細菌などの異物が生体内に侵入した場合にその局所に遊走し異物を貧食する。その際、スー3:研究成果報告(欧文付)パーオキシド(O_2^-)や過酸化水素等の活性酸素が産生されることから活性酵素の産生能が殺菌能の指標として用いられている。今回、O_2^-産生能を測定し殺菌能の検討を行った。糖尿病ラットにおいては、多形核白血球およびMφともO_2^-生能は正常ラット(ストレプトゾトシン非投与群)に比べて有意に低下(P<0.050.01)していた。これら白血球O_2^-産生能の低下は白血球における細菌能の低下をとられたものであり糖尿病における易感染性の一因と考えられる。また、Susラットにおいては、Mφの機能(遊走能および細菌能)とplaque indexおよびpocket depthを指標として歯周疾患の進展との関連性についても検討した。それらの相関関係についても明らかにした。その結果、深い歯周ポケットを有するSusラット群ではMφ遊走能およびO_2^-産生能は、浅いポケットを有するSusラット群およびwistarラット群と比べて有意に低下(P<0.050.005)していた。さらに、Susラットの歯肉炎の進展とMφの遊走能およびオプソニン化チモーザン刺激によるO_2^-産生能との間に相関関係(P<0.050.01)が認められた。これらのことから、Susラットにおける歯周疾患の進行にMφの感染防御能の低下が関連のあることが示唆された。糖尿病患者は、感染に対する生体防御機能が低下し、歯周疾患に罹患しやすいとの報告が多数見られるが、未だその詳細なメカニズムは明らかにされていない。そこで、このメカニズムの一端を明らかにする目的で、先ず、ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させたラットおよび歯肉炎自然発症ラット(Susラット)を用いて、白血球(多形核白血球、単球・Mφ)の細菌能を測定することにより、生体防御機構と糖尿病および歯周疾患との関連性について基礎的検討を加えた。食細胞である多形核白血球やMφは、細菌などの異物が生体内に侵入した場合にその局所に遊走し異物を貧食する。その際、スー3:研究成果報告(欧文付)パーオキシド(O_2^-)や過酸化水素等の活性酸素が産生されることから活性酵素の産生能が殺菌能の指標として用いられている。今回、O_2^-産生能を測定し殺菌能の検討を行った。糖尿病ラットにおいては、多形核白血球およびMφともO_2^-生能は正常ラット(ストレプトゾトシン非投与群)に比べて有意に低下(P<0.050.01)していた。これら白血球O_2^-産生能の低下は白血球における細菌能の低下をとられたものであり糖尿病における易感染性の一因と考えられる。また、Susラットにおいては、Mφの機能(遊走能および細菌能)とplaque indexおよびpocket depthを指標として歯周疾患の進展との関連性についても検討した。それらの相関関係についても明らかにした。その結果、深い歯周ポケットを有するSusラット群ではMφ遊走能およびO_2^-産生能は、浅いポケットを有するSusラット群およびwistarラット群と比べて有意に低下(P<0.050.005)していた。さらに、Susラットの歯肉炎の進展とMφの遊走能およびオプソニン化チモーザン刺激によるO_2^-産生能との間に相関関係(P<0.050.01)が認められた。これらのことから、Susラットにおける歯周疾患の進行にMφの感染防御能の低下が関連のあることが示唆された。歯周疾患のアニマルモデルであるODU-plaque susceptibleラット(Susラット)およびストレプトゾトシンを投与することにより糖尿病を誘発させたラットの腹腔から採取した多形核白血球およびマクロファ-ジを用いて、各ラット白血球の殺菌メカニズムの違いについて、白血球活性酸素産生能を測定して検討した。活性酸素は、ス-パ-オキシド(O_2^-)および過酸化水素(H_2O_2)を測定した。刺激物質として、ホルボ-ルミリステ-トアセテ-ト、オプソニン化チモ-ザンおよびカルシウムイオノフォアA23187を用いた。1.Susラットにおいて、O_2^-およびH_2O_2産生能が、多形核白血球、マクロファ-ジともに対照ラットに比べ低下している傾向が認められた。このことから、Susラットは殺菌能が低下している傾向にあり、歯垢などの局所的因子によってひきおこされる歯周疾患が、より進行しやすい状態にあることが示唆された。2.ストレプトゾトシン糖尿病ラットの作成は、Rakietenらの方法に従い、以下の通り行った。 | KAKENHI-PROJECT-62570851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570851 |
糖尿病ラットおよび実験的歯肉炎ラットの白血球活性酵素産生に関する研究 | すなわち、クエン酸緩衝液(pH4.5)に2%濃度に溶解したストレプトゾトシン(65mg/kg体重)をラットに経静脈内投与し、2週間飼育した後、血糖値が250mg/dl以上に達したものを糖尿病ラットとして用いた。ストレプトゾトシン糖尿病ラットの多形核白血球のO_2^-産生能は対照ラットに比して低下していた。糖尿病の患者においては、易感染性との関連において、多形核白血球殺菌能の低下が示唆されているが、その機序として、O_2^-産生能の低下が関与している可能性が示唆された。糖尿病患者は、感染に対する生体防御機能が低下し、歯周疾患に罹患しやすいとの報告が多数見られるが、未だその詳細なメカニズムは明らかにされていない。そこで、このメカニズムの一端を明らかにする目的で、先ず、ストレプトゾトシンで糖尿病を発症させたラットおよび歯肉炎自然発症ラット(Susラット)を用いて、白血球(多形核白血球、単球・Mφ)の殺菌能を測定することにより、生体防御機能と糖尿病および歯周疾患との関連性について基礎的検討を加えた。食細胞である多形核白血球やMφは、細菌などの異物が生体内に侵入した場合にその局所に遊送し異物を貧食する。その際、スーパーオキシド(O_2^-)や過酸化水素等の活性酸素が産生されることから、活性酸素の産生能が殺菌能の指標として用いられている。今回、O_2^-産生能を測定し殺菌能の検討を行った。糖尿病ラットにおいては、多形核白血球およびMφともO_2^-産生能は正常ラット(ストレプトゾトシン非投与群)に比べて有意に低下(p<0.050.01)していた。これら白血球O_2^-産生能の低下は白血球における殺菌能の低下をとらえたものであり糖尿病における易感染症の一因と考えられる。また、Susラットにおいては、Mφの機能(遊走能および殺菌能)とPlaque indexおよびPocket depthを指標として歯周疾患の進展との関連性についても検討した。それらの相関関係についても明らかにした。その結果、深い歯周ポケットを有するSusラット群ではMφ遊走能およびO_2^-産生能は、浅いポケットを有するSusラット群およびWistarラット群と比べて有意に低下(P<0.050.005)していた。さらに、Susラットの歯肉炎の進展とMφの遊走能およびオプソニン化チモーザン刺激によるO^2^-産生能との間に相関関係(P<0.050.01)が認められた。これらのことから、Susラットにおける歯周疾患の進行に感染防御能の低下が関連のあることが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-62570851 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-62570851 |
インターバル速歩による運動療法が、加齢黄斑変性の治療となる | インターバル速歩による運動療法が、滲出型加齢黄斑変性の治療となることを検証する。インターバル速歩を開始する前の治療間隔と、インターバル速歩を半年以上継続した後の治療間隔を比較する。その他、生活習慣病指標(血圧、血糖値、BMI、中性脂肪またはHDLコレステロール)や筋力、血管内皮機能(血管内皮機能障害は動脈硬化の第一段階である)についても、インターバル速歩の前後で比較し、運動療法の効果を検証する。インターバル速歩による運動療法が、滲出型加齢黄斑変性の治療となることを検証する。インターバル速歩を開始する前の治療間隔と、インターバル速歩を半年以上継続した後の治療間隔を比較する。その他、生活習慣病指標(血圧、血糖値、BMI、中性脂肪またはHDLコレステロール)や筋力、血管内皮機能(血管内皮機能障害は動脈硬化の第一段階である)についても、インターバル速歩の前後で比較し、運動療法の効果を検証する。 | KAKENHI-PROJECT-19K18874 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K18874 |
藤原道長家の後宮サロンの実態とその文学活動に関する研究 | 平安時代の後宮は女性作者による多彩で豊かな文学作品を生み出した。その実態を藤原道長の娘である彰子のサロンを中心に考察した。日記、和歌、歴史物語などの文学作品に加え、儀式、仏教などさまざまな角度から検討することで、文学のみならず、政治や経済、宗教などの観点も加えて総合的に捉えることができた。さらに、そのような環境を念頭に置くことで、『源氏物語』などの虚構の作品についても新たな読みが生れることを明らかにした。平安時代の後宮は女性作者による多彩で豊かな文学作品を生み出した。その実態を藤原道長の娘である彰子のサロンを中心に考察した。日記、和歌、歴史物語などの文学作品に加え、儀式、仏教などさまざまな角度から検討することで、文学のみならず、政治や経済、宗教などの観点も加えて総合的に捉えることができた。さらに、そのような環境を念頭に置くことで、『源氏物語』などの虚構の作品についても新たな読みが生れることを明らかにした。研究課題に関わる各分野の資料収集と分析に着手し、道長家後宮サロンの実態を細部から復元するための基本となる研究を進めた。1、私家集を中心とした和歌資料の調査私家集を順次調査し、後宮サロンの交流関係という視点から関係記事を洗い出した。その際、詞書等にみえる直接的なやりとりだけでなく、歌語や歌枕の使用など、和歌表現における特徴的な技巧の有無に注目し、集団特有の詠歌基盤の解明にも務めた。2、『源氏物語』とその周辺に関する再検討道長家に仕えた紫式部の『源氏物語』について、権力者の実態や後宮政策を読むという視点から再検討した。3、儀式関係資料の調査『御産部類記』の精査、続いて賀茂祭、五節、朝観行幸、后の行啓関係記事を収集・分析した。必ず女方が関わり、人気も高い儀式・行事なので、資料も多い。女方がこれらの儀式・行事にどう関わったのかを見極めることで、後宮サロンと儀式全般の関係を探るための手がかりを得ることができた。4、仏教関係記事非常に詳しく道長家の仏事関係行事を載せる『栄花物語』の分析を進めた。『栄花物語』にみえる仏教関係記事そのものの検討に加え、いかなる種類の仏典をどのように取り入れているかを見定めることで、道長家の女方と仏教の関係を考えた。以上の調査、研究により、後宮サロンを文学のみならず、政治、経済、宗教といった観点からも分析し、総合的に捉えるという、本研究の目的を達するための基盤を築くことができた。20年度の研究(1私家集を中心とした和歌資料の収集、2『源氏物語』とその周辺の再検討、3儀式関係資料の収集、4『栄花物語』中の仏教関係記事の分析)を続行するとともに、5女性の出家に関する諸問題を検討し、後宮サロンの時期的変遷を追うこと、6道長の建立した法成寺と女性との関わり、7道長死後のサロンのあり方について、資料収集と分析・研究を行った。5については、道長の妻倫子と長女彰子の出家に関する資料を収集し、サロンに集う女性達の出家に対する思い、女主人の出家の前後でのサロンのあり方の違いをみることで、サロンという集団における仏教思想のあり方を考察した。また、サロンがその主人の人生史にともない求めるものが変わっていくこと、すなわちサロンを、構成員と同じように成長し、老いていくものとして捉えていく方法を探った。6は、法成寺が当時のあらゆる仏教信仰を、現世においてかたちにした寺院であることを確認し、さらに、その西北と東北の角に、倫子と彰子が堂を建立した意義を考察した。それは、後宮サロンの価値観や、摂関期における女性達の位置を示すものであることを明らかにした。7に関しては、歴史物語、歌合関係資料に加え、『小右記』『左経記』『春記』等の漢文日記を調査した。道長死後のサロンは、道長時代の後宮文化の継続に加え、彰子を中心により自由で大掛かりな行事の催行により、その存在を主張していくことが明らかになった。上記の調査、研究により、後宮サロンを文学のみならず、政治、経済、宗教といった観点から総合的に捉えることができ、最終年度の課題である文学作品の新たな読み、評価へと研究を進めるための基盤が完成した。前年度までの研究(1私家集を中心とした和歌資料の収集、2『源氏物語』とその周辺の再検討、3儀式関係資料の収集、4『栄花物語』中の仏教関係記事の分析、5女性の出家に関する諸問題を検討し、後宮サロンの時期的変遷を追うこと、6道長の建立した法成寺と女性との関わりの解明、7道長死後のサロンのあり方についての資料収集と分析・研究)を続行するとともに、藤原道長家の後宮サロンの実態を踏まえたうえでの文学作品の新たな読み、評価の可能性を探った。具体的には、道長家に仕えた女房達による作品、日記では『和泉式部日記』『紫式部日記』、家集では『紫式部集』『赤染衛門集』『伊勢大輔集』、さらに『御堂関白集』(藤原道長の家集というよりもむしろ道長家の贈答歌集という性格が強い)などを対象に、新たな読みを試みた。歴史物語に関しては、『栄花物語』続編を中心に研究を進めた。道長死後を扱う続編は、作者も成立年代も巻三十までの正編と異なる。また、ある程度まとまった資料の寄せ集めを主体として出来ているとされる。 | KAKENHI-PROJECT-20520157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520157 |
藤原道長家の後宮サロンの実態とその文学活動に関する研究 | 今回、彰子サロンの影響を見出すという観点から分析し、そこでの継続的な修史事業が『栄花物語』の資料の中核になっていることを確認できた。『栄花物語』続編は、道長家の女性サロンという恵まれた環境が生み出した最良の華の一つとして位置づけられる。さらに、以上のような実生活に根ざした作品群の読解をもとに、虚構の物語である『源氏物語』の新たな読みもさぐった。さまざまな場合に小さな女房集団の記録が書かれて伝えられていたと考えられ、それらの中には優れた物語作品とも言えるレベルに達していたものもあった。『源氏物語』のいわゆる「歴史性」もそのような資料を念頭において考えるべきだという新しい視点が得られた。 | KAKENHI-PROJECT-20520157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-20520157 |
糖鎖性接着分子P-セレクチンリガンドが誘起する情報伝達系に関与する分子群の同定 | 白血球上に存在するP-セレクチンリガンドであるPSGL-1は、0-結合型糖鎖を豊富に含む細胞外領域、膜貫通領域、および細胞内領域とからなっている。69アミノ酸から構成されている細胞内領域には、これまでに知られているような細胞内シグナルに関わる、いかなるモチーフも見い出されておらず、どのようにしてこの分子がP-セレクチンとの結合によって、白血球内にシグナルを伝えるのかは未だ明らかではない。本研究では、平成11年度に酵母を用いた2-ハイブリッドクローニングと呼ばれる方法を利用して、直接、目的蛋白質の遺伝子断片を既にクローン化した。1次スクリーニング、2次スクリーニングの結果、最終的に、PSGL-1の細胞内領域に結合すると考えられるタンパク質をコードする遺伝子を1クローン得た。得られたクローン化遺伝子(PSGL-AP1)のDNA配列を決定した。このクローンは330塩基対を有し、そのORFは70アミノ酸しか含んでおらず、遺伝子の部分断片であると予想された。そこで平成12年度、得られた遺伝子断片のORFのアミノ酸配列を基にして遺伝子データベースを検索した結果、PSGL-AP1がコードするアミノ酸配列と相同性のあるヒト遺伝子が見つかった。これは、ヒトの造血幹細胞と呼ばれる多能性分化能を有する前駆細胞からの各血球系細胞への分化に重要な働きをしているタンパク質リン酸化酵素遺伝子であった。今回得られたPSGL-AP1遺伝子のアミノ酸配列は、このリン酸化酵素のC末端70アミノ酸と80%程度の相同性を有していた。PSGL-1ノックアウトマウスでは、血球分化に以上が観察される事から、PSGL-AP1は、PSGL-1を介した細胞内情報伝達系の新たな機能を明らかにする上での重要な分子である可能性が示唆された。2-ハイブリッドクローニングで得られたクローン化遺伝子断片から5'-RACE(Rapid Amplification of cDNA End)法により目的遺伝子(PSGL-AP1)の全長cDNAをクローン化した。クローン化された遺伝子は全長約1.7kbpであり、DNA配列解析の結果、ユニークな配列を含む完全長の新規遺伝子であることが明らかとなった。白血球上に存在するP-セレクチンリガンドであるPSGL-1は、ムチン型蛋白質で0-結合型糖鎖を豊富に含む細胞外領域、膜貫通領域、および細胞内領域とからなっている。69アミノ酸から構成されている細胞内領域には、これまでに知られているような細胞内シグナルに関わる、いかなるモチーフも見い出されておらず、どのようにしてこの分子がP-セレクチンとの結合によって、白血球内にシグナルを伝えるのかは未だ明らかではない。そこで、PSGL-1の細胞内領域に相互作用する細胞内蛋白質の同定を試みた。同定は、酵母を用いた2-ハイブリッドクローニングと呼ばれる方法を利用して、直接蛋白質の遺伝子を分離することによって行なった。PSGL-1の細胞内領域をコードするcDNAを片方のベクターにクローン化し、もう一方のベクターを使って、ヒト白血球由来のcDNAライブラリーを構築した。最初にベイトを宿主酵母に導入して組換え酵母を選択、その後、cDNAライブラリーを導入した。使用する2種類のベクター上の栄養要求性選択マーカーを利用して、遺伝子導入酵母を適当な選択倍地中で生育させた(1次スクリーニング)。この結果、9つのクローンが得られた。酵母内で発現された2種類のタンパク質との間に相互作用が成立した時のみに転写活性化されるレポーター遺伝子を利用したレポーターアッセイを1次スクリーニング陽性クローンについて行なった(2次スクリーニング)。最終的に、PSGL-1の細胞内領域に結合すると考えられるタンパク質をコードする遺伝子を1クローン得た。得られたクローン化遺伝子のDNA配列を決定した。このクローンは330塩基対を有し、そのORFは70アミノ酸しか含んでおらず、遺伝子の部分断片であることが予想された。遺伝子データベース検索の結果、これまでに報告のない新規遺伝子の一部であることが明らかとなった。白血球上に存在するP-セレクチンリガンドであるPSGL-1は、0-結合型糖鎖を豊富に含む細胞外領域、膜貫通領域、および細胞内領域とからなっている。69アミノ酸から構成されている細胞内領域には、これまでに知られているような細胞内シグナルに関わる、いかなるモチーフも見い出されておらず、どのようにしてこの分子がP-セレクチンとの結合によって、白血球内にシグナルを伝えるのかは未だ明らかではない。本研究では、平成11年度に酵母を用いた2-ハイブリッドクローニングと呼ばれる方法を利用して、直接、目的蛋白質の遺伝子断片を既にクローン化した。1次スクリーニング、2次スクリーニングの結果、最終的に、PSGL-1の細胞内領域に結合すると考えられるタンパク質をコードする遺伝子を1クローン得た。得られたクローン化遺伝子(PSGL-AP1)のDNA配列を決定した。このクローンは330塩基対を有し、そのORFは70アミノ酸しか含んでおらず、遺伝子の部分断片であると予想された。そこで平成12年度、得られた遺伝子断片のORFのアミノ酸配列を基にして遺伝子データベースを検索した結果、PSGL-AP1がコードするアミノ酸配列と相同性のあるヒト遺伝子が見つかった。これは、ヒトの造血幹細胞と呼ばれる多能性分化能を有する前駆細胞からの各血球系細胞への分化に重要な働きをしているタンパク質リン酸化酵素遺伝子であった。今回得られたPSGL-AP1遺伝子のアミノ酸配列は、このリン酸化酵素のC末端70アミノ酸と80%程度の相同性を有していた。 | KAKENHI-PROJECT-11780429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780429 |
糖鎖性接着分子P-セレクチンリガンドが誘起する情報伝達系に関与する分子群の同定 | PSGL-1ノックアウトマウスでは、血球分化に以上が観察される事から、PSGL-AP1は、PSGL-1を介した細胞内情報伝達系の新たな機能を明らかにする上での重要な分子である可能性が示唆された。2-ハイブリッドクローニングで得られたクローン化遺伝子断片から5'-RACE(Rapid Amplification of cDNA End)法により目的遺伝子(PSGL-AP1)の全長cDNAをクローン化した。クローン化された遺伝子は全長約1.7kbpであり、DNA配列解析の結果、ユニークな配列を含む完全長の新規遺伝子であることが明らかとなった。 | KAKENHI-PROJECT-11780429 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-11780429 |
ビニルシクロプロパンの反応特性を活用した活性酸素消去薬の創製 | 1.ビニルシクロプロパン誘導体の合成:鎖状並びに環状スルフィドにN-クロロスクシンイミドを作用させてα-クロロスルフィドを生成させた後、種々のブタジェン化合物とDiels-Alder反応させて環状スルホニウム塩を合成した。この塩を還元又は塩基処理して系中でイリドを発生させ、これの[2,3]シグマトロピー転位によって硫黄並びに電子求引基が置換したシクロプロパンを合成した。2.ビニルシクロプロパン化合物の反応:カプトデイティブな置換基をもったビニルシクロプロパンとp-TsOHとの反応では、シクロプロパン環の開裂したジエン誘導体が生成した。またこの反応では新規な1,5-スルフェニル基転位を見出した。ベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン化合物にジフェニルジセレニド存在下可視光を照射してフェニルセレニルラジカルを発生させ、本ラジカルがビニル基に付加して開始されるラジカル反応を酸素、アルケン、アルキンなどと行い、ビニル基の置換した5員環を生成する反応を見出した。ベンゾチアジノン環の硫黄を酸化して得られるスルホキシドをp-トルエンスルホン酸存在下無水酢酸と加熱したり、塩化メチレン中室温で無水トリフルオロ酢酸と反応させると、ビニルシクロプロパン基がシクロペンタジエン、メチレンシクロペンテンや開環したペンタジエノールなどのジエンに変化した。3.複素環ビニルシクロプロパン誘導体の活性酸素消去作用の測定:合成したベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン誘導体を白血球を用いた貧食刺激、遊走刺激、PKC刺激などによる活性酸素産生に対する影響を化学発光法にてスクリーニングした。ある種の化合物には活性酸素消去作用が見出された。1.ビニルシクロプロパン誘導体の合成:鎖状並びに環状スルフィドにN-クロロスクシンイミドを作用させてα-クロロスルフィドを生成させた後、種々のブタジェン化合物とDiels-Alder反応させて環状スルホニウム塩を合成した。この塩を還元又は塩基処理して系中でイリドを発生させ、これの[2,3]シグマトロピー転位によって硫黄並びに電子求引基が置換したシクロプロパンを合成した。2.ビニルシクロプロパン化合物の反応:カプトデイティブな置換基をもったビニルシクロプロパンとp-TsOHとの反応では、シクロプロパン環の開裂したジエン誘導体が生成した。またこの反応では新規な1,5-スルフェニル基転位を見出した。ベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン化合物にジフェニルジセレニド存在下可視光を照射してフェニルセレニルラジカルを発生させ、本ラジカルがビニル基に付加して開始されるラジカル反応を酸素、アルケン、アルキンなどと行い、ビニル基の置換した5員環を生成する反応を見出した。ベンゾチアジノン環の硫黄を酸化して得られるスルホキシドをp-トルエンスルホン酸存在下無水酢酸と加熱したり、塩化メチレン中室温で無水トリフルオロ酢酸と反応させると、ビニルシクロプロパン基がシクロペンタジエン、メチレンシクロペンテンや開環したペンタジエノールなどのジエンに変化した。3.複素環ビニルシクロプロパン誘導体の活性酸素消去作用の測定:合成したベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン誘導体を白血球を用いた貧食刺激、遊走刺激、PKC刺激などによる活性酸素産生に対する影響を化学発光法にてスクリーニングした。ある種の化合物には活性酸素消去作用が見出された。1.ビニルシクロプロパン誘導体の合成:α-クロロスルフィドはブタジエン誘導体の環状付加により生成したジヒドロチオピラン誘導体を塩基で処理して,ビニルシクロプロパン誘導体を合成した。環内に電子吸引基と電子供与基をもつ複素環にビニルシクロプロパンがスピロ結合した誘導体は2-クロロ-1,4-ベンゾチアジン-3-オンにブタジエン類を環状付加させた後,還元または塩基処理により合成した。2.ビニルシクロプロパン誘導体の反応:カプトディティブな置換基をもつビニルシクロプロパンとp-トルエンスルホン酸との反応では,シクロプロパン環の開裂したジエン誘導体が生成した。またこの反応では新規な1,5-スルフェニル基転位を見い出した。ベンゾチアジノンとスピロ結合した化合物の熱転位では,シクロペンテンへ環拡大した。テオールを光照射下反応させると,ラジカル的に1,5-付加した生成した生成物が得られた。スルフィドのm-クロロ過安息香酸酸化によりスルホキシドを合成し,これのプメラ-反応を行ったところ,ブタジエンルチオニウムイオン中間体を経て,スピロペンタジエン,エキソメチレンシクロペンテン及び5-アシロキシ-1,3-ペンタジエニル誘導体を生成した。3.ビニルシクロプロパン誘導体の活性酸素消去作用については,現在測定準備中であるので,来年度には報告できる予定である。1.複素環ビニルシクロプロパン誘導体の合成:N-メチルベンゾチアジノンにN-クロロスクシンイミドを作用させてα-クロロスルフィドを生成させた後、種々のブタジエン化合物とDiels-Alder反応させ、橋頭位がスルホニオ基である双環状スルホニウム塩を合成した。この塩を還元又は塩基処理して系中でシリドを発生させ、これの[2, 3]シグマトロピー転位によってベンゾチアジノンスピロシクロプロパンを合成した。2.複素環 | KAKENHI-PROJECT-07672423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672423 |
ビニルシクロプロパンの反応特性を活用した活性酸素消去薬の創製 | ビニルシクロプロパン化合物の反応:ベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン化合物にジフェニルジセレニド存在下可視光を照射してフェニルセレニルラジカルを発生させ、本ラジカルがビニル基に付加して開始されるラジカル反応を酸素、アルケン、アルキンなどと行い、ビニル基の置換した5員環を生成する反応を見出した。ベンゾチアジノンかんの硫黄を酸化して得られるスルホキシドをp-トルエンスルホン酸存在下無水酢酸と加熱したり、塩化メチレン中室温で無水トリフルオロ酢酸し反応させると、ビニルシクロプロパン基がシクロペンタジエン、メチレンシクロペンテンや開環したペンタジエノールなどのジエンに変化した。3.複素環ビニルシクロプロパン誘導体の活性酸素消去作用の測定:合成したベンゾチアジノンスピロビニルシクロプロパン誘導体を白血球を用いた貧食刺激、遊走刺激、PKC刺激などによる活性酸素酸性に対する影響を化学発光法にてスクリーニングした。ある種の化合物には活性酸素消去作用が見出された。 | KAKENHI-PROJECT-07672423 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-07672423 |
文化的景観としての水上集落論-世界自然遺産ハロン湾の地理情報と居住動態の分析 | 2009年度は200708年度におこなった調査研究を総括し、報告書の編集・刊行に集中した。以下、目次を示す。第1章世界遺産と文化的景観第1節「文化的景観」とは何か第2節世界自然遺産ハロン湾の文化的景観第2章ハロン湾の水上集落第1節地理と歴史第2節漁民の居住動態第3節水上集落の測量と景観分析第3章ハロン湾水上集落景観の評価と課題第1節評価(1)世界遺産の文化的景観として第2節評価(2)居住動態と文化的景観第3節評価(3)筏住居の再評価第4節課題なにを「改善」すべきか第1章では、世界遺産条約における「文化的景観」の意義と内容を説明し、世界自然遺産ハロン湾の景観は自然物の審美的景観だけでなく、漁民の水上集落と海面地形との融合である文化的景観が重要な意味をもち、それは文化遺産の一つとして評価の対象になることを述べた。第2章ではハロンの地理・歴史を概括した上で、クアバン村での調査・測量の成果を報告し、CGシミュレーションを駆使した景観分析についてまとめた。第3章ではハロン湾の文化的景観をさまざまな側面から評価し、今後の方向性を示唆した。本報告書の目玉となるものは、地理情報の集積に基づく近未来水上集落景観のシミュレーションである。それはベトナム政府が提案している未来型水上建築を用いたシミュレーションであるが、そのシミュレーションが示す近未来の集落景観は世界自然遺産ハロン湾の景観をスケールと意匠の両面で不適合であることを主張した。本論の主眼とするところは、漁民たちの暮らしている筏住居の再評価である。環境負荷が少なく、景観的調和をもたらしている筏住居の持続的発展こそが肝要であることを結論とした。なお、補足調査として、中国広東郊外の世界文化遺産「開平の村落と望楼」を視察した。ベトナム北部の世界自然遺産ハロン湾の水上集落クアヴァン漁村での調査をおこなった。現地には6名で赴き、2名がGPSとレーザー測距器を併用した水上集落配置の測量、1名が居住動態に関するヒアリング、2名が家船・筏住居の実測、1名が水墨画による水上集落パノラマのスケッチを担当した。帰国後、現地で収集した地理情報を地球儀ソフトGoogle Earthと連動させて、精度の高い配置図を完成させた。さらに、そのデータと実測図、写真データ、衛星写真画像などの諸データを複合させ、現状の3次元景観CGを制作した。その後、復原的研究により家船を中心とする過去の景観CG、現地で視察したフェロセメントのパイロット住居や建築家設計の水上住居を取り入れた未来型景観CGをシミュレーションとして制作した。また、純粋な自然景観と、家船や筏住居を含む文化的景観の差を水墨画として表現した。これらのデータをもとに、ハロン湾の文化的景観保全のあり方を今後模索していきたい。一方、居住動態に関しては、・おもに漁携から養魚・養殖の生業転換にともなう家船から筏住居への住み替えについて、どのような生活空間と生活様式の変化が発生しているかを考察した。とりわけサンと呼ばれる筏住居前側の通路がコミュニティ生成の鍵となっている。現在、養魚・養殖の安定性により、陸上がはほとんど進んでいないが、今後、子どもの「教育」を媒介にして、それが進行していく可能性がある。年度初からしばらく昨年度調査の成果にもとづく世界自然遺産ハロン湾水上集落の景観シミュレーション作業の仕上げにあたるアニメーション制作に集中した。筏住居が大多数を占める現状の景観をB期とし、筏住居が皆無で家船だけだった10年ほど前の景観をA期、ベトナム側の施設計画に基づく近未来をC期とし、各時代の景観をアニメーションCGで表現した。いうまでもなく、B期については調査の成果、A期は「復元」、C期は「シミュレーション」である。このうちC期については、世界自然遺産ハロン湾の景観とスケール感・デザインの両面で調和しているとは言い難く、むしろB期の筏住居を積極的に評価して、これを継承するようなデザインを近未来も採用し、機能・構造の強化を図るべき考え始めている。。8月には、昨年の調査地クアヴァン漁村で補足調査をおこなった。わずか1年しか経っていないのに村の人口は微増し、カラオケ店や浄化水販売点が設置されていた。カラオケ店については、村の若者は歓迎しているものの、年長者は「夜、うるさい」ので煩わしく思っている。世界的にみれば、水上居民の「陸上がり」から水上集落は減少の一途を辿っているが、ハロン湾では人口微増にして「都市化」の傾向を読み取れる。ハロン湾での補足調査後、カンボジアのトンレサップ湖のチョンクニアス村でも水上集落の調査をおこなった。数年前と比べ、あきらかに家船は減っており、筏住居やそれが陸上がりした小型の高床住居が岸辺に多数建設されていた。10月には北京で開催された日中韓共催の国際シンポジウムで、ハロン湾調査に関わる発表をした(Trasformation of Cultural Seascape on Ha Long Bay, Vietnam)。年度末には個人研究費と科研費残金をあわせて、ネパールのヒマラヤ山麓で広大な段畑の文化的景観とバクダプル、カトマンドゥ、パタンの世界遺産を視察した。2009年度は200708年度におこなった調査研究を総括し、報告書の編集・刊行に集中した。以下、目次を示す。 | KAKENHI-PROJECT-19656157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19656157 |
文化的景観としての水上集落論-世界自然遺産ハロン湾の地理情報と居住動態の分析 | 第1章世界遺産と文化的景観第1節「文化的景観」とは何か第2節世界自然遺産ハロン湾の文化的景観第2章ハロン湾の水上集落第1節地理と歴史第2節漁民の居住動態第3節水上集落の測量と景観分析第3章ハロン湾水上集落景観の評価と課題第1節評価(1)世界遺産の文化的景観として第2節評価(2)居住動態と文化的景観第3節評価(3)筏住居の再評価第4節課題なにを「改善」すべきか第1章では、世界遺産条約における「文化的景観」の意義と内容を説明し、世界自然遺産ハロン湾の景観は自然物の審美的景観だけでなく、漁民の水上集落と海面地形との融合である文化的景観が重要な意味をもち、それは文化遺産の一つとして評価の対象になることを述べた。第2章ではハロンの地理・歴史を概括した上で、クアバン村での調査・測量の成果を報告し、CGシミュレーションを駆使した景観分析についてまとめた。第3章ではハロン湾の文化的景観をさまざまな側面から評価し、今後の方向性を示唆した。本報告書の目玉となるものは、地理情報の集積に基づく近未来水上集落景観のシミュレーションである。それはベトナム政府が提案している未来型水上建築を用いたシミュレーションであるが、そのシミュレーションが示す近未来の集落景観は世界自然遺産ハロン湾の景観をスケールと意匠の両面で不適合であることを主張した。本論の主眼とするところは、漁民たちの暮らしている筏住居の再評価である。環境負荷が少なく、景観的調和をもたらしている筏住居の持続的発展こそが肝要であることを結論とした。なお、補足調査として、中国広東郊外の世界文化遺産「開平の村落と望楼」を視察した。 | KAKENHI-PROJECT-19656157 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19656157 |
細胞内情報伝達系における局所Ca^<2+>動態の画像解析とイオンチャンネル活性化制御機構 | 心室筋や平滑筋の細胞内Ca^<2+>濃度は、特に外的刺激のない状態においても均一あるいは一定ではない。筋小胞体から、Ca遊離チャネルであるリアノジン受容体を介して自発的なCa遊離が局所的に生じる現象を、Ca蛍光色素と共焦点蛍光顕微鏡などを用いることにより数十ミリ秒間のCaスパークとして可視化することができる。我々は高速共焦点蛍光顕微鏡を用い平滑筋細胞においてCaスパークの2次元画像解析を行うとともに、自発性一過性外向き電流を室温で同時記録した。Caスパークが細胞内数箇所で見られる場合にも、スパークの中心が細胞膜から1μm以上離れている場合は明確に同期した外向き電流は観察されないことから、細胞膜と非常に緊密な位置関係にある筋小胞体だけが自発性一過性外向き電流を生じさせ得ると考えられる。興奮性の高い膀胱や精管の平滑筋細胞では、膜電位固定下での脱分極によりまずCa電流が活性化され、その後にCa依存性K電流(1_<K-Ca>)が活性化される。1_<K-Ca>の活性化は極めて速やかで、+10mVでは20ミリ秒以内にピークに達する。Ca画像解析によるとCa濃度の上昇は細胞膜に沿って均一に生じるのではなく、細胞膜直下に数個から20個程度の直径1μm以下のCaホットスポットが1_<K-Ca>の発生と同時に生じ、その後、徐々に広がり百ミリ秒以上続いて細胞全体のCa濃度が上昇することがわかった。Caホットスポットは電位依存性Caチャネルを介して流入したCa細胞膜直下の筋小胞体からCaを遊離させることによって生じると考えられる。活動電位の発生によっても同様のCaホットスポットが観察された。平滑筋において細胞膜直下の筋小胞体の一部は、リアノジン受容体を介するCa遊離により局所Ca動態に重要な生理的役割を持ち、BKチャネル活性を制御することにより、活動電位の波形や発生頻度および静止膜電位の調整を行うとともに、興奮収縮連関でのCa遊離連鎖の起点となる可能性が示唆された。心室筋や平滑筋の細胞内Ca^<2+>濃度は、特に外的刺激のない状態においても均一あるいは一定ではない。筋小胞体から、Ca遊離チャネルであるリアノジン受容体を介して自発的なCa遊離が局所的に生じる現象を、Ca蛍光色素と共焦点蛍光顕微鏡などを用いることにより数十ミリ秒間のCaスパークとして可視化することができる。我々は高速共焦点蛍光顕微鏡を用い平滑筋細胞においてCaスパークの2次元画像解析を行うとともに、自発性一過性外向き電流を室温で同時記録した。Caスパークが細胞内数箇所で見られる場合にも、スパークの中心が細胞膜から1μm以上離れている場合は明確に同期した外向き電流は観察されないことから、細胞膜と非常に緊密な位置関係にある筋小胞体だけが自発性一過性外向き電流を生じさせ得ると考えられる。興奮性の高い膀胱や精管の平滑筋細胞では、膜電位固定下での脱分極によりまずCa電流が活性化され、その後にCa依存性K電流(1_<K-Ca>)が活性化される。1_<K-Ca>の活性化は極めて速やかで、+10mVでは20ミリ秒以内にピークに達する。Ca画像解析によるとCa濃度の上昇は細胞膜に沿って均一に生じるのではなく、細胞膜直下に数個から20個程度の直径1μm以下のCaホットスポットが1_<K-Ca>の発生と同時に生じ、その後、徐々に広がり百ミリ秒以上続いて細胞全体のCa濃度が上昇することがわかった。Caホットスポットは電位依存性Caチャネルを介して流入したCa細胞膜直下の筋小胞体からCaを遊離させることによって生じると考えられる。活動電位の発生によっても同様のCaホットスポットが観察された。平滑筋において細胞膜直下の筋小胞体の一部は、リアノジン受容体を介するCa遊離により局所Ca動態に重要な生理的役割を持ち、BKチャネル活性を制御することにより、活動電位の波形や発生頻度および静止膜電位の調整を行うとともに、興奮収縮連関でのCa遊離連鎖の起点となる可能性が示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-09273246 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-09273246 |
μ_3-ヒドロキソ配位子を有する四核ルテニウム錯体の反応 | 錯体1とアセチレンジカルボン酸メチルとの反応では、アセチレンジカルボン酸メチル2分子が取り込まれて一方のルテニウムと5員環ルテナサイクルを形成し、他方のルテニウムにルテナサイクルの一部がη^3-アリル型に配位していることが判った。二核錯体が生成することが判った。また、この反応ではルテナサイクルのα位には架橋ヒドロキソ配位子に由来すると考えられる酸素原子が導入されていることもわかった。錯体1と第一アミン類との反応では三核錯体を生成することが判った。三核錯体はいずれも三核ルテニウム面の一方に三重架橋オキソ配位子、他方に三重架橋アミド配位子を持ち、架橋ヒドリドが1つあることが判った。また、1にナトリウムアミドを作用させると三核ルテニウム両面に三重架橋アミド配位子を持つビスアミド三核錯体が同時に生成することが判った。カルボキシラト架橋二核錯体2に塩基の存在する反応条件下で1,1-ジハロアルカン類を作用させると二核アルキリデン錯体が生成することがわかった。いくつかの基質や反応条件を検討し、錯体2は塩基存在下で一般に反応性が向上することがわかった。錯体1とアセチレンジカルボン酸メチルとの反応では、アセチレンジカルボン酸メチル2分子が取り込まれて一方のルテニウムと5員環ルテナサイクルを形成し、他方のルテニウムにルテナサイクルの一部がη^3-アリル型に配位していることが判った。二核錯体が生成することが判った。また、この反応ではルテナサイクルのα位には架橋ヒドロキソ配位子に由来すると考えられる酸素原子が導入されていることもわかった。錯体1と第一アミン類との反応では三核錯体を生成することが判った。三核錯体はいずれも三核ルテニウム面の一方に三重架橋オキソ配位子、他方に三重架橋アミド配位子を持ち、架橋ヒドリドが1つあることが判った。また、1にナトリウムアミドを作用させると三核ルテニウム両面に三重架橋アミド配位子を持つビスアミド三核錯体が同時に生成することが判った。カルボキシラト架橋二核錯体2に塩基の存在する反応条件下で1,1-ジハロアルカン類を作用させると二核アルキリデン錯体が生成することがわかった。いくつかの基質や反応条件を検討し、錯体2は塩基存在下で一般に反応性が向上することがわかった。 | KAKENHI-PROJECT-08232230 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08232230 |
情報開示・参加・協働の視点から見た介護保障システムの構築 | 研究期間であったこの2年間において、ドイツと日本の介護保障の現状について、情報開示・参加・協働という観点から研究を積み重ねてきた。初年度である昨年度には、介護保険法施行後のドイツの現状を把握するため、社会福祉行政を第一線で担う行政組織である市レベルの福祉担当者へのヒアリング調査と資料収集を行うと共に、わが国と同様に市場化の進展するドイツの現状をリアルに認識する必要性があることから、社会福祉サービスの経営者へのヒアリングを、非営利事業者のみならず営利事業者に対しても行った。そしてさらに、社会政策を専攻する研究者へのヒアリングと意見交換も行った。この結果、ドイツでは、市場化が進展した結果、非営利事業者の質的転換が進む一方で、福祉施設に対する行政的監督の強化がなされていることが分かった。このほか、市レベルで事業者への規制条例を整備する等の地方自治による福祉市場規制、行政が区域内の多様な供給主体によるサービスの現状把握を行う仕組み、そして利用者参加型の施設内自治の仕組みの現状についても調査することができた。これらの成果をもとに、2年目である平成16年度は、日本の問題状況の把握を行うとともにドイツとの比較検討を行った。その結果、日本では、サービスの第三者評価制度や、自治体やNPOによる福祉オンブズマンが行う権利擁護の制度や民間レベルの実践が蓄積されつつある反面、サービスの種類や対象者の類型ごとに縦割りの仕組みであることが多く、第三者評価やオンブズマンといった新たな制度や民間レベルの実践のいずれにおいても、真の意味での第三者性の確保がなされているとは言いがたい状況があるという問題に到達した。したがって今後は、権利保障過程の全体について研究を深める必要がある。今年度は、本研究の初年度として、ドイツの公的介護保障制度およびその運用実態の把握を主眼に置いた研究活動を行った。まず、介護保険法施行後のドイツに関する基本文献その他資料の収集を行い、これらを順に読みながら、ドイツの公的介護保障制度の現状に関する認識を深めた。また、昨年9月には、ドイツに出向き、ドイツの公的介護保障の現状に関する現地調査とヒアリングも行った。この調査では、民間非営利の福祉事業者のみならず営利事業者に対してもヒアリングを行うとともに、各種老人ホームの視察と施設長へのインタビューを行った。その結果、ドィツにおいて、介護保険法施行後、福祉市場への民間参入が相当程度進んでいる実態や、ショートステイの施設ではニーズが高い割には使い勝手が悪いため閉鎖に追い込まれている所が目立つこと、また介護保険以後、福祉施設への立入検査等の行政機関による監督権限が強化されるに至っており、これがサービスの質確保に上って相当程度効果を発揮していること、福祉施設における利用者の施設運営参加権行使の実態に関すること等について情報収集をすることができ、これらは大きな成果であった。また、この調査では、事業者が実際に使用している契約書の様式等の実務上の各種の書類も入手することができたため、サービス利用者への事前の情報提供の程度に関する資料が得られる等、有益であった。また、エアランゲン市の福祉担当職員へのヒアリングも行うことができ、介護保険制度の仕組みに関する理解を深めるとともに、民間サービスが主流となる中での行政の役割についても聞くことができた。以上の調査と資料で得られた知見をもとに、次年度では、本研究をまとめるべく、日本の現状調査および日独比較に重点を置いた研究を行う予定である。研究期間であったこの2年間において、ドイツと日本の介護保障の現状について、情報開示・参加・協働という観点から研究を積み重ねてきた。初年度である昨年度には、介護保険法施行後のドイツの現状を把握するため、社会福祉行政を第一線で担う行政組織である市レベルの福祉担当者へのヒアリング調査と資料収集を行うと共に、わが国と同様に市場化の進展するドイツの現状をリアルに認識する必要性があることから、社会福祉サービスの経営者へのヒアリングを、非営利事業者のみならず営利事業者に対しても行った。そしてさらに、社会政策を専攻する研究者へのヒアリングと意見交換も行った。この結果、ドイツでは、市場化が進展した結果、非営利事業者の質的転換が進む一方で、福祉施設に対する行政的監督の強化がなされていることが分かった。このほか、市レベルで事業者への規制条例を整備する等の地方自治による福祉市場規制、行政が区域内の多様な供給主体によるサービスの現状把握を行う仕組み、そして利用者参加型の施設内自治の仕組みの現状についても調査することができた。これらの成果をもとに、2年目である平成16年度は、日本の問題状況の把握を行うとともにドイツとの比較検討を行った。その結果、日本では、サービスの第三者評価制度や、自治体やNPOによる福祉オンブズマンが行う権利擁護の制度や民間レベルの実践が蓄積されつつある反面、サービスの種類や対象者の類型ごとに縦割りの仕組みであることが多く、第三者評価やオンブズマンといった新たな制度や民間レベルの実践のいずれにおいても、真の意味での第三者性の確保がなされているとは言いがたい状況があるという問題に到達した。したがって今後は、権利保障過程の全体について研究を深める必要がある。 | KAKENHI-PROJECT-15730012 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15730012 |
中世末期・近代初期のドイツ諸都市における同職組合と兄弟団 | 本研究の目的は、16世紀初頭ドイツの一連邦メクレンブルクにおける33の内陸都市を対象として、都市の市政や慣習、とりわけ同職組合と兄弟団の関係を考察することにある。当時のメクレンブルク公の秘書ヨ-ハン・モニックが1514年に同領邦内の諸都市を巡察して作成した詳細な報告書を史料として用い、まず数量的な面からアプロ-チし、各都市ごとの市参事会員数、同職組合と兄弟団の種類とその所属人数を明らかにした。次に、都市の市政や風俗および同職組合と兄弟団の慣習や権利に関するモニックの内容的な記述に基づいて、各都市の社会経済的特徴、同職組合と兄弟団の関係、市参事会にたいする両者の関係、冠婚葬祭に係わる市民の風俗などを明らかにした。さらに、ドイツの学会でも依然として議論が続いている「アムト」、「ヴェルク」、「ギルド」、「ブル-ダ-シャフト」(兄弟団)といった言葉の意味に関して、それらがこの地方において当時どのよう意味で用いられていたかをほぼ確定することができた。また、考察の対象となった都市はいずれも小規模なものであるが、ここでもいくつかの職業においては、同職組合としてのアムトとは別に、独自の「職人組合」が形成されていることをも示すことができた。この研究のなかで、都市と農村との関係についても少しは触れているが、この点を解明することが今後の課題である。特に都市の慣習や風俗が農村に及ぼした影響という問題は、この時代の民衆(市民と農民)の日常的な生活を考えるうえで、重要な論点になると思われる。本研究の目的は、16世紀初頭ドイツの一連邦メクレンブルクにおける33の内陸都市を対象として、都市の市政や慣習、とりわけ同職組合と兄弟団の関係を考察することにある。当時のメクレンブルク公の秘書ヨ-ハン・モニックが1514年に同領邦内の諸都市を巡察して作成した詳細な報告書を史料として用い、まず数量的な面からアプロ-チし、各都市ごとの市参事会員数、同職組合と兄弟団の種類とその所属人数を明らかにした。次に、都市の市政や風俗および同職組合と兄弟団の慣習や権利に関するモニックの内容的な記述に基づいて、各都市の社会経済的特徴、同職組合と兄弟団の関係、市参事会にたいする両者の関係、冠婚葬祭に係わる市民の風俗などを明らかにした。さらに、ドイツの学会でも依然として議論が続いている「アムト」、「ヴェルク」、「ギルド」、「ブル-ダ-シャフト」(兄弟団)といった言葉の意味に関して、それらがこの地方において当時どのよう意味で用いられていたかをほぼ確定することができた。また、考察の対象となった都市はいずれも小規模なものであるが、ここでもいくつかの職業においては、同職組合としてのアムトとは別に、独自の「職人組合」が形成されていることをも示すことができた。この研究のなかで、都市と農村との関係についても少しは触れているが、この点を解明することが今後の課題である。特に都市の慣習や風俗が農村に及ぼした影響という問題は、この時代の民衆(市民と農民)の日常的な生活を考えるうえで、重要な論点になると思われる。 | KAKENHI-PROJECT-01530042 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-01530042 |
電子行政と電子署名認証法との最適化に関する比較法的研究 | 今年度は、EUのeIDAS規則(「指令1999/93/ECの廃止ならびに域内市場における電子取引のための電子識別および信頼役務に関する2014年7月23日欧州議会および理事会規則第910/2014号(2014年8月28日EU官報L257/73頁)」(松本恒雄・多賀谷一照編集代表『情報ネットワークの法律実務』)7359-7386頁)の各国での実施状況を調査することを中心に研究計画を一部変更しながら研究を進めた。EUでは、昨年度研究し一部研究成果を公表したように(eIDAS規則ーEUにおける新署名認証基盤法制ー(専修ロージャーナル14号)27ー47頁)、EU全体の署名認証基盤を一新するeIDAS規則が制定され施行されていることを研究した。しかしその過程で、eIDAS規則のみでは、不十分なことから各国の国内法で補足的な法制度を整備している国があることが判明し、その代表的な比較法的素材として、ドイツの認証業務法(Vertrauensdienstegesetz)の存在とその調査の必要性について通関するところとなった。そこで、今年度は、同法の具体的な内容と比較法的にみた場合のわが国に対する知見を明らかにする目的から、同法の内容を検討する作業を行った。同法は、eIDAS規則施行前の旧ドイツ電子署名法の基本的な構造を、eIDAS規則施行後に規律可能な部分について規制を加えて、電子署名法等の長期的な安定した検証可能性を確保せんとするものであることが判明した。現在までのところ、具体的な研究成果をまとめるための基本的な作業は進めてきたが具体的な公表にまでは至っておらず、その公表は来年度に引き継がれることになる。ドイツの信頼業務法についての資料収集が遅れて、結果的にその内容分析が迅速に計画通りにできなかったことによる。現在、研究成果の公表に向けて作業を進めているところである。来年度には、今年度の研究成果の公表を行うことができる見込みである。まずは、現在進めている認証業務法(ドイツ)の研究成果を進めて、来年度注に具体的な業績として公表することを予定している。その上で、日本の電子署名法の改正論議などの進行なども考慮に入れて、具体的な提言等を行っていくことを検討している。今年度の研究実績は、大きく3分野に分かれる。まず、第一は、日本法における電子署名認証法制の現状把握・課題把握とおおまかな課題解決方策の検討であり、第二は、欧州の新世代の電子署名認証法制にあたるeIDAS規則の比較法的検討であり、第三はeIDAS規則と各国の国内法制の変化を追跡するための文献調査と収集である。。第一の課題については、日本の電子署名法が、極めて課題を多く抱えており、例えばタイムスタンプの規定を欠くなど、安全で安心なサイバスペースを支える法制度となっていないことの認識から、安全安心なサイバースペース法制の検討へ向けて諸課題を検討した。検討した成果の一部は、基礎的な書籍の分担執筆の中に成果として反映させることができた。なお、詳細な専門的成果のとりまとめと公表は今後の課題となっている。第二の課題については、ドイツの電子署名法を素材にeIDAS規則と電子署名法との矛盾点を調査している文献を中心に、ドイツの国内法がどのように今後変容していくのかの調査研究を遂行している途上にある。eIDAS規則の範囲が、電子署名法より広いことから、深化させた調査研究にはさらなる文献調査と検討が必要となっている。第三の課題は、第二の課題と並行して進めるべき課題であるが、eIDAS規則がすでに施行され、各国の国内法制との調整が待ったなしの状況であることから、文献も暫時出版されつつあり、継続的に行ってきている。今後も継続していく必要があろう。日本法における電子署名認証法制の検討、欧州のeIDAS規則との比較検討などの作業は、欧州における文献等の公表にあわせて、まずまずの作業をし、成果を上げつつあると思われる。ただ、彼の地の文献等の公表が、計画時に思ったよりも遅れている感じがあり、それにあわせて、当方の調査収集、予算執行にも若干の遅れが出てきていることはいなめない。当初の研究計画では、欧州連合における電子署名認証法性を比較研究した上で、日本国内の行政手続における電子認証のあり方について研究調査を進める予定でいた。しかしながら、欧州の新電子署名認証法性であるeIDAS規則について、まだ補足的に調査をしなければならない事情に直面して、計画の変更を行った。具体的には、昨年度の成果として公表する予定であったeIDAS規則について、各国がその施行のための施行法を制定しようとしている動向について、それが、eIDAS規則の構造や法制的特徴に寄るのか、各国の国内的な事情によるのかなどの調査課題である。eIDAS規則事態についての概要、すなわち立法経緯、その内容、わが国に対する示唆などは論文として公表する予定で作業を進めてきた。平成30年度注には遅れていた講評の作業が終わる予定である。また、ドイツなどで、eIDAS規則の施行法を定める動きがあることが調査できた。施行法の内容、その立法趣旨等について研究を進めているところである。申請の段階で想定していた研究計画を上記の理由等から一部変更して、欧州の状況についてより補足的な調査のための計画変更を行ったため、研究が後年度にずれこむことになっていることが、遅れの理由である。 | KAKENHI-PROJECT-16K03291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03291 |
電子行政と電子署名認証法との最適化に関する比較法的研究 | 今年度は、EUのeIDAS規則(「指令1999/93/ECの廃止ならびに域内市場における電子取引のための電子識別および信頼役務に関する2014年7月23日欧州議会および理事会規則第910/2014号(2014年8月28日EU官報L257/73頁)」(松本恒雄・多賀谷一照編集代表『情報ネットワークの法律実務』)7359-7386頁)の各国での実施状況を調査することを中心に研究計画を一部変更しながら研究を進めた。EUでは、昨年度研究し一部研究成果を公表したように(eIDAS規則ーEUにおける新署名認証基盤法制ー(専修ロージャーナル14号)27ー47頁)、EU全体の署名認証基盤を一新するeIDAS規則が制定され施行されていることを研究した。しかしその過程で、eIDAS規則のみでは、不十分なことから各国の国内法で補足的な法制度を整備している国があることが判明し、その代表的な比較法的素材として、ドイツの認証業務法(Vertrauensdienstegesetz)の存在とその調査の必要性について通関するところとなった。そこで、今年度は、同法の具体的な内容と比較法的にみた場合のわが国に対する知見を明らかにする目的から、同法の内容を検討する作業を行った。同法は、eIDAS規則施行前の旧ドイツ電子署名法の基本的な構造を、eIDAS規則施行後に規律可能な部分について規制を加えて、電子署名法等の長期的な安定した検証可能性を確保せんとするものであることが判明した。現在までのところ、具体的な研究成果をまとめるための基本的な作業は進めてきたが具体的な公表にまでは至っておらず、その公表は来年度に引き継がれることになる。ドイツの信頼業務法についての資料収集が遅れて、結果的にその内容分析が迅速に計画通りにできなかったことによる。現在、研究成果の公表に向けて作業を進めているところである。来年度には、今年度の研究成果の公表を行うことができる見込みである。研究成果の欄で書いた3つの課題のうち、第一の課題については若干の遅れが見込まれる。第二の課題については、ドイツの国内法の詳細な検討が必要なため、平成29年度はより時間をかけて研究調査を行うことにしたいと考えている。その作業によって、本研究課題についての示唆がよりよく得られるものと考えられるからである。第三の文献等の調査ももちろん、精力的に進めるべき課題であるので、平成28年度の遅れを取り戻すべく鋭意進めることとしたい。ドイツのeIDAS規則施行法について、早急にその内容を検討し成果を公にし、その後、若干の他国の状況を調査した上で、欧州連合の動向をまとめたい。その後に日本における電子認証法制のあり方に対する示唆を得るための調査研究へと当初の基本的な研究計画を後年度において進めていきたいと考えている。まずは、現在進めている認証業務法(ドイツ)の研究成果を進めて、来年度注に具体的な業績として公表することを予定している。その上で、日本の電子署名法の改正論議などの進行なども考慮に入れて、具体的な提言等を行っていくことを検討している。ドイツおよびイギリスにおけるeIDAS規則関連の文献の出版が見込みより少なく、図書購入費が計画より少額となったことが、次年度使用額が出た理由である。 | KAKENHI-PROJECT-16K03291 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-16K03291 |
微地形および植生管理履歴にもとづく丘陵地二次林の植生再生ポテンシャル評価 | 昨年度までの研究成果をもとに,埋土種子集団に関するデータの詳細な解析を行った。丘陵地の微地形区分と管理履歴から,農用・薪炭林管理されていた3つの微地形区分(頂部斜面,下部谷壁斜面,谷頭凹地・平低)と,刈取り草地管理が行われていた1つの微地形区分(下部谷壁斜面)の4類型に整理し,それぞれの類型において適切な管理後に成立する植生を特徴づける種群(以下,管理特徴種)を既往データより抽出した。それらの種群が,管理放棄20年以上経過した調査区から採取した埋土種子集団に存在するかを4類型ごとに解析した結果,いずれの類型においてもその種数割合や種密度は非常に少ないことが分かった。比較対象とした管理再開調査区においては,現存植生に管理特徴種が確認できるようになり,埋土種子集団からも実生出現した。しかし,必ずしもすべての管理特徴種が,埋土種子から出現しないことが分かった。これは,管理特徴種の個体群再生に埋土種子集団の寄与は高くないことを示唆し,管理特徴種が現存植生にみられる調査区でも埋土種子集団に存在していないことから,管理特徴種の繁殖戦略として,種子繁殖が限定的であることもあわせて示唆する結果となった。一方,埋土種子集団の種構成は,調査区に対応しており,その類似関係をみたDCAの結果から,現存植生の種構成を決定する環境要因と,埋土種子集団のそれは,非常に類似していることが分かった。さらに,種の豊富さについても,現存植生と埋土種子とよく対応した結果であった。すなわち,現存植生と埋土種子集団の種構成は大きく異なっているものの,その構成を決定する環境要因は類似しており,また,種の豊富さも対応関係にあることが明らかとなった。以上から,管理再開後の速やかな林床植生の変化に,埋土種子の貢献は少ないこと,微地形単位に対応して管理後に出現する種は長期間残存する埋土種子集団を形成しない可能性が示唆され,丘陵地里山二次林における植生再生ポテンシャルは,微地形区分を問わず埋土種子組成から判断することはできず,周辺個体群の維持状況に左右される可能性が高いと結論づけられた。薪炭林や農用林に由来を持つ落葉広葉樹二次林が卓越する多摩丘陵の一部を対象に,微地形ごとに埋土種子構成が異なるかを明らかにする予備調査を行った。微地形以外の要因を取り除くため,過去樹林地として利用され,少なくとも20年以上前に伐採管理が放棄された一次流域を空中写真と現地聞き取り調査により抽出した。開析谷を横断するトランセクトに沿って,尾根斜面,下部谷壁斜面,谷底面にそれぞれ2カ所ずつ調査区を設置して,現存植生と埋土種子調査用の土壌試料を採取した。試料は,未分解の落葉層を注意深く取り除いた後,表層5cmの深さで総量0.02m^3をそれぞれの調査区から採取して,全天下の実験圃場で発芽実験を行った。その結果,6カ所の調査区で合計74種2466個体が記録され,その内26種のみが現存植生で確認できた。そのため,調査区ごとの埋土種子組成と現存植生の類似度は非常に低く,とくに尾根斜面では1種(ヒサカキ)のみであった。調査区間での種構成の違いは大きく,組成表を用いた序列化の結果,おおむね微地形と対応した組成になっていることが確認でき,下部谷壁斜面や谷底面には湿性地生の植物が多く出現し,立地特性と対応した結果となった。微地形ごとの種数,個体数,種多様性指数を比較したところ,谷底面で最も出現種数と個体数が多かった。ただし,ドクダミやミヤマカンスゲ,ミズ,イなど,特定の種の個体数が著しかったため,多様性指数は低い結果となった。一方,最も各種多様性指数が高くなる傾向にあったのは下部谷壁斜面だが,出現種数と個体数は他の微地形単位より低くなった。これは,当立地が斜度40度を超える急斜面であることから,表土の撹乱を受けやすいことを示していると考えられたが,それにもかかわらず,この立地に典型的な種が埋土種子から出現し,それらが現存植生にみられなかったことは,注目すべき結果となった。昨年度に引き続き,管理が10年以上放棄されたコナラ二次林と,林床管理が再開されたコナラ二次林における埋土種子組成の違いを,微地形の違いを考慮して比較した。その結果,埋土種子から発芽した個体の種数および個体数ともに,同じ微地形単位で比較すると,林床管理を再開した林分で有意に高くなる傾向が確認できた。これは,現存植生との類似度についても同様で,林床管理を再開した場所では,その類似度が高くなった。ただし,現存植生に確認できた種のうち,これまでの研究成果で各微地形単位の林床管理が行われた林分に典型的な種の多くは,いずれの埋土種子にも存在していないことがわかった。つまり,林床管理が行われた林分で林床管理が行われることで成立する微地形単位に応じた多様な林床植生は,埋土種子由来の種は必ずしも多くないということが示唆された。また,林床管理が再開された林分の埋土種子組成が多様になり,発芽個体数も増加したのは,管理再開後に成立した林床植生から,新たに追加された種子によるものが大きいと考えられ,長期的な埋土種子を形成する種は,必ずしもそれぞれの微地形単位に対応した種ではないことが示唆された。 | KAKENHI-PROJECT-17780021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17780021 |
微地形および植生管理履歴にもとづく丘陵地二次林の植生再生ポテンシャル評価 | こうした結果は,水田の埋土種子組成でも同様の傾向が見られ,水田耕作が放棄されて20年以上経過した場所では,著しく種数が減少し,希少な水田植物も発芽が確認されなかった。以上のように,水田と二次林の埋土種子は,長期間放棄された状況では,管理再開後に多様な植生を復元させるのに寄与する程度は低いことが示唆された。これまでの研究成果において,管理が再開した後すみやかに,立地条件に応じた多様な植生が復元することを説明するためには,埋土種子のみならず,わずかながら残存していた個体群が近傍に存在し,そこからの種の拡大が不可欠であることを意味している。昨年度までの研究成果をもとに,埋土種子集団に関するデータの詳細な解析を行った。丘陵地の微地形区分と管理履歴から,農用・薪炭林管理されていた3つの微地形区分(頂部斜面,下部谷壁斜面,谷頭凹地・平低)と,刈取り草地管理が行われていた1つの微地形区分(下部谷壁斜面)の4類型に整理し,それぞれの類型において適切な管理後に成立する植生を特徴づける種群(以下,管理特徴種)を既往データより抽出した。それらの種群が,管理放棄20年以上経過した調査区から採取した埋土種子集団に存在するかを4類型ごとに解析した結果,いずれの類型においてもその種数割合や種密度は非常に少ないことが分かった。比較対象とした管理再開調査区においては,現存植生に管理特徴種が確認できるようになり,埋土種子集団からも実生出現した。しかし,必ずしもすべての管理特徴種が,埋土種子から出現しないことが分かった。これは,管理特徴種の個体群再生に埋土種子集団の寄与は高くないことを示唆し,管理特徴種が現存植生にみられる調査区でも埋土種子集団に存在していないことから,管理特徴種の繁殖戦略として,種子繁殖が限定的であることもあわせて示唆する結果となった。一方,埋土種子集団の種構成は,調査区に対応しており,その類似関係をみたDCAの結果から,現存植生の種構成を決定する環境要因と,埋土種子集団のそれは,非常に類似していることが分かった。さらに,種の豊富さについても,現存植生と埋土種子とよく対応した結果であった。すなわち,現存植生と埋土種子集団の種構成は大きく異なっているものの,その構成を決定する環境要因は類似しており,また,種の豊富さも対応関係にあることが明らかとなった。以上から,管理再開後の速やかな林床植生の変化に,埋土種子の貢献は少ないこと,微地形単位に対応して管理後に出現する種は長期間残存する埋土種子集団を形成しない可能性が示唆され,丘陵地里山二次林における植生再生ポテンシャルは,微地形区分を問わず埋土種子組成から判断することはできず,周辺個体群の維持状況に左右される可能性が高いと結論づけられた。 | KAKENHI-PROJECT-17780021 | https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17780021 |